説明

画像表示装置のキャリブレーション装置、その制御方法、画像表示装置、及び画像表示システム

【課題】キャリブレーションに要する時間が長くなることを抑制しつつ、ユーザが実際に画像表示装置に表示させる画像の特徴に合わせて精度良くキャリブレーションする。
【解決手段】画像表示装置の表示履歴を用いて測色ポイントを決定する。画像表示装置に現在までに入力された複数の画像データの階調の頻度分布の履歴に関する情報を取得する履歴取得手段と、全階調数より少ない複数の階調の各々について、各階調に対応する測色用画像を表示させたときの表示輝度を測定し、その測定値と各階調に対応する表示輝度の目標値との差に基づいてキャリブレーションを行うキャリブレーション手段と、全階調のうちから、履歴取得手段により取得される階調の頻度分布の履歴において出現頻度の高い順に選択される所定数の階調を少なくとも含む複数の階調を、キャリブレーション手段が表示輝度の測定を行う階調として選択する選択手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置のキャリブレーション装置、その制御方法、画像表示装置、及び画像表示システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、X線診断装置やマンモグラフィ等の医療用診断装置で撮影された診断画像を画像表示装置に表示して読影する等、画像表示装置の階調再現性に対する要求が高まっている。画像表示装置では、LUT(Look−Up Table)を用いて入力階調から出力階調へ変換する画像処理が行われる。
【0003】
画像表示装置は経時変化によるバックライトの輝度変化等により表示特性が変化する。表示特性の変化を抑制するためにキャリブレーションを行うことが有効である。キャリブレーションでは、画像表示装置に特定の階調のパッチ画像(測色用画像)を表示し、測色器により画像表示装置の発する光を測色し、目標値との比較結果を画像表示装置にフィードバックして画像処理を変更する。これにより画像表示装置に経時変化があっても表示特性を一定に維持することができる。
【0004】
キャリブレーションでは特定の階調(信号レベル)のパッチ画像を表示し、その階調の目標輝度値と測色器で得た実際の輝度値の差を小さくするようにLUTのその階調に対応する値を変更する。しかし、全ての信号レベルに対して測色していたのでは時間がかかりすぎる。これに対し、測色する信号レベル(以下、測色ポイントともいう)の数を絞り、測色しない信号レベルに対しては測色した信号レベルの測定値を元に補間してLUTを作成することによりキャリブレーション時間を短縮することができる。
【0005】
測色ポイントの選択方法として、例えば、測色ポイント数を高輝度部より低輝度部に多く配分する方法(例えば特許文献1参照)や、人間の視覚特性の良い階調部分に多く配分する方法(例えば特許文献2参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−168044号公報
【特許文献2】特開平11−262033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、測色ポイント数を絞ることは、キャリブレーションに要する時間を短縮できる効果があるのに対して、キャリブレーションの精度が低下するという問題がある。
【0008】
また、ユーザが画像表示装置の利用時に表示させる画像が人間の視覚特性の良い階調ばかりを含んでいるとは限らない。従って、上記従来技術のように人間の視覚特性の良い階調を多く測色するキャリブレーション方法では、ユーザが実際に画像表示装置に表示させる画像の特徴に適した表示特性になっていない場合もあり得る。
【0009】
そこで本発明は、キャリブレーションに要する時間が長くなることを抑制しつつ、ユーザが実際に画像表示装置に表示させる画像の特徴に合わせて精度良くキャリブレーションすることを可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、画像表示装置のキャリブレーションを行うキャリブレーション装置であって、
前記画像表示装置に現在までに入力された複数の画像データの階調の頻度分布の履歴に関する情報を取得する履歴取得手段と、
前記画像表示装置で表示可能な全階調数より少ない複数の階調の各々について、各階調に対応する測色用画像を前記画像表示装置に表示させたときの表示輝度を測定し、当該表示輝度の測定値と各階調に対応する表示輝度の目標値との差に基づいて前記画像表示装置のキャリブレーションを行うキャリブレーション手段と、
