説明

画像読取装置及びこれを備えた画像形成装置

【課題】画像データのずれを的確に補正し、又、ずれが解消されているので裏写りも適切に解消でき、その結果、両面読取でも形成される画像データ及び画像の品質が高い画像読取装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】原稿自動送り装置4と、読取位置を通過する原稿に光を照射し、反射光により読取を行う第1読取部58を有するスキャナ装置5で構成される画像読取装置1において、原稿搬送装置は、下面の読取位置に対向する位置に、位置確認のための位置合わせマーク4Mを有し、位置合わせマーク4Mを第1読取部58で読み取った際の基準位置を記憶する記憶部と、第1読取部58の位置合わせマーク4Mの読取結果と、基準位置を比較して、原稿搬送装置の取付に起因する画像データのずれ量を検出する検出部とを有する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキャナ等の原稿の読取を行う画像読取装置に関する。又、この画像読取装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スキャナや、複写機等に備えられる画像読取装置には、読取を行う原稿を自動的に送り出す原稿搬送装置と、この原稿搬送装置に搬送され、読取位置を通過する原稿に対し光を照射し、CCD方式(Charge Coupled Device)やCIS方式(Contact Image Sensor)等により、その反射光をイメージセンサで電気信号に変換し原稿の画像を光学的に読み取るスキャナ装置で構成されるものがある。そして、一般に、原稿搬送装置はスキャナ装置に、支点を有しつつ、原稿載置面に対し上下方向に開閉可能に取り付けられ、原稿載置面に載置された原稿の押さえとして原稿搬送装置は利用される。
【0003】
しかし、原稿を搬送して読取を行う場合、スキャナ装置への原稿搬送装置の理想的な取り付け位置からズレがあると、読取位置に対し、原稿は、斜めに搬送されることになり、その結果、読み取られた画像データにズレが生じてしまう。
【0004】
更に、原稿搬送装置にCIS等のライン型のイメージセンサを設け、スキャナ装置の読取面の他面を読み取って、1度の原稿搬送で両面読取を行う画像読取装置がある。又、画像読取装置では、両面印刷された原稿を読み取ると、裏面が裏写りすることがあるが、両面読取を行える画像読取装置では、この裏写りを消去するため一面の画素の濃度から対応する位置にある他面の画素の濃度を減算して裏写りを消す画像処理をすることができる。しかし、読み取った画像データにずれがあると、この減算処理は適切に行われない。
【0005】
このような、両面印字された原稿の両面を同時に読み取る画像読取装置でのずれ及び裏写りを解消しようとする発明が、特許文献1に記載されている。特許文献1には、原稿の表面と裏面を同時に読み取る読取手段、表面、裏面の画像データをデジタルデータに変換する変換手段、デジタルデータに対して裏写りを抑制する画像処理を行う画像処理手段、を有し、画像処理手段は、裏面の画像データの濃度に基づいて段階的に裏写りの抑制強度を切り替えて画像処理を行い、表面と裏面の画像データの位置が一致するように、画像データの座標位置を補正するため、予め読取手段により表面と裏面の画像データとの位置ずれを測定するための測定用チャートを読み取った際の測定値を保持する画像読取装置が記載されている(請求項1、3及び段落0004〜0007参照)。
【特許文献1】特開2003−078766
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、例えば、工場出荷時やサービスマンによるメンテナンス時に、原稿搬送装置の取付位置の調整を行い、測定用チャートでずれの測定を行っても、輸送時の振動や、原稿搬送装置の上げ下げ(開閉)や、使用環境において衝撃が加わるなどして、調整時から原稿搬送装置の取付位置は、通常ずれてしまう。
【0007】
特許文献1をみると、測定用チャートに基づく測定値を保持し、読み取られた原稿の表面と裏面の座標位置の補正を行うが、測定用チャートの読取時点と、原稿搬送装置の取付位置にずれが生じていれば、座標位置の補正を行っても、ずれを解消できず、場合によっては、更にずれが大きくなるという問題がある。又、ずれのある状態では表面と裏面の画素を完全に対応させられないので、的確な裏写り消去処理を行えないという問題がある。
【0008】
又、特許文献1記載の発明においては、裏写りの補正を裏面の画像データの濃度に基づいて段階的に行うが、このような補正では、表面の濃度が全く考慮されないので、適切な裏写り消去処理を行えないという問題もある。例えば、裏面の画素の濃度が高ければ、これに対応する表面の画素の濃度が、もともと原稿でも高くても、画像データでは大きく濃度を減算される結果となる。
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、原稿搬送装置が理想的な取付位置からずれても、画像データのずれを的確に補正し、又、ずれが解消されているので裏写りも適切に解消でき、その結果、両面読取でも形成される画像データ及び画像の品質が高い画像読取装置及び画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、原稿を搬送する原稿搬送装置と、前記原稿搬送装置により搬送され、読取位置を通過する原稿に光を照射して反射光により読取を行う第1読取部を有するとともに原稿の画像データを生成するスキャナ装置で構成される画像読取装置において、前記原稿搬送装置は、前記スキャナ装置の上方に取り付けられるとともに、その下面の前記読取位置に対向する位置に、位置確認のためのマークを有し、前記マークを前記第1読取部で読み取った際の基準位置を記憶する記憶部と、前記第1読取部の前記マークを読取結果と、前記基準位置を比較することで、前記スキャナ装置への前記原稿搬送装置の取付に起因して画像データに生ずるずれのずれ量を検出する検出部とを有することとした。
【0011】
この構成によれば、原稿搬送装置の取付位置のずれにより生ずる画像データでのずれ量を検出することができる。具体的には、スキャナ装置のラインの読取方向(主走査方向)に対し、原稿搬送方向が完全に垂直であることが理想的であるが、画像読取装置の使用により、原稿搬送装置の取付位置にずれが生じ、若干原稿が傾いて搬送されるようになり、この搬送の傾きから画像データにずれ(傾き)が生ずる。そして、本構成は、このずれを検出することができる。
【0012】
又、請求項2に係る発明は、請求項1記載の画像読取装置において、前記スキャナ装置は、読み取った原稿の画像データに対し、画像処理を施すための画像処理部を有し、前記画像処理部は、前記検出部が検出したずれ量に基づき、前記第1読取部が読み取った原稿の画像データに対し、ずれを補正する画像処理を行うこととした。
