説明

画像読取装置及び画像データ転送方法

【課題】読取対象物の両面を同時に読取可能な画像読取装置において、読み取った画像デ
ータを格納するためのメモリーの容量を低減することを第1に目的とする。また、画像読
取装置において、データ転送時間を短縮することを第2の目的とする。
【解決手段】画像読取装置であって、第1の画像読取センサーと、第2の画像読取センサ
ーと、読み取った表面画像データ及び裏面画像データとを格納可能なメモリーと、表面画
像データの一部と裏面画像データの一部とをメモリーに書き込む部分書込処理と、部分書
込処理でメモリーに書き込んだ表面画像データと裏面画像データとを読み出して読取装置
の外部へ転送する部分読出処理とを実行するメモリー制御部と、を備え、メモリー制御部
は、部分書込処理と部分読出処理とを交互に複数回実行することで、表面画像データ及び
裏面画像データを当画像読取装置の外部へ転送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置及び該装置で読み取った画像データの転送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2系統の読取手段で同時に原稿の両面を読み取るファクシミリが知られている(
例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−205524号公報
【特許文献2】特開2001−58431号公報
【特許文献3】特許第3378749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、読み取った表面画像データと裏面画像データ(以下、両データ「両面画
像データ」ともいう。)をメモリーに格納し、格納した両面画像データを読み出してホス
ト(例えば読取指示を送出したパーソナルコンピューター)に転送する場合、種々の不具
合が生じる場合があった。
【0005】
例えば、読み取った両面画像データについて、片面分のデータ毎に画像データをホスト
に転送する場合、少なくとも、画像データとして取得済みのもう片方の面分の画像データ
を格納する容量を有するメモリーが必要となる。
【0006】
また、ある種の画像読取装置においては、所定の容量の片面分の画像データを取得(生
成)する速度(データ取得速度)よりも、画像データをホストへ転送する速度(データ転
送速度)の方が早い場合がある。このような場合において、ホストから読取指示のあった
両面分の画像データについて片面分の画像データ毎にまとめてホストへ転送すると、デー
タ転送速度は、データ取得速度に律速されることになる。よって、画像読取装置が有する
データ転送処理能力(「データ転送スループット」ともいう。)を十分に発揮できず、両
面画像データの取得開始(読取対象物の読取開始)からホストへ両面画像データを転送し
終わるまでのデータ転送時間が長くなる場合があった。
【0007】
従って、本発明は、読取対象物の両面を同時に読取可能な画像読取装置において、読み
取った画像データを格納するためのメモリーの容量を低減できる技術を提供することを第
1に目的とする。また、該画像読取装置において、データ転送スループットを有効に利用
し、データ転送時間を短縮できる技術を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の
形態または適用例として実現することができる。
【0009】
[適用例1]画像読取装置であって、読取対象物の表面を読み取る第1の画像読取センサー
と、前記表面の読み取りと同時に、前記読取対象物の裏面を読み取る第2の画像読取セン
サーと、前記第1の画像読取センサーで読み取った前記読取対象物の表面画像データと、
前記第2の画像読取センサーで読み取った前記読取対象物の裏面画像データと、を格納可
能なメモリーと、前記表面画像データの一部と前記裏面画像データの一部とをメモリーに
書き込む部分書込処理と、前記部分書込処理で前記メモリーに書き込んだ表面画像データ
と裏面画像データとを読み出して当該画像読取装置の外部へ転送する部分読出処理と、を
実行するメモリー制御部と、を備え、前記メモリー制御部は、前記部分書込処理と前記部
分読出処理とを交互に複数回実行することで、前記表面画像データ及び前記裏面画像デー
タを当該画像読取装置の外部へ転送する、画像読取装置。
