説明

画像読取装置

【課題】画像読取装置の大型化の抑制と、被写界深度の低減とを両立できる画像読取装置を提供すること。
【解決手段】本体10と、本体に対して回転軸X周りに回転自在に支持されている回転ユニット20と、回転ユニットにおける回転軸の半径方向外側に搭載され、回転ユニットの鉛直方向下方の載置面2に載置された読取媒体Sを撮像する撮像部22と、読取媒体に光を照射する光源21と、を備える。光源および撮像部は、光源から照射されて読取媒体で反射された鏡面反射光が撮像部に入射することを抑制可能な相対位置関係で配置されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉛直方向上方から読取媒体を読み取る画像読取装置が知られている。例えば、特許文献1には、支持アーム部を備えたスタンド部、原稿の表面にスリット状の光ビームを照射する走査型照明手段及び光ビームが原稿表面から反射した原稿画像を読込む、支持アーム部上部に設けた原稿画像読取手段とから構成される画像読取装置の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−28671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
撮像部によって鉛直方向上方から読取媒体を読み取る場合、撮像部と読取媒体上の各部との光路長は一定ではない。例えば、読取媒体を走査しながら画像の読み取りを行う場合、読み取りの進行に応じて撮像部と読取媒体との光路長が変化するため、その変化の度合いに応じた被写界深度が要求される。被写界深度を抑える方法として、撮像部の高さ位置を高くすることが考えられるが、この場合装置の大型化を招いてしまうという問題があった。画像読取装置の大型化の抑制と、被写界深度の低減とを両立できることが望まれている。
【0005】
本発明の目的は、画像読取装置の大型化の抑制と、被写界深度の低減とを両立できる画像読取装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像読取装置は、本体と、前記本体に対して回転軸周りに回転自在に支持されている回転ユニットと、前記回転ユニットにおける前記回転軸の半径方向外側に搭載され、前記回転ユニットの鉛直方向下方の載置面に載置された読取媒体を撮像する撮像部と、前記読取媒体に光を照射する光源と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記画像読取装置において、前記光源および前記撮像部は、前記光源から照射されて前記読取媒体で反射された鏡面反射光が前記撮像部に入射することを抑制可能な相対位置関係で配置されていることが好ましい。
【0008】
上記画像読取装置において、前記光源が、前記回転ユニットに搭載されていることが好ましい。
【0009】
上記画像読取装置において、前記回転ユニットにおいて、前記回転軸と前記光源との前記回転軸の半径方向の距離は、前記回転軸と前記撮像部との前記回転軸の半径方向の距離以上であることが好ましい。
【0010】
上記画像読取装置において、前記光源および前記撮像部の光軸は、いずれも前記回転軸と交差しておらず、前記回転ユニットが前記読取媒体の読み取りを開始する位置にあるときの前記光源および前記撮像部は、それぞれの光軸方向において前記載置面と対向することが好ましい。
【0011】
上記画像読取装置において、前記撮像部および前記光源は、前記回転軸と平行な同一の仮想線上に配置されていることが好ましい。
【0012】
上記画像読取装置において、前記回転軸の軸方向視において、前記撮像部および前記光源は、前記回転軸から前記回転軸の半径方向外側に延在する同一の仮想線上に配置されていることが好ましい。
【0013】
上記画像読取装置において、前記本体は、前記載置面に載置される台座部と、前記台座部から鉛直方向上方に延在するアーム部とを有し、前記回転軸は、前記アーム部の鉛直方向上方端部から前記台座部に対して前記読取媒体が載置される載置側に突出していることが好ましい。
【0014】
上記画像読取装置において、更に、前記回転ユニットの回転軸にカバーを備え、前記回転ユニットの可動域は、前記台座部と前記カバーとの前記読取媒体が載置される載置側の接線よりも前記載置側と反対側にあることが好ましい。
【0015】
上記画像読取装置において、前記撮像部は、前記読取媒体からの反射光を受光面に結像させるレンズを備え、前記光源による前記読取媒体上での照度分布は、前記レンズの特性による前記受光面での光量分布の偏りを低減させるものであることが好ましい。
【0016】
上記画像読取装置において、前記照度分布は、前記受光面での光量分布を均一とするものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る画像読取装置は、本体に対して回転軸周りに回転自在に支持されている回転ユニットと、回転ユニットにおける回転軸の半径方向外側に搭載され、回転ユニットの鉛直方向下方の載置面に載置された読取媒体を撮像する撮像部と、読取媒体に光を照射する光源と、を備える。本発明に係る画像読取装置によれば、画像を読み取る間の撮像部と読取媒体との光路長の変動が抑制され、画像読取装置の大型化の抑制と、被写界深度の低減とを両立できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、第1実施形態に係る画像読取装置を示す側面図である。
【図2】図2は、第1実施形態に係る画像読取装置の斜視図である。
【図3】図3は、第1実施形態に係る光学ユニットの正面図である。
【図4】図4は、第1実施形態に係る光学ユニットの側面図である。
【図5】図5は、最前方読取位置における画像読取装置を示す側面図である。
【図6】図6は、最前方読取位置における画像読取装置を示す斜視図である。
【図7】図7は、光学ユニットを保護する構成の説明図である。
【図8】図8は、鏡面反射光が撮像部に入射する相対位置関係の説明図である。