【0013】
この構成によれば、読み取った画像データにおけるずれを補正して、ずれ、傾きのない画像データを得ることができる。
【0014】
又、請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載の画像読取装置において、前記マークは、前記読取位置において原稿が通過する原稿通過領域外で読み取られるように設けられ、前記第1読取部は、前記原稿通過領域外でマークを読取可能であることとした。
【0015】
この構成によれば、マークが読取位置における原稿通過領域外に設けられるので、原稿の読取を妨げることがない。
【0016】
又、請求項4に係る発明は、請求項1乃至3に記載の画像読取装置において、前記スキャナ装置は、前記読取位置の原稿通過領域を主走査方向で挟むように光を透過する透過穴が設けられ、前記マークは、前記透過穴の上方かつ前記原稿搬送装置の下面に設けられ、前記第1読取部は、前記透過穴を通して前記マークを読み取ることとした。
【0017】
この構成によれば、スキャナ装置側に読取位置における原稿通過領域を主走査方向で挟むようにマーク読取用の穴が設けられ、その穴の上方にマークが設けられるので、マークの穴に対する読取位置からずれ量を検出することができる。
【0018】
又、請求項5に係る発明は、請求項2乃至4に記載の画像読取装置において、前記原稿搬送装置は、一度の原稿の搬送で原稿の両面を読み取るため、前記第1読取部の読取面の他面を読み取る第2読取部を有し、前記画像処理部は、前記検出部が検出したずれ量に基づき、前記第2読取部が読み取った原稿の画像データに対し、ずれを修正する画像処理を行うこととした。
【0019】
この構成によれば、一度の搬送で両面読取を行う原稿搬送装置の第2読取部で読み取られた画像データの原稿搬送装置の取付位置に起因するずれを補正することができる。
【0020】
又、請求項6に係る発明は、請求項5に記載の画像読取装置において、前記記憶部は、あらかじめ測定された、前記第1読取部で読み取られた画像データと前記第2読取部で読み取られた画像データの相互の位置のずれ量を記憶し、前記画像処理部は、前記検出部が検出したずれ量に加え、前記記憶部に記憶されるあらかじめ測定されたずれ量に基づき、読み取られた原稿の画像データに対し、ずれを補正する画像処理を行うこととした。
【0021】
この構成によれば、マークの読取に基づく、原稿搬送装置の取付位置に関する補正に加え、第1読取部と第2読取部の主走査方向でのずれに起因して生ずる画像データのずれの補正も行うので、より一層、ずれの補正の精度を向上させることができるとともに、両面の画像データ及び各画素の位置を原稿と一致させることができる。
【0022】
又、請求項7に係る発明は、請求項5又は6記載の画像読取装置において、前記画像処理部は、ずれ補正後の前記第1読取部により読み取られた画像データ及びずれ補正後の前記第2読取部により読み取られた両方の画像データに基づき、一面の各画素が有する濃度により調整しつつ、一面の画像データを構成する各画素から、他面の対応する位置の各画素の濃度を減算する裏写り消去処理を行うこととした。
【0023】
この構成によれば、両面の画像データの各画素の位置を一致させた上で裏写り消去処理を行うから、的確な裏写り消去処理を行うことができる。しかも、一方の面の画素の濃度の減算を行う場合、他方の面の画素の濃度のみを考慮するのではなく、一方の面の画素の濃度を考慮して行うので、更に的確な裏写り消去処理を行うことができる。
【0024】
又、請求項8に係る発明は、請求項7記載の画像読取装置において、前記裏写り消去処理後の各画素の濃度を下記の式により算出することとした。
Dout=IDs−IDb×N/(IDs×Qc)
ただし、Dout:出力画素濃度、IDs:一面の注目画素濃度、IDb:他面の注目画素濃度、Qc:表面画素濃度による減算割合率、N:写り込み除去割合。
【0025】
この構成は、好適な各画素に対する裏写り消去処理の演算を示すものである。
【0026】
又、請求項9に係る発明は、請求項7又は8記載の画像読取装置において、裏写り消去処理の強度を設定するための操作入力部を有することとした。
【0027】
この構成によれば、裏写り消去処理の強度をユーザが設定・調整することができ、ユーザが原稿の透過度を考慮して設定を行うことができる。例えば、薄紙やトレーシングペーパー等の透過率が高い原稿の場合は、強度を大きくし、通常のコピー用紙ならば、それよりも強度を弱くするといった設定を行うことができる。
【0028】
又、請求項10に係る発明は、画像形成装置は、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画像読取装置を備えることとした。
【0029】
この構成によれば、読み取った原稿の画像データにずれがなく、又、ずれがないので裏写り消去処理を的確に行うことができるから、画像データの読取、及び、これに基づき形成される画像が高品質である画像形成装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0030】
上述の通り、本発明によれば、読み取った画像データにずれがなく、又、両面読取を行っても、的確な裏写り消去処理を行え、読み取られた画像データの品質の高い画像読取装置及び画像読取装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について図1〜7を参照しつつ説明する。但し、本実施の形態に記載されている構成、配置等の各要素は、発明の範囲を限定するものではなく単なる説明例にすぎない。
【0032】
まず、図1を用いて、本発明の実施形態における画像読取装置1を備えた電子写真方式の複写機2(画像形成装置に相当)の概略を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る複写機2の概略構成を示す正面から見た模型的断面図である。
【0033】
図1に示すように、本実施形態に係る複写機2は、箱形を呈する本体部3を有し、本体部3の上方に画像読取装置1が配される。画像読取装置1は、主として上方に配された原稿を搬送する原稿自動送り装置4(Document Processor。原稿搬送装置に相当)と、その下方に配され、原稿自動送り装置4により搬送され、読取位置を通過する原稿に光を照射し、反射光により読取を行う第1読取部58を有し、原稿の画像データを生成するスキャナ装置5から構成される。尚、画像読取装置1の詳細な説明は、図2を用いて後述する。
【0034】
まず、本体部3の内部の構成、動作について説明する。本体部3は、その内部に、シート供給部6、シート搬送路7、画像形成部8、定着装置9等を備え、本体部3の中央上方位置に排紙空間が設けられる。そこで、これらの構成をシートの搬送経路に沿って説明する。尚、図1に本体部3内でのシートの搬送経路を実線矢印で図示する。
【0035】
