説明

画像読取装置

【課題】原稿の搬送経路がUターンする部分を備えた形状となっているにもかかわらず、装置の薄型化が可能な画像読取装置を提供すること。
【解決手段】複合機が備えるスキャナユニット3において、Uターン搬送ローラ34の配設位置A1は、静止原稿用透明部15の原稿載置面に対して垂直な方向から見た状態において、第一イメージセンサ11、静止原稿用透明部15、及び搬送原稿用第一透明部17の配設範囲A2とは重ならない位置とされている。しかも、このような範囲A1,A2の重なりがないことを利用して、Uターン搬送ローラ34の下端位置H2は、原稿載置面に垂直な高さ方向について、原稿載置面の高さ位置H1よりも下方となる位置にされている。そのため、Uターン経路6Bが静止原稿用透明部15上面の高さ位置よりも上方にあった従来品よりも、低い位置とすることができ、装置の薄型化を達成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿の表裏両面の画像を読み取り可能な画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フラットベッド型イメージスキャナの上部に、自動原稿送り装置(Automatic Document Feeder;以下、ADFと略称する。)を付加した構造とされた画像読取装置は、すでに提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、特許文献1に記載の画像読取装置の場合、二つのイメージセンサを備えており、画像読取装置をADF型イメージスキャナとして使用する場合には、原稿の表裏両面の画像をほぼ同時に読み取ることができる。
【0004】
より詳しくは、第一のイメージセンサは、画像読取装置をフラットベッド型イメージスキャナとして使用する場合に利用される他、画像読取装置をADF型イメージスキャナとして使用する場合には、原稿の表面の画像を読み取るために利用される。一方、第二のイメージセンサは、画像読取装置をADF型イメージスキャナとして使用する場合に、原稿の裏面の画像を読み取るために利用される。
【0005】
第一のイメージセンサは、原稿の表面の画像を読み取る際にはコンタクトガラスの下方で静止し、その位置でコンタクトガラスの上面に沿って搬送される原稿の表面の画像を読み取る。また、第二のイメージセンサは、コンタクトガラスの上方に固定されていて、コンタクトガラスの上面に沿って搬送される原稿の裏面の画像を読み取る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−32164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の画像読取装置の場合、ADFによる原稿の搬送経路の形状は、大きくUターンする部分を備えた形状となっていて、そのような搬送経路がコンタクトガラスの上面(すなわち、静止原稿の載置面。)よりも上方に設けられている。そのため、装置全体として高さ方向寸法がどうしても大きくなりがちで、装置の薄型化が難しいという問題があった。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、原稿の搬送経路がUターンする部分を備えた形状となっているにもかかわらず、装置の薄型化が可能な画像読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の画像読取装置は、透明材料で形成され、上側にある原稿載置面に原稿が載置される静止原稿用透明部と、所定の搬送経路に沿って原稿を搬送する原稿搬送手段と、透明材料で形成され、前記原稿搬送手段によって原稿が搬送される際には、上側にある原稿接触面で前記原稿の下面に接触する状態となる搬送原稿用第一透明部と、透明材料で形成され、前記原稿搬送手段によって原稿が搬送される際には、下側にある原稿接触面で前記原稿の上面に接触する状態となる搬送原稿用第二透明部と、前記静止原稿用透明部の下方を当該静止原稿用透明部に沿って移動しつつ、前記原稿載置面に載置された原稿の画像を読み取り可能で、しかも、前記搬送原稿用第一透明部の下方へも移動可能で、当該位置で静止した際には前記原稿搬送手段によって搬送される原稿の前記下面の画像を読み取り可能な第一読取手段と、前記搬送原稿用第二透明部の上方に配設され、前記原稿搬送手段によって搬送される原稿の前記上面の画像を読み取り可能な第二読取手段とを備え、前記原稿搬送手段は、前記搬送経路の一部として、原稿をUターンさせるUターン経路を形成しており、しかも、前記原稿載置面に対して垂直な方向から見た状態において、前記第一読取手段、前記静止原稿用透明部、及び前記搬送原稿用第一透明部とは重ならない位置に配設された搬送ローラを備えていて、当該搬送ローラが前記Uターン経路の内周側に配設されており、前記搬送ローラの少なくとも一部は、前記原稿載置面に垂直な高さ方向について、前記原稿載置面よりも下方となる位置に配設されていることを特徴とする。
