説明

画像形成装置

【課題】 機械的な制御により転写ベルト21の斜行を抑制する。
【解決手段】 従動ローラ23の軸方向端部のうち少なくとも一方側の端部に、転写ベルト21が斜行した際に転写ベルト21により押圧されて軸方向に変位するカラー27を設け、従動ローラ23側からバックアップローラ26B側に延びるとともに、カラー27が変位した際にカラー27により押圧されることにより、バックアップローラ26Bのうちカラー27と同一側の軸端側を押圧する押圧アーム31を設け、軸方向に対して傾いた傾斜面28A及び傾斜面28Aに摺接する可動部31Cを有し、カラー27を変位させる力の向きを転向させて押圧アーム31を押圧する力に変換する斜行力変換部30を設けるとともに、傾斜面28Aを転写ベルト21の幅方向端部から離れるほど従動ローラ23の回転中心線に近づくように傾斜させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端状のベルトを備える画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の発明では、ステアリングロールの傾きを電気的に制御することにより、ベルトの斜行又は蛇行を抑制している。
なお、ベルトの斜行又は蛇行とは、ベルトが回転しながら幅方向に移動する現象をいう。そして、以下、「斜行又は蛇行」を総称して単に「斜行」と記す。因みに、ベルトの幅方向とは、ベルトが架け渡されたローラの軸方向と一致する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−190812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の発明では、ステアリングロールの傾きを電気的に制御するので、エッジセンサや変位センサ等の電気的なセンサ及び駆動部等の電気的なアクチュエータを必要とする。
【0005】
本発明は、上記点に鑑み、機械的な制御によりベルトの斜行を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、画像形成部(2)と、無端状のベルト(21)と、ベルト(21)が架け渡され、軸方向が互いに略平行となるように配設された第1ローラ(23)、第2ローラ(26B)及び第3ローラ(22)と、第1ローラ(23)の軸方向端部のうち少なくとも一方側の端部に設けられ、ベルト(21)が斜行した際にベルト(21)により押圧されて軸方向に変位するカラー(27)と、第1ローラ(23)側から第2ローラ(26B)側に延びるとともに、カラー(27)が変位した際にカラー(27)により押圧されることにより、第2ローラ(26B)のうちカラー(27)と同一側の軸端側を押圧する押圧アーム(31)と、軸方向に対して傾いた傾斜面(28A)が形成されたカム(28)及び傾斜面(28A)に摺接する可動部(31C)を有し、カラー(27)を変位させる力の向きを転向させて押圧アーム(31)を押圧する力に変換する斜行力変換部(30)とを備え、傾斜面(28A)は、ベルト(21)の幅方向端部から離れるほど第1ローラ(23)の回転中心線(L1)に近づくように傾斜していることを特徴とする。
【0007】
これにより、本発明では、ベルト(21)が斜行すると、カラー(27)がベルト(21)により押圧されて、第2ローラ(26B)の軸端側のうちカラー(27)と同一側が押圧アーム(31)を介して押圧される。このため、以下の(I)及び(II)の現象のうち少なくとも一方の現象が生じる。
【0008】
すなわち、(I)ローラに架け渡されたベルトの特性として、「幅方向において張力の不均一が生じている場合には、ベルト(21)は張力の大きい側から張力の小さい側に斜行する」という特性がある。
【0009】
つまり、カラー(27)がベルト(21)により押圧された時点においては、その押圧されたカラー(27)側で発生しているベルト(21)の張力が、当該カラー(27)と反対側で発生しているベルト(21)の張力に比べて小さくなっている可能性ある。
【0010】
しかし、本発明では、カラー(27)がベルト(21)により押圧されて変位すると、第2ローラ(26B)のうち当該カラー(27)と同一側が押圧されるので、当該カラー(27)の同一側で発生しているベルト(21)の張力を上昇させることができる。したがって、張力の不均一を是正することができるので、斜行の進行を抑制することができる。
【0011】
また、(II)ローラに架け渡されたベルトの特性として、「ローラが張架面に対して傾いた場合には、ベルトは張架面からの変位量が大きい側から小さい側に斜行する」という特性がある。
