説明

画像形成装置

【課題】 ベルトの搬送速度に関わらず、適切にエッジプロファイルデータを用いたベルトの蛇行補正制御を行うことができる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】 画像形成装置1は、中間転写ベルト31の搬送方向に直交する方向の中間転写ベルト31の位置を検知するためのエッジセンサ60と、中間転写ベルト31の端部の1周分の形状データであるエッジプロファイルデータPを記憶するROM101を有する。CPU100は、エッジセンサ60の検知結果であるエッジデータE及びエッジプロファイルデータPに基づいて、ステアリングローラ32の傾きを制御することにより蛇行制御を実行する。また、CPU100は、中間転写ベルト31の搬送速度の変化に応じて、エッジセンサ60の検知周期を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式による帯電、露光、現像、転写の工程を経て、記録紙にトナー像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像形成装置には、中間転写ベルト、定着ベルト、記録紙搬送ベルトといった様々な種類のベルトが設けられていた。
【0003】
これらのベルトは、複数のローラに懸架されて回転駆動されるが、ベルトの回転過程において、ベルトがその幅方向の一端側または他端側に寄り移動(以下、蛇行と記す)する現象が発生する傾向がある。ベルトの蛇行によって、ベルトを懸架しているローラからベルトが脱落したり、ベルトの端部が破損したりしてしまうおそれがある。
【0004】
そこで、ベルトの幅方向のエッジ(端部)の位置を検出するエッジセンサを有し、一定時間間隔毎のエッジセンサの検出結果に基づいて、ベルトを支持するステアリングローラの傾き動作を制御してベルトの蛇行を補正するものがあった(例えば、特許文献1参照)。このエッジセンサは、ベルトの一端に接触する接触子と、当該接触子の位置変動を検出する変位センサを有し、ベルトの蛇行を連続的に検出する。
【0005】
また、ベルトのエッジ形状の影響を受けずに高精度な蛇行補正を行うべく、ベルト1周分のエッジ形状データをエッジプロファイルデータとして予めメモリに記憶しているものがあった(例えば、特許文献2参照)。このエッジプロファイルデータを用いて、ベルトのエッジの形状に基づくベルトのエッジの位置変動をキャンセルすることにより、ベルト蛇行補正を高精度に行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−295948号公報
【特許文献2】特開2010−145655号公報(段落0046〜0049)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2記載の発明では、ベルトのホームポジションを基準としたエッジプロファイルデータの位置とエッジセンサの検知位置とを合わせるために、ベルトの速度を予め定められた目標速度にした状態でベルトのエッジを検知しないといけない。
【0008】
図10に示されるように、ベルト速度=目標速度の場合は、エッジプロファイルデータの位置とエッジセンサの検知位置とを合わせられるものの、ベルト速度<目標速度の場合は、エッジプロファイルデータの位置とエッジセンサの検知位置とがずれてしまう。これは、ベルト速度<目標速度の場合に一定時間間隔でベルトのエッジ位置を検出しようとすると、ベルト速度=目標速度の場合よりも、当該一定時間の経過におけるベルトの移動距離が短くなってしまうからである。なお、ベルト速度>目標速度の場合も同様に、ベルトのホームポジションを基準としたエッジプロファイルデータの位置とエッジセンサの検知位置とがずれてしまう。
【0009】
したがって、ベルト速度≠目標速度の場合にエッジプロファイルデータを用いた蛇行補正制御を行うと、ベルトのエッジの形状に基づくベルトの位置変動をキャンセルすることができない。この状態で画像を形成しようとすると、高精度な蛇行補正ができないことから、画像転写位置が各色でずれることによって、色ずれ画像が生じてしまう。
【0010】
