画像解析による管腔形成試験の評価方法および評価装置
【課題】管腔形成試験で撮影された培養細胞画像から作用させた物質について、50%阻害濃度が簡易に得られる管腔形成阻害作用の評価方法および装置を提供する。
【解決手段】評価対象画像データから網目領域を抽出し、各網目領域の面積と数を計測する段階と、網目領域の属性評価項目を計測する段階と、濃度別に各評価項目の管腔形成能を相対値として算出する段階と、評価項目数に応じて放射状に伸びた軸上に、前記算出された管腔形成能の相対値をプロットして、濃度別にレーダーチャートを作成する段階と、前記濃度別のレーダーチャートの原点とプロットした点までの距離によって算出したチャート多角形の大きさと歪みに基づいて管腔形成能を合算し、濃度別に合算値である管腔形成能を算出する段階と、算出した濃度別の合算値である管腔形成能をシグモイド曲線へ当てはめて濃度依存的阻害曲線と50%阻害濃度を算出する段階とを備えたことを特徴とする。
【解決手段】評価対象画像データから網目領域を抽出し、各網目領域の面積と数を計測する段階と、網目領域の属性評価項目を計測する段階と、濃度別に各評価項目の管腔形成能を相対値として算出する段階と、評価項目数に応じて放射状に伸びた軸上に、前記算出された管腔形成能の相対値をプロットして、濃度別にレーダーチャートを作成する段階と、前記濃度別のレーダーチャートの原点とプロットした点までの距離によって算出したチャート多角形の大きさと歪みに基づいて管腔形成能を合算し、濃度別に合算値である管腔形成能を算出する段階と、算出した濃度別の合算値である管腔形成能をシグモイド曲線へ当てはめて濃度依存的阻害曲線と50%阻害濃度を算出する段階とを備えたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、作用させた物質が管腔形成に及ぼす阻害効果を調べるための管腔形成試験の評価方法、および顕微鏡下で撮影した細胞画像を用いて、作用させた物質の阻害効果を評価する評価装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
がん治療法の研究開発において、血管新生はがん征圧の有効な標的である。がんは増殖や転移のために、栄養と酸素の補給路となる血管網を新たに構築する。血管新生の阻害は補給路の遮断となり、増殖や転移が抑制される。血管内皮細胞による管腔形成を観察する管腔形成試験は、管腔形成の阻害効果の評価系として、がん治療法の研究開発にとって重要な手段である。
【0003】
近年、特許文献1で示されているように、リンパ管新生が関与している疾病に関しても、リンパ管内皮細胞および血管内皮細胞による管腔形成を観察するリンパ管新生の評価系が構築された。がん細胞のリンパ節転移では、腫瘍リンパ管新生が惹起され、リンパ節転移が亢進するとされており、リンパ管新生の評価系を用いた阻害効果の判定による医薬品開発への期待が高まっている。
【0004】
血管新生性疾患は、がんの他にも現在関節リューマチや子宮内膜症など約50種類が報告されている。なかでも糖尿病性網膜症や未熟児網膜症などの網膜血管新生疾患では、非特許文献1で示されているように網膜血管新生阻害作用を検討するためのヒト臍帯静脈血管内皮細胞とヒト線維芽細胞の共培養系による管腔形成能を指標とした評価系が開発されている。この評価系は,簡便で再現性が高く、網膜血管新生疾患に対する様々な化合物の薬効評価に適している。網膜血管構造を詳細に評価するために、画像解析による定量法の需要が高まっている。
【先行技術文献】
【0005】
管腔形成試験を定量評価するために、培養細胞の試料表面を撮影した画像から管腔形成能を評価する装置が、BDバイオサイエンス社(非特許文献2)、サーモフィッシャーサイエンティフィック社(非特許文献3)、または倉敷紡績株式会社 バイオメディカル部(非特許文献4)などから販売されている。これらの装置は、試料作成時に細胞を染色、または抗体と反応させて細胞を蛍光標識して得られた画像を対象としている。
【0006】
これらの装置では、画像に現れている管腔形成による模様の定量化を目的としているため、画像処理によって変換された管腔部分の骨格線である線図形が幾何学的に計測されている。
【0007】
管腔形成試験は、注目する物質が管腔形成に及ぼす阻害効果をその濃度を変化させて調べている。従来の装置は、低濃度と高濃度での画像から濃度差による影響を定量化することはできるが、中濃度での濃度差による影響が定量化できず、濃度変化に応じた連続的な阻害効果の判定が困難となっている。
【0008】
特許文献2の腫瘍細胞に対する阻害剤の増殖抑制効果を評価する方法、特許文献3のご飯外観の数値評価方法や特許文献4の皮膚表面形態特徴検出方法などは、ひとつの対象に対して計測した複数項目の指標群をレーダーチャートで表示している。レーダーチャートは、複数項目の指標で形成されたチャート多角形によって対象の特徴を一括して、視覚的に表現するグラフとして使用されている。
【0009】
レーダーチャートは、ひとつの対象に対して計測した複数項目の指標群の観察に用いられているが、特許文献5の個人認証の方法は、指標群の合算方法の解釈および結果の確認にも使用している。この方法は、ある個人に対して複数の条件下で測定した複数項目の指標群をあらかじめ履歴データとして保存しておき、後に同様の方法で得られた測定データが複数個の履歴データのどれと照合するかを判定する方法である。それぞれ対応する項目での値の差を二乗して差分分析値とし、すべての項目における差分分析値の総和を算出する。測定データとある履歴データが一致するときに差分分析値の総和は0となるため、測定データとすべての履歴データとの差分分析値の総和を0に近い順に順位付けし、測定データは最高順位となった履歴データと合致すると判定されている。レーダーチャートは差分分析値の総和の計算に使用しないが、測定データの指標群をレーダーチャートで表現すると、差分分析値の総和の大小は、そのチャート多角形と履歴データを表示したときの多角形の形状の類似度と解釈できる。レーダーチャートは、測定データと履歴データの照合結果の視覚的な確認に利用できる。
【0010】
【特許文献1】国際公開WO2007013517号公報
【特許文献2】特開2008−104456号公報
【特許文献3】特開2001−174412号公報
【特許文献4】特許番号2944309号公報
【特許文献5】国際公開WO2010122807号公報
【特許文献6】特開2009−109362号公報
【非特許文献1】「網膜血管新生阻害作用のIn vitroおよびIn vivo評価系」、日本薬理学雑誌、Vol.129(2007),No.6,pp.451−456
【非特許文献2】
【非特許文献3】サーモフィッシャーサイエンティフィック社(2010)Cellomics細胞イメージ解析 E.Grove,O.Lapets,and R.N.Ghosh,A quantitative,automated,high content screening assay for angiogenic tube formation
【非特許文献4】「血管新生定量ソフトウェアVer.2 血管新生キット関連製品カタログ 2010」、倉敷紡績株式会社 バイオメディカル部
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の装置は、管腔の抽出に色情報を使用しているおり、染色などによって付加された色情報によって画像解析の頑強性を高めている。このような方法では、薬剤開発のための阻害剤のスクリーニングのような大規模試験では、高価な設備が必要となり、多大な時間がかかり処理効率が悪い。
【0012】
従来の装置は、画像上の管腔による模様を骨格線である線図形に変換して、幾何学的に計測しているが、管腔が形成されている状態、または管腔の形成が阻害されている状態としての定量化がなされていない。特に高濃度の物質によって阻害された状態において研究者等の視感評価とのずれが生じている。
【0013】
管腔形成試験では中濃度の物質を作用させた場合、経験豊富な研究者でも判断に迷うことが多い。従来の装置は、中濃度における濃度差による影響が定量化できず、濃度変化に応じた連続的な阻害効果が適切に評価されていない。
【0014】
従来の装置は、画像に現れている管腔形成能を複数の観点から計測した評価項目の値を出力しているが、利用者は評価項目毎にグラフを作成して、濃度変化に応じた変動を捉えている。そのため、濃度毎に評価項目の変動を捉えようとした場合、評価項目毎に値を正規化した後に、濃度別にそれぞれレーダーチャートを作成してそれぞれを目視で観察するしかなく、各評価項目の評価値を統合させて算出した客観的な数値で各濃度の管腔形成能を表示することができないという欠点がある。
【00015】
本発明は、このような従来技術の欠点を解決するために成されたものである。濃度を変えて作用させた物質が管腔形成に及ぼす阻害効果を調べるための管腔形成試験を客観的に効率よく評価する方法と、顕微鏡下で撮影した細胞画像を用いて、作用させた物質の阻害効果を評価する評価装置を廉価に提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1記載の発明は、前記の従来技術の欠点を解決するために、作用させた物質が管腔形成に及ぼす阻害効果を調べるための管腔形成試験の評価方法において、評価対象画像データを用意する段階と、前記評価対象画像データの各々から網目領域を抽出し、各網目領域の面積と当該画像上で抽出された網目領域数を計測する段階と、網目領域の属性評価項目を計測する段階と、濃度別に各評価項目の管腔形成能を相対値として算出する段階と、評価項目数に応じて放射状に伸びた軸上に、前記算出された管腔形成能の相対値をプロットして濃度別にレーダーチャートを作成する段階と、前記濃度別のレーダーチャートの原点とプロットした点までの距離によって算出したチャート多角形の大きさと歪みに基づいて管腔形成能を合算する段階と、算出した濃度別の合算値である管腔形成能をシグモイド曲線へ当てはめて濃度依存的阻害曲線を算出する段階とを備えたことを特徴とする画像解析による管腔形成試験評価方法である。
【0017】
請求項2の発明は、評価対象画像データを受領し、該評価対象画像データの各々から網目領域を抽出し、各網目領域の面積と当該画像上で抽出された網目領域数を計測する網目領域の計測手段と、網目領域の属性評価項目として、拡張面積、拡張周長、拡張回数を計測する計測手段と、濃度別に各評価項目の管腔形成能を相対値として算出する管腔形成能の算出手段と、前記網目領域の計測手段の出力、領域属性の計測手段の出力、および管腔形成能の算出手段の出力、それぞれの出力を受けて記憶する計測結果テーブルと、評価項目数に応じて放射状に伸びた軸上に、前記算出された管腔形成能の相対値をプロットして、濃度別にレーダーチャートを作成するレーダーチャート作成手段と、前記濃度別のレーダーチャートの原点とプロットした点までの距離によって算出したチャート多角形の大きさと歪みに基づいて管腔形成能を合算する合算手段と、算出した濃度別の合算値である管腔形成能をシグモイド曲線へ当てはめて近似式を作成するとともに、前記近似式から濃度依存的阻害曲線と50%阻害濃度を算出する手段と、少なくとも前記算出された濃度依存的阻害曲線を表示する表示手段とを備えた管腔形成試験評価装置である。
【0018】
請求項3の発明は、評価対象画像データの各々から網目領域を抽出し、各網目領域の面積と当該画像上で抽出された網目領域数を計測するステップと、網目領域の属性評価項目を計測するステップと、濃度別に各評価項目の管腔形成能を相対値として算出するステップと、評価項目数に応じて放射状に伸びた軸上に、前記算出された管腔形成能の相対値をプロットして、濃度別にレーダーチャートを作成するステップと、前記濃度別のレーダーチャートの原点とプロットした点までの距離によって算出したチャート多角形の大きさと歪みに基づいて管腔形成能を合算するステップと、算出した濃度別の合算値である管腔形成能をシグモイド曲線へ当てはめて濃度依存的阻害曲線を算出するステップとを備えた管腔形成試験評価プログラムである。
【0019】
