説明

画像形成装置

【課題】ローラ状の帯電部材の周方向の電気抵抗むらによる画像むらなどの画像不良を抑制することのできる画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置100は、帯電部材2の周方向の電気抵抗分布に係る情報を検知する電気抵抗分布検知手段51と、帯電部材2が導電部材31に接触しながら回転している状態で、帯電部材2の周方向の電気抵抗分布に係る情報の検知結果に応じて帯電部材2の周方向の位置に対して調整された電流が流れるように、電界形成手段24により帯電部材2と導電部材31との間に電界を形成させる抵抗補正手段51と、を有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体を帯電させるのにローラ状の帯電部材を用いる電子写真式の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置において、電子写真感光体(感光体)を帯電処理する帯電手段としては一般にスコロトロン帯電器のようなコロナ放電現象を利用したコロナ放電方式が多用されてきた。又、帯電手段として、帯電部材を感光体に接触させるか或いは近接させて、その帯電部材に帯電電圧を印加する接触又は近接帯電方式が利用されている。
【0003】
接触又は近接帯電方式では、例えば導電性ゴムのローラで形成されたローラ型の帯電部材(帯電ローラ)をドラム型の感光体(感光ドラム)の表面に接触又は近接させ、帯電ローラの軸となる芯金に電圧を供給する。そして、帯電ローラと感光体との最近接部(又は接触部)の感光体の表面移動方向の上流側及び下流側において帯電ローラと感光体との間に形成される微小ギャップ(空隙)で生じる放電により、感光体の外周面が一様に帯電処理される。
【0004】
このような接触又は近接帯電方式の場合、コロナ放電方式に比べて放電間隔が狭いためオゾンの発生が少なく、又印加電圧もコロナ放電方式に比べ小さくてすむという利点がある。
【0005】
しかし、接触又は近接帯電方式においても、帯電ローラの表面層は、高電界が印加されるだけでなく、被帯電体との間の放電に伴って発生する電離気体やオゾン及び電子などに曝される。このような厳しい環境下では、一般的に、帯電ローラの表面層の劣化が起き、帯電ローラの電気抵抗が次第に上昇するという現象が見られる。特に、電流の流れる方向が一方向であると、帯電ローラの電気抵抗変動がより大きくなる。これに対して、電流の流れる方向が両方向であると、帯電ローラの電気抵抗変動は小さくなる。この現象は、連続画像形成の過程においても見られる。このような帯電ローラの電気抵抗変動が発生すると、帯電ローラの周方向の電気抵抗むらによる画像むら(濃度むら)などの画像不良を引き起こすことがある。
【0006】
これに対し、特許文献1には、弾性層の上に表面層を有する帯電部材において、該表面層を、フッ化炭素を含有する導電性重合体組成物で形成することで、電気抵抗上昇を抑制する技術が開示されている。
【0007】
又、特許文献2には、帯電を安定化させるために、帯電ローラに接触する給電ローラを設け、異なる電圧を印加し、電流の流れの偏りを低減することで、通電劣化を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平09−325571号公報
【特許文献2】米国特許第7298993号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の技術を用いても、連続的に同一方向に電流を流し続ける場合などに、帯電ローラの電気抵抗変動を抑制しきれず、周方向むらを許容し得る程度まで無くすことが困難となることがある。
【0010】
又、特許文献2に記載の技術では、帯電ローラに接触する給電ローラから電流を流す場合、帯電ロールの回転に伴って電流が流れる方向が反転するため、全体としての電気抵抗変動は小さくなると考えられる。しかし、当該技術を用いても、帯電ローラの周方向の電気抵抗むらを抑制する効果としては低い。
【0011】
従って、本発明の目的は、ローラ状の帯電部材の周方向の電気抵抗むらによる画像むらなどの画像不良を抑制することのできる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は本発明に係る画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、感光体と、電圧が印加されることで前記感光体を帯電させる回転可能なローラ状の帯電部材と、前記帯電部材と離接可能に配置された導電部材と、前記帯電部材が前記導電部材に接触した状態で前記帯電部材と前記導電部材との間に電流が流れるように前記帯電部材と前記導電部材との間に電界を形成する電界形成手段と、前記帯電部材が前記導電部材に接触した状態で前記帯電部材を回転させる駆動手段と、前記帯電部材が前記導電部材に接触しながら回転している状態で所定の電圧を印加することにより前記帯電部材と前記導電部材との間に流れる電流値の検知結果、又は前記帯電部材が前記導電部材に接触しながら回転している状態で前記帯電部材と前記導電部材との間に所定の電流を流すことにより発生する電圧値の検知結果と、前記電流値又は前記電圧値が検知される際に前記導電部材と接触している前記帯電部材の周方向の位置の検知結果とから、前記帯電部材の周方向の電気抵抗分布に係る情報を検知する電気抵抗分布検知手段と、前記帯電部材が前記導電部材に接触しながら回転している状態で、前記帯電部材の周方向の電気抵抗分布に係る情報の検知結果に応じて前記帯電部材の周方向の位置に対して調整された電流が流れるように、前記電界形成手段により前記帯電部材と前記導電部材との間に電界を形成させる抵抗補正手段と、を有することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ローラ状の帯電部材の周方向の電気抵抗むらによる画像むらなどの画像不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例に係る画像形成装置の模式的な断面図である。
【図2】本発明の一実施例に係る画像形成装置の画像形成部をより詳しく示す模式的な断面図である。
【図3】本発明の一実施例に係る画像形成装置の帯電ローラの周囲の構成を説明するための模式図である。
【図4】本発明の一実施例に係る画像形成装置の概略制御態様を説明するためのブロック図である。
【図5】本発明の一実施例に係る画像形成装置における抵抗調整モードの動作の概略を示すフローチャート図である。
【図6】本発明の一実施例に従って検知された帯電ローラの電気抵抗分布の一例を示すグラフ図である。
【図7】本発明の一実施例に従う抵抗補正動作における抵抗補正バイアスの波形の一例を示すグラフ図である。
【図8】本発明の一実施例に従う抵抗補正動作による抵抗変動ΔRの変化と所定値(閾値)αとの関係を示すグラフ図である。
【図9】本発明の他の実施例に係る画像形成装置の帯電ローラの周囲の構成を説明するための模式図である。
【図10】本発明の他の実施例に係る画像形成装置の概略制御態様を説明するためのブロック図である。