【0012】
ここで、ベルトの張架面とは、ベルトのうち、ローラと接触していない部位であって張架されることにより平面状となっている部位をいう。具体的には、ベルト(21)の回転方向において隣り合う2つのローラ間に発生するベルトの平面部分をいう。
【0013】
また、張架面からの変位量とは、2つのローラの軸線が互いに完全に平行となる場合の張架面(以下、理想張架面という。)と現実の張架面との差をいう。したがって、現実の張架面が理想張架面と一致して張架面からの変位量が0であって、幅方向においてベルトの張力が均一である場合には、ベルトの斜行は殆ど発生しない。
【0014】
そして、カラー(27)がベルト(21)により押圧された時点においては、その押圧されたカラー(27)側で発生している張架面からの変位量が、当該カラー(27)と反対側で発生している張架面からの変位量に比べて小さくなっている可能性ある。
【0015】
しかし、本発明では、カラー(27)がベルト(21)により押圧されて変位すると、第2ローラ(26B)のうち当該カラー(27)と同一側が押圧されるので、当該カラー(27)の同一側で発生している張架面からの変位量を増大させることができる。したがって、張架面からの変位量を幅方向において均一化することができるので、斜行の進行を抑制することができる。
【0016】
以上のように、本発明では、(I)若しくは(II)、又は(I)及び(II)で述べたように、機械的な制御によりベルト(21)の斜行を抑制することができる。
因みに、上記各手段等の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段等との対応関係を示す一例であり、本発明は上記各手段等の括弧内の符号に示された具体的手段等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の中央断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置のベルトユニット20の斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置のカラー27付近の拡大断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置のベルトユニット20の側面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置のベルトユニット20の上面図である。
【図6】(a)及び(c)は、本発明の第1実施形態に係る画像形成装置のカラー27付近の側面側拡大断面図であり、(b)及び(d)は本発明の第1実施形態に係る画像形成装置のカラー27付近の上面側拡大断面図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る画像形成装置のベルトユニット20の側面図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る画像形成装置のカラー27付近の拡大断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る画像形成装置のベルトユニット20の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に説明する「発明の実施形態」は実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的手段や構造等に限定されるものではない。
【0019】
そして、本実施形態は、ダイレクトタンデム方式のレーザプリンタに本発明に係る画像形成装置を適用したものである。以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
(第1実施形態)
1.画像形成装置の概略構造
画像形成装置1内には、図1に示すように、画像形成部2及び給紙装置10等が収納されている。そして、画像形成部2は、シートに印刷される画像を形成する。給紙装置10は、給紙トレイ11に載置されているシートを画像形成部2に送り出す。
【0020】
なお、画像形成部2及び給紙装置10等は、装置本体に組み付けられている。因みに、装置本体とは、筐体やフレーム等の通常の使用時において、ユーザにより分解・取り外しされない部位等をいう。
【0021】
また、画像形成部2は、1つ以上のプロセスカートリッジ3、1つ以上の露光器4及び1つの定着器5等からなる電子写真方式の画像形成手段にて構成されている。なお、本実施形態に係る画像形成部2はカラー方式であるため、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアン等の複数色の現像剤毎にプロセスカートリッジ3が設けられている。
