説明

画像読取装置

【課題】原稿台に載置された見開き原稿を良好な画像で読み取ることのできる画像読取装置を提供する。
【解決手段】複写機は、ブックスキャンモードが選択され(S101;Yes)、原稿(ブック原稿)がセットされてスタートボタンが押下されると(S103/S104)、原稿の画像を読み取って(S105)、一時保存する(S106)。この読み取り画像の劣化となる影を濃度過多領域として検出し(S108)、濃度過多領域の幅が閾値よりも小さいか否か(劣化が許容条件を満たすか否か)を判断する(S109)。否定判定の場合は(S109;No)、画像の読み取りおよび一時保存を繰り返す。肯定判定になると(S109;Yes)、その読み取り画像を取得する(S112)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿台に載置された原稿を読み取ってその画像を取得する画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スキャナ機や複写機などで厚みのある本や冊子などの見開き原稿をスキャンする場合は、スキャンするページを開いてプラテンガラス上に伏せた原稿を浮き上がらないように両手でしっかり押さえ付ける必要があるが、スタートボタンを押すために片手を離すと原稿の押さえ付けが弱くなって良好なスキャン画像が得られなくなることがある。
【0003】
このような問題を解決するために、たとえば、スタートボタンを押さなくてもプラテンガラス上に載置した原稿を押さえ付けるだけで、プラテンガラスに所定量以上の力が加わったことを検知し自動的にスキャン動作を開始するようにした技術がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−268708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に本や冊子などは、厚さや開くページの箇所(端のページか中ごろのページか)などによって綴じ目の開き易さが異なり、開き難い場合はプラテンガラス上に伏せた際に綴じ目部分(ページ間の境界部分)の浮き上がりが大きくなる。この浮き上がりの大きい状態でスキャンを行うと、スキャン画像におけるページ間の境界部分に発生する劣化が大きくなる。
【0006】
たとえば、ページ間の境界部分に発生する帯状の影が大きくなり、その影が目立ってスキャン画像の見栄えが悪くなったり、その影がページ境界付近の文字に重なって見難くなったりすることがある。また、ページ境界付近の画像の歪みが大きくなったり、ページ境界付近の文字にボケや歪みが発生したりすることもある。そのため、綴じ目が開き難く浮き上がりの大きくなり易い厚みのある本などで、これらの劣化の少ない良好なスキャン画像を得るには、上述したように両手で強く押さえ付けて浮き上がりを抑える必要がある。
【0007】
このような綴じ目の開き難い厚い本などに対し、特許文献1の技術では良好なスキャン画像を得られない可能性がある。この技術では、プラテンガラスに加わる力を検知してスキャン動作の開始を制御するため、厚い本などを強く押え付けようとしても、その途中でプラテンガラスに所定量以上の力が加わるとスキャン動作が開始されてしまい、劣化の少ない良好なスキャン画像を得られない可能性がある。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、原稿台に載置された見開き原稿を良好な画像で読み取ることのできる画像読取装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
【0010】
[1]見開き原稿が伏せて載置される原稿台と、
前記原稿台上の見開き原稿を読み取る読取部と、
前記読取部によって前記見開き原稿を繰り返し読み取らせ、読み取った画像の中から、前記見開き原稿における前記原稿台からの浮き上がり部分に対応して前記画像に発生する劣化が許容条件を満たす画像を取得する制御部と、
を備えた画像読取装置。
【0011】
上記発明では、読み取るページが開かれて原稿台上に伏せて載置された見開き原稿を読取部によって繰り返し読み取る。見開き原稿は、開いたページ間の境界部分が原稿台から浮き上がり易く、浮き上がりが生じると読み取られた画像(読み取り画像)にはその浮き上がり部分と対応する部分に影などの劣化が発生する。この劣化は、見開き原稿を原稿台に押さえ付ける力(押付力)を大きくし、浮き上がり部分を小さくすることで縮小できる。
【0012】
