説明

画像形成装置

【課題】無端帯状の像保持体と搬送部材の片寄りを補正しつつ、像保持体に保持された画像への悪影響を低減すること。
【解決手段】無端帯状の像保持体(B)のを支持する第1の片寄り補正部材(Rw)と、像保持体(B)の片寄りを補正する方向に第1の片寄り補正部材(Rw)を傾斜させて片寄りを補正する第1の補正制御手段(C4)と、無端帯状の搬送部材(T2e)を支持する第2の片寄り補正部材(3)と、搬送部材(T2e)の片寄りを補正する方向に第2の片寄り補正部材(3)を傾斜させて片寄りを補正する第2の補正制御手段(C5)と、を備え、単位時間当たりに像保持体(B)を幅方向に移動させる移動量が、単位時間当たりに搬送部材(T2e)を幅方向に移動させる移動量に比べて大きく設定された画像形成装置(U)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像形成装置において、無端帯状の像保持体の表面の可視像が媒体に転写される転写領域において、可視像が転写された後の媒体を表面に支持して搬送する無端帯状の搬送部材、いわゆる、搬送ベルトを使用する構成において、ベルトの片寄り、蛇行を検出して片寄りを補正する技術、いわゆるアクティブステアリング技術に関して、以下の特許文献1、2記載の技術が従来公知である。
【0003】
特許文献1としての特開2009−251322号公報には、中間転写ベルト(21)と二次転写ベルト(24)とが接触、離間可能に支持されており、中間転写ベルト(21)の片寄り度合いと二次転写ベルト(24)の片寄り度合いが共に小さい場合には、中間転写ベルト(21)の片寄りを補正するステアリングローラ(62)と、二次転写ベルト(24)の片寄りを補正するステアリングローラ(28c)とを交互に制御して、片寄りを補正する技術が記載されている。また、特許文献1記載の技術では、片寄り度合いが中程度の場合は、片寄り度合いが小さい方のベルト(21,24)のステアリングローラ(28c、62)を停止させ且つ片寄り度合いが大きい方のベルト(21,24)のステアリングローラ(28c、62)のみを制御して、一方に集中して片寄りを補正している。さらに、特許文献1記載の技術では、片寄りが大きい場合は、ベルト(21,24)どうしを離間させて、それぞれのステアリングローラ(28c、62)でベルトの片寄りを補正している。
【0004】
特許文献2としての特開2007−11107号公報には、中間転写ロール(15)に対して接触する二次転写搬送ベルト(21)のベルトウォーク補正機構(80)において、センサ(86,87)の検出結果に基づいて、剥離ロール(23)を軸方向に対して傾斜させることで、二次転写搬送ベルト(21)の片寄りを補正する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−251322号公報(「0041」〜「0055」、「0078」〜「0084」、図2)
【特許文献2】特開2007−11107号公報(「0037」〜「0044」、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、無端帯状の像保持体と搬送部材の片寄りを補正しつつ、像保持体に保持された画像への悪影響を低減することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記技術的課題を解決するために、請求項1記載の発明の画像形成装置は、
表面に可視像が保持されて回転する無端帯状の像保持体と、
前記像保持体の表面の可視像を媒体に転写する転写領域に配置されると共に、表面に媒体を支持して搬送する無端帯状の搬送部材と、
無端帯状の前記搬送部材を回転可能に支持すると共に、前記転写領域において前記無端帯状の搬送部材を挟んで前記像保持体に対向して配置され、前記像保持体の表面の可視像を前記媒体に転写する転写電圧が前記像保持体との間で印加される転写部材と、
前記無端帯状の像保持体の幅方向への片寄りを検出する第1の検出部材と、
前記無端帯状の像保持体の幅方向に沿って延び且つ前記幅方向に対して傾斜可能に支持され、前記無端帯状の像保持体を支持する第1の片寄り補正部材と、
前記第1の検出部材が前記像保持体の片寄りを検出した場合に、前記像保持体の片寄りを補正する方向に前記第1の片寄り補正部材を傾斜させて片寄りを補正する第1の補正制御手段と、
前記無端帯状の搬送部材の幅方向への片寄りを検出する第2の検出部材と、
前記無端帯状の搬送部材の幅方向に沿って延び且つ前記幅方向に対して傾斜可能に支持され、前記無端帯状の搬送部材を支持する第2の片寄り補正部材と、
前記第2の検出部材が前記像保持体の片寄りを検出した場合に、前記搬送部材の片寄りを補正する方向に前記第2の片寄り補正部材を傾斜させて片寄りを補正する第2の補正制御手段と、
を備え、
前記第1の片寄り補正部材が傾斜した場合に単位時間当たりに前記像保持体を幅方向に移動させる移動量が、第2の片寄り補正部材が傾斜した場合に単位時間当たりに前記搬送部材を幅方向に移動させる移動量に比べて大きく設定された
ことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の画像形成装置において、
前記像保持体が前記幅方向に移動可能な第1の移動範囲に対して、前記搬送部材が前記幅方向に移動可能な第2の移動範囲の方が、広く設定されたことを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の画像形成装置において、
前記搬送部材を支持し且つ前記搬送部材を回転させる駆動部材と、
前記駆動部材に回転を伝達する伝達系であって、前記駆動部材に予め設定された駆動力以上の駆動力が設定された場合に、前記駆動部材に対する回転の伝達を制限する伝達制限部材を有する前記伝達系と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、単位時間当たりに像保持体を幅方向に移動させる移動量が、単位時間当たりに搬送部材を幅方向に移動させる移動量に比べて大きく設定されていない場合に比べて、無端帯状の像保持体と搬送部材の片寄りを補正しつつ、像保持体に保持された画像への悪影響を低減することができる。