【0022】
なお、各プロセスカートリッジ3には、現像剤像が担持される感光ドラム3A、及び感光ドラム3Aを帯電させる帯電器3B等が収納されている。そして、帯電した感光ドラム3Aが露光器4にて露光されると、感光ドラム3Aの外周面に静電潜像が形成される。その後、電荷を帯びた現像剤が感光ドラム3Aに供給されると、感光ドラム3Aの外周面に現像剤像が担持される。
【0023】
また、転写ベルト21は、給紙トレイ11から給出されてきたシートを各感光ドラム3Aに搬送する搬送手段である。そして、各感光ドラム3Aは、転写ベルト21のうち駆動ローラ22と従動ローラ23とにより張架された張架面21Aに対向した状態で、転写ベルト21の回転方向に沿って直列に配設されている。
【0024】
また、転写ベルト21を挟んで各感光ドラム3Aと対向する部位には、その感光ドラム3Aに担持されている現像剤像を、転写ベルト21により搬送されるシートに転写させる転写ローラ8が配設されている。このため、本実施形態では、各感光ドラム3Aに担持されている色毎の現像剤像は、シート上に直接的に重ね合わせられる。
【0025】
なお、給紙装置10により給紙トレイ11から画像形成部2に向けて搬出されたシートは、一対のレジストローラ6まで搬送される。そして、一対のレジストローラ6は、シートの姿勢を矯正した後、予め設定された所定のタイミングで画像形成部2にシートを突入させる。
【0026】
また、定着器5は、シートに接触しながらシートを加熱する加熱ローラ5A及びシートを加熱ローラ5Aに押し付ける加圧ローラ5B等から構成されている。そして、定着器5から排出されたシートは、排紙ローラ9により装置本体の上面に設定された排紙トレイ1Aに排出される。
【0027】
2.ベルトユニット等の構造
転写ベルト21は、駆動ローラ22及び従動ローラ23等と共にベルトユニット20を構成している。なお、本実施形態に係るベルトユニット20は、装置本体に対して着脱自在に装着されている。
【0028】
すなわち、転写ベルト21は、熱可塑性エラストマー等の樹脂材料からなる無端状の帯体である。そして、転写ベルト21は、軸方向が互いに略平行となるように配設された駆動ローラ22及び従動ローラ23に架け渡されている。また、駆動ローラ22は転写ベルト21に回転力を付与する。従動ローラ23は転写ベルト21の回転と共に従動回転する。
【0029】
また、駆動ローラ22及び従動ローラ23の軸方向両端側は、図2に示すように、フレーム24により保持されている。そして、駆動ローラ22は、フレーム24に対して不動であるのに対して、従動ローラ23は、フレーム24に対して張架方向に変位することができる。なお、張架方向とは、張架面21Aに発生する張力と平行な方向をいい、具体的には、駆動ローラ22から従動ローラ23に向かう方向である。
【0030】
因みに、従動ローラ23は、図1に示すように、駆動ローラ22から離間する向きの弾性力をバネ等の弾性部材25から受けている。つまり、弾性部材25は張架面21Aに張力を発生させる張力発生手段として機能する。従動ローラ23は転写ベルト21に張力を発生させるテンションローラとして機能する。
【0031】
また、転写ベルト21の内周面には、図3に示すように、転写ベルト21の回転方向に沿うように転写ベルト21の内方側に突出したガイドリブ21Bが設けられている。そして、本実施形態では、図2に示すように、ガイドリブ21Bは転写ベルト21の幅方向一端側のみに設けられている。なお、転写ベルト21の幅方向とは、駆動ローラ22等の軸方向と平行な方向をいう
因みに、本実施形態に係るガイドリブ21Bは、接着剤や加硫接着により転写ベルト21に一体化されている。
【0032】
ところで、ベルトユニット20を挟んでプロセスカートリッジ3と反対側、つまりベルトユニット20の下方側には、図1に示すように、転写ベルト21の外周面に付着した現像剤等の付着物を除去するクリーナユニット26が配設されている。なお、本実施形態に係るクリーナユニット26は、装置本体に着脱自在に装着されている。
【0033】
そして、クリーナユニット26は、クリーニングローラ26A及びクリーナボックス26C等から構成されている。クリーニングローラ26Aは、付着物を転写ベルト21の表面から除去・回収する除去手段である。クリーナボックス26Cは、クリーニングローラ26Aにより除去・回収された付着物を貯蔵する収納箱である。
【0034】