このように、浮き上がりの押さえ方によって読み取り画像の劣化の程度が変わる見開き原稿に対し、制御部は、繰り返し読み取られている画像の良否(劣化が許容条件を満たすか否か)を判別して、劣化の少ない良好な画像を自動取得する。これにより、読み取り実行のスイッチ操作などを行うことなく両手で原稿を押さえるだけで、原稿の厚さや開き易さなどに係らず良好な画像を取得できる。
【0013】
[2]前記制御部は、画像濃度が所定の基準濃度よりも濃い濃度過多領域における前記見開き原稿の見開き方向に沿った幅が、所定の閾値よりも小さい場合に、前記劣化が許容条件を満たしていると判断する
ことを特徴とする[1]に記載の画像読取装置。
【0014】
上記発明では、見開き原稿の読み取り画像における劣化の程度を、見開き原稿の浮き上がり部分に対応して発生する濃度過多領域(画像濃度が所定の基準濃度よりも濃い領域)の幅で判断し、繰り返し読み取った見開き原稿の画像の中から濃度過多領域の幅(見開き原稿の見開き方向に沿った幅)が所定の閾値よりも小さい画像を良好な画像として取得する。これにより、濃度過多領域が目立たない見栄えのよい画像や、ページ境界付近の文字などに濃度過多領域が重なっていない見易い画像を取得できる。
【0015】
[3]前記制御部は、前記濃度過多領域における長さ方向の複数箇所で検出した前記幅が全て前記所定の閾値よりも小さい場合に、前記許容条件を満たしていると判断する
ことを特徴とする[2]に記載の画像読取装置。
【0016】
見開き原稿のページ境界に沿った方向における一方側と他方側で押付力に差がある場合、押付力の小さい側は浮き上がり部分が大きくなり、濃度過多領域の幅が大きくなる。上記発明では、濃度過多領域における長さ方向(ページ境界に沿った方向)の複数箇所でその幅を検出し、この複数箇所の幅が全て所定の閾値よりも小さいことを劣化の許容条件とすることで、より良好な読み取り画像を取得できる。
【0017】
[4]前記読取部は、エリアセンサである
ことを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【0018】
上記発明では、見開き原稿をエリアセンサによって一時に二次元で読み取ることにより、繰り返しの読み取りにおいても、ラインセンサによる走査読み取りなどに比べて高速に読み取ることができる。
【0019】
[5]前記許容条件を設定する設定部を有する
ことを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【0020】
上記発明では、見開き原稿の読み取りを行うユーザなどが自分の希望する劣化の許容条件を任意に設定することができて利便性が向上する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の画像読取装置によれば、原稿台に載置された見開き原稿を良好な画像で読み取ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像読取装置としての複写機の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るスキャナ部における要部の構成を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る複写機で、ブック原稿を押さえ付け力の小さい状態で読み取った場合の読み取り画像の一例を示す図である。
【図4】図3の読み取り画像に対応する濃度分布のグラフを示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る複写機で、ブック原稿を押さえ付け力の大きい状態で読み取った場合の読み取り画像の一例を示す図である。
【図6】図5の読み取り画像に対応する濃度分布のグラフを示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る複写機による読取動作を示す流れ図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る複写機で、ブック原稿を押さえ付け力に偏りのある状態で読み取った場合の読み取り画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づき本発明の実施形態を説明する。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像読取装置としての複写機10の概略構成を示すブロック図である。
【0025】
