説明

画像投影装置

【課題】画面の明るさが改善したデジタル画像投影装置を提供する。
【解決手段】画像投影装置30は、光源40と、光源40からの光路上に配置され、光を所定の画像信号によって変調するプリズム全反射変調デバイス46とを含む。プリズム全反射変調デバイス46は、光源からの光が入射するように配置された入射面と、入射面から入射した光を所定方向に全反射するように配置された全反射面とを有するプリズム80と、プリズム80の全反射面上に配置され、全反射面において光を全反射させるか否かを個別に制御する複数の全反射制御素子82と、画像信号にしたがって、全反射制御素子82を個別に駆動するドライバとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は画像投影装置に関し、特に、光源からの光を有効に利用し、高精細な画面を投影できる画像投影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像投影装置として最近普及しつつあるタイプに、DMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)と呼ばれる、微小ミラー表示素子を使用したデジタル画像投影装置がある。
【0003】
DMDは、半導体技術を駆使して作成された光学デバイスであって、1cm〜2cm四方程度の範囲に敷き詰められた、例えば1280×720個の、互いに独立に制御可能なマイクロミラーからなっている。各マイクロミラーは、例えば±12度という二つの角度の一方の姿勢をとることができる。したがって、各マイクロミラーの姿勢は、デジタル信号で制御できる。例えば入力されるデジタル信号の値が+1であればマイクロミラーは+12度の姿勢をとり、デジタル信号の値が0であればマイクロミラーは−12度の姿勢をとる。この角度は、半導体技術によって作成されるため非常に精密である。
【0004】
このマイクロミラーを敷き詰めたアレイにおいて、個々のマイクロミラーの姿勢を画像信号の画素値に応じて変化させる。全てのマイクロミラーに光が入射するが、+12度の姿勢のミラーは所定の方向にその光を反射するのに対し、−12度の姿勢のミラーはその方向とは異なる方向に光を反射する。所定の方向にスクリーンを配置しておけば、スクリーン上には、ミラーによって反射された光によって元の画像信号に応じた像が形成される。この像の各画素が、一つ一つのマイクロミラーにより形成される。
【0005】
多階調を実現するためには、単位時間中での、各マイクロミラーが+12度の姿勢をとる時間の割合を制御する。マイクロミラーが+12度の姿勢をとる時間の割合が長ければ、対応する画素の輝度は高く、明点となる。単位時間の全てにわたりマイクロミラーが−12度の姿勢をとれば、対応する画素は暗点となる。これらマイクロミラーを制御する信号は、マイクロミラーの直下に配置されたSRAM(スタティック・ランダム・アクセス・メモリ)に記憶され、マイクロミラーの駆動部に供給される。
【0006】
DMDを用いてカラー画像を実現するための方式としては、大きく分けて二つがある。第1は、単一のDMDを用い、時分割で各色の画像信号を投影する方式である。この場合、時分割で光の三原色を生成するために、光路中に、画像信号と同期して回転するカラーホイールが挿入されることが一般的である。第2は、プリズムを用いて光を3原色の光に分割し、各光ごとに、画像信号に対応して動作するDMDによる空間変調を加え、最後にこれら3原色の光を統合する方式である。前者は比較的小型の装置に用いられ、後者は大型の装置に用いられる。
【0007】
DMDを用いた画像投影装置に関する従来技術文献として、以下にあげるものがある。
【特許文献1】特開2005−92206号公報(図2)
【非特許文献1】新地 修、林田正尚、「ディジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)TM」、掲載年月日不明、[online]、リアライズ・アドバンストテクノロジ株式会社、[2006年2月13日検索]、インターネット(URL:http://www.r-sipec.jp/items/bt/112/5/index.html)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したDMDを用いたデジタル画像投影装置において、画像信号の映写に用いられる光は、DMDの各マイクロミラー表面により反射される。その反射率は高く(非特許文献1によると90%以上)、反射に用いられる有効面積も大きい。液晶シャッターを用いた画像投影装置のような透過型のものと比較して、光のロスは小さく、より明るい画面を実現できる。
【0009】