【0010】
このように構成された画像読取装置によれば、原稿をUターンさせるUターン経路を備えており、そのUターン経路の内周側に配設された搬送ローラが、原稿載置面に対して垂直な方向から見た状態において、第一読取手段、静止原稿用透明部、及び搬送原稿用第一透明部とは重ならない位置に配設されている。しかも、そのような位置に配設された搬送ローラは、少なくとも一部が原稿載置面よりも下方となる位置に配設されている。
【0011】
そのため、このようなUターン経路が静止原稿用透明部相当物の上方に重ねて配置されていた従来品(例えば、特許文献1参照。)よりも、搬送ローラが配設される位置を、高さ方向について低い位置とすることができる。したがって、その分だけ、原稿の搬送経路を、より低い位置に設定することができるようになり、ひいては、画像読取装置全体としての薄型化も達成することができる。
【0012】
ところで、本発明の画像読取装置において、前記搬送原稿用第二透明部は、一端が前記搬送ローラよりも前記搬送原稿用第一透明部に近い位置、他端が前記搬送原稿用第一透明部よりも前記搬送ローラに近い位置にあり、前記搬送原稿用第二透明部の原稿接触面は、前記一端から前記他端に向かって下り勾配となる傾斜面とされていると好ましい。
【0013】
このように構成された画像読取装置によれば、搬送原稿用第一透明部と搬送原稿用第一透明部の上側にある原稿接触面よりも低い位置にある搬送ローラの下端との間の搬送経路において、搬送原稿用第二透明部の原稿接触面は、搬送原稿用第一透明部側から搬送ローラ側に向かって下り勾配となる傾斜面で原稿に接触する。したがって、搬送原稿用第二透明部の原稿接触面が傾斜面とされていない(例えば、水平面とされている)場合に比べ、原稿が搬送原稿用第二透明部の原稿接触面に自ら密着しやすくなり、ガイド部などで強制的に搬送経路を原稿接触面に近づけなくても搬送経路を搬送原稿用第二透明部の原稿接触面に沿わせることができ、よりスムーズな搬送を実現できる。
【0014】
また、本発明の画像読取装置において、前記搬送ローラは、単一のローラであると好ましい。このように構成された画像読取装置によれば、単一の搬送ローラによってUターン経路を構成することができるので、複数の搬送ローラを組み合わせてUターン経路を形成する場合に比べ、Uターン経路の曲率を容易に設計通りとすることができ、また、搬送ローラを支持する軸受けの数も少なくて済む。さらに、複数の搬送ローラに対して駆動源からの駆動力を伝達するための機構を装置内に組み込む必要がなく、構成を簡易化することができる。
【0015】
また、本発明の画像読取装置において、前記原稿搬送手段は、前記搬送経路の一部として、前記Uターン経路を挟む両側において当該Uターン経路の上端から連続して延びる上側経路、及び前記Uターン経路の下端から連続して延びる下側経路を形成しており、前記搬送原稿用第二透明部及び前記第二読取手段は、前記上側経路と前記下側経路との間に挟まれた位置に配設されていると好ましい。
【0016】
このように構成された画像読取装置によれば、下側経路よりも下方となる位置や上側経路よりも上方となる位置に搬送原稿用第二透明部及び第二読取手段が配設される場合に比べ、上流側経路と下流側経路との間にあるスペースを有効利用して搬送原稿用第二透明部及び第二読取手段を配設でき、装置の薄型化を図ることができる。
【0017】
また、本発明の画像読取装置において、前記搬送原稿用第二透明部及び前記第二読取手段は、前記下側経路を搬送される原稿の画像を読み取り可能で、前記搬送原稿用第二透明部の下方には、前記原稿搬送手段によって原稿が搬送される際に前記下側経路を搬送される原稿を前記搬送原稿用第二透明部に向かって押圧する原稿押さえ部が配設され、前記原稿押さえ部の少なくとも一部は、前記原稿載置面に垂直な高さ方向について、前記原稿載置面よりも下方となる位置に配設されていると好ましい。
【0018】
このように構成された画像読取装置によれば、原稿押さえ部は、少なくとも一部が原稿載置面よりも下方となる位置に配設されている。そのため、この種の原稿押さえ部相当物が原稿載置面よりも上方にあった従来品よりも、原稿押さえ部が配設される位置を、高さ方向について低い位置とすることができ、画像読取装置全体としての薄型化も達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】画像読取装置を備える複合機を示す斜視図。
