説明

画像表示装置

【課題】自発光型の表示素子を用いた画像表示装置において、偏光方向が揃っていないレーザー光を用いることにより、複数のパターンのスペックルを発生させてスクリーン上で重畳させ、スペックルを低減することが可能な画像表示装置を提供する。
【解決手段】光線束の中心軸に対して偏光分布が対称であるベクトルビームL2を射出する光源部と、ベクトルビームL2をスクリーン1000上で走査して画像を描画する走査光学系50と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体レーザーの高出力化や青色半導体レーザーの登場に伴い、高出力な光源としてのレーザー光源の活用が期待されている。レーザー光源は、色再現性に優れること、瞬時点灯が容易であること、長寿命であること等の特長を有している。一般に用いられるレーザー光は、位相が揃って干渉性が高い(コヒーレントな)光である上に、直線偏光や円偏光など、光線束の中心軸に垂直な断面の偏光方向(光の電場の振動方向)が揃った光である。
【0003】
一方、上記のような偏光方向が揃った周知のレーザー光とは異なり、偏光方向が揃っていないレーザー光に注目が集まっている。このようなレーザー光の一例として、ベクトルビームが挙げられる。
【0004】
ベクトルビームは、空間的に偏光分布を有する軸対称偏光である。ベクトルビームには、ベクトルビームを表す式の解に応じて、様々な偏光の振動状態(モード)があることが知られており、例えば1次のベクトルビームは、光線束の中心軸中心に光の場の強度がゼロである「光渦」を有する軸対称偏光レーザービームとして知られている。近年では、ベクトルビームが有する特異な偏光特性を有効に利用するため、ベクトルビームの発生方法が盛んに研究され(例えば、特許文献1)、例えば光メモリ装置の光源として利用するといった利用方法が提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−216641号公報
【特許文献2】特開2006−48807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来は、偏光方向が揃ったレーザー光を利用するための応用開発が進められてきたことから、現在用いられている技術は、ほとんどが偏光方向の揃ったレーザー光を用いることを前提としている。したがって、ベクトルビームのような偏光方向が揃っていないレーザー光の利用は開発が進んでおらず、これまでのレーザー光にはない特長を活かした応用が期待されている。
【0007】
ところで、近年、レーザー光源を用いたプロジェクター(画像表示装置)が開発されている。この種のプロジェクターは、レーザー光源の波長域が狭いために色再現範囲を十分に広くすることができ、小型化や構成部品の削減も可能である。このことから、次世代のプロジェクターとして大きな可能性を秘めている。
【0008】
しかしながら、従来の偏光方向が揃ったレーザー光を用いたプロジェクターにおいて表示を行う際には、スクリーン等の散乱体で光の干渉が生じることによって明点と暗点が縞模様あるいは斑模様に分布する、いわゆるスペックルと呼ばれる現象が発生する場合がある。
【0009】
スペックルは、観察者に対してぎらつき感を与え、画像鑑賞時に不快感を与えるなどの悪影響を及ぼす原因となる。従来の偏光方向が揃ったレーザー光は、干渉性が高くスペックルが発生しやすいため、レーザー光を光源として用いる場合、スペックルを除去する技術が重要になる。
【0010】
このようなスペックルを低減する手段としては、波長がわずかに異なるなど、互いに可干渉性の低い(インコヒーレントな)光を用いて、複数のパターンのスペックルを発生させ、複数のスペックル同士を同時に重畳させることによりスペックルのパターンを見にくくする方法が知られている。このようにすることで、2つの偏光に起因して生じるスペックル同士を重畳させ、平均化してスペックルを低減することとしている。
【0011】
しかし、自発光型の表示素子を用いた画像表示装置の場合、表示素子から射出された光がスクリーン上で表示画像の画素として結像するため、表示素子が有する複数の光源から射出された光同士が重畳されない。したがって、自発光型の表示素子を用いた画像表示装置に通常のレーザー光を用いた場合には、複数の光源間で可干渉性が低いとしてもスペックル低減ができない。
【0012】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、偏光方向が揃っていないレーザー光を用いることで、スペックルを低減することが可能な画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、本発明の画像表示装置としては、大きく以下の2つの形式が挙げられる。まず第1の画像表示装置としては、光線束の中心軸に対して偏光分布が対称である軸対称偏光を射出する光源部と、前記軸対称偏光を被投射面上で走査して画像を描画する走査手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
第2の画像表示装置としては、光線束の中心軸に対して偏光分布が対称である軸対称偏光を射出する光源部が、表示する画像を構成する画素に対応して2次元マトリクス状に複数配列され、前記軸対称偏光を用いて被投射面上に前記画像を形成することを特徴とする。
【0015】
第1の画像表示装置では、画像の形状に対応した画像形成部が不要であるため、装置構成を小型化することができる。また、第2の画像表示装置では、画像表示を行うために可動部分が無いため破損し難く、信頼性が高い画像表示装置とすることができる。
【0016】