しかし、DMDを用いたデジタル画像投影装置では、マイクロミラー表面の反射率が問題となる。現状でも反射率は高いものの、この反射率をさらに高めることができれば好ましい。しかし、半導体プロセスを用いてマイクロミラーを形成する関係から、利用できる材料が限られ、その結果、反射率をさらに高めることには多くの困難が予想される。
【0010】
さらに、DMDを用いたデジタル画像投影装置では、マイクロミラーの姿勢の精度が問題となる。特に、明点を投射する際のDMDの位置が精度高く決められればよいが、DMDを所定の位置で受け止めるストッパの精度が低かったり、ストッパ表面にほこりがあったりすると、DMDによる反射光の位置が通常と異なり、画像に乱れが生じてしまう。
【0011】
また、DMDを用いたデジタル画像投影装置では、多数のマイクロミラーを用いて個別の画素を描画する。マイクロミラーは半導体プロセスで作成され、表面には金属層が形成されるが、その仕上げのばらつきにより、マイクロミラーの反射率にもばらつきが生じる可能性がある。反射率のばらつきは画質の低下をもたらす。
【0012】
したがって本発明の目的は、従来のDMDを用いた装置よりも画面の明るさが改善したデジタル画像投影装置を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、従来のDMDを用いた装置よりも画面の明るさが改善され、かつ画像の乱れも少ないデジタル画像投影装置を提供することである。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、従来のDMDを用いた装置よりも画面の明るさが改善され、画像の乱れも少なく、かつ高画質で画像を投影できるデジタル画像投影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の局面に係る画像投影装置は、所定方向に光を出射するように配置された光源と、光源から出射される光の光路上に配置され、光を所定の画像信号によって変調するためのプリズム全反射変調手段とを含む画像投影装置であって、プリズム全反射変調手段は、光源からの光が入射するように配置された入射面と、入射面から入射した光を所定方向に全反射するように配置された全反射面とを有するプリズムと、プリズムの全反射面上に配置され、全反射面において光を全反射させるか否かを個別に制御する複数の全反射制御素子と、画像信号にしたがって、全反射制御素子を個別に駆動するための駆動手段とを含む。
【0016】
光源から出射される光は、プリズム全反射変調手段にその入射面から入射した後、全反射面に到達する。全反射面に配置された全反射制御素子の各々は、駆動手段によって個別に制御され、ある素子はその位置に入射する光が全反射面で反射されないようにし、他の素子はその位置に入射する光を全反射面で全反射させる。全反射された光のみが、所定方向に進み、画像を結ぶ。したがって、駆動手段が画像信号にしたがい全反射制御素子を駆動することにより、所定位置に画像が形成される。プリズムの全反射面での全反射により光が反射されるので、従来のDMDの反射面による場合よりも高い反射率を実現できる。その結果、従来のDMDを用いた装置よりも画面の明るさが改善した画像投影装置を提供できる。
【0017】
好ましくは、全反射制御素子の各々は、プリズムの全反射面上に配置され、全反射面に密着する第1の姿勢と、全反射面との間に所定の空隙をあける第2の姿勢とのいずれかを選択的にとる制御面を有するマイクロ画素アクチュエータを含む。
【0018】
マイクロミラーデバイスという既存の技術を、プリズムの全反射の制御のためのマイクロ画素アクチュエータに利用できる。この場合の反射方向はプリズムの全反射面のみによって定まり、マイクロ画素アクチュエータの姿勢の制御の精度には影響されない。プリズムの全反射面を精度高く作成する技術は確立されており、反射光は高い精度で所定の方向に進む。したがって、従来のDMDを用いた装置よりも改善した画面の明るさを有し、かつ画像の乱れも少ない画像投影装置を提供できる。
【0019】
さらに好ましくは、プリズムは、三角柱形のプリズムを含む。
三角柱形のプリズムは、作成も容易で全反射面の反射精度も高くできる。その結果、経済的に、高い反射率で画像の乱れも少ない画像投影装置を提供できる。
【0020】
全反射制御素子は、全反射面上に、マトリクス状に配置されていてもよい。
マトリクス状に配置された全反射制御素子により、マトリクス状に配置された画素からなる画像信号の個別の画素の全反射を制御できる。その結果、既存の画像信号を容易に処理できる画像投影装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
[第1の実施の形態]
<構成>