【0010】
適用例1の画像読取装置によれば、部分読出処理において、書き込まれた表面の画像デ
ータだけでなく、裏面の画像データについても読み出して転送を行っている。よって、片
面分の全ての画像データをメモリーから読み出して外部へ転送した後に、他方の面の全て
の画像データを読み出して外部へ転送する場合に比べ、画像データを格納するためのメモ
リーの容量を低減することができる。
【0011】
また、当該画像読取装置において、片面分の全ての画像データを取得する速度よりも、
データ転送速度が早い場合は、メモリーに格納された表面の画像データと裏面の画像デー
タの双方を読み出して外部へ転送することで、画像読取装置が有するデータ転送処理能力
を有効に利用できる。これにより、読取対象物の両面画像データの取得開始から外部へ全
ての両面画像データを転送し終わるまでのデータ転送時間を短縮できる。
【0012】
[適用例2]適用例1に記載の画像読取装置であって、前記部分書込処理で前記メモリー
に書き込む前記表面画像データの一部と前記裏面画像データの一部とは、それぞれ1ライ
ンを構成する画素からなるラインデータである、画像読取装置。
適用例2の画像読取装置によれば、表面の1ライン分の画像データと裏面の1ライン分
の画像データの合計2ライン分の画像データを格納できるだけの容量をメモリーが有すれ
ば良い。よって、メモリー容量をさらに低減することができる。
【0013】
[適用例3]適用例1に記載の画像読取装置であって、前記部分書込処理で前記メモリー
に書き込む前記表面画像データの一部と前記裏面画像データの一部とは、それぞれ1ライ
ンを構成する画素からなるラインデータが複数集まったブロックデータである、画像読取
装置。
適用例3の画像読取装置によれば、ブロックデータ単位で部分書込処理と部分読出処理
を実行することから、ラインデータ単位で部分書込処理と部分読出処理を実行する場合に
比べ、部分書込処理と部分読出処理の制御を容易に行うことができる。
【0014】
[適用例4]適用例1乃至適用例3のいずれか1つに記載の画像読取装置であって、前記
メモリーは、複数のバンクを有するDRAMであって、前記部分書込処理は、前記表面画
像データの一部と前記裏面画像データの一部とを異なるバンクに書き込むことで実行され
、前記部分読出処理は、前記部分読出処理の実行直前に前記部分書込処理により書き込ま
れたバンクとは異なるバンクに格納されているデータから読み出すことで実行される、
画像読取装置。
適用例4の画像読取装置によれば、表面画像データと裏面画像データとを異なるバンク
に書き込むため、プリチャージの発生を抑制することができる。さらに、読出処理の直前
に書込処理を行っていたバンクとは異なるバンクから読出処理を行なうので、プリチャー
ジの発生をより抑制することができる。よって、読取対象物の両面画像データの取得開始
から、外部へ全ての両面画像データを転送し終わるまでのデータ転送時間を短縮できる。
【0015】
[適用例5]読取対象物の両面を2系統の画像読取センサーで同時に読み取る画像読取装
置を用いた画像データの転送方法であって、前記読取対象物の両面を前記2系統の画像読
取センサーで同時に読み取り、表面を表す表面画像データと、裏面を表す裏面画像データ
とを生成する第1の工程と、前記表面画像データと前記裏面画像データを前記画像読取装
置が備えるメモリーに書き込み、書き込んだ表面画像データと裏面画像データを読み出し
て前記画像読取装置の外部へ転送する第2の工程と、を備え、前記第2の工程は、前記表
面画像データの一部のデータである部分表面画像データと、裏面画像データの一部のデー
タである部分裏面画像データとを前記メモリーに書き込む部分書込工程と、前記部分書込
工程により前記メモリーに書き込まれた前記部分表面画像データと前記部分裏面画像デー
タとを読み出して前記画像読取装置の外部へ転送する部分読出工程と、を有し、前記第2
の工程は、前記部分書込工程と前記部分読出工程とを交互に複数回行うことで、前記表面
画像データと前記裏面画像データを前記画像読取装置の外部へ転送する、画像データの転
送方法。
【0016】
適用例5の方法によれば、片面分の全画像データをメモリーから読み出して外部へ転送
した後に、他方の面の全画像データを読み出して外部へ転送する場合に比べ、画像データ
を格納するためのメモリーの容量を低減することができる。また、画像データの転送に使
