説明

画像表示装置

【課題】照明光学系の光利用効率が高く、縦置き可能な画像表示装置に関する。
【解決手段】光源、集光器、光ミキシング素子、カラーフィルタ、反射型画像表示素子、第1リレーレンズ及び第2リレーレンズ、第1折り返しミラー及び第2折り返しミラーからなる照明光学系と、反射型画像表示素子を構成する複数の微小ミラーのうちオン状態にある微小ミラーからの反射光を被投射面に投射する投射光学系と、を有し、反射型画像表示素子が有する表示面と被投射面との成す角が略直交しており、第1リレーレンズが光源と光ミキシング素子が成す光軸に対してチルトしている、画像表示装置による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像を拡大してスクリーンに表示する画像表示装置に関するものであって、詳しくは、照明光学系の光利用効率が高く、縦置き可能な画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的にプロジェクタと称されている画像表示装置は、画像表示素子の違いによって、CRTプロジェクタ、液晶プロジェクタ、DMD(Digital Micromirror Device)プロジェクタなどがある。上記DMDは、2次元的に配置された複数の微小ミラーを有し、個々の微小ミラーの傾斜角度を変化させて反射光をオン・オフすることで投射画像を形成する反射型画像表示素子である。本発明に係る画像表示装置は、画像表示素子として上記DMDのような反射型画像表示素子を備えている。反射型画像表示素子を備えた画像表示装置であって本発明に係る画像表示装置に関連のある公知の技術として、以下に述べる特許文献1、特許文献2に記載されている技術がある。
【0003】
特許文献1には、ランプ光源、カラーフィルタ、コンデンサレンズ、平面ミラー、球面ミラー、反射型画像表示素子であるDMDからなる照明光学系を有し、この照明光学系に係るランプ光源の光軸とコンデンサレンズの光軸が、同軸もしくは並行であって偏心していない画像表示装置が記載されている。
【0004】
特許文献2に記載されている画像表示装置も、特許文献1の画像表示装置とほぼ同じ構成を備えており、照明光学系からの光が、投射光学系を介して被投射面(例えばスクリーン)に投射されるよう構成されており、DMDの画像形成面と被投射面が並行関係となるものである。
【0005】
上記従来から知られている画像表示装置は、一般的に、装置本体を机上等の所定の高さに設置して使用する。設置箇所から室内の側壁と平行の被投射面に画像を投射して表示する。装置の設置場所の高さは、投射された画像が見る人の視界と同じくらいの高さか、多少低いくらいの高さである。このとき画像表示装置の投射光学系の光軸は、被投射面に対して略垂直になる。
【0006】
上記のような一般的な使用態様において、画像表示装置の内部に備えられている反射型画像表示素子の画像形成面の法線は、投射レンズの光軸と平行になる。従って、反射型画像表示素子の画像形成面は、被投射面と平行である。
【0007】
また、被投射面上の投射画像の位置を調整するために、画像表示装置を傾けることもある。この場合、投射レンズの光軸は被投射面の法線に対して多少の傾きを持つ状態になる。この傾きによって形成される被投射面の法線(被投射面の法線方向を基準とした場合の法線)と、投射レンズの光軸が成す角は鋭角である。本明細書において、投射レンズの光軸と、被投射面との間に上記の位置関係が成り立つ画像表示装置を「横型プロジェクタ」という。
【0008】
上記のような横型プロジェクタは、表示画像の大きさを確保するためには、画像表示装置本体と被投射面との距離をある程度設ける必要があり、この被投射面との距離の確保が、フロント投射型の画像表示装置の設置に関する制約条件の一つとなる。
【0009】
また、被投射面から遠すぎると画像を見えにくくなるため、画像を見る人はできるだけ被投射面の近くに寄ろうとする。そのために、上記のような横型プロジェクタは、設置場所と被投射面との間に、画像を見る人が存在する場合がある。すなわち、投射光の光路上に障害物となりうる「人」が存在することになるので、「人の影」によって投射光が邪魔をされて画像が見えにくくなることがある。また、講演等で使用するときは、講演者は画像表示装置と対面する状態になるので、投射光により眩しい状態になる。
【0010】
これらの課題を解決するものとして、近年では、投射レンズの短焦点化と広角化を図り、至近距離からの画像投射を可能にする画像表示装置が開発されている。画像表示装置と被投射面との距離を近づけることができると、上記のように人影によって投射光が邪魔されることが無くなり、また、講演者が眩しく感じることも無くなる。
【0011】
近年では、より至近距離の被投射面に大型の画像を表示させることができる「超至近投射方式」を採用する画像表示装置が開発されている。超至近距離投射方式の画像表示装置は、投射レンズから出射した光を自由曲面ミラーで反射させて、画像を被投射面へ投射するものである。平面ミラーではなく自由曲面ミラーを用いるのは、投射レンズから出射した光を平面ミラーで反射させた場合は、特定の角度以外では、投射画像に台形歪みなどが生じるからである。この投射レンズと自由曲面ミラーを合わせて投射光学系という。
【0012】
画像表示装置の性能を示す指標の一つに、至近距離からの投射の度合いを示す「スローレシオ(Throw Ratio)」がある。スローレシオは投射画像の対角サイズを、画像表示装置から被投射面までの距離で割った値である。従って、スローレシオが小さい画像表示装置ほど、被投射面までの距離が短くても、所定の大きさの画像を投射することができる。
【0013】
ここで、超至近距離投射が可能な画像表示装置の使用態様について、図24を用いて説明する。図24に示すように、超至近距離投射が可能な画像表示装置であるプロジェクタ100と被投射面であるスクリーン200の距離は至近であるから、観察者300は、プロジェクタ100の背面側に位置することになる。このとき、プロジェクタ100の設置面を位置Aとすると、観察者300の視界にプロジェクタ100の本体が入り込んで邪魔になる。そこでプロジェクタ100の設置位置は、図24の位置Bに示すように、スクリーンよりも下の位置が望ましい。例えば、プロジェクタ100を床に直接おけばよい。
【0014】
