説明

画像読取装置、画像形成装置及び画像読取方法

【課題】原稿画像の特性に応じて適切に画像データを読み取ることができる容易な構成の画像読取装置を提供する。
【解決手段】原稿画像に照明光を照射する光源部165と、原稿画像から反射される反射光を受光し、当該受光した反射光に基づいて画像データを生成する受光部166と、操作者から画像データの色の境界をなだらかに調整する指示を受け付ける調整指示受付部3と、原稿画像の主走査方向一ラインに対して予め定められた蓄積光量で光源部165に照射を行わせる予め定められた駆動信号を光源部165に出力して、照明光の駆動を制御する光源駆動制御部4と、を備え、光源駆動制御部4は、調整指示受付部3により前記画像データの色の境界をなだらかに調整する指示が受け付けられた場合に、駆動信号を分割して予め定められた蓄積光量での照射を光源部165に行わせる画像読取装置16。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿画像に対する照明光の照明時間を調整する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スキャナ等の画像読取装置が原稿用面に表された原稿画像を読み取ることで生成した原稿画像の画像データを処理する画像形成装置が用いられており、例えば、スキャナ自身や、スキャナによって読み取られた原稿画像の画像データを処理する複写機、ファクシミリ及びこれらの複合機等がある。
【0003】
画像読取装置は、冷陰極蛍光管等の白色蛍光ランプで構成された光源、原稿画像を載置するためのコンタクトガラス、主走査方向1ライン分の反射光を反射させるミラー群、結像レンズ、CCD等を備えて構成され、光源及びミラー群は主走査方向と直行する副走査方向に移動可能なキャリッジに搭載されている。
【0004】
画像読取装置は、コンタクトガラスに載置され原稿画像の読み取り指示が受け付けられると、光源によりコンタクトガラス上に載置された原稿画像を照射し、原稿画像の主走査方向1ライン分の反射光をミラーによって結像レンズに向けて反射させ、結像レンズに入射された光をCCDに備えられた受光素子で光電変換して結像することで、1ライン分の原稿画像の読み取りを終了すると、副走査方向にキャリッジを移動して、次のラインの読み取りを行う。一方、キャリッジを移動させることなく、原稿画像を自動的に副走査方向に搬送して、1ライン分ずつ原稿画像を読み取る画像読取装置も存在する(例えば、下記特許文献1)。
【0005】
上記の何れの読み取り方法であっても、主走査方向1ライン分の原稿画像の読み取りに必要となる、光源により照射される光の強度と照射時間との積で示される蓄積光量は予め定められており、例えば、下記特許文献1には、原稿画像を主走査方向に走査して1ライン分読み取るために必要な予め定められた時間(ライン周期)と同期した信号で、照明光の点灯期間のオンオフの比率(デューティ比)を変化させることにより、ライン周期に応じて点灯期間を調整しつつ、蓄積光量を一定に保つことができる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−135555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、原稿画像を搬送する際のライン周期の変動に対応して、読み取った画像に搬送ムラの影響が出にくいようにすることはできるが、例えば、文字画像等の色の境界が鮮明な原稿画像を読み取る場合と、写真等の色の境界がなだらかであり色味の変化がある原稿画像を読み取る場合とを区別することなく、一定に保たれた蓄積光量の照明光を読み取り対象の原稿画像に照射して読み取るため、原稿画像の特性に応じて適切に画像データを読み取ることができなかった。
【0008】
従来は、当該問題に対して、読み取られた画像データを平滑化フィルタで処理する等の画像処理を行うことで回避していたが、このような画像処理を行うと階調性を損なってしまう等の他の問題が発生するため、当該問題を回避する画像処理の回路が新たに必要になる等、画像読取装置の複雑化を招いてしまうという問題があった。
【0009】
また、画像読取装置では、上記のように、照明光と原稿画像の副走査方向における相対的な位置関係を変化させながら原稿画像を読み取るため、主走査方向に走査して得られる1ライン分の画像データは、照明光に対して原稿画像が静止している状態で得られる画像データとは異なり、副走査方向における1ラインの幅の原稿画像に対する反射光を読み取った影響を受け、副走査方向における1ラインの幅で平均化された画像データといえる。
【0010】
そこで、原稿画像に対して照射する照明光の照射時間の長短を調整して、生成される画像データが副走査方向における1ラインの幅で平均化される影響を調整するとともに、照射時間の調整に応じて光の強度の強弱を調整して、蓄積光量を一定に保ちながら原稿画像を読み取ることにより、上記の問題を回避することができる。