用する画像読取装置において、片面分の全画像データを取得する速度よりも、データ転送
速度が早い場合であっても、画像読取装置が有するデータ転送処理能力を有効に利用でき
る。これにより、読取対象物の両面画像データの取得開始から、外部へ全ての両面画像デ
ータを転送し終わるまでのデータ転送時間を短縮できる。
【0017】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、上述した画像読取装置及び
画像データ転送方法の他、それらの装置又は方法の機能を実現するためのコンピューター
プログラム、そのコンピュータープログラムを記録した記憶媒体等の態様で実現すること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施例のスキャナーの構成を示すブロック図である。
【図2】読取対象物Pの読取方法を説明するための図である。
【図3】第1実施例の画像データのアクセス手順を説明するための図である。
【図4】メモリー制御部が実行する処理フローを説明するための図である。
【図5】比較例におけるメモリーへの画像データのアクセス手順を説明するための図である。
【図6】第2実施例の画像データのアクセス手順を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態を以下の順序で説明する。
A.第1実施例及び比較例:
B.第2実施例:
C.変形例:
【0020】
A.第1実施例及び比較例:
A−1.第1実施例:
図1は、本実施例の画像読取装置としてのスキャナーの構成を示すブロック図である。
このスキャナー10は、パーソナルコンピューターPC(以下、単に「パソコンPC」と
も呼ぶ。)に接続されている。スキャナー10は、ユーザーによるパソコンPCからの指
示に従って、図示しない原稿等の読取対象物を走査して画像データを生成し、生成した画
像データをパソコンPCに転送する。
【0021】
スキャナー10は、第1画像読取センサー12と、第2画像読取センサー13と、制御
部15とを備える。第1画像読取センサー12は、読取対象物の表面を読み取る。第2画
像読取センサー13は、読取対象物の裏面を読み取る。
【0022】
第1,第2画像読取センサー12,13は、CIS(Contact Image S
ensor)型のラインセンサー(「密着センサー方式」ともいう。)によって構成され
ており、読取対象物の幅方向(主走査方向)に沿って配列されている。また、第1,第2
画像読取センサー12,13は、複数の撮像素子を主走査方向に直線状に一列に配置して
いる。読取対象物は、スキャナー10の搬送路によりスキャナー10内部に搬送され、搬
送された読取対象物は、第1,第2画像読取センサー12,13により両面を1ライン毎
に両面同時に読み取られる。本実施例のスキャナー10は、第1,第2画像読取センサー
12,13の走査位置への移動は、読取対象物が移動することで行われる。そして、第1
,第2画像読取センサー12,13は、各走査位置からの画像を表す反射光をアナログの
第1,第2読取信号SA1,SA2に変換し、制御部15へ出力する。
【0023】
制御部15は、主としてCPU22と、ROM23と、RAM24と、画像処理部20
と、メモリー28と、外部インターフェース30とを備える。
【0024】
ROM23は、制御部15で実行される各種プログラムを格納している。RAM24は
、ROM23に格納している所定のプログラムを展開する作業領域である。CPU22は
、ROM23に格納している各種プログラムをRAM24上で実行することにより、スキ
ャナー10全体をコントロールする。
【0025】
画像処理部20は、第1,第2画像読取センサー12,13によりそれぞれ生成された
アナログの第1,第2読取信号SA1,SA2をデジタル信号に変換し、表面画像データ
D1と裏面画像データD2を生成する。また、画像処理部20は、目的に応じた画像処理
を行う機能を有する。例えば、画像処理部20は、生成した画像データD1,D2に対し
シェーディング補正、ガンマ補正、拡大縮小処理等を行ことが可能である。なお、画像デ
ータD1,D2は複数の画素データPXからなり、第1,第2画像読取センサーSA1,
SA2によって順次読み取られ、画像処理部20で順次画素データPXが生成する。
【0026】
