説明

画像読取装置

【課題】 コストの増加や画像読取速度の低下をきたしたりすることのない画像読取装置を提供する。
【解決手段】 原稿を読み取ったデータを補正する機能を有する制御手段を備えた画像読取装置において、前記制御手段は連続原稿読み取り中に原稿毎に光量を測定し、一定枚数の原稿を読み取った後に一度にデータを補正することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル複写機、スキャナ、ファクシミリなどに搭載される画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像読取装置において、画像読み取り用露光ランプ(例えば、蛍光灯)の光量の変化に基づいて、読み取った画像データを補正する方法は幾つか存在していた。
【0003】
例えば、特許文献1のように、白色基準板を利用することで、シェーディングデータを補正する方法がある。
【0004】
また、特許文献2には、原稿の2枚目以降の光量を監視し続け、光量が一定値以下になったときに、随時、シェーディングデータを補正する方法が提案されている。
【0005】
また、特許文献3には、コピー時にコピー枚数を計数し、この計数値の一定間隔毎に所定枚数分のコピーに対する各々の原稿の地肌濃度を前記原稿濃度センサにより検出し、これらの検出電圧を前記所定枚数分毎に加算して平均値を演算し、これらの所定枚数分毎の平均値の変化から光学系の光量変動を検出しこの光量変動に応じて前記露光ランプのランプ電圧を補正制御することが記載されている。
【0006】
また、特許文献4には、ランプを点灯してから所定時間が経過していない場合には、端部シェーディング補正処理を行い、所定時間が経過している場合には、改めてシェーディング補正係数を取り直し、通常のシェーディング補正処理を行うことが記載されている。
【0007】
【特許文献1】特許第3103569号公報
【特許文献2】特開2002−300394号公報
【特許文献3】特開平6−266192号公報
【特許文献4】特開2001−211298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の方法では、白色基準板が必要となるため、コストが増加してしまう。
【0009】
また、特許文献2記載の方法では、光量が一定値以下になっているかの比較を、各々の枚数分だけ行う必要がある。光量比較を毎回行うため、処理負荷が高くなり、結果的に処理速度が低下する。
【0010】
また、特許文献3記載の方法では、一定間隔での濃度センサの計測値に基づいて平均値を演算した結果に基づいて補正するため、実際の検知データに基づく画像補正を行うものではない。
【0011】
特許文献4記載の方法は、光量変動に基づいてランプ光量の補正を行うものであり、読み取り画像データを補正するものではない。
【0012】
本発明の目的は、コストの増加や画像読取速度の低下を抑えた画像読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するため、本発明は、原稿を読み取ったデータを補正する機能を有する制御手段を備えた画像読取装置において、前記制御手段は、連続原稿読み取り中に原稿毎に光量を測定し、一定枚数の原稿を読み取った後に一度にデータを補正することを特徴とする。
【0014】
また、光量の測定結果を記憶した情報または温度や湿度等の環境状況を取得した情報を元にデータを補正するタイミング及び補正量を決定することを特徴とする。
【0015】
また、当該画像読取装置の情報を元に、データを補正するタイミング及び補正量を決定することを特徴とする。
【0016】
また、原稿で読み取ったデータを補正する機能を有する制御手段を備えた画像読取装置において、連続原稿読み取り中に原稿毎に光量を取得する光量取得手段と、前記光量取得手段で取得した光量を基準枚数毎に補正する光量補正手段と、前記光量補正を実施する基準枚数を変更させる基準枚数制御手段と、を有することを特徴とする。
【0017】
また、連続原稿読み取り中に、前記光量補正を実施する基準枚数を変更させることを特徴とする。
【0018】
また、温度や湿度等の環境状況の情報を元に、前記基準枚数を変更することを特徴とする。
【0019】
また、前記光量読み取り手段で取得した光量から、前記基準枚数を変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、画像読取速度の低下を最小限に止めつつ、常に一定の濃度で読取可能な画像読取装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施例について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は、本発明の画像読取装置を備えた画像形成装置の例として、600dpiのカラーレーザMFP(マルチファンクションプリンタ)の概略構成図である。
【0023】
本実施例において、画像形成手段であるプリンタエンジン1は、感光体6と中間転写体8を用い、感光体6上に順次1色ずつ形成した異なる4色のトナー画像を、中間転写体8の1回転毎に1色ずつ転写し、中間転写体8の4回転で1枚のカラー画像を形成する中間転写体方式を採用している。
【0024】
本実施例において、感光体6は、プリンタ鉛直方向(縦方向)に長く張られたベルト形状であり、プリンタエンジン1の中央付近に配置される。感光体6の一方の面には、中間転写体8が感光体6と接触配置され、感光体6の他方の面(中間転写体8と対向する側と反対側の面)には、それぞれ異なる色のトナーを格納する4つの現像器4が縦方向に積層配置されている。現像機4の積層順は、それぞれ感光体6に対向して下方から、イエロー(Y)現像器4Y、マゼンタ(M)現像器4M、シアン(C)現像器4C、ブラック(K)現像器4Kとなっている。
