説明

画像投射システム

【課題】防犯性能の高い画像投射システムを提供する。
【解決手段】画像投射システム10は、画像を投射するプロジェクタ16と、プロジェクタ16を回動自在に支持し、画像の投射方向を変化させる吊り下げ装置18とを備えており、プロジェクタ16には、前方の人物を感知する人感センサ52と、前方の人物を撮影するカメラ50とが設けられている。プロジェクタ16は、防犯モードにセットされると、プロジェクタ16を水平面内で一定方向に回転させながら、人感センサ52を駆動して人物の感知を開始する。そして、人感センサ52が人物を感知すると、これを侵入者とみなして、侵入者を正面に捉えるようにプロジェクタ16の向きを制御しながら侵入者へ向けて白色のベタ画像を投射して侵入者を照明するとともに、カメラ50により侵入者を撮影する。また、侵入者が感知された旨を通信先74に通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を投影するプロジェクタを有する画像投射システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶やDMDなどの画像形成素子により形成された画像を、投影レンズを介して投影するプロジェクタが広く知られている。近年、プロジェクタでは、商品価値を高めるために各種機能を付加する試みがなされている。例えば、下記特許文献には、窓開放、ガス漏れ、火災などの異常を検知した際に、その旨を示す画像を投影することによって、プロジェクタの設置された家屋や店舗の者に対して危険を報知する例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−226006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1記載の装置は、プロジェクタの設置された家屋や店舗の者に対して作用(危険の報知)するように構成されたものであり、プロジェクタの設置された家屋や店舗への侵入者に対して威嚇や警告がなされるわけではないので、防犯性能が高いとは言い難い。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、防犯性能の高い画像投射システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の画像投射システムは、光源からの照明光を画像形成光学系により画像光に変換し、投影レンズを介して前方へ投射するプロジェクタと、前記プロジェクタを水平または垂直の少なくとも一方に回動自在に支持し、前記プロジェクタを回動させることによって前記画像の投射方向を変化させるプロジェクタ支持装置と、前記プロジェクタ及び前記プロジェクタ支持装置を駆動制御するコントロールユニットとから構成され、前記コントロールユニットは、前記プロジェクタの動作モードを、観賞用の画像を投射する通常モードと防犯用の画像を投射する防犯モードとに切り替えるモード切り替え手段と、前記プロジェクタ周辺の人物を感知する人物感知手段が前記防犯モードにおいて人物を感知したときに、感知した人物または感知した人物の近傍へ向けて前記防犯用の画像を投射させる投射制御手段とを備えたことを特徴としている。
なお、感知した人物の近傍とは、感知した人物周辺の壁や床、天井などである。
【0007】
前記人物感知手段を、前記プロジェクタに設けてもよい。
【0008】
また、前記人物感知手段は、前記プロジェクタの前方の人物を感知するとともに、前記投射制御手段は、前記防犯モードにおいて前記プロジェクタを回転させながら前記人物感知手段を駆動して人物の感知を行うものでもよい。
【0009】
さらに、前記防犯用の画像は、前記人物感知手段により感知された人物を照明するための白色のベタ画像であってもよい。なお、白色のベタ画像とは、濃度が一様の白色の画像である。
【0010】
また、前記防犯用の画像は、前記人物感知手段により感知された人物に対して警告を行うための警告画像であってもよい。なお、警告画像とは、不法な侵入を感知した旨や退去を促す旨を示すための警告メッセージを含む画像である。
【0011】
さらに、前記投射制御手段は、前記人物感知手段により感知された人物の移動方向前方に前記警告画像を投射させるものでもよい。
【0012】
また、前記人物の移動方向及び前記警告画像の投射方向に基づいて、前記警告画像の傾き及び形状を補正する画像補正手段を設けてもよい。
【0013】
さらに、前記プロジェクタの前面に設けられた撮影レンズを介して得られた被写体像を撮影するカメラと、前記カメラを制御して、前記人物感知手段により感知された人物の撮影を行う撮影制御手段とを設けてもよい。
【0014】