【図11】本発明の他の実施例に係る画像形成装置における抵抗調整モードの動作の概略を示すフローチャート図である。
【図12】本発明の他の実施例に従う抵抗補正動作における抵抗補正バイアスの波形の一例を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
【0016】
実施例1
1.画像形成装置の全体的な構成
図1は、本発明の一実施例に係る画像形成装置の模式的な断面図である。本実施例の画像形成装置100は、電子写真方式を採用したタンデム式のフルカラー画像形成装置である。本実施例では、画像形成装置100は、複数の画像形成部として第1、第2、第3、第4の画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdを有する。第1、第2、第3、第4の画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdは、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像を形成する。本実施例では、第1、第2、第3、第4の画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdの構成及び動作は、使用するトナーの色が異なることを除いて実質的に同一である。従って、特に区別を要しない場合は、いずれかの画像形成部の要素であることを表す符号の添え字a、b、c、dは省略して、当該要素について総括的に説明する。
【0017】
図2は、画像形成部Pをより詳しく示す模式的な断面図である。画像形成部Pは、像担持体としてのドラム型の感光体(感光ドラム)1を有する。感光体1は、図示矢印R1方向に回転駆動される。感光体1の周囲には、その回転方向に沿って順に、次の各手段が配置されている。先ず、帯電手段としてのローラ状の帯電部材である帯電ローラ2である。次に、露光手段としての露光装置(レーザスキャナ装置)3である。次に、現像手段としての現像装置4である。次に、一次転写手段としてのローラ状の一次転写部材である一次転写ローラ5である。次に、除電手段としての光除電装置7である。次に、クリーニング手段としてのクリーニング装置6である。
【0018】
又、各画像形成部Pa〜Pdの各感光体1a〜1dに対向するように、無端ベルト状の中間転写体(中間転写ベルト)10が配置されている。中間転写体10は、支持部材としての複数のローラである、駆動ローラ11、テンションローラ12、二次転写対向ローラ13に架け渡されている。中間転写体10は、駆動ローラ11によって駆動されて図示矢印R2方向に回転(周回移動)する。各画像形成部Pa〜Pdの一次転写ローラ5a〜5dは、中間転写体10の内周面側において各画像形成部Pa〜Pdの各感光体1a〜1dに対向して配置されている。各一次転写ローラ5a〜5dは、中間転写体10を介して各感光体1a〜1dに押圧されており、各感光体1a〜1dと中間転写体10との接触部(ニップ部)に一次転写部T1が形成されている。又、中間転写体10の外周面側において二次転写対向ローラ13に対向する位置に、二次転写手段としてのローラ状の二次転写部材である二次転写ローラ14が配置されている。二次転写ローラ14は、中間転写体10を介して二次転写対向ローラ13に押圧されており、中間転写体10と二次転写ローラ14との接触部(ニップ部)に二次転写部T2が形成されている。
【0019】
又、画像形成装置100は、記録材収納部としてのカセット18、記録材搬送手段としての搬送ローラ17及びレジストローラ16、定着手段としての定着装置15などを有する。
【0020】
2.感光体
本実施例では、被帯電体である感光体1は、導電性支持体に有機物質の感光層、表面保護層が順次積層された有機感光体である。表面保護層にはフッ素樹脂微粒子が含有されている。本実施例の感光体1は、導電性支持体として肉厚1mmのアルミニウムを使用し、この上に感光層と表面保護層を積層することで、外径が30mmとされている。感光体1は、駆動手段としてのモータなどの駆動力を得て図示矢印R1方向に、所定の周速で回転する。
【0021】
3.帯電ローラ
本実施例では、帯電回転体である帯電ローラ2は、感光体1に接触して配置されている。帯電ローラ2は、感光体1に接触して、感光体1の表面移動方向の上流側及び下流側において帯電ローラ2と感光体1との間に形成される微小ギャップ(空隙)で生じる放電により、感光体1の表面を所定の電位に一様に帯電処理する。
【0022】
帯電ローラ2は、軸部となる導電性芯金21が基体として使用され、その上に弾性層22が設けられた構造を有している。この導電性芯金21は、鉄、銅、ステンレス、アルミニウムなどの金属材料を用いることができる。本実施例では、導電性芯金21としてアルミニウムを用いている。尚、導電性を失わない範囲で、この導電性芯金21に防錆や耐傷性付与のためにメッキ処理を施してもよい。
【0023】
帯電ローラ2の弾性層22は、感光体1への加圧時の撓みを考慮して、長手方向中央部が太く、長手方向両端部が細くなるように、所謂、クラウン形状となるように研磨処理が施されている。これは、帯電ローラ2の長手方向(回転軸線方向)の両端部が加圧機構により感光体1に向けて所定の加圧力を受ける構造となっているからである。つまり、帯電ローラ2の長手方向中央部の感光体1への当接圧が両端部に比べて小さくなる傾向があるため、これを防止するためである。
【0024】
又、帯電ローラ2の弾性層22としては、弾性材料に、アルカリ金属塩などのイオン導電系の導電剤を配合したものを使用することができる。弾性材料としては、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)を用いることができる。その他、導電剤として、カーボンブラック、グラファイト、導電性金属酸化物などの電子導電系のものを用い、これを弾性材料に分散させることもできる。又、弾性材料としては、天然ゴム、SBR、シリコンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、IR、BR、NBR及びCRなどの合成ゴムや、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂を使用することもできる。
【0025】
本実施例では、帯電ローラ2の導電性芯金21の直径は8mmである。又、本実施例では、帯電ローラ2の弾性層22は、弾性材料に導電剤を添加することで、電気的抵抗が1×106Ωcmに調整されている。又、本実施例では、帯電ローラ2の外径は14mmである。
【0026】
帯電ローラ2の導電性芯金21には、帯電バイアスを印加する帯電バイアス印加手段としての高圧電源である帯電電源24が接続されている。本実施例では、帯電電源24は、画像形成時には、直流電圧と交流電圧とを重畳した振動電圧を帯電ローラ2に印加する。本実施例では、帯電電源24は、画像形成時には、帯電バイアスとして、−600Vの直流電圧と、ピーク間電圧が1700Vの交流電圧とが重畳された振動電圧を印加する。即ち、本実施例では、帯電電源24は、所定の極性(本実施例では負極性)の直流電圧を出力する直流電源部と、交流電圧を出力する交流電源部とを有する。