【0025】
トナー画像を形成するプロセスは、感光体6の周囲に配置される帯電器5、露光器3、現像器4によって行われる。配置は、感光体の回転方向に沿って、帯電器5、露光器3、現像機4、中間転写体8の順に配置される。現像機(ブラック現像機(K))4と中間転写体8の間で且つ感光体6の表面に対向する位置に、反射輝度センサ7が配置され、感光体6上のトナー付着量を検出する。
【0026】
また、プリンタエンジン1の筐体側面には、破線で示したコントローラ2の基板が取り付けられている。コントローラ2には、CPU、メモリ、HDD、環境センサとを備えている。CPUには、基準枚数計算及び全体的な制御を司る。また、メモリには、基準白色測定結果、シェーディングデータ、過去の基準枚数、スキャナ使用回数、使用環境のデータがそれぞれ格納される。そのため、メモリは不揮発性媒体であるフラッシュメモリ等が好ましい。また、HDDには、読取済みの各画像データが保存される。環境センサは、機内温度・湿度を測定する。
【0027】
反射輝度センサ7による検出信号は、このコントローラ2に搭載された換算テーブルによって、画像出力の濃度値に換算される。この意味で、反射輝度センサ7は、濃度検出手段となっている。
【0028】
用紙搬送経路を挟んで中間転写体8と対向する位置に、トナー画像形成を行うプロセス部品である転写ローラ9が配置される。用紙搬送経路は、プリンタエンジン1下部に配置される用紙カセット11から中間転写体8の側を通ってプリンタエンジン1上面に設置された排出部に排出する構成となっている。そして、用紙搬送経路に沿って、転写ローラ9、用紙除電器(図示せず)、定着器10が配置されている。
【0029】
また、プリンタエンジン1の筐体外部に面して、基準パッチ生成手段を兼ねるユーザインタフェースである操作パネル12が設けられる。この操作パネル12を通して、ユーザによるキャリブレーション命令などがコントローラ2に送られる。
【0030】
スキャナ(画像読取装置)は、プリンタエンジン1の上部に配置されている。スキャナの読取リーダ13は、原稿台14にセットされた原稿に対して光源15から光を照射し、その反射光は光電変換装置(図示せず)に出力される。光電変換装置により変換された信号を、アナログデジタル変換器(図示せず)でデジタルデータに変換した後、デジタルデータをPC(パーソナルコンピュータ:図示せず)へ送信する。
【0031】
次に、図2を用いて、画像読取装置の構成について記載する。図2は、画像読取装置の概略構成図である。画像読取装置であるスキャナ本体101は、ガラス106を挟んで上部に原稿搬送部と下部に画像読取部とを備える。
【0032】
原稿搬送部は、セットされた原稿103をガラス106面に搬送する。原稿103をピックアップローラ102でピックアップし搬送ローラ104及び搬送ドラム105とによりガラス106まで搬送する。一方、画像読取部では、ガラス106上にセットされた原稿103に、露光ランプ107からの光を照射し、原稿103画像からの反射光を、反射鏡108により、結像レンズ109で結像し、CCD110で読み取る構成となっている。
【0033】
本実施例の画像読取装置では、初めに、正しく画像濃度を読み取るための基準である基準白色を読み取る。その後、シェーディングデータを作成し、基準白色の読み取り結果とシェーディングデータとから計算してシェーディング補正を実施する。
【0034】
図3は、シェーディング補正を実施するための動作フローチャートである。
【0035】
初めに光量の測定を実施する(ステップ201:以下、S201)。その測定結果をフラッシュメモリなどの記憶媒体に記憶する(S202)。スキャン枚数と基準枚数を比較し(S203)、スキャン枚数が基準枚数より少ない場合には次のスキャンの光量測定を実施する(S201)。スキャン枚数が基準枚数より多い場合は、画像補正(シェーディング補正)を実施する(S204)。
【0036】
画像補正(シェーディング補正)は、それまでにスキャンして読み取った読取済み画像データがHDD等の記憶媒体に格納されており、スキャン枚数が基準枚数に達した(S204)の時点で、読取済みデータであって且つ未補正の各画像データについて、一度に補正する。
【0037】
最初の基準枚数は、予め設定しておく。設定する場合には、過去に補正したタイミングや現在のスキャナの使用回数などを考慮に入れて計算する。例えば、スキャン中に光量が変わりやすい機器では、基準枚数を減らした方が光量を安定して得ることができ、逆にスキャン中に光量がほとんど変化しない機器では、基準枚数を多く設定した方がより高速にスキャンを実行できる。次の画像補正を実施するときには、記憶していた測定結果から各々計算して画像補正を行う。
【0038】
次に、画像補正を実施するタイミングを決定するために基準枚数の更新を行う(S205)。例えば、周囲の温度や湿度など環境に変化があった場合は、このときに基準枚数の調整を行い、最適化する。
【0039】
最後に、現在のスキャンデータが最後であるかどうかを確認し(S206)、最後であれは処理を終了し、そうでない場合は次のスキャンデータの光量を測定する。
【0040】
本実施例では、画像補正の自動化により、ユーザへの負担低減を図ることができる。
【実施例2】
【0041】
