説明

画像表示装置

【課題】4以上の異なる色に対応するサブ画素から構成される表示パネル100に対し、より正確に色を再現させる。
【解決手段】1つの画素が、例えばR、YG、B、EGの4つの画素から構成されるととともに、各サブ画素を、それぞれの色成分に応じた輝度とさせる表示パネル100と、例えばXYZ表色系の3刺激値を入力して、表示パネルにおける4色成分に変換処理する処理回路40と、を備え、測色計120は、表示パネル100が処理回路40によって変換処理された色成分に基づいて表示した色を測定する。処理回路40は、3刺激値で示される色と測定された色との差が予め定められたしきい値以下となるように、4色成分を変換処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4以上の原色を有する表示パネルに対し、目標とする色を、より正確に再現させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー画像は、一般的には、R(赤)、G(緑)、B(青)の3原色を用いた加法混色によって表現されるが、再現可能な色域は、3原色のベクトルで定められる3次元空間に限られる。そこで、近年では、再現可能な色域を拡大するために、4以上の原色を用いた表示パネルが登場しつつある。ここで、4以上の原色を用いた表示パネルにおいて問題となるのが、目標とする色を、いかに正確に再現するかである。このため、目標とする色を規定する3刺激値を、ルックアップテーブルを参照して、表示パネルにおける4原色の成分に変換する技術などが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−338950号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記技術では、3刺激値から4原色の成分が1度の計算で正確に求められるとは限らない。また、3刺激値から求められた4原色の成分が、ある特定の表示パネルにとって最適化されていても、個体差や製造ロットに違いによって、別の表示パネルにとっては最適でない場合もあり得る。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的の1つは、4以上の異なる色に対応するサブ画素から構成される表示パネルに対し、より正確に色を再現させるための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために本発明に係る画像表示装置は、1つの画素が、4以上の異なる色に対応するサブ画素から構成されるととともに、各サブ画素を、それぞれの色成分に応じた輝度とさせる表示パネルを有する画像表示装置であって、所定の表色系で規定される色の情報を入力して、前記表示パネルにおける4以上の色成分を出力する処理回路と、前記表示パネルが前記処理回路による4以上の色成分に基づいて表示した色を測定する測色計と、を有し、前記処理回路は、前記情報で規定される色と前記測色計で測定された色との差が予め定められたしきい値以下となるように、前記4以上の色成分を出力することを特徴とする。本発明によれば、表示パネルにおいて色成分に基づいて表示された色を、測色計が実際に測定して、色情報で示される色と測色計で測定された色との差が予め定められたしきい値以下となるように、フィードバックされるので、より正確に色を再現させることが可能となる。
【0006】
本発明において、前記処理回路は、前記差が前記しきい値を越えていた場合に、前記4以上の色成分を所定値だけシフトさせる動作を、前記差が前記しきい値以下となるまで繰り返す構成としても良い。この構成によれば、再現する色の精度をより高めることが可能となる。
この構成において、前記処理回路は、光源の色情報を取得し、前記色情報で示される色を、取得した光源の色情報を用いて、等色差性の表色系に変換し、前記測色系で測定された色を、前記等色差性の表色系に変換して、前記差を求めれば、光源下における色を再現することが可能となる。
また、上記構成において、前記処理回路は、前記4以上の色成分を、色識別子と対応付けて記憶すれば、以後、この色識別子によって色成分を読み出させば、測色計による測定を省略して色を再現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1実施形態に係る画像表示装置の構成を示す斜視図である。
【図2】画像表示装置の構成を示すブロック図である。
【図3】画像表示装置の機能構成を示す図である。
【図4】画像表示装置の通常表示モードにおける機能構成を示す図である。
【図5】画像表示装置の単色表示モードにおける機能構成を示す図である。
【図6】画像表示装置における行列の計算を示すフローチャートである。
【図7】画像表示装置における色再現域を示すxy色度図である。
【図8】3色および4色表示パネルにおける色再現域をXYZ空間で示す図である。
【図9】4色表示パネルの色再現域を分割するためのベクトルを示す図である。
【図10】色表示パネルにおける色再現域の分割領域を示す図である。
【図11】色表示パネルにおける色再現域の分割領域を示す図である。
【図12】画像表示装置のキャリブレーションモードの機能構成を示す図である。
【図13】画像表示装置のキャリブレーションモードの動作を示す図である。
【図14】第2実施形態に係る画像表示装置の機能構成を示す図である。
【図15】第3実施形態に係る画像表示装置の機能構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態に係る画像表示装置の構成を示す斜視図である。この画像表示装置10は、携帯端末としての機能のほかに、様々な色を正確に表示する色票機能を有する。