【0011】
しかし、この場合、光の強度の強弱を調整する回路を設ける必要があり、更に、蓄積光量を一定に保つためには、当該回路と照射時間の長短を調整する回路とを同期して制御する必要が生じる等、画像読取装置の複雑化を招いてしまうという問題があった。
【0012】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、原稿画像の特性に応じて適切に画像データを読み取ることができる容易な構成の画像読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に記載の発明は、原稿画像に照明光を照射する光源部と、
前記光源部により前記照明光が照射された際に前記原稿画像から反射される反射光を受光し、当該受光した反射光に基づいて前記原稿画像の画像データを生成する受光部と、
操作者から前記画像データの色の境界をなだらかに調整する指示を受け付ける調整指示受付部と、
前記原稿画像の主走査方向一ラインに対して予め定められた蓄積光量で前記光源部に照射を行わせる予め定められた駆動信号を前記光源部に出力して、前記照明光の駆動を制御する光源駆動制御部と、
を備え、
前記光源駆動制御部は、前記調整指示受付部により前記画像データの色の境界をなだらかに調整する指示が受け付けられた場合に、前記駆動信号を分割して前記予め定められた蓄積光量での照射を前記光源部に行わせる画像読取装置である。
【0014】
この発明では、調整指示受付部により、例えば、原稿画像が色の境界がなだらかなイメージ画像である場合等、受光部で生成される画像データの色の境界をなだらかに調整する指示が受け付けられると、光源駆動制御部により、原稿画像の主走査方向一ラインに対して予め定められた蓄積光量で光源部に照射を行わせる予め定められた駆動信号が分割され、当該予め定められた蓄積光量での照射が光源部により行われる。
【0015】
つまり、光源駆動制御部により分割された駆動信号によって光源部から照明光が照射されるようになり、且つ、その際に原稿画像の主走査方向一ラインに対して照射される蓄積光量は、駆動信号が分割される以前と変わらず、予め定められた蓄積光量が一定に保たれる。このため、光の強度を変更し、さらに、これと同期して光源からの光の照射時間を調整する等の複雑な機構を設けなくても、原稿画像の主走査方向一ラインに対して照射される蓄積光量を一定に保つことができる。
【0016】
また、画像読取装置では、上記のように、照明光と原稿画像の副走査方向における相対的な位置関係を変化させながら原稿画像を読み取るため、主走査方向に走査して得られる1ライン分の画像データは、照明光に対して原稿画像が静止している状態で得られる画像データとは異なり、副走査方向における1ラインの幅の原稿画像に対する反射光を読み取った影響を受け、副走査方向における1ラインの幅で平均化された画像データといえる。
【0017】
しかし、この発明では、例えば、イメージ画像を読み取って色の境界がなだらかな画像データを得たい場合には、光源駆動制御部により、蓄積光量を一定に保ちながら予め定められた駆動信号が分割されるため、主走査方向一ラインの読み取り時における照明光の照射が開始される時点から照射が終了する時点までの期間が延長されるようになる。
【0018】
したがって、副走査方向における1ラインの幅の原稿画像に対する反射光を読み取る影響が高められ、副走査方向における1ラインの幅で平均化されたなだらかな画像データを生成することができるようになる。
【0019】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の画像読取装置であって、前記光源駆動制御部は、前記調整指示受付部により受け付けられた前記画像データの色の境界をなだらかに調整する度合が高くなるにつれて前記駆動信号を分割する数を増加させ、前記予め定められた蓄積光量での照射を前記光源部に行わせる。
【0020】
この発明では、光源駆動制御部により、調整指示受付部により受け付けられた画像データの色の境界をなだらかに調整する度合が高くなるにつれて駆動信号を分割する数が増加されるため、主走査方向一ラインの読み取り時における照明光の照射が開始される時点から照射が終了する時点までの期間を操作者から指示された画像データの色の境界をなだらかに調整する度合に応じて適切に延長させることができ、画像データの色の境界をなだらかに調整する度合を柔軟に調整することができるようになる。
【0021】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項1または2に記載の画像読取装置であって、光源部は、複数のLED素子を備えてなる。
【0022】
この発明では、光源部が複数のLED素子を備えて構成されているため、従来から光源部に用いられている冷陰極蛍光管等に比して、極めて短時間で点灯及び消灯することができ、さらに、消費電力が低いという利点を有することができる。
