説明

画像記録用組成物、画像記録用インクセット、及び記録装置

【課題】非浸透媒体及び浸透媒体を問わず多様な記録媒体に対して画像形成がなされ、かつ、油性インクの拡散が抑制され高精細な画像が形成される、画像記録用組成物、画像記録用インクセット、及び記録装置を提供すること。
【解決手段】例えば中間転写ドラム10と、中間転写ドラム10上に外部からの刺激により硬化する硬化性材料及び吸油材料を含有する硬化性溶液12Aを供給して硬化性溶液12Aにより形成された被硬化層12Bを形成する溶液供給装置12と、被硬化層12B上に油性溶媒を含むインク滴14Aを吐出し画像Tを形成するインクジェット記録ヘッド14と、記録媒体Pを中間転写ドラム10と重ね合わせ、圧力を加えることにより記録媒体P上に画像Tが形成された被硬化層12Bを転写する転写装置16と、記録媒体P上に転写された被硬化層12Bを硬化する刺激を供給する刺激供給装置18と、を含んで構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録用組成物、画像記録用インクセット、及び記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクを利用した画像やデータ等を記録の一つとして、インクジェット記録方式がある。インクジェット記録方式の原理は、ノズル、スリット、或いは多孔質フィルム等から液体或いは溶融固体インクを吐出し、紙、布、フィルム等に記録を行うものである。インクを吐出する方法については、静電誘引力を利用してインクを吐出させる、いわゆる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用してインクを吐出させる、いわゆるドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、高熱により気泡を形成、成長させることにより生じる圧力を利用してインクを吐出させる、いわゆる熱インクジェット方式等、各種の方式が提案されており、これらの方式により、極めて高精細の画像やデータの記録物が得られる。
【0003】
このインクジェット記録方式も含め、インクを利用した記録方式では、浸透媒体や非浸透媒体などの多様な記録媒体に対し高画質で記録を行うために、中間転写体に記録した後、記録媒体に転写する方式が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、吸水性の異なるポリマー、サイズの異なる吸水ポリマー、架橋度の異なる吸水ポリマー等、複数種の粉末混合体を中間体上に供給しつつ記録を行う方式が提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、中間体上にインクとの接触でインクを増粘させる固体粒子(多糖高分子、アルギン酸、カラギーナン等の粒子)を供給しつつ記録を行う方式が提案されている。
【0006】
また、特許文献3には、中間体上に疎水性樹脂粒子層を形成し、疎水性樹脂粒子層の空隙にインク(例はSD型染料インクスロードライ型(Slow Dry型))を保持させて記録媒体に転写する方式が提案されている。
【0007】
また、特許文献4には、中間体(シート)に湿式で無機粒子、親水性ポリマー等を塗布した空隙型インク吸収層を設け、そこに染料インクを噴射し、記録媒体に転写する方式が提案されている。
【0008】
また、特許文献5には、熱可塑性樹脂粒子と非熱可塑性粒子とを含有し、熱可塑性樹脂粒子の最低造膜温度(MFT)以下の温度で乾燥されて形成された多孔質インク吸収層を有するインクジェット中間転写媒体が提案されている。
【0009】
特許文献6には、高電気的抵抗体で液体と接触して増粘する粉体を中間転写体上に供給した後、当該粉体に液体を接触させて画像を形成し、中間転写体上の増粘した画像を転写媒体に転写する記録装置が提案されている。
【0010】
特許文献7には、中間転写体上に予め液滴に対して溶解性又は膨潤性を示しかつ液滴の粘度を上昇させることができる粉末を形成しておき、液体噴射装置より噴射された液滴を中間転写体に到達させて粉末を液滴により溶解又は膨潤させ、当該粉末により高粘度化した液滴を中間転写体によって転写部まで運んで記録紙に転写させる記録装置が提案されている。
【0011】
特許文献8には、印刷版上のインク又は飛翔インク滴が中間転写体に転写されるのに先だって、中間転写体の表面に液体を付着させ、その液体上にインクを付着させてから、中間転写体上のインクを液体とともに被印刷体に転写することを特徴とする記録方法が提案されている。
【0012】
特許文献9には、静電界を利用して油性インクをインクジェット方式により画像保持体表面に画像を形成し、該画像保持体に形成された画像を印刷媒体上に接触転写することにより印刷物を作成することを特徴とするインクジェット式印刷方法が提案されている。
【0013】
特許文献10には、中間転写体に対して、着色インクの流動性を低下させる第1材料を付与する工程と、第1材料が付与された中間転写体に対して着色インクを記録ヘッドより付与し、インク像を形成する形成工程と、インク像を記録媒体へ転写する転写工程と、転写工程の前に、画像の耐擦過性を向上させる第2材料を中間転写体に付与するインクジェット記録方法が提案されている。
【0014】
【特許文献1】特開2000−343808
【特許文献2】特開2000−94654
【特許文献3】特開2003−57967
【特許文献4】特開2002−370347
【特許文献5】特開2002−321443
【特許文献6】特開2001−321443
【特許文献7】特開平11−188858
【特許文献8】特開2001−212956
【特許文献9】特開2001−315426
【特許文献10】特開2005−170036
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、非浸透媒体及び浸透媒体を問わず多様な記録媒体に対して画像形成がなされ、かつ、油性インクの拡散が抑制され高精細な画像が形成される、画像記録用組成物、画像記録用インクセット、及び記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
外部からの刺激により硬化する硬化性材料と、吸油材料と、を含有する画像記録用組成物である。
【0017】
請求項2に係る発明は、
前記吸油材料は、前記硬化性材料に対する非吸液性を有する請求項1に記載の画像記録用組成物である。
【0018】
請求項3に係る発明は、
前記吸油材料は、ロジン類、スチレンーブタジエン共重合体、及びポリノルボルネンから選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載の画像記録用組成物である。
【0019】
請求項4に係る発明は、
前記硬化性材料は、紫外線の照射により硬化する硬化性材料である請求項1から3までのいずれか1項に記載の画像記録用組成物である。
【0020】
請求項5に係る発明は、
請求項1から4までのいずれか1項に記載の画像記録用組成物と、油性溶媒を含む油性インクと、を含む画像記録用インクセットである。
【0021】
請求項6に係る発明は、
前記吸油材料は、前記油性溶媒に対する吸液性を有する請求項5に記載の画像記録用インクセットである。
【0022】
請求項7に係る発明は、
前記画像記録用組成物が請求項3に記載の画像記録用組成物であり、かつ、前記油性溶媒が非極性溶媒である請求項5又は6に記載の画像記録用インクセットである。
【0023】
請求項8に係る発明は、
中間転写体と、
請求項1から4までのいずれか1項に記載の画像記録用組成物を前記中間転写体上に供給する供給手段と、
前記中間転写体上に供給された前記画像記録用組成物により形成された被硬化層に、油性溶媒を含む油性インクを吐出する吐出手段と、
前記油性インクが吐出された前記被硬化層を前記中間転写体から記録媒体に転写する転写手段と、
前記被硬化層を硬化させる刺激を供給する刺激供給手段と、
を有する記録装置である。
【0024】
請求項9に係る発明は、
請求項1から4までのいずれか1項に記載の画像記録用組成物を記録媒体上に供給する供給手段と、
前記記録媒体上に供給された前記画像記録用組成物により形成された被硬化層に、油性溶媒を含む油性インクを吐出する吐出手段と、
前記被硬化層を硬化させる刺激を供給する刺激供給手段と、
を有する記録装置である。
【0025】
請求項10に係る発明は、
前記画像記録用組成物に含有される前記吸油材料は、前記油性溶媒に対する吸液性を有する請求項8又は9に記載の記録装置である。
【0026】
請求項11に係る発明は、
前記画像記録用組成物が請求項3に記載の画像記録用組成物であり、かつ、前記油性溶媒が非極性溶媒である請求項8から10までのいずれか1項に記載の記録装置である。
【発明の効果】
【0027】
請求項1に係る発明によれば、非浸透媒体及び浸透媒体を問わず多様な記録媒体に対して画像形成がなされ、かつ、油性インクの拡散が抑制され高精細な画像が形成されるといった効果を奏する。
【0028】
請求項2に係る発明によれば、吸油材料が硬化性材料に対する吸液性を有する場合に比べ、吸油材料による硬化性材料の吸液量が少ないため、吸油材料の油性インクに対する吸液性の低下が起こりにくいといった効果を奏する。
【0029】
請求項3に係る発明によれば、吸油材料の吸液性が、硬化性材料に対する吸液性よりも高い吸液性を持つ油性溶媒を用いた油性インクを選択することが容易となるといった効果を奏する。
【0030】
請求項4に係る発明によれば、他の硬化性材料を用いた場合に比べ、高速記録がなされ、特に非浸透媒体への記録に適するといった効果を奏する。
【0031】
請求項5に係る発明によれば、非浸透媒体及び浸透媒体を問わず多様な記録媒体に対して画像形成がなされ、かつ、油性インクの拡散が抑制され高精細な画像が形成されるといった効果を奏する。
【0032】
請求項6に係る発明によれば、非浸透媒体及び浸透媒体を問わず多様な記録媒体に対して画像形成がなされ、かつ、油性インクの拡散が抑制され、より高精細な画像が形成されるといった効果を奏する。
【0033】
請求項7に係る発明によれば、油性溶媒が極性溶媒である場合に比べ、吸油材料が油性溶媒を吸収しやすいため、より高精細な画像が形成されるといった効果を奏する。
【0034】
請求項8に係る発明によれば、非浸透媒体及び浸透媒体を問わず多様な記録媒体に対して画像形成がなされ、かつ、油性インクの拡散が抑制され高精細な画像が形成されるといった効果を奏する。またそれに加えて、中間転写方式であるため、画像保存性が優れるといった効果を奏する。
【0035】
請求項9に係る発明によれば、非浸透媒体及び浸透媒体を問わず多様な記録媒体に対して画像形成がなされ、かつ、油性インクの拡散が抑制され高精細な画像が形成されるといった効果を奏する。またそれに加えて、直接記録方式であるため、簡易な構成であり、より高速かつ低コストで画像形成がなされるといった効果を奏する。
【0036】
請求項10に係る発明によれば、非浸透媒体及び浸透媒体を問わず多様な記録媒体に対して画像形成がなされ、かつ、油性インクの拡散が抑制され、より高精細な画像が形成されるといった効果を奏する。
【0037】