図1に本発明の第1の実施の形態に係るデジタル画像投影装置30の要部の斜視図を、図2にこのデジタル画像投影装置30のブロック図を、それぞれ示す。なお、デジタル画像投影装置30はビデオ信号から投影を行なうこともできるが、以下の説明ではパーソナルコンピュータ等、他のデジタル装置から所定のエンコード方式で符号化されたデジタル画像信号を受け取ってスクリーンに投影する場合について説明する。
【0022】
図1及び図2を参照して、本実施の形態に係るデジタル画像投影装置30は、光をマイクロミラーで直接反射するDMDに代えて、DMDと類似したデジタルマイクロ画素アクチュエータ(以下「DMPA」と呼ぶ。)でプリズムの全反射を制御することにより、光を画像信号で変調するプリズム全反射変調デバイス46を使用する。DMPAは、DMDと同様の原理で動作するが、マイクロミラーの位置に、光を反射する機能を特に持たない全反射制御板と呼ばれる板を持つ点で異なる。
【0023】
特に図2を参照して、デジタル画像投影装置30は、プリズム全反射変調デバイス46に加え、無線通信により他の装置からデジタル画像信号を受信するための無線通信部90と、無線通信部90が受信したデジタル画像信号をデコードするためのデコーダ92と、デコーダ92の出力する画像信号に対し、スケーリング及びガンマ補正等のデジタル信号処理をフレームごとに行なうための信号処理部94と、信号処理部94の出力する画像信号を記憶するフレームメモリ96と、フレームメモリ96に記憶された1フレーム分の画像信号を読出してプリズム全反射デバイス46を駆動するためのドライバ98とを含む。
【0024】
スケーリングとは、入力される画像信号の水平及び垂直画素数を、プリズム全反射変調デバイス46に使用されるDMPAの画素数に合致するように画素変換する信号処理のことである。
【0025】
図1及び図2を参照して、デジタル画像投影装置30はさらに、プリズム全反射変調デバイス46に向けて光を出射する光源40と、光源40から出射される光線の光路に配置されたカラーホイール42と、カラーホイール42とプリズム全反射変調デバイス46との間の光路に配置されたコンデンサレンズ44と、光源40から出射され、カラーホイール42及びコンデンサレンズ44を経てプリズム全反射変調デバイス46により反射される光の光路上に配置された、投影用の光学系48と、カラーホイール42を回転させるためのモータ100とを含む。ドライバ98は、プリズム全反射変調デバイス46とともにモータ100も画像信号と同期して回転するように制御する機能を持つ。
【0026】
カラーホイール42は、本実施の形態では、それぞれ赤(R)、緑(G)及び青(B)の3原色のフィルタ60,62及び64を含む。これらフィルタ60,62及び64は、各色について2枚ずつ、合計6枚用意され、モータ100により回転して光源40からの光を赤、緑、青の3原色のカラー光とする。
【0027】
図3にプリズム全反射変調デバイス46の背面図を、図4にプリズム全反射変調デバイス46の平面図を、それぞれ示す。図1〜図4を参照して、プリズム全反射変調デバイス46は、三角柱形をしたプリズム80を含む。特に図3及び図4を参照して、プリズム80は、光源40からの光の入射面120と、入射面120からプリズム内に入射した光をそれぞれ全反射するような角度で構成された二つの全反射面122及び124とを有する。全反射面124の、全反射面122からの光が入射する領域上には、全反射面124における光の全反射を制御するためのDMPA82が設けられている。
【0028】
光源40、コンデンサレンズ44、及びプリズム全反射変調デバイス46は、互いに次のような配置となっている。すなわち、光源40から出射された光はカラーホイール42及びコンデンサレンズ44を経てプリズム全反射変調デバイス46の入射面120に入射し、全反射面122で反射されて全反射面124のDMPA82が配置された領域に入射する。仮に全反射面124でこの光が全反射された場合、その光は投影用の光学系48を経て所定の投影面(図示せず)に投影される。
【0029】
図5に、DMPA82上の全反射制御板が配置された面(以下これを「活性面」と呼ぶ。)130と全反射面124との界面付近の断面を拡大して示す。図5を参照して、DMPA82の活性面130には、従来のDMDのマイクロミラーと同様、多数の全反射制御板140、142、144、146、148がマトリクス状に配列されている。全反射制御板140、142、144、146、148の各々は、前述した従来のDMDのマイクロミラーと同じく、独立に制御可能であり、ドライバ98により与えられる制御信号に応じ、基準となる位置に対して±12度のいずれかの姿勢をとる。本実施の形態では、全反射制御板が−12度の位置をとるとき、マイクロミラーの反射面に相当する面(以下「制御面」と呼ぶ。)が全反射面124に密着し、+12度の位置をとるとき、制御面が全反射面124に対して24度の角度をなすような姿勢となる。