請求項2に記載の発明によれば、第1の移動範囲に対して第2の移動範囲の方が広く設定されていない場合に比べて、搬送部材の破損を低減できる。
請求項3に記載の発明によれば、伝達制限部材を有しない場合に比べて、搬送部材の回転の像保持体への悪影響を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は本発明の実施例1の画像形成装置の全体説明図である。
【図2】図2は、実施例1の二次転写ユニット部分の要部説明図である。
【図3】図3は実施例1の搬送ステアリングロールの説明図であり、図3Aは初期位置に移動した状態の説明図、図3Bは前補正位置に移動した状態の説明図、図3Cは後補正位置に移動した状態の説明図である。
【図4】図4は実施例1の中間転写ベルト、中間ステアリングロール、転写搬送ベルトおよび搬送ステアリングロールのベルト幅方向の位置関係の説明図である。
【図5】図5は本発明の実施例1のプリンタの制御部の機能図、いわゆるブロック線図である。
【図6】図6は実施例1の片寄り補正処理のフローチャートの説明図である。
【図7】図7は実験例の説明図であり、横軸に実験で使用した用紙、縦軸に色ズレ量を取ったグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例(以下、実施例と記載する)を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以後の説明の理解を容易にするために、図面において、前後方向をX軸方向、左右方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とし、矢印X,−X,Y,−Y,Z,−Zで示す方向または示す側をそれぞれ、前方、後方、右方、左方、上方、下方、または、前側、後側、右側、左側、上側、下側とする。
また、図中、「○」の中に「・」が記載されたものは紙面の裏から表に向かう矢印を意味し、「○」の中に「×」が記載されたものは紙面の表から裏に向かう矢印を意味するものとする。
なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明の実施例1の画像形成装置の全体説明図である。
図1において、画像形成装置Uは、操作部UI、画像読取部の一例としてのスキャナ装置U1、給紙装置U2、画像形成装置本体U3、および用紙排出部U4を有している。
【0014】
前記操作部UIは、入力部の一例としての電源ボタンやコピースタートキー、コピー枚数設定キー、テンキー等や、表示部等を有している。
前記スキャナ装置U1は、図示しない原稿を読取って画像情報に変換し、画像形成装置本体U3に入力する。
給紙装置U2は、給紙部の一例としての複数の給紙トレイTR1〜TR4と、前記各給紙トレイTR1〜TR4に収容された媒体の一例としての記録用紙Sを取り出して画像形成装置本体U3に搬送する給紙路SH1と、を有する。
【0015】
図1において、画像形成装置本体U3は、制御部Cや、前記制御部Cにより制御されて画像形成装置本体U3の各部材に給電する電源回路E等を有する。制御部Cは、スキャナ装置U1で読み取られた原稿の画像情報や、画像形成装置Uに接続された図示しない情報送信装置の一例としてのパーソナルコンピュータから送信された画像情報が送信される。
前記制御部Cは、受信した画像情報を、Y:イエロー、M:マゼンタ、C:シアン、K:黒の印刷用の情報に処理して、潜像書込装置の駆動回路の一例としてのレーザ駆動回路Dに出力する。レーザ駆動回路Dは、制御部Cから入力されたレーザ駆動信号を予め設定された時期に、各色の潜像形成装置ROSy,ROSm,ROSc,ROSkに出力する。
【0016】
各潜像形成装置ROSy〜ROSkの下方には、Y,M,C,Kの像保持体ユニットUy,Um,Uc,Ukが配置されている。
図1において、K:黒の像保持体ユニットUkは、像保持体の一例としての感光体Pkと、帯電器の一例としてのコロトロンCCkと、像保持体用の清掃器の一例としての感光体クリーナCLkとを有する。そして、他の色Y,M,Cの像保持体ユニットUy,Um,Ucも、感光体Py,Pm,Pc、コロトロンCCy,CCm,CCc、感光体クリーナCLy,CLm,CLcを有する。
なお、実施例1では、使用頻度の高く表面の磨耗が多いK色の感光体Pkは、他の色の感光体Py,Pm,Pcに比べて大径に構成され、高速回転対応および長寿命化がされている。
【0017】
感光体Py,Pm,Pc,Pkは、それぞれコロトロンCCy,CCm,CCc,CCkにより一様に帯電された後、前記潜像形成装置ROSy,ROSm,ROSc,ROSkの出力する潜像書込光の一例としてのレーザビームLy,Lm,Lc,Lkにより、感光体Py〜Pkの表面に静電潜像が形成される。前記感光体Py,Pm,Pc,Pkの表面の静電潜像は、現像装置Gy,Gm,Gc,Gkに設けられた現像部材の一例としての現像ロールR0により、Y:イエロー、M:マゼンタ、C:シアン、K:黒の各色の現像剤で可視像の一例としてのトナー像に現像される。
【0018】
感光体Py,Pm,Pc,Pk表面上のトナー像は、一次転写器の一例としての1次転写ロールT1y,T1m,T1c,T1kにより、一次転写領域Q3において、中間転写体の一例であって、無端状の像保持体の一例としての中間転写ベルトB上に順次重ねて転写され、中間転写ベルトB上に多色画像、いわゆる、カラー画像が形成される。中間転写ベルトB上に形成されたカラー画像は、2次転写領域Q4に搬送される。
なお、黒画像データのみの場合はK:黒の感光体Pkおよび現像装置Gkのみが使用され、黒のトナー像のみが形成される。
1次転写後、感光体Py,Pm,Pc,Pkの表面に残留した残留トナーは感光体用のクリーナCLy,CLm,CLc,CLkによりクリーニングされる。