この図に示されるように、画像表示装置10は、本体22に表示パネル100を備える。表示パネル100は、複数の画素を有する透過型の液晶パネルである。表示パネル100において、各画素は、再現可能な色領域を拡大するために、それぞれR(赤)、YG(黄緑)、EG(エメラルドグリーン)、B(青)の4つの色に対応したサブ画素で構成されるとともに、各サブ画像の透過率が色成分に応じて個別に制御される。また、表示パネル100には、タッチパネル等の入力部140が設けられて、タッチ操作等によって各種の入力がなされる。
画像表示装置10において、天板24は、本体22に対して回動自在となっている。この天板24には、測色計120が設けられており、閉じたときに、表示パネル100において表示された画像の色を測定する。
【0009】
図2は、画像表示装置10の構成を示すブロック図である。
この図に示されるように、画像表示装置10では、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)30が、バス31を介して、主記憶部32、補助記憶部34、入力部140、駆動回路110、測色計120などの各部を制御したり、各種データを送受信したりする構成となっている。
このうち、主記憶部32は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリーであり、CPU30がプログラムの実行などの際に、該プログラムやデータ等を一時的に格納する。補助記憶部34は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などのような不揮発性記憶装置であり、オペレーションシステムやアプリケーションプログラムのほか、各種のデータなどを記憶する。
また、駆動回路110は、1画素当たり4つの色に対応する色成分を入力して、各サブ画素が色成分に応じた透過率となるように、表示パネル100における各画素(サブ画素)をそれぞれ駆動するものである。
【0010】
図3は、画像表示装置10において、表示パネル100によって画像(色)を表示する際に構築される機能構成を示すブロック図である。
この図に示されるように、画像表示装置10では、処理回路40が、3色成分の画像信号や、色ID(identifier:識別子)などの情報を入力して、表示パネル100に対し4色成分の画像信号を出力し、駆動回路110が、表示パネル100における各サブ画素を駆動する一方、測色計120が、表示パネル100に表示された色を測定するという構成となっている。
なお、処理回路40は、CPU30がプログラムを実行することによって構築される機能ブロックである。また、処理回路40に供給される画像信号は、処理回路40よりも上流に位置する機能ブロックで生成される。
【0011】
画像表示装置10では、図3に示した機能ブロックが、すべて同時に構築されるのではなく、モードに応じて適宜構築される。ここで、本実施形態に係る画像表示装置10には、通常表示モード、単色表示モードおよびキャリブレーションモードの3つのモードがあり、入力部140への操作等によって、いずれかのモードが指定される。そこで次に、画像表示装置10における動作についてモードにわけて説明する。
【0012】
まず、通常表示モードについて説明する。通常表示モードとは、携帯端末として機能する場合のように、R、G、Bの3色成分で規定する画像信号を入力して、表示パネル100に表示させる動作である。
【0013】
図4は、通常表示モードにおいて処理回路40で構築される機能ブロックを示す図である。この図において、多原色変換回路402は、R、G、Bの3色成分の画像信号を、表示パネル100のサブ画素のR、YG、B、EGの4色成分の画像信号に変換して、駆動回路110に供給する。
これにより、駆動回路110は、変換された4色成分の画像信号にしたがって表示パネル100における各サブ画素を駆動するので、表示パネル100には、処理回路40に供給された画像信号に基づいた画像が表示されることになる。
【0014】
次に、単色表示モードについて説明する。単色表示モードとは、ユーザーに正確な色を表示させる色票機能を実行するモードである。このため、表示パネル100には、色票としての色のみが表示される。
【0015】
図5は、単色表示モードにおいて処理回路40で構築される機能ブロックを示す図である。この図において、入力部140には、表示パネル100で表示させるべき色の識別子報(色ID)がユーザーの操作によって入力される。記憶部406は、上述した補助記憶部34におけるデータベースであり、色IDと、各種の表色系で示される色と、当該色を表示パネル100で再現する場合のR、YG、B、EGの4色成分と、を予め対応付けて記憶している。
色ID通知回路404は、入力部140によって入力された色IDを記憶部406に通知し、記憶部406は、該色IDに対応する4色成分を読み出して、駆動回路110に供給する。
これにより、駆動回路110は、記憶部406から読み出された4色成分の画像信号にしたがって表示パネル100における各サブ画素を駆動するので、表示パネル100には、入力部140で入力された色IDに対応する色が表示されることになる。
【0016】
ここで、説明の便宜上、キャリブレーションモードの前に、再現表示したい色(目標色)を、表示パネルの4色成分に変換するためのアルゴリズムについて説明する。目標色は、例えばXYZ表色系の3刺激値(X、Y、Z)で規定されるものとする。
まず、一般的な表示パネル、すなわち1画素がR、G、Bの3つのサブ画素から構成される表示パネルでは、加法混色によって、3行3列の正則行列M3×3と、3色成分の(R、G、B)と、3刺激値の(X、Y、Z)との間には、次の式(1)のような線形性が成立する。
【0017】
【数1】

