説明

画像表示装置

【課題】投射された画像の周辺部の明るさを向上させる。
【解決手段】反射型のライトバルブを、ランプ光源と照明光学系により照明し、ライトバルブに表示された画像を投射光学系により、防塵ガラスを介して投射結像する画像表示装置において、投射光学系が、複数のレンズからなる屈折光学系POSLと、ライトバルブLBから屈折光学系に導光される光量を制限する開口絞りSと、屈折光学系の像側に配置される凹面ミラーを有するミラー光学系CNMを有し、ライトバルブLBと開口絞りSとの間に、正の屈折力を有し、ライトバルブLBに対してアンダーな像面湾曲を有するレンズ群A(LGA)が配置されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は画像表示装置に関する。この画像表示装置は反射型のライトバルブを用いる投射型であって、各種のプロジェクタ装置として実施できる。
【背景技術】
【0002】
反射型のライトバルブを用いる投射型の画像表示装置の一般的な構成と機能を、図1を参照して説明する。
【0003】
図1は、投射型の画像表示装置として一般的な「プロジェクタ装置」の光学配置を説明図として示している。
【0004】
図中、符号LBはライトバルブ、符号LSはランプ光源、符号IRはインテグレータロッド、符号LNは照明用レンズ、符号Mはミラー、符号CMは曲面ミラー、符号PCSは投射光学系を、それぞれ示している。
【0005】
ライトバルブLBは、画像表示素子であって反射型である。
ランプ光源LSは、ランプLPとリフレクタRFを有し、ライトバルブLBを照明するための照明光を放射する。
【0006】
インテグレータロッドIR、照明用レンズLN、ミラーM、曲面ミラーCMは、ランプ光源LSから放射される照明光をライトバルブLBに導光する照明光学系を構成する。
【0007】
インテグレータロッドIRは、4つのミラーをトンネル状に組み合わせたライトパイプであり、入口部から入射する光をミラー面で反射させつつ出口部へ導光する。
【0008】
投射光学系PCSは、ライトバルブLBからの反射光を、スクリーン等の被投射面にむけて投射し、被投射面上に「ライトバルブLBに表示された画像」を拡大して結像する。
【0009】
ライトバルブLBは、例えば「DMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)」であり、微小なミラーをアレイ状に配列してなる。個々の微小ミラーは、その法線方向を、互いに独立して、例えば±12度の範囲で変化させることができる。
【0010】
ランプLPから発せられた光をリフレクタRFで反射し、インテグレータロッドIRの入口部に集光する。入口部から入射した光は、インテグレータロッドIR内で反射を繰り返しつつ導光され、出口部から「照度ムラを均された」一様な照度の光として射出する。
【0011】
インテグレータロッドIRから射出した光は、照明用レンズLN、ミラーM、曲面ミラーCMからなる照明光学系を介してライトバルブLBを照射する。
【0012】
照明光学系の、照明レンズLNと曲面ミラーCMとは、インテグレータロッドIRの出口部における射出光を「光量むらの均された一様な照度の面光源」とし、この面光源の像をライトバルブLB上に形成する。即ち、ライトバルブLBは一様な照度の照明光で照射される。
【0013】
ライトバルブLBにおける微小ミラーの傾き角を、例えば、−12度のとき、微小ミラーによる反射光が投射光学系POSに入射し、+12度のときは投射光学系POSに入射しないように定めて、ライトバルブLBと投射光学系POSとの位置関係を定め、さらに曲面ミラーCMからの照射光の「ライトバルブLBへの入射方向」を設定する。
【0014】
被投射面に投射結像するべき画像の画素に応じて、個々の微小ミラーの傾きを調整すれば、ライトバルブLBに画像を表示することができる。
【0015】
このようライトバルブLBに画像を表示し、照明光をライトバルブLBに照射すれば、投射光学系POSに入射する微小ミラーごとの反射光が、投射光学系POSにより結像光束とされて被投射面上に、上記画像の拡大画像として投射され結像する。
【0016】
ライトバルブLBは「一様な照度分布の光」で照射されるので、その拡大像である被投射面状の画像も一様な照度分布となる。このようにして、被投射面上に「デジタル画像」を表示できる。
【0017】
以上が、一般的なプロジェクタ装置による画像表示の説明である。
【0018】
