説明

画像記録装置

【課題】トレイを搬送することによるローラの変形を防止する手段を提供する。
【解決手段】複合機10は、記録用紙が搬送される搬送路65と、搬送路65を通過可能な平板形状のメディアトレイ71と、排出ローラ62及び拍車63と、排出ローラ62と同じ回転軸61に設けられた排出ローラ62より小径のトレイ用ローラ66,67と、記録部24と、を具備する。メディアトレイ71は、下面77におけるトレイ用ローラ66,67に対応する位置に、排出ローラ62の半径R1とトレイ用ローラ66,67の半径R2との差より大きい寸法D1だけ下面77から突出する凸部78,79が、長手方向106に沿って延出されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレイをローラ対で挟持して搬送し、当該トレイに支持された被記録媒体に画像記録を行う画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薄板形状のトレイをローラ対で挟持して搬送する装置として、例えばプリンタ等の画像記録装置がある。画像記録装置においては、CDやDVD等の厚みのある被記録媒体が専用のトレイにセットされる。当該トレイが画像記録装置内を搬送され、画像記録装置に設けられた画像記録部において被記録媒体に画像が記録される。
【0003】
被記録媒体がセットされたトレイは、画像記録装置内に設けられた搬送ローラ及び従動ローラで構成されるローラ対に当接するように、ユーザによって挿入される。トレイの挿入後、搬送ローラが駆動され、トレイはローラ対によって挟持され画像記録装置内を搬送される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−136802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トレイを挟持するローラ対が、記録用紙などを挟持して搬送するローラ対として兼用される場合、従動ローラは、記録用紙などの厚みとトレイの厚みとに対応できるように、駆動ローラに対して接離する方向へ移動可能に設けられている。また、従動ローラに用紙搬送用の拍車が使用されている場合は、トレイが搬送されるときにはトレイに接触しないように拍車がトレイの搬送経路から退避され、専らトレイを搬送する目的のみに設けられた従動ローラが、拍車に代わってトレイを挟持して搬送する機構もある。また、ローラ対のうち回転駆動される駆動ローラには、ゴムなどの弾性体であって記録用紙に対する摩擦係数が大きい素材が採用される。また、従動ローラは、ローラ対によって搬送に適した力で記録紙及びトレイを挟持できるように駆動ローラに対してバネなどにより付勢されている。記録紙及びトレイ共に搬送に適した力で挟持するために、このバネなどによる付勢力が、記録紙のみを搬送する装置に比べて強く設定される傾向にある。
【0006】
ゴムなどで構成された駆動ローラにより記録用紙やトレイが搬送されると、従動ローラにより付勢された記録用紙やトレイが駆動ローラに当接して、ローラを構成するゴムなどが変形する。このような駆動ローラの変形は、記録用紙などと比較して剛性の高いトレイを搬送するときの方が、記録用紙を搬送するときより大きくなり、その結果、トレイの搬送精度に悪影響を与えるおそれがある。また、変形が繰り返されることにより、ゴムなどの弾性が劣化して、駆動ローラが恒久的に変形した状態となるおそれもある。
【0007】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、トレイを搬送することによるローラの変形を防止する手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る画像記録装置は、シート状の第1被記録媒体が搬送される搬送路と、第1面側において第2被記録媒体が載置された状態で上記搬送路を通過可能な平板形状のトレイと、上記搬送路において上記トレイにおける第1面と反対側の第2面側に配置されており、駆動源から駆動伝達されて回転する第1ローラと、上記搬送路において上記トレイにおける第1面側に配置されており、上記第1ローラと接離する方向へ移動可能であって、上記第1ローラに接触する向きに付勢された第2ローラと、上記第1ローラと同軸に配置されており、上記第1ローラより小径の第3ローラと、上記搬送路において、上記第1被記録媒体又は上記トレイに載置された第2被記録媒体に画像記録を行う記録部と、を具備する。上記トレイは、第2面における上記第3ローラに対応する位置に、上記第1ローラの半径と上記第3ローラの半径との差より大きく第2面から突出する凸部が、当該トレイの搬送方向に沿って延出されたものである。
