説明

画像形成装置

【課題】印刷用紙の給紙上面位置の変動が少ない安定した時間に検出結果を取得して、給紙上面位置を安定的に上限位置に保つ。
【解決手段】ピックアップローラ220a及びスクレーパローラ220bにより印刷用紙10が一枚ずつ給紙経路に送出されるサイド給紙トレイ120と、印刷用紙10のスクレーパローラ220bに対する相対位置を変化させる給紙台駆動モータ210と、印刷用紙10の給紙上面位置を検出する上限検知センサ401と、上限検知センサ401による検出結果に基づいて、給紙台駆動モータ210の動作開始を制御するシーケンス動作部335cと、周期的な動作サイクルのうち、上限検知センサ401が検出結果を取得する時間間隔である時間ステップを、記憶部334に記憶された時間ステップの中から決定する時間ステップ決定部335aとを備え、上限検知センサ401は、時間ステップの期間中に上限検知センサ401の検出結果を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給紙トレイから搬送経路へ記録媒体を給送する給紙経路を有し、搬送経路上を搬送される記録媒体に画像を形成する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置では、印刷に係る印刷用紙を収納する給紙トレイが備えられており、この給紙トレイに積載された印刷用紙が、1枚ずつピックアップローラ等の給紙機構によりピックアップされ、搬送経路を経て画像形成部に送り出すようになっている。
【0003】
このような給紙機構では、給紙トレイ内の底部に配置された給紙台が、印刷用紙の残量に応じて上下動する構造が一般的である。具体的には、給紙トレイ上に積載された印刷用紙の上面位置が搬送経路に供給される位置である上限位置に達したことを検知する上限センサを設けて、この検知信号によって、給紙台を上下動させて印刷用紙を適切な上限位置の高さにまで上昇させている(例えば、特許文献1)。
【0004】
この特許文献1に記載された技術では、給紙トレイに積載された印刷用紙が所定の供給位置にあるか否かを検知し、所定時間継続して上限位置にないと判定された場合には、給紙上面位置を検出し続け、給紙台が上限位置にあることを検知するまで給紙台を上昇させるものである。この特許文献1に開示された技術のように、給紙台の位置を検知する上限検知センサを用いる場合には、その上限検知センサによる給紙上面位置の検出精度が高いことが重要となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−21867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、給紙トレイから印刷用紙が送出されてから、次の印刷用紙が送出されるまでの間には、給紙トレイが静止した状態であっても、給紙上面位置が下がってしまう場合がある。具体的には、印刷用紙を給紙トレイから取り上げる際、ピックアップローラを印刷用紙に押しつけながら回転させるため、ピックアップローラーが押しつけられている間は、給紙トレイが上下動をしていない状態であっても、給紙上面位置が下がってしまっていた。
【0007】
これに対し、従来、印刷動作中常に一定の間隔で、上限検知センサの検知状態を取り込む機構では、給紙上面位置が下がることで、ピックアップローラーの駆動開始時に上限検知センサが給紙上面位置を検出しなくなり、給紙上面位置が元の位置に上がるまで給紙台の駆動モータが駆動される。一方、ピックアップローラーの上昇に伴う押圧力が解放されると、ピックアップローラーにより押しつけられて下がっていた給紙上面位置も、下がっていた分だけ再び上昇する。ところが、給紙トレイは既に上動されていることから、給紙トレイが上動された分だけ給紙上面位置が正規の上限位置より高すぎる位置となり、その結果、用紙正面に対するピックアップローラの接触圧が高くなり過ぎてしまい、紙づまりや、印刷位置のズレ等、給紙不良の原因となっていた。
【0008】
また、ピックアップローラを駆動させるモータや、搬送経路の下流に配置された中間搬送ローラ等を駆動させるモータが駆動している間は、これらのモータの振動が給紙台やピックアップローラに作用してしまい、印刷用紙の給紙上面位置が変動するため、上記同様の問題が生じていた。
【0009】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたもので、記録媒体(印刷用紙)の上面位置を適切な位置に安定的に保つことができる画像形成装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に記載した本発明の画像形成装置は、
給紙トレイから搬送経路へ記録媒体を給送する給紙経路を有し、搬送経路上を搬送される記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって、
前記給紙トレイに積層された前記記録媒体を1つずつ取り上げて前記給紙経路へと送出するピックアップ手段と、
前記積層された記録媒体を前記ピックアップ手段に近づくように上昇させる昇降手段と、
前記積層された記録媒体の上面位置を検出する検出手段と、
前記ピックアップ手段が前記記録媒体を前記給紙経路に送出し終えてから次の前記記録媒体を前記給紙経路に送出し始めるまでの紙間インターバルに、前記検出手段の検出結果を取得する検出結果取得手段と、
前記検出結果取得手段が取得した前記検出手段の検出結果に基づいて、前記昇降手段による記録媒体の上昇動作の開始を制御する昇降制御部と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載した本発明の画像形成装置によれば、ピックアップ手段による記録媒体の給紙経路に対する送出中には、その影響で記録媒体の上面位置が変動することがある。一方、紙間インターバル中はピックアップ手段による記録媒体の送出動作が行われないので、記録媒体の上面位置が比較的安定している。そこで、紙間インターバル中に検出手段の検出結果を取得し、これに基づいて昇降手段による記録媒体の上昇開始の要否を決定することで、記録媒体の上面位置の誤検出とそれによる不要な記録媒体の上昇動作を回避することができる。これにより、記録媒体の上面位置を昇降手段により適切な位置に安定的に保ち、給紙経路に対する記録媒体の送出動作を安定的に行うことができる。
【0012】
また、請求項2に記載した本発明の画像形成装置は、請求項1に記載した本発明の画像形成装置において、前記紙間インターバルは、前記ピックアップ手段中のローラを駆動するモータの動作期間を少なくとも除く期間であることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載した本発明の画像形成装置によれば、請求項1に記載した本発明の画像形成装置において、ピックアップ手段中の記録媒体に接触するローラがモータにより駆動されている間は、ローラの振動の影響で記録媒体の上面位置が変動することがある。そこで、ローラを駆動するモータの動作期間を検出手段の検出結果を取得する期間から除外することで、ローラの振動の影響による記録媒体の上面位置の誤検出を回避することができる。