請求項11に係る発明によれば、油性溶媒が極性溶媒である場合に比べ、吸油材料が油性溶媒を吸収しやすいため、より高精細な画像が形成されるといった効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、実質的に同じ機能を有する部材には、全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
【0039】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る記録装置を示す構成図である。
【0040】
第1実施形態に係る記録装置101は、図1に示すように、例えば、中間転写ドラム10、中間転写ドラム10上に外部からの刺激(エネルギー)により硬化する硬化性材料及び吸油材料を含有する硬化性溶液12Aを供給して硬化性溶液12Aにより形成された被硬化層12Bを形成する溶液供給装置12と、被硬化層12B上に油性溶媒を含む油性のインク滴14Aを吐出し画像Tを形成するインクジェット記録ヘッド14と、記録媒体Pを中間転写ドラム10に重ね合わせ圧力を加えることにより画像Tが形成された被硬化層12Bを記録媒体P上に転写する転写装置16と、記録媒体P上に転写された被硬化層12Bを硬化する刺激を供給する刺激供給装置18と、を含んで構成されている。
【0041】
また、中間転写ドラム10の回転方向における転写装置16の下流には、中間転写ドラム10表面に残留する被硬化層12Bの残留物の除去、当該残留物以外の異物(記録媒体Pの紙粉等)等の付着物の除去を行うためのクリーニング装置20が配置されている。
【0042】
中間転写ドラム10は、例えば円筒状基体と、当該基体表面に被覆される表面層と、を有する構成が挙げられる。中間転写ドラム10は、記録媒体Pの幅と同等又はそれ以上の幅(軸方向長さ)を有している。
円筒状基体の材質としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS)、銅等が挙げられる。
表面層の材質としては、例えば、各種の樹脂[例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、フッ素系樹脂等]、各種のゴム(例えば、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ウレタンゴム、エピクロロヒドリンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等)等が挙げられる。表面層は、単層構成でもよいし、積層構成でもよい。
【0043】
溶液供給装置12は、例えば、硬化性溶液12Aを収納する筐体12C内に、当該硬化性溶液12Aを中間転写ドラム10へ供給する供給ローラ12Dと、供給された硬化性溶液12Aにより形成された被硬化層12Bの層厚を規定するブレード12Eと、を含んで構成されている。
【0044】
溶液供給装置12は、その供給ローラ12Dが中間転写ドラム10に連続的に接触するようにしてもよいし、中間転写ドラム10から離間する構成としてもよい。また、溶液供給装置12は、独立した溶液供給システム(図示せず)より硬化性溶液12Aを筐体12Cへ供給させ、硬化性溶液12Aの供給がとぎれないようにしてもよい。
【0045】
ここで、硬化性溶液12Aに含有される「外部からの刺激(エネルギー)により硬化する硬化性材料」とは、外部からの刺激によって硬化し、「硬化性樹脂」となる材料を意味する。具体的には、例えば、硬化性のモノマー、硬化性のマクロマー、硬化性のオリゴマー、硬化性のプレポリマー等が挙げられる。その詳細については後述する。
【0046】
また硬化性溶液12Aに含有される「吸油材料」とは、油性溶媒を吸収する材料を意味する。その詳細については後述する。
【0047】
溶液供給装置12は、上記構成に限られず、公知の供給法(塗布法:例えば、バーコーター塗布、スプレー方式の塗布、インクジェット方式の塗布、エアーナイフ方式の塗布、ブレード方式の塗布、ロール方式の塗布等)などを利用した装置が適用される。
【0048】
インクジェット記録ヘッド14は、例えば、中間転写ドラム10の回転方向上流側から、ブラックインクを吐出するための記録ヘッド14Kと、シアンインクを吐出するための記録ヘッド14Cと、マゼンタインクを吐出するための記録ヘッド14Mと、イエローインクを吐出するための記録ヘッド14Yと、の各色の記録ヘッドを含んで構成されている。無論、記録ヘッド14の構成は上記構成に限られず、例えば、記録ヘッド14Kのみで構成してもよいし、記録ヘッド14C、記録ヘッド14M、及び記録ヘッド14Yのみで構成してもよい。
【0049】
各記録ヘッド14は、例えば、記録媒体Pの幅と同等又はそれ以上の幅を持つライン型インクジェット記録ヘッドが望ましいが、従来のスキャン型のインクジェット記録ヘッドを用いてもよい。各記録ヘッド14のインク吐出方式は、圧電素子駆動型、発熱素子駆動型等、インク吐出可能な方式であれば制限はない。
【0050】
各記録ヘッド14は、例えば、中間転写ドラム10の回転方向上流側から記録ヘッド14K、記録ヘッド14C、記録ヘッド14M、及び記録ヘッド14Yの順で直列に配置されている。
【0051】
各記録ヘッド14は、中間転写ドラム10表面とヘッドのノズル面との距離が例えば0.3乃至0.7mm程度にして配置されている。また、各記録ヘッド14は、例えば、その長手方向が中間転写ドラムの回転方向と交差(望ましくは直交)して配設されている。
【0052】
転写装置16は、中間転写ドラム10に対し押し当てて配置される加圧ロール16Aを含んで構成されている。加圧ロール16Aは、例えば、上記中間転写ドラム10の材料構成と同様に構成される。
【0053】
刺激供給装置18は、適用する硬化性溶液12Aに含まれる硬化性材料の種類に応じて選択される。具体的には、例えば、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化性材料を適用する場合、刺激供給装置18としては硬化性溶液12A(これにより形成された被硬化層12B)に紫外線を照射する紫外線照射装置を適用する。また、電子線の照射により硬化する電子線硬化性材料を適用する場合、刺激供給装置18として硬化性溶液12A(これにより形成された被硬化層12B)に電子線を照射する電子線照射装置を適用する。また、熱の付与により硬化する熱硬化性材料を適用する場合、刺激供給装置18として硬化性溶液12A(これにより形成された被硬化層12B)に熱を付与する熱付与装置を適用する。
【0054】
ここで、紫外線照射装置としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、デイープ紫外線ランプ、マイクロ波を用い外部から無電極で水銀灯を励起するランプ、紫外線レーザー、キセノンランプ、UV−LEDなどが適用される。
【0055】
ここで、紫外線の照射条件としては、紫外線硬化性材料を含む硬化性溶液12A(これにより形成された被硬化層12B)が十分に硬化される条件であれば、特に制限はなく、紫外線硬化性材料種、被硬化層12Bの厚みなどに応じて選択し得るが、例えば、高圧水銀灯120W/cm出力密度で2s照射等である。
【0056】
また、電子線照射装置としては、例えば、走査型/カーテン型等があり、カーテン型はフィラメントで生じた熱電子を、真空チャンバー内のグリッドによって引き出し、さらに高電圧(例えば70乃至300kV)によって、一気に加速させ、電子流となり、窓箔を通過して、大気側に放出する装置である。電子線の波長は一般的に1nmより小さく、またエネルギーは大きいもので数MeVに及ぶが、電子線の波長数がpmのオーダーでエネルギーが数十乃至数百keVが適用される。
【0057】
ここで、電子線の照射条件としては、電子線硬化性材料を含む硬化性溶液12A(これにより形成された被硬化層12B)が十分に硬化される条件であれば、特に制限はなく、電子線硬化性材料種、被硬化層12Bの厚みなどに応じて選択し得るが、例えば、電子線量は5乃至100kGyレベル等である。
【0058】
また、熱付与装置としては、例えば、ハロゲンランプ、セラミックヒータ、ニクロム線ヒータ、マイクロ波加熱、赤外線ランプなどが適用される。また、熱付与装置としては、電磁誘導方式の加熱装置も適用できる。
【0059】
ここで、熱の付与条件としては、熱硬化性材料を含む硬化性溶液12A(これにより形成された被硬化層12B)を十分に硬化することが可能な条件であれば、特に制限はなく、熱硬化性材料種、被硬化層12Bの厚みなどに応じて選択し得るが、例えば、空気中において、200℃環境で5min等である。
【0060】
なお、それぞれ十分に硬化された状態とは、被硬化層12Bが刺激供給装置18により硬化された硬化層に浸透性の用紙(普通紙)を重ね、200g荷重をかけても転写がおこらない状態をいう。
【0061】
記録媒体Pとしては、浸透媒体(例えば、普通紙や、コート紙等)、非浸透媒体(例えば、アート紙、樹脂フィルムなど)、いずれも適用される。記録媒体は、これらに限られず、その他、半導体基板など工業製品も含まれる。
【0062】
以下、本実施形態に係る記録装置101の画像記録プロセスにつき、説明する。
【0063】
本実施形態に係る記録装置101では、中間転写ドラム10が回転駆動され、まず、溶液供給装置12により、中間転写ドラム10表面に硬化性溶液12Aを供給して、被硬化層12Bを形成する。
【0064】
ここで、被硬化層12Bの厚みは、特に制限はないが、例えば、1μm以上50μm以下、望ましくは2μm以上20μm以下、より望ましくは3μm以上10μm以下の範囲が挙げられる。また、被硬化層12Bの厚みは、画像濃度が低い(インク打ち込み量が少ない(例えば0.1乃至1.5g/m))場合には、層厚を必要最小限の厚さ(例えば、1乃至5μm)とし、また、画像濃度が高い(インク打ち込み量が多い(例えば4乃至15g/m))場合には、層厚を例えば4乃至10μmとなるように制御することが望ましい。
【0065】
また、例えば、被硬化層12Bの厚みをインク滴14Aが被硬化層12Bの最下層まで到達しない程度とすれば、記録媒体Pへの転写後では被硬化層12Bのうちインク滴14Aが存在する領域が露出せず、インク滴14Aが存在しない領域が硬化後には保護層として機能する。
【0066】
次に、インクジェット記録ヘッド14によりインク滴14Aを吐出し、中間転写ドラム10上に供給された被硬化層12Bに当該インク滴14Aを付与する。インクジェット記録ヘッド14は所定の画像情報に基づき、被硬化層12Bの所定の位置にインク滴14Aを付与する。
【0067】
この際、インクジェット記録ヘッド14によるインク滴14Aの吐出は、剛体である中間転写ドラム10上で行われる。つまり、ドラム表面がたわみのない状態で被硬化層12Bにインク滴14Aの吐出がなされる。
【0068】
次に、転写装置16により記録媒体Pを中間転写ドラム10と挟み込んで、被硬化層12Bに圧力を加えることで、記録媒体P上に、インク滴14Aにより画像が形成された被硬化層12Bが転写される。
【0069】
次に、刺激供給装置18により、被硬化層12Bを硬化させることで、インク滴14Aによる画像Tが硬化性樹脂により記録媒体P上で定着される。これにより、インク滴14Aによる画像Tが含まれる硬化性樹脂層(画像層)が記録媒体Pに形成される。
