説明

画像解析装置、プログラム及び画像解析方法

【課題】古文書の知識を持たない人間でも、古文書の重ね書きされた文字を別々に取り出すことができ、これにより、古文書の解析にかかる時間を従来より大幅に軽減することができる画像解析装置、プログラム及び方法を提供する画像解析装置、プログラム及び方法を提供する。
【解決手段】画像解析装置100の画像データ取込部120は、羊皮紙の画像を取り込み、その各画素の輝度を取得する。レイヤ分離設定部110は、輝度を分類する複数のレイヤを示す輝度パラメータをユーザから受信する。分離部130は、各画素の輝度と輝度パラメータとに基づいて各画素を分離し、分離された画素ごとに画像を作成する。表示制御部は、分離部130によって作成された各画像を表示部に表示させる。レイヤ分離設定部110は、輝度パラメータを不揮発性メモリに格納する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被解析物から得た画像の各画素を分離する画像解析装置、プログラム及び画像解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イタリアのローマにあるバチカン教皇庁図書館に代表される施設では、中世ヨーロッパの古文書が収集され、保存されており、学者たちにより古文書の内容の研究がなされている。これらの古文書が書かれた当時、パピルスの紙は痛みやすかったため、ほとんどの古文書には羊の皮をなめした羊皮紙(parchment)が使用された。しかし、羊皮紙は高価であったことから、既に文字が書かれた箇所の表面を削って消すことで、繰り返し使用されていた(繰り返し使用された羊皮紙をpalimpsestという)。この削られた文字は、通常の白色光の元では肉眼でほとんど確認ができないため、以前から削られた文字を復元するための試みがなされた。ある時期では、羊皮紙に酸をかけることで消された文字が浮かび上がることが発見され、この処置がなされたものが多くある。しかし、酸をかけられた羊皮紙は、現在に至っても酸化が進行しているため痛みが激しく、保存が困難になっている。また、上記以外にも、火災、水害等の様々な要因により、損傷の激しい古文書が少なくない。このため、古文書をデジタル化して保存することが急務である。
【0003】
一方、羊皮紙に紫外線を照射することで、削り取られた文字、あるいはかすれて読みにくくなった文字等が復元できることは既に知られており、近年においては、この現象を利用して、紫外線を照射した羊皮紙を画像データとして取り込みディスプレイ等で閲覧する技術が開発されている。しかしながら、この技術で古文書をデジタル化し取り込んでも、古文書を紫外線で照射した状態の画像には、繰り返し書き込まれた文字が重なって表れる。このため、当時の文字に対する知識を有する学識者が視認しなければ、古文書の文字を取り出すことすらできず、解析に時間がかかるという問題があった。
他方、特許文献1の、波長の異なる紫外線を、解析対象となる紙に照射してその反射を読み取り、その画像データのパターンを、基本となる画像データのパターンと比較するような既存技術が存在するが、この技術では、一つの画像内の重ね書きされた文字を、別々に取り出し表示することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−3561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は上記の点を鑑みてなされたもので、古文書の知識を持たない人間でも、古文書の重ね書きされた文字を別々に取り出すことができ、これにより、古文書の解析にかかる時間を従来より大幅に軽減することができる画像解析装置、プログラム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、被解析物へ光を照射し、前記被解析物からの反射光ないし照射した光による蛍光に代表される発光現象によって発生した光を電気信号に変換して前記被解析物の各画素の画像データを生成し、記憶部に記憶させる画像データ取込部と、前記記憶部内の画像データを複数の範囲データに基づいて複数のレイヤに分離し、前記記憶部に記憶させる分離部と、前記記憶部から複数のレイヤの画像データを読み出し、レイヤ毎に個別に表示する表示手段とを具備することを特徴とする画像解析装置である。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記画像データ取込部は、前記被解析物へ紫外線に代表される特定波長領域を多く有する光を照射し、前記分離部は、輝度の範囲データに基づいて前記記憶部内の画像データを複数のレイヤに分離することを特徴とする
