説明

画像読取り装置

【課題】画像読取り装置において、簡単な構成で、結像レンズに設けた赤外線カットフィルタの特性を補正して画質を改善すること。
【解決手段】主走査方向Yに延在する照明ユニット10から照射された光をガラス上の原稿で反射させ、該反射光を結像レンズを介して撮像素子で受光する画像読取り装置。照明ユニット10は、長尺状の導光体11と、導光体11の一端部に配置した光源(LED15)と、導光体11の下面に配置した光屈折部(プリズム12)及び反射部材(シート13)とを備えている。導光体11の一端部から入射した光は、導光体11内を主走査方向Yに導かれつつ、プリズム12及び反射シート13で反射されて原稿を照射する。反射シート13は、長波長側の光の反射率が導光体11の両端部から中央部にわたって徐々に低下するように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取り装置、特に、原稿画像からの反射光を光学的に読み取る画像読取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スキャナと称されている画像読取り装置は、主走査方向に延在する照明ユニットを含む読取り系及び原稿などの読取り対象物のいずれかを副走査方向に移動させ、原稿画像を2次元的に読み取っている。従来、この種の光源としては、蛍光灯が多く使用されていたが、近年では、省電力化のためにLEDへ置き換える動きが進んでいる。しかし、LEDは、蛍光灯とは異なって、点光源であるため、複数のLEDをライン状に並べたアレイ方式では、個々のLEDの輝度のばらつきやリップルが大きいという問題点を有している。そこで、スキャンに必要な1次元的な(ライン状の)配光を得るために、本発明者らは、導光体を用いることを種々検討している。
【0003】
ところで、結像レンズを介して撮像素子で画像を読み取る縮小光学系にあっては、結像レンズに赤外線カットフィルタをコーティングし、色再現性の向上を図っている。しかし、赤外線カットフィルタでは、レンズの特性に起因して光の入射角度によってカット波長がずれる、詳しくは、入射角度の両端部ほど長波長側の光がカットされるという特性を有している。そのため、撮像素子に入射する光の赤色成分が主走査方向の中央部に比べて両端部で少なくなり、画質が劣化するという問題点を有している。
【0004】
特許文献1には、面状の導光体を用いた照明ユニットであって、液晶パネルのバックライトとして、射出する光の色を均一にするために反射シートの反射率を画素領域に応じて変えることが記載されている。但し、この照明ユニットは面状の導光体を用いたものであって、照明光が主走査方向に延在する画像読取り装置にそのまま適用できるものではない。また、赤外線カットフィルタの特性を考慮したものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−210309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、簡単な構成で、結像レンズに設けた赤外線カットフィルタの特性を補正して画質を改善するようにした画像読取り装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の目的を達成するため、本発明の一形態である画像読取り装置は、
主走査方向に延在する照明ユニットから照射された光をガラス上の原稿で反射させ、該反射光を結像レンズを介して撮像素子で受光する画像読取り装置において、
前記照明ユニットは、長尺状の導光体と、該導光体の一端部に配置した光源と、該導光体の下面に配置した光屈折部及び反射部材とを備え、
前記導光体の一端部から入射した光は、該導光体内を主走査方向に導かれつつ、該導光体の下面で前記光屈折部及び前記反射部材で反射されて前記原稿を照射し、
前記反射部材は、長波長側の光の反射率が導光体の両端部から中央部にわたって徐々に低下するように設定されていること、
を特徴とする。
【0008】
通常、結像レンズには色再現性の向上のために赤外線カットフィルタが設けられており、該赤外線カットフィルタによって結像レンズへの入射角度の両端部ほど長波長側の光がカットされるという特性を有している。本発明では、反射部材の特性を、長波長側の光の反射率が導光体の両端部から中央部にわたって徐々に低下するように設定したため、前記赤外線カットフィルタの特性を効果的に補正して、撮像素子に入射する赤色成分の光を主走査方向の全域にわたって均一なものとすることができ、画質の劣化が抑えられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、導光体に設ける反射部材の特性を長波長側の光の反射率が導光体の両端部から中央部にわたって徐々に低下するように設定するという簡単な構成で、結像レンズに設けた赤外線カットフィルタの特性を補正して画質を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一実施例である画像読取り装置を示し、(A)は内部構成の概略立面図、(B)は概略平面図である。
【図2】前記画像読取り装置の照明ユニットを示す斜視図である。
【図3】前記照明ユニットの副走査方向断面図である。
【図4】前記照明ユニットの主走査方向断面図である。
【図5】結像レンズに設けられている赤外線カットフィルタの特性を示すグラフである。
【図6】反射シートの主走査方向における赤外線反射率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る画像読取り装置の実施例について、添付図面を参照して説明する。なお、各図面において、同一部材、部分に関しては同じ符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
一実施例である画像読取り装置1は、図1に示すように、主走査方向Yに延在する照明ユニット10から照射された光を原稿台ガラス30上に載置された原稿Dで反射させ、該反射光をミラー22,24,25を介して結像レンズ26に導き、さらに撮像素子27(CCDラインセンサ)で受光するようにしたものである。
【0013】