【図2】第一実施形態の画像読取装置の概略構造を示す縦断面図。
【図3】第二実施形態の画像読取装置の概略構造を示す縦断面図。
【図4】第三実施形態の画像読取装置の概略構造を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態について、具体的な例を挙げて説明する。
(1)第一実施形態
[複合機の構造]
図1(a)及び同図(b)に示す複合機1は、画像読取装置としての機能(スキャン機能)に加え、その他の機能(例えば、プリント機能、コピー機能、ファクシミリ送受信機能など)を兼ね備えたものである。なお、以下の説明においては、複合機1が備える各部の相対的な位置関係をわかりやすく説明するため、図中に併記した上下左右前後の各方向を利用する。
【0021】
複合機1は、プリンタユニット2と、プリンタユニット2の上部に搭載されたスキャナユニット3を備えている。スキャナユニット3は、フラットベッド型イメージスキャナのカバー部分にADFを備えた構造になっており、下側部分がスキャナ本体部5、上側部分がADF部6とされている。
【0022】
また、プリンタユニット2の前部上側には、利用者によって操作される操作パネル7が設けられている。また、操作パネル7の下方には、印刷後の被記録媒体を排出する排出口8が形成され、さらにその下方には、印刷前の被記録媒体が収納される給紙カセット9などが装着されている。
【0023】
これらのうち、スキャナユニット3は、スキャナユニット3の後端付近において左右方向へと延びる軸線を回動中心として、プリンタユニット2に対し回動可能な構造とされている。この回動に伴って、スキャナユニット3は、プリンタユニット2の上部開口を閉鎖する位置又は同上部開口を開放する位置へ変位可能となっている。
【0024】
ADF部6は、ADF部6の後端付近において左右方向へと延びる軸線を回動中心として、スキャナ本体部5に対し回動可能な構造とされている。この回動に伴って、ADF部6は、スキャナ本体部5の上面にある原稿載置面を覆う位置又は同原稿載置面を露出させる位置へ変位可能となっている。
【0025】
ADF部6の上面には、開閉部10が設けられている。この開閉部10は、閉じられたとき(図1(a)参照。)には、ADF部6の上面側開口部を覆うカバーとして機能する。また、開閉部10が開かれたとき(図1(b)参照。)には、開閉部10は、ADF部6による搬送対象となる原稿が積載されるトレイとして機能し、また、ADF部6による搬送を終えた原稿が排出されるトレイとしても機能する。
【0026】
[スキャナユニットの要部の構造]
図2に示すように、スキャナユニット3には、第一イメージセンサ11及び第二イメージセンサ12が設けられている。本実施形態において、第一イメージセンサ11及び第二イメージセンサ12としては、双方とも密着イメージセンサ(Contact Image Sensor)が採用されている。
【0027】
第一イメージセンサ11は、スキャナ本体部5側に設けられており、図示しないモータによって駆動されて左右方向へ往復移動する構造とされている。また、第二イメージセンサ12は、ADF部6側に固定されている。
【0028】
また、スキャナ本体部5側には、第一イメージセンサ11の往復移動経路の上方となる位置に、静止原稿用透明部15及び搬送原稿用第一透明部17が設けられている。また、ADF部6側には、第二イメージセンサ12の下方となる位置に、搬送原稿用第二透明部18が設けられている。
【0029】
静止原稿用透明部15及び搬送原稿用第一透明部17は、双方ともスキャナ本体部5の上面をなす位置にあり、本実施形態においては、これら静止原稿用透明部15及び搬送原稿用第一透明部17が、単一のガラス板を利用して構成されている。また、搬送原稿用第二透明部18は、本実施形態においては、静止原稿用透明部15及び搬送原稿用第一透明部17とは別のガラス板を利用して構成されている。
【0030】
なお、静止原稿用透明部15及び搬送原稿用第一透明部17は、それぞれが別のガラス板を利用して構成されていてもよい。また、静止原稿用透明部15、搬送原稿用第一透明部17、及び搬送原稿用第二透明部18の材質は、第一イメージセンサ11及び第二イメージセンサ12による原稿の読み取りが可能な透明な材質であれば、ガラス以外の材質であってもよい。
【0031】
また、ADF部6側には、搬送原稿用第一透明部17の上方となる位置に、第一原稿押さえ部21が配設され、スキャナ本体部5側には、搬送原稿用第二透明部18の下方となる位置に、第二原稿押さえ部22が配設されている。