さて、昨今、被投射面に対するプロジェクタ装置のセット位置が、従来のものよりも極端に近いプロジェクタ装置(以下「超至近プロジェクタ」と呼ぶ。)が広まりつつある。
【0019】
超至近プロジェクタは、スクリーン面(被投射面)の近くに立つプレゼンタ(説明員、発表者など)の目に投射光が入る眩しさを避ける効果を有する。
【0020】
また、プレゼンタの説明を聞く聴講者からプロジェクタ装置を離してセットできるので、聴講者への排気・騒音の悪影響を除くことが出来る効果を有する。
【0021】
超至近プロジェクタ用の投射光学系としては、大別すると、従来の共軸・回転対称の投射光学系を広画角化して「被投射面との距離を短縮する」ものや、光学系中に曲面ミラーを用いるものがある。
これらのうち、前者は「従来技術の延長で超至近投射を実現きる」が、スクリーン面に近いレンズが大径化し易く、プロジェクタ装置としての大きさが増大しがちである。
【0022】
一方、後者は、プロジェクタ装置としての大きさを小型に保ちつつ、超至近投射を達成できる可能性を有している。
【0023】
投射光学系中に曲面ミラーを用いるものとして、例えば、特許文献1〜7開示のものが知られている。
【0024】
特許文献1、6、7に記載のものは、レンズ系と凸面ミラーを組合せたもので、主としてリアプロジェクションTVの薄型化を目的とする。
【0025】
特許文献2〜5に記載のものは、レンズ系と凹面ミラーを組合せたもので、超至近投射を実現している。
【0026】
「凸面ミラーを用いる投射光学系」は、例えば、特許文献6の図9等に明らかなように「凸面ミラーからスクリーンに到る結像光束」の径が単調に拡大する。
このため、凸面ミラーとスクリーンの間に「凸面ミラー保護用の防塵ガラス」を設置する場合を考えると、超至近投射では、単調拡大する結像光束径の拡大が急激であることから「防塵ガラスのサイズ」が大型化しやすく、プロジェクタ装置としての重さ・コストの面で問題なしとしない。
【0027】
防塵ガラスは必須と言うわけではないが、防塵ガラスを用いないと、凸面ミラーが剥き出しになり、ミラー面に「ごみ」が付着したり、傷がついたり、あるいはプロジェクタ装置のユーザーが凸面ミラーに触れて、指紋がついたりしやすい。
【0028】
これら「ごみ」や傷、指紋は、投射画像の明るさや画質の低下の原因となる可能性が高い。
【0029】
このような点を鑑みて、凸面ミラーを用いる投射光学系は、筐体に収めてリアプロジェクタの形態で用いられることが多い(特許文献1の図25等)。
【0030】
一方、投射光学系中に凹面ミラーを用いる場合は、結像光束を「凹面ミラーとスクリーンの間で1度絞れる」ので、防塵ガラスを配置しても、防塵ガラスの大型化を避けることができる。
【0031】
しかし、超至近プロジェクタでは、凹面ミラーとスクリーンの距離が近く、大画面を表示するため「スクリーンに入射する光線角度」がかなり急峻となる。
従って、防塵ガラスを有するフロントプロジェクタ(スクリーンに対して正面から画像を投射するプロジェクタ装置)で凹面ミラーを用いると、凹面ミラーから防塵ガラスに入射する光線角度は、スクリーン上の画像端部に向かう光ほど、急峻になる。
【0032】
このため、「防塵ガラスの透過率」は、スクリーン上で画像端部に向かう光ほど低くなり、画像端部近傍での光量も低くなる。即ち、被投射面上の画像の端部近傍に近づくほど投射された画像の明るさが低下する。
【0033】
プロジェクタ装置の小型化と言う面では、特許文献5の図13のように、レンズ系と凹面ミラーの間に「平面の折り返しミラー」を挿入し、光路を折り曲げることにより投射光学系を小型化できるが、折り返しミラーに入射する光線角度は(凹面ミラーで反射した光線ほどではないが)急峻になるので、折り返しミラーを配置するプロジェクタ装置では、スクリーン上の「画像端部の光量」は、折り返しミラーによっても低下する。
【0034】
特許文献2〜4記載のように、防塵ガラスを斜めに配置して、スクリーン法線に対して斜めの角度を持たせれば、画面端部に向かう光線の「角度の急峻さ」を若干緩めることが可能になるが、特に折り返しミラーを有する投射光学系の場合には「防塵ガラスを斜めに配置」しようとすると、折り返しミラーと干渉したり、折り返しミラーから凹面ミラーに向かう光路を遮ったりしやすく、これを避けると防塵ガラスが極めて大きくなりやすい。
【0035】
特許文献1には、反射型のライトバルブ(DMD)に最も近いレンズ面の位置を入射瞳位置と一致させ、DMDに最も近いレンズ面に「開口絞り機能」を持たせて、投射光学系のレンズ枠などによる「光の蹴られ」を小さくし、レンズの大きさを最小化することが開示されている。