また、前記人物感知手段は、前記カメラにより撮影された画像を解析することによって、人物を感知するものでもよい。
【0015】
さらに、前記カメラにより撮影された人物の画像を解析し、解析結果に基づいて前記人物感知手段が感知した人物が侵入者か否かを判定する判定手段を備え、前記投射制御手段は、前記判定手段により侵入者と判定された場合に前記防犯用の画像の投射を行うものでもよい。
【0016】
また、前記モード切り替え手段は、操作部の操作に従って前記動作モードの切り替えを行うものでもよい。
【0017】
さらに、前記モード切り替え手段は、予め設定されたスケジュールに従って前記動作モードの切り替えを行うものでもよい。
【0018】
また、前記防犯モードにおいて、前記人物感知手段が人物を感知した際に、この旨を示す情報を予め設定された通信先へ送信する情報送信手段を設けてもよい。
【0019】
さらに、予め設定された通信先からの情報を受信する情報受信手段を備え、前記投射制御手段は、前記情報受信手段から情報を受信した際に、受信した情報に基づく画像を投射させるものでもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、防犯モードにおいて本体周辺の人物(侵入者)へ向けて防犯用画像を投射することで侵入者を威嚇したり侵入者に警告を与えることができるので、防犯性能が高い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】画像投射システムの外観図である。
【図2】画像投射システムの構成を示す概略図である。
【図3】防犯モードでの動作を示すフローチャートである。
【図4】警告画像を投射する手順を示すフローチャートである。
【図5】災害情報を投射する手順を示すフローチャートである。
【図6】防犯モードへの移行手順を示すフローチャートである。
【図7】画像の投影を停止する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1、図2に示すように、本発明の画像投射システム10は、画像投射ユニット12と、コントロールユニット14とから構成される。また、画像投射ユニット12は、プロジェクタ16と、吊り下げ装置18とから構成される。
【0023】
プロジェクタ16は、略直方体形状に形成されており、吊り下げ装置18を介して家屋や店舗の天井から吊り下げられる。プロジェクタ16の前面には、投影レンズ20を内蔵したレンズ鏡筒22が設けられ、プロジェクタ16の内部には、光源24や画像生成光学系26などが収められている。プロジェクタ16は、光源24からの照明光を画像生成光学系26を介して画像光に変換し、投影レンズ20からプロジェクタ16の前方へ向けて投射する。また、プロジェクタ16の内部には、ジャイロセンサ28が設けられている。ジャイロセンサ28は、後述する制御部70の制御のもと、プロジェクタ16の姿勢(画像の投射方向)を検知する。
【0024】
吊り下げ装置18は、天井取り付け板30、備えている。天井取り付け板30は、略円盤形状に形成されており、家屋や店舗の天井にネジ止めされて固定される。天井取り付け板30の下面には、第1支持筒42が固定されている。第1支持筒42の内側には回転筒34が設けられ、鉛直な回転軸を中心に回転自在に支持されている。回転筒34は、モータ36に連結され、モータ36の回転に伴って回転する。モータ36は、例えば、第1支持筒42の内部に収納される。
【0025】
回転筒34の下端には、第2支持筒42が固定され、第2支持筒42の内側には水平な回転軸44が設けられ、回転自在に支持されている。回転軸44は、モータ46に連結され、モータ46の回転に伴って回転する。モータ46は、例えば、第2支持筒42の内部に収納される。また、回転軸44の両端部は、第2支持筒42の両端から突出されており、ここに、プロジェクタ16の上面に立設された一対のステー48が固定されている。
【0026】
これにより、モータ36の回転に伴ってプロジェクタ16が水平方向に回転し、モータ46の回転に伴ってプロジェクタ16が鉛直方向に回転する。そして、プロジェクタ16が回転することで、画像の投射方向が変化する。
【0027】
プロジェクタ16の下面には、カメラ50と人感センサ52とが設けられている。カメラ50は、撮影レンズ54を前方へ向けた状態で、プロジェクタ16の前端中央部に配置されており、プロジェクタ16の前方を撮影する。カメラ50としては、例えば、撮影によりデジタルな画像データを取得するデジタルカメラが用いられる。そして、カメラ50の撮影により取得された画像データは、コントロールユニット14に送信され、後述するメモリ64に記憶される。
【0028】