【0027】
帯電ローラ2は、画像形成中には上記電圧が常に印加されているため、電気抵抗が変化しやすい。特に、帯電ローラ2にイオン導電剤を用いている場合には、電流の流れる方向が常に一定である通常の使用では、イオン導電物質の偏りが生じやすい。そのため、電気抵抗の変動はより顕著になり、これにより帯電ローラ2の電気抵抗むらに起因する感光体1の帯電むらによる画像不良を引き起こしやすい。
【0028】
帯電ローラ2は、導電性芯金21の長手方向(回転軸線方向)の両端部が軸受け部材によって回転可能に支持されると共に、感光体1に向けて所定の当接圧となるように加圧されている。そして、帯電ローラ2は、感光体1の回転に伴い従動回転する。尚、帯電ローラ2の駆動方式としては、この他にモータを利用したり、ギア駆動などを利用したりしてもよい。
【0029】
画像形成装置100には、帯電ローラ2の回転方向の位相を認識(帯電ローラ2の周方向の位置を認識)するための位置検知手段が設けられている。本実施例では、位置検知手段として、帯電ローラ2の回転軸に取り付けられた位置認識タグを、位置検知センサによって検知光としてのレーザー光の有無を検出することで検知して、帯電ローラ2の回転方向の位相を検知する位置検知機構37を用いた(図3)。位置検知機構37については後述して更に詳しく説明する。
【0030】
図3は、本実施例における帯電ローラ2の周囲の構成をより詳しく示す模式図である。
【0031】
図3に示すように、感光体1と帯電ローラ2は、離間機構32によって接触、離間が可能とされている。本実施例では、離間機構32として付勢部材であるバネを用い、図示しない駆動源としてのモータによるバネの圧縮、伸張により、感光体1と帯電ローラ2とを接触、離間させる。本実施例では、離間機構32のバネは、帯電ローラ2を感光体1に接触させる際には、後述するCPU51により制御されるモータで駆動される押圧部材により圧縮させられている。帯電ローラ2を感光体1から離間させる際には、その圧縮力を解放することで、離間機構32のバネは帯電ローラ2を感光体1から離間させる方向に付勢する。尚、帯電ローラ2と感光体1とを離接させる構成は、本実施例のものに限定されるものではなく、所望のタイミングで帯電ローラ2と感光体1とを離接させられればよい。
【0032】
又、帯電ローラ2が感光体1から離間した時に帯電ローラ2と接触するように、導電部材としての回転可能な導電性ローラ31が配置されている。本実施例では、導電性ローラ31として、直径6mmのアルミニウムの丸棒(金属ローラ)を使用した。しかし、この導電部材は、本実施例のものに限定されるものではなく、導電性の部材であればよい。但し、この導電部材の形状は、後述する抵抗測定の精度などの点から、回転可能な円筒状が望ましい。本実施例では、導電性ローラ31の長手方向(回転軸線方向)と帯電ローラ2の長手方向(回転軸線方向)とは平行であり、同方向における導電性ローラ31の長さと帯電ローラ2の長さは同等である。尚、導電性ローラ31の長手方向(回転軸線方向)の長さは、帯電ローラ2の長手方向(回転軸線方向)における帯電領域(感光体を帯電させる領域)の全体をカバーできるように設定することが望ましい。
【0033】
又、導電性ローラ31を駆動する駆動手段としての駆動装置33が設けられている。本実施例では、駆動装置33はモータで構成されている。帯電ローラ2が感光体1から離間したときに、帯電ローラ2が導電性ローラ31と接触した状態で駆動装置33が導電性ローラ31を駆動すると、帯電ローラ2は導電性ローラ31に従動して回転する。駆動装置33は、導電性ローラ31に対して、ベルトとギアによって連結されている。尚、駆動装置33の構成は、本実施例のものに限定されるものではなく、導電性ローラ31を駆動することができればよい。
【0034】
更に、本実施例では、電界形成手段としての帯電電源24が、帯電ローラ2と導電性ローラ31とに、第1、第2のスイッチ35、36により導通状態を切り替え可能なように電気的に接続されている。即ち、画像形成時には、帯電ローラ2が感光体1に接触した状態(導電性ローラ31から離間した状態)で、第1のスイッチ35が帯電ローラ側端子35Aに接続され、第2のスイッチ36が導電性ローラ側端子36Aに接続される。このように、帯電電源24は、画像形成時には、帯電ローラ2に接続されている。一方、詳しくは後述する抵抗補正動作時には、帯電ローラ2が感光体1から離間した状態(導電性ローラ31に接触した状態)で、第1のスイッチ35が導電性ローラ側端子35Bに接続され、第2のスイッチ36が帯電ローラ側端子36Bに接続される。このように、帯電電源24は、詳しくは後述する抵抗補正動作時には、導電性ローラ31に接続されている。即ち、帯電電源24は、帯電ローラ2又は導電性ローラ31のどちらかに電圧を印加できるようになっている。又、本実施例では、帯電電源24は、詳しくは後述する抵抗検知動作時に帯電ローラ2と導電性ローラ31との間に流れる電流を検知する検知回路を内蔵している。
【0035】
又、図3に示すように、帯電ローラ2の回転方向の位相を検知するために、位置検知手段としての位置検知機構37が設けられている。位置検知機構37は、回転検知用レーザー発光部37Aと回転検知用レーザー受光部37Bとで構成される位置検知センサと、帯電ローラ2の回転軸に取り付けられた位置認識タグ37Cとを有する。位置検知センサは、発光部37Aから発光したレーザーを受光部37Bで受光する。このとき、帯電ローラ2の回転軸に取り付けられた位置認識タグ37Cによりレーザー光が遮られることで、帯電ローラ2の回転(回転方向の位相)を検知することができる。尚、帯電ローラ2の回転軸に取り付けられた位置認識タグ37Cは、帯電ローラ2の回転軸に取り付けられた状態で帯電ローラ2の回転と共に回転する。
【0036】
4.画像形成プロセス
画像形成時には、回転する感光体1は、帯電バイアスが印加された帯電ローラ2により、その表面が所定の電位にほぼ一様に帯電される。帯電ローラ2により帯電処理された感光体1は、露光装置3によって画像情報に基づく画像露光Lを受ける。これにより、感光体1上に、画像情報に応じた静電潜像(静電像)が形成される。その後、感光体1上に形成された静電潜像には、現像装置4により現像剤としてのトナーが付着され、トナー像として現像される。次に、感光体1上に形成されたトナー像は、一次転写部T1において一次転写ローラ5の作用により中間転写体10に一次転写される。
【0037】
例えばフルカラー画像の形成時には、上述のような画像形成プロセスが、第1〜第4の画像形成部Pa〜Pdにおいて行われ、中間転写体10上にイエロートナー像、マゼンタトナー像、シアントナー像、ブラックトナー像が順次に重畳して一次転写される。その後、中間転写体10上のトナー像は、二次転写部T2において二次転写ローラ14の作用により紙などの記録材(シート)Sに一括して2次転写される。記録材Sは、カセット18から搬送ローラ17によって送り出された後に、レジストローラ16によって中間転写体10上のトナー像とタイミングが合わされて二次転写部T2へと搬送される。