加えて、これらの構成によれば、画像形成に軸対称偏光を用いることにより、確実にスペックルの低減を実現することが可能な画像表示装置とすることができる。軸対称偏光は、光線束の中心軸に垂直な面内で偏光成分の方向に偏りが無く、偏光方向が多重している。そのため、被照射面では様々なスペックルパターンが形成され、表示素子が有する複数の光源から射出された光同士が重畳されなくても、複数のスペックルパターンを重畳させて平均化し、観察者に均一な光として認識される。したがって、確実にスペックルの低減を実現することが可能な画像表示装置とすることができる。
【0017】
本発明においては、前記光源部は、レーザー光を射出する光源と、前記レーザー光の光路上に配置され、入射する前記レーザー光を前記軸対称偏光に変換する偏光形成手段と、を有することが望ましい。
この構成によれば、特別な構成の光源を用いることなく本発明の効果を得ることができる。
【0018】
本発明においては、前記偏光形成手段は、一対の基板間に液晶層を挟持した液晶変調素子であり、前記一対の基板の前記液晶層に対向する面は、同心円状に前記液晶層の液晶分子を配向させる配向規制力が付与されていることが望ましい。
この構成によれば、液晶分子の旋光性を利用して軸対称偏光を形成することができる。また、偏光形成手段を制御することで、軸対称偏光の発生有無を制御することが可能となる。そのため暗い画像や視感度の低い青色が主体となった画像など、スペックルがあまり気にならないような画像を表示する際には、偏光形成手段を時間分割で機能させることにより、偏光形成手段における光の損失を減らし、光の利用効率を上げることができる。
【0019】
本発明においては、前記偏光形成手段は、LP11モードの伝搬モードを有する光ファイバーであることが望ましい。
この構成によれば、光ファイバーで軸対称偏光を形成するとともに、光ファイバーによって自由な位置にビームを導くことができるため、光学系設計の自由度が高くなる。
【0020】
本発明においては、前記偏光形成手段は位相差板であり、前記位相差板は、照射される前記レーザー光のビームスポット内において、前記レーザー光の偏光方向を第1の方向とする第1領域と、前記第1の方向とは異なる第2の方向とする第2領域と、を有することが望ましい。
この構成によれば、可動部分がないため信頼性が高い画像表示装置とすることができる。
【0021】
本発明においては、前記偏光形成手段は、前記レーザー光を第1分離光および第2分離光に分岐する分岐手段と、前記第1分離光および前記第2分離光を1つの合成光に合成する光合成手段と、前記第1分離光または前記第2分離光の光路上の少なくともいずれか一方に配置され、前記第1分離光および前記第2分離光の偏光方向を異ならせる偏光素子と、を有することが望ましい。
この構成によれば、合成光は様々な方向に電場振動方向の偏光成分を有することとなるため、それぞれの偏光成分が形成する様々なスペックルパターンが、更に複雑に観察者の網膜上で重畳することとなり、スペックルの低減を実現することが可能な画像表示装置とすることができる。
【0022】
本発明においては、前記レーザー光源と前記偏光形成手段との間の光路上に、拡大光学系が配置されていることが望ましい。
この構成によれば、拡大されたレーザー光が偏光形成手段に入射するため、偏光形成手段を微細化する必要性が少なくなり、素子作成負荷を低減することができる。
【0023】
本発明においては、前記光源部は、光を射出する発光部と、前記発光部から射出された光の一部を、前記発光部に向けて反射させる外部共振器と、前記発光部と前記外部共振器との間の光路上に配置され、入射する前記光を前記軸対称偏光に変換する偏光形成手段と、を有することが望ましい。
この構成によれば、光源部が共振構造によって増幅された軸対称偏光を射出するため、軸対称偏光の形成による光の損失を考慮する必要がない。
【0024】
本発明においては、前記光源部は、光を射出する発光部と、前記発光部から射出された光の一部を、前記発光部に向けて反射させる外部共振器と、を有し、前記外部共振器は、入射する前記光を前記軸対称偏光に変換して反射するグレーティングミラーであることが望ましい。
この構成によれば、外部共振器と偏光形成手段とが一体化しているため、装置構成を小型化することができる。また、外部共振器のアライメントと偏光形成手段のアライメントとを同時に行うことができるため、装置組立が容易となる。
【0025】
本発明においては、前記光源部と、前記光源部から射出される前記軸対称偏光とは異なる色のレーザー光を射出するレーザー光源と、前記軸対称偏光および前記異なる色のレーザー光を合成する色合成光学系と、を有し、前記軸対称偏光は、前記異なる色のレーザー光よりも視感度が高い色光であることが望ましい。
この構成によれば、スペックル低減に最も効果のある色の光に対して個別に対策を施すこととなるため、偏光形成手段の使用数を必要最小限にとどめることができ、スペックルを低減した上で構成を簡素化し小型化された画像表示装置を提供することが可能となる。
【0026】
本発明においては、互いに異なる色の前記軸対称偏光を射出する複数の前記光源部と、複数の前記異なる色の軸対称偏光を合成する色合成光学系と、を有することとしても良い。
この構成によれば、より効果的にスペックルを低減することができる。
【0027】
また、本発明においては、互いに異なる色のレーザー光を射出する複数のレーザー光源と、複数の前記異なる色のレーザー光を合成する色合成光学系と、前記色合成光学系から射出された合成レーザー光の光路上に配置された前記偏光形成手段と、を有することとしても良い。