前記各像保持体ユニットUy,Um,Uc,Ukと現像装置の一例としての現像装置Gy,Gm,Gc,Gkとにより、可視像形成部の一例としてのトナー像形成部材Uy+Gy,Um+Gm,Uc+Gc,Uk+Gkが構成されている。
【0019】
画像形成装置本体U3の上部には、補給装置の一例としてのトナーディスペンサーU3aが配置されており、トナーディスペンサーU3aには、現像剤の収容容器の一例としてのトナーカートリッジKy,Km,Kc,Kkが着脱可能に装着されている。画像形成に伴って現像装置Gy〜Gkにおいてトナーが消費されると、各トナーカートリッジKy〜Kkから各現像装置Gy〜Gkにトナーが供給される。
【0020】
前記感光体Py〜Pkの下方に配置された中間転写ベルトBは、中間転写体の駆動部材の一例としての中間駆動ロールRdと、中間転写ベルトBに張力を付与する張力付与部材の一例としての中間テンションロールRtと、中間転写ベルトBの片寄り、蛇行を補正する第1の片寄り補正部材の一例としての中間ステアリングロールRwと、中間転写体の従動部材の一例としての複数の中間アイドラロールRfと、二次転写領域の対向部材の一例としてのバックアップロールT2aと、により張架されている。そして、前記中間転写ベルトBは、中間駆動ロールRdの駆動により矢印Ya方向に回転移動可能に支持されている。
前記中間駆動ロールRd、中間テンションロールRt、中間ステアリングロールRw,中間アイドラロールRf、バックアップロールT2aにより、実施例1の中間転写体の支持部材の一例としてのベルト支持ロールRd+Rt+Rw+Rf+T2aが構成されている。また、前記中間転写ベルトBやベルト支持ロールRd+Rt+Rw+Rf+T2a、1次転写ロールT1y〜T1kにより、中間転写装置の一例としてのベルトモジュールBMが構成されている。なお、実施例1のベルトモジュールBMは、画像形成装置の本体U3に対して、着脱、交換が可能なユニットにより構成されている。
【0021】
前記バックアップロールT2aの下方には、転写搬送装置の一例としての2次転写ユニットUtが配置されている。2次転写ユニットUtは、転写部材の一例として、バックアップロールT2aに対向して配置された2次転写ロールT2bを有し、2次転写ロールT2bが中間転写ベルトBと対向する領域により2次転写領域Q4が構成されている。なお、実施例1では、2次転写ユニットUtは、図示しない付勢部材により、バックアップロールT2aに2次転写ロールT2bが押し付けられる方向に付勢されている。また、前記バックアップロールT2aには、電圧印加用の接触部材の一例としてのコンタクトロールT2cが接触しており、前記ロールT2a〜T2cにより2次転写器T2が構成されている。
前記コンタクトロールT2cには、制御部Cにより制御される電源回路Eから予め設定された時期に、トナーの帯電極性と同極性の2次転写電圧が印加される。
【0022】
前記ベルトモジュールBM下方には用紙搬送路SH2が配置されている。前記給紙装置U2の給紙路SH1から給紙された記録用紙Sは、前記用紙搬送路SH2に搬送され、送出部材の一例としてのレジロールRrにより、トナー像が2次転写領域Q4に搬送される時期に合わせて送り出され、媒体案内部材の一例としての用紙ガイドSG1、SG2に案内されて、2次転写領域Q4に搬送される。
前記中間転写ベルトB上のトナー像は、前記2次転写領域Q4を通過する際に、前記2次転写器T2により記録用紙Sに転写される。なお、カラー画像の場合は中間転写ベルトB表面に重ねて1次転写されたトナー像が一括して記録用紙Sに2次転写される。
【0023】
2次転写後の前記中間転写ベルトBは、中間転写体の清掃器の一例としてのベルトクリーナCLBにより清掃、すなわち、クリーニングされる。なお、前記2次転写ロールT2bは、中間転写ベルトBと離隔および接触可能に支持されている。
前記1次転写ロールT1y,T1m,T1c,T1k、中間転写ベルトB、二次転写器T2、ベルトクリーナCLB等により、感光体Py〜Pk表面の画像を記録用紙Sに転写する転写装置T1+B+T2+CLBが構成されている。
【0024】
トナー像が2次転写された前記記録用紙Sは、中間転写ベルトBの下方に配置された転写搬送部材の一例としての無端帯状の転写搬送ベルトT2eの表面に保持されて下流側に搬送される。
転写搬送ベルトT2eの下流側には、搬送部材の一例として、表面に記録用紙Sを保持して下流側に搬送する複数の吸着搬送ベルトBHが配置されており、複数の吸着搬送ベルトBHにより搬送速度や用紙間隔が調整されながら下流側に搬送される。前記吸着搬送ベルトBHには、図示しない複数の孔が形成されており、吸引装置の一例としてのファンが孔を通じて空気を吸引することで、記録用紙Sを表面に吸着した状態で下流側に搬送する。なお、このような吸着搬送ベルトは従来公知であり、例えば、特開2004−347880号公報等に記載された構成等、任意の構成を採用可能であるため、詳細な説明は省略する。
【0025】
前記吸着搬送ベルトBHにより搬送された記録用紙Sは、下流の用紙排出部U4内に配置された定着装置Fに搬送される。前記定着装置Fは、加熱定着部材の一例としての加熱ロールFhと、加圧定着部材の一例としての加圧ロールFpとを有し、加熱ロールFhと加圧ロールFpとが接触する領域により定着領域Q5が形成されている。
前記記録用紙S上のトナー像は定着領域Q5を通過する際に定着装置Fにより加熱定着される。定着装置Fでトナー像が定着された記録用紙Sは、排出部の一例としての排出トレイTRhに排出される。
前記符号SH1、SH2等により用紙搬送路SHが構成されている。また、前記符号SH,Ra,Rr,SGr,BH等により用紙搬送装置SUが構成されている。
【0026】
(二次転写ベルトの説明)
図2は、実施例1の二次転写ユニット部分の要部説明図である。
