説明

画像表示体及び画像形成方法

【課題】 光回折構造によってより効果的な装飾効果が画像に設けられた画像表示体を提供する。
【解決手段】 基材1に設けられた画像2上に、網点状の光回折構造10によって構成される光回折構造部3が形成された画像表示体Aであって、光回折構造部を構成する複数の網点10のそれぞれは、一辺の長さが400μm以下の全て同じ大きさの正方形領域11に収まり、かつ、各網点10を正方形領域11に収めた場合、各正方形領域は互いに対角線方向12に等間隔に配置され、隣り合う正方形領域11、11の距離dが全て220μm以下になるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像上に光回折構造が網点状に形成された画像表示体及びその画像表示体を形成する画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光回折構造が積層された転写箔から、その光回折構造を所定の画像上に網点状に転写することにより光回折構造部を形成し、回折光による装飾効果を画像に付加する方法は、既に広く知られている(例えば特許文献1、特許文献2及び特許文献3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平8−123299号公報
【特許文献2】特開平11−227368号公報
【特許文献3】特開2004−101834号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の転写方法では、光回折構造部の回折光による装飾効果が、不自然になることが多く、十分にその効果が発揮されていない。
【0005】
そこで、本発明は、光回折構造によってより効果的な装飾効果が画像に設けられた画像表示体及び画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の方法により上述した課題を解決する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0007】
本発明の画像表示体(A)は、基材(1)に設けられた画像(2)上に、網点状の光回折構造(10…10)によって構成される光回折構造部(3)が形成された画像表示体であって、前記光回折構造部を構成する複数の網点のそれぞれは、一辺の長さが400μm以下の互いに等しい大きさの正方形領域(11)に収まり、かつ、前記各網点を前記正方形領域に収めた場合、前記複数の正方形領域のそれぞれは互いに対角線方向(12)に等間隔に配置され、前記対角線方向において隣り合う一方の前記正方形領域の角(11a)と他方の前記正方形領域の角(11b)との距離(d)が220μm以下になるように、前記各網点が形成されている、ことにより上記課題を解決する。
【0008】
光回折構造部を構成する各網点が本発明のように規則的に配置されるように形成された場合、画像に対して光回折構造をより自然なラメのような装飾効果として付加できることを発明者はつきとめた。これにより、普通のインクによって印刷された画像に対してきらきら光るラメのような効果を容易に装飾できる。
【0009】
網点の形状は一辺が400μm以下の正方形領域に収まる大きさであれば、正方形である必要はなく、例えば、円、楕円、多角形、不定形等でもよい。本発明の光回折構造には、一定のパターンで構成される回折格子と所定の像を形成する干渉縞で構成されるホログラムとを含む。
【0010】
また、本発明の画像表示体において、前記光回折構造部の網点面積率が40%以下であってもよい。このような網点面積率の場合、画像に対してより自然なきらきら光るラメのような効果が付与できる。前記正方形領域の一辺の長さが100μm〜200μmまたは/及び前記隣り合う正方形領域の距離が50μm〜150μmであれば、より一層効果的な装飾効果が得られる。
【0011】
本発明の画像形成方法は、光回折構造(23)が基材シート(21)上に積層された転写シート(20)を使用して、網点状の前記光回折構造(10…10)によって構成される光回折構造部(3)を所定の画像上に形成する画像形成方法であって、前記光回折構造部を構成する複数の網点のそれぞれは、一辺400μm以下の互いに等しい大きさの正方形領域(11)に収まり、前記各網点を前記正方形領域に収めた場合に前記複数の正方形領域のそれぞれは互いに対角線方向(12)に等間隔に配置され、前記対角線方向において隣り合う一方の前記正方形領域の角(11a)と他方の前記正方形領域の角(11b)との距離が220μm以下になるように、前記各網点を形成する、ことにより上記の課題を解決する。これにより、本発明の画像表示体を得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本発明によれば、各網点が画像上に配置される態様を、大きさ及び距離によって特定することにより、光回折構造によってより効果的な装飾効果が画像に設けられた画像表示体等を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明の画像表示体Aの一例を示す図である。画像表示体Aは、所定の基材1に設けられた画像2上に、網点状の光回折構造で構成される光回折構造部3が形成されている。図2に示すように、光回折構造部3を構成する複数の網点10…10のそれぞれは、全て等しい大きさの正方形領域11…11に収めることができ、その複数の正方形領域11…11は互いに対角線方向12…12に等間隔に配置された状態になるように形成されている。
【0014】
正方形領域11の一辺の長さは400μ以下であればよいが、100〜200μmであることが望ましい。また、隣り合う正方形領域11、11において、一方の正方形領域11の角11aと他方の正方形領域11の角11bとの距離dは全て等しく220μm以下であればよいが、50〜150μmであることが望ましい。更に、画像2の面積に対する網点10…10の網点面積率は40%以下であることが望ましい。
