説明

画像解析方法および画像解析装置

【課題】ピクセル時間とライン時間を調整することなく、観察可能な拡散時間を拡張可能な画像解析方法を提供することである。
【解決手段】<ステップS1>:複数フレームの蛍光画像を取得する。<ステップS2>:解析領域を設定する。<ステップS3,S4>:1フレームの蛍光画像の解析領域に対して相関計算を行なって拡散時間を推定する。<ステップS5>:推定した拡散時間に基づいて所望パラメータを算出する。<ステップS6>:算出した所望パラメータに基づいて新たなRICSの空間相関計算式を得る。<ステップS7>:所望パラメータに基づいて解析に利用する蛍光画像を選定し、解析に利用する蛍光画像の解析領域のピクセルのデータと新たなRICSの解析式により空間自己相関解析を行なう。同様に、異なるチャンネルのフレーム蛍光強度データを用いてRICSの空間相互相関解析を行なう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像解析方法および画像解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ラスターイメージ相関分光法(RICS:Raster Image Correlation Spectroscopy)として以下の非特許文献1,2に示すような方法が提案されている。この画像解析方法において、1フレーム以上のラスター走査画像からなる蛍光画像を取得する。つまり、画像解析したい試料において、興味を持っている領域を決め、その領域をラスター走査方式で繰り返しスキャンし、複数フレームの蛍光強度からなる画像を取得する。フレーム中の蛍光強度はピクセル単位でデータとして表わされている。これらのピクセル単位のデータ(ピクセルのデータ)は、それぞれ取得された時間および取得された位置が異なるため、各データに対応する取得時間および取得位置はずれている。
【0003】
したがって、これらのピクセルのデータを用いて、空間自己相関解析することで、分子の揺らぎによる相関特性を得ることができる。ここで、分子の相関特性からは、拡散定数や分子数を求めることができる。また、拡散定数からは、分子拡散時間を求めることができる。そして、分子拡散時間からは、分子量を求めることができる。
【0004】
このように、空間自己相関解析をすることで、分子量や分子数等を評価することができるため、分子間の相互作用を観察することが可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「Measuring Fast Dynamics in Solutions and Cells with a Laser Scanning Microscope」, Michelle A. Digman, Claire M. Brown, Parijat Sengupta, Paul W. Wiseman, Alan R. Horwitz, and Enrico Gratton, Biophysical Journal, Vol.89, P1317-1327, August 2005.
【非特許文献2】「Fluctuation Correlation Spectroscopy with a Laser-Scanning Microscope: Exploiting the Hidden Time Structure」,, Michelle A. Digman, Parijat Sengupta, Paul W. Wiseman, Claire M. Brown, Alan R. Horwitz, and Enrico Gratton, Biophysical Journal: Biophysical Letters, L33-36, 2005.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
RICSの解析における観察範囲は、ラスター走査により取得した1フレーム中の各データに対応する取得時間および取得位置のずれに制限される。例えば、256ピクセル×256ピクセルの蛍光画像データにおいて、観察可能な分子拡散時間の最大値tは、256×τ+255×τである。なお、簡単のため、任意のラインの最後のピクセルと、その次のラインの最初のピクセルと、の間の取得時間のずれを、τと近似している。
【0007】
ここでτはピクセル間の取得時間のずれ(ピクセル時間)である。また、τは任意のラインの最初のピクセルと、その次のラインの最初のピクセルと、の間の取得時間のずれ(ライン時間)である。すなわち、ライン時間は、一ラインを走査するのに要する時間を意味する。この場合、256ピクセルが、1ラインを構成している。
【0008】
分子拡散時間が短い分子を観察するには、ピクセル時間とライン時間を小さく設定する必要がある。何故なら、ピクセル時間とライン時間を大きく設定すると、分子拡散時間に対する画素間の取得時間のずれが大きいため、十分な回数の相関計算をすることができない。その結果、少ない計算結果に基づいて、フィッティングする必要が生じるため、得られる相関特性の精度が低くなる。
【0009】
一方、分子拡散時間が長い分子を観察するには、ピクセル時間とライン時間を大きく設定する必要がある。何故なら、ピクセル時間とライン時間を小さく設定すると、実際の分子拡散時間が、1フレームで観察可能な分子拡散時間の最大値を越えるため、分子拡散時間を算出することができなくなるからである。
【0010】
ここで、ピクセル時間とライン時間は、走査速度によって決まるため、一度測定が完了すると、得られた画像のデータにおけるピクセル時間およびライン時間の調整ができない。従って、分子の拡散定数等を適切に得るには、測定をする前に、適切なピクセル時間およびライン時間を推測する必要が生じる。
【0011】
しかしながら、ほとんどのサンプルの分子拡散時間は未知数であるため、事前にピクセル時間およびライン時間の設定を推測することは難しい。
【0012】
本発明の目的は、観察可能な拡散時間を拡張可能な画像解析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による画像解析方法は、各画像のピクセルのデータが時系列的に取得された複数のピクセルからなる複数フレームの画像を時系列的に取得する画像取得ステップと、前記画像に対して解析領域を設定する解析領域設定ステップと、前記画像の中から解析に利用する1フレーム以上の選定画像を選定する画像選定ステップと、前記選定画像の解析領域内のピクセルのデータに基づいて相関値を算出する計算ステップとを有している。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、観察可能な拡散時間を拡張可能な画像解析方法を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態による画像解析装置を概略的に示している。