【0014】
さらに、請求項3に記載した本発明の画像形成装置は、請求項1又は2に記載した本発明の画像形成装置において、前記紙間インターバルは、前記ピックアップ手段の動作期間を少なくとも除く期間であることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載した本発明の画像形成装置によれば、請求項1又は2に記載した本発明の画像形成装置において、ピックアップ手段が動作している間は、ピックアップ手段の記録媒体に接触するローラがモータにより駆動されていなくても、記録媒体を給紙経路に送出する際に生じる振動が記録媒体に伝わって、記録媒体の上面位置が変動することがある。そこで、ローラを駆動するモータの動作期間だけでなく、ピックアップ手段の動作期間を検出手段の検出結果を取得する期間から除外することで、記録媒体を給紙経路に送出する際に生じる振動の影響による記録媒体の上面位置の誤検出を回避することができる。
【0016】
また、請求項4に記載した本発明の画像形成装置は、請求項1、2又は3に記載した本発明の画像形成装置において、
前記給紙経路は、
前記搬送経路に対する前記記録媒体の送出タイミングを調整するレジストローラと、
前記ピックアップ手段と前記レジストローラとの間で前記記録媒体を搬送する中間搬送ローラ群と
を含んでおり、
前記紙間インターバルは、前記レジストローラ及び前記中間搬送ローラ群の動作期間を少なくとも除く期間である、
ことを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載した本発明の画像形成装置によれば、請求項1、2又は3に記載した本発明の画像形成装置において、給紙経路がレジストローラや中間搬送ローラ群を含んでいる場合、それらのローラが駆動されている間は、その振動が記録媒体に伝わって、記録媒体の上面位置が変動することがある。そこで、給紙経路のレジストローラや中間搬送ローラ群の動作期間を検出手段の検出結果を取得する期間から除外することで、給紙経路のレジストローラや中間搬送ローラ群が記録媒体を搬送する際に生じる振動の影響による記録媒体の上面位置の誤検出を回避することができる。
【0018】
さらに、請求項5に記載した本発明の画像形成装置は、請求項1、2、3又は4に記載した本発明の画像形成装置において、前記昇降制御部は、前記紙間インターバルのうち前記昇降手段による前記記録媒体の上昇動作中の期間を除く非上昇期間に前記検出結果取得手段が取得した前記検出手段の検出結果に基づいて、前記記録媒体の上昇動作の開始を制御することを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載した本発明の画像形成装置によれば、請求項1、2、3又は4に記載した本発明の画像形成装置において、昇降手段による記録媒体の上昇動作は、給紙トレイから給紙経路への記録媒体の送出動作と干渉しないように、紙間インターバル中に開始される。したがって、紙間インターバル中であっても昇降手段による記録媒体の上昇動作中には、記録媒体の上面位置が変動する。そこで、紙間インターバルのうち昇降手段による記録媒体の非上昇期間に限って検出手段の検出結果を取得することで、記録媒体の上面位置を正しく検出することができる。
【0020】
また、請求項6に記載した本発明の画像形成装置は、請求項5に記載した本発明の画像形成装置において、前記昇降手段による上昇動作中の期間は、該上昇動作の平均速度に基づいて決定したものであり、該平均速度は、前記給紙経路における前記記録媒体の搬送速度、前記記録媒体の搬送方向における用紙サイズ、前記紙間インターバル、及び、前記記録媒体の用紙厚に基づいて定まることを特徴とする。
【0021】
請求項6に記載した本発明の画像形成装置によれば、請求項5に記載した本発明の画像形成装置において、昇降手段が記録媒体1つ分のストロークだけ記録媒体を上昇させるのに費やせる時間は、給紙経路における記録媒体の搬送速度、記録媒体の搬送方向における用紙サイズ、及び、紙間インターバルによって定まる。この時間を全て費やして、昇降手段が記録媒体1つ分のストロークだけ記録媒体を上昇させる場合を想定すると、昇降手段による上昇動作の平均速度は、記録媒体の用紙厚をさらに加えた要素によって特定できる。
【0022】
そして、検出手段の検出結果により記録媒体の上面位置が適切な位置にない場合に昇降手段が記録媒体を上昇させる上昇動作の期間は、上述した上昇動作の平均速度に基づいて決定することができる。したがって、昇降手段による上昇動作の平均速度を正しく定めることで、紙間インターバルのうち昇降手段による記録媒体の上昇動作の期間(乃至、非上昇期間)を正確に特定し、検出手段の検出結果を適切な期間に取得して、記録媒体の上面位置を正しく検出することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、記録媒体の上面位置を昇降手段により適切な位置に安定的に保ち、給紙経路に対する記録媒体の送出動作を安定的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る印刷装置の印刷用紙搬送経路の概要を示す概略図である。
【図2】図1の給紙系搬送路の一部を拡大して示す側面図である。
【図3】図1の印刷装置内に備えられているサイド給紙トレイを示す斜視図である。
【図4】図1の演算処理部の給紙機構制御に関するモジュールを示すブロック図である。
【図5】図4の給紙機構制御を示すタイムチャート図である。
【図6】図1の演算処理部における動作速度の切替制御に関するモジュールを示すブロック図である。
【図7】(a)は、図6の駆動力に関する設定パターンの遷移図を示すグラフ図であり、(b)は、図6の時間関数を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(印刷装置の全体構成)
本発明の画像形成装置の実施形態を、インクジェット方式のラインカラープリンタによる印刷装置を例に取って、図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る印刷装置の印刷用紙搬送経路の概要を示す概略図である。なお、図中、駆動部を構成するローラの個数は適宜省略している。
【0026】
図1に示す本実施形態の印刷装置100(画像形成装置)は、多数のノズルが形成されたインクヘッドを複数備えている。そして、印刷装置100は、それぞれのインクヘッドから黒又はカラーインクを吐出してライン単位で印刷を行い、搬送ベルト上の記録用紙上に複数の画像を互いに重なり合うように形成する。
【0027】
印刷装置100は、環状の搬送経路上を搬送される印刷用紙10に画像を形成する。この搬送経路は、用紙を供給する給紙系搬送路FRと、この給紙系搬送路FRからヘッドユニット110を経て排紙経路DRへ至る通常経路CRと、通常経路CRに分岐接続された反転経路SRとから概略構成されている。