【0036】
しかし「反射型のライトバルブを用いるプロジェクタ装置」の場合は、入射瞳の位置に留意しないと、ライトバルブを照明する照明光学系のレンズやミラーにより、光が蹴られて画像周辺の光量が減少する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、投射光学系に凹面ミラーを有するとともに、凹面ミラーの像側に防塵ガラスを有し、超至近投射を行なう投射型の画像表示装置において、投射画像の周辺部の明るさを有効に増加させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0038】
この発明の画像表示装置は、画像表示素子である反射型のライトバルブと、該ライトバルブを照明するためのランプ光源と、該ランプ光源からの射出光を前記ライトバルブに導く照明光学系と、前記ライトバルブに表示された画像を投射して結像させる投射光学系と、該投射光学系の結像光束射出側に設けられる板状の防塵ガラスとを有する投射型の画像表示装置において、投射光学系は、複数のレンズからなる屈折光学系と、ライトバルブから前記屈折光学系に導光される光量を制限する開口絞りと、前記屈折光学系の像側に配置される凹面ミラーを有するミラー光学系を有し、前記ライトバルブと前記開口絞りとの間に、1以上のレンズにより構成され正の屈折力を有し、前記ライトバルブに対してアンダーな像面湾曲を有するレンズ群Aが配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0039】
画像表示装置は、ライトバルブと前記開口絞りとの間に、配置されたレンズ群Aが、正の屈折力を有し、ライトバルブに対してアンダーな像面湾曲を有することにより、ライトバルブの中心から投射光学系に向かう光量と、ライトバルブ端部から投射光学系に向かう光量の差を小さくでき、投射画像の周辺部の明るさを有効に増加させる投射画像の周辺部の明るさを有効に増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】一般的なプロジェクタ装置を説明するための図である。
【図2】レンズ群Aのライトバルブ側のアンダーな像面湾曲を説明する図である。
【図3】シミュレーションを説明するための図である。
【図4】シミュレーションを説明するための図である。
【図5】画像表示装置の実施例1を説明するための図である。
【図6】実施例1の光学配置の一部を示す図である。
【図7】実施例1の光学データを示す図である。
【図8】実施例1の非球面データを示す図である。
【図9】実施例1の凹面ミラーの鏡面形状のデータを示す図である。
【図10】画像表示装置の実施例2を説明するための図である。
【図11】実施例2の光学配置の一部を示す図である。
【図12】実施例2を説明するための図である。
【図13】実施例2において、防塵ガラスの配置上の問題を説明するための図である。
【図14】画像表示装置の全体を説明するための図である。
【図15】図14の鏡胴10の内部を示す図である。
【図16】ミラー5の一部をレンズ群A(LGA)の形状に応じて切り欠いた例を示す図である。
【図17】実施例3の光学配置の一部を示す図である。
【図18】実施例3の光学データを示す図である。
【図19】実施例3の非球面データを示す図である。
【図20】実施例3の凹面ミラーの鏡面形状のデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
上記の如く、この発明の画像表示装置では、ライトバルブと開口絞りとの間に「1以上のレンズにより構成されて正の屈折力を有し、ライトバルブに対してアンダーな像面湾曲を有するレンズ群A」が配置されている。
【0042】
正の屈折力を持つレンズ群Aが「ライトバルブに対してアンダーな像面湾曲」を有する意義を説明する。
【0043】
まず「像面湾曲がアンダー」である点を、図2を参照して説明する。
【0044】
図2において、符号LGAは、正の屈折力を持つレンズ群Aを簡略化して示している。また、符号LBはライトバルブを示している。
レンズ群Aに、図2の左方から光束を入射させる。説明の簡単のため、入射させる光線は平行光束であるとする。このとき、ライトバルブLBの画像表示面を、レンズ群Aの焦点面に合致させておけば、入射光束は、画像表示面上に集光する。
【0045】