この構成によれば、偏光形成手段の数を減らすことができるため、スペックルを低減した上で構成を簡素化し小型化された画像表示装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係る画像表示装置を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の偏光形成手段によって形成されるレーザー光についての説明図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る画像表示装置を示す概略斜視図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る画像表示装置を示す概略斜視図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係る画像表示装置を示す概略斜視図である。
【図6】本発明の第5実施形態に係る画像表示装置を示す概略斜視図である。
【図7】本発明の第6実施形態に係る画像表示装置を示す概略斜視図である。
【図8】第7実施形態の画像表示装置に用いられる光源部の一例を示す説明図である。
【図9】第7実施形態の画像表示装置に用いられる光源部の一例を示す説明図である。
【図10】第7実施形態の画像表示装置に用いられる光源部の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[第1実施形態]
以下、図1〜図2を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る画像表示装置について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の膜厚や寸法の比率などは適宜異ならせてある。
【0030】
図1は、本実施形態のプロジェクター(画像表示装置)1を示す概略斜視図である。図に示すようにプロジェクター1は、レーザー光L1を射出するレーザー光源10(10R,10G,10B)、各レーザー光源10から射出された光を1つの光に合成するダイクロイックミラー(色合成手段)30,40、スクリーン(被投射面)1000上にレーザー光線を走査し画像を描画する走査光学系(走査手段)50を有している。
【0031】
また、レーザー光源10とダイクロイックミラー30,40との間の光路上には、レーザー光源10から射出されるレーザー光L1が入射し、該レーザー光L1を軸対称偏光ビームであるベクトルビームL2に変換するベクトルビーム形成素子(偏光形成手段)20が配置されている。ベクトルビームについては後述する。
以下、プロジェクター1の各構成について説明する。
【0032】
レーザー光源10は、その詳細な構造を図示しないが、赤色光(射出光)L1rを射出する半導体レーザー素子を有する赤色レーザー光源10Rと、緑色光(射出光)L1gを射出する半導体レーザー素子有する緑色レーザー光源10Gと、青色光(射出光)L1bを射出する半導体レーザー素子を有する青色レーザー光源10Bと、を含んでいる。各射出光L1r,L1g,L1bは可干渉性の高いコヒーレンス光となっており、ほぼ完全な平面波として射出されている。
【0033】
射出光L1r,L1g,L1bは、ベクトルビーム形成素子20に入射し、軸対称偏光ビームであるベクトルビームL2に変換される。ベクトルビームは、光線束の中心軸付近に光の場の強度がゼロである「光渦」を有する軸対称偏光レーザービームであり、等位相面が螺旋状であること、ビームの強度分布がドーナツ型を呈すること、などの特徴を有している。ベクトルビーム形成素子20は、各レーザー光源10に対応して各々設けられており、入射する赤色光L1r、緑色光L1g、青色光L1bを、それぞれベクトルビームL2である赤色光L2r、緑色光L2g、青色光L2bに変換して射出する。
【0034】
ベクトルビーム形成素子20は、レーザー光L1のモードに応じて適宜選択することができる(小澤、佐藤、「軸対称偏光ビームの発生法と集光特性」、光学、35(2006)、625−634)。
【0035】
具体的には、ベクトルビーム形成素子20として、液晶変調素子を用いることができる。液晶変調素子は、一対の基板間に液晶を挟持した構成を有し、基板の内側の面(液晶に対向する面)に、一方向かつ同心円状に液晶分子の配向規制力が付与されているものを用いることができる。配向規制力の方向は、例えば基板の内側の面に設けられたポリイミド膜にラビングすることで設定することができる。このような基板で挟持される液晶層では、液晶分子が配向規制力の方向(配向方向)に配向し、同心円状に配列する。
【0036】
このようなベクトルビーム形成素子20では、液晶変調素子のON/OFFにより液晶の配列方向を制御することで、軸対称偏光の発生有無を制御することが可能となる。そのため暗い画像や視感度の低い青色が主体となった画像など、スペックルがあまり気にならないような画像を表示する際には、ベクトルビーム形成素子20を時間分割で機能させることにより、ベクトルビーム形成素子20における光の損失を減らし、光の利用効率を上げることができる。
【0037】
また、ベクトルビーム形成素子20として、LP11モードの伝搬モードを有する光ファイバーを用いることもできる。このようなベクトルビーム形成素子20では、光ファイバーによって自由な位置にビームを導くことができるため、光学系設計の自由度が高くなる。
【0038】
さらに、ベクトルビーム形成素子20として、位相差板を用いることもできる。位相板は例えば、レーザー光L1の光線束の中心軸まわりに、分割された複数の領域を有し、各領域を透過するレーザー光L1の偏光方向を、それぞれ異なる角度傾けるまたは円偏光へと変更するものを用いる。
【0039】