【0018】
一方、本実施形態のように、1画素がR、YG、B、EGの4色のサブ画素から構成される表示パネル100では、4色成分の(R、YG、B、EG)と、3刺激値の(X、Y、Z)との間には、3行4列の行列M3×4を用いると、次の式(2)が成立する。
【0019】
【数2】

【0020】
ところで、再現表示したい目標色、すなわち3刺激値(X、Y、Z)で規定される色を、一般的な表示パネルで表示させるための3色成分(R、G、B)は、上記式(1)から次の式(3)のように表すことができる。
【0021】
【数3】

【0022】
一方、本実施形態のように4色のサブ画素に係る表示パネル100にあっては、行列M3×4が正則ではないので、逆行列を有しない。このため、式(2)を変形し、次の式(4)を満たす4行3列の行列M4×3を求める必要がある。
【0023】
【数4】

【0024】
3刺激値(X、Y、Z)の次数は「3」であるのに対し、(R、YG、B、EG)の次数は「4」であるので、行列M4×3を求めるに際し、次数を下げる必要がある。
【0025】
この行列M4×3を求めるための動作を、図6のフローチャートを参照して説明する。
まず、ステップSa1において、表示パネル100にR、YG、B、EGの原色を順番に表示させるとともに、表示された原色を測定する。詳細には、天板24が本体22に対して閉じた状態となっているときに、駆動回路110に、第1に、R成分を最高値とし、他の色成分のYG、B、EGを最小値とする画像信号を出力して、Rの画像を表示パネル100に表示させる一方、測色計120が、表示されたRの色の3刺激値(X、Y、Z)を測定する。同様な動作を、YG、B、EGについて実行し、これにより、表示されたYG、B、EGの3刺激値(XYG、YYG、ZYG)、(X、Y、Z)、(XEG、YEG、ZEG)をそれぞれ測定する。
【0026】
次に、ステップSa2において、3刺激値(X、Y、Z)、(XYG、YYG、ZYG)、(X、Y、Z)、(XEG、YEG、ZEG)から、表示パネル100における色再現域を求める。
ここで、xy色度図は、図7(a)において太線内の領域で示される。表示パネル100にR、YG、B、EGの色を表示させて、各色について測定した3刺激値をxy値に変換して同図においてプロットすると、表示パネル100において再現可能な色域は、例えば同図において細線で示される四角形内の領域で示される。
【0027】
図8(b)は、R、YG、B、EGの4つを用いた表示パネル100の色再現域を、XYZ色空間において立体的に表したものである。換言すれば、表示パネル100の色再現域の3刺激値(X、Y、Z)は、R、YG、B、EGの4つのベクトルで表現することができる。
一般に、P個の異なる色を用いる場合の色再現域は、P(P−1)面体で表される。このため、本実施形態のように4つの色を用いる場合の色再現域は、同図に示されるように12面体で表される。
なお、1画素がR、G、Bの3つのサブ画素から構成される一般的な表示パネルの色再現域は、図8(a)に示されるような6面体で表される。
【0028】
続いて、ステップSa3において、(R、YG、B、EG)の次数「4」を下げるために、表示パネル100の色再現域を示す12面体を、領域1から領域8まで8分割する。 ここで、領域1〜8に分割するときの条件は、それぞれEG=0、B=0、R=0、YG=0、R=YG、YG=EG、B=EG、R=Bである。このときの8つ条件と、分割すべき領域を規定するためのベクトル1〜4とを示す表を、図9に示す。
なお、同図において、ベクトル1〜4におけるR、YG、B、EGは、最大値「1」に正規化されている。
【0029】
図10および図11は、表示パネル100の色再現域を示す12面体を、図9に示した表にしたがって8分割した領域を示す図であり、このうち、図10は、領域1〜4を示し、図11は、領域5〜8を示している。
図7(b)は、領域1〜8を、xy色度図との関係において示す図である。
【0030】
次に、ステップSa4において、分割した領域1〜8の各々について、4行3列の行列N4×3をそれぞれ次のようにして求める。
まず、図10および図11に示した領域1〜8のベクトル1〜4におけるR、YG、B、EGをベクトル(R、YG、B、EGと表し、3刺激値X、Y、Zをベクトル(X、Y、Zと表したとき(n=1、2、3、4)、式(2)より、次の式(5)のように表すことができる。
【0031】
【数5】

