説明

画像表示装置

【課題】本発明は、画像の欠けを防止することの可能な画像表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の画像表示装置は、二次元表示素子と、その二次元表示素子の表示画面の虚像を形成する接眼光学系とからなる表示部(11)と、前記二次元表示素子の表示画面上に画像を表示するための回路部と、前記虚像の形成位置が観察者の眼(2)の略前方となるよう前記表示部(11)をその観察者の頭部に装着可能な装着手段と、前記眼と前記表示部との位置関係を前記観察者に入力させる位置入力手段(35)とを備え、前記回路部は、前記位置入力手段を介して入力された位置関係に応じて、前記表示画面上の前記画像の表示倍率を変更することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)など、観察者の頭部に装着可能であり、かつ観察者の眼の前方に画像を虚像として表示する画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
HMDには、観察者の眼の前方に画像を虚像として表示する表示部、及びその表示部を観察者の頭部に装着するための装着具が備えられる(特許文献1など)。HMDによれば、観察者はハンドフリーの状態で画像を観察することができる。
このHMDの表示部内の光学設計は予め決められた位置(アイポイント)に観察者の眼が配置されることを前提に行われるので、観察者は、装着具を利用して眼とそのアイポイントとを一致させることにより、画像を良好に観察することが可能である。
【特許文献1】特開平8−320453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、実際の使用時には、観察者の眼は必ずしもアイポイントに配置されない。
例えば、眼鏡を使用している観察者は、眼と表示部との間に眼鏡のレンズを配置しなければならないので、眼の位置は必然的にアイポイントよりも手前になる。
また、観察者がHMDを装着したまま移動するときなどには、眼をアイポイントからわざとずらし、外界を見ながらHMDの画像を観察することもある。
【0004】
このようにアイポイントから眼を外して使用するときには、画像の周辺が欠けることを許容せざるを得なかった。
そこで本発明は、画像の欠けを防止することの可能な画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の画像表示装置は、二次元表示素子と、その二次元表示素子の表示画面の虚像を形成する接眼光学系とからなる表示部と、前記二次元表示素子の表示画面上に画像を表示するための回路部と、前記虚像の形成位置が観察者の眼の略前方となるよう前記表示部をその観察者の頭部に装着可能な装着手段と、前記眼と前記表示部との位置関係を前記観察者に入力させる位置入力手段とを備え、前記回路部は、前記位置入力手段を介して入力された位置関係に応じて、前記表示画面上の前記画像の表示倍率を変更することを特徴とする。
【0006】
なお、前記装着手段には、前記観察者の眼と前記表示部との位置関係を調整するための調整機構が設けられることが望ましい。
また、前記画像表示装置は、前記入力された位置関係に応じて前記調整機構を駆動し、前記眼と前記表示部との位置関係を制御する位置制御手段を更に備えてもよい。
また、前記画像表示装置は、前記観察者の眼と前記表示部との位置関係を測定する測定手段と、前記測定された位置関係が、前記入力された位置関係と異なるときには、前記観察者に対し警告をする警告手段とを更に備えてもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、画像の欠けを防止することの可能な画像表示装置が実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
[第1実施形態]
以下、図1,図2,図3を参照して本発明の第1実施形態を説明する。
本実施形態は、HMDの実施形態である。
図1は、本実施形態のHMD10の外観図である。
【0009】
図2は、HMD10の構成図である。
HMD10には、表示部11、回路部13、装着具12が備えられる。なお、回路部13は、表示部11に固定されていても、装着具12の何れかの箇所に固定されていても、またHMD10の本体とは別体に用意されてもよい(図1では、不図示)。
表示部11には、二次元表示素子(以下、液晶表示素子とし、「LCD」と略称する。)11aと接眼光学系11bとが備えられる。
【0010】