このような構成の位相差板に入射するレーザー光は、各領域を透過することで、それぞれ異なる偏光方向の直線偏光や円偏光が集合したベクトルビームへと変換される。このようなベクトルビーム形成素子20は、可動部分がないため故障しにくく信頼性が高い画像表示装置とすることができる。
【0040】
その他のベクトルビーム形成素子20として、ブリュースター条件を満足する角度の光入射面に誘電体多層膜が設けられた円錐状プリズム(アキシコンプリズム)、同心円状のパターンを持った複屈折材料、フォトニック結晶、位相ホログラム、空間光変調器などを用いることができる。ベクトルビーム形成素子20r,20g,20bは、各々異なる種類のものを用いても良く、同じ種類のものを用いても良い。
【0041】
図2は、図1に示すベクトルビーム形成素子20にて形成されるベクトルビームL2についての説明図であり、光線束の中心軸に垂直な面内の偏光分布を示したものである。図における矢印は、ベクトルビームL2が有する偏光成分を示しており、それぞれ符号LPは直線偏光、符号CPは円偏光であることを示している。直線偏光LPを示す両矢印は偏光の振動方向を示し、円偏光CPを示す円弧状の片矢印は、円偏光の回転方向を示している。また、ベクトルビームL2の中心は光渦LVとなっている。
【0042】
ここで「ベクトルビーム」とは、位相が均一であると共に偏光分布(偏光方向)が不均一である光を指している。ベクトルビームと言う名称は、通常のレーザー光が、電場を数式で表現するときにスカラー量となるところ、ベクトルビームではベクトル量になることに由来している。したがって、偏光分布が不均一であるビームは全てがベクトルビームになるが、現時点で存在しているのは光軸上に偏光特異点を持つ軸対称偏光(光線束の中心軸に対して対称である偏光分布)のみであるため、本明細書においては「ベクトルビーム」を「軸対称偏光」としている。偏光分布が略軸対称である場合や、不均一である場合でも目的とするスペックル低減効果が得られる。
【0043】
図に示すように、ベクトルビーム形成素子20により変換されるベクトルビームL2の偏光状態は、レーザー光源から射出されるレーザー光L1のモードと、用いるベクトルビーム形成素子20の種類と、の組み合わせにより様々な状態が存在するが、いずれのモードのベクトルビームも好適に適用することができる。
【0044】
例えば、図2(a)に示すような、直線偏光LP成分の振動方向が放射状であるラジアル偏光や、図2(b)に示すような、直線偏光LP成分の振動方向が円周方向であるアジミュサル偏光(アジマス偏光)、図2(c)に示すような、ラジアル偏光とアジミュサル偏光との間の方向が直線偏光LP成分の振動方向となる偏光(渦巻き状の偏光)となるベクトルビーム形成素子20を用いることができる。
【0045】
更には、得られる偏光が、放射方向と円周方向との異なる2種の振動方向を有する直線偏光LP成分を含み、各偏光成分が交互に繰り返すモード(図2(d))や、偏光成分が一方は放射方向に振動する直線偏光LP、他方は円偏光CPである2種の偏光成分を含み、各偏光成分が交互に繰り返すモード(図2(e))となるベクトルビーム形成素子20を用いることとしても良い。
【0046】
図1にもどって、各ベクトルビーム形成素子20から射出される各色のベクトルビームL2は、ダイクロイックミラー30,40を介すことで合成光LBに合成される。
【0047】
ダイクロイックミラー30は、緑色光L2gを反射し、緑色光L2gより長波長の光である赤色光Lr2を透過させるミラー面を有している。赤色光L2r、緑色光L2gは、このミラー面で選択的に反射あるいは透過して同じ側(走査光学系50側)に射出される。これにより、2つの射出光が重ね合わされて合成光LAとなる。
【0048】
ダイクロイックミラー40は、青色光L2bを反射し、青色光L2bより長波長の光である緑色光L2g、赤色光L2rからなる合成光LAを透過させるミラー面を有している。合成光LA、青色光L2bは、このミラー面で選択的に反射あるいは透過して同じ側(走査光学系50側)に射出され、合成光LBとなる。合成光LBは、射出方向に配置されている走査光学系50に入射する。
【0049】
走査光学系50は、合成光LBの中心軸を、スクリーン1000の表面において副走査方向に変化させる第1偏向ミラー50aと、同じく合成光LBの中心軸をスクリーン1000の表面において主走査方向に変化させる第2偏向ミラー50bとを含んでいる。例えば、主走査方向はスクリーン1000における水平方向であり、副走査方向はスクリーン1000において水平方向と直交する垂直方向である。
【0050】
走査光学系50としては、第1偏向ミラー50aにはMEMS技術等により形成されるマイクロメカニカルミラーを用い、第2偏向ミラー50bにはガルバノミラー等を用いる構成を例示することができる。また、図では2つのミラーにより走査光学系50が構成されている様子を示したが、例えば、1つのミラーに対して2つの駆動軸が設定され、1個で2次元の走査が可能なMEMSミラーを用いることとしても構わない。走査光学系50は、合成光LBを主走査方向及び副走査方向に走査し、表示画像を形成する。
【0051】
また、レーザー光源10から走査光学系50までの光路上には、コリメート光学系やリレー光学系を配置することとしても良い。このコリメート光学系およびリレー光学系は、1つのレンズで構成しても良く、複数のレンズから構成することとしても構わない。
本実施形態のプロジェクター1は、以上のような構成となっている。
【0052】
このようなプロジェクター1では、次のようにしてスペックルを低減する。
【0053】