【0070】
そして、被硬化層12Bが記録媒体Pへ転写された後の中間転写ドラム10表面に残った被硬化層12Bの残留物や異物をクリーニング装置20により除去し、再び、中間転写ドラム10上に、溶液供給装置12により硬化性溶液12Aを供給して被硬化層12Bを形成し、画像記録プロセスが繰り返される。
【0071】
以上のようにして、本実施形態に係る記録装置101では、画像記録が行われる。
【0072】
(第2実施形態)
図2は、第2実施形態に係る記録装置を示す構成図である。
【0073】
第2実施形態に係る記録装置102は、図2に示すように、第1実施形態における中間転写ドラム10の代わりに中間転写ベルト22を配置した形態である。
【0074】
中間転写ベルト22は、例えば、2つの支持ロール22A、及び加圧ロール16B(転写装置16)により内周面側から張力を掛けつつ回転可能に支持されて配設されている。
【0075】
中間転写ベルト22は、記録媒体Pの幅と同等又はそれ以上の幅(軸方向長さ)を有している。
中間転写ベルト22は、例えば、各種の樹脂[例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、フッ素系樹脂等]、各種のゴム(例えば、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ウレタンゴム、エピクロロヒドリンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等)により構成される。中間転写ベルト22は、ステンレス等の金属材料により構成してもよい。中間転写ベルト22は、単層構成でもよいし、積層構成でもよい。また、中間転写ベルト22は、フッ素樹脂・シリコーンゴム等の離型性の材料により表面層を有していてもよい。
【0076】
各記録ヘッド14は、張力が掛けられて回転支持された中間転写ベルトにおける非屈曲領域上で、且つ中間転写ベルト22表面とヘッドのノズル面との距離が例えば0.7乃至1.5mm程度にして配置されている。
【0077】
転写装置16は、中間転写ベルト22を挟んで対向配置された一対の加圧ロール16A,16Bを含んで構成されている。
【0078】
本実施形態に係る記録装置102では、インクジェット記録ヘッド14によりインク滴14Aを吐出し、中間転写ベルト22上に形成された被硬化層12Bに当該インク滴14Aを付与する。
【0079】
この際、インクジェット記録ヘッド14によるインク滴14Aの吐出は、張力が掛けられて回転支持された中間転写ベルト22における非屈曲領域上で行われる。つまり、ベルト表面がたわみのない状態で被硬化層12Bにインク滴14Aの吐出がなされる。
【0080】
これら以外は、第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0081】
(第3実施形態)
図3は、第3実施形態に係る記録装置を示す構成図である。
【0082】
第3実施形態に係る記録装置103は、図3に示すように、第1実施形態において、インク滴14Aによる画像が形成された被硬化層12Bを記録媒体Pへ転写する前に、当該被硬化層12Bを半硬化させる刺激を供給する第2の刺激供給装置24をさらに配置した形態である。
【0083】
第2の刺激供給装置24は、例えば、中間転写ベルト22の回転方向におけるインクジェット記録ヘッド14よりも下流側であって、転写装置16よりも上流側に配置されている。
【0084】
第2の刺激供給装置24は、刺激供給装置18と同様に、適用する硬化性溶液12Aに含まれる硬化性材料の種類に応じて選択される。具体的には、例えば、紫外線硬化性材料を適用する場合、第2の刺激供給装置24としては硬化性溶液12A(これにより形成された被硬化層12B)に紫外線を照射する紫外線照射装置を適用する。また、電子線硬化性材料を適用する場合、第2の刺激供給装置24として硬化性溶液12A(これにより形成された被硬化層12B)に電子線を照射する電子線照射装置を適用する。また、熱硬化性材料を適用する場合、第2の刺激供給装置24として硬化性溶液12A(これにより形成された被硬化層12B)に熱を付与する熱付与装置を適用する。
【0085】
第2の刺激供給装置24における紫外線照射条件、電子線照射条件、熱付与条件は、インクジェット記録ヘッド14によりインク滴14Aを付与された中間転写ドラム10上の被硬化層12Bが、半硬化した状態で転写装置16により記録媒体Pに転写される条件であれば、特に制限はなく、硬化性材料種、被硬化層の厚みなどに応じて選択し得る。
【0086】
本実施形態においては、第2の刺激供給装置24をインクジェット記録ヘッド14よりも下流側であって転写装置16よりも上流側に配置しているが、第2の刺激供給装置24をインクジェット記録ヘッド14よりも上流側に配置してもよい。第2の刺激供給装置24をインクジェット記録ヘッド14よりも上流側に配置すると、被硬化層12Bが半硬化され粘度が上昇した後に、インクジェット記録ヘッド14によりインク滴14Aが被硬化層12Bに吐出される。よって、被硬化層12B内におけるインク滴14Aの拡散がより抑制されるため、さらに高精細な画像が形成される。
【0087】
ここで、「半硬化した状態」とは、硬化性材料が、前記「十分に硬化された状態」には達していないが、中間転写体に供給した時よりも硬化され完全な液体状態ではない状態をいう。「半硬化した状態」の確認方法の1つとしては、以下の方法が挙げられる。具体的には、被硬化層12Bに浸透性の用紙(例えば普通紙)を重ねた場合、荷重をかけない時は被硬化層12Bが用紙側に全く転写されず、200g荷重をかけたときに一部転写された場合を、「半硬化した状態」と判断する。
【0088】
以上説明した本実施形態に係る記録装置103では、インクジェット記録ヘッド14によりインク滴14Aを吐出し、中間転写ドラム10上に供給された被硬化層12Bに当該インク滴14Aを付与した後、第2の刺激供給装置24により、当該被硬化層12Bを半硬化させる。そして、転写装置16により当該被硬化層12Bを記録媒体Pに転写する。この転写の際、被硬化層12Bは、半硬化の状態、つまりある程度剛性を持った状態で記録媒体Pに転写される。
【0089】
これら以外は、第1実施形態と同様なため、説明を省略する。
【0090】
(第4実施形態)
図4は、第4実施形態にかかる記録装置を示す構成図である。
【0091】
第4実施形態に係る記録装置104は、図4に示すように、記録媒体Pに画像を直接形成する形態(直接記録方式)である。
【0092】
記録装置104は、例えば、記録媒体P上に外部からの刺激(エネルギー)により硬化する硬化性材料及び吸油材料を含有する硬化性溶液12Aを供給して硬化性溶液12Aにより形成された被硬化層12Bを形成する溶液供給装置12と、被硬化層12B上に油性溶媒を含む油性のインク滴14Aを吐出し画像Tを形成するインクジェット記録ヘッド14と、被硬化層12Bを硬化する刺激を供給する刺激供給装置18と、を含んで構成されている。
【0093】
また記録装置104は、上記記録媒体Pを搬送する搬送ベルト13を備えている。搬送ベルト13としては、例えば、第2実施形態における中間転写ベルト22と同様の無端ベルトが用いられる。搬送ベルト13は、例えば、3つの支持ロール13Aにより内周面側から張力を掛けつつ回転可能に支持されて配設されている。搬送ベルト13は、回転移動することにより、収容容器(図示略)などから送られてきた記録媒体Pを矢印の方向に搬送する。
【0094】
記録装置104では、まず溶液供給装置12により、搬送ベルト13によって搬送されている記録媒体Pの表面上に、硬化性溶液12Aを供給して被硬化層12Bを形成する。次に、所定の画像情報に基づき、インクジェット記録ヘッド14によりインク滴14Aを吐出し、記録媒体P上に形成された被硬化層12Bにインク滴14Aを付与することにより画像Tを形成する。最後に刺激供給装置18によって被硬化層12Bを硬化させることにより、インク滴14Aによる画像Tが含まれる硬化性樹脂層(画像層)が記録媒体Pに形成される。
【0095】
これら以外は、第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0096】
上記いずれの実施形態に係る記録装置でも、硬化性溶液12Aを中間転写ドラム10、中間転写ベルト22、又は記録媒体Pに塗布して被硬化層12Bを形成する。そして、この被硬化層12Bにインク滴14Aを付与して画像Tを形成した後(第1実施形態乃至第3実施形態においては、さらに記録媒体Pへ転写した後)、画像Tが形成された被硬化層12Bを完全に硬化させる。この際、被硬化層12Bに含有される硬化性材料が硬化することにより「硬化性樹脂」となる。このため、記録媒体Pが非浸透媒体であるか浸透媒体であるかを問わず、多様な記録媒体Pに対して、画像形成がなされる。
【0097】
特に第1実施形態乃至第3実施形態に係る記録装置では、中間転写方式を採用しているため、画像Tが形成された中間転写体(中間転写ドラム10、中間転写ベルト22)上の被硬化層12Bが、記録媒体Pに転写される工程を経る。そのため、例えば被硬化層12Bの厚みをインク滴14Aが被硬化層12Bの最下層まで到達しない程度とした場合、記録媒体Pに転写された被硬化層12Bは、インク滴14Aが存在する領域(画像Tの領域)が露出せず、インク滴14Aが存在しない領域が硬化後に保護層として機能することにより、画像保存性が向上する。
【0098】
これに対し、第4実施形態に係る記録装置では、硬化性溶液12Aを直接記録媒体Pに供給する方式(直接記録方式)を採用しているため、簡易な構成であり、より高速かつ低コストで画像形成がなされる。
【0099】
また、上記いずれの実施形態に係る記録装置でも、硬化性溶液12Aに吸油材料が含まれているため、油性のインク滴14Aに含まれる油性溶媒が吸油材料に吸収される。このため、被硬化層12Bにより受容されたインク滴14Aが被硬化層12B内において拡散することが抑制されることにより、インク滴14Aが被硬化層12B内において固定され、高精細な画像が形成される。
【0100】
以下、硬化性材料について説明する。
【0101】
硬化性材料としては、例えば、紫外線硬化性材料、電子線硬化性材料、熱硬化性材料等が挙げられる。紫外線硬化性材料は、硬化がし易く、他のものに比べ硬化速度も速く、取り扱いやすい。電子線硬化性材料は、重合開始剤が不要であり、硬化後の層の着色制御が実施しやすい。熱硬化性材料は、大掛りな装置を必要とすることなく硬化される。なお、硬化性材料は、これらに限られず、例えば湿気、酸素等により硬化する硬化性材料を適用することもできる。
【0102】
紫外線硬化性材料を硬化することにより得られる「紫外線硬化性樹脂」としては、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイミド樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂などが挙げられる。そして、その硬化性溶液12Aは、紫外線硬化性のモノマー、紫外線硬化性のマクロマー、紫外線硬化性のオリゴマー、及び紫外線硬化性のプレポリマーの少なくとも1種を含んでいる。また、硬化性溶液12Aは、紫外線硬化反応を進行させるための紫外線重合開始剤を含んでいることが望ましい。さらに硬化性溶液12Aは、必要に応じて、重合反応をより進行させるための、反応助剤、重合促進剤等を含んでいてもよい。