【0032】
第一原稿押さえ部21は、圧縮ばね23によって下方へと付勢されており、これにより、第一原稿押さえ部21は搬送原稿用第一透明部17の上面側を軽く押圧する状態になっている。圧縮ばね23の上端側は、ADF部6内のフレーム(図示せず)に支持されており、下端側は、第一原稿押さえ部21の上面(搬送原稿用第一透明部17とは反対側の面)に支持されている。
【0033】
また、第二原稿押さえ部22は、圧縮ばね24によって上方へと付勢されており、これにより、第二原稿押さえ部22は搬送原稿用第二透明部18の下面側を軽く押圧する状態になっている。圧縮ばね24の上端側は、第二原稿押さえ部22の下面(搬送原稿用第二透明部18とは反対側の面)に支持されており、下端側は、ADF部6のフレームに支持されている。
【0034】
また、スキャナ本体部5側には、左右方向について、静止原稿用透明部15と搬送原稿用第一透明部17との間となる位置に、第一白基準部25が設けられている。この第一白基準部25は、静止原稿用透明部15及び搬送原稿用第一透明部17をなすガラス板の上面に接する位置にある。第一イメージセンサ11のシェーディング補正を実施する際には、第一白基準部25がガラス板越しに第一イメージセンサ11によって読み取られ、その画像を基準に白色の補正が行われることになる。
【0035】
また、第二原稿押さえ部22の上面側には、第二白基準部26が設けられている。この第二白基準部26は、搬送原稿用第二透明部18をなすガラス板の下面に接する位置にある。すなわち、第二白基準部26は、第二原稿押さえ部22の原稿押圧面に組み込まれている。第二イメージセンサ12のシェーディング補正を実施する際には、第二白基準部26がガラス板越しに第二イメージセンサ12によって読み取られ、その画像を基準に白色の補正が行われることになる。
【0036】
また、ADF部6には、供給ローラ31、分離ローラ32、中継ローラ33、Uターン搬送ローラ34などのローラ群が設けられ、これらのローラ群により、下側経路6AからUターン経路6Bを経て上側経路6Cに至る原稿の搬送経路(図2中に示す二点鎖線参照。)が構成されている。ローラ間にある搬送経路沿いの位置には、原稿を搬送経路に沿った方向へと案内するガイド部35A,35B,35C,35D,35E,35F,35G,35Hなどが設けられている。
【0037】
中継ローラ33よりも搬送経路下流側で、第一原稿押さえ部21よりも搬送経路上流側となる位置には、原稿センサ37が設けられている。原稿センサ37が設けられた位置に原稿の先端が到来すると、原稿センサ37と原稿が接触するのに伴って原稿センサ37が非検出位置から検出位置へ変位し、原稿センサ37がオフからオンに切り替わる。また、原稿センサ37が設けられた位置を原稿の後端が通過すると、原稿センサ37と原稿が接触しなくなるのに伴って原稿センサ37が検出位置から非検出位置へ復帰し、原稿センサ37がオンからオフに切り替わる。したがって、原稿センサ37のオン・オフの切り替わりを監視することで、原稿の先端位置及び後端位置を検出することができる。
【0038】
以上のように構成された複合機1において、スキャナユニット3がADF型スキャナとして利用される場合には、ADF部6に原稿がセットされる。この状態で、操作パネル7上での操作や図示しないPC(Personal Computer)からの遠隔操作により、複合機1に対してスキャン指令が与えられる。なお、このスキャン指令の際、利用者は片面読み取りか両面読み取りかを任意に指定できる。
【0039】
複合機1にスキャン指令が与えられた場合、複合機1は、まず、装置各部を初期化する処理を実行し、そのような初期化処理の一つとして、第一イメージセンサ11及び第二イメージセンサ12のシェーディング補正を行う。このとき、第一イメージセンサ11は、左右方向について第一白基準部25の直下となる位置へ移動し、その位置で第一白基準部25を読み取ってシェーディング補正を実行する。その後、第一イメージセンサ11は、左右方向について第一原稿押さえ部21の直下となる位置へ移動し、その位置で静止する。また、第二イメージセンサ12は、第二白基準部26と対向する位置に固定されているので、その位置で第二白基準部26を読み取ってシェーディング補正を実行する。
【0040】
以上のような初期化処理を終えると、続いて、ADF部6が備えるローラ群が作動する。このとき、供給ローラ31によって搬送方向上流側から供給される原稿は、分離ローラ32によって1枚ずつに分離されつつ、さらに搬送方向下流側へと搬送される。そして、その原稿が、中継ローラ33によって搬送方向下流側へと搬送され、その原稿が、搬送原稿用第一透明部17と第一原稿押さえ部21との間を通過する。
