説明

画像読取装置、画像形成装置、及び画像処理方法

【課題】コストあるいはスペースが増加するデメリットを避けつつ、ゴーストを直接低減し、あるいは除去することができるようにする。
【解決手段】原稿のアナログ画像データを、CCD9を介して取得し、アナログ信号処理回路部20によって処理されたアナログ画像データをディジタル画像データに変換するA/D変換回路部21と、A/D変換回路部21で変換されたディジタル画像データに対してゴースト補正処理を行うゴースト補正処理回路GACと、を有し、前記ゴースト補正処理回路AGCは、ディジタル画像データが局所的に高いピークを持つデータか否かを判定するピーク検出部24と、sinc関数による画像補正信号を生成する信号生成部25と、信号生成部25によって生成したsinc関数により、ピークを持つと判定された箇所を含む一定のデータ領域に対して補正をかける画像補正部26とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿画像を読み取り、読み取ったディジタル画像データ中のゴーストを補正する機能を有する画像読取装置、この画像読取装置を備えた複写機、プリンタ、ファクシミリ、及びディジタル複合機などの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原稿をディジタル画像データとして取り込む画像取り込み手段として、例えば画像読取装置が知られている。画像読取装置は、例えばリニアCCDにより被写体からの反射光あるいは散乱光を光電変換することによってアナログ情報信号を得るもので、画素毎にサンプリングし、A/D変換することによりディジタル画像データとして処理することが可能となる。CCDによって得られる原稿の線情報は、キャリッジの走査あるいは自動給紙手段によって原稿を搬送することによって面情報としてデータを得ることができる。このようにしてデータを得るとき、ゴーストと呼ばれる本来原稿に存在しない画像がデータ上に現れることがある。このゴーストの原因として、光源と原稿の間にあるガラスでの反射、スキャナユニット内からの散乱光、CCD表面における光の多重反射等が考えられている。
【0003】
そこで、このようなゴーストの発生に対処した技術として例えば特許文献1ないし3に記載された発明が公知である。このうち特許文献1(特開平5−68138号公報)には、イメージスキャナの紙送り機構部の筺体の光軸部に凹部を設け、この凹部に紙送り方向と平行に溝を掘った反射板を取り付け、原稿照明用光源からの光が透明な基材の原稿を透過する透過光による影を、凹部に取り付けた反射板により乱反射させてイメージセンサ上には結像させないようにし、正規に原稿1上から反射された光のみをイメージセンサ上に結像させるようにし、OHP等の透明な基材の原稿を使用した場合にも、ゴーストが発生することなく明瞭な読み取り結果が得られるようにしたイメージスキャナが記載されている。
【0004】
また、引用文献2(特開2002−111978号公報)には、反射原稿が載置される原稿台、または透過原稿が保持される原稿ホルダのいずれか一方を交換可能に支持する支持手段と、前記支持手段が一方の面側に配設されている箱形の本体と、前記反射原稿を照射可能に前記本体の内部に収容、または前記透過原稿を照射可能に前記原稿ホルダの反本体側に配設されている光源と、前記本体の内部に収容され、前記反射原稿または前記透過原稿からの光を集光する集光手段と、前記本体の内部に収容され、前記集光手段により集光された前記反射原稿または前記透過原稿からの光を電気信号に変換する撮像手段と、を備え、透過原稿読み取り時の原稿台の表面における光の反射によるゴーストの発生を防止する画像読取装置が記載されている。
【0005】
さらに、引用文献3(特開2004−104654号公報)には、原稿を照明するための照明手段と、原稿の搬送方向を横切るその長手方向に沿って千鳥状に配列された複数のイメージセンサと、照明手段によって照明された原稿の像を各イメージセンサ上に結像させるための結像手段とからなる画像読取装置において、結像手段と原稿面Xとの間には、イメージセンサ及び結像手段によって原稿面上の1つの主走査ラインを1つの直線上で読み取ることができるようにするとともに、原稿に対する読取角度を小さくする一対のミラーが設けられ、原稿平坦性のバラツキによる読取画像の劣化を低減できる低コストで高画質の画像得ることを可能とした画像読取装置が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のようにゴーストの解消もしくは発生の防止のために前記特許文献1ないし3に記載された発明が提案されている。前記ゴーストは正規の原稿面以外からの散乱光が主な原因とされているが、発生要因は特定できないことが多い。そのため、スキャナユニット内の特定の部位のみに効果的な対策を施すことが難しく、前記特許文献1ないし3に記載されているような技術を使用したとしても、完全にゴーストの発生を抑えることはできない。