【0103】
ここで、紫外線硬化性のモノマーとしては、例えば、アルコール/多価アルコール/アミノアルコール類のアクリル酸エステル、アルコール/多価アルコール類のメタクリル酸エステル、アクリル脂肪族アミド、アクリル脂環アミド、アクリル芳香族アミド類等のラジカル硬化性材料;エポキシモノマー、オキセタンモノマー、ビニルエーテルモノマー等のカチオン硬化性材料;などが挙げられる。上記紫外線硬化性のマクロマー、紫外線硬化性のオリゴマー、紫外線硬化性のプレポリマーとしては、これらモノマーを所定の重合度で重合させたものの他、エポキシ、ウレタン、ポリエステル、ポリエーテル骨格に、アクリロイル基やメタクリロイル基の付加した、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ウレタンメタクリレート、ポリエステルメタクリレート等のラジカル硬化性材料が挙げられる。
【0104】
硬化反応がラジカル反応により進行するタイプである場合、紫外線重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、チオキサントン系、ベンジルジメチルケタール、α-ヒドロキシケトン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、 α-アミノケトン、α-アミノアルキルフェノン、モノアシルフォスフィンオキサイド、ビスアシルフォスフィンオキサイド、ヒドロキシベンゾフェノン、アミノベンゾフェノン、チタノセン型、オキシムエステル型、オキシフェニル酢酸エステル型などが挙げられる。
また硬化反応がカチオン反応により進行するタイプである場合、紫外線重合開始剤としては、例えば、アリールスルホニウム塩、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、アレン-イオン錯体誘導体、トリアジン系開始剤等が挙げられる。
【0105】
電子線硬化性材料を硬化することにより得られる「電子線硬化性樹脂」としては、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。そして、その硬化性溶液12Aは、電子線硬化性のモノマー、電子線硬化性のマクロマー、電子線硬化性のオリゴマー、及び電子線硬化性のプレポリマーの少なくとも1種を含んでいる。
【0106】
ここで、電子線硬化性のモノマー、電子線硬化性のマクロマー、電子線硬化性のオリゴマー、電子線硬化性のプレポリマーとしては、紫外線硬化性の材料と同様のものが挙げられる。
【0107】
熱硬化性材料を硬化することにより得られる「熱硬化性樹脂」としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂などが挙げられる。そして、その硬化性溶液12Aは、熱硬化性のモノマー、熱硬化性のマクロマー、熱硬化性のオリゴマー、及び熱硬化性のプレポリマーの少なくとも1種を含んでいる。また重合の際に硬化剤を添加してもよい。また、硬化性溶液12Aは、熱硬化反応を進行させるための熱重合開始剤を含んでもよい。
【0108】
ここで、熱硬化性のモノマーとしては、例えば、フェノール、ホルムアルデヒド、ビスフェノールA、エピクロルヒドリン、シアヌリル酸アミド、尿素、グリセリン等のポリアルコール、無水フタル酸、無水マレイン酸、アジピン酸等の酸などが挙げられる。熱硬化性のマクロマー、熱硬化性のオリゴマー、熱硬化性のプレポリマーとしては、これらのモノマーを所定の重合度で重合させたものや、エポキシプレポリマー、ポリエステルプレポリマーなどが挙げられる。
【0109】
熱重合開始剤としては、例えば、プロトン酸/ルイス酸等の酸、アルカリ触媒、金属触媒などが挙げられる。
【0110】
以上のように、硬化性材料は、紫外線、電子線、熱等の外部エネルギーにより硬化(例えば、重合反応が進行することによる硬化)するものであれば何でもよい。
上記硬化性材料の中でも、画像記録の高速化という観点を考慮すると、硬化速度の速い材料(例えば、重合の反応速度が速い材料)が望ましい。このような硬化性材料としては、例えば、放射線硬化型の硬化性材料(上記紫外線硬化性材料、電子線硬化性材料等)が挙げられる。
【0111】
また本実施形態においては、上記の通り、硬化性材料及び吸油材料が硬化性溶液12Aに含まれている。したがって、吸油材料の性質を変化(例えば分解、変性等)させないような外部エネルギーを与える形態であることが望ましい。そのような観点を考慮すると、外部エネルギーとしては放射線の中でも紫外線がより望ましく、硬化性材料としては上記放射線硬化型の硬化性材料の中でも紫外線硬化性材料がより望ましい。
【0112】
硬化性材料は、中間転写体等との濡れ性を考慮して、Siやフッ素等による変性がされていてもよい。また硬化性材料は、硬化速度と硬化度を考慮すると、多官能のプレポリマーを含有するのが望ましい。
【0113】
また、硬化性材料は、吸油材料に吸収されにくいものであることが望ましい。例えば吸油材料として、後述するように「極性を有する材料を吸収しにくい吸油材料」を用いる場合には、硬化性材料として極性を有する硬化性材料を用いることが望ましい。極性を有する硬化性材料としては、例えば、エステル基、ウレタン基、オキシアルキレン基、アミド基、アミノ基、エーテル基、水酸基、カルボン酸基などの極性基を、分子構造中に分子量あたり多く有する構造を持つ材料が挙げられる。
【0114】
また、高精細な画像を形成するという観点から、硬化性材料は、硬化反応による収縮が小さいことが望ましい。さらに硬化反応による収縮を抑制するという観点から、硬化性材料は、柔軟性が高すぎない方が望ましい。硬化性材料の粘度としては、5mPa・s以上であることが望ましい。
【0115】
次に、吸油材料について説明する。
【0116】
吸油材料としては、油性溶媒を吸収するものであれば何でもよい。吸油材料の具体例としては、例えば、カオリンクレー、シリカ、石灰などの無機物、ヒドロキシステアリン酸、コレステロール誘導体、ベンジリデンソルビトールといった低分子ゲル化剤、ポリノルボルネン、ポリスチレン、ポリプロピレン、スチレン-ブタジエン共重合体等の樹脂、ロジン類などが挙げられる。
【0117】
吸油材料は、硬化性材料に対する非吸液性を有することが望ましい。吸油材料が硬化性材料に対する非吸液性を有すると、吸油材料が硬化性材料を吸収することによって生じうる、油性溶媒に対する吸油材料の吸液性の低下が抑制される。このため、吸油材料が硬化性材料に対し吸液性を有する場合に比べて、より高精細な画像が形成される。
【0118】
ここで「非吸液性を有する」とは、吸液量が50ml/100g以下であることを意味する。また「吸液量」とは、吸油材料100gにより吸収される液体の量(ml)を意味し、以下のようにして測定する。
具体的には、油層に吸油材料を静置したのち、サンプル全体に油が浸透するまで待ち、吸油サンプルを直ちに引き上げ、メッシュ上に5分間放置したのち、重量を測定し、吸油材料との差分を吸油量とした。また、JIS K5101−13−1に準じた方法でも良い。
硬化性材料に対する吸油材料の吸液量は、具体的には、例えば、100ml/100g以下であることが望ましく、50ml/100g以下であることがより望ましく、30ml/100g以下であることがさらに望ましい。
【0119】
また吸油材料は、油性溶媒に対する吸液性を有することが望ましい。吸油材料が油性溶媒に対する吸液性を有すると、吸油材料が油性溶媒を吸収することによる上記効果がより大きいため、より高精細な画像が形成される。
【0120】
ここで「吸液性を有する」とは、吸液量が100ml/100g以上であることを意味する。
油性溶媒に対する吸油材料の吸液量は、具体的には、例えば、70ml/100g以上であることが望ましく、100ml/100g以上であることがより望ましく、200ml/100g以上であることがさらに望ましい。
【0121】
硬化性材料に対する吸油材料の吸液量は、油性溶媒に対する吸油材料の吸液量よりも低いことが望ましい。硬化性材料に対する吸油材料の吸液量が油性溶媒に対する吸油材料の吸液量よりも高いと、油性溶媒が選択的に吸油材料に吸収される。そのため、吸油材料が硬化性材料を吸収することによって生じうる、油性溶媒に対する吸油材料の吸液性の低下が抑制され、吸油材料が油性溶媒を吸収することによる上記効果が大きいため、より高精細な画像が形成される。
【0122】
具体的には、例えば、硬化性材料に対する吸油材料の吸液量をAr(ml/100g)、油性溶媒に対する吸油材料の吸液量をAs(ml/100g)とした場合において、Ar/Asの値が、0以上0.5以下となることが望ましく、0以上0.3以下となることがより望ましく、0以上0.1以下となることがさらに望ましい。
【0123】
硬化性材料に対する吸油材料の吸液量が油性溶媒に対する吸油材料の吸液量よりも低いような形態としては、例えば、極性を有する材料を吸収しにくいが非極性溶媒を吸収しやすいような吸油材料と、極性を有する硬化性材料と、油性溶媒が非極性溶媒である油性インクと、を組み合わせて用いる形態が望ましく挙げられる。
【0124】
上記のような形態においては、吸油材料が極性を有する材料を吸収しにくいため、極性を有する硬化性材料が吸油材料に吸収されにくく、硬化性材料が吸油材料により吸収されることによって生じうる、油性溶媒に対する吸油材料の吸液性の低下も起こりにくい。また吸油材料が非極性溶媒を吸収しやすいため、油性溶媒(非極性溶媒)が吸油材料により吸収されやすい。すなわち、上記のような形態においては、油性溶媒が選択的に吸油材料に吸収されることとなる。そのため、吸油材料が油性溶媒を吸収することによる上記効果が大きいため、より高精細な画像が形成される。
【0125】
上記「極性を有する材料を吸収しにくいが非極性溶媒を吸収しやすいような吸油材料」としては、例えば、ポリノルボルネン、スチレン−ブタジエン共重合体、ロジン類(アビエチン酸類及びその塩、ピマル酸類及びその塩、アビエチルアミン類およびその無機酸塩又は有機酸塩、ピマリルアミン類およびその無機酸塩又は有機酸塩、ロジンアミド誘導体等)などが挙げられる。
【0126】
これらの吸油材料は、ヘキサン、トルエン、キシレン等の非極性溶媒、ガソリン等の鉱物油、動植物油などは吸収しやすいが、極性を有するケトン類、アルコール類などは吸収しにくい。したがってこれらの吸油材料と、極性を有する硬化性材料と、油性溶媒が非極性溶媒である油性インクと、を用いることで、より高精細な画像が形成される。
上記「極性を有する硬化性材料」については上述したとおりであり、「油性溶媒が非極性溶媒である油性インク」については後述するとおりである。
【0127】
硬化性材料に対する吸油材料の吸液量が油性溶媒に対する吸油材料の吸液量よりも低いような形態としては、上記のような形態の他に、例えば、非極性の材料を吸収しにくいが極性溶媒を吸収しやすいような吸油材料と、非極性の硬化性材料と、油性溶媒が極性溶媒である油性インクと、を組み合わせて用いる形態も、上記形態と同様に挙げられる。
【0128】