また、転写ベルト21を挟んでクリーニングローラ26Aと反対側には、転写ベルト21をクリーニングローラ26Aに押し付けるバックアップローラ26Bが配設されている。そして、バックアップローラ26Bは、張架面21Aと交差する方向に変位可能な状態でフレーム24に組み付けられているとともに、バネ等の弾性部材26Dによりクリーニングローラ26A側に押圧されている。
【0035】
なお、バックアップローラ26Bも、その軸方向が駆動ローラ22及び従動ローラ23の軸方向と略平行となるようにフレーム24に組み付けられている。このため、転写ベルト21は、駆動ローラ22、従動ローラ23及びバックアップローラ26Bに架け渡された状態となる。
【0036】
ところで、従動ローラ23は、図3に示すように、転写ベルト21の内周面に接触する円筒状のローラ部23A、及びローラ部23Aの軸方向両端側を閉塞するとともに、ローラ部23Aを回転可能に支持するローラ軸23B等から構成されている。
【0037】
そして、従動ローラ23の軸方向端部のうちガイドリブ21Bと同一側の端部には、円錐テーパ状の傾斜面28Aが形成されたカム部28を有するカラー27が設けられている。
【0038】
なお、本実施形態では、カム部28とカラー27とは、POM等の耐摩耗性に優れた樹脂にて一体成形されている。そこで、以下、特に、断りをした場合を除き、カラー27とは、カム部28も含む意味で用いる。
【0039】
また、カラー27は、ローラ軸23Bに対して軸方向に変位することが規制された状態で、ローラ軸23Bに対して回転可能に装着されている。このため、カラー27は、ローラ軸23Bに対して軸方向に変位することなく、ローラ軸23Bと独立して回転することができる。
【0040】
因みに、本実施形態では、カラー27に設けられた係止用の突起部27Aを、ローラ軸23Bに設けられた係止用の溝23Cに嵌め込むことにより、カラー27の軸方向変位を規制している。
【0041】
また、カラー27のうち傾斜面28Aよりローラ部23A側には、ガイドリブ21Bが嵌り込むガイド溝27Bが設けられている。因みに、本実施形態に係るカム部28とは、ガイド溝27Bの一対の側壁面S1、S2のうち傾斜面28A側の側壁面、つまり図3の左側壁面S1より傾斜面28A側の部分をいう。
【0042】
そして、カム部28の外径寸法D1は、ローラ部23Aの直径寸法D2未満であって、ガイドリブ21B部分の内径寸法D3より大きい寸法に設定されている。これにより、ベルト本体部21Cが左側壁面S1に接触することを抑制している。なお、ベルト本体部21Cとは、転写ベルト21のうち薄膜状の帯部をいう。
【0043】
また、ローラ軸23Bは、軸受29を介してフレーム24に回転可能に組み付けられている。軸受29は、ローラ軸23Bに摺接する円筒部29A、及び一対のフランジ部29B等から構成されている。
【0044】
そして、円筒部29Aは、ローラ軸23Bの外周面に設けられた摺接溝23Dに嵌め込まれている。このため、円筒部29Aの内周面が摺接溝23Dの円周状の底面に摺接することにより、ローラ軸23Bが回転することができる。一方、円筒部29Aの軸方向両端面が摺接溝23Dの側壁に接触することにより、ローラ軸23Bが円筒部29Aに対して軸方向に大きく変位することが規制される。
【0045】
また、一対のフランジ部29Bは、円筒部29Aの外周面から径方向外側に突出した突起部である。そして、これらのフランジ部29Bにより、フレーム24からローラ軸23Bに向けて突出した凸部24Aが軸方向から挟み込まれている。このため、軸受29がフレーム24対して軸方向に大きく変位することが規制される。
【0046】
3.斜行力変換部等の構成
斜行力変換部30とは、カラー27に作用する斜行力を、後述する押圧アーム31を押圧する力に変換する機構をいう。
【0047】
すなわち、転写ベルト21がカラー27側に斜行すると、ガイドリブ21Bの側面と側壁面S1とが接触するため、カラー27は転写ベルト21により押圧されてフレーム24側に変位する。そこで、以下、カラー27を押圧する力、つまりカラー27を軸方向に変位させる力を斜行力という。
【0048】
また、押圧アーム31は、図4に示すように、従動ローラ23側からバックアップローラ26B側に延びている。そして、押圧アーム31の従動ローラ23側に揺動中心31Aが設定されている。一方、押圧アーム31のバックアップローラ26B側にバックアップローラ26Bを押圧するための作用部31Bが設定されている。
【0049】
また、押圧アーム31のうち揺動中心31Aと作用部31Bとの間には、傾斜面28Aに摺接する可動部31Cが設定されている。このため、本実施形態では、揺動中心31Aから作用部31Bまでの寸法は、揺動中心31Aから可動部31Cまでの寸法より大きな寸法となる。