回路部13は、LCD11aの表示画面E上に画像Iを表示するための回路である。
回路部13には、制御回路13a、アナログ処理回路13c、A/D変換回路13d、フレームメモリ13e、13f、画像処理回路13gなどが備えられる。
外部から回路部13に入力される画像信号(動画像信号、又は静止画像信号である。)は、アナログ処理回路13c、A/D変換回路13dを介してフレームメモリ13eに入力される。
【0011】
フレームメモリ13eに入力された画像信号は、画像処理回路13gにより画像処理された後、フレームメモリ13fを介して表示部11のLCD11aに送出される。
回路部13内のこれら一連の処理は、制御回路13aによって制御される。
表示部11内のLCD11aの表示画面E上には、回路部13から入力された画像信号に基づく画像Iが表示される。
【0012】
表示部11内の接眼光学系11bは、LCD11aの表示画面Eの虚像をLCD11aの背後に形成する。
すなわち、接眼光学系11bは、LCD11aの表示画面Eの各位置から射出する光束をそれぞれ平行光束に近づけて所定の位置(アイポイントE.P.)に導く。
装着具12は、観察者の眼2の瞳の位置にアイポイントE.P.が位置するよう、その表示部11を観察者の頭部に装着可能な構造を有している。
【0013】
眼2の瞳の位置にアイポイントE.P.が配置された状態では、観察者にはLCD11aの表示画面Eが実際よりも遠方にあるように見える。
ところで、本実施形態において、回路部13内の画像処理回路13gによる画像処理には、階調変換処理などの一般の処理の他、LCD11aの表示画面Eにおける画像Iの表示倍率Sを変更する処理も含まれる。
【0014】
表示倍率Sの値は、制御回路13aが画像処理回路13gに対し指示することにより適宜設定される。
図3は、本実施形態のHMD10の動作を説明する図である。
図3(a)は、アイポイントE.P.に眼2の瞳が配置された状態を示し、図3(b)(c)は、アイポイントE.P.よりも遠くに眼2が配置された状態を示す。
【0015】
図3(b)は、従来のHMDの表示部101、図3(c)は、本実施形態のHMD10の表示部11を示している。
図3(b)に示すように、従来のHMDでは、アイポイントE.Pよりも遠くに瞳が配置されていると、画像Iの周辺から射出した光束が瞳に入射できず、観察者の眼2から見て画像Iの周辺は欠けていた。
【0016】
一方、本実施形態のHMD10では、画像Iの表示倍率Sが可変であるので、アイポイントE.P.より遠くに眼2が配置されていても、図3(c)に示すように表示倍率Sが小さく設定されれば、画像Iの周辺から射出した光束をも瞳に入射させることができるので、画像Iの欠けを防止できる。
つまり、本実施形態のHMD10によれば、観察者の顔又は眼2と表示部11との距離のずれによる画像Iの欠けを防止することができる。
【0017】
また、これによって、眼2に対する表示部11の位置関係の自由度は、増える。
そこで、本実施形態のHMD10においては、眼2に対する表示部11の位置関係を観察者が積極的に変更することができるよう、調整機構(図1符号16,17,18,19)が装着具12に設けられる。
図1に符号16,17で示したのは蝶番機構であり、図1に符号18,19で示したのはスライド機構である。
【0018】
例えば、装着具12は、観察者の左右の耳にそれぞれ装着される耳かけ式のヘッドホン12R、12Lと、左右のヘッドホン12R、12Lを連結するリアアーム12bと、リアアーム12bに連結されたディスプレイアーム12cからなる。表示部11は、ディスプレイアーム12cの先端部に固定される。
ディスプレイアーム12cは蝶番機構16,17によって矢印L1、L2の方向に折り曲げ可能である。
【0019】
ディスプレイアーム12cはスライド機構18,19によって矢印L3,L4の方向に伸縮可能である。
蝶番機構16,17、及びスライド機構18,19を利用すれば、観察者は眼2に対する表示部11の位置や角度を自在に変化させることができる。
また、蝶番機構16,17、及びスライド機構18,19を利用すれば、緊急時などにHMD10を装着したままの状態で表示部11のみを眼2の前から即座に外すこともできる。
【0020】
なお、蝶番機構16,17、スライド機構18,19のうち一部しか設けられていなくても、表示部11の位置や角度を或る程度の自由度で変化させることができる。
一方、蝶番機構やスライド機構の数を増やせば、さらに柔軟に位置関係を変化させることができる。
また、蝶番機構16,17の代わりにボールジョイント機構を利用することもできる。
【0021】