前記画像表示装置で表示可能な全階調のうちから、前記履歴取得手段により取得される階調の頻度分布の履歴において出現頻度の高い順に選択される所定数の階調を少なくとも含む複数の階調を、前記キャリブレーション手段が表示輝度の測定を行う階調として選択する選択手段と、
を備える画像表示装置のキャリブレーション装置である。
【0011】
本発明は、画像表示装置のキャリブレーションを行うキャリブレーション装置の制御方法であって、
前記画像表示装置に現在までに入力された複数の画像データの階調の頻度分布の履歴に関する情報を取得する履歴取得工程と、
前記画像表示装置で表示可能な全階調数より少ない複数の階調の各々について、各階調に対応する測色用画像を前記画像表示装置に表示させたときの表示輝度を測定し、当該表示輝度の測定値と各階調に対応する表示輝度の目標値との差に基づいて前記画像表示装置のキャリブレーションを行うキャリブレーション工程と、
前記画像表示装置で表示可能な全階調のうちから、前記履歴取得工程により取得される階調の頻度分布の履歴において出現頻度の高い順に選択される所定数の階調を少なくとも含む複数の階調を、前記キャリブレーション工程が表示輝度の測定を行う階調として選択する選択工程と、
を備える画像表示装置のキャリブレーション装置の制御方法である。
【0012】
本発明は、画像表示装置と、前記画像表示装置のキャリブレーションを行うキャリブレーション装置と、からなる画像表示システムであって、
前記画像表示装置は、
現在までに入力された複数の画像データの階調の頻度分布の履歴を記憶する記憶手段と、
入力される画像データに対し画像処理を行う画像処理手段と、
前記画像処理手段により画像処理が行われた画像データに基づく画像を表示する表示手段と、
前記キャリブレーション装置から前記画像処理のキャリブレーションを行うためのデータを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得されるデータを用いて前記画像処理のキャリブレーションを行うキャリブレーション手段と、
を備え、
前記キャリブレーション装置は、
前記画像表示装置から前記頻度分布の履歴を取得する履歴取得手段と、
前記画像表示装置で表示可能な全階調数より少ない複数の階調の各々について、各階調に対応する測色用画像を前記画像表示装置に表示させたときの表示輝度を測定し、当該表示輝度の測定値と各階調に対応する表示輝度の目標値との差に基づいて前記画像処理のキャリブレーションを行うためのデータを生成する生成手段と、
前記生成手段が生成した前記データを前記画像表示装置に送信する送信手段と、
前記画像表示装置で表示可能な全階調のうちから、前記履歴取得手段により取得される階調の頻度分布の履歴において出現頻度の高い順に選択される所定数の階調を少なくとも含む複数の階調を、前記生成手段が表示輝度の測定を行う階調として選択する選択手段と、
を備えることを特徴とする画像表示システムである。
【0013】
本発明は、現在までに入力された複数の画像データの階調の頻度分布の履歴を記憶する記憶手段と、
入力される画像データに対し画像処理を行う画像処理手段と、
前記画像処理手段により画像処理が行われた画像データに基づく画像を表示する表示手段と、
前記画像表示装置で表示可能な全階調数より少ない複数の階調の各々について、各階調に対応する測色用画像を前記画像表示装置に表示させたときの表示輝度を測定し、当該表示輝度の測定値と各階調に対応する表示輝度の目標値との差に基づいて前記画像処理のキャリブレーションを行うキャリブレーション手段と、
前記画像表示装置で表示可能な全階調のうちから、前記記憶手段に記憶される階調の頻度分布の履歴において出現頻度の高い順に選択される所定数の階調を少なくとも含む複数の階調を、前記キャリブレーション手段が表示輝度の測定を行う階調として選択する選択手段と、
を備えることを特徴とする画像表示装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、キャリブレーションに要する時間が長くなることを抑制しつつ、ユーザが実際に画像表示装置に表示させる画像の特徴に合わせて精度良くキャリブレーションすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1に係るキャリブレーションシステムの概略構成図