【0038】
トナー像が転写された記録材Sは、定着装置15へと搬送される。定着装置15において未定着のトナー像を担持した記録材Sは加熱及び加圧される。これにより、記録材Sにトナー像が定着される。その後、記録材Sは画像形成装置100の外部へと排出される。
【0039】
又、一次転写工程後に感光体1上に残留するトナー(一次転写残トナー)は、図2に示すように、クリーニング装置6において、クリーニングブレード61により除去され、回収トナー容器62に回収される。その後、感光体1は、光除電装置7により除電処理されて、次の画像形成に供される。
【0040】
尚、単色画像形成時には、必要な色用の画像形成部Pにおいてのみトナー像が形成され、このトナー像が上記同様にして中間転写体10に一次転写され、又記録材Sに二次転写された後に、記録材Sに定着される。例えばブラック単色の画像形成時には、第4の画像形成部Pdにおいてのみトナー像の形成が行われる。
【0041】
5.抵抗検知動作及び抵抗補正動作
前述のように、帯電ローラは、使用により電気抵抗が変動することがある。特に、帯電ローラに流れる電流の方向が一方向であると、帯電ローラの電気抵抗変動がより大きくなる。そして、このような帯電ローラの電気抵抗変動が発生すると、帯電ローラの周方向の電気抵抗むらによる画像むら(濃度むら)などの画像不良を引き起こすことがある。
【0042】
従って、本実施例の目的は、帯電ローラの周方向の電気抵抗むらによる画像むらを抑制することである。又、帯電ローラの帯電能を安定化させ、良質な画像を形成できるようにすることも本実施例の目的の一つである。
【0043】
そこで、本実施例では、概略次のような制御を実行する。即ち、非画像形成時に帯電ローラ2に導電性ローラ31を接触させ、帯電ローラ2の周方向の電気抵抗分布を検知する。この帯電ローラ2の周方向の電気抵抗分布は、帯電ローラ2又は導電性ローラ31に所定の電圧を印加している際に両者の間に流れる電流値を測定することで検知することができる。但し、これに限定されるものではなく、帯電ローラ2又は導電性ローラ31に所定の電流が流れるように電圧を印加している際に発生する電圧値を測定することによって検知することもできる。そして、本実施例では、非画像形成時に、上述のようにして検知された帯電ローラ2の周方向の電気抵抗分布を打ち消すように、画像形成時とは逆方向の電流が帯電ローラ2に流れるように、帯電ローラ2と導電性ローラ31との間に電界を形成する。例えば、帯電ローラ2の周方向において電気抵抗がより大きい方向に変動している位置に対しては、画像形成時と逆方向のより大きな電流が流れるような電界を形成する。又、電気抵抗がより小さい方向に変動している位置に対しては、画像形成時とは逆方向のより小さな電流が流れるような電界を形成する。これにより、帯電ローラ2の周方向における電気抵抗むらを均すことができる。特に、イオン導電剤を用いた帯電ローラ2においては、一定方向の電流が流れることで生じたイオン導電物質の偏りを均して、帯電ローラ2の周方向の電気抵抗分布をより均一化することができる。上記電気抵抗分布の検知、電気抵抗分布を打ち消すように電界を形成する際には、帯電ローラ2と感光体1とは画像形成時の最近接状態(接触状態)からより遠位となるように離間させる。これにより、帯電ローラ2の周方向の電気抵抗分布をより正確に検知することができる。本実施例では、帯電ローラ2を感光体1から離れる方向に移動させることによって、帯電ローラ2を感光体1から離間させると共に、導電性ローラ31に接触させる。以下、更に詳しく説明する。
【0044】
図4は、本実施例における抵抗調整モードにおける抵抗検知動作及び抵抗補正動作を実行するための概略制御態様を示すブロック図である。
【0045】
画像形成装置100は、後述する記憶媒体53に記憶された各種プログラムに従って画像形成装置100の全体を制御する制御手段としてのCPU51を有する。又、画像形成装置100は、制御プログラムやエラー処理プログラムに従って画像形成装置100を動作させるためのプログラムなどを格納している記憶手段としての記憶媒体53を有する。本実施例における画像形成装置100の動作は、全てこのプログラムによる動作である。記憶媒体53には、後述するように帯電ローラ2と導電性ローラ31との間に流れる電流を検知する検知回路52で検知された電流などを記録する抵抗波形記憶部(記憶領域)54がある。検知回路52、記憶媒体53、帯電電源24、駆動装置33、位置検知センサ37A、37Bなどは、CPU51に制御可能なように接続されている。CPU51、検知回路52、記憶媒体53(抵抗波形記憶部54を含む)などによって、抵抗調整モードにおける抵抗検知動作及び抵抗補正動作を制御する制御部50が構成される。尚、便宜上、図4において帯電電源24と検知回路52は個別の制御ブロックとして示されているが、前述のように、本実施例では、帯電ローラ2と導電性ローラ31との間に流れる電流を検知する検知回路52は、帯電電源24に内蔵されている。本実施例では、CPU51が、電気抵抗分布検知手段及び抵抗補正手段の機能を有する。
【0046】
図5は、本実施例における、帯電ローラ2の周方向の電気抵抗分布を検知する抵抗検知動作と、必要な場合に行う帯電ローラ2の周方向の電気抵抗を補正する抵抗補正動作とを含む抵抗調整モードの動作概略を示すフローチャートである。本実施例では、この抵抗調整モードは、非画像形成時に実行される。非画像形成時とは、記録材Sに転写して出力する出力用画像を形成している期間以外の期間である。非画像形成時としては、次の各期間が挙げられる。先ず、画像形成装置100の電源投入後の準備動作である前多回転動作時である。次に、画像出力指示を受けてから実際に出力用画像を形成するまでの間の準備期間である前回転動作時である。次に、複数の記録材Sへの連続画像形成動作中における一の記録材Sに転写する画像と次の記録材Sに転写する画像との間に相当する紙間期間である。次に、出力用画像の形成を終了した後も感光体1などの回転を継続して後処理動作(準備動作)を行う期間である後回転動作時である。
【0047】
非画像形成時において、CPU51は、抵抗調整モードを実行すべきか否か、即ち、帯電ローラ2の周方向の電気抵抗分布(電気抵抗むら)を検知する必要があるタイミングになった否かを判断する(S101)。本実施例では、CPU51は、画像の出力枚数Nを記憶媒体53内に記録しており、A4換算で1000枚の出力ごとに、抵抗調整モードの実行が必要と判断し、帯電ローラ2の周方向の電気抵抗分布を検知する抵抗検知動作に入る。
【0048】
尚、抵抗調整モードを実行するか否かの判断は、出力枚数以外にも、帯電時間(帯電ローラに対する電圧印加時間)に相関する任意のパラメータに基づいて行うことができる。例えば、該パラメータとしては、帯電時間、帯電ローラの回転数(回転時間)、感光体の回転数(回転時間)などが挙げられる。又、画像形成装置100の起動時などの、任意のトリガーによって抵抗調整モードを実行するように設定することもできる。
【0049】