【図2】図1に示される制御部の機能ブロックを示している。
【図3】画像解析のために時系列的に取得されたKフレームの蛍光画像を示している。
【図4】1フレーム目の蛍光画像内における相関計算の積和計算を模式的に示している。
【図5】1フレーム目と2フレーム目の蛍光画像間における相関計算の積和計算を模式的に示している。
【図6】1フレーム目と3フレーム目の蛍光画像間における相関計算の積和計算を模式的に示している。
【図7】1フレーム目とKフレーム目の蛍光画像間における相関計算の積和計算を模式的に示している。
【図8】式(1)と式(2)における変数ξ、ψ、ηと計算に使用するフレームを示している。
【図9】本実施形態による画像解析のフローチャートである。
【図10】蛍光画像領域と解析領域を示している。
【図11】小さい分子に対するRICSの解析の結果を輝度で示したイメージ画像である。
【図12】小さい分子に対するRICSの解析のフィッティング結果を示している。
【図13】大きい分子に対するRICSの解析の結果を輝度で示したイメージ画像である。
【図14】大きい分子に対するRICSの解析のフィッティング結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら本実施形態について説明する。
【0017】
図1は、本実施形態による画像解析装置を概略的に示している。この画像解析装置は、試料の蛍光観察のための走査型共焦点光学顕微鏡をベースに構成されている。
【0018】
図1に示すように、画像解析装置100は、試料Sに励起光を照射する光照射部110と、試料S内の測定点から発せられる光を検出する光検出部130と、画像解析に必要な制御を行なう制御部160と、試料Sを支持する試料ステージ190とを有している。
【0019】
試料Sはマイクロプレートやスライドガラスなどの試料容器に収容され、試料ステージ190に載置される。試料ステージ190は、例えば、試料Sを光照射部110および光検出部130に対して横方向(xy方向)および高さ方向(z方向)に移動可能に支持する。例えば、試料ステージ190は、出力軸が互いに直交する3つのステッピング・モーターを含んでおり、これらのステッピング・モーターによって試料Sをxyz方向に移動し得る。
【0020】
画像解析装置100は、多重光照射・多重光検出型である。このため、光照射部110はnチャンネルの光源系111を含み、これに対応して光検出部130はnチャンネルの検出系131を含んでいる。nチャンネルの検出系131は、それぞれ、nチャンネルの光源系111から射出された励起光によって生成された蛍光を検出する。ここで、nチャンネルは、チャンネル1、チャンネル2、・・・チャンネルnによって構成される。チャンネルは、励起光の種類によってそれぞれ異なる。
【0021】
光照射部110のnチャンネルの光源系111は、光源112a,…,112nとコリメートレンズ114a,…,114nとダイクロイックミラー116a,…,116nとを含んでいる。光源112a,…,112nは、試料Sに含まれる蛍光色素を励起して試料Sから光(蛍光)を発せさせるための励起光を発する。光源112a,…,112nから発せられる励起光の波長は、試料Sに含まれる蛍光色素の種類に対応して、互いに相違している。光源112a,…,112nは、例えば、試料S中の蛍光色素に合った発振波長のレーザー光源で構成される。コリメートレンズ114a,…,114nは、それぞれ、光源112a,…,112nから発せられた励起光をコリメートする。ダイクロイックミラー116a,…,116nは、それぞれ、コリメートレンズ114a,…,114nを通過した励起光を同じ方向に反射する。ダイクロイックミラー116a,…,116nは、それぞれ、図1の上方から入射する励起光を透過し、図1の右方から入射する励起光を反射する。その結果、光源112a,…,112nからそれぞれ射出された異なる波長の励起光は、ダイクロイックミラー116aの通過後に一本のビームに合成される。ダイクロイックミラー116nは、励起光を透過する必要がないので、単なるミラーに変更されてもよい。
【0022】
光照射部110はさらに、ダイクロイックミラー122とガルバノミラー124と対物レンズ126と対物レンズ駆動機構128を含んでいる。ダイクロイックミラー122は、光源系111からの励起光をガルバノミラー124に向けて反射し、試料Sから発せられる蛍光を透過する。ガルバノミラー124は、励起光を対物レンズ126に向けて反射するとともに、その反射方向を変更する。対物レンズ126は、励起光を収束して試料S内の測定点に照射するとともに、試料S内の測定点からの光を取り込む。対物レンズ126には、微小な共焦点領域(測定点)の形成のために、NA(開口数)の大きいものが使用される。これにより得られる共焦点領域の大きさは、直径0.6μm程度、長さ2μm程度の略円筒状となる。ガルバノミラー124は、測定点をxy方向に走査するxy走査手段を構成している。xy走査手段は、ガルバノミラーを使用して構成するほかに、音響光学変調素子(AOM)やポリゴンミラー、ホログラムスキャナーなどを使用して構成してもよい。対物レンズ駆動機構128は、対物レンズ126を光軸に沿って移動させる。これにより、測定点がz方向に移動される。つまり、対物レンズ駆動機構128は、測定点をz方向に走査するz走査手段を構成している。
【0023】
光検出部130は、対物レンズ126とガルバノミラー124とダイクロイックミラー122を光照射部110と共有している。光検出部130はさらに、収束レンズ132とピンホール134とコリメートレンズ136とを含んでいる。収束レンズ132は、ダイクロイックミラー122を透過した光を収束する。ピンホール134は、収束レンズ132の焦点に配置されている。つまり、ピンホール134は、試料S内の測定点に対して共役な位置にあり、測定点からの光だけを選択的に通す。コリメートレンズ136は、ピンホール134を通過した光を平行にする。コリメートレンズ136を通過した光は、nチャンネルの検出系131に入射する。
【0024】