【図9】図9は、鏡面反射光が撮像部に入射しない相対位置関係の説明図である。
【図10】図10は、単一の照明モジュールの照度分布を示す図である。
【図11】図11は、合成した照明による主走査方向の照度分布を示す図である。
【図12】図12は、読取レンズの特性を示す図である。
【図13】図13は、光源による主走査方向の照度分布を示す図である。
【図14】図14は、CCDの出力比率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態に係る画像読取装置につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0020】
[第1実施形態]
図1から図7を参照して、第1実施形態について説明する。本実施形態は、画像読取装置に関する。図1は、第1実施形態に係る画像読取装置を示す側面図、図2は、第1実施形態に係る画像読取装置の斜視図、図3は、第1実施形態に係る光学ユニットの正面図、図4は、第1実施形態に係る光学ユニットの側面図である。
【0021】
図1および図2に示す画像読取装置1は、オーバーヘッド型スキャナである。図1に示すように、画像読取装置1は、本体10および光学ユニット20を有する。画像読取装置1は、光学ユニット20の鉛直方向下方の載置面2に載置された読取媒体Sの画像を読み取ることができる。載置面2は、例えば、机の上面等の平面である。
【0022】
ここで、載置面2に載置された読取媒体Sを鉛直方向上方から撮像する画像読取装置では、読取対象位置に応じて撮像部と読取媒体Sとの距離が大きく変化してしまうという問題がある。例えば、ラインセンサによって読取媒体Sの2次元画像データを生成する方法として、固定されたラインセンサに対してミラー等の反射部材を回転軸周りに回転させることにより読取媒体を走査する方法が考えられる。こうした方法では、読取対象位置が光学ユニット20の真下にある場合、撮像部と読取対象位置との光路長が小さいが、読取対象位置がこの真下の位置から離れるほど撮像部と読取対象位置との光路長が大きくなる。撮像部と読取対象位置との光路長の変化が大きいと、求められる被写界深度が大きくなってしまう。これに対して、被写界深度を抑えるために光学ユニット20の鉛直位置を高くして光路長の変化を低減させることが考えられるが、この場合装置の大型化を招いてしまう。
【0023】
本実施形態の画像読取装置1では、光学ユニット20が回転軸Xまわりに振子状に回転する。また、撮像部22は、光学ユニット20における回転軸Xの半径方向外側に配置されており、回転軸Xを中心とする円周上を回転軸X周りに回転しながら読取媒体Sを撮像する。これにより、以下に説明するように、読取媒体Sを走査する間における撮像部22と読取媒体S上の読取対象位置との距離変化が抑制される。よって、本実施形態に係る画像読取装置1によれば、光学ユニット20の高さ位置を低くすることと、被写界深度の低減とを両立させることができる。なお、本明細書では、特に記載しない限り「半径方向」とは、回転軸Xと直交する半径方向を示すものとする。また、本明細書では、特に記載しない場合、「軸方向視」とは回転軸Xの軸方向視を示すものとする。
【0024】
本実施形態では、画像読取装置1が載置面2と同一面上に載置される場合を例に説明するが、これに限定されるものではない。画像読取装置1が載置される箇所と、読取媒体Sが載置される載置面2とは異なっていてもよい。一例として、画像読取装置1は、載置面2を有する載置台を備えていてもよい。
【0025】
本体10は、台座部11、アーム部12、支持部13およびカバー部14を有する。台座部11は、載置面2等に載置されて本体10全体を支持するものであり、本体10の基部である。画像読取装置1の電源スイッチや画像読取開始スイッチ等の操作部材は、例えば台座部11に配置される。台座部11は、例えば、扁平な形状とされており、その下面が載置面2と互いに対向するようにして設置される。台座部11の下面には、脚部11bが配置されている。脚部11bは、台座部11の下面の四隅にそれぞれ配置されており、台座部11を支持する。
【0026】
本実施形態の台座部11は、扁平な直方体あるいはこれと同様や類似の形状を有しており、幅方向(後述する主走査方向)の長さおよび奥行方向(後述する副走査方向)の長さのいずれよりも鉛直方向の長さが小さい。また、台座部11における幅方向の長さは、奥行方向の長さよりも大きくされてもよい。
【0027】
読取媒体Sは、台座部11の側方の4面の内の1つの面である前面11aに読取媒体Sの一辺を突き当てるようにして載置される。読取媒体Sは、例えば、前面11a側に配置された二つの脚部11bに突き当てるようにして載置される。つまり、読取媒体Sは、一辺が前面11aと平行となるようにして載置面2に載置される。本明細書では、矩形の読取媒体Sの一辺を前面11aに突き当てるようにして載置したときの読取媒体Sにおける前面11a側の一辺と平行な方向を「幅方向」あるいは「主走査方向」と記載する。また、読取媒体Sにおける前面11a側の一辺と直交する辺に平行な方向を「奥行方向」あるいは「副走査方向」と記載する。つまり、奥行方向とは、ユーザーが読取媒体Sを挟んで画像読取装置1と対向しているときのユーザーと画像読取装置1とが向かい合う方向である。奥行方向において、背面11cから前面11aに向かう向きを前方と記載し、前面11aから背面11cに向かう向きを後方と記載する。なお、背面11cとは、台座部11の側方の4面の内、奥行方向において前面11aと互いに対向する面である。
【0028】
アーム部12は、台座部11と接続されており、台座部11から鉛直方向上方に向けて延在している。アーム部12は、例えば、断面矩形の柱状もしくは煙突状に形成されている。アーム部12の下部は、鉛直方向下側へ向かうに従い断面積が拡大するテーパ形状に形成されている。より具体的には、アーム部12の下部は、鉛直方向下側へ向かうに従い幅方向の長さが拡大している。アーム部12は、台座部11の上面における1辺側に接続されている。具体的には、アーム部12は、台座部11の上面の縁を形成する4辺のうち読取媒体Sが配置される側と反対側の1辺側に接続されている。言い換えると、アーム部12は、台座部11における読取媒体Sから遠い背面11c側の端部に接続されている。また、アーム部12は、台座部11における幅方向の中央部に接続されている。