まず、スペックルは、主としてコヒーレントな光が凹凸のある被照射面に照射されるような場面で生じる。コヒーレントな光であるレーザー光がスクリーンに照射される場面を想定すると、スクリーンに到達したレーザー光は、スクリーン表面の凹凸で散乱して、観察者の網膜に達することとなる。
【0054】
この際、スクリーンの凹凸は、レーザー光の波長に対して十分に大きな振幅を有しており、レーザー光内に−πからπまでのランダムな位相変調を与えることとなる。これらの光が網膜上で結像するが、ランダムな位相変調を受けた各レーザー光同士が干渉し、非常に高いコントラストの干渉縞を生じる。この干渉縞が、スペックルと呼ばれて観察される不具合である。
【0055】
対して、本実施形態のプロジェクター1では、ベクトルビーム形成素子20によって変換されたベクトルビームL2を用いて、画像表示を行っている。上述のようにベクトルビームL2には様々な方向に振動方向を有する偏光成分が含まれているため、スクリーン1000表面では各々の偏光成分に由来する様々なスペックルパターンが形成されることとなる。このように生じるスペックルパターンは、観察者の網膜上で重畳されるために平均化され、観察者はスペックルパターンを認識することができなくなる。結果、表示される画像のスペックルが低減することとなる。
【0056】
以上のような構成のプロジェクター1によれば、スペックル低減を実現し高品質な画像表示が可能となる。
【0057】
なお、本実施形態では、ベクトルビーム形成素子により、光線束の中心軸付近に光渦をする軸対称偏光を形成することとしたが、これに限らず、偏光分布が略軸対称である場合や、不均一である場合でもスペックル低減効果を得ることができる。「略軸対称」とは、例えば、局所の偏光分布に着目すると、光線束の中心軸に対して軸対称になっているが、局所と局所の境界が不明確になっており、この境界付近で対称性が崩れている場合を指す。
【0058】
また、本実施形態では、ベクトルビーム形成素子20は、レーザー光源10R,10G,10Bの全ての光源に対応して配置されることとしたが、これに限らず、ベクトルビーム形成素子20を配置しないレーザー光源があっても良い。このような場合には、緑色の光は、人間の目が最も強く感じる色の光であるため、緑色レーザー光を射出するレーザー光源10Gに対応するベクトルビーム形成素子20Gのみを用いると、効率的に観察者が認識するスペックを低減することができる。
【0059】
[第2実施形態]
図3は、本発明の第2実施形態に係るプロジェクター2の説明図である。本実施形態のプロジェクター2は、第1実施形態のプロジェクター1と一部共通している。異なるのは、赤色、緑色、青色の3色のレーザー光を合成した後にベクトルビーム形成素子を配置することである。したがって、本実施形態において第1実施形態と共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0060】
図に示すように、プロジェクター2が有するベクトルビーム形成素子20は、レーザー光源から射出された赤色、緑色、青色の3色の射出光L1r,L1g,L1bが合成光LCに合成された後の合成光LCの光路上であって、ダイクロイックミラー40と走査光学系50との間に配置されている。合成光LCは3種のレーザー光を合成したものであり、可干渉性の高いコヒーレンス光である。合成光LCは、ベクトルビーム形成素子20に入射してベクトルビームに変換された合成光LDとして、走査光学系50に射出される。
【0061】
このような構成のプロジェクター2によれば、ベクトルビーム形成素子20の配置数を減らすことができるため、スペックルを低減した上で構成を簡素化し小型化されたプロジェクター2とすることが可能となる。
【0062】
[第3実施形態]
図4は、本発明の第3実施形態に係るプロジェクター3の説明図である。本実施形態のプロジェクター3は、第1、第2実施形態のプロジェクター1,2と一部共通している。異なるのは、赤色、緑色、青色の3色のレーザー光を合成した後に再度2つに分岐し、分岐した光を各々ベクトルビームに変換して再合成することである。したがって、本実施形態において第1実施形態と共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0063】
ダイクロイックミラー40を透過した合成光LCは、光路上に配置されたビームスプリッターであるハーフミラー61に入射し、2つの分離光Lxに分岐される。コヒーレント光である合成光LCを分岐して形成される2つの分離光Lxは、いずれもコヒーレント光である。
【0064】
分離光Lxのうち一方は、光路上に配置されたベクトルビーム形成素子21に入射し、ベクトルビームである変換光Lyに変換される。また、他方の分離光Lxは、反射ミラー62を介してベクトルビーム形成素子22に入射し、ベクトルビームである変換光Lzに変換される。ベクトルビーム形成素子21,22としては、上述のものを用いることができる。
【0065】
このとき、変換光Ly,Lzが、互いに異なる偏光分布を有するモードとなるようにベクトルビーム形成素子21,22を選択すると好ましい。本実施形態では、ベクトルビーム形成素子21,22として、変換光Lyが図2(a)に示すモード、変換光Lzが図2(b)に示すモードとなるものを用いる。
【0066】
各ベクトルビーム形成素子21,22にて変換された変換光Ly,Lzは、直接または反射ミラー63を介してハーフミラー64に入射し、合成光LEに合成されて射出される。ハーフミラー61、反射ミラー62、ベクトルビーム形成素子21,22、反射ミラー63、ハーフミラー64は、偏光形成部(偏光形成手段)60を構成している。
【0067】