【0009】
第1被記録媒体は、第1ローラと第2ローラとに挟持されて搬送路を搬送される。この第1被記録媒体は、搬送路において、画像記録部により画像記録が行われる。また、トレイは、第2被記録媒体が載置された状態で第3ローラと接触した状態で搬送される。具体的には、トレイの凸部は、第1ローラの半径と第3ローラの半径との差より大きく第2面から突出しており、第3ローラに対応する位置において搬送方向に沿って延出されているので、第1ローラと第2ローラとの間にトレイが進入すると、トレイの第2面側において凸部が第3ローラと接触し、第2面は第1ローラとは接触しない。
【0010】
上記画像記録装置は、上記搬送路において上記トレイにおける第1面側に配置されており、駆動源から駆動伝達されて回転する第4ローラと、上記搬送路において上記トレイにおける第2面側に配置されており、上記第4ローラと接離する方向へ移動可能であって、上記第4ローラに接触する向きに付勢された第5ローラと、を更に有し、上記第5ローラは、軸線方向に複数が離間されて並列されたものであって、上記トレイの凸部が上記第3ローラに当接する状態において、当該凸部と当接しない位置に配置されたものである。
【0011】
これにより、トレイが第4ローラと第5ローラとの間に進入しても、凸部が第5ローラと接触することがない。したがって、複数の各第5ローラと第4ローラとの距離が一定となり、第4ローラ及び第5ローラによりトレイが安定して挟持される。
【0012】
上記第4ローラ及び上記第5ローラは、上記搬送路の搬送方向における上記記録部に対して、上記第1ローラ及び上記第2ローラとは反対側に配置されており、上記記録部は、上記第4ローラ及び上記第5ローラが上記トレイを間欠的に搬送したときに、当該トレイに載置された第2被記録媒体に画像記録を行うものであり、上記第3ローラは、駆動源から駆動伝達されないものであってもよい。
【0013】
トレイが第4ローラ及び第5ローラのみによって搬送され、第3ローラはトレイの搬送精度に関与しないので、トレイを精度よく搬送することができ、第2被記録媒体への画像記録の高精度化が図られる。
【0014】
上記第3ローラは、上記第1ローラと一体に形成されたものであってもよい。
【0015】
上記第3ローラは、上記第1ローラの駆動軸と一体に形成されたものであってもよい。
【0016】
上記トレイは、第2被記録媒体が載置される載置部を有しており、上記凸部は、搬送方向と直交する幅方向において上記載置部より外側であって、上記第1面と反対側の第2面に設けられたものであってもよい。
【0017】
凸部が載置部より外側に設けられているので、載置部に第2面側が第3ローラと当接しない。これにより、載置部が湾曲して第2被記録媒体が載置部から浮き上がることが防止されるので、第2被記録媒体に対するヘッドギャップが一定に維持される。また、第2被記録媒体がローラや記録部と当接するおそれがない。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、第1被記録媒体は、第1ローラと第2ローラとに挟持されて搬送路を搬送され、トレイは、第3ローラと接触した状態であって第1ローラとは接触しない状態で搬送される。これにより、トレイが第1ローラを変形させることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の実施形態の一例である複合機10を示す斜視図である。
【図2】図2は、プリンタ部11の内部構造を模式的に示す縦断面図である。
【図3】図3は、メディアトレイ71の上面74側を示す斜視図である。
【図4】図4は、メディアトレイ71の下面77側を示す斜視図である。
【図5】図5は、搬送ローラ対58、排出ローラ対59、トレイ用ローラ66,67及びメディアトレイ71を示す底面図である。
【図6】図6は、メディアトレイ71の凸部78がトレイ用ローラ66に支持された状態を示す断面図である。
【図7】図7は、第1変形例における排出ローラ62,68,69及びメディアトレイ71を示す底面図である。