nチャンネルの検出系131は、ダイクロイックミラー138a,…,138nと蛍光フィルター140a,…,140nと光検出器142a,…,142nとを含んでいる。
【0025】
ダイクロイックミラー138a,…,138nは、それぞれ、光源112a,…,112nからの励起光によって試料Sから生成された蛍光の波長領域付近の波長の光を選択的に反射する。ダイクロイックミラー138nは、光を透過する必要がないので、単なるミラーに変更されてもよい。蛍光フィルター140a,…,140nは、それぞれ、ダイクロイックミラー138a,…,138nによって反射された光から、不所望な波長成分の光を遮断し、光源112a,…,112nからの励起光によって生成された蛍光だけを選択的に透過する。蛍光フィルター140a,…,140nを透過した蛍光はそれぞれ光検出器142a,…,142nに入射する。光検出器142a,…,142nは、入射した光の強度に対応した信号を出力する。すなわち、光検出器142a,…,142nは、試料S内の測定点からの蛍光強度信号を出力する。
【0026】
制御部160は例えばパーソナルコンピューターで構成される。制御部160は、試料Sの観察領域の蛍光画像の取得と記憶と表示、取得する蛍光画像のフレーム数(枚数)や解析領域や所望パラメータの設定の入力待ち、画像解析(相関値の算出)、拡散時間の推定などを行なう。また制御部160は、xy走査手段であるガルバノミラー124、z走査手段である対物レンズ駆動機構128、試料ステージ190などの制御を行なう。
【0027】
図1に示される制御部の機能ブロックを図2に示す。制御部160は、図2に示すように、走査制御部162と画像形成部164と記憶部166と表示部168と入力部170と解析領域設定部172と画像選定部174とデータ抽出部176と解析部178とステージ制御部180とを含んでいる。走査制御部162は、試料Sの蛍光画像を取得する際、励起光の照射位置を試料Sに対してラスター走査するようにガルバノミラー124を制御する。走査制御部162はまた、必要であれば、励起光の照射位置を試料Sに対してz走査するように対物レンズ駆動機構128を制御する。画像形成部164は、走査制御部162から入力される励起光の照射位置の情報と光検出器142a,…,142nの出力信号とから試料Sの蛍光画像を形成する。記憶部166は、画像形成部164で形成された蛍光画像を順次記憶する。表示部168は、試料Sの蛍光画像や解析結果を表示する。入力部170は、例えばマウスやキーボードを含み、表示部168と共同してGUIを構成する。このGUIは、取得フレーム数や観察領域や解析領域の設定、所望パラメータの入力などに利用される。ステージ制御部180は、例えば観察領域を設定するために、入力部170からの入力情報に従って試料ステージ190を制御する。解析領域設定部172は、入力部170からの入力情報に従って解析領域を設定する。画像選定部174は、入力部170から入力される所望パラメータに基づいて解析に利用する1フレーム以上の蛍光画像を選定する。データ抽出部176は、解析領域設定部172と画像選定部174からの入力情報に基づいて、記憶部166に記憶されている蛍光画像から必要なデータを抽出する。必要なデータは状況によって変わる。必要なデータは、例えば、記憶部166に記憶されているすべての蛍光画像のすべてのピクセルのデータまたは一部のピクセルのデータであってよく、あるいは、記憶部166に記憶されている一部の蛍光画像のすべてのピクセルのデータまたは一部のピクセルのデータであってもよく、また、1フレームの蛍光画像のすべてのピクセルのデータまたは一部のピクセルのデータであってもよい。解析部178は、データ抽出部176によって抽出されたデータに対して後述する相関値の演算を行なう。
【0028】
図1において、光源112a,…,112nから発せられた励起光は、コリメートレンズ114a,…,114nとダイクロイックミラー116a,…,116nとダイクロイックミラー122とガルバノミラー124と対物レンズ126を経て試料S内の測定点に照射される。励起光が照射される測定点は、ガルバノミラー124によってxy方向にラスター走査される。さらに必要であれば、対物レンズ駆動機構128によってz走査される。励起光を受けた試料Sは測定点から蛍光を発する。試料Sからの光(蛍光のほかに不所望な反射光などを含む)は、対物レンズ126とガルバノミラー124とダイクロイックミラー122と収束レンズ132を経てピンホール134に至る。ピンホール134は測定点と共役な位置にあるため、試料S内の測定点からの光だけがピンホール134を通過する。ピンホール134を通過した光すなわち試料S内の測定点からの光はコリメートレンズ136を経てnチャンネルの検出系131に入射する。nチャンネルの検出系131に入射した光は、ダイクロイックミラー138a,…,138nによって波長に従って分離される(つまり分光される)とともに、蛍光フィルター140a,…,140nによって不所望な成分が除去される。その結果、光源112a,…,112nからの励起光によって生成された蛍光だけが光検出器142a,…,142nにそれぞれ入射する。光検出器142a,…,142nは、それぞれ、入射光すなわち試料S内の測定点から発せられた蛍光の強度を示す蛍光強度信号を出力する。この蛍光強度信号は画像形成部164に入力される。画像形成部164は、1回のラスター走査(およびz走査)ごとに、入力される蛍光強度信号をxy方向(およびz方向)の位置情報に同期させて処理して、試料S内の焦点面(測定点が移動した平面または曲面)の1フレームの蛍光画像を形成する。形成された蛍光画像は、記憶部166に保存される。ここに述べた一連の動作は、設定された取得するフレーム数だけ繰り返され、設定されたフレーム数の蛍光画像が取得される。各蛍光画像は、ピクセルのデータが時系列的に取得された複数のピクセルからなる。
【0029】
記憶部166に保存された蛍光画像は、必要に応じて処理され、表示部168に表示される。例えば、測定点のz位置を変えて複数フレームの蛍光画像を取得し、それらを合成して三次元画像を形成し、これを表示部168に表示することも可能である。
【0030】
以下、本実施形態による画像解析の手法について説明する。本実施形態による画像解析において最も重要な部分は、RICSのようなイメージ画像データを計算の元とする相関解析において、観察可能な拡散時間を拡張するために、空間相関計算式に所望パラメータを導入したことにある。
【0031】
次式(1)は、本実施形態において使用するRICSの解析に使用する空間相関計算式を表している。
【数1】