【0008】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記画像データ取込部は、前記被解析物へ白色光を照射し、前記分離部は、色の範囲データに基づいて前記記憶部内の画像データを複数のレイヤに分離することを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1または2の発明において、前記表示手段は、個別表示に代えて、各レイヤに属する各画素にそれぞれ、レイヤ毎に異なるカラーデータを設定し、設定したカラーデータによって全画素を同時に表示することを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1の発明において、前記画像データ取込部は複数の光源を有し、光源毎にそれぞれ画像データを生成して記憶部に記憶させ、前記分離部は、レイヤ毎に異なる光源による画像データによって分離することを特徴とする。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1〜5の発明において、前記表示手段は、前記画像データを変更する編集手段を具備することを特徴とする。
【0012】
請求項7の発明は、被解析物へ光を照射し、前記被解析物からの反射光ないし照射した光による蛍光に代表される発光現象によって発生した光を電気信号に変換して前記被解析物の各画素の画像データを生成して記憶部に記憶させ、 前記記憶部内の画像データを複数の範囲データに基づいて複数のレイヤに分離して前記記憶部に記憶させ、前記記憶部から複数のレイヤの画像データを読み出 し、レイヤ毎に個別に表示することを特徴とする画像解析方法である。
【0013】
請求項8の発明は、被解析物へ光を照射し、前記被解析物からの反射光ないし照射した光による蛍光に代表される発光現象によって発生した光を電気信号に変換して出力する画像入力装置の出力に基づいて前記被解析物の各画素の画 像データを生成し、記憶部に記憶させるステップと、前記記憶部内の画像データを複数の範囲データに基づいて複数のレイヤに分離し、前記記憶部に記憶させる ステップと、前記記憶部から複数のレイヤの画像データを読み出し、レイヤ毎に個別に表示するステップとをコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、被解析物の各画素の画像データを生成し、画像データを複数の範囲データに基づいて複数のレイヤに分離し、複数のレイヤの画像データをレイヤ毎に個別に表示するので、古文書の知識を持たない人間でも、古文書の重ね書きされた文字を別々に取り出すことができ、これにより、古文書の解析にかかる時間を従来より大幅に軽減することができる。
【0015】
また、請求項4に記載の発明によれば、被解析物の各画素の画像データを生成し、画像データを複数の範囲データに基づいて複数のレイヤ に分離し、レイヤ毎に異なるカラーデータを設定し、設定したカラーデータによって全画素を同時に表示するので、各レイヤを色分けして一つの画像として見る ことができ、全体的な文字の確認を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態による、画像解析装置の構成図である。
【図2】同実施形態における、古文書の片面1ページの羊皮紙の概要図である。
【図3】同実施形態における、スキャナによって読み取られる紫外線を照射された羊皮紙の画像データの概要図である。
【図4】同実施形態における、画像データの輝度ヒストグラムである。
【図5】同実施形態における、画像データを分離する動作を示すフローチャートである。
【図6】同実施形態における、メモリ内のレイヤと画像データのファイル名の関連付けを説明する図である。
【図7】同実施形態における、レイヤ1の画像データの表示を示した図である。
【図8】同実施形態における、レイヤ2の画像データの表示を示した図である。
【図9】同実施形態における、レイヤ3の画像データの表示を示した図である。