S101において出力枚数Nが所定枚数に達していない場合には、このフローは終了し、画像形成装置100はそのまま画像形成などに戻る。
【0050】
S101において出力枚数Nが所定枚数(本実施例では1000枚)に達した場合には、S102において、次のような動作が行われる。即ち、先ず、CPU51は、帯電ローラ2を離間機構32によって感光体1から離間させる(S102)。尚、このとき、画像形成時と同様に、第1、第2のスイッチ35、36により、帯電電源24から帯電ローラ2に電圧を印加できるように回路が構成されている。即ち、帯電ローラ2が感光体1から離間した状態(導電性ローラ31に接触した状態)で、第1のスイッチ35が帯電ローラ側端子35Aに接続され、第2のスイッチ36が導電性ローラ側端子36Aに接続される。この状態で、帯電電源24から帯電ローラ2に負極性の直流電圧を出力した際に、帯電ローラ2と導電性ローラ31との間に流れる電流を、帯電ローラ2及び導電性ローラ31を介して帯電電源24が内蔵する検知回路52によって検知することができる。次に、CPU51は、帯電電源24から帯電ローラ2へ所定の電圧(本実施例では−200V)を印加させる。又、CPU51は、駆動装置33を動作させて導電性ローラ31を駆動することによって、帯電ローラ2を回転させる(本実施例では回転数は15rpm)。このとき、CPU51は、帯電ローラ2に取り付けられた回転方向の位置認識タグ37Cを位置検知センサ37A、37Bによって検知することで、帯電ローラ2の周方向の位置を検知する。そして、予め決められた周方向位置(基準位置)から一周における帯電ローラ2に対して流れる電流を、検知回路52によって検知する(本実施例ではサンプリング周波数1kHz)。
【0051】
次に、CPU51は、取得した電流値と印加した電圧値から、帯電ローラ2の周方向における1周分の電気抵抗Rの分布に係る情報を算出する(S103)。図6は、算出された電気抵抗分布の一例を示す。
【0052】
ここで、検知した電気抵抗Rの変動の大小を表す指標(抵抗変動)ΔRとして、本実施例では、最大値Rmaxと最小値Rminの差、即ち、
ΔR=Rmax−Rmin
の値を考える。
【0053】
CPU51は、抵抗変動ΔRを算出し、算出した抵抗変動ΔRと、予め決められた所定値(閾値)αとの大小関係を判断する(S104)。ここで、この所定値αは、出力された画像の画像むら(濃度むら)などの画像不良の観点から許容できる範囲の、帯電ローラ2の周方向の電気抵抗変動の限界値である。
【0054】
S104において抵抗変動ΔRが所定値α以下である場合には、画像不良は発生しないため、抵抗調整モードを終了して画像形成などに戻る。具体的には、帯電ローラ2を再び感光体1に接触させ(S106)、更に出力枚数カウンタNを0にして(S107)、画像形成などに戻る。
【0055】
ここで、本実施例では、所定値αとしては、帯電ローラ2の1周期間の電気抵抗の平均値(平均抵抗値)Raveに対してその1割、即ち、
α=0.1×Rave
と設定した。本実施例では、回転数15rpm、印加電圧200V、押圧力1kg重の条件の下で、帯電ローラ2の平均抵抗値Raveは5.4×105Ωであった。この場合には、所定値αは5.4×104Ωである。但し、帯電ローラ2の性質やその他画像制御の仕様などによって、この所定値(閾値)αは変動する。従って、それらの条件に合わせて、所定値αは適宜設定することができる。
【0056】
S104において抵抗変動ΔRが所定値αより大きい場合には、帯電ローラ2の周方向の電気抵抗むらが大きいことを表している。従って、この場合には、帯電ローラ2の周方向の電気抵抗むらを補正する抵抗補正動作を実行する(S105)。
【0057】
ここで、本実施例における抵抗補正動作について説明する。先ず、CPU51は、帯電電源24からの電流が、導電性ローラ31に流れ、導電性ローラ31から帯電ローラ2へ電圧が印加されるように、第1、第2のスイッチ35、36を切り替える。このとき、帯電ローラ2は電気的に接地される。更に説明すると、このとき、前述のように、第1、第2のスイッチ35、36により、帯電電源24から導電性ローラ31に電圧を印加できるように回路が構成されている。即ち、帯電ローラ2が感光体1から離間した状態(導電性ローラ31に接触した状態)で、第1のスイッチ35が導電性ローラ側端子35Bに接続され、第2のスイッチ36が帯電ローラ側端子36Bに接続される。この状態で、帯電電源24から導電性ローラ31に負極性の直流電圧を出力した際に、導電性ローラ31から帯電ローラ2に電圧が印加され、導電性ローラ31と帯電ローラ2との間に電流が流れる。
【0058】
図7は、帯電ローラ2の周方向の電気抵抗分布の検知結果から算出された、導電性ローラ31に印加する抵抗補正バイアスの波形の一例である。尚、図7では、縦軸の上の値ほど負の大きい値である。
【0059】
本実施例では、CPU51は、導電性ローラ31に印加する抵抗補正バイアスの波形を求めるにあたり、帯電ローラ2の周方向の電気抵抗分布のグラフ形状は変えずに、振幅のみを拡大、縮小した波形を用意する。又、CPU51は、帯電ローラ2上で電気抵抗が大きい方向に最も触れていた位置(Rmaxとなる周方向位置)に対しては、当該位置が導電性ローラ31と接触しているときに導電性ローラ31に−1000Vの電圧を印加するようにする。即ち、当該位置が導電性ローラ31と接触しているときに導電性ローラ31から帯電ローラ2に印加される電圧が−1000Vになるようにする。又、CPU51は、帯電ローラ2上で電気抵抗が小さい方向に最も触れていた位置(Rminとなる周方向位置)に対しては、当該位置が導電性ローラ31と接触しているときに導電性ローラ31に−200Vの電圧を印加するようにする。即ち、当該位置が導電性ローラ31と接触しているときに導電性ローラ31から帯電ローラ2に印加される電圧が−200Vになるようにする。
【0060】
そして、CPU51は、この波形に基づき、帯電電源24に指示を出し、帯電ローラ2に取り付けられた回転方向の位置認識タグ37Cを位置検知センサ37A、37Bによって検知しながら、導電性ローラ31から帯電ローラ2に電圧を印加する。そのため、帯電ローラ2の周方向の電気抵抗分布に応じて、画像形成時(感光体を帯電させるとき)に帯電ローラ2に流れる電流とは逆方向の電流を帯電ローラ2に流すことができる。これにより、帯電ローラ2の周方向の電気抵抗むらを軽減することが可能となる。
【0061】
尚、本実施例では、S105において、帯電ローラ2の回転数は15rpmであり、抵抗補正バイアスを1分間印加して抵抗補正動作を終える。但し、抵抗補正動作における印加電圧、回転数、回転時間などは、帯電ローラ2の性質などによって適宜決定することができる。
【0062】
又、抵抗補正バイアスの印加パターンの決定方法は、本実施例のものに限定されるものではない。帯電ローラ2の周方向の電気抵抗むらにおける電気抵抗の大小に合わせて、その電気抵抗むらを抑えるような電圧分布の抵抗補正バイアスを、位置検知センサ37A、37Bによって帯電ローラ2の表面位置を合わせながら導電性ローラ31に印加すればよい。
【0063】