【図8】図8は、第2変形例における排出ローラ62及びメディアトレイ71を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、適宜図面が参照されながら本発明の実施形態が説明される。なお、以下に説明される実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態が適宜変更されてもよいことは言うまでもない。
【0021】
[複合機10]
図1に示されるように、複合機10は、下部に配設されたプリンタ部11と、その上部に配設されたスキャナ部12と、を一体的に備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device)である。複合機10は、プリント機能、スキャン機能、コピー機能及びファクシミリ機能などを有する。なお、本実施形態においては、図1において、矢印101で示される方向が複合機10の幅方向(左右方向)であり、矢印102で示される方向が複合機10の高さ方向(上下方向)であり、矢印103で示される方向が複合機10の奥行き方向(前後方向)である。なお、本発明を実現するうえで、スキャン機能やファクシミリ機能などは任意の機能であり、例えば、本発明に係る画像記録装置が、プリント機能のみを有するプリンタとして実現されてもよい。
【0022】
複合機10の上面の前方側であって、スキャナ部12の正面側の上面には、プリンタ部11やスキャナ部12を操作するための操作パネル13が設けられている。操作パネル13は、各種操作ボタンや液晶ディスプレイ14から構成されている。複合機10は、操作パネル13からの入力に基づいて、複合機10の動作を統括する制御部(不図示)の指示に基づいて動作する。複合機10がコンピュータに接続されている場合には、複合機10は、コンピュータからプリンタドライバ又はスキャナドライバ等を介して送信される指示に基づいても動作する。
【0023】
スキャナ部12は、所謂フラットベッドスキャナとして構成されている。複合機10の天板としての原稿カバー15がスキャナ部12の上部に開閉自在に設けられている。原稿カバー15の下側に、図示されていないプラテンガラス及びイメージセンサが設けられている。プラテンガラスに載置された原稿の画像がイメージセンサによって読み取られる。なお、本発明が実現されるうえでスキャナ部12は直接に関係しないので、ここでは、スキャナ部12の詳細な説明が省略される。
【0024】
図2に示されるように、プリンタ部11は、記録用紙(第1被記録媒体の一例)を給送する給紙部22と、記録用紙に画像を記録するインクジェット記録方式の記録部24などを備えている。プリンタ部11は、外部機器から受信した印刷データなどに基づいて、記録用紙に画像を記録する。また、複合機10は、記録用紙よりも厚みがあるCD−ROMやDVD−ROMなどの記録メディア(第2被記録媒体の一例)の盤面上に記録部24によって画像を記録する機能を有する。
【0025】
複合機10は、搬送路65を有する。搬送路65は、給紙トレイ20の背面側から上方且つ複合機10の正面側へ曲がって、複合機10の背面側から正面側に延出され、記録部24の下側を通過して排紙トレイ21へ通じている。記録用紙は、搬送路65を搬送向き104へ搬送される。搬送路65は、主として、所定間隔を隔てて互いに対向する外側ガイド部材18及び内側ガイド部材19によって区画されている。
【0026】
給紙トレイ20の上側には、給紙部22が設けられている。給紙部22は、給紙ローラ25、給紙アーム26及び駆動伝達機構27を備えている。給紙ローラ25は、給紙トレイ20に接離可能に回動する給紙アーム26の先端に軸支されている。給紙ローラ25は、複数のギアが噛合されてなる駆動伝達機構27によって、給紙用モータ(不図示)の駆動力が伝達されて回転する。給紙ローラ25は、給紙トレイ20上に積載された記録用紙のうち、最上位置にある記録用紙を搬送路65へ供給する。
【0027】
記録部24は、複合機10の背面側から正面側に延出される搬送路65の上側に設けられている。記録部24は、記録ヘッド38を搭載して主走査方向(図2における紙面に垂直な方向;幅方向101)へ往復移動するキャリッジ40を備えている。記録ヘッド38には、インクカートリッジ(不図示)からインクが供給される。記録ヘッド38は、ノズル39からインクを微小なインク滴として吐出する。プラテン42は、記録用紙を支持する。キャリッジ40が主走査方向へ往復動することで、記録ヘッド38がプラテン42に支持された記録用紙に対して走査される。記録ヘッド38が記録用紙に対して走査される間に、ノズル39からインク滴が選択的に吐出され、そのインク滴が記録用紙に着弾することによって、記録用紙に所望の画像が記録される。