【0023】
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項1から3の何れかに記載の画像読取装置と、
前記画像読取装置で生成される画像データに基づいて動作を行う動作部と、
を備えた画像形成装置である。
【0024】
また、請求項5に記載の発明は、原稿画像に照明光を照射する光源部と、前記光源部により前記照明光が照射された際に前記原稿画像から反射される反射光を受光し、当該受光した反射光に基づいて前記原稿画像の画像データを生成する受光部とを備えた画像読取装置における画像読取方法であって、
操作者から前記画像データの色の境界をなだらかに調整する指示を受け付ける調整指示受付ステップと、
前記原稿画像の主走査方向一ラインに対して予め定められた蓄積光量で前記光源部に照射を行わせる予め定められた駆動信号を前記光源部に出力して、前記照明光の駆動を制御する光源駆動制御ステップと、
を備え、
前記光源駆動制御ステップは、前記調整指示受付ステップにより前記画像データの色の境界をなだらかに調整する指示が受け付けられた場合に、前記駆動信号を分割して前記予め定められた蓄積光量での照射を前記光源部に行わせる画像読取方法である。
【0025】
これらの発明では、請求項1に記載の発明における効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、原稿画像の特性に応じて適切に画像データを読み取ることができる容易な構成の画像読取装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の一例である複合機を示す図である。
【図2】複合機の内部構造を説明するための正面断面視の説明図である。
【図3】複合機の電気的な構成を示すブロック図である。
【図4】予め定められた駆動信号を示す図である。
【図5】予め定められた駆動信号に従い、原稿画像からの反射光を受光する動作を説明する図である。
【図6】光源駆動制御部により予め定められた駆動信号が分割されることを示す図である。
【図7】光源駆動制御部により分割された駆動信号に従い、原稿画像からの反射光を受光する動作を説明する図である。
【図8】原稿画像を読み取る動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態に係る画像形成装置について図面を参照して説明する。尚、以下の実施形態では、本発明における画像形成装置を、カラーコピー、スキャナ、プリンタ等の機能を備えた複合機に集約した形態を例に説明する。
【0029】
図1は、本発明に係る複合機の一実施形態を示す外嵌視の斜視図であり、図2は、複合機の内部構造を説明するための正面断面視の説明図である。尚、図1および図2においてX−X方向を左右方向及び副走査方向、Y−Y方向を前後方向及び主走査方向といい、特に−X方向を左方、+X方向を右方、−Y方向を前方、+Y方向を後方という。
【0030】
図1に示す複合機10は、装置本体11に画像形成部12と、定着部13と、用紙貯留部14と、排紙部15と、画像読取部16と、操作部17とが形成されている。そして、排紙部15は、画像読取部16の下部で装置本体11の一部が凹没されることによって形成されている。
【0031】
装置本体11は、外観視で直方体状を呈した下部本体111と、この下部本体111の上方に対向配置された扁平な直方体状を呈する上部本体112と、この上部本体112と下部本体111との間に介設された連結体113とを備えている。
【0032】
連結体113は、下部本体111と上部本体112との間に排紙部15を形成させた状態で両者を互いに連結するための構造物であり、下部本体111の左部から立設されている。上部本体112は、その左部がかかる連結体113の上端部に支持されている。
【0033】
下部本体111には、画像形成部12、定着部13および用紙貯留部14が内装されているとともに、上部本体112には画像読取部16が装着されている。操作部17は、本実施形態においては、上部本体112の前縁部から前方に向かって突設されている。
【0034】
排紙部15は、下部本体111と上部本体112との間に形成されている。排紙部15は、下部本体111の上面に形成された胴内排紙トレイ151を有し、画像形成部12からのトナー画像が転写された用紙Pは、連結体113の下部からこの胴内排紙トレイ151へ向けて排出される。
【0035】
画像形成部12は、図2に示すように、用紙貯留部14から給紙された用紙Pにトナー像を形成させるものであり、上流側(右側)から下流側へ向けて順次配設されたマゼンタ用ユニット12M、シアン用ユニット12C、イエロー用ユニット12Y及びブラック用ユニット12Kと、を備えている。
【0036】