請求項4の発明は、指標となる複数の属性を有する複数の評価対象データを相対比較して各評価対象データを総合的に評価する評価装置であって、指標となる複数の属性それぞれ毎に、評価項目値を設定する評価項目値の設定手段と、評価項目数に応じて放射状に伸びた軸上に、前記算出された評価項目値の相対値をプロットして、前記評価対象データ毎にレーダーチャートを作成するレーダーチャート作成手段と、前記評価対象別にレーダーチャートの原点とプロットした点までの距離によって算出したチャート多角形の大きさと歪みに基づいて評価項目値の相対値を合算する合算手段と、該合算手段によって求められた合算値の大小を判別して前記各評価対象データを評価する判定手段とを備えたレーダーチャート評価装置である。
【0020】
請求項5の発明は、評価項目値を設定するステップと、評価項目数に応じて放射状に伸びるレーダーチャートの軸上に、前記算出された評価項目値の相対値をプロットして、前記評価対象データ毎にレーダーチャートを作成できるようにするステップと、前記評価対象別にレーダーチャートの原点とプロットした点までの距離によって算出したチャート多角形の大きさと歪みに基づいて評価項目値の相対値を合算するステップとを備えたレーダーチャート評価プログラムである。
【発明の効果】
【0021】
請求項1および請求項3記載の発明は、評価対象画像データの各々から網目領域を抽出し、各網目領域の面積と当該画像上で抽出された網目領域数を計測する段階と、網目領域の属性評価項目を計測する段階とを備えているので、細胞染色や細胞標識の画像解析向けの処置を省くことができ、実験から解析までの全体を通した処理効率を高められる効果を有する。また、画像に現れている管腔形成能の状態の定量化が可能となり、研究者等が経験によって得た、管腔が形成されている状態、または管腔の形成が阻害されている状態などの視感評価と合致した評価が可能となる。
しかも、濃度別に各評価項目の管腔形成能を相対値として算出する段階と、評価項目数に応じて放射状に伸びた軸上に、前記算出された管腔形成能の相対値をプロットして、濃度別にレーダーチャートを作成する段階と、前記濃度別のレーダーチャートの原点とプロットした点までの距離によって算出したチャート多角形の大きさと歪みに基づいて管腔形成能を合算する段階と、算出した濃度別の合算値である管腔形成能をシグモイド曲線へ当てはめて濃度依存的阻害曲線を算出する段階とを備えているので、作用させる物質の低濃度、中濃度、高濃度へと変化する濃度に対応した阻害作用が評価でき、濃度変化に応じた連続的な阻害効果が評価できる。
【0022】
請求項2記載の発明は、管腔が形成されている状態との相対値を評価値としているため、簡易にレーダーチャートで表示でき、評価項目相互での比較ができる。
しかも、レーダーチャートを観察するだけでなく、チャート多角形の大きさと歪みを利用して評価値を合算しているので、計測された複数の評価項目の評価値を濃度毎にひとつの数値である管腔形成能として算出できる利点もある。
さらに、本発明は、各濃度で算出された管腔形成能をもとに、シグモイド曲線に近似される濃度依存的阻害曲線を求め、濃度変化に応じた連続的な阻害効果を評価できるので、目視によって感覚的に判断するのと異なり、客観的に正確に、薬理作用の評価として重要な50%阻害濃度が算定できる。
【0023】
請求項4および請求項5の発明は、評価対象別にレーダーチャートの原点とプロットした点までの距離によって算出したチャート多角形の大きさと歪みに基づいて評価項目値を合算する算出手段と、該合算手段によって求められた合算値の大小を判別して前記各評価対象を評価する判定手段とを備えている。そのため、レーダーチャートを観察するだけでなく、チャート多角形の大きさと歪みを利用して評価項目値を合算し、チャート多角形が表している複数項目の評価項目値群の状態を総合的に定量化できるという効果を有する。
しかも、従来は、複数の対象のレーダーチャートを見比べて視感評価していたため、判断が評価者の主観に左右されるという問題があった。しかし、本発明によって比較対象のデータ毎に計測された複数項目の評価値群が総合的に合算されたひとつの数値になり、複数の対象の客観的な評価が可能となる。本発明は、レーダーチャートの機能を進化させ、さらにレーダーチャートの利用範囲を拡大する効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の評価方法の手順を示すフローチャート
【図2】本発明の実施形態の構成図
【図3】阻害剤により管腔形成の網目模様が崩壊する過程を示す顕微鏡写真
【図4】網目領域の抽出方法を説明するための図
【図5】拡張した網目領域で計算される概念を示す図
【図6】拡張した網目領域の周長の計算方法を示す図
【図7】チャートの多角形を利用した合算方法を説明するための図
【図8】管腔を形成するKOP細胞に濃度を変えたsuraminを作用させて得られた顕微鏡写真
【図9】計測結果テーブル31の内容例を示す図
【図10】網目領域によって算出された管腔形成能を示す図
【図11】管腔形成の阻害過程の実態を説明するための顕微鏡写真
【図12】濃度別の管腔形成能を視覚的に表すレーダーチャートの図
【図13】合算方法が計算結果に及ぼす影響を説明するための図
【図14】チャート多角形を利用した本発明の合算方法の効果を説明するための図
【図15】シグモイド曲線に近以された濃度依存的阻害曲線を示す図
【図16】先行技術による解析結果を示す図
【図17】2つの画像群のシグモイド曲線に近似された濃度依存的阻害曲線を示す図
【図18】4項目評価での濃度別の管腔形成能を視覚的に表すレーダーチャートの図
【図19】4項目評価でのシグモイド曲線に近似された濃度依存的阻害曲線を示す図
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の画像解析による管腔形成試験の評価方法の手順を示すフローチャートであり、図2は、本発明の実施の形態の構成図である。以下、これらの図にしたがって説明する。
【0026】
図3は、本発明装置が解析の対象とする画像の例である。この画像は、試験管内で細胞が管腔を形成する系において細胞染色や細胞標識の画像解析向けの処置を省いて得られた濃淡画像である。本発明の評価法は、このようにして用意された画像(S1)、または染色などの処置を施された画像を対象にして、画像解析によって濃度依存的阻害効果を定量評価する。
【0027】
画像上で管腔が形成されている状態は、図3(a)に示すように視感では管腔が網目模様を形成していると捉えられる。網目領域の計測手段21は、管腔形成能の計測をその網目模様の計測として、網目領域を抽出し、面積と領域数を計測している(S2)。その評価方法の特徴は、我々の視覚の錯視と呼ばれる特性を利用していることである。網目模様の解析に対して、白の背景に黒の図柄に相当する網目の網に着目するのではなく、黒の背景に白の図柄が描かれているとして網目領域に着目している。この着目によって研究者の視感に合致する評価が得られている。錯視を利用することについて、本発明は特許文献6の試料状態評価方法および装置に着想を得ている。
【0028】
このように網目領域に着目すると、図4(a)に示すように画像の輝度は管腔部分で粒子状の模様となって変動するが、網目領域ではほとんど変動していない。さらに、対象とする系は、試験管内での管腔形成試験であるため、画像上には管腔部分に相当する細胞領域か、あるいは網目領域のように平坦に見える領域しか現れていない。この特性を活かして、本発明は、画像から管腔の骨格線を求めた後に網目領域を抽出するのではなく、画像から直接網目領域を抽出し、その領域の属性を計測して管腔形成能を評価する。
【0029】
網目領域の抽出のために、画像を元画像に相似な極小領域に分割し、そこでの輝度の標準偏差のヒストグラムを作る。画像上では、網目領域は管腔部分より多くを占めることより、図4(b)に示すように輝度がばらつかない網目領域での極小領域はヒストグラムのモードを形成する。モードとなっている極小領域について領域の連結性によってまとめ、網目領域の候補とし、それぞれの領域の面積を計測する。ここで、画像の端に位置する領域は、バックグランドとして、候補から除外する。阻害が進むと網目模様が崩壊し、管腔部が凝集して輝度が暗く、変動しない領域となることから、候補からこのような輝度が暗い領域を除外する。候補領域の面積分布において、極端に小さな領域はアーチファクトとして除外する。なお、図11について詳しくは後述するが、この図11に示す阻害の過程で観察されるように、大きな領域の存在は阻害されたことの傍証である。阻害によって大きな領域が形成され、同時に小さな領域も形成され得る。大きな領域が存在しなくて、小さな領域だけならば、その小さな領域は阻害によって形成された領域ではなく凝集した細胞塊かアーチファクトである。この性質を利用して候補から除外し、残った候補を網目領域とする。したがって、本発明は管腔の状態と阻害過程による変化を踏まえた論理によって選別された網目領域を取り扱っている。計測された領域数は、各濃度の画像毎に計測結果テーブル31に保存する。面積は各画像での平均値を計測結果テーブル31のそれぞれの計測数の欄に保存する。
【0030】
本発明は、このように輝度のばらつきを利用して抽出した網目領域を用いて評価を行っており、網目領域数は基本的な指標である。網目領域数は管腔が形成されている状態、または管腔形成が阻害されている状態を反映している。特に高濃度の物質によって阻害された状態は、網目領域が消失しているため、網目領域数は0となり、阻害効果が明確になる。従来の装置では、高濃度での阻害の程度が過小評価され、研究者の視感評価とのずれが生じているが、本発明ではずれは生じない。
【0031】
次に、本発明の目的である濃度変化に応じた連続的な阻害効果を評価するために、網目領域の属性を評価項目に加える。領域属性の計測手段22は、網目領域の属性評価項目として、拡張面積、拡張周長、拡張回数の少なくともひとつを計測する(S3)。拡張面積とは、図5(a)に示すように隣り合う網目領域が互いに接するまで同時に拡張したときの面積であり、拡張周長はその際の領域周長、拡張回数は施した拡張処理の回数である。S2の手続きで計測した網目領域の面積は、物質や生命情報伝達のための管腔によるネットワークの勢力範囲であり、拡張した網目領域の面積は、太い管腔ではより拡張されるため管腔の太さの影響を加えたネットワークの勢力範囲を示している。同面積でも異なる周長になり得るため、形状の相違が反映されるように拡張周長が用意されている。拡張処理回数は、図5(b)に示すような凝集によって孤立した網目領域で増大するため、凝集が起こる高濃度での阻害を特徴付けるために用意されている。計測された拡張面積、拡張周長、または拡張回数は、濃度毎の各画像での平均値を計測結果テーブル31のそれぞれの計測数の欄に保存する。
【0032】
拡張周長の計測には、隣り合う網目領域が互いに接するまで同時に拡張した後に、領域にラベルを付け、図6(a)の模式図に示すように領域の各画素の輝度をそのラベルの数値としたラベル画像を作成する。図6(b)は、ラベル画像の各画素について、隣の画素とのラベル対を整理する正方行列である。この正方行列は、行と列にラベルを配置しており、整理後の行列の各要素は、その行成分と列成分のラベル対に相当する画素数の和である。拡張した網目領域の面積は、この正方行列の対角成分として求められている。周長は対応するラベルの対角成分を除いた行成分と列成分の累計によって算出できる。
【0033】
管腔形成能の算出手段23は、計測結果テーブル31において各濃度での各評価項目について計測数の平均値を算出し、平均値の欄に保存する。次に、その平均値を管腔が形成された状態の管腔形成能を100としたときの相対値に変換し、計測結果テーブル31の相対値の欄に保存する。評価項目によっては、相対値は100を超えることもあるため、それぞれその相対値と100との絶対誤差を100から減算したものをその管腔形成能として、同様に計測結果テーブル31の管腔形成能の欄に保存する(S4)。
【0034】
レーダーチャート作成手段24は、計測結果テーブル31に保存されている各評価項目の管腔形成能を濃度毎にレーダーチャートで表示する(S5)。チャート多角形に基づいた合算手段25は、すべての管腔形成能を一括して観察するだけでなく、濃度毎にチャート多角形の大きさを面積に、その形状を歪みとして、多角形の大きさと歪みに基づいて管腔形成能を合算する(S6)。本発明の特徴は、この多角形の形態に基づいた合算法である。この合算によって各濃度での各項目の管腔形成能がひとつの数値として定量化される。