まず、シート供給部6は、本体部3の最下部に設けられ、画像形成部8に向け、例えば、コピー用紙、OHPシート、ラベル用紙等のシートを送り出す。そして、シート供給部6は、給紙カセット61、給紙ローラ62等で構成される。給紙カセット61は、複数のシートを積載・収納する。又、給紙ローラ62は、給紙カセット61のシート搬送方向下流側上部(図1における左上方位置)に設けられ、最上位のシートに常時当接する。シート供給の際、給紙ローラ62は所定の方向(図1では時計方向)に回転駆動し、シートを1枚ずつシート搬送路7に送り出す。
【0036】
前記シート搬送路7は、本実施形態では、複写機2内でシートを搬送し、シート供給部6から画像形成部8を経て、排出部71までシートを搬送する。そして、シート搬送路7には、駆動機構(不図示)により回転駆動する搬送ローラ対72や、シートを案内するための複数のガイド板や、レジストローラ対73等が設けられる。
【0037】
前記画像形成部8は、図1において、本体部3の中央左方の位置に配され、画像読取装置1が読み取った原稿や複写機2に入力された画像データ等に基づき、形成すべき画像のトナー像を形成し、シートに転写を行う。そして、画像形成部8は、像担持体としての感光体ドラム81、帯電装置82、露光装置83、現像装置84、転写ローラ85、クリーニング装置86等で構成される。
【0038】
前記感光体ドラム81は、画像形成部8の略中央に配され、駆動装置(不図示)によって所定の方向(図1では時計方向)に回転駆動し、外周面上にアモルファスシリコン等の感光層を有する。前記帯電装置82は、図1の感光体ドラム81の右斜め上方に対向して配され、所定の電位で感光体ドラム81の周面を帯電させる。尚、コロナ放電式のものの他、帯電ローラ、ブラシ等を用いても良い。
【0039】
前記露光装置83は、図1における感光体ドラム81及び帯電装置82の右側方に配され、一様に帯電される感光体ドラム81の周面に、形成すべき画像の画像データに基づき光を感光体ドラム81に照射し、周面を走査・露光する。これにより、感光体ドラム81の周面に静電潜像が形成される。前記現像装置84は、図1において感光体ドラム81の下方に設けられ、収容するトナーを所定の電位に帯電させ、そのトナーを感光体ドラム81の周面に形成された静電潜像に供給する。
【0040】
前記転写ローラ85は、図1において、感光体ドラム81の左斜め下方に回転可能に支持され、感光体ドラム81上に形成されたトナー像をシートに転写する。そのため、転写ローラ85は、感光体ドラム81に当接しニップを形成する。そして、このニップにシートが進入し転写ローラ85にトナーの帯電極性と逆の極性の電圧が印加され、トナー像のシートへの転写がなされる。前記クリーニング装置86は、図1において、感光体ドラム81の上方に配され、感光体ドラム81の周面上の残トナーや塵芥等を除去、回収する。
【0041】
前記定着装置9は、本実施形態では、加熱ローラ91、加圧ローラ92等を有し、シート上のトナー像を加圧・加熱しシートに固着させる。加熱ローラ91は内部に発熱体が内蔵され、加圧ローラ92は加熱ローラ91に圧接してニップを形成する。このニップにトナー像が転写されたシートを進入させトナーの定着が行われる。定着完了後のシートは、排出部71へと搬送され、排出ローラ対74により排出トレイ75に排出される。
【0042】
尚、排出ローラ対74は、正逆回転自在に構成されて、片面に画像形成がされたシートを一端排出しつつ、全て排出しきる前に逆回転して、シートのスイッチバックを行うことができる。そして、スイッチバックしたシートは、定着装置9と排出ローラ対74の間から、レジストローラ対73手前までをつなぐ再合流搬送路76により表裏逆転されつつ搬送される。そして、レジストローラ対73まで到達した片面印刷済みのシートは、再度感光体ドラム81と転写ローラ85のニップに進入し、他面にトナー像が転写され、定着装置9を経ることで両面印刷がなされることになる。従って、本実施形態の複写機1は、両面印刷機能を有する。
【0043】
次に、図2を用いて、本発明の実施形態に係る画像読取装置1の詳細を説明する。図2は、本発明の実施形態に係る複写機2の画像読取装置1部分の拡大模型的断面図である。
【0044】
まず、原稿自動送り装置4について説明する。
【0045】
前記原稿自動送り装置4は、読取を行う原稿の搬送を自動的、連続的に行い、原稿搬送方向上流側から順に、原稿トレイ41、センサ42、原稿搬送路43、原稿ピックアップローラ44、原稿搬送ローラ対45、白色板46、第2読取部47、原稿排出ローラ対48、原稿排出トレイ49等を備える。又、原稿自動送り装置4は、スキャナ装置5の上方に図2の紙面奥側を支点としてスキャナ装置5に開閉自在に取り付けられ、スキャナ装置5のコンタクトガラス51を上方から押さえるカバーとして機能する。
【0046】
前記原稿トレイ41は、複数枚の原稿を載置でき原稿搬送路43上流端に接続される。そして、前記原稿ピックアップローラ44は、原稿トレイ41上の原稿のうち最上面の原稿に当接し、原稿読取や複写をする旨の入力が、複写機2に対してなされると原稿搬送路43に向けて原稿を送り出す。
【0047】
センサ42は、例えば、原稿搬送路43の入口部分、言い換えると、原稿トレイ41の原稿搬送方向下流側の端部に、図2の紙面垂直方向に複数設けられる。センサ42は載置された原稿のサイズを確認し、原稿の搬送開始や原稿の終端を検知する。そして、画像読取装置1は、原稿の搬送速度と、読取位置までの距離から、原稿の読取位置通過開始と終了を判断し、その時間内に読み取られた濃度データを原稿の画像データとして用いる。
【0048】
原稿搬送路43に送り出された原稿は、複数の原稿搬送ローラ対45やガイドに導かれつつ、送り読取用コンタクトガラス51aの上面を通過する。この通過の際、スキャナ装置5が読取を行う。そして、読取が完了した原稿は、そのまま搬送され、原稿排出ローラ対48から原稿排出トレイ49に排出される。
【0049】
前記白色板46は、樹脂等で形成され、原稿自動送り装置4の下面かつ、送り読取用コンタクトガラス51aの上方位置に図2の紙面垂直方向に伸びて形成される。読取位置(=送り読取用コンタクトガラス51a)に原稿がない状態でスキャナ装置5が読取を行った際に、白を読み取るようにするため、白色板46が設けられる。尚、載置読取用コンタクトガラス51bの上面にも別途白色板46が設けられる。
【0050】
前記第2読取部47は、一度の原稿の搬送で原稿の両面を読み取るため、スキャナ装置5の第1読取部58が読み取る原稿の読取面(原稿トレイ41に載置される原稿の上面)の反対側の他面(原稿トレイ41に載置される原稿の下面)を読み取る。この第2読取部47は、CIS(Contact Image Sensor)方式により読取を行い、原稿に対し光を照射する光源と、その反射光をライン型のイメージセンサ(例えばCMOSセンサ)に導くレンズと、イメージセンサがユニット化される。このイメージセンサに入射した光が光電変換され、原稿の他面が、画像濃度に応じたアナログ信号に変換される。