メモリー制御部26は、メモリー28への画像データD1,D2の書込処理と読出処理
を実行する。すなわち、画像処理部20で生成した表面画像データD1及び裏面画像デー
タD2を構成する画素データPXをメモリー28に順次書き込むと共に、所定のタイミン
グで、書き込まれた画素データPXを読み出す。読み出された画素データPXは、外部イ
ンターフェース30を介して外部のパソコンPCに順次転送される。これにより、表面画
像データD1及び裏面画像データD2がパソコンPCに転送される。インターフェースと
しては、USBやSCSI等の種々の通信インターフェースを利用可能である。なお、本
実施例ではメモリー28にはRAMを用いている。メモリー28への画素データの書込処
理及び読出処理の詳細は後述する。
【0027】
図2は、読取対象物Pの読取方法を説明するための図である。読取対象物Pは原稿や小
切手等の1枚の用紙であり、表面F1と裏面F2には、文字や図が記載されている。説明
を容易にするために、読取対象物Pの両面F1,F2の全体を走査領域とし、副走査方向
のライン数を1000本とする。なお、図中の破線はラインの区切りを示しており、読取
対象物Pに実際に記載された文字や図を示すものではない。読取対象物Pはスキャナー1
0の搬送路内に搬送され、両面F1,F2の1ライン目から1000ライン目までをライ
ン毎に第1,第2画像読取センサー12,13により両面同時に読み取られる。生成した
各ラインの第1,第2読取信号SA1,SA2は、画像処理部20でデジタルの画素デー
タに変換後、所定の画像処理が行われ、メモリー28に順次書き込まれる。
【0028】
以下の説明では、表面F1全体を表す画像データを表面画像データD1と呼び、裏面F
2全体を表す画像データを裏面画像データD2と呼ぶ。また、表面画像データD1におい
て、1〜1000ライン分のうちの100ライン毎のブロックデータを部分表面画像デー
タD1aと呼ぶ。また、同様に、裏面画像データD2において、1〜1000ライン分の
うちの100ライン毎のブロックデータを部分裏面画像データD2aと呼ぶ。すなわち、
表面画像データD1は10個の部分表面画像データD1aからなり、裏面画像データD2
は10個の部分裏面画像データD2からなる。なお、1ラインは画素が一列に複数(本実
施例では800画素)並ぶことで構成されている。すなわち、表面画像データD1と裏面
画像データD2は、それぞれ800画素×1000画素の80万画素あるので、表面画像
データD1と裏面画像データD2は、それぞれ80万個の画素データPXからなる。
【0029】
図3は、第1実施例のメモリーへのアクセス手順を説明するための図である。また、理
解の容易のために、メモリー28への表面画像データD1と裏面画像データD2の書き込
みは、所定の領域A1、A2にそれぞれ分割して行うものとする。なお、表面画像データ
D1と裏面画像データD2の格納領域は、実際はこれと異なっていても良い。また、図3
中に記載のクロスハッチングは、画素データPXが格納されていることを意味する。
【0030】
図3(a)に示すように、メモリー制御部26(図1)は、生成した表面F1及び裏面
F2の画素データPXを順次所定の領域に書き込む。図3(b)に示すように、メモリー
制御部26は、メモリー28に1〜100ライン目の100ライン分の部分表面画像デー
タD1a、及び、1〜100ライン目の100ライン分の部分裏面画像データD2aを書
き込むまで書込処理を実行する。ここで、部分表面画像データD1a及び部分裏面画像デ
ータD2aをメモリー28に書き込む工程を「部分書込工程」とも言う。
【0031】
部分書込工程の実行後、図3(c)に示すように、メモリー制御部26は、書き込まれ
たブロックデータである部分表面画像データD1aを読み出してパソコンPCへ転送する
。なお、図3(c)は、部分表面画像データD1aを読み出した後のメモリー28のデー
タ格納状態を示している。次に、メモリー制御部26は、図3(d)に示すように、書き
込まれたブロックデータである部分裏面画像データD2aを読み出してパソコンPCへ転
送する。なお、図3(d)は、部分裏面画像データD2aを読み出した後のメモリー28
のデータ格納状態を示している。図3(d)に記載の状態では、メモリー28には画素デ
ータPXは格納されていない。なお、図3(c)及び図3(d)のように、部分書込工程