【0035】
その濃度における総合的な管腔形成能の高さは、レーダーチャートの多角形の大きさに示されているため、本発明の合算法は、まず多角形の面積を求める。次に、各項目の評価値で均衡がとれているか、偏っているかも重要であり、面積が大きく、かつ正多角形に近い形状を示すほど、総合的な管腔形成能は高いとしている。そこで、均衡がとれているかどうかを計算するため、図7に示すように多角形と面積が等しい円を導入する。各項目の評価値は、幾何学的にはレーダーチャートの原点とその評価値までの距離に相当し、導入した円の半径と各項目の評価値である距離との比を計算する。また、管腔が形成された状態での半径との半径比も計算し、すべてを積算する。得られた値についての、管腔が形成された状態での同様な値に対する相対値を計算し、その濃度での管腔形成能とする。この合算法により、複数の評価項目で計測された管腔形成能が、チャートの多角形の大きさと歪みを反映して統合されたひとつの管腔形成能となる。
【0036】
さらに、この数値を利用して、濃度依存的阻害曲線と50%阻害濃度の算出手段26は、濃度依存的阻害曲線を作成し(S7)、薬理作用の指標である50%阻害濃度を算出する(S8)。シグモイド曲線は薬理効果の定量的表現と言われている。本発明は、濃度毎に算出された管腔形成能をシグモイド曲線へ当てはめ、近似的な濃度依存的阻害曲線を求める。また、得られた近似式から50%阻害濃度を算出し、それぞれ表示器41に表示する。合算された濃度毎の管腔形成能を表示器41に表示することもできる。
【実施例】
【0037】
実施した管腔形成試験は、マウスの血管内皮細胞KOPを使用し、抗血管新生剤として既知なsuraminの管腔形成に対する阻害効果を調べる試験である。シャーレに入れた成長因子類の含有量を少なくした基底膜マトリゲル上でKOP細胞を18時間培養し管腔を形成させる。このとき、1μM、10μM、20μM、40μM、60μM、80μM、100μMと濃度を変えたsuraminを加えてそれぞれの阻害効果を調べる。細胞染色や細胞標識の処置は省いた。図8は、濃度毎にシャーレ内で位置を変えて光学顕微鏡下で撮影した細胞画像の一部である。画像は640×480画素であり、各画素は8ビット256階調の輝度を有している。Suraminの濃度に応じて、画像上で認められる管腔形成による網目模様が消失していく過程と、太さが均一であった管腔が濃度に応じて不均一になり、さらに凝集により細胞塊となっていく過程が観察される。
濃度毎の画像数は以下の通りである。
管腔形成(0μM):22、1μM:12、10μM:16、20μM:25、40μM:10、60μM:7、80μM:9、100μM:11
【0038】
網目領域の計測手段21はこれらの画像から網目領域を抽出し、濃度毎に各画像での結果を計測結果テーブル31に保存した。図9は、そのテーブルであり、計測した領域数は、濃度毎に各画像の計測数の欄に保存されている。面積は、濃度毎に各画像で計測した面積の平均値が計測数の欄に保存されている。
【0039】
網目領域は、各画像を極小領域に分割し、そこでの輝度の標準偏差のヒストグラムを使用して抽出した。図10は画像群全体の結果である。各濃度での網目領域数の標準誤差は、図10(a)で示した程度の変動である。特にsuraminを作用させていない、0μMの管腔が形成された状態、すなわち管腔形成能を100とする状態では、標準誤差は極めて小さい。そこで、各濃度での網目領域数は平均値で代表させている。図10(b)は、各濃度での領域数に関する評価である。この図では、0μMでの平均値との相対値を領域数として示している。研究者とは、管腔形成試験の視感評価の経験が長い2名の研究者の評価であり、0μMでの管腔形成能を100としたときの各濃度での相対的な視感評価値の平均値である。先行技術の評価では、高濃度の物質によって阻害された状態で研究者の視感評価とのずれが生じていたが、領域数による評価では、中濃度と高濃度において研究者の評価とほぼ合致しており、評価のずれは解消されている。しかし、領域数だけでは、低濃度において研究者より厳しく評価しており、すれが生じている。
【0040】
領域属性の計測手段22は、領域属性としての評価項目について、すべての画像について計測した。各画像での計測量の平均値を計測結果テーブル31の計測数の欄に保存した(図9)。
【0041】
網目領域計測手段21で計測した網目領域の面積、網目の拡張面積、拡張周長、拡張処理回数の4つに関して、どれも0μMでの標準誤差は極めて小さいことから網目領域数と同様に、0μMでの平均値を100としたときの各濃度での平均値の相対値を各濃度での指標としている。管腔形成能の算出手段23は、計測結果テーブル31において濃度毎に各評価項目について保存されている計測数の平均値を算出して、それぞれの評価項目の平均値の欄に保存し、さらにその平均値に対して0μMでの平均値を100としたときの相対値を算出して、それぞれの相対値の欄に保存した(図9)。
【0042】
図11は低濃度と中濃度での画像の一部である。矢印で示した箇所で管腔が切断されているため、破線で示した網目領域が形成され、画像上に示したような網目領域数とその面積の変化が観察される。このような観察から、濃度が高くなるにつれて、網目領域数は単調に減少するが、面積は一時的に増加しながら減少するという阻害の過程が認められる。
ここで観察される管腔形成の阻害の実際を勘案すると、網目領域は、0μMでの網目領域が複数集まってひとつの網目領域となることがあり、面積は0μMでのそれより大きくなる可能性がある。高濃度では、図5(b)で示すように管腔の凝集によって孤立した網目領域が現われ、このような場合では管腔部が太くなり、網目の拡張面積や拡張処理回数は0μMでのそれより大きくなる可能性が出てくる。したがって、図9のテーブルのように、相対値が0μMを表す100を超えることもあり得る。このような状況も阻害効果として評価するため、管腔形成能の算出手段23は、0μMの指標100との絶対誤差を100から減算した指標を管腔形成能として算出し、計測結果テーブル31の管腔形成能の欄に保存した(図9)。
【0043】
図12は、各濃度での管腔形成能の特徴を把握し、かつ濃度変化に応じた管腔形成能の変化を視覚的に評価できるようにレーダーチャート作成手段24で作成された濃度別レーダーチャートである。
レーダーチャートは、特許文献2の腫瘍細胞に対する阻害剤の増殖抑制効果を評価する方法、特許文献3のご飯外観の数値評価方法や特許文献4の皮膚表面形態特徴検出方法などで使用されている。ひとつの対象に対して計測した複数項目の指標群を一括して表示するグラフとして多用され、対象の特徴が総合的に表現できると認められている。レーダ探知機を模倣して複数項目の指標群を表示するために、放射状に等間隔に配置された、統一された縮尺による項目軸上に、あらかじめ各項目において正規化された値が点として示され、これらを結んで多角形が描かれている。観察者は、この多角形を視感評価して、その対象の特徴を定性的に読み取っている。
【0044】
図12において、濃度変化に応じた管腔形成能の変化をレーダーチャートの多角形の変化として観察すると、1μM、10μM、20μMでのチャートの多角形は、形状がほぼ相似形として変化している。多角形の重心はほぼ原点中心付近にあるが、大きさが徐々に小さくなり、形状も領域数の軸で扁平になり、40μMで多角形は大きさが極端に小さくなっている。60μMでの多角形は面積の軸で縮み、拡張回数の軸で突出して形状が大きく歪み、多角形の重心も大きく移動している。80μMで多角形は大きさが小さくなり、100μMでは多角形はなく、完全に管腔形成能が消失したことが読み取れる。
40μMと100μMでのチャート上の劇的な変化は、図8の画像を観察して得られる視感評価と合致している。したがって、計算した網目領域数、網目領域の面積、その拡張面積、拡張領域の周長、拡張処理の回数が低濃度、中濃度、高濃度への変化に対応した阻害効果を定量評価する項目として有効であることが、視覚的に確かめられた。
【0045】
しかし、管腔形成試験の結果として、濃度依存的阻害曲線や一般的な薬理作用の指標である50%阻害濃度が求められている。管腔形成試験を培養細胞の画像から評価する装置にも、このような阻害効果の数量評価が必要である。したがって、レーダーチャートの視感評価を数量評価とするために、複数の評価項目の指標群から作られるチャート多角形を計算対象として、その大きさと形状に関する特徴を反映した指標群の合算方法が必要となる。
【0046】
管腔形成試験に限らず一般に、指標群は単純合算による総和や平均値によってひとつの数値にまとめられ、並行して視覚的に観察するためにレーダーチャートで表示されている。特許文献5で述べられている個人認証の方法では、まず条件を変えて測定した複数項目のデータを履歴データとして保存しておく。次に、同様に測定された測定データと各履歴データとを照合して差分分析値を算出する。その測定データに対する総合評価では、条件を変えた測定を和事象として取り扱うために個々の差分分析値の総和を計算し、ひとつの数値にまとめている。計算対象は指標群だけであり、指標群によって構成されるチャートの多角形ではない。レーダーチャートは計算方法の解釈や認証結果の確認だけに使用されている。したがって、この合算方法は、レーダーチャートの観察によって得られた、多角形の大きさや形状で表現されている特徴を定量化していない。
【0047】
レーダーチャートの多角形を計算対象としないが、管腔形成試験での複数項目の指標群をひとつの数値へまとめる観点から上記の計算方法の適応について考察する。この計算方法は、計測する項目に対応する現象が次々に起こる和事象として捉えて、複数項目の指標群を和算でまとめる。和事象で捉える例として、図13は平均値で合算した管腔形成能を示している。和算によって管腔形成能の変化が階段状になっており、変化が潰れたり、極端に下がったりと不連続的な変化になっている。濃度変化に応じた阻害過程が捉えにくく、特に60μM、80μMの高濃度では、視感評価と大きくずれた評価となっている。
【0048】
本実施例は、ある濃度の物質をある時間作用させた結果の画像から複数項目の指標群を計測している。そのため、各項目で計測される現象が同時に起きたと考えて積事象として捉える必要がある。したがって、指標群を表す数値の積算でなければならない。積事象で捉える簡単な例として、各濃度の管腔形成能を0μM指標100に対する各項目の指標比の積算を考える。これも図13に同時に示している。積事象と捉えることによって、和事象とする平均値に比べ、濃度依存的な阻害過程が単調に減少する管腔形成能の変化として表現されているが、全体に管腔形成能が極端に厳しく評価されている。40μMでの劇的な変化は表現されているが、それ以降の高濃度での管腔形成能の変化が潰れているため、やはりレーダーチャートでの視感評価とずれた評価となっている。
【0049】
レーダーチャートでの視感評価に合致した数量評価とするために、チャートの多角形を計算対象とする。視感評価では多角形の大きさ、すなわち面積を考慮に入れ、広い面積をもつ多角形は管腔形成能が高いと捉えられることから、管腔形成能を0μMでの多角形に対する各濃度の多角形の面積比とした。これも同様に図13に示している。この場合、指標比の積に比べ緩やかな阻害過程を示す管腔形成能となっているが、10μMと20μMで、40μMと60μMで管腔形成能が逆転している。これは、レーダーチャートを観察すれば、多角形の歪みが計算されていないためと考えられる。また、面積比の管腔形成能の変化は、平均値による変化と相関している。多角形の面積は、レーダーチャートで隣接する項目軸上の2点とチャート原点で作られる三角形の面積の和である。したがって、2項目をまとめて評価する和事象と捉えるため、平均値による管腔形成能と同様な変化を示している。濃度が高くなるにつれて管腔形成能が阻害される過程が示されていない。特に高濃度では、視感評価と大きくずれた評価となっている。
【0050】