次に、表示部11の所定箇所から観察者の顔又は眼2までの距離Lと、画像Iの表示倍率Sの最適値(以下、「最適倍率」という。)との関係は、表示部11の光学設計データなどから予め求まる。
ここで、「最適倍率」とは、観察者の眼2が画像Iを欠けなく見ることのできる、つまり、画像Iの各位置からの射出光が観察者の眼2の瞳に十分に入射可能な最大の表示倍率である。
【0022】
さらに言えば、「最適倍率」とは、眼2が眼球運動してもその運動が所定範囲内であれば画像Iの各位置からの射出光が十分に瞳に入射可能な最大の表示倍率である。
そこで、本実施形態のHMD10には、以下のとおり自動制御の機能が付加される。
先ず、回路部13内の制御回路13aは、観察者の顔又は眼2との距離Lと最適倍率との関係を、数式又はルックアップテーブルなどとして予め記憶する。
【0023】
また、距離Lを測定する測距センサ(図1符号15)がHMD10に設けられる。
測距センサ15は、例えば、図1に示すように、表示部11において眼2に対向する位置から若干外れた位置に固定される。
この測距センサ15によれば、距離Lを示すデータが取得される。
取得されたデータは、図2に示すように回路部13に入力され、制御回路13aによって距離Lが認識される。
【0024】
そして、制御回路13aは、距離Lと予め記憶した関係とに基づいてその距離Lに対する最適倍率を求める。そして、求めた最適倍率を表示倍率Sとして画像処理回路13gに設定する。
以上、本実施形態のHMD10においては、表示部11と眼2との位置関係のずれに拘わらず、常に最適倍率(ここでは、画像Iが欠けない範囲の最大の表示倍率)で画像Iが表示される。
【0025】
なお、本実施形態において、予め用意された有限個の値の中で最適倍率に近いもの(近似倍率)が表示倍率Sとして設定されるよう、制御回路13aを動作させてもよい。
但し、表示倍率Sは、観察者の眼2が画像Iを欠けなく見ることのできるような値に設定されることが望ましいので、低い方の近似倍率が選択されることが望ましい。
[第2実施形態]
以下、図4、図5を参照して本発明の第2実施形態を説明する。
【0026】
本実施形態は、HMDの実施形態である。ここでは、第1実施形態のHMDとの相違点についてのみ説明し、その他の説明を省略する。
図4は、本実施形態のHMD20の外観図である。
図5は、HMD20の構成図である。
本実施形態のHMD20は、第1実施形態のHMD10において、測距センサ15に代えて位置センサ(エンコーダなど)25が備えられ、回路部13に代えて回路部23が備えられたものである。
【0027】
回路部23は、回路部13において制御回路13aに代えて制御回路23aが備えられたものである。
制御回路23aは、制御回路13aと同様、距離Lと最適倍率との関係を予め記憶する。
位置センサ25は、例えば、スライド機構18の近傍に設けられ、ディスプレイアーム12cの伸縮位置を示すデータを生成する。
【0028】
よって、この位置センサ25によれば、表示部11から眼2までの距離Lを示すデータが、間接的に取得される。
位置センサ25によれば、第1実施形態の測距センサ15ほど精度は高くはないものの、距離Lを測定することができる。
取得されたデータは、図5に示すように回路部23に入力され、制御回路23aによって距離Lが認識される。
【0029】
制御回路23aは、認識した距離Lと予め記憶した関係とに基づいて、その距離Lに対する最適倍率を求める。そして、求めた最適倍率を表示倍率Sとして画像処理回路13gに設定する。
以上、本実施形態のHMD20においても、表示部11と眼2との位置関係のずれに拘わらず、常に最適倍率(ここでは、画像Iが欠けない範囲の最大の表示倍率)で画像Iが表示される。
【0030】
なお、本実施形態では、スライド機構18の近傍にのみセンサ(位置センサ)を設けたが、蝶番機構16,蝶番機構17,スライド機構19の少なくとも1つの近傍にもセンサ(因みに、蝶番機構の回動角度を検出するセンサとしては、角度センサが用いられる。)を設け、距離Lの測定精度を向上させてもよい。
[第3実施形態]
以下、図6、図7を参照して本発明の第3実施形態を説明する。
【0031】
本実施形態は、HMDの実施形態である。ここでは、第1実施形態のHMDとの相違点についてのみ説明し、その他の説明を省略する。
図6は、本実施形態のHMD30の外観図である。
図7は、HMD30の構成図である。
本実施形態のHMD30は、第1実施形態のHMD10において、測距センサ15に代えて倍率設定ダイアル35が備えられ、回路部13に代えて回路部33が備えられたものである。
