説明

画像検査装置、画像検査システム及び画像検査方法

【課題】透明色を使用して印刷された印刷物の画像検査を行う場合であっても、検査精度の低下を抑える。
【解決手段】有色色材の画像データである有色画像データを取得する取得部211と、透明色材の画像データである透明画像データに基づいて有色画像データを変換し、マスタ画像データを生成するマスタ画像データ生成部213と、マスタ画像データを用いて、有色画像データ及び透明画像データに基づく印刷画像が印刷された印刷物から当該印刷画像を光学的に読み取ることにより生成された検査画像データを検査する画像検査部217と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像検査装置、画像検査システム及び画像検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オンデマンドプリンティングが実用化されており、印刷物の画像検査の要望が高い。例えば特許文献1には、マスタ画像に基づいて、印刷物からなる被検査対象物を検査する画像検査システムが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年では、有色だけでなく透明色も加えて印刷を行う印刷技術も開発されているが、上述したような画像検査システムで検査を行うと検査精度が下がってしまう。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、透明色を使用して印刷された印刷物の画像検査を行う場合であっても、検査精度の低下を抑えることができる画像検査装置、画像検査システム及び画像検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様にかかる画像検査装置は、有色色材の画像データである有色画像データを取得する有色画像データ取得部と、透明色材の画像データである透明画像データに基づいて前記有色画像データを変換し、マスタ画像データを生成するマスタ画像データ生成部と、前記マスタ画像データを用いて、前記有色画像データ及び前記透明画像データに基づく印刷画像が印刷された印刷物から当該印刷画像を光学的に読み取ることにより生成された検査画像データを検査する画像検査部と、を備えることを特徴とする。
【0006】
また、本発明の別の態様にかかる画像検査システムは、画像形成装置と画像検査装置とを備える画像検査システムであって、前記画像形成装置は、有色色材の画像データである有色画像データを生成する有色画像データ生成部と、透明色材の画像データである透明画像データを生成する透明画像データ生成部と、前記有色画像データ及び前記透明画像データから印刷画像データを生成する印刷画像データ生成部と、前記印刷画像データに基づく印刷画像を記録媒体に印刷して印刷物を生成する印刷部と、を備え、前記画像検査装置は、前記有色画像データを取得する有色画像データ取得部と、前記透明画像データに基づいて前記有色画像データを変換し、マスタ画像データを生成するマスタ画像データ生成部と、前記印刷物から前記印刷画像を光学的に読み取って検査画像データを生成する画像読取部と、前記マスタ画像データを用いて、前記検査画像データを検査する画像検査部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の別の態様にかかる画像検査方法は、有色画像データ取得部が、有色色材の画像データである有色画像データを取得する有色画像データ取得ステップと、マスタ画像データ生成部が、透明色材の画像データである透明画像データに基づいて前記有色画像データを変換し、マスタ画像データを生成するマスタ画像データ生成ステップと、画像検査部が、前記マスタ画像データを用いて、前記有色画像データ及び前記透明画像データに基づく印刷画像が印刷された印刷物から当該印刷画像を光学的に読み取ることにより生成された検査画像データを検査する画像検査ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、透明色を使用して印刷された印刷物の画像検査を行うであっても、検査精度の低下を抑えることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、第1実施形態の画像検査システムの一例を示す模式図である。
【図2】図2は、第1実施形態のプリンタ及び画像検査装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図3】図3は、第1実施形態のマスタ画像データ生成部の詳細構成の一例を示すブロック図である。
【図4】図4は、画像読取部がCyan色にCLR色を重ねたパッチを読み取った場合のRGBの読取値と画像読取部がCyan色のみのパッチを読み取った場合のRGBの読取値との差の一例を示すグラフである。
【図5】図5は、通常のCMYKの各濃度を振り分けた混色パッチの一例を示す図である。
【図6】図6は、第1実施形態の画像検査システムで行われる画像検査処理の一例を示すフローチャートである。
【図7】図7は、第2実施形態のクリアトナーを用いた処理の態様の一例を示す図である。
