画像形成装置
【課題】 透明トナーを一部に形成してグロスマークを形成するモードにおいても、透明トナーの劣化を抑制するために透明トナーを形成すべき領域以外の領域に透明トナーを吐き出すと、光沢差が小さくなりグロスマークが視認しづらくなってしまう。
【解決手段】 記録材の指定された領域に透明トナーを形成する場合には、前記取得手段によって取得された記録材へ形成する透明トナーの量が所定量未満である場合にも、記録材の前記指定された領域を除く画像形成可能な領域への透明トナーの形成を行わないように制御する制御手段。
【解決手段】 記録材の指定された領域に透明トナーを形成する場合には、前記取得手段によって取得された記録材へ形成する透明トナーの量が所定量未満である場合にも、記録材の前記指定された領域を除く画像形成可能な領域への透明トナーの形成を行わないように制御する制御手段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置に関するものである。とりわけ、透明トナーを用いて画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置において、低い印字率(トナー消費量の少ない)の画像を出力する割合が多いと、現像装置内にトナーが滞留して劣化する。具体的には、現像スリーブにトナー層を形成するための現像ブレードとトナーが長期間摺擦され、トナーに外添された外添剤が剥れたり、外添剤がトナーの表面に埋め込まれたりする。このように外添剤がトナー表面から剥れたり表面に埋め込まれたりすると、トナーの帯電性能や流動性が悪化(以降、トナーが劣化すると呼ぶ)する。トナーの帯電性や流動性が悪化すると、トナー飛散や画像カブリが発生するため好ましくない。
【0003】
このような問題に対し、特許文献1では、劣化したトナーの割合が多くなった場合に、現像装置からトナーを感光体上に形成(吐き出し)することで現像装置内に滞留したトナーをリフレッシュしていた。
【0004】
具体的には、現像スリーブが所定時間駆動されるごとに、所定時間で消費されたトナーの量を計算し、その結果が所定値より低い場合にトナーの劣化が進行し、現像装置内のトナーを感光体へ吐き出し、記録紙に転写することなくクリーナで回収する。さらに、吐き出したトナー(劣化トナー)に対応する量のトナー(新しいトナー)を現像装置へ補給し、現像装置内のトナーの滞留時間が長くなりすぎないようしていた。
【0005】
同様に、特許文献2には、画像形成ごとに使用されるトナー量を指標する値(例えば画像形成毎のビデオカウント値)に基づき現像装置内のトナーをリフレッシュする方法が開示されている。具体的には、ビデオカウント値が所定の設定された閾値よりも小さい場合にその差分を算出し、その算出された差分を積算した積算値が所定値に達したときに、トナーを現像装置から吐き出してリフレッシュするという方法が提案されている。
【0006】
また近年、イエロー、マゼンタなどの有色トナーに加えて、光沢度を調整する透明トナーを用いる画像形成装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−263027号公報
【特許文献2】特開2006−023327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
透明トナーは銀塩写真のような光沢度を画像に与えるために用紙の画像形成可能な全域に形成する用途や、偽造防止やアイキャッチを目的として透明トナーを局所的に形成する用途(グロスマーク、ウォーターマーク)が知られている。
【0009】
このように多様な用途で透明トナーは用いられる。そのため、用途によって消費される透明トナーの量が変動してしまう。とりわけ、記録材の一部に透明トナーを形成してグロスマークを形成するモードや、透明トナーを用いで有色トナーのみで画像を形成するモードにおいて、透明トナーの消費量は有色トナーの消費量よりも少なくなる。
【0010】
つまり、透明トナーの消費量が有色トナーの消費量よりも少ないと、有色トナーと比べて透明トナーが劣化しやすくなる。そのため、透明トナーの劣化が有色トナーの劣化より進行しやすい状況において、現像装置から透明トナーが頻繁に吐き出されるためダウンタイムが発生し、生産性が低下してしまう。
【0011】
このような課題に対して、透明トナーの劣化を抑制して生産性の低下を最小限に抑えるために、連続画像形成中の記録材へ透明トナーを形成することを発明者が考案した。
【0012】
しかしながら、透明トナーを一部に形成してグロスマークを形成するモードにおいても、透明トナーの劣化を抑制するために透明トナーを形成すべき領域以外の領域に透明トナーを吐き出すと、光沢差が小さくなりグロスマークが視認しづらくなってしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、本発明の画像形成装置は「有色トナーと透明トナーを用いて記録材上に画像を形成する画像形成部と、記録材に形成する透明トナーの量に関する情報を取得する取得手段と、を有し、前記取得手段によって取得された記録材へ形成する透明トナーの量が所定量より少ない場合、前記取得手段で取得された透明トナーの量よりも多い透明トナーを記録材へ形成するモードを実行可能な画像形成装置であって、記録材の指定された領域に透明トナーを形成する場合には、前記取得手段によって取得された記録材へ形成する透明トナーの量が所定量未満である場合にも、記録材の前記指定された領域を除く画像形成可能な領域への透明トナーの形成を行わないように制御する制御手段」を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
透明トナーの劣化を抑制するためのトナー吐き出しに要するダウンタイムを抑えつつも、光沢差により視認できる図形を作成するモードが選択された場合において光沢差が小さくならないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施例に係る画像形成装置の概略図である。
【図2】本実施例に係る画像形成装置に備えられた現像装置の概略図である。
【図3】本実施例に係る画像形成装置の画像処理ユニットの構成を示すブロック図である。
【図4】有色トナー吐き出しの実行判断に関するフローチャートである。
【図5】有色トナー吐き出しシーケンス(ドラム)に関するフローチャートである。
【図6】透明トナー吐き出しの実行判断に関するフローチャートである。
【図7】透明トナー吐き出しシーケンス(記録材)に関するフローチャートである。
【図8】透明トナー吐き出しシーケンス(ドラム)に関するフローチャートである。
【図9】透明トナーのトナー載り量によるグロス変化を説明するためのグラフである。
【図10】PCや装置本体のタッチパネルに表示される画面に関する説明図である。
【図11】劣化透明トナーの記録材へ吐き出し実行制御に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施例1)
以下に本発明による第1の実施例となる画像形成装置について詳しく説明する。なお、本実施例において、光沢度(グロス)の測定は、日本電色工業株式会社製ハンディ型光沢計(PG−1M)の60度グロス測定(JISZ8741鏡面光沢度−測定方法に準拠)モードで測定したものである。
【0017】
§1.{画像形成装置の概要}
以下に本実施例の画像形成装置について、項目毎に説明する。
【0018】
■(画像形成装置の概略構成)
図1は本実施例の画像形成装置100の概略構成を説明するための図である。画像形成装置は像担持体としての感光ドラム1Y〜1Tを備えている。そして、各感光ドラムの周りに配置されたトナー像を記録材へ形成するための要素をまとめて、画像形成ステーションと呼ぶ。各画像形成ステーションの下方には、中間転写体としての中間転写ベルト7が配置され、中間転写ベルトは張架するローラ7a、7b、7cに張架される。そして、中間転写ベルトは図1中の矢印の方向に走行し、各画像形成ステーションの感光体上に形成されたトナー像を記録材へと担持搬送する。
【0019】
画像形成ステーションについて、有色画像形成部としてのイエローステーションYを例に挙げて簡単に説明する。本実施例では、感光体はコロナ帯電器2によって帯電される。帯電された感光ドラム1は露光手段としてのレーザスキャナ3から照射されるレーザによって、感光体上に静電像が形成される。感光体上の静電像は現像器4に収容されるトナー(ここではイエロートナー)によって現像される。
【0020】
各画像形成ステーションで形成されたトナー像は、一次転写手段としての転写ブレード5Y〜5Tによって中間転写ベルト7上に転写される。中間転写ベルト7上に形成された5色(YMCKT)のトナー像は、ローラ7cと対向して配置された二次転写手段としての二次転写ローラ8によって記録紙Pに転写される。記録紙Pに転写されずに中間転写ベルト7に残った転写残トナーは、中間転写ベルトクリーナー7dによって除去される。そして、記録材としての記録紙P上に転写されたトナーは、定着装置9によって加圧されながら加熱溶融されて記録紙に定着される。また、一次転写後に感光ドラム1Y〜1T上に残った転写残トナーは、清掃部材としてのクリーニングブレード6Y〜6Tにより除去される。なお、現像容器に透明トナーを収容し感光体上に透明トナー像を形成する透明ステーションを有色画像形成部に対して透明画像形成部と呼ぶ。
【0021】
続いて、現像装置4について図2を用いて詳しく説明する。図2の(a)は現像装置周辺の断面図、図2の(b)は現像装置周辺の俯瞰図である。
【0022】
■(現像装置について)
現像装置4は現像剤を収容する現像容器4aを備える。現像容器4a内に収容する現像剤は、トナーとキャリアを含む2成分現像剤である。現像容器4a内に収容された現像剤は、現像スリーブ4fから遠い側の撹拌室に配置された撹拌スクリュー4cで撹拌し、トナーは撹拌スクリュー4cで撹拌されることで摺擦されて帯電する。
【0023】
撹拌室で撹拌されたトナーは、隔壁によって隔てられた現像スリーブ4fに近い側の搬送室に配置された搬送スクリュー4bにより現像スリーブと略平行に搬送される(図中の矢印参照)。
【0024】
そして、搬送スクリュー4bによって搬送された現像剤は、現像剤担持手段としての現像スリーブ4fに担持される。現像スリーブ4fの内部にはマグネットローラ4dが配置されており、スリーブ上にキャリアを引き付けて磁気穂を形成する。そして、現像装置4は現像スリーブ4f上に担持された現像剤の穂を規制する規制部材としての現像ブレード4eを備え、現像ブレード4eによって規制した現像剤を現像部へと搬送する。具体的には現像ブレード4eと現像スリーブ4fの間隙は500μmし、現像スリーブ4f上の単位面積当りの現像剤コート量を30mg/cm^2に規制した。
【0025】
なお、本実施例の現像スリーブ4fの直径は20mm、感光体ドラム1の直径は80mm、現像スリーブ4fと感光体ドラム1との最近接領域を約400μmの距離とした。また、現像スリーブ4fはステンレス(非磁性材料)で構成され、現像スリーブ4fの内部には磁界手段であるマグネットローラ4dが非回転状態で設置されている。また、本実施例の現像スリーブ4fに−500Vの直流電圧とピーク間電圧が1800Vで周波数fが12kHzの交流電圧を重畳した現像バイアス電圧を印加している。
【0026】
■(トナー補給機構について)
続いて、現像により消費されたトナーを現像容器に補給する補給機構について説明する。
【0027】
図2の(a)に示すように、現像装置4の上部にトナーとキャリアを混合した2成分現像剤を収容するホッパー4gが配置される。ホッパー4gに収容された補給用の現像剤補給スクリュー4hにより現像容器へ補給される。補給スクリュー4hは現像装置4で消費されたトナー量に応じて回転し、ホッパー4gから現像容器4aへ現像剤を補給する。ホッパー4gから現像容器4aへ補給する現像剤の補給量は、補給スクリュー4hの回転数によっておおよそ定められる。なお、補給スクリュー4hの回転数は後述する画像データのビデオカウント値と、感光体ドラム1上に形成した基準となる静電像を現像したトナー像(パッチ)の濃度を検知する不図示の濃度センサの検知結果から決定される。
【0028】
■(現像容器に収容される現像剤について)
続いて、各現像容器に収容される現像剤について簡単に説明する。本実施例の現像剤はトナーとキャリアを含む2成分現像剤である。本実施例の各現像容器に収容されるトナーは着色材の色を除き略同一のものを用いた。
【0029】
トナーは、ポリエステルのような結着樹脂(バインダ)に顔料などの着色剤を分散したものである。また、トナーは流動性や帯電性を改善するために、コロイダルシリカ微粉末等の外添剤と呼ばれる粒子を外添される。本実施例のトナーは、結着樹脂として負帯電性のポリエステル系樹脂を用い、トナーの体積平均粒径は4μm以上、10μm以下のものを用いた。
【0030】
また、本実施例で用いたキャリアは、重量平均粒径が20〜60μmの重量酸化物フェライトを用い、抵抗率は10^7Ωcm以上のものを用いた。なお、キャリアとして鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、希土類などの金属、及びそれらの合金を用いることもできる。
【0031】
ここで、透明トナーは有色トナー(YMCK)に含有される着色剤(顔料)が含まれていないことを除き略同一である。なお、透明トナーとは未定着状態では、粒径によっては光を散乱させ白色に見える場合がある。しかし、定着装置で記録材上に加熱定着された後は溶融して無色透明のトナー層を形成する。
【0032】
§2.{画像形成装置の制御システムについて}
続いて、画像形成装置の各部を制御する制御回路のシステム構成についてブロック図を用いて説明する。また、トナー消費量に対応する情報として本実施例で用いるビデオカウント値について詳述する。
【0033】
■(制御ブロック図について)