【0032】
ここで、式(5)における左辺の行列をMXYZとし、右辺のうち、M3×4を除く行列をMR−YG−B−EGとして、次の式(6)のように表す。
【0033】
【数6】

【0034】
ここでの目的は、式(4)で示したように、表示パネル100におけるR、YG、B、EGの値を、指定した3刺激値(X、Y、Z)から求めることである。そこで第1に、次の式(7)のように変形する。
【0035】
【数7】

【0036】
第2に、式(7)の両辺において右側からそれぞれMXYZを掛けて、次の式(8)とする。
【0037】
【数8】

【0038】
式(8)において、MXYZ・MXYZは、3行3列の正則行列であるから、逆行列が存在する。そこで第3に、式(8)の両辺において右側からそれぞれ逆行列(MXYZ・MXYZ−1を掛けると、次の式(9)が導かれる。
【0039】
【数9】

【0040】
したがって、表示パネル100における(R、YG、B、EG)を、指定した3刺激値(X、Y、Z)から求めるには、領域1〜8の各々について行列N4×3をそれぞれ式(9)を用いて求めておくとともに、3刺激値で規定される目標色が、領域1〜8のいずれかに属するかを判定し、判定した領域の行列N4×3を、式(4)に適用することで算出することができる。
以上が、再現表示したい目標色の3刺激値を、表示パネル100の4色成分に変換するアルゴリズムの説明である。
しかしながら、このアルゴリズムにしたがって3刺激値を4色成分に変換しても、表示パネル100の個体差や、経年変化、計算誤差などの様々な理由によって、表示パネル100に表示される色が、入力された目標色から少なからず乖離してしまう場合があり得る。
そこで次に、このような乖離を防ぐキャリブレーションモードについて説明する。
【0041】
図12は、キャリブレーションモードにおいて処理回路40で構築される機能ブロックを示す図であり、図13は、キャリブレーションモードの動作を示すフローチャートである。
まず、ステップSb1において、ユーザーは、表示させたい色(目標色)を規定する情報を、例えばXYZ表色系における3刺激値を、入力部140に入力する。入力色計算回路410は、該情報から目標色のxy色度を計算する。
ここで、目標色を規定する情報としては、デバイスに依存しない絶対的な色空間で定義したもの、例えばCIE1976(L*a*b*)や、分光エネルギー分布、xy色度などの表色系で与えたものであれば良い。また、目標色を3刺激値(X、Y、Z)で規定すれば、入力色計算回路410は、該3刺激値からxy色度を計算すれば良いことになる。
また、入力部140では、目標色を規定する情報のほか、該目標色を識別するための色IDや、該目標色を測定した際の光源色の3刺激値、表示パネルで表示させた色で許容される色差などの情報も入力される。
【0042】
次に、ステップSb2において、入力色計算回路410は、計算した目標色のxy色度が図7(b)における領域1〜8のいずれに属するかを判定する。
さらに、ステップSb3において、入力色計算回路410は、目標色の3刺激値(X、Y、Z)と、目標色のxy色度が属する領域の行列N4×3とを式(4)に適用し、表示パネル100の4色成分(R、YG、B、EG)を計算する。入力色計算回路410は、計算した4色成分を、入力された色IDと対応付けて記憶部406に格納する。
【0043】
ステップSb4において、入力色計算回路410は、計算した目標色の色ID、すなわち入力部140によって入力された色IDを、色ID通知回路404に供給し、色ID通知回路404は、色IDに対応する4色成分を記憶部406から読み出し、駆動回路110に供給する。これにより、表示パネル100には、該4色成分に基づく色が表示されることになる。
【0044】
このときに表示パネル100に表示される色は、上述したように、入力された情報で規定される目標色から乖離している場合があり得る。
そこで次に、ステップSb5において、天板24を閉じさせるためのメッセージを表示パネル100に表示させた後、実際に天板24が閉じられたときに、測色計制御回路412が測色計120に対し表示パネル100に表示された色の測定を指示する。これによって、測色計120が、表示パネル100に表示された色を測定して、測定色(測色値)の3刺激値を出力する。
【0045】
ステップSb6において、色差判定回路414は、目標色の3刺激値をL*a*b*に変換し、同様に、測色計120からの三刺激値をL*a*b*に変換して、両者の色差が、ステップSb1において入力された色差以下であるか否かを判定する。
なお、XYZ表色系は等色差性を有さず、色差の判定に適していないので、本実施形態では、3刺激値を、等色差性を有するL*a*b*に変換して、色差の判定に用いている。また、L*a*b*への変換に用いられる白色には、目標色を測定した際の光源色の3刺激値、すなわちステップSb1において入力された値が用いられる。
この判定結果が「Yes」であれば、表示パネル100に対し目標色を表示させるための4色成分の最適解が、現時点においてステップSb3で計算された4色成分であることを示しているので、処理回路40は、以降の処理を終了する。
【0046】
一方、判定結果が「No」であれば、色差を、より小さくするために、ステップSb7において、入力色計算回路410は、4色成分を再計算する。詳細には、入力色計算回路410は、次の式(10)に示される計算を実行して、4色成分を(R、YG、B、EGに変更して、処理手順をステップSb4に戻す。
【0047】
【数10】