【図2】実施例1に係るキャリブレーションシステムの機能ブロック図
【図3】実施例1の通常動作のフローチャート
【図4】累計信号レベルの一例を示す図
【図5】実施例1のキャリブレーション処理のフローチャート
【図6】実施例1において選択した測色ポイントの一例を示す表
【図7】実施例2に係るキャリブレーションシステムの概略構成図
【図8】実施例2に係る画像表示装置の機能ブロック図
【図9】実施例2のキャリブレーション精度確認処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施例1)
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。ただし、以下で説明する実施例は本発明の範囲をそれらのみに限定する主旨のものではなく、本発明の範囲内で種々の実施の形態が可能である。
図1は本実施例に係る画像表示システムの概略構成図である。図1でPC(Personal Computer)100は一般的な汎用のPCである。PC100はUSB(Universal Serial Bus)ケーブル701を通じて測色器300と接続されている。測色器300はセンサ部を画像表示装置の表示画面の測色したい部分に押し当てることにより表示画面から発せられる光の色度及び輝度を測定できる測定器である。画像表示装置200においてパッチ画像(測色用画像)601の表示された部分を測色することにより、パッチ画像601の表示輝度及び表示色度を得ることができる。なお、図1は測色器300を画像表示装置200に取り付けた状態を図示したもので、ユーザが
鑑賞や編集等のために画像表示装置200に所望の画像を表示させる通常使用時においては、測色器300は取り外すことができる。PC100の画像データはDP(Display Port)ケーブル703を通じて画像表示装置200に入力される。ここでは、PC100は10bit深度の画像データを出力することができ、DPケーブル703は10bitの画像データを通信することができ、画像表示装置200は10bitの画像データの入力、画像処理、及び表示が可能であるとする。つまり、本実施例のシステムはシステム全体として10bit深度の画像データに対応している。また、PC100と画像表示装置200はUSBケーブル702で接続されており、コマンドの送受信が可能となっている。なお、画像データやコマンドの通信に用いる規格は上記の例に限らない。
【0017】
図2は本実施例に係る画像表示システムの機能ブロック図である。PC100の画像出力部105から出力された画像データは画像表示装置200の画像入力部204に入力され、画像処理部205で画像処理を施され、画像処理後の画像データに基づく画像が画像表示部206で表示される。画像処理部205は入力が10bitのLUTを保持しており、入力された画像データに対してLUTを適用した画像データを出力する。本実施例では、画像処理部205はRGB共通のLUTを1つ保持している場合を例に説明するが、RGB毎に異なるLUTを保持し、各色独立にキャリブレーションを行うシステムにも本発明は適用できる。
【0018】
まず、画像表示装置200の通常使用時の動作を図3のフローチャートに沿って説明する。通常使用時とは、ユーザが所望の画像データを表示するよう画像表示装置200に指示し、画像表示装置200が当該画像データを表示する場合であって、PC100がキャリブレーションを行っていない場合である。本フローチャートは画像データが入力された状態で、画像表示の垂直同期信号に同期したタイミングで開始される。
【0019】
S101において、信号レベル頻度計測部203は、入力された画像データの全画素からR,G,B毎にヒストグラム(0〜1023の階調毎(信号レベル毎)の頻度分布(画素数の分布))を取得する。
【0020】