人感センサ52は、プロジェクタ16の下面中央に配置されている。人感センサ52としては、検知部(赤外線受光部)56を備え、人物と背景とから発せられる赤外線の差を検知部56で検出することによって人物を感知する赤外線式の人感センサが用いられる。人感センサ52は、検知部56をプロジェクタ16の前方へ向けた状態でプロジェクタ16に取り付けられており、後述する制御部70の制御のもと、プロジェクタ16の前方の人物を感知する。
【0029】
コントロールユニット14は、コントロールケーブル58によって画像投射ユニット12と接続され、画像投射ユニット12の各部を駆動制御する。コントロールケーブル58は、例えば、プロジェクタ16から、吊り下げ装置18の内部、天井裏、壁や柱の内部などを経由してコントロールユニット14に接続される。なお、コントロールユニット14と画像投射ユニット12とを無線接続してもよい。
【0030】
コントロールユニット14の前面には、メディアスロット60と操作部62が設けられている。メディアスロット60には、映像ソフトなどの各種メディアが挿入される。操作部62は、各種操作を行うために設けられ、モータ36、46を駆動してプロジェクタ16の向きを変化させたり各種選択操作を行うための十字キー、後述する設定モード、通常モード、防犯モードの切り替えを行うための切り替えスイッチや、決定ボタン、キャンセルボタン、再生ボタン、停止ボタンなどからなる。
【0031】
コントロールユニット14の内部には、メモリ64、通信部68、制御部70が設けられている。メモリ64には、プロジェクタ16の各部を制御する際に用いられる制御プログラムや制御データが記憶される。また、メモリ64には、カメラ50の撮影で取得された画像データ、後述する通信先74へのアクセス時に用いられる情報、通常モード時のプロジェクタ16の向き(以下、第1向き)、防犯モード時のプロジェクタ16の向き(以下、第2向き)に関する情報が記憶される。
【0032】
通信部68は、インターネットなど周知の電気通信回線72と接続されている。そして、通信部68は、後述する防犯モードにおいて侵入者が感知されると、メモリ64から通信先74の情報を読み出し、電気通信回線72を介してこの通信先74にアクセスし、侵入者を感知したことを示す情報を通信先74へと送信する。通信先74としては、例えば、プロジェクタ16の所有者との間でセキュリティ契約がなされた警備会社などが設定される。
【0033】
制御部70は、プロジェクタ16の各部と接続され、設定モード、通常モード、防犯モードの3種類の動作モードでプロジェクタ16を駆動する。設定モードは、プロジェクタ16の各種設定を行うためのモードである。制御部70は、設定モードが選択されると、操作部62からの操作指示に基づいてメモリ64に記憶された設定情報の書き換えを行う。
【0034】
具体的には、操作部62を操作して通信部68の通信先設定を選択した後に通信先の情報を入力すると、制御部70は入力された通信先の情報をメモリ64に記憶する。また、操作部62を操作してプロジェクタ16の向きを調節(変化)させた後、第1向きまたは第2向きとして設定する旨の選択を行うと、制御部70はこのときのプロジェクタ16の向きをジャイロセンサ28により検知し、第1向きまたは第2向きとしてメモリ64に記憶する。
【0035】
通常モードは、一般的なプロジェクタと同様の機能を実現させるためのモードであり、映像ソフトなどの再生(画像を投射)する際に選択される。通常モードが選択されると、制御部70は、ジャイロセンサ28、モータ36、46を駆動し、メモリ64に記憶された第1向きへとプロジェクタ16を向ける。そして、制御部70は、再生ボタンが押下されると、メディアスロット60に挿入されたメディアやメモリ64に記憶された動画や静止画などのデータを読み出し、読み出したデータに対応する画像をプロジェクタ16を制御して投射する。また、通常モードにおいて制御部70は、操作部62の操作に従ってメディアに記憶されたデータをメモリ64に書き込んだり、メモリ64に記憶されたデータをメディアに書き込む。このように、通常モードでは、一般的なプロジェクタと同様に画像の投射、及び、メディアとの間でデータの受け渡しができる。
【0036】
一方、防犯モードは、プロジェクタ16の設置された家屋や店舗への不法な侵入を防止するとともに、不法は侵入者を退去させるためのモードであり、就寝時、外出時、閉店時などに選択される。図3に示すように、防犯モードが選択されると制御部70は、ジャイロセンサ28、モータ36、46を駆動し、メモリ64に記憶された第2向きへとプロジェクタ16を向ける。続いて、制御部70は、モータ36を一定方向に回転させてプロジェクタ16を水平面内で回転させながら、人感センサ52を駆動して人物の感知を行う。
【0037】