【0048】
ここで、式(10)において、ステップSb7がn回実行されたときに、該n回目に出力される(R、YG、B、EGは、n回のうち、色差が最小となった(Rmin、YGmin、Bmin、EGminを、右辺第2項で示される値だけ、それぞれシフトさせたものである。
【0049】
ここで、ステップSb6における判定結果が当初「No」であっても、ステップSb4〜Sb7を1回以上繰り返すことによって、やがて色差以下となる。ステップSb6の判定結果が「Yes」になれば、表示パネル100に表示されている色は、入力された色差以下となった状態である。このため、本実施形態によれば、目標色を極めて正確に再現することが可能となる。
また、ステップSb6の判定結果が「Yes」になった状態において、表示パネル100に供給されている4色成分は、目標色を識別するための色IDと対応付けられて記憶部406に記憶されている。このため、以降、単色表示モードにおいて該色IDを入力するだけで、該目標色を表示パネル100において再現表示することが可能となる。
【0050】
次に、第2実施形態に係る画像表示装置について説明する。図14は、第2実施形態に係る画像表示装置10において、表示パネル100に画像を表示する際に構築される機能構成を示すブロック図である。
図14において、図3に示した第1実施形態と相違する部分は、おもに、第1に、入力色計算回路410がLUT計算回路420に置き換わっている点、第2に、LUT適用回路430が駆動回路110の前段に設けられている点、および、第3に、記憶部406は、4色成分ではなく、LUTを出力する点にある。
【0051】
そこで以下においては、これらの相違点を中心に説明することにする。
まず、第2実施形態において、記憶部406では、各種のLUT(Look Up Table)、例えばカラーマネージメント用のLUTや、白色画像を色IDに関連付けられた色(4色成分)に変換するためのLUTを記憶する。
【0052】
通常表示モードにおいて、記憶部406は、カラーマネージメント用のルックアップテーブルを読み出し、LUT適用回路430にセットする。多原色変換回路402は、R、G、Bの3色成分の画像信号を、表示パネル100のサブ画素のR、YG、B、EGの4色成分の画像信号に変換する点は、第1実施形態と同様であるが、この4色成分は、LUT適用回路430にセットされたルックアップテーブルにより再変換されて、駆動回路110に供給される。
これにより、表示パネル100には、処理回路40に供給された画像信号に基づいた画像であって、カラーマネージメントされた画像が表示されることになる。
【0053】
単色表示モードにおいて、色ID通知回路404は、入力部140に入力された色IDを記憶部406に通知し、記憶部406は、該色IDに対応するLUTを読み出して、LUT適用回路430にセットする。一方、単色表示モードにおいて、多原色変換回路402は、白色とさせる画像信号を出力する。これにより、LUT適用回路430は、白色の画像信号を、入力された色IDに関連付けられた4色成分に変換して、駆動回路110に供給するので、表示パネル100には、入力部140で入力された色IDに対応する色が表示されることになる。
【0054】
キャリブレーションモードにおいて、LUT計算回路420は、入力部140に入力された目標色の3刺激値(X、Y、Z)と、目標色のxy色度が属する領域の行列N4×3とを式(4)に適用し、表示パネル100の4色成分(R、YG、B、EG)を計算する点までは、第1実施形態における入力色計算回路410と同様である。
LUT計算回路420は、さらに白色画像を、求めた4色成分に変換するためのLUTを作成して、入力された色IDに対応付けて記憶部406に格納するとともに、入力された色IDを、色ID通知回路404に供給する。色ID通知回路404は、色IDに対応付けられたLUTを記憶部406から読み出し、LUT適用回路430にセットする。
一方、キャリブレーションモードにおいても、多原色変換回路402は、白色の画像信号を出力する。
これにより、LUT適用回路430は、白色の画像信号を、セットされたLUTを参照して4色成分に変換して、駆動回路110に供給するので、表示パネル100には、入力部140で入力された色IDに対応する色が表示されることになる。以降の動作は、第1実施形態と同様であり、測色計120が表示パネル100に表示された色を測定するとともに、目標色と測定された色との差が、入力された色差よりも小さくなるまで、上記ステップSb4〜Sb7が繰り返される。
【0055】