【0030】
図5に示す例では、全反射制御板140、144、及び148が前者の位置(−12度)にあり、全反射制御板142及び146が後者の位置(+12度)にある。
【0031】
図5を参照して、一般的に、プリズムの全反射面に関しては、全反射面124に密着したものが存在している場合には全反射が起こらず、空間が存在している場合には、屈折率の相違に基づいて全反射が起こることが知られている。したがって、図5に示す例では、全反射制御板140、144、及び148の制御面が全反射面124に密着しているため、これらの位置では全反射が起こらず、全反射制御板142及び146では制御面と全反射面124との間に空間があるため、全反射が生じる。
【0032】
すなわち、各全反射制御板は、全反射面124における各画素を表す光を全反射させるか否かを個別に制御する素子として機能する。
【0033】
本実施の形態では、このようにして、DMPA82の制御面で光を反射することによるのではなく、DMPA82の制御面でプリズム80の全反射面124において光を全反射させるか否かを制御することにより、対応する画素の明るさを定める。もちろん、従来の技術と同様、単位時間あたりで全反射制御板が全反射面124から離れている時間の割合を時分割で制御することにより、対応画素の輝度を制御し、多階調の画像を投影できる。その上、カラーホイール42(図1参照)により時分割で3原色の階調をそれぞれ制御することにより、カラー画像を投影できる。
【0034】
<動作>
上記したデジタル画像投影装置30は以下のように動作する。図1〜図5を参照して、光源40が出射した光はカラーホイール42のフィルタ部分に入射する。カラーホイール42は、画像信号のフレーム信号に同期して回転するように、ドライバ98により制御されている。例えば、画像信号の1フレームあたりカラーホイール42が6回転するようにする。カラーホイール42の回転速度をこの程度とすることにより、各色についての情報が1フレームあたり12回に分散して投影される。したがって、ユーザがまばたきをしたために特定の色情報が欠落して感じられてしまう、という現象を避けることができる。
【0035】
カラーホイール42を透過した光は、コンデンサレンズ44を経てプリズム全反射変調デバイス46の入射面120(図3及び図4参照)からプリズム全反射変調デバイス46のプリズム80に入射する。光はさらに全反射面122で全反射され、全反射面124のDMPA82が設けられた領域に入射する。
【0036】
図2に示すドライバ98は、画像信号のRGBの原色成分ごとに、その階調にしたがい、DMPA82の各全反射制御板が全反射面124と密着する姿勢をとる時間の割合を制御する。全反射制御板が全反射面124から離隔すると、その点では光は全反射面124で全反射し、投影用の光学系48を得て投影面に投影される。全反射制御板が全反射面124に密着すると、その点では光は全反射しない。したがって、この光は投影面に到達しない。こうして、RGBの原色成分ごとに、時分割でプリズム全反射変調デバイス46により階調制御が行なわれる。投影面には、RGBごとに画像信号が時分割で投影されることになるが、人間の目にはこれらは十分に混合され、カラー画像として感じられる。
【0037】
<結論>
以上のように本実施の形態によれば、DMDで直接に投影光を反射するかわりに、プリズムの全反射面において光を全反射させるか否かをDMPAで制御する。プリズムの全反射面については精度高く仕上げる技術が過去から蓄積されている。全反射面における光の反射の制御はDMPAにより制御されるが、その制御の態様は1又は0というデジタル形式のものでよい。DMPAの姿勢そのものの精度がそれほど高くなくても、この技術による全反射の制御に与える影響は大きくない。したがって、DMDで直接光を反射するものと比較して、より精度が高い投影を行なうことができる。
【0038】
さらに、デジタル画像投影装置30では、プリズム80の全反射面で光の全反射を行なう。DMDで直接光を反射する場合と比較して反射率が高く、かつ位置による反射率の変化も少ない。さらに、全反射面の大部分を反射面として利用可能なため、光の損失が少ない。その結果、より明るく、コントラストの高い画像の投影を高い画質で行なうことが可能になる。
【0039】
また、上記実施の形態では、光の反射回数が2回であり、例えば特許文献1に記載のように多数のプリズム及びスプリッタを使用するものと比較して、光路における光の損失を少なくできる。そのため、光源40からの光を有効に利用して、光量の大きな、明るい画像を投影できる。また同じ理由により、コストを下げることもできる。
【0040】