【0032】
回路部33は、回路部13において制御回路13aに代えて制御回路33aが備えられたものである。
倍率設定ダイアル35は、例えば、一方のヘッドホン(図6では、ヘッドホン12L)などに設けられる。
倍率設定ダイアル35は、ダイアル式のスイッチであり、観察者による回動操作に応じて信号を生成する。
【0033】
生成された信号は、図7に示すように回路部33に入力され、制御回路33aによってその操作内容が認識される。
制御回路33aは、倍率設定ダイアル35の操作内容に応じた値を表示倍率Sとして画像処理回路13gに設定する。
したがって、観察者は、倍率設定ダイアル35を操作するだけで、所望する表示倍率で画像Iを表示させることができる。
【0034】
よって、たとえ表示部11と眼2との位置関係がずれても、観察者が画像Iの全体が見えるように倍率設定ダイアル35を操作すれば、画像Iの欠けを無くすことができる。
また、本実施形態のHMD30においては、図7右下に示すように、設定中の表示倍率Sを示す文字情報(例えば「×0.6」など。)が画像Iと共にLCD11aの表示画面E上に表示されるよう制御回路33aを動作させてもよい。
【0035】
また、倍率設定ダイアル35に押しボタン式など他のタイプのスイッチを使用してもよいことは言うまでもない。
また、本実施形態では、入力手段として倍率設定ダイアル35が用いられ、観察者が表示倍率を指定できるかのごとく説明したが、観察者が入力できる情報を表示倍率変更の指示のみとしてもよい(その場合、入力手段として「倍率変更ダイアル」などが用いられる)。
(その他)
本実施形態のHMD30には、入力手段として倍率設定ダイアル35が用いられており、観察者が指定可能な情報が表示倍率(「○○倍」)であるかのごとく説明したが、観察者が指定可能な情報は、観察者の顔又は眼2と表示部11との距離(「○○cm」など)であってもよい。
【0036】
このように、日常的に使用される物理量である「距離」を指定可能にしておけば、観察者は入力手段の操作を直感的に行うことができる。
なお、この場合、入力手段として用いられるのは「表示距離設定ダイアル」となる。回路部33内の制御回路33aは、指定された距離に対する最適倍率を求め、その求めた最適倍率を表示倍率Sとして画像処理回路13gに設定すればよい。
【0037】
また、観察者が指定可能な情報は、調整機構(16,17,18,19)の少なくとも1つの状態(「ディスプレイアーム12cの伸縮位置+○○cm」など)であってもよい。
この場合、入力手段として用いられるのは「状態設定ダイアル」となる。回路部33内の制御回路33aは、指定された状態に対する最適倍率を求め、その求めた最適倍率を表示倍率Sとして画像処理回路13gに設定すればよい。
【0038】
また、観察者が指定する情報は、仮想表示サイズ(「○○cm先に○○インチで見える」など)であってもよい。
この場合、入力手段として用いられるのは「表示サイズ設定ダイアル」となる。回路部33内の制御回路33aは、指定された仮想表示サイズに対する最適倍率を求め、その求めた最適倍率を表示倍率Sとして画像処理回路13gに設定すればよい。
【0039】
なお、仮想表示サイズと最適倍率との関係は、表示部11の光学設計データなどから予め求まる。
[第4実施形態]
以下、図8、図9を参照して本発明の第4実施形態を説明する。
本実施形態は、HMDの実施形態である。ここでは、第1実施形態のHMDとの相違点についてのみ説明し、その他の説明を省略する。
【0040】
図8は、本実施形態のHMD40の外観図である。
図9は、HMD40の構成図である。
本実施形態のHMD40は、第1実施形態のHMD10において、オフセット釦45と倍率設定ダイアル35とが備えられ、回路部13に代えて回路部43が備えられたものである。
【0041】
回路部43は、回路部13において制御回路13aに代えて制御回路43aが備えられたものである。
倍率設定ダイアル35は、例えば、一方のヘッドホン(図8では、ヘッドホン12L)などに設けられる。
倍率設定ダイアル35は、ダイアル式のスイッチであり、観察者による回動操作に応じて信号を生成する。
【0042】
オフセット釦45は、例えば、一方のヘッドホン(図8では、ヘッドホン12L)などに設けられる。
オフセット釦45は、押しボタン式のスイッチであり、観察者により操作された時点で信号を生成する。
また、倍率設定ダイアル35に押しボタン式など他のタイプのスイッチを使用してもよい。
【0043】
なお、オフセット釦45と倍率設定ダイアル35との双方の機能を有した単一のスイッチ(ジョグダイアルなど)を使用してもよい。