【0028】
[搬送ローラ対58及び排出ローラ対59]
図2に示されるように、記録部24より搬送向き104の上流側には、搬送ローラ60(第4ローラの一例)及びピンチローラ141,142,143,144(第5ローラの一例)が配置されている。搬送ローラ60は、搬送路65の上側に配置されている。ピンチローラ141,142,143,144は搬送路65の下側に配置されている。搬送ローラ60とピンチローラ141,142,143,144とは、ほぼ高さ方向102に沿って対向配置されている。
【0029】
各図には現れていないが、搬送ローラ60は、搬送路65の左右両端部に設けられたプリンタ部11のフレーム(不図示)に回転可能に支持されている。図5に示されるように、搬送ローラ60は、幅方向101を軸線方向とする1本の細長円柱形状のローラである。搬送ローラ60の一方端にはギア(不図示)が設けられている。このギアへ、不図示の搬送モータから駆動伝達されることにより、ギアの回転に伴って搬送ローラ60が回転する。搬送ローラ60は、搬送モータの回転方向に従って、正逆の双方向へ回転可能である。
【0030】
図5に示されるように、ピンチローラ141,142,143,144は、いずれもが幅方向101を軸線方向として配置されている。ピンチローラ141,142,143,144は、幅方向101に対して互いに離間されて並べられている。各ピンチローラ141〜144は、軸線方向の左右両端部が回転可能に、かつ高さ方向102へ移動可能に支持されている。したがって、各ピンチローラ141〜144は、搬送ローラ60に接離する方向へ移動可能である。また、各ピンチローラ141〜144は、不図示のコイルバネによってそれぞれが搬送ローラ60へ向かって付勢されている。各ピンチローラ141〜144は、後述されるメディアトレイ71の凸部78,79と当接しない位置に配置されている。
【0031】
図2に示されるように、記録部24より搬送向き104の下流側には、排出ローラ62(第1ローラの一例)及び拍車63(第2ローラの一例)が配置されている。排出ローラ62は、搬送路65の下側に配置されている。図5に示されるように、排出ローラ62は、回転軸61に、その軸方向に複数が所定の間隔で配置されている。各排出ローラ62は、同一径のゴム製のローラである。回転軸61の一方端にはギア(不図示)が設けられている。このギアへ、不図示の搬送モータから駆動伝達されることにより、ギアの回転に伴って排出ローラ62が回転する。排出ローラ62の回転は、搬送ローラ60の回転と同期されている。
【0032】
拍車63は搬送路65の上側に配置されている。排出ローラ62と拍車63とは、ほぼ高さ方向102に沿って対向配置されている。したがって、複数の各排出ローラ62に対して、複数の拍車63がそれぞれ対向配置されている。図には現れていないが、拍車63は、排出ローラ62に対して接離する方向へ移動可能に支持されており、コイルバネなどによって排出ローラ62側へ付勢されている。排出ローラ対59は、記録用紙を狭持して排紙トレイ21側へ搬送する。
【0033】
なお、各図には示されていないが、後述されるメディアトレイ71の挿入に際して、プラテン42、排出ローラ62、ピンチローラ141〜144が、メディアトレイ71の厚みに応じて下方へ移動するように複合機10が構成されている。
【0034】
図5に示されるように、回転軸61には、排出ローラ62と共にトレイ用ローラ66,67が設けられている。トレイ用ローラ66,67は、排出ローラ62より小径の樹脂製のローラである。トレイ用ローラ66,67の配置は、後述されるメディアトレイ71の凸部78,79に対応している。
【0035】
[メディアトレイ71]
以下、メディアトレイ71の構成が説明される。複合機10は、記録メディアの盤面上に画像を記録する機能を有する。記録メディアの盤面上に画像が記録される場合、記録メディアはメディアトレイ71に載置される。メディアトレイ71はトレイガイド17に載置されつつ、開口16から搬送路65に沿って、搬送向き104と逆向きである挿入向き105へ挿入される。
【0036】
図3,4に示されるように、メディアトレイ71は、概ね平板形状の外形である。メディアトレイ71は、挿入向き105、つまり複合機10に挿入される姿勢において奥行き方向103に沿った方向が長手方向106(長さ方向)であり、挿入向き105と直交する方向、つまり幅方向101に沿った方向が短手方向107(幅方向)である。短手方向107は、メディアトレイ71が複合機10に挿入された姿勢において、搬送ローラ60の軸線方向と合致する。