図3は画像形成装置100のシステム構成を説明するためのブロック図である。画像形成装置は画像形成装置の各部を制御する制御手段としてのCPU201(Central Processing Unit)を備える。また、装置は制御プログラムを格納するROM202(Read Only Memory)と、RAM203(Randam Acsess Memory)を備える。CPU201はROM202に格納されたプログラムに従い動作する。また、RAM203はビデオカウント値やパルスカウント値を保持させてビデオカウンタ203aやパルスカウンタ203bとして機能させたり、画像処理に用いるγLUT203cを展開する。CUP201はRAM203に格納や保持展開された情報を用いて入力された画像データを処理したりする。
【0034】
また、画像形成装置100は外部からの画像形成信号や記録材上に形成すべき画像の信号を受ける受信手段としてのEthernet(登録商標) I/F204を備える。画像形成装置はEthernet(登録商標) I/F204等のインタフェースを介して接続されたPC等の情報処理装置やイメージスキャナと接続され、入力された画像信号に応じた画像をプリンタエンジン205で出力する。
【0035】
なお、外部から入力される画像信号の多くはRGB信号で入力されることが多く、CPU201はプログラムに従いRGB信号をCMY画像へと変換する。具体的には、CPU201はLOG変換等により入力された輝度データとしてのRGB画像データを濃度データとしてのCMY画像データへと変換する。また、CPU201はCMY画像データをUCR(Under Color Remobal)処理や、RAM203に展開されたγLUT(γLook UpTable)を用いた濃度補正処理を行う。このように、入力された画像データはプリンタエンジン用で出力可能な画像データとしてのYMCK画像データへと処理される。また、RAM203には後述する制御に用いる変数(例えば、劣化積算値203d:X(Y〜T))などの情報が格納記憶することができる。
【0036】
また、本実施例では透明トナーを用いて出力する画像を指定する透明画像データ(T画像データ)は、各領域(画素)にどの程度の透明トナーを形成するかを指定したデータとする。
【0037】
制御手段としてのCPU201はRAM203上に展開された画像データに基づき、各色の画像形成ステーションが備える感光体上に露光するレーザスキャナ3へ送信するパルス信号を生成する。具体的には、所望のトナー量を感光体上に形成するための露光を行うためにPWM(Pals width modulation)処理をして生成する。本実施例では、画像データの濃度レベル(例えば、256段階)が大きいほど、出力するパルス信号のパルス幅を長くなるように変換し、変換されたパルス信号をプリンタエンジン205のレーザスキャナ3(205a)へ送信する。また同様に、制御手段としてのCPU201はプリンタエンジン205の各部(例えば、現像装置に電圧を印加する電源回路205bなど)を制御する。
【0038】
■(各色のトナー消費量に関する情報)
本実施例では、トナーの消費量の指標となる情報としてビデオカウント値を用いる。ここで、ビデオカウント値とは、入力された画像データを変換した後のYMCK画像データにおける1画素毎の濃度レベル(0〜255レベル)を画像1面分積算した値を指す。つまり、ビデオカウント値は取得手段としてのCPU201がRGB画像データを変換することで取得する。なお、説明の都合上、600dpi(dot per inch)の解像度、8bit(256段階)の諧調でA4サイズの画像を出力する際に、出力する画像の全面を255レベルでトナーを形成する場合のビデオカウント値は512とする。
【0039】
本実施例では、CPU201はYMCK画像データから各色のビデオカウント値をRAMに格納保持する。具体的には、YMCK画像データのイエローステーションのレーザスキャナ3Yが露光に用いる画像データは、イエロートナーの消費量の指標となる情報として、のビデオカウント値:V(Y)としRAMに格納保持される。他の色についても同様に、マゼンタトナーの消費量の指標であるビデオカウント値V(M)や他の色(CKT)についてもRAMに格納される。
【0040】
また、トナーの消費量の指標となる情報として、ビデオカウント値の代わりにレーザスキャナ3に入力されるレーザスキャナを駆動する信号のパルス数(又はパルスONの時間)をカウントしたもの用いてもよい。この場合にもビデオカウント値と同様に、RAM203に各色のパルス数を格納保持すればよい。
【0041】
§3.{有色トナー吐き出し制御について}
続いて、本件の特徴部である劣化トナーの吐き出し制御に関してフローチャートを用いて説明する。従来から、現像装置内でトナーが現像ブレードやスクリューにより長時間摺擦されると、トナーの表面から外添剤が剥がれ落ちたり、トナーの表面に外添剤が埋め込まれたりすることが知られている。このように、劣化トナーの割合が高くなるとトナーの流動性の低下や帯電性能の悪化して、出力される画像品質が低下する。そこで、記録材に出力される画像の品質の低下を抑制するために、ダウンタイム(連続画像形成を中断する期間)を設けて、現像装置4内の劣化したトナーを感光体ドラム1の非画像域(いわゆる紙間)に現像し、劣化トナーをリフレッシュする。
【0042】
透明トナーと有色トナーを用いて画像形成可能な装置では、ユーザが選択した画像形成モードによって、透明トナーの消費量が有色トナーと比べて少なくなる場合がある。具体的には、透明トナーを部分的に形成してグロスマークを形成する場合や、透明トナーを使うことなく有色トナーのみで画像を形成する場合に、透明トナーの消費量が少なくなる。そのため、透明トナーで画像を形成するステーションの劣化トナーの吐き出しするための動作(シーケンス)を、有色トナーと同等にすると生産性が著しく低下してしまう。本実施例では、前述の課題に対して優位性のある透明トナーの吐き出し制御についてフローチャートを用いて説明する。
【0043】
■(有色トナーの吐き出し判断フローについて)
図4は有色トナーの吐き出しを実行するタイミングを説明するためのフローチャートである。劣化した有色トナーを吐き出すと共に、新しいトナーを補給する処理(S107)については、次項に詳述する。
【0044】
吐き出し制御とは、連続画像形成時に消費されるトナー量が少ないときに劣化したトナーを強制的に消費させる制御である。制御手段としてのCPU201は入力された一連の画像形成命令(画像形成JOB)によって指定された画像を出力するまでS102〜S108のステップを継続する(S101:no)。入力された画像を全て出力し終えた場合(S101:yes)に、画像形成終了シーケンス(S109)を実行する。連続画像形成中の動作について詳しく説明する。
【0045】
制御手段としてのCPU201は入力された画像信号から各色のビデオカウント値を算出(取得)する(S102)。画像を1枚出力する毎に所定量以上のトナーが消費されていれば、適宜新しいトナーが現像容器内へと補給されるため長期間現像装置内に滞留するトナーの割合は低くなる。
【0046】
ここで、ビデオカウント値は画像形成中に現像容器から感光体へと現像されるトナーの量と相関関係(比例関係)がある。そのため、各色のビデオカウント値が対応するトナー劣化閾値Vth未満の場合に、トナー消費量が少なくトナーが劣化するとみなすことができる。逆に、各色のビデオカウント値が対応するトナー劣化閾値Vth以上の場合に、トナー消費量が多くトナーが劣化しないとみなすことができる。なお、トナー劣化閾値Vthに関しては後の項で詳述する。
【0047】
上記理由から、CPU201はS102で取得したビデオカウント値とトナー劣化閾値の差を算出し(S103、Vth−Vに基づき条件分岐を行う(S104)。具体的には、CPU201は「Vth−V」が正(本件では、正は0を含むこととする)の場合(S104:yes)にS105のステップを実行し、「Vth−V」が負の場合(S104:no)にS101のステップを実行する。
【0048】
S104においてトナー劣化閾値Vthの方がS102で取得したビデオカウント値よりも大きい場合、トナーの劣化が促進されるとみなす。そして、「Vth−V」に対応する量をトナー劣化した量としてみなし、その積算値である劣化積算値Xが所定値を超えた場合(S106:yes)に、有色トナーを感光ドラムへ吐き出すシーケンス(S107)を実行する。ここで、劣化積算値Xはビデオカウント値Vやトナー劣化閾値Vthと同様に色毎にRAM203に格納されている。
【0049】
定義済み処理であるS107については次の項で詳述する。なお、S107は有色トナー(YMCK)の劣化積算値X(Y)、X(M)、X(C)、X(K)のいずれ一つが実行閾値Aを超えた場合にS107を実行するものとする。
【0050】
S107の処理を行った後に実行されるS108において、CUP201はRAMに格納された劣化積算値Xをリセットし、続いてS101の処理を実行する。以上が連続画像形成時に有色トナーが劣化したか否かを推定する制御手順である。S101において、一連の画像形成が終了した場合(S101:yes)、CUP201は画像形成部に印加する電圧を順次OFFするように電源回路205bを制御する(S109)。なお、画像形成終了時に実行されるシーケンス実行時(後回転時)に劣化積算値Xに対応する有色トナーを感光ドラムへ吐き出すと共に、劣化積算値Xをリセットしてもよい。
【0051】
■(有色トナーの吐き出しシーケンス(感光体)について)
続いて、図4の定義済み処理であるS107について詳しく説明する。図5はS107で実行する処理について詳しく説明するためのフローチャートである。図4のS106において、劣化積算値Xが実行閾値Aを超えた場合((実行閾値A−劣化積算値X)が負の場合)に、CPU201は連続画像形成を中断して現像容器からトナーを感光ドラム1へ吐き出す。
【0052】
具体的には、CPU201は、吐き出し実行閾値Aを超えた色のステーションが備える現像容器から実行閾値Aのビデオカウント値に相当する量のトナーを感光体ドラムに吐き出す。同時に、実行閾値Aを超えていない色のステーションについては、現在の劣化積算値Xに相当するビデオカウント値に相当する量のトナーを感光ドラムの紙間に対応する領域に吐き出す(S201)。なお、劣化したトナーを感光ドラムへ吐き出す(排出する)ために要する時間(ダウンタイム)を最小限に抑えるため、感光ドラムの長手方向に対して帯状に劣化トナーが吐き出されるように感光体を露光する。
【0053】
続いて、CPU201は感光ドラム上に吐き出されトナーが中間転写ベルトに転写されないように、通常画像形成時とは逆の極性の転写バイアスを転写ブレードに印加するよう制御する(S202)。
【0054】
CPU201は転写部を通過したトナー帯が各ステーションの感光ドラムを清掃するクリーニングブレードで除去されるように、感光ドラムの駆動を継続する(S203)。
【0055】
感光ドラム上に吐き出したトナー帯をクリーニングブレードで除去完了した後、CPU201は感光ドラムから中間転写体へ正規極性のトナーを転写する電界を形成する極性の転写バイアスを転写ブレードに印加するように制御する(S204)。以上が一定以上トナーが劣化した場合に、有色トナーを感光ドラムへ吐き出す制御に関する説明である。
【0056】
§4.{透明トナーの吐き出し制御について}
前述の通り、ユーザが記録材の全面に透明トナーを形成して銀塩写真のような光沢度の高い出力を求める場合には透明トナーの消費量は多い。逆に、透明トナーを使用することなく有色トナーだけで画像を形成することも考えられる。その場合に、有色トナーと比べて透明トナーが劣化して透明トナーの吐き出しによるダウンタイムで生産性が低くなる。そこで、本実施例では透明トナーの劣化を抑制するために、人に感知されない程度の透明トナーを画像形成する記録材上に吐き出すことで、ダウンタイムの発生を抑制する。
【0057】
■(透明トナーの吐き出し判断フローについて)
図6は透明トナーの吐き出しを実行するタイミングを説明するためのフローチャートである。記録材上に少量の透明トナーを吐き出すシーケンス(S305)と、画像形成を中断して劣化した透明トナーをクリーニングブレードで回収させるシーケンス(S307)については、次項に詳述する。
【0058】
制御手段としてのCPU201は入力された一連の画像形成命令(画像形成JOB)によって指定された画像を出力するまでS302〜S308のステップを継続する(S301:no)。入力された画像を全て出力し終えた場合(S301:yes)に、画像形成終了シーケンス(S309)を実行する。連続画像形成中の動作について詳しく説明する。
【0059】
制御手段としてのCPU201は入力された画像信号から透明トナーの消費量に対応する情報としてビデオカウント値V(T)を算出(取得)する(S302)。
【0060】
続いて、CPU201はS302で取得したビデオカウント値V(T)とトナー劣化閾値Vthの差を算出し(S303、Vth−Vに基づき条件分岐を行う(S304)。具体的には、CPU201は「Vth−V(T)」が正の場合(S304:yes)にS305のステップを実行し、「Vth−V」が負の場合(S304:no)にS301のステップを実行する。
【0061】
S304においてトナー劣化閾値Vthの方がS302で取得したビデオカウント値V(T)よりも大きい場合、トナーの劣化が促進されるとみなす。
【0062】
ここで、透明トナーのビデオカウント値V(T)がトナー劣化閾値Vthよりも低い場合に、有色トナーと同じようにVth−V(T)を劣化積算値X(T)に加えると、透明トナーを吐き出すための連続画像形成の中断が頻繁に発生してしまう。そこで、本実施例では連続画像形成中の記録材に透明トナーを形成する(S305)。
【0063】
S305において、CPU201は人の目に知覚できない程度の透明トナーを記録材上に薄く形成する。人の目に知覚出来ない程度の量の透明トナーを記録材上に吐き出したとしても限度がある。そのため、記録材に吐き出しきれなかった透明トナーの劣化分は透明トナーの劣化積算値X(T)に反映される(S305)。
【0064】
そのため、制御手段としてのCPU201は後述する定義済み処理S305中で更新された劣化積算値X(T)が実行閾値Xを超えたか否かを判断する(S306)。透明トナーの劣化積算値X(T)が実行閾値Xを超えた場合(S306:yes)、CPU201はS307の処理を実行する。また、透明トナーの劣化積算値X(T)が実行閾値X未満の場合(S306:no)、CPU201はS301の処理を実行する。