入射光束が、レンズ群Aの光軸に合致している場合も、光軸に対して傾いている場合も、光束がレンズ群Aの集光作用により画像表示面上に集光するならば、このとき、レンズ群Aには「像面湾曲」が無い。
【0046】
一方、レンズ群Aに像面湾曲があれば、入射光束の光軸に対する傾き角の増加に従って、集光位置は「画像表示面」から離れていく。図2に「破線で示す」ように、集光位置が上記傾き角の増加に従って、レンズ群Aの側に倒れるように「画像表示面から離れ」ていく場合が、「レンズ群Aの像面湾曲がライトバルブに対してアンダー」場合である。
【0047】
即ち、レンズ群Aの像面湾曲がライトバルブLBに対してアンダーであるならば、レンズ群Aに図2の左方から入射する光束のうち、光軸に対して傾く光束は、画像表示面の点前(レンズ群A側)で収束した後、発散光となって、画像表示面状の面積領域を照明することになる。
【0048】
レンズ群AとライトバルブLBの画像表示面との関係を見ると、レンズ群Aの光軸は、画像表示面の中央で、画像表示面に直交する。従って、レンズ群Aと画像表示面との距離は「光軸位置で最短」であり、画像表示面上で光軸を離れるに従って、増大していく。
【0049】
一方、レンズ群Aの画像表示面側の像面湾曲は、上記の如く、光軸を離れるに従いアンダーに増加し、画像表示面からレンズ群Aの側に離れる。
湾曲した像面は、レンズ群Aによる集光点であるから「ライトバルブ側のアンダーの像面湾曲」は、レンズ群Aの正の屈折力、即ち、集光力が、光軸からの傾き角の増大と共に強くなることを意味する。即ち、レンズ群Aの「見かけ上の焦点距離」は、光軸に対して傾く程、短くなる。
【0050】
従って、このようなレンズ群Aを、ライトバルブLBと「開口絞り」の間に配置することにより、画像表示面の周辺部からの光を、強く集光させて入射瞳(レンズ群Aによる開口絞りの像)に入射させることができる。
即ち、画像表示面の中心部からレンズ群Aに入射する光束は、レンズ群Aを透過すると平行光束となるが、画像表示面の周辺部からレンズ群Aに入射する光束は、レンズ群Aに対する物体距離が、レンズ群Aの上記見かけの焦点距離よりも長くなり、このため、レンズ群Aを透過すると収束光束になり、入射瞳に入射する光量が増大する。
【0051】
画像表示面の画面端部の光量を「特許文献1に記載の、DMDに最も近いレンズ面の位置を入射瞳位置と一致させ、DMDに最も近いレンズ面に「開口絞り機能」を持たせる」場合に比して、より増大させて投射光学系に取り入れることが可能になる。
【0052】
上に説明したところを、以下に説明するシミュレーションにより確認した。
【0053】
図3および図4を参照する。
図3、図4で、ライトバルブLBから「投射光学系の入射瞳E」までの距離を同一に揃え、ライトバルブLBの中心(レンズ群Aおよび投射光学系の光軸に合致する部分)から放射される光線束のうち、入射瞳内に取り込める光量と、ライトバルブLBの端部(周辺部)から放射される光線束のうち、入射瞳内に取り込める光量の比を比較した。
【0054】
図3の構成では、ライトバルブLBからレンズ群Aの入射側レンズ面までの距離:42.08mm、レンズ群Aの中心肉厚:7.18mm、材質の屈折率:1.515、ライトバルブLB側のレンズ面の曲率半径:43.404、開口絞りS側のレンズ面の曲率半径:−16.784、該レンズ面から開口絞りSまでの距離:1.6mm、入射瞳径:19.8mmである。
【0055】
このレンズ群Aは、ライトバルブLBに対してアンダーの像面湾曲を有する。
【0056】
図3において、ライトバルブLBの中心に当たる部分に点光源を配し、この点光源から放射される光線束の「入射瞳全体を通るのに十分な発散角」の光線を通したときの光利用効率(入射瞳Eを通過する光線数)と、ライトバルブLBの端部(上記中心から6.92mmの距離の周辺部)に配置した点光源からの光利用効率を比較すると、ライトバルブLBの上記中心からの放射光の光利用効率を100%として、上記端部から放射される光に光利用効率は98.2%であった。
【0057】
図4の構成は、図3の構成からレンズ群Aを除去し、ライトバルブLBから開口絞りSの開口部(入射瞳Eとなる。)までの距離:50mm、入射瞳径:19.8mmとして、ライトバルブLBからの光が直接に開口絞りSを介して、投射光学系における「最もライトバルブ側」のレンズLへ入射するようにしたものである。
【0058】
図4の構成に対して、図3の構成の場合と同じシミュレーションを実施すると、ライトバルブLBの「端部の光利用効率」は、ライトバルブLBの上記中心からの放射光の光利用効率を100%に対して97.4%である。