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、コストあるいはスペースが増加するデメリットを避けつつ、ゴーストを直接低減し、あるいは除去することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、第1の手段は、走査光学系により露光走査した原稿のアナログ画像データを、光電変換素子を介して取得し、このアナログ画像データにアナログ的な処理を施すアナログ信号処理回路部と、各種タイミング信号を生成するタイミング信号生成回路と、前記アナログ信号処理回路部によって処理されたアナログ画像データをディジタル画像データに変換するA/D変換回路部と、前記A/D変換回路部で変換されたディジタル画像データに対して所定の画像処理を行う画像処理手段と、を有する画像読取装置であって、前記画像処理手段が、ディジタル画像データが局所的に高いピークを持つデータか否かを判定するピーク検出手段と、sinc関数((sin x)/x)による画像補正信号を生成する信号生成手段と、前記信号生成手段によって生成したsinc関数により、ピークを持つと判定された箇所を含む一定のデータ領域に対して補正をかける画像補正手段と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
第2の手段は、第1の手段において、前記ピーク検出手段が、予め設定された領域の前記データの第1ピークと第2ピークのピーク値の差が予め設定された値以上の場合、局所的に高いピークを持つデータであると判定することを特徴とする。
【0010】
第3の手段は、第1の手段において、前記ピーク検出手段は、予め設定された領域の前記データの平均値とその周辺のデータの平均値の差が予め設定された値以上の場合、局所的に高いピークを持つデータであると判定することを特徴とする。
【0011】
第4の手段は、第1の手段において、前記信号生成手段は、一定の振幅、周期、位相を持つsinc関数を生成することを特徴とする。
【0012】
第5の手段は、第4の手段において、前記振幅、周期、位相のうち少なくとも1つを任意に設定する設定手段を有し、前記信号生成手段は前記設定手段の設定に基づいてsinc関数を生成することを特徴とする。
【0013】
第6の手段は、第1ないし第5のいずれかの手段において、前記信号生成手段は、sinc関数を生成する際、任意の画素位置から生成を開始することを特徴とする。
【0014】
第7の手段は、第1ないし第6のいずれかの手段において、前記画像補正手段は、前記ピーク検出手段によって検出した局所的なピークデータに対して前記sinc関数による重み付け処理を行うことを特徴とする。
【0015】
第8の手段は、第1ないし第6のいずれかの手段において、前記画像補正手段は、前記ピーク検出手段によって検出した局所的なピークデータに対して前記sinc関数との差分処理を行うことを特徴とする。
【0016】
第9の手段は、第1ないし第6のいずれかの手段において、前記画像補正手段は、前記ピーク検出手段によって検出した局所的なピークデータに対して前記sinc関数との平均化処理を行うことを特徴とする。
【0017】
第10の手段は、第7ないし第9のいずれかの手段において、前記画像補正手段は、前記ピーク検出手段によって検出した局所的なピークデータの中心位置に対してsinc関数のピークを割り当てて処理することを特徴とする。
【0018】
第11の手段は、第7ないし第9のいずれかの手段において、前記画像補正手段は、前記ピーク検出手段によって検出した局所的なピークデータの最大値の位置に対してsinc関数のピークを割り当てて処理することを特徴とする。
【0019】
第12の手段は、第1ないし第11のいずれかの手段において、前記画像処理手段は、前記信号生成手段において生成するsinc関数の振幅、周期、位相情報を保持する係数記憶手段をさらに備えていることを特徴とする。
【0020】
第13の手段は、第1ないし第12のいずれかの手段において、前記画像処理手段は、前記信号生成手段において生成するsinc関数の振幅、周期、位相を算出する係数生成手段をさらに備えていることを特徴とする。
【0021】
第14の手段は、第1ないし第13のいずれかの手段において、前記画像補正手段の処理の実行の是非を選択する選択手段をさらに備えていることを特徴とする。
【0022】
第15の手段は、第1ないし第14のいずれかの手段に係る画像読取装置を画像形成装置が備えていることを特徴とする。
【0023】