CPU51は、S105において抵抗補正動作を終えた後、再び第1、第2のスイッチ35、36の切り替えを行い、当初の回路(抵抗検知動作時の回路)に戻す。
【0064】
そして、S103に戻って、上述と同様にして帯電ローラ2の電気抵抗分布の検知を行う。次に、S104において、上述と同様に抵抗変動ΔRと所定値αとを比較し、前回の抵抗補正動作により抵抗変動ΔRの値が所定値α以下になっている場合には、上述と同様にして抵抗調整モードを終了して画像形成などに戻る(S106、S107)。一方、S104において抵抗変動ΔRが所定値αより大きい状態であれば、再び上述と同様の抵抗補正動作を繰り返す(S105)。
【0065】
図8に示すように、徐々に抵抗変動ΔRの値は減少するため、所定値α以下になったところで抵抗調整モードは終了する。
【0066】
このように、本実施例の画像形成装置100は、感光体1と、電圧が印加されることで感光体1を帯電させる回転可能なローラ状の帯電部材(帯電ローラ)2と、帯電部材2と離接可能に配置された導電部材(導電性ローラ)31と、を有する。又、本実施例の画像形成装置100は、帯電部材2が導電部材31に接触した状態で帯電部材2と導電部材31との間に電流が流れるように帯電部材2と導電部材31との間に電界を形成する電界形成手段(帯電電源)24を有する。又、本実施例の画像形成装置100は、帯電部材2が導電部材31に接触した状態で帯電部材2を回転させる駆動手段(駆動装置)33を有する。そして、本実施例の画像形成装置100は、次の各検知結果から帯電部材2の周方向の電気抵抗分布に係る情報を検知する電気抵抗分布検知手段を有する。先ず、帯電部材2が導電部材31に接触しながら回転している状態で所定の電圧を印加することにより帯電部材2と導電部材31との間に流れる電流値の検知結果である。尚、この電流値の検知結果の代わりに、帯電部材2が導電部材31に接触しながら回転している状態で帯電部材2と導電部材31との間に所定の電流を流すことにより発生する電圧値の検知結果を用いてもよい。次に、上記電流値(又は電圧値)が検知される際に導電部材31と接触している帯電部材2の周方向の位置の検知結果である。又、本実施例の画像形成装置100は、次のようにして電界形成手段24により帯電部材2と導電部材31との間に電界を形成させる抵抗補正手段を有する。即ち、電界形成手段24は、帯電部材2が導電部材31に接触しながら回転している状態で、帯電部材2の周方向の電気抵抗分布に係る情報の検知結果に応じて帯電部材2の周方向の位置に対して調整された電流が流れるように、上記電界を形成させる。本実施例では、CPU51が、電気抵抗分布検知手段及び抵抗補正手段の機能を有する。
【0067】
尚、本実施例では、上記電界形成手段24は、上記電流値又は上記電圧値の検知のための電源を兼ねる。又、本実施例では、上記抵抗補正手段は、電界形成手段24により、感光体1を帯電させる際に帯電部材2に流れる電流とは逆方向の電流が帯電部材2に流れるように、帯電部材2と導電部材31との間に電界を形成させる。特に、本実施例では、抵抗補正手段は、帯電部材2の周方向において電気抵抗がより大きい位置に対しては、次のようにする。即ち、感光体1を帯電させる際に帯電部材2に流れる電流とは逆方向のより大きな電流が帯電部材2に流れるように電界形成手段24により帯電部材2と導電部材31との間に電界を形成させる。一方、抵抗補正手段は、帯電部材2の周方向において電気抵抗がより小さい位置に対しては、次のようにする。即ち、感光体1を帯電させる際に帯電部材2に流れる電流とは逆方向のより小さな電流が帯電部材2に流れるように電界形成手段24により帯電部材2と導電部材31との間に電界を形成させる。又、特に、本実施例では、電界形成手段24は、上記調整された電流が流れるように帯電部材2と導電部材31との間に電界を形成する際に、導電部材31に、感光体1を帯電させる際に帯電部材2に印加される電圧と同極性の直流電圧を印加する。又、本実施例では、電界形成手段24は、感光体1を帯電させる際に帯電部材2に電圧を印加する電源を兼ねる。
【0068】
以上、本実施例の制御によれば、帯電ローラ2の周方向の電気抵抗むらによる画像むらなどの画像不良を抑制し、良質な画像を形成することが可能となる。
【0069】
実施例2
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は実施例1のものと同じである。従って、実施例1の画像形成装置のものと同一又はそれに相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0070】
本実施例では、画像形成時に負極性の直流電圧を(交流電圧を重畳しながら)帯電ローラ2に対して印加している帯電電源24が、正極性の直流電圧を印加できるようにする。即ち、本実施例では、帯電電源24は、正極性及び負極性の直流電圧を切り替えて出力する直流電源部と、交流電圧を出力する交流電源部とを有する。このように、本実施例では、電界形成手段24は、電気抵抗分布に応じて調整された電流が流れるように帯電部材2と導電部材31との間に電界を形成する際に、帯電部材2に、感光体1を帯電させる際に帯電部材2に印加される電圧と逆極性の直流電圧を印加する。これにより、本実施例では、実施例1における帯電電源24に繋がっているスイッチ回路を省略でき、回路の単純化や制御時間短縮が可能となる。
【0071】
図9は、本実施例における帯電ローラ2の周囲の構成をより詳しく示す模式図である。
【0072】
図9に示すように、実施例1と同様、感光体1と帯電ローラ2は、離間機構32によって接触、離間が可能とされている。又、本実施例では、帯電ローラ2は、駆動手段としての駆動装置33としてのモータに対して、ベルトとギアによって連結されている。これにより、本実施例では、帯電ローラ2は、駆動を受けることが可能である。
【0073】
又、実施例1と同様に、帯電ローラ2が感光体1から離間した時に帯電ローラ2と接触するように、導電部材としての回転可能な導電性ローラ31が配置されている。帯電ローラ2が感光体1から離間したときに、帯電ローラ2が導電性ローラ31と接触した状態で、駆動装置33が帯電ローラ2を駆動すると、導電性ローラ31は帯電ローラ2に従動して回転する。尚、駆動装置33の構成は、本実施例のものに限定されるものではなく、帯電ローラ2を駆動することができればよい。実施例1の場合と同様に、導電性ローラ31が回転駆動され、帯電ローラ2は導電性ローラ31に従動して回転する構成であってもよい。本実施例では、導電性ローラ31は直に接地されている。
【0074】
尚、帯電電源24は、画像形成時には負極性の直流電圧を(交流電圧を重畳しながら)帯電ローラ2に印加している電源であり、本実施例では帯電ローラ2にのみ電圧を印加できるようになっている。
【0075】
図10は、本実施例における抵抗調整モードにおける抵抗検知動作及び抵抗補正動作を実行するための概略制御態様を示すブロック図である。
【0076】