プロジェクタ100を床において、至近かつ上方にあるスクリーン200に画像を投射すると、スクリーン200の下端(床側)への投射光の入射角と、スクリーン200の上端(天井側)への投射光の入射角が大きく異なる状態になる。すなわち、スクリーン200の上端への入射角が大きく、スクリーン200の下端への入射角は小さくなる。入射角が大きいスクリーン200の上端に投射された光は、天井の方向に反射される割合が増え、観察者300側に向かう光の割合が小さくなるため、スクリーン200の上側の画像が暗くなる。
【0015】
つまり、超至近距離投射方式の画像表示装置は、被投射面上の画像に明るさのムラが生じることがある。言い換えれば、超至近距離投射方式の画像表示装置は、画像を投射するための光学系、特に照明光学系における光利用効率の向上が課題となる。
【0016】
照明光学系における光利用効率を向上させるには、投射レンズの光軸と、反射型画像表示素子の法線の位置関係が重要となる。投射レンズの光軸が反射型画像表示素子の法線に対して傾いていると、投射画像の片一方だけぼけた画像になるなどの不具合が生じるからである。よって、反射型画像表示素子と投射レンズの配置と位置調整は、慎重に行う必要がある。
【0017】
また、照明光学系からの光の光利用効率を向上させるには、投射レンズの光軸がずれないように、投射レンズが堅牢に固定されている必要がある。投射レンズは複数のレンズを組み合わせて構成されている。この複数のレンズは鏡筒に納められて画像表示装置の所定の位置関係に固定される。鏡筒を画像表示装置の筐体に固定するとき、鏡筒が傾かないように調整する必要がある。
【0018】
また、長期間にわたり画像表示装置を使用しても、衝撃や振動などの外的要因や、鏡筒を含めた各部材の自重などの内的要因によって、鏡胴や、その内部の投射レンズの光軸に傾きが生じないようにしなければならない。このように、画像表示装置の照明光学系における光利用効率を向上させるためには、画像表示装置の組立工程における精度と、投射レンズを備えた鏡胴の長期使用に対する堅牢性が必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであって、照明光学系の光利用効率を向上させることで、縦置きも可能な画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は画像表示装置に関するものであって、光源と、光源から出射される光を集光する集光器と、集光器の近傍に入射端を有する光ミキシング素子と、集光器と光ミキシング素子の間に配置され、光ミキシング素子に入射される光に時分割で色要素を重畳するカラーフィルタと、2次元的に配置された複数の微小ミラーを有し、個々の微小ミラーの傾き角度をオン状態とオフ状態で変化させることにより反射光の出射をオン・オフさせる反射型画像表示素子と、光ミキシング素子の出射端から反射型画像表示素子までの間に配置されている第1リレーレンズおよび第2リレーレンズ、第1折り返しミラー及び第2折り返しミラーと、からなる照明光学系と、反射型画像表示素子を構成する複数の微小ミラーのうちオン状態にある微小ミラーからの反射光を被投射面に投射する投射光学系と、を有し、反射型画像表示素子が有する表示面と被投射面との成す角が略直交しており、第1リレーレンズが光源と光ミキシング素子が成す光軸に対してチルトしていることを最も主な特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、照明系の光利用効率が高く、照明系及び投射レンズ設置が安定な、例えば縦型の画像表示装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る画像表示装置の構成の例を示す概要図である。
【図2】上記画像表示装置が備える反射型画像表示素子の例を示す(a)平面図、(b)一部拡大図、(c)側面図、(d)投射光の反射状態図、である。
【図3】上記画像表示装置が備える光源とランプリフレクタの例を示す(a)正面図、(b)側面図、である。
【図4】上記画像表示装置が備える照明均一化素子の例を示す斜視図である。
【図5】上記照明均一化素子の設置状態の例を示す平面図である。
【図6】上記画像表示装置が備えるカラーホイールの例を示す平面図である。
【図7】上記画像表示装置が備える照明光学系の例を示す概要図である。
【図8】上記画像表示装置が備える照明光学系の例を示す概要図である。
【図9】上記画像表示装置と従来の画像表示装置の設置態様を比較した側面図である。
【図10】本発明に係る画像表示装置の使用態様の例を示す平面図である。
【図11】上記画像表示装置の使用態様の別の例を示す平面図である。
【図12】上記画像表示装置の投射レンズの固定方法の例を示す(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図13】上記画像表示装置が備える照明光学系の別の例を示す概略図である。
【図14】上記画像表示装置が備える照明光学系を構成するリレーレンズの保持方法の例を示す概要図である。
【図15】上記画像表示装置が備える照明光学系を構成するリレーレンズの保持方法の別の例を示す概要図である。
【図16】上記画像表示装置が備える照明光学系を構成するリレーレンズの保持方法のさらに別の例を示す概要図である。
【図17】上記画像表示装置が備える第1リレーレンズの4次非球面係数と光利用効率との関係の例について示すグラフである。
【図18】上記画像表示装置が備える第2リレーレンズの4次非球面係数と光利用効率との関係の例について示すグラフである。
【図19】上記画像表示装置が備える第2折り返しミラーの4次非球面係数と光利用効率との関係の例について示すグラフである。
【図20】上記画像表示装置が備える第2折り返しミラーの6次非球面係数と光利用効率との関係の例について示すグラフである。
【図21】本発明に係る画像表示装置が備える投射光学系の例を示す概要図である。
【図22】上記画像表示装置が備える反射型画像表示素子における光量分布の一例を示す等高線図である。
【図23】上記画像表示装置が備える投射光学系から出射された投射光の被投射面における光量分布の一例を示す等高線図である。
【図24】超至近距離投射が可能な画像表示装置の設置態様の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る画像表示装置の実施例について図面を用いながら説明する。図1は、本発明に係る画像表示装置の例である縦型プロジェクタの構成を示す概要図である。符号1は縦型プロジェクタ本体(以下「プロジェクタ1」という。)を、符号14は投射面の例であるスクリーンを表している。以下の説明において、水平面内の一方向をx軸、これに直交する水平面内の一方向をz軸、x軸にもz軸にも直交する垂直方向の軸をy軸とする。また、x軸周りの回転をα、y軸周りの回転をβ、z軸周りの回転をγとして表記する。