【図8】図8は、第2実施形態のプリンタ及び画像検査装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図9】図9は、第2実施形態のマスタ画像データ生成部の詳細構成の一例を示すブロック図である。
【図10】図10は、第3実施形態のプリンタ及び画像検査装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図11】図11は、第3実施形態のマスタ画像データ生成部の詳細構成の一例を示すブロック図である。
【図12】図12は、上記各実施形態のプリンタのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、本発明にかかる画像検査装置、画像検査システム及び画像検査方法の実施形態を詳細に説明する。
【0011】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態の画像検査システムの構成について説明する。
【0012】
図1は、第1実施形態の画像検査システム1の一例を示す模式図である。図1に示すように、画像検査システム1は、プリンタ100と、画像検査装置200と、スタッカ300とを、備える。
【0013】
プリンタ100は、オペレーションパネル101と、感光体ドラム103Y、103M、103C、103K、103CLと、転写ベルト105と、二次転写ローラ107と、給紙部109と、搬送ローラ対111と、定着ローラ113と、反転パス115とを備える。
【0014】
オペレーションパネル101は、プリンタ100に対して各種操作の入力を行ったり、各種画面を表示したりする操作表示部である。
【0015】
感光体ドラム103Y、103M、103C、103K、103CLは、それぞれ、作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、及びクリーニング工程)が行われることによりトナー像が形成され、形成されたトナー像を転写ベルト105に転写する。本実施形態では、感光体ドラム103Y上にイエロートナー像が形成され、感光体ドラム103M上にマゼンダトナー像が形成され、感光体ドラム103C上にシアントナー像が形成され、感光体ドラム103K上にブラックトナー像が形成され、感光体ドラム103CL上にクリアトナー像が形成されるものとするが、これに限定されるものではない。
【0016】
転写ベルト105は、感光体ドラム103Y、103M、103C、103K、及び103CLから重畳して転写されたトナー像(フルカラーのトナー画像)を二次転写ローラ107の二次転写位置に搬送する。本実施形態では、転写ベルト105には、まず、イエロートナー像が転写され、続いて、マゼンダトナー像、シアントナー像、ブラックトナー像、クリアトナー像が順次重畳して転写されるものとするが、これに限定されるものではない。
【0017】
給紙部109は、複数の記録紙(記録媒体の一例)が重ね合わせて収容されており、記録紙を給紙する。
【0018】
搬送ローラ対111は、給紙部109により給紙された記録紙を搬送路a上で矢印s方向に搬送する。
【0019】
二次転写ローラ107は、転写ベルト105により搬送されたフルカラーのトナー画像を、搬送ローラ対111により搬送された記録紙上に二次転写位置で一括転写する。
【0020】
定着ローラ113は、フルカラーのトナー画像が転写された記録紙を加熱及び加圧することにより、フルカラーのトナー画像を記録紙に定着する。
【0021】
プリンタ100は、片面印刷の場合、フルカラーのトナー画像が定着された記録紙を画像検査装置200へ排紙する。一方、プリンタ100は、両面印刷の場合、フルカラーのトナー画像が定着された記録紙を反転パス115へ送る。
【0022】
反転パス115は送られた記録紙をスイッチバックすることにより記録紙の表面・裏面を反転して矢印t方向に搬送する。反転パス115により搬送された記録紙は、搬送ローラ対111により再搬送され、二次転写ローラ107により前回と逆側の面にフルカラーのトナー画像が転写され、定着ローラ113により定着され、画像検査装置200へ排紙される。
【0023】
画像検査装置200は、画像読取部201A、201Bを備える。画像読取装置201Aは、プリンタ100から排紙された記録紙の一方の面を光学的に読み取り、画像読取装置201Bは、プリンタ100から排紙された記録紙の他方の面を光学的に読み取る。画像検査装置200は、読み取りが完了した記録紙をスタッカ300へ排紙する。
【0024】
スタッカ300は、トレイ301を備える。スタッカ300は、画像検査装置200により排紙された記録紙をトレイ301にスタックする。
【0025】
図2は、第1実施形態のプリンタ100及び画像検査装置200の構成の一例を示すブロック図である。図2に示すように、プリンタ100は、RIP(Raster Image Processor)部121と、プリンタ制御部123と、プリント部125とを備える。画像検査装置200は、画像読取部201と、取得部211と、マスタ画像データ生成部213と、バッファ215と、画像検査部217とを、備える。
【0026】