【0051】
尚、以降の説明では、説明の便宜上、スキャナ装置5の第1読取部58が読み取る原稿の面を表面、第2読取部47が読み取る原稿の面を裏面として説明する。
【0052】
次に、本実施形態におけるスキャナ装置5を説明する。
【0053】
図2に示すように、本実施形態におけるスキャナ装置5は、本体部3の上部に備え付けられ箱形の筐体を有し、読取位置を通過する原稿に光を照射し、その反射光を光電変換する。そして、スキャナ装置5の上面に、図2の左方から、板状の送り読取用コンタクトガラス51a、載置読取用コンタクトガラス51bが配される。
【0054】
前記送り読取用コンタクトガラス51aは、原稿自動送り装置4により搬送される原稿が通過する面であり、送り読取用コンタクトガラス51aの下方で後述する第1移動枠52、第2移動枠53を留めて通過する原稿の読取が行われる。一方、載置読取用コンタクトガラス51bは、書籍や新聞など、原稿を1枚ずつ読み取る場合、原稿自動送り装置4を持ち上げた上で、読取面を下向きにして原稿を載置する面である。又、載置読取用コンタクトガラス51bでの原稿読取は、第1移動枠52と第2移動枠53を、後述する巻取ドラム55等によりホームポジションから図2の右方向に水平に移動させて行う。
【0055】
又、図2に示すように、画像読取装置1の筐体内には、第1移動枠52、第2移動枠53、ワイヤ54、巻取ドラム55、レンズ56、イメージセンサ57等が配され、これらで第1読取部58を構成する。第1移動枠52は、上方に光源59を、下方に第1ミラー501を支持する。第2移動枠53は、上方に第2ミラー502を、下方で第3ミラー503を支持する。又、第1移動枠52は第2移動枠53の上方かつ、図2の右方に配される。又、この第1移動枠52及び第2移動枠53にはワイヤ54が取り付けられ、ワイヤ54の他端が巻取ドラム55につながり、モータ、ギア等の駆動機構(不図示)により巻取ドラム55が正逆回転し、第1移動枠52と第2移動枠53が水平方向に移動する。
【0056】
又、第1移動枠52に支持される光源59は、送り読取用コンタクトガラス51a及び載置読取用コンタクトガラス51bの下方で対向するように、図2の紙面垂直方向に伸びて形成される。そして、第1ミラー501、第2ミラー502、第3ミラー503は、図2の紙面垂直方向に伸びて形成され、高反射率の材料が塗布される。
【0057】
ここで、原稿自動送り装置4に搬送される原稿の読取について説明する。まず、原稿トレイ41から搬送された原稿は、送り読取用コンタクトガラス51aと白色板46の間を通過しつつ搬送される。そして、送り読取用コンタクトガラス51aの下方位置に、第1移動枠52と第2移動枠53が配置され、通過する原稿に対し、光を照射する。
【0058】
具体的には、光源59から発せられた光が、送り読取用コンタクトガラス51a上の原稿又は白色板46に当たり、その反射光を第1ミラー501は、スキャナ装置5の左側面方向に向けて反射する。その光路上に第2ミラー502が配され、第2ミラー502は下方に向け、光を反射する。更に、その光路上に第3ミラー503が配され、第3ミラー503は、スキャナの右方に向けて光を反射する。その後、反射光は、レンズ56に集光され、例えば、CCDのラインセンサ等から構成されるイメージセンサ57で結像され、画像濃度に応じたアナログの電気信号に変換される。このように、原稿の主走査方向(原稿搬送方向と垂直な方向)にライン単位で読取を行い、このライン単位の読取を副走査方向(原稿搬送方向)に連続して繰り返し行うことで、1枚の原稿が読み取られる。
【0059】
一方、載置読取用コンタクトガラス51b上に載置された原稿を読み取る場合には、第1移動枠52及び第2移動枠53を巻取ドラム55やワイヤ54等により、スキャナ装置5の右側面方向(図2の右方)に移動させつつ、走査動作を、順次原稿端部まで連続的に行うことで、原稿画像全体が読み取られ、原稿画像が電気信号に変換される。
【0060】
次に、図3に基づき、本発明の実施形態に係る画像読取装置1のハードウェア構成と画像データの流れの一例について説明する。図3は、本発明の実施形態に係る画像読取装置1のブロック図である。図4は、本発明の実施形態に係る操作パネル21(操作入力部に相当)の一例を示す平面図である。
【0061】
上述したように、本実施形態の画像読取装置1は、原稿自動送り装置4と、スキャナ装置5を有するが、更に、画像読取装置1内部に制御部10、A/D変換部111及び112、画像処理部12、画像メモリ13等が設けられる。
【0062】
前記A/D変換部111は、第1読取部58で読み取られた原稿のアナログ信号を、A/D変換部112は、第2読取部47で読み取られた原稿のアナログ信号を、それぞれディジタル信号に変換する。A/D変換部11は、アナログ信号をサンプルホールドし、アナログ信号の出力の大きさに合わせて量子化を行う。即ち、原稿の各画素について、濃度データとしてアナログ信号をディジタル信号に変換して、原稿画像のデータ化を行う。
【0063】
前記画像処理部12は、読み取った原稿の画像データに対し、画像処理を施す部分であり、各画素の濃度データとしてA/D変換部11から出力された画像データに対し、各種の画像処理を施す。特に、本発明に関する画像処理として、詳細は後述するが、表面と裏面の画像データにおけるずれ、傾きの補正をする。又、裏面の画像の一部が表面に現れる裏写りを消去する処理を行う。尚、画像処理部12では、高品質の画像形成を行うため、γ補正処理、濃度調整処理、エッジ処理、ズーム処理、階調処理、2値化処理等の公知の各種の画像処理を行うことが可能であるが、これらの画像処理の詳細は複雑なものもあり、公知の技術を適用するものとして詳細は割愛する。
【0064】
前記画像メモリ13は、表面、裏面の読み取られた原稿の画像データが格納される部分であり、画像処理部12との画像データのやり取りや、画像処理中の画像データを一時的に画像メモリ13に記憶させることや、画像処理が完了した画像データを格納することも可能である。そして、例えば、複写機2本体を制御するため複写機2内に適宜設けられる本体制御部100に向けて、処理完了後の画像データを送信し、その画像データに基づき、露光装置83による露光を行って画像形成がなされる。尚、画像メモリ13は、高速のメモリを用いることができ、原稿の複数枚の画像データを記憶できる容量が確保される。
【0065】
前記制御部10は、画像読取装置1を構成する原稿自動送り装置4、スキャナ装置5、画像処理部12、画像メモリ13等の各部の動作制御を行う部分であり、画像読取装置1のコントローラに相当する。例えば、原稿の搬送、第1読取部58の光源59や第1移動枠52、第2移動枠53の位置や移動、第2読取部47の動作の制御等を行い、適切に原稿の画像データ化がなされるように制御を行う。