一般にひとつの対象に対して計測した複数項目の指標群をレーダーチャートで表現し、その多角形の面積の大きさに着目したかのような視感評価による講評が多見される。しかし、本実施例での評価の逆転が示すように、面積では、正多角形に近い形状なのか、ある項目が極端に突出した多角形なのかという形状の要素が計算に反映されていない。複数の対象について、視感評価では、面積の大小が判断しにくい場合も多く、無意識には多角形の形状に着眼しても、面積の大小と歪みを同時に判断して視感評価で順位付けるのは困難である。
【0051】
本発明では、多角形を大きさと形状によって数量評価するために、多角形と等しい面積の円を導入する。多角形の大きさは円の半径に置き換える。形状の歪みは、その半径に対する各項目の指標である管腔形成能との比で表している。すなわち各濃度での評価は、複数項目すべてについての歪みと0μMの各項目満点のときの半径に対するその濃度での半径比とを積算し、さらに各項目満点のときの値との相対値としている。本発明の合算法を一般式で表せば、濃
の指標群から作られるレーダーチャートのn角形と等しい面積の円の半径をriとする。このときの濃度iにおける評価Piを数1の式で算出する。
【数1】
【0052】
本実施例では5つの評価項目を用いたため、チャート多角形に基づいた合算手段25では、nを5として計測結果テーブル31における各濃度の各管腔形成能を合算してその濃度の管腔形成能を算出した。図14には、本発明の合算法による管腔形成能を示しており、これまで検討した計算法の管腔形成能もともに示している。本発明の合算法によって、濃度が高くなるにつれて最も緩やかに徐々に阻害されていく過程が示されている。1μMにおいて多角形の大きさだけでなく、歪みが少ないことも評価されたため、面積比より高い管腔形成能と評価されている。20μMにおいては、10μMよりも歪みが現れており、それまでの多角形とはやや異なった形状となっているため、面積比より低い管腔形成能となっている。40μMの劇的な変化は、この合算法でも示されているが、大きさは劇的に小さくなるが、形状は20μMと相似形であることが評価され、面積比より高い管腔形成能となっている。60μMでは、大きく歪みが現れているため、面積比よりかなり低く評価され、さらに80μM、100μMと管腔形成能が緩やかではあるが、明確な差として表されている。この管腔形成能の変化は、レーダーチャートの視感評価、さらに顕微鏡画像の視感評価とも合致している。
【0053】
薬理効果は、シグモイド曲線によって表現されると言われている。濃度依存的阻害曲線と50%阻害濃度の算出手段26は、算出した管腔形成能をシグモイド曲線の定義のひとつである一般的なロジスティック関数Richard‘s curveへ当てはめ、近似式を求めた。図15は、シグモイド曲線に近似された濃度依存的阻害曲線を示している。本発明の合算法による管腔形成能の計測値と、研究者視感評価と、端的に管腔が形成された状態を示す網目領域数も示している。また、近似式から算出した50%阻害濃度も示している。低濃度において、領域数だけでは研究者より厳しく評価していたが、面積などの4つの評価項目が加わることによって補われ、研究者の評価に接近している。
【0054】
図16は、非特許文献2で示されているBDバイオサイエンス社によるsuraminの管腔形成試験の計測結果である。評価項目を合算した総合評価ではなく、個々の項目による評価である。本発明による評価と異なり、低濃度、中濃度、高濃度へと変化する濃度に応じて徐々に連続的に阻害される過程が表されていない。また、高濃度における管腔の面積、長さの評価項目で、濃度の変化に対応して評価が低下していない。
【0055】
図15に示すように本発明による濃度依存的阻害曲線はシグモイド曲線で近似され、経験豊富な研究者でも判断に迷うと言われている中濃度において、研究者や領域数に比べ高い管腔形成能となっている。研究者の評価が低いのは、管腔形成の状態から管腔が切断され、元の網目の崩壊現象は評価されているが、その結果生じた大域的な網目となる管腔形成の状態が評価されていないためと考えられる。低濃度では、管腔形成の状態から徐々に管腔が切断され、元の網目が崩壊していく。これは、錯視の概念に例えれば、黒を図柄とした現象として認知できる。中濃度では崩壊の結果生じた大域的な網目となる管腔形成の状態が出現する。この現象は白を図柄としなければ認知しにくい。研究者は低濃度で黒を図柄として崩壊現象に注目してきたため、中濃度で急に白を図柄とした認知に切り替えられないため、大域的な管腔形成を認知できない。高濃度では大域的な管腔形成が崩壊し、さらに凝集により細胞塊となるが、これも黒を図柄として認知できる現象である。このように阻害過程を錯視の概念から捉えれば、研究者の評価は、白の背景に黒の図柄として認知する対象に留まっている。錯視は我々の視覚特性であり、白の背景に黒の図柄として認知する対象と黒の背景に白の図柄として認知する対象を同時に知覚できない。この両者を観察するという明確な意思がなければ、一方の白の背景に黒の図柄を認知するのが通例であり、研究者の評価は視感評価の限界とも言える。本発明法は錯視の概念を踏まえ網目領域に着目した解析法であるため、この二通りに認知される対象が解析されており、低濃度、中濃度、高濃度へと変化する濃度に対応した阻害過程が客観的に評価されている。また、本発明は、視感評価の限界を明らかにするとともに、装置による解析の利点も明確にした。
【0056】
画像を濃度別にほぼ同数の二群に機械的に分けて、本発明法で濃度依存的阻害曲線を求めた。図17は、それぞれ計測値1、計測値2として計測した管腔形成能と、それぞれ近似値1、近似値2として近似した濃度依存的阻害曲線と、それぞれ管腔形成能1、管腔形成能2として算出した50%阻害濃度を示している。画像を機械的に二群に分けたが、得られた濃度依存的阻害曲線や50%阻害濃度に大きな差はなく、シャーレ毎の変動や撮影位置の影響は少ないことが確かめられた。
【0057】
本実施例は、評価項目を領域数、面積、拡張面積、拡張周長、拡張処理回数の5項目とした。これらの濃度毎の計測結果群に対して主成分分析を適用し、5項目の最適性について検討した。表1は結果群の相関行列を用いた主成分分析を行った結果である。表1(a)が示すように第二主成分までで累積寄与率が0.97となり、全分散の97%が説明できていた。各主成分と各項目との相関を表す因子負荷量は、第一主成分では5項目すべてが高い値を示しているが、第二主成分では絶対値として拡張面積が他に比べ小さい値となっている。このことから、拡張面積を除いた4項目でも主成分分析を行った。表1(b)が示すように第二主成分までの累積寄与率は等しく0.97であり、因子負荷量も5項目の場合と同程度になっているため、拡張面積を除外しても評価に及ぼす影響は少ないと判断できる。
【表1】
【0058】
図18は、拡張面積を除いた4項目による評価のレーダーチャートである。阻害過程が四角形の大きさと歪みの形態変化として表現されている。5項目の場合と同様に、各濃度について本発明の合算法によって算出した管腔形成能をRichard‘s curveへ当てはめ、近似的に濃度依存的阻害曲線を求めた。図19は拡張面積を除外した4項目による管腔形成能の計測値と近似値を5項目による図15と同様に示している。両者にほとんど差はなく、50%阻害濃度もほぼ同等に算出されている。
【0059】
本実施例では、網目領域数、その面積、拡張領域の周長、拡張処理回数の4項目で濃度変化に応じた阻害過程が捉えられた。拡張領域の面積は、周長と同一のプロセスで計算できるため、除外によって処理効率の向上よりむしろ結果解釈の平易化が期待できる。管腔形成試験の予備施行の段階においても本発明法で評価し、本実施例で示したように、使用する細胞や物質に応じて評価項目を取捨選択して、それぞれの系に適した評価項目の構成が可能である。
【0060】
本発明の合算法によって、拡張面積を除外した4項目の指標群から各濃度における管腔形成能を算出した。これは、この合算法においてnが4の場合の実施例である。本発明の合算法は、複数の対象について、各対象を複数項目の指標群で表し、これらの指標を総合的に判断して順位付ける際などに、一般に適用できる計算方法である。
【符号の説明】
【0061】
20 評価装置
21 網目領域の計測手段
22 領域属性の計測手段
23 相対値としての管腔形成能の算出手段
24 レーダーチャート作成手段
25 チャート多角形に基づいた合算手段
26 濃度依存的阻害曲線と50%阻害濃度の算出手段
31 計測結果テーブル
41 表示器
【技術分野】
【0001】
この発明は、作用させた物質が管腔形成に及ぼす阻害効果を調べるための管腔形成試験の評価方法、および顕微鏡下で撮影した細胞画像を用いて、作用させた物質の阻害効果を評価する評価装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
がん治療法の研究開発において、血管新生はがん征圧の有効な標的である。がんは増殖や転移のために、栄養と酸素の補給路となる血管網を新たに構築する。血管新生の阻害は補給路の遮断となり、増殖や転移が抑制される。血管内皮細胞による管腔形成を観察する管腔形成試験は、管腔形成の阻害効果の評価系として、がん治療法の研究開発にとって重要な手段である。
【0003】
近年、特許文献1で示されているように、リンパ管新生が関与している疾病に関しても、リンパ管内皮細胞および血管内皮細胞による管腔形成を観察するリンパ管新生の評価系が構築された。がん細胞のリンパ節転移では、腫瘍リンパ管新生が惹起され、リンパ節転移が亢進するとされており、リンパ管新生の評価系を用いた阻害効果の判定による医薬品開発への期待が高まっている。
【0004】
血管新生性疾患は、がんの他にも現在関節リューマチや子宮内膜症など約50種類が報告されている。なかでも糖尿病性網膜症や未熟児網膜症などの網膜血管新生疾患では、非特許文献1で示されているように網膜血管新生阻害作用を検討するためのヒト臍帯静脈血管内皮細胞とヒト線維芽細胞の共培養系による管腔形成能を指標とした評価系が開発されている。この評価系は,簡便で再現性が高く、網膜血管新生疾患に対する様々な化合物の薬効評価に適している。網膜血管構造を詳細に評価するために、画像解析による定量法の需要が高まっている。
【先行技術文献】
【0005】
管腔形成試験を定量評価するために、培養細胞の試料表面を撮影した画像から管腔形成能を評価する装置が、BDバイオサイエンス社(非特許文献2)、サーモフィッシャーサイエンティフィック社(非特許文献3)、または倉敷紡績株式会社 バイオメディカル部(非特許文献4)などから販売されている。これらの装置は、試料作成時に細胞を染色、または抗体と反応させて細胞を蛍光標識して得られた画像を対象としている。
【0006】
これらの装置では、画像に現れている管腔形成による模様の定量化を目的としているため、画像処理によって変換された管腔部分の骨格線である線図形が幾何学的に計測されている。
【0007】
管腔形成試験は、注目する物質が管腔形成に及ぼす阻害効果をその濃度を変化させて調べている。従来の装置は、低濃度と高濃度での画像から濃度差による影響を定量化することはできるが、中濃度での濃度差による影響が定量化できず、濃度変化に応じた連続的な阻害効果の判定が困難となっている。
【0008】
特許文献2の腫瘍細胞に対する阻害剤の増殖抑制効果を評価する方法、特許文献3のご飯外観の数値評価方法や特許文献4の皮膚表面形態特徴検出方法などは、ひとつの対象に対して計測した複数項目の指標群をレーダーチャートで表示している。レーダーチャートは、複数項目の指標で形成されたチャート多角形によって対象の特徴を一括して、視覚的に表現するグラフとして使用されている。
【0009】
レーダーチャートは、ひとつの対象に対して計測した複数項目の指標群の観察に用いられているが、特許文献5の個人認証の方法は、指標群の合算方法の解釈および結果の確認にも使用している。この方法は、ある個人に対して複数の条件下で測定した複数項目の指標群をあらかじめ履歴データとして保存しておき、後に同様の方法で得られた測定データが複数個の履歴データのどれと照合するかを判定する方法である。それぞれ対応する項目での値の差を二乗して差分分析値とし、すべての項目における差分分析値の総和を算出する。測定データとある履歴データが一致するときに差分分析値の総和は0となるため、測定データとすべての履歴データとの差分分析値の総和を0に近い順に順位付けし、測定データは最高順位となった履歴データと合致すると判定されている。レーダーチャートは差分分析値の総和の計算に使用しないが、測定データの指標群をレーダーチャートで表現すると、差分分析値の総和の大小は、そのチャート多角形と履歴データを表示したときの多角形の形状の類似度と解釈できる。レーダーチャートは、測定データと履歴データの照合結果の視覚的な確認に利用できる。