第16の手段は、走査光学系により露光走査した原稿のアナログ画像データを、光電変換素子を介して取得し、このアナログ画像データにアナログ的な処理を施すアナログ信号処理回路部と、各種タイミング信号を生成するタイミング信号生成回路と、前記アナログ信号処理回路部によって処理されたアナログ画像データをディジタル画像データに変換するA/D変換回路部と、前記A/D変換回路部で変換されたディジタル画像データに対して所定の画像処理を行う画像処理手段と、を有し、読み取った画像データを処理する画像処理方法であって、ディジタル画像データが局所的に高いピークを持つデータか否かを判定する工程と、sinc関数((sin x)/x)による画像補正信号を生成する工程と、生成したsinc関数により、ピークを持つと判定された箇所を含む一定のデータ領域に対して補正をかける工程と、を備えていることを特徴とする。
【0024】
なお、後述の実施形態では、走査光学系は光源2、第1ミラー3を搭載した第1キャリッジ6と、第2及び第3ミラー4,5を搭載した第2キャリッジ7と、レンズユニット8に、光電変換素子はCCD9に、アナログ信号回路部は符号20に、タイミング信号生成回路はタイミングクロック生成部18に、A/D変換回路部は符号21に、画像処理手段はゴースト補正処理回路GACに、ピーク検出手段はピーク検出部24に、信号生成手段は信号生成部25に、画像補正手段は画像補正部26に、係数記憶手段は係数記憶部27に、係数生成手段は係数生成部28に、画像読取装置は符号SCに、画像形成装置は符号100に、それぞれ対応する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、局所的に高いピークを持つディジタル画像データを含む所定のデータ領域に対してsinc関数により補正をかけるので、画像データ内に局所的に発生したゴーストを含む画像データに対してデータ処理だけで補正処理を行い、ゴーストを直接低減あるいは除去することができる。その際、データ処理だけでゴーストを直接低減あるいは除去することができるので、ハード構成の追加、付加、及びスペースの増加などを招くことがなく、低コストでゴーストの補正が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る画像読取装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示した画像読取装置の電気的構成(処理回路)を示すブロック図である。
【図3】本実施形態におけるゴースト補正処理回路の一例を示すブロック図である。
【図4】画像データとsinc関数のピーク位置を合わせ、減算処理を行って補正した例を示す図である。
【図5】画像データとsinc関数のピーク位置を合わせて画像データと関数の平均化処理を行った例を示す図である。
【図6】図3のゴースト補正処理回路に対してsinc関数の各種係数を記憶する係数記憶部を備えた例を示す図である。
【図7】振幅、周期、位相を自動で算出する係数生成部を備え、これを図2の画像読取装置のゴースト補正処理回路へ適用したときの構成の一例を示すブロック図である。
【図8】本実施形態に係る画像読取装置を備えた画像形成装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
【0028】
図1は本発明の実施形態に係る画像読取装置の概略構成を示す図である。画像読取装置はディジタル複写機におけるスキャナ装置のように、原稿画像をCCDで読み取り、画像信号をディジタル信号に変換して処理し、画像情報として使用できるようにするものである。
【0029】
図1において、画像読取装置SCは、原稿を載置するコンタクトガラス1、原稿露光用の光源2及び第1反射ミラー3を搭載した第1キャリッジ6、第2反射ミラー4及び第3反射ミラー5を搭載した第2キャリッジ7、CCDリニアイメージセンサ9(以下、単にCCDと称す)、CCD9に読み取り画像を結像するためのレンズユニット8、CCD9で読み取った画像を処理しディジタル信号として出力する画像処理回路を搭載した回路基板10、並びに読み取り光学系等による各種の歪みを補正するための白基準板13から構成される。
【0030】
コンタクトガラス1上に原稿を載置して読み取る場合には、第1キャリッジ3及び第2キャリッジ7を図示しないステッピングモータによって副走査方向Aに移動させて、光走査を行う。また、シートスルーによって原稿を読み取る場合には、第1キャリッジ6及び第2キャリッジ7がシートスルー読み取り用スリット15の下へ移動し、その後、原稿自動送り装置14に設置された原稿12をローラ16によって矢印B方向へ搬送することによって、第1及び第2キャリッジ6,7を固定した状態でシートスルー読み取り用スリット15の位置で読み取る。
【0031】