【0065】
透明トナーの劣化積算値X(T)が実行閾値Aを超えた場合、連続画像形成を中断して劣化した透明トナーを感光ドラムへ吐き出すと共に、クリーニングブレードで除去する(S307)。そして、実行閾値Aに対応する量の透明トナーをクリーニングブレードで除去した後、透明劣化積算値:X(T)をリセットする(S308)。
【0066】
S301において、一連の画像形成が終了した場合(S301:yes)、CUP201は画像形成部に印加する電圧を順次OFFするように電源回路205bを制御する(S309)。なお、画像形成終了時に実行されるシーケンス実行時(後回転時)に各劣化積算値X(Y〜T)に対応する有色トナー及び透明トナーを感光ドラムへ吐き出すと共に、劣化積算値X(Y〜T)をリセットしてもよい。
【0067】
■(透明トナーの吐き出しシーケンス(記録材)について)
続いて、本実施例における特徴的な制御である透明トナーの記録材への吐き出しについて説明する。透明トナーは有色トナーと異なり顔料(着色剤)が含まれていない。顔料が含まれていないため定着されても色味を変えずに光沢度のみを変える。そのため、透明トナーは有色トナーと異なり微量であれば記録材に形成されても人に知覚されにくい。
【0068】
そこで本実施例において、透明トナーの劣化積算値X(T)が増加する速度を抑制するために、一定量づつ連続画像形成中の記録材へ吐き出す制御を実行する。図7は図6に記載のS305について詳しく説明するためのフローチャートである。
【0069】
制御手段としてのCPU201はS303で算出したVth−V(T)が透明トナー薄塗り閾値Uと比較する(S401)。S401においてVth−V(T)が薄塗り閾値U未満(S401:no)の場合、Vth−V(T)に対応する量の透明トナーを次の記録材の全面に均一に形成する(S402)。この場合には、透明トナーが劣化しないとみなせる量を消費することができているため、劣化積算値X(T)は更新しない。
【0070】
逆に、S401においてVth−V(T)が薄塗り閾値U以上(S401:yes)の場合、薄塗り閾値Uに対応する量の透明トナーを次の記録材の全面に均一に形成する(S403)。薄塗り閾値Uはこれ以上の量を記録材の全面に形成すれば連続出力された記録材同士の光沢度がユーザに知覚できる程ばらついてしまう。そのため、薄塗り閾値U以上の量を記録材上に吐き出さないようにする。
【0071】
前述の通り、Vth−V(T)が薄塗り閾値U以上の場合には、透明トナーを十分に消費できないため透明トナーは劣化する。そこで、透明劣化積算値X(T)に、U−(Vth−V(T))を加算する(S404)。以上が連続画像形成中に透明トナーを記録材へと薄塗りするシーケンスである。
【0072】
■(透明トナーの吐き出しシーケンス(感光体)について)
S401〜S404に示すように透明トナーを画像が形成される記録材上に微量づつ形成しても、薄塗り閾値Uを超える分には透明トナーの劣化が蓄積される。そのため、透明トナーの劣化積算値X(T)が実行閾値Aを超えた場合(S306:yes)に、連続画像形成を中断して透明トナーを消費するシーケンスを実行する。
【0073】
図8は図6に記載のS307について詳しく説明するためのフローチャートである。CPU201は透明トナーの吐き出しシーケンス:S501〜S504と有色トナーの吐き出しシーケンス:S505〜S508を並列に実行する。
【0074】
制御手段としてのCPUは図5に示した有色トナーの感光ドラムへの吐き出しシーケンスと同様に、感光ドラムへと透明トナーを吐き出させる。具体的には、CPU201は、吐き出し実行閾値Aを超えた透明トナーステーションが備える現像容器から実行閾値Aのビデオカウント値に相当する量の透明トナーを感光体ドラムに吐き出す(S501)。そして、感光ドラム上に吐き出された透明トナーの帯を転写部に画像形成時に印加する極性とは逆極性の転写バイアスを印加し(S502)、クリーニングブレードで除去する(S503)。そして、感光ドラム上に吐き出された透明トナーを除去し終わると、1次転写ブレードに印加する転写バイアスの極性を画像形成時に印加する極性に戻す(S504)。
【0075】
それと並行して、CPU201は各有色トナーステーションからも劣化蓄積値Xに対応する量の有色トナーを感光ドラムに吐き出すように制御する(S505)。そして、有色トナーの帯を転写部に逆極性のバイアスを印加してクリーニングブレードへと搬送させ(S506)てクリーニングブレードで除去した後(S507)、転写バイアスを所定の極性に戻す(S508)。
【0076】
なお、透明トナーを感光ドラムへと吐き出すのと並行して、各感光ドラムへ吐き出される有色トナーの量は対応するステーションの劣化積算値X(Y,M,C,K)に対応する量である。
【0077】
なお、図5で示した有色トナーの吐き出し実行時に、透明トナーも劣化積算値X(T)に対応する量の透明トナーを並行して吐き出してもよい。
【0078】
§5.{各閾値について}
上記フローチャートで用いた、劣化閾値Vth、実行閾値A、薄塗り閾値Uについて項目に分けて説明する。
【0079】
■(劣化閾値Vth)
以下に、劣化閾値Vthの決定方法について簡単に説明する。トナー劣化閾値VthとはビデオカウントVと比較可能な無次元情報である。トナー劣化閾値Vthは、所定印字率以下の画像を形成することで現像容器内のトナーが劣化して画像不良(かぶり・トナー飛散・粒状感等の悪化)が発生してしまうと判断するための閾値である。
【0080】
具体的には、各色の印字率を振って(0%〜10%まで)連続画像形成をA4サイズ用紙片面で1000枚行い、連続画像形成を実施する前後での画像品質の変化を調べた。この実験の結果を表1の表に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
表1において、「○」は画像品質の劣化が発生しなかったことを示し、「×」はかぶりの悪化・トナー飛散の悪化・粒状が生じたことを示す。表1の結果から、イエロートナーは印字率が3%未満、マゼンタトナーは印字率が2%未満、シアントナーは印字率1%未満、ブラックトナーは印字率3%未満でトナー飛散等が生じる。また、透明トナーは印字率10%より低い時にトナー劣化による画像劣化が生じることがわかる。
【0083】
そのため、本実施例ではトナー劣化閾値ビデオカウントはVth(Y)=15、Vth(M)=10、Vth(C)=5、Vth(K)=15、Vth(T)=51とした。トナー劣化閾値ビデオカウントは小数点以下を四捨五入して算出した。当然、トナー劣化閾値Vthは現像剤(トナー及びキャリア)の材質等に応じて異なるので適宜算出設定すれば良い。
【0084】
■(実行閾値A)
続いて、トナーを感光体へ吐き出すシーケンスを実行するか否かを判断するための実行閾値Aについて説明する。実行閾値Aは劣化したトナーが現像容器内にどの程度たまった段階で、トナーを感光ドラムへ吐き出すシーケンスを実行するかを規定する値である。実行閾値Aを低く設定すると、吐き出し頻度が高くなりダウンタイムが生じやすい半面、現像容器内の劣化トナーの割合が低いため画像不良が生じにくい。逆に実行閾値Aを高く設定すると、吐き出し頻度が低くなりダウンタイムを抑えることができる半面、現像容器内の劣化トナーの割合が高くなる。
【0085】
本実施例では、全てのステーションの吐き出しシーケンス実行閾値Aは同一である。なお、現像されるトナー量の微差が色味の差として画像に影響されやすいYMCKの実行閾値Aを透明トナーの吐き出し実行閾値A(T)よりも低くするのが好ましい。なお本実施例では実行閾値Aを512に設定している。これは、吐き出しシーケンスを実行する閾値である実行閾値Aの設定値が大きすぎると、トナー吐き出し動作を実行するまでにトナー劣化が進行する時間が多くなるためである。そのため、実行閾値AはA4〜A3サイズ用紙片面の全面ベタ画像(印字率100%の画像)のビデオカウント値と同等が望ましい。また、現像容器の容積が大きいほど(収容可能なトナー量が多いほど)トナー吐き出し実行閾値Aを大きく設定できる傾向がある。
【0086】
■(透明トナー薄塗り閾値U)
続いて、連続画像形成時にユーザによって指定されていない記録材の領域へと透明トナーを吐き出す制御に関して、記録材へ吐き出す透明トナーの限界量について説明する。
【0087】
本来、ユーザが指定していない記録材の領域へ透明トナーを形成するのは好ましくない。しかしながら、有色トナーと比べて透明トナーの消費量が少ない場合には、透明トナーを感光ドラムへと吐き出す頻度が極端に高くなる。これを抑制するために透明トナーを記録材へと吐き出すが透明トナーの量が多いと、ユーザが知覚する。
【0088】
具体的には、本発明者による肉眼による試験の結果、肉眼では光沢度差(ΔG)が1.5以下の場合には光沢度の差を感知できなかった。つまり、光沢度の差が1.5未満であれば、人間の肉眼で透明トナーが定着されているか否かを判定できないことがわかった。
【0089】
そのため、検知した紙種に応じて指定された領域以外の領域にも透明トナー層を薄く形成した場合に変動する光沢度が1.5未満となる単位面積当たりの透明トナー量を上限値として、所定量未満の透明トナーを記録材へ排出する。
【0090】
図9は記録材上に横軸に記載のビデオカウント値に対応する単位面積当たりの透明トナーの載り量(g/cm^2)を形成したときの光沢度の変化を説明するためのグラフである。図9の△印の折れ線グラフは記録紙上にクリア以外のトナーが載っていない場合を表し、○印の折れ線グラフは記録紙上に色トナー(実験ではマゼンタM)を予め全面ベタで印字した上に透明トナーを印字した場合を表している。図9の△印と○印の折れ線グラフから、透明トナーの単位面積当たりの載り量が多くなるほど表面光沢度(グロス)の変化が大きくなっているのが分かる。
【0091】
そこで、白紙の記録紙上及び他の有色トナーによる画像が形成された記録紙上の両方の場合においても人間の肉眼では見分けがつかない程度の光沢度(1.5)変化となるように透明トナー薄塗り閾値Uを決定した。つまり、指定された記録用紙片面の全面に透明トナーを薄く均一に塗ったときのビデオカウント値が薄透明トナーの薄塗り閾値ビデオカウントUである。
【0092】
ここで、図9の(a)と(b)のグラフの違いから、透明トナーの薄塗り閾値Uは、記録用紙のサイズ、記録用紙の種類・定着条件によって変更されるべきものであることがわかる。
【0093】
例えば、図9の(a)に示すような坪量80g/m^2のカラーレーザコピア推奨紙であるSK80のA4サイズ用紙では、定着器を所定のスピードで通過させたときに光沢度変化が1.5以下になるような透明トナーの薄塗り閾値Uは32である。また、SK80のA3サイズ用紙で同様の定着条件で定着する場合の透明トナーの薄塗り閾値Uは64である。
【0094】
また、図9の(b)に示すように坪量が150g/m^2の4CCグロスコート紙のA4サイズ用紙では、SK80を定着するスピードの1/3の速さで定着する場合の透明薄塗り閾値Uは48である。
【0095】
本件は、ユーザが気付かない程度の透明トナーを記録材上に薄く形成することで、透明トナーが頻繁に吐き出さなければならないことで生じるダウンタイムの発生を抑制することができる。
【0096】
そのため、制御手段としてのCPU201は記録材の種類、サイズ、定着条件等を取得し、それらに応じて透明トナーの薄塗り閾値Uを変更する。これにより、ユーザに気付かれない最大量の透明トナーを記録材に吐き出すことで、ダウンタイムの発生を低減することができる。
【0097】
§7.{評価試験と試験結果について}
以下に、上述のフローチャートで制御された画像形成装置に対して、後述する画像形成条件で連続画像形成を行ったときの吐き出し頻度について説明する。
【0098】
本実施例と比較する比較例は、ユーザによって指定されていない記録材の領域に透明トナーを薄く吐き出すことなく、有色トナーと透明トナーの劣化積算閾値にのみ基づき感光ドラムへと劣化トナーを吐き出すシーケンスのみを実行する。つまり、比較例は本実施例の特徴的な制御である記録材への透明トナーを微少量ずつ吐き出す吐き出し制御(図6:S305および図7)を実行しない。
【0099】
評価試験を行うに際して、連続画像形成をする画像について説明する。評価試験では、1枚当たりの印字率がYMCKTそれぞれの色に対してY=10%、M=15%、C=20%、K=25%、T=1%の画像(以下では、「テスト画像」と称する)をA4サイズ用紙に連続出力して評価する。以下に、比較例である全ての色(YMCKT)に関して同一の吐き出し制御を行う場合と、本実施例の吐き出し制御を行う場合の吐き出し回数について説明する。
【0100】
■(比較例の制御を採用した場合の吐き出し回数)
前述のように、A4サイズ用紙片面に全面ベタ画像(印字率100%の画像)を出力する場合のビデオカウントVは512である。そのため、A4サイズの用紙にテスト画像を出力する際の、イエローのビデオカウントV(Y)は51、マゼンタのビデオカウントV(M)は77、シアンのビデオカウントV(C)は102、ブラックのビデオカウントV(K)は128となる。また、透明(クリア)のビデオカウントV(T)は5である。
【0101】
比較例の制御を採用する画像形成装置において、前述のテスト画像をA4用紙に1000枚連続で画像形成する場合を考える。テスト画像を1枚画像形成した場合に、比較例のトナー吐き出し制御ではトナー劣化積算値Xは表2のように算出される。
【0102】
【表2】
【0103】
表2に示すように、テスト画像を1枚出力するごとに透明トナーのトナー劣化積算値X(T)は46づつ増加する(積算される)。つまり、テスト画像を出力する際には透明トナーの劣化の進行が他のトナーよりも早いことを示している。
【0104】
前述のように、吐き出し実行閾値Aが512あるから、比較例の制御を採用した画像形成装置では、テスト画像を12枚(512/46)出力するごとに吐き出しシーケンスが実行される。
【0105】