【0032】
ここで、GはRICSの相関値、I10はチャンネル1の1フレーム目の蛍光強度データ(ピクセルのデータ)、I1ηはチャンネル1のη+1フレーム目の蛍光強度データ(ピクセルのデータ)、ηは0以上の整数の所望パラメータ(η=0,1,…,K−1)、x,yは測定点の空間的座標、ξ,ψは測定点からの空間的座標の変化量、M0ηはチャンネル1の1フレーム目とη+1フレーム目の積和計算の回数、Mはチャンネル1の1フレーム目のデータ数、Mηはチャンネル1のη+1フレーム目のデータ数である。
【0033】
次式(2)は、本実施形態において使用するRICSの解析に使用するフィッティング式を表している。
【数2】

【0034】
ここで、SはRICSの解析におけるスキャンの影響、GはRICSの解析における時間遅延の影響、Dは拡散定数、δはピクセルサイズ、Nは分子数、Wは励起レーザビームの横方向の半径、Wは励起レーザビームの縦方向の半径、τはピクセル時間、τはライン時間、τはフレーム時間を表している。
【0035】
η=0のとき、式(1)は次式(3)で表される。ここで、τは、任意のフレームの最初のピクセルと、その次のフレームの最初のピクセルと、の間の取得時間のずれである。すなわち、フレーム時間は、一フレームを走査するのに要する時間を意味する。
【数3】

【0036】
ここで、I10はチャンネル1の1フレーム目の蛍光強度データ(ピクセルのデータ)、x,yは測定点の空間的座標、ξ,ψは測定点からの空間的座標の変化量、M00はチャンネル1の1フレーム目の積和計算の回数、Mはチャンネル1の1フレーム目のデータ数である。
【0037】
また式(2)は次式(4)で表される。
【数4】