各ユニット12M,12C,12Y,12Kには、感光体ドラム121および現像装置122がそれぞれ備えられている。各感光体ドラム121は、図2において反時計方向へ向けて回転しつつ対応した現像装置122からトナーが供給される。各現像装置122には、装置本体11の前面側(図2の紙面の表側)に配設された図略のトナーカートリッジからトナーが補給される。
【0037】
各感光体ドラム121の直下位置には帯電器123がそれぞれ設けられているとともに、各帯電器123のさらに下方位置には露光装置124が設けられている。そして、各感光体ドラム121は、帯電器123によって周面が一様に帯電され、画像読取部16で読み取られた画像データに基づく各色に対応したレーザー光が各露光装置124から帯電後の感光体ドラム121の周面に照射されることにより、各感光体ドラム121の周面に静電潜像が形成される。かかる静電潜像に現像装置122からトナーが供給されることにより、感光体ドラム121の周面にトナー像が形成される。
【0038】
感光体ドラム121の上方位置には、当該各感光体ドラム121に当接するように駆動ローラ125aおよび従動ローラ125b間に張設された転写ベルト125(像担持体)が設けられている。
【0039】
この転写ベルト125は、各感光体ドラム121に対応して設けられたドラム用転写ローラ125cによって感光体ドラム121の周面に対向させられ状態で各感光体ドラム121と同期しながら駆動ローラ125aと従動ローラ125bとの間を周回する。
【0040】
従って、転写ベルト125が周回することによりその表面に対しマゼンタ用ユニット12Mの感光体ドラム121によるマゼンタのトナー像の転写が行なわれ、ついで転写ベルト125の同一位置にシアン用ユニット12Cの感光体ドラム121によるシアンのトナー像の転写が重ね塗り状態で行なわれ、ついで転写ベルト125の同一位置にイエロー用ユニット12Yの感光体ドラム121によるイエローのトナー像の転写が重ね塗り状態で行なわれ、最後のブラック用ユニット12Kの感光体ドラム121によるブラックのトナー像の転写が重ね塗り状態で行なわれる。
【0041】
これらによって転写ベルト125の表面にカラー画像形成される。この転写ベルト125の表面に形成されたカラー画像が用紙貯留部14から搬送されてきた用紙Pに転写されることになる。
【0042】
そして、各感光体ドラム121の図2における右方位置には当該感光体ドラム121の周面の残留トナーを除去して清浄化するクリーニング装置126が設けられている。クリーニング装置126によって清浄化処理された感光体ドラム121の周面は、新たな帯電処理のために帯電器123へ向かうことになる。
【0043】
クリーニング装置126で感光体ドラム121の周面から取り除かれた廃トナーは、所定の経路を通って図略のトナー回収ボトルに回収される。
【0044】
画像形成部12の左方位置には、上下方向に延びる用紙搬送路127が設けられている。この用紙搬送路127には、適所に搬送ローラ対127aが設けられ、用紙貯留部14からの用紙Pがこの搬送ローラ対127aの駆動で駆動ローラ125aに掛け回されている転写ベルト125へ向けて搬送される。
【0045】
用紙搬送路127には、駆動ローラ125aと対向した位置に周面が転写ベルト125の表面と対向した2次転写ローラ(転写ローラ)120が設けられ、用紙搬送路127を通して搬送されつつある用紙Pが転写ベルト125と2次転写ローラ120とに押圧挟持されることによって転写ベルト125上のトナー像が当該用紙Pに転写される。
【0046】
定着部13は、画像形成部12で転写された用紙P上のトナー像に対し定着処理を施すものであり、内部に加熱源であるハロゲンランプ等の通電発熱体を備えたヒートローラ131と、左方でこのヒートローラ131と対向配置された定着ローラ132と、この定着ローラ132と前記ヒートローラ131との間に掛け回された定着ベルト133と、左方でこの定着ベルト133と対向配置された加圧ローラ134とを備えている。
【0047】
2次転写ローラ120を介して画像形成部12から導出された転写処理済の用紙Pは、定着ベルト133を介して定着ローラ132および加圧ローラ134間に押圧挟持されつつ定着ベルト133による加熱処理でトナー像が定着され、用紙P上に安定した状態のカラー画像が形成される。定着処理の完了したカラー印刷済みの用紙Pは、定着部13の上部から延設された排紙搬送路129を通り、胴内排紙トレイ151へ向けて排出される。
【0048】
用紙貯留部14は、装置本体11における露光装置124の下方位置に挿脱自在に装着された給紙トレイ141と、下部本体111の右側面に開閉自在に設けられた手差しトレイ142とを備えている。給紙トレイ141には用紙束P1が貯留される。そして、給紙トレイ141に貯留された用紙束P1からピックアップローラ143の駆動で用紙Pが1枚ずつ繰り出され、用紙搬送路127を通って画像形成部12へ導入される。
【0049】