複写機10は、原稿を光学的に読み取ってその複製画像を記録紙に印刷して出力するコピー機能、読み取った原稿の画像データをファイルにして保存したりパーソナルコンピュータなどの外部端末へ送信したりするスキャン機能(読取機能)などを備えている。コピー機能およびスキャン機能には、主に紙原稿(シート原稿)などの読み取りに対応した通常スキャンモードと、本や冊子などの見開き原稿(ブック原稿)の読み取りに対応したブックスキャンモードとが設けられている。複写機10は、これらのモードでコピーやスキャンを行う場合に、読み取り対象の原稿を載置するためのプラテンガラスを備えている。
【0026】
見開き原稿は、読み取るページが開かれ、プラテンガラス上に伏せて載置された状態で読み取りが行われる。この載置状態で、見開き原稿におけるページ間の境界部分がプラテンガラスから浮き上がると、読み取られた画像にはその浮き上がり部分と対応する部分に劣化が発生する。この劣化の大小は、見開き原稿のプラテンガラスへの押し付け方によって変化する。そこで、ブックスキャンモードでは、プラテンガラス上の見開き原稿を繰り返し読み取り、その読み取った画像の中から劣化が許容条件を満たす画像を選択的に取得するようになっている。
【0027】
図1に示すように、複写機10は、制御部としてのCPU(Central Processing Unit)11に、バス12を介してROM13(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)14と、記憶部15と、表示部16と、操作部17と、スキャナ部18と、画像処理部19と、プリンタ部20とを接続して構成される。
【0028】
CPU11は、ROM13に格納されているプログラムに基づいて複写機10の動作を制御する。RAM14はCPU11がプログラムを実行する際に各種データを一時的に格納するワークメモリとして使用されるほか、画像データを一時的に保存するための画像メモリなどにも使用される。記憶部15は、ハードディスク装置(Hard Disk Drive;HDD)などで構成され、各種の保存データなどを格納するほか、原稿のスキャンやコピーにおける画像データなども保存する。
【0029】
表示部16は、液晶ディスプレイなどで構成され、操作画面、設定画面、案内画面などの各種の画面を表示する機能を果たす。操作部17は、モード選択ボタン、スタートボタン、ストップボタン、テンキーなどの各種のボタン類などで構成され、ユーザなどが複写機10に対して行う各種の操作を受け付ける機能を果たす。
【0030】
スキャナ部18は、原稿を光学的に読み取って画像データを取得する機能を果たす。図2に示すように、スキャナ部18は、読み取り対象の原稿が載置される原稿台としてのプラテンガラス30と、プラテンガラス30上の原稿を下方から照明する光源31と、プラテンガラス30上の原稿を読み取る読取部としてのエリアセンサ32などを備えて構成されている。
【0031】
エリアセンサ32は、たとえば、複数の受光素子が縦および横の二方向(二次元)に配列され、原稿からの反射光をその複数の受光素子で受光して原稿の画像を二次元で読み取る撮像素子(二次元イメージセンサ)で構成されている。このエリアセンサ32は、プラテンガラス30の中央の真下などに配置されている。光源31は、プラテンガラス30上の原稿の全領域をほぼ均等に照明できるように複数設けられている。たとえば、エリアセンサ32による読み取りの妨げにならない周辺位置で、かつ、エリアセンサ32を中心とした対象位置などに配置されている。図2に示すように、たとえば、2つの光源31がエリアセンサ32の左右側方における対象位置などに配置されている。
【0032】
画像処理部19は画像データに対して、画像補正、回転、拡大/縮小、圧縮/伸張など各種の画像処理を施す機能を果たす。
【0033】
プリンタ部20は、画像データに基づく画像を電子写真プロセスによって記録紙上に形成して出力する機能を果たす。プリンタ部20は、たとえば、記録紙の搬送装置と、感光体ドラムと、帯電装置と、入力される画像データに応じて点灯制御されるLD(Laser Diode)と、LDから射出されたレーザ光を感光体ドラム上で走査させる走査ユニットと、現像装置と、転写分離装置と、クリーニング装置と、定着装置とを有する、いわゆるレーザープリンタとして構成されている。レーザ光に代えてLED(Light Emitting Diode)で感光体ドラムを照射するLEDプリンタのほか他の方式のプリンタであってもかまわない。
【0034】
次に、複写機10の動作について説明する。
【0035】
(読み取り画像における劣化の許容性判断方法)
まず、複写機10のブックスキャンモードで見開き原稿を読み取る場合に、その読み取り画像に発生する劣化が許容条件を満たすか否かを判断する方法について説明する。