したがって、比較例の制御を採用する装置でテスト画像を1000枚連続して出力する際に、83回も画像形成を中断しトナー吐き出しを実行する。
【0106】
■(本実施例における吐き出し回数について)
続いて、本実施例の制御を採用する装置において、前述のテスト画像を連続して1000枚出力する際の吐き出し実行回数について説明する。
【0107】
表3は本実施例の制御を採用した画像形成装置における、トナー劣化積算値Xの推移を説明するための表である。
【0108】
【表3】
【0109】
本件制御を採用する場合においても、テスト画像を一枚出力する際の透明トナーのビデオカウントは5である。そして、比較例と同じ透明トナーの劣化閾値Vth(T)と透明トナーのビデオカウント値V(T)の差分は+46である。
【0110】
本実施例では、A4用紙全面に定着したとしても人の目で光沢差を感知できない程度の量Uの透明トナーを形成する。前述のように、記録材として「紙種別:SK80、サイズ:A4」用紙を用いる場合の透明トナーの薄塗り閾値Uは32である。なお、画像形成を行う用紙の種類の情報は紙種取得手段としてのCPU201が取得し、種別記憶部としてのRAM203へ格納する。
【0111】
そこで、テスト画像を出力する場合は、薄塗り閾値U:32よりもVth−V(T):46が大きいため(S401:yes)、A4サイズの用紙全面に薄塗り閾値U32に対応する量の透明トナーを次の用紙の全面に薄塗りする(S403)。
【0112】
そして、薄塗りしても劣化する分(U−(Vht−V(T))に対応するビデオカウント値14を劣化積算値X(T)に加算する。したがってテスト画像を1枚出力するごとに透明トナーの劣化積算値X(T)は14ずつ増加する(積算される)。
【0113】
前述のように、透明トナーを感光体へ吐き出すシーケンスを実行する実行閾値Aが512あるから、本実施例の制御を採用した画像形成装置では、テスト画像を37枚(512/14)出力するごとに吐き出しシーケンスが実行される。
【0114】
したがって、本実施例の制御を採用する装置でテスト画像を1000枚連続して出力する際には、比較例では83回も画像形成を中断しトナー吐き出しを実行していたのに対して、27回しか中断しなくて良くなる。つまり、比較例の制御に比べて本実施例の制御を採用する場合には、ダウンタイムを約1/3に軽減することができる。
【0115】
以上のように、本実施例に開示の制御を採用することにより、肉眼で識別されるほどの光沢度変化を生じさせることなく、透明トナーの印字率が低い場合における透明トナーの劣化を抑制することができる。なお、記録紙上へ少量の透明トナーを消費させる構成で透明トナーの劣化を十分に抑制することができなかった場合にのみ、画像形成を中断してトナー吐き出し動作を実行する。
【0116】
なお、有色トナーが劣化する場合には、図8のように透明トナーと有色トナーを並行して感光体へと吐き出すように制御していることでトナーの吐き出し頻度が極端に増加することはない。
【0117】
なお、本実施例ではトナーの劣化をビデオカウント値に基づき判断したが、トナー劣化と相関関係のある数値であれば、現像スリーブの回転時間など他の数値で代用してもかまわない。
上記構成を参考として、本件の特徴部分である制御について詳しく説明する。
【0118】
上述したように、連続画像形成中の記録材へ透明トナーを吐き出すことにより、透明トナーの消費量が増え、現像器内における透明トナーの滞留が緩和される。しかし、グロスマークを形成するモード(透明部分モード)においても透明トナーの劣化を抑制するため、透明トナーを形成すべき領域外に透明トナー吐き出すとグロスマークが視認しづらくなるという問題が生じる。
【0119】
そこで、本実施例では、透明トナーの記録材の指定領域以外への吐き出しシーケンスの実行を画像形成モードに応じて切替え制御する。以下に、画像形成モードについて説明した後、各モードにおける透明トナーの記録材への吐き出し方法の差について説明する。
§1.{画像形成モードについて}
本実施例の画像形成装置は3つの画像形成モードを切替え実行可能である。なお、少なくとも2つのモードを切替え実行できればよい。ここで、3つのモードは「透明全面モード」、「透明部分モード」、「透明非使用モード」である。
【0120】
「透明全面モード」は記録材の画像形成可能な領域の全面に透明トナーを形成して銀塩写真のような均一な光沢の印刷物を出力するためのモードである。また、「透明部分モード」は記録材の一部に透明トナーを形成して光沢差により視認可能なウォーターマーク(グロスマーク)を形成するためのモードである。また、「透明非使用モード」は透明トナーを使用することなく、有色トナーのみで記録材に画像を出力するモードである。なお、画像形成モードの実行切替えは、ユーザが指定する有色トナー画像を形成するための画像データと透明トナー画像を形成するための画像データに基づき、CPU201が判断して切替え実行してもよい。続いて本実施例の画像形成モードの指定方法について説明する。
【0121】
■(モード選択画面)
図10は画像形成モードをユーザに選択させたり、各情報を設定させたりするための画面である。図10に示す画面(UI)は装置本体が備えるタッチパネル206に表示してもよいし、ネットワークを介して接続されるPC等の画面等に表示してもよい。なお、タッチパネル206に表示する画面はタッチパネル206の入力操作を受けCPU201が遷移させる。
【0122】
図10の(a)は画像形成モードの切替え画面である。ユーザがB001のボタンを選択すると「透明部分モード」が、B002のボタンを選択すると「透明全面モード」が、B003のボタンを選択すると「透明非使用モード」が選択される。いずれのモードが指定された場合においても、そのモードでどのような画像を出力するかを指定する必要がある。そのため、B001〜B003のボタンが選択されると、有色画像と透明画像を指定する画像データを設定するための画面(図10の(b)又は図10の(c))へと遷移する。なお、図10の(a)に示すB004はユーザが選択したモードがどれであるかを指し示すインジゲータである。
【0123】
図10の(a)の右端にあるB005は有色画像原稿と透明画像原稿を重ねて表示したプレビュー画面である。ユーザが印刷ボタンB006を押すとプレビュー画面に表示された画像が記録材へと出力される。
■(画像データ設定画面)
図10の(b)は有色画像原稿をユーザに設定させるための画面である。また、図10の(c)は透明画像原稿をユーザに設定させるための画面である。なお、ユーザが「透明全面モード」を選択した場合には、記録材の画像形成可能な全域に所定量(本実施例では全画素200レベル)の透明トナーを形成する透明画像原稿がユーザによる指定なしで自動的に設定される。また、図10の(b)の画面においてユーザによってB102が選択された場合には、図10の(c)の画面に遷移し、図10の(c)の画面においてB101が選択された場合には、図10の(b)の画面に遷移する。
【0124】
図10の(b)においてユーザがB110を選択することで、画像形成装置やPC等に格納された画像データを有色画像原稿として指定することができる。また、ユーザによって選択された有色画像原稿の画像データはプレビュー画面B111に表示される。また、図10の(c)においてユーザがB120を選択することで、画像形成装置やPC等に格納された画像データを透明画像原稿として指定することができる。同様に、ユーザによって選択された透明画像原稿の画像データはプレビュー画面B121に表示される。
【0125】
以上のように透明画像原稿と有色画像原稿の設定を終えた後、B112やB122を選択することで図10の(a)に示す画面へと遷移する。
【0126】
このように、ユーザによって指定された透明画像原稿(画像データ)に基づき、画像形成装置は記録材の画像データで指定された領域に、指定された量の透明トナーを形成する。なお、「透明非使用モード」が選択された場合は、透明画像原稿の設定は不要であるためB102を選択した場合には透明トナーを使用するモードに切り替える必要があるかユーザに選択させるための警告表示を行う。
§2.{画像形成モードに応じた制御切替え}
連続画像形成における透明トナーの劣化を抑制するために、制御手段としてのCPU201はユーザによって指定された「画像形成モード」と「画像データ」に基づき、記録材へ透明トナーの吐き出し制御の実行を以下のように切り替える。本項で各モードにおいてどのように記録材へ透明トナーを吐き出すかについて述べ、次項でフローチャートを用いて制御の切替えについて説明する。
■(透明部分モード:B001において)
以下に透明部分モードが選択された場合の、透明トナーの劣化抑制のための記録材への透明トナーの吐き出し制御について説明する。透明部分モードとは記録材の一部に透明トナーを形成することで、例えば光沢差により視認できるグロスマークを作成する際に指定されるモードである。このモードでは、画面透明原稿として図10の(c)で指定された画像データに基づき、画像データで指定された記録材の領域に画像データで指定された量の透明トナーを形成する。
【0127】
前述のように、透明トナーの劣化の促進を抑制するために、記録材上の全領域(言い換えれば、画像データによって指定された領域以外)へ透明トナーを形成すると、グロスマークが視認しづらくなる。そのため、透明部分モードにおいては、少なくとも画像データで指定された領域外へ透明トナーを形成させない。
【0128】
つまり、ユーザが表現したかった通りに画像データで指定された通りの透明トナーを指定された領域に形成するか、指定された領域に形成する透明トナーの量を増やすという処理を行う。
■(透明全面モード:B002において)
続いて透明全面モードが選択された場合の、透明トナーの劣化抑制のための記録材への透明トナーの吐き出し制御について説明する。透明全面モードとは記録材のトナーを形成することが可能な全領域に透明トナーを形成するモードである。当然、このようなモードにおいては大量の透明トナーが使用され、透明トナーの現像器内における滞留時間が短くなる。そのため、透明トナーはリフレッシュされる。そのため、透明全面モードが選択された際には、透明トナーの劣化程度の指標である透明劣化蓄積値X(T)をリセットする。
【0129】
当然、劣化蓄積値をリセットするに足る十分な量の透明トナーが消費されることが要求される。本件では、「透明全面モード」においてA4サイズで2枚以上の画像を出力したときに透明の劣化積算値X(T)をリセットする。
■(透明非使用モード:B003おいて)
透明非使用モードが選択された場合については、S305に記載の記録材への透明トナーの吐き出し制御を常に実行する。
§3.{フローチャート用いた動作説明}
続いて、フローチャートを用いて画像形成装置の動作を説明する。図11はモードに応じた記録材への透明トナーの吐き出し実行制御を説明するためのフローチャートである。
【0130】
制御手段としてのCPU201はユーザが選択したモードを取得し、取得したモードに応じて処理を分岐させる(S601)。選択された画像形成モードが「部分透明モード」以外の場合(S601:no)にはS602の処理を実行し、「部分透明モード」であった場合(S601:yes)には、S604の処理を実行する。
【0131】
透明部分モード以外が選択された場合には、S305に記載された記録材全面への透明トナーの吐き出しが許可される(S602)。また、透明全面モードが選択されている場合には、透明劣化積算値X(T)をリセットする(S603)。
【0132】
部分透明モードが選択された場合には、CPU201は透明原稿データとして選択された画像データを解析する。具体的には、透明トナーを部分的に形成する領域の画像データの全域が255レベルであるか否かを判定する(S604)。透明トナーを部分的に形成する領域の画像データの全域が255レベルでない場合(S604:no)、指定された領域に形成するトナーの量を増やすことで、透明トナーの劣化を抑制する(S605)。つまり、透明トナーを画像データで指定された領域内であれば光沢差が低減されグロスマークが視認されにくくなるという課題が生じないため、指定された領域内であれば記録材へ透明トナーを吐き出すことを許可する。具体的には、画像データが0レベル以外(1レベル〜245レベル)の領域(画素)に形成する透明トナーの量を所定量だけ増加させる。
【0133】
また、画像データで指定された透明トナーを形成する領域の全域が255レベルである場合(S604:yes)や、指定された画像データ通りに透明トナーを忠実に形成したい場合は、画像データで指定された通りに透明トナーを形成する(S606)。
【0134】
以上が、モードに応じた透明トナーの劣化抑制のためのシーケンスを切り替える動作の説明である。このように画像形成モードに応じて動作させることで、透明劣化による連続画像形成の中断頻度を低くしつつも、グロスマークが視認しにくくなるという弊害を抑制することができる。
【符号の説明】
【0135】
1Y〜1T 感光ドラム(像担持体)
3Y〜3T レーザスキャナ(露光手段)
5Y〜5T クリーニングブレード(清掃手段)
102Y〜102B 現像装置(有色現像装置)
102T 現像装置(透明現像装置)
7 中間転写ベルト(中間転写体)
201 CPU(制御手段、取得手段(紙種、モード、領域、トナー量))
203 RAM(記憶手段、カウンタ、種別記憶部)
206 タッチパネル(指定手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置に関するものである。とりわけ、透明トナーを用いて画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置において、低い印字率(トナー消費量の少ない)の画像を出力する割合が多いと、現像装置内にトナーが滞留して劣化する。具体的には、現像スリーブにトナー層を形成するための現像ブレードとトナーが長期間摺擦され、トナーに外添された外添剤が剥れたり、外添剤がトナーの表面に埋め込まれたりする。このように外添剤がトナー表面から剥れたり表面に埋め込まれたりすると、トナーの帯電性能や流動性が悪化(以降、トナーが劣化すると呼ぶ)する。トナーの帯電性や流動性が悪化すると、トナー飛散や画像カブリが発生するため好ましくない。
