説明

画像表示装置用衝撃吸収材、及び画像表示装置用複合フィルタ

【課題】 PDP前面ガラス板などが外力で割れるのを防ぐ耐衝撃層として、ポリエーテル樹脂層を重ねた多層積層構造にしても、樹脂層の耐湿熱時層間接着力が良い画像表示装置用衝撃吸収材と、更にこれとフィルタ機能とを複合化させた画像表示装置用複合フィルタを提供する。
【解決手段】 画像表示装置用衝撃吸収材10は、ポリエーテル樹脂層1aとポリエーテル樹脂層1bとから構成されるポリエーテル樹脂層1で耐衝撃層3とする。その際、間にポリエステル樹脂シート2を介在させた3層サンドイッチ構造とする。なお、ポリエーテル樹脂層の粘着面はセパレータ4を設け使用時まで一時的に保護しておくと良い。また、粘着剤層、表面保護シートなどがあってもよい。画像表示装置用複合フィルタは構成層として少なくとも、この画像表示装置用衝撃吸収材とフィルタ機能層(電磁波遮蔽層や近赤外線吸収層など)とを含むものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像表示装置(ディスプレイ)の前面に配置しその破壊強度を向上させるのに好適な、画像表示装置用衝撃吸収材と、それを用いた画像表示装置用複合フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の電子機器の画像表示装置として、CRT(ブラウン管、陰極線管)、LCD(液晶ディスプレイ)、PDP(プラズマディスプレイパネル)、有機・無機ELディスプレイ、FED(フィールドエミッションディスプレイ)等の、画像表示装置が使用されている。
例えば、広い視野角をもち、表示品質がよく、薄型で大画面化ができるなどの特徴をもつPDPは、各種マルチメディアディスプレイ機器などに急速にその用途を拡大している。
【0003】
また、PDPなどの画像表示装置は前面のガラス板が外部衝撃力で破損し割れることを防ぐ為に、アクリル系粘着剤層などを用いた透明な耐衝撃層を有する衝撃吸収材を、前面ガラス板に直接貼り付けるなどの対策が提案されている(特許文献1)。耐衝撃層としてアクリル系粘着剤層を用いた衝撃吸収材は、画像表示装置側とする面に該粘着剤層を設ければ、該粘着剤層の粘着力を利用して、直接に画像表示装置の前面ガラスに貼り付けることができる。
【0004】
【特許文献1】特開2002−341776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1中にて開示されるような、耐衝撃層としてアクリル系粘着剤層などを用いた衝撃吸収材では、衝撃吸収性能の観点から、耐衝撃層の厚みは500μm以上、好ましくは1000μm以上と厚い層が要求される。
ところが、耐衝撃層の厚みが厚過ぎると、材料費が高価となる上、シート状の衝撃吸収材のフレキシビリティが低下して加工・取扱性が損なわれる、という問題がある。
したがって、耐衝撃層の厚みが500μmよりも薄い衝撃吸収材が望まれていた。
【0006】
一方、本願発明者らが各種試作、検討したところ、耐衝撃層にポリエーテル樹脂の樹脂層を使用すれば、耐衝撃層は厚み350μmでも十分な衝撃吸収性能が得られる反面、このポリエーテル樹脂層は製膜技術上の関係で、単層の厚みは最大175μmが限度なので、この175μm厚の単層のポリエーテル樹脂層を2層積層すれば、これら2層の厚みを合計した総厚として350μmを実現でき、衝撃吸収性能は確保できる。しかし、衝撃吸収性能は確保されても、このポリエーテル樹脂層は樹脂層同士の耐湿熱時の層間接着力に乏しく、耐湿熱環境下(60℃×90%RH×72hr)で層間の剥離(気泡発生)が生じるという問題を見出した。
【0007】