【0066】
例えば、制御部10は、CPU14(Central Processing Unit)、RAM15(Random Access Memory)、フラッシュROM16(記憶部に相当)、タイマ17等を有するように構成できる。そして、CPU14は、中央演算処理装置であり、フラッシュROM16が記憶する制御プログラム等を読み出し、RAM15に展開、演算を行って、画像読取装置1の各部の動作が制御される。尚、フラッシュROM16は、後述する位置あわせマークを第1読取部58で読み取った際の基準位置を記憶することができる。
【0067】
尚、タイマ17は、センサ42による原稿搬送開始時間や原稿の終端検知時間を計時する。この計時に基づき、原稿自動送り装置4の原稿搬送速度から原稿サイズや、原稿搬送速度と原稿トレイ41から送り読取用コンタクトガラス51aまでの距離から、原稿の読取位置(送り読取用コンタクトガラス51a)への到達や原稿の終端が読取位置を通過したことを検出する。
【0068】
そして、制御部10は、本体制御部100と通信可能に接続されており、画像読取装置1の動作タイミング等の指示を本体制御部100から受け付ける。そして、本体制御部100には、複写機2及び画像読取装置1の動作に関する入力・設定を行うための操作パネル21が接続される。
【0069】
この操作パネル21は、複写機2の正面上方に設けられ、図4に示すように、数字等に関する入力を行うテンキー22や原稿の読み取りや複写の開始を指示するスタートキー23等、入力、設定用の各種キーを備える。そして、操作パネル21は、装置の動作状態や各種メッセージを表示し、又、タッチパネル式で各種設定、モード選択等を行える液晶表示部24を備える。ユーザは、操作パネル21から、画像の処理に関する拡大縮小機能、濃度調整機能等、複写機2の有する多様な機能を駆使するため、複写機2の動作・機能の設定・入力を行う。
【0070】
又、本実施形態における複写機2は、原稿自動送り装置4による原稿の1度の搬送で、原稿の両面読取を行うことができる。そして、ユーザは、操作パネル21の各キーや液晶表示部24に入力・設定を行って、この両面読取を行う両面読取モードを選択できる。詳細は後述するが、裏写り消去処理の強度の設定を行うことも可能である。これらの入力・設定信号が操作パネル21から本体制御部100に送信され、本体制御部100から制御部10に転送され、ユーザの入力設定通りに画像読取装置1が制御される。
【0071】
次に、図5に基づき、本発明の実施形態に係る画像読取装置1の両面読取におけるずれについて説明する。図5(a)は、本発明の実施形態に係る第1読取部58と第2読取部47との間の読取の位置ずれを説明するための説明図、(b)は(a)で一点鎖線で示す部分の拡大図である。
【0072】
まず、例えば、透過度の高い原稿(テストチャート)を画像読取装置1により両面読取を行った場合、表面と主走査方向で鏡面処理(ミラー処理)を施した裏面の画像データを重ね合わせると、完全に一致することが理想的である。尚、透過度の高い原稿とは、OHPシートのような、原稿のうちの白に相当する部分が透光性を有するような原稿である。
【0073】
具体的にいうと、図5(a)に示すような、窓枠型図形が描かれたOHPシートでは、表面からみた画像と裏面のから見た画像は同様である。しかし、一般に、第1読取部58が読み込んだ表面の画像データGs(図5(a)において実線で示す。)と、第2読取部47が読み込んだ裏面のミラー処理後の画像データGb(図5(a)において破線で示す。)を重ねると、ずれが生じている。
【0074】
このずれの主な原因の1つは、各画像読取部は複数の光学系部材から構成されており、第1読取部58の主走査方向と第2読取部47の主走査方向を完全に一致させての各光学系部材の取り付けの困難性である。即ち、このずれは、両画像読取部の主走査方向が完全に平行ではないため生ずる。又、光学系部材をあまりに高精度に取り付けようとすれば、コストが増大するという問題もある。そのため、図5(a)に示すように、第1読取部58による画像データGsと第2読取部47による画像データGbに、ずれが生ずる。
【0075】
そこで、本実施形態の画像読取装置1では、テストチャートの読取結果から表面の画像データ上の各画素に対応する裏面の画素がどこにくるか、即ち、ずれ量を検出する。このずれ量は、例えば、図5(b)に示すように、表面と裏面の画像データの一部に着目することで求めることができる。
【0076】
例えば、図5(a)に1点鎖線で示す窓枠型図形の左上隅に着目すれば、図5(b)に示すように、窓枠型図形の角の頂点が、主走査方向(ここでは、図5の左右方向)と副走査方向(ここでは、図5の上下方向)で、どれほどずれているかを検出すればよい。具体的に、表面の画像データの頂点Vsの座標と、裏面の画像データの頂点Vbの座標の差分をとれば、表面の画像データと裏面の画像データの主走査方向のずれ量D1、副走査方向のずれ量D2、その傾きD2/D1を検出することができる。これらのずれ量(例えば、ドット数でカウント)や傾きの検出は、画像処理部12やCPU14が行えばよい。そして、この両画像読取部の相互のずれ量等を、工場出荷時等の調整時にあらかじめ測定しておき、例えば、フラッシュROM16等の不揮発性メモリに記憶しておく。
【0077】
例えば、検出されたずれ量に基づき、一方の面を基準として他方の面の画像データの各画素の座標を移動させる画像処理を施すことができる。例えば、工場出荷時、第1読取部58の主走査方向を原稿の搬送方向に対し垂直となるように複写機2を調整するならば、第1読取部58で読み取られた画像データを基準として、第2読取部47で読み取られた画像データの各画素の座標を移動させる補正を画像処理部12が行えばよい。又、ずれ量の半分の値で両面の画像データの各画素を移動させ、ずれを平均的に補正する処理を画像処理部12が行ってもよい。これにより、複写物の読取を繰り返すごとに、原稿と比較してずれ、傾きが大きくなっていくことを防ぐことができる。
【0078】
しかし、読み取った画像データのずれは、第1読取部58と第2読取部47の取付の平行度のみ起因せず、スキャナ装置5に対する原稿自動送り装置4の取付位置にずれが生じている場合にも生ずる。
【0079】
そこで、スキャナ装置5に対する原稿自動送り装置4の取付位置にずれに起因する画像データのずれの補正について図6及び7に基づき説明する。図6は、画像データのずれを補正する構成を説明するための図であり、(a)は、読取位置近傍の拡大模型的断面図であり、(b)は、送り読取用コンタクトガラス51aを上方から見た模式図である。図7は、図6(b)の一点鎖線部分を拡大し、位置合わせ穴5Hを下方から見た拡大平面図である。
【0080】