手差しトレイ142は、用紙Pを1枚ずつ手差しで給紙するためのものである。かかる手差しトレイ142から給紙された用紙Pは、給紙トレイ141の上方位置に形成されたバイパス搬送路を介して画像形成部12へ送り込まれる。
【0050】
画像読取部16は、上部本体112の上面開口に装着された、原稿が原稿面を下にして載置されるコンタクトガラス161と、このコンタクトガラス161上に載置された原稿を押さえるためのコンタクトガラス161に対し開閉自在とされた扁平な直方体状の原稿カバー162と、この原稿カバー162の上部に設けられた原稿自動読取装置163と、コンタクトガラス161上に載置された、あるいは原稿自動読取装置163からコンタクトガラス161上に送り込まれた原稿の原稿画像を読み取るための上部本体112に内装された光学系ユニット164と、を備えている。
【0051】
光学系ユニット164は、複数の白色LED(Light Emitting Diode)で構成された本発明における光源部としての光源165、第1ミラー169a、第2ミラー169b、第3ミラー169c、第1キャリッジ167a、第2キャリッジ167b、結像レンズ168、本発明における受光部としてのCCD(Charge CoupLED Device)166を備え、光源165及び第1ミラー169aは、第1キャリッジ167aによって支持され、第2ミラー169b及び第3ミラー169cは第2キャリッジ167bによって支持されている。
【0052】
尚、光源165に用いられる白色LEDは、従来から光源に用いられている冷陰極蛍光管等に比して、極めて短時間で点灯及び消灯することができ、さらに、消費電力が低いという利点を有している。
【0053】
光学系ユニット164による原稿読取方法としては、コンタクトガラス161上に載置された原稿を読み取るフラットベッド読取モードと、原稿を原稿自動読取装置163によって取り込み、その搬送途中で原稿を読み取るADF読取モードがある。
【0054】
フラットベッド読取モードでは、光源165がコンタクトガラス161上に載置された原稿を照射し、主走査方向1ライン分の反射光が第1ミラー169a、第2ミラー169b、第3ミラー169cの順に反射して、結像レンズ168に入射する。結像レンズ168に入射した光はCCD166の受光面で結像される。
【0055】
CCD166は、原稿画像の主走査方向のライン状に配列された複数の受光素子を備え、受光面に集光された光を複数の受光素子で光電変換することにより、原稿画像に応じたアナログ信号を生成する一次元のイメージセンサである。
【0056】
CCD166において原稿画像の主走査方向1ライン分の画像が同時に処理され、1ライン分の読み取りが終了すると、主走査方向と直交する方向(副走査方向、矢印Y方向)に第1キャリッジ167a及び第2キャリッジ167bが移動され、次のラインの読み取りが行われる。
【0057】
ADF読取モードでは、原稿自動読取装置163によって原稿が1枚ずつコンタクトガラス161上に取り込まれ、所定の読取位置上を原稿が通過するとき、光源165が原稿を照射し、主走査方向1ライン分の反射光が第1ミラー169a、第2ミラー169b、第3ミラー169cの順に反射して、結像レンズ168に入射する。結像レンズ168に入射した光はCCD166の受光面で結像される。続いて原稿は原稿自動読取装置163によって搬送され、次のラインが読み取られる。
【0058】
尚、以下の説明においては、フラットベッド読取モードによって原稿画像の読み取りを行うことを前提に説明を行う。
【0059】
光学系ユニット164で読み取られた原稿画像は、ディジタル化処理が施された上で画像形成部12の露光装置124へ向けて出力される。
【0060】
操作部17は、画像形成処理に関する各種の項目(用紙サイズや処理部数等)を入力操作するためのものである。
【0061】
図1に示すように、操作部17には、上記の原稿画像の読取動作の実行指示等、画像形成装置に備えられた各機能の実行指示を入力するためのスタートキー171や、数値情報を入力するためのテンキー172、さらには現に行われたテンキー172による入力情報やエラーメッセージ等を表示するLCD(Liquid crystal display)173等が設けられている。
【0062】
装置本体11の左面には、下部本体111内の左面側で紙詰り等のトラブルが生じたときに開放される、略左面全面に亘った開閉自在のメンテナンスドアー18が設けられている。このメンテナンスドアー18は、その下端部がドア軸181回りに回動可能に軸支され、閉止された状態から当該ドア軸181回りに反時計方向に向けた回動されることにより開放される。
【0063】
また、下部本体111内におけるメンテナンスドアー18の直ぐ右側には、画像形成部12の左側面を覆う開閉自在のカバーユニット(カバー部材)20が設けられている。そして、閉止された状態のカバーユニット20の右面と画像形成部12の左壁面との間の適所には、用紙搬送路127が形成されているとともに、閉止された状態のカバーユニット20の左面と閉止された状態のメンテナンスドアー18との間には、逆送搬送路182が形成されている。