すなわち、本発明の課題は、厚みが500μmよりも薄い耐衝撃層として、ポリエーテル樹脂層を複層積層構造にしても、耐湿熱時の層間接着力に問題が生じない、衝撃吸収材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明では、画像表示装置用衝撃吸収材、及び、画像表示装置用複合フィルタを以下の様な構成とした。
【0009】
(1)ポリエーテル樹脂層、ポリエステル樹脂シート、ポリエーテル樹脂層がこの順に積層された画像表示装置用衝撃吸収材。
【0010】
(2)上記(1)の画像表示装置用衝撃吸収材と、フィルタ機能層とを構成層として含む、画像表示装置用複合フィルタ。
【発明の効果】
【0011】
(1)本発明の画像表示装置用衝撃吸収材によれば、単層での厚い層形成や、厚みを稼ぐために層同士を複層積層時の層同士の接着性に難点があったポリエーテル樹脂層でも、間にポリエステル樹脂シートを介在させることで、これらの難点を解消して、ポリエーテル樹脂層の総厚が350μmなど500μm未満の薄い耐衝撃層でも、衝撃吸収性能が得られる画像表示装置用衝撃吸収材となる。また、総厚が厚くならないので、厚み増によるコスト増を抑え、フレキシビリティで加工性・取扱性が良いものとなる。
(2)本発明の画像表示装置用複合フィルタによれば、上記画像表示装置用衝撃吸収材による効果を備えたフィルタとなり、コスト増を抑え、製造時の加工・取扱性を容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明について、実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0013】
<1.画像表示装置用衝撃吸収材>
図1は、本発明による画像表示装置用衝撃吸収材を、その一形態で例示する断面図であり、同図では、ポリエーテル樹脂層1としてポリエーテル樹脂層1aとポリエーテル樹脂層1bとが、ポリエステル樹脂シート2の表裏両面に積層された積層構造を有し、第1のポリエーテル樹脂層1aと第2のポリエーテル樹脂層1bとから耐衝撃層3が構成された、画像表示装置用衝撃吸収材10である。
なお、同図ではポリエーテル樹脂層1a及び1bは表面を各々セパレータ4で一時的に保護している形態を描いてあるが、永続的に積層しておく保護シートを積層する場合など、セパレータ4は不要ならば省略できる。
【0014】
〔耐衝撃層、ポリエーテル樹脂層〕
耐衝撃層3は、二つのポリエーテル樹脂層1(1a及び1b)とから構成される。ポリエーテル樹脂層1aとポリエーテル樹脂層1bは、これら2層を積層した複層積層構造とする際に、これらと接着性が良いポリエステル樹脂シート2を間に介して積層した積層構造にしてあり、この積層構造を3層サンドイッチ構造と呼ぶことにする。この様な3層サンドイッチ構造の採用によって、ポリエーテル樹脂層の合計厚み(総厚)が500μmよりも薄い厚みでも衝撃吸収性能は良いが、耐湿熱時層間接着力に難点があった問題を解決し、500μmよりも薄い厚みの耐衝撃層でも衝撃吸収性能と、耐湿熱時層間接着力とを両立できる。
なお、ここで総厚とは間に介在するポリエステル樹脂シート2の厚みは含まない、専ら衝撃吸収を担うポリエーテル樹脂層1(1aと1b)の厚みである。
また、耐衝撃層3にはポリエステル樹脂シート2は含ませない。
【0015】
ポリエーテル樹脂層1はポリエーテル樹脂を含む透明な樹脂層である。ポリエーテル樹脂はエーテル結合を含む樹脂である。また、ポリエーテル樹脂はエーテル結合を含み例えば、ポリエーテル樹脂系粘着剤などが挙げられる。
また、ポリエーテル樹脂層は架橋剤を添加することにより、その貯蔵弾性率を調整でき、衝撃吸収性能を調整してもよい。架橋剤が添加されたポリエーテル樹脂層はポリエーテル樹脂架橋物を含む。なお、架橋剤としては、ポリエーテル樹脂層を架橋できるものであれば良く、公知のものが使用できる。
【0016】