なお、上記実施の形態では、カラーホイールを用いて時分割で3原色の変調を行なうデジタル画像投影装置30を説明した。しかし本発明はそのような実施の形態に限定されるわけではない。光を3原色に分割した後、各原色別に上記したプリズム全反射変調デバイス46で変調を行ない、さらにそれらを統合することでカラー画像を実現するようにしてもよい。
【0041】
光源40としては、一般的なハロゲン光源又はLED(レーザダイオード)などを利用できる。
【0042】
また、上記実施の形態では、プリズム80として三角柱形状を持つものを使用した。しかし本発明はそのような実施の形態には限定されない。入射光と出射光の光路が互いに重ならないようなプリズムであれば、どのようなものでもよい。また、上記実施の形態では、光の光路は同一平面上であったが、光路が3次元的な経路をたどるものであってもよい。
【0043】
上記実施の形態で説明したプリズム全反射変調デバイス46は、従来技術のDMDを用いた画像投影装置において、DMDに代えてそのまま使用できる。配置位置は従来のDMDの位置とは変える必要があるが、その他の点では特に大きな変更を必要としない。したがって、従来技術を有効に利用しながら、より性能の高い画像投影装置を提供できる。また、DMPAの全反射制御板はマトリクス状に配置されているため、マトリクス状に配置された画素からなる画像信号を容易に表現できる。
【0044】
さらに、上記実施の形態では、全反射を制御するための素子としてDMDに類似したDMPAを使用した。これも、従来の技術をそのまま有効に利用できるという点で有利である。しかし本発明はこのような実施の形態には限定されない。例えば、全反射面上に、各画素ごとに仕切りを設け、この中に表面張力の大きな液体を封入し、背面からピエゾ素子などを用いてこの液体を全反射面に押し付けてその接触面積を増加させたり、押圧力を取り除くことにより接触面積を小さくさせたりすることによって全反射を画素別に制御するようにしてもよい。
【0045】
DMPAのさらに他の例を図6に示す。図6に示すDMPA160は、プリズム80の全反射面124にマトリクス状に配置された複数の全反射制御板190,192,194,196及び198と、これら全反射制御板190,192,194,196及び198を個別に全反射面124から離隔させたり全反射面124に接触させたりするためのマイクロアクチュエータ170,172,174,176及び178とを含む。
【0046】
全反射制御板190,192,194,196及び198をマイクロアクチュエータ170,172,174,176及び178によって個別に制御することにより、上記した実施の形態と同様、全反射制御板190,192,194,196及び198の位置で、全反射面124に到達する光を全反射するか否かを制御することができる。
【0047】
DMPAのさらに他の例を図7及び図8に示す。図7及び図8に示すDMPA240は、電気的に制御されるのではなく、光により制御されるマイクロアクチュエータを用いるものである。特にポリジアセチレンと呼ばれる高分子化合物のように、光があたると変形するような性質を持つ物質を用いると、応答速度の高いアクチュエータを実現できる。
【0048】
図7は、そうした光により制御されるマイクロアクチュエータを備えたDMPA240の断面図である。図7を参照して、このマイクロアクチュエータは、プリズム全反射変調デバイスを構成するプリズム250の全反射面に配置されており、通常時にプリズム250の全反射面に密着するように配置される、薄くやや弾力のある、プリズム250の密度よりも高い密度を持つ物質からなる全反射制御体252と、全反射制御体252の、プリズム250と密着している面と反対側の面に接着された、前述のポリジアセチレンの薄膜254とを含む。全反射制御体252は、その周縁部分においてプリズム250の全反射面に接着されている。全反射制御体252としては、プリズム250の全反射面に密着でき、かつ後述するように変形したときに、全反射面との間に生じる空隙が全反射を阻害する程度の大きさとなる弾力性を有するものが用いられる。
【0049】
図7に示されるように、第1の状態では全反射制御体252はプリズム250の全反射面に密着している。そのため、プリズム250に入射する光はプリズム250の全反射面で全反射されない。すなわちこの部分の光は投影面に到達しない。
【0050】
ポリジアセチレンは、波長が450〜550ナノメートルの光を当てると体積が3%ほど増え、350〜400ナノメートルの波長を持つ光を当てると元に戻る性質があることが知られている。
【0051】
そこで、図7の状態において、全反射をさせる部分に対応する全反射制御体252には、裏面から450〜550ナノメートルの波長を持つ光をあてる。この部分では、ポリジアセチレンの薄膜254は体積が増加し、図8の中央に示すようにプリズム250の全反射面との間に空隙が生じる。したがって全反射制御体252の当該部分に入射する光は全反射される。