【0003】
このような問題に対し、特許文献1では、劣化したトナーの割合が多くなった場合に、現像装置からトナーを感光体上に形成(吐き出し)することで現像装置内に滞留したトナーをリフレッシュしていた。
【0004】
具体的には、現像スリーブが所定時間駆動されるごとに、所定時間で消費されたトナーの量を計算し、その結果が所定値より低い場合にトナーの劣化が進行し、現像装置内のトナーを感光体へ吐き出し、記録紙に転写することなくクリーナで回収する。さらに、吐き出したトナー(劣化トナー)に対応する量のトナー(新しいトナー)を現像装置へ補給し、現像装置内のトナーの滞留時間が長くなりすぎないようしていた。
【0005】
同様に、特許文献2には、画像形成ごとに使用されるトナー量を指標する値(例えば画像形成毎のビデオカウント値)に基づき現像装置内のトナーをリフレッシュする方法が開示されている。具体的には、ビデオカウント値が所定の設定された閾値よりも小さい場合にその差分を算出し、その算出された差分を積算した積算値が所定値に達したときに、トナーを現像装置から吐き出してリフレッシュするという方法が提案されている。
【0006】
また近年、イエロー、マゼンタなどの有色トナーに加えて、光沢度を調整する透明トナーを用いる画像形成装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−263027号公報
【特許文献2】特開2006−023327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
透明トナーは銀塩写真のような光沢度を画像に与えるために用紙の画像形成可能な全域に形成する用途や、偽造防止やアイキャッチを目的として透明トナーを局所的に形成する用途(グロスマーク、ウォーターマーク)が知られている。
【0009】
このように多様な用途で透明トナーは用いられる。そのため、用途によって消費される透明トナーの量が変動してしまう。とりわけ、記録材の一部に透明トナーを形成してグロスマークを形成するモードや、透明トナーを用いで有色トナーのみで画像を形成するモードにおいて、透明トナーの消費量は有色トナーの消費量よりも少なくなる。
【0010】
つまり、透明トナーの消費量が有色トナーの消費量よりも少ないと、有色トナーと比べて透明トナーが劣化しやすくなる。そのため、透明トナーの劣化が有色トナーの劣化より進行しやすい状況において、現像装置から透明トナーが頻繁に吐き出されるためダウンタイムが発生し、生産性が低下してしまう。
【0011】
このような課題に対して、透明トナーの劣化を抑制して生産性の低下を最小限に抑えるために、連続画像形成中の記録材へ透明トナーを形成することを発明者が考案した。
【0012】
しかしながら、透明トナーを一部に形成してグロスマークを形成するモードにおいても、透明トナーの劣化を抑制するために透明トナーを形成すべき領域以外の領域に透明トナーを吐き出すと、光沢差が小さくなりグロスマークが視認しづらくなってしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、本発明の画像形成装置は「有色トナーと透明トナーを用いて記録材上に画像を形成する画像形成部と、記録材に形成する透明トナーの量に関する情報を取得する取得手段と、を有し、前記取得手段によって取得された記録材へ形成する透明トナーの量が所定量より少ない場合、前記取得手段で取得された透明トナーの量よりも多い透明トナーを記録材へ形成するモードを実行可能な画像形成装置であって、記録材の指定された領域に透明トナーを形成する場合には、前記取得手段によって取得された記録材へ形成する透明トナーの量が所定量未満である場合にも、記録材の前記指定された領域を除く画像形成可能な領域への透明トナーの形成を行わないように制御する制御手段」を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
透明トナーの劣化を抑制するためのトナー吐き出しに要するダウンタイムを抑えつつも、光沢差により視認できる図形を作成するモードが選択された場合において光沢差が小さくならないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施例に係る画像形成装置の概略図である。
【図2】本実施例に係る画像形成装置に備えられた現像装置の概略図である。
【図3】本実施例に係る画像形成装置の画像処理ユニットの構成を示すブロック図である。
【図4】有色トナー吐き出しの実行判断に関するフローチャートである。
【図5】有色トナー吐き出しシーケンス(ドラム)に関するフローチャートである。
【図6】透明トナー吐き出しの実行判断に関するフローチャートである。
【図7】透明トナー吐き出しシーケンス(記録材)に関するフローチャートである。
【図8】透明トナー吐き出しシーケンス(ドラム)に関するフローチャートである。
【図9】透明トナーのトナー載り量によるグロス変化を説明するためのグラフである。
【図10】PCや装置本体のタッチパネルに表示される画面に関する説明図である。
【図11】劣化透明トナーの記録材へ吐き出し実行制御に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施例1)
以下に本発明による第1の実施例となる画像形成装置について詳しく説明する。なお、本実施例において、光沢度(グロス)の測定は、日本電色工業株式会社製ハンディ型光沢計(PG−1M)の60度グロス測定(JISZ8741鏡面光沢度−測定方法に準拠)モードで測定したものである。
【0017】
§1.{画像形成装置の概要}
以下に本実施例の画像形成装置について、項目毎に説明する。
【0018】
■(画像形成装置の概略構成)
図1は本実施例の画像形成装置100の概略構成を説明するための図である。画像形成装置は像担持体としての感光ドラム1Y〜1Tを備えている。そして、各感光ドラムの周りに配置されたトナー像を記録材へ形成するための要素をまとめて、画像形成ステーションと呼ぶ。各画像形成ステーションの下方には、中間転写体としての中間転写ベルト7が配置され、中間転写ベルトは張架するローラ7a、7b、7cに張架される。そして、中間転写ベルトは図1中の矢印の方向に走行し、各画像形成ステーションの感光体上に形成されたトナー像を記録材へと担持搬送する。
【0019】
画像形成ステーションについて、有色画像形成部としてのイエローステーションYを例に挙げて簡単に説明する。本実施例では、感光体はコロナ帯電器2によって帯電される。帯電された感光ドラム1は露光手段としてのレーザスキャナ3から照射されるレーザによって、感光体上に静電像が形成される。感光体上の静電像は現像器4に収容されるトナー(ここではイエロートナー)によって現像される。
【0020】
各画像形成ステーションで形成されたトナー像は、一次転写手段としての転写ブレード5Y〜5Tによって中間転写ベルト7上に転写される。中間転写ベルト7上に形成された5色(YMCKT)のトナー像は、ローラ7cと対向して配置された二次転写手段としての二次転写ローラ8によって記録紙Pに転写される。記録紙Pに転写されずに中間転写ベルト7に残った転写残トナーは、中間転写ベルトクリーナー7dによって除去される。そして、記録材としての記録紙P上に転写されたトナーは、定着装置9によって加圧されながら加熱溶融されて記録紙に定着される。また、一次転写後に感光ドラム1Y〜1T上に残った転写残トナーは、清掃部材としてのクリーニングブレード6Y〜6Tにより除去される。なお、現像容器に透明トナーを収容し感光体上に透明トナー像を形成する透明ステーションを有色画像形成部に対して透明画像形成部と呼ぶ。
【0021】
続いて、現像装置4について図2を用いて詳しく説明する。図2の(a)は現像装置周辺の断面図、図2の(b)は現像装置周辺の俯瞰図である。
【0022】
■(現像装置について)
現像装置4は現像剤を収容する現像容器4aを備える。現像容器4a内に収容する現像剤は、トナーとキャリアを含む2成分現像剤である。現像容器4a内に収容された現像剤は、現像スリーブ4fから遠い側の撹拌室に配置された撹拌スクリュー4cで撹拌し、トナーは撹拌スクリュー4cで撹拌されることで摺擦されて帯電する。
【0023】
撹拌室で撹拌されたトナーは、隔壁によって隔てられた現像スリーブ4fに近い側の搬送室に配置された搬送スクリュー4bにより現像スリーブと略平行に搬送される(図中の矢印参照)。
【0024】
そして、搬送スクリュー4bによって搬送された現像剤は、現像剤担持手段としての現像スリーブ4fに担持される。現像スリーブ4fの内部にはマグネットローラ4dが配置されており、スリーブ上にキャリアを引き付けて磁気穂を形成する。そして、現像装置4は現像スリーブ4f上に担持された現像剤の穂を規制する規制部材としての現像ブレード4eを備え、現像ブレード4eによって規制した現像剤を現像部へと搬送する。具体的には現像ブレード4eと現像スリーブ4fの間隙は500μmし、現像スリーブ4f上の単位面積当りの現像剤コート量を30mg/cm^2に規制した。
【0025】
なお、本実施例の現像スリーブ4fの直径は20mm、感光体ドラム1の直径は80mm、現像スリーブ4fと感光体ドラム1との最近接領域を約400μmの距離とした。また、現像スリーブ4fはステンレス(非磁性材料)で構成され、現像スリーブ4fの内部には磁界手段であるマグネットローラ4dが非回転状態で設置されている。また、本実施例の現像スリーブ4fに−500Vの直流電圧とピーク間電圧が1800Vで周波数fが12kHzの交流電圧を重畳した現像バイアス電圧を印加している。
【0026】
■(トナー補給機構について)
続いて、現像により消費されたトナーを現像容器に補給する補給機構について説明する。
【0027】
図2の(a)に示すように、現像装置4の上部にトナーとキャリアを混合した2成分現像剤を収容するホッパー4gが配置される。ホッパー4gに収容された補給用の現像剤補給スクリュー4hにより現像容器へ補給される。補給スクリュー4hは現像装置4で消費されたトナー量に応じて回転し、ホッパー4gから現像容器4aへ現像剤を補給する。ホッパー4gから現像容器4aへ補給する現像剤の補給量は、補給スクリュー4hの回転数によっておおよそ定められる。なお、補給スクリュー4hの回転数は後述する画像データのビデオカウント値と、感光体ドラム1上に形成した基準となる静電像を現像したトナー像(パッチ)の濃度を検知する不図示の濃度センサの検知結果から決定される。
【0028】
■(現像容器に収容される現像剤について)
続いて、各現像容器に収容される現像剤について簡単に説明する。本実施例の現像剤はトナーとキャリアを含む2成分現像剤である。本実施例の各現像容器に収容されるトナーは着色材の色を除き略同一のものを用いた。
【0029】
トナーは、ポリエステルのような結着樹脂(バインダ)に顔料などの着色剤を分散したものである。また、トナーは流動性や帯電性を改善するために、コロイダルシリカ微粉末等の外添剤と呼ばれる粒子を外添される。本実施例のトナーは、結着樹脂として負帯電性のポリエステル系樹脂を用い、トナーの体積平均粒径は4μm以上、10μm以下のものを用いた。
【0030】
また、本実施例で用いたキャリアは、重量平均粒径が20〜60μmの重量酸化物フェライトを用い、抵抗率は10^7Ωcm以上のものを用いた。なお、キャリアとして鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、クロム、希土類などの金属、及びそれらの合金を用いることもできる。
【0031】
ここで、透明トナーは有色トナー(YMCK)に含有される着色剤(顔料)が含まれていないことを除き略同一である。なお、透明トナーとは未定着状態では、粒径によっては光を散乱させ白色に見える場合がある。しかし、定着装置で記録材上に加熱定着された後は溶融して無色透明のトナー層を形成する。
【0032】
§2.{画像形成装置の制御システムについて}
続いて、画像形成装置の各部を制御する制御回路のシステム構成についてブロック図を用いて説明する。また、トナー消費量に対応する情報として本実施例で用いるビデオカウント値について詳述する。
【0033】
■(制御ブロック図について)
図3は画像形成装置100のシステム構成を説明するためのブロック図である。画像形成装置は画像形成装置の各部を制御する制御手段としてのCPU201(Central Processing Unit)を備える。また、装置は制御プログラムを格納するROM202(Read Only Memory)と、RAM203(Randam Acsess Memory)を備える。CPU201はROM202に格納されたプログラムに従い動作する。また、RAM203はビデオカウント値やパルスカウント値を保持させてビデオカウンタ203aやパルスカウンタ203bとして機能させたり、画像処理に用いるγLUT203cを展開する。CUP201はRAM203に格納や保持展開された情報を用いて入力された画像データを処理したりする。
【0034】
また、画像形成装置100は外部からの画像形成信号や記録材上に形成すべき画像の信号を受ける受信手段としてのEthernet(登録商標) I/F204を備える。画像形成装置はEthernet(登録商標) I/F204等のインタフェースを介して接続されたPC等の情報処理装置やイメージスキャナと接続され、入力された画像信号に応じた画像をプリンタエンジン205で出力する。
【0035】
なお、外部から入力される画像信号の多くはRGB信号で入力されることが多く、CPU201はプログラムに従いRGB信号をCMY画像へと変換する。具体的には、CPU201はLOG変換等により入力された輝度データとしてのRGB画像データを濃度データとしてのCMY画像データへと変換する。また、CPU201はCMY画像データをUCR(Under Color Remobal)処理や、RAM203に展開されたγLUT(γLook UpTable)を用いた濃度補正処理を行う。このように、入力された画像データはプリンタエンジン用で出力可能な画像データとしてのYMCK画像データへと処理される。また、RAM203には後述する制御に用いる変数(例えば、劣化積算値203d:X(Y〜T))などの情報が格納記憶することができる。