の実行により書き込まれた部分表面画像データD1aと部分裏面画像データD2aとを共
に読み出して、パソコンPCへ転送する工程を「部分読出工程」とも言う。
【0032】
次に、メモリー制御部26は、図3(e),(f)に示すように、101〜200ライ
ン目の画素データPXを書き込む部分書込工程を実行する。部分書込工程の実行後、メモ
リー制御部26は、101〜200ライン目の部分表面画像データD1aを読み出してパ
ソコンPCへ転送する(図示せず)。次いで、101〜200ライン目の100ライン分
の部分裏面画像データD2aを読み出してパソコンPCへ転送する(図示せず)。すなわ
ち、メモリー制御部26は、101〜200ライン目の部分画像データD1a,D2aの
部分読出工程を実行する。
【0033】
部分書込工程と部分読出工程について、読取対象物Pの両面全体を表す表面画像データ
D1及び裏面画像データD2をパソコンPCに転送するまで交互に実行する。ここで、表
面画像データD1及び裏面画像データD2をコンピューター40に転送するまでに必要な
メモリー容量は、200ライン分の容量である。すなわち、少なくとも200ライン分の
画素データPXを格納できるだけの容量を有するメモリー28をスキャナー10に内蔵さ
せ、そのメモリー28に画素データPXを書き込めば良い。
【0034】
図4は、第1実施例のメモリー制御部26が実行する処理フローを説明するための図で
ある。上記のごとく、メモリー制御部26は、部分表面画像データD1a及び部分裏面画
像データD2aをメモリー28に書き込む部分書込工程を実行する(ステップS10)。
【0035】
次いで、メモリー制御部26は、書き込んだ部分表面画像データD1a及び部分裏面画
像データD2aを読み出してコンピューター40に転送する部分読出工程を実行する(ス
テップS20)。
【0036】
次いで、CPU22は、読取対象物Pの表面全体を表す表面画像データD1と、読取対
象物Pの裏面全体を表す裏面画像データD2を全てコンピューター40に転送したか否か
を判断する(ステップS30)。全ての画像データD1,D2を転送していなと判断した
場合は(ステップS30:NO)、CPU22はメモリー制御部26に対し部分書込工程
(ステップS10)と、部分読出工程(ステップS20)の実行を指示し、再び両工程が
メモリー制御部26により実行される。全ての画像データD1,D2を転送したと判断し
た場合は(ステップS30:YES)、CPU22は、メモリー制御部26に対し両工程
の実行を停止させ、転送処理は終了する。
【0037】
A−2:比較例:
第1実施例の効果の説明の前に、第1実施例の効果をより一層明らかにする為に比較例
を説明する。図5は比較例のメモリーへの画像データのアクセス手順を説明するための図
である。比較例では、先に表面画像データD1の全てをコンピューター40に転送した後
に、裏面画像データD2の全てをコンピューター40に転送するアクセス方法を採用して
いる。説明の便宜上、メモリー28への表面画像データD1と裏面画像データD2の書き
込みは、所定の領域A1、A2にそれぞれ分割して行うものとする。また、図5中に記載
のクロスハッチングは、画素データPXが格納されていることを意味する。
【0038】
図5(a)に示すように、メモリー制御部26は、生成した画素データPXを順次所定
の領域に書き込む。図5(b)に示すように、メモリー28に1〜100ライン目の10
0ライン分の部分表面画像データD1aが書き込まれると、図5(c)に示すように、メ
モリー制御部26は、部分表面画像データD1aを読み出し、パソコンPCへ転送する。
なお、図5(c)は、部分表面画像データD1aを読み出した後のメモリー28のデータ
格納状態を示している。また、メモリー28に格納された部分表面画像データD1a及び
部分裏面画像データD2aのうち、片面の画像データのみを読み出す工程を、「片面読出
工程」と呼ぶものとする。
【0039】
次に、メモリー制御部26は、図5(d),(e)に示すように、部分書込工程を実行
する。図5(e)に示すように、部分書込工程が実行されると、101〜200ライン目
の100ライン分の表面F1の部分表面画像データD1a、及び、1〜200ライン目の
200ライン分の裏面F2の画像データ(すなわち、部分裏面画像データD2aが2つ分
のデータ)が格納される。次に、図5(f)に示すように、メモリー制御部26は、部分