図2は、図1に示した画像読取装置SCの電気的構成(処理回路)を示すブロック図である。図2において、CCD9で光電変換されたアナログ画像データは、アナログ処理回路部20へ出力される。アナログ処理回路部20では、アナログ画像データに対してサンプルホールド処理、黒レベル補正などの各種画像処理を施したのち、A/D変換回路部21へ出力する。A/D変換回路部21では、入力されたアナログ画像データをディジタル画像データに変換し、さらにLVDSインターフェース22を介して後段(画像処理回路部等)へ出力する。画像読取装置SCのCCD9、アナログ処理回路部20、A/D変換回路部21、図示しないキャリッジ駆動用のステッピングモータ及び光源2としてのキセノンランプの各種タイミングクロックは、タイミングクロック生成回路部23において生成し、それぞれに供給される。タイミングクロック生成回路部23は発振器17からのクロックに基づいて前記各種のタイミングクロックを生成する。
【0032】
このような原稿読み取り光学系において、原稿を読み取る際、光源2から発せられ、原稿面で反射した光はCCD9のフォトダイオードに到達するまでに、コンタクトガラス1とCCD9表面において、ガラスを通過する。このとき、空気との境界面では屈折率差が生じるため、光の屈折及び反射が起こる。反射によって原稿反射光の光路が変わると、本来とは異なる位置のフォトダイオードが前記反射光を受光することになる。本来とは異なる位置のフォトダイオードでは、受光した反射光を画像データとして認識し、画像処理回路で処理されてしまう。この現象はゴーストと呼ばれ、本来存在しないはずの画像が生じてしまうことになる。
【0033】
したがって、このようにゴーストが生じている画像について、本実施形態では、画像処理を施し、ゴーストを低減し、あるいはゴーストを除去するようにした。図3は本実施形態におけるゴースト補正処理回路の一例を示すブロック図である。
【0034】
ゴースト補正処理回路GACは、ピーク検出部24、信号生成部25、及び画像補正部26からなる。ゴースト補正処理回路GACでは、原稿読み取りデータである第1のディジタル画像データ(図ではディジタル画像データ1と記す)1に対して、ピーク検出部24において画像内のピークの有無及び位置を検出し、その情報を信号生成部25へ通知する。
【0035】
ピーク検出部24は、ある領域のデータの第1ピークと第2ピークの差が特定の値(予め設定した値)以上の場合に、局所的に高いピークを持つデータであると判定し、あるいは、ある領域のデータの平均値とその周辺のデータの平均値の差が特定の値(予め設定した値)以上の場合に局所的に高いピークを持つデータであると判定する。
【0036】
信号生成部25では、前記ピークの有無及び位置を示す情報を基にゴースト補正用信号であるsinc関数を生成し、後段の画像補正部26へ送信する。その際、信号生成部25では、一定の振幅α、周期β、位相γを持つsinc関数を生成する。そのsinc関数の生成においては、振幅α、周期β、位相γのうち少なくとも1つを任意に設定可能である。また、sinc関数を生成する場合、任意の画素位置から生成を開始することができる。
【0037】
第1のディジタル画像データがゴーストを含んでいる場合、画像補正部26において画像補正信号SG1を用いた処理が行われ、ゴーストの除去あるいはゴーストが低減された第2のディジタル画像データ(図ではディジタル画像データ2と記す)が生成される。画像補正部26では、例えば画像データと画像補正信号間での減算、平均処理等が行われ、第1のディジタル画像データに対して直接処理を行う。
【0038】
図4及び図5は各種処理の処理内容の例を示す図である。
図4は、画像データとsinc関数のピーク位置を合わせ、減算処理を行った例である。ある軸に対して本来左右対称なsinc関数信号を、図の例では、ゴーストが発生している片側のみに対して発生させ、減算処理を行っている。図4の例では、sinc関数の幅あるいは振幅、適用位置が適切ではない可能性があるが、ゴーストは低減していることが分かる。これにより、この処理によって画像として目立ちにくくなることが予想される。処理は単純な減算であるため、実時間上は問題にならない処理時間である。
【0039】
図5は、画像データとsinc関数のピーク位置を合わせて画像データと関数の平均化処理を行った例であり、処理前後のデータを比較し、それらの差が2以下の画素位置のみ処理を実行している。この例でも、ゴーストが発生している片側のみに対して関数を発生させている。図4の例と比較し、さらにゴースト重畳データを見ると、ゴーストの低減効果が現れていることが分かる。関数の形状や位置を的確に決定することで、さらに大きな効果が現れる。
【0040】
なお、図4及び図5では、ピーク検出部24によって検出した局所的なピークデータに対して信号生成部25において生成したsinc関数と画像データで差分処理を行い、あるいは平均化処理を行っているが、sinc関数に重み付け処理を行うこともできる。重み付け処理の場合には、画像データにsinc関数を掛け合わせるときに、任意の係数を乗算するというように処理される。
【0041】