【0036】
また、本実施例では透明トナーを用いて出力する画像を指定する透明画像データ(T画像データ)は、各領域(画素)にどの程度の透明トナーを形成するかを指定したデータとする。
【0037】
制御手段としてのCPU201はRAM203上に展開された画像データに基づき、各色の画像形成ステーションが備える感光体上に露光するレーザスキャナ3へ送信するパルス信号を生成する。具体的には、所望のトナー量を感光体上に形成するための露光を行うためにPWM(Pals width modulation)処理をして生成する。本実施例では、画像データの濃度レベル(例えば、256段階)が大きいほど、出力するパルス信号のパルス幅を長くなるように変換し、変換されたパルス信号をプリンタエンジン205のレーザスキャナ3(205a)へ送信する。また同様に、制御手段としてのCPU201はプリンタエンジン205の各部(例えば、現像装置に電圧を印加する電源回路205bなど)を制御する。
【0038】
■(各色のトナー消費量に関する情報)
本実施例では、トナーの消費量の指標となる情報としてビデオカウント値を用いる。ここで、ビデオカウント値とは、入力された画像データを変換した後のYMCK画像データにおける1画素毎の濃度レベル(0〜255レベル)を画像1面分積算した値を指す。つまり、ビデオカウント値は取得手段としてのCPU201がRGB画像データを変換することで取得する。なお、説明の都合上、600dpi(dot per inch)の解像度、8bit(256段階)の諧調でA4サイズの画像を出力する際に、出力する画像の全面を255レベルでトナーを形成する場合のビデオカウント値は512とする。
【0039】
本実施例では、CPU201はYMCK画像データから各色のビデオカウント値をRAMに格納保持する。具体的には、YMCK画像データのイエローステーションのレーザスキャナ3Yが露光に用いる画像データは、イエロートナーの消費量の指標となる情報として、のビデオカウント値:V(Y)としRAMに格納保持される。他の色についても同様に、マゼンタトナーの消費量の指標であるビデオカウント値V(M)や他の色(CKT)についてもRAMに格納される。
【0040】
また、トナーの消費量の指標となる情報として、ビデオカウント値の代わりにレーザスキャナ3に入力されるレーザスキャナを駆動する信号のパルス数(又はパルスONの時間)をカウントしたもの用いてもよい。この場合にもビデオカウント値と同様に、RAM203に各色のパルス数を格納保持すればよい。
【0041】
§3.{有色トナー吐き出し制御について}
続いて、本件の特徴部である劣化トナーの吐き出し制御に関してフローチャートを用いて説明する。従来から、現像装置内でトナーが現像ブレードやスクリューにより長時間摺擦されると、トナーの表面から外添剤が剥がれ落ちたり、トナーの表面に外添剤が埋め込まれたりすることが知られている。このように、劣化トナーの割合が高くなるとトナーの流動性の低下や帯電性能の悪化して、出力される画像品質が低下する。そこで、記録材に出力される画像の品質の低下を抑制するために、ダウンタイム(連続画像形成を中断する期間)を設けて、現像装置4内の劣化したトナーを感光体ドラム1の非画像域(いわゆる紙間)に現像し、劣化トナーをリフレッシュする。
【0042】
透明トナーと有色トナーを用いて画像形成可能な装置では、ユーザが選択した画像形成モードによって、透明トナーの消費量が有色トナーと比べて少なくなる場合がある。具体的には、透明トナーを部分的に形成してグロスマークを形成する場合や、透明トナーを使うことなく有色トナーのみで画像を形成する場合に、透明トナーの消費量が少なくなる。そのため、透明トナーで画像を形成するステーションの劣化トナーの吐き出しするための動作(シーケンス)を、有色トナーと同等にすると生産性が著しく低下してしまう。本実施例では、前述の課題に対して優位性のある透明トナーの吐き出し制御についてフローチャートを用いて説明する。
【0043】
■(有色トナーの吐き出し判断フローについて)
図4は有色トナーの吐き出しを実行するタイミングを説明するためのフローチャートである。劣化した有色トナーを吐き出すと共に、新しいトナーを補給する処理(S107)については、次項に詳述する。
【0044】
吐き出し制御とは、連続画像形成時に消費されるトナー量が少ないときに劣化したトナーを強制的に消費させる制御である。制御手段としてのCPU201は入力された一連の画像形成命令(画像形成JOB)によって指定された画像を出力するまでS102〜S108のステップを継続する(S101:no)。入力された画像を全て出力し終えた場合(S101:yes)に、画像形成終了シーケンス(S109)を実行する。連続画像形成中の動作について詳しく説明する。
【0045】
制御手段としてのCPU201は入力された画像信号から各色のビデオカウント値を算出(取得)する(S102)。画像を1枚出力する毎に所定量以上のトナーが消費されていれば、適宜新しいトナーが現像容器内へと補給されるため長期間現像装置内に滞留するトナーの割合は低くなる。
【0046】
ここで、ビデオカウント値は画像形成中に現像容器から感光体へと現像されるトナーの量と相関関係(比例関係)がある。そのため、各色のビデオカウント値が対応するトナー劣化閾値Vth未満の場合に、トナー消費量が少なくトナーが劣化するとみなすことができる。逆に、各色のビデオカウント値が対応するトナー劣化閾値Vth以上の場合に、トナー消費量が多くトナーが劣化しないとみなすことができる。なお、トナー劣化閾値Vthに関しては後の項で詳述する。
【0047】
上記理由から、CPU201はS102で取得したビデオカウント値とトナー劣化閾値の差を算出し(S103、Vth−Vに基づき条件分岐を行う(S104)。具体的には、CPU201は「Vth−V」が正(本件では、正は0を含むこととする)の場合(S104:yes)にS105のステップを実行し、「Vth−V」が負の場合(S104:no)にS101のステップを実行する。
【0048】
S104においてトナー劣化閾値Vthの方がS102で取得したビデオカウント値よりも大きい場合、トナーの劣化が促進されるとみなす。そして、「Vth−V」に対応する量をトナー劣化した量としてみなし、その積算値である劣化積算値Xが所定値を超えた場合(S106:yes)に、有色トナーを感光ドラムへ吐き出すシーケンス(S107)を実行する。ここで、劣化積算値Xはビデオカウント値Vやトナー劣化閾値Vthと同様に色毎にRAM203に格納されている。
【0049】
定義済み処理であるS107については次の項で詳述する。なお、S107は有色トナー(YMCK)の劣化積算値X(Y)、X(M)、X(C)、X(K)のいずれ一つが実行閾値Aを超えた場合にS107を実行するものとする。
【0050】
S107の処理を行った後に実行されるS108において、CUP201はRAMに格納された劣化積算値Xをリセットし、続いてS101の処理を実行する。以上が連続画像形成時に有色トナーが劣化したか否かを推定する制御手順である。S101において、一連の画像形成が終了した場合(S101:yes)、CUP201は画像形成部に印加する電圧を順次OFFするように電源回路205bを制御する(S109)。なお、画像形成終了時に実行されるシーケンス実行時(後回転時)に劣化積算値Xに対応する有色トナーを感光ドラムへ吐き出すと共に、劣化積算値Xをリセットしてもよい。
【0051】
■(有色トナーの吐き出しシーケンス(感光体)について)
続いて、図4の定義済み処理であるS107について詳しく説明する。図5はS107で実行する処理について詳しく説明するためのフローチャートである。図4のS106において、劣化積算値Xが実行閾値Aを超えた場合((実行閾値A−劣化積算値X)が負の場合)に、CPU201は連続画像形成を中断して現像容器からトナーを感光ドラム1へ吐き出す。
【0052】
具体的には、CPU201は、吐き出し実行閾値Aを超えた色のステーションが備える現像容器から実行閾値Aのビデオカウント値に相当する量のトナーを感光体ドラムに吐き出す。同時に、実行閾値Aを超えていない色のステーションについては、現在の劣化積算値Xに相当するビデオカウント値に相当する量のトナーを感光ドラムの紙間に対応する領域に吐き出す(S201)。なお、劣化したトナーを感光ドラムへ吐き出す(排出する)ために要する時間(ダウンタイム)を最小限に抑えるため、感光ドラムの長手方向に対して帯状に劣化トナーが吐き出されるように感光体を露光する。
【0053】
続いて、CPU201は感光ドラム上に吐き出されトナーが中間転写ベルトに転写されないように、通常画像形成時とは逆の極性の転写バイアスを転写ブレードに印加するよう制御する(S202)。
【0054】
CPU201は転写部を通過したトナー帯が各ステーションの感光ドラムを清掃するクリーニングブレードで除去されるように、感光ドラムの駆動を継続する(S203)。
【0055】
感光ドラム上に吐き出したトナー帯をクリーニングブレードで除去完了した後、CPU201は感光ドラムから中間転写体へ正規極性のトナーを転写する電界を形成する極性の転写バイアスを転写ブレードに印加するように制御する(S204)。以上が一定以上トナーが劣化した場合に、有色トナーを感光ドラムへ吐き出す制御に関する説明である。
【0056】
§4.{透明トナーの吐き出し制御について}
前述の通り、ユーザが記録材の全面に透明トナーを形成して銀塩写真のような光沢度の高い出力を求める場合には透明トナーの消費量は多い。逆に、透明トナーを使用することなく有色トナーだけで画像を形成することも考えられる。その場合に、有色トナーと比べて透明トナーが劣化して透明トナーの吐き出しによるダウンタイムで生産性が低くなる。そこで、本実施例では透明トナーの劣化を抑制するために、人に感知されない程度の透明トナーを画像形成する記録材上に吐き出すことで、ダウンタイムの発生を抑制する。
【0057】
■(透明トナーの吐き出し判断フローについて)
図6は透明トナーの吐き出しを実行するタイミングを説明するためのフローチャートである。記録材上に少量の透明トナーを吐き出すシーケンス(S305)と、画像形成を中断して劣化した透明トナーをクリーニングブレードで回収させるシーケンス(S307)については、次項に詳述する。
【0058】
制御手段としてのCPU201は入力された一連の画像形成命令(画像形成JOB)によって指定された画像を出力するまでS302〜S308のステップを継続する(S301:no)。入力された画像を全て出力し終えた場合(S301:yes)に、画像形成終了シーケンス(S309)を実行する。連続画像形成中の動作について詳しく説明する。
【0059】
制御手段としてのCPU201は入力された画像信号から透明トナーの消費量に対応する情報としてビデオカウント値V(T)を算出(取得)する(S302)。
【0060】
続いて、CPU201はS302で取得したビデオカウント値V(T)とトナー劣化閾値Vthの差を算出し(S303、Vth−Vに基づき条件分岐を行う(S304)。具体的には、CPU201は「Vth−V(T)」が正の場合(S304:yes)にS305のステップを実行し、「Vth−V」が負の場合(S304:no)にS301のステップを実行する。
【0061】
S304においてトナー劣化閾値Vthの方がS302で取得したビデオカウント値V(T)よりも大きい場合、トナーの劣化が促進されるとみなす。
【0062】
ここで、透明トナーのビデオカウント値V(T)がトナー劣化閾値Vthよりも低い場合に、有色トナーと同じようにVth−V(T)を劣化積算値X(T)に加えると、透明トナーを吐き出すための連続画像形成の中断が頻繁に発生してしまう。そこで、本実施例では連続画像形成中の記録材に透明トナーを形成する(S305)。
【0063】
S305において、CPU201は人の目に知覚できない程度の透明トナーを記録材上に薄く形成する。人の目に知覚出来ない程度の量の透明トナーを記録材上に吐き出したとしても限度がある。そのため、記録材に吐き出しきれなかった透明トナーの劣化分は透明トナーの劣化積算値X(T)に反映される(S305)。
【0064】
そのため、制御手段としてのCPU201は後述する定義済み処理S305中で更新された劣化積算値X(T)が実行閾値Xを超えたか否かを判断する(S306)。透明トナーの劣化積算値X(T)が実行閾値Xを超えた場合(S306:yes)、CPU201はS307の処理を実行する。また、透明トナーの劣化積算値X(T)が実行閾値X未満の場合(S306:no)、CPU201はS301の処理を実行する。
【0065】
透明トナーの劣化積算値X(T)が実行閾値Aを超えた場合、連続画像形成を中断して劣化した透明トナーを感光ドラムへ吐き出すと共に、クリーニングブレードで除去する(S307)。そして、実行閾値Aに対応する量の透明トナーをクリーニングブレードで除去した後、透明劣化積算値:X(T)をリセットする(S308)。
【0066】
S301において、一連の画像形成が終了した場合(S301:yes)、CUP201は画像形成部に印加する電圧を順次OFFするように電源回路205bを制御する(S309)。なお、画像形成終了時に実行されるシーケンス実行時(後回転時)に各劣化積算値X(Y〜T)に対応する有色トナー及び透明トナーを感光ドラムへ吐き出すと共に、劣化積算値X(Y〜T)をリセットしてもよい。
【0067】
■(透明トナーの吐き出しシーケンス(記録材)について)
続いて、本実施例における特徴的な制御である透明トナーの記録材への吐き出しについて説明する。透明トナーは有色トナーと異なり顔料(着色剤)が含まれていない。顔料が含まれていないため定着されても色味を変えずに光沢度のみを変える。そのため、透明トナーは有色トナーと異なり微量であれば記録材に形成されても人に知覚されにくい。
【0068】
そこで本実施例において、透明トナーの劣化積算値X(T)が増加する速度を抑制するために、一定量づつ連続画像形成中の記録材へ吐き出す制御を実行する。図7は図6に記載のS305について詳しく説明するためのフローチャートである。