【0037】
メディアトレイ71は、短手方向107の中央側に薄肉部72を有し、短手方向107の両端部に厚肉部73をそれぞれ有する。薄肉部72と厚肉部73とは、長手方向106及び短手方向107と直交する厚み方向108の肉厚が異なり、薄肉部72は、厚肉部73より肉厚が薄い。また、薄肉部72及び厚肉部73は、後述される載置部75などが形成されている以外の箇所において、各々が一定の厚みである。
【0038】
薄肉部72は、メディアトレイ71の短手方向107の中央側において、長手方向106に渡って拡がっている。薄肉部72は、図3において上側を向いている上面74(第1面)を有する。薄肉部72には、上面74から凹む載置部75が形成されている。載置部75は、記録メディアの形状より若干大きな円形状の凹みである。載置部75の円形状の中心には、嵌合部76が設けられている。嵌合部76には、記録メディアの中心に形成された孔が嵌め込まれる。これにより、載置部75に記録メディアが位置決めされて支持される。載置部75の深さは、各種記録メディアの厚みを考慮して設定されており、載置部75に支持された記録メディアの上面が、メディアトレイ71の厚肉部73より上側に突出することはない。
【0039】
厚肉部73は、メディアトレイ71の短手方向107の両端側において、長手方向106に渡ってそれぞれ延出されている。各厚肉部73は、薄肉部72の上面74より上側へ突出している。後述されるように、メディアトレイ71が複合機10に挿入されると、搬送ローラ対58は厚肉部73を挟持する。
【0040】
図4に示されるように、メディアトレイ71の下面77(第2面)側には、下面77から突出する2つの凸部78,79が設けられている。凸部78,79は、それぞれが長手方向106に沿って延出されている。凸部78,79は、短手方向107において薄肉部72の両端付近に配置されている。各凸部78,79は、上面74に形成されている載置部75に対応する位置より短手方向107の外側に位置する。また、短手方向107における各凸部78,79の配置は、メディアトレイ71が複合機10に挿入されたときに、前述されたトレイ用ローラ66,67にそれぞれが対応する位置であって、搬送ローラ対58のピンチローラ141〜144のいずれにも当接しない位置である。
【0041】
凸部78,79が下面77から突出する寸法D1は、排出ローラ62の半径R1とトレイ用ローラ66,67の半径R2との差より大きい(寸法D1>半径R1−半径R2)。したがって、図6に示されるように、凸部78,79がトレイ用ローラ66,67と当接する状態において、排出ローラ62はメディアトレイ71の下面77と当接しない。
【0042】
[記録用紙への画像記録]
以下、複合機10により記録用紙に画像が記録される手順が説明される。図2に示されるように、ユーザによって、複合機10の給紙トレイ20に記録用紙が装填される。記録用紙への画像記録指示が操作パネル13へ入力されると、又は外部機器からの指示を受け付けると、複合機10は、給紙ローラ25を回転させる。給紙ローラ25が回転駆動されると、給紙トレイ20に装填された記録用紙のうち、最上位置の記録用紙が搬送路65へ給送される。
【0043】
給送された記録用紙の先端が搬送ローラ対58へ到達すると、複合機10は、記録用紙を搬送向き104へ搬送する回転方向に搬送ローラ60及び排出ローラ62を回転する。これにより、記録用紙は搬送ローラ対58に挟持された状態でプラテン42上に搬送される。記録用紙が記録ヘッド38の直下まで搬送されると、搬送ローラ60及び排出ローラ62は、回転が一時停止される。搬送ローラ60及び排出ローラ62の回転が一時停止されている間に、記録ヘッド38を搭載したキャリッジ40が幅方向101へ移動される。つまり、記録ヘッド38が記録用紙に対して走査される。この走査の間に、記録ヘッド38から微小なインク滴が選択的に記録用紙に吐出される。吐出されたインク滴が記録用紙に着弾する。キャリッジ40の移動が終了すると、所定の搬送距離分だけ、搬送ローラ60及び排出ローラ62が回転されて再び停止される。つまり、搬送ローラ60及び排出ローラ62は一時停止を介して間欠して回転駆動される。そして、搬送ローラ60が一時停止されている間に、前述と同様にしてキャリッジが移動され、その移動の間に記録ヘッド38からインク滴が選択的に吐出されて記録用紙に着弾する。これが繰り返されることにより、記録用紙に所望の画像が記録される。