RIP部121は、ホスト装置などの外部装置から印刷データを受け取り、受け取った印刷データから、有色色材の画像データである有色画像データと透明色材の画像データである透明画像データとを生成する。具体的には、RIP部121は、印刷データをRIP処理し、有色画像データと透明画像データとを生成する。RIP部121は、この際、透明画像データの属性を示す属性情報を生成してもよい。属性情報は、例えば、クリアトナーを用いた処理の種別を示す情報である。
【0027】
本実施形態では、印刷データは、PostScript(登録商標)などのページ記述言語(PDL:Page Description Language)で記述されたデータやTIFF(Tagged Image File Format)形式の画像データなどを含んで構成されるが、これに限定されるものではない。また本実施形態では、有色画像データは、CMYKのRIP画像データであり、C(Cyan)、M(MAgenda)、Y(Yellow)、K(Black)それぞれのRIP画像データの各画素が1bitの600dpiであるものとするが、これに限定されるものではない。同様に本実施形態では、透明画像データは、クリア版のRIP画像データであり、CLR(Clear)のRIP画像データの各画素が1bitの600dpiであるものとするが、これに限定されるものではない。
【0028】
プリンタ制御部123は、RIP部121により生成された有色画像データ及び透明画像データを、画像検査装置200へ送信するとともに、プリント部125へ送信する。プリンタ制御部123は、RIP部121により属性情報が生成されていれば、透明画像データに変えて属性情報を画像検査装置200へ送信してもよい。またプリンタ制御部123は、画像検査装置200から送信される画像検査結果を用いて、例えば、スタッカ300に対して画像検査に合格しなかった印刷物の排紙先の指定や画像検査に合格しなかった印刷物へのマーキングを行ったり、プリント部125に対して差し替え印刷を指示したりする。
【0029】
プリント部125(印刷部の一例)は、作像プロセスなどの印刷処理プロセスを実行し、有色画像データ及び透明画像データに基づく印刷画像を記録紙に印刷し、印刷物を生成する。本実施形態では、プリント部125は、感光体ドラム103Y、103M、103C、103K、103CL、転写ベルト105、二次転写ローラ107、及び定着ローラ113などにより実現されるが、これに限定されるものではない。このように本実施形態では、電子写真方式で画像を印刷するが、これに限定されず、インクジェット方式で画像を印刷するようにしてもよい。
【0030】
画像読取部201は、有色画像データ及び透明画像データに基づく印刷画像が印刷された印刷物から、当該印刷画像を光学的に読み取って検査画像データを生成する。本実施形態では、画像読取部201は、画像読取部201A、201Bにより実現される。また本実施形態では、検査画像データは、RGBの画像データであり、R、G、Bそれぞれの画像データの各画素が8bitの200dpiであるものとするが、これに限定されるものではない。
【0031】
取得部211(有色画像データ取得部、透明画像データ取得部、及び属性情報取得部の一例)は、プリンタ100から有色画像データ及び透明画像データを取得する。取得部211は、プリンタ100から透明画像データに変えて属性情報が送信されれば当該属性情報を取得する。
【0032】
マスタ画像データ生成部213は、取得部211により取得された透明画像データに基づいて、取得部211により取得された有色画像データを変換し、マスタ画像データを生成する。具体的には、マスタ画像データ生成部213は、透明画像データに応じて有色画像データを変換し、マスタ画像データを生成する。
【0033】
図3は、第1実施形態のマスタ画像データ生成部213の詳細構成の一例を示すブロック図である。図3に示すように、マスタ画像データ生成部213は、多値化部221と、解像度変換部223と、多値化部225と、解像度変換部227と、色空間変換部229とを、備える。
【0034】
多値化部221は、C、M、Y、KそれぞれのRIP画像データの各画素を、1bitから8bitの多値データに変換する。本実施形態では、多値化部221は、平滑係数を持つ空間フィルタによる平滑化により多値へ変換するが、これに限定されず、多値への変換手法はどのような手法であってもよい。
【0035】
解像度変換部223は、C、M、Y、KそれぞれのRIP画像データの解像度を、600dpiから200dpiへ変換する。本実施形態では、解像度変換部223は、3画素に1画素を間引くような手法で解像度を変換するが、これに限定されず、解像度変換手法はどのような手法であってもよい。
【0036】
多値化部225は、CLRのRIP画像データの各画素を、1bitから8bitの多値データに変換する。多値化部225の多値への変換手法は、多値化部221の多値への変換手法と同様の手法を用いることができる。
【0037】
解像度変換部227は、CLRのRIP画像データの解像度を、600dpiから200dpiへ変換する。解像度変換部227の解像度変換手法は、解像度変換部223の解像度変換手法と同様の手法を用いることができる。