【0069】
制御手段としてのCPU201はS303で算出したVth−V(T)が透明トナー薄塗り閾値Uと比較する(S401)。S401においてVth−V(T)が薄塗り閾値U未満(S401:no)の場合、Vth−V(T)に対応する量の透明トナーを次の記録材の全面に均一に形成する(S402)。この場合には、透明トナーが劣化しないとみなせる量を消費することができているため、劣化積算値X(T)は更新しない。
【0070】
逆に、S401においてVth−V(T)が薄塗り閾値U以上(S401:yes)の場合、薄塗り閾値Uに対応する量の透明トナーを次の記録材の全面に均一に形成する(S403)。薄塗り閾値Uはこれ以上の量を記録材の全面に形成すれば連続出力された記録材同士の光沢度がユーザに知覚できる程ばらついてしまう。そのため、薄塗り閾値U以上の量を記録材上に吐き出さないようにする。
【0071】
前述の通り、Vth−V(T)が薄塗り閾値U以上の場合には、透明トナーを十分に消費できないため透明トナーは劣化する。そこで、透明劣化積算値X(T)に、U−(Vth−V(T))を加算する(S404)。以上が連続画像形成中に透明トナーを記録材へと薄塗りするシーケンスである。
【0072】
■(透明トナーの吐き出しシーケンス(感光体)について)
S401〜S404に示すように透明トナーを画像が形成される記録材上に微量づつ形成しても、薄塗り閾値Uを超える分には透明トナーの劣化が蓄積される。そのため、透明トナーの劣化積算値X(T)が実行閾値Aを超えた場合(S306:yes)に、連続画像形成を中断して透明トナーを消費するシーケンスを実行する。
【0073】
図8は図6に記載のS307について詳しく説明するためのフローチャートである。CPU201は透明トナーの吐き出しシーケンス:S501〜S504と有色トナーの吐き出しシーケンス:S505〜S508を並列に実行する。
【0074】
制御手段としてのCPUは図5に示した有色トナーの感光ドラムへの吐き出しシーケンスと同様に、感光ドラムへと透明トナーを吐き出させる。具体的には、CPU201は、吐き出し実行閾値Aを超えた透明トナーステーションが備える現像容器から実行閾値Aのビデオカウント値に相当する量の透明トナーを感光体ドラムに吐き出す(S501)。そして、感光ドラム上に吐き出された透明トナーの帯を転写部に画像形成時に印加する極性とは逆極性の転写バイアスを印加し(S502)、クリーニングブレードで除去する(S503)。そして、感光ドラム上に吐き出された透明トナーを除去し終わると、1次転写ブレードに印加する転写バイアスの極性を画像形成時に印加する極性に戻す(S504)。
【0075】
それと並行して、CPU201は各有色トナーステーションからも劣化蓄積値Xに対応する量の有色トナーを感光ドラムに吐き出すように制御する(S505)。そして、有色トナーの帯を転写部に逆極性のバイアスを印加してクリーニングブレードへと搬送させ(S506)てクリーニングブレードで除去した後(S507)、転写バイアスを所定の極性に戻す(S508)。
【0076】
なお、透明トナーを感光ドラムへと吐き出すのと並行して、各感光ドラムへ吐き出される有色トナーの量は対応するステーションの劣化積算値X(Y,M,C,K)に対応する量である。
【0077】
なお、図5で示した有色トナーの吐き出し実行時に、透明トナーも劣化積算値X(T)に対応する量の透明トナーを並行して吐き出してもよい。
【0078】
§5.{各閾値について}
上記フローチャートで用いた、劣化閾値Vth、実行閾値A、薄塗り閾値Uについて項目に分けて説明する。
【0079】
■(劣化閾値Vth)
以下に、劣化閾値Vthの決定方法について簡単に説明する。トナー劣化閾値VthとはビデオカウントVと比較可能な無次元情報である。トナー劣化閾値Vthは、所定印字率以下の画像を形成することで現像容器内のトナーが劣化して画像不良(かぶり・トナー飛散・粒状感等の悪化)が発生してしまうと判断するための閾値である。
【0080】
具体的には、各色の印字率を振って(0%〜10%まで)連続画像形成をA4サイズ用紙片面で1000枚行い、連続画像形成を実施する前後での画像品質の変化を調べた。この実験の結果を表1の表に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
表1において、「○」は画像品質の劣化が発生しなかったことを示し、「×」はかぶりの悪化・トナー飛散の悪化・粒状が生じたことを示す。表1の結果から、イエロートナーは印字率が3%未満、マゼンタトナーは印字率が2%未満、シアントナーは印字率1%未満、ブラックトナーは印字率3%未満でトナー飛散等が生じる。また、透明トナーは印字率10%より低い時にトナー劣化による画像劣化が生じることがわかる。
【0083】
そのため、本実施例ではトナー劣化閾値ビデオカウントはVth(Y)=15、Vth(M)=10、Vth(C)=5、Vth(K)=15、Vth(T)=51とした。トナー劣化閾値ビデオカウントは小数点以下を四捨五入して算出した。当然、トナー劣化閾値Vthは現像剤(トナー及びキャリア)の材質等に応じて異なるので適宜算出設定すれば良い。
【0084】
■(実行閾値A)
続いて、トナーを感光体へ吐き出すシーケンスを実行するか否かを判断するための実行閾値Aについて説明する。実行閾値Aは劣化したトナーが現像容器内にどの程度たまった段階で、トナーを感光ドラムへ吐き出すシーケンスを実行するかを規定する値である。実行閾値Aを低く設定すると、吐き出し頻度が高くなりダウンタイムが生じやすい半面、現像容器内の劣化トナーの割合が低いため画像不良が生じにくい。逆に実行閾値Aを高く設定すると、吐き出し頻度が低くなりダウンタイムを抑えることができる半面、現像容器内の劣化トナーの割合が高くなる。
【0085】
本実施例では、全てのステーションの吐き出しシーケンス実行閾値Aは同一である。なお、現像されるトナー量の微差が色味の差として画像に影響されやすいYMCKの実行閾値Aを透明トナーの吐き出し実行閾値A(T)よりも低くするのが好ましい。なお本実施例では実行閾値Aを512に設定している。これは、吐き出しシーケンスを実行する閾値である実行閾値Aの設定値が大きすぎると、トナー吐き出し動作を実行するまでにトナー劣化が進行する時間が多くなるためである。そのため、実行閾値AはA4〜A3サイズ用紙片面の全面ベタ画像(印字率100%の画像)のビデオカウント値と同等が望ましい。また、現像容器の容積が大きいほど(収容可能なトナー量が多いほど)トナー吐き出し実行閾値Aを大きく設定できる傾向がある。
【0086】
■(透明トナー薄塗り閾値U)
続いて、連続画像形成時にユーザによって指定されていない記録材の領域へと透明トナーを吐き出す制御に関して、記録材へ吐き出す透明トナーの限界量について説明する。
【0087】
本来、ユーザが指定していない記録材の領域へ透明トナーを形成するのは好ましくない。しかしながら、有色トナーと比べて透明トナーの消費量が少ない場合には、透明トナーを感光ドラムへと吐き出す頻度が極端に高くなる。これを抑制するために透明トナーを記録材へと吐き出すが透明トナーの量が多いと、ユーザが知覚する。
【0088】
具体的には、本発明者による肉眼による試験の結果、肉眼では光沢度差(ΔG)が1.5以下の場合には光沢度の差を感知できなかった。つまり、光沢度の差が1.5未満であれば、人間の肉眼で透明トナーが定着されているか否かを判定できないことがわかった。
【0089】
そのため、検知した紙種に応じて指定された領域以外の領域にも透明トナー層を薄く形成した場合に変動する光沢度が1.5未満となる単位面積当たりの透明トナー量を上限値として、所定量未満の透明トナーを記録材へ排出する。
【0090】
図9は記録材上に横軸に記載のビデオカウント値に対応する単位面積当たりの透明トナーの載り量(g/cm^2)を形成したときの光沢度の変化を説明するためのグラフである。図9の△印の折れ線グラフは記録紙上にクリア以外のトナーが載っていない場合を表し、○印の折れ線グラフは記録紙上に色トナー(実験ではマゼンタM)を予め全面ベタで印字した上に透明トナーを印字した場合を表している。図9の△印と○印の折れ線グラフから、透明トナーの単位面積当たりの載り量が多くなるほど表面光沢度(グロス)の変化が大きくなっているのが分かる。
【0091】
そこで、白紙の記録紙上及び他の有色トナーによる画像が形成された記録紙上の両方の場合においても人間の肉眼では見分けがつかない程度の光沢度(1.5)変化となるように透明トナー薄塗り閾値Uを決定した。つまり、指定された記録用紙片面の全面に透明トナーを薄く均一に塗ったときのビデオカウント値が薄透明トナーの薄塗り閾値ビデオカウントUである。
【0092】
ここで、図9の(a)と(b)のグラフの違いから、透明トナーの薄塗り閾値Uは、記録用紙のサイズ、記録用紙の種類・定着条件によって変更されるべきものであることがわかる。
【0093】
例えば、図9の(a)に示すような坪量80g/m^2のカラーレーザコピア推奨紙であるSK80のA4サイズ用紙では、定着器を所定のスピードで通過させたときに光沢度変化が1.5以下になるような透明トナーの薄塗り閾値Uは32である。また、SK80のA3サイズ用紙で同様の定着条件で定着する場合の透明トナーの薄塗り閾値Uは64である。
【0094】
また、図9の(b)に示すように坪量が150g/m^2の4CCグロスコート紙のA4サイズ用紙では、SK80を定着するスピードの1/3の速さで定着する場合の透明薄塗り閾値Uは48である。
【0095】
本件は、ユーザが気付かない程度の透明トナーを記録材上に薄く形成することで、透明トナーが頻繁に吐き出さなければならないことで生じるダウンタイムの発生を抑制することができる。
【0096】
そのため、制御手段としてのCPU201は記録材の種類、サイズ、定着条件等を取得し、それらに応じて透明トナーの薄塗り閾値Uを変更する。これにより、ユーザに気付かれない最大量の透明トナーを記録材に吐き出すことで、ダウンタイムの発生を低減することができる。
【0097】
§7.{評価試験と試験結果について}
以下に、上述のフローチャートで制御された画像形成装置に対して、後述する画像形成条件で連続画像形成を行ったときの吐き出し頻度について説明する。
【0098】
本実施例と比較する比較例は、ユーザによって指定されていない記録材の領域に透明トナーを薄く吐き出すことなく、有色トナーと透明トナーの劣化積算閾値にのみ基づき感光ドラムへと劣化トナーを吐き出すシーケンスのみを実行する。つまり、比較例は本実施例の特徴的な制御である記録材への透明トナーを微少量ずつ吐き出す吐き出し制御(図6:S305および図7)を実行しない。
【0099】
評価試験を行うに際して、連続画像形成をする画像について説明する。評価試験では、1枚当たりの印字率がYMCKTそれぞれの色に対してY=10%、M=15%、C=20%、K=25%、T=1%の画像(以下では、「テスト画像」と称する)をA4サイズ用紙に連続出力して評価する。以下に、比較例である全ての色(YMCKT)に関して同一の吐き出し制御を行う場合と、本実施例の吐き出し制御を行う場合の吐き出し回数について説明する。
【0100】
■(比較例の制御を採用した場合の吐き出し回数)
前述のように、A4サイズ用紙片面に全面ベタ画像(印字率100%の画像)を出力する場合のビデオカウントVは512である。そのため、A4サイズの用紙にテスト画像を出力する際の、イエローのビデオカウントV(Y)は51、マゼンタのビデオカウントV(M)は77、シアンのビデオカウントV(C)は102、ブラックのビデオカウントV(K)は128となる。また、透明(クリア)のビデオカウントV(T)は5である。
【0101】
比較例の制御を採用する画像形成装置において、前述のテスト画像をA4用紙に1000枚連続で画像形成する場合を考える。テスト画像を1枚画像形成した場合に、比較例のトナー吐き出し制御ではトナー劣化積算値Xは表2のように算出される。
【0102】
【表2】
【0103】
表2に示すように、テスト画像を1枚出力するごとに透明トナーのトナー劣化積算値X(T)は46づつ増加する(積算される)。つまり、テスト画像を出力する際には透明トナーの劣化の進行が他のトナーよりも早いことを示している。
【0104】
前述のように、吐き出し実行閾値Aが512あるから、比較例の制御を採用した画像形成装置では、テスト画像を12枚(512/46)出力するごとに吐き出しシーケンスが実行される。
【0105】
したがって、比較例の制御を採用する装置でテスト画像を1000枚連続して出力する際に、83回も画像形成を中断しトナー吐き出しを実行する。
【0106】
■(本実施例における吐き出し回数について)
続いて、本実施例の制御を採用する装置において、前述のテスト画像を連続して1000枚出力する際の吐き出し実行回数について説明する。
【0107】
表3は本実施例の制御を採用した画像形成装置における、トナー劣化積算値Xの推移を説明するための表である。
【0108】
【表3】
【0109】
本件制御を採用する場合においても、テスト画像を一枚出力する際の透明トナーのビデオカウントは5である。そして、比較例と同じ透明トナーの劣化閾値Vth(T)と透明トナーのビデオカウント値V(T)の差分は+46である。
【0110】
本実施例では、A4用紙全面に定着したとしても人の目で光沢差を感知できない程度の量Uの透明トナーを形成する。前述のように、記録材として「紙種別:SK80、サイズ:A4」用紙を用いる場合の透明トナーの薄塗り閾値Uは32である。なお、画像形成を行う用紙の種類の情報は紙種取得手段としてのCPU201が取得し、種別記憶部としてのRAM203へ格納する。
【0111】
そこで、テスト画像を出力する場合は、薄塗り閾値U:32よりもVth−V(T):46が大きいため(S401:yes)、A4サイズの用紙全面に薄塗り閾値U32に対応する量の透明トナーを次の用紙の全面に薄塗りする(S403)。
【0112】
そして、薄塗りしても劣化する分(U−(Vht−V(T))に対応するビデオカウント値14を劣化積算値X(T)に加算する。したがってテスト画像を1枚出力するごとに透明トナーの劣化積算値X(T)は14ずつ増加する(積算される)。