表面画像データD1aに対し片面読出工程を実行する。
【0040】
部分書込工程と片面読出工程を交互に繰り返し、読取対象物Pの表面全体を表す表面画
像データD1のパソコンPCへの転送を行った後に、メモリー制御部26は、メモリー2
8に格納されている1〜1000ライン目の裏面画像データD2を読み出して、パソコン
PCに転送する。すなわち、裏面F2の1000ライン分の画素データPXをメモリー2
8に格納し、格納した裏面F2の画素データPXを読み出してパソコンPCに転送する。
【0041】
このように、比較例では読取対象物Pの両面全体を表す表面画像データD1及び裏面画
像データD2をコンピューター40に転送するまでに必要なメモリー容量は、表面画像デ
ータ100ライン分と裏面画像データ1000ライン分の計1100ライン分の容量であ
る。
【0042】
A−3.実施例の効果:
上記のように、第1実施例のメモリー28への読み出し及び書き出しの制御では、読取
対象物Pの両面全体の画像データD1,D2をパソコンPCに転送するまでに必要なメモ
リー容量は200ライン分の容量である。これに対し、比較例の制御では、1100ライ
ン分のメモリー容量が必要となる。このように、第1実施例は、メモリーの容量を低減す
ることができる。これにより、よりコストを低減させたスキャナー10を提供することが
できる。
【0043】
また、スキャナー10において、読取対象物Pの表面全体の表面画像データD1を生成
(取得)する速度よりも、データ転送速度が早い場合は、表面の画像データのみを先に読
み出す比較例の制御方法では、スキャナー10が有するデータ転送能力を有効に利用でき
ないことになる。すなわち、比較例では、部分読出工程において、部分裏面画像データD
2aを読み出してパソコンPCに転送するデータ転送能力があるにも関わらず、部分表面
画像データD1aしか読み出してパソコンPCに転送していないことになる。また、比較
例では、部分書込工程によりメモリー28に書き込まれた901〜1000ライン目の1
00ライン分の部分表面画像データD1aを読み出した後に、1〜1000ライン目の裏
面画像データD2を読み出すことになる。よって、読取対象物Pの読み取りを開始してか
ら、両面全体の画像データD1,D2をコンピューターに転送し終わるまでのデータ転送
時間はより長くなる。これに対して、第1実施例の制御方法では、部分表面画像データD
1aのみならず部分裏面画像データDaもメモリー28から読み出してコンピューター4
0へ転送することから、スキャナー10が有するデータ転送能力を有効に利用することが
できる。よって、両面の画像データD1,D2の取得開始からパソコンPCへ両面の画像
データD1,D2を転送し終わるまでのデータ転送時間を短縮できる。
【0044】
B.第2実施例:
図6は、第2実施例のメモリーへの画像データのアクセス手順を説明するための図であ
る。第1実施例との違いは、メモリー構成とメモリー制御部26が実行するデータのアク
セス手順である。その他の構成(画像読取センサー12,13、画像処理部20等)につ
いては、第1実施例と同様の構成であるため説明を省略する。
【0045】
第2実施例のメモリー28は2つのバンクを有するSDRAMを用いている。2つのバ
ンクは、説明の便宜上、第1バンクM1及び第2バンクM2と称する。メモリー制御部2
6は、表面F1の画素データPXを第1バンクM1に書き込み、裏面F2の画素データP
Xを第2バンクM2に分けて書き込む。
【0046】
図6(a),(b)に示すように、メモリー制御部26は、部分表面画像データD1a
の第1バンクM1への書込み、及び、部分裏面画像データD2aの第2バンクM2への書
込みが終わると(すなわち、部分書込工程の実行後)、部分読出工程を実行する。
【0047】
部分読出工程では、部分書込工程の際に最後に書き込んだバンクとは異なるバンクから
画素データPXの読み出しを開始する。部分書込工程において最後に書き込んだバンクが
第2バンクM2であったとすると、図6(c)に示すように、メモリー制御部26は、第
1バンクM1の部分表面画像データD1aの画素データPXから読み出しを開始する。次
にメモリー制御部26は、図6(d)に示すように第2バンクM2の部分裏面画像データ
D2aを読み出す。なお、図6(c),(d)は部分表面画像データD1aと部分裏面画