これらの倍率設定ダイアル35、オフセット釦45において生成された信号は、図9に示すように回路部43に入力され、制御回路43aによってそれぞれ認識される。
以上の構成のHMD40では、不図示の電源がオンされると、制御回路43aは、倍率設定ダイアル35の操作に応じた値を表示倍率Sとして画像処理回路13gに設定する。表示画面Eには表示倍率Sで画像Iが表示される。
【0044】
HMD40を装着した観察者は、倍率設定ダイアル35を操作して表示倍率Sを調整したり、装着具12の各部を調整して表示部11の角度や位置を調整したりする。そして、快適に画像Iが視認できた(画像Iの全体が見え、かつ画像Iが十分に大きく表示されたと認識した)時点で、観察者はオフセット釦45を操作する。
制御回路43aは、オフセット釦45が操作された時点における表示倍率Sを基準倍率S0とみなす。
【0045】
また、制御回路43aは、オフセット釦45が操作された時点における表示部11から眼2までの距離Lを測距センサ15の出力から認識し、その認識した距離Lを基準距離L0とみなす。
その後、制御回路43aは、距離Lが基準距離L0よりも離れたときには表示倍率Sを基準倍率S0よりも小さく設定し、その距離Lが基準距離L0よりも狭まったときには表示倍率Sを基準倍率S0よりも大きく設定する。
【0046】
このようなHMD40によると、表示部11と眼2との位置関係のずれに拘わらず、観察者が快適に視認できる表示倍率でIが表示される。
なお、本実施形態のHMD40には、第1実施形態のHMD10と同様の測距センサ15が用いられたが、測距センサ15に代えて第2実施形態のHMD20と同様の位置センサ25を用いてもよい。
【0047】
また、本実施形態のHMD40においては、設定中の表示倍率Sを示す文字情報(例えば「×0.6」など。)が画像Iと共にLCD11aの表示画面E上に表示されるよう制御回路43aを動作させてもよい。
なお、本実施形態のHMD40の上記動作は、距離Lのデータを取得しなくとも、オフセット釦45が操作された時点からの距離Lの変化のデータさえ取得できれば実現可能である。よって、本実施形態のHMD40については、位置センサ又は測距センサを簡略化することも可能である。
【0048】
また、本実施形態では、入力手段として倍率設定ダイアル35が用いられ、観察者が表示倍率を指定できるかのごとく説明したが、観察者が入力できる情報を表示倍率変更の指示のみとしてもよい(その場合、入力手段として「倍率変更ダイアル」などが用いられる)。
(その他)
本実施形態のHMD40には、入力手段として倍率設定ダイアル35が用いられており、観察者が指定可能な情報が表示倍率(「○○倍」)であるかのごとく説明したが、観察者が指定可能な情報は、観察者の顔又は眼2と表示部11との距離(「○○cm」など)であってもよい。
【0049】
このように、日常的に使用される物理量である「距離」を指定可能にしておけば、観察者は入力手段の操作を直感的に行うことができる。
なお、この場合、入力手段として用いられるのは「表示距離設定ダイアル」となる。回路部43内の制御回路43aは、指定された距離に対する最適倍率を求め、その求めた最適倍率を表示倍率Sとして画像処理回路13gに設定すればよい。
【0050】
また、観察者が指定可能な情報は、調整機構(16,17,18,19)の少なくとも1つの状態(「ディスプレイアーム12cの伸縮位置+○○cm」など)であってもよい。
この場合、入力手段として用いられるのは「状態設定ダイアル」となる。回路部43内の制御回路43aは、指定された状態に対する最適倍率を求め、その求めた最適倍率を表示倍率Sとして画像処理回路13gに設定すればよい。
【0051】
また、観察者が指定する情報は、仮想表示サイズ(「○○cm先に○○インチで見える」など)であってもよい。
この場合、入力手段として用いられるのは「表示サイズ設定ダイアル」となる。回路部43内の制御回路43aは、指定された仮想表示サイズに対する最適倍率を求め、その求めた最適倍率を表示倍率Sとして画像処理回路13gに設定すればよい。
[第5実施形態]
以下、図10、図11を参照して本発明の第5実施形態を説明する。
【0052】
本実施形態は、HMDの実施形態である。ここでは、第3実施形態のHMDとの相違点についてのみ説明し、その他の説明を省略する。
図10(a)(b)は、本実施形態のHMD50の模式図であり、図10(c)は、図10(a)のA−A’線(駆動機構55)における断面図である。
なお、図10(a)(b)は、観察者の頭部に装着されたHMD50を観察者の頭上方向から見た図である。