【図10】同実施形態における、とびとびの範囲でレイヤを定義した輝度ヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本実施形態による画像解析装置100の構成図である。ここで、解析する対象は、文字が書かれた箇所の表面を削って新たに文字を重ね書きすることで、3つの時期の文字が書き込まれている羊皮紙(palimpsest)である。120は、羊皮紙に紫外線を照射し、その反射をスキャナ(図示せず)で取り込み画像データに変換する画像データ取込部である。なお、画像解析装置100は、紫外線光源の他に、白色光源を搭載し、その反射による画像データも取り込み、記録している。110は、画像データ取込部120で取り込んだ画像データ上の、前述の3つの時期の文字を分離するための輝度パラメータを設定するレイヤ分離設定部である。130は、画像データ内の画素を、輝度パラメータによってレイヤに分離する分離部である。140は、レイヤごとに分離された画像データ、及び、紫外線光源と白色光源で取り込んだ2種の画像データを格納するHDである。また、画像解析装置100は、マウス、キーボード等で実現される入力部(図示せず)と、CRT(cathode raytube)等で実現される表示部(図示せず)と、画像データの表示を制御する表示制御部(図示せず)と、解析時に使用する揮発性メモリ(図示せず)及び不揮発性メモリ(図示せず)を搭載している。
なお、前述の解析対象とする羊皮紙200は、3つの時期の文字が書き込まれており、画像解析装置100の分離部130で3つのレイヤに分離するが、2つの時期、または4つ以上の時期の文字が描かれた羊皮紙を使用し、それらに対応する数のレイヤごとに画像データを分離するための輝度パラメータをレイヤ分離設定部110で設定し、分離部130で分離しても良い。
【0018】
ここで、上記の画像解析装置100は、CPU(中央演算装置)(図示せず)を実装しており、上述したレイヤ分離設定部110、画像データ取込部120、及び分離部130の各機能を実現するプログラム(図示せず)を揮発性メモリ上にロードして実行することで実現する。
なお、上記の各機能は、専用のハードウェアを用いて実現されても良い。
【実施例1】
【0019】
始めに、文字を分離する基準となる古文書の画像データを読み込み、輝度パラメータを設定する動作を説明する。ユーザは、或る古文書の羊皮紙上に重ね書きされた文字をレイヤに分離するための輝度パラメータを決定する。古文書は、文字の書かれた時期、使用されたインク等に起因して、紫外線を照射した画像データの文字部分の輝度が異なることが、解析の結果から分かっている。レイヤとは、画像データを画素の輝度ごとに分離したデータ、即ち、重ね書きされた文字の画素が、書かれた時期毎に分離されたものを指す。以降では、前述の3つの時期の文字のうち、最も新しい時期のレイヤをレイヤ1、2番目の時期のレイヤをレイヤ2、最も古い時期のレイヤをレイヤ3とする。
【0020】
図2は、古文書の片面1ページの羊皮紙200の概要図である。201は、羊皮紙上に消されずに残っていて、白色光の下で肉眼でも読み取れる文字(以下、レイヤ1の文字という)である。202は、羊皮紙の表面を削られ、白色光の下、肉眼ではほとんど読めない文字(以下、レイヤ2の文字という)である。ユーザが、画像解析装置100を起動し、画像取り込みの処理を開始する要求を入力部から入力すると、画像データ取込部120が、“プレスキャン”、“本スキャン”“保存 ”の選択ボタンと、本スキャンで読み取る画像の、解像度と階調を選択する欄、全体の輝度レベルを選択する欄、及びスキャン範囲指定を開始するボタンを表示部に表示させる。ここで、プレスキャンとは、読み込んだ画像データの状態を確認するために事前に画像を読み込む動作を指し、白色光、或いは紫外線光のいずれかで行うことができる。本スキャンとは、画像解析装置100が白色光と紫外線光を自動切換えで連続して行い、画像の読み込みを実施する最終的な画像取り込みの動作を指す。まず、ユーザは、羊皮紙200を画像解析装置100のスキャナにセットし、入力部から、“プレスキャン”の指示を入力する。これを受けて、画像データ取込部120は、羊皮紙200に紫外線を照射し、羊皮紙200の全面に対するプレスキャンを行う。その後、プレスキャンで読み込んだ画像データを表示部が表示する。
【0021】
ここで、紫外線を照射された羊皮紙200から、スキャナによって読み取られる画像データの概要図を、図3に示す。なお、図3はカラー画像である。白色光の下ではほとんど読み取れなかったレイヤ2の文字202は、視認可能な暗い色でスキャナに取り込まれ、白色光で全く視認できなかった文字(以下、レイヤ3の文字という)203もまた、視認可能な暗い色でスキャナに取り込まれて画像データに変換されている。
【0022】