また、あるいは、ピーク検出部24によって検出した局所的なピークデータの中心位置に対してsinc関数のピークを割り当てて(対応させて)処理することも、ピーク検出部24によって検出した局所的なピークデータの最大値の位置に対してsinc関数のピークを割り当てて処理することも可能である。なお、sinc関数を生成する場合には、ユーザが指定する任意の位置から生成処理を開始する。前記任意の位置は画像読取装置SCの図示しない操作部、あるいは後述の画像形成装置100の図示しない操作部から入力される。
【0042】
図6は、図3のゴースト補正処理回路GACに対してsinc関数の各種係数を記憶する係数記憶部30を備えたゴースト補正処理回路GACの例である。計数記憶部30は例えばRAMによって構成される。sinc関数は、
sinc x =(sin x)/x
で表され、この関数を
αsinc(βx+γ)=α(sinβx+γ)/(βx+γ)
と変形することにより、
α:振幅(補正信号の大きさ)
β:周期(補正信号の幅)
γ:位相(補正信号の位置)
が調整可能となる。ピーク画像データに対して発生したゴーストに応じて適切なα、β、γを設定することにより、より効果的なゴースト除去が可能となる。このため、ゴーストの発生位置及びレベルが予測される場合には、これらの係数を予め設定しておくことが有効となる。また、状況が変化した場合には各係数を変更することも可能である。
【0043】
なお、前記画像補正部26で実行する補正処理については、画像読取装置SCの図示しない操作部、あるいは画像形成装置100の図示しない操作部から選択画面を表示させ、この選択画面から実行するか否かを選択することもできる。
【0044】
図7は前記振幅α、周期β、位相γを自動で算出する係数生成部34を備え、これを図2の画像読取装置SCのゴースト補正処理回路へ適用したときの構成の一例を示すブロック図である。図7において、図2における画像読取装置SCの処理回路SC1に対し、ゴースト補正処理回路GACが接続されている。ゴースト処理回路GACは、図3におけるゴースト補正処理回路GACの係数記憶部27に代えて係数生成部28とし、画像読取装置SCの処理回路SC1のLVDS22にゴースト補正処理回路GACの前段にLVDS23を設けて処理回路SC1から原稿を読み取って得られたディジタル画像データ1を受け取り、この原稿を読み取った第1のディジタル画像データに対し、画像信号から補正信号の大きさ、位置等を決定する。すなわち、図3における信号生成部25は、係数記憶部27の係数を参照していたが、図7における信号生成部25は係数生成部28で生成した画像補正信号生成パラメータα、β、γを参照し、これらの画像補正信号生成パラメータα、β、γを参照して画像補正信号SG1を生成する。画像補正部26では、ディジタル画像データ1を画像補正信号SG1に基づいて補正し、補正されたディジタル画像データ2を得る。これにより、常に最適なゴーストの補正が可能となる。
【0045】
図7に示した係数生成部28で画像補正信号生成パラメータとして振幅α、周期β、位相γを生成する場合、これらのパラメータは予め工場出荷時に設定しておくこともできる。また、工場出荷時に設定したパラメータは使用の要求に応じてユーザあるいはサービスマンによって設定を変更することも可能である。その場合、例えば操作パネルから前記設定変更の画面を呼び出して振幅α、周期β、位相γのうちの1つのパラメータを設定すれば、他のパラメータは自動的に設定される。
【0046】
このような画像読取装置SCは単独で使用されるだけでなく、例えば画像形成装置に適用することも可能である。一般的な画像形成装置は以下の通りである。
【0047】
図8は本実施形態に係る画像読取装置を備えた画像形成装置の概略構成を示す図である。この画像形成装置100は、複写機能とこれ以外の機能、例えばプリンタ機能、ファクシミリ機能とを有するいわゆる複合機能を有する画像形成装置であり、操作部のアプリケーション切り替えキーにより複写機能、プリンタ機能、ファクシミリ機能を順次に切り替えて選択することが可能である。複写機能の選択時には複写モードとなり、プリンタ機能の選択時にはプリントモードとなり、ファクシミリモードの選択時にはファクシミリモードとなる。
【0048】
まず、複写モードでは、次のように動作する。自動原稿送り装置(以下ADFという)101においては、原稿台102に原稿の画像面を上にして置かれた原稿束は、操作部上のスタートキーが押下されると、一番下の原稿が給送ローラ103、給送ベルト104によってコンタクトガラス105上の所定の位置に給送される。ADF101は一枚の原稿の給送完了毎に原稿枚数をカウントアップするカウント機能を有する。コンタクトガラス105上の原稿は、読み取り手段としての画像読取装置106によって画像情報が読み取られた後に、給送ベルト104、排送ローラ107によって排紙台108上に排出される。
【0049】