【0053】
図11は、HMD50の構成図である。
本実施形態のHMD50には、倍率設定ダイアル35の他に、調整機構(16,17,18,19)を駆動する駆動機構55が付加されている。
以下、図10(a)(b)に示すように、調整機構のうち特にスライド機構18(ディスプレイアーム12cを伸縮させるもの)に対し駆動機構55が付加された場合を説明する。
【0054】
図10(c)に示すように、駆動機構55は、スライド機構18のリアアーム12bとディスプレイアーム12cとの間に介設されたカム部材55bと駆動モータ55aなどからなる。
駆動モータ55aが回転するとそれに連結されたカム部材55bが駆動され、カム部材55bが駆動されるのに応じてリアアーム12bからディスプレイアーム12cが繰り出され、その伸縮位置が変化する。
【0055】
したがって、駆動モータ55aの駆動により、観察者の顔又は眼2に対する表示部11の位置関係が変化する。
図10(a)には、ディスプレイアーム12cの伸縮位置が最大であるときの様子、図10(b)には、ディスプレイアームの伸縮位置が最小であるときの様子をそれぞれ示した。
【0056】
図11に示すように本実施形態のHMD50内の回路部53には、駆動モータ55aをコントロールするモータコントローラ56が備えられる。このモータコントローラ56は、回路部53内の制御回路53aによって制御される。
ここで、画像Iの表示倍率Sと、その表示倍率Sに対して最適なディスプレイアーム12cの伸縮位置(以下、「最適伸縮位置」という。)との関係は、HMD50の設計データなどから予め求まる。「最適伸縮位置」とは、観察者の眼2が画像Iを欠けなく、かつなるべく大きく見ることのできる伸縮位置である。
【0057】
回路部53内の制御回路53aは、表示倍率Sとそれに対する最適伸縮位置との関係を、数式又はルックアップテーブルなどとして予め記憶する。
制御回路53aは、倍率設定ダイアル35の操作内容に応じた値を表示倍率Sとして画像処理回路13gに設定すると共に、その表示倍率Sに対する最適伸縮位置を前記関係に基づいて求める。
【0058】
そして、求めた最適伸縮位置にまでディスプレイアーム12cが繰り出されるよう、モータコントローラ56を介して駆動機構55を駆動する。
以上、本実施形態のHMD50においては、観察者が画像Iの表示倍率を変更することができるだけでなく、その際に、観察者が画像Iを欠けなく視認できるよう観察者の顔又は眼2に対する表示部11の位置関係が自動調整される。
【0059】
なお、本実施形態では、スライド機構18の近傍にのみ駆動機構を設けたが、蝶番機構16,蝶番機構17,スライド機構19の少なくとも1つの近傍にも駆動機構を設け、表示部11の位置をさらに柔軟に自動調整してもよい。
また、本実施形態では、入力手段として倍率設定ダイアル35が用いられ、観察者が表示倍率を指定できるかのごとく説明したが、観察者が入力できる情報を表示倍率変更の指示のみとしてもよい(その場合、入力手段として「倍率変更ダイアル」などが用いられる)。
(その他)
本実施形態のHMD50には、入力手段として倍率設定ダイアル35が用いられており、観察者が指定可能な情報が表示倍率(「○○倍」)であるかのごとく説明したが、観察者が指定可能な情報は、観察者の顔又は眼2と表示部11との距離(「○○cm」など)であってもよい。
【0060】
このように、日常的に使用される物理量である「距離」を指定可能にしておけば、観察者は入力手段の操作を直感的に行うことができる。
なお、この場合、入力手段として用いられるのは「表示距離設定ダイアル」となる。回路部53内の制御回路53aは、指定された距離に対する最適倍率を求め、その求めた最適倍率を表示倍率Sとして画像処理回路13gに設定すると共に、指定された距離が実現するよう、観察者の顔又は眼2に対する表示部11の位置関係を自動調整すればよい。
【0061】
また、観察者が指定可能な情報は、調整機構(16,17,18,19)の少なくとも1つの状態(「ディスプレイアーム12cの伸縮位置+○○cm」など)であってもよい。
この場合、入力手段として用いられるのは「状態設定ダイアル」となる。回路部53内の制御回路53aは、指定された状態に対する最適倍率を求め、その求めた最適倍率を表示倍率Sとして画像処理回路13gに設定すると共に、指定された状態が実現するよう、観察者の顔又は眼2に対する表示部11の位置関係を自動調整すればよい。
【0062】
また、観察者が指定する情報は、仮想表示サイズ(「○○cm先に○○インチで見える」など)であってもよい。