【0064】
逆送搬送路182は、用紙Pに対して両面印刷を施すときに使用されるものである。すなわち、両面印刷を行うに際しては、定着部13で定着処理が施されることにより片面印刷が完了した用紙Pが逆送搬送路182を通って逆送され、表裏が反転された状態で再度画像形成部12の転写ベルト125と2次転写ローラ120との間に供給され、これによって用紙Pの他方の面に印刷処理が施される。
【0065】
逆送搬送路182で紙詰まりが発生したときは、メンテナンスドアー18が開放されてその解消作業が行われ、用紙搬送路127で紙詰まりが発生したときは、メンテナンスドアー18が開放された上でカバーユニット20が開放されてその解消作業が行われる。
【0066】
図3は、図1及び図2に示す複合機10の電気的な構成を示すブロック図である。図3に示すように、複合機10は、上記の画像形成部12と定着部13と用紙貯留部14と排紙部15と画像読取部16と操作部17の各部を動作制御する制御部1を備えている。
【0067】
制御部1は、データを一時的に保管する機能や作業領域としての機能を有するRAM、プログラムを予め記憶するROM、及び、前記プログラム等をROMから読み出して実行するCPUを備えて構成されており、CPUとRAM及びROMとはデータバスを介してデータの授受を行うように構成されている。CPUは、ROMに格納されているプログラムを適宜実行することで、そのプログラムの内容に応じた処理を実行する。
【0068】
また、制御部1は、読取制御部2と、調整指示受付部3と、光源駆動制御部4としての機能を有する。
【0069】
読取制御部2は、画像読取部16に備えられたキャリッジ167a,167bの読取動作を制御するものである。読取制御部2は、操作部17を介して原稿画像の読取要求が受け付けられると、上記のように、副走査方向にキャリッジ167a、167bを移動させながら1ライン分ずつ画像を読み取る制御を行う。
【0070】
調整指示受付部3は、操作者から画像データの色の境界をなだらかに調整する指示を受け付けるものである。例えば、調整指示受付部3は、操作部17を介して、原稿画像が線画や写真等の色の境界がなだらかに変化するイメージ画像であることが入力されると、CCD166で生成される画像データの色の境界をなだらかに調整する指示がされたものとして、当該入力を受け付ける。
【0071】
光源駆動制御部4は、原稿画像の主走査方向一ラインに対して予め定められた蓄積光量で光源165に照射を行わせる予め定められた駆動信号を光源165に出力して、照明光の駆動を制御するものである。
【0072】
具体的には、光源駆動制御部4は、光源165に対して電流を供給して光源165を点灯させる期間を示すオン信号と、光源165への電流の供給を停止して光源165を消灯させる時期を示すオン信号とで構成される駆動信号の波形を調整することにより、照明光の駆動を制御する。
【0073】
例えば、図4に示すように、光源駆動制御部4は、原稿画像を主走査方向に走査して1ライン分の読み取りを開始する時点と終了する時点を示す走査信号の周期T(ライン周期)に応じて、原稿画像を主走査方向に走査して1ライン分の読み取りを開始する時点からライン周期Tの4分の1(1/4×T)に相当する期間の経過後に、2分の1(1/2×T)に相当する期間、光源165に照明光の照射を行わせ、その後、ライン周期Tの4分の1(1/4×T)の期間、光源165による照射を停止させる駆動信号を出力する。
【0074】
ここで、図中の駆動信号の高さは、光源165により照射される光の強度を示し、当該光の強度と、光源165に照明光の照射を行わせる照射時間(1/2×T)との積が原稿画像の主走査方向一ラインに対する蓄積光量を示す。
【0075】
尚、ライン周期T及び原稿画像の主走査方向一ラインに対する蓄積光量は、光源165やCCD166等の特性に応じて予め定められている。また、予め定められた原稿画像の主走査方向一ラインに対する蓄積光量に対応して、原稿画像を読み取る光の強度及び照明光の照射時間も予め定められる。つまり、原稿画像の主走査方向一ラインの読み取りにおいて光源165により照射される駆動信号の波形は予め定められている。
【0076】
このとき、CCD166に備えられた受光素子のうちの3つの受光素子A1,A2,A3の開口部がラインL2の原稿画像を読み取る動作について説明する。図5に示すように、ラインL2の読み取り動作が開始してからライン周期Tの4分の1が経過した時点になると、光源165の点灯が開始される。このため、受光素子A1,A2,A3は、ラインL2に隣接するラインL1の4分の1程度に相当する反射光と、ラインL2の4分の3程度に相当する反射光を受光する。
【0077】