【0036】
見開き原稿の読み取りでは、見開き原稿をプラテンガラス上に伏せて載置した際に開かれているページ間の境界部分(綴じ目部分)がプラテンガラスから浮き上がると、この浮き上がりによって読み取り画像には劣化が生じる。たとえば、読み取り画像におけるページ間の境界部分に帯状の影が生じたり、浮き上がった部分に対応する画像に歪みが生じたり、ページ境界付近の文字にボケや歪みが生じたりする。
【0037】
ここでは、読み取り画像の劣化の程度を上記の影の幅を判断基準とした許容性判断方法について説明する。詳細には、帯状の影の領域を、画像濃度が所定の基準濃度よりも濃い濃度過多領域として検出し、この濃度過多領域が許容条件を満たすか否かを判断する方法について説明する。
【0038】
図2に示すように、複写機10でブック原稿40を読み取る場合は、読み取るページを開いてブック原稿40をプラテンガラス30の上面(読み取り面)に伏せるように載置する。本例のブック原稿40は左右に開く形態であり、この場合は開き方向(原稿幅方向)をプラテンガラス30の幅方向に合わせ、綴じ目の方向(原稿高さ方向)をプラテンガラス30の奥行き方向に向けて、プラテンガラス30の中央付近に伏せるように載置する。
【0039】
コピーモードまたはスキャンモードが選択されている場合、複写機10は操作部17のスタートボタンの押下操作を受けると原稿の読み取りを行う。詳細には、スキャナ部18が光源31を発光させてプラテンガラス30上のブック原稿40を照明し、ブック原稿40からの反射光をエリアセンサ32で受光してその原稿の画像を二次元で読み取る。
【0040】
このようにページを開いて読み取りを行うブック原稿40では、プラテンガラス30上に伏せて載置するとページ間の境界部分41(綴じ目部分)が断面略三角形状に浮き上がり、この浮き上がりによってページ間の境界部分41は照明され難くなる。そして、読み取り画像には、ページ間の境界部分41と対応する部分に帯状の影が現れる。
【0041】
図3は、上記のブック原稿40における読み取り画像50aの一例を示している。この読み取り画像50aは、ブック原稿40の押さえ付け力が小さく、綴じ目部分の浮き上がりが大きい場合の画像である。
【0042】
読み取り画像50aには、たとえば、右側ページ51(右側ページ画像領域)と左側ページ52(左側ページ画像領域)に文字領域53、54(文字列)などが存在している。ページ間の境界部分55には帯状の影56aが存在しており、ここでは、ページ境界付近の文字に影56aの側端部分が重なっている。この影56aの領域(影領域)を濃度過多領域57aとして検出した場合に(影領域=濃度過多領域)、濃度過多領域57aが許容条件を満たすか否かは以下のようにして判断する。
【0043】
読み取り画像50aにおける影56aは、ブック原稿40の綴じ目(ページ間の境界部分41)に沿って発生する。本例のように、綴じ目がプラテンガラス30の奥行き方向を向いている場合には(図2参照)、影56aは読み取り画像50aの高さ方向に沿って帯状などのように発生する(図3参照)。
【0044】
また、綴じ目部分の浮き上がりは、その幅方向における中央部付近が最も大きくなり、そこから左右の両側へ向けて除々に小さくなり、ページ面がプラテンガラス30に接触して消滅する。このような浮き上がりによって読み取り画像50aに現れた帯状の影56aは、幅方向における中央部付近の濃度が最も濃く(高く)なり、そこから左右の両側へ向けて濃度が除々に淡く(低く)なる。原稿の地色が白の場合は、そのまま消滅する。
【0045】
この影56aの領域を、濃度が所定の基準濃度よりも濃い濃度過多領域57aとして検出する。本例では、検出範囲を小さくして劣化の許容性判断に係る処理を軽減(簡素化)するために、濃度過多領域57aの検出は1箇所で行うようにしている。具体的には、読み取り画像50aに対して幅方向(ブック原稿40の見開き方向)に沿った濃度過多領域検出用のラインLを設定し、このラインL上の画像の濃度(濃淡)に基づいて濃度過多領域57aを検出するようにしている。ラインLの位置は、本例では読み取り画像50aの高さ方向における中央付近としている。
【0046】
図4は、図3に示した読み取り画像50aにおけるラインLでの濃度分布を示すグラフである。本例のグラフでは、横軸をラインLに沿った領域とし、縦軸を濃度としている。濃度については、濃淡を00h〜FFh(「h」は16進数を示す)の256階調で示すと共に、グラフの低位側を濃度の濃い側、グラフの高位側を濃度の淡い側として示している。
【0047】