【0028】
給紙系搬送路FRにおいて、印刷用紙10の供給を行う給紙機構としては、筐体側面の外部に配設され、印刷用紙10を積層して収納するサイド給紙トレイ120と、筐体内部に設けられた複数の給紙トレイ(130a、130b、130c、130d)とが備えられている。
【0029】
サイド給紙トレイ120、給紙トレイ130のいずれかの給紙機構から給紙された印刷用紙10は、ローラ等の駆動機構によって筐体内の給紙系搬送路FRに沿って搬送され、印刷用紙10の先頭部分の基準位置であるレジスト部Rに導かれる。そして、このレジスト部Rのレジストローラに対し、これより上流の各ローラ駆動によって印刷用紙10の供給動作が行われる。
【0030】
一方、レジスト部Rの搬送方向下流側には、画像形成部が設けられている。この画像形成部には、複数の印字ヘッドを備えたヘッドユニット110が設けられている。印刷用紙10は、ヘッドユニット110の対向面に設けられた搬送ベルト160によって印刷条件により定められる速度で搬送されながら、各印字ヘッドから吐出されたインクによりライン単位で画像形成される。印刷済みの印刷用紙10は、さらに、ローラ等の駆動機構によって通常経路CR上を搬送される。この通常経路CRには、印刷済みの印刷用紙10を排出する排紙機構として、排紙口140が分岐接続されている。
【0031】
そして、印刷用紙10の片側の面のみに印刷を行う片面印刷の場合、印刷用紙10は、そのまま排紙経路DRを経て、排紙口140に導かれて排紙され、排紙口140の受台として設けられた排紙台150に印刷面を下にして積載されていく。排紙台150は、筐体から突出したトレイ形状をしており、ある程度の厚みを有している。排紙台150は傾斜しており、傾斜の下位置に形成された壁により、排紙口140から排紙された印刷用紙10が自然に整えられて重なっていくようになっている。
【0032】
一方、印刷用紙10の両面に印刷を行う両面印刷の場合は、表面(最初に印刷される面を「表面」、次に印刷される面を「裏面」とする)印刷終了時には排紙経路DR側に導かれずに、さらに筐体内を搬送され、反転経路SRに送出される。この排紙経路DRと反転経路SRとの分岐点には、裏面印刷用に搬送路を切り替えるための切替機構170が設けられており、切替機構170によって排出経路へ送出されなかった印刷用紙10は、反転経路SRに引き込まれる。
【0033】
この反転経路SRでは、通常経路CRから用紙が受け渡され、用紙を往復させることにより用紙の表裏を反転させる、所謂スイッチバックを行う。そして、ローラ等の駆動機構によって、切替機構172を経由して通常経路CRに戻され、レジスト部Rを経て再給紙され、表面と同様の手順によって裏面の印刷が行われる。その後、裏面の印刷が行われ、両面に画像が形成された印刷用紙10は、排紙経路DRを通じて排紙口140に導かれて排紙され、排紙口140の受台として設けられた排紙台150に積載されていく。なお、本実施形態では、両面印刷時におけるスイッチバックを、排紙台150内に設けられた空間を利用して行うようにしている。排紙台150内に設けられた空間は、スイッチバック時に印刷用紙10が外部から取り出せないように覆われた構成となっている。
【0034】
印刷装置100では、給紙された印刷用紙10の先頭部分の基準位置となるレジスト部Rに、両面印刷時に片面印刷済みの印刷用紙10も再給紙されてくる。このため、レジスト部Rの直前部分には、新規に給紙される印刷用紙10の給紙経路と、裏面印刷の用紙が循環して搬送されてくる再給紙経路とが合流する合流点が形成される。そして、レジスト部Rは、給紙系搬送路FRと通常経路CRとの合流点下流側において、用紙の送り出しを行う。
【0035】
また、本実施形態においては、ある印刷用紙10を給紙した後、その印刷用紙10に印刷が施され排紙されるのを待って次の印刷用紙10を給紙するのではなく、スケジューリングにより、先行する印刷用紙10が排紙される前に、後続の印刷用紙10を給紙して、所定の間隔で連続的に印刷することができるようになっている。したがって、両面印刷時の通常のスケジューリングでは、表面の用紙を給紙する際に、反転経路SRから戻ってきた用紙が挿入される位置を確保するように、予めスペースを確保しておく。これにより、本装置では、表面の印刷と裏面の印刷とを並行させることができ、印刷面換算で片面印刷時と同等の生産性を確保することができる。
【0036】
前記搬送ベルト160は、通常経路CRにおいて、ヘッドユニット110に対向する面の前端及び後端に配設された駆動ローラ161及び従動ローラ162に掛け渡されており、図1中、時計回り方向に回転移動する。また、搬送ベルト160の上面には、そのベルト移動方向に沿って、4色のインクヘッドが並べて配置され、複数の画像を互いに重なり合うようにしてカラー画像を形成するヘッドユニット110が対向配置されている。
【0037】
さらに、図1に示すように、印刷装置100には、演算モジュールである演算処理部330が備えられている。この演算処理部330は、CPUやDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサ、メモリ、及びその他の電子回路等のハードウェア、或いはその機能を持ったプログラム等のソフトウェア、又はこれらの組み合わせなどによって構成される。演算処理部330は、プログラムを適宜読み込んで実行することにより種々の機能モジュールを仮想的に構築する。構築した各機能モジュールは、画像データに関する処理や、各部の動作制御、ユーザー操作に対する種々の処理を行う。また、この演算処理部330には、操作パネル340が接続されており、この操作パネル340を通じて、ユーザーによる指示や設定操作を受け付けることができる。
【0038】
(給紙系搬送路における搬送機構)
次いで、給紙系搬送路FRについて説明する。図2は、本実施形態に係る給紙系搬送路FRの一部を拡大して示す説明図である。
【0039】
図2に示すように、本発明の給紙機構は、上述した給紙系搬送路FRの一部として設けられ、レジスト部Rに印刷用紙10を送出する機構である。本実施形態の給紙機構では、筐体側面の外部に配設されたサイド給紙トレイ120から新規に給紙を行うための給紙経路FR1を経て、レジスト部Rへ用紙が供給される。
【0040】
レジスト部Rでは、レジストローラ240a,240bが通常経路CRにおけるヘッドユニット110の上流に配置されている。レジストローラ240a,240bは、給紙系搬送路FR側から通常経路CRに進入してくる印刷用紙10を一時的に保持し、ヘッドユニット110に対する印刷用紙10の送出タイミングを調整する。また、レジスト部Rには、レジ前ローラ230a,230bがレジストローラ240a,240bよりも搬送経路の上流側に隣接して配置されている。レジ前ローラ230a,230bは、給紙経路FR1からレジストローラ240a,240bへ印刷用紙10を送出する。
【0041】