【0044】
搬送ローラ60及び排出ローラ62が間欠して駆動されている間に、記録用紙の先端は排出ローラ対59へ到達する。画像記録されている記録用紙の先端が排出ローラ対59へ到達すると、記録用紙は排出ローラ対59にも挟持された状態となる。排出ローラ62においては、搬送路65において記録ヘッド38と同じ側、つまり上側に拍車63が配置されているので、記録用紙において画像が記録された面には拍車63の先端のみが点状に接触する。また、記録用紙において画像が記録された面と反対側の面には、排出ローラ62のみが接触し、トレイ用ローラ66,67は接触しない。つまり、記録用紙は、排出ローラ62及び拍車63に挟持された状態で搬送される。記録用紙に所望の画像が記録されると、搬送ローラ60及び排出ローラ62が連続して回転されて、記録用紙が排紙トレイ21へ排出される。
【0045】
[記録メディアへの画像記録]
以下、複合機10にメディアトレイ71が挿入され、メディアトレイ71に載置された記録メディアに画像が記録される手順が説明される。図1に示されるように、ユーザによって、複合機10の正面側の開口16においてトレイガイド17が引き出される。これに伴って、プラテン42、排出ローラ62、ピンチローラ141〜144が、メディアトレイ71の厚みに応じて下方へ移動する。したがって、排出ローラ62と拍車63との間には、メディアトレイ71を挿入するに十分な空間が生じる。ユーザは、記録メディアをメディアトレイ71の載置部75に載置して、そのメディアトレイ71をトレイガイド17に載せながら挿入向き105へ挿入する。開口16から搬送路65へ挿入されたメディアトレイ71は、その挿入側の先端が、排出ローラ対59を通過して搬送ローラ60へ到達する。これにより、メディアトレイ71の挿入が完了する。
【0046】
図5,6に示されるように、複合機10に挿入されたメディアトレイ71は、その下面77側において、凸部78,79がトレイ用ローラ66,67にそれぞれ接触する。また、メディアトレイ71の凸部78,79は、排出ローラ62の半径R1とトレイ用ローラ66,67の半径R2との差より大きい寸法D1だけ下面77から突出しているので、メディアトレイ71の下面77側において凸部78,79がトレイ用ローラ66,67と接触すると、下面77は排出ローラ62とは接触しない。また、凸部78,79は載置部75より外側に設けられているので、載置部75と反対側となる下面77において載置部75の裏側にトレイ用ローラ66,67が当接しない。
【0047】
記録メディアへの画像記録指示が操作パネル13へ入力されると、又は外部機器からの指示を受け付けると、複合機10は、搬送ローラ60を、メディアトレイ71が挿入向き105へ更に搬送されるように回転させる。つまり、搬送ローラ60は、搬送向き104への搬送とは逆方向に回転駆動される。なお、トレイ用ローラ66,67の回転軸61には駆動伝達がされないので、トレイ用ローラ66,67は、コロとして回転自在である。
【0048】
搬送ローラ60が回転駆動されると、メディアトレイ71の先端が搬送ローラ対58の間に挟み込まれる。図5に示されるように、ピンチローラ141〜144は、メディアトレイ71の凸部78,79と当接しない位置に配置されているので、メディアトレイ71が搬送ローラ対58の間に進入しても、凸部78,79がピンチローラ141〜144と接触することがない。
【0049】
メディアトレイ71の先端が搬送ローラ対58へ進入すると、各ピンチローラ141〜144は、コイルバネの付勢力に抗して、下側へ、つまり搬送ローラ60から離れる向きへ移動する。そして、搬送ローラ対58は、メディアトレイ71を挟持した状態で、搬送ローラ60の回転により、メディアトレイ71を所定の位置まで、挿入向き105へ搬送する。この所定の位置は、メディアトレイ71の載置部75が、記録ヘッド38の下方より装置背面側となる位置である。これにより、載置部75に載置された記録メディアは、記録ヘッド38より装置背面側まで挿入される。
【0050】