また、ポリエーテル樹脂層はポリエステル樹脂シート2の上下両面の二つのポリエーテル樹脂層1a及び1bの厚みを合計した総厚が500μm未満の薄い厚み、例えば350μmであっても、衝撃吸収性能を維持できる。二つのポリエーテル樹脂層1a及び1bの各々の単層の厚みは、先に述べたように175μmが製膜技術上の限度であり、また、逆に薄すぎても総厚の厚さが薄くなり、衝撃吸収性能の低下につながる。また、ロールとしての巻き取り易さのなどの観点からは、単層の厚みは100μm以上がよい。したがって、ポリエーテル樹脂層1a及び1bの各単層の厚みは好ましくは、100〜175μmである。
なお、上記製膜技術的上限が増加するならば、単層での厚みに175μmを超える厚みを排除するものではないが、仮に上限250μmとすれば、アクリル系粘着剤層等の耐衝撃層では性能不足となった領域、厚み500μmよりも薄い領域が、2層のポリエーテル樹脂層で可能となる。
なお、3層のポリエーテル樹脂層を各々の樹脂層間にポリエステル樹脂シートを介在させて(合計二つのポリエステル樹脂シートを用いる)、耐衝撃層の厚みを稼いだ複層積層構造も考えられるが、2層のポリエーテル樹脂層による場合に対して、製造も煩雑で、コスト高となる。
【0017】
ところで、ポリエーテル樹脂層はその表面が通常の粘着剤層ほどではないが弱粘着性を呈すると、弱い粘着性であっても取扱い中に不本意に他の物に貼り付いてしまうことがある。そこで、この様な場合には、粘着性の表面は使用時まで一時的に保護することが望ましい。例えば、ポリエーテル樹脂層を製膜し最終的な上記積層構造とする際に、セパレータの使用など、一般的な粘着剤層に対する公知の粘着面保護技術を適宜採用すれば良い。
【0018】
〔ポリエステル樹脂シート〕
ポリエステル樹脂シート2は、ポリエーテル樹脂層1a及び1bの層間に設ける透明な樹脂シートである。この樹脂シートにポリエステル樹脂シートを用いることで、ポリエステル樹脂シートとポリエーテル樹脂層との層間の耐湿熱時層間接着力が、ポリエーテル樹脂層とポリエーテル樹脂層との層間(つまりポリエーテル樹脂層同士)の耐湿熱時層間接着力よりも大きくなる。
【0019】
このような、ポリエステル樹脂シート2としては、機械的強度、透明性、耐熱性、耐光性等の物性を考慮して、公知のシートを適宜用いればよい。ポリエステル樹脂シートのポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、エチレングリコール−1,4シクロヘキサンジメタノール−テレフタール酸共重合体、エチレングリコール−テレフタール酸−イソフタール酸共重合体、ポリエステル系熱可塑性エラストマーなどである。尚、ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントに高結晶性で高融点の芳香族ポリエステル、ソフトセグメントにはガラス転移温度が−70℃以下の非晶性ポリエーテルを使用したブロック共重合体である。前記高結晶性で高融点の芳香族ポリエステルには、例えばポリブチレンテレフタレートが使用され、上記非晶性ポリエーテルには、例えばポリテトラメチレンエーテルグリコールが使用される。なかでも、機械的強度、透明性、平滑性、コスト等の点で、ポリエチレンテレフタレートが代表的であり、それも2軸延伸シートが代表的である。又、当然ではあるが、本願発明の衝撃吸収材は画像表示装置用に用いる為、これらポリエステル樹脂シートは無色透明或は着色透明のものを選択する。
ポリエステル樹脂シートの厚みは、衝撃吸収材として、耐衝撃層などを含めた厚みが厚くなるのを防ぎ、且つ機械的強度や、巻取り易さなど加工・取扱性を維持する観点から、12〜200μm、より好ましくは50〜188μm、更に好ましくは75〜125μmが望ましい。
【0020】
また、ポリエステル樹脂シート中には、必要に応じて適宜、公知の各種添加剤、例えば、紫外線吸収剤、色素、充填剤、可塑剤、帯電防止剤などを添加しても良い。