S102において、信号レベル頻度計測部203は、現在の表示モードの累計信号レベル頻度の情報を記憶部202から読み出し、S101において計測したヒストグラムを累計信号レベル頻度に加算し、記憶部202に保存する。表示モードとは、ユーザが選択可能な表示画質の設定である。本実施例では、テキスト表示に適するTextモード、医用画像の表示に適するDICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)モード、ユーザが調整可能なCustomモード等があるものとする。信号レベル頻度計測部203は、R,G,Bそれぞれのヒストグラムを信号レベル毎に合計して、累計信号レベル頻度に加算する。このようにして算出した累計信号レベル頻度の一例を図4に示す。図4では、0〜1023それぞれの信号レベルの累計出現頻度を表示モード毎に、百分率で表している。例えば、Textモードでは、信号レベル0の累計出現頻度は1.3%、信号レベル1の累計出現頻度は0.2%、・・・、信号レベル1023の累計出現頻度は1.4%である。信号レベル頻度計測部203が計測した表示モード毎の累計信号レベル頻度は、画像表示装置200が現在までに表示した複数の画像データの履歴を反映している。すなわち、ユーザが画像表示装置200に表示させる頻度の高い画像のヒストグラムの特徴を反映している。
【0021】
なお、本実施例では、入力される画像データの全画素からヒストグラムを計測する例を示したが、例えばPC100から通知された特定領域に含まれる画素のみからヒストグラムを計測してもよい。
また、本実施例では画像表示の垂直同期信号に同期してヒストグラムを計測する例を示したが、例えば、処理の負荷を考慮して計測頻度を落としても良い。例えば、所定時間毎
(例えば1秒毎)に1回ヒストグラムの計測を行っても良いし、入力される画像データが静止画像データの場合は画像データが切り替わるタイミングでヒストグラムの計測を行ってもよい。
【0022】
また、本実施例では現在入力されている画像データから計測されたヒストグラムを単純にこれまでの累計信号レベル頻度に加算して新たな累計信号レベル頻度を算出する例を示した。しかし、入力された時期が現在に近いほど、画像データから計測されたヒストグラムの累計信号レベル頻度への寄与率が高くなるように、重み付け加算をして累計信号レベル頻度を算出しても良い。例えば、S102においてS101で取得したヒストグラムを記憶部202から読み出した累計信号レベル頻度に加算する際に、読み出した累計信号レベル頻度に1未満の重み付け係数を乗算してから取得したヒストグラムを加算する。
このようにして、画像表示装置200は、通常使用時に入力される画像データの信号レベルの累計頻度を計測する。
【0023】
次に、キャリブレーション時のPC100及び画像表示装置200動作を図5のフローチャートに沿って説明する。本実施例では、画像表示装置200が表示可能な全階調数(0〜1023の全信号レベル)について測色を行わず、それより少ない一部の信号レベルについて測色を行う。そして、測色を行わない信号レベルについては、測色を行った一部の信号レベルの測色結果に基づき、補間によりキャリブレーションを行う。
【0024】
ユーザはPC100の記憶部102にインストールされたキャリブレーション用プログラムを不図示の操作入力部(マウスやキーボード等)を操作して起動する。ユーザは、前記キャリブレーション用プログラムに対してキャリブレーション目標の黒輝度、白輝度、γカーブの形状等の情報を入力した後、測色器300を図1のように画像表示装置200の中央に取り付ける。なお、取り付け位置は、キャリブレーション時にパッチ画像が表示される位置に合わせて決まる。また、γカーブの形状としてはγ値1.8、γ値2.2、DICOM GSDF(Grayscale Standard Display Function)等が設定可能であるとする。ユーザは前記キャリブレーション用プログラムに対してキャリブレーション開始を指示する。キャリブレーションが開始されると、キャリブレーション開始指示がPC100から画像表示装置200に通知され、画像表示装置200は通常動作モードからキャリブレーションモードへ移行する。キャリブレーションモードでは、画像表示装置200は、図3で説明した入力画像データの累計信号レベル頻度の計測処理を行わない。
【0025】
図5(A)のS201において、制御部201は10bitの各入力信号レベル0〜1023に対して出力すべき目標輝度値を算出する。信号レベルnに対応する目標輝度値は以下の式で算出する。

目標輝度値=白輝度×(n÷1023)γ+黒輝度
【0026】
次に、S202において、測色ポイント(測色を行う信号レベル)の選択が行われる。測色ポイントの選択処理について、図5(B)のフローチャートに基づき説明する。
【0027】
図5(B)のS301において、パッチ選択部103は画像表示装置200に対して累計信号レベル頻度の情報送信を要求し、これに応じて画像表示装置200は記憶部202に記憶されている累計信号レベル頻度の情報をPC100に送信する。これによりパッチ選択部103は画像表示装置200に現在までに入力された画像データの階調の頻度分布の履歴に関する情報を取得する履歴取得を行う。