【0038】
色空間変換部229は、CLRのRIP画像データに応じてCMYKのRIP画像データをRGBの画像データに変換する。色空間変換部229は、RGB変換部231と判定部233とを備える。
【0039】
RGB変換部231は、各画素8bitのCMYKに対応する各画素8bitのRGBの値を決定し、CMYKのRIP画像データをこの決定した値のRGB画像データに変換する。RGB変換部231は、C、M、Y、Kそれぞれにおける8点の離散的な格子点から4面体補間法を使用した補間演算を行い、RGBの値を求める。これにより、RGB変換部231は、CMYKの一組のデータから、ある格子点パラメータにおけるRGBの一組のデータを求めることができる。なお、この算出手法では、画像検査装置200の記憶容量を削減できる。
【0040】
ここで、CMYKのRIP画像データをRGBの画像データに変換する際のCLRのRIP画像データの影響について説明する。
【0041】
図4は、画像読取部201がCyan色にCLR色を重ねた複数の階調パッチを読み取った場合のRGBの読取値と画像読取部201がCyan色のみの複数の階調パッチを読み取った場合のRGBの読取値との差の一例を示すグラフである。図4に示す例では、横軸がCyan色の階調パッチの値を示し、縦軸がRGBの読取値の差を示す。また、実線RがRの読取値の差を示し、一点鎖線GがGの読取値の差を示し、点線BがBの読取値の差を示す。図4に示すように、Cyan色にCLR色を重ねたパッチとCyan色のみのパッチとでは、RGBの読取値が255digit中最大15digit(階調値150近傍にて)変化している。なお図示は省略するが、Cyan色だけでなく、MAgenda色、Yellow色、及びBlack色についても、CLR色の有無でRGBの読取値に変化が生じる。
【0042】
このように、画像読取部201により生成される検査画像データのRGBの読取値は、CLR色が重なっているか否かで変化する。ここで、RGB変換部231により変換されるRGB画像データは、後述の画像検査部217による検査画像データの画像検査におけるマスタ画像データとして用いられる。このため、RGB変換部231は、CLRのRIP画像データの影響を考慮して、CMYKのRIP画像データをRGBの画像データに変換する必要がある。
【0043】
そこで本実施形態では、RGB変換部231は、CMYKの一組のデータから、後述の判定部233の判定結果に応じた格子点パラメータにおけるRGBの一組のデータを求める。具体的には、RGB変換部231は、判定部233からCLR色が重なっている場合の格子点パラメータが入力されれば、CMYKの一組のデータから、当該格子点パラメータにおけるRGBの一組のデータを求める。一方、RGB変換部231は、判定部233からCLR色が重なっていない場合の格子点パラメータが入力されれば、CMYKの一組のデータから、当該格子点パラメータにおけるRGBの一組のデータを求める。これにより、RGB変換部231は、CLR色の影響を考慮してCMYKのRIP画像データをRGBの画像データに変換することができる。
【0044】
図3に戻り、判定部233は、CLRのRIP画像データから、検査画像データのクリア色の有無を判定する。ここで、判定部233は、CLR色が重なっている場合の格子点パラメータとCLR色が重なっていない場合の格子点パラメータとを保持している。そして判定部233は、検査画像データにクリア色が使用されていないと判定した場合、RGB変換部231にCLR色が重なっていない場合の格子点パラメータを出力し、検査画像データにクリア色が使用されていると判定した場合、RGB変換部231にCLR色が重なっている場合の格子点パラメータを出力する。
【0045】
なお、CLR色が重なっていない場合の格子点パラメータは、プリンタ100が通常のCMYKの各濃度を振り分けた混色パッチ25枚を記録紙に印刷し、画像読取部201がこの25枚の記録紙を読み取ることで求められる。図5に、通常のCMYKの各濃度を振り分けた混色パッチの一例を示す。同様に、CLR色が重なっている場合の格子点パラメータは、プリンタ100がクリアトナーによる光沢処理を施した光沢パッチ25枚を記録紙に印刷し、画像読取部201がこの25枚の記録紙を読み取ることで求められる。
【0046】
図2に戻り、バッファ215は、マスタ画像データ生成部213により生成されたマスタ画像データを記憶する。バッファ215は、画像読取部201により検査画像データが生成されると、検査に用いるマスタ画像データを画像検査部217に出力する。
【0047】
画像検査部217は、バッファ215から出力されたマスタ画像データを用いて、画像読取部201により生成された検査画像データを検査する。画像検査部217は、検査結果をプリンタ100に送信する。
【0048】
次に、第1実施形態の画像検査システムの動作について説明する。
【0049】
図6は、第1実施形態の画像検査システム1で行われる画像検査処理の一例を示すフローチャートである。
【0050】
まず、RIP部121は、印刷データをRIP処理し、有色画像データと透明画像データとを生成する(ステップS100)。