この場合、入力手段として用いられるのは「表示サイズ設定ダイアル」となる。回路部53内の制御回路53aは、指定された仮想表示サイズに対する最適倍率を求め、その求めた最適倍率を表示倍率Sとして画像処理回路13gに設定すると共に、指定された仮想表示サイズが実現するよう、観察者の顔又は眼2に対する表示部11の位置関係を自動調整すればよい。
[第6実施形態]
以下、図12を参照して本発明の第6実施形態を説明する。
【0063】
本実施形態は、HMDの実施形態である。ここでは、第3実施形態のHMDとの相違点についてのみ説明し、その他の説明を省略する。
図12は、本実施形態のHMD60の構成図である。
本実施形態のHMD60には、倍率設定ダイアル35の他に、眼2と表示部11との位置関係を検出する測定手段が付加されている。
【0064】
以下、測定手段として、図12に示すように、ディスプレイアーム12cの伸縮位置を示すデータを生成する位置センサ25(第2実施形態の図4を参照。)がスライド機構18の近傍に付加された場合を説明する。
取得されたデータは、回路部63に入力され、制御回路63aによって伸縮位置が認識される。
【0065】
したがって、位置センサ25の出力から、観察者の顔又は眼2に対する表示部11の位置関係が検出される。
制御回路63aは、表示倍率Sとそれに対する最適伸縮位置との関係を、数式又はルックアップテーブルなどとして予め記憶する。
制御回路63aは、倍率設定ダイアル35の操作内容に応じた値を表示倍率Sとして画像処理回路13gに設定すると共に、その表示倍率Sに対する最適伸縮位置を前記関係に基づいて求める。
【0066】
そして、位置センサ25が示している現在のディスプレイアーム12cの伸縮位置と、求めた最適伸縮位置とを比較し、両者が十分な精度で一致していないときには、表示画面Eに対し所定の警告表示(例えば、図12右下に示すように「アーム又は倍率を調整してください」などの文字情報の表示)をするよう画像処理回路13gに指示する。
以上、本実施形態のHMD60においては、観察者が画像Iの表示倍率を変更することができるだけでなく、その際に、観察者が画像Iを欠けなく視認することができない状態にあるときには、自動的に警告表示がなされる。
【0067】
なお、本実施形態では、スライド機構18の近傍にのみセンサを設けたが、蝶番機構16,蝶番機構17,スライド機構19の少なくとも1つの近傍にもセンサを設け、観察者の顔又は眼2に対する表示部11の位置関係をさらに高精度に検出してもよい。
また、本実施形態では、入力手段として倍率設定ダイアル35が用いられ、観察者が表示倍率を指定できるかのごとく説明したが、観察者が入力できる情報を表示倍率変更の指示のみとしてもよい(その場合、入力手段として「倍率変更ダイアル」などが用いられる)。
(その他)
本実施形態のHMD60には、入力手段として倍率設定ダイアル35が用いられており、観察者が指定可能な情報が表示倍率(「○○倍」)であるかのごとく説明したが、観察者が指定可能な情報は、観察者の顔又は眼2と表示部11との距離(「○○cm」など)であってもよい。
【0068】
このように、日常的に使用される物理量である「距離」を指定可能にしておけば、観察者は入力手段の操作を直感的に行うことができる。
なお、この場合、入力手段として用いられるのは「表示距離設定ダイアル」となる。回路部63内の制御回路63aは、指定された距離に対する最適倍率を求め、その求めた最適倍率を表示倍率Sとして画像処理回路13gに設定すると共に、位置センサ25が示す現在のディスプレイアーム12cの伸縮位置が、指定された距離を実現しているか否かを判断し、実現していないと判断したときには警告表示をすればよい。
【0069】
また、観察者が指定可能な情報は、調整機構(16,17,18,19)の少なくとも1つの状態(「ディスプレイアーム12cの伸縮位置+○○cm」など)であってもよい。
この場合、入力手段として用いられるのは「状態設定ダイアル」となる。回路部63内の制御回路63aは、指定された状態に対する最適倍率を求め、その求めた最適倍率を表示倍率Sとして画像処理回路13gに設定すると共に、位置センサ25が示す現在のディスプレイアーム12cの伸縮位置が、指定された状態を実現しているか否かを判断し、実現していないと判断したときには警告表示をすればよい。
【0070】
また、観察者が指定する情報は、仮想表示サイズ(「○○cm先に○○インチで見える」など)であってもよい。