像データD2aとをそれぞれ読み出した後のバンクM1,M2の格納状態を示している。
【0048】
部分読出工程の実行後、メモリー制御部26は、図6(e)に示すように101〜20
0ライン目の画像データの部分書込工程を実行する。メモリー制御部26は、部分書込工
程と部分読出工程とを表面全体を表す表面画像データDと裏面全体を表す裏面画像データ
D2とをパソコンPCに転送するまで交互に実行する。
【0049】
上記のように、第2実施例では、表面画像データD1と裏面画像データD2とを異なる
バンクに書き込むと共に、書き込んだデータを読み出していることから、同一バンクに表
面画像データD1、及び、裏面画像データD2を書き込んでこれらを続けて読み出す場合
に比べ、プリチャージの発生を抑制できる。これにより、データの書き込み及び読み出し
の速度を向上でき、読取対象物Pの画像データD1,D2の取得開始から、パソコンPC
へ画像データD1,D2を転送し終わるまでのデータ転送時間を短縮できる。
【0050】
さらに、部分読出工程を開始するバンクが、部分書込工程において最後に書き込みを行
ったバンクと異なるため、プリチャージの発生をさらに抑制できる。これにより、より一
層、データ転送時間を短縮できる。
【0051】
C.変形例:
なお、上記実施例における構成要素の中の、特許請求の範囲の独立項に記載した要素以
外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。また、本発明の上記実施例や実
施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態において
実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0052】
C−1.第1変形例:
上記実施例において、部分書込工程では100ライン分の画像データD1a、D2aを
メモリー28に書き込んでいたが(図3)、部分書込工程で書き込むデータ量はこれに限
定されるものではない。例えば、1ラインを構成する画素からなるラインデータ(すなわ
ち、表面F1及び裏面F2それぞれ800画素分の画素データPX)を部分書込工程で書
き込んでも良い。この場合、部分読出工程では、メモリー28に書き込んだ表面F1のラ
インデータと裏面F2のラインデータを読み出してパソコンPCに転送することになる。
部分書込工程と部分読出工程において、読み出したり書き出したりするデータの単位をラ
インデータとすることで、さらにメモリー容量を低減することができる。
【0053】
C−2.第2変形例;
上記実施例において、部分書込工程における部分表面画像データD1a及び部分裏面画
像データD2aの書き込みの順番については特に限定されない。例えば、部分表面画像デ
ータD1aを構成する全ての画素データPXを所定の領域に書き込んだ後に、部分裏面画
像データD2aを構成する全ての画素データPXを所定の領域に書き込んでも良い。また
、部分表面画像データD1a及び部分裏面画像データD2aを構成する画素データPXに
ついて、所定数の画素データ毎に交互にメモリー28に書き込んでも良い。このようにし
ても、部分読出工程において、部分書込工程で書き込まれた両面の部分画像データD1a
,D2aを読み出すため、メモリー容量を低減することができる。
【0054】
また、上記実施例で記載のごとく、スキャナー10において、読取対象物Pの表面画像
データD1を取得する速度よりも、データ転送速度が早い場合は、両面の画像データD1
,D2の取得開始からパソコンPCへ画像データD1,D2を転送し終わるまでのデータ
転送時間を短縮できる。
【0055】
C−3.第3変形例:
上記実施例では、スキャナー10の第1,第2画像読取センサー12,13にはCIS
型のラインセンサー(密着センサー方式)を用いたが、特にこれに限定されるものではな
い。例えば、光学縮小方式のセンサーを用いても良い。このようにしても、上記実施例と
同様の効果を奏する。
【0056】
C−4.第4変形例:
上記実施例において、スキャナー10の各部は、ソフトウェア的に構成されているもの
を、ハードウェア的に構成するようにしても良いし、ハードウェア的に構成されているも
のを、ソフトウェア的に構成するようにしても良い。
【符号の説明】
【0057】
10…スキャナー
12…第1画像読取センサー