次いで、ユーザは、プレスキャンで得た画像表示を視認し、入力部から、画像データの解像度と階調を選択する(例えば、800dpi(dot perinch)・16ビット階調等)。また、必要に応じて、輝度選択欄から所望の輝度を選択して、取込画像データの全体の輝度を調節する。そして、スキャン範囲指定を開始する指示を入力部から入力した後、前述のプレスキャンの画像表示上の所望の領域を指定する。例えば、図3において、羊皮紙200上に書かれたレイヤ1の文字201、レイヤ2の文字202、レイヤ3の文字203を全て含むように羊皮紙全範囲210をマウスで選択する。その後、ユーザは、“本スキャン”の指示を入力部から入力して、羊皮紙200の画像データの取り込みを要求する。これを受けて、画像データ取込部120は、羊皮紙200に紫外線を照射し、入力された読み取り解像度と階調、輝度調節に従って画像データをスキャナから取り込む。なお、連続して白色光での画像データ取り込みも行う。その後、ユーザが“保存”の指示を入力部から入力すると、画像データ取込部120は、読み込んだ画像のファイル名を表示部から要求し、ユーザは、所望のファイル名を入力して基準画像ファイルを保存させ、画像取り込み処理を終了させる。
【0023】
次に、ユーザが、輝度パラメータ設定処理の開始を入力部から要求すると、レイヤ分離設定部110が、画像ファイル名の入力待ちを行う。ユーザが、保存した基準画像ファイル名を入力すると、レイヤ分離設定部110は、図4に示すような、画像データの輝度ヒストグラムを表示部に表示させる。この図における横軸は、一つの画像データを256階調で示した輝度であり、縦軸は該当輝度を持つ画素の数を示す。次いで、レイヤ分離設定部110は、上述のレイヤ1〜3を識別する輝度の定義範囲の設定の要求をする。これを受けて、ユーザは、輝度ヒストグラムを見て、3つの山状に隆起した範囲を探す。ここで、3つの山状に隆起した部分はそれぞれ、3つの年代の文字部分を示すものである。そしてそれらの範囲を示す輝度パラメータを、レイヤ1〜3の定義範囲として、試験的に入力する。すると、レイヤ分離設定部110は、図4の横軸上に、レイヤ1〜3の定義範囲を矢印で表示させる。その後、ユーザが基準画像データのレイヤ分離後のプレビューを表示するよう要求すると、分離部130が、前述の各レイヤの定義範囲に従って基準画像データの画素を分離し、レイヤごとの画像を一時的に作成してプレビューを表示する。ユーザは、このプレビューを視認し、各レイヤの分離が適切に行われるように、前述の輝度パラメータ設定を繰り返す。
【0024】
その後、ユーザは、最適な輝度パラメータを決定する。図4の横軸上に描かれた範囲は、ユーザがレイヤ1の中心値Y1とその範囲値Δa1、レイヤ2の中心値Y2とその範囲値Δa2、レイヤ3の中心値Y3とその範囲値Δa3を輝度パラメータとして決定した場合の表示であり、レイヤ分離設定部110は、図のように、輝度がY1±Δa1の範囲、Y2±Δa2の範囲、輝度Y3±Δa3の範囲を表示する。次いで、ユーザは、輝度パラメータ設定処理の終了を要求する。これを受けて、レイヤ分離設定部110は、現在の輝度パラメータY1、Δa1、Y2、Δa2、Y3、Δa3を不揮発性メモリに保存する。
【0025】
次に、前述で設定した輝度パラメータを用いて、画像解析装置が画像データを分離する動作を、図5のフローチャートを用いて説明する
まず、ユーザは、前述の輝度パラメータの設定を行った(ステップS1)後、所望の羊皮紙をスキャナにセットし、画像の読み取りを入力部から要求する。これを受けて、画像読取装置100の画像データ取り込み部120は、スキャナにセットされた羊皮紙に白色光と紫外線を連続して照射して画像を取り込み(ステップS2)、2種の画像データをHD140に格納し、画像データを一時的に揮発性メモリに格納する。
【0026】
次いで、分離部130は、不揮発性メモリから、前述の輝度パラメータを読み出す。そして、読み込んだ画像データの、各画素における輝度を参照し、輝度パラメータに基づいて画像データから画素を分離し(ステップS3)て、レイヤ1〜3の画像データを作成する。この時、文字の背景部分には、白色等の色を付け加工する。その後、ユーザにファイル名を要求し、ユーザから入力されたファイル名に識別子を付けて、HD140に記憶する(ステップS4)。例えば、ユーザから入力されたファイル名が“○○”であった場合、図6に示すように、レイヤ1の画像ファイル名は“○○_U”、レイヤ2は“○○_M”、レイヤ3は“○○_L”というファイル名で格納する。
【0027】