【0015】
基材1の素材や画像2の形成方法は画像表示体Aの使用用途によって適宜決めてよい。例えば、画像表示体Aとしては、クレジットカード、IDカード、及びプリペイドカード等のカード類、商品券、小切手、手形、株券、入場券、及び各種証明書等の紙券類等、基材1上に画像2を有するものであればよい。また、画像2としては、各種印刷によって形成されたものや写真等でもよい。
【0016】
次に、図3に示す転写シート20を使用して、画像2に光回折構造部3を形成する方法について説明する。転写シート20は、基材シート21上に剥離層22、光回折構造として回折格子の凹凸パターンが形成された光回折構造層23、反射層24及び接着層25が積層され、更に基材シート21の裏面には耐熱保護層26が形成されている。光回折構造層23のレリーフ面へ反射層24を設けることにより、レリーフの回折効果を高めることができる。反射層24は光の反射率の高い金属で構成されることが望ましく、反射層24を構成する金属の光の反射率が高い程、より明るい回折光が得られる。具体的には、Cr、Ni、Ag、Au、Al等の金属、及びその酸化物、硫化物、窒化物等の薄膜を単独で、又は複数を組み合わせたもので構成されてもよい。上記の光反射性の金属薄膜は、反射効果を十分得られるように10〜2000nm程度、好ましくは20〜1000nmの厚さを有する事が望ましい。
【0017】
熱転写プリンタによって転写シート20の光回折構造層23を、図4(a)に示すような基材1に画像2が設けられた被転写体30に転写する。熱転写プリンタのサーマルヘッドの動作を制御することによって、光回折構造層23によって網点10…10を上述した態様になるように画像2上に形成すればよい。
【0018】
サーマルヘッドの動作の制御方法は、熱転写プリンタによって転写シートから光回折構造を網点状に転写する従来既知の方法によって行えばよい。図4(b)は基材1に設けられた画像2上に光回折構造層23が網点状10…10に転写されて光回折構造部3が形成されたようすを示す図である。以上の形成方法により、画像2上に光回折構造部3が形成され、画像2に回折光による自然なラメ効果を付与することができる。
【0019】
本発明は上述した形態に限らず、種々の形態にて実施してよい。例えば、図2に示す網点10の形状は円形であるが、網点10はどのような形状でもよく、例えば楕円や多角形や不定形等でもよい。画像2は図1に示すような星形に限らずいずれの形状を有していてもよい。また、一色でなく複数の色で着色されてもよいし、基材1の一部でなく基材1の全体に設けられていてもよい。
【0020】
転写シート20は基材シート21や光回折構造層23の機能によっては剥離層22は不要である。また、画像表示体Aの使用用途によっては、剥離層22以外の層が積層されていてもよい。例えば、転写シート20に金色などの着色インクで構成される特定色層を設け、光回折構造層23と共に光回折構造部を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明における画像表示体の一例を示す図。
【図2】図1に示す光回折構造部の一部の拡大図。
【図3】本発明における転写シートの一例の断面を示す図。
【図4】(a)は図1に示す画像表示体を形成するための被転写体を示す図であり、(b)は光回折構造部が形成された画像表示体の一部を拡大した断面図。
【符号の説明】
【0022】
A 画像表示体
1 基材
2 画像
3 光回折構造部
10 網点
11 正方形領域
20 転写シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に設けられた画像上に、網点状の光回折構造によって構成される光回折構造部が形成された画像表示体であって、
前記光回折構造部を構成する複数の網点のそれぞれは、一辺の長さが400μm以下の互いに等しい大きさの正方形領域に収まり、かつ、前記各網点を前記正方形領域に収めた場合、前記複数の正方形領域のそれぞれは互いに対角線方向に等間隔に配置され、前記対角線方向において隣り合う一方の前記正方形領域の角と他方の前記正方形領域の角との距離が220μm以下になるように、前記各網点が形成されている、ことを特徴とする画像表示体。
【請求項2】
前記光回折構造部の網点面積率が40%以下であることを特徴とする請求項1に記載の画像表示体。
【請求項3】
前記正方形領域の一辺の長さが100μm〜200μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像表示体。
【請求項4】
前記隣り合う正方形領域の距離が50μm〜150μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像表示体。
【請求項5】
光回折構造が基材シート上に積層された転写シートを使用して、網点状の前記光回折構造によって構成される光回折構造部を所定の画像上に形成する画像形成方法であって、
前記光回折構造部を構成する複数の網点のそれぞれは、一辺400μm以下の互いに等しい大きさの正方形領域に収まり、前記各網点を前記正方形領域に収めた場合に前記複数の正方形領域のそれぞれは互いに対角線方向に等間隔に配置され、前記対角線方向において隣り合う一方の前記正方形領域の角と他方の前記正方形領域の角との距離が220μm以下になるように、前記各網点を形成する、ことを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−248157(P2006−248157A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−70993(P2005−70993)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】