13…第2画像読取センサー
15…制御部
20…画像処理部
22…CPU
23…ROM
24…RAM
26…メモリー制御部
28…メモリー
30…外部インターフェース
40…コンピューター
P…読取対象物
D1…表面画像データ
D2…裏面画像データ
D1a…部分表面画像データ
D2a…部分裏面画像データ
F1…表面
F2…裏面
M1…第1バンク
M2…第2バンク
PC…パーソナルコンピューター
PX…画素データ
SA1…第1読取信号
SA2…第2読取信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像読取装置であって、
読取対象物の表面を読み取る第1の画像読取センサーと、
前記表面の読み取りと同時に、前記読取対象物の裏面を読み取る第2の画像読取センサ
ーと、
前記第1の画像読取センサーで読み取った前記読取対象物の表面画像データと、前記第
2の画像読取センサーで読み取った前記読取対象物の裏面画像データと、を格納可能なメ
モリーと、
前記表面画像データの一部と前記裏面画像データの一部とをメモリーに書き込む部分書
込処理と、前記部分書込処理で前記メモリーに書き込んだ表面画像データと裏面画像デー
タとを読み出して当該画像読取装置の外部へ転送する部分読出処理と、を実行するメモリ
ー制御部と、を備え、
前記メモリー制御部は、
前記部分書込処理と前記部分読出処理とを交互に複数回実行することで、前記表面画
像データ及び前記裏面画像データを当該画像読取装置の外部へ転送する、
画像読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像読取装置であって、
前記部分書込処理で前記メモリーに書き込む前記表面画像データの一部と前記裏面画像
データの一部とは、それぞれ1ラインを構成する画素からなるラインデータである、画像
読取装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像読取装置であって、
前記部分書込処理で前記メモリーに書き込む前記表面画像データの一部と前記裏面画像
データの一部とは、それぞれ1ラインを構成する画素からなるラインデータが複数集まっ
たブロックデータである、画像読取装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の画像読取装置であって、
前記メモリーは、複数のバンクを有するDRAMであって、
前記部分書込処理は、
前記表面画像データの一部と前記裏面画像データの一部とを異なるバンクに書き込む
ことで実行され、
前記部分読出処理は、
前記部分読出処理の実行直前に前記部分書込処理により書き込まれたバンクとは異な
るバンクに格納されているデータから読み出すことで実行される、
画像読取装置。
【請求項5】
読取対象物の両面を2系統の画像読取センサーで同時に読み取る画像読取装置を用いた
画像データの転送方法であって、
前記読取対象物の両面を前記2系統の画像読取センサーで同時に読み取り、表面を表す
表面画像データと、裏面を表す裏面画像データとを生成する第1の工程と、
前記表面画像データと前記裏面画像データを前記画像読取装置が備えるメモリーに書き
込み、書き込んだ表面画像データと裏面画像データを読み出して前記画像読取装置の外部
へ転送する第2の工程と、を備え、
前記第2の工程は、
前記表面画像データの一部のデータである部分表面画像データと、裏面画像データの
一部のデータである部分裏面画像データとを前記メモリーに書き込む部分書込工程と、
前記部分書込工程により前記メモリーに書き込まれた前記部分表面画像データと前記
部分裏面画像データとを読み出して前記画像読取装置の外部へ転送する部分読出工程と、
を有し、
前記第2の工程は、
前記部分書込工程と前記部分読出工程とを交互に複数回行うことで、前記表面画像デ
ータと前記裏面画像データを前記画像読取装置の外部へ転送する、
画像データの転送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−97405(P2011−97405A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250083(P2009−250083)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】