図4に示すように、読み取り画像50aの原稿端に対応する箇所では、グラフ線に濃度の淡い側(高位側)から濃い側(低位側)へエッジ状に突出する突出形状が現れる。読み取り画像50aにおける文字領域53、54(原稿内文字領域)に対応する箇所では、ラインLに沿って濃度の濃い文字部分と濃度の淡い空白部分が繰り返すことにより、グラフ線は上下にエッジ状に折り返すように(濃淡を繰り返すように)推移する。読み取り画像50aにおける帯状の影56a(影領域)に対応する箇所では、グラフ線は濃度の濃い側(低位側)へ推移する。
【0048】
このグラフにおいて、影領域を濃度過多領域として検出(規定)するための所定の基準濃度を設定する。基準濃度は任意の値であり、たとえば、濃度D0hなどに設定する。この基準濃度よりも濃い領域を、影領域に相当する濃度過多領域として検出し、その幅(X)を所定の閾値(α)と比較して、濃度過多領域が許容条件を満たすか否かを判断する。本例のように、劣化を影とする場合には、劣化の許容条件は、その影の領域である濃度過多領域の幅が閾値よりも小さい条件となる。
【0049】
図4に示した例では、濃度過多領域の幅Xaが閾値αよりも大きいため、読み取り画像50aの劣化(影)は許容条件を満たしていないと判断する。
【0050】
上記の閾値は任意の値である。たとえば、20〜30mmの範囲などにおける任意の値に設定する。この閾値は、初期設定による固定値としたり、ユーザが設定変更できたりするようにしてもよい。閾値を設定変更可能とする場合には、数値入力、数値選択、原稿の厚さ選択などによって設定を変更できる構成としてもよい。また、この閾値(許容条件)を設定する設定部の機能は、操作部17が備えるように構成してもよい。
【0051】
数値入力の場合には、操作部17に設けられているテンキーを使用して数値を入力するようにしてもよい。数値選択の場合には、予め設けられた複数種類の数値、たとえば、「20mm」、「25mm」、「30mm」などの中から択一的に選択するようにしてもよい。原稿の厚さ選択の場合には、予め設けられた複数種類の厚さ、たとえば、「薄い」、「普通」、「厚い」などの中から択一的に選択し、その選択された厚さに対応する数値、たとえば、「薄い」に対応する「20mm」、「普通」に対応する「25mm」、「厚い」に対応する「30mm」などが設定されるようにしてもよい。
【0052】
図5は、図2で説明したブック原稿40の押さえ付け力を大きくし、綴じ目部分の浮き上がりを小さくした場合の読み取り画像50bの一例を示している。綴じ目部分の浮き上がりが小さくなると、図3との比較からわかるように、浮き上がり部分に対応して読み取り画像50bのページ間の境界部分55に現れた帯状の影56b(濃度過多領域57b)は幅が小さくなる。またここでは、ページ境界付近の文字に影56bが重なっておらず、文字の端部と影56bの間に空白部分が存在している。
【0053】
図6は、図5に示した読み取り画像50bにおけるラインLでの濃度分布を示すグラフである。図4との比較からわかるように、影領域として検出された濃度過多領域の幅Xbは小さくなる。この場合は、濃度過多領域の幅Xbが閾値αよりも小さいため、読み取り画像50bの劣化(影)は許容条件を満たしていると判断する。
【0054】
見開き原稿(ブック原稿)における読み取り画像の劣化の許容性判断は、以上のようにして行う。
【0055】
(読取動作)
図7は、複写機10による読取動作の流れを示している。前述したように、ブックスキャンモードでは、プラテンガラス上の見開き原稿を繰り返し読み取り、その読み取った画像の中から劣化が許容条件を満たす画像を選択的に取得する流れとなっている。読み取りの繰り返しは、本例では一定の時間間隔で行うようにしている。この時間間隔は、たとえば、数秒(1〜2秒)間隔などである。読み取り画像の劣化については、ページ間の境界部分に現れる影(濃度過多領域)を対象にしており、その許容性判断は図3〜図6で説明した方法で行うようにしている。
【0056】
また、繰り返し読み取っている画像は、表示部16に最新の画像のみを更新しながらモニタ表示するようにしている。ユーザは、このモニタ表示される読み取り画像を見て、その画像に現れている影の大きさなどを確認しながら見開き原稿の押さえ付け方(押付力)を適宜変更できるようになっている。
【0057】
また、綴じ目部分が非常に開き難い分厚い本などの場合は、強く押さえ付けても影が許容条件を満足しない可能性がある。そのため、繰り返し行う読み取りには制限時間(タイムオーバー)を設けている。タイムオーバーとなった場合には、許容条件(濃度過多領域の幅の閾値)の設定を変更できる構成であれば、その許容条件を広げる設定変更を行って再び読み取りを行うこともできる。また、通常スキャンモードに切り替えて読み取りを行うことも可能である。