図2、6(a)で示すように、原稿自動送り装置4の下面は平面状であり、スキャナ装置5の上面に対し原稿自動送り装置4の下面が平行に接するように取り付けられる。又、原稿自動送り装置4は、支点を有しつつ取り付けられ、上下方向に開閉可能とされ、第1読取部58の主走査方向(送り読取用コンタクトガラス51aの長辺方向)は、送り読取用コンタクトガラス51aに対し、垂直な方向に原稿を搬送するように、例えば、工場出荷時にスキャナ装置5への取付調整がされる。
【0081】
しかし、複写機2の運搬時の振動や衝撃、原稿自動送り装置4の開閉や与えられた衝撃等で、原稿自動送り装置4が調整位置からずれることがある。この取付位置にずれがあると、主走査方向に対し垂直に原稿が搬送されず、原稿に対し、読み取られた画像データは傾くことになる。言い換えると、原稿に対しずれた画像データが読み取られる。
【0082】
そこで、このような原稿自動送り装置4の物理的なずれを検知するための構成として、スキャナ装置5側に位置合わせ穴5H(透過穴に相当)が、原稿自動送り装置4側に位置合わせマーク4Mが設けられる。
【0083】
前記位置合わせ穴5Hは、図6(b)に示すように、第1読取部58が原稿の読取を行う読取位置としての送り読取用コンタクトガラス51aの端部に設けられる(尚、位置合わせ穴5Hは、送り読取用コンタクトガラス51aを貫通する必要はなく、描かれたものでよい。)。本実施形態の送り読取用コンタクトガラス51aは、その全域を原稿が通過する原稿通過領域F1とされるのではなく、主走査方向の両端から一定の距離で位置情報スキャニング領域F2が設けられる。言い換えると、読取位置の原稿通過領域F1を主走査方向で挟むように光を透過する位置合わせ穴5Hが位置情報スキャニング領域F2に設けられ、位置情報スキャニング領域F2に挟まれた領域が原稿通過領域F1となる。尚、第1読取部58は、この位置合わせ穴5Hの上方の画像を読み取ることができるように光源59、各ミラー等の光学系部材は主走査方向に伸びて形成される。
【0084】
一方、図7に示すように、前記位置合わせマーク4Mは、原稿自動送り装置4の下面の読取位置に対向する位置に設けられる。具体的には、位置合わせマーク4Mは、読取位置において原稿が通過する原稿通過領域F1外で読み取られるように、原稿自動送り装置4の下面かつスキャナ装置5の上方に配される白色板46に記される。即ち、白色板46の下面かつ、位置合わせ穴5Hの上方位置に位置合わせマーク4Mが記される。
【0085】
そして、原稿通過領域F1外の位置合わせ穴5H上方に位置する位置合わせマーク4Mを、位置合わせ穴5Hを通して第1読取部58が読み取る。そして、位置合わせ穴5H、位置合わせマーク4Mを読み取るため、第1移動枠52、第2移動枠53は、副走査方向で送り読取用コンタクトガラス51aの下方で移動される。尚、このマーク読取は、複写機2の電源投入時、画像読取前のキャリブレーション(較正)動作時等に行えばよい。
【0086】
次に、位置合わせ穴5H、位置合わせマーク4Mを利用した画像データのずれの補正について図7に基づき説明する。尚、マークは、十字型を一例として示すが、これに限られるものではない。
【0087】
まず、図7において、破線で示す位置合わせマーク4M1は、工場出荷時等の原稿自動送り装置4の取付位置調整直後に、位置合わせマークを読み取った際のマークの位置を示す(以後、このマークを「基準位置マーク4M1」という。)。尚、基準位置マーク4M1を読み取った画像データやその位置情報は、フラッシュROM16等に記憶される。
【0088】
そして、図7に実線で示すマークは、複写機2の使用環境で、実際に第1読取部58が、位置合わせマーク4Mを読み取った際の位置の一例を示す。第1読取部58の位置合わせマーク4Mの読取結果と、基準位置マーク4M1を比較することで、スキャナ装置5への前記原稿搬送装置の取付に起因して画像データに生ずるずれのずれ量をCPU14や画像処理部12が検出できる。即ち、マーク4Mと、マーク4M1とを比較すれば、主走査方向、副走査方向におけるずれ量D3、D4やその傾きD4/D3が検出される。
【0089】
具体的に、このずれ量や傾きを検出する演算では、例えば、CPU14や画像処理部12が、基準位置マーク4M1の交点CP1と、読み取られた実際の位置合わせマーク4Mの交点CPとの位置合わせ穴5H内における座標を比較すれば、ドット数でずれ量がカウントできる。そして、検出されたずれ量に基づき、画像処理部12が、第1読取部58で読み取られた画像データの各画素を適切な位置に移動させてずれを補正する画像処理を行うことができる。更に、上述した、あらかじめテストチャートにより測定されフラッシュROM16等に記憶されるずれ量もあわせて、ずれ量の加減算を行いつつ、画像処理部12が表面、裏面の画像データの各画素を移動させる処理を行えばよい。
【0090】
又、同様に、画像処理部12は、テストチャートにより測定されたずれ量、及び、位置あわせマークの読み取りにより検出されたずれ量に基づき、第2読取部47が読み取った原稿の画像データに対し、ずれを修正する画像処理を行うことができる。
【0091】
このように、本実施形態の画像読取装置1は、表面の画像データと裏面の画像データの各画素の位置が、原稿と同じになるように、2つのずれ量に基づき画像処理をおこなって、補正を行う。従って、高精度に、各面の画像データの補正位置を調整し、表面と裏面の位置あわせを行うことができる。
【0092】
そして、このように、高精度に位置合わせの画像処理を行った画像データに基づけば、裏写り消去処理を的確に行うことができるので、本発明の実施形態に係る裏写り消去処理について以下述べる。
【0093】
例えば、両面印刷されたトレーシングペーパーや薄手の用紙の画像データの読取を行った場合、一方の面の画像が他方の面の画像に影響を与えることがある。即ち、表面の画像データに裏面の画像の鏡像が透過して現れることがある。このような裏写りのある画像データは視認性が悪く、原稿の忠実性が損なわれている。そこで、本実施形態の画像読取装置1は、ずれ補正後の第1読取部58により読み取られた画像データ及びずれ補正後の第2読取部47により読み取られた両方の画像データに基づき、一面の各画素が有する濃度により調整しつつ、一面の画像データを構成する各画素から、他面の対応する位置の各画素の濃度を減算する裏写り消去処理を行う。尚、以下では、表面の画像データに裏面の画像データが影響を与える裏写り消去の画像処理を例に説明するが、裏面の画像データに表面の画像データが現れる裏写りの場合にも同様に適用できる。
【0094】
表面の画像データに裏面の画像データが現れた場合、従来から、表面の各画素の濃度から主走査方向で鏡像処理(ミラー処理)した裏面の画像データの同じ位置の画素の濃度を減算することで、裏面の裏写りを消去する画像処理が行われている。
【0095】
本実施形態の画像読取装置1でも同様の画像処理を行えば、表面と裏面の位置あわせが高精度になされているので、従来よりも的確に裏写り消去処理を行うことができる。更に、本実施形態の画像読取装置1は、表面の各画素の有する濃度を考慮に入れつつ、濃度を減算する画像処理を行う。これにより、表面でも濃い部分が、裏写り消去処理のため濃度が低くなってしまうことがない。