搬送ローラ対58によってメディアトレイ71が所定の位置まで挿入向き105へ挿入されると、搬送ローラ60の回転方向が逆転から正転に切り換えられる。これにより、メディアトレイ71が搬送向き104に搬送される。メディアトレイ71に載置された記録メディアが記録ヘッド38の直下まで搬送されると、搬送ローラ60は、回転が一時停止される。搬送ローラ60の回転が一時停止されている間に、記録ヘッド38を搭載したキャリッジ40が幅方向101へ移動される。つまり、記録ヘッド38が記録メディアに対して走査される。この走査の間に、記録ヘッド38から微小なインク滴が選択的に記録メディアに吐出される。吐出されたインク滴が記録メディアの盤面に着弾する。キャリッジ40の移動が終了すると、所定の搬送距離分だけ、搬送ローラ60が回転されて再び停止される。つまり、搬送ローラ60は一時停止を介して間欠して回転駆動される。そして、搬送ローラ60が一時停止されている間に、前述と同様にしてキャリッジが移動され、その移動の間に記録ヘッド38からインク滴が選択的に吐出されて記録メディアの盤面に着弾する。これが繰り返されることにより、記録メディアに所望の画像が記録される。記録メディアに所望の画像が記録されると、搬送ローラ60が連続して回転されて、メディアトレイ71が装置正面側に突出するようにして排出される。
【0051】
[本実施形態の効果]
前述されたように、記録用紙は、排出ローラ62及び拍車63に挟持されて搬送路65を搬送され、メディアトレイ71は、トレイ用ローラ66,67と接触した状態であって排出ローラ62とは接触しない状態で搬送される。これにより、メディアトレイ71が排出ローラ62を変形させることが防止される。
【0052】
また、ピンチローラ141〜144は、メディアトレイ71の凸部78,79と当接しない位置に配置されているので、メディアトレイ71が搬送ローラ60とピンチローラ141〜144との間に進入して挟持されたときに、搬送ローラ60と複数の各ピンチローラ141〜144との距離が一定となり、搬送ローラ60及びピンチローラ141〜144によりメディアトレイ71が安定して挟持される。
【0053】
また、メディアトレイ71が搬送ローラ60及びピンチローラ141〜144のみによって搬送され、トレイ用ローラ66,67はメディアトレイ71の搬送精度に関与しないので、メディアトレイ71を精度よく搬送することができ、記録メディアへの画像記録の高精度化が図られる。
【0054】
また、メディアトレイ71の凸部78,79が載置部75より短手方向107の外側に設けられているので、載置部75の下面77側がトレイ用ローラ66,67と当接しない。これにより、載置部75が湾曲して記録メディアが載置部75から浮き上がることが防止されるので、記録メディアの盤面に対するヘッドギャップが一定に維持される。また、記録メディアが搬送ローラ60や記録ヘッド38と当接するおそれがない。
【0055】
なお、本実施形態においては、トレイ用ローラ66,67の回転軸61には駆動伝達がされず、トレイ用ローラ66,67がコロとして回転自在なものとしたが、トレイ用ローラ66,67が、搬送ローラ60と同期して回転駆動されてもよい。
【0056】
[第1変形例]
前述された実施形態においては、回転軸61に、トレイ用ローラ66,67が排出ローラ62とは別個独立して設けられているが、この第1変形例のように、トレイ用ローラが排出ローラと一体に形成されていてもよい。
【0057】
図7に示されるように、回転軸61には、排出ローラ62が複数設けられており、メディアトレイ71の凸部78,79に対応する位置の排出ローラ68,69は、他の排出ローラ62より軸方向の寸法が幅広に形成されている。この排出ローラ68,69は、ゴム製のローラである。排出ローラ68,69における軸方向の中央には、軸方向の外側より小径となった凹溝部56、57が形成されている。この凹溝部56,57が、トレイ用ローラを構成する。したがって、凹溝部56,57の軸方向の幅は、メディアトレイ71の凸部78,79より幅広である。また、凹溝部56,57の半径は、前述された実施形態のトレイ用ローラ66,67の半径R2と同じである。
【0058】
このように構成された排出ローラ62,68,69によって、記録用紙は、排出ローラ62、68,69及び拍車63に挟持されて搬送路65を搬送され、メディアトレイ71は、排出ローラ68,69の凹溝部56,57と接触した状態であって、排出ローラ68,69の凹溝部56,57以外のローラ面や排出ローラ62とは接触しない状態で搬送される。これにより、メディアトレイ71が排出ローラ62,68,69を変形させることが防止される。
【0059】
[第2変形例]
前述された実施形態においては、回転軸61に、トレイ用ローラ66,67が排出ローラ62とは別個独立して設けられているが、この第2変形例のように、トレイ用ローラが回転軸61として形成されていてもよい。
【0060】