この場合、入力手段として用いられるのは「表示サイズ設定ダイアル」となる。回路部63内の制御回路63aは、指定された仮想表示サイズに対する最適倍率を求め、その求めた最適倍率を表示倍率Sとして画像処理回路13gに設定すると共に、位置センサ25が示す現在のディスプレイアーム12cの伸縮位置が、指定された仮想表示サイズを実現しているか否かを判断し、実現していないと判断したときには警告表示をすればよい。
[その他]
なお、上記実施形態の何れかのHMDにおいては、回路部に不揮発性のメモリを使用すれば、電源がオフされる直前の設定(表示倍率S)を記憶し、電源オンされた直後にその設定を再現するよう制御回路を動作させることも可能である。
【0071】
また、上記第5実施形態のHMD50においては、調整機構(スライド機構18)が駆動機構55などにより電動化されているので、表示倍率Sだけでなく表示部11の位置の設定までも、記憶し再現するよう制御回路53aを動作させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】第1実施形態のHMD10の外観図である。
【図2】HMD10の構成図である。
【図3】第1実施形態のHMD10の動作を説明する図である。
【図4】第2実施形態のHMD20の外観図である。
【図5】HMD20の構成図である。
【図6】第3実施形態のHMD30の外観図である。
【図7】HMD30の構成図である。
【図8】第4実施形態のHMD40の外観図である。
【図9】HMD40の構成図である。
【図10】第5実施形態のHMD50の模式図、及び部分断面図である。
【図11】HMD50の構成図である。
【図12】第6実施形態のHMD60の構成図である。
【符号の説明】
【0073】
2…眼,10,20,30,40,50,60…HMD,13,23,33,43,53,63…回路部,13a,23a,33a,43a,53a,63a…制御回路,13c…アナログ処理回路,13d…A/D変換回路,13e,13f…フレームメモリ,13g…画像処理回路,11,101…表示部,11a,101a…LCD,11b,101b…接眼光学系,12…装着具,12L,12R…ヘッドホン,12b…リアアーム,12c…ディスプレイアーム,15…測距センサ,16,17…蝶番機構,18…スライド機構,25…位置センサ,35…倍率設定ダイアル,45…オフセット釦,55…駆動機構,55a…駆動モータ,55b…カム部材,56…モータコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元表示素子と、その二次元表示素子の表示画面の虚像を形成する接眼光学系とからなる表示部と、
前記二次元表示素子の表示画面上に画像を表示するための回路部と、
前記虚像の形成位置が観察者の眼の略前方となるよう前記表示部をその観察者の頭部に装着可能な装着手段と、
前記眼と前記表示部との位置関係を前記観察者に入力させる位置入力手段とを備え、
前記回路部は、
前記位置入力手段を介して入力された位置関係に応じて、前記表示画面上の前記画像の表示倍率を変更する
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像表示装置において、
前記装着手段には、
前記観察者の眼と前記表示部との位置関係を調整するための調整機構が設けられる
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像表示装置において、
前記入力された位置関係に応じて前記調整機構を駆動し、前記眼と前記表示部との位置関係を制御する位置制御手段を更に備えた
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】
請求項2に記載の画像表示装置において、
前記観察者の眼と前記表示部との位置関係を測定する測定手段と、
前記測定された位置関係が、前記入力された位置関係と異なるときには、前記観察者に対し警告をする警告手段と
を更に備えたことを特徴とする画像表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−314119(P2006−314119A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−161207(P2006−161207)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【分割の表示】特願2003−34679(P2003−34679)の分割
【原出願日】平成15年2月13日(2003.2.13)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】