【0050】
そして、押圧アーム31は、図5に示すように、軸方向と直交する方向に延びて、バックアップローラ26Bのうちカラー27と同一側の軸端側を押圧する。なお、本実施形態では、押圧アーム31は、図4に示すように、弾性部材26Dを介して間接的にバックアップローラ26Bを押圧する。
【0051】
また、傾斜面28Aは、図3に示すように、転写ベルト21の幅方向端部21Dから離れるほど従動ローラ23の回転中心線L1に近づくように円錐テーパ状に傾斜している。このため、カラー27がフレーム24側に変位すると、図6(c)に示すように、可動部31Cが傾斜面28Aと摺接しながら回転中心線L1から離間する向きに変位する。
【0052】
つまり、カラー27を軸方向に変位させる力、つまり斜行力は、傾斜面28A及び可動部31Cにより、その向きが転向されて押圧アーム31を押圧する力に変換される。したがって、転写ベルト21が斜行してカラー27がフレーム24側に変位すると、押圧アーム31は、バックアップローラ26Bを押圧する向きに揺動する。因みに、バックアップローラ26Bを押圧する力の向きとは、押圧アーム31の長手方向及び軸方向と交差する方向と平行な向きである。
【0053】
なお、押圧アーム31が回転中心線L1から離間する向きに揺動してバックアップローラ26Bを押圧すると、その反作用として、作用部31Bは、回転中心線L1に向かう向きの力を受ける。このため、カラー27がフレーム24から離間する向きに変位した場合には、押圧アーム31は回転中心線L1に向かう向きに揺動して復帰する。
【0054】
4.本実施形態に係る画像形成装置(ベルトユニット)の特徴
本実施形形態では、転写ベルト21がカラー27側に斜行すると、図6(d)に示すように、カラー27が転写ベルト21により押圧されてフレーム24側に変位する。このため、図6(c)に示すように、可動部31Cが回転中心線L1から離間する向き摺接変位するとともに、押圧アーム31が回転中心線L1から離間する向きに揺動する。
【0055】
したがって、転写ベルト21がカラー27側に斜行すると、図7に示すように、バックアップローラ26Bの軸端側のうちカラー27と同一側が押圧アーム31によって押圧される。このため、本実施形態では、前記(I)若しくは前記(II)、又は前記(I)及び前記(II)で述べたように、機械的な制御により転写ベルト21の斜行を抑制することができる。
【0056】
なお、図4及び図7では、本実施形態の理解を容易にするためのバックアップローラ26Bによって転写ベルト21が大きく変形しているように誇張して描かれているが、実際の変形量は、目視では判別できない程度の量である。
【0057】
また、本実施形態では、可動部31Cは、押圧アーム31のうち揺動中心31Aと作用部31Bとの間に設けられていることを特徴としている。これにより、揺動中心31Aから作用部31Bまでの距離は、揺動中心31Aから可動部31Cまでの距離より大きくなるので、可動部31Cの変位量を拡大して作用部31Bを変位させることができる。
【0058】
また、本実施形態では、既存のバックアップローラ26Bを利用して転写ベルト21の斜行を抑制しているので、斜行抑制用のローラを新たに設ける必要がなく、画像形成装置1の製造原価上昇を抑制できる。
【0059】
また、本実施形態では、バックアップローラ26Bは、弾性変形可能な弾性部材26Dを介して押圧アーム31により押圧されることを特徴としている。これにより、カラー27、押圧アーム31及びバックアップローラ26Bの寸法バラツキや組み付け寸法バラツキを吸収しつつ、上記(I)又は(II)の作用・効果を得ることができる。
【0060】
また、本実施形態では、転写ベルト21の幅方向端部のうちカラー27と同一側の内周面のみにガイドリブ21Bが設けられていることを特徴としている。これにより、カラー27と反対側への斜行は、ガイドリブ21Bにより抑制することができる。
【0061】
つまり、転写ベルト21がカラー27と反対側に向けて斜行した場合には、ガイドリブ21Bは、ガイド溝27Bの側壁面S2に接触し、カラー27には、フレーム24から離間する向きの力が作用する。
【0062】
しかし、カラー27はローラ軸23Bに対して軸方向に大きく変位することが規制され、かつ、ローラ軸23Bはフレーム24に対して軸方向に大きく変位することが規制されているので、転写ベルト21の斜行が更に進行することが抑制される。
【0063】