【0038】
式(3)と式(4)は、それぞれ、RICSの解析における従来の空間相関計算式とフィッティング式と同じである。つまり、本実施形態において使用するRICSの解析の空間相関計算式は、η=0の場合には、従来のRICSの解析の空間相関計算式と同じになる。
【0039】
本実施形態において導入した所望パラメータηは、複数フレームの蛍光画像に対して、相関解析に利用する蛍光画像を選定するためのものである。より詳しくは、1フレーム目の蛍光画像のほかに、相関解析に利用する蛍光画像を選定するためのものである。このため、η=0の場合には、1フレーム目の蛍光画像のほかに相関解析に利用する蛍光画像はなく、その結果、RICSの解析の空間相関計算式は従来と同じになる。
【0040】
相関解析に利用する蛍光画像は、例えば、取得した蛍光画像のすべてであってよい。
【0041】
以下、取得した蛍光画像を相関解析に利用する例について説明する。図3に示すように、Kフレームの蛍光画像を取得したとする。ここでKは2以上の整数である。この場合、η=K−1となる。
【0042】
式(1)と式(2)を使用する計算は、ηの値を0,1,2,…,K−1と順に変えつつ、ηの各値に対して、さらにξ,ψを順に変えつつ行なう。例えば、解析領域R2が256ピクセル×256ピクセルの領域である場合、ξ,ψをそれぞれ0,1,2,…,255と順に変える。
【0043】
例えば、η=0,ψ=0に対して、ξを0,1,2,…,255と1ずつ増やしながら、ξの各値について計算処理を行ない、次にψを1増やし、η=0,ψ=1に対して、ξを0,1,2,…,255と1ずつ増やしながら、ξの各値について計算処理を行ない、この計算処理をψ=255になるまで繰り返す。その後、ηを1増やし、η=1,ψ=0に対して、ξを0,1,2,…,255と1ずつ増やしながら、ξの各値について計算処理を行ない、次に、η=1,ψ=1に対して、ξを0,1,2,…,255と1ずつ増やしながら、ξの各値について計算処理を行ない、この計算処理をψ=255になるまで繰り返す。この計算処理はηを1ずつ増やしながら、η=K−1になるまで繰り返す。
【0044】
図4は、G(2,4,0)中の積和計算を模式的に示している。この計算は、同一フレーム(1フレーム目)の画像の解析領域R2内のピクセルのデータ間の相関計算である。これは、RICSの解析の従来の相関計算と同様である。
【0045】
図5は、G(2,4,1)中の積和計算を模式的に示している。この計算は、異なるフレームの画像の解析領域R2内のピクセルのデータの間の相関計算である。具体的には、1フレーム目の画像の解析領域R2内のピクセルのデータと2フレーム目の画像の解析領域R2内のピクセルのデータとの間の相関計算である。
【0046】
同様に、図6は、G(2,4,2)中の積和計算を模式的に示している。つまり、1フレーム目の画像の解析領域R2内のピクセルのデータと3フレーム目の画像の解析領域R2内のピクセルのデータとの間の相関計算を示している。また図7は、G(2,4,K−1)中の積和計算を模式的に示している。つまり、1フレーム目の画像の解析領域R2内のピクセルのデータとKフレーム目の画像の解析領域R2内のピクセルのデータとの間の相関計算を示している。
【0047】
図8は、式(1)と式(2)における変数ξ,ψ,ηと計算に使用するフレームを示している。図8から、本実施形態による式(1)と式(2)を使用した計算では、遅延時間が拡張されていることがわかる。具体的には、遅延時間は、256τ+255τを超えて、256τ+255τ+(K−1)τまで拡大されている。
【0048】
ここで、遅延時間とは、一の画素の取得時間と、別の画素の取得時間と、の差を意味している。例えば、(ξ,ψ,η)=(1,1,0)と、(ξ,ψ,η)=(4,2,0)と、の遅延時間は、(4−1)τ+(2−1)τ+(0−0)τで表される。
【0049】
そして、一つの遅延時間に対して、一つの相関値Gが得られる。ここで、理想的には、遅延時間が小さいほど、相関値Gは大きくなり、遅延時間が大きいほど、相関値Gは小さくなる。
【0050】
取得した蛍光画像のすべてを相関解析に利用すれば、正しい解析結果を得られるが、すべての蛍光画像を利用すると、その分、計算処理が増えるので計算に時間がかかり、効率が悪い。このため、取得した蛍光画像のすべてを相関解析に利用する代わりに、相関解析に利用する蛍光画像のフレーム数を適当に少なくする、すなわちηの値を十分に相関解析できる範囲内で、適当に小さく設定するとよい。
【0051】
しかし、ηの値が小さ過ぎると、データ数が不足するため、言い換えれば、十分な遅延時間が取れないために、解析結果が正しくないものになる。すなわち、ηの値が小さ過ぎると、拡散時間が長い分子を観察する場合には、最大の遅延時間の半分の時間よりも分子拡散時間の方が長い場合がある。この場合には、適切に、拡散時間を算出することができない。
【0052】
従って、ηの値は、適切な解析結果が得られる範囲において、なるべく小さく設定するとよい。そのようなηの値の設定は、例えば、拡散時間を推定し、推定された拡散時間(推定拡散時間)に基づいて行なうとよい。
【0053】
このようなηの値の設定は、例えば、次のようにして行なう。
【0054】
まず、式(1)と式(2)中の所望パラメータηを0とした式(3)と式(4)を使用してRICSの解析を行ない、拡散時間を推定する。具体的には、式(3)を用いて、異なる遅延時間に対する相関値Gをそれぞれ求める。そして、遅延時間と相関値Gとの関係から、式(4)を用いて、拡散定数と分子数を求める。
【0055】
すなわち、遅延時間がゼロのときは(ξ=0、ψ=0)、Sは1であり、Gは1/Nで表せる。従って、分子数を求めることができる。これを新たに、式(4)に代入することで、各遅延時間に対応した拡散定数を求めることができる。拡散定数からは、拡散時間を求めることができる。
【0056】
すなわち、拡散定数と、拡散時間との関係は、次式(5)で表される。
【数5】

【0057】
ここで、Dは拡散定数、τは拡散時間、Wは励起レーザビームの横方向の半径を意味する。
【0058】
なお、拡散時間の短い分子について解析しているのであれば、ηが0であっても、得られる拡散時間は、適切な拡散時間を示している。最大の遅延時間が、拡散時間の2倍よりも大きい場合、式(4)を用いて十分にフィッティングできるからである。
【0059】
一方、拡散時間の長い分子について解析しているのであれば、ηが0の場合、式(4)を用いてフィッティングしても、そこから得られる拡散時間は、必ずしも、実際の拡散時間と一致しない。従って、この場合は、拡散時間の推定に過ぎない。
【0060】
次に、次式(6)を使用してηminを求める。
【数6】