そこで、本発明は、ベルトの搬送速度に関わらず、適切にエッジプロファイルデータを用いたベルトの蛇行補正制御を行うことができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る画像形成装置は、トナー像が形成される像担持体と、前記像担持体に形成されたトナー像を記録紙に転写するために用いられるベルトと、前記ベルトを回転可能に支持するステアリングローラと、前記ステアリングローラの軸を傾ける傾斜手段と、前記ベルトの搬送方向に直交する方向の前記ベルトの位置を検知するための検知手段と、前記ベルトの端部の1周分の形状データであるエッジプロファイルデータを記憶する記憶手段と、前記検知手段の検知結果及び前記エッジプロファイルデータに基づいて、前記傾斜手段による前記ステアリングローラの傾きを制御することにより、蛇行制御を実行する制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記ベルトの搬送速度の変化に応じて、前記検知手段の検知周期を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ベルトの搬送速度に関わらず、適切にエッジプロファイルデータを用いたベルトの蛇行補正制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】画像形成装置の概略断面図である。
【図2】中間転写ベルトの蛇行補正制御を説明するための概略構成を示す図である。
【図3】中間転写ベルトの端部の不均一性の例を示す図である。
【図4】画像形成装置の制御ブロック図である。
【図5】第1の実施形態における、エッジセンサの検知周期の補正処理を説明する図である。
【図6】第1の実施形態における、エッジセンサの検知周期の補正処理を示すフローチャートである。
【図7】蛇行補正制御を説明するフローチャートである。
【図8】第2の実施形態における、エッジセンサの検知周期の切り替えタイミングを示す図である。
【図9】第2の実施形態における、エッジセンサの検知周期の補正処理を示すフローチャートである。
【図10】本願発明の課題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、画像形成装置の概略断面図である。
【0015】
本実施形態の画像形成装置1は、複数の画像形成部を並列に配置し、且つ中間転写方式を採用したカラー電子写真装置である。画像形成装置1は、記録画像信号出力部1Rと、画像出力部1Pとを有する。画像出力部1Pは、4つ並設された画像形成部10(10a、10b、10c、10d)と、給紙ユニット20と、中間転写ユニット30と、定着ユニット40と、制御ユニット70とを有する。更に、個々のユニットについて詳しく説明する。
【0016】
各画像形成部10a〜10dは同じ構成とされ、各画像形成部10a〜10dでは、円筒形状の電子写真感光体、即ち、感光ドラム11a〜11d(像担持体)が回転自在に軸支され、矢印方向に回転駆動される。感光ドラム11a〜11dの外周面に対向してその回転方向に一次帯電器12a〜12d、露光系13a〜13d、ミラー16a〜16d、現像装置14a〜14d、及びクリーニング装置15a〜15dが配置されている。
【0017】
一次帯電器12a〜12dにおいて感光ドラム11a〜11dの表面に均一な帯電量の電荷を与える。次いで、露光系13a〜13dにより、記録画像信号出力部1Rからの記録画像信号に応じて変調した、例えばレーザービームなどの光線をミラー16a〜16dを介して感光ドラム11a〜11d上に露光することによって、そこに静電潜像を形成する。
【0018】
更に、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックといった4色の現像剤(以下、「トナー」という)は、それぞれ収納した現像装置14a〜14dによって上記静電潜像を顕像化される。顕像化されたトナー像は、一次転写ローラ35a〜35dによって中間転写ユニット30を構成する中間転写ベルト31に転写される。クリーニング装置15a〜15dは、中間転写ベルト31へ転写されずに感光ドラム11a〜11d上に残されたトナーを掻き落としてドラム表面の清掃を行う。
【0019】
二次転写ローラ36は、中間転写ベルト31上のトナー像を記録紙Pに転写する。クリーニング装置50は、中間転写ベルト31の表面をクリーニングする。クリーニング装置50は、中間転写ベルト31上のトナーを除去するためのクリーニングブレードと、廃トナーを収納する廃トナーボックスとを備えている。
【0020】
給紙ユニット20は、カセット21a及び21bと、ピックアップローラ22a、22b及び26と、給紙ローラ対23と、給紙ガイド24と、レジストローラ25a、25bと、手差しトレイ27とを有する。カセット21a、21b、及び手差しトレイ27に収納された記録紙Pは、各ピックアップローラ22a、22b、26により送り出される。送り出された記録紙Pは、給紙ローラ対23によってレジストローラ25a、25bへと搬送される。レジストローラ25a、25bは、各画像形成部の画像形成タイミングに合わせて記録紙Pを二次転写ローラ36へ送り出す。