【0024】
図1において、プロジェクタ1は、白色光源である光源2と、光源2から出射された光を集光するランプリフレクタ3と、光源2の飛散を防ぐ防爆ガラス4と、光源2からの光を赤・緑・青の光に時分割で変換する回転するカラーフィルタであるカラーホイール5と、ランプリフレクタ3によって集光された光の光量分布を一様にする光ミキシング素子である照明均一化素子6と、第1リレーレンズ7と、第2リレーレンズ8と、第1折り返しミラー9と、第2折り返しミラー10と、反射型画像表示素子であるDMD11と、投射レンズ12と、自由曲面ミラー13と、を有してなる。
【0025】
また、プロジェクタ1は、図1にて図示した以外にも、冷却ファン、ランプ駆動手段、DMD駆動手段、各種光学素子の保持部等を備えている。ここで、光源2から第2折り返しミラー10までを照明光学系という。また、投射レンズ12と自由曲面ミラー13を合わせて投射光学系という。
【0026】
光源2から出射された白色光は、ランプリフレクタ3によって集光される。ランプリフレクタ3は、楕円体の外形を有してなり、その楕円体の第1焦点に相当する位置に光源2が配置され、第2焦点に相当する位置に照明均一化素子6の入口(入射端)が配置されている。従って、光源2から出射された光は、照明化均一素子6の入射端に集光される。
【0027】
光源2と照明均一化素子6の間には、防爆ガラス4とカラーホイール5が配置されている。光源2から出射された白色光のうち、紫外線(UV)及び赤外線(IR)は、防爆ガラス4に設けられたUVカットフィルターとIRカットフィルターによって遮断される。防爆ガラス4を通過した光は、カラーホイール5によって、例えば赤(R)、緑(G)、青(B)の三色の光に、時分割処理で変換される。これらの色要素が重畳された光は、照明均一化素子6に入射されて、その内部で多数回の反射をし、空間的な強度分布が均一な光になる。
【0028】
照明均一化素子6を通過した光は第1リレーレンズ7と、第2リレーレンズ8を経て、第1折り返しミラー9と第2折り返しミラー10で反射されてDMD11に到達する。
第2リレーレンズ8を通過した照明光は、DMD11の上方を通り、傾けて設置されている第1折り返しミラー9によって斜め上方に反射され、この反射光はさらに第2折り返しミラー10により斜め下方のDMD11に向けて反射される。
【0029】
照明均一化素子6の出射端面とDMD11の画像形成面が共役の関係となるように、第1リレーレンズ7と第2リレーレンズ8、及び第2折り返しミラー10のパワー配置を調整する。本実施例に係るプロジェクタ1は、上記のように、光路を3次元的に折り返すことで、全体の小型化を図っている。
【0030】
DMD11は、微小なミラーアレイからなる反射型画像表示素子であって、一辺が10μm前後の正方形のミラーが配列されてなる素子である。DMD11の微小ミラーの配列数によって、投射される画像の解像度が決定される。例えば、投射画像の解像度をXGAにするのであれば、1024×768画素(或いはピクセル)に相当する微小ミラーが配置されているDMD11を用いることとなる。また、投射画像の解像度を、WXAGAにするのであれば、1280×768画素(或いはピクセル)に相当する微小ミラーが配置されているDMD11を用いる。なお、XGAとは、「Extended Graphics Array」の略である。また、WXGAとは「Wide XGA」の略である。
【0031】
DMD11が備える微小ミラーは、正方形の対角線を回転軸として回転可能な構成を有している。微小ミラーの回転角度は±10°から±12°である。例えば微小ミラーが+12°の回転をした状態で当該ミラーによって反射される光を「ON光」とし、画像形成に寄与するように構成し、微小ミラーが−12°の回転をした状態で当該ミラーによって反射される光を「OFF光」として、画像形成には寄与せずに、黒表示とするように構成する。つまり、DMD11による「ON光」は上方に進み、第2折り返しミラー10の側方を通って投射レンズ12に入射するように各光学素子が配置されている。
【0032】
すなわち、ON光のとき、DMD11の微小ミラーで反射された光は、投射レンズ12の入射瞳に入り、投射レンズ12を経て自由曲面ミラー13で反射されて、スクリーン14に到達する。一方、OFF光のときは、DMD11の微小ミラーで反射された光は、投射レンズ12の入射瞳に入ることはできず、DMD11の近傍に設けてあるOFF光処理用の吸収部材(図示せず)に到達する。このように、DMD11の微小ミラーの回転を制御することで、表示画像に必要な投射光を投射光学系を介して、スクリーン14に投射することができる。
【0033】
ここでDMD11について説明をする。図2は、DMD11の概要を表した図である。図2(a)はDMD11を上から見た平面図、図2(b)はDMD11の画像表示領域の一部拡大図、図2(c)は、DMD11の側面図、図2(d)は、DMD11における画像投射光の反射の様子を表す図、である。
【0034】
図2(a)に示すように、DMD11の外観は矩形であって、複数の微小ミラーを配列してなる画像表示領域110を備えている。画像表示領域110の一部の領域110aを拡大した図を図2(b)に示す。
【0035】
図2(b)に示すように、一部画像表示領域110aを拡大すると、複数の微小ミラー110が配列されている。微小ミラー110は、正方形であって、1つの微小ミラー110が投射光によって表示される画像の1画素に相当する。微小ミラー110の配列周期を画素ピッチPという。画素ピッチPは例えば、約10μmである。画像表示領域110の対角線の長さによって、投射画像の表示サイズが決定される。
【0036】
図2(b)において、微小ミラー110は隙間なく配置されているように表されているが、実際の微小ミラーのサイズは画素ピッチPよりも若干小さい。画素ピッチPに対する実際のミラーサイズを開口率という。各微小ミラー110は、その対角線を回転軸として回転することができる。微小ミラー110の回転方向は、回転軸に対して時計方向をプラスとし反時計方向をマイナスとする。また回転角度は±10°から±12°である。
【0037】