レジストローラ240a,240bは、レジスト駆動モータ240によって駆動制御されている。レジスト駆動モータ240は、搬送経路の画像形成部(ヘッドユニット110)よりも上流に配置されている。このレジスト駆動モータ240は、一対のローラ(レジストローラ240a,240b)により給紙に係る印刷用紙10を保持し、画像形成部に対する印刷用紙10の送出タイミングを調整する駆動手段である。このレジスト駆動モータ240は、駆動制御部335の制御により、動作の開始及び停止や動作速度を制御され、立ち上げ時の加速度と減速時の減速加速度等が制御される。
【0042】
また、レジ前ローラ230a,230bは、レジ前駆動モータ230によって駆動制御されている。レジ前駆動モータ230は、搬送経路のレジストローラ240a,240bの上流に配置されている。このレジ前駆動モータ230は、一対のローラ(レジ前ローラ230a,230b)により給紙に係る印刷用紙10を保持し、画像形成部に対する印刷用紙10の送出タイミングを調整したり、所謂、「突当て補正制御」を行う駆動手段である。「突当て補正制御」では、斜めに搬送された印刷用紙10の向きをまっすぐに補正して後段(搬送ベルト160)に送り出すことで、用紙の斜行を補正する。
【0043】
さらに、レジスト部Rには、レジストセンサ513が設けられている。レジストセンサ513は、レジストローラ240a,240bの上流側に近接して設置され、印刷用紙10のレジストローラ240a,240bへの到達を検知するセンサである。なお、本実施形態では、レジストセンサ513として反射式センサや透過式センサ、その他の種々のセンサを用いることができる。
【0044】
給紙経路FR1は、サイド給紙トレイ120に積層して収納された印刷用紙10をレジスト部Rに給送する経路である。給紙経路FR1には、ピックアップローラ220aとレジ前ローラ230a(230b)との間で印刷用紙10を搬送する複数の中間搬送ローラ251(251a,251b),252(252a,252b),253(253a,253b)が、給紙経路に沿って設けられ、サイド給紙トレイ120からピックアップされた印刷用紙10がレジスト部Rに対して送出される。
【0045】
本実施形態において、これらの複数の中間搬送ローラ251,252,253は、給紙経路の上流側に位置する中間搬送ローラ251のみ中間搬送駆動モータ250で直接駆動され、その他の中間搬送ローラ252,253は、ベルトプーリ機構により伝達される動力で従動回転する。なお、本実施形態では、レジ前ローラ230a,230bと中間搬送ローラ251,252,253とが、中間搬送ローラ群の構成要素となっている。
【0046】
中間搬送ローラ251,252,253の中間搬送駆動モータ250は、給紙経路FR1に配置され、複数配置された一対のローラ(中間搬送ローラ251(251a,251b),252(252a,252b),253(253a,253b))により給紙に係る印刷用紙10を保持し、レジスト部Rに対する印刷用紙10の送出タイミングを調整する駆動手段である。
【0047】
また、この中間搬送ローラ群には、中間入口センサ511と、中間出口センサ512とが設けられている。中間入口センサ511は、給紙経路FR1内の上流側の中間搬送ローラ251に近接して設置され、印刷用紙10の給紙経路FR1への到達を検知するセンサである。また、中間出口センサ512は、給紙経路FR1内の下流側の中間搬送ローラ253に近接して設置され、印刷用紙10の給紙経路FR1からの通過を検知するセンサである。
【0048】
そして、この給紙経路FR1の上流側に位置するサイド給紙トレイ120には、本発明に係る給紙機構が設けられている。図3は、実施形態に係る印刷装置内に備えられている給紙機構を示す斜視図である。
【0049】
詳述すると、本発明に係る給紙機構は、サイド給紙トレイ120内に積載された印刷用紙10を、給紙系搬送路FRに送り出す機構である。この給紙機構は具体的に、サイド給紙トレイ120と、ピックアップ駆動モータ220と、給紙台駆動モータ210と、下限検知センサ402と、上限検知センサ401とを備えている。サイド給紙トレイ120は、多数の印刷用紙10を積層状態で収納する函体であり、このサイド給紙トレイ120には、給紙台121と、駆動力伝達部125とが設けられている。
【0050】
ピックアップ駆動モータ220は、サイド給紙トレイ120の上方に位置し、サイド給紙トレイ120に積層された印刷用紙10をピックアップして、レジスト部Rに送出するための駆動手段である。このピックアップ駆動モータ220は、ピックアップローラ220aを直接回転させ、かつ、ベルトプーリ機構を介してスクレーパローラ220bを間接的に回転させる。具体的には、これらピックアップローラ220a及びスクレーパローラ220bは、ピックアップローラ220aの回転軸222を介してピックアップ駆動モータ220の回転力が伝達されて回転駆動される。これらピックアップローラ220a及びスクレーパローラ220bは、積層された印刷用紙10のうち、最上面の印刷用紙10を1枚ずつピックアップして取り込み、レジスト部Rを経て、給紙経路FR1に対して送出する。
【0051】
給紙台駆動モータ210は、給紙台121に取付けられ、その駆動力により給紙台121とともに上下動し、積層された印刷用紙10のスクレーパローラ220bに対する相対位置を変化させる昇降手段であり、自走式の駆動機構である。この給紙台駆動モータ210は、演算処理部330の制御により、印刷用紙10の上面位置をピックアップ可能な上限位置にまで上昇させる。給紙台駆動モータ210は、駆動力伝達部125(ピニオン125a及びラック125b)を介してサイド給紙トレイ120に駆動力を伝達させ、給紙台121とともに上下動し、給紙台121に積載された印刷用紙10を昇降させる。
【0052】
給紙台121は、サイド給紙トレイ120内の底面に設けられ、印刷用紙10を積載させる底板部材であり、給紙台121上に印刷用紙10が積載されている。また、この給紙台121の外側には、駆動力伝達部125が設けられており、駆動力伝達部125を介して給紙台駆動モータ210の駆動力が給紙台121に伝達される。駆動力伝達部125は、給紙台駆動モータ210の回転力を、給紙台121の上下動に変換するラック・アンド・ピニオン部材である。
【0053】
また、このサイド給紙トレイ120の上方及び下方には、上限検知センサ401と下限検知センサ402とが設けられている。上限検知センサ401は、図2に示すように、ピックアップローラ220aの軸を支点に、スクレーパローラ220bの上下位置によって上下に動く遮蔽板221の位置により、給紙台121に積載された印刷用紙10の給紙上面位置を検出するセンサである。上限検知センサ401は、例えば、遮蔽板221によって光軸が遮蔽される透過型センサを用いることができる。本実施形態では、印刷用紙10があるとき(遮蔽板221が光軸を遮っているとき)High(ON)状態となり、印刷用紙10がないとき(遮蔽板221が光軸を遮っていないとき)Low(OFF)状態となる。但し、上限検知センサ401はこの形態に限られるものではなく、例えば、反射型センサを使用するようにしてもよい。
【0054】