図1、図2において、二次転写領域Q4に配置された二次転写ユニットUtは、表面に記録用紙Sを支持して搬送する無端帯状の搬送部材の一例としての転写搬送ベルトT2eを有する。前記転写搬送ベルトT2eは、二次転写ロールT2bと、転写搬送ベルトT2eを回転させる駆動力が伝達される第2の駆動部材の一例としての搬送駆動ロール2と、転写搬送ベルトT2eの片寄りや蛇行を補正する第2の片寄り補正部材の一例としての搬送ステアリングロール3と、転写搬送ベルトT2eに張力を付与する第2の張力付与部材の一例としての搬送テンションロール4と、により張架されている。前記搬送駆動ロール2と、搬送ステアリングロール3と、搬送テンションロール4と、2次転写ロールT2bとにより、実施例1の搬送部材の支持部材の一例としての搬送支持ロールT2b,2〜4が構成されている。
【0027】
前記搬送駆動ロール2の軸方向の端部には、伝達制限部材の一例として、図示しないトルクリミッタを介して、駆動伝達部材の一例としての被伝達ギアG1が支持されている。前記被駆動ギアG1は、中間伝達部材の一例としての中間ギアG2を介して、駆動源の一例としての搬送駆動モータM2から転写搬送ベルトT2eを回転させる駆動が伝達される。前記トルクリミッタや被伝達ギアG1、中間ギアG2や図示しないその他の歯車等により実施例1の伝達系G1+G2が構成されている。
前記搬送ステアリングロール3の回転軸3aの一端側である前端部は、軸支持部材11により支持されている。実施例1の軸支持部材11は、画像形成装置本体U3の図示しない枠体に基端部の回転中心11aを中心として回転可能に支持されている。前記軸支持部材11の先端部には、先端から内方に向かって延びる溝状の付勢支持部11bが形成されている。前記付勢支持部11bの先端部には、搬送ステアリングロール3の回転軸3aが付勢支持部11bに沿って移動可能に支持されている。前記付勢支持部11b内には、搬送ステアリングロール3を転写搬送ベルトT2e側に向けて付勢する付勢部材の一例としてのステアリング付勢バネ12が支持されている。
【0028】
図3は実施例1の搬送ステアリングロールの説明図であり、図3Aは初期位置に移動した状態の説明図、図3Bは前補正位置に移動した状態の説明図、図3Cは後補正位置に移動した状態の説明図である。
図2、図3において、前記軸支持部材11の側方には、補正作動部材の一例としての搬送ステアリングカム13が配置されている。実施例1の搬送ステアリングカム13は、偏心カムにより構成されており、搬送ステアリングカム13の回転中心13aには、駆動源の一例としての搬送ステアリングモータ14からの駆動が伝達されて、正逆回転される。実施例1では、転写搬送ベルトT2eの張力により、軸支持部材11は、回転中心11aを中心として、図3Aにおいて反時計回り方向の力を受けており、搬送ステアリングカム13は軸支持部材11の回転方向である反時計回り方向の下流側に配置されている。よって、転写搬送ベルトT2eの張力により受ける力で、軸支持部材11が搬送ステアリングカム13に押し付けられた状態で保持される。
【0029】
したがって、搬送ステアリングカム13が正逆回転することで、軸支持部材11が回転中心11aを中心として回転して、搬送ステアリングロール3の前端部が、後端部に対して、相対的に移動する。よって、ステアリングロール3の前端は、図3Aに示す初期位置と、図3Bに示す転写搬送ベルトT2eが後方に片寄った場合に前方に移動させる前補正位置と、図3Cに示す転写搬送ベルトT2eが前方に片寄った場合に後方に移動させる後補正位置との間で移動可能に支持されている。したがって、搬送ステアリングロール3の前端部を各位置に移動させることで、転写搬送ベルトT2eの片寄り、蛇行を補正することが可能になっている。
前記搬送ステアリングロール3、軸支持部材11、搬送ステアリングカム13、搬送ステアリングモータ14等により、第2の片寄り補正機構の一例としての搬送ベルト片寄り補正機構16が構成されている。なお、中間転写ベルトBの中間ステアリングロールRwを傾斜させる構成も、搬送ベルト片寄り補正機構16と同様に構成されているため、詳細な説明は省略する。
【0030】
図4は実施例1の中間転写ベルト、中間ステアリングロール、転写搬送ベルトおよび搬送ステアリングロールのベルト幅方向の位置関係の説明図である。
図4において、実施例1の中間転写ベルトBは、中間ステアリングロールRwの軸方向に対して、幅方向に移動可能な第1の移動範囲L1が設計等に応じて予め設定されている。移動範囲L1の内側に、中間転写ベルトBの幅方向の前端を検出可能な第1の前検知センサSN1aと、後端を検出可能な第1の後検知センサSN1bとを有する第1の検知部材SN1が配置されている。
また、実施例1の転写搬送ベルトT2eは、搬送ステアリングロール2の軸方向に対して幅方向に移動可能な第2の移動範囲L2は、第1の移動範囲L1よりも広く設定されている。すなわち、実施例1では、L2>L1に設定されており、転写搬送ベルトT2eの方が、中間転写ベルトBよりも幅方向の移動許容範囲が広くなっている。また、前記第2の移動範囲L2の内側に、転写搬送ベルトT2eの幅方向の前端を検出可能な第2の前検知センサSN2aと、後端を検出可能な第2の後検知センサSN2bとを有する第2の検知部材SN2が配置されている。
【0031】
図4において、実施例1では、中間ステアリングロールRwが前補正位置または後補正位置に移動した場合の初期位置に対する第1の傾斜角θ1は、搬送ステアリングロール3が前補正位置または後補正位置に移動した場合の初期位置位置に対する第2の傾斜角θ2よりも大きな角度に設定されている。すなわち、実施例1では、θ1>θ2に設定されている。したがって、実施例1では、中間ステアリングロールRwの方が、前補正位置または後補正位置に移動した場合に、中間転写ベルトBを単位時間当たりに幅方向、すなわち、前方または後方に移動させる移動量が、搬送ステアリングロール3のそれに比べて大きく設定されている。