また、ポリエステル樹脂シートは、その表面に適宜、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム(flame火炎)処理、プライマー処理などの公知の易接着処理を行ってもよい。
【0021】
〔その他の層〕
また、本発明の画像表示装置用衝撃吸収材は、セパレータ、粘着剤層、表面保護シートなどの、画像表示装置用複合フィルタとして後述するフィルタ機能を担うフィルタ機能層以外の層が積層されている構成でも良い。フィルタ機能層以外の層とするのは、フィルタ機能層が積層されている画像表示装置用衝撃吸収材の場合は、画像表示装置用複合フィルタと言えるから、後述する画像表示装置用複合フィルタとして取り扱う。
なお、前記ポリエステル樹脂シートは添加剤として色素を含有させて各種フィルタ機能層とすることもできる。この場合、色素含有のポリエステル樹脂シートを用いた画像表示装置用衝撃吸収材は、もはや画像表示装置用衝撃吸収材とは言わずに、色素によるフィルタ機能によって、画像表示装置用複合フィルタとなる。
【0022】
(セパレータ)
セパレータ4は、前記ポリエーテル樹脂層や上記粘着剤層の粘着面を一時的に保護する必要がある場合に、その粘着面に積層する再剥離可能なシートである。セパレータとしては、粘着剤層に対する従来公知のものを適宜使用すればよい。
例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂の樹脂シートの少なくとも片面が離型処理されたシートである。樹脂シートはポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂の2軸延伸シートは代表的であり、機械的強度、透明性、平滑性、コスト等の点で好ましい。離型処理はシリコーン処理などである。
また、セパレータは、画像表示装置用衝撃吸収材を適用後は除去するものであるから、適用後の画像表示装置用衝撃吸収材の厚みには影響しないので、セパレータの厚みは特に制限はなく、加工性、コストなどの観点から適宜厚みとすればよい。
【0023】
(粘着剤層)
ポリエーテル樹脂層自体の粘着性を利用して、PDP前面ガラス板などの画像表示装置前面板、表面保護シートなどの、その他の物や層と積層しても良いが、該粘着性では粘着力が不足する場合には、ポリエーテル樹脂層とは別に粘着剤層を設けて、この粘着剤層で積層しても良い。この場合、粘着剤層はポリエーテル樹脂層に直接積層しても良いが、透明樹脂シートなどに積層したものを該透明樹脂シートを介して積層してもよい。
粘着剤としては、粘着力、透明性、無着色性、塗工適性などを考慮して、公知の粘着剤の中から適宜選定すれば良い。例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリエステル系粘着剤などから選定することができ、なかでも、アクリル系粘着剤は、粘着力、透明性、無着色性の点で好ましい粘着剤である。
粘着剤層の厚みは、特に制限はないが、製膜や積層時の加工性の点では20〜40μmが好ましい。
【0024】
(表面保護シート)
表面保護シートは、画像表示装置用衝撃吸収材を、画像表示装置の前面に積層後、ポリエーテル樹脂層の面が露出面となる様な使用法となる場合に、このポリエーテル樹脂層面を外力による傷付きなどから保護するために積層しておくと良い。
表面保護シートには樹脂シートが使用でき、例えば、前記ポリエステル樹脂シートの他、アクリル樹脂シート、ポリカーボネートシート等の透明な樹脂シートが使用できる。表面保護シートの積層はポリエーテル樹脂層面の粘着性を利用して貼り合わせても良い。
なお、この表面保護シートに色素を添加するなど、後述するフィルタ機能層を持たせることもできるが、この場合は、フィルタ機能も有するので本発明では画像表示装置用複合フィルタと呼ぶ。