DMD11の上面側には、図2(c)に示すように、保護ガラス112が配置されている。この保護ガラス112は、微小ミラー110の表面に埃等が付着することを防ぐためのものである。
【0038】
図2(d)に示すように、微小ミラー111は、対角線を回転軸として時計方向と反時計方向に回転することができる。微小ミラー111aは、時計方向に回転しているので、反射された光はON光となって、図示しない投射レンズの入射瞳に向かう。微小ミラー111bは、反時計方向に回転しているので、反射された光はOFF光となって、図示しない投射レンズの入射瞳には向かわず、吸収部材に向かう。
【0039】
次に光源2およびランプリフレクタ3について説明をする。光源2は、管球形状の高圧水銀ランプが好ましい。また、ハロゲンランプであってもよい。ランプリフレクタ3は楕円体であって、楕円の二つの焦点の一方に、光源2を設置し、他方の焦点に、照明均一化素子6の入射端を設置する。光源2の出力は例えば、180W−260W(ワット)前後のものを用いる。光源2の出力が高いほど、明るい投射画像を得ることができる。
【0040】
光源2に水銀ランプを用いた場合、破裂することがあり得る。光源2が破裂してもガラス片が内部に飛散しないように、ランプリフレクタ3の前面には防爆ガラス4が設置される。防爆ガラス4は、例えば40mm角で厚みが3mm前後の硼珪酸ガラスであって、光源2の光軸に対して例えば10°傾けて設置する。防爆ガラス4を光源2の光軸に対して傾けて設置する理由は、防爆ガラス4によって反射した光が戻り光となって、光源2の位置で焦点を結ばないようにするためであって、このような戻り光があると光源2の寿命が短くなるからである。
【0041】
また防爆ガラス4には、赤外線(IR)カットフィルター、紫外線(UV)カットフィルターの多層膜を施す。またランプリフレクタ3はハウジングに納められており、防爆のために、目の細かい金属のメッシュでハウジングを覆っても良い。プロジェクタ1において光源2は消耗品であるから、使用時間が数千時間を超えたあたりで明るさが低減する。光源2の交換が必要になったときは、光源2を含むランプハウジング(ユニット)ごと交換することになる。
【0042】
図3において、光源2とランプリフレクタ3の概要を示す。図3(a)は、光源2とランプリフレクタ3からなるランプハウジング30の正面図、図3(b)は、ランプハウジング30の側面図である。
【0043】
光源2は紫外線から可視光線、そして赤外線まで広い範囲の光を放射するが、出射された光のうち、紫外線と赤外線は上記の防爆ガラス4によって、光源2から出射された直後でカットされ、残りの可視光域の光がカラーホイール5によって色付けされる。
【0044】
次に、照明均一化素子6について説明する。図4は、照明化均一素子6の概要を示す斜視図である。図4に示すように照明均一化素子6は、四枚の板状のミラーを、ミラー面が内側に向くように張り合わせて形成されたものである。
【0045】
照明均一化素子6を構成する各ミラーは、耐熱性に優れた接着剤などを用いて貼り合わされている。照明均一化素子6は、長ければ長いほど内面での反射回数が増え、入射された光の配光分布を均一にすることができる。しかし、照明均一化素子6を長くすると、照明光学系全体が大きくなり、プロジェクタ1の筐体の大きさに影響を与えることとなる。よって、均一化の度合いと照明光学系の大きさは、トレードオフの関係にある。本発明に係る照明均一化素子6の長さは20mmから30mmであって、25mmが最適である。
【0046】
DMD11に対角線サイズが0.65インチであって、画素ピッチPが10.8μmであるものを採用したとする。このときの照明均一化素子6の内寸は、6mm×3mm程度である。照明均一化素子6に用いるミラーの反射率は98%(波長420nm〜680nm)以上が好ましい。
【0047】
また照明均一化素子6に用いるミラーはAg、Alなどの金属膜を真空蒸着などによってガラス面に成膜したものである。この場合、金属膜でなく、誘電体多層膜であってもよい。照明均一化素子6を構成する各々の板の厚みは1mm前後である。照明均一化素子6は、ライトトンネル、ライトパイプ、ロッドレンズ、ロッドインテグレータなどとも呼ばれる。
【0048】
照明均一化素子6は、ミラー板を張り合わせたもの以外のもの、例えば、ガラス柱でもよい。この場合は、ガラス柱内面の全反射を用いることになるため、反射膜の作製は不要となる。
【0049】
光源2から出射され、ランプリフレクタ3によって集光された光は、配光分布を有している。従って、そのままスクリーン14に投射すると明るさムラが生じ、例えば、スクリーン14の中心領域の画像は明るく、周辺の画像は暗くなる。照明均一化素子6は、このような明るさムラを防ぐために用いられる部材であって、その原理はカレードスコープと同様である。照明均一化素子6に適当な角度で入射した光は、内面のミラーで複数回反射を繰り返し、光を折りたたむように重ね合わされる。
【0050】
本実施例に係るプロジェクタ1の照明光学系を構成する光学素子は、図1に示したように3次元的に配置されている。このため、照明均一化素子6を光軸に対して回転させて配置している。ここで、照明均一化素子6の回転について説明をする。図5は照明均一化素子6をz軸方向からみた平面図であって、γが−11.42°の状態を例示している。
【0051】
次に、本実施例に係るプロジェクタ1が備えるカラーホイール5について図6を用いて説明をする。図6(a)は、カラーホイール5をz軸方向から見た平面図である。図6(b)は、カラーホイール5をx軸方向から見た平面図である。図6(a)に示すように、カラーホール5は、円板51を円グラフのように複数の領域に分け、それぞれの領域に異なる多層膜を蒸着することで異なる色を着色してなる。カラーホイール5が有する色は、基本的には、赤(R)、緑(G)、青(B)であるが、図6(a)に示すように、白(W)を加えてもよい。白(W)は、多層膜を形成しない領域である。なお、カラーホイール5に白(W)を設ける理由は、明るさ増大のためである。またカラーホイール5に、色再現性を高めるための黄(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)などを加えることもある。
【0052】
カラーホイール5は、光源2から出射された光から必要なスペクトルを分離させる色分離手段である。カラーホイール5を構成する円板51は、例えば直径40mm程度、厚み1mm程度のガラスに、各色のフィルターを設けたものである。各色領域は物理的に分離されている。