本実施形態では、合成光LEは図2(a),(b)のモードを重ね合わせたような偏光分布を有することとなり、ビーム内の各位置で偏光成分が互いに直交する。そのため、各々の偏光成分に基づいて複雑なスペックルパターンが形成され、それらが重畳することとなり、スペックルの低減を実現することが可能となる。
本実施形態のプロジェクター3は、以上のような構成となっている。
【0068】
このような構成のプロジェクター3によれば、効果的にスペックルの低減を実現することが可能なプロジェクター3とすることができる。
【0069】
なお、本実施形態では、2つの変換光Ly,Lzを、ハーフミラー64を用いて1つの合成光LEに合成することとしたがこれに限らず、例えば、変換光Ly,Lzを小径の導波路(ファイバー)内に導入して変換光Ly,Lzの光路を曲げ、同じ位置から同方向(走査光学系50の方向)に射出することとしてもできる。
【0070】
[第4実施形態]
図5は、本発明の第4実施形態に係るプロジェクター4の説明図である。上述の第1〜第3実施形態では、被投射面上で2次元的に走査して投射画像を描画する走査型プロジェクターについて言及したが、本実施形態のプロジェクター4は、ベクトルビームを射出する光源部が一方向に配列した画像形成部71を有し、画像形成部71から射出される光をスクリーン上で走査することにより画像を表示する構成となっている。以下説明する。
【0071】
プロジェクター4は、レーザー光を射出するレーザー光源が一方向に配列した画像形成部71、各々ベクトルビームに変換するベクトルビーム形成部23、ベクトルビーム形成部24から射出されたベクトルビームをスクリーン1000上で走査し画像を描画する走査光学系51を有している。
【0072】
画像形成部71が有する複数のレーザー光源から射出されたレーザー光は、ベクトルビーム形成部23に入射し、軸対称偏光ビームであるベクトルビームに変換される。ベクトルビーム形成部23としては、第1実施形態で示したベクトルビーム形成素子が、画像形成部71が有するレーザー光源に1対1で対向して一方向に配列したものを用いることができる。画像形成部71が有するレーザー光源と、ベクトルビーム形成部23が有するベクトルビーム形成素子と、が本発明の光源部を形成している。形成された各ベクトルビームは、走査光学系51に入射する。
【0073】
走査光学系51は、ベクトルビーム形成部23から射出される一方向に配列したベクトルビームを、該ベクトルビームの配列方向と交差する方向(例えば直行する方向)に走査し、表示画像を形成する。走査光学系51としては、ガルバノミラー等を用いる構成を例示することができる。
本実施形態のプロジェクター4は、以上のような構成となっている。
【0074】
以上のような構成のプロジェクター4によれば、スペックル低減を実現し高品質な画像表示が可能となる。
【0075】
[第5実施形態]
図6は、本発明の第5実施形態に係るプロジェクター5の説明図である。上述の第1〜第4実施形態では、走査型プロジェクターについて言及したが、本実施形態のプロジェクター5は、ベクトルビームを射出する光源部が2次元マトリクス状に配列した画像形成部を有し、画像形成部から射出される光をスクリーンに投写することにより画像を表示する構成となっている。以下説明する。
【0076】
プロジェクター5は、レーザー光を射出するレーザー光源が2次元マトリクス状に配列した画像形成部71(71R,71G,71B)、各画像形成部71射出されたレーザー光を各々ベクトルビームに変換するベクトルビーム形成部24、各ベクトルビーム形成部24から射出されたベクトルビームを1つの光に合成するダイクロイックプリズム(色合成手段)75、ダイクロイックプリズム75で合成された光をスクリーン1000上に投写する投写レンズ(投写光学系)80を有している。
【0077】
画像形成部71は、赤色レーザー光(赤色光)を射出するレーザー光源が、表示する画像を構成する画素に対応して2次元マトリクス状に配列した画像形成部71Rと、緑色レーザー光(緑色光)を射出するレーザー光源が、表示する画像を構成する画素に対応して2次元マトリクス状に配列した画像形成部71Gと、青色レーザー光(青色光)を射出するレーザー光源が、表示する画像を構成する画素に対応して2次元マトリクス状に配列した画像形成部71Bと、を含んでいる。それぞれの画像形成部では、表示すべき画像の各色成分を形成し射出している。各射出光は可干渉性の高いコヒーレンス光となっており、ほぼ完全な平面波として射出されている。
【0078】
赤色、緑色、青色の各射出光は、それぞれベクトルビーム形成部24に入射し、軸対称偏光ビームであるベクトルビームに変換される。ベクトルビーム形成部24としては、第1実施形態で示したベクトルビーム形成素子が、画像形成部が有するレーザー光源に1対1で対向して2次元マトリクス状に配列したものを用いることができる。画像形成部71が有するレーザー光源と、ベクトルビーム形成部24が有するベクトルビーム形成素子と、が本発明の光源部を形成している。形成された各ベクトルビームは、ダイクロイックプリズム75に入射する。
【0079】
ダイクロイックプリズム75は、三角柱プリズムが貼り合わされた構造となっており、その内面に赤色のベクトルビームが反射し緑色のベクトルビームが透過するミラー面と、青色のベクトルビームが反射し緑色ベクトルビームが透過するミラー面と、が互いに直交して形成されている。赤色、緑色、青色の各ベクトルビームは、これらのミラー面で選択的に反射あるいは透過して同じ側(投写レンズ80側)に射出される。これにより、3つの色光が重ね合わされて画像光となる。画像光は、投写レンズ80に入射し、投写レンズ80によって拡大投写されるようになっている。
本実施形態のプロジェクター5は、以上のような構成となっている。
【0080】