また硬化性材料及び油性溶媒の組み合わせとしては、上記「極性を有する硬化性材料及び非極性溶媒」「非極性の硬化性材料及び極性溶媒」に限られず、「高極性の硬化性材料及び低極性溶媒」「低極性の硬化性材料及び高極性溶媒」でもよい。
【0129】
吸油材料は、表面積を大きくすることによって吸液性を上げるために、多孔質体としてもよい。また吸油材料は、吸収する化合物の保持体積を大きくすることによって吸液性を上げるために、中空構造としてもよい。
【0130】
吸油材料は、硬化性材料に溶解していてもよいし、硬化性材料に分散していてもよい。硬化性材料に対する吸油材料の非吸液性の観点からは、吸油材料が、自己分散あるいは分散剤により、硬化性材料中に分散していることが望ましい。
分散剤としては、例えば、後述する顔料分散剤と同様のものが挙げられる。
【0131】
吸油材料の体積平均粒径は、高精細な画像が形成されるという観点から、0.05μm以上20μm以下の範囲であることが望ましく、0.1μm以上15μmであることがより望ましく、0.2μm以上10μm以下であることがさらに望ましい。
【0132】
また硬化性溶液12Aには、硬化性材料及び吸油材料の他に、インクの成分を被硬化層12B上や内部で固定化するようなその他の成分(以下、「その他の固定化成分」と称する場合がある)をさらに含んでいてもよい。
本実施形態においては、吸油材料やその他の固定化成分を予め硬化性溶液12Aに混合しているが、例えば、吸油材料やその他の固定化成分を含む溶液を別途調整し、当該溶液を吐出する手段等により被硬化層12Bに吐出することにより、被硬化層12Bに吸油材料やその他の固定化成分を含ませても良い。吸油材料やその他の固定化成分を含む溶液を被硬化層12Bに吐出する工程は、インクジェット記録ヘッド14によりインク滴14Aを被硬化層12Bに吐出する前に行うことが望ましい。
【0133】
その他の固定化成分としては、例えば、インクの成分(例えば色材)を吸着する成分、インクの成分(例えば色材)を凝集又は増粘させる成分等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0134】
インクの成分(例えば色材)を吸着する成分としては、シリカ、アルミナ、ゼオライトなどが挙げられる。当該成分の比率としては0乃至30質量%程度の範囲が挙げられる。
【0135】
インクの成分(例えば色材)を凝集又は増粘させる成分としては、無機電解質、有機酸、無機酸、有機アミンなどの凝集剤が挙げられる。
【0136】
無機電解質としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン及び、アルミニウムイオン、バリウムイオン、カルシウムイオン、銅イオン、鉄イオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、ニッケルイオン、スズイオン、チタンイオン、亜鉛イオン等の多価金属イオンと、塩酸、臭酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、チオシアン酸、及び、酢酸、蓚酸、乳酸、フマル酸、クエン酸、サリチル酸、安息香酸等の有機カルボン酸及び、有機スルホン酸の塩等が挙げられる。
【0137】
具体例としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、酢酸ナトリウム、蓚酸カリウム、クエン酸ナトリウム、安息香酸カリウム等のアルカリ金属類の塩、及び、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム、酢酸アルミニウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、酸化バリウム、硝酸バリウム、チオシアン酸バリウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸二水素カルシウム、チオシアン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、酢酸カルシウム、サリチル酸カルシウム、酒石酸カルシウム、乳酸カルシウム、フマル酸カルシウム、クエン酸カルシウム、塩化銅、臭化銅、硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、蓚酸鉄、乳酸鉄、フマル酸鉄、クエン酸鉄、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、塩化マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン、リン酸二水素マンガン、酢酸マンガン、サリチル酸マンガン、安息香酸マンガン、乳酸マンガン、塩化ニッケル、臭化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、硫酸スズ、塩化チタン、塩化亜鉛、臭化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、チオシアン酸亜鉛、酢酸亜鉛等の多価金属類の塩等が挙げられる。
【0138】
有機酸としては、具体的にはアルギニン酸、クエン酸、グリシン、グルタミン酸、コハク酸、酒石酸、システイン、シュウ酸、フマル酸、フタル酸、マレイン酸、マロン酸、リシン、リンゴ酸、及び、一般式(1)で表される化合物、これら化合物の誘導体などが挙げられる。
【0139】
【化1】

【0140】
ここで、式中、Xは、O、CO、NH、NR、S、又はSOを表す。Rはアルキル基を表し、Rとして望ましくは、CH,C、COHである。Xとして望ましくは、CO、NH、NR、Oであり、より望ましくは、CO、NH、Oである。
Rはアルキル基を表し、Rとして望ましくは、CH,C、COHである。なお、Rは式中に含んでいてもよいし、含んでいなくても構わない。
Mは、水素原子、アルカリ金属又はアミン類を表す。Mとして望ましくは、H、Li、Na、K、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等であり、より望ましくは、H、Na,Kであり、更に望ましくは、水素原子である。nは、3乃至7の整数である。nとして望ましくは、複素環が6員環又は5員環となる場合であり、より望ましくは、5員環の場合である。mは、1又は2である。一般式(1)で表される化合物は、複素環であれば、飽和環であっても不飽和環であってもよい。lは、1乃至5の整数である。
【0141】
一般式(1)で表される化合物としては、具体的には、フラン、ピロール、ピロリン、ピロリドン、ピロン、ピロール、チオフェン、インドール、ピリジン、キノリン構造を有し、更に官能基としてカルボキシル基を有する化合物が挙げられる。具体的には、2−ピロリドン−5−カルボン酸、4−メチル−4−ペンタノリド−3−カルボン酸、フランカルボン酸、2−ベンゾフランカルボン酸、5−メチル−2−フランカルボン酸、2,5−ジメチル−3−フランカルボン酸、2,5−フランジカルボン酸、4−ブタノリド−3−カルボン酸、3−ヒドロキシ−4−ピロン−2,6−ジカルボン酸、2−ピロン−6−カルボン酸、4−ピロン−2−カルボン酸、5−ヒドロキシ−4−ピロン−5−カルボン酸、4−ピロン−2,6−ジカルボン酸、3−ヒドロキシ−4−ピロン−2,6−ジカルボン酸、チオフェンカルボン酸、2−ピロールカルボン酸、2,3−ジメチルピロール−4−カルボン酸、2,4,5−トリメチルピロール−3−プロピオン酸、3−ヒドロキシ−2−インドールカルボン酸、2,5−ジオキソ−4−メチル−3−ピロリン−3−プロピオン酸、2−ピロリジンカルボン酸、4−ヒドロキシプロリン、1−メチルピロリジン−2−カルボン酸、5−カルボキシ−1−メチルピロリジン−2−酢酸、2−ピリジンカルボン酸、3−ピリジンカルボン酸、4−ピリジンカルボン酸、ピリジンジカルボン酸、ピリジントリカルボン酸、ピリジンペンタカルボン酸、1,2,5,6−テトラヒドロ−1−メチルニコチン酸、2−キノリンカルボン酸、4−キノリンカルボン酸、2−フェニル−4−キノリンカルボン酸、4−ヒドロキシ−2−キノリンカルボン酸、6−メトキシ−4−キノリンカルボン酸等の化合物が挙げられる。
【0142】
有機酸としては、望ましくは、クエン酸、グリシン、グルタミン酸、コハク酸、酒石酸、フタル酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩である。より望ましくは、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩である。さらに望ましくは、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、フランカルボン酸、クマリン酸、若しくは、これらの化合物誘導体、又は、これらの塩である。
【0143】
有機アミン化合物としては、1級、2級、3級及び4級アミン及びそれらの塩のいずれであっても構わない。具体例としては、テトラアルキルアンモニウム、アルキルアミン、ベンザルコニウム、アルキルピリジウム、イミダゾリウム、ポリアミン、及び、それらの誘導体、又は、塩等が挙げられる。具体的には、アミルアミン、ブチルアミン、プロパノールアミン、プロピルアミン、エタノールアミン、エチルエタノールアミン、2−エチルヘキシルアミン、エチルメチルアミン、エチルベンジルアミン、エチレンジアミン、オクチルアミン、オレイルアミン、シクロオクチルアミン、シクロブチルアミン、シクロプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、ジ2−エチルヘキシルアミン、ジエチレントリアミン、ジフェニルアミン、ジブチルアミン、ジプロピルアミン、ジヘキシルアミン、ジペンチルアミン、3−(ジメチルアミノ)プロピルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルエチレンジアミン、ジメチルオクチルアミン、1,3−ジメチルブチルアミン、ジメチル−1,3−プロパンジアミン、ジメチルヘキシルアミン、アミノ−ブタノール、アミノ−プロパノール、アミノ−プロパンジオール、N−アセチルアミノエタノール、2−(2−アミノエチルアミノ)−エタノール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、2−(3,4−ジメトキシフェニル)エチルアミン、セチルアミン、トリイソプロパノールアミン、トリイソペンチルアミン、トリエタノールアミン、トリオクチルアミン、トリチルアミン、ビス(2−アミノエチル)1,3−プロパンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)1,3−プロパンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、ビス(トリメチルシリル)アミン、ブチルアミン、ブチルイソプロピルアミン、プロパンジアミン、プロピルジアミン、ヘキシルアミン、ペンチルアミン、2−メチル−シクロヘキシルアミン、メチル−プロピルアミン、メチルベンジルアミン、モノエタノールアミン、ラウリルアミン、ノニルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレシジアミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、ジヒドロキシエチルステアリルアミン、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルピリジニウムク口ライド、ステアラミドメチルビリジウムクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、ジアリルアミン重合体、モノアリルアミン重合体等が挙げられる。