【0021】
定着ユニット40は、内部にハロゲンヒーターなどの熱源を備えた定着ローラと、そのローラに加圧される加圧ローラ(このローラにも熱源を備える場合もある)とを有する。
【0022】
次に、上記構成の画像形成装置1の動作について説明する。
画像形成動作開始信号が発せられると、先ず、ピックアップローラ22aにより、カセット21aから記録紙Pが一枚ずつ送り出される。そして、給紙ローラ対23によって記録紙Pが給紙ガイド24の間を案内されてレジストローラ25a、25bまで搬送される。その時レジストローラ25a、25bは停止されており、記録紙Pの先端はニップ部に突き当たる。その後、画像形成部が画像の形成を開始するタイミングに合わせてレジストローラ25a、25bは回転を始める。この回転時期は、記録紙Pと画像形成部より中間転写ベルト31上に一次転写されたトナー画像とが二次転写ローラ36において一致するようにそのタイミングが設定されている。
【0023】
一方、画像形成部では、画像形成動作開始信号が発せられると、前述したプロセスにより感光ドラム11d上に形成されたトナー画像が、高電圧が印加された一次転写ローラ35dによって中間転写ベルト31に転写される。転写されたトナー像は、次の一次転写ローラ35cまで搬送される。そこでは各画像形成部間をトナー像が搬送される時間だけ遅延して画像形成が行われており、前画像の上に位置を合わせて、その次のトナー像が転写される。以下も同様の工程が繰り返され、最終的に4色のトナー像が中間転写ベルト31上において転写される。
【0024】
その後、記録紙Pが二次転写ローラ36に進入し、中間転写ベルト31に接触すると、記録紙Pの通過タイミングに合わせて二次転写ローラ36に高電圧が印加される。これにより、中間転写ベルト31上に形成された4色のトナー画像が記録紙Pの表面に転写される。その後、記録紙Pは定着ユニット40へと案内される。そして、定着ユニット40は、記録紙Pに熱及び圧力を加えることによってトナー像を記録紙Pの表面に定着させる。その後、記録紙Pは機外に排出される。
【0025】
図2は、中間転写ベルトの蛇行補正制御を説明するための概略構成を示す図である。
中間転写ベルト31は、駆動ローラ33と、ステアリングローラ32と、二次転写対向ローラ34により回転可能に支持される。そして、駆動ローラ33とステアリングローラ32の間に一次転写平面が形成される。駆動ローラ33は、中間転写ベルト31に駆動を伝達するため、金属ローラの表面に数mm厚のゴムをコーティングしてベルトとのスリップを防ぐように構成されている。
【0026】
ステアリングローラ32は、中間転写ベルト31の回動に従動して回転する。ステアリングローラ32の一方の軸は固定されており、もう一方の軸にステアリングアーム64が連結されている。制御ユニット70は、ステアリングモータ63の駆動を制御し、カム62を回転させる。カム62が回転すると、軸65を中心としてステアリングアーム64が回動する。すなわち、制御ユニット70がカム62の回転位置を制御することで、ステアリングローラ32の傾斜を制御できる。
【0027】
ステアリングローラ32と感光ドラム11aとの間には、エッジセンサ60が配置されている。エッジセンサ60は、中間転写ベルト31の端部の位置を検知して、中間転写ベルト31の蛇行に応じた出力信号(エッジデータ)を出力する。エッジセンサ60は、中間転写ベルト31の端部に当接するフラグ部材の位置に応じた光量を検知する光学式センサであるが、ラインセンサ等、中間転写ベルト31の端部位置を検知できるならばこれらに限られない。
【0028】
中間転写ベルト31の幅方向の端部(エッジ)は、所望の幅になるように製造工程で切断されるため、エッジセンサ60により検出される中間転写ベルト31の端部は、均一ではなく、およそ100μm以内で端部位置が不均一となっている。
【0029】
図3は、中間転写ベルトの端部の不均一性の例を示す図である。
中間転写ベルト31の幅方向(中間転写ベルト31の搬送方向に直交する方向)の端部は、前述のようにその形状にムラがある。図3(a)のようにベルト1周にわたって緩やかなムラになっているものもあれば、図3(b)のように短周期で規則性のないムラになっているものもある。更には、中間転写ベルト31の製造工程において中間転写ベルト31を回転させながらカッターで切断する場合、図3(c)のように1周したときに切断開始位置と切断終了位置とで切断面が一致せずに段差が生じる。このような端部ムラは、エッジセンサ60により検出されるエッジデータEに誤差として含まれてしまう。