以上のような構成のプロジェクター5によれば、スペックル低減を実現し高品質な画像表示が可能となる。
【0081】
[第6実施形態]
図7は、本発明の第6実施形態に係るプロジェクター6の説明図である。本実施形態のプロジェクター6は、第5実施形態のプロジェクター5と一部共通しており、ベクトルビーム変換部の配置位置が異なっている。したがって、本実施形態において第5実施形態と共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0082】
プロジェクター6は、画像形成部71R,71G,71Bから射出された各色のレーザー光がダイクロイックプリズム75で合成されて画像光を形成し、当該画像光が入射する位置にベクトルビーム形成部25を配置している。このような構成だと、第4実施形態のように各色のレーザー光をそれぞれベクトルビームに変換する場合と比べ、用いるベクトルビーム形成部25が少なくて済む。形成されるベクトルビームは投写レンズ80によってスクリーン1000上に投写される。
【0083】
また、プロジェクター6では、ダイクロイックプリズム75とベクトルビーム形成部25との間の光路上に拡大光学系90を配設し、ダイクロイックプリズム75から射出される画像光を拡大することとしている。このような構成により、二次元マトリクス状に配列されたベクトルビーム形成部25を微細化する必要性が少なくなり、素子作成負荷を低減することができる。
【0084】
以上のような構成のプロジェクター6によれば、スペックル低減を実現し高品質な画像表示が可能となる。
【0085】
[第7実施形態]
図8は、本発明の第7実施形態に係るプロジェクターに用いる光源の説明図である。 上述の第1〜第6実施形態のプロジェクターでは、いずれもレーザー光を射出する光源と、射出されたレーザー光をベクトルビームに変換するベクトルビーム変換素子と、により軸対称偏光を射出する光源部を構成するものとしたが、本発明はこれに限らない。本実施形態で説明するような、軸対称偏光を射出する半導体レーザー素子を、本発明の光源部として用いることもできる。
【0086】
図8は、軸対称偏光を射出する光源部11の概略図である。光源部11は、光L3を射出するエミッター(発光部)12と、光L3のうち一部の波長の光をエミッター12側へ反射するとともに、レーザー発振した光の一部を透過させる外部共振ミラー(外部共振器)13と、エミッター12と外部共振ミラー13との間の光路上に配置されたベクトルビーム形成素子26と、を有している。ベクトルビーム形成素子26は、例えばブリュースタープリズムや複屈折結晶を用いることができる。外部共振ミラー13は、通常知られたものを用いることができる。
【0087】
また、図9に示すように、光源部11が一次元、もしくは二次元マトリクス状に配列した光源構成の場合は、ベクトルビーム形成素子26も光源部11の配置に対応したアレイ状とし、外部共振ミラー13は全の光源部11に対して共通とすることができる。
【0088】
このような構成の光源部を有するプロジェクターにおいては、共振器外の光路上にベクトルビーム形成素子を配置する必要が無く、光源部が共振構造によって増幅されたベクトルビームを射出するため、ベクトルビームの形成による光の損失を考慮する必要がない。さらに、共振器外でベクトルビームを形成する場合には、偏光方向が異なる成分同士の境界が判然としない擬似的なベクトルビームとなる場合があるが、共振器内で偏光選択することにより、より完全なベクトルビームを発振させることが可能となる。そのため、光の損失を抑え完全なベクトルビームを用いて画像表示を行うプロジェクターとすることができる。
【0089】
なお、本実施形態のプロジェクターにおいては、ベクトルビーム形成素子と外部共振ミラーとが別体であることとしたが、図10に示すように外部共振ミラーとして通常の外部共振ミラー13の光入射側表面に回折格子14を形成したグレーティングミラー15を用いることにより、外部共振器およびベクトルビーム形成の機能を兼ね備えた外部共振ミラーとすることができる。なお、回折格子14の形成材料は、外部共振ミラーと同じ材料であっても良く、外部共振ミラーと異なる材料であっても良い。また、グレーティングミラー15は、エッチングなどの微細加工技術を用いて外部共振ミラー13の表面を加工して形成したものであっても構わない。
【0090】
このような外部共振ミラーを有する光源部では、外部共振器と偏光形成手段とが一体化しているため、装置構成を小型化することができ、プロジェクターの小型化に貢献することができる。また、外部共振器のアライメントとベクトルビーム形成素子のアライメントとを同時に行うことができるため、装置組立が容易となる。
【0091】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0092】
例えば、上記第1〜第3実施形態では、いずれも3種のレーザー光源を用いたフルカラー表示が可能なプロジェクターについて説明したが、単色光を用いたプロジェクターにも適用することが可能である。
【0093】
また、上記第4実施形態では、1つの画像形成部71を用いて画像を表示するプロジェクターについて説明したが、これに限らない。第5,第6実施形態のように赤色レーザー光、緑色レーザー光、青色レーザー光を射出する複数の画像形成部を用いるとともに、各画像形成部から射出された色光を合成する色合成光学系を設けるものとしても良い。その際、ベクトルビーム形成部の配置位置は、第5,第6実施形態に準じて、色合成光学系に入射する前の光路上に配置することとしても良く、色合成光学系を透過した後の光路上に配置することとしても良い。
【0094】