【0010】
【特許文献1】国際公開WO2007013517号公報
【特許文献2】特開2008−104456号公報
【特許文献3】特開2001−174412号公報
【特許文献4】特許番号2944309号公報
【特許文献5】国際公開WO2010122807号公報
【特許文献6】特開2009−109362号公報
【非特許文献1】「網膜血管新生阻害作用のIn vitroおよびIn vivo評価系」、日本薬理学雑誌、Vol.129(2007),No.6,pp.451−456
【非特許文献2】
【非特許文献3】サーモフィッシャーサイエンティフィック社(2010)Cellomics細胞イメージ解析 E.Grove,O.Lapets,and R.N.Ghosh,A quantitative,automated,high content screening assay for angiogenic tube formation
【非特許文献4】「血管新生定量ソフトウェアVer.2 血管新生キット関連製品カタログ 2010」、倉敷紡績株式会社 バイオメディカル部
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の装置は、管腔の抽出に色情報を使用しているおり、染色などによって付加された色情報によって画像解析の頑強性を高めている。このような方法では、薬剤開発のための阻害剤のスクリーニングのような大規模試験では、高価な設備が必要となり、多大な時間がかかり処理効率が悪い。
【0012】
従来の装置は、画像上の管腔による模様を骨格線である線図形に変換して、幾何学的に計測しているが、管腔が形成されている状態、または管腔の形成が阻害されている状態としての定量化がなされていない。特に高濃度の物質によって阻害された状態において研究者等の視感評価とのずれが生じている。
【0013】
管腔形成試験では中濃度の物質を作用させた場合、経験豊富な研究者でも判断に迷うことが多い。従来の装置は、中濃度における濃度差による影響が定量化できず、濃度変化に応じた連続的な阻害効果が適切に評価されていない。
【0014】
従来の装置は、画像に現れている管腔形成能を複数の観点から計測した評価項目の値を出力しているが、利用者は評価項目毎にグラフを作成して、濃度変化に応じた変動を捉えている。そのため、濃度毎に評価項目の変動を捉えようとした場合、評価項目毎に値を正規化した後に、濃度別にそれぞれレーダーチャートを作成してそれぞれを目視で観察するしかなく、各評価項目の評価値を統合させて算出した客観的な数値で各濃度の管腔形成能を表示することができないという欠点がある。
【00015】
本発明は、このような従来技術の欠点を解決するために成されたものである。濃度を変えて作用させた物質が管腔形成に及ぼす阻害効果を調べるための管腔形成試験を客観的に効率よく評価する方法と、顕微鏡下で撮影した細胞画像を用いて、作用させた物質の阻害効果を評価する評価装置を廉価に提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1記載の発明は、前記の従来技術の欠点を解決するために、作用させた物質が管腔形成に及ぼす阻害効果を調べるための管腔形成試験の評価方法において、評価対象画像データを用意する段階と、前記評価対象画像データの各々から網目領域を抽出し、各網目領域の面積と当該画像上で抽出された網目領域数を計測する段階と、網目領域の属性評価項目を計測する段階と、濃度別に各評価項目の管腔形成能を相対値として算出する段階と、評価項目数に応じて放射状に伸びた軸上に、前記算出された管腔形成能の相対値をプロットして濃度別にレーダーチャートを作成する段階と、前記濃度別のレーダーチャートの原点とプロットした点までの距離によって算出したチャート多角形の大きさと歪みに基づいて管腔形成能を合算する段階と、算出した濃度別の合算値である管腔形成能をシグモイド曲線へ当てはめて濃度依存的阻害曲線を算出する段階とを備えたことを特徴とする画像解析による管腔形成試験評価方法である。
【0017】
請求項2の発明は、評価対象画像データを受領し、該評価対象画像データの各々から網目領域を抽出し、各網目領域の面積と当該画像上で抽出された網目領域数を計測する網目領域の計測手段と、網目領域の属性評価項目として、拡張面積、拡張周長、拡張回数を計測する計測手段と、濃度別に各評価項目の管腔形成能を相対値として算出する管腔形成能の算出手段と、前記網目領域の計測手段の出力、領域属性の計測手段の出力、および管腔形成能の算出手段の出力、それぞれの出力を受けて記憶する計測結果テーブルと、評価項目数に応じて放射状に伸びた軸上に、前記算出された管腔形成能の相対値をプロットして、濃度別にレーダーチャートを作成するレーダーチャート作成手段と、前記濃度別のレーダーチャートの原点とプロットした点までの距離によって算出したチャート多角形の大きさと歪みに基づいて管腔形成能を合算する合算手段と、算出した濃度別の合算値である管腔形成能をシグモイド曲線へ当てはめて近似式を作成するとともに、前記近似式から濃度依存的阻害曲線と50%阻害濃度を算出する手段と、少なくとも前記算出された濃度依存的阻害曲線を表示する表示手段とを備えた管腔形成試験評価装置である。
【0018】
請求項3の発明は、評価対象画像データの各々から網目領域を抽出し、各網目領域の面積と当該画像上で抽出された網目領域数を計測するステップと、網目領域の属性評価項目を計測するステップと、濃度別に各評価項目の管腔形成能を相対値として算出するステップと、評価項目数に応じて放射状に伸びた軸上に、前記算出された管腔形成能の相対値をプロットして、濃度別にレーダーチャートを作成するステップと、前記濃度別のレーダーチャートの原点とプロットした点までの距離によって算出したチャート多角形の大きさと歪みに基づいて管腔形成能を合算するステップと、算出した濃度別の合算値である管腔形成能をシグモイド曲線へ当てはめて濃度依存的阻害曲線を算出するステップとを備えた管腔形成試験評価プログラムである。
【0019】
請求項4の発明は、指標となる複数の属性を有する複数の評価対象データを相対比較して各評価対象データを総合的に評価する評価装置であって、指標となる複数の属性それぞれ毎に、評価項目値を設定する評価項目値の設定手段と、評価項目数に応じて放射状に伸びた軸上に、前記算出された評価項目値の相対値をプロットして、前記評価対象データ毎にレーダーチャートを作成するレーダーチャート作成手段と、前記評価対象別にレーダーチャートの原点とプロットした点までの距離によって算出したチャート多角形の大きさと歪みに基づいて評価項目値の相対値を合算する合算手段と、該合算手段によって求められた合算値の大小を判別して前記各評価対象データを評価する判定手段とを備えたレーダーチャート評価装置である。
【0020】
請求項5の発明は、評価項目値を設定するステップと、評価項目数に応じて放射状に伸びるレーダーチャートの軸上に、前記算出された評価項目値の相対値をプロットして、前記評価対象データ毎にレーダーチャートを作成できるようにするステップと、前記評価対象別にレーダーチャートの原点とプロットした点までの距離によって算出したチャート多角形の大きさと歪みに基づいて評価項目値の相対値を合算するステップとを備えたレーダーチャート評価プログラムである。
【発明の効果】
【0021】
請求項1および請求項3記載の発明は、評価対象画像データの各々から網目領域を抽出し、各網目領域の面積と当該画像上で抽出された網目領域数を計測する段階と、網目領域の属性評価項目を計測する段階とを備えているので、細胞染色や細胞標識の画像解析向けの処置を省くことができ、実験から解析までの全体を通した処理効率を高められる効果を有する。また、画像に現れている管腔形成能の状態の定量化が可能となり、研究者等が経験によって得た、管腔が形成されている状態、または管腔の形成が阻害されている状態などの視感評価と合致した評価が可能となる。
しかも、濃度別に各評価項目の管腔形成能を相対値として算出する段階と、評価項目数に応じて放射状に伸びた軸上に、前記算出された管腔形成能の相対値をプロットして、濃度別にレーダーチャートを作成する段階と、前記濃度別のレーダーチャートの原点とプロットした点までの距離によって算出したチャート多角形の大きさと歪みに基づいて管腔形成能を合算する段階と、算出した濃度別の合算値である管腔形成能をシグモイド曲線へ当てはめて濃度依存的阻害曲線を算出する段階とを備えているので、作用させる物質の低濃度、中濃度、高濃度へと変化する濃度に対応した阻害作用が評価でき、濃度変化に応じた連続的な阻害効果が評価できる。
【0022】
請求項2記載の発明は、管腔が形成されている状態との相対値を評価値としているため、簡易にレーダーチャートで表示でき、評価項目相互での比較ができる。
しかも、レーダーチャートを観察するだけでなく、チャート多角形の大きさと歪みを利用して評価値を合算しているので、計測された複数の評価項目の評価値を濃度毎にひとつの数値である管腔形成能として算出できる利点もある。
さらに、本発明は、各濃度で算出された管腔形成能をもとに、シグモイド曲線に近似される濃度依存的阻害曲線を求め、濃度変化に応じた連続的な阻害効果を評価できるので、目視によって感覚的に判断するのと異なり、客観的に正確に、薬理作用の評価として重要な50%阻害濃度が算定できる。
【0023】
請求項4および請求項5の発明は、評価対象別にレーダーチャートの原点とプロットした点までの距離によって算出したチャート多角形の大きさと歪みに基づいて評価項目値を合算する算出手段と、該合算手段によって求められた合算値の大小を判別して前記各評価対象を評価する判定手段とを備えている。そのため、レーダーチャートを観察するだけでなく、チャート多角形の大きさと歪みを利用して評価項目値を合算し、チャート多角形が表している複数項目の評価項目値群の状態を総合的に定量化できるという効果を有する。
しかも、従来は、複数の対象のレーダーチャートを見比べて視感評価していたため、判断が評価者の主観に左右されるという問題があった。しかし、本発明によって比較対象のデータ毎に計測された複数項目の評価値群が総合的に合算されたひとつの数値になり、複数の対象の客観的な評価が可能となる。本発明は、レーダーチャートの機能を進化させ、さらにレーダーチャートの利用範囲を拡大する効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の評価方法の手順を示すフローチャート
【図2】本発明の実施形態の構成図
【図3】阻害剤により管腔形成の網目模様が崩壊する過程を示す顕微鏡写真
【図4】網目領域の抽出方法を説明するための図
【図5】拡張した網目領域で計算される概念を示す図
【図6】拡張した網目領域の周長の計算方法を示す図
【図7】チャートの多角形を利用した合算方法を説明するための図
【図8】管腔を形成するKOP細胞に濃度を変えたsuraminを作用させて得られた顕微鏡写真
【図9】計測結果テーブル31の内容例を示す図
【図10】網目領域によって算出された管腔形成能を示す図
【図11】管腔形成の阻害過程の実態を説明するための顕微鏡写真
【図12】濃度別の管腔形成能を視覚的に表すレーダーチャートの図
【図13】合算方法が計算結果に及ぼす影響を説明するための図
【図14】チャート多角形を利用した本発明の合算方法の効果を説明するための図
【図15】シグモイド曲線に近以された濃度依存的阻害曲線を示す図
【図16】先行技術による解析結果を示す図
【図17】2つの画像群のシグモイド曲線に近似された濃度依存的阻害曲線を示す図
【図18】4項目評価での濃度別の管腔形成能を視覚的に表すレーダーチャートの図
【図19】4項目評価でのシグモイド曲線に近似された濃度依存的阻害曲線を示す図
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の画像解析による管腔形成試験の評価方法の手順を示すフローチャートであり、図2は、本発明の実施の形態の構成図である。以下、これらの図にしたがって説明する。