【0025】
また、表面保護シートには表面強度向上の為にハードコート層を設けることがある。ハードコート層には、紫外線や電子線で硬化させたアクリル樹脂などの公知の各種ハードコート層などを用いればよい。
【0026】
<2.画像表示装置用複合フィルタ>
本発明による画像表示装置用複合フィルタは、少なくとも上記した画像表示装置用衝撃吸収材とフィルタ機能層とを構成層として含み、衝撃吸収機能とフィルタ機能とを複合化させた、画像表示装置用の複合フィルタである。
図2は、本発明による画像表示装置用複合フィルタ20を、その一形態で例示する断面図であり、同図では、上記した画像表示装置用衝撃吸収材10に、更にフィルタ機能を担うフィルタ機能層5が積層された画像表示装置用複合フィルタ20である。また、同図に例示の画像表示装置用複合フィルタ20は、フィルタ機能層5を画像表示装置用衝撃吸収材10の片面(図面上方の面)に積層した形態例だが、両面に積層した形態でもよい。
【0027】
〔フィルタ機能層〕
フィルタ機能層5としては、電磁波遮蔽層、近赤外線吸収層、PDPから放出されるネオン光を吸収するネオン光吸収層、色補正層、紫外線吸収層、反射防止層、防眩層などである。これらは、例えば、電磁波遮蔽フィルム、近赤外線吸収フィルムなどとして積層できる。
また、フィルタ機能層としては、光の進行方向をコントロールするミクロルーバーフィルム(特公平8−11211号公報、特表2004−514167号公報等参照)等でもよい。
また、これら各フィルタ機能層には公知のフィルタ機能層を適宜使用すれば良い。
【0028】
(光フィルタ層)
例えば、光に対するフィルタ機能層として、近赤外線吸収層、ネオン光吸収層、色補正層、紫外線吸収層などの光吸収層(光フィルタ層)は、これらに応じた色素を樹脂中に添加した色素含有層として形成できる。例えば、近赤外線吸収色素、ネオン光吸収色素、色補正色素、紫外線吸収色素(紫外線吸収剤)を添加すれば良い。色素や樹脂は公知の樹脂を適宜選択できる。
なお、色素は複数使用して1種以上のフィルタ機能を同一の色素含有層に持たせてもよいし、多層積層した色素含有層で複数のフィルタ機能を担ってもよい。また、粘着剤層やハードコート層に色素を添加してフィルタ機能層と兼用させてもよい。
【0029】
また、光に対するフィルタ機能層としては、反射防止層、防眩層も挙げられる。これらは公知のものを適宜使用すればよく、例えば、反射防止フィルム、防眩フィルム、反射防止兼防眩フィルムなどを使用できる。
【0030】
なお、これらのフィルタ機能層は、通常、透明基材シートに光吸収層など各種機能実現層を積層した積層構造や、透明基材シート自体を色素添加で光吸収層と兼用するなど単層構造のものなどがある。
【0031】
また、前記色素添加による色素含有層でも述べたとおり、これらフィルタ機能層は単層又は多層でよく、1つのフィルタ機能層に複数のフィルタ機能を持たせても良い。また、フィルタ機能層を多層積層する場合や他の層と積層する場合、間に粘着剤層、接着剤層などを介しても良い。これら粘着剤層、接着剤層は公知のものを使用でき、例えば、粘着剤層には前記アクリル系粘着剤、接着剤層にはウレタン樹脂系接着剤など使用できる。
例えば、フィルタ機能層として反射防止機能と近赤外線吸収機能を持たせる場合、これらを兼用させた反射防止兼近赤外線吸収フィルムを、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの上面に反射防止層が形成され、下面に近赤外線吸収層が形成された構成とする。あるいは、近赤外線吸収層が形成されたPETフィルムの上に、反射防止層が形成されたPETフィルムを貼着した構成としてもよい。なお、反射防止兼近赤外線吸収フィルムを、反射防止機能のみ備える反射防止フィルムに対して更に付加する粘着剤層に近赤外線吸収機能を持たせた構成としてもよい。或いはこの様な兼用フィルムとせずに、他の層間に近赤外線吸収フィルムを別に設けるようにしてもよい。