【0053】
またカラーホイール5は、図6(b)に示すように円盤51の回転中心にモータ52の回転軸が結合されて、高速で回転するように構成されている。回転速度は数千rpm(round per minute)から1万rpm前後である。カラーホイール5には図示しないセンサがつけられており、各色の位置情報を把握することができる構成を備えている。このセンサとDMD11の回転制御を同調させることで、表示画像を形成させることができる。
【0054】
従って、カラーホイール5は、時分割(フィールドシーケンシャル)で各色を生成している。DMD11が有する微小ミラー110の応答速度は高速であるため、フィールドシーケンシャルでカラー画像の形成をしても問題は生じない。また、ランプリフレクタ3によって集光される途中の光(のスポット)は、常に同じ位置に当るように構成されている。図6(a)において符号53は、上記光スポットを示している。
【0055】
次に、本実施例に係るプロジェクタ1の照明光学系を形成する第1折り返しミラー9と、第2折り返しミラー10について説明をする。第1折り返しミラー9は平面鏡であって、第2折り返しミラー10は凹面鏡である。第2折り返しミラー10の曲率半径は−75mmである。また、第1折り返しミラー9は3次元的に傾いており、例えば、αが−35.45°、βが−2.17°、γが18°の傾きを有してなる。また第2折り返しミラー10も3次元的に傾いており、例えば、αが94°、βが17.64の傾きを有してなる。
【0056】
次に、本発明に係る画像表示装置が備える照明光学系の構成について、さらに説明をする。図7は、プロジェクタ1が備える照明光学系の一部を示す概要図であって、光源2から照明均一化素子6までの配置を表している。すでに説明をしたとおり、ランプリフレクタ3は楕円体であり、第一焦点に相当する位置に光源2が設置され、第二焦点に相当する位置に照明均一化素子6の入射端が設置されている。光源2と照明均一化素子6の入射端との間には、防爆ガラス4とカラーホイール5が設置されている。
【0057】
防爆ガラス4とカラーホイール5は、y軸に対してチルトした状態で配置されている。このチルトによって、防爆ガラス4とカラーホイール5の表面や裏面から反射された光が光源2への戻り光となることを防ぐことができる。防爆ガラス4とカラーホイール5のチルトは、数度から10°程度である。また、光源2から出射されて、ランプリフレクタ3により集光される光の角度(照明角S)は約60°である。また図7において、光源2、ランプリフレクタ3、照明均一化素子6が成す光軸はz軸方向において揃っている。
【0058】
次に、本実施例に係るプロジェクタ1が備える照明光学系の構成において、照明均一化素子6と、第1リレーレンズおよび第2リレーレンズの関係について説明をする。図8は、照明均一化素子6と、第1リレーレンズ7、第2リレーレンズ8の配置を示す概要図である。図8において、第1リレーレンズ7と第2リレーレンズ8は、z軸(光軸)方向の位置は異なるが、x軸方向とy軸方向の座標は同じである。従って共軸である。第1リレーレンズ7と第2リレーレンズ8のz軸の光軸Bは、照明均一化素子6のz軸の光軸Aに対してシフトしている。
【0059】
第1リレーレンズ7と第2リレーレンズ8のシフト量は、照明均一化素子6を基準として、Δx・Δyとして表すと、例えば、Δxは−1.469mm、Δyは−1.370mmである。
【0060】
プロジェクタ1から出射された光によって、スクリーン14に投射される画像を明るくするには、照明光学系の光利用効率を向上させる必要がある。ここで照明光学系の光利用効率を定義する。光利用効率は、照明均一化素子6から出射された光のうち、投射レンズ(の入射瞳)に到達する光の割合によって表すものとする。よって、照明均一化素子6から出射された光を100%としたときの投射レンズ(の入射瞳)に到達する光をパーセンテージで表しても良い。
【0061】
この光利用効率の見積りは光線追跡計算ソフトを用いたシミュレーション実験により行なうことができる。照明均一化素子6の出射端から出射する光線を一定数として、投射レンズの入射瞳に到達する光線本数を算出する。これによって、光利用効率を算出することができる。
【0062】
すでに説明をした通り、照明光学系を構成する第1折り返しミラー9と第2折り返しミラー10によって、DMD11の画像形成面に到達する光は3次元的に折り返されている。このような照明光学系においてDMD11に効率よく光を照射させるには、第1リレーレンズ7と、第2リレーレンズ8を共軸にするよりもチルトさせる方が好ましい。
【0063】
そこで、本実施例に係るプロジェクタ1においては、第1リレーレンズ7と第2リレーレンズ8の光軸を、光源2と照明均一化素子6が形成する光軸に対して、チルト偏心させている。x軸とy軸に対して第1リレーレンズ7をチルト偏心させた場合の、光利用効率の値を表1に示す。
【0064】
(表1)


【0065】
表1に示すように、第1リレーレンズ7をチルトさせないときの光利用効率に比べて、第1リレーレンズ7のαを1°、またはβを−1°のチルトをさせると光利用効率が向上する。さらにαを1°、かつ、βを−1°のチルトをさせた状態においては、αとβを単独でチルトさせたときよりも光利用効率が高くなる。
【0066】
図1に戻る。DMD11の画像形成面は、zx面と平行である。投射レンズ12の光軸はy軸と平行であって、DMD11の画像形成面と垂直関係にある。スクリーン14は、yz面と平行であって、DMD11の画像形成面とスクリーン14は直交する関係にある。
また、投射レンズ12の光軸とスクリーン14の表示面は平行であるから、プロジェクタ1を設置する場所は、zx面と平行関係にある場所となる。そうすると、プロジェクタ1の投射光の光軸と、被投射面であるスクリーン14は平行関係にある。このような位置関係となる画像表示装置を縦型プロジェクタという。なお、従来の横型プロジェクタは、投射レンズの光軸とスクリーンは垂直関係になる。
【0067】
ここで、従来の横型プロジェクタと、本発明に係る縦型プロジェクタの設置態様の違いによるスクリーンとの距離の差を、図9を用いて説明する。図9(a)は従来のプロジェクタ100の設置状態を側面から見た例を示す平面図である。図9(b)は本実施例に係るプロジェクタ1(縦型)の設置状態を側面から見た例を示す図である。
【0068】