【0029】
アーム部12の鉛直方向上方の端部には、支持部13が接続されている。支持部13は、アーム部12の上端から副走査方向の前方に向けて突出している。また、支持部13は、アーム部12の上端から幅方向の両側へ突出している。すなわち、支持部13は、アーム部12から読取媒体Sが載置される載置側へ張り出しており、かつアーム部12から幅方向の両側に張り出している。
【0030】
台座部11と支持部13とは鉛直方向において互いに対向しており、両者における奥行方向の読取媒体S側と反対側の端部同士がアーム部12を介して接続されている。また、支持部13は、台座部11よりも奥行方向の前方に張り出している。つまり、支持部13の前端は、台座部11の前端よりも前方に位置している。よって、支持部13の少なくとも一部は、読取媒体Sが台座部11に突き当てるようにして載置面2に載置されると、その読取媒体Sと鉛直方向において互いに対向する。
【0031】
カバー部14は、光学ユニット20の回転軸Xに設けられており、支持部13および光学ユニット20をカバーしている。カバー部14は、支持部13および光学ユニット20を鉛直方向上方から覆っており、支持部13および光学ユニット20を含む本体上部の外殻を形成している。なお、カバー部14は、支持部13と一体に形成されていてもよい。すなわち、光学ユニット20は、カバー部14によって回転軸X周りに回転自在に支持されていてもよい。
【0032】
光学ユニット20は、本体10に対して回転軸X周りに回転することができる回転ユニットである。回転軸Xは、幅方向、すなわち前面11aと平行な方向に水平に延在している。つまり、回転軸Xは、鉛直軸Vと直交している。鉛直軸Vは、載置面2の法線と一致する。光学ユニット20は、光源21、撮像部22、本体23および軸部24を有する。軸部24は、円柱形状であり、軸受等を介して支持部13によって回転軸X周りに回転自在に支持されている。軸部24が支持部13によって支持されていることから、回転軸Xは、アーム部12の鉛直方向上方端部から台座部11に対して載置側に突出した位置にある。本体23は、軸部24と接続されており、軸部24から回転軸Xの半径方向外側に延在している。本体23は、例えば、軸方向視における断面形状が矩形の中空の部材である。光源21および撮像部22は、本体23内に配置されている。
【0033】
支持部13には、図示しない駆動部が配置されている。駆動部は、光学ユニット20を回転軸X周りに回転させるものである。駆動部は、例えば、電動式のモータと、モータの回転軸と光学ユニット20とを接続する伝達部とを有する。モータは、例えば、ステッピングモータであり、光学ユニット20の回転角度を精度良く制御することができる。また、伝達部は、例えば、プーリ、ベルト、ウォームギア等の組合せからなり、モータの回転を減速して光学ユニット20に伝達する。
【0034】
光源21は、LED等の発光部を有しており、読取媒体Sに対して鉛直方向上方から光を照射することができる。図3に示すように、光源21は、第一照明モジュール30および第二照明モジュール40を有する。第一照明モジュール30は、LED31、レンズ32およびLED基盤33を有する。LED31が発する光は、レンズ32を介して鉛直方向下方に照射される。第二照明モジュール40は、第一照明モジュール30と同様に、LED41、レンズ42およびLED基盤43を有する。LED41が発する光は、レンズ42を介して鉛直方向下方に照射される。
【0035】
第一照明モジュール30および第二照明モジュール40は、撮像部22を主走査方向に挟んで配置されている。第一照明モジュール30、撮像部22、第二照明モジュール40は、この順で主走査方向に直線状に配置されている。本実施形態では、第一照明モジュール30、撮像部22および第二照明モジュール40は、回転軸Xと平行な同一の仮想線H上に配置されている。
【0036】
撮像部22は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)を有するイメージセンサであり、載置面2に載置された読取媒体Sを撮像することができる。具体的には、撮像部22は、読取対象ラインL上の読取画像によって反射されて撮像部22に入射された反射光を光電変換により電子データに変換して読取画像の画像データを生成する。撮像部22は、読取レンズ26およびCCD27を有する。CCD27は、画像を読み取る複数の画素が主走査方向に配列されたラインセンサである。CCD27は、主走査方向が回転軸Xと平行な状態で光学ユニット20に配置されている。読取レンズ26は、読取媒体Sからの反射光をCCD27の受光面27aに結像させる。CCD27の各画素は、読取レンズ26によって受光面27aに結像した読取画像の光を受光し、受光した光に対応する電気信号を出力する。CCD27は、読取媒体Sの読取対象ラインL上の画像を読み取り、主走査方向のライン画像データを生成することができる。なお、CCD27のライン数は、単数であっても複数であってもよい。
【0037】
光源21は、読取媒体Sにおける読取対象ラインL上の画像、すなわち読取画像に対して光を照射する。第一照明モジュール30および第二照明モジュール40は、それぞれスリット状に光を照射する。第一照明モジュール30が照射する照射光E30および第二照明モジュール40が照射する照射光E40は、それぞれ主走査方向に広がって読取媒体Sの一端から他端までを照射することができる。また、図4に示すように、第一照明モジュール30および第二照明モジュール40は、副走査方向には所定の照射幅で光が広がるように照射方向および照射範囲が定められている。図4には、回転軸Xと直交する断面が示されている。図4に示すように、光源21の光軸A1と撮像部22の光軸A2とは回転軸Xの軸方向視において重なっている。