一方、図3に示す下限検知センサ402は、サイド給紙トレイ120の下方に設置され、給紙台121の位置が下限位置にあるかどうかを検知するセンサである。下限検知センサ402は、例えば、給紙台121の有無を検出する反射型センサを用いることができる。もちろん、下限検知センサ402に透過型センサを使用するようにしてもよい。
【0055】
(給紙制御機構)
そして、本実施形態において、サイド給紙トレイ120からの給紙動作の制御は、上述した演算処理部330で行われる。図4は、演算処理部330の給紙制御に関するモジュールを示すブロック図であり、図5は、給紙機構制御による検出制御を示すタイムチャート図である。なお、説明中に用いられる「モジュール」とは、装置や機器等のハードウェア、或いはその機能を持ったソフトウェア、又はこれらの組み合わせなどによって構成され、所定の動作を達成するための機能単位を示す。
【0056】
図4に詳細に示すように、演算処理部330は、主として、ジョブデータ受信部331と、用紙種別取得部332と、操作信号取得部333と、上位層コマンド部337と、画像処理部336と、駆動制御部335と、記憶部334とを備えている。
【0057】
ジョブデータ受信部331は、一連の印刷処理単位であるジョブデータを受信する通信インターフェースであり、受信したジョブデータに含まれるデータを上位層コマンド部337及び画像処理部336に受け渡すモジュールである。ここでの通信としては、例えば、10BASE−Tや100BASE−TX等によるイントラネット(企業内ネットワーク)や家庭内ネットワークなどのLANの他、赤外線通信等の近距離通信も含まれる。
【0058】
上位層コマンド部337は、ジョブデータに基づいて、画像形成の速度及び各駆動部の動作速度、順序及びタイミングを決定するモジュールである。この上位層コマンド部337によって決定されたスケジュールに基づいて、画像形成制御部336a及び駆動制御部335は、画像形成処理及び搬送動作を実行する。
【0059】
画像処理部336は、画像処理に特化したデジタル信号処理を行う演算処理装置であり、印刷に必要な画像データの変換等を行い、印刷を実行するモジュールである。この画像処理部336は、画像形成制御部336aと、色変換回路336bとを備えている。
【0060】
色変換回路336bは、RGB印刷画像をCMYK印刷画像に変換する回路であり、各色についての印刷画像に基づいて、画像形成制御部336aに印刷を実行させる。画像形成制御部336aは、各色のインクヘッドの駆動や、搬送経路の駆動手段の動作を制御し、画像形成処理全体を制御するモジュールであり、上位層コマンド部337によるスケジューリングに従ったタイミング及び印字速度で画像形成を行う。
【0061】
操作信号取得部333は、操作パネル340や通信インターフェース341からユーザーによる操作信号を受信するモジュールであり、受信した操作信号を解析し、ユーザー操作に応じた処理を他のモジュールに実行させる。
【0062】
用紙種別取得部332は、用紙サイズ検出機構530や操作信号取得部333によって検出された、給紙に係る印刷用紙10のサイズ、種類又は厚さ等の用紙種別データとして取得するモジュールである。そして、用紙種別取得部332は、印刷処理に際し、取得した用紙種別データを駆動制御部335に送信する。
【0063】
用紙サイズ検出機構530は、給紙系搬送路FRにおいて搬送対象となっている用紙のサイズを取得するモジュールである。詳しくは、用紙サイズ検出機構530は、給紙元の給紙トレイ130(130a〜130d)の情報や、給紙経路FR1の中間入口センサ511及び中間出口センサ512、レジストセンサ513の印刷用紙10の通過情報に基づいて、用紙のサイズを取得する。
【0064】
一方、操作信号取得部333は、ユーザーが行うプリンタドライバや操作パネル340における用紙設定、印刷装置100内にある給紙トレイの用紙サイズセンサなどを読み出すことによって、搬送処理に係る用紙のサイズを取得する。用紙サイズ検出機構530や操作信号取得部333は、取得した用紙種別データを用紙種別取得部332へ送信する。
【0065】
なお、プリンタドライバは、例えば本印刷装置をネットワークプリンタのように利用する場合に、ネットワーク上の各クライアントPCで実行されるアプリケーション又はミドルウェアであり、このプリンタドライバは、LANなどの通信インターフェース341を通じて、印刷装置100に対して印刷データ及び実行命令を送信することができる。本実施形態において、このプリンタドライバには、用紙の種類を設定するインターフェースが備えられている。したがって、ユーザーは、このインターフェース上で項目を選択することにより、用紙の種類を選択することができる。操作信号取得部333では、この用紙の種類の選択に応じて、用紙種別や用紙厚、用紙サイズなどの情報が取得される。
【0066】
記憶部334は、各種のデータや、プログラムを記憶保持するメモリ装置等である。本実施形態においては、サイド給紙トレイ120から印刷用紙10を送出してから、次の印刷用紙10を送出するまでの周期的な動作サイクルのうち、上限検知センサ401が検出結果を取得する時間間隔である時間ステップのデータを記憶している。また、記憶部334が記憶している時間ステップは、印刷処理に際して駆動制御部335により参照される。
【0067】
そして、この時間ステップは、少なくとも、給紙台121の平均上昇速度に基づいて決定される。給紙台駆動モータ210が印刷用紙10の1枚分の厚さ(ストローク)だけ印刷用紙10の給紙上面位置(給紙台121)を上昇させるのに費やすことができる時間は、給紙経路FR1における印刷用紙10の搬送速度、印刷用紙10の用紙サイズ(搬送方向における寸法)、及び、前後2枚の印刷用紙10を搬送する間に挿入されるアイドリング時間(紙間インターバル)によって定まる。この時間を全て費やして、給紙台駆動モータ210が印刷用紙10の1枚分の厚さ(ストローク)だけ印刷用紙10(給紙台121)を上昇させる場合を想定すると、給紙台駆動モータ210による上昇動作の平均速度は、印刷用紙10の用紙厚をさらに加味した要素によって特定できる。
【0068】
そして、印刷用紙10の給紙上面位置が適切な位置にない場合に給紙台駆動モータ210が印刷用紙10を上昇させる動作の期間は、上述した上昇動作の平均速度に基づいて決定することができる。したがって、給紙台駆動モータ210による上昇動作の平均速度を正しく定めることで、紙間インターバルのうち給紙台駆動モータ210の上昇動作の期間を正確に特定することができる。これにより、上述の時間ステップを、給紙台駆動モータ210による上昇動作を行っていない期間(非上昇期間)に適切に設定して、適切な期間に上限検知センサ401の検出結果を取得して、印刷用紙10の給紙上面位置を正しく検出することができる。また、上述した時間ステップは、以下の(a)〜(d)の点を考慮して決定される。
【0069】
(a)上限検知センサ401の検出結果を取得する時間間隔は、印刷用紙10の後端がピックアップローラ220aを通過して、次のピックアップ駆動モータ220の起動までとする。