【0113】
前述のように、透明トナーを感光体へ吐き出すシーケンスを実行する実行閾値Aが512あるから、本実施例の制御を採用した画像形成装置では、テスト画像を37枚(512/14)出力するごとに吐き出しシーケンスが実行される。
【0114】
したがって、本実施例の制御を採用する装置でテスト画像を1000枚連続して出力する際には、比較例では83回も画像形成を中断しトナー吐き出しを実行していたのに対して、27回しか中断しなくて良くなる。つまり、比較例の制御に比べて本実施例の制御を採用する場合には、ダウンタイムを約1/3に軽減することができる。
【0115】
以上のように、本実施例に開示の制御を採用することにより、肉眼で識別されるほどの光沢度変化を生じさせることなく、透明トナーの印字率が低い場合における透明トナーの劣化を抑制することができる。なお、記録紙上へ少量の透明トナーを消費させる構成で透明トナーの劣化を十分に抑制することができなかった場合にのみ、画像形成を中断してトナー吐き出し動作を実行する。
【0116】
なお、有色トナーが劣化する場合には、図8のように透明トナーと有色トナーを並行して感光体へと吐き出すように制御していることでトナーの吐き出し頻度が極端に増加することはない。
【0117】
なお、本実施例ではトナーの劣化をビデオカウント値に基づき判断したが、トナー劣化と相関関係のある数値であれば、現像スリーブの回転時間など他の数値で代用してもかまわない。
上記構成を参考として、本件の特徴部分である制御について詳しく説明する。
【0118】
上述したように、連続画像形成中の記録材へ透明トナーを吐き出すことにより、透明トナーの消費量が増え、現像器内における透明トナーの滞留が緩和される。しかし、グロスマークを形成するモード(透明部分モード)においても透明トナーの劣化を抑制するため、透明トナーを形成すべき領域外に透明トナー吐き出すとグロスマークが視認しづらくなるという問題が生じる。
【0119】
そこで、本実施例では、透明トナーの記録材の指定領域以外への吐き出しシーケンスの実行を画像形成モードに応じて切替え制御する。以下に、画像形成モードについて説明した後、各モードにおける透明トナーの記録材への吐き出し方法の差について説明する。
§1.{画像形成モードについて}
本実施例の画像形成装置は3つの画像形成モードを切替え実行可能である。なお、少なくとも2つのモードを切替え実行できればよい。ここで、3つのモードは「透明全面モード」、「透明部分モード」、「透明非使用モード」である。
【0120】
「透明全面モード」は記録材の画像形成可能な領域の全面に透明トナーを形成して銀塩写真のような均一な光沢の印刷物を出力するためのモードである。また、「透明部分モード」は記録材の一部に透明トナーを形成して光沢差により視認可能なウォーターマーク(グロスマーク)を形成するためのモードである。また、「透明非使用モード」は透明トナーを使用することなく、有色トナーのみで記録材に画像を出力するモードである。なお、画像形成モードの実行切替えは、ユーザが指定する有色トナー画像を形成するための画像データと透明トナー画像を形成するための画像データに基づき、CPU201が判断して切替え実行してもよい。続いて本実施例の画像形成モードの指定方法について説明する。
【0121】
■(モード選択画面)
図10は画像形成モードをユーザに選択させたり、各情報を設定させたりするための画面である。図10に示す画面(UI)は装置本体が備えるタッチパネル206に表示してもよいし、ネットワークを介して接続されるPC等の画面等に表示してもよい。なお、タッチパネル206に表示する画面はタッチパネル206の入力操作を受けCPU201が遷移させる。
【0122】
図10の(a)は画像形成モードの切替え画面である。ユーザがB001のボタンを選択すると「透明部分モード」が、B002のボタンを選択すると「透明全面モード」が、B003のボタンを選択すると「透明非使用モード」が選択される。いずれのモードが指定された場合においても、そのモードでどのような画像を出力するかを指定する必要がある。そのため、B001〜B003のボタンが選択されると、有色画像と透明画像を指定する画像データを設定するための画面(図10の(b)又は図10の(c))へと遷移する。なお、図10の(a)に示すB004はユーザが選択したモードがどれであるかを指し示すインジゲータである。
【0123】
図10の(a)の右端にあるB005は有色画像原稿と透明画像原稿を重ねて表示したプレビュー画面である。ユーザが印刷ボタンB006を押すとプレビュー画面に表示された画像が記録材へと出力される。
■(画像データ設定画面)
図10の(b)は有色画像原稿をユーザに設定させるための画面である。また、図10の(c)は透明画像原稿をユーザに設定させるための画面である。なお、ユーザが「透明全面モード」を選択した場合には、記録材の画像形成可能な全域に所定量(本実施例では全画素200レベル)の透明トナーを形成する透明画像原稿がユーザによる指定なしで自動的に設定される。また、図10の(b)の画面においてユーザによってB102が選択された場合には、図10の(c)の画面に遷移し、図10の(c)の画面においてB101が選択された場合には、図10の(b)の画面に遷移する。
【0124】
図10の(b)においてユーザがB110を選択することで、画像形成装置やPC等に格納された画像データを有色画像原稿として指定することができる。また、ユーザによって選択された有色画像原稿の画像データはプレビュー画面B111に表示される。また、図10の(c)においてユーザがB120を選択することで、画像形成装置やPC等に格納された画像データを透明画像原稿として指定することができる。同様に、ユーザによって選択された透明画像原稿の画像データはプレビュー画面B121に表示される。
【0125】
以上のように透明画像原稿と有色画像原稿の設定を終えた後、B112やB122を選択することで図10の(a)に示す画面へと遷移する。
【0126】
このように、ユーザによって指定された透明画像原稿(画像データ)に基づき、画像形成装置は記録材の画像データで指定された領域に、指定された量の透明トナーを形成する。なお、「透明非使用モード」が選択された場合は、透明画像原稿の設定は不要であるためB102を選択した場合には透明トナーを使用するモードに切り替える必要があるかユーザに選択させるための警告表示を行う。
§2.{画像形成モードに応じた制御切替え}
連続画像形成における透明トナーの劣化を抑制するために、制御手段としてのCPU201はユーザによって指定された「画像形成モード」と「画像データ」に基づき、記録材へ透明トナーの吐き出し制御の実行を以下のように切り替える。本項で各モードにおいてどのように記録材へ透明トナーを吐き出すかについて述べ、次項でフローチャートを用いて制御の切替えについて説明する。
■(透明部分モード:B001において)
以下に透明部分モードが選択された場合の、透明トナーの劣化抑制のための記録材への透明トナーの吐き出し制御について説明する。透明部分モードとは記録材の一部に透明トナーを形成することで、例えば光沢差により視認できるグロスマークを作成する際に指定されるモードである。このモードでは、画面透明原稿として図10の(c)で指定された画像データに基づき、画像データで指定された記録材の領域に画像データで指定された量の透明トナーを形成する。
【0127】
前述のように、透明トナーの劣化の促進を抑制するために、記録材上の全領域(言い換えれば、画像データによって指定された領域以外)へ透明トナーを形成すると、グロスマークが視認しづらくなる。そのため、透明部分モードにおいては、少なくとも画像データで指定された領域外へ透明トナーを形成させない。
【0128】
つまり、ユーザが表現したかった通りに画像データで指定された通りの透明トナーを指定された領域に形成するか、指定された領域に形成する透明トナーの量を増やすという処理を行う。
■(透明全面モード:B002において)
続いて透明全面モードが選択された場合の、透明トナーの劣化抑制のための記録材への透明トナーの吐き出し制御について説明する。透明全面モードとは記録材のトナーを形成することが可能な全領域に透明トナーを形成するモードである。当然、このようなモードにおいては大量の透明トナーが使用され、透明トナーの現像器内における滞留時間が短くなる。そのため、透明トナーはリフレッシュされる。そのため、透明全面モードが選択された際には、透明トナーの劣化程度の指標である透明劣化蓄積値X(T)をリセットする。
【0129】
当然、劣化蓄積値をリセットするに足る十分な量の透明トナーが消費されることが要求される。本件では、「透明全面モード」においてA4サイズで2枚以上の画像を出力したときに透明の劣化積算値X(T)をリセットする。
■(透明非使用モード:B003おいて)
透明非使用モードが選択された場合については、S305に記載の記録材への透明トナーの吐き出し制御を常に実行する。
§3.{フローチャート用いた動作説明}
続いて、フローチャートを用いて画像形成装置の動作を説明する。図11はモードに応じた記録材への透明トナーの吐き出し実行制御を説明するためのフローチャートである。
【0130】
制御手段としてのCPU201はユーザが選択したモードを取得し、取得したモードに応じて処理を分岐させる(S601)。選択された画像形成モードが「部分透明モード」以外の場合(S601:no)にはS602の処理を実行し、「部分透明モード」であった場合(S601:yes)には、S604の処理を実行する。
【0131】
透明部分モード以外が選択された場合には、S305に記載された記録材全面への透明トナーの吐き出しが許可される(S602)。また、透明全面モードが選択されている場合には、透明劣化積算値X(T)をリセットする(S603)。
【0132】
部分透明モードが選択された場合には、CPU201は透明原稿データとして選択された画像データを解析する。具体的には、透明トナーを部分的に形成する領域の画像データの全域が255レベルであるか否かを判定する(S604)。透明トナーを部分的に形成する領域の画像データの全域が255レベルでない場合(S604:no)、指定された領域に形成するトナーの量を増やすことで、透明トナーの劣化を抑制する(S605)。つまり、透明トナーを画像データで指定された領域内であれば光沢差が低減されグロスマークが視認されにくくなるという課題が生じないため、指定された領域内であれば記録材へ透明トナーを吐き出すことを許可する。具体的には、画像データが0レベル以外(1レベル〜245レベル)の領域(画素)に形成する透明トナーの量を所定量だけ増加させる。
【0133】
また、画像データで指定された透明トナーを形成する領域の全域が255レベルである場合(S604:yes)や、指定された画像データ通りに透明トナーを忠実に形成したい場合は、画像データで指定された通りに透明トナーを形成する(S606)。
【0134】
以上が、モードに応じた透明トナーの劣化抑制のためのシーケンスを切り替える動作の説明である。このように画像形成モードに応じて動作させることで、透明劣化による連続画像形成の中断頻度を低くしつつも、グロスマークが視認しにくくなるという弊害を抑制することができる。
【符号の説明】
【0135】
1Y〜1T 感光ドラム(像担持体)
3Y〜3T レーザスキャナ(露光手段)
5Y〜5T クリーニングブレード(清掃手段)
102Y〜102B 現像装置(有色現像装置)
102T 現像装置(透明現像装置)
7 中間転写ベルト(中間転写体)
201 CPU(制御手段、取得手段(紙種、モード、領域、トナー量))
203 RAM(記憶手段、カウンタ、種別記憶部)
206 タッチパネル(指定手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有色トナーと透明トナーを用いて記録材上に画像を形成する画像形成部と、
記録材に形成する透明トナーの量に関する情報を取得する取得手段と、を有し、
前記取得手段によって取得された記録材へ形成する透明トナーの量が所定量より少ない場合、前記取得手段で取得された透明トナーの量よりも多い透明トナーを記録材へ形成するモードを実行可能な画像形成装置であって、
記録材の指定された領域に透明トナーを形成する場合には、前記取得手段によって取得された記録材へ形成する透明トナーの量が所定量未満である場合にも、記録材の前記指定された領域を除く画像形成可能な領域への透明トナーの形成を行わないように制御する制御手段を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
記録材の光沢度と記録材に所定量の透明トナーを形成した場合の光沢度の差は1.5未満であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項1】
有色トナーと透明トナーを用いて記録材上に画像を形成する画像形成部と、
記録材に形成する透明トナーの量に関する情報を取得する取得手段と、を有し、
前記取得手段によって取得された記録材へ形成する透明トナーの量が所定量より少ない場合、前記取得手段で取得された透明トナーの量よりも多い透明トナーを記録材へ形成するモードを実行可能な画像形成装置であって、
記録材の指定された領域に透明トナーを形成する場合には、前記取得手段によって取得された記録材へ形成する透明トナーの量が所定量未満である場合にも、記録材の前記指定された領域を除く画像形成可能な領域への透明トナーの形成を行わないように制御する制御手段を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
記録材の光沢度と記録材に所定量の透明トナーを形成した場合の光沢度の差は1.5未満であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−50611(P2013−50611A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188964(P2011−188964)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]