原稿セット検知器109によって原稿台102上に次の原稿があることが検知された場合には、同様に原稿台102上の一番下の原稿が給紙ローラ103、給送ベルト104によってコンタクトガラス105上の所定の位置に給送される。このコンタクトガラス105上の原稿は、画像読取装置106によって画像情報が読み取られた後に、給送ベルト104、排送ローラ107によって排紙台108上に排出される。ここに、給送ローラ103、給送ベルト104及び排送ローラ107は図示しない搬送モータによって駆動される。
【0050】
画像読取装置106は光源128及び第1ミラー129を搭載し、副走査方向に移動走査する第1キャリッジと、第2及び第3ミラー130,131を搭載し、前記第1キャリッジの1/2の速度で副走査方向に移動走査する第2キャリッジと、第3ミラー131から導入された読み取り光を結像するレンズユニット132と、このレンズユニット132によって結像面に導かれた読み取り光を光電変換する光電変換素子としてのCCD133とからなる。なお、この画像読取装置106が図1に示した画像読取装置SCに対応する。
【0051】
給紙手段としての第1給紙装置110、第2給紙装置111、第3給紙装置112は、いずれかの給紙装置が選択されたときに各々第1トレイ113、第2トレイ114、第3トレイ115に積載された転写材としてのシートをピックアップして給送する。給送されたシートは縦搬送ユニット116によって像担持体としての感光体ドラム117に当接する位置まで搬送される。感光体ドラム117は、図示しないメインモータにより一定速度で回転駆動される。
【0052】
画像読取装置106によって原稿から読み込まれた画像データは図示しない画像処理手段を介して書き込み手段としての書き込みユニット118によって光情報に変換される。書き込みユニット118は変換された光情報を、LDを発光源とする光偏向装置134と等角速度偏向から等速度偏向へと変換して主走査方向に光走査するfθレンズ135と、図示しない帯電器により一様に帯電された感光体ドラム117表面に光ビームを走査するための折り返しミラー136とからなり、感光体ドラム117表面を光走査して光書き込みを実行し、感光体ドラム117表面に静電潜像が形成される。この感光体ドラム117上の静電潜像は現像装置119により現像されてトナー像となる。
【0053】
搬送ベルト120は、シート搬送手段及び転写手段を兼ねていて電源から転写バイアスが印加され、縦搬送ユニット116からのシートを感光体ドラム117と等速で搬送しながら感光体ドラム117上のトナー像をシートに転写させる。このシート表面のトナー像は、定着装置121により定着され、排紙ユニット122により排紙トレイ123に排出される。感光体ドラム117はトナー像転写後に図示しないクリーニング装置によりクリーニングされる。ここに、感光体ドラム117、帯電器、書き込みユニット118、現像装置119、搬送ベルト(転写手段)120は画像データにより画像をシート上に形成する画像形成手段を構成している。
【0054】
排紙ユニット122には両面給紙トレイ125にシートを搬送するための分岐爪が設けられ、両面に画像を形成する場合、あるいは反転して排紙させる場合には搬送路124から両面給紙トレイ125にシートは導かれる。そして、反転して排紙させる場合には反転排紙搬送路127に導かれて排紙トレイ123に排紙され、両面に画像形成する場合には、両面搬送路126から縦搬送路116の搬送ローラ151にシートを導き、レジストローラ対149,150でタイミングをとって感光体ドラム117側に搬送し、シート裏面に画像を形成する。
【0055】
プリントモードでは、前記画像読取装置106からの画像データの代わりに外部からの画像データが書き込みユニット118に入力され、前記画像形成手段によりシート上に画像が形成される。さらに、ファクシミリモードでは、前記画像読取装置106からの画像データが図示しないファクシミリ送受信部により相手に送信され、あるいは、相手からの画像データがファクシミリ送受信部で受信されて前記画像読取装置106からの画像データの代わりに書き込みユニット118に入力されることにより、前記画像形成手段によりシート上に画像が形成される。
【0056】
以上のように、本実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
1)画像データ内に発生したゴーストを含む画像データに対して画像補正部26におけるデータ処理だけで補正処理を行い、ゴーストを直接低減あるいは除去することができる。
2)データ処理だけでゴーストを直接低減あるいは除去することができるので、ハード構成の追加、付加、スペースの増加などのハード上の不利を招くことがない。
3)2つの異なる領域のデータのそれぞれの最大値の差を、あるいは、平均値の差を判定してピーク検出を行うので、ディジタル画像データ内における局所的なピークの有無及び位置を簡易な処理で、かつ短時間に検出することができる。
【0057】