【0026】
図3は、本発明装置が解析の対象とする画像の例である。この画像は、試験管内で細胞が管腔を形成する系において細胞染色や細胞標識の画像解析向けの処置を省いて得られた濃淡画像である。本発明の評価法は、このようにして用意された画像(S1)、または染色などの処置を施された画像を対象にして、画像解析によって濃度依存的阻害効果を定量評価する。
【0027】
画像上で管腔が形成されている状態は、図3(a)に示すように視感では管腔が網目模様を形成していると捉えられる。網目領域の計測手段21は、管腔形成能の計測をその網目模様の計測として、網目領域を抽出し、面積と領域数を計測している(S2)。その評価方法の特徴は、我々の視覚の錯視と呼ばれる特性を利用していることである。網目模様の解析に対して、白の背景に黒の図柄に相当する網目の網に着目するのではなく、黒の背景に白の図柄が描かれているとして網目領域に着目している。この着目によって研究者の視感に合致する評価が得られている。錯視を利用することについて、本発明は特許文献6の試料状態評価方法および装置に着想を得ている。
【0028】
このように網目領域に着目すると、図4(a)に示すように画像の輝度は管腔部分で粒子状の模様となって変動するが、網目領域ではほとんど変動していない。さらに、対象とする系は、試験管内での管腔形成試験であるため、画像上には管腔部分に相当する細胞領域か、あるいは網目領域のように平坦に見える領域しか現れていない。この特性を活かして、本発明は、画像から管腔の骨格線を求めた後に網目領域を抽出するのではなく、画像から直接網目領域を抽出し、その領域の属性を計測して管腔形成能を評価する。
【0029】
網目領域の抽出のために、画像を元画像に相似な極小領域に分割し、そこでの輝度の標準偏差のヒストグラムを作る。画像上では、網目領域は管腔部分より多くを占めることより、図4(b)に示すように輝度がばらつかない網目領域での極小領域はヒストグラムのモードを形成する。モードとなっている極小領域について領域の連結性によってまとめ、網目領域の候補とし、それぞれの領域の面積を計測する。ここで、画像の端に位置する領域は、バックグランドとして、候補から除外する。阻害が進むと網目模様が崩壊し、管腔部が凝集して輝度が暗く、変動しない領域となることから、候補からこのような輝度が暗い領域を除外する。候補領域の面積分布において、極端に小さな領域はアーチファクトとして除外する。なお、図11について詳しくは後述するが、この図11に示す阻害の過程で観察されるように、大きな領域の存在は阻害されたことの傍証である。阻害によって大きな領域が形成され、同時に小さな領域も形成され得る。大きな領域が存在しなくて、小さな領域だけならば、その小さな領域は阻害によって形成された領域ではなく凝集した細胞塊かアーチファクトである。この性質を利用して候補から除外し、残った候補を網目領域とする。したがって、本発明は管腔の状態と阻害過程による変化を踏まえた論理によって選別された網目領域を取り扱っている。計測された領域数は、各濃度の画像毎に計測結果テーブル31に保存する。面積は各画像での平均値を計測結果テーブル31のそれぞれの計測数の欄に保存する。
【0030】
本発明は、このように輝度のばらつきを利用して抽出した網目領域を用いて評価を行っており、網目領域数は基本的な指標である。網目領域数は管腔が形成されている状態、または管腔形成が阻害されている状態を反映している。特に高濃度の物質によって阻害された状態は、網目領域が消失しているため、網目領域数は0となり、阻害効果が明確になる。従来の装置では、高濃度での阻害の程度が過小評価され、研究者の視感評価とのずれが生じているが、本発明ではずれは生じない。
【0031】
次に、本発明の目的である濃度変化に応じた連続的な阻害効果を評価するために、網目領域の属性を評価項目に加える。領域属性の計測手段22は、網目領域の属性評価項目として、拡張面積、拡張周長、拡張回数の少なくともひとつを計測する(S3)。拡張面積とは、図5(a)に示すように隣り合う網目領域が互いに接するまで同時に拡張したときの面積であり、拡張周長はその際の領域周長、拡張回数は施した拡張処理の回数である。S2の手続きで計測した網目領域の面積は、物質や生命情報伝達のための管腔によるネットワークの勢力範囲であり、拡張した網目領域の面積は、太い管腔ではより拡張されるため管腔の太さの影響を加えたネットワークの勢力範囲を示している。同面積でも異なる周長になり得るため、形状の相違が反映されるように拡張周長が用意されている。拡張処理回数は、図5(b)に示すような凝集によって孤立した網目領域で増大するため、凝集が起こる高濃度での阻害を特徴付けるために用意されている。計測された拡張面積、拡張周長、または拡張回数は、濃度毎の各画像での平均値を計測結果テーブル31のそれぞれの計測数の欄に保存する。
【0032】
拡張周長の計測には、隣り合う網目領域が互いに接するまで同時に拡張した後に、領域にラベルを付け、図6(a)の模式図に示すように領域の各画素の輝度をそのラベルの数値としたラベル画像を作成する。図6(b)は、ラベル画像の各画素について、隣の画素とのラベル対を整理する正方行列である。この正方行列は、行と列にラベルを配置しており、整理後の行列の各要素は、その行成分と列成分のラベル対に相当する画素数の和である。拡張した網目領域の面積は、この正方行列の対角成分として求められている。周長は対応するラベルの対角成分を除いた行成分と列成分の累計によって算出できる。
【0033】
管腔形成能の算出手段23は、計測結果テーブル31において各濃度での各評価項目について計測数の平均値を算出し、平均値の欄に保存する。次に、その平均値を管腔が形成された状態の管腔形成能を100としたときの相対値に変換し、計測結果テーブル31の相対値の欄に保存する。評価項目によっては、相対値は100を超えることもあるため、それぞれその相対値と100との絶対誤差を100から減算したものをその管腔形成能として、同様に計測結果テーブル31の管腔形成能の欄に保存する(S4)。
【0034】
レーダーチャート作成手段24は、計測結果テーブル31に保存されている各評価項目の管腔形成能を濃度毎にレーダーチャートで表示する(S5)。チャート多角形に基づいた合算手段25は、すべての管腔形成能を一括して観察するだけでなく、濃度毎にチャート多角形の大きさを面積に、その形状を歪みとして、多角形の大きさと歪みに基づいて管腔形成能を合算する(S6)。本発明の特徴は、この多角形の形態に基づいた合算法である。この合算によって各濃度での各項目の管腔形成能がひとつの数値として定量化される。
【0035】
その濃度における総合的な管腔形成能の高さは、レーダーチャートの多角形の大きさに示されているため、本発明の合算法は、まず多角形の面積を求める。次に、各項目の評価値で均衡がとれているか、偏っているかも重要であり、面積が大きく、かつ正多角形に近い形状を示すほど、総合的な管腔形成能は高いとしている。そこで、均衡がとれているかどうかを計算するため、図7に示すように多角形と面積が等しい円を導入する。各項目の評価値は、幾何学的にはレーダーチャートの原点とその評価値までの距離に相当し、導入した円の半径と各項目の評価値である距離との比を計算する。また、管腔が形成された状態での半径との半径比も計算し、すべてを積算する。得られた値についての、管腔が形成された状態での同様な値に対する相対値を計算し、その濃度での管腔形成能とする。この合算法により、複数の評価項目で計測された管腔形成能が、チャートの多角形の大きさと歪みを反映して統合されたひとつの管腔形成能となる。
【0036】
さらに、この数値を利用して、濃度依存的阻害曲線と50%阻害濃度の算出手段26は、濃度依存的阻害曲線を作成し(S7)、薬理作用の指標である50%阻害濃度を算出する(S8)。シグモイド曲線は薬理効果の定量的表現と言われている。本発明は、濃度毎に算出された管腔形成能をシグモイド曲線へ当てはめ、近似的な濃度依存的阻害曲線を求める。また、得られた近似式から50%阻害濃度を算出し、それぞれ表示器41に表示する。合算された濃度毎の管腔形成能を表示器41に表示することもできる。
【実施例】
【0037】
実施した管腔形成試験は、マウスの血管内皮細胞KOPを使用し、抗血管新生剤として既知なsuraminの管腔形成に対する阻害効果を調べる試験である。シャーレに入れた成長因子類の含有量を少なくした基底膜マトリゲル上でKOP細胞を18時間培養し管腔を形成させる。このとき、1μM、10μM、20μM、40μM、60μM、80μM、100μMと濃度を変えたsuraminを加えてそれぞれの阻害効果を調べる。細胞染色や細胞標識の処置は省いた。図8は、濃度毎にシャーレ内で位置を変えて光学顕微鏡下で撮影した細胞画像の一部である。画像は640×480画素であり、各画素は8ビット256階調の輝度を有している。Suraminの濃度に応じて、画像上で認められる管腔形成による網目模様が消失していく過程と、太さが均一であった管腔が濃度に応じて不均一になり、さらに凝集により細胞塊となっていく過程が観察される。
濃度毎の画像数は以下の通りである。
管腔形成(0μM):22、1μM:12、10μM:16、20μM:25、40μM:10、60μM:7、80μM:9、100μM:11
【0038】
網目領域の計測手段21はこれらの画像から網目領域を抽出し、濃度毎に各画像での結果を計測結果テーブル31に保存した。図9は、そのテーブルであり、計測した領域数は、濃度毎に各画像の計測数の欄に保存されている。面積は、濃度毎に各画像で計測した面積の平均値が計測数の欄に保存されている。
【0039】
網目領域は、各画像を極小領域に分割し、そこでの輝度の標準偏差のヒストグラムを使用して抽出した。図10は画像群全体の結果である。各濃度での網目領域数の標準誤差は、図10(a)で示した程度の変動である。特にsuraminを作用させていない、0μMの管腔が形成された状態、すなわち管腔形成能を100とする状態では、標準誤差は極めて小さい。そこで、各濃度での網目領域数は平均値で代表させている。図10(b)は、各濃度での領域数に関する評価である。この図では、0μMでの平均値との相対値を領域数として示している。研究者とは、管腔形成試験の視感評価の経験が長い2名の研究者の評価であり、0μMでの管腔形成能を100としたときの各濃度での相対的な視感評価値の平均値である。先行技術の評価では、高濃度の物質によって阻害された状態で研究者の視感評価とのずれが生じていたが、領域数による評価では、中濃度と高濃度において研究者の評価とほぼ合致しており、評価のずれは解消されている。しかし、領域数だけでは、低濃度において研究者より厳しく評価しており、すれが生じている。
【0040】
領域属性の計測手段22は、領域属性としての評価項目について、すべての画像について計測した。各画像での計測量の平均値を計測結果テーブル31の計測数の欄に保存した(図9)。
【0041】
網目領域計測手段21で計測した網目領域の面積、網目の拡張面積、拡張周長、拡張処理回数の4つに関して、どれも0μMでの標準誤差は極めて小さいことから網目領域数と同様に、0μMでの平均値を100としたときの各濃度での平均値の相対値を各濃度での指標としている。管腔形成能の算出手段23は、計測結果テーブル31において濃度毎に各評価項目について保存されている計測数の平均値を算出して、それぞれの評価項目の平均値の欄に保存し、さらにその平均値に対して0μMでの平均値を100としたときの相対値を算出して、それぞれの相対値の欄に保存した(図9)。
【0042】
図11は低濃度と中濃度での画像の一部である。矢印で示した箇所で管腔が切断されているため、破線で示した網目領域が形成され、画像上に示したような網目領域数とその面積の変化が観察される。このような観察から、濃度が高くなるにつれて、網目領域数は単調に減少するが、面積は一時的に増加しながら減少するという阻害の過程が認められる。