【0061】
ここで、τは推定拡散時間、ξmax,ψmaxは1フレーム中の空間的座標の変化の最大値、nは2以上の整数である。
【数7】

【0062】
さらに、上式(7)を満足する最小値の整数をηに設定する。
【0063】
一般に、相関値の算出には、最大の遅延時間が、拡散時間の2倍程度あればよいとされている。最大の遅延時間が、拡散時間の2倍よりも短いと、式(2)を用いて適切にフィッティングすることが困難となる。従って、少なくともn=2とした上で、式(6)(7)を用いて、ηを算出すれば、式(2)を用いて適切にフィッティングすることができると考えられる。ただし、解析結果に求められる精度に応じて、nを3以上の整数に設定してもよい。これにより、式(7)を満足するηを代入した式(1)と式(2)を使用したRICSの解析であれば、適切な解析結果が得られると考えられる。
【0064】
これまでの説明から分かるように、本実施形態による所望パラメータηを導入したRICSの相関解析は大きく分けて三つの部分からなる。
【0065】
第一の部分は、式(1)と式(2)中の所望パラメータηをゼロとした場合の式(3)と式(4)を用いて拡散時間を推定する部分である。まずは、複数フレームの蛍光画像から相関解析を行なう領域(解析領域)のデータを抽出する(フレーム全体のデータを使う場合は不要)。次に、解析領域のデータを元に所望パラメータをゼロとした式(3)と式(4)を用いてRICSの解析を行ない、拡散時間を推定する。所望パラメータをゼロとした場合の式(3)と式(4)によるRICSの解析では、図4と同様に、相関計算の主な部分は、同一フレーム中のデータ(矢印両端データの)による積和計算からなる。
【0066】
第二の部分は、推定された拡散時間(推定拡散時間)により、式(6)と式(7)を用いて所望パラメータを算出する部分である。このように算出したゼロでない所望パラメータを用いることで、観察可能な拡散時間が拡張される。
【0067】
最後の部分は、第二の部分で算出した所望パラメータを式(1)と式(2)に代入し、相関値を算出する。そして、再び拡散時間等を含むRICSの解析を行なう。また、この算出した所望パラメータを用いる式(1)と式(2)によるRICSの解析は、図3〜図7に示したように、相関計算の積和計算は、同一フレーム中のデータ積和計算から異なるフレーム間のデータ(矢印両端データの)積和計算に拡張されていく。
【0068】
上記の画像解析の主な手順は図9のフローチャートで示される。
【0069】
<ステップS1>:
試料Sの観察領域と取得する蛍光画像のフレーム数を設定した上で、前述した1フレームの蛍光画像を取得する動作を設定したフレーム数の回数だけ繰り返して、設定したフレーム数の蛍光画像を取得する。蛍光画像の取得は、もちろん、同一の観察領域に対して同一の走査方法によって行なう。取得する複数フレームの蛍光画像は、時系列的に取得された画像であり、各画像は、ピクセルデータが時系列的に取得された複数のピクセルからなる。
【0070】
<ステップS2>:
図10に示すように、蛍光画像領域R1に対して解析領域R2を設定する。解析領域R2は、蛍光画像領域R1の一部に限定されるものではなく、蛍光画像領域R1に一致していてもよい。解析領域R2は、アプリケーション的にはデフォルトで蛍光画像領域R1すなわちステップS1における走査領域に設定されており、蛍光画像領域R1の全体を解析する場合には、このステップは不要である。
【0071】
<ステップS3>:
式(1)と式(2)の所望パラメータηをゼロとして式(3)と式(4)を得る。
【0072】
<ステップS4>:
ステップS2で設定した解析領域R2に基づいて、1フレーム目の蛍光画像の解析領域R2のピクセルのデータを抽出する。抽出したデータとステップS3の式(3)と式(4)(RICSの相関解析)から拡散定数を算出する。そして、算出された拡散定数を用いて、式(5)から、その拡散時間を推定する。
【0073】
<ステップS5>:
推定した拡散時間と式(6)と式(7)を用いて所望パラメータηを算出する。
【0074】
<ステップS6>:
算出した所望パラメータηを式(1)と式(2)に代入して新たなRICSの空間相関計算式を得る。
【0075】
<ステップS7>:
ステップS5で算出した所望パラメータηに基づいて解析に利用する蛍光画像を選定する。より具体的には、1フレーム目からη+1フレーム目までの連続して取得された画像を選定する。また、ステップS2で設定した解析領域R2に基づいて、解析に利用する蛍光画像の解析領域R2のピクセルのデータを抽出する。抽出したデータとステップS6で得た新たなRICSの空間相関計算式により相関解析を行なう。
【0076】
<ステップS8>:
ステップS7で算出した結果を輝度値によるイメージ画像で表示する。
【0077】
図11〜図14は、RICSの解析の結果を示している。図11は、小さい分子に対する相関計算結果を輝度で示したイメージ画像であり、図12はそのフィッティング結果を示している。図13は、大きい分子に対する相関計算結果を輝度で示したイメージ画像であり、図14はそのフィッティング結果を示している。
【0078】
本実施形態によれば、RICSの画像解析において、ピクセル時間とライン時間を調整することなく、観察可能な拡散時間を拡張できる。このため、データ収集をし直さなくても、すでに取得したデータを用いて試料に適した拡散時間を推測することができる。これにより、大きい拡散時間の分子についても、小さい拡散時間の分子についても、適切な拡散時間を算出することが可能となる。
【0079】
これまで、図面を参照しながら本発明の実施形態を述べたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形や変更が施されてもよい。
【0080】
上述した実施形態では、解析に利用する画像の選定において、1フレーム目および必要に応じてそれ以降の画像を選定しているが、選定する画像の先頭は必ずしも1フレーム目である必要はない。例えば、kフレームの画像からjフレームの画像を解析に利用する場合、選定する画像は、iフレーム目からi+j−1フレーム目までの画像であってもよい。ただし、i+j−1≦kである。また実施形態では、選定する画像は、時系列において連続しているが、必ずしもその必要はない。ただし、遅延時間ごとに、相関値が求められるため、ラスター走査が周期的であれば、選定される画像のフレームナンバーも周期的である必要がある。例えば、解析に利用する画像は、1フレーム目、4フレーム目、7フレーム目と、二つおきに、選定されても良い。
【0081】
実施形態では、相関値の演算に使用する各ピクセルのデータとして、そのピクセルのデータをそのまま相関計算に使用したが、複数のピクセルのデータを読み出してそれらの統計値を相関計算に使用してもよい。統計値としては、例えば、平均値、最大値、最小値、相対差、絶対差、相対比があげられる。どのような統計値を使用するかは、RICSの解析によってどのような情報を得たいかによって決める。例えば、最大値で分類すると、同じ最大値分類のフレームからの同じ分子影響を除去することができる。他の場合も同様で、同分類フレームから同じ分子影響を除去することができる。つまり、基準が変わると、フレームの分類が変わり、それぞれ異なる分子影響の除去が可能となる。
【0082】
また実施形態では、ラスター走査によって取得された画像について説明したが、画像は、ラスター走査によって取得されたものに限定されるものではなく、ピクセルのデータが時系列的に取得された複数のピクセルからなる画像であればよく、他の走査方法によって取得されたものであってもよい。
【0083】
また実施形態では、ピクセルのデータを蛍光強度のデータでとして説明したが、ピクセルのデータは、他のデータであってもよい。
【0084】
また実施形態では、同一のチャンネルのピクセルのデータを用いて相関解析する、自己相関解析について説明した。これに代えて、異なるチャンネルのピクセルのデータを用いて、相関解析する、相互相関解析を行ってもよい。この場合、次式(8)で表される。
【数8】