【0041】
原稿が第一イメージセンサ11と対向する位置に到来したら、第一イメージセンサ11は、複合機1の前後方向を主走査方向、搬送方向を副走査方向として、各センサに対向する位置を副走査方向へと移動する原稿から、主走査方向に並ぶ複数の画素を繰り返し読み取ることで、原稿の表面側から画像を読み取る。なお、原稿が第一イメージセンサ11と対向する位置に到来するタイミングは、原稿センサ37によって原稿の先端を検出した時点から、所定量だけ原稿を搬送したタイミングとなる。
【0042】
また、搬送原稿用第一透明部17と第一原稿押さえ部21との間を通過した原稿は、引き続いて、搬送原稿用第二透明部18と第二原稿押さえ部22との間を通過する。原稿が第二イメージセンサ12と対向する位置に到来したら、第二イメージセンサ12は、複合機1の前後方向を主走査方向、搬送方向を副走査方向として、各センサに対向する位置を副走査方向へと移動する原稿から、主走査方向に並ぶ複数の画素を繰り返し読み取ることで、原稿の裏面側から画像を読み取る。なお、原稿が第二イメージセンサ12と対向する位置に到来するタイミングも、原稿センサ37によって原稿の先端を検出した時点から、所定量だけ原稿を搬送したタイミングとなる。
【0043】
搬送原稿用第二透明部18と第二原稿押さえ部22との間を通過した原稿は、Uターン搬送ローラ34に到達する。そして、原稿は、Uターン搬送ローラ34の外周に沿ってUターンし、スキャナユニット3の上面側へと排出される。
【0044】
一方、複合機1において、スキャナユニット3がフラットベッド型イメージスキャナとして利用される場合には、ADF部6が開かれて、原稿が静止原稿用透明部15上に載置される。すなわち、静止原稿用透明部15の上面が原稿載置面となっている。この状態で、操作パネル7上での操作や図示しないPCからの遠隔操作により、複合機1に対してスキャン指令が与えられる。
【0045】
複合機1にスキャン指令が与えられた場合、複合機1は、まず、装置各部を初期化する処理を実行し、そのような初期化処理の一つとして、第一イメージセンサ11のシェーディング補正を行う。なお、第一イメージセンサ11のシェーディング補正についてはすでに説明したので、ここでの説明は省略する。
【0046】
初期化処理を終えたら、第一イメージセンサ11は、複合機1の前後方向を主走査方向、左右方向を副走査方向として、副走査方向へ移動しながら、主走査方向に並ぶ複数の画素を繰り返し読み取ることで、静止原稿用透明部15上に載置されている原稿から画像を読み取る。
【0047】
[効果]
以上のように構成された複合機1においては、図2に示すように、Uターン搬送ローラ34の配設位置A2が、原稿載置面に対して垂直な方向から見た状態において、第一イメージセンサ11、静止原稿用透明部15、及び搬送原稿用第一透明部17の配設範囲A1とは重ならない位置とされている。しかも、このような範囲A1,A2の重なりがないこと、さらに、第二原稿押さえ部22及び圧縮ばね24の左側となるスペースを利用して、Uターン搬送ローラ34の下端位置H2は、原稿載置面に垂直な高さ方向について、原稿載置面の高さ位置H1よりも下方となる位置にされている。
【0048】
そのため、Uターン経路6Bが静止原稿用透明部15上面の高さ位置よりも上方にあった従来品(例えば、特許文献1参照。)よりも、Uターン搬送ローラ34が配設される位置を、高さ方向について低い位置とすることができる。したがって、その分だけ、ADF部6による原稿の搬送経路を、より低い位置に設定することができるようになり、ひいては、スキャナユニット3全体、あるいは複合機1全体としての薄型化も達成することができる。
【0049】
また、上記複合機1において、Uターン搬送ローラ34は、単一のローラとされているので、複数の搬送ローラを組み合わせてUターン経路6B相当の搬送経路を形成する場合に比べ、Uターン経路6Bの曲率を容易に設計通りとすることができ、また、Uターン搬送ローラ34を支持する軸受けの数も少なくて済む。さらに、複数の搬送ローラに対して駆動源からの駆動力を伝達するための機構を装置内に組み込む必要がなく、構成を簡易化することができる。
【0050】
また、上記複合機1において、第二イメージセンサ12及び搬送原稿用第二透明部18は、下側経路6Aと上側経路6Cとの間に挟まれた位置に配設されているので、下側経路6Aよりも下方となるような高さ位置や上側経路6Cよりも上方となるような高さ位置に搬送原稿用第二透明部18及び第二イメージセンサ12が配設される場合に比べ、下側経路6Aと上側経路6Cとの間にあるスペースを有効利用して第二イメージセンサ12及び搬送原稿用第二透明部18を配設でき、装置の薄型化を図ることができる。