ここで観察される管腔形成の阻害の実際を勘案すると、網目領域は、0μMでの網目領域が複数集まってひとつの網目領域となることがあり、面積は0μMでのそれより大きくなる可能性がある。高濃度では、図5(b)で示すように管腔の凝集によって孤立した網目領域が現われ、このような場合では管腔部が太くなり、網目の拡張面積や拡張処理回数は0μMでのそれより大きくなる可能性が出てくる。したがって、図9のテーブルのように、相対値が0μMを表す100を超えることもあり得る。このような状況も阻害効果として評価するため、管腔形成能の算出手段23は、0μMの指標100との絶対誤差を100から減算した指標を管腔形成能として算出し、計測結果テーブル31の管腔形成能の欄に保存した(図9)。
【0043】
図12は、各濃度での管腔形成能の特徴を把握し、かつ濃度変化に応じた管腔形成能の変化を視覚的に評価できるようにレーダーチャート作成手段24で作成された濃度別レーダーチャートである。
レーダーチャートは、特許文献2の腫瘍細胞に対する阻害剤の増殖抑制効果を評価する方法、特許文献3のご飯外観の数値評価方法や特許文献4の皮膚表面形態特徴検出方法などで使用されている。ひとつの対象に対して計測した複数項目の指標群を一括して表示するグラフとして多用され、対象の特徴が総合的に表現できると認められている。レーダ探知機を模倣して複数項目の指標群を表示するために、放射状に等間隔に配置された、統一された縮尺による項目軸上に、あらかじめ各項目において正規化された値が点として示され、これらを結んで多角形が描かれている。観察者は、この多角形を視感評価して、その対象の特徴を定性的に読み取っている。
【0044】
図12において、濃度変化に応じた管腔形成能の変化をレーダーチャートの多角形の変化として観察すると、1μM、10μM、20μMでのチャートの多角形は、形状がほぼ相似形として変化している。多角形の重心はほぼ原点中心付近にあるが、大きさが徐々に小さくなり、形状も領域数の軸で扁平になり、40μMで多角形は大きさが極端に小さくなっている。60μMでの多角形は面積の軸で縮み、拡張回数の軸で突出して形状が大きく歪み、多角形の重心も大きく移動している。80μMで多角形は大きさが小さくなり、100μMでは多角形はなく、完全に管腔形成能が消失したことが読み取れる。
40μMと100μMでのチャート上の劇的な変化は、図8の画像を観察して得られる視感評価と合致している。したがって、計算した網目領域数、網目領域の面積、その拡張面積、拡張領域の周長、拡張処理の回数が低濃度、中濃度、高濃度への変化に対応した阻害効果を定量評価する項目として有効であることが、視覚的に確かめられた。
【0045】
しかし、管腔形成試験の結果として、濃度依存的阻害曲線や一般的な薬理作用の指標である50%阻害濃度が求められている。管腔形成試験を培養細胞の画像から評価する装置にも、このような阻害効果の数量評価が必要である。したがって、レーダーチャートの視感評価を数量評価とするために、複数の評価項目の指標群から作られるチャート多角形を計算対象として、その大きさと形状に関する特徴を反映した指標群の合算方法が必要となる。
【0046】
管腔形成試験に限らず一般に、指標群は単純合算による総和や平均値によってひとつの数値にまとめられ、並行して視覚的に観察するためにレーダーチャートで表示されている。特許文献5で述べられている個人認証の方法では、まず条件を変えて測定した複数項目のデータを履歴データとして保存しておく。次に、同様に測定された測定データと各履歴データとを照合して差分分析値を算出する。その測定データに対する総合評価では、条件を変えた測定を和事象として取り扱うために個々の差分分析値の総和を計算し、ひとつの数値にまとめている。計算対象は指標群だけであり、指標群によって構成されるチャートの多角形ではない。レーダーチャートは計算方法の解釈や認証結果の確認だけに使用されている。したがって、この合算方法は、レーダーチャートの観察によって得られた、多角形の大きさや形状で表現されている特徴を定量化していない。
【0047】
レーダーチャートの多角形を計算対象としないが、管腔形成試験での複数項目の指標群をひとつの数値へまとめる観点から上記の計算方法の適応について考察する。この計算方法は、計測する項目に対応する現象が次々に起こる和事象として捉えて、複数項目の指標群を和算でまとめる。和事象で捉える例として、図13は平均値で合算した管腔形成能を示している。和算によって管腔形成能の変化が階段状になっており、変化が潰れたり、極端に下がったりと不連続的な変化になっている。濃度変化に応じた阻害過程が捉えにくく、特に60μM、80μMの高濃度では、視感評価と大きくずれた評価となっている。
【0048】
本実施例は、ある濃度の物質をある時間作用させた結果の画像から複数項目の指標群を計測している。そのため、各項目で計測される現象が同時に起きたと考えて積事象として捉える必要がある。したがって、指標群を表す数値の積算でなければならない。積事象で捉える簡単な例として、各濃度の管腔形成能を0μM指標100に対する各項目の指標比の積算を考える。これも図13に同時に示している。積事象と捉えることによって、和事象とする平均値に比べ、濃度依存的な阻害過程が単調に減少する管腔形成能の変化として表現されているが、全体に管腔形成能が極端に厳しく評価されている。40μMでの劇的な変化は表現されているが、それ以降の高濃度での管腔形成能の変化が潰れているため、やはりレーダーチャートでの視感評価とずれた評価となっている。
【0049】
レーダーチャートでの視感評価に合致した数量評価とするために、チャートの多角形を計算対象とする。視感評価では多角形の大きさ、すなわち面積を考慮に入れ、広い面積をもつ多角形は管腔形成能が高いと捉えられることから、管腔形成能を0μMでの多角形に対する各濃度の多角形の面積比とした。これも同様に図13に示している。この場合、指標比の積に比べ緩やかな阻害過程を示す管腔形成能となっているが、10μMと20μMで、40μMと60μMで管腔形成能が逆転している。これは、レーダーチャートを観察すれば、多角形の歪みが計算されていないためと考えられる。また、面積比の管腔形成能の変化は、平均値による変化と相関している。多角形の面積は、レーダーチャートで隣接する項目軸上の2点とチャート原点で作られる三角形の面積の和である。したがって、2項目をまとめて評価する和事象と捉えるため、平均値による管腔形成能と同様な変化を示している。濃度が高くなるにつれて管腔形成能が阻害される過程が示されていない。特に高濃度では、視感評価と大きくずれた評価となっている。
【0050】
一般にひとつの対象に対して計測した複数項目の指標群をレーダーチャートで表現し、その多角形の面積の大きさに着目したかのような視感評価による講評が多見される。しかし、本実施例での評価の逆転が示すように、面積では、正多角形に近い形状なのか、ある項目が極端に突出した多角形なのかという形状の要素が計算に反映されていない。複数の対象について、視感評価では、面積の大小が判断しにくい場合も多く、無意識には多角形の形状に着眼しても、面積の大小と歪みを同時に判断して視感評価で順位付けるのは困難である。
【0051】
本発明では、多角形を大きさと形状によって数量評価するために、多角形と等しい面積の円を導入する。多角形の大きさは円の半径に置き換える。形状の歪みは、その半径に対する各項目の指標である管腔形成能との比で表している。すなわち各濃度での評価は、複数項目すべてについての歪みと0μMの各項目満点のときの半径に対するその濃度での半径比とを積算し、さらに各項目満点のときの値との相対値としている。本発明の合算法を一般式で表せば、濃
の指標群から作られるレーダーチャートのn角形と等しい面積の円の半径をriとする。このときの濃度iにおける評価Piを数1の式で算出する。
【数1】
【0052】
本実施例では5つの評価項目を用いたため、チャート多角形に基づいた合算手段25では、nを5として計測結果テーブル31における各濃度の各管腔形成能を合算してその濃度の管腔形成能を算出した。図14には、本発明の合算法による管腔形成能を示しており、これまで検討した計算法の管腔形成能もともに示している。本発明の合算法によって、濃度が高くなるにつれて最も緩やかに徐々に阻害されていく過程が示されている。1μMにおいて多角形の大きさだけでなく、歪みが少ないことも評価されたため、面積比より高い管腔形成能と評価されている。20μMにおいては、10μMよりも歪みが現れており、それまでの多角形とはやや異なった形状となっているため、面積比より低い管腔形成能となっている。40μMの劇的な変化は、この合算法でも示されているが、大きさは劇的に小さくなるが、形状は20μMと相似形であることが評価され、面積比より高い管腔形成能となっている。60μMでは、大きく歪みが現れているため、面積比よりかなり低く評価され、さらに80μM、100μMと管腔形成能が緩やかではあるが、明確な差として表されている。この管腔形成能の変化は、レーダーチャートの視感評価、さらに顕微鏡画像の視感評価とも合致している。
【0053】
薬理効果は、シグモイド曲線によって表現されると言われている。濃度依存的阻害曲線と50%阻害濃度の算出手段26は、算出した管腔形成能をシグモイド曲線の定義のひとつである一般的なロジスティック関数Richard‘s curveへ当てはめ、近似式を求めた。図15は、シグモイド曲線に近似された濃度依存的阻害曲線を示している。本発明の合算法による管腔形成能の計測値と、研究者視感評価と、端的に管腔が形成された状態を示す網目領域数も示している。また、近似式から算出した50%阻害濃度も示している。低濃度において、領域数だけでは研究者より厳しく評価していたが、面積などの4つの評価項目が加わることによって補われ、研究者の評価に接近している。
【0054】
図16は、非特許文献2で示されているBDバイオサイエンス社によるsuraminの管腔形成試験の計測結果である。評価項目を合算した総合評価ではなく、個々の項目による評価である。本発明による評価と異なり、低濃度、中濃度、高濃度へと変化する濃度に応じて徐々に連続的に阻害される過程が表されていない。また、高濃度における管腔の面積、長さの評価項目で、濃度の変化に対応して評価が低下していない。
【0055】
図15に示すように本発明による濃度依存的阻害曲線はシグモイド曲線で近似され、経験豊富な研究者でも判断に迷うと言われている中濃度において、研究者や領域数に比べ高い管腔形成能となっている。研究者の評価が低いのは、管腔形成の状態から管腔が切断され、元の網目の崩壊現象は評価されているが、その結果生じた大域的な網目となる管腔形成の状態が評価されていないためと考えられる。低濃度では、管腔形成の状態から徐々に管腔が切断され、元の網目が崩壊していく。これは、錯視の概念に例えれば、黒を図柄とした現象として認知できる。中濃度では崩壊の結果生じた大域的な網目となる管腔形成の状態が出現する。この現象は白を図柄としなければ認知しにくい。研究者は低濃度で黒を図柄として崩壊現象に注目してきたため、中濃度で急に白を図柄とした認知に切り替えられないため、大域的な管腔形成を認知できない。高濃度では大域的な管腔形成が崩壊し、さらに凝集により細胞塊となるが、これも黒を図柄として認知できる現象である。このように阻害過程を錯視の概念から捉えれば、研究者の評価は、白の背景に黒の図柄として認知する対象に留まっている。錯視は我々の視覚特性であり、白の背景に黒の図柄として認知する対象と黒の背景に白の図柄として認知する対象を同時に知覚できない。この両者を観察するという明確な意思がなければ、一方の白の背景に黒の図柄を認知するのが通例であり、研究者の評価は視感評価の限界とも言える。本発明法は錯視の概念を踏まえ網目領域に着目した解析法であるため、この二通りに認知される対象が解析されており、低濃度、中濃度、高濃度へと変化する濃度に対応した阻害過程が客観的に評価されている。また、本発明は、視感評価の限界を明らかにするとともに、装置による解析の利点も明確にした。
【0056】
画像を濃度別にほぼ同数の二群に機械的に分けて、本発明法で濃度依存的阻害曲線を求めた。図17は、それぞれ計測値1、計測値2として計測した管腔形成能と、それぞれ近似値1、近似値2として近似した濃度依存的阻害曲線と、それぞれ管腔形成能1、管腔形成能2として算出した50%阻害濃度を示している。画像を機械的に二群に分けたが、得られた濃度依存的阻害曲線や50%阻害濃度に大きな差はなく、シャーレ毎の変動や撮影位置の影響は少ないことが確かめられた。