【0058】
以下、複写機10による読取動作の詳細を説明する。
【0059】
ユーザが複写機10の操作部17を通してコピーモードまたはスキャンモードを選択し、さらに、通常スキャンモードまたはブックスキャンモードを選択すると、CPU11は本動作を開始する(Start)。通常スキャンモードが選択された場合は(ステップS101;No)、CPU11はスキャナ部18による原稿の読み取りを通常の読取処理で行い(ステップS102)、本動作を終了する(End)。
【0060】
通常の読取処理では、ユーザがプラテンガラス30上に原稿を載置し、操作部17のスタートボタンを押下することでスキャナ部18による原稿の読み取りが行われる。読み取られた原稿の画像は、コピーモードの場合にはプリンタ部20により記録紙上に形成されて出力される。スキャンモードの場合には記憶部15(HDDなど)に保存などされる。
【0061】
ブックスキャンモードが選択された場合は(ステップS101;Yes)、CPU11はスキャナ部18による原稿の読み取りをブック原稿に対応した読取処理で行う。このブックスキャンモードでは、CPU11は、表示部16に「原稿をセットし、スタートボタンを押して下さい。」などの操作案内を表示する(ステップS103)。
【0062】
これを受けてユーザは、図2に示すように、ブック原稿40などを読み取り対象のページを開いてプラテンガラス30上に伏せて載置し、操作部17のスタートボタンを押下する。
【0063】
CPU11は、スタートボタンの押下を検知すると(ステップS104)、スキャナ部18の光源31を発光させて原稿を照明し、エリアセンサ32で原稿の画像を読み取り(ステップS105)、読み取った画像を画像メモリ(RAM14)の一時保存領域に保存する(ステップS106)。さらに、読み取った画像を表示部16にモニタ表示する(ステップS107)。
【0064】
続いて、CPU11は、読み取った画像のページ間の境界部分に存在している影を濃度過多領域として検出し(ステップS108)、濃度過多領域の幅が閾値よりも小さいか否かを判断する(ステップS109)。
【0065】
濃度過多領域の幅が閾値よりも大きい場合には(ステップS109;No)、CPU11は、読み取りの開始(スタートボタンの押下検知)から所定時間が経過したか否かを判断する(ステップS110)。所定時間を経過していない場合には(ステップS110;No)、ステップS105へ戻る。ここでCPU11は、エリアセンサ32で原稿の画像を再び読み取り(ステップS105)、読み取った画像を画像メモリの一時保存領域に上書き保存する(ステップS106)。そして、ステップS107以降を同様に繰り返す。
【0066】
このようにして繰り返される原稿の読み取りにおいて、ユーザは表示部16にモニタ表示される読み取り画像を見て、その画像に現れている影の大きさを確認することができる。この影が大きい場合は、影の小さい良好な画像を得るために、原稿を強く押さえ付けて影を小さくする必要があることを容易に認識することができ、その対応が取りやすくなる。なお、この画像上に、影の幅の許容範囲を示すガイドラインを表示するようにしてもよい。
【0067】
また、ステップS105〜ステップS110の繰り返しが継続され、読み取りの開始から所定時間を経過した場合には(ステップS110;Yes(タイムオーバー))、CPU11は、画像を取得できなかったことを表示部16に表示し(ステップS111)、本動作を終了する(End)。
【0068】
一方、読み取った画像内の濃度過多領域の幅が閾値よりも小さい場合には(ステップS109;Yes)、CPU11は、その画像を画像メモリの一時保存領域から取得保存領域に保存し(ステップS112)、エリアセンサ32による画像の読み取りを終了する(ステップS113)。そして、CPU11は、良好な読み取り画像を取得できたことを表示部16に表示し(ステップS114)、本動作を終了する(End)。
【0069】
なお、取得保存領域は一時保存領域と同一のメモリでアドレスが異なる領域に確保する他に、別の記憶媒体に確保する構成としてもよい。たとえば、別に設けられた不揮発メモリなどに取得保存領域を確保し、上記の画像を画像メモリの一時保存領域からその不揮発メモリなどの取得保存領域へ転送して保存するようにしてもよい。
【0070】
このブックスキャンモードで取得された原稿の画像は、通常スキャンモードと同様に、コピーモードではプリンタ部20により記録紙上に形成されて出力される。スキャンモードでは記憶部15(HDDなど)に保存などされる。