そして、制御部70は、人感センサ52が人物を感知すると、これを侵入者とみなし、プロジェクタ16の正面に侵入者を捉えるように、モータ36、46の回転量、回転スピード、回転方向を制御する。また、制御部70は、侵入者を照明するために、プロジェクタ16を制御して白色のベタ画像を投射するとともに、カメラ50を駆動して侵入者を撮影する。さらに、制御部70は、通信部68駆動し、所定の通信先74に対してこの旨を示す情報を送信する。
【0038】
なお、プロジェクタ16による侵入者の照明は、侵入者が感知できなくなるまで維持される。また、カメラ50による侵入者の撮影は、侵入者が感知できなくなるまで予め設定された所定間隔(例えば、1秒毎)で繰り返される。そして、制御部70は、侵入者を感知できなくなると、再度、第2向きへとプロジェクタ16を向けた後、プロジェクタ16を水平面内で回転させながら、人感センサ52を駆動して人物の感知を行う。
【0039】
以下、上記構成による本発明の作用について説明する。プロジェクタ16は、設定モード、通常モード、防犯モードの3つの動作モードを備え、操作部62を操作することによって、これら2つのモードを切り替えることができる。
【0040】
プロジェクタ16を初めて使用する際は、設定モードを選択し、通信先、第1向き、第2向きの設定を行う。通信先としては、予めセキュリティ契約のなされた通信先74を設定する。また、第1向きは、通常モードにおいてプロジェクタ16の映像を投影する向き(スクリーンやスクリーンとして用いる壁などの方向)を設定する。
【0041】
さらに、第2向きは、防犯モードにおいてプロジェクタ16が水平面内で回転したときに最も侵入者を感知し易い方向(上下方向の角度)を設定する。すなわち、プロジェクタ16周辺の狭い範囲の感知を目的とした場合はプロジェクタ16が下方を向くように第2向きを設定し、プロジェクタ16から離れた遠い範囲まで感知したい場合はプロジェクタ16が水平方向を向くように第2向きを設定すればよい。
【0042】
プロジェクタ16の設定が完了した後、プロジェクタ16を通常モードにセットすると、プロジェクタ16が第1向きを向く。そして、一般的なプロジェクタと同様に、メディアスロット60挿入されたメディアや、メモリ64に記憶された画像を投射することができる。また、メディアに記憶されたデータをメモリ64に書き込んだり、メモリ64に記憶されたデータをメディアに書き込むことができる。
【0043】
一方、プロジェクタ16の設定が完了した後、プロジェクタ16を防犯モードにセットすると、プロジェクタ16が第2向きを向く。そして、プロジェクタ16が水平面内で一定方向に回転しながら人感センサ52が駆動され、プロジェクタ16を中心とした360°の範囲で人物の感知が行われる。そして、人感センサ52により人物が感知されると、これを侵入者とみなして、侵入者の照明及び撮影が行われるとともに、侵入者が感知された旨が通信先74に通知される。
【0044】
このように、防犯モードではプロジェクタ16が回転するので、プロジェクタ16が設置された家屋や店舗に侵入しようとする者に防犯設備の存在を報せ、侵入を躊躇させることができる。また、防犯モードでは、プロジェクタ16が設置された家屋や店舗への侵入者を感知し、侵入者を照明することによって警告を与えられるので侵入者を退去させることができる。
【0045】
さらに、プロジェクタ16は天井から吊り下げられているので、例えば、卓上など低い位置に設置する場合と比較して、侵入者が障害物の陰に隠れて感知できないといった問題を防止し、確実に侵入者を感知できる。また、侵入者を撮影するようにしたので、侵入の証拠となるだけでなく、侵入者が逃走した場合であっても追跡が容易となる。さらに、侵入者を感知するとこの旨が通信先74に通知されるので、侵入に対して迅速に対処することができる。
【0046】
なお、本発明は、防犯モードにおいて感知した侵入者に対してプロジェクタの機能を用いて威嚇や警告を行えばよいので、細部の構成は上記実施形態に限定されず適宜変更できる。例えば、上記実施形態では、侵入者を感知した旨を通信部が所定の通信先に通知したり、感知した侵入者をカメラで撮影する例で説明をしたが、通信部やカメラを設けずに、人感センサにより感知した人物を照明するだけでもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、侵入者に対して白色のベタ画像を投射することで照明する例で説明をしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、赤色のベタ画像(濃度が一様の赤色画像)を投射してもよい。また、ベタ画像に限定されず、警告メッセージの記された警告画像をメモリに記憶させておき、この警告画像を投射してもよい。
【0048】