【0144】
より望ましくは、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、エタノールアミン、プロパンジアミン、プロピルアミンなどが使用される。
【0145】
これら凝集剤の中でも、多価金属塩(Ca(NO)、Mg(NO)、Al(OH)、ポリ塩化アルミニウム等が好適に用いられる。
【0146】
凝集剤は単独で使用しても、あるいは2種類以上を混合して使用しても構わない。また、凝集剤の含有量としては、0.01質量%以上30質量%以下の範囲が挙げられる。
【0147】
また、硬化性溶液12Aには、上記硬化反応に寄与する主成分(モノマー、マクロマー、オリゴマー、及びプレポリマー、重合開始剤等)を溶解又は分散するための水や有機溶媒を含んでいてもよい。但し、当該主成分の比率が例えば30質量%以上、望ましくは60質量%以上、より望ましくは90質量%以上の範囲が挙げられる。
【0148】
また、硬化性溶液12Aは、硬化後の層を着色制御する目的で、各種色材を含んでいてもよい。
【0149】
硬化性溶液12Aに含有される硬化性材料及び吸油材料の質量比は、油性インクの溶媒に対する吸油材料の吸液性と硬化性材料の硬化性とのバランスをとる観点から、90:10乃至10:90の範囲であることが望ましく、80:20乃至30:70であることがより望ましく、72:25乃至50:50であることがさらに望ましい。
【0150】
また、硬化性溶液12Aの粘度は、塗布のしやすさ及びインク滴14Aの固定のしやすさを考慮すると、50mPa・s以上100000mPa・s以下が望ましく、100mPa・s以上50000mPa・s以下がより望ましく、1000mPa・s以上10000mPa・s以下がさらに望ましい。また、硬化性溶液の粘度は、インクの粘度よりも高いことがよい。
【0151】
また、硬化性材料を含む硬化性溶液12Aは、常温(25℃)において低揮発性又は不揮発性であることがよい。ここで、低揮発性とは大気圧下において沸点が200℃以上であることを意味する。また、不揮発性とは大気圧下において沸点が300℃以上であることを意味する。以下、同様である。
【0152】
以下、上記実施形態に適用されるインクについて説明する。
【0153】
本実施形態においては、油性溶媒を含む油性インクを用いている。したがって、油性のインク滴14Aに含まれる油性溶媒が吸油材料に吸収され、被硬化層12Bにより受容されたインク滴14Aが被硬化層12B内において拡散することが抑制されることにより、インク滴14Aが被硬化層12B内において固定され、高精細な画像が形成される。
【0154】
まず、油性溶媒について説明する。油性溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、グリコール類、含窒素溶媒、植物油等の有機溶媒が挙げられる。
【0155】
脂肪族炭化水素の例としては、例えば、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルヘキサン、n−オクタン、メチルヘプタン、ジメチルヘキサン、ノナン、デカン等が挙げられ、アイソパーなどのn−パラフィン系溶剤、iso−パラフィン系溶剤、シクロパラフィン系溶剤などのパラフィン系溶剤等も挙げられる。
【0156】
また、芳香族炭化水素としては、例えば、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等が挙げられる。
【0157】
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、ペンタノン、ヘキサノン、ヘプタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0158】
エステル類としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル等が挙げられる。
【0159】
エーテル類としては、例えば、ジエチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルイソプロピルエータル等が挙げられる。
【0160】
グリコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、ポリプロピレングリコール等が挙げられ、その他、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル等のグリコール誘導体等も挙げられる。
【0161】

植物油としては、乾性油、半乾性油、不乾性油などが挙げられる。乾性油としては、荏の油、アマニ油、桐油、ケシ油、くるみ油、紅花油、ひまわり油などが挙げられ、半乾性油としては菜種油、不乾性油としては、ヤシ油が挙げられる。
動物油としては、ラード (豚脂)、ヘット(牛脂)、魚油、鶏油、蛹油、ラノリン、馬油、鯨油、ミンクオイル、鮫油、蜜蝋などが挙げられる。
【0162】
上記油性溶媒は、単独で使用してもよく、または二種以上併用しても良い。
【0163】
油性溶媒は、吸油材料に吸収されやすいものであることが望ましい。例えば吸油材料として、前述したように、極性を有する材料を吸収しにくい吸油材料を用いる場合には、油性溶媒として非極性溶媒を用いることが望ましい。このような溶媒としては、例えば、極性基で置換されていない脂肪族または芳香族炭化水素、長鎖脂肪酸エステル、長鎖脂肪酸アミドなどが挙げられる。
【0164】
油性溶媒は、低揮発性又は不揮発性であることが望ましい。油性溶媒が低揮発性又は不揮発性であることにより、ヘッドノズル端部において、溶媒揮発によるインク状態変化が起きにくいため、ヘッドノズル耐目詰まり性が良く、吐出安定性が良い。同様に、吐出安定性、耐目詰まり性の観点から、油性溶媒は低粘度であることが望ましい。低粘度かつ低揮発性の油性溶媒としては、例えば、分岐した脂肪族炭化水素等が挙げられる。
【0165】
次に、記録材について説明する。記録材としては、主に色材が挙げられる。色材としては、染料、顔料のいずれも用いられるが、耐久性の点で顔料であること望ましい。
【0166】
顔料としては有機顔料、無機顔料のいずれも使用でき、黒色顔料ではファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料等が挙げられる。黒色とシアン、マゼンタ、イエローの3原色顔料のほか、赤、緑、青、茶、白等の特定色顔料や、金、銀色等の金属光沢顔料、無色又は淡色の体質顔料、プラスチックピグメント等を使用してもよい。また、本発明のために、新規に合成した顔料でも構わない。
【0167】
また、シリカ、アルミナ、又は、ポリマービード等をコアとして、その表面に染料又は顔料を固着させた粒子、染料の不溶レーキ化物、着色エマルション、着色ラテックス等を顔料として使用する方法もある。
【0168】
黒色顔料の具体例としては、Raven7000,Raven5750,Raven5250,Raven5000 ULTRAII,Raven 3500,Raven2000,Raven1500,Raven1250,Raven1200,Raven1190 ULTRAII,Raven1170,Raven1255,Raven1080,Raven1060(以上コロンビアン・カーボン社製)、Regal400R,Regal330R,Regal660R,Mogul L,Black Pearls L,Monarch 700,Monarch 800,Monarch 880,Monarch 900,Monarch 1000,Monarch 1100,Monarch 1300,Monarch 1400(以上キャボット社製)、Color Black FW1,Color Black FW2,Color Black FW2V,Color Black 18,Color Black FW200,Color Black S150,Color Black S160,Color Black S170,Printex35,Printex U,Printex V,Printex140U,Printex140V,Special Black 6,Special Black 5,Special Black 4A,Special Black4(以上デグッサ社製)、No.25,No.33,No.40,No.47,No.52,No.900,No.2300,MCF−88,MA600,MA7,MA8,MA100(以上三菱化学社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0169】
シアン色顔料の具体例としては、C.I.Pigment Blue−1,−2,−3,−15,−15:1,−15:2,−15:3,−15:4,−16,−22,−60等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0170】
マゼンタ色顔料の具体例としては、C.I.Pigment Red−5,−7,−12,−48,−48:1,−57,−112,−122,−123,−146,−168,−177,−184,−202, C.I.Pigment Violet −19等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0171】
黄色顔料の具体例としては、C.I.Pigment Yellow−1,−2,−3,−12,−13,−14,−16,−17,−73,−74,−75,−83,−93,−95,−97,−98,−114,−128,−129,−138,−151,−154,−180等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0172】
ここで、色材として顔料を使用した場合には、併せて顔料分散剤を用いることが望ましい。使用される顔料分散剤としては、高分子分散剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0173】
高分子分散剤としては、親水性構造部と疎水性構造部とを有する重合体が好適に用いられる。親水性構造部と疎水性構造部とを有する重合体としては、縮合系重合体と付加重合体とが使用される。縮合系重合体としては、公知のポリエステル系分散剤が挙げられる。付加重合体としては、α,β−エチレン性不飽和基を有する単量体の付加重合体が挙げられる。親水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体と疎水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体を組み合わせて共重合することにより目的の高分子分散剤が得られる。また、親水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体の単独重合体も用いられる。