その後、ユーザが、入力部から各レイヤの画像の表示を開始するよう要求する。例えば、まず初めにレイヤ1の表示を要求する。これを受けて、表示制御部は、入力されたレイヤ番号を読み取り、HD140から、図6のような対応に則って、該当する画像ファイルを読み出して表示部に表示させる(ステップS5)。例えば、ユーザからレイヤ1の表示が要求された場合、“○○_U”の名前の画像ファイルを読み出して、図7に示すような画像を表示する。次いで、ユーザが、異なるレイヤ番号を入力して表示の切り替えを要求し、表示制御部がこれを受信すると(ステップS6)、ステップS5に遷移して、入力されたレイヤの表示をし、処理を繰り返す。例えば、ユーザからレイヤ2の表示が要求された場合は、“○○_M”の名前の画像ファイルを読み出して、図8のような画像を表示し、レイヤ3の表示が要求された場合は、“○○_L”の名前の画像ファイルを読み出して、図9のような画像を表示する。一方、ユーザが終了を要求した場合、処理を終了する。
【0028】
なお、上述において、各レイヤの定義範囲は、連続した範囲としたが、図10に示すように、1つのレイヤを定義する輝度の範囲をとびとびに設定しても良い。また、その定義範囲を示す各パラメータは、図10に示すように、とびとびの範囲ごとに、個々に設定しても良い。例えば、レイヤ1は、Y11±Δa11の範囲と、Y12±Δa12の範囲と、Y13±Δa13の範囲で定義し、レイヤ2は、Y21±Δa21の範囲と、Y22±Δa22の範囲と、Y23±Δa23の範囲で定義し、レイヤ3は、Y31±Δa31の範囲と、Y32±Δa32の範囲と、Y33±Δa33の範囲で定義する。
また、上述において、各レイヤを定義する輝度パラメータは、互いに重ならない範囲を設定したが、重複する範囲を設定し、その範囲に該当する画素は対応する全てのレイヤに分離しても良い。
これにより、羊皮紙上の文字状態に応じたより詳細な輝度パラメータの設定が可能となり、より完全な文字の復元が行える。
【0029】
なお、上述において、各レイヤを定義する輝度パラメータは、中心値と範囲値で特定したが、輝度の範囲の最小値と最大値を特定しても良い。
【0030】
また、上述において、画像解析装置100のHD140に格納されたレイヤごとの画像データを異なる色で表示されるよう加工(例えば、画像ファイル “○○_U”は赤、画像ファイル“○○_M”は青、画像ファイル“○○_L”は緑等)し、3つの画像データを重ねて表示部に表示させても良い。その場合、レイヤ1および2で表示している画像データの濃度を薄くして透明度を上げていき、レイヤ3の画像データの上にレイヤ1及び2が重なるように加工する。これにより、各レイヤの画像データを1つの画像として見ることができ、全体的な文字の確認がしやすくなる。
【0031】
また、上述において、羊皮紙200のスキャン範囲を羊皮紙全範囲210としたが、羊皮紙200に局所的な焦げや水等にさらされた痕跡がある等、羊皮紙200の保存状態が場所により異なる場合、図3に示す選択範囲220、230のように、ユーザが局所的に範囲を設定してそれぞれに適した設定を行い、画像解析装置100の画像データ取込部120がこれに従って画像データを取り込み、また、それぞれに適した輝度パラメータを設定してレイヤを分離しても良い。
【0032】
また、上述において、画像解析装置100の表示制御部に、各レイヤの画像データを編集できる機能(任意の色で画素を塗りつぶすペン機能や画素の色を消す消しゴム機能等)を搭載し、ユーザに画像を編集させてその結果を新たにHD140に格納しても良い。
【0033】
また、上述において、3つの時期の文字が書かれた羊皮紙200を解析対象に使用し、画素を3つのレイヤに分離したが、対象とする羊皮紙200に応じて、2つのレイヤ、または4つ以上のレイヤに分離しても良い。その場合、上述の実施形態と同様に、輝度パラメータのヒストグラムを視認し、レイヤと同じ数の山状に隆起した範囲を示す輝度パラメータを試験的に設定し、プレビューで分離結果を見ながら適宜変更する。
【0034】
また、上述において、輝度パラメータはユーザが設定するとしたが、画像解析装置の出荷時に、予め不揮発性メモリに複数の輝度パラメータを格納しておき、ユーザが解析時にそれを読み出して画像データを分離しても良い。また、出荷時に予め不揮発性メモリに格納した輝度パラメータは、前述の輝度パラメータの設定時の動作を同様に行うことで、変更できても良い。
【0035】
また、上述において、対象物に照射する光源に紫外線を用いたが、白色光、可視光、赤外線、X線等を用いても良い。また、白色光を光源とした場合において、画像データからRGB値を取得し、レイヤ1のRGB値の各範囲、レイヤ2のRGB値の各範囲、レイヤ3のRGB値の各範囲を設定して、画像データを分離しても良い。