【0059】
このことから、像面湾曲を有するレンズ群Aを、ライトバルブLBと開口絞りSとの間に配置することにより、光利用効率を0.8%改善できることが分る。
なお、上記両シミュレーションにおいて、レンズLは光利用効率には関係しない。
【0060】
以下、実施の形態を具体的な実施例に即して説明する。
【0061】
「実施例1」
画像表示装置の具体的な実施例1を、図5に示す。
図5(a)は、被投射面であるスクリーンSCの上下方向(Y方向)と法線方向(Z方向)に平行な面における断面図であり、図5(b)は、スクリーンSCの左右方向(X方向と法線方向(Z方向)に平行な面における断面図である。
【0062】
図5において、光学配置は「ランプ光源と照明光学系」の部分、即ち、図1におけるランプ光源LSから凹面ミラーCNMまでを省略し、ライトバルブLB(DMDである。)から投射光学系POS、防塵ガラスGを介してスクリーンSCまでの部分を示している。なお、符号CNMは、投射光学系の凹面ミラーを示している。
【0063】
ライトバルブLBと凹面ミラーCNMとの間の部分は「レンズ群Aと開口絞りと屈折光学系」により構成される部分である。
【0064】
図6は、実施例1におけるライトバルブLB(カバーガラスCGを含む)とレンズ群A(「LGA」で示す。)と投射光学系の「屈折光学系POSL(図5に示す凹面ミラーCNMとともに投射光学系POSを構成する。凹面ミラーCNMは、実施例1では単独で、ミラー光学系をなす。)」の部分を示している。
【0065】
なお、図示を省略されているランプ光学系と照明光学系の部分は、図1に即して説明したものと同様である。
【0066】
図1に即して説明したように、ランプ光源から放射された光は、照明光学系を介してライトバルブLBに照明光として照射される。
ライトバルブの画像表示面で反射され、表示画像により強度変調された光は、図6に示すように、入射瞳(LGAによる開口絞りSの像)に向かって進み、開口絞りSを介して屈折光学系POSLに取込まれる。
【0067】
取込まれた光束の殆どが、スクリーンSC上の画像表示に有効に使われる。
【0068】
即ち、ライトバルブLBの画像表示面の「どの位置」からの光も、同じ光量が開口絞りSを通過し、投射光学系POS内部での「光の蹴られ」が無ければ、スクリーンSC上の画像の光量分布は一様に近づく。
【0069】
しかし、図5に示すように、凹面ミラーCNMから防塵ガラスGに入射する光線角度は、YZ面、XZ面のいずれにおいても鋭角であり、スクリーンSC上に投射結像される画面の下部に向かう光線束(防塵ガラスGへの入射角が大きい)が防塵ガラスGを透過する透過率は低い水準になる。
【0070】
この場合、YZ断面(図5(a))においては、例えば、特許文献4の図1の如く「防塵ガラスを傾け、画面上部と画面下部に向かう各光線の防塵ガラス入射角をバランスすることで透過率を上げる(画面の光量分布の一様性を向上させる)ことが可能である。
【0071】
しかし、このように防塵ガラスを傾けても、図5(b)の「XZ面」で防塵ガラスGに向かう光線角度は変化しないので、投射結像した画像の左右方向端部での光量減少は避け難い。
図6に示すように、正の屈折力を持つレンズ群A(LGA)を配置し、そのアンダーの像面湾曲の作用により、画像表示面中心の画素(屈折光学系POSLの光軸に最も近い画素)よりも、画像表示面周辺部の画素(上記光軸から最も遠い画素)の「光取り込み量」を増加させ、開口絞りSを通過した時点で「画像中心からの光量よりも、画像周辺部からの光量の方が多い状況」を作ることで、スクリーンSC上での「光量分布一様性の向上」に寄与することができる。
【0072】
このとき、ライトバルブLBと開口絞りSの間のレンズ枚数を増やすと、これらのレンズの径方向の大きさが必然的に拡大傾向になり、光学系の大型化や、照明光学系との干渉(図1の曲面ミラーCMと、図6のLGAの干渉)で、ライトバルブLBの画像表示面の一様照明が妨げられる問題がある。
この点を考慮すると、レンズ群Aを構成するレンズ枚数は、最小枚数、即ち「投射光学系の収差補正のバランスが取れる最小枚数」とするのがよく、好ましくはLGAを1枚のレンズ、あるいは後述の実施例3のように「正・負・正の3枚のレンズ」で構成するのがよい。
【0073】
実施例1におけるライトバルブLB(DMD)の画像表示面から、防塵ガラスGまでの部分の光学データを図7〜図9に示す。
【0074】
図7は、各面の曲率半径、面間隔を「mm単位」で示し、材質の屈折率とアッベ数を示す。開口絞りについては開口半径を示す。また、曲率半径:0.000は、曲率半径:∞、即ち平面を表す。