図8に示されるように、回転軸61には、排出ローラ62が複数設けられており、メディアトレイ71の凸部78,79に対応する位置には排出ローラ62は設けられていない。つまり、凸部78,79に対応する位置の回転軸61が、トレイ用ローラを構成する。一方、メディアトレイ71の凸部78,79は、排出ローラ62の半径R1と回転軸61の半径R3の差より大きな寸法D2だけ下面77から突出している。
【0061】
このように構成された排出ローラ62によって、記録用紙は、排出ローラ62及び拍車63に挟持されて搬送路65を搬送され、メディアトレイ71は、回転軸61と接触した状態であって、排出ローラ62とは接触しない状態で搬送される。これにより、メディアトレイ71が排出ローラ62を変形させることが防止される。
【符号の説明】
【0062】
10・・・複合機(画像記録装置)
24・・・記録部
60・・・搬送ローラ(第4ローラ)
62・・・排出ローラ(第1ローラ)
63・・・拍車(第2ローラ)
65・・・搬送路
66,67・・・トレイ用ローラ(第3ローラ)
71・・・メディアトレイ
74・・・上面(第1面)
75・・・載置部
77・・・下面(第2面)
78,79・・・凸部
141〜144・・・ピンチローラ(第5ローラ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の第1被記録媒体が搬送される搬送路と、
第1面側において第2被記録媒体が載置された状態で上記搬送路を通過可能な平板形状のトレイと、
上記搬送路において上記トレイにおける第1面と反対側の第2面側に配置されており、駆動源から駆動伝達されて回転する第1ローラと、
上記搬送路において上記トレイにおける第1面側に配置されており、上記第1ローラと接離する方向へ移動可能であって、上記第1ローラに接触する向きに付勢された第2ローラと、
上記第1ローラと同軸に配置されており、上記第1ローラより小径の第3ローラと、
上記搬送路において、上記第1被記録媒体又は上記トレイに載置された第2被記録媒体に画像記録を行う記録部と、を具備してなり、
上記トレイは、第2面における上記第3ローラに対応する位置に、上記第1ローラの半径と上記第3ローラの半径との差より大きく第2面から突出する凸部が、当該トレイの搬送方向に沿って延出されたものである画像記録装置。
【請求項2】
上記搬送路において上記トレイにおける第1面側に配置されており、駆動源から駆動伝達されて回転する第4ローラと、
上記搬送路において上記トレイにおける第2面側に配置されており、上記第4ローラと接離する方向へ移動可能であって、上記第4ローラに接触する向きに付勢された第5ローラと、を更に有し、
上記第5ローラは、軸線方向に複数が離間されて並列されたものであって、上記トレイの凸部が上記第3ローラに当接する状態において、当該凸部と当接しない位置に配置されたものである請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
上記第4ローラ及び上記第5ローラは、上記搬送路の搬送方向における上記記録部に対して、上記第1ローラ及び上記第2ローラとは反対側に配置されており、
上記記録部は、上記第4ローラ及び上記第5ローラが上記トレイを間欠的に搬送したときに、当該トレイに載置された第2被記録媒体に画像記録を行うものであり、
上記第3ローラは、駆動源から駆動伝達されないものである請求項2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
上記第3ローラは、上記第1ローラと一体に形成されたものである請求項1又は2に記載の画像記録装置。
【請求項5】
上記第3ローラは、上記第1ローラの駆動軸と一体に形成されたものである請求項1又は2に記載の画像記録装置。
【請求項6】
上記トレイは、第2被記録媒体が載置される載置部を有しており、
上記凸部は、搬送方向と直交する幅方向において上記載置部より外側であって、上記第1面と反対側の第2面に設けられたものである請求項1から5のいずれかに記載の画像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−66406(P2012−66406A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211106(P2010−211106)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】