【0070】
(b)上限検知センサ401の検出結果を取得する時間ステップの開始タイミングは、ピックアップ駆動モータ220の動作タイミングと同期するものとする。
【0071】
(c)上限検知センサ401の検出結果を取得する時間間隔は、給紙台駆動モータ210の非駆動時で、かつ、ピックアップ駆動モータ220の非駆動時であるものとする。
【0072】
(d)中間搬送ローラが含まれる場合、上限検知センサ401の検出結果を取得するタイミングは、給紙台駆動モータ210及びピックアップ駆動モータ220の非駆動時で、かつ、中間搬送ローラ群の駆動手段の停止時である時間間隔で行われるものとする。
【0073】
なお、動作サイクルS[sec]は、用紙長[m]をPとし、用紙間時間[sec]をBとし、搬送ベルト160の速度[m/s]をVとした場合に、
S=P/V+B
から算出される。
【0074】
また、用紙厚[m]をTとした場合に、給紙台の平均上昇速度A[m/s]は、
A=T/S
から算出される。
【0075】
そして、この時間ステップは、記録媒体のサイズや紙質等の種別によって複数の種類が用意され、用紙種別に応じて適宜決定され、工場出荷時やメンテナンス時において、記憶部334に記憶させられる。
【0076】
駆動制御部335は、各搬送経路の搬送を制御するモジュールであり、印刷用紙10毎の搬送条件に基づいて、各駆動部の制御を切り替え、各駆動部の動作速度を制御する。そして、本実施形態において、駆動制御部335には、サイド給紙トレイ120の昇降機能として、時間ステップ決定部335aと、動作モード選択部335bと、センサ検出部338と、シーケンス動作部335cと、電流制御部335dとを備えている。
【0077】
時間ステップ決定部335aは、記憶部334に記録された時間ステップから、用紙種別取得部で取得した印刷用紙10の種類に適合した時間ステップを抽出し、上限検知センサ401の出力を取得する期間として決定するモジュールである。具体的には、用紙サイズ検出機構530や操作信号取得部333によって検出された用紙種別データから使用される用紙サイズを取得するとともに、上位層コマンド部337におけるスケジュールを照合し、記憶部334に記憶された時間ステップの中から適合する時間ステップを選択する。そして、選択した時間ステップをセンサ検出部338と動作モード選択部335bへ送信する。
【0078】
センサ検出部338は、給紙台121上に積載された上限検知センサ401の検知結果に基づいて、給紙台121上に積載された印刷用紙10の給紙上面位置を検出するモジュールであり、この検出された信号をシーケンス動作部335cに通知している。特に、本実施形態では、時間ステップ決定部335aから入力された時間ステップに基づいて、検出結果を上限位置検出用のデータとして取得する。
【0079】
動作モード選択部335bは、上位層コマンド部337から入力されたジョブデータに基づいて、サイド給紙トレイ120を上昇させるか、又は下降させるかを決定するモジュールである。また、動作モード選択部335bには、物体の位置、方位、姿勢などを制御量として、目標値に追従するように制御するサーボ機能を備えている。そして、この動作モード選択部335bで決定された動作モードは、シーケンス動作部335cへ入力される。
【0080】
シーケンス動作部335cは、動作モード選択部335bからの選択動作と、センサ検出部338から取得した検出結果に基づいて、給紙機構を駆動制御するモジュールである。具体的には、給紙台121を上昇させた後、所定の時間で上限検知センサ401が給紙上面位置を検知すると、シーケンス動作部335cはブレーキ指示をドライバへ送り、給紙台121を停止させる。印刷用紙10が搬送されて、上限検知センサ401が非検知になると、シーケンス動作部335cは正転(若しくは反転)信号をドライバへ送り、給紙台を上昇させる制御を再開する。以降、印刷処理停止まで繰り返し動作を行っている。この際、シーケンス動作部335cは、電流制御部335dに信号を送り、モータを駆動させる電流の設定を行わせる。
【0081】
電流制御部335dは、シーケンス動作部335cから入力された制御信号に基づいて、モータ起動時に所定の起動電流直線若しくは曲線になるようにモータ電流設定を行うモジュールである。
【0082】
(動作速度の切替制御モジュール)
なお、上述したシーケンス動作部335cでは、給紙機構を駆動制御する際、動作速度の切替制御を行っている。次いで、動作速度の切替制御について説明する。図6は、演算処理部330の動作速度の切替制御に関するモジュールを示すブロック図であり、図7(a)は、タイミング算出部362で算出される駆動力の定速パターンの遷移図を示すグラフ図であり、(b)は、変速パターンを示すグラフ図である。
【0083】
シーケンス動作部335cは、動作速度の切替制御モジュール群として、印刷処理動作検出部361と、タイミング算出部362と、処理選択部363とを備えている。
【0084】
印刷処理動作検出部361は、画像処理部336から送出された制御信号に基づいて、印刷装置100における印刷処理の実行を検出するモジュールである。そして、印刷処理動作検出部361は、検出した印刷処理の実行状態を処理選択部363に通知する。
【0085】
タイミング算出部362は、記憶部334に記憶された測定値に基づいて、給紙台駆動モータ210を所定の速度で動作させる速度データを算出するモジュールである。具体的には、タイミング算出部362は、前回の給紙動作でセンサ検出部338が取得して記憶部334に記憶した給紙台駆動モータ210の駆動力を、記憶部334から読み出す。
【0086】
また、このタイミング算出部362は、パターン選択部362aを備えている。このパターン選択部362aは、用紙種別取得部332からの用紙種別のデータと、タイミング算出部362が算出した切替タイミングに基づいて、給紙動作に最適な動作速度パターンを記憶部334から選択して読み出すモジュールである。この読み出された動作速度パターンは、駆動制御部335へ受け渡される。
【0087】
本実施形態において、この動作速度パターンには、速度が一定の定速パターンと、加速又は減速する変速パターンという2つのパターンが含まれている。定速パターンは、図7(a)に示すように、駆動力の時間あたりの変化率を示す傾斜データである。
【0088】
他方の動作速度パターンは、図7(b)に示すような、動作速度を変化させる時間関数に従って、給紙台駆動モータ210を制御し、給紙台121を上昇駆動させる速度データである。この時間関数は、時間経過と、駆動力の制御量との関係を定義する指数関数であり、本実施形態では、三乗関数である。具体的には、上限検知センサ401がOFFの状態で、給紙台121の上昇が開始され、上限検知センサ401がONの状態となり、ブレーキにより上昇動作が停止されるまでの時間Tにおける駆動力の変化を定義している。なお、この時間関数は、用紙種別に応じて複数用意されており、用紙種別取得部332からの印刷用紙10の種別データが入力され、記憶部334に記憶された変速パターンが選択され、その時間関数は実行処理部363へ入力される。