次いで、受光素子A1,A2,A3は、光源165が消灯される時点を示す、ラインL2の読み取りが開始してからライン周期Tの4分の3が経過する時点まで、主としてラインL2の反射光を受光し続け、さらに、ラインL2に隣接するラインL3の4分の1程度に相当する反射光を受光する。次いで、受光素子A1,A2,A3は、ライン周期Tの終了時点で、受光した反射光を光電変換して、ラインL2の画像データを生成する。
【0078】
つまり、当該生成されたラインL2を示す画像データには、ラインL2に隣接するラインL1及びラインL3の反射光を僅かながら受光した影響が含まれるため、原稿画像に比して、色の境界が僅かになだらかに変化する画像データが生成される。
【0079】
さらに、光源駆動制御部4は、調整指示受付部3により画像データの色の境界をなだらかに調整する指示が受け付けられた場合に、上記の駆動信号を分割して予め定められた蓄積光量での照射を光源165に行わせる。
【0080】
例えば、図6に示すように、光源駆動制御部4は、原稿画像がイメージ画像である場合に調整指示受付部3により画像データの色の境界をなだらかに調整する指示が受け付けられると、図中の駆動信号の高さで示される光の強度と分割後の各照射時間との積の合計で示される蓄積光量が、上記の予め定められた蓄積光量と等しくなるようにして駆動信号を分割する。したがって、原稿画像の主走査方向一ラインに対する蓄積光量を加減することなく照射時間が分割されるため、光源165の照射を開始する時点と終了する時点の間の期間が延長される。
【0081】
このとき、CCD166に備えられた受光素子のうちの3つの受光素子A1,A2,A3の開口部がラインL2の原稿画像を読み取る動作について説明する。
【0082】
図6に示すように、光源駆動制御部4により、光源165により照明光が照射される予め定められた照射時間(1/2×T)が分割され、光源165の照射を開始する時点と終了する時点の間の期間が延長されると、図7に示すように、ラインL2の読み取り動作の開始時点で光源165の点灯が開始され、受光素子A1,A2,A3は、ラインL2に隣接するラインL1の2分の1程度に相当する反射光とラインL2の2分の1程度に相当する反射光を受光する。
【0083】
次いで、受光素子A1,A2,A3は、光源165が消灯されるまで、ラインL1の2分の1程度に相当する反射光と、ラインL2の反射光と、ラインL3の2分の1程度に相当する反射光を受光し、ライン周期Tの終了時点で受光した反射光を光電変換してラインL2の画像データを生成する。
【0084】
つまり、当該生成されたラインL2を示す画像データには、ラインL2に隣接するラインL1の2分の1程度に相当する反射光及びラインL3の2分の1程度に相当する反射光を受光した影響が含まれるため、上記の予め定められた駆動信号に従って原稿画像を読み取る場合に比して、色の境界がなだらかに変化する画像データが生成されるようになる。
【0085】
つまり、画像読取部16と操作部17と制御部1とを備えて、本発明における画像読取装置の一例が構成されている。また、画像形成部12と定着部13は、本発明における画像読取装置により生成された画像データに基づいて動作を行う動作部の一例を示している。
【0086】
本構成によれば、例えば、イメージ画像を読み取って色の境界がなだらかに変化する画像データを得たい場合には、光源駆動制御部4により、蓄積光量を一定に保ちながら予め定められた駆動信号が分割されるため、主走査方向一ラインの読み取り時における照明光の照射が開始される時点から照射が終了する時点までの期間が延長されるようになる。
【0087】
したがって、副走査方向における1ラインの幅の原稿画像に対する反射光を読み取る影響が高められ、副走査方向における1ラインの幅で平均化されたなだらかな画像データを生成することができるようになる。
【0088】
尚、上記の図6は、光源駆動制御部4により分割された駆動信号の一例を示すものであり、これに限らず、光源駆動制御部4は、調整指示受付部3により受け付けられた画像データの色の境界をなだらかに調整する度合が高くなるにつれて、駆動信号を分割する数を増加させるように構成してもよい。
【0089】
この場合、光源駆動制御部4により、調整指示受付部3により受け付けられた画像データの色の境界をなだらかに調整する度合が高くなるにつれて駆動信号を分割する数が増加されるため、主走査方向一ラインの読み取り時における照明光の照射が開始される時点から照射が終了する時点までの期間を操作者から指定された画像データの色の境界をなだらかに調整する度合に応じて適切に延長させることができ、画像データの色の境界をなだらかに調整する度合を柔軟に調整することができるようになる。
【0090】
以下に、原稿画像を読み取る動作について、図8に示すフローチャートを用いて説明する。
【0091】