本実施例における制御態様は、実施例1におけるものと概略同様であり、主に第1、第2のスイッチ35、26が設けられていないことが異なる。即ち、画像形成装置100は、記憶媒体53に記憶された各種プログラムに従って画像形成装置100の全体を制御するCPU51を有する。又、画像形成装置100は、制御プログラムやエラー処理プログラムに従って画像形成装置100を動作させるためのプログラムなどを格納している記憶媒体53を有する。本実施例における画像形成装置100の動作は、全てこのプログラムによる動作である。記憶媒体53には、後述するように帯電ローラ2と導電性ローラ31との間に流れる電流を検知する検知回路52で検知された電流などを記録する抵抗波形記憶部54がある。検知回路52、記憶媒体53、帯電電源24、駆動装置33、位置検知センサ37A、37Bなどは、CPU51に制御可能なように接続されている。CPU51、検知回路52、記憶媒体53(抵抗波形記憶部54を含む)などによって、抵抗調整モードにおける抵抗検知動作及び抵抗補正動作を制御する制御部50が構成される。尚、便宜上、図4において帯電電源24と検知回路52は個別の制御ブロックとして示されているが、前述のように、本実施例では、帯電ローラ2と導電性ローラ31との間に流れる電流を検知する検知回路52は、帯電電源24に内蔵されている。
【0077】
図11は、本実施例における、帯電ローラ2の周方向の電気抵抗分布を検知する抵抗検知動作と、必要な場合に行う帯電ローラ2の周方向の電気抵抗を補正する抵抗補正動作とを含む抵抗調整モードの動作概略を示すフローチャートである。本実施例では、この抵抗調整モードは、非画像形成時に実行される。
【0078】
非画像形成時において、CPU51は、抵抗調整モードを実行すべきか否か、即ち、帯電ローラ2の周方向の電気抵抗分布(電気抵抗むら)を検知する必要があるタイミングになった否かを判断する(S201)。本実施例では、CPU51は、画像の出力枚数Nを記憶媒体53内に記録しており、A4換算で1000枚の出力ごとに、抵抗調整モードの実行が必要と判断し、帯電ローラ2の周方向の電気抵抗分布を検知する抵抗検知動作に入る。
【0079】
尚、抵抗調整モードを実行するか否かの判断は、出力枚数以外にも、帯電時間(帯電ローラに対する電圧印加時間)に相関する任意のパラメータに基づいて行うことができる。例えば、該パラメータとしては、帯電時間、帯電ローラの回転数(回転時間)、感光体の回転数(回転時間)などが挙げられる。又、画像形成装置100の起動時などの、任意のトリガーによって抵抗調整モードを実行するように設定することもできる。
【0080】
S201において出力枚数Nが所定枚数に達していない場合には、このフローは終了し、画像形成装置100はそのまま画像形成などに戻る。
【0081】
S201において出力枚数Nが所定枚数(本実施例では1000枚)に達した場合には、S202において、次のような動作が行われる。即ち、先ず、CPU51は、帯電ローラ2を離間機構32によって感光体1から離間させる(S202)。次に、CPU51は、帯電電源24から帯電ローラ2へ所定の電圧(本実施例では−200V)を印加させる。又、CPU51は、駆動装置33を動作させて帯電ローラ2を回転させる(本実施例では回転数は15rpm)。このとき、CPU51は、帯電ローラ2に取り付けられた回転方向の位置認識タグ37Cを位置検知センサ37A、37Bによって検知することで、帯電ローラ2の周方向の位置を検知する。そして、予め決められた周方向位置(基準位置)から一周における帯電ローラ2に対して流れる電流を、検知回路52によって検知する(本実施例ではサンプリング周波数1kHz)。
【0082】
次に、CPU51は、取得した電流値と印加した電圧値から、帯電ローラ2の周方向における1周分の電気抵抗Rの分布に係る情報を算出する(S203)。算出された電気抵抗分布の一例は、図6に示す実施例1の場合のものと同様である。
【0083】
ここで、検知した電気抵抗Rの変動の大小を表す指標(抵抗変動)ΔRとして、本実施例では、最大値Rmaxと最小値Rminの差、即ち、
ΔR=Rmax−Rmin
の値を考える。
【0084】
CPU51は、抵抗変動ΔRを算出し、算出した抵抗変動ΔRと、予め決められた所定値(閾値)αとの大小関係を判断する(S204)。ここで、この所定値αは、出力された画像の画像むら(濃度むら)などの画像不良の観点から許容できる範囲の、帯電ローラ2の周方向の電気抵抗変動の限界値である。
【0085】
S204において抵抗変動ΔRが所定値α以下である場合には、画像不良は発生しないため、抵抗調整モードを終了して画像形成などに戻る。具体的には、帯電ローラ2を再び感光体1に接触させ(S206)、更に出力枚数カウンタNを0にして(S207)、画像形成などに戻る。
【0086】
ここで、本実施例では、所定値αとしては、帯電ローラ2の1周期間の電気抵抗の平均値(平均抵抗値)Raveに対してその1割、即ち、
α=0.1×Rave
と設定した。本実施例では、回転数15rpm、印加電圧200V、押圧力1kg重の条件の下で、帯電ローラ2の平均抵抗値Raveは5.4×105Ωであった。この場合には、所定値αは5.4×104Ωである。但し、帯電ローラ2の性質やその他画像制御の仕様などによって、この所定値(閾値)は変動する。従って、それらの条件に合わせて、所定値αは適宜設定することができる。
【0087】
S204において抵抗変動ΔRが所定値αより大きい場合には、帯電ローラ2の周方向の電気抵抗むらが大きいことを表している。従って、この場合には、帯電ローラ2の周方向の電気抵抗むらを補正する抵抗補正動作を実行する(S205)。
【0088】
ここで、本実施例における抵抗補正動作について説明する。
【0089】
図12は、帯電ローラ2の周方向の電気抵抗分布の検知結果から算出された、帯電ローラ2に印加する抵抗補正バイアスの波形の一例である。尚、図12では、縦軸の上の値ほど正の小さい値である。
【0090】
本実施例では、CPU51は、導電性ローラ31に印加する抵抗補正バイアスの波形を求めるにあたり、帯電ローラ2の周方向の帯電抵抗分布のグラフ形状は変えずに、振幅のみを拡大、縮小した波形を用意する。又、CPU51は、帯電ローラ2上で電気抵抗が大きい方向に最も触れていた位置(Rmaxとなる周方向位置)に対しては、当該位置が導電性ローラ31と接触しているときに帯電ローラに+200Vの電圧を印加するようにする。又、CPU51は、帯電ローラ2上で電気抵抗が小さい方向に最も触れていた位置(Rminとなる周方向位置)に対しては、当該位置が導電性ローラ31と接触しているときに帯電ローラ2に+1000Vの電圧を印加するようにする。
【0091】
そして、CPU51は、この波形に基づき、帯電電源24に指示を出し、帯電ローラ2に取り付けられた回転方向の位置認識タグ37Cを位置検知センサ37A、37Bによって検知しながら、帯電ローラ2に電圧を印加する。そのため、帯電ローラ2の周方向の電気抵抗分布に応じて、画像形成時(感光体を帯電させるとき)に帯電ローラ2に流れる電流とは逆方向の電流を帯電ローラ2に流すことができる。これにより、帯電ローラ2の周方向の電気抵抗むらを軽減することが可能となる。
【0092】