【0032】
(電磁波遮蔽層)
電磁波遮蔽層はPDPなどの画像表示装置から放出される電磁波を遮蔽しフィルタするフィルタ機能層である。電磁波遮蔽層には公知の層を利用できる。通常、電磁波遮蔽層としては、導電体メッシュ層とこれを支持する透明基材シートからなる。
導電体メッシュ層は、例えば、銅箔をエッチングでメッシュ状にしたものなど、銅、アルミニウム等の金属をエッチング法、印刷法、フォトリソグラフィ法などを利用して、メッシュ状としたものなどが用いられる。導電体メッシュ層のメッシュの開口部の形状は例えば正方形である。また、導電体メッシュ層は防錆層や黒化層等を備えることができる。
また、透明基材シートには、前記ポリエステル樹脂シートなどの公知の透明な樹脂シートが用いられる。
なお、導電体メッシュ層は、画像表示装置の画像領域の外側周囲に接地用の接地領域を額縁状などで設け、通常、接地領域ではメッシュ開口部が存在しない部分を設ける。
【0033】
〔画像表示装置用複合フィルタの別形態例〕
図3は、画像表示装置用複合フィルタの別の形態例を示す断面図である。同図の画像表示装置用複合フィルタ20は、画像表示装置用衝撃吸収材10の図面で上方の観察者側とする上面に対して、フィルタ機能層5aとして電磁波遮蔽層を積層し、更にこの上面にフィルタ機能層5bとして反射防止層と近赤外線吸収層とを兼用する反射防止兼近赤外線吸収層を積層し、また、画像表示装置用衝撃吸収材10の図面で下方の画像表示装置側とする下面には、粘着剤層6を積層した構成のものである。
なお、フィルタ機能層5aとフィルタ機能層5bの間には、粘着剤層や接着剤層などが通常介在するが図示は省略してある。
【0034】
また、ミクロルーバーフィルムなどのフィルタ機能層を、例えば、図3に例示の画像表示装置用衝撃吸収材10の画像表示装置側とする下面の粘着剤層6と、画像表示装置用衝撃吸収材10との間に介在させてもよい。
【0035】
<3.層積層順序について>
なお、本発明による画像表示装置用複合フィルタ、また前記した画像表示装置用衝撃吸収材も含めて、それらの構成層の各層の積層順序は、もちろんのこと制限されるものではない。積層順序は、生産性、その他を考慮して適宜な順序で積層すれば良い。
例えば、画像表示装置用衝撃吸収材としての、〔ポリエーテル樹脂層1a/ポリエステル樹脂シート2/ポリエーテル樹脂層1b〕の複層積層構造(3層サンドイッチ構造)を含む積層体を形成し完成させておき、この積層体と保護シートやフィルタ機能層などの他層と積層する積層順序でも良いが、上記3層サンドイッチ構造は、最終的にこのような積層構造となる積層順序で良い。なお、〔 〕内の記号「/」はその記号前後の層が積層していることを表す。
【0036】
この点を、画像表示装置用複合フィルタの場合を例として更に説明すれば、画像表示装置用衝撃吸収材としての3層サンドイッチ構造を完成させておき、これと電磁波遮蔽層などフィルタ機能層Aと積層する積層順序でも良いが、
フィルタ機能層Aと〔ポリエーテル樹脂層1a/ポリエステル樹脂シート2〕とを積層して、〔フィルタ機能層A/ポリエーテル樹脂層1a/ポリエステル樹脂シート2〕の積層体Aを形成し、次に、この積層体Aに〔ポリエーテル樹脂層1b〕を積層し、
〔フィルタ機能層A/ポリエーテル樹脂層1a/ポリエステル樹脂シート2/ポリエーテル樹脂層1b〕としても良い。
また、ポリエーテル樹脂層1bは、前記フィルタ機能層Aとは異なるフィルタ機能層Bと積層して〔ポリエーテル樹脂層1b/フィルタ機能層B〕の積層体Bを形成しておき、この積層体Bと前記積層体Aとを積層することで、
〔フィルタ機能層A/ポリエーテル樹脂層1a/ポリエステル樹脂シート2/ポリエーテル樹脂層1b/フィルタ機能層B〕としても良い。
【0037】