なお、実施例1では、一例として、θ1=5°、θ2=1.25°に設定されており、単位時間当たりの移動量、いわゆるステアリング感度は、中間転写ベルトBが0.4[mm]、転写搬送ベルトT2eが0.2[mm]に設定されている。なお、前記角度やベルトの移動量の具体的な数値は、例示した数値に限定されず、ベルトの周長や回転速度、ローラ径、カムの形状等に応じて、任意の数値に変更可能である。なお、本願発明の要旨としては、中間転写ベルトBのステアリング感度の方が、転写搬送ベルトT2eのステアリング感度よりも大きく設定されればよく、中間転写ベルトBのステアリング感度の方が大きければ、θ1≦θ2等に設定することも妨げない。
【0032】
(実施例1の制御部の説明)
図5は本発明の実施例1のプリンタの制御部の機能図、いわゆるブロック線図である。
図5において、前記制御部Cは、外部との信号の入出力等を行う入出力インターフェースI/O、必要な処理を行うためのプログラムおよび情報等が記憶されたROM:リードオンリーメモリ、必要なデータを一時的に記憶するためのRAM:ランダムアクセスメモリ、前記ROMに記憶されたプログラムに応じた処理を行うCPU:中央演算処理装置、ならびに発振器等を有する小型情報処理装置、いわゆるマイクロコンピュータにより構成されており、前記ROMに記憶されたプログラムを実行することにより種々の機能を実現することができる。
【0033】
(制御部Cに接続された信号出力要素)
前記制御部Cは、操作部UIや、第1の前検知センサSN1a、第1の後検知センサSN1b、第2の前検知センサSN2a、第2の後検知センサSN2b等の信号出力要素からの出力信号が入力されている。
前記操作部UIは、電源ボタンUI1、表示部UI2、入力釦の一例としての矢印キーUI3や設定キーUI4等を備えている。
第1の前検知センサSN1aは、中間転写ベルトBの幅方向の前端を検知する。
第1の後検知センサSN1bは、中間転写ベルトBの幅方向の後端を検出する。
第2の前検知センサSN2aは、転写搬送ベルトT2eの幅方向の前端を検知する。
第2の後検知センサSN2bは、転写搬送ベルトT2eの幅方向の後端を検知する。
なお、実施例1の各検知センサSN1a〜SN2bは、予め設定された時間間隔、例えば、0.5秒間隔で、制御部Cに検知信号を出力する。
【0034】
(制御部Cに接続された被制御要素)
また、制御部Cは、主駆動源駆動回路D0、中間ステアリングモータの駆動回路D1、搬送ステアリングモータの駆動回路D2、電源回路E、その他の図示しない制御要素に接続されており、それらの作動制御信号を出力している。
主駆動源駆動回路D0は、主駆動源の一例としてのメインモータM0を介して感光体Py〜Pkや中間転写ベルトB等を回転駆動する。
中間ステアリングモータの駆動回路D1は、中間ステアリングモータM1を介して、中間ステアリングロールRwを、初期位置と、前補正位置と、後補正位置との間で移動させる。
搬送ステアリングモータの駆動回路D2は、搬送ステアリングモータ14を介して、搬送ステアリングロール2を、初期位置と、前補正位置と、後補正位置との間で移動させる。
【0035】
前記電源回路Eは現像用電源回路Ea、帯電用電源回路Eb、転写用電源回路Ec、定着用電源回路Ed等を有している。
現像用電源回路Eaは、現像装置Gy〜Gkの現像ロールR0に現像電圧を印加する。
帯電用電源回路Ebは、コロトロンCCy〜CCkそれぞれに感光体Py〜Pk表面を帯電させるための帯電電圧を印加する。
転写用電源回路Ecは、1次転写器T1y〜T1kや2次転写ロールT2bに転写電圧を印加する。
定着用電源回路Edは、定着装置Fの加熱ロールFhにヒータ加熱用の電源を供給する。
【0036】
(制御部Cの機能)
前記制御部Cは、前記信号出力要素からの入力信号に応じた処理を実行して、前記各制御要素に制御信号を出力する機能を有している。すなわち、制御部Cは次の機能を有している。
C1:ジョブ制御手段
画像形成動作の制御手段の一例としてのジョブ制御手段C1は、操作部UIからの入力に応じて、画像形成装置Uの各部材の駆動や各電圧の印加時期等を制御して、画像形成動作の一例としてのジョブを実行する。
C2:メインモータ制御手段
主駆動源の制御手段の一例としてのメインモータ制御手段C2は、メインモータ駆動回路D0を介してメインモータM0の駆動を制御し、感光体Py〜Pk等の駆動を制御する。
【0037】
C3:電源制御手段
電源制御手段C3は、現像用電源制御手段C3Aと、帯電用電源制御手段C3Bと、転写用電源制御手段C3Cと、定着用電源制御手段C3Dとを有し、電源回路Eの作動を制御して、各部材への電圧印加や電源供給を制御する。
C3A:現像用電源制御手段
現像用電源制御手段C3Aは、現像用電源回路Eaを制御して現像装置Gy〜Gkの現像ロールに印加する現像電圧を制御する。
C3B:帯電用電源制御手段
帯電用電源制御手段C3Bは、帯電用電源回路Ebを制御して、コロトロンCCy〜CCkに印加する帯電電圧を制御する。
【0038】
C3C:転写用電源制御手段
転写用電源制御手段C3Cは、転写用電源回路Ecを制御して、1次転写ロールT1y〜T1kに印加する1次転写電圧や、2次転写ロールT2bに印加する2次転写電圧を制御する。
C3D:定着用電源制御手段
定着用電源制御手段C3Dは、定着用電源回路Edを制御して、定着装置Fの加熱ロールFhのヒータの温度制御、すなわち、定着温度の制御を行う。
【0039】
C4:第1の補正制御手段
第1の補正制御手段C4は、第1の片寄り判別手段の一例としての中間転写ベルトの片寄り判別手段C4Aと、第1の傾斜方向判別手段の一例としての中間ステアリングロールの傾斜方向判別手段C4Bと、第1の傾斜制御手段の一例としての中間ステアリングロールの傾斜制御手段C4Cと、第1の位置記憶手段の一例としての中間ステアリングロールの位置記憶手段C4Dと、を有する。第1の補正制御手段C4は、第1の検出部材SN1が中間転写ベルトBの片寄りを検出した場合に、中間転写ベルトBの片寄りを補正する方向に中間ステアリングロールRwを傾斜させて片寄りを補正する。
C4A:中間転写ベルトの片寄り判別手段