【0038】
光源21は、光軸A1に対して照射光E30,E40が角度αで広がるように調整されている。この角度αは、読取媒体S上における照射光の副走査方向の幅が所定の値となるように定められたものである。
【0039】
画像読取装置1は、光学ユニット20の回転軸X周りの回転位置を調節することにより、読取媒体S上における副走査方向の任意の位置を読取対象ラインLとしてそのライン画像を読み取ることができる。画像読取装置1は、ライン画像データの取得と、光学ユニット20を回転させることによる読取対象ラインLの位置調整とを繰り返すことで、読取媒体S全体の画像データを取得することができる。つまり、画像読取装置1は、光源21の照射光が原稿面上を副走査方向に走査し、かつ光が照射されている読取対象ラインLの画像を撮像部22が読み取ることによって読取媒体Sの画像を生成する。画像読取装置1は、例えば、奥行方向の後方から前方へ順次読取対象ラインLの位置を移動させながら各読取対象ラインLのライン画像を読み取ることで、読取媒体Sの2次元画像データを生成する。
【0040】
本実施形態の画像読取装置1では、撮像部22が光学ユニット20と共に回転し、回転軸Xを中心とする円周上を回転軸X周りに回転しながら読取媒体Sを走査・撮像する。これにより、撮像部22と読取対象位置である読取対象ラインLとの光路長の変動が抑制される。
【0041】
図1には、読取可能範囲における最も後方側を撮像するときの回転位置にある光学ユニット20が示されている。以下、光学ユニット20のこの回転位置を「最後方読取位置」とも記載する。最後方読取位置の光学ユニット20は、台座部11の前方端に突き当てられた読取媒体Sの一辺を読み取ることができる。最後方読取位置は、画像の読み取りを開始するときの光学ユニット20の回転位置である。
【0042】
最後方読取位置では、光学ユニット20の本体23は、軸部24よりも後方に位置している。最後方読取位置の光学ユニット20は、回転軸Xからほぼ水平な方向に延在しており、詳しくは、回転軸Xから半径方向に離れるに従って鉛直方向下側に向かうようにわずかに傾斜している。つまり本体23は、半径方向の外側の部分が内側の部分よりも副走査方向の後方かつ鉛直方向下方に位置するように傾斜した姿勢である。最後方読取位置は、画像の読み取りを行わないときの待機位置でもある。すなわち、光学ユニット20は、画像の読み取りを行わないときには最後方読取位置に置かれて画像読み取り開始の指令がなされるまで待機する。なお、待機位置は、最後方読取位置とは異なる位置であってもよい。例えば、待機位置は、最後方読取位置よりも本体23が鉛直方向上方にある位置、言い換えると最後方読取位置よりも矢印Y1方向と反対方向まで回転した位置とされてもよい。
【0043】
図1に示すように、光学ユニット20が読取媒体Sの読み取りを開始する位置にあるときの光源21および撮像部22は、それぞれの光軸方向において載置面2と対向している。言い換えると、最後方読取位置にある状態の光源21および撮像部22は、それぞれ載置面2に光を照射可能な状態および載置面2の画像を読取可能な状態である。図1に示すように、光源21の光軸A1および撮像部22の光軸A2は、いずれも回転軸Xと交差しておらず、軸方向視において回転軸Xから離間している。光学ユニット20が最後方読取位置にある場合の光軸A1,A2は、いずれも鉛直方向下方へ向かうに従い前方へ向かう傾斜を有している。軸方向視において、光軸A1,A2は、回転軸Xから受光面27aを通って半径方向外側に延びる仮想線Wに対して交差している。本実施形態では、光軸A1,A2は、上記仮想線Wに対して直交している。また、軸方向視において、光源21および撮像部22は、回転軸Xから半径方向外側に延在する同一の仮想線上、例えば仮想線W上に配置されている。なお、光源21および撮像部22は、受光面27aを通る仮想線Wとは半径方向の異なる方向に延在する共通の仮想線上に配置されてもよい。
【0044】
最後方読取位置から読取媒体Sの読み取りを開始すると、駆動部は、光学ユニット20を矢印Y1方向に回転させる。言い換えると、駆動部は、光学ユニット20の本体23が鉛直方向下方に移動し、かつ前方に移動するように光学ユニット20を回転させる。これにより、撮像部22による読取対象位置が前方へ移動し、後方から前方へ順次読取媒体Sを読み取ることができる。光学ユニット20の回転によって、撮像部22が鉛直方向下方に移動することで、撮像部22と読取対象ラインLとの鉛直方向の距離、すなわち光路長の鉛直方向成分が減少する。一方、光学ユニット20の回転によって、鉛直軸Vに対する撮像部22の光軸A2の傾斜角度θ2が増加し、撮像部22と読取対象ラインLとの副走査方向の距離、すなわち光路長の副走査方向成分が増加する。このように、光学ユニット20の回転に伴って光路長の鉛直方向成分が減少し、かつ副走査方向成分が増加することで、読取媒体Sを走査する間の光路長の変動が抑制される。
【0045】
図5は、光学ユニット20が読取可能範囲における最も前方側を撮像するときの回転位置にある画像読取装置1を示す側面図、図6は、光学ユニット20が読取可能範囲における最も前方側を撮像するときの回転位置にある画像読取装置1を示す斜視図である。以下、光学ユニット20のこの回転位置を「最前方読取位置」とも記載する。最前方読取位置では、光学ユニット20の本体23は、軸部24の鉛直方向下方に位置している。最前方読取位置の光学ユニット20の本体23は、半径方向の外側の部分が内側の部分よりも副走査方向の後方かつ鉛直方向下方に位置するように傾斜した姿勢である。このときの撮像部22および光源21は、回転軸Xよりも後方に位置している。撮像部22の光軸A2は、鉛直方向下側へ向かうに従い前方へ向かうように傾斜している。このときの鉛直軸Vに対する光軸A2の傾斜角度θ2は、最後方読取位置(図1参照)の傾斜角度θ2よりも大きな角度である。