図9(a)に示すように、プロジェクタ100の筐体の後端部からスクリーン14の画像投射面までの距離をD1とする。また、図9(b)に示すように、プロジェクタ1の筐体の後端部からスクリーン14の画像投射面までの距離をD2とする。D1とD2とを比較すると、D1>D2の関係になる。すなわち、縦型であるプロジェクタ1の方がスクリーンまでの距離が短くなる。つまり、縦型であるプロジェクタ1の方がスローレシオを小さくすることできる。
【0069】
次に、本発明に係る画像表示装置の使用態様における特徴について、図10を用いて説明する。図10は、図1に示したプロジェクタ1をz軸方向からみた図である。図10において、プロジェクタ1は、DMD11の画像形成面に垂直な方向がy軸と平行である。また、投射レンズ12の光軸もy軸に平行である。これらは互いに平行であるが、DMD11の画像形成面の中心と、投射レンズ12の光軸はx方向にΔsだけシフト偏心している。
【0070】
また、プロジェクタ1の別の使用態様の例を図11に示す。図11は、図1に示したプロジェクタ1をz軸方向からみた平面図である。図11において、プロジェクタ1は、DMD11の表示面に垂直な方向がy軸と平行であり、投射レンズ12の光軸もy軸に平行である。これらは互いに平行であるが、DMD11の画像形成面の中心と、投射レンズ12の光軸はx方向にシフト偏心している。また、投射レンズ12と自由曲面ミラー13の間に平面ミラー15を置き、自由曲面ミラー13の取り付け位置を図10とは反対側にすることで、投射方向を反対にすることができる。このように、本実施例に係るプロジェクタ1は、自由曲面ミラー13の取り付け位置を変更することで、プロジェクタ1の設置方向を変更することなく、画像の投射方向を変更することができる。
【0071】
次に、投射光学系を構成する投射レンズ12および鏡胴120をプロジェクタ1に固定する方法の例について、図12を用いて説明する。図12は、プロジェクタ1の投射光学系近傍をz軸方向からみた一部拡大図である。図12において、投射レンズ12を含む鏡胴120は、プロジェクタ1の本体側面に、複数のネジ20によって固定されている。投射レンズ12は、複数のレンズを有してなるから、プロジェクタ1の光利用効率を向上させるには、DMD11と投射レンズ12との距離Dと、投射レンズ12(の光軸)自体の傾き、光軸のDMD11の表示面に対する傾き等が重要な要素となる。
【0072】
DMD11と投射レンズ12との距離Dは、プロジェクタ1の本体(筐体)の作製精度によって決定されるので、鏡胴120をプロジェクタ1に固定するときに、スペーサを用いて微調整を行う。この微調整によって、光軸の傾き調整を行うこともできる。なお、DMD11自体の傾きについても、DMD11を固定する際にスペーサを用いることで行うことができる。
【0073】
鏡胴120はアルミニウムなどの金属を素材とする部材である。また、投射レンズ12はガラスを素材とする部材である。よって複数枚のレンズを備える鏡胴120は重い部材である。従来の横型のプロジェクタであれば、鏡胴120は重力に逆らう方向に突出する形で固定されるので、投射レンズ12(の光軸)は重力によってズレてくる虞がある。
【0074】
そのため、従来の横型プロジェクタのように設置する場合、ネジ20に対する荷重の係り方が固定位置によって異なり、鏡胴120に傾きが生じやすくなる。また組付けの際には光軸が合っていても、プロジェクタ装置1を長期使用することで経年劣化が生じ、投射レンズ12の固定位置にずれが生じて光軸がずれることが想定される。また、プロジェクタ1を搬送する際、光軸の垂直方向への振動や衝撃によって、投射レンズの光軸がずれることも想定される。
【0075】
本実施例に係るプロジェクタ1は、すでに説明をしたとおり、投射レンズを縦型の設置形態で用いるものである。これによって、投射レンズ12の光軸が重力方向(y軸方向)になる。そのため、投射レンズ12の長手方向に重力による荷重が係ることになる。すなわち、投射レンズ12を保持する鏡胴120が設置されるプロジェクタ1の側面がxz平面と平行になるため、鏡胴120によるプロジェクタ1への荷重は均一に係る。また、DMD11についても、DMD11の裏面が平坦であり精度が高ければ、置くだけで重力に対して安定な配置とすることができる。このように、本実施例に係るプロジェクタ1は、鏡胴120をプロジェクタ1の本体側面にネジ20によって固定するだけで、DMD11と投射レンズ12の光軸調整が容易にでき、かつ、調整された状態を安定して維持することができ、また、長期の使用に対しても堅牢なものを得ることができる。
【0076】
このように、本発明に係る画像表示装置によれば、照明光学系の光利用効率が高く、照明光学系及び投射光学系を安定した状態で使用することができる縦型の画像表示装置を得ることができる。
【0077】
次に、本発明に係る画像表示装置の別の実施形態について説明する。すでに説明をした実施例においては、プロジェクタ1が有する第1リレーレンズ7をチルトさせることで、照明光学系の光利用効率を向上させることができる。そこで、本実施例については、第2リレーレンズ8をチルトさせて、照明光学系の光利用効率を向上させることができる旨について、説明をする。
【0078】
既に説明をした実施例と同様に、ソフトウェアを用いたシミュレーション実験により、第1リレーレンズ7のチルトをα=1°、β=−1°として、第2リレーレンズ8のαとβのチルトを変化させたときの、光利用効率について表2に示す。
(表2)


【0079】
表2において、第1リレーレンズ7のチルトを光利用効率が高いα=1°、β=−1°とした場合、最も光利用効率が高くなる第2リレーレンズ8のチルトは、β=1°の場合である。また、表2の結果から、第1リレーレンズ7と第2リレーレンズ8の、αとβの符号が逆になるとき、光利用効率が高くなることが分かる。すなわち、第1リレーレンズ7と第2リレーレンズ8のチルトが逆向きに設定されるとき、光利用効率が高くなる。
【0080】
図13は、第1リレーレンズ7と第2リレーレンズ8に対して、表1および表2において示した「光利用効率が最も高くなるチルト」を設定した状態の例を示す概略図である。図13はy軸方向からみた(すなわち上面からみた)、照明均一化素子6と、第1リレーレンズ7と、第2リレーレンズ8の配置を表している。図13に示すように、照明均一化素子6の光軸Aと、第1リレーレンズ7および第2リレーレンズ8の光軸Bは、x軸方向にシフトしている。
【0081】
また、第1リレーレンズ7は、βが反時計方向にチルトし、第2リレーレンズ8は、βが時計方向にチルトしている。