また、画像表示装置の前面板などの最終的な被着体に積層された状態で、上記3層サンドイッチ構造となる様な積層順序でよい。
また、本発明による、画像表示装置用衝撃吸収材と画像表示装置用複合フィルタは、PDP等の画像表示装置に、間に空間を空けずに、直接貼付できるタイプのものである。
【実施例】
【0038】
以下、実施例と比較例により、本発明を更に具体的に詳述する。
【0039】
[実施例1]
実施例1では、図1で例示のような、耐衝撃層3とする合計厚み350μmのポリエーテル樹脂層1として、ポリエーテル樹脂層1aとポリエーテル樹脂層1bとの2層を有し、これらポリエーテル樹脂層1a及び1bでポリエステル樹脂シート2を挟んだ構造の、〔ポリエーテル樹脂層1a/ポリエステル樹脂シート2/ポリエーテル樹脂層1b〕の3層サンドイッチ構造を有する、画像表示装置用衝撃吸収材10とした。また、両ポリエーテル樹脂層1a及び1bの表面はセパレータ4で保護されている。
【0040】
先ず、厚み175μmの表面が粘着性を有するポリエーテル樹脂層の上下の両面を、ポリエチレンテレフタレートシートの片面が離型処理され離型面となったセパレータ4で、該離型面側をポリエーテル樹脂層側に向けて保護した、両面セパ(以下、「セパレータ」を「セパ」とも略称する)付きポリエーテル樹脂シートを用意した。この両面セパ付きポリエーテル樹脂シートは、一方のセパレータの該離型面に架橋剤が添加されポリエーテル樹脂架橋物となったポリエーテル樹脂層を形成した後、このポリエーテル樹脂層の面に上記と同じセパレータをその離型面で積層したものである。
【0041】
次に、この両面セパ付きポリエーテル樹脂シートの片方のセパレータを剥がし、露出したポリエーテル樹脂層面に、ポリエステル樹脂シート2として厚み100μmのポリエチレンテレフタレートシート(PETシート)を熱ラミネートして貼着した。
次に、貼着後のポリエステル樹脂シート2の面に、前記と同じ両面セパ付きポリエーテル樹脂シートを、その片方のセパレータを剥がして露出したポリエーテル樹脂層面で、熱ラミネートして貼着して、図1のような3層サンドイッチ構造を有する画像表示装置用衝撃吸収材10とした。
【0042】
[比較例1]
比較例1では、図5で例示のような、耐衝撃層31として、間にポリエステル樹脂シートを介在させない厚み350μmのアクリル系粘着剤層からなる画像表示装置用衝撃吸収材30aとした。耐衝撃層31の上下両面はセパレータ(不図示)で一時的に保護されている。
【0043】
[比較例2]
比較例2では、図6で例示のような、耐衝撃層32として、間にポリエステル樹脂シートを介在させない総厚350μmのポリエーテル樹脂層1(厚み175μmのポリエーテル樹脂層1aと1bとを間にポリエステル樹脂シートを介在させないで直接積層したもの)からなる画像表示装置用衝撃吸収材30bとした。この耐衝撃層の上下両面はセパレータ(不図示)で一時的に保護されている。
【0044】
[性能評価]
衝撃吸収性能(衝撃吸収率)と、耐湿熱時の層間接着力を次のように評価した。
【0045】
(1)衝撃吸収性能
耐衝撃性として衝撃吸収性能を下記定義に基づく衝撃吸収率で評価した。
この衝撃吸収率は、剛球を試験片上に落下させて衝撃力を付与する落球式衝撃試験法によって、最大衝撃力(最大衝撃荷重)を測定し、耐衝撃層がない場合の最大衝撃力I0を基準値(ブランク)として、耐衝撃層がある場合の最大衝撃力をIとして、下記の式により定義した。衝撃吸収率Rが大きい程、耐衝撃性、乃至は衝撃吸収性能が良いことを意味する。例えば、最大衝撃力がブランクで100であったものが測定試料で80に減ったら、衝撃吸収率Rは20%となる。
【0046】
衝撃吸収率R〔%〕={(I0−I)/I0}×100
【0047】