したがって、カラー27及び押圧アーム31を軸方向一端側のみに設け、かつ、カラー27と同一側のみにガイドリブ21Bを設ければ、いずれの向きに斜行が発生した場合であっても、その斜行を抑制することができる。
【0064】
因みに、転写ベルト21の幅方向端部のうちカラー27と反対側のみに、ガイドリブ21B及びガイド溝27Bを設けると、カラー27と反対側へ転写ベルト21が斜行した際に、斜行方向前端に位置するガイドリブ21Bにて斜行力を受けることとなる。
【0065】
このため、転写ベルト21には、幅方向の圧縮力が作用することとなるので、幅方向において座屈するように転写ベルト21が変形してしまう可能性が高い。
これに対して、本実施形態では、転写ベルト21の幅方向端部のうちカラー27と同一側にガイドリブ21Bを設けているので、カラー27と反対側へ転写ベルト21が斜行した際の斜行力は、斜行方向後退に位置するガイドリブ21Bにて斜行力を受けることとなる。
【0066】
したがって、転写ベルト21には、幅方向の引張力が作用することとなるので、幅方向において座屈するように転写ベルト21が変形してしまうことを抑制できる。
また、本実施形態では、カム部28の外径寸法D1は、ローラ部23Aの直径寸法D2未満であって、ガイドリブ21B部分の内径寸法D3より大きい寸法に設定されていることを特徴としている。
【0067】
これにより、転写ベルト21がカラー27側に斜行したときに、ガイドリブ21Bの側面のみがカラー27の側壁面S1に接触し、ベルト本体部21Cが側壁面S1に接触することを抑制することができる。
【0068】
(第2実施形態)
上述の実施形態では、カラー27にガイド溝27Bを設けたが、本実施形態は、図8に示すように、ガイド溝27Bを廃止するとともに、ローラ部23Aの軸方向端面を上記側壁面S2として利用するものである。
【0069】
(第3実施形態)
上述の実施形態では、可動部31Cが揺動中心31Aと作用部31Bとの間に設けられていたが、本実施形態は、図9に示すように、揺動中心31Aを可動部31Cと作用部31Bとの間に設けたものである。
【0070】
なお、本実施形態では、可動部31Cと傾斜面28Aとの摺接部を、カラー27の中心、つまり回転中心線L1に対して、上述の実施形態における摺接部と反対側に設定している。
【0071】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、ガイドリブ21Bを設けたが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、ガイドリブ21Bを廃止し、軸方向両側にカラー27及びカム部28等を設けてもよい。
【0072】
また、上述の実施形態では、カラー27とカム部28とが一体化されていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、カラー27とカム部28とを別体としてもよい。
また、上述の実施形態では、転写ベルト21の幅方向端部のうちカラー27と同一側のみにガイドリブ21B等を設けたが、本発明はこれに限定されるものではなく、転写ベルト21の幅方向端部のうちカラー27と反対側のみに、ガイドリブ21B等を設けてもよい。
【0073】
また、上述の実施形態では、カム部28、つまり傾斜面28Aをカラー27に設け、可動部31Cを押圧アーム31に設けたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、傾斜面28Aを押圧アーム31に設け、可動部31Cをカラー27に設けてもよい。
【0074】
また、上述の実施形態では、バックアップローラ26Bを利用して転写ベルト21の斜行を抑制したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、斜行抑制用のローラを新たに設けてもよい。
【0075】
また、上述の実施形態では、従動ローラ23にカラー27等を設けたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば駆動ローラ22等に設けてもよい。
また、上述の実施形態では、ダイレクトタンデム方式の画像形成装置に本発明を適用したが、本発明の適用はこれに限定されるものではなく、例えば、転写ベルト21に現像剤像を転写した後、当該現像剤像をシートに転写する中間転写方式やインクジェット方式の画像形成装置にも適用できる。
【0076】
また、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0077】
1A… 排紙トレイ 1… 画像形成装置 2… 画像形成部