尚、本実施例では、S205において、帯電ローラ2の回転数は15rpmであり、抵抗補正バイアスを1分間印加して抵抗補正動作を終える。但し、抵抗補正動作における印加電圧、回転数、回転時間などは、帯電ローラ2の性質などによって適宜決定することができる。
【0093】
又、抵抗補正バイアスの印加パターンの決定方法は、本実施例のものに限定されるものではない。帯電ローラ2の周方向の電気抵抗むらにおける電気抵抗の大小に合わせて、その電気抵抗むらを抑えるような電圧分布の抵抗補正バイアスを、位置検知センサ37A、37Bによって帯電ローラ2の表面位置を合わせながら帯電ローラ2に印加すればよい。
【0094】
CPU51は、S205において抵抗補正動作を終えた後、S203に戻って、上述と同様にして帯電ローラ2の電気抵抗分布の検知を行う。次に、S204において、上述と同様に抵抗変動ΔRと所定値αとを比較し、前回の抵抗補正動作により抵抗変動ΔRの値が所定値α以下になっている場合には、上述と同様にして抵抗調整モードを終了して画像形成などに戻る(S206、S207)。一方、S204において抵抗変動ΔRが所定値αより大きい状態であれば、再び上述と同様の抵抗補正動作を繰り返す(S205)。
【0095】
以上、本実施例の制御によっても、帯電ローラ2の周方向の電気抵抗むらによる画像むらなどの画像不良を抑制し、良質な画像を形成することが可能となる。又、本実施例によれば、回路の単純化や制御時間の短縮が可能となる。
【0096】
その他
本発明を具体的な実施例に則して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
【0097】
例えば、上述の実施例では、帯電電源が、抵抗検知動作及び抵抗補正動作時に電圧を印加するものとして説明した。しかし、帯電電源と、抵抗検知動作及び抵抗補正動作時に電圧を印加する電源とが別個の電源とされていてもよい。この場合も、上述の開示に従って適宜スイッチなどを設けて回路を構成すればよいことは、当業者にとって自明である。
【0098】
又、上述の実施例では、抵抗検知動作において電圧を印加する電源と、抵抗補正動作時に電圧を印加する電源とが同じ(上述の実施例ではいずれも帯電電源)であるものとして説明した。しかし、所望により、抵抗検知動作において電圧を印加する電源と、抵抗補正動作時に電圧を印加する電源とが異なっていてもよい。この場合も、上述の開示に従って適宜スイッチなどを設けて回路を構成すればよいことは、当業者にとって自明である。
【0099】
又、上述の実施例では、帯電方式として、帯電ローラに直流電圧と交流電圧とを重畳した振動電圧を印加して感光体を帯電させるAC帯電方式を採用するものとして説明した。しかし、これに限定されるものではなく、帯電方式として、帯電ローラに直流電圧のみを印加して感光体を帯電させるDC帯電方式を採用する場合にも、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0100】
1 感光体
2 帯電ローラ
24 帯電電源
31 導電性ローラ
32 離間機構
33 駆動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体と、
電圧が印加されることで前記感光体を帯電させる回転可能なローラ状の帯電部材と、
前記帯電部材と離接可能に配置された導電部材と、
前記帯電部材が前記導電部材に接触した状態で前記帯電部材と前記導電部材との間に電流が流れるように前記帯電部材と前記導電部材との間に電界を形成する電界形成手段と、
前記帯電部材が前記導電部材に接触した状態で前記帯電部材を回転させる駆動手段と、
前記帯電部材が前記導電部材に接触しながら回転している状態で所定の電圧を印加することにより前記帯電部材と前記導電部材との間に流れる電流値の検知結果、又は前記帯電部材が前記導電部材に接触しながら回転している状態で前記帯電部材と前記導電部材との間に所定の電流を流すことにより発生する電圧値の検知結果と、前記電流値又は前記電圧値が検知される際に前記導電部材と接触している前記帯電部材の周方向の位置の検知結果とから、前記帯電部材の周方向の電気抵抗分布に係る情報を検知する電気抵抗分布検知手段と、
前記帯電部材が前記導電部材に接触しながら回転している状態で、前記帯電部材の周方向の電気抵抗分布に係る情報の検知結果に応じて前記帯電部材の周方向の位置に対して調整された電流が流れるように、前記電界形成手段により前記帯電部材と前記導電部材との間に電界を形成させる抵抗補正手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記電界形成手段は、前記電流値又は前記電圧値の検知のための電源を兼ねることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記抵抗補正手段は、前記電界形成手段により、前記感光体を帯電させる際に前記帯電部材に流れる電流とは逆方向の電流が前記帯電部材に流れるように、前記帯電部材と前記導電部材との間に電界を形成させることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記抵抗補正手段は、前記帯電部材の周方向において電気抵抗がより大きい位置に対しては、前記感光体を帯電させる際に前記帯電部材に流れる電流とは逆方向のより大きな電流が前記帯電部材に流れるように前記電界形成手段により前記帯電部材と前記導電部材との間に電界を形成させ、前記帯電部材の周方向において電気抵抗がより小さい位置に対しては、前記感光体を帯電させる際に前記帯電部材に流れる電流とは逆方向のより小さな電流が前記帯電部材に流れるように前記電界形成手段により前記帯電部材と前記導電部材との間に電界を形成させることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記電界形成手段は、前記調整された電流が流れるように前記帯電部材と前記導電部材との間に電界を形成する際に、前記導電部材に、前記感光体を帯電させる際に前記帯電部材に印加される電圧と同極性の直流電圧を印加することを特徴とする請求項3又は4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記電界形成手段は、前記調整された電流が流れるように前記帯電部材と前記導電部材との間に電界を形成する際に、前記帯電部材に、前記感光体を帯電させる際に前記帯電部材に印加される電圧と逆極性の直流電圧を印加することを特徴とする請求項3又は4に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記電界形成手段は、前記感光体を帯電させる際に前記帯電部材に電圧を印加する電源を兼ねることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−24940(P2013−24940A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157051(P2011−157051)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】