照明ユニット10とミラー22とは第1スライダー21に搭載され、ミラー24,25は第2スライダー23に搭載されている。第1スライダー21は原稿台ガラス30の直下を副走査方向Zに速度Aで移動し、第2スライダー23は副走査方向Zに速度A/2で移動しつつ原稿Dの画像を撮像素子27で読み取る。
【0014】
照明ユニット10は、図2及び図3に示すように、主走査方向Yに配置された長尺状の導光体11と、導光体11の一端部に配置した光源(具体的にはLED15)と、導光体11の下面に配置した光屈折部(具体的にはプリズム12)及び反射シート13とを備えている。LED15は基板16に保持されており、該LED15から放射された光は、図4に示すように進行する。即ち、導光体11の内部を光線a1,a2,a3のように拡散しつつ主走査方向Yに進行し、一部の光線bは直接上方へ射出される。他の光線は上面やプリズム12で屈折し上方へ射出される(光線c参照)。導光体11の下面に向かう光線やプリズム12で下方に屈折した光線は反射シート13で反射され上方へ射出される(光線d参照)。なお、導光体11、プリズム12及び反射シート13のこのような作用は従来と同様である。
【0015】
一対の導光体11は、図3に示すように、被照射位置Aを副走査方向Zの上流側と下流側から挟む位置に配置され、導光体11からは光が原稿D(被照射位置A)に向かって主走査方向Yに線状に照射され、原稿Dからの反射光はミラー22に向かう。このように、原稿Dを左右から照射することで、主走査方向Yにむらなく影を作ることなく効率的に照射することができる。
【0016】
ところで、結像レンズ26には色再現性の向上のために赤外線カットフィルタ(図示せず)がコーティングされており、この赤外線カットフィルタは結像レンズ26への入射角度Q(図1(B)参照)によってカット波長がずれる特性を有している。具体的には、図5に示すように、入射角度Qの両端部ほど長波長側の光がカットされるという特性を有している。そのため、撮像素子27に入射する光の赤色成分が主走査方向Yの中央部に比べて両端部で少なくなる。
【0017】
そこで、本実施例では、反射シート13の特性を、図6に示すように、長波長側の光(具体的には、波長620nmの光)の反射率が導光体11の両端部から中央部にわたって徐々に低下するように設定している。図6において、横軸は主走査方向Yの位置を示し、位置0mmは入射角度Qが0°に相当し、位置−150mmは入射角度Qが−19°に相当し、位置150mmは入射角度Qが19°に相当する。
【0018】
反射シート13において、主走査方向Yの中央部で長波長側の光を減衰させるには、例えば、赤色の反射を抑える反対色(シアン)の塗料を中央部で濃く塗布すればよい。なお、反射シート13における波長540nm,460nmの光の反射率は主走査方向Yの全域にわたって100%である。
【0019】
このように、図5に示す特性の赤外線カットフィルタに対して図6に示す特性の反射シート13を導光体11の下面に設けることにより、赤外線カットフィルタの特性を効果的に補正して、即ち、赤外線カットフィルタによって相対的に増加傾向にある主走査方向Yの中央部における長波長成分の光を、反射シート13によって予め減衰させておくことにより、撮像素子27に入射する赤色成分の光が主走査方向Yの全域にわたって均一となり、画質が改善される。
【0020】
なお、前記反射シート13に代えて、反射部材として導光体11を下面で保持する保持部材の該下面と接する面を反射面としたものであってもよく、この反射面の特性を図6に示すように長波長側の光の反射率を両端部から中央部にわたって徐々に低下するように設定してもよい。
【0021】
(他の実施例)
なお、本発明に係る画像読取り装置は前記実施例に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更できる。
【0022】
特に、導光体、反射部材の細部の形状、配置状態などは任意である。また、本発明は、画像読取り系を位置固定し、主走査方向に長尺状のガラス上で原稿を所定速度で副走査方向に搬送しつつ画像を読み取る、いわゆるシートスルー方式に適用することもできる。また、光源としては、LEDに代えて有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
以上のように、本発明は、画像読取り装置に有用であり、特に、簡単な構成で、赤外線カットフィルタの特性を補正して画質を改善できる点で優れている。
【符号の説明】
【0024】
1…画像読取り装置
10…照明ユニット
11…導光体
12…プリズム
13…反射シート
15…LED
26…結像レンズ
27…撮像素子
D…原稿
Y…主走査方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主走査方向に延在する照明ユニットから照射された光をガラス上の原稿で反射させ、該反射光を結像レンズを介して撮像素子で受光する画像読取り装置において、
前記照明ユニットは、長尺状の導光体と、該導光体の一端部に配置した光源と、該導光体の下面に配置した光屈折部及び反射部材とを備え、
前記導光体の一端部から入射した光は、該導光体内を主走査方向に導かれつつ、該導光体の下面で前記光屈折部及び前記反射部材で反射されて前記原稿を照射し、
前記反射部材は、長波長側の光の反射率が導光体の両端部から中央部にわたって徐々に低下するように設定されていること、
を特徴とする画像読取り装置。
【請求項2】
前記反射部材は、前記導光体の下面に配置された反射シートであること、を特徴とする請求項1に記載の画像読取り装置。
【請求項3】
前記反射部材は、前記導光体を保持する保持部材であって、該導光体の下面と接する面が反射面とされていること、を特徴とする請求項1に記載の画像読取り装置。
【請求項4】
前記光源はLEDであること、を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の画像読取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−244381(P2012−244381A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112176(P2011−112176)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】