【0030】
この問題を解決するために、予め中間転写ベルト31の端部の1周分の形状データであるエッジプロファイルデータPを計測してROM101に保持しておき、エッジセンサ60の検知結果であるエッジデータEから端部ムラによる誤差分を除く制御を行っている。
【0031】
このときに使用されるのが、中間転写ベルト31のホームポジションを示すHPマーク37と、HPマーク37を検知するためのベルトHPセンサ61である。HPマーク37は、中間転写ベルト31の裏面に貼り付けられており、エッジプロファイルデータPと中間転写ベルト31の幅方向の位置とを対応付けるための基準位置となる。ベルトHPセンサ61は、HPマーク37を検出するための反射型光学センサである。
【0032】
また、中間転写ベルト31の搬送速度を間接的に計測するために、コードホイール38とエンコーダセンサ39が駆動ローラ33の軸に取り付けられている。コードホイール38は、1周で20個分の黒いマークが等間隔に印刷されている。これを透過型光学センサであるエンコーダセンサ39で検出する構成になっている。
【0033】
図4は、画像形成装置の制御ブロック図である。
制御ユニット70は、CPU100、ROM101、及びRAM102を有する。CPU100は、画像形成装置1全体を制御する制御回路である。ROM101には、画像形成装置1で実行する各種処理を制御するための制御プログラムが格納されている。RAM102は、CPU100が動作するためのシステムワークメモリであり、また画像データを一時記憶するための画像メモリとしても機能する。操作部67はタッチパネルディスプレイを備え、ユーザからの操作指示を受け付ける。
【0034】
ベルト駆動モータ66は、中間転写ベルト31を回転させる駆動ローラ33を駆動するためのモータである。CPU100は、ベルト駆動モータ66へ流す電流を制御することで、中間転写ベルト31の回転速度を制御する。
【0035】
エッジセンサ60及びベルトHPセンサ61の検出信号はCPU100に伝送され、CPU100に内蔵されたAD変換回路でアナログ信号からデジタル信号に変換されてCPU100で演算処理される。CPU100は、エッジセンサ60から出力されたエッジデータE及びROM101に記憶されたエッジプロファイルデータPに基づき、ステアリングモータ63を制御するためのステアリングデータSを算出する。
【0036】
CPU100は、ステアリングデータSに基づきステアリングモータ63へ流す電流を制御することで、カム62を回転させてステアリングローラ32の傾きを制御する。この点についての詳細は、後述の図7のフローチャートで説明する。
【0037】
エンコーダセンサ39はコードホイール38の印刷マークを検出した信号をCPU100に送信する。エンコーダセンサ39の検出信号は、駆動ローラ33の回転速度に伴って周期が変化するデジタルパルス信号である。CPU100は、エンコーダセンサ39からのデジタルパルス信号の周期を時間カウントして駆動ローラ33の回転速度を検出することで、間接的に中間転写ベルト31の速度検出を行う。
【0038】
次に、中間転写ベルト31の端部位置の検知タイミング制御について説明する。この制御は、エッジセンサ60の検知周期をエンコーダセンサ39の検出信号に基づいて変更する制御である。
【0039】
図5は、第1の実施形態における、エッジセンサの検知周期の補正処理を説明する図である。
上側の波形は、コードホイール38の回転速度変動を示す。前述のように、コードホイール38は、1周で20個分の黒いマークが等間隔に印刷されていることから、駆動ローラ33が1周すると20個のパルス信号がエンコーダセンサ39から発生する。CPU100は、各パルス信号の時間間隔T1、T2、・・・、T20を、タイマーを用いて計測する。また、CPU100は、各パルス信号の時間間隔の平均値AveTを、式(1)を用いて算出する。
AveT=(T1+T2+T3・・・+T20)/20 ・・・(1)
【0040】
ここで計測されたT1〜T20と、算出された平均値AveTは、RAM102に記憶される。平均値AveTを算出するのは、駆動ローラ33あるいはコードホイール38の軸偏芯に伴う回転変動成分をキャンセルするためである。なお、中間転写ベルト31の回転速度が目標速度と一致する場合は、AveT=Tgとなる。
【0041】