【0051】
また、上記複合機1において、第二原稿押さえ部22は、少なくとも一部が原稿載置面の高さ位置H1よりも下方となる位置に配設されている。そのため、この種の第二原稿押さえ部22相当物が原稿載置面よりも上方にあるものよりも、第二原稿押さえ部22が配設される位置を、高さ方向について低い位置とすることができ、これもスキャナユニット3の薄型化達成に寄与する構成となる。
【0052】
(2)第二実施形態
次に、第二実施形態について説明する。なお、第二実施形態以降の実施形態は、第一実施形態との相違点を中心に詳述し、共通部分に関しては、第一実施形態と同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0053】
[スキャナユニットの要部の構造]
図3に示すスキャナユニット43においては、第一実施形態とは異なり、第二イメージセンサ12、搬送原稿用第二透明部18、及び第二原稿押さえ部22が、水平面に対して傾斜した状態で配置されている。
【0054】
より詳しくは、搬送原稿用第二透明部18は、右端がUターン搬送ローラ34よりも搬送原稿用第一透明部17に近い位置、左端が搬送原稿用第一透明部17よりもUターン搬送ローラ34に近い位置にあり、搬送原稿用第二透明部18の原稿接触面は、右端から左端に向かって下り勾配となる傾斜面とされている。そのため、搬送原稿用第一透明部17に接する位置から基準面H1に沿って搬送経路下流側へ原稿を搬送すると、原稿の先端は搬送原稿用第二透明部18の原稿接触面に対して斜め方向から当接することになる。
【0055】
このように構成されたスキャナユニット43でも、第一実施形態において示したスキャナユニット3と同様の作用、効果を奏する。しかも、搬送原稿用第一透明部17とUターン搬送ローラ34の下端との間の搬送経路において、搬送原稿用第二透明部18の原稿接触面は、搬送原稿用第一透明部17側からUターン搬送ローラ34側に向かって下り勾配となる傾斜面で原稿に接触する。したがって、搬送原稿用第二透明部18の原稿接触面が傾斜面とされていない(例えば、水平面とされている)場合に比べ、原稿が搬送原稿用第二透明部18の原稿接触面に自ら密着しやすくなり、ガイド部などで強制的に搬送経路を原稿接触面に近づけなくても搬送経路を搬送原稿用第二透明部18の原稿接触面に沿わせることができ、よりスムーズな搬送を実現できる。さらに、搬送用原稿第二透明部18よりも搬送方向下流側にあるUターン搬送ローラ34の外周面に向かうように、搬送用原稿第二透明部18が傾斜していることで、Uターン経路に対して、原稿の先端をスムーズに導入させることができる。
【0056】
(3)第三実施形態
図4に示すスキャナユニット53は、第一実施形態に比べ、第一イメージセンサ11と第二イメージセンサ12が左右方向に離れた位置に配置されている。また、第一実施形態に比べ、第二イメージセンサ12、搬送原稿用第二透明部18、第二原稿押さえ部22、及びUターン搬送ローラ34が、より下方に配置されている。
【0057】
そのため、搬送原稿用第一透明部17から搬送原稿用第二透明部18に至る部分には、ガイド部35F,35Iを設けて、原稿の先端を搬送原稿用第二透明部18の下面側へと案内している。
【0058】
このように構成されたスキャナユニット43でも、第一実施形態において示したスキャナユニット3と同様の作用、効果を奏する。しかも、Uターン搬送ローラ34を、第一実施形態に比べ、より下方に配置することが可能になるので、これらの構成が配置された部分の高さ方向寸法をより一層低減でき、装置全体の高さ方向寸法を抑制することも可能となる。
【0059】
(4)その他の実施形態
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な一実施形態に限定されず、この他にも種々の形態で実施することができる。
【0060】