【0036】
また、一枚の羊皮紙に対して、複数種類の光源を用いた複数の画像データを作成し、それぞれの画素の情報を組み合わせて、レイヤの設定パラメータとしても良い。例えば、レイヤ1は白色光源による画像データを用いて、RGBの値から範囲を設定し、その他のレイヤは紫外線を光源とした場合の画像データの輝度の値から範囲を設定する。
【0037】
また、上述で得た各レイヤの画像データにOCRの処理を施しても良い。これにより、各レイヤの文字がテキスト形式で保存することができ、文字の判別にかかる時間を削減することができる。
【0038】
また、上述において、解析の対象物は古文書の文字としたが、記号や、挿入絵等を解析の対象としても良い。また、重ね書きされた絵画等でも良い。
【0039】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0040】
100・・・画像解析装置
110・・・レイヤ分離設定部
120・・・画像データ取込部
130・・・分離部
140・・・HD
200・・・羊皮紙
201・・・レイヤ1の文字
202・・・レイヤ2の文字
203・・・レイヤ3の文字
210・・・選択範囲
220・・・選択範囲
230・・・選択範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被解析物へ光を照射し、前記被解析物からの反射光を電気信号に変換して前記被解析物の各画素の画像データを生成し、記憶部に記憶させる画像データ取込部と、
前記記憶部内の画像データを複数の範囲データに基づいて複数のレイヤに分離し、前記記憶部に記憶させる分離部と、
前記記憶部から複数のレイヤの画像データを読み出し、レイヤ毎に個別に表示する表示手段と、
を具備することを特徴とする画像解析装置。
【請求項2】
前記画像データ取込部は、前記被解析物へ紫外線に代表される特定波長領域を多く有する光を照射し、前記分離部は、輝度の範囲データに基づいて前記記憶部内の画像データを複数のレイヤに分離することを特徴とする請求項1に記載の画像解析装置。
【請求項3】
前記画像データ取込部は、前記被解析物へ白色光を照射し、前記分離部は、色の範囲データに基づいて前記記憶部内の画像データを複数のレイヤに分離することを特徴とする請求項1に記載の画像解析装置。
【請求項4】
前記表示手段は、個別表示に代えて、各レイヤに属する各画素にそれぞれ、レイヤ毎に異なるカラーデータを設定し、設定したカラーデータによって全画素を同時に表示することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像解析装置。
【請求項5】
前記画像データ取込部は複数の光源を有し、光源毎にそれぞれ画像データを生成して記憶部に記憶させ、前記分離部は、レイヤ毎に異なる光源による画像データによって分離することを特徴とする請求項1に記載の画像解析装置。
【請求項6】
前記表示手段は、前記画像データを編集する編集手段を具備することを特徴とする請求項1〜5に記載の画像解析装置。
【請求項7】
被解析物へ光を照射し、前記被解析物からの反射光、ないし照射した光による蛍光に代表される発光現象によって発生した光を電気信号に変換して前記被解析物の各画素の画像データを生成して記憶部に記憶させ、
前記記憶部から複数のレイヤの画像データを読み出し、レイヤ毎に個別に表示する
ことを特徴とする画像解析方法。
【請求項8】
被解析物へ光を照射し、前記被解析物からの反射光、ないし照射した光による蛍光に代表される発光現象によって発生した光を電気信号に変換して出力する画像入力装置の出力に基づいて前記被解析物の各画素の画像データを生成し、記憶部に記憶させるステップと、
前記記憶部内の画像データを複数の範囲データに基づいて複数のレイヤに分離し、前記記憶部に記憶させるステップと、
前記記憶部から複数のレイヤの画像データを読み出し、レイヤ毎に個別に表示するステップと、をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−226448(P2010−226448A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71780(P2009−71780)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】