4)一定の振幅、周期、位相を持つsinc関数を生成するので、発生するゴーストの位置や程度が分かっている場合には、補正信号の算出を短時間で生成することができる。
5)sinc関数を生成する際、振幅、周期、位相のうち少なくとも1つを任意に設定できるので、状況に応じた最適な補正信号の生成が可能になる。
6)局所的なピークデータに対して信号生成部で生成したsinc関数による重み付け処理、信号生成部で生成したsinc関数との差分処理、信号生成部で生成したsinc関数との平均化処理のいずれかを画像データの状況に応じて適切に割り当てることにより、ゴーストの低減及び除去の精度を高めることができる。
7)局所的なピークデータの中心位置に対して、sinc関数のピークを割り当てて処理を行い、あるいは局所的なピークデータの最大値の位置に対して、sinc関数のピークを割り当てて処理を行うことにより、ゴーストの低減及び除去の精度を高めることができる。
8)信号生成部25において生成するsinc関数の振幅、周期、位相情報を保持する係数記憶部27を備えているので、発生するゴーストの位置や程度が分かっている場合、係数記憶部27から振幅α、周期β、位相γ情報を読み出して補正信号の算出を短時間で行うこと、及びこれらの変更を容易に行うことができる。
9)係数記憶部27の内容を書き換えるあるいは入れ替えることにより、あらゆるゴーストの除去、低減が可能となる。
10)係数生成部28でsinc関数の振幅α、周期β、位相γを算出するので、信号生成部25では発生したゴーストに応じて最適な補正信号を生成し、高精度なゴーストの補正処理が可能となる。
11)係数生成部28で算出されたsinc関数の振幅α、周期β、位相γを記憶することにより、次回以降の係数生成時間を省くことが可能となり、高精度なゴーストの補正処理を短時間で行うことができる。
12)画像補正部26における画像補正の是非を設定するON/OFF手段を備えているので、状況に応じた処理(画質優先/スピード優先等)を選択可能となる。
などの効果を奏する。
【0058】
なお、本発明は本実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが対象となる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、原稿画像を読み取る画像読取装置に適用され、画像読取装置を使用する複写機、ファクシミリなどの事務機器、さらにはネットワークスキャナなどの情報処理機器に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0060】
2 光源
3 第1ミラー
4 第2ミラー
5 第3ミラー
6 第1キャリッジ
7 第2キャリッジ
8 レンズユニット
9 CCD
18 タイミングクロック生成部
20 アナログ信号回路部
21 A/D変換回路部
24 ピーク検出部
25 信号生成部
26 画像補正部
27 係数記憶部
28 係数生成部
100 画像形成装置
GAC ゴースト補正処理回路
SC 画像読取装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0061】
【特許文献1】特開平5−68138号公報
【特許文献2】特開2002−111978号公報
【特許文献3】特開2004−104654号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査光学系により露光走査した原稿のアナログ画像データを、光電変換素子を介して取得し、このアナログ画像データにアナログ的な処理を施すアナログ信号処理回路部と、
各種タイミング信号を生成するタイミング信号生成回路と、
前記アナログ信号処理回路部によって処理されたアナログ画像データをディジタル画像データに変換するA/D変換回路部と、
前記A/D変換回路部で変換されたディジタル画像データに対して所定の画像処理を行う画像処理手段と、
を有する画像読取装置であって、
前記画像処理手段は、
ディジタル画像データが局所的に高いピークを持つデータか否かを判定するピーク検出手段と、
sinc関数((sin x)/x)による画像補正信号を生成する信号生成手段と、
前記信号生成手段によって生成したsinc関数により、ピークを持つと判定された箇所を含む一定のデータ領域に対して補正をかける画像補正手段と、
を備えていることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
請求項1記載の画像読取装置であって、
前記ピーク検出手段は、予め設定された領域の前記データの第1ピークと第2ピークのピーク値の差が予め設定された値以上の場合、局所的に高いピークを持つデータであると判定すること
を特徴とする画像読取装置。
【請求項3】
請求項1記載の画像読取装置であって
前記ピーク検出手段は、予め設定された領域の前記データの平均値とその周辺のデータの平均値の差が予め設定された値以上の場合、局所的に高いピークを持つデータであると判定すること