中間転写ベルトの片寄り判別手段C4Aは、第1の検知部材SN1の検知結果に基づいて、中間転写ベルトBの片寄りを検出する。実施例1の中間転写ベルトの片寄り判別手段C4Aは、第1の前検知センサSN1aおよび第1の後検知センサSN1bの検知結果に基づいて、中間転写ベルトBが前方または後方のどちらに片寄っているのか、あるいは、片寄っていないのかを検出する。
【0040】
C4B:中間ステアリングロールの傾斜方向判別手段
中間ステアリングロールの傾斜方向判別手段C4Bは、中間転写ベルトの片寄り判別手段C4Aの判別結果に基づいて、中間ステアリングロールRwの傾斜方向を判別する。実施例1の中間ステアリングロールの傾斜方向判別手段C4Bは、中間転写ベルトBが前方に片寄っていると判別された場合に、中間ステアリングロールRwを前補正位置に傾斜させると判別し、中間転写ベルトBが後方に片寄っていると判別された場合に、中間ステアリングロールRwを後補正位置に傾斜させると判別する。なお、中間転写ベルトBが片寄っていないと判別された場合には、中間ステアリングロールRwを初期位置に移動させると判別する。
【0041】
C4C:中間ステアリングロールの傾斜制御手段
中間ステアリングロールの傾斜制御手段C4Cは、中間ステアリングモータの駆動回路D1を介して、中間ステアリングロールRwの傾斜を制御する。実施例1の中間ステアリングロールの傾斜制御手段C4Cは、中間ステアリングロールの傾斜方向判別手段C4Bの判別結果に基づいて、中間ステアリングロールRwを、初期位置、前補正位置、後補正位置のいずれかの位置に移動させる。
C4D:中間ステアリングロールの位置記憶手段
中間ステアリングロールの位置記憶手段C4Dは、中間ステアリングロールの傾斜制御手段C4Cで移動された中間ステアリングロールRwの現在位置を記憶する。
【0042】
C5:第2の補正制御手段
第2の補正制御手段C5は、第2の片寄り判別手段の一例としての転写搬送ベルトの片寄り判別手段C5Aと、第2の傾斜方向判別手段の一例としての搬送ステアリングロールの傾斜方向判別手段C5Bと、第2の傾斜制御手段の一例としての搬送ステアリングロールの傾斜制御手段C5Cと、第2の位置記憶手段の一例としての搬送ステアリングロールの位置記憶手段C5Dと、を有する。第2の補正制御手段C5は、第2の検出部材SN2が転写搬送ベルトT2eの片寄りを検出した場合に、転写搬送ベルトT2eの片寄りを補正する方向に搬送ステアリングロール3を傾斜させて片寄りを補正する。
なお、各手段C5A〜C5Dは、前述の各手段C4A〜C4Dにおいて、中間転写ベルトBが転写搬送ベルトT2eになり、中間ステアリングロールRwが搬送ステアリングロール3等になっただけで、同様であるため、説明の簡単化のため、詳細な説明は省略する。
【0043】
(実施例1の流れ図の説明)
次に、実施例1のプリンタUにおける制御の流れを流れ図、いわゆるフローチャートを使用して説明する。
(片寄り補正処理のフローチャートの説明)
図6は実施例1の片寄り補正処理のフローチャートの説明図である。
図6のフローチャートの各ステップSTの処理は、画像形成装置Uの制御部Cに記憶されたプログラムに従って行われる。また、この処理は画像形成装置Uの他の各種処理と並行して実行される。なお、図6において、中間ステアリングロールRwに関する処理の説明を行うが、搬送ステアリングロール3に関する処理も同様且つ並行して実行されるため、詳細な説明は省略する。
図6に示すフローチャートはプリンタUの電源投入により開始される。
【0044】
図6のST1において、ジョブが開始されたか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST2に進み、ノー(N)の場合はST1を繰り返す。
ST2において、中間ステアリングロールRwを初期位置に移動させる。そして、ST3に進む。
ST3において、各センサSN1a,SN1bからの信号の入力がされたか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST4に進み、ノー(N)の場合はST3を繰り返す。
ST4において、中間転写ベルトBの端を検出したか否かを判別する。すなわち、いずれかのセンサSN1a,SN1bが中間転写ベルトBの端を検出したか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST7に進み、ノー(N)の場合はST5に進む。
【0045】
ST5において、中間ステアリングロールRwの現在位置は初期位置であるか否かを判別する。ノー(N)の場合はST6に進み、イエス(Y)の場合はST12に進む。
ST6において、中間ステアリングモータM1を作動させて、中間ステアリングロールRwを初期位置に移動させる。そして、ST12に進む。
ST7において、検出された中間転写ベルトBの端は、前端であるか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST8に進み、ノー(N)の場合はST10に進む。
ST8において、中間ステアリングロールRwの現在位置は前補正位置であるか否かを判別する。ノー(N)の場合はST9に進み、イエス(Y)の場合はST12に進む。
ST9において、中間ステアリングモータM1を作動させて、中間ステアリングロールRwを前補正位置に移動させる。そして、ST12に進む。
【0046】
ST10において、中間ステアリングロールRwの現在位置は後補正位置であるか否かを判別する。ノー(N)の場合はST11に進み、イエス(Y)の場合はST12に進む。
ST11において、中間ステアリングモータM1を作動させて、中間ステアリングロールRwを後補正位置に移動させる。そして、ST12に進む。
ST12において、ジョブが終了したか否かを判別する。ノー(N)の場合はST3に戻り、イエス(Y)の場合はST1に戻る。
【0047】
(実施例1の作用)