落球式衝撃試験法は、図4の概念的説明図のよう、フォースセンサ41(ロードセルとも言う)の水平な上面に載せた測定試料片42の上部水平面に対して、その上方に20cmの空間を空けて、電磁石44に保持した直径50.8mmで質量534gの鉄球43を、電磁石の保持を解除することで垂直に落下させ、フォースセンサに加わった衝撃力(圧縮荷重)の時間変化を計測して、最大衝撃力〔N〕を測定した。
【0048】
なお、基準となる耐衝撃層がない場合のブランクの最大衝撃力I0は、フォースセンサの水平な上面に、何も載せないで直接に鉄球を落下させたときに測定される最大衝撃力である。
また、各測定値は3回測定の平均値として求めた。また、ブランクの最大衝撃力I0は21473Nであった。
【0049】
(2)耐湿熱時の層間接着力
耐湿熱環境下(雰囲気温度60℃×相対湿度90%RH×72hr)に放置後、耐衝撃層とする樹脂層の間で剥離(気泡発生)が生じるか否かで評価した。
【0050】
[評価結果]
表1に示すとおり、実施例1は間にポリエステル樹脂シート(PETシート)を介在させてある為、衝撃吸収率Rが48.7%と満足する衝撃吸収性能が得られ、且つ、耐湿熱時の層間接着力も気泡発生は無く良好であった。
【0051】
最大衝撃力が12000N(3回測定の平均)を下回るならば、耐衝撃性は良好とみなせる。また、最大衝撃力12000Nに該当する衝撃吸収率Rは、ブランクの最大衝撃力I0=21473Nであるから、衝撃吸収率R={(21473−12000)/21473}×100=44.1%である。つまり、衝撃吸収率Rで評価すると、耐衝撃性が良好とみなせるのは、衝撃吸収率Rが44.1%超過ということである。
なお、最大衝撃力12000N未満で良好という条件のもと、衝撃吸収率R44.1%超過ということであるが、耐衝撃性の条件が緩和し上限値12000Nが低下するならば、衝撃吸収率Rは44.1%よりも低い値でも良いことになる。
【0052】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明による画像表示装置用衝撃吸収材の一形態を例示する断面図。
【図2】本発明による画像表示装置用複合フィルタの一形態を例示する断面図。
【図3】本発明による画像表示装置用複合フィルタの別の形態を例示する断面図。
【図4】衝撃力の測定法(落球式)を概念的に説明する説明図。
【図5】比較例1の画像表示装置用衝撃吸収材を示す断面図。
【図6】比較例2の画像表示装置用衝撃吸収材を示す断面図。
【符号の説明】
【0054】
1、1a、1b ポリエーテル樹脂層
2 ポリエステル樹脂シート
3 耐衝撃層
4 セパレータ
5 フィルタ機能層
5a フィルタ機能層(電磁波遮蔽層)
5b フィルタ機能層(反射防止兼近赤外線吸収層)
6 粘着剤層
10 画像表示装置用衝撃吸収材
20 画像表示装置用複合フィルタ
30a 比較例1の画像表示装置用衝撃吸収材
30b 比較例2の画像表示装置用衝撃吸収材
31 耐衝撃層
32 耐衝撃層
41 フォースセンサ(ロードセル)
42 測定試料
43 鉄球
44 電磁石


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエーテル樹脂層、ポリエステル樹脂シート、ポリエーテル樹脂層がこの順に積層された画像表示装置用衝撃吸収材。
【請求項2】
請求項1記載の画像表示装置用衝撃吸収材と、フィルタ機能層とを構成層として含む、画像表示装置用複合フィルタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−78733(P2010−78733A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245078(P2008−245078)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】