【0057】
本実施例は、評価項目を領域数、面積、拡張面積、拡張周長、拡張処理回数の5項目とした。これらの濃度毎の計測結果群に対して主成分分析を適用し、5項目の最適性について検討した。表1は結果群の相関行列を用いた主成分分析を行った結果である。表1(a)が示すように第二主成分までで累積寄与率が0.97となり、全分散の97%が説明できていた。各主成分と各項目との相関を表す因子負荷量は、第一主成分では5項目すべてが高い値を示しているが、第二主成分では絶対値として拡張面積が他に比べ小さい値となっている。このことから、拡張面積を除いた4項目でも主成分分析を行った。表1(b)が示すように第二主成分までの累積寄与率は等しく0.97であり、因子負荷量も5項目の場合と同程度になっているため、拡張面積を除外しても評価に及ぼす影響は少ないと判断できる。
【表1】
【0058】
図18は、拡張面積を除いた4項目による評価のレーダーチャートである。阻害過程が四角形の大きさと歪みの形態変化として表現されている。5項目の場合と同様に、各濃度について本発明の合算法によって算出した管腔形成能をRichard‘s curveへ当てはめ、近似的に濃度依存的阻害曲線を求めた。図19は拡張面積を除外した4項目による管腔形成能の計測値と近似値を5項目による図15と同様に示している。両者にほとんど差はなく、50%阻害濃度もほぼ同等に算出されている。
【0059】
本実施例では、網目領域数、その面積、拡張領域の周長、拡張処理回数の4項目で濃度変化に応じた阻害過程が捉えられた。拡張領域の面積は、周長と同一のプロセスで計算できるため、除外によって処理効率の向上よりむしろ結果解釈の平易化が期待できる。管腔形成試験の予備施行の段階においても本発明法で評価し、本実施例で示したように、使用する細胞や物質に応じて評価項目を取捨選択して、それぞれの系に適した評価項目の構成が可能である。
【0060】
本発明の合算法によって、拡張面積を除外した4項目の指標群から各濃度における管腔形成能を算出した。これは、この合算法においてnが4の場合の実施例である。本発明の合算法は、複数の対象について、各対象を複数項目の指標群で表し、これらの指標を総合的に判断して順位付ける際などに、一般に適用できる計算方法である。
【符号の説明】
【0061】
20 評価装置
21 網目領域の計測手段
22 領域属性の計測手段
23 相対値としての管腔形成能の算出手段
24 レーダーチャート作成手段
25 チャート多角形に基づいた合算手段
26 濃度依存的阻害曲線と50%阻害濃度の算出手段
31 計測結果テーブル
41 表示器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作用させた物質が管腔形成に及ぼす阻害効果を調べるための管腔形成試験の評価方法において、評価対象画像データを用意する段階(S1)と、前記評価対象画像データの各々から網目領域を抽出し、各網目領域の面積と当該画像上で抽出された網目領域数を計測する段階(S2)と、網目領域の属性評価項目を計測する段階(S3)と、濃度別に各評価項目の管腔形成能を相対値として算出する段階(S4)と、評価項目数に応じて放射状に伸びた軸上に、前記算出された管腔形成能の相対値をプロットして、濃度別にレーダーチャートを作成する段階(S5)と、前記濃度別のレーダーチャートの原点とプロットした点までの距離によって算出したチャート多角形の大きさと歪みに基づいて管腔形成能を合算する段階(S6)と、算出した濃度別の合算値である管腔形成能をシグモイド曲線へ当てはめて濃度依存的阻害曲線を算出する段階(S7)とを備えたことを特徴とする画像解析による管腔形成試験評価方法。
【請求項2】
評価対象画像データを受領し、該評価対象画像データの各々から網目領域を抽出し、各網目領域の面積と当該画像上で抽出された網目領域数を計測する網目領域の計測手段(21)と、網目領域の属性評価項目として、拡張面積、拡張周長、拡張回数を計測する計測手段(22)と、濃度別に各評価項目の管腔形成能を相対値として算出する管腔形成能の算出手段(23)と、前記網目領域の計測手段の出力、領域属性の計測手段の出力、および管腔形成能の算出手段の出力、それぞれの出力を受けて記憶する計測結果テーブル(31)と、評価項目数に応じて放射状に伸びた軸上に、前記算出された管腔形成能の相対値をプロットして、濃度別にレーダーチャートを作成するレーダーチャート作成手段(24)と、前記濃度別のレーダーチャートの原点とプロットした点までの距離によって算出したチャート多角形の大きさと歪みに基づいて管腔形成能を合算する合算手段(25)と、算出した濃度別の合算値である管腔形成能をシグモイド曲線へ当てはめて近似式を作成するとともに、前記近似式から濃度依存的阻害曲線と50%阻害濃度を算出する(26)手段と、少なくとも前記算出された濃度依存的阻害曲線を表示する表示手段(41)とを備えた管腔形成試験評価装置。
【請求項3】
評価対象画像データの各々から網目領域を抽出し、各網目領域の面積と当該画像上で抽出された網目領域数を計測するステップ(S2)と、網目領域の属性評価項目を計測するステップ(S3)と、濃度別に各評価項目の管腔形成能を相対値として算出するステップ(S4)と、評価項目数に応じて放射状に伸びた軸上に、前記算出された管腔形成能の相対値をプロットして、濃度別にレーダーチャートを作成するステップ(S5)と、前記濃度別のレーダーチャートの原点とプロットした点までの距離によって算出したチャート多角形の大きさと歪みに基づいて管腔形成能を合算するステップ(S6)と、算出した濃度別の合算値である管腔形成能をシグモイド曲線へ当てはめて濃度依存的阻害曲線を算出するステップ(S7)とを備えた管腔形成試験評価プログラム。
【請求項4】
指標となる複数の属性を有する複数の評価対象データを相対比較して各評価対象データを総合的に評価する評価装置であって、指標となる複数の属性それぞれ毎に、評価項目値を設定する評価項目値の設定手段(21、22,23)と、評価項目数に応じて放射状に伸びた軸上に、前記算出された評価項目値の相対値をプロットして、前記評価対象データ毎にレーダーチャートを作成するレーダーチャート作成手段(24)と、前記評価対象別にレーダーチャートの原点とプロットした点までの距離によって算出したチャート多角形の大きさと歪みに基づいて評価項目値の相対値を合算する合算手段(25)と、該合算手段によって求められた合算値の大小を判別して前記各評価対象データを評価する判定手段(26)とを備えたレーダーチャート評価装置。
【請求項5】
評価項目値を設定するステップ(21、22,23)と、評価項目数に応じて放射状に伸びるレーダーチャートの軸上に、前記算出された評価項目値の相対値をプロットして、前記評価対象データ毎にレーダーチャートを作成できるようにするステップ(24)と、前記評価対象別にレーダーチャートの原点とプロットした点までの距離によって算出したチャート多角形の大きさと歪みに基づいて評価項目値の相対値を合算するステップ(25)とを備えたレーダーチャート評価プログラム。
【請求項1】
作用させた物質が管腔形成に及ぼす阻害効果を調べるための管腔形成試験の評価方法において、評価対象画像データを用意する段階(S1)と、前記評価対象画像データの各々から網目領域を抽出し、各網目領域の面積と当該画像上で抽出された網目領域数を計測する段階(S2)と、網目領域の属性評価項目を計測する段階(S3)と、濃度別に各評価項目の管腔形成能を相対値として算出する段階(S4)と、評価項目数に応じて放射状に伸びた軸上に、前記算出された管腔形成能の相対値をプロットして、濃度別にレーダーチャートを作成する段階(S5)と、前記濃度別のレーダーチャートの原点とプロットした点までの距離によって算出したチャート多角形の大きさと歪みに基づいて管腔形成能を合算する段階(S6)と、算出した濃度別の合算値である管腔形成能をシグモイド曲線へ当てはめて濃度依存的阻害曲線を算出する段階(S7)とを備えたことを特徴とする画像解析による管腔形成試験評価方法。
【請求項2】
評価対象画像データを受領し、該評価対象画像データの各々から網目領域を抽出し、各網目領域の面積と当該画像上で抽出された網目領域数を計測する網目領域の計測手段(21)と、網目領域の属性評価項目として、拡張面積、拡張周長、拡張回数を計測する計測手段(22)と、濃度別に各評価項目の管腔形成能を相対値として算出する管腔形成能の算出手段(23)と、前記網目領域の計測手段の出力、領域属性の計測手段の出力、および管腔形成能の算出手段の出力、それぞれの出力を受けて記憶する計測結果テーブル(31)と、評価項目数に応じて放射状に伸びた軸上に、前記算出された管腔形成能の相対値をプロットして、濃度別にレーダーチャートを作成するレーダーチャート作成手段(24)と、前記濃度別のレーダーチャートの原点とプロットした点までの距離によって算出したチャート多角形の大きさと歪みに基づいて管腔形成能を合算する合算手段(25)と、算出した濃度別の合算値である管腔形成能をシグモイド曲線へ当てはめて近似式を作成するとともに、前記近似式から濃度依存的阻害曲線と50%阻害濃度を算出する(26)手段と、少なくとも前記算出された濃度依存的阻害曲線を表示する表示手段(41)とを備えた管腔形成試験評価装置。
【請求項3】
評価対象画像データの各々から網目領域を抽出し、各網目領域の面積と当該画像上で抽出された網目領域数を計測するステップ(S2)と、網目領域の属性評価項目を計測するステップ(S3)と、濃度別に各評価項目の管腔形成能を相対値として算出するステップ(S4)と、評価項目数に応じて放射状に伸びた軸上に、前記算出された管腔形成能の相対値をプロットして、濃度別にレーダーチャートを作成するステップ(S5)と、前記濃度別のレーダーチャートの原点とプロットした点までの距離によって算出したチャート多角形の大きさと歪みに基づいて管腔形成能を合算するステップ(S6)と、算出した濃度別の合算値である管腔形成能をシグモイド曲線へ当てはめて濃度依存的阻害曲線を算出するステップ(S7)とを備えた管腔形成試験評価プログラム。
【請求項4】
指標となる複数の属性を有する複数の評価対象データを相対比較して各評価対象データを総合的に評価する評価装置であって、指標となる複数の属性それぞれ毎に、評価項目値を設定する評価項目値の設定手段(21、22,23)と、評価項目数に応じて放射状に伸びた軸上に、前記算出された評価項目値の相対値をプロットして、前記評価対象データ毎にレーダーチャートを作成するレーダーチャート作成手段(24)と、前記評価対象別にレーダーチャートの原点とプロットした点までの距離によって算出したチャート多角形の大きさと歪みに基づいて評価項目値の相対値を合算する合算手段(25)と、該合算手段によって求められた合算値の大小を判別して前記各評価対象データを評価する判定手段(26)とを備えたレーダーチャート評価装置。
【請求項5】
評価項目値を設定するステップ(21、22,23)と、評価項目数に応じて放射状に伸びるレーダーチャートの軸上に、前記算出された評価項目値の相対値をプロットして、前記評価対象データ毎にレーダーチャートを作成できるようにするステップ(24)と、前記評価対象別にレーダーチャートの原点とプロットした点までの距離によって算出したチャート多角形の大きさと歪みに基づいて評価項目値の相対値を合算するステップ(25)とを備えたレーダーチャート評価プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−185143(P2012−185143A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64961(P2011−64961)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(511073858)
【出願人】(507067098)
【出願人】(505042181)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(511073858)
【出願人】(507067098)
【出願人】(505042181)
【Fターム(参考)】
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