【0071】
このように、本実施形態に係る複写機10では、綴じ目の開き難い厚い本などを読み取る場合でも、プラテンガラス上に伏せて載置したその厚い本などをユーザが両手で強く押さえ付けながら、劣化の小さい良好な読み取り画像を自動的に取得することができる。たとえば、ページ間の境界部分に現れる影(濃度過多領域)が目立たない見栄えのよい画像や、ページ境界付近の文字などにその影が重なっていない見易い画像を簡単に取得することができる。
【0072】
また、原稿をエリアセンサ32によって一時に二次元で読み取ることにより、ラインセンサによる走査読み取りなどに比べて高速読み取りが可能となる。原稿を繰り返し読み取る上では、1回当たりの読取時間が短いので読み取りの繰り返し間隔を短くすることができ、劣化の小さい良好な画像を取得するまでの時間を短縮することができる(画像読取・取得処理時間の短縮)。
【0073】
また、読み取り画像の劣化の許容条件を設定できる構成においては、ユーザが自分の希望する許容条件(濃度過多領域の幅が閾値)を入力したり、選択したりして任意に設定することができ、利便性が向上する。
【0074】
(読み取り画像における劣化の許容性判断方法の変形例)
前述した読み取り画像における劣化の許容性判断では、劣化部分である影の1箇所(1本のライン上で検出した濃度過多領域)で許容性を判断する例を説明したが、ここでは、複数箇所で許容性を判断する例を説明する。
【0075】
プラテンガラス上に伏せて載置した見開き原稿を押さえ付ける場合、特に大きい本や綴じ目部分の浮き上がりが大きい本などを押さえ付ける場合には、押さえ付け方に偏りが出て、読み取り画像に現れる影の幅が一定でないこともある。本例は、このような影の幅(劣化の程度)が場所によって異なるケースに対応したものであり、濃度過多領域の検出箇所を増やすことで許容性判断の精度を高めるようにしたものである。
【0076】
図8は、図2で説明したブック原稿40における読み取り画像50cの一例を示している。この読み取り画像50cは、ブック原稿40を押さえ付ける力に偏りがあり、綴じ目部分の浮き上がりが長さ方向で一定でないためにテーパー状の影56c(濃度過多領域57c)が現れている場合の画像である。具体的には、ブック原稿40の上部側の押さえ付け力が下部側よりも小さいために、影56cの上部側が下部側よりも幅広となっている場合の画像である。
【0077】
本例では、読み取り画像に現れた影の複数箇所で濃度過多領域を検出するために、濃度過多領域検出用のラインを複数設定する。たとえば、読み取り画像50cの高さ方向における上部付近にラインL1、中央付近にラインL2、下部付近にラインL3を設定する。この3本のライン上(3箇所)でそれぞれ濃度過多領域57cを検出し、全ての箇所で濃度過多領域57cの幅が閾値よりも小さい場合に、読み取り画像の劣化(影)は許容条件を満たしていると判断する。
【0078】
これにより、劣化の許容性判断の精度が高められ、より良好な読み取り画像を得ることができる。
【0079】
上述したように、原稿の押さえ付け方に偏りがあると、読み取り画像に現れる影は、通常はテーパー状となる。そのため、濃度過多領域の検出は、読み取り画像の高さ方向における上部付近と下部付近の2箇所で行うようにしてもよい。
【0080】
ただし、サイズの大きな本などでは、たとえば、中央部分だけを強く押さえ付けると高さ方向に沿って弓なり状に撓み、中央近傍の浮き上がりは小さくなるが上下部分の浮き上がりはさほど小さくなっていないような状態も起こり得る。そのため、劣化の許容性判断においてより高い精度を得るには、本例で説明したように中央付近と、上部および下部付近の少なくとも3箇所で劣化の検出を行うことが好ましい。また、4箇所以上や上下方向の全域で劣化の検出を行うようにしてもよい。
【0081】
以上、本発明の一実施形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成はその実施形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0082】
実施形態では、読み取り画像における劣化の許容性を影(濃度過多領域)の幅に基づいて判断する方法を説明したが、他の方法で判断してもよい。
【0083】