【0051】
続いて、プリント部125は、作像プロセスなどの印刷処理プロセスを実行し、有色画像データ及び透明画像データに基づく印刷画像を記録紙に印刷させ、印刷物を生成する(ステップS102)。
【0052】
続いて、取得部211は、プリンタ100から有色画像データ及び透明画像データを取得する(ステップS104)。
【0053】
続いて、マスタ画像データ生成部213は、透明画像データに応じて有色画像データを変換し、マスタ画像データを生成する(ステップS106)。
【0054】
続いて、画像読取部201は、有色画像データ及び透明画像データに基づく印刷画像が印刷された印刷物から、当該印刷画像を光学的に読み取って検査画像データを生成する(ステップS108)。
【0055】
続いて、画像検査部217は、マスタ画像データを用いて検査画像データを検査する(ステップS110)。
【0056】
以上のように第1実施形態では、クリア版の有無を考慮してマスタ画像データを生成しているため、クリア色を使用して印刷された印刷物の画像検査を行う場合であっても、検査精度の低下を抑え、高い精度で画像検査を行うことができる。
【0057】
(第2実施形態)
第2実施形態では、クリアトナーを用いた処理の態様に応じたマスタ画像データを生成する例について説明する。なお以下では、第1実施形態との相違点の説明を主に行い、第1実施形態と同様の機能を有する構成要素については、第1実施形態と同様の名称・符号を付し、その説明を省略する。
【0058】
図7は、第2実施形態のクリアトナーを用いた処理の態様の一例を示す図である。図7に示すように、本実施形態では、クリアトナーを用いた処理として光沢処理又はマット処理を行うものとする。但し、これに限定されるものではなく、これら以外のクリアトナーを用いた処理を行ってもよい。
【0059】
図7に示すように、光沢処理は、定着後のトナー面が平滑になるように、有色トナー(イエロートナー、マゼンダトナー、シアントナー、及びブラックトナー)層の上にクリアトナー層を均一に重ねる処理である。マット処理は、つや消し(マット調)を目的としたものであり、定着後のトナー面が不均一になるように、有色トナー層の上にクリアトナー層を不均一に重ねる処理である。
【0060】
このように、CLR色の重なり方が異なる場合にも、検査画像データのRGBの読取値は変化する。このため第2実施形態では、CLR色の重なり方(クリアトナーを用いた処理の態様)を考慮して、マスタ画像データを生成する。
【0061】
図8は、第2実施形態のプリンタ100及び画像検査装置1200の構成の一例を示すブロック図である。図8に示すように、第2実施形態では、画像検査システム1001の画像検査装置1200のマスタ画像データ生成部1213が第1実施形態と相違する。
【0062】
マスタ画像データ生成部1213は、透明画像データの線数を検出し、検出した透明画像データの線数に応じて有色画像データを変換し、マスタ画像データを生成する。
【0063】
図9は、第2実施形態のマスタ画像データ生成部1213の詳細構成の一例を示すブロック図である。図9に示すように、第2実施形態では、マスタ画像データ生成部1213の色空間変換部1229が線数検出部1235を更に備える点、並びにRGB変換部1231及び判定部1233の処理内容が、第1実施形態と相違する。
【0064】
線数検出部1235は、CLRのRIP画像データに施されている中間調処理の結果が細かい網点なのか荒い網点なのかを検出する。線数検出部1235は、ラプラシアンフィルタの結果を特徴量として用いて線数検出を行ってもよいし、パターンマッチングなどの方法を用いて線数検出を行ってもよい。
【0065】
判定部1233は、線数検出部1235の線数検出結果から、検査画像データのクリア色の有無及びクリアトナーを用いた処理の態様を判定する。ここで、判定部1233は、光沢処理が施されている場合の格子点パラメータとマット処理が施されている場合の格子点パラメータとCLR色が重なっていない場合の格子点パラメータとを保持している。そして判定部1233は、例えば、線数検出結果が0であり、検査画像データにクリア色が使用されていないと判定すると、RGB変換部1231にCLR色が重なっていない場合の格子点パラメータを出力する。また判定部1233は、例えば、線数検出結果が0より大きく閾値以下であれば、検査画像データにマット処理が施されていると判定し、RGB変換部1231にマット処理が施されている場合の格子点パラメータを出力する。また判定部1233は、例えば、線数検出結果が閾値より大きければ、検査画像データに光沢処理が施されていると判定し、RGB変換部1231に光沢処理が施されている場合の格子点パラメータを出力する。
【0066】
RGB変換部1231は、判定部1233からCLR色が重なっていない場合の格子点パラメータが入力されれば、CMYKの一組のデータから、当該格子点パラメータにおけるRGBの一組のデータを求める。またRGB変換部1231は、判定部1233からマット処理が施されている場合の格子点パラメータが入力されれば、CMYKの一組のデータから、当該格子点パラメータにおけるRGBの一組のデータを求める。またRGB変換部1231は、判定部1233から光沢処理が施されている場合の格子点パラメータが入力されれば、CMYKの一組のデータから、当該格子点パラメータにおけるRGBの一組のデータを求める。