次に、CPU100は、式(2)に基づき目標値Tgと実測値の平均値AveTとの差分ΔTを算出する。ここで算出したΔTの分だけ、駆動ローラ33の回転速度がずれていることになる。なお、目標値Tgは、パルス信号の時間間隔の目標値として予め設定された値である。
ΔT=Tg−AveT ・・・(2)
【0042】
次に、CPU100は、式(3)に基づき、エッジセンサ60の検知周期を算出する。ここで、平均値AveTが目標値Tgに等しいときのエッジセンサ60の検知周期をTsnsとし、補正後の検知周期をTsns’としている。この式で示されるように、目標値Tgに対するずれ量(差分)ΔTの割合に応じて、エッジセンサ60の検知周期を補正している。
Tsns’=Tsns(1−ΔT/Tg) ・・・(3)
【0043】
図6は、第1の実施形態における、エッジセンサの検知周期の補正処理を示すフローチャートである。
このフローチャートを実行するためのプログラムは、ROM101に記憶されており、CPU100により読み出されることにより実行される。本フローチャートによる処理は、ジョブの開始指示があった場合など、中間転写ベルト31を駆動して蛇行制御を開始する際に実行される。
【0044】
まず、CPU100は、ベルト駆動モータ66を制御して中間転写ベルト31の駆動を開始する(S600)。そして、CPU100は、中間転写ベルト31の蛇行制御を開始する(S601)。ここで、CPU100は、後述の図7に示される蛇行制御を並行して実行する。
【0045】
次に、CPU100は、エンコーダセンサ39から発生する各パルス信号の時間間隔T1、T2、・・・、T20を、タイマーを用いて計測する(S603)。計測されたT1、T2、・・・、T20の値は、RAM102に記憶される。そして、CPU100は、前述の式(1)に基づいて各パルス信号の時間間隔の平均値AveTを算出する(S604)。
【0046】
次に、CPU100は、前述の式(2)に基づいて目標値Tgと実測値の平均値AveTとの差分ΔTを算出する(S605)。その後、CPU100は、前述の式(3)に基づいてエッジセンサ60の検知周期Tsns’を設定する(S606)。ここで算出された検知周期Tsns’に基づいて、蛇行制御における中間転写ベルト31の端部検知が行われる。
【0047】
次に、CPU100は、ジョブを終了する場合等、蛇行制御を終了するかどうかを判断する(S607)。蛇行制御を終了しないと判断された場合は、前述のステップS603に戻る。蛇行制御を終了すると判断された場合は、CPU100は、ステアリングモータ63の駆動を停止することにより蛇行制御を停止し(S608)、ベルト駆動モータ66を停止することにより中間転写ベルト31の駆動を停止する(S609)。
【0048】
図7は、蛇行補正制御を説明するフローチャートである。
このフローチャートを実行するためのプログラムは、ROM101に記憶されており、CPU100により読み出されることにより実行される。前述したように、ステップS601でこのフローチャートの実行が開始される。
【0049】
まず、CPU100は、ベルトHPセンサ61からベルトHP信号が入力されたかどうかを判断する(S701)。ベルトHP信号は、ベルトHPセンサ61がHPマーク37を検知することにより出力される。ベルトHP信号が入力された場合は、CPU100は、番地Xを1に初期化する(S702)。一方、ベルトHP信号が入力されない場合は、番地Xの初期化は行われない。
【0050】
そして、CPU100は、番地Xに対応するエッジデータEXをエッジセンサ60から取得する(S703)。また、CPU100は、番地Xに対応するエッジプロファイルデータPXをROM101から取得する(S704)。
【0051】
ここで得られたエッジデータEX及びエッジプロファイルデータPXに基づいて、CPU100は、ステアリングデータSXを算出する(S705)。具体的には、CPU100は、中間転写ベルト31の変位HXをHX=PX−EXの計算式で求めた上で、ステアリングデータSXをSX=α・HXの計算式で求める。αは、予め設定された係数である。
【0052】
そして、CPU100は、算出したステアリングデータSXに基づき、ステアリングモータ63を駆動する(S706)。これに応じて、ステアリングモータ63が制御されて、中間転写ベルト31の変位Hが0になる方向にステアリングアーム64が動き、ステアリングローラ32が傾く。
【0053】
その後、CPU100は、前述のステップS608により、蛇行補正制御を停止するかどうかを判断する(S707)。蛇行補正制御を停止しない場合は、CPU100は、番地Xに1を加算する(S708)。