【0089】
記憶部334には、センサ検出部338が給紙上面位置を検出した時点における、給紙台駆動モータ210の駆動力の測定値が記憶され、印刷動作毎に、前回の給紙台駆動モータ210の駆動力をタイミング算出部362に通知する。また、記憶部334には、給紙台駆動モータ210の動作速度パターンと、給紙台駆動モータ210の駆動経過時間とを対応づけて記憶されている。なお、この動作速度パターンは、印刷用紙10のサイズや紙質等の種別によって複数の種類が用意され、用紙種別に応じて適宜選択される。なお、この動作速度パターンは、工場出荷時やメンテナンス時において、記憶部334に記憶させられる。
【0090】
本実施形態において、センサ検出部338は、上限検知センサ401の検知結果に基づいて、給紙台121上に積載された印刷用紙10の給紙上面位置を検出し、検出された信号をタイミング算出部362に通知する。また、センサ検出部338は、給紙台121の上昇によって検出された測定値を、次回の切替タイミングの算出用として記憶部334に記憶させる。
【0091】
実行処理部363は、タイミング算出部362によって算出された定速パターン、又は変速パターンのいずれかを選択し、選択された定速パターン、又は変速パターンに従って、給紙台駆動モータ210を制御し、給紙台121を上昇駆動させるモジュールである。なお、この定速パターン、又は変速パターンの選択は、例えば、操作パネル340からのユーザー操作や、印刷用紙10の積載量や次回のピックアップの駆動時間までの時間間隔に応じて選択するようにしてもよい。この際、給紙台121を上昇駆動させるための電流制御信号を電流制御部335dへ送信する。
【0092】
ここで、各定速パターンが入力された場合には、シーケンス動作部335c及び電流制御部335dの制御よって、図7(a)、に示すように、給紙台121に大量の印刷用紙10が積載されているときは、一定の傾斜による駆動力で、給紙台121を移動させて、上限位置に到達させる。
【0093】
一方、変速パターンが入力された場合には、図7(b)に示すように、シーケンス動作部335cは、給紙台駆動モータ210の駆動経過時間Tに応じて駆動部の動作速度を変化させるので、給紙台121に積載された印刷用紙10の積載量が多い場合は、その加重が大きくなり、給紙台121の上昇にトルクが必要となり、駆動経過時間が長くなる。時間関数は二次曲線的に上昇させるように定義していることから、駆動経過時間Tが長くなるにつれて、給紙台駆動モータ210駆動力が増大される。ここで、印刷用紙10の積載量が多い場合は、その加重により、上昇速度が上がり過ぎることはなく、適度な速度で積載用紙の上限位置に到達させることができる。
【0094】
他方、給紙台121に積載された印刷用紙10の積載量が少ない場合は、その加重が小さくなり、給紙台121の上昇における駆動経過時間Tnは、Tよりも短くなる。時間関数は二次曲線的に上昇させるように定義していることから、駆動経過時間Tnが短くなるにつれて、給紙台駆動モータ210駆動力は小さくてすむ。ここで、印刷用紙10の積載量が少ない場合は、その加重が小さいため、上昇速度が上がりやすくなるが、その分、短時間で上限位置に到達することから、上昇速度が上がり過ぎることはなく、適度な速度で積載用紙の上限位置に到達させることができる。
【0095】
(作用・効果)
このような本実施形態によれば、シーケンス動作部335cは、時間ステップに基づいて、上限検知センサ401からの検出結果を取得するので、給紙上面位置が変動しない時間間隔である安定区間において、上限検知センサ401の出力を取り込んで給紙上面位置の低下の有無を判別することができ、その結果、給紙上面位置の低下を誤検出しないようにすることができる。
【0096】
具体的に、安定区間で上限検知センサ401の出力を取り込む場合と、給紙上面位置の変動が大きい区間で上限検知センサ401の出力を取り込む場合とでの給紙上面位置の変動幅について説明する。なお、図5には、1枚〜11枚までの印刷用紙10を順次、給紙する際の給紙機構制御のタイムチャートを示している。図5の実線は、本実施形態に係る各部の出力波形を示し、点線は従来例のように、所定間隔で一定に給紙上面位置を検知した場合における各部の出力波形を示している。
【0097】
この図5の横軸は時間遷移(Sec)を示し、縦軸には上限検知センサ401の検知状態(紙有り=ON/紙無し=OFF)と、給紙台駆動モータの電流(A)の状態と、給紙上面位置の偏差距離(mm)と、印刷用紙10がピックアップローラ220aを通過しているか否かを示すPU紙有無状態(通過中=ON/通過無=OFF)とをそれぞれ波形で示している。ここで、上限検知センサ401の検知状態は、右軸の数値3でON状態を表し、数値2でOFF状態を表している。また、給紙台駆動モータの電流(A)は、右軸の各数値でその電流の強さを表し、PU紙有無状態は、右軸の数値マイナス6で紙有りの状態を表し、数値マイナス7で紙無しの状態を表している。また、給紙上面位置の偏差距離(mm)は、左軸の数値で距離の大きさを表している。
【0098】
詳述すると、従来例では、一定の間隔で上限検知センサ401による検出を行っていたため、図5に示すように、変動が大きい区間(PU紙有無状態がON状態)においても、センサ信号が瞬間的にONになる(図中:P3)。これは、スクレーパローラ220bやピックアップローラ220aの駆動あるいは連れ周りによって、給紙上面位置が上限位置にあると上限検知センサ401が誤って認識したことを示している。そのため、センサ信号の瞬間的なONに対応して給紙台駆動モータ210の電流(変動電流)が0になっても、すぐに、上限検知センサ401が上面検出信号を出力しなくなり、これに伴い、給紙台駆動モータ210が再駆動され、給紙台駆動モータ210の電流が上がる(図中:P4)。
【0099】
このように、変動が大きい区間(PU紙有無状態がON状態)にも上限検知センサ401の出力を取得して、給紙上面位置が上限位置にあるか否かの検出を行うと、給紙トレイ上の印刷用紙10の減りとは関係なく給紙台駆動モータ210が時々駆動されるとともに、ピックアップ駆動モータ220の駆動停止による給紙上面位置の変動分が加わるため、図5の波形で示すように給紙上面位置が大きく変動する(図中:P1)。
【0100】
しかしながら、本実施形態によれば、時間ステップ決定部335aによって、定められた時間ステップは、給紙上面位置が変動しない区間である安定区間となる。この安定区間に限って上限検知センサ401の出力を取得して、給紙上面位置が上限位置にあるか否かの検出を行うと、給紙トレイ上の用紙が減ったときにだけ給紙台駆動モータ220が駆動されるので、図5に示すように、給紙上面位置の変動幅が小さくなる(図中:P2)。
【0101】
本実施形態では、このように安定区間の時間間隔でのみ上限検知センサ401の出力を取り込んで給紙上面位置の低下の有無を判別するので、給紙正面位置の波形が給紙上面位置の低下を誤検出せず、その結果、給紙上面位置を安定的に上限位置に保つことができる。