【0046】
本実施形態の画像読取装置1では、光学ユニット20が最後方読取位置から最前方読取位置まで回転する間に、回転に伴って光路長の鉛直方向成分が減少し続ける一方、光路長の副走査方向成分は増加し続ける。つまり、光路長の鉛直方向成分と副走査方向成分とは、光路長の増減に関して常に反対方向に変化し続ける。これにより、撮像部22と読取媒体Sとの光路長の最大値と最小値との差分が低減する。例えば、撮像部22の高さ位置を350[mm]としてA3サイズの読取媒体Sを読み取る場合を例に説明すると、本実施形態とは異なり回転軸X上に撮像部22を配置して撮像部22の鉛直方向の位置が変化しない状態で読み取りを行うと、光路長の最大値が510[mm]、最小値が350[mm]であり、光路長の差分は160[mm]となる。これに対して、本実施形態のように振子状の光学ユニット20の本体23に撮像部22を配置した場合、光路長の最大値を450[mm]程度に抑えることも可能であり、この場合の光路長の差分は100[mm]程度まで低減する。
【0047】
よって、本実施形態の画像読取装置1によれば、光学ユニット20の高さ位置を高くすることなく被写界深度を低減させることが可能となる。なお、光学ユニット20の高さ位置や光学ユニット20における撮像部22の半径方向位置、回転軸XとCCD27の受光面27aとを結ぶ仮想線Wに対する光軸A2の交差角度等は、適宜定めることができる。例えば、所与の条件に基づいて最後方読取位置から最前方読取位置まで光学ユニット20を回転させるときの光路長の変化率や変化量を極力少なくするように各寸法や角度等を設定するようにしてもよい。
【0048】
また、本実施形態では、光源21が光学ユニット20に搭載されている。光源21は、光学ユニット20の回転に伴って回転軸Xを中心とする円周上を回転軸X周りに回転しながら読取媒体Sに光を照射する。これにより、光源21と読取対象ラインLとの光路長の変化が抑制され、副走査方向の位置による照度変化が抑制される。撮像部22の場合と同様、光学ユニット20の回転に伴い、光源21と読取対象ラインLとの光路長の鉛直方向成分は減少し、副走査方向成分は増加する。よって、光源21が読取媒体Sを後方端から前方端まで走査する間の光源21と読取対象ラインLとの光路長の変化が抑制される。よって、副走査方向の位置による照度の変化が抑制され、画像読取装置1が生成する画像の画質が向上する。また、本実施形態の画像読取装置1によれば、光学ユニット20の高さ位置が高くなることが抑制される。よって、読取対象ラインLの照度を確保し、生成される画像の画質を向上させることができる。
【0049】
また、本実施形態の画像読取装置1では、画像読み取りの際に撮像部22に鏡面反射光が入射することが抑制されている。なお、鏡面反射光とは、光源21からの入射光に対して正反射方向に反射する反射光であり、入射光が拡散せずに直接反射される場合の反射光である。読取媒体Sに対して鉛直方向上方から光を照射して画像の読み取りを行うオーバーヘッド型スキャナでは、読取媒体Sで鏡面反射方向に反射された強い光が撮像部22に入射すると、その部分の画像が白く抜けてしまうことがある。撮像部22に対する鏡面反射光の入射を抑制し、画質を向上できることが好ましい。
【0050】
本実施形態では、光源21および撮像部22は、光源21から照射されて読取媒体Sで反射された鏡面反射光が撮像部22に入射することを抑制可能な相対位置関係で配置されている。図4に示すように、光源21の光軸A1と撮像部22の光軸A2とは軸方向視において重なっており、かつ光学ユニット20が最後方読取位置にある場合の光軸A1,A2は、いずれも鉛直方向下方へ向かうに従い前方へ向かう傾斜を有している。このとき、光源21から照射される光は、入射角θ2で読取媒体Sに入射する。これに対応する鏡面反射光Bは、読取媒体Sによって反射角θ2で反射するものであり、鉛直軸Vに関して光源21側と反対側に反射する。本実施形態では、軸方向視において光源21と撮像部22とが同軸上に配置されていることから、少なくとも最後方読取位置において、鏡面反射光Bは撮像部22に入射する方向とは異なる方向の光となる。
【0051】
光学ユニット20が図5に示す最前方読取位置まで回転する間に、読取媒体Sに対する入射角θ2は変化する。光学ユニット20の可動域内のいずれかの位置で、軸方向視において光軸A1,A2が読取媒体Sに対して垂直となり、鉛直軸Vに対する光軸A1,A2の傾斜角度θ2が0となった場合には、鏡面反射光Bが撮像部22に入射してしまうこととなる。
【0052】
本実施形態の光源21および撮像部22の配置は、光学ユニット20が図5に示す最前方読取位置まで回転する間、軸方向視における光軸A1,A2の傾斜角度θ2が0とならないように定められている。光学ユニット20が最後方読取位置から最前方読取位置まで回転する間、傾斜角度θ2は、増加し続ける。これは、光学ユニット20が最後方読取位置から最前方読取位置まで回転する間に本体23が下方に向かうように移動し続け、かつ本体23が最下点を通過しないように光学ユニット20の可動域が定められていることによる。
【0053】
これにより、光学ユニット20が最前方読取位置まで回転する間、鉛直軸Vに対する光軸A1,A2の傾斜の方向は、鉛直軸Vに関して反転しない。よって、光学ユニット20が読取媒体Sを副走査方向に走査しながら画像を読み取る間に鏡面反射光Bが撮像部22に入射することが抑制される。これにより、本実施形態の画像読取装置1によれば、鏡面反射光Bの入射による画像の欠落の発生が抑制される。
【0054】
以上説明したように、本実施形態の画像読取装置1によれば、要求される被写界深度の増加を抑制しつつ光源21や撮像部22の高さ位置を抑えることが可能となる。よって、装置高さが高くなること、解像度が低くなること、読取媒体上の照度が落ちること等を抑制しつつ画像読取装置1による読取範囲を広くすることができる。
【0055】