【0174】
親水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体としては、カルボキシル基、スルホン酸基、水酸基、りん酸基等を有する単量体、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホン化ビニルナフタレン、ビニルアルコール、アクリルアミド、メタクリロキシエチルホスフェート、ビスメタクリロキシエチルホスフェート、メタクリロオキシエチルフェニルアシドホスフェート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。
【0175】
疎水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体、ビニルシクロヘキサン、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸シクロアルキルエステル、クロトン酸アルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル等が挙げられる。
【0176】
高分子分散剤として用いられる、望ましい共重合体の例としては、スチレン−スチレンスルホン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−メタクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸シクロヘキシルエステル−メタクリル酸共重合体等が挙げられる。また、これらの重合体に、ポリオキシエチレン基、水酸基を有する単量体を共重合させてもよい。
【0177】
上記高分子分散剤としては、例えば重量平均分子量で2000乃至50000のものが挙げられる。
【0178】
これら顔料分散剤は、単独で用いても、二種類以上を併用しても構わない。顔料分散剤の添加量は、顔料により大きく異なるため一概には言えないが、一般に顔料に対し、合計で0.1乃至100質量%が挙げられる。
【0179】
更に、樹脂により被覆された顔料等も使用される。これは、マイクロカプセル顔料と呼ばれ、大日本インキ化学工業社製、東洋インキ社製などの市販のマイクロカプセル顔料だけでなく、本発明のために試作されたマイクロカプセル顔料等も使用される。
【0180】
また、高分子物質を上記顔料に物理的に吸着又は化学的に結合させた樹脂分散型顔料も用いられる。
【0181】
記録材としては、その他、親水性のアニオン染料、直接染料、カチオン染料、反応性染料、高分子染料等や油溶性染料等の染料類、染料で着色したワックス粉・樹脂粉類やエマルション類、蛍光染料や蛍光顔料、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、フェライトやマグネタイトに代表される強磁性体等の磁性体類、酸化チタン、酸化亜鉛に代表される半導体や光触媒類、その他有機、無機の電子材料粒子類などが挙げられる。
【0182】
記録材の含有量(濃度)は、例えばインクに対して5乃至30質量%の範囲が挙げられる。
【0183】
記録材の体積平均粒径は、例えば10nm以上1000nm以下の範囲が挙げられる。
【0184】
記録材の体積平均粒径とは、記録材そのものの粒径、又は記録材に分散剤等の添加物が付着している場合には、添加物が付着した粒径をいう。体積平均粒径の測定装置には、マイクロトラックUPA粒度分析計 9340 ( Leeds&Northrup社製 )を用いた。その測定は、インク4mlを測定セルに入れ、所定の測定法に従って行った。なお、測定時の入力値として、粘度にはインクの粘度を、分散粒子の密度は記録材の密度とした。
【0185】
次に、その他の添加剤について説明する。インクには、その他、必要に応じて、界面活性材が添加される。
【0186】
これら界面活性剤の種類としては、各種のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、望ましくは、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が用いられる。
【0187】
以下、界面活性剤の具体例を列挙する。
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩及びスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等が使用でき、望ましくは、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸塩、モノブチルフェニルフェノールモノスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、ジブチルフェニルフェノールジスルホン酸塩等が用いられる。
【0188】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アルキルアルカノールアミド、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー、アセチレングリコール、アセチレングリコールのポリオキシエチレン付加物等が挙げられ、望ましくは、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー、アセチレングリコール、アセチレングリコールのポリオキシエチレン付加物が用いられる。
【0189】
その他、ポリシロキサンオキシエチレン付加物等のシリコーン系界面活性剤や、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテル等のフッ素系界面活性剤、スピクリスポール酸やラムノリピド、リゾレシチン等のバイオサーファクタント等も使用される。
【0190】
これらの界面活性剤は単独で使用しても混合して使用してもよい。また界面活性剤の親水性/疎水性バランス(HLB)は、溶解性等を考慮すると例えば1乃至20の範囲が挙げられる。
【0191】
これらの界面活性剤の添加量は、例えば0.001乃至5質量%、望ましくは0.01乃至3質量%の範囲が挙げられる。
【0192】
また、インクには、その他、浸透性を調整する目的で浸透剤、インク吐出性改善等の特性制御を目的でポリエチレンイミン、ポリアミン類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等や、導電率、pHを調整するために水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属類の化合物等、その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、及びキレート化剤等も添加される。
【0193】
次に、インクの好適な特性について説明する。まず、インクの表面張力は、例えば20乃至45mN/mの範囲が挙げられる。
【0194】
ここで、表面張力としては、ウイルヘルミー型表面張力計(協和界面科学株式会社製)を用い、23℃、55%RHの環境において測定した値を採用した。
【0195】
インクの粘度は、1.5mPa・s以上30mPa・s以下、望ましくは1.5mPa・s以上20mPa・s以下の範囲が挙げられる。ヘッド吐出性の観点からは、インクの粘度は20mPa・s以下が望ましい。また、インクの粘度は、上記硬化性溶液の粘度に比べ低いことがよい。
【0196】
ここで、粘度としては、レオマット115(Contraves製)を測定装置として用いて、測定温度は23℃、せん断速度は1400s−1の条件で測定した値を採用した。
【0197】
なお、インクは、上記構成に限定されるものではない。記録材以外に、例えば、液晶材料、電子材料など機能性材料を含むものであってもよい。
【0198】
以上、実施形態においては、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色のインクジェット記録ヘッド14から画像データに基づいて選択的にインク滴14Aが吐出されてフルカラーの画像が記録媒体Pに記録されるようになっているが、記録媒体上への文字や画像の記録に限定されるものではない。すなわち、工業的に用いられる液滴吐出(噴射)装置全般に対して、本発明に係る装置が適用される。
【実施例】
【0199】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
【0200】
(実施例1)
上記第2実施形態と同様な構成の記録装置(図2参照)を用いて、溶液供給装置により硬化性溶液を中間転写ベルトに供給して被硬化層を形成し、その被硬化層上に記録ヘッドにより各インクを吐出して画像を形成した。そして、転写装置により記録媒体へ被硬化層を転写した後、刺激供給装置により刺激を供給し被硬化層を硬化させて、プリントし、評価を行った。条件は以下の通りである。
【0201】
・中間転写ベルト:厚さ0.1mm、ベルト幅350mm、外径Φ168mmのポリイミド製無端ベルトにフッ素系樹脂を被覆したもの(プロセス速度:400mm/s)
・溶液供給装置:グラビアロールコーター(被硬化層の層厚15μm)
・各記録ヘッド:ピエゾ方式の記録ヘッド(解像度解像度600dpi(dpi:1インチ当たりのドット数、以下同様である))
・転写装置(加圧ロール):径30mmの鋼製パイプにフッ素系樹脂を被覆したもの(中間転写ベルトに対する押し当て力:線圧3kgf/cm)
・刺激供給装置:メタルハライドランプ(ランプ最大出力1.5kW)
・記録媒体:アート紙(OK金藤)、普通紙(FX−P紙(富士ゼロックス社製)の2種
【0202】
また、硬化性溶液、各色のインクは、以下のように作製したものを用いた。
【0203】
−硬化性溶液1−
・ポリウレタンアクリレート(硬化性材料) 25質量部
・アクリロイルモルホリン(硬化性材料) 40質量部
・2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン
(光重合開始剤) 2質量部
・ポリノルボルネン(吸油材料) 30質量部
【0204】
上記組成に界面活性剤としてソルビタントリオレエート0.3質量部を加えて、ロールミルにて混合し、粘度が約1500mPa・sの「硬化性溶液1」を得た。「硬化性溶液1」における吸油材料の吸液量を表1に示す。
【0205】
−ブラックインク1−
・Bk顔料分散液(カーボンブラックにソルスパース28000(noveon社製:分散剤)を加え、アイソパーL(エクソンモービル社製)に分散)(顔料濃度20wt.%) 20質量部
・アイソパーE(エクソンモービル社製)(非極性溶媒) 60質量部
・オレイン酸ブチル 10質量部
【0206】
上記組成を混合し、さらにアイソパーE及びオレイン酸ブチルを加えて、粘度を7.8mPa・sになるように調整し、「ブラックインク1」とした。
【0207】
−シアンインク1−
・Cyan顔料分散液(フタロシアニン顔料にソルスパース55000(noveon社製:分散剤)を加え、アイソパーG(エクソンモービル社製)に分散)(顔料濃度 15wt.%) 30質量部