これにより、第2実施形態においても、目標色を極めて正確に再現することが可能となる。目標色と測定された色との差が入力された色差以下となったときのLUTは、目標色を識別するための色IDと対応付けられて記憶部406に記憶されている。このため、第2実施形態においても、以降、単色表示モードにおいて、該色IDを入力するだけで、該目標色を表示パネル100において再現表示することが可能となる。
【0056】
次に、第3実施形態に係る画像表示装置について説明する。図15は、第3実施形態に係る画像表示装置10において、表示パネル100に画像を表示する際に構築される機能構成を示すブロック図である。
図15に示した構成では、図3に示した第1実施形態と比較して、目標色の3刺激値や、該目標色を測定した際の光源色の3刺激値を、入力部140に入力するのではなく、測色計120が、直接測定する構成となっている。
このため、キャリブレーションモードにおいて、色差判定回路414における目標色は、目標色60を測色計120によって実際に測定した結果が用いられる。また、色差判定回路414において、L*a*b*への変換に用いられる白色には、光源70を測色計120によって実際に測定した結果が用いられる。
【0057】
第3実施形態によれば、目標色や光源の色を実際に測色計120によって測定するので、目標色や光源の情報を知らなくても、表示パネル100に再現することが可能となる。
また、第3実施形態では、目標色と光源の色との測定時を同一とはせずに、時間差を持たせても良い。例えば、ある特定条件において照明する光源の色情報を記憶させておくとともに、キャリブレーションモードにおける色差の判定に、記憶させた光源の色情報を用いることによって、目標色が該特定条件で照明された場合に、どのように見えるかを模擬することも可能となる。
【0058】
なお、上述した第1〜第3実施形態では、R、YG、B、EGの4成分によって色を表現する場合を例にとって説明したが、これ以外の4成分であっても良いし、さらに5以上の成分によって色を表現しても良い。5以上の成分によって色を表現する場合でも、式(2)、式(4)〜式(10)からの類推によって容易に実現することができるはずである。また、表示パネル100については、液晶パネルに限られず、1つの画素が4以上のサブ画素から構成されるのであれば、例えば有機エレクトロルミネッセンスパネルや、プラズマディスプレイパネルなど、種々のものが適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
10…画像表示装置、30…CPU、40…処理回路、100…表示パネル、110…駆動回路、120…測色計、410…入力値計算回路、414…色差判定回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの画素が、4以上の異なる色に対応するサブ画素から構成されるととともに、各サブ画素を、それぞれの色成分に応じた輝度とさせる表示パネルを有する画像表示装置であって、
所定の表色系で規定される色の情報を入力して、前記表示パネルにおける4以上の色成分を出力する処理回路と、
前記表示パネルが前記処理回路による4以上の色成分に基づいて表示した色を測定する測色計と、
を有し、
前記処理回路は、前記情報で規定される色と前記測色計で測定された色との差が予め定められたしきい値以下となるように、前記4以上の色成分を出力する
ことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
前記処理回路は、
前記差が前記しきい値を越えていた場合に、前記4以上の色成分を所定値だけシフトさせる動作を、前記差が前記しきい値以下となるまで繰り返す
ことを特徴とする請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記処理回路は、光源の色情報を取得し、
前記色情報で示される色を、取得した光源の色情報を用いて、等色差性の表色系に変換し、
前記測色系で測定された色を、前記等色差性の表色系に変換して、
前記差を求める
ことを特徴とする請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記処理回路は、
前記4以上の色成分を、色識別子と対応付けて記憶する
ことを特徴とする請求項2に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−217516(P2010−217516A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−64247(P2009−64247)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】