「偏芯Y」は、LGAおよび屈折光学系POSLの光軸の「Y方向(図5(a)に示す上下方向)のマイナス側(図5(a)の下方側)」へのシフト量を「mm」単位で示す。
【0075】
「偏芯α」は、投射光学系の凹面ミラーCNMおよび防塵ガラスGの、上記光軸(Z方向)とライトバルブLBの短手方向を含む面に対するシフト量を「mm」単位で示す。
【0076】
また、非球面の欄において「黒丸」を付した面は非球面である。
【0077】
面番号の欄において、「LB(0)」は、ライトバルブLB(DMD)」の画像表示面、面番号「1、2」はカバーガラスCGの両面である。面番号「3、4」は、LGAの入射側および射出側のレンズ面であり、これらは共に非球面である。
【0078】
なお、曲率半径の欄において「1.0E+18」は、「1×1018」を意味し、これらの曲率半径を持つ面は「実質的な平面」である。曲率半径の値は、非球面については「近軸曲率半径」である。
【0079】
図8は、非球面データである。
非球面は、近軸曲率(近軸曲率半径の逆数):C、楕円定数(コーニック定数):K、高次の非球面係数:E2j(j=2、3、4、5、6、7、8)、光軸直交方向の座標:H、光軸方向のデプス:Dにより、周知の式、
D=CH/[1+√{1−(1+K)C}]
+ΣE2j2j(j=1〜8)
で表現される。
【0080】
図9は、凹面ミラーCNMの鏡面形状のデータである。
【0081】
凹面ミラーCNMの鏡面形状は「自由曲面」であり、光軸上の近軸曲率半径:c、コーニック定数:k、高次の係数:Cj(j=2〜72)、光軸直交方向の距離:r、光軸に平行な「面のサグ量:z」、図5におけるX方向の座標:x、Y方向の座標:yを用いて、以下の式で与えられる。
【0082】
z=cr/[1+√{1−(1+k)c}]
+ΣC・x(j=2〜72)
図9において、例えば、C40を係数とする「x**4*y**7」は「x×y」を表す。
【0083】
「実施例2」
画像表示装置の実施例2を、図10〜図12に示す。
【0084】
実施例2は、実施例1における屈折光学系POSLと凹面ミラーCNMとの間に、光束を折り返す「平面ミラー」である折り返しミラーPMを配置し、防塵ガラスGを、ライトバルブLB(DMD)の画像表示面と平行に配置した例である。
LGA(レンズ群A)、投射光学系の屈折光学系POSL、凹面ミラーCNMは、実施例1におけるものと同一である。実施例2では、凹面ミラーCNMと折り返しミラーPMが「ミラー光学系」を構成する。)
この実施の形態では、図示されないランプ光源、照明光源と共にライトバルブ、LGA、凹面ミラーCNM、折り返しミラーPMは、筐体BX内に収納され、防塵ガラスGは、筐体BXの窓として設けられている。
【0085】
図10は、YZ面の断面、図11は、XZ面の構成であり、図120は、ライトバルブLBから防塵ガラスGに至る光学配置の詳細な図である。
【0086】
実施例2のような構成を取ることで、投射光学系の収差補正上の理由から「短縮化が困難な屈折光学系POSLから凹面ミラーCNMまでの距離」をコンパクトに収めることが可能になり、プロジェクタ装置を収納する筐体BXの小型化に貢献できる。
【0087】
このように、屈折光学系POSLと凹面ミラーCNMの間で、光路を折り返す構成にした場合、特許文献4の図1のように「防塵ガラスを入射光線に対して傾ける」ことができず、スクリーンSC上の画面の端部での光量低下が顕著になる。
【0088】
即ち、図11に示されたように、スクリーンSC上の画面Imの下部に向かう光線の角度が、防塵ガラスGの面に対して非常に急峻である。
【0089】
このため、例えば、図13(YZ面)のように防塵ガラスを傾けて配置すると、図11(XZ面)では、防塵ガラスGの一部の領域が、図11の右方向に移動することになり、防塵ガラスGが急激に大きくなり、重さ・コスト・小型化の面で好ましくない。
【0090】
防塵ガラスGを図11の左方向(図13の左方向)に動かそうとすると、図13において、折り返しミラーGで反射されて凹面ミラーCNMに向かう光線と干渉してしまう。
【0091】
即ち、折り返しミラーPMを用いる構成では、図10のような角度に略近い状態を取らざるをえない。
このように、折り返しミラーPMを用いる方法でも、周辺光量を増加させることが重要であり、レンズ群Aの「ライトバルブLBに対するアンダーの像面湾曲」により、画像表示面周辺部画素からの光の利用効率を高めることが重要となる。