【0052】
一方、全反射をさせない部分に対応する全反射制御体252には、裏面から350〜400ナノメートルの波長を持つ光を当てる。すると、図8の左右の領域256及び258に示されるように、ポリジアセチレンの薄膜254は体積が減少し、したがって全反射制御体252は、その中央部がガラス面250に密着する様に変形する。その結果プリズム250の全反射面に入射する光は、全反射制御体252のこの領域256及び258では全反射されない。
【0053】
このように光により変形する性質を持つ物質によって全反射制御体を駆動するようにすると、応答速度が高く、構造も比較的単純となる。また、全反射制御体を光により駆動するため、全反射制御体を電気信号で駆動するための配線が不要となる。したがって装置を一層小型化することができ、高密度で画像投影を行なうことができる画像投影装置を実現することが可能となる。
【0054】
今回開示された実施の形態は単に例示であって、本発明が上記した実施の形態のみに制限されるわけではない。本発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、特許請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含む。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施の形態に係るデジタル画像投影装置30の要部構成を示す模式図である。
【図2】デジタル画像投影装置30のブロック図である。
【図3】プリズム全反射変調デバイス46の背面図である。
【図4】プリズム全反射変調デバイス46の平面図である。
【図5】DMPA82の動作原理を説明するための断面図である。
【図6】DMPAの他の例を説明するための断面図である。
【図7】DMPAの他の例を説明するための断面図である。
【図8】図7に示すDMPAの動作を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0056】
30 デジタル画像投影装置
40 光源
42 カラーホイール
44 コンデンサレンズ
46 プリズム全反射変調デバイス
48 投影用の光学系
80,250 プリズム
82,160,240 デジタル・マイクロ画素アクチュエータ(DMPA)
120 入射面
122,124 全反射面
130 活性面
140,142,144,146,148,190,192,194,196,198 全反射制御板
170,172,174,176,178 マイクロアクチュエータ
252 全反射制御体
254 ポリジアセチレンの薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に光を出射するように配置された光源と、
前記光源から出射される光の光路上に配置され、前記光を所定の画像信号によって変調するためのプリズム全反射変調手段とを含む画像投影装置であって、
前記プリズム全反射変調手段は、
前記光源からの光が入射するように配置された入射面と、前記入射面から入射した光を所定方向に全反射するように配置された全反射面とを有するプリズムと、
前記プリズムの前記全反射面上に配置され、前記全反射面において光を全反射させるか否かを個別に制御する複数の全反射制御素子と、
画像信号にしたがって、前記全反射制御素子を個別に駆動するための駆動手段とを含む、画像投影装置。
【請求項2】
前記全反射制御素子の各々は、前記プリズムの前記全反射面上に配置され、前記全反射面に密着する第1の姿勢と、前記全反射面との間に所定の空隙をあける第2の姿勢とのいずれかを選択的にとる制御面を有するマイクロ画素アクチュエータを含む、請求項1に記載の画像投影装置。
【請求項3】
前記プリズムは、三角柱形のプリズムを含む、請求項1に記載の画像投影装置。
【請求項4】
前記全反射制御素子は、前記全反射面上に、マトリクス状に配置されている、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の画像投影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−225910(P2007−225910A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−47122(P2006−47122)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(397057809)株式会社津村総合研究所 (5)
【Fターム(参考)】