本実施形態に係る画像読取装置1の光学ユニット20では、回転軸Xの軸方向視において、光源21の光軸A1と撮像部22の光軸A2とが同軸上にある。すなわち、光源21と撮像部22とは、主走査方向の同一直線上に配置されている。光源21および撮像部22は、光学ユニット20内においてそれぞれ位置が固定されており、相互の位置関係が変化することなく、光学ユニット20の回転に伴って回転軸X周りに回転する。これにより、光源21の照射対象位置と撮像部22の撮像対象位置とのずれが生じることが抑制される。
【0056】
例えば、光源21と撮像部22とが互いに独立して駆動制御される場合や、撮像部22に光を導く反射部材と光源21とが独立して駆動制御される場合よりも、光源21は、撮像部22の撮像対象である読取対象ラインLに対して位置精度よく光を照射することができる。一例として、光学ユニット20の回転位置にかかわらず、副走査方向における読取対象ラインLの中心と光源21から照射される光の照射幅の中心とを一致させておくことが可能である。よって、本実施形態の画像読取装置1によれば、光量ムラの発生等が抑制され、生成される画質が向上する。
【0057】
また、光源21の照射光と撮像部22の撮像対象位置とのずれの発生が抑制されていることから、光源21の副走査方向の照射幅を狭くし、読取対象ラインLに対して光量を集中させることができる。よって、本実施形態の画像読取装置1は、高画質や高解像度で読取媒体Sを読み取ることや高速で読取媒体Sを読み取ることが可能である。
【0058】
また、本実施形態の画像読取装置1は、読取媒体Sと撮像部22との間にミラー等の反射部を介さない。このため、反射による光路長の変化をなくし、解像度の劣化を抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態の画像読取装置1では、撮像部22が光学ユニット20における回転軸Xから半径方向に離れた位置に配置されている。これにより、撮像部22が回転軸X上に配置されている場合よりも、読取位置の制御精度を向上させることができる。制御精度を向上させる観点からは、回転軸Xと撮像部22との半径方向の距離を大きく取ることが好ましい。
【0060】
また、本実施形態の画像読取装置1は、転倒時に光学ユニット20を保護できる構成を有している。図7は、光学ユニット20を保護する構成の説明図である。図7には、光学ユニット20が最前方読取位置にある状態が示されている。最前方読取位置の光学ユニット20は、台座部11とカバー部14との前方側の接線Tよりも後方側にある。ここで、前方側とは、台座部11およびカバー部14に対して読取媒体Sが載置される載置側であり、後方側とは、接線Tよりも載置側と反対側である。光学ユニット20は、最前方読取位置にある場合に可動域の最も前方側に位置する。つまり、光学ユニット20の可動域は、接線Tよりも載置側と反対側にある。
【0061】
これにより、万一本体10が前方に傾いて転倒したとしても、光学ユニット20よりも先にカバー部14が載置面2に当たる。載置面2に当たったカバー部14は、台座部11と共に本体10を支持する。これにより、画像読取装置1における接線Tよりも後方側の構成要素が載置面2に当たることが抑制される。カバー部14の素材は、例えば、弾性変形可能な素材等であって、載置面2に衝突したときに変形することによって衝撃を吸収することができる素材とすることができる。あるいは、カバー部14は、前方の端部が障害物に衝突したときの衝撃を吸収することができる衝撃吸収部を有するものであってもよい。このようにすれば、カバー部14は、転倒時等に光学ユニット20が載置面2に衝突することを抑制できるだけでなく、転倒による衝撃を吸収して光学ユニット20や駆動部等を含む画像読取装置1の構成要素を衝撃から保護することができる。
【0062】
なお、本実施形態では光源21が二つの照明モジュール30,40を有していたが、照明モジュールの数はこれに限定されるものではない。また、撮像部22の撮像素子は、CCDに限定されるものではなく、他の公知の撮像素子、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等であってもよい。
【0063】
[第1実施形態の第1変形例]
図8および図9を参照して、第1実施形態の第1変形例について説明する。上記第1実施形態では、軸方向視において光源21の光軸A1と撮像部22の光軸A2とが同軸上にあったが、これに限定されるものではない。例えば、回転軸Xの半径方向における光軸A1の位置と光軸A2の位置とが異なるように光源21および撮像部22が配置されてもよい。半径方向における光源21の位置と撮像部22の位置とを異ならせる場合、例えば、光学ユニット20において、回転軸Xと光源21との半径方向の距離が、回転軸Xと撮像部22との半径方向の距離以上となるようにされてもよい。このような配置とすれば、鏡面反射光Bが撮像部22に入射してしまうことを抑制しやすい。
【0064】
なお、回転軸Xと光源21との距離は、例えば、回転軸Xと光源21の代表位置との距離、一例として回転軸XとLED31,41との距離とすることができる。また、回転軸Xと撮像部22との距離は、例えば、回転軸Xと撮像部22の代表位置との距離、一例として回転軸XとCCD27の受光面27aとの距離とすることができる。
【0065】
ここで、以下に図8および図9を参照して説明するように、光学ユニット20の可動域内において、鏡面反射光Bが撮像部22に入射することがないように光源21と撮像部22との相対位置関係が定められることが望ましい。また、当該相対位置関係は、少なくとも鏡面反射光Bが撮像部22に入射することが抑制されるものであることが望ましい。なお、光源21と撮像部22との相対位置関係には、光源21と撮像部22との半径方向における相対位置、回転軸Xと撮像部22の受光面27aとを結ぶ仮想線Wに対する光軸A1の角度と光軸A2の角度との関係等が含まれる。
【0066】