なお、警告画像を投射する場合、侵入者に警告画像が投射されても侵入者が警告メッセージを認識し難いといった問題がある。このため、警告画像を投射する場合は、人感センサから得られた情報に基づいて、侵入者の位置と移動方向とを算出し、侵入者の移動先(侵入者の前方)に警告画像を投射することが好ましい。
【0049】
また、警告画像を投射する場合、警告メッセージ(投射された文字)がピンぼけしていたり侵入者から見て傾いたり歪んだりしていると、侵入者が警告メッセージを認識し難いといった問題がある。このため、警告画像を投射する場合は、図4に示すように、前述のように侵入者の前方に画像を投射することに加え、ピンぼけや傾き、歪みが生じないように補正した警告画像を投射することが好ましい。
【0050】
この場合、プロジェクタの設置環境(プロジェクタの設置位置と、プロジェクタの設置された部屋の壁や床や柱との位置関係(プロジェクタとの距離や角度))を予めメモリに記憶させ、プロジェクタの投射角度が決定されたときにどのような位置(距離や角度)に画像が投射されるかをプロジェクタ16側で認識できるように構成する。そして、プロジェクタの投射方向、侵入者の位置、プロジェクタの設置環境に基づいて、ピントの調節(投射位置までの距離に基づいてピントを合わせる)や、警告画像の補正をすればよい(例えば、警告画像の投射位置と侵入者の位置を考慮し、侵入者が警告メッセージを認識しやすい角度に警告画像を回転させるとともに、プロジェクタの前面と平行でない面に警告画像が表示される場合は、これに起因する画像の台形歪みを考慮し、投射後の画像で警告メッセージが歪まないように予め警告画像を変形させる)。
【0051】
また、上記実施形態では、赤外線を利用する人感センサを用いた例で説明をしたが本発明はこれに限定されるものではない。例えば、超音波や可視光を利用した人感センサを用いてもよい。もちろん、赤外線や超音波や可視光などのなかから複数を組み合わせて利用する人感センサを用いてもよい。
【0052】
さらに、カメラを設ける場合、カメラを人感センサとして兼用することもできる。この場合、カメラとしてデジタルカメラを用い、このデジタルカメラで撮影された画像を解析して人物を感知すればよい。こうすればカメラと人感センサの両方を設ける場合と比較してコストを抑えることができる。
【0053】
また、カメラとしてデジタルカメラを用い、このデジタルカメラで撮影された画像の解析結果に基づいて、感知された人物が侵入者か否かを判定し、侵入者と判定された場合にのみ画像の投射や所定の通信先への通知を行ってもよい。この場合、例えば、侵入者と判定しない人物(例えば、家屋の居住者や店舗の関係者)の画像を予め登録(メモリに記憶)しておき、人物を感知し、感知した人物を撮影した際に、撮影画像の人物が登録された人物と一致するか否かを調べ、一致しない場合に侵入者と判定すればよい。
【0054】
さらに、デジタルカメラで撮影された画像の解析結果に基づいて、感知された人物が侵入者か否かを判定する手法は、上記の例に限定されず適宜変更できる。例えば、特定のポーズ(例えば、両手で○や×を作る)を予め登録しておき、撮影画像の人物が登録されたポーズをした場合は、侵入者と判定しないようにしてもよい。
【0055】
もちろん、感知した人物が侵入者か否かを判定する方法としては、撮影画像を解析する方法に限定されず、例えば、侵入者と判定しない者に特定の電波を発生するカードキーを持たせ、通信部がこのカードキーからの電波を受信した際には、人物を感知しても侵入者と判定しないようにしてもよい。このように、侵入者か否かを判定し、侵入者と判定された場合にのみ画像の投影や所定の通信先への通知を行うようにすれば、家屋の居住者や店舗の関係者を侵入者とみなして、画像の投影や所定の通信先への通知が行われてしまうといった問題を防止できる。
【0056】
また、上記実施形態では、プロジェクタの前方の人物を感知する人感センサを用い、プロジェクタを水平面内で一定方向に回転させることで360°の範囲の人物を感知する例で説明をしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、プロジェクタが店舗入口に設置されており、侵入者の侵入経路がここに限定される場合、この入口部分に存在する人物のみを感知するように(すなわち、防犯モードにおいてプロジェクタを第2向きから回転させないように)構成してもよい。
【0057】
もちろん、店舗入口部分が人感センサの感知範囲よりも広く、プロジェクタを移動させないと、店舗入口の全てのエリアが人感センサの感知範囲に入らない場合などは、予め設定した所定の角度範囲で首を振るようにプロジェクタを回転させてもよい。
【0058】