【0082】
このように、本実施例に係るプロジェクタ1において、第1リレーレンズ7と第2リレーレンズ8をそれぞれ、所定の方向に所定のチルトをすると、光利用効率を向上させることができる。
【0083】
次に、第1リレーレンズ7および第2リレーレンズ8のさらに別の実施例について説明をする。図13に示すように、第1リレーレンズ7と第2リレーレンズ8において、照明均一化素子6に近い面を第1面r1とし、反対側の面を第2面r2とした場合、硝材の屈折率を考慮すると、第1リレーレンズ7のr1・r2・厚み・直径の各要素と、第2リレーレンズ8のr1・r2・厚み・直径の各要素との関係において、それぞれのr1非球面係数α04の値を、表3のように設定することが望ましい。
【0084】
硝材の屈折率(nd)は1.51680である。また、別の硝材を用いて、屈折率(nd)が1.52307であってもよい。屈折率が多少異なるため、表3に示すように、曲率半径等を変えることが好ましいが、変えなくても光利用効率に大きな影響は生じない。また、硝材が異なっても表1、2に示した傾向は保存されるので問題は生じない。
(表3)


【0085】
次に、第1リレーレンズ7および第2リレーレンズ8のチルト偏心を保持する方法について、図14を用いて説明する。第1リレーレンズ7と第2リレーレンズ8の形状は、光軸に対して回転対称である。図14は、第1リレーレンズ7のチルト偏心を保持する実施例について、図示している。第2リレーレンズ8のチルト偏心を保持する方法についても、同様の方法を用いることができる。
【0086】
すでに説明をしたとおり、第1リレーレンズ7をチルトさせることで光利用効率を向上させることができる。そこで、図14に示すように、第1リレーレンズ7を所定のチルト状態で固定するレンズ保持部1aを用いる。レンズ保持部1aは、プロジェクタ1の筐体の一部に形成してもよいし、モールド形成による別部材として形成したものを筐体の内部に固定したものでもよい。
【0087】
レンズ保持部1aには、第1リレーレンズ7の大きさに合わせた溝150を形成する。この溝150をx軸方向およびy軸方向の最適なチルト(αとβ)を維持できる傾きをもって形成する。図14に例示した溝150は、βのチルトを設定したものである。
【0088】
第1リレーレンズ7は、βのみではなく、αのチルトによっても光利用効率が向上する。そこで、図15に示すように、レンズ保持部1aは、y軸に直交する軸に対して所定の角度だけ傾けた深さ方向に溝150を形成すればよい。図15は、レンズ保持部1aをx軸方向からみた断面の例である。図15において、溝150は、y軸に直交する軸に対してx軸方向のαの最適なチルトを設定するように形成されている。このように、第1リレーレンズ7を固定する溝150を、最適なαとβになるように予め形成しておくことで、プロジェクタ1の光利用効率を向上させることができる。
【0089】
第1リレーレンズ7と第2リレーレンズ8を所定のチルトを保持して固定する方法の別の例について、図16を用いて説明する。図16において、符号20は、プロジェクタ1の内部に設置するフレームの例を示す。フレーム20は、第1リレーレンズ7と第2リレーレンズ8およびDMD11の設置面を一体化した部材である。フレーム20には、第1リレーレンズ7を固定するためのレンズ保持部1aと、第2リレーレンズ8を固定するためのレンズ保持部1bと、DMD11の設置面が一体に形成されている。
【0090】
第1リレーレンズ7と第2リレーレンズ8のチルトの精度は、フレーム20の精度に依存するが、プロジェクタ1の筐体の一部を用いて保持部1aおよび1bを形成するよりも、フレーム20を用いた方が安定した精度を維持できる。またフレーム20によって、DMD11との位置の精度も向上する。
【0091】
このように、第1リレーレンズ7および第2リレーレンズ8とDMD11との位置精度を、一体化されている部材(フレーム20)によって維持することができるのは、本発明に係る画像表示装置が縦型設置可能なものだからである。
【0092】
次に、第1リレーレンズ7の実施例について説明をする。本実施例は、第1リレーレンズ7を非球面レンズとするものである。第1リレーレンズ7を非球面化することによる光利用効率の変化について、表4に示す。
(表4)


【0093】
表4は、第1リレーレンズ7の第二面r2(図13参照)を非球面化したときの、非球面係数4次(α04)と光利用効率との関係について示している。表4に基づいて、横軸を非球面係数とし、縦軸を光利用効率として2次曲線で近似したグラフを図17に示す。図17から明らかなように、第1リレーレンズ7の第二面r2を非球面化するための、4次の非球面係数の最適値は約0.00014である。このように、本実施例に係るプロジェクタ1において、第1リレーレンズ7を非球面化することにより光利用効率を向上させることができる。
【0094】
次に、第2リレーレンズ8の実施例について説明をする。本実施例は、第2リレーレンズ8を非球面レンズとするものである。第2リレーレンズ8を非球面化することによる光利用効率の変化について、表5に示す。
(表5)


【0095】
表5は、第2リレーレンズ8の第二面r2を非球面化したときの、非球面係数4次(α04)と光利用効率との関係について示している。表5に基づいて、横軸を非球面係数とし、縦軸を光利用効率として2次曲線で近似したグラフを図18に示す。図18から明らかなように、第2リレーレンズ8の第二面r2を非球面化するための、4次の非球面係数の最適値は約−0.000035である。このように、本実施例に係るプロジェクタ1において、第2リレーレンズ8を非球面化することにより光利用効率を向上させることができる。
【0096】
次に、第2折り返しミラー10の実施例について説明をする。本実施例は、第2折り返しミラー10を非球面にするものである。第2折り返しミラー10を非球面化することによる光利用効率の変化について、表6に示す。
(表6)


【0097】
表6は、第2折り返しミラー10を非球面化したときの、非球面係数4次(α04)および非球面係数6次(α06)と光利用効率との関係について示している。第2折り返しミラー10は凹面鏡であって、曲率半径は−75mmである。
【0098】