操作者によりコンタクトガラス161上に原稿画像が載置され、画像読取部16による原稿画像の読み取り動作の開始指示が操作部17を介して入力され、調整指示受付部3により、原稿画像が色の境界がなだらかな写真画像等のイメージ画像であって、CCD166で生成される画像データの色の境界をなだらかに調整する指示が受け付けられると(S1、調整指示受付ステップ;YES)、光源駆動制御部4は、例えば、図6に示すように、予め定められた駆動信号を分割して予め定められた蓄積光量での照射を光源165に行わせ、読取制御部2により原稿画像を読み取らせる(S2、光源駆動制御ステップ)。
【0092】
一方、原稿画像が色の境界が鮮明な文字画像等のテキスト画像である場合等、調整指示受付部3により、CCD166で生成される画像データの色の境界をなだらかに調整する指示が受け付けられなかった場合は(S1、調整指示受付ステップ;NO)、光源駆動制御部4は、予め定められた駆動信号(図4)を光源165に出力して、予め定められた蓄積光量での照射を光源165に行わせ、読取制御部2により原稿画像を読み取らせる(S3、光源駆動制御ステップ)。
【0093】
尚、上記各実施形態では、本発明に係る画像形成装置の一例を、スキャナ機能、プリンタ機能、コピー機能等を兼ね備えた複合機として説明したが、本発明に係る画像形成装置は複合機に限られず、他の画像読取装置を備えた画像形成装置(コピー機等)であっても構わない。
【0094】
尚、本発明は上述の実施形態の構成に限られず種々の変形が可能である。前記図1乃至図8に示した構成及び処理は、本発明に係る実施形態の例示に過ぎず、本発明を前記実施形態に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0095】
1 制御部(画像読取装置)
3 調整指示受付部
4 光源駆動制御部
10 複合機(画像形成装置)
16 画像読取部(画像読取装置)
17 操作部(画像読取装置)
165 光源(光源部)
166 CCD(受光部)
S1 調整指示受付ステップ
S2 光源駆動制御ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿画像に照明光を照射する光源部と、
前記光源部により前記照明光が照射された際に前記原稿画像から反射される反射光を受光し、当該受光した反射光に基づいて前記原稿画像の画像データを生成する受光部と、
操作者から前記画像データの色の境界をなだらかに調整する指示を受け付ける調整指示受付部と、
前記原稿画像の主走査方向一ラインに対して予め定められた蓄積光量で前記光源部に照射を行わせる予め定められた駆動信号を前記光源部に出力して、前記照明光の駆動を制御する光源駆動制御部と、
を備え、
前記光源駆動制御部は、前記調整指示受付部により前記画像データの色の境界をなだらかに調整する指示が受け付けられた場合に、前記駆動信号を分割して前記予め定められた蓄積光量での照射を前記光源部に行わせる画像読取装置。
【請求項2】
前記光源駆動制御部は、前記調整指示受付部により受け付けられた前記画像データの色の境界をなだらかに調整する度合が高くなるにつれて前記駆動信号を分割する数を増加させ、前記予め定められた蓄積光量での照射を前記光源部に行わせる請求項1記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記光源部は、複数のLED素子を備えてなる請求項1または2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記請求項1から3の何れかに記載の画像読取装置と、
前記画像読取装置で生成される画像データに基づいて動作を行う動作部と、
を備えた画像形成装置。
【請求項5】
原稿画像に照明光を照射する光源部と、前記光源部により前記照明光が照射された際に前記原稿画像から反射される反射光を受光し、当該受光した反射光に基づいて前記原稿画像の画像データを生成する受光部とを備えた画像読取装置における画像読取方法であって、
操作者から前記画像データの色の境界をなだらかに調整する指示を受け付ける調整指示受付ステップと、
前記原稿画像の主走査方向一ラインに対して予め定められた蓄積光量で前記光源部に照射を行わせる予め定められた駆動信号を前記光源部に出力して、前記照明光の駆動を制御する光源駆動制御ステップと、
を備え、
前記光源駆動制御ステップは、前記調整指示受付ステップにより前記画像データの色の境界をなだらかに調整する指示が受け付けられた場合に、前記駆動信号を分割して前記予め定められた蓄積光量での照射を前記光源部に行わせる画像読取方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−211468(P2011−211468A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76890(P2010−76890)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】