【0028】
S302において、パッチ選択部103は、測色ポイント間の信号レベルが大きく離れないように測色ポイントを選択する。パッチ選択部103は、例えば、0、1023、及び、0〜1023の間の63個の16の倍数(16,32,48,・・・、1008)の全65個の信号レベルを測色ポイントとして選択する。ここで測色ポイント間の信号レベルが大きく離れすぎないように測色ポイントを選択するのは、測色しない信号レベルについて行われる補間処理の精度上げるためである。
【0029】
S303において、パッチ選択部103は、S302で決定した測色ポイント以外の測色ポイントを選択する。具体的には、パッチ選択部103は、S301で読み込んだ累計信号レベル頻度に基づき、頻度の高い順に63ポイントの信号レベルを測色ポイントとして選択する。
【0030】
このようにして、S302で選択された65ポイント及びS303で選択された63ポイントの計128ポイントの信号レベルが測色ポイントとして決定される。決定された測色ポイントの一例を図6に示す。図6において、順位の欄が符号Aの信号レベルはS302で測色ポイントとして選択された信号レベルを示す。また、順位の欄が数値の信号レベルはS303で測色ポイントとして選択された信号レベルであり、その数値は累計信号レベル頻度におけるその信号レベルの頻度の順位を示す。
【0031】
以上の処理により、画像表示装置200が表示可能な全階調のうちから、ユーザの表示頻度の高い画像データのヒストグラムの特徴に合わせて所定数の測色ポイントが選択され、その測色ポイントの測色結果に基づきキャリブレーションを行うことが可能となる。
なお、上記のフローのS303では累計信号レベル頻度の高い順に測色を行う信号レベルを選択する例を示したが、累計信号レベル頻度の順に加えて、人間の視覚特性を考慮して測色を行う信号レベルを選択するようにしてもよい。具体的には、各信号レベルに対する目標輝度値をJND(Just Noticeable Distance) Indexに変換し、白輝度のJND Indexと黒輝度のJND Indexの間を均等に64分割する。分割された各区間内において累計信号レベル頻度の高い2点を測色ポイントとする。このようにして、128点の測色ポイントが決定する。
【0032】
以上のようにして測色ポイント群が選択されると、選択した測色ポイントの各々についてキャリブレーション(測色及びLUTの補正)が行われる。以下、詳述する。
【0033】
まず、S203において、画像作成部104は、キャリブレーション対象の測色ポイント(信号レベルnとする)に応じたパッチ画像データを生成し、画像出力部105から画像表示装置200に対して出力する。このパッチ画像は、信号レベルnに応じた画像が画面の中央の所定領域(図1の符号601で示す領域)に描画されるような画像である。画像表示装置200は入力された画像データに画像処理部205で画像処理を施して画像表示部206に表示する。
【0034】
S204において、測色器制御部107は測色器300を制御して画像表示装置200の画面に表示されたパッチ画像601の色度及び輝度を取得する。
【0035】
S205において、制御部101はS201で算出した信号レベルnに対応する輝度の目標値とS204で測色器300から取得した測定値を比較し、目標値と測定値との差が閾値以上であるか判断する。ここで閾値は目標値に対する相違を人間観察者が認識できないような輝度の差に基づき設定されるもので、予め記憶部102に保持されている。輝度の目標値と測定値の差が閾値以上である場合、S206において、LUT作成部106は、測定値が目標値に近づくように信号レベルnに対応するLUTの値を補正し、補正後のLUTの情報を画像表示装置200に送信する。補正後のLUTは、画像表示装置200
が画像処理部205による画像処理のキャリブレーションを行うためのデータとしてLUT作成部106により生成され、PC100から画像表示装置200へ送信される。画像処理部205は、画像処理部205で用いるLUTを、PC100から受信したLUTにより更新し、以降、この新しいLUTを使って画像処理を行うようにする。その後、処理はS204に戻り、PC100は再び同じ信号レベルnに対応するパッチ画像を画像表示装置200に表示させて測色する。これらの処理は、測定値と目標値との差が閾値より小さくなるまで行われる。