【0054】
そして、CPU100は、前回のエッジデータの検知から、前述のステップS606で算出された検知周期Tsns’が経過するまで待機する(S709)。これは、検知周期Tsns’ごとにエッジデータのサンプリングを行うためである。検知周期Tsns’の経過後、前述のステップS701に戻る。一方、ステップS707で蛇行補正制御を停止する場合は、CPU100は、本制御フローを終了する。
【0055】
以上で説明したように、本実施形態によれば、中間転写ベルト31の搬送速度に応じて検知周期Tsns’を補正するので、中間転写ベルト31の搬送速度に関わらず、適切にエッジプロファイルデータを用いた蛇行補正制御を行うことができる。
【0056】
(第2の実施形態)
第2の実施形態については、第1の実施形態と異なる部分についてのみ説明し、第1の実施形態と同様の構成および制御内容については説明を省略する。第1の実施形態では、エンコーダセンサ39を用いて駆動ローラ33の回転速度を検出し、検出した回転速度に応じてベルト端部位置の検知周期を補正していた。これに対して、第2の実施形態では、エンコーダセンサ39を用いずに、中間転写ベルト31の搬送開始からの経過時間に応じて、段階的にエッジセンサ60の検知周期を切り替える制御が実行される。
【0057】
以下、本実施形態におけるエッジセンサ60の検知周期の切り替え制御について説明する。CPU100は、中間転写ベルト31の搬送開始からの経過時間をタイマーで計測し、計測した経過時間に応じて検知周期を4段階切り替える機能を有している。4つの異なる検知周期は、予めRAM102に記憶されている。
【0058】
図8は、第2の実施形態における、エッジセンサの検知周期の切り替えタイミングを示す図である。
中間転写ベルト31の搬送及び蛇行制御が開始されてから時間が経過するにつれ、図8(a)に示されるように中間転写ベルト31の搬送速度が目標速度Vまで上昇する。経過時間がt1のときには速度V1、経過時間がt2のときには速度V2となり、経過時間がt3のときには目標速度Vに到達している。
【0059】
また、図8(b)に示されるように、中間転写ベルト31の搬送及び蛇行制御が開始されてからの経過時間がt1までの間は、Tv1周期で中間転写ベルト31の端部位置を検知する。t1からt2の期間はTv2周期、t2からt3の期間はTv3周期、t3時間以降はTv周期へと切り替える。
【0060】
経過時間t1、t2、及びt3と、検知周期Tv1、Tv2、及びTv3は中間転写ベルト31の搬送速度が目標速度に達するまでの速度上昇の度合いに基づき、予め検討によって決定される。検知周期Tvは、中間転写ベルト31の搬送速度が目標速度Vで動作しているときに、中間転写ベルト31が1周するのに要する時間を等分割した数値としている。本実施形態では、目標速度Vで中間転写ベルト31が1周するのに要する時間が3secであり、30分割してTv=100msec周期としている。
【0061】
なお、本実施形態では、t1=1sec、t2=2sec、及びt3=3secに設定されている。また、Tv1=400msec、Tv2=300msec、及びTv3=200msecに設定されている。
【0062】
図9は、第2の実施形態における、エッジセンサの検知周期の補正処理を示すフローチャートである。
このフローチャートを実行するためのプログラムは、ROM101に記憶されており、CPU100により読み出されることにより実行される。本フローチャートによる処理は、ジョブの開始指示があった場合など、中間転写ベルト31を駆動して蛇行制御を開始する際に実行される。
【0063】
まず、CPU100は、ベルト駆動モータ66を制御して中間転写ベルト31の駆動を開始する(S900)。そして、CPU100は、中間転写ベルト31の蛇行制御を開始する(S901)。ここで、CPU100は、前述の図7に示される蛇行制御を並行して実行する。
【0064】
次に、CPU100は、エッジセンサ60の検知周期をTv1(400msec)に設定する(S902)。その後、CPU100は、中間転写ベルト31の駆動を開始してからの経過時間がt1(1sec)経過するまで待つ(S903)。
【0065】
次に、CPU100は、エッジセンサ60の検知周期をTv2(300msec)に設定する(S904)。その後、CPU100は、中間転写ベルト31の駆動を開始してからの経過時間がt2(2sec)経過するまで待つ(S905)。
【0066】