を特徴とする画像読取装置。
【請求項4】
請求項1記載の画像読取装置であって、
前記信号生成手段は、一定の振幅、周期、位相を持つsinc関数を生成すること
を特徴とする画像読取装置。
【請求項5】
請求項4記載の画像処理装置であって、
前記振幅、周期、位相のうち少なくとも1つを任意に設定する設定手段を有し、
前記信号生成手段は、前記設定手段の設定に基づいてsinc関数を生成すること
を特徴とする画像読取装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の画像読取装置であって、
前記信号生成手段は、sinc関数を生成する際、任意の画素位置から生成を開始すること
を特徴とする画像読取装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の画像読取装置であって、
前記画像補正手段は、前記ピーク検出手段によって検出した局所的なピークデータに対して前記sinc関数による重み付け処理を行うこと
を特徴とする画像読取装置。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の画像読取装置であって、
前記画像補正手段は、前記ピーク検出手段によって検出した局所的なピークデータに対して前記sinc関数との差分処理を行うこと
を特徴とする画像読取装置。
【請求項9】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の画像読取装置であって、
前記画像補正手段は、前記ピーク検出手段によって検出した局所的なピークデータに対して前記sinc関数との平均化処理を行うこと
を特徴とする画像読取装置。
【請求項10】
請求項7ないし9のいずれか1項に記載の画像読取装置であって、
前記画像補正手段は、前記ピーク検出手段によって検出した局所的なピークデータの中心位置に対してsinc関数のピークを割り当てて処理を行うこと
を特徴とする画像読取装置。
【請求項11】
請求項7ないし9のいずれか1項に記載の画像読取装置であって、
前記画像補正手段は、前記ピーク検出手段によって検出した局所的なピークデータの最大値の位置に対してsinc関数のピークを割り当てて処理を行うこと
を特徴とする画像読取装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の画像読取装置であって、
前記画像処理手段は、前記信号生成手段において生成するsinc関数の振幅、周期、位相情報を保持する係数記憶手段をさらに備えていること
を特徴とする画像読取装置。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1項に記載の画像読取装置であって、
前記画像処理手段は、前記信号生成手段において生成するsinc関数の振幅、周期、位相を算出する係数生成手段をさらに備えていること
を特徴とする画像読取装置。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれか1項に記載の画像読取装置であって、
前記画像補正手段の処理の実行の有無を選択する選択手段をさらに備えていること
を特徴とする画像読取装置。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれか1項に記載の画像読取装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項16】
走査光学系により露光走査した原稿のアナログ画像データを、光電変換素子を介して取得し、このアナログ画像データにアナログ的な処理を施すアナログ信号処理回路部と、
各種タイミング信号を生成するタイミング信号生成回路と、
前記アナログ信号処理回路部によって処理されたアナログ画像データをディジタル画像データに変換するA/D変換回路部と、
前記A/D変換回路部で変換されたディジタル画像データに対して所定の画像処理を行う画像処理手段と、
を有し、読み取った画像データを処理する画像処理方法であって、
ディジタル画像データが局所的に高いピークを持つデータか否かを判定する工程と、
sinc関数((sin x)/x)による画像補正信号を生成する工程と、
生成したsinc関数により、ピークを持つと判定された箇所を含む一定のデータ領域に対して補正をかける工程と、
を備えていることを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−178187(P2010−178187A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20358(P2009−20358)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】