3… プロセスカートリッジ 3A… 感光ドラム 4… 露光器
5… 定着器 5A… 加熱ローラ 6… レジストローラ 8… 転写ローラ
9… 排紙ローラ 10… 給紙装置 11… 給紙トレイ 20… ベルトユニット
21… 転写ベルト 21A… 張架面 21B… ガイドリブ
21C… ベルト本体部 22… 駆動ローラ 23… 従動ローラ
23A… ローラ部 23B… ローラ軸 23C… 溝 23D… 摺接溝
24… フレーム 24A… 凸部 25… 弾性部材 26… クリーナユニット
26A… クリーニングローラ 26C… クリーナボックス
26B… バックアップローラ 26D… 弾性部材 27… カラー
27A… 突起部 27B… ガイド溝 28A… 傾斜面 28… カム部
29… 軸受 29A… 円筒部 29B… フランジ部 30… 斜行力変換部
31… 押圧アーム 31A… 揺動中心 31B… 作用部 31C… 可動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成部と、
無端状のベルトと、
前記ベルトが架け渡され、軸方向が互いに略平行となるように配設された第1ローラ、第2ローラ及び第3ローラと、
前記第1ローラの軸方向端部のうち少なくとも一方側の端部に設けられ、前記ベルトが斜行した際に前記ベルトにより押圧されて前記軸方向に変位するカラーと、
前記第1ローラ側から前記第2ローラ側に延びるとともに、前記カラーが変位した際に前記カラーにより押圧されることにより、前記第2ローラのうち前記カラーと同一側の軸端側を押圧する押圧アームと、
前記軸方向に対して傾いた傾斜面が形成されたカム及び前記傾斜面に摺接する可動部を有し、前記カラーを変位させる力の向きを転向させて前記押圧アームを押圧する力に変換する斜行力変換部とを備え、
前記傾斜面は、前記ベルトの幅方向端部から離れるほど前記第1ローラの回転中心線に近づくように傾斜していることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記カムは、前記カラーに設けられ、
前記可動部は、前記押圧アームに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記押圧アームは、前記軸方向と直交する方向に延びるとともに、一端側に揺動中心が設定され、他端側に前記第2ローラを押圧するための作用部が設定されており、
さらに、前記可動部は、前記押圧アームのうち前記揺動中心と前記作用部との間に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記画像形成部は、前記ベルトのうち前記第1ローラと前記第3ローラとにより張架された張架面に対向して配設されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第3ローラは前記ベルトを回転させる駆動ローラであり、
前記第1ローラは、前記ベルトと共に従動回転する従動ローラであり、
前記ベルトを挟んで前記第2ローラと反対側には、前記ベルトに付着した付着物を除去するベルトクリーナが配設されており、
さらに、前記第2ローラは、前記ベルトを前記ベルトクリーナに押し付けるバックアップローラであることを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第2ローラは、弾性変形可能な弾性部を介して前記押圧アームにより押圧されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記ベルトの幅方向端部のうち前記カラーと同一側の内周面には、前記ベルトの回転方向に沿うように前記ベルトの内方側に突出することにより、前記ベルトが前記カラーと反対側に向けて斜行することを規制するガイドリブが設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記画像形成部は、複数の感光ドラムが前記ベルトの回転方向に沿って直列に配設された電子写真方式の画像形成部であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図9】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−76886(P2013−76886A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217293(P2011−217293)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】