【0067】
以上のように第2実施形態では、クリア版の使用用途(クリアトナーを用いた処理の態様)を考慮してマスタ画像データを生成しているため、クリア色を使用して印刷された印刷物の画像検査を行う場合であっても、検査精度の低下を抑え、高い精度で画像検査を行うことができる。
【0068】
(第3実施形態)
第3実施形態では、属性情報に応じたマスタ画像データを生成する例について説明する。なお以下では、第1実施形態との相違点の説明を主に行い、第1実施形態と同様の機能を有する構成要素については、第1実施形態と同様の名称・符号を付し、その説明を省略する。
【0069】
図10は、第3実施形態のプリンタ100及び画像検査装置2200の構成の一例を示すブロック図である。図10に示すように、第3実施形態では、画像検査システム2001の画像検査装置2200のマスタ画像データ生成部2213が第1実施形態と相違する。
【0070】
マスタ画像データ生成部2213は、取得部211により取得された属性情報に応じて有色画像データを変換し、マスタ画像データを生成する。
【0071】
図11は、第3実施形態のマスタ画像データ生成部2213の詳細構成の一例を示すブロック図である。図11に示すように、第3実施形態では、マスタ画像データ生成部2213の色空間変換部2229のRGB変換部2231及び判定部2233の処理内容が、第1実施形態と相違する。
【0072】
判定部2233は、プリンタ100から送信される属性情報から、検査画像データのクリア色の有無及びクリアトナーを用いた処理の態様を判定する。ここで、属性情報は2bitの情報であり、CLR色が重なっていない、光沢処理、マット処理、及びつや消し処理のいずれかを示すとする。また判定部2233は、光沢処理が施されている場合の格子点パラメータとマット処理が施されている場合の格子点パラメータとつや消しが施されている場合の格子点パラメータとCLR色が重なっていない場合の格子点パラメータとを保持している。そして判定部2233は、属性情報から、検査画像データにクリア色が使用されていないと判定すると、RGB変換部2231にCLR色が重なっていない場合の格子点パラメータを出力する。また判定部2233は、属性情報から、検査画像データにマット処理が施されていると判定すると、RGB変換部2231にマット処理が施されている場合の格子点パラメータを出力する。また判定部2233は、属性情報から、検査画像データにつや消し処理が施されていると判定すると、RGB変換部2231につや消し処理が施されている場合の格子点パラメータを出力する。また判定部2233は、属性情報から、検査画像データに光沢処理が施されていると判定すると、RGB変換部2231に光沢処理が施されている場合の格子点パラメータを出力する。
【0073】
RGB変換部2231は、判定部2233からCLR色が重なっていない場合の格子点パラメータが入力されれば、CMYKの一組のデータから、当該格子点パラメータにおけるRGBの一組のデータを求める。またRGB変換部2231は、判定部2233からマット処理が施されている場合の格子点パラメータが入力されれば、CMYKの一組のデータから、当該格子点パラメータにおけるRGBの一組のデータを求める。またRGB変換部2231は、判定部2233からつや消し処理が施されている場合の格子点パラメータが入力されれば、CMYKの一組のデータから、当該格子点パラメータにおけるRGBの一組のデータを求める。またRGB変換部2231は、判定部2233から光沢処理が施されている場合の格子点パラメータが入力されれば、CMYKの一組のデータから、当該格子点パラメータにおけるRGBの一組のデータを求める。
【0074】
以上のように第3実施形態でも、クリア版の使用用途(クリアトナーを用いた処理の態様)を考慮してマスタ画像データを生成しているため、クリア色を使用して印刷された印刷物の画像検査を行う場合であっても、検査精度の低下を抑え、高い精度で画像検査を行うことができる。
【0075】
(変形例)
なお本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上記実施形態では、画像形成装置の一例としてプリンタを例に取り説明したが、これに限定されるものではない。画像形成装置は、例えば、印刷機能、複写機能、スキャナ機能、及びファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する複合機(MFP:Multifunction Peripheral)などであってもよい。
【0076】
(ハードウェア構成)
図12は、上記各実施形態のプリンタ100のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0077】