・アイソパーL(エクソンモービル社製)(非極性溶媒) 55質量部
・大豆油エチル 10質量部
【0208】
上記組成を混合し、さらにアイソパーLおよび大豆油エチルを加えて、粘度を6.7mPa・sに調整し、「シアンインク1」とした。
【0209】
−マゼンタインク1−
Magenta顔料分散液(キナクリドン顔料にソルスパース37500(noveon社製:分散剤)を加え、アイソパーM(エクソンモービル社製)に分散)(顔料濃度 18wt.%) 25質量部
・アイソパーG(エクソンモービル社製)(非極性溶媒) 45質量部
・オレイン酸エチル 20質量部
・オレイルアルコール 5質量部
【0210】
上記組成を混合し、さらにアイソパーGおよびオレイン酸エチルを加えて、粘度を5.6mPa・sに調整し、「マゼンタインク1」とした。
【0211】
−イエローインク1−
・Yellow顔料分散液(Pigment Yellow 74にDisperbyk−101(ビックケミー社製:分散剤)を加え、アイソパーE(エクソンモービル社製)に分散)(顔料濃度 12wt.%) 25質量部
・アイソパーM(エクソンモービル社製)(非極性溶媒) 55質量部
・ステアリン酸メチル 15質量部
【0212】
上記組成を混合し、さらにアイソパーMおよびステアリン酸メチルを加えて、粘度5.9mPa・sに調整し、「イエローインク1」とした。
【0213】
「硬化性溶液1」をロールコーターにより、フッ素コートされた樹脂ベルト上に膜厚15μmの「被硬化層」を形成した後、上記4種のインクをそれぞれピエゾヘッド(解像度600dpi)にて「被硬化層」上に印字した。その後、樹脂ベルトとアート紙(OK金藤)及び普通紙(FX−P紙富士ゼロックス社製)を密着させ「被硬化層」をアート紙上へ転写するのと同時に、出力1.5kWのメタルハライドランプでUV照射することにより硬化を行った。
【0214】
(比較例1)
実施例1と同様の各インクを用い、各記録ヘッドにより直接アート紙(OK金藤)及び普通紙(FX−P紙富士ゼロックス社製)上に吐出して画像を形成し、転写工程及びUV照射工程は行わなかった。
【0215】
(比較例2)
硬化性材料を含む硬化性溶液を中間転写ドラムへ供給せず、インクを直接中間転写ドラム上に吐出して画像を形成した後、アート紙(OK金藤)及び普通紙(FX−P紙富士ゼロックス社製)上に転写を行い、UV照射工程を行わなかった以外は、実施例1と同様に印字を行った。
【0216】
(比較例3)
実施例1における、「硬化性溶液1」中のポリノルボルネンを除いた組成を用いて「硬化性溶液A」とした。「硬化性溶液1」の代わりに「硬化性溶液A」を用いた以外は、実施例1と同様にして印字を行った。
【0217】
(実施例2)
−硬化性溶液2−
・ポリエステルアクリレート(硬化性材料) 20質量部
・N,N−ジメチルアクリルアミド(硬化性材料) 40質量部
・2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(光重合開始剤) 1.5質量部
・デヒドロアビエチン酸カルシウム(吸油材料) 40質量部
【0218】
上記組成に界面活性剤としてSolsperse32000(LUBRIZOL製)0.4質量部を加えて、ボールミルにて混合し、粘度が約3400mPa・sの「硬化性溶液2」を得た。「硬化性溶液2」における吸油材料の吸液量を表1に示す。
【0219】
「硬化性溶液1」の代わりに「硬化性溶液2」を用い、「被硬化層」の層厚を10μmとした以外は、実施例1と同様にして印字を行った。
【0220】
(実施例3)
−硬化性溶液3−
・エポキシアクリレート(硬化性材料) 40質量部
・N-ヒドロキシエチルアクリルアミド(硬化性材料) 35質量部
・イルガキュア754(光重合開始剤) 0.5質量部
・スチレン−ブタジエン共重合体(吸油材料) 25質量部
【0221】
上記組成に界面活性剤としてSolsperse39000(Lubrizol製)0.5質量部を加えて、ボールミルにて混合し、粘度が4000mPa・sの「硬化性溶液3」を得た。「硬化性溶液3」における吸油材料の吸液量を表1に示す。
【0222】
「硬化性溶液1」の代わりに「硬化性溶液3」を用い、「被硬化層」の層厚を8μmとした以外は、実施例1と同様にして印字を行った。
【0223】
(実施例4)
「硬化性溶液1」におけるポリノルボルネンの代わりに、吸油材料としてベンジリデンソルビトールを用いた以外は、「硬化性溶液1」と同じ組成で同様に調製したものを「硬化性溶液4」とした。インクも実施例1と同様のインクを用い、実施例1と同様の評価を行った。
【0224】
(比較例4)
−硬化性溶液B−
実施例1における「硬化性溶液1」中のポリノルボルネンの代わりに、「吸水材料」であるポリアクリル酸ナトリウムを用いた以外は、「硬化性溶液1」と同様にして「硬化性溶液B」を調整した。
【0225】
「硬化性溶液1」の代わりに「硬化性溶液B」を用いた以外は、実施例1と同様にして印字を行った。
【0226】
【表1】

【0227】
実施例1から実施例4まで、及び比較例1から比較例4までの評価は、以下のようにして行った。
【0228】
−乾燥性の評価−
印字を行った後の乾燥速度を測定した。具体的には、印字画像の上からコート(ハイグレードGCAA0002 富士ゼロックス社製)紙を重ね、更に上から100g/cmの荷重をかけて、重ねた紙にインクが転写されなくなるまでの時間を測定した。評価基準は以下の通りであり、G1又はG2であれば実用上問題ない。その結果を表2に示す。
G1:印字後1秒未満
G2:印字後1秒以上2秒未満
G3:印字後2秒以上5秒未満
G4:印字後5秒以上
【0229】
−滲みの評価−
得られた印字物の文字部について、目視により評価を行った。評価基準は以下の通りであり、G1又はG2であれば実用上問題ない。その結果を表2に示す。
G1:文字の滲みは認められなかった。
G2:文字の滲みが若干認められたが実用上問題ない。
G3:文字の滲みが著しかった。
【0230】
−定着性の評価−
印字1分後に画像部を指で擦り、指の汚れを判断し、定着性を判別した。評価基準は以下の通りであり、G1又はG2であれば実用上問題ない。その結果を表2に示す。
G1:汚れがない
G2:わずかに汚れがある
G3:汚れがある。
【0231】
−耐光性の評価−
印字を終了して24時間後にキセノンランプを12時間照射し、照射前後の退色度合いを官能評価した。評価基準は以下の通りであり、G1又はG2であれば実用上問題ない。その結果を表2に示す。
G1:まったく退色しなかった。
G2:僅かに退色した
G3:退色が著しかった。
【0232】
−耐ガス性の評価−
100%カバレッジパターンを印字させた印字物を作成し、その印字物をオゾン濃度1.0ppmの条件下で24時間暴露させた。暴露後の印字物の光学濃度を、X−rite 404にて測定した。評価基準は以下の通りであり、G1又はG2であれば実用上問題ない。その結果を表2に示す。
G1:初期光学濃度に対する暴露後の光学濃度の比率が90%以上
G2:初期光学濃度に対する暴露後の光学濃度の比率が80%以上
G3:初期光学濃度に対する暴露後の光学濃度の比率が80%未満
【0233】
【表2】

【0234】
以上の実施例及び比較例の結果から、実施例は比較例に比べ、非浸透媒体及び浸透媒体を問わず多様な記録媒体に対して画像形成がなされ、かつ、インクの拡散が抑制され高精細な画像が形成されることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0235】
【図1】第1実施形態に係る記録装置を示す構成図である。
【図2】第2実施形態に係る記録装置を示す構成図である。
【図3】第3実施形態に係る記録装置を示す構成図である。
【図4】第4実施形態に係る記録装置を示す構成図である。
【符号の説明】
【0236】
10 中間転写ドラム
12 溶液供給装置
12A 硬化性溶液
12B 被硬化層
12C 筐体
12D 供給ローラ
12E ブレード
13 搬送ベルト
13A 支持ロール
14 インクジェット記録ヘッド
16 転写装置
16A 加圧ロール
16B 加圧ロール
18 刺激供給装置
20 クリーニング装置
22 中間転写ベルト
22A 支持ロール
24 第2の刺激供給装置
101 記録装置
102 記録装置
103 記録装置
104 記録装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの刺激により硬化する硬化性材料と、吸油材料と、を含有する画像記録用組成物。
【請求項2】
前記吸油材料は、前記硬化性材料に対する非吸液性を有する請求項1に記載の画像記録用組成物。
【請求項3】
前記吸油材料は、ロジン類、スチレンーブタジエン共重合体、及びポリノルボルネンから選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載の画像記録用組成物。
【請求項4】
前記硬化性材料は、紫外線の照射により硬化する硬化性材料である請求項1から3までのいずれか1項に記載の画像記録用組成物。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の画像記録用組成物と、油性溶媒を含む油性インクと、を含む画像記録用インクセット。
【請求項6】
前記吸油材料は、前記油性溶媒に対する吸液性を有する請求項5に記載の画像記録用インクセット。
【請求項7】
前記画像記録用組成物が請求項3に記載の画像記録用組成物であり、かつ、前記油性溶媒が非極性溶媒である請求項5又は6に記載の画像記録用インクセット。
【請求項8】
中間転写体と、
請求項1から4までのいずれか1項に記載の画像記録用組成物を前記中間転写体上に供給する供給手段と、
前記中間転写体上に供給された前記画像記録用組成物により形成された被硬化層に、油性溶媒を含む油性インクを吐出する吐出手段と、
前記油性インクが吐出された前記被硬化層を前記中間転写体から記録媒体に転写する転写手段と、
前記被硬化層を硬化させる刺激を供給する刺激供給手段と、
を有する記録装置。
【請求項9】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の画像記録用組成物を記録媒体上に供給する供給手段と、
前記記録媒体上に供給された前記画像記録用組成物により形成された被硬化層に、油性溶媒を含む油性インクを吐出する吐出手段と、
前記被硬化層を硬化させる刺激を供給する刺激供給手段と、
を有する記録装置。
【請求項10】
前記画像記録用組成物に含有される前記吸油材料は、前記油性溶媒に対する吸液性を有する請求項8又は9に記載の記録装置。
【請求項11】
前記画像記録用組成物が請求項3に記載の画像記録用組成物であり、かつ、前記油性溶媒が非極性溶媒である請求項8から10までのいずれか1項に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−67967(P2009−67967A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240835(P2007−240835)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】