【0036】
S205において、測定値と目標値の差が閾値より小さくなったと判断されると、S207において、制御部101はS202で選択した全ての測色ポイントについてキャリブレーション(測色及びLUTの補正)し終えたか否かを確認する。全ての測色ポイントについてキャリブレーションが完了していなければ、処理はS203に戻り、キャリブレーション未実行の測色ポイントについて上述したキャリブレーションを実行する。全ての測色ポイントについてキャリブレーションが完了した場合、処理はS208に進む。S208において、LUT作成部106は測色ポイント以外の信号レベルのLUTの値を、S207までのキャリブレーション処理で求めた測色ポイントのLUTの値に基づき補間して算出し、画像表示装置200に送信する。ここでは、LUT作成部106は、測色ポイントに対応するLUTの値に基づく線形補間により測色ポイント以外の信号レベルのLUTの値を算出する。なお、目標のγカーブの形状に合わせた曲線による補間を行ってもよい。画像処理部205は、画像処理部205で用いるLUTを、PC100から受信したLUTにより更新し(記憶部202に保存する)、以降、この新しいLUTを使って画像処理を行うようにする。
【0037】
以上で画像表示装置200のキャリブレーション処理は終了し、通常動作に移行する。
本実施例のキャリブレーション方法によれば、ユーザが画像表示装置に表示させた画像の履歴に基づき、ユーザがよく表示させる画像のヒストグラムの傾向に合わせて、測色を行う階調が選択され、キャリブレーションが行われる。これにより、測色ポイント数の増加を抑えながら、ユーザよく表示させる画像の特徴に似た特徴を有する画像を高い階調再現性で表示することができるように画像表示装置をキャリブレーションすることができるようになる。
【0038】
(実施例2)
次に本発明の第2の実施例を説明する。本実施例の説明は、実施例1との相違点を中心に行う。
図7は本実施例に係るキャリブレーションシステムの概略構成図である。図7で前面センサ550は外付けの測色器300と同様、画像表示装置500に表示されるパッチ画像602の輝度及び色度を測定する測色器である。前面センサ550は画像表示装置500の構成要素であり、測定値の情報を直接画像表示装置500へ送信するよう構成されている。PC400と画像表示装置500はDPケーブル704で接続され、PC400から画像表示装置500へDPケーブル704を介して画像データが送信される。
【0039】
図8は図7の画像表示装置500の機能ブロック図である。基本的な画像表示のフローは、実施例1の画像表示装置200と同様で、PC400から画像入力部505に入力された画像データに画像処理部507で画像処理を適用し、処理後の画像データを画像表示部509に出力して画面に表示する。
【0040】
図9は本実施例での画像処理精度チェック処理を示すフローチャートである。本フローチャートはPC400で動作する画像表示プログラム(ビューア)が表示画像を切り替えたことを画像表示装置500に通知したタイミングで開始される。本フローチャートの処理が終了する前に再度、表示画像が切り替わった場合は、途中で本フローチャートの処理
が終了し、再度フローチャートの処理が開始される。
【0041】
S501において、信号レベル頻度計測部503は現在入力されている画像データのヒストグラムを取得することにより統計量取得を行う。
【0042】
S502において、パッチ選択部504は取得したヒストグラムから、頻度が所定値以上の信号レベルを確認ポイントとして抽出し選択する。以降、選択した確認ポイントの各々について、頻度が高い順に、測色及び測色結果に基づくキャリブレーション要否判定を行い、必要に応じてキャリブレーションを実行する。以下、詳述する。
【0043】
まず、S503において、パッチ描画部506は、S502で選択した確認ポイント(信号レベルnとする)に対応するパッチ画像データを生成し、画像表示部509へ出力する。このパッチ画像は、信号レベルnに応じた画像が前面センサ550の直下の所定の表示領域(図7の符号602で示す領域)に描画されるような画像である。
【0044】
S504において、測色部510は前面センサ550を制御してパッチ画像を測色する。
【0045】