このように、侵入経路が限定される場合に、この方向のみを感知範囲とすることにより、侵入経路とは異なる方向を感知している間に侵入されるといった問題を防止し、より確実に侵入者を防止できる。また、侵入者でない者(家屋の居住者や店舗の関係者)が家屋内や店舗内を移動した際に、侵入者とみなしてしまうといった問題を防止できる。
【0059】
また、上記実施形態では、前方の人物を感知する人感センサを設ける例で説明をしたが、360°の感知範囲を有する人感センサを用いたり、複数の人感センサ(検知部)を設け、360°の感知範囲を有するように感知方向を異ならせて各人感センサを配置のしてもよい。この場合、プロジェクタを回転させることなく人物の感知を行い、人物を感知したときにプロジェクタを回転させて感知した人物の方向へ向け、人物を照明(または、画像を投射)したり、撮影を行えばよい。
【0060】
さらに、上記実施形態では、プロジェクタを水平面内で回動させながら人物の感知を行う例で説明をしたが、本発明はこれに限定されるものではない。プロジェクタを水平面内で回転させるだけでなく垂直(上下)方向に回転させながら(上下に首を振りながら)人物の感知を行ってもよい。もちろん、プロジェクタの回転範囲は、予想される侵入経路などに応じて適宜設定すればよいので、予想される侵入経路が通路や階段など縦方向に長い場合は垂直方向にのみプロジェクタを回転させてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、通信部を、情報送信用として用いる例で説明をしたが、本発明はこれに限定されるものではない。通信部を、災害情報などを受信する情報受信用として用い、例えば、図5に示すように、通信部が災害情報を受信した場合は、この内容を示す画像をプロジェクタから投射してもよい。もちろん、災害情報に加え、非難経路などを示す画像を投射してもよい。なお、災害情報を受信した際には、この内容を示す画像を他の画像(例えば、再生モードで再生されている画像)よりも優先して投射することが好ましい。
【0062】
さらに、上記実施形態では、動作モードを手動で切り替える例で説明をしたが、通常モードと防犯モードとを自動で切り替えてもよい。この場合、例えば、プロジェクタにタイマを設け、図6に示すように、通常モードにおいて無操作の状態が一定時間継続した場合に防犯モードへ切り替えるといったことが考えられる。
【0063】
また、プロジェクタに時計やカレンダーを内蔵し、設定されたスケジュールに従って通常モードと防犯モードとを切り替えても良い。こうすれば、例えば、休店日や営業時間外、就寝時間や旅行中は、自動的に防犯モードに切り替わるなどといったことが可能となるので便利である。
【0064】
さらに、上記実施形態では、プロジェクタに人感センサを設ける例で説明をしたが、本発明はこれに限定されるものではない。プロジェクタを、プロジェクタが設置された家屋や店舗のセキュリティーシステムに接続し、これらと通信することによって侵入者の有無や場所に関する情報を取得してもよい。こうすることで、人感センサを廃止して小型化、低コスト化が可能となる。もちろん、プロジェクタの人感センサで得られた情報と、プロジェクタが設置された家屋や店舗のセキュリティーシステムで得られた情報との両方に基づいて、侵入者の有無や場所を感知してもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、ジャイロセンサによりプロジェクタの向きを検知する例で説明をしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、吊り下げ装置にプロジェクタの位置や回転量を検知するためのロータリーエンコーダを設け、このロータリーエンコーダによりプロジェクタの向きを検知してもよい。また、プロジェクタの向きを変化させるためのモータとして、供給された駆動パルスの個数に応じた量だけ回転するステッピングモータを用い、このステッピングモータに供給した駆動パルスの個数をカウントしてプロジェクタの向きを検知してもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、防犯モードにおいて、人感センサを作動させる例で説明をしたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図7に示すように、通常モードにおいても人感センサを作動させ、人物が感知されない場合には、画像の投影を停止してもよい。こうすれば、消費電力を抑えることができる。もちろん、通常モードで人物が感知されない場合に自動的に電源をオフするように構成してもよい。
【0067】
さらに、上記実施形態では、プロジェクタを天井から吊り下げる例で説明をしたが、床やテーブルの上面や壁面などに首振り自在に設置してもよい。
【符号の説明】
【0068】
10 画像投射システム
12 画像投射ユニット