【0092】
レンズ群Aに付与する「ライトバルブに対するアンダーの像面湾曲」は、なるべく大きいほうが、周辺部画素からの光の利用効率をより高められるので好ましいが、投射光学系POS全体の収差補正能力と、レンズ群Aの像面湾曲量をバランスさせるには、レンズ群A内に非球面を採用するのが好ましい。
【0093】
上記実施例1やその変形例である実施例2では、レンズ群A(LGA)が単一の凸レンズで、その両面が非球面となっている。
【0094】
上に説明した実施例2の光学系を用いる画像表示装置(プロジェクタ装置)の例を、図14〜図16を参照して説明する。
【0095】
ランプ光源1から放射された光は、インテグレータロッド2の入口部に集光し、その内部で多重反射され、出口部から光量分布が均一に均された光束として射出する。
【0096】
上記出口部における「一様な光量分布」の共役像を、レンズ群3、ミラー4、曲面ミラー5で、DMDであるライトバルブ7の画像表示面に結像させる。図14で符号6はDMDのカバーガラスを示す。
【0097】
ライトバルブ7の画像表示面で反射された光(画像表示面に表示された画像により強度変調されている。)光は、光学系8に入射する。図14に示す光学系8は「レンズ群Aと、開口絞りと、屈折光学系と、置き返しミラーと、凹面ミラーとを合わせたもの」を示し、符号10は「レンズ群Aと、開口絞りと、屈折光学系とを保持する鏡胴を示す。
【0098】
図15において、符号8−1は、図14に符号10で示した鏡胴に保持されたレンズ系を示す。レンズ系8−1の各レンズの径方向のサイズが小さければ、鏡胴の径も小さくなることがわかる。
【0099】
図14に示すように、ミラー5と鏡胴10とは「近接してレイアウト」されている。
照明光学系をコンパクトに収めるためにこのような構成を取っているが、インテグレータロッド2を「単純な直方体形」に加工した場合、特許文献1記載のように、ミラー5がライトバルブ7から投射光学系に向かう光を蹴り、周辺光量を劣化させる。
【0100】
従って、開口絞りとライトバルブの間にレンズ群Aを配置する光学系では、ランプ光源1からライトバルブ7に到る光路のうち、ライトバルブ7に最も近い光学素子(レンズやミラー)は、レンズ群Aに合わせて切り欠くことが好ましい。
【0101】
図16は、ミラー5の一部をレンズ群Aに合わせて切り欠いた例を示している。
【0102】
「実施例3」
実施例3を、図17以下を参照して説明する。
【0103】
実施例3を説明するための図17以下の図においては、凹面ミラーや折り返しミラーは図示を省略している。
【0104】
図17に示すように、実施例3ではレンズ群A(LGA)を、ライトバルブLB側から「正レンズ・負レンズ・正レンズの3枚のレンズ」で構成し、収差補正上好ましい(光学系の中で対称性が高い)構成としている。
符号Sは開口絞り、符号POSLは「屈折光学系」を示す。
【0105】
LGAを構成する3枚のレンズのうちで「ライトバルブLB(DMD)に最も近い正レンズ」の径が、上述の実施例1、2の場合(LGAが1枚のレンズにより構成される。)に比べて大きくなるので、図14に示した曲面ミラー5との干渉があり得るが、スクリーン上の光量分布よりも収差補正に重きを置く場合には、このような構成も取り得る。
【0106】
図18、図19、図20に、実施例3の具体的な光学データを、実施例1の場合にならって示す。
【0107】
図18は各面の曲率半径、面間隔、材質等のデータを示し、図19は非球面データ、図20は凹面ミラーの鏡面形状に関するデータであり、それぞれ、図7、図8、図9に倣って記載されている。
【0108】
以上に説明したように、この発明では、超至近投射を行なう画像表示装置において、投射光学系に凹面ミラーを用いることにより、防塵ガラスの配置を容易とし、必要に応じて折り返しミラーを配置して光学系を収める筐体の小型化を可能とし、防塵ガラスもしくは「折り返しミラーと防塵ガラス」による周辺光量の減少を、アンダーな像面湾曲を有するレンズ群Aを用いることにより改善可能とした。
【0109】
実施例1や2のように、レンズ群Aを「1枚の凸レンズで構成」することは、画像表示装置の小型化に有効である。そして、レンズ群Aを構成する1枚以上のレンズのうち、正レンズの、少なくとも片面が非球面形状とし、該正レンズの非球面を「近軸の曲率半径からなる球面形状よりも、像面湾曲がさらにアンダーとなる作用を齎す形状」とすることはレンズ群Aの機能を高めることに有効である。
【0110】