実施例2の場合も、画像形成装置の構成については、図1を用いて説明した実施例1と同様である。画像読取装置についても制御基板および制御方法は異なるものの、基本構成は図2を用いて説明した実施例1と同様である。
【0042】
図4は、別の実施例として、シェーディング補正を実施するための動作フローを示している。
【0043】
初めに基準枚数を決定する(S401)。設定にあたっては、過去に利用した基準枚数や現在のスキャナの使用回数、使用環境などを考慮に入れて計算する。例えば、過去に利用した基準枚数の中で最も利用頻度の高い値を利用する方法や、前回のスキャンで最後に利用した基準枚数を利用する方法などが挙げられる。また、未使用期間が長かった画像読み取り装置の場合は、画像補正の頻度を上げるため、基準枚数を少なくしてもよい。
【0044】
次に、光量及び濃度を測定し(S402)、その測定結果をメモリやフラッシュなどの媒体に記憶する(S403)。
【0045】
スキャン枚数と基準枚数を比較し(S404)、スキャン枚数が基準枚数より少ない場合には、次原稿の光量及び濃度を測定する(S402)。一方、スキャン枚数が基準枚数より多い場合は、測定光量値が許容値であるかどうか評価する(S405)。許容値である場合、次の原稿のスキャンを実施する。一方、許容値で無い場合、画像補正(シェーディング補正)を実施する(S406)。具体的には、記憶していた光量の測定結果から原稿の濃度を再計算して画像補正を行う。
【0046】
画像補正(シェーディング補正)は、それまでにスキャンして読み取った読取済み画像データがHDD等の記憶媒体に格納されており、スキャン枚数が基準枚数に達した(S204)の時点で、読取済みデータであって且つ未補正の各画像データについて、一度に補正する。
【0047】
この後、基準枚数の更新を行う(S407)。例えば、周囲の温度や湿度など環境に変化を環境センサで確認した場合は、このときに基準枚数の調整を行い、最適化する。
【0048】
最後に、現在のスキャンデータが最後であるかどうかを確認し(S408)、最後であれば終了し、そうでない場合は、次原稿の光量及び濃度を測定する(S402)。
【0049】
本実施例においては、基準枚数を超えても、測定光量が許容値ならば画像補正を行わないように処理し、前回のシェーディング補正から直前までに読み取った各読取画像データを、或る時点で一度に補正することで、速度低下をできるだけ抑えながら画像補正することができる。
【0050】
また、本実施例でも、画像補正の自動化により、ユーザへの負担低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施例に係る画像読取装置を備えたカラープリンタの概略構成図である。
【図2】その画像読取装置の概略構成図である。
【図3】本発明の実施例に係るシェーディング補正を実施するための動作フローチャートである。
【図4】本発明の別の実施例に係るシェーディング補正を実施するための動作フローチャートである。
【符号の説明】
【0052】
1‥プリンタエンジン(画像形成手段)、2‥コントローラ、3‥露光器、4‥現像器、5‥帯電器、6‥感光体、7‥反射輝度センサ、8‥中間転写体、9‥転写ローラ、10‥定着器、11‥用紙カセット、12‥操作パネル、13‥読取リーダ、14‥原稿台、15‥光源、101‥スキャナ本体、102‥ピックアップローラ、103‥原稿、104‥搬送ローラ、105‥搬送ドラム、106‥ガラス、107‥露光ランプ、108‥反射鏡、109‥結像レンズ、110‥CCD、111‥排紙ローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を読み取ったデータを補正する機能を有する制御手段を備えた画像読取装置において、
前記制御手段は、連続原稿読み取り中に原稿毎に光量を測定し、一定枚数の原稿を読み取った後に一度にデータを補正することを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
光量の測定結果を記憶した情報または温度や湿度等の環境状況を取得した情報を元にデータを補正するタイミング及び補正量を決定することを特徴とする請求項1記載の画像読取装置。
【請求項3】
当該画像読取装置の情報を元に、データを補正するタイミング及び補正量を決定することを特徴とする請求項1記載の画像読取装置。
【請求項4】
原稿で読み取ったデータを補正する機能を有する制御手段を備えた画像読取装置において、
連続原稿読み取り中に原稿毎に光量を取得する光量取得手段と、前記光量取得手段で取得した光量を基準枚数毎に補正する光量補正手段と、前記光量補正を実施する基準枚数を変更させる基準枚数制御手段と、を有することを特徴とする画像読取装置。
【請求項5】
連続原稿読み取り中に、前記光量補正を実施する基準枚数を変更させることを特徴とする請求項4記載の画像読取装置。
【請求項6】
温度や湿度等の環境状況の情報を元に、前記基準枚数を変更することを特徴とする請求項4又は5記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記光量読み取り手段で取得した光量から、前記基準枚数を変更することを特徴とする請求項4又は5記載の画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−77388(P2009−77388A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199564(P2008−199564)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】