S505において、制御部501はS504の測色により得られた輝度の測定値とキャリブレーション時の当該信号レベルnに対応する度の目標値との差が閾値以上であるかを判定する。ここで閾値は目標値に対する相違を人間観察者が認識できないような輝度の差に基づき設定されるもので、予め記憶部502に保持されている。輝度の目標値と測定値の差が閾値以上である場合、キャリブレーションを実行する必要があると判断され、S507において、PC400はキャリブレーションを開始する。この際、キャリブレーションが必要な旨の警告を表示することによりユーザに通知するようにしても良い。輝度の目標値と測定値の差が閾値より小さい場合、キャリブレーションを実行する必要はないと判断され、処理はS506に進む。
【0046】
S506では、S502で選択された確認ポイントの全てについてキャリブレーションの実行要否の判断がなされたか否かを確認する。全ての確認ポイントについてキャリブレーションの実行要否の判断がなされた場合、本フローチャートの処理は終了する。全ての確認ポイントについてキャリブレーションの実行要否の判断がなされていない場合、処理はS503に戻り、未だキャリブレーションの実行要否の判断が行われていない確認ポイントにつき上述したS503〜S505の処理を繰り返す。
【0047】
このように、ヒストグラムの頻度の高い信号レベルに関して目標輝度と測定値との差が監視され、輝度の測定値と目標値との差が閾値以上である信号レベルがあれば、再度キャリブレーションが実行される。そのため、画像表示装置500の階調再現性が良好に維持される。
【0048】
なお、S507で実行されるキャリブレーション処理の内容は実施例1と基本的に同じであるが、S202の測色ポイントの選択において、累計信号レベル頻度の代わりに現在の表示画像のヒストグラムに基づいて測色ポイントを選択しても良い。
なお、上記実施例1におけるPC100の機能や、実施例2におけるPC400の機能を、画像表示装置自体が備えていても良い。すなわち、画像表示装置自体が、入力される画像データのヒストグラムの累計頻度を記憶し、頻度の高い方から順に選択される所定数の階調を含むように測色ポイントを決定する。そして、各測色ポイントについての測色結果と目標値との比較に基づき自身の画像処理のLUTをキャリブレーションするような機能を有する画像表示装置も、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
100 PC、103 パッチ選択部、106 LUT作成部、200 画像表示装置、300 測色器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示装置のキャリブレーションを行うキャリブレーション装置であって、
前記画像表示装置に現在までに入力された複数の画像データの階調の頻度分布の履歴に関する情報を取得する履歴取得手段と、
前記画像表示装置で表示可能な全階調数より少ない複数の階調の各々について、各階調に対応する測色用画像を前記画像表示装置に表示させたときの表示輝度を測定し、当該表示輝度の測定値と各階調に対応する表示輝度の目標値との差に基づいて前記画像表示装置のキャリブレーションを行うキャリブレーション手段と、
前記画像表示装置で表示可能な全階調のうちから、前記履歴取得手段により取得される階調の頻度分布の履歴において出現頻度の高い順に選択される所定数の階調を少なくとも含む複数の階調を、前記キャリブレーション手段が表示輝度の測定を行う階調として選択する選択手段と、
を備える画像表示装置のキャリブレーション装置。
【請求項2】
前記履歴取得手段は、前記画像表示装置に現在までに入力された複数の画像データの階調のヒストグラムから求められる階調毎の累計頻度の情報を取得し、
前記選択手段は、前記累計頻度が高い順に選択される所定数の階調を少なくとも含む複数の階調を選択する請求項1に記載の画像表示装置のキャリブレーション装置。
【請求項3】
前記累計頻度は、前記画像表示装置に入力された時期が現在に近い画像データほど重みが大きくなるように定められる重み付け係数を用いて求められる値である請求項2に記載の画像表示装置のキャリブレーション装置。
【請求項4】
前記キャリブレーション手段は、表示輝度の測定を行わない階調について、表示輝度の測定を行った階調についてのキャリブレーションの結果に基づく補間によりキャリブレーションを行う請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像表示装置のキャリブレーション装置。
【請求項5】
前記画像表示装置に入力されている画像データの階調の頻度分布の情報を取得する統計量取得手段を備え、