図8は、鏡面反射光Bが撮像部22に入射する相対位置関係の説明図、図9は、鏡面反射光Bが撮像部22に入射しない相対位置関係の説明図である。図8および図9において、角度θ1は軸方向視における撮像部22の光軸A2と鉛直軸Vとのなす角度であり、読取対象ラインLから撮像部22に入射する反射光の反射角である。図8および図9には、副走査方向において読取対象ラインLが撮像部22と光源21との間にある状態が示されている。図8に示すように、撮像部22に入射する光の反射角θ1が、光源21から読取対象ラインLに照射された光の鏡面反射光Bの反射角θ2と同じ大きさであると、鏡面反射光Bが撮像部22に入射する。言い換えると、撮像部22の光軸A2が、光源21から読取対象ラインLに照射された光の鏡面反射方向と軸方向視において重なると、鏡面反射光Bが撮像部22に入射することとなる。
【0067】
これに対して、図9に示す相対位置関係では、鏡面反射光Bが撮像部22に入射することが抑制される。撮像部22に入射する光の反射角θ1は、鏡面反射光Bの反射角θ2と異なる大きさであり、鏡面反射光Bは、撮像部22に入射する方向とは異なる方向に進む。光学ユニット20が可動域内のいずれの位置で画像を読み取る場合にも図8に示すような鏡面反射光Bが撮像部22に入射する状態とならないように、光源21および撮像部22が配置されることが望ましい。
【0068】
例えば、光学ユニット20が可動域内のいずれの読取位置にある場合であっても、光源21および撮像部22が共に読取対象ラインLに対して副走査方向の一方側に位置するようにされてもよい。つまり、光源21および撮像部22が読取対象ラインLよりも常に前方側にあるか、あるいは後方側にあるように配置されてもよい。このようにすれば、鏡面反射光Bが撮像部22に入射することが抑制される。
【0069】
光学ユニット20が可動域内のいずれの読取位置にある場合であっても、光源21から読取対象ラインLへの入射角θ2の大きさと、読取対象ラインLから撮像部22に入射する反射光の反射角θ1の大きさとの大小関係が変化しないようにされてもよい。例えば、図9に示すような関係、すなわち光源21から読取対象ラインLへの入射角θ2の大きさが、読取対象ラインLから撮像部22に入射する反射光の反射角θ1の大きさよりも大きいという関係が常に成立するように光源21および撮像部22が配置されてもよい。このようにすれば、光源21と撮像部22とが読取対象ラインLに対して副走査方向の同じ側にあるか、異なる側にあるかによらず、鏡面反射光Bが撮像部22に入射することが抑制される。
【0070】
なお、光源21と撮像部22とは、回転軸Xを中心とする周方向の位置がずれていてもよい。例えば、光源21あるいは撮像部22の一方が他方に対して回転方向の前方に位置していてもよい。
【0071】
[第1実施形態の第2変形例]
上記第1実施形態では光源21が光学ユニット20に搭載されていたが、光源21の配置は、これに限定されるものではない。例えば、光源21は、光学ユニット20とは独立してアーム部12、支持部13あるいはカバー部14等に配置されてもよい。この場合に、光源21は、撮像部22の撮像対象である読取対象ラインLに対して光を照射することができるように光学ユニット20の回転と連動して駆動されてもよい。また、光源21は、本体10等に固定された状態で読取媒体Sの全体に光を照射するものであってもよい。なお、光源21および撮像部22は、光源21から照射されて読取媒体Sで反射された鏡面反射光Bが撮像部22に入射することを抑制可能な相対位置関係で配置されることが好ましい。
【0072】
[第2実施形態]
図10から図14を参照して、第2実施形態について説明する。第2実施形態については、上記実施形態で説明したものと同様の機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。本実施形態の画像読取装置1において、上記第1実施形態の画像読取装置1と異なる点は、CCD27の受光側での照度が均一となるように光源21が設計されている点である。本実施形態では、第一照明モジュール30による照明と第二照明モジュール40による照明とを合成したものの照度分布が、撮像部22の読取レンズ26の特性に応じた分布となるように光源21が設計されている。
【0073】
光源21による照度分布は、読取媒体S上において、読取レンズ26の特性によって受光面27aの受光量が相対的に小さくなる領域に対しては光源21が照射する光量が大きくなり、これとは逆に受光面27aの受光量が相対的に大きくなる領域に対しては光源21が照射する光量が小さくなるように定められている。これにより、本実施形態によれば、撮像部22におけるダイナミックレンジを抑えることができ、生成する画像における画像ノイズを低減させることができる。
【0074】
図10は、単一の照明モジュールで光を照射するときの照度分布Iを示す図である。本実施形態では、第一照明モジュール30と第二照明モジュール40とは同じ特性を有している。照明モジュール30,40は、光軸A1方向の照度が最も小さく、光軸A1から主走査方向の両側に離れるに従って照度が大きくなる特性を有している。照度分布Iの曲線は、照度が小さくなる側に湾曲した曲線形状である。照明モジュール30,40は、主走査方向において光軸A1から離れるに従って主走査方向の単位変化あたりの照度の増分が大きくなるように設計されている。
【0075】
図11は、第一照明モジュール30による照明と第二照明モジュール40による照明とを合成した照明による主走査方向の照度分布を示す図である。図11には、光源21を副走査方向にみた正面図が示されている。図11に示すように、副走査方向にみた場合、撮像部22の光軸A2は、載置面2に対して垂直である。これに対して、第一照明モジュール30の光軸A30および第二照明モジュール40の光軸A40は、それぞれ光軸A2に対して傾斜角θで傾斜している。第一照明モジュール30の傾斜方向と第二照明モジュール40の傾斜方向とは、撮像部22の光軸A2に対して対称となっている。照明モジュール30,40の光軸A30,A40は、それぞれ鉛直方向の上方へ向かうに従い光軸A2から主走査方向に離間するように傾斜している。つまり、照明モジュール30,40は、照射幅の中央が読取媒体Sにおける主走査方向の中央となるように傾斜している。