【0102】
特に、本実施形態では、時間ステップ決定部335aは、時間ステップの開始タイミングを、ピックアップローラ220aの動作タイミングと同期するようにしている。このため、動作タイミングから開始時間と終了時間とを設定することで、印刷用紙10の後端がピックアップローラ220aを通過して、次のピックアップ駆動モータ220の起動(すなわち、次の印刷用紙10がピックアップローラ220aを通過している状態)までの時間間隔で上限検知センサ401からの検出結果を取得することができる。これにより、紙上面位置が変動しない区間である安定区間に検出結果を取得することができ、その検出結果に応じて給紙トレイを昇降させることで、給紙上面位置を安定的な上限位置に保つことができる。
【0103】
特に、本実施形態では、時間ステップ決定部335aは、用紙サイズ、搬送速度、紙間長、又は用紙厚みなどの各条件や、これらの各条件から求められる平均上昇速度から算定しているので、印刷用紙10を搬送する各条件に応じて、動作サイクル内の安定した時間間隔を算出することができる。
【0104】
また、本実施形態において、時間ステップ決定部335aは、さらに給紙台駆動モータ210の非駆動時で、かつ、ピックアップ駆動モータ220の非駆動時である時間間隔を時間ステップとしている。このため、給紙台121が上下動し、印刷用紙10の給紙上面位置が不安定な時間を排除し、より印刷用紙の給紙上面位置の変動が少ない安定した時間間隔でのみ、上限検知センサ401の出力を取り込んで給紙上面位置の低下の有無を判別することができる。その結果、給紙上面位置の低下を誤検出しないようにすることができる。
【0105】
また、本実施形態では、中間搬送ローラ251,252,253を備えている場合には、さらに、中間搬送ローラ251,252,253の駆動モータ250よって生じる振動の影響や、ピックアップローラ220aが、中間搬送ローラ251,252,253による用紙の搬送にあわせて空回りする、所謂、「連れ回り」の影響を排他することができる。このため、より印刷用紙10の給紙上面位置の変動が少ない安定した時間間隔でのみ給紙上面位置の低下の有無を判別することができ、その結果、給紙上面位置の低下を誤検出せず、給紙上面位置を安定的に上限位置に保つことができる。
【符号の説明】
【0106】
10 印刷用紙
100 印刷装置
110 ヘッドユニット
120 サイド給紙トレイ
121 給紙台
125 駆動力伝達部
125a ピニオン
125b ラック
130 給紙トレイ
140 排紙口
150 排紙台
160 搬送ベルト
161 駆動ローラ
162 従動ローラ
170,172 切替機構
210 給紙台駆動モータ
220 ピックアップ駆動モータ
220a ピックアップローラ
220b スクレーパローラ
230 レジ前駆動モータ
230a レジ前ローラ
230a,230b レジ前ローラ
240 レジスト駆動モータ
240 中間搬送ローラ
240a,240b レジストローラ
250 中間搬送駆動モータ
251,252,253 中間搬送ローラ
330 演算処理部
331 ジョブデータ受信部
332 用紙種別取得部
333 操作信号取得部
334 記憶部
335 駆動制御部
335a 時間ステップ決定部
335b 動作モード選択部
335c シーケンス動作部
335d 電流制御部
336 画像処理部
336a 画像形成制御部
336b 色変換回路
337 上位層コマンド部
338 センサ検出部
340 操作パネル
341 通信インターフェース
361 印刷処理動作検出部
362 タイミング算出部
362a パターン選択部
363 処理選択部
401 上限検知センサ
402 下限検知センサ
511 中間入口センサ
512 中間出口センサ
513 レジストセンサ
530 用紙サイズ検出機構
CR 通常経路
DR 排紙経路
FR 給紙系搬送路
R レジスト部
SR 反転経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給紙トレイから搬送経路へ記録媒体を給送する給紙経路を有し、搬送経路上を搬送される記録媒体に画像を形成する画像形成装置であって、
前記給紙トレイに積層された前記記録媒体を1つずつ取り上げて前記給紙経路へと送出するピックアップ手段と、
前記積層された記録媒体を前記ピックアップ手段に近づくように上昇させる昇降手段と、
前記積層された記録媒体の上面位置を検出する検出手段と、
前記ピックアップ手段が前記記録媒体を前記給紙経路に送出し終えてから次の前記記録媒体を前記給紙経路に送出し始めるまでの紙間インターバルに、前記検出手段の検出結果を取得する検出結果取得手段と、
前記検出結果取得手段が取得した前記検出手段の検出結果に基づいて、前記昇降手段による記録媒体の上昇動作の開始を制御する昇降制御部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記紙間インターバルは、前記ピックアップ手段中の前記記録媒体に接触するローラを駆動するモータの動作期間を少なくとも除く期間であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記紙間インターバルは、前記ピックアップ手段の動作期間を少なくとも除く期間であることを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記給紙経路は、
前記搬送経路に対する前記記録媒体の送出タイミングを調整するレジストローラと、
前記ピックアップ手段と前記レジストローラとの間で前記記録媒体を搬送する中間搬送ローラ群と
を含んでおり、
前記紙間インターバルは、前記レジストローラ及び前記中間搬送ローラ群の動作期間を少なくとも除く期間である、
ことを特徴とする請求項1、2又は3記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記昇降制御部は、前記紙間インターバルのうち前記昇降手段による前記記録媒体の上昇動作中の期間を除く非上昇期間に前記検出結果取得手段が取得した前記検出手段の検出結果に基づいて、前記記録媒体の上昇動作の開始を制御することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記昇降手段による前記記録媒体の上昇動作中の期間は、該昇降動作の平均速度に基づいて決定したものであり、該平均速度は、前記給紙経路における前記記録媒体の搬送速度、前記記録媒体の搬送方向における用紙サイズ、前記紙間インターバル、及び、前記記録媒体の用紙厚に基づいて定まることを特徴とする請求項5記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−71831(P2013−71831A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213675(P2011−213675)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】