前記統計量取得手段により取得される階調の頻度分布において頻度の高い順に選択される一又は複数の階調の少なくともいずれかの階調において、その階調に対応する測色用画像を前記画像表示装置に表示させたときの表示輝度の測定値とその階調に対応する表示輝度の目標値との差が閾値以上である場合、前記キャリブレーション手段は、前記画像表示装置のキャリブレーションを実行する請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像表示装置のキャリブレーション装置。
【請求項6】
画像表示装置のキャリブレーションを行うキャリブレーション装置の制御方法であって、
前記画像表示装置に現在までに入力された複数の画像データの階調の頻度分布の履歴に関する情報を取得する履歴取得工程と、
前記画像表示装置で表示可能な全階調数より少ない複数の階調の各々について、各階調に対応する測色用画像を前記画像表示装置に表示させたときの表示輝度を測定し、当該表示輝度の測定値と各階調に対応する表示輝度の目標値との差に基づいて前記画像表示装置のキャリブレーションを行うキャリブレーション工程と、
前記画像表示装置で表示可能な全階調のうちから、前記履歴取得工程により取得される階調の頻度分布の履歴において出現頻度の高い順に選択される所定数の階調を少なくとも含む複数の階調を、前記キャリブレーション工程が表示輝度の測定を行う階調として選択する選択工程と、
を備える画像表示装置のキャリブレーション装置の制御方法。
【請求項7】
画像表示装置と、前記画像表示装置のキャリブレーションを行うキャリブレーション装置と、からなる画像表示システムであって、
前記画像表示装置は、
現在までに入力された複数の画像データの階調の頻度分布の履歴を記憶する記憶手段と、
入力される画像データに対し画像処理を行う画像処理手段と、
前記画像処理手段により画像処理が行われた画像データに基づく画像を表示する表示手段と、
前記キャリブレーション装置から前記画像処理のキャリブレーションを行うためのデータを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得されるデータを用いて前記画像処理のキャリブレーションを行うキャリブレーション手段と、
を備え、
前記キャリブレーション装置は、
前記画像表示装置から前記頻度分布の履歴を取得する履歴取得手段と、
前記画像表示装置で表示可能な全階調数より少ない複数の階調の各々について、各階調に対応する測色用画像を前記画像表示装置に表示させたときの表示輝度を測定し、当該表示輝度の測定値と各階調に対応する表示輝度の目標値との差に基づいて前記画像処理のキャリブレーションを行うためのデータを生成する生成手段と、
前記生成手段が生成した前記データを前記画像表示装置に送信する送信手段と、
前記画像表示装置で表示可能な全階調のうちから、前記履歴取得手段により取得される階調の頻度分布の履歴において出現頻度の高い順に選択される所定数の階調を少なくとも含む複数の階調を、前記生成手段が表示輝度の測定を行う階調として選択する選択手段と、
を備えることを特徴とする画像表示システム。
【請求項8】
現在までに入力された複数の画像データの階調の頻度分布の履歴を記憶する記憶手段と、
入力される画像データに対し画像処理を行う画像処理手段と、
前記画像処理手段により画像処理が行われた画像データに基づく画像を表示する表示手段と、
前記表示手段で表示可能な全階調数より少ない複数の階調の各々について、各階調に対応する測色用画像を前記表示手段に表示させたときの表示輝度を測定し、当該表示輝度の測定値と各階調に対応する表示輝度の目標値との差に基づいて前記画像処理手段のキャリブレーションを行うキャリブレーション手段と、
前記表示手段で表示可能な全階調のうちから、前記記憶手段に記憶される階調の頻度分布の履歴において出現頻度の高い順に選択される所定数の階調を少なくとも含む複数の階調を、前記キャリブレーション手段が表示輝度の測定を行う階調として選択する選択手段と、
を備えることを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−98867(P2013−98867A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241593(P2011−241593)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】