前記構成を備えた実施例1の画像形成装置Uでは、感光体Py〜Pkで形成されたトナー像は、中間転写ベルトBを介して、2次転写領域Q4において、記録用紙Sに転写される。トナー像が転写された記録用紙Sは、転写搬送ベルトT2eの表面に支持されて下流側に搬送され、吸着搬送ベルトBHに送られ、定着装置Fでトナー像が定着された後、排出トレイTRhに排出される。
実施例1では、中間転写ベルトBに片寄りが発生した場合には、第1の検出部材SN1で検出されて、中間ステアリングロールRwが傾斜されて、片寄りが補正される。また、転写搬送ベルトT2eに片寄りが発生した場合には、第2の検出部材SN2で検出されて、搬送ステアリングロール3が傾斜されて、片寄りが補正される。
【0048】
2次転写領域Q4において2つのベルトB,T2eが接触する構成では、片寄り方向や片寄りが補正される方向が互いに逆方向になることがあり、ベルトB,T2eの片寄り補正ができなくなり、ベルトB,T2eの回転が不安定になる恐れがある。この状態で、中間転写ベルトBに像が感光体Py〜Pkから転写されると、色ずれ等の画質低下が発生する恐れがある。
特許文献1に記載された従来技術では、片寄りが中程度であれば、片寄りの大きな一方のベルトの片寄り補正を行って、他方のベルトの片寄り補正を停止しているが、この処理では、一方の補正を行っている間にも、他方の片寄りが大きくなってしまい、画像形成速度が高速の場合、片寄りが特に大きくなりやすい。したがって、印刷画像の色ずれの発生や、色ずれを補正するために補正用の画像、いわゆるパッチ画像等を印刷して補正を行う補正処理が必要となり、生産性が低下する問題がある。
【0049】
特許文献1記載の技術では、片寄りが大きくなると、ベルトどうしを離間して個別に片寄りを補正する構成が記載されているが、この構成では、片寄りを補正している間は画像形成ができず、生産性が著しく低下する問題がある。
特に、従来の構成では、2つのベルトが接触する構成では、ベルトの片寄りを防止する際に、既存の装置で使用されて、実績のある数値を使用することが多く、各ベルトのステアリング感度は同一に設定されることが一般的であり、ステアリング感度を異ならせることは従来行われて来なかった。
【0050】
これに対して、実施例1では、中間転写ベルトBの単位時間当たりの幅方向の移動量、いわゆるステアリング感度が、転写搬送ベルトT2eのステアリング感度に比べて、大きく設定されている。したがって、中間転写ベルトBの片寄り補正と、転写搬送ベルトT2eの片寄り補正とが、同時に行われ且つベルトB,T2eの移動方向が逆向きの場合に、中間転写ベルトBの移動の方が優勢となり、中間転写ベルトBの片寄り補正の方が優先される。
中間転写ベルトBには、感光体Py〜Pkから画像が転写され、片寄りや蛇行が色ずれや画像の伸縮、傾斜等に対して悪影響を与える恐れがあるが、転写搬送ベルトT2eは、幅方向に片寄っても、記録用紙Sの搬送に与える影響は少ない。したがって、実施例1では、中間転写ベルトBにステアリング感度が転写搬送ベルトT2eよりも大きく設定されており、色ずれ等の画質低下の発生が低減されている。
【0051】
(実験例)
図7は実験例の説明図であり、横軸に実験で使用した用紙、縦軸に色ズレ量を取ったグラフである。
次に、色ずれの発生に関する実験を行った。実験は、富士ゼロックス株式会社製Color1000Pressを改造して行った。実験で使用した用紙は、「用紙1」として、坪量82[g/m]の普通紙を使用し、「用紙2」として、坪量127[g/m]のコート紙を使用した。実験は、中間転写ベルトBのステアリング感度に対して、転写搬送ベルトT2eのステアリング感度の方が小さい場合と、大きい場合とで、実験を行い、Kの画像に対するY,M,Cの画像の色ずれの最大値を、色ズレ量[μm]として測定した。実験結果を図7に示す。
図7において、用紙1、用紙2のいずれにおいても、転写ベルト1のステアリング感度が小さい場合、すなわち、実施例1の構成の場合の方が、ステアリング感度が大きい場合に比べて、色ズレ量が小さくなることが確認された。
【0052】
また、実施例1では、中間転写ベルトBの片寄りの補正中には、転写搬送ベルトT2eの片寄り補正が滞り、転写搬送ベルトT2eの片寄りが大きくなる恐れがあるが、第2の移動範囲L2が、第1の移動範囲L1よりも大きく設定されており、転写搬送ベルトT2eの移動許容量が大きく設定されている。特に、一括して画像が転写される二次転写領域Q4に配置されている転写搬送ベルトT2eは、色ずれ等に対する移動許容量は、4つの感光体Py〜Pkから順に転写される中間転写Bほど精度が要求されず、移動許容量を大きく設定することが可能である。
したがって、移動許容量が大きく設定された転写搬送ベルトT2eでは、片寄りが大きくなっても、第2の移動範囲L2内に収まりやすく、第2の移動範囲L2が狭い場合に比べて、転写搬送ベルトT2eが片寄りすぎて、転写搬送ベルトT2eの端部が破損、破断する等の問題の発生が低減されている。
【0053】
さらに、実施例1では、転写搬送ベルトT2eの搬送駆動ロール2に、トルクリミッタが設けられている。トルクリミッタが設けられていない場合、転写搬送ベルトT2eと中間転写ベルトBとの間で、速度差が発生すると、転写搬送ベルトT2eの回転力が中間転写ベルトBに伝わり、中間転写ベルトBの片寄り等の挙動に影響を与え、画質に影響を与える恐れがある。これに対して、実施例1では、トルクリミッタが設けられた転写搬送ベルトT2eでは、予め設定された駆動力、すなわちトルク以上の駆動力が搬送駆動ロール2に発生する場合は、トルクの伝達が制限され、転写搬送ベルトT2eの回転が制限される。したがって、中間転写ベルトBに対して、転写搬送ベルトT2eから過剰な負荷がかかりにくくなり、トルクリミッタを設けない場合に比べて、中間転写ベルトBの回転に悪影響を与えることが低減され、画質への悪影響が低減される。
【0054】
(変更例)
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)〜(H08)を下記に例示する。