図12に示すように、プリンタ100は、コントローラ910とエンジン部(Engine)960とをPCI(Peripheral Component Interconnect)バスで接続した構成となる。コントローラ910は、プリンタ100の全体の制御、描画、通信、及び操作表示部920からの入力を制御するコントローラである。エンジン部960は、PCIバスに接続可能なエンジンであり、例えば白黒プロッタ、1ドラムカラープロッタ、又は4ドラムカラープロッタ等のプリンタエンジンなどである。エンジン部960には、エンジン部分に加えて、誤差拡散やガンマ変換などの画像処理部分も含まれる。
【0078】
コントローラ910は、CPU911と、ノースブリッジ(NB)913と、システムメモリ(MEM−P)912と、サウスブリッジ(SB)914と、ローカルメモリ(MEM−C)917と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)916と、ハードディスクドライブ(HDD)918とを有し、ノースブリッジ(NB)913とASIC916との間をAGP(Accelerated Graphics Port)バス915で接続した構成となる。また、MEM−P912は、ROM912aと、RAM912bとをさらに有する。
【0079】
CPU911は、プリンタ100の全体制御を行うものであり、NB913、MEM−P912およびSB914からなるチップセットを有し、このチップセットを介して他の機器と接続される。
【0080】
NB913は、CPU911とMEM−P912、SB914、AGPバス915とを接続するためのブリッジであり、MEM−P912に対する読み書きなどを制御するメモリコントローラと、PCIマスタおよびAGPターゲットとを有する。
【0081】
MEM−P912は、プログラムやデータの格納用メモリ、プログラムやデータの展開用メモリ、プリンタの描画用メモリなどとして用いるシステムメモリであり、ROM912aとRAM912bとからなる。ROM912aは、プログラムやデータの格納用メモリとして用いる読み出し専用のメモリであり、RAM912bは、プログラムやデータの展開用メモリ、プリンタの描画用メモリなどとして用いる書き込みおよび読み出し可能なメモリである。
【0082】
SB914は、NB913とPCIデバイス、周辺デバイスとを接続するためのブリッジである。このSB914は、PCIバスを介してNB913と接続されており、このPCIバスには、ネットワークインタフェース(I/F)部なども接続される。
【0083】
ASIC916は、画像処理用のハードウェア要素を有する画像処理用途向けのIC(Integrated Circuit)であり、AGPバス915、PCIバス、HDD918およびMEM−C917をそれぞれ接続するブリッジの役割を有する。このASIC916は、PCIターゲットおよびAGPマスタと、ASIC916の中核をなすアービタ(ARB)と、MEM−C917を制御するメモリコントローラと、ハードウェアロジックなどにより画像データの回転などをおこなう複数のDMAC(Direct Memory Access Controller)と、エンジン部960との間でPCIバスを介したデータ転送をおこなうPCIユニットとからなる。このASIC916には、PCIバスを介してUSB(Universal Serial Bus)940、IEEE1394(the Institute of Electrical and Electronics Engineers 1394)インタフェース(I/F)950が接続される。操作表示部920はASIC916に直接接続されている。
【0084】
MEM−C917は、コピー用画像バッファ、符号バッファとして用いるローカルメモリであり、HDD918は、画像データの蓄積、プログラムの蓄積、フォントデータの蓄積、フォームの蓄積を行うためのストレージである。
【0085】
AGPバス915は、グラフィック処理を高速化するために提案されたグラフィックスアクセラレーターカード用のバスインターフェースであり、MEM−P912に高スループットで直接アクセスすることにより、グラフィックスアクセラレーターカードを高速にするものである。
【0086】
上記各実施形態の画像検査装置は、CPU(Central Processing Unit)などの制御装置と、ROMやRAMなどの記憶装置と、HDDやSSDなどの外部記憶装置と、ディスプレイなどの表示装置と、マウスやキーボードなどの入力装置と、通信I/Fなどの通信装置とを備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0087】
上記各実施形態の画像検査装置で実行される画像検査プログラムは、ROM等に予め組み込まれて提供される。
【0088】
上記各実施形態の画像検査装置で実行される画像検査プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0089】
さらに、上記各実施形態の画像検査装置で実行される画像検査プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、上記各実施形態の画像検査装置で実行される画像検査プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0090】