例えば、上記実施形態では、Uターン搬送ローラ34に対し、Uターン搬送ローラ34の下側から原稿を供給するとともに、Uターン搬送ローラ34の上側から原稿を排出する搬送経路を構成してあったが、この搬送方向は逆向きになっていてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、複合機1を例に挙げて本発明の特徴を説明したが、スキャナ機能以外の機能を有するか否かは任意であり、例えば、スキャナ機能のみを有する単機能の画像読取装置において、本発明を採用してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1・・・複合機、2・・・プリンタユニット、3,43,53・・・スキャナユニット、5・・・スキャナ本体部、6・・・ADF部、7・・・操作パネル、8・・・排出口、9・・・給紙カセット、10・・・開閉部、11・・・第一イメージセンサ、12・・・第二イメージセンサ、15・・・静止原稿用透明部、17・・・搬送原稿用第一透明部、18・・・搬送原稿用第二透明部、21・・・第一原稿押さえ部、22・・・第二原稿押さえ部、25・・・第一白基準部、26・・・第二白基準部、31・・・供給ローラ、32・・・分離ローラ、33・・・中継ローラ、34・・・Uターン搬送ローラ、35A〜35I・・・ガイド部、37・・・原稿センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明材料で形成され、上側にある原稿載置面に原稿が載置される静止原稿用透明部と、
所定の搬送経路に沿って原稿を搬送する原稿搬送手段と、
透明材料で形成され、前記原稿搬送手段によって原稿が搬送される際には、上側にある原稿接触面で前記原稿の下面に接触する状態となる搬送原稿用第一透明部と、
透明材料で形成され、前記原稿搬送手段によって原稿が搬送される際には、下側にある原稿接触面で前記原稿の上面に接触する状態となる搬送原稿用第二透明部と、
前記静止原稿用透明部の下方を当該静止原稿用透明部に沿って移動しつつ、前記原稿載置面に載置された原稿の画像を読み取り可能で、しかも、前記搬送原稿用第一透明部の下方へも移動可能で、当該位置で静止した際には前記原稿搬送手段によって搬送される原稿の前記下面の画像を読み取り可能な第一読取手段と、
前記搬送原稿用第二透明部の上方に配設され、前記原稿搬送手段によって搬送される原稿の前記上面の画像を読み取り可能な第二読取手段と
を備え、
前記原稿搬送手段は、前記搬送経路の一部として、原稿をUターンさせるUターン経路を形成しており、しかも、前記原稿載置面に対して垂直な方向から見た状態において、前記第一読取手段、前記静止原稿用透明部、及び前記搬送原稿用第一透明部とは重ならない位置に配設された搬送ローラを備えていて、当該搬送ローラが前記Uターン経路の内周側に配設されており、
前記搬送ローラの少なくとも一部は、前記原稿載置面に垂直な高さ方向について、前記原稿載置面よりも下方となる位置に配設されている
ことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記搬送原稿用第二透明部は、一端が前記搬送ローラよりも前記搬送原稿用第一透明部に近い位置、他端が前記搬送原稿用第一透明部よりも前記搬送ローラに近い位置にあり、前記搬送原稿用第二透明部の原稿接触面は、前記一端から前記他端に向かって下り勾配となる傾斜面とされている
ことを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記搬送ローラは、単一のローラである
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記原稿搬送手段は、前記搬送経路の一部として、前記Uターン経路を挟む両側において当該Uターン経路の上端から連続して延びる上側経路、及び前記Uターン経路の下端から連続して延びる下側経路を形成しており、
前記搬送原稿用第二透明部及び前記第二読取手段は、前記上側経路と前記下側経路との間に挟まれた位置に配設されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記搬送原稿用第二透明部及び前記第二読取手段は、前記下側経路を搬送される原稿の画像を読み取り可能で、
前記搬送原稿用第二透明部の下方には、前記原稿搬送手段によって原稿が搬送される際に前記下側経路を搬送される原稿を前記搬送原稿用第二透明部に向かって押圧する原稿押さえ部が配設され、
前記原稿押さえ部の少なくとも一部は、前記原稿載置面に垂直な高さ方向について、前記原稿載置面よりも下方となる位置に配設されている
ことを特徴とする請求項4に記載の画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−16887(P2013−16887A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146181(P2011−146181)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】