(H01)前記各実施例において、画像形成装置の一例として複写機Uを例示したが、これに限定されず、プリンタ、FAX、あるいはこれら複数の機能を備えた複合機等に適用可能である。また、多色の画像形成装置に限定されず、単色の画像形成装置にも適用可能である。さらに、4色の各色毎に感光体Py〜Pkを設ける構成、いわゆるタンデム型の画像形成装置に限定されず、1つの感光体に対して複数の現像器が回転しながら順に対向して現像を行う構成、いわゆる回転式の画像形成装置や、複数の現像器が1つの感光体に対して接近、離間可能に支持されて現像を行う現像器のみが接近して現像を行う構成、いわゆるリトラクト方式の画像形成装置にも適用可能である。
【0055】
(H02)前記実施例において、像保持体の一例としてのドラム状の感光体を例示したが、これに限定されず、無端帯状の感光体を使用することも可能である。すなわち、無端帯状の感光体と無端帯状の転写搬送ベルトとを有する構成や、無端帯状の感光体と無端帯状の中間転写ベルトとを有する構成に本願発明を適用可能である。
(H03)前記実施例において、例示した具体的な数値や材料名等については、設計や仕様等に応じて、任意に変更可能である。
(H04)前記実施例において、支持ロールT2b,2〜4の数や位置等は設計や仕様等に応じて変更可能である。
【0056】
(H05)前記実施例において、搬送ステアリングロール3と搬送テンションロール4とを別の位置に配置する構成を例示したが、これに限定されず、例えば、搬送テンションロール4に搬送ステアリングロール3の機能を付与して共通化する等の変更も可能である。
(H06)前記実施例において、トルクリミッタを設けることが望ましいが、ベルトの摩擦係数が低く、転写搬送ベルトT2eから中間転写ベルトBに回転力が伝わりにくい構成等では、省略することも可能である。
(H07)前記実施例において、ステアリングロールRw,3を傾斜させる片寄り補正機構に関しては、実施例に例示多孔性に限定されず、ステアリング感度が本願の要旨の範囲であれば、従来公知の任意のアクティブステアリングの構成を採用可能である。例えば、特開2009−86463号公報や特開2010−231112号公報、特開2009−251322号公報、特開2007−11107号公報等に記載された従来公知の種々の構成を採用可能である。
【0057】
(H08)前記実施例において、第1の移動範囲L1に対して第2の移動範囲L2を大きく設定することが望ましいが、転写搬送ベルトT2eの片寄りの限界に応じて、任意に変更することも可能であり、片寄りにくい転写搬送ベルトT2eでは、第2の移動範囲L2を第1の移動範囲L1よりも小さく設定することも可能である。
【符号の説明】
【0058】
2…駆動部材、
3…第2の片寄り補正部材、
B…像保持体、
C4…第1の補正制御手段、
C5…第2の補正制御手段、
G1+G2…伝達系、
L1…第1の移動範囲、
L2…第2の移動範囲、
Q4…転写領域、
Rw…第1の片寄り補正部材、
S…媒体、
SN1…第1の検出部材、
SN2…第2の検出部材、
T2c…転写部材、
T2e…搬送部材、
U…画像形成装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に可視像が保持されて回転する無端帯状の像保持体と、
前記像保持体の表面の可視像を媒体に転写する転写領域に配置されると共に、表面に媒体を支持して搬送する無端帯状の搬送部材と、
無端帯状の前記搬送部材を回転可能に支持すると共に、前記転写領域において前記無端帯状の搬送部材を挟んで前記像保持体に対向して配置され、前記像保持体の表面の可視像を前記媒体に転写する転写電圧が前記像保持体との間で印加される転写部材と、
前記無端帯状の像保持体の幅方向への片寄りを検出する第1の検出部材と、
前記無端帯状の像保持体の幅方向に沿って延び且つ前記幅方向に対して傾斜可能に支持され、前記無端帯状の像保持体を支持する第1の片寄り補正部材と、
前記第1の検出部材が前記像保持体の片寄りを検出した場合に、前記像保持体の片寄りを補正する方向に前記第1の片寄り補正部材を傾斜させて片寄りを補正する第1の補正制御手段と、
前記無端帯状の搬送部材の幅方向への片寄りを検出する第2の検出部材と、
前記無端帯状の搬送部材の幅方向に沿って延び且つ前記幅方向に対して傾斜可能に支持され、前記無端帯状の搬送部材を支持する第2の片寄り補正部材と、
前記第2の検出部材が前記像保持体の片寄りを検出した場合に、前記搬送部材の片寄りを補正する方向に前記第2の片寄り補正部材を傾斜させて片寄りを補正する第2の補正制御手段と、
を備え、
前記第1の片寄り補正部材が傾斜した場合に単位時間当たりに前記像保持体を幅方向に移動させる移動量が、第2の片寄り補正部材が傾斜した場合に単位時間当たりに前記搬送部材を幅方向に移動させる移動量に比べて大きく設定された
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記像保持体が前記幅方向に移動可能な第1の移動範囲に対して、前記搬送部材が前記幅方向に移動可能な第2の移動範囲の方が、広く設定されたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記搬送部材を支持し且つ前記搬送部材を回転させる駆動部材と、
前記駆動部材に回転を伝達する伝達系であって、前記駆動部材に予め設定された駆動力以上の駆動力が設定された場合に、前記駆動部材に対する回転の伝達を制限する伝達制限部材を有する前記伝達系と、
を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−61374(P2013−61374A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197894(P2011−197894)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】