【0096】
具体的には、表面の画像データの各画素に対し、以下の式に示す画像処理を施す。
【数1】

但し、Dout:出力画素濃度、IDs:表面の注目画素濃度
IDb:裏面の注目画素濃度、Qc:表面画素濃度による減算割合
N:ユーザ設定による裏写り除去割合
【0097】
式における出力画素濃度(Dout)とは、裏写り消去処理後に出力される画素の濃度である。表面の注目画素濃度(IDs)とは、裏写り消去処理を行う対象となっている画素の濃度である。裏面の注目画素濃度(IDb)とは、裏写り消去処理を行う表面の画素対応する裏面の画素の濃度である。尚、裏面の注目画素は、主走査方向の中心を境界として、画素の位置を入れ替える画像処理(ミラー処理)を行った裏面の画像データにおいて、表面の注目画素と座標位置が一致する画素である。これは、表面から透過して見る裏面を再現している。表面画素濃度による減算割合(Qc)とは、表面濃度を考慮する割合である。又、ユーザ設定による裏写り除去割合(N)とは、表面の濃度の減算量を決める裏写り消去処理の強度を示す値であり、係数として扱うことができる。
【0098】
そして、このNを原稿の透過率を考慮してユーザが操作パネル21から設定できるようにすれば、原稿の種類等を考慮してユーザが裏写り消去処理を調整することができる。
【0099】
ここで、上記式は以下のように変形でき、場合に分けて、特徴を説明する。
【数2】

【0100】
(1)IDsがIDbに比べ、かなり大きい場合
IDs(表面の注目画素濃度)がIDb(裏面の注目画素濃度)に比べて大きい場合、もともと、原稿の表面における注目画素の濃度が高いと考えられ、裏写りが生じていても影響は少なく、必要以上に裏面の注目画素の濃度を減じる必要はない。そこで、式をみると、右辺の第2項の分母が大きくなる結果、Doutは、IDsの濃度が大きく減算されないので、理想的な裏写り消去処理を行うことができる。
【0101】
(2)IDsがIDbに比べて小さい場合
IDs(表面の注目画素濃度)がIDb(裏面の注目画素濃度)に比べて小さい場合、もともと、原稿の表面における注目画素の濃度は低く、裏写りの影響がでやすいと考えられ、裏面の注目画素の濃度を減じる必要が出てくる。そこで、式をみると、右辺の第2項の分子が大きくなる結果、Doutは、IDsの濃度が低くなるように調整された出力となり、理想的な裏写り消去処理を行うことができる。
【0102】
(3)Qc(表面画素濃度による減算割合)
Qcは、表面の画素を濃度に応じ表面の画素の濃度を減じる度合いを調整するものである。式をみると、表面の画素の濃度が低ければ低いほど、Qcの値を小さくすることで、右辺の第2項の分母が小さくなる結果、Doutは、よりIDsから濃度を減じたものとなるように調整される。一方、表面の画素の濃度が高ければ高いほど、Qcの値を大きくすることで、右辺の第2項の分母が大きくなる結果、Doutは、よりIDsの濃度のままとなるように調整される。
【0103】
即ち、表面の注目画素が、原稿で濃度が低い(例えば、白)画素ほど、裏写りが現れやすいので、そのような濃度の低い表面の注目画素ほど、濃度の減算量を大きくする。尚、Qcの値は、固定してもよいが、IDsに応じて変動させてもよく、濃度に応じてQcの値を記憶したテーブルを例えば、フラッシュROM16に記憶するようにしても良い。
【0104】
(4)N(ユーザ設定による裏写り除去割合)について
Nは、ユーザの設定により裏写り消去処理をどれだけ強く行うかを示す値であり、式をみると、Nの値が大きければ、その分、右辺の第2項の分子が大きくなる結果、Doutは、IDsの濃度が低く調整された出力となり、Nの値が小さければ、その分、右辺の第2項の分子が大きくなる結果、Doutは、IDsの濃度の調整量が少ない出力となる。
【0105】
このように、本実施形態では、表面の注目画素の濃度に着目し、その濃度に応じて減算量を調整する画像処理を行う。ここで、表1〜3に、この画像処理の一例を示す。尚、表1〜3では、画素の濃度を8ビット、256階調で表す場合の例を示す。例えば、この階調による濃度表現では、0=白→255=黒となる。
【表1】

【表2】

【表3】

【0106】
上記表1〜3に示したように、表面の濃度が高ければ(255に近ければ)、その画素の濃度はほとんど減算されず、表面の画素が低ければ(0に近ければ)、減算量が大きくなる。尚、表3において、計算結果を示すため、マイナスの値を示しているが、
|Dout|≧0なので、結局、マイナス部分の濃度の階調値は0(=白)となる。
【0107】
このようにして、原稿搬送装置(原稿自動送り装置4)の取付位置のずれにより生ずる画像データでのずれ量を検出することができる。具体的には、スキャナ装置5のラインの読取方向(主走査方向)に対し、原稿搬送方向が完全に垂直であることが理想的であるが、画像読取装置1の使用により、原稿搬送装置の取付位置にずれが生じ、若干原稿が傾いて搬送されるようになり、この搬送の傾きから画像データにずれ(傾き)が生ずる。そして、本構成は、このずれを検出することができる。又、読み取った画像データにおけるずれを補正して、ずれ、傾きのない画像データを得ることができる。
【0108】
又、マーク(位置あわせマーク)が読取位置における原稿通過領域F1外に設けられるので、原稿の読取を妨げることがない。又、スキャナ装置5側に読取位置における原稿通過領域F1を主走査方向で挟むようにマーク読取用の穴(位置あわせ穴)が設けられ、その穴の上方にマークが設けられるので、マークの穴に対する読取位置からずれ量を検出することができる。又、一度の搬送で原稿の両面読取を行う原稿搬送装置における第2読取部47(第2読取部47)で読み取られた画像データの原稿搬送装置の取付位置に起因するずれを補正することができる。又、マークの読取に基づく、原稿搬送装置の取付位置に関する補正に加え、第1読取部58(第1読取部58)と第2読取部47の主走査方向でのずれに起因して生ずる画像データのずれの補正も行うので、より一層、ずれの補正の精度を向上させることができるとともに、両面の画像データ及び各画素の位置を原稿と一致させることができる。
【0109】
又、両面の画像データの各画素の位置を一致させた上で裏写り消去処理を行うから、的確な裏写り消去処理を行うことができる。しかも、一方の面の画素の濃度の減算を行う場合、他方の面の画素の濃度のみを考慮するのではなく、一方の面の画素の濃度を考慮して行うので、更に的確な裏写り消去処理を行うことができる。又、操作パネル21から裏写り消去処理の強度をユーザが設定・調整することができ、ユーザが原稿の透過度を考慮して設定を行うことができる。例えば、薄紙やトレーシングペーパー等の透過率が高い原稿の場合は、強度を大きくし、厚手の紙ならば、強度を小さくし、通常のコピー用紙ならその中間の強度とするといった設定を行うことができる。又、この構成によれば、読み取った原稿の画像データにずれがなく、又、ずれがないので裏写り消去処理を的確に行うことができるから、画像データの読取、及び、これに基づき形成される画像が高品質である画像形成装置を提供することができる。