上記各実施形態の画像検査装置で実行される画像検査プログラムは、上述した各部をコンピュータ上で実現させるためのモジュール構成となっている。実際のハードウェアとしてはCPUがROMからプログラムをRAM上に読み出して実行することにより、上記各部がコンピュータ上で実現されるようになっている。
【符号の説明】
【0091】
1、1001、2001 画像検査システム
100 プリンタ
101 オペレーションパネル
103Y、103M、103C、103K、103CL 感光体ドラム
105 転写ベルト
107 二次転写ローラ
109 給紙部
111 搬送ローラ対
113 定着ローラ
115 反転パス
121 RIP部
123 プリンタ制御部
125 プリント部
200、1200、2200 画像検査装置
201、201A、201B 画像読取部
211 取得部
213、1213、2213 マスタ画像データ生成部
215 バッファ
217 画像検査部
221 多値化部
223 解像度変換部
225 多値化部
227 解像度変換部
229、1229、2229 色空間変換部
231、1231、2231 RGB変換部
233、1233、2233 判定部
1235 線数検出部
300 スタッカ
301 トレイ
910 コントローラ
911 CPU
912 システムメモリ
912a ROM
912b RAM
913 ノースブリッジ
914 サウスブリッジ
915 AGPバス
916 ASIC
917 ローカルメモリ
918 ハードディスクドライブ
920 操作表示部
940 USB
950 IEEE1394インタフェース
960 エンジン部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0092】
【特許文献1】特許第4407588号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有色色材の画像データである有色画像データを取得する有色画像データ取得部と、
透明色材の画像データである透明画像データに基づいて前記有色画像データを変換し、マスタ画像データを生成するマスタ画像データ生成部と、
前記マスタ画像データを用いて、前記有色画像データ及び前記透明画像データに基づく印刷画像が印刷された印刷物から当該印刷画像を光学的に読み取ることにより生成された検査画像データを検査する画像検査部と、
を備えることを特徴とする画像検査装置。
【請求項2】
前記透明画像データを取得する透明画像データ取得部を更に備え、
前記マスタ画像データ生成部は、前記透明画像データに応じて前記有色画像データを変換し、前記マスタ画像データを生成することを特徴とする請求項1に記載の画像検査装置。
【請求項3】
前記マスタ画像データ生成部は、前記透明画像データの線数を検出し、検出した前記透明画像データの線数に応じて前記有色画像データを変換し、前記マスタ画像データを生成することを特徴とする請求項2に記載の画像検査装置。
【請求項4】
前記透明画像データの属性を示す属性情報を取得する属性情報取得部を更に備え、
前記マスタ画像データ生成部は、前記属性情報に応じて前記有色画像データを変換し、前記マスタ画像データを生成することを特徴とする請求項1に記載の画像検査装置。
【請求項5】
画像形成装置と画像検査装置とを備える画像検査システムであって、
前記画像形成装置は、
有色色材の画像データである有色画像データを生成する有色画像データ生成部と、
透明色材の画像データである透明画像データを生成する透明画像データ生成部と、
前記有色画像データ及び前記透明画像データに基づく印刷画像を記録媒体に印刷して印刷物を生成する印刷部と、を備え、
前記画像検査装置は、
前記有色画像データを取得する有色画像データ取得部と、
前記透明画像データに基づいて前記有色画像データを変換し、マスタ画像データを生成するマスタ画像データ生成部と、
前記印刷物から前記印刷画像を光学的に読み取って検査画像データを生成する画像読取部と、
前記マスタ画像データを用いて、前記検査画像データを検査する画像検査部と、を備えることを特徴とする画像検査システム。
【請求項6】
有色画像データ取得部が、有色色材の画像データである有色画像データを取得する有色画像データ取得ステップと、
マスタ画像データ生成部が、透明色材の画像データである透明画像データに基づいて前記有色画像データを変換し、マスタ画像データを生成するマスタ画像データ生成ステップと、
画像検査部が、前記マスタ画像データを用いて、前記有色画像データ及び前記透明画像データに基づく印刷画像が印刷された印刷物から当該印刷画像を光学的に読み取ることにより生成された検査画像データを検査する画像検査ステップと、
を含むことを特徴とする画像検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−24564(P2013−24564A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156066(P2011−156066)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】