14 コントロールユニット
16 プロジェクタ
18 吊り下げ装置
20 投影レンズ
28 ジャイロセンサ
36、46 モータ
50 カメラ
52 人感センサ
54 撮影レンズ
56 検知部
64 メモリ
68 通信部
70 制御部
72 電気通信回線
74 通信先

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの照明光を画像形成光学系により画像光に変換し、投影レンズを介して前方へ投射するプロジェクタと、
前記プロジェクタを水平または垂直の少なくとも一方に回動自在に支持し、前記プロジェクタを回動させることによって前記画像の投射方向を変化させるプロジェクタ支持装置と、
前記プロジェクタ及び前記プロジェクタ支持装置を駆動制御するコントロールユニットとから構成され、
前記コントロールユニットは、
前記プロジェクタの動作モードを、観賞用の画像を投射する通常モードと防犯用の画像を投射する防犯モードとに切り替えるモード切り替え手段と、
前記プロジェクタ周辺の人物を感知する人物感知手段が前記防犯モードにおいて人物を感知したときに、感知した人物または感知した人物の近傍へ向けて前記防犯用の画像を投射させる投射制御手段とを備えたことを特徴とする画像投射システム。
【請求項2】
前記人物感知手段を、前記プロジェクタに設けたことを特徴とする請求項1記載の画像投射システム。
【請求項3】
前記人物感知手段は、前記プロジェクタの前方の人物を感知するとともに、
前記投射制御手段は、前記防犯モードにおいて前記プロジェクタを回転させながら前記人物感知手段を駆動して人物の感知を行うことを特徴とする請求項2記載の画像投射システム。
【請求項4】
前記防犯用の画像は、前記人物感知手段により感知された人物を照明するための白色のベタ画像であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の画像投射システム。
【請求項5】
前記防犯用の画像は、前記人物感知手段により感知された人物に対して警告を行うための警告画像であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の画像投射システム。
【請求項6】
前記投射制御手段は、前記人物感知手段により感知された人物の移動方向前方に前記警告画像を投射させることを特徴とする請求項5記載の画像投射システム。
【請求項7】
前記人物の移動方向及び前記警告画像の投射方向に基づいて、前記警告画像の傾き及び形状を補正する画像補正手段を備えたことを特徴とする請求項6記載の画像投射システム。
【請求項8】
前記プロジェクタの前面に設けられた撮影レンズを介して得られた被写体像を撮影するカメラと、
前記カメラを制御して、前記人物感知手段により感知された人物の撮影を行う撮影制御手段とを備えたことを特徴とする請求項1〜7いずれか記載の画像投射システム。
【請求項9】
前記人物感知手段は、前記カメラにより撮影された画像を解析することによって、人物を感知することを特徴とする請求項8記載の画像投射システム。
【請求項10】
前記カメラにより撮影された人物の画像を解析し、解析結果に基づいて前記人物感知手段が感知した人物が侵入者か否かを判定する判定手段を備え、
前記投射制御手段は、前記判定手段により侵入者と判定された場合に前記防犯用の画像の投射を行うことを特徴とする請求項8または9記載の画像投射システム。
【請求項11】
前記モード切り替え手段は、操作部の操作に従って前記動作モードの切り替えを行うことを特徴とする請求項1〜10いずれか記載の画像投射システム。
【請求項12】
前記モード切り替え手段は、予め設定されたスケジュールに従って前記動作モードの切り替えを行うことを特徴とする請求項1〜11いずれか記載の画像投射システム。
【請求項13】
前記防犯モードにおいて、前記人物感知手段が人物を感知した際に、この旨を示す情報を予め設定された通信先へ送信する情報送信手段を備えたことを特徴とする請求項1〜12いずれか記載の画像投射システム。
【請求項14】
予め設定された通信先からの情報を受信する情報受信手段を備え、
前記投射制御手段は、前記情報受信手段から情報を受信した際に、受信した情報に基づく画像を投射させることを特徴とする請求項1〜13いずれか記載の画像投射システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−163587(P2012−163587A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21475(P2011−21475)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】