【0110】
次に、他の実施形態について述べる。上記実施形態では、画像の読取を白黒で行う画像読取装置1、画像形成装置について示したが、カラー画像を読取可能な画像読取装置1にも適用することが可能である。その場合、上記と同様、ずれを高精度に補正した後、RGB等で表現される画素の濃度の減算を行えばよい。
【0111】
又、上記では、両面画像読取について説明したが、両面印刷の原稿について、片面のみ読み取りを行う場合でも、画像の読取は両面で行うようにして、裏写り消去処理を行い、その内の片面のみの画像データを利用するようにすればよい。尚、その設定は、操作パネル21から行なえばよい。
【0112】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、スキャナ等の画像読取装置やこれを備えた画像形成装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本実施形態に係る複写機の概略構成を示す正面から見た模型的断面図である。
【図2】本実施形態に係る複写機の画像読取装置部分の拡大模型的断面図である。
【図3】本実施形態に係る画像読取装置のブロック図である。
【図4】本実施形態に係る操作パネル(操作入力部に相当)の一例を示す平面図である。
【図5】(a)は、本実施形態に係る第1読取部と第2読取部との間の読取の位置ずれを説明するための説明図、(b)は(a)の一点鎖線で示す部分の拡大図である。
【図6】画像データのずれ補正のための構成を説明するための図であり、(a)は、読取位置近傍の拡大模型的断面図であり、(b)は、送り読取用コンタクトガラスを上方から見た模式図である。
【図7】本実施形態に係る位置合わせ穴を下方から見た拡大平面図である。
【符号の説明】
【0115】
1 画像読取装置 4 原稿自動送り装置(原稿搬送装置)
12 画像処理部 47 第2読取部
14 CPU(検出部) 4M 位置合わせマーク(マーク)
16 フラッシュROM(記憶部) 5 スキャナ装置
2 複写機(画像形成装置) 58 第1読取部
21 操作パネル(操作入力部) 5H 位置合わせ穴(透過穴)
F1 原稿通過領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を搬送する原稿搬送装置と、前記原稿搬送装置により搬送され、読取位置を通過する原稿に光を照射して反射光により読取を行う第1読取部を有するとともに原稿の画像データを生成するスキャナ装置で構成される画像読取装置において、
前記原稿搬送装置は、前記スキャナ装置の上方に取り付けられるとともに、その下面の前記読取位置に対向する位置に、位置確認のためのマークを有し、
前記マークを前記第1読取部で読み取った際の基準位置を記憶する記憶部と、
前記第1読取部の前記マークを読取結果と、前記基準位置を比較することで、前記スキャナ装置への前記原稿搬送装置の取付に起因して画像データに生ずるずれのずれ量を検出する検出部とを有することを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記スキャナ装置は、読み取った原稿の画像データに対し、画像処理を施すための画像処理部を有し、
前記画像処理部は、前記検出部が検出したずれ量に基づき、前記第1読取部が読み取った原稿の画像データに対し、ずれを補正する画像処理を行うことを特徴とする請求項1記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記マークは、前記読取位置において原稿が通過する原稿通過領域外で読み取られるように設けられ、
前記第1読取部は、前記原稿通過領域外でマークを読取可能であることを特徴とする請求項1又は2記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記スキャナ装置は、前記読取位置の原稿通過領域を主走査方向で挟むように光を透過する透過穴が設けられ、
前記マークは、前記透過穴の上方かつ前記原稿搬送装置の下面に設けられ、
前記第1読取部は、前記透過穴を通して前記マークを読み取ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記原稿搬送装置は、一度の原稿の搬送で原稿の両面を読み取るため、前記第1読取部の読取面の他面を読み取る第2読取部を有し、
前記画像処理部は、前記検出部が検出したずれ量に基づき、前記第2読取部が読み取った原稿の画像データに対し、ずれを修正する画像処理を行うことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記記憶部は、あらかじめ測定された、前記第1読取部で読み取られた画像データと前記第2読取部で読み取られた画像データの相互の位置のずれ量を記憶し、
前記画像処理部は、前記検出部が検出したずれ量に加え、前記記憶部に記憶されるあらかじめ測定されたずれ量に基づき、読み取られた原稿の画像データに対し、ずれを補正する画像処理を行うことを特徴とする請求項5に記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記画像処理部は、ずれ補正後の前記第1読取部により読み取られた画像データ及びずれ補正後の前記第2読取部により読み取られた両方の画像データに基づき、一面の各画素が有する濃度により調整しつつ、一面の画像データを構成する各画素から、他面の対応する位置の各画素の濃度を減算する裏写り消去処理を行うことを特徴とする請求項5又は6記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記裏写り消去処理後の各画素の濃度を下記の式により算出することを特徴とする請求項7記載の画像読取装置。
Dout=IDs−IDb×N/(IDs×Qc)
ただし、Dout:出力画素濃度
IDs:一面の注目画素濃度
IDb:他面の注目画素濃度
Qc:表面画素濃度による減算割合率
N:写り込み除去割合
【請求項9】
裏写り消去処理の強度を設定するための操作入力部を有することを特徴とする請求項7又は8記載の画像読取装置。
【請求項10】
請求項1乃至9記載のいずれか1項に記載の画像読取装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−71779(P2009−71779A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240961(P2007−240961)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】