さらに、上記第5,第6実施形態では、3色のベクトルビームをそれぞれ異なる画像形成部から射出させるものとして説明したが、例えば同一の画像形成部上に赤色、緑色、青色のレーザー光を射出する半導体レーザー素子を配列し、フルカラー表示が可能な画像形成部としても良い。
【符号の説明】
【0095】
1〜6…プロジェクター(画像表示装置)、10…レーザー光源(光源)、20〜22、26…ベクトルビーム形成素子(偏光形成手段)、23〜25…ベクトルビーム形成部(偏光形成手段)、30,40…ダイクロイックミラー(色合成光学系)、50…走査光学系(走査手段)、61…ハーフミラー(分岐手段)、64…ハーフミラー(光合成手段)、70,71…画像形成部、75…ダイクロイックプリズム(色合成光学系)、80…投写レンズ(投写光学系)、90…拡大光学系、L1…レーザー光、L2…ベクトルビーム(軸対称偏光)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光線束の中心軸に対して偏光分布が対称である軸対称偏光を射出する光源部と、
前記軸対称偏光を被投射面上で走査して画像を描画する走査手段と、を備えることを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
光線束の中心軸に対して偏光分布が対称である軸対称偏光を射出する光源部が、表示する画像を構成する画素に対応して2次元マトリクス状に複数配列され、前記軸対称偏光を用いて被投射面上に前記画像を形成することを特徴とする画像表示装置。
【請求項3】
前記光源部は、レーザー光を射出するレーザー光源と、
前記レーザー光の光路上に配置され、入射する前記レーザー光を前記軸対称偏光に変換する偏光形成手段と、を有することを特徴とする請求項1または2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記偏光形成手段は、一対の基板間に液晶層を挟持した液晶変調素子であり、
前記一対の基板の前記液晶層に対向する面は、同心円状に前記液晶層の液晶分子を配向させる配向規制力が付与されていることを特徴とする請求項3に記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記偏光形成手段は、LP11モードの伝搬モードを有する光ファイバーであることを特徴とする請求項3に記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記偏光形成手段は位相差板であり、
前記位相差板は、照射される前記レーザー光のビームスポット内において、前記レーザー光の偏光方向を第1の方向とする第1領域と、前記第1の方向とは異なる第2の方向とする第2領域と、を有することを特徴とする請求項3に記載の画像表示装置。
【請求項7】
前記偏光形成手段は、前記レーザー光を第1分離光および第2分離光に分岐する分岐手段と、
前記第1分離光および前記第2分離光を1つの合成光に合成する光合成手段と、
前記第1分離光または前記第2分離光の光路上の少なくともいずれか一方に配置され、前記第1分離光および前記第2分離光の偏光方向を異ならせる偏光素子と、を有することを特徴とする請求項3に記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記レーザー光源と前記偏光形成手段との間の光路上に、拡大光学系が配置されていることを特徴とする請求項3から7のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項9】
前記光源部は、光を射出する発光部と、
前記発光部から射出された光の一部を、前記発光部に向けて反射させる外部共振器と、
前記発光部と前記外部共振器との間の光路上に配置され、入射する前記光を前記軸対称偏光に変換する偏光形成手段と、を有することを特徴とする請求項1または2に記載の画像表示装置。
【請求項10】
前記光源部は、光を射出する発光部と、
前記発光部から射出された光の一部を、前記発光部に向けて反射させる外部共振器と、を有し、
前記外部共振器は、入射する前記光を前記軸対称偏光に変換して反射するグレーティングミラーであることを特徴とする請求項1または2に記載の画像表示装置。
【請求項11】
前記光源部と、
前記光源部から射出される前記軸対称偏光とは異なる色のレーザー光を射出するレーザー光源と、
前記軸対称偏光および前記異なる色のレーザー光を合成する色合成光学系と、を有し、
前記軸対称偏光は、前記異なる色のレーザー光よりも視感度が高い色光であることを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項12】
互いに異なる色の前記軸対称偏光を射出する複数の前記光源部と、
複数の前記異なる色の軸対称偏光を合成する色合成光学系と、を有することを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項13】
互いに異なる色のレーザー光を射出する複数のレーザー光源と、
複数の前記異なる色のレーザー光を合成する色合成光学系と、
前記色合成光学系から射出された合成レーザー光の光路上に配置された前記偏光形成手段と、を有することを特徴とする請求項3から8のいずれか1項に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−244021(P2010−244021A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24767(P2010−24767)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】