実施例2のように、ミラー光学系の凹面ミラーと屈折光学系との間の光路上に、平面の折り返しミラーを有すること、その場合に、防塵ガラスを「その板面がライトバルブの画像表示面と平行となるように配置」することは、画像表示装置のコンパクト化に有効である。
【0111】
上に説明したように「ランプ光源からライトバルブに到る光路上で、ライトバルブに最も近いレンズまたはミラーを、レンズ群Aの外形状に合わせて切り欠かく」ことは、スクリーン上に表示される画像の周辺光量の低下を改善する上で極めて有効である。
また、レンズ群Aは「投射光学系によるズーミング・フォーカシングに際して固定」とすることが、ズーミング機構を簡略化・小型化する上で好ましいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0112】
LB ライトバルブ
LGA レンズ群A
S 開口絞り
POSL 屈折光学系
CNM 凹面ミラー
G 防塵ガラス
PM 折り返しミラー
【先行技術文献】
【特許文献】
【0113】
【特許文献1】特許第3727543号公報
【特許文献2】特表2008522229号公報
【特許文献3】特許第4467609号公報
【特許文献4】特開2009−145672号公報
【特許文献5】特許第4210314号公報
【特許文献6】特開2007−183671号公報
【特許文献7】特開2008−96762号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示素子である反射型のライトバルブと、該ライトバルブを照明するためのランプ光源と、該ランプ光源からの射出光を前記ライトバルブに導く照明光学系と、前記ライトバルブに表示された画像を投射して結像させる投射光学系と、該投射光学系の結像光束射出側に設けられる板状の防塵ガラスとを有する投射型の画像表示装置において、
投射光学系は、複数のレンズからなる屈折光学系と、ライトバルブから前記屈折光学系に導光される光量を制限する開口絞りと、前記屈折光学系の像側に配置される凹面ミラーを有するミラー光学系を有し、
前記ライトバルブと前記開口絞りとの間に、1以上のレンズにより構成され正の屈折力を有し、前記ライトバルブに対してアンダーな像面湾曲を有するレンズ群Aが配置されたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像表示装置において、
レンズ群Aが、1枚の凸レンズで構成されたことを特徴とする画像表示装置。
【請求項3】
請求項1記載の画像表示装置において、
レンズ群Aが、ライトバルブ側から投射光学系側に向かって、正レンズ、負レンズ、正レンズの3枚を配してなることを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】
請求項2または3記載の画像表示装置において、
レンズ群Aを構成する正レンズの、少なくとも片面が非球面形状であり、
該正レンズの非球面が、近軸の曲率半径からなる球面形状よりも、像面湾曲がさらにアンダーとなる作用を齎す形状であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項5】
請求項1〜4の任意の1に記載の画像表示装置において、
ミラー光学系の凹面ミラーと屈折光学系の間の光路上に、平面の折り返しミラーを有することを特徴とする画像表示装置。
【請求項6】
請求項5記載の画像表示装置において、
防塵ガラスが、その板面をライトバルブの画像表示面と平行にして配置されることを特徴とする画像表示装置。
【請求項7】
請求項1〜6の任意の1に記載の画像表示装置において
レンズ群Aが、投射光学系によるズーミング・フォーカシングに際して固定であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項8】
請求項1〜7の任意の1に記載の画像表示装置において、
ランプ光源からライトバルブに到る光路上で前記ライトバルブに最も近いレンズまたはミラーが、レンズ群Aの外形状に合わせて切り欠かれていることを特徴とする画像表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2013−97039(P2013−97039A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237162(P2011−237162)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】