次に、CPU100は、エッジセンサ60の検知周期をTv3(200msec)に設定する(S906)。その後、CPU100は、中間転写ベルト31の駆動を開始してからの経過時間がt3(3sec)経過するまで待つ(S907)。
【0067】
次に、CPU100は、エッジセンサ60の検知周期をTv(100msec)に設定する(S908)。この時点で、中間転写ベルト31の搬送速度は目標速度に達しているので、これ以降の検知周期はTvのままである。
【0068】
次に、CPU100は、ジョブを終了する場合等、蛇行制御を終了するまで待つ(S909)。蛇行制御を終了すると判断された場合は、CPU100は、ステアリングモータ63の駆動を停止することにより蛇行制御を停止し(S910)、ベルト駆動モータ66を停止することにより中間転写ベルト31の駆動を停止する(S911)。
【0069】
なお、図9のフローチャートで設定されるエッジセンサ60の検知周期Tv、Tv1、Tv2、Tv3は、図7のステップS709における検知周期Tsns’として使用される。
【0070】
第1の実施形態と第2の実施形態の効果の違いについて簡単に説明する。第1の実施形態では、中間転写ベルト31の搬送速度に応じた端部位置の検知周期の制御を行うため、中間転写ベルト31の搬送開始時のみならず、中間転写ベルト31の突発的な速度変動に対しても対応することができる。
【0071】
一方、第2の実施形態は、中間転写ベルト31の突発的なベルト速度変動には対応できないが、駆動ローラ33の回転速度を検出するエンコーダセンサ39を具備していない装置においても適用可能である。
【0072】
なお、本実施形態においては、中間転写ベルト31の蛇行制御を例に挙げて説明したが、他のベルトに対して本発明の蛇行制御を行っても構わない。例えば、複数の感光ドラム上のトナー像を、中間転写ベルトを介さず直接記録紙に転写させるよう記録紙を搬送する搬送ベルトについて、本発明を適用しても構わない。
【符号の説明】
【0073】
1 画像形成装置
11 感光ドラム(像担持体)
31 中間転写ベルト(ベルト)
32 ステアリングローラ
39 エンコーダセンサ(速度検出手段)
60 エッジセンサ(検知手段)
61 HPセンサ
62 カム(傾斜手段)
63 ステアリングモータ
100 CPU(制御手段)
102 RAM(記憶手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー像が形成される像担持体と、
前記像担持体に形成されたトナー像を記録紙に転写するために用いられるベルトと、
前記ベルトを回転可能に支持するステアリングローラと、
前記ステアリングローラの軸を傾ける傾斜手段と、
前記ベルトの搬送方向に直交する方向の前記ベルトの位置を検知するための検知手段と、
前記ベルトの端部の1周分の形状データであるエッジプロファイルデータを記憶する記憶手段と、
前記検知手段の検知結果及び前記エッジプロファイルデータに基づいて、前記傾斜手段による前記ステアリングローラの傾きを制御することにより、蛇行制御を実行する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記ベルトの搬送速度の変化に応じて、前記検知手段の検知周期を設定することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記ベルトの搬送速度を検出するための速度検出手段を更に有し、
前記制御手段は、前記速度検出手段により検出された前記ベルトの搬送速度に基づいて、前記検知手段の検知周期を設定することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ベルトの搬送開始からの経過時間を計測する計測手段を更に有し、
前記制御手段は、前記計測手段により計測された前記経過時間が長くなる程、前記検知手段の検知周期を短く設定することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記ベルトは、前記像担持体からトナー像が転写される中間転写ベルト、及び前記像担持体からトナー像を直接記録紙に転写させるよう記録紙を搬送する搬送ベルトのいずれかであることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−29630(P2013−29630A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164993(P2011−164993)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】