【0085】
ここで、G´はRICSの相互相関値、I10はチャンネル1の1フレーム目の蛍光強度データ(ピクセルのデータ)、I2ηはチャンネル2のη+1フレーム目の蛍光強度データ(ピクセルのデータ)、ηは0以上の整数の所望パラメータ(η=0,1,…,K−1)、x,yは測定点の空間的座標、ξ,ψは測定点からの空間的座標の変化量、M12はチャンネル1の1フレーム目とチャンネル2のη+1フレーム目の積和計算の回数、Mはチャンネル1の1フレーム目のデータ数、Mはチャンネル2のη+1フレーム目のデータ数である。
【符号の説明】
【0086】
100…画像解析装置、110…光照射部、112…光源、116…ミラー、122…ダイクロイックミラー、124…ガルバノミラー、126…対物レンズ、128…対物レンズ駆動機構、130…光検出部、132…収束レンズ、134…ピンホール、136…コリメートレンズ、138…蛍光フィルター、140…収束レンズ、142…光検出器、160…制御部、162…走査制御部、164…画像形成部、166…記憶部、168…表示部、170…入力部、172…解析領域設定部、174…画像選定部、176…データ抽出部、178…解析部、180…ステージ制御部、190…試料ステージ、R1…蛍光画像領域、R2…解析領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各画像のピクセルのデータが時系列的に取得された複数のピクセルからなる複数フレームの画像を時系列的に取得する画像取得ステップと、
前記画像に対して解析領域を設定する解析領域設定ステップと、
前記画像の中から解析に利用する1フレーム以上の選定画像を選定する画像選定ステップと、
前記選定画像の解析領域内のピクセルのデータに基づいて相関値を算出する計算ステップを有している画像解析方法。
【請求項2】
前記計算ステップは、前記選定画像中の時系列的に先の画像の解析領域内のピクセルのデータと、このピクセルよりも遅れて取得された、前記選定画像の解析領域内のピクセルのデータとの間の相関値を算出する、請求項1に記載の画像解析方法。
【請求項3】
推定拡散時間を推定する推定ステップをさらに有し、
前記選定画像の選定は、前記推定拡散時間に基づいて行なう、請求項1または請求項2に記載の画像解析方法。
【請求項4】
前記選定画像は、前記画像のすべてからなる、請求項1ないし請求項3のいずれかひとつに記載の画像解析方法。
【請求項5】
前記選定画像は、前記画像の時系列において連続している前記画像の一部からなる、請求項1ないし請求項3のいずれかひとつに記載の画像解析方法。
【請求項6】
前記画像はKフレームの画像からなり、ここでKは2以上の整数であり、
前記選定画像の選定および相関値の算出は次式(1)と次式(2)を用いて行なう、
【数1】

ここで、GはRICSの相関値、I10はチャンネル1の1フレーム目のピクセルのデータ、I1ηはチャンネル1のη+1フレーム目のピクセルのデータ、ηは0以上の整数の所望パラメータ(η=0,1,…,K−1)、x,yは測定点の空間的座標、ξ,ψは測定点からの空間的座標の変化量、M0ηはチャンネル1の1フレーム目とη+1フレーム目の積和計算の回数、Mはチャンネル1の1フレーム目のデータ数、Mηはチャンネル1のη+1フレーム目のデータ数であり、
【数2】

ここで、SはRICSの解析におけるスキャンの影響、GはRICSの解析における時間遅延の影響、Dは拡散定数、δはピクセルサイズ、Nは分子数、Wは励起レーザビームの横方向の半径、Wは励起レーザビームの縦方向の半径、τはピクセル時間、τはライン時間、τはフレーム時間である、請求項1に記載の画像解析方法。
【請求項7】
次式(3)と次式(4)を用いて推定拡散時間を推定し、
【数3】