表6に基づいて、横軸を4次の非球面係数とし、縦軸を光利用効率として2次曲線で近似したグラフを図19に示す。また、表6に基づいて、横軸を6次の非球面係数とし、縦軸を光利用効率として2次曲線で近似したグラフを図20に示す。図19および図20に示した結果から、第2折り返しミラー10に対して、4次と6次の非球面を導入することで、光利用効率を向上させることができる。
【0099】
次に本発明に係る画像表示装置が備える照明光学系の実施例についてさらに説明をする。DMD11が有する画像表示領域の中心をx軸・y軸・z軸の(0、0、0)とした場合の、照明光学系を構成する主要な部材の最適な座標を表7に示す。
(表7)


【0100】
次に、本発明に係る画像表示装置が備える投射光学系の実施例について説明をする。図21は、投射光学系を構成する投射レンズ12と自由曲面ミラー13、および平面ミラー15の例を示す概略図である。図21において、照明光学系は省略している。
【0101】
図21に示すように、投射レンズ12と自由曲面ミラー13との間に平面ミラー15を配置している。自由曲面ミラー13の形状は例えば15次の係数で表される。スクリーン14上での投射画像のサイズは40インチから80インチ程度である。画面サイズの変化は、プロジェクタ1とスクリーン14との距離を変更することによって行う。例えば、プロジェクタ1をスクリーン14に近づけると画面サイズは小さくなり、遠ざけると画面サイズは大きくなる。
【0102】
上記にて説明をした照明光学系を備えたプロジェクタ1のDMD11の画像形成面における光量分布の例を図22に示す。この光量分布は、光線追跡によるシミュレーション実験で求めたものである。DMD11の光量分布位置は、長手方向のマイナス方向がスクリーン14を正面から見て左方向、長手方向のプラス方向が右方向、短手方向のマイナス方向がスクリーン14を正面から見て上方向,短手方向のプラス方向が下方向にそれぞれ対応する。
【0103】
図22中、点線112で囲まれた領域がDMD11の画像表示領域に相当する有効領域である。光量分布は領域内最大光量を1すなわち100%として規格化して表示している。図22に示すように、DMD11の有効領域112内での規格化光量分布の最小値は76%以上になっている。また、中心付近から同じ等高線の領域が広がっており、均一に照明されていることが分かる。ちなみに、人間の目は、50%の光量分布があっても、その違いをほとんど感じることができないから、上記のような光量分布の最小値76%は何ら問題にならない。
【0104】
次に、本発明に係る画像表示装置からの投射光によるスクリーン上での光量分布の例を、図23に示す。すでに説明をした光学系と投射光学系を備えたプロジェクタ1を用いて、対角約84インチのスクリーンに全白の画像を投射したものである。最大値を1として規格化している。画面中央は光量が均一な領域が広がっているが、周辺に行くに従って光量が低下していることが分かる。
【0105】
以上のように、本発明に係る画像表示装置は、照明光学系を構成するリレーレンズを光軸に対してチルトさせ、第二面r2を非球面化し、さらに折り返しミラーを非球面化することで、照明光学系の光利用効率を向上させることができ、これによって、光量分布が均一な投射光を出射することができる。
【符号の説明】
【0106】
1 プロジェクタ
2 光源
3 ランプリフレクタ
5 カラーホイール
6 照明均一化素子
7 第1リレーレンズ
8 第2リレーレンズ
11 DMD
12 投射レンズ
13 自由曲面ミラー
【先行技術文献】
【特許文献】
【0107】
【特許文献1】特開2000−098272号公報
【特許文献2】特許第3121843号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から出射される光を集光する集光器と、
前記集光器の近傍に入射端を有する光ミキシング素子と、
前記集光器と前記光ミキシング素子の間に配置され、前記光ミキシング素子に入射される光に時分割で色要素を重畳するカラーフィルタと、
2次元的に配置された複数の微小ミラーを有し、個々の微小ミラーの傾き角度をオン状態とオフ状態で変化させることにより反射光の出射をオン・オフさせる反射型画像表示素子と、
前記光ミキシング素子の出射端から前記反射型画像表示素子までの間に配置されている第1リレーレンズおよび第2リレーレンズ、第1折り返しミラー及び第2折り返しミラーを有してなる照明光学系と、
前記反射型画像表示素子を構成する複数の微小ミラーのうちオン状態にある微小ミラーからの反射光を被投射面に投射する投射光学系と、を有し、被投射面に画像を投射する画像表示装置であって、
前記反射型画像表示素子が有する表示面と前記被投射面との成す角が,略直交しており、
前記第1リレーレンズが、前記光源と前記光ミキシング素子が成す光軸に対してチルトしている画像表示装置。
【請求項2】
前記第2リレーレンズが、前記光軸に対してチルトしていることを特徴とする請求項1記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記第1リレーレンズと前記第2リレーレンズのチルト方向は、互いに逆であることを特徴とする請求項2記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記第1リレーレンズと前記第2リレーレンズの形状は、光軸に対して回転対称であり、前記チルトは、前記第1リレーレンズと前記第2リレーレンズを保持するレンズ保持部が光軸に対してチルトしていることにより成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記第1リレーレンズのレンズ面が非球面形状であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項6】
前記第2リレーレンズのレンズ面が非球面形状であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項7】

前記第2折り返しミラーの反射面が非球面形状であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図24】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−61375(P2013−61375A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197905(P2011−197905)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】