たとえば、影が文字などに重なっているか否かを検出して劣化の許容性を判断するようにしてもよい。具体的には、読み取り画像内のオブジェクト(文字、線、図形など)におけるページ境界側(左右の各ページについて、最も見開き中央部に近いオブジェクトの見開き中央側)のエッジの周辺(背景)の濃度を検出し、この検出濃度が所定の許容濃度よりも濃い場合は劣化が許容条件を満たしていないと判断し(影が文字に重なっている状態)、検出濃度が所定の許容濃度よりも淡い場合は劣化が許容条件を満たしていると判断する(影が文字に重なっていない状態)などしてもよい。すなわち、読み取り画像内のオブジェクトにおけるページ境界側のエッジの周辺の濃度に基づいて劣化の許容性を判断するようにしてもよい。
【0084】
読み取り画像の劣化については、読み取り画像におけるページ間の境界部分に発生する影を対象とした場合で説明したが、画像縁形状の歪みやページ境界付近の文字の歪みなどを対象にしてもよい。具体的には、画像縁形状/文字の歪み量を検出し、この検出歪み量が所定の許容歪み量よりも大きい場合は劣化が許容条件を満たしていないと判断し、検出歪み量が所定の許容歪み量よりも小さい場合は劣化が許容条件を満たしていると判断するなどしてもよい。すなわち、画像縁形状/文字の歪みに基づいて劣化の許容性を判断するようにしてもよい。
【0085】
原稿の読取部については、エリアセンサを用いた非走査型の構成を例に説明したが、ラインセンサなどを用いた走査型の構成としてもよい。この読取部は、許容条件を満たすまで繰り返し画像を読み取るように構成されればよい。
【0086】
また、実施形態では劣化の許容条件を満たした画像を検出した時点でその画像を取得し、読み取りを終了するようにしているが、たとえば、検出後も一定時間または所定回数読み取りを繰り返して、最良の画像を取得するようにしてもよい。
【0087】
ブックスキャンモードにおいては、繰り返し読み取っている原稿の画像の劣化が許容条件を満たしているか否かをユーザが確認できるようにするために、読み取った画像を表示部16にモニタ表示する例を説明したが、メッセージ表示や音声出力による報知でその確認が行える構成としてもよい。
【0088】
また本発明は、実施形態で説明した複写機に限らず、スキャナ機や複合機などの他の画像読取装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0089】
10…複写機
11…CPU
12…バス
13…ROM
14…RAM
15…記憶部
16…表示部
17…操作部
18…スキャナ部
19…画像処理部
20…プリンタ部
30…プラテンガラス
31…光源
32…エリアセンサ
40…ブック原稿
41…ページ間の境界部分
50a、50b、50c…読み取り画像
51…右側ページ(右側ページ画像領域)
52…左側ページ(左側ページ画像領域)
53、54…文字領域(文字列)
55…ページ間の境界部分
56a…影(帯状の影)
56b…影(帯状の影)
56c…影(テーパー状の影)
57a、57b、57c…濃度過多領域
L…ライン(濃度過多領域検出用のライン)
L1、L2、L3…ライン(濃度過多領域検出用のライン)
Xa、Xb…幅(濃度過多領域の幅)
α…閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
見開き原稿が伏せて載置される原稿台と、
前記原稿台上の見開き原稿を読み取る読取部と、
前記読取部によって前記見開き原稿を繰り返し読み取らせ、読み取った画像の中から、前記見開き原稿における前記原稿台からの浮き上がり部分に対応して前記画像に発生する劣化が許容条件を満たす画像を取得する制御部と、
を備えた画像読取装置。
【請求項2】
前記制御部は、画像濃度が所定の基準濃度よりも濃い濃度過多領域における前記見開き原稿の見開き方向に沿った幅が、所定の閾値よりも小さい場合に、前記劣化が許容条件を満たしていると判断する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記濃度過多領域における長さ方向の複数箇所で検出した前記幅が全て前記所定の閾値よりも小さい場合に、前記許容条件を満たしていると判断する
ことを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記読取部は、エリアセンサである
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記許容条件を設定する設定部を有する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−268245(P2010−268245A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118058(P2009−118058)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】