ここで、I10はチャンネル1の1フレーム目のピクセルのデータ、x,yは測定点の空間的座標、ξ,ψは測定点からの空間的座標の変化量、M00はチャンネル1の1フレーム目の積和計算の回数、Mはチャンネル1の1フレーム目のデータ数であり、
【数4】

前記推定拡散時間に基づいてηの値を設定する、請求項6に記載の画像解析方法。
【請求項8】
次式(6)に基づいてηminを求め、
【数5】

ここで、τは前記推定拡散時間、ξmax,ψmaxは1フレーム中の空間的座標の変化の最大値、nは2以上の整数であり、
【数6】

上式(7)を満足する最小値をηに設定する、請求項7に記載の画像解析方法。
【請求項9】
励起光を走査しながら試料に照射する光照射ステップをさらに有し、
前記画像は前記試料の蛍光画像であり、前記ピクセルのデータは、前記励起光の照射に応じて前記試料から発せられた蛍光強度に対応している、請求項1ないし請求項8のいずれかひとつに記載の画像解析方法。
【請求項10】
前記データは蛍光強度の統計値であり、前記統計値は、前記蛍光強度の平均値、最大値、最小値、相対差、絶対差のいずれかである、請求項1ないし請求項9のいずれかひとつに記載の画像解析方法。
【請求項11】
前記画像は、走査型顕微鏡によって得られたものである、請求項1ないし請求項10のいずれかひとつに記載の画像解析方法。
【請求項12】
各画像のピクセルのデータが時系列的に取得された複数のピクセルからなる複数フレームの画像を時系列的に取得する画像取得部と、
前記画像に対して解析領域を設定する解析領域設定部と、
前記画像の中から解析に利用する1フレーム以上の選定画像を選定する画像選定部と、
前記選定画像の解析領域内のピクセルのデータに基づいて相関値を算出する計算部を有している画像解析装置。
【請求項13】
前記計算部は、前記選定画像中の時系列的に先の画像の解析領域内のピクセルのデータと、このピクセルよりも遅れて取得された、前記選定画像の解析領域内のピクセルのデータとの間の相関値を算出する、請求項12に記載の画像解析装置。
【請求項14】
推定拡散時間を推定する推定部をさらに有し、
前記選定画像の選定は、前記推定拡散時間に基づいて行なわれる、請求項12または請求項13に記載の画像解析装置。
【請求項15】
前記選定画像は、前記画像のすべてからなる、請求項12ないし請求項14のいずれかひとつに記載の画像解析装置。
【請求項16】
前記選定画像は、前記画像の時系列において連続している前記画像の一部からなる、請求項12ないし請求項14のいずれかひとつに記載の画像解析装置。
【請求項17】
前記画像はKフレームの画像からなり、ここでKは2以上の整数であり、
前記選定画像の選定および相関値の算出は次式(1)と次式(2)を用いて行なう、
【数7】

ここで、GはRICSの相関値、I10はチャンネル1の1フレーム目のピクセルのデータ、I1ηはチャンネル1のη+1フレーム目のピクセルのデータ、ηは0以上の整数の所望パラメータ(η=0,1,…,K−1)、x,yは測定点の空間的座標、ξ,ψは測定点からの空間的座標の変化量、M0ηはチャンネル1の1フレーム目とη+1フレーム目の積和計算の回数、Mはチャンネル1の1フレーム目のデータ数、Mηはチャンネル1のη+1フレーム目のデータ数であり、
【数8】

ここで、SはRICSの解析におけるスキャンの影響、GはRICSの解析における時間遅延の影響、Dは拡散定数、δはピクセルサイズ、Nは分子数、Wは励起レーザビームの横方向の半径、Wは励起レーザビームの縦方向の半径、τはピクセル時間、τはライン時間、τはフレーム時間である、請求項12に記載の画像解析装置。
【請求項18】
次式(3)と次式(4)を用いて拡散時間を推定し、
【数9】

ここで、I10はチャンネル1の1フレーム目のピクセルのデータ、x,yは測定点の空間的座標、ξ,ψは測定点からの空間的座標の変化量、M00はチャンネル1の1フレーム目の積和計算の回数、Mはチャンネル1の1フレーム目のデータ数であり、
【数10】

前記推定拡散時間に基づいてηの値が設定される、請求項17に記載の画像解析装置。
【請求項19】
次式(6)に基づいてηminを求め、
【数11】

ここで、τは前記推定拡散時間、ξmax,ψmaxは1フレーム中の空間的座標の変化の最大値、nは2以上の正数であり、
【数12】

上式(7)を満足する最小値がηに設定される、請求項18に記載の画像解析装置。
【請求項20】
励起光を走査しながら試料に照射する光照射部をさらに有し、
前記画像は前記試料の蛍光画像であり、前記ピクセルのデータは、前記励起光の照射に応じて前記試料から発せられた蛍光強度に対応している、請求項12ないし請求項19のいずれかひとつに記載の画像解析装置。
【請求項21】
前記データは蛍光強度の統計値であり、前記統計値は、前記蛍光強度の平均値、最大値、最小値、相対差、絶対差のいずれかである、請求項12ないし請求項20のいずれかひとつに記載の画像解析装置。
【請求項22】
前記画像は、走査型顕微鏡によって得られたものである、請求項12ないし請求項21のいずれかひとつに記載の画像解析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−237116(P2010−237116A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86988(P2009−86988)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】