【0076】
光軸A30が傾斜していることにより、第一照明モジュール30の照射光E30による照度分布I30は、主走査方向の第一照明モジュール30側から第二照明モジュール40側へ向かうに従い値が減少するものとなっている。同様に、第二照明モジュール40の照射光E40による照度分布I40は、主走査方向の第二照明モジュール40側から第一照明モジュール30側へ向かうに従い値が減少するものとなっている。また、照射光E30と照射光E40とを合成した照射光の照度分布Itは、撮像部22の光軸A2方向の照度が最も小さくなる曲線形状である。合成した照射光の照度分布Itは、照度が小さくなる側に湾曲した曲線となっている。この照度分布Itは、以下に図12を参照して説明する読取レンズ26の特性に基づいて定められている。なお、所望の照度分布Itを得ようとする場合において、光源21の高さ位置を低くする場合には、傾斜角θを小さくし、あるいは各照明モジュール30,40の照度分布の曲線I30,I40の曲率を大きくするようにすればよい。
【0077】
図12は、撮像部22の読取レンズ26の特性を示す図である。図12には、読取対象ラインL上の各位置から均一な光量の光が読取レンズ26を介してCCD27に入射する場合の受光面27aの各部における受光量の比率が示されている。また、図12の各曲線P1乃至P12は、それぞれ読取媒体Sに対する撮像部22の高さ位置を変化させた場合の各高さ位置における受光量の比率を示している。例えば、曲線P1は、撮像部22の高さ位置を350.0[mm]とした場合の受光量比率を示している。なお、光源21の高さ位置は、例えば、CCD27の受光面27aの高さ位置とすることができる。
【0078】
図12に示すように、受光量は、主走査方向の中心位置、言い換えると光軸A2の位置において最も大きい。また、受光量は、主走査方向において中心位置から離れた位置ほど小さくなる。各曲線P1乃至P12には、光軸A2の位置における受光量を100%としたときの主走査方向の各位置における受光量比率が示されている。主走査方向の位置に応じた受光量の変化比率、すなわち中心位置の受光量に対する周辺位置の受光量の低下度合いは、撮像部22の高さ位置が高いほど小さくなる。
【0079】
図13は、光源21による主走査方向の照度分布を示す図である。図13には、光源21から読取対象ラインLに照射される光の主走査方向の各位置における照度の比率が示されている。各曲線Q1乃至Q12は、それぞれ図12の曲線P1乃至P12に対応するものである。例えば、曲線Q1は、撮像部22の高さ位置を350.0[mm]とした場合の受光量比率P1に対応するものであり、読取レンズ26の特性による受光面27aにおける受光量の分布の偏りを低減させることができる照度分布の曲線である。なお、このときの光源21の高さ位置は、333.0[mm]である。光源21の高さ位置は、例えば、LED31,41の高さ位置とすることができる。
【0080】
図13に示すように、照度は、主走査方向の中心位置、言い換えると光軸A2の位置において最も小さい。また、照度は、主走査方向において中心位置から離れた位置ほど大きくなる。各曲線Q1乃至Q12には、光軸A2の位置における照度を100%としたときの主走査方向の各位置における照度比率が示されている。図12に示すように、読取レンズ26の特性による受光面27aでの光量分布の偏りは、光軸A2の位置から主走査方向に離れた位置ほど光量が低下するものである。これに対して、光源21による照度分布は、光軸A2の位置から主走査方向に離れた位置ほど照度が増加するものである。従って、本実施形態の読取レンズ26と光源21との組合せによれば、光軸A2の位置における受光量を抑制すること、あるいは光軸A2から主走査方向に離れた位置における受光量を増加させることの少なくともいずれか一方が実現される。これにより、実際にCCD27が受光する受光量の主走査方向における分布の偏りが軽減される。他の高さ位置についても同様であり、受光量分布P2乃至P12に基づいて、読取レンズ26の特性による受光面27aでの光量分布の偏りを低減させるように、照度分布Q2乃至Q12を定めるようにすればよい。
【0081】
また、本実施形態では、CCD27が受光する受光量が主走査方向に沿って均一となるように光源21の照度分布が定められている。図14は、CCD27の出力比率を示す図である。図14には、CCD27の各画素が出力する信号値の比率、すなわち各画素の受光量の比率が示されている。符号R1乃至R12は、図12の曲線P1乃至P12および図13の曲線Q1乃至Q12に対応するものである。例えば、出力比率R1は、撮像部22の高さ位置を350.0[mm]とした場合に、照度分布Q1で光が照射されている読取対象ラインLを撮像部22によって読み取った場合のCCD27の各画素の受光量の比率を示すものである。照度分布Q1は、受光量比率P1に基づいて、出力比率R1が均一となるように定められている。例えば、照度分布Q1は、主走査方向の各位置において照度比率が受光量比率の逆数となるように定められる。これにより、受光面27aでも主走査方向に沿った光量分布を均一とすることができる。
【0082】
第一照明モジュール30および第二照明モジュール40は、定められた照度分布Q1を実現するように、単独での照度分布(図10参照)および撮像部22に対する配置等が設計により定められる。他の高さ位置に対しても同様であり、受光量分布P2乃至P12に基づいて、出力R2乃至R12が均一となるように、照度分布Q2乃至Q12を定めるようにすればよい。
【0083】
これにより、本実施形態に係る光源21および撮像部22によれば、主走査方向に沿った光量分布の偏りやばらつきが抑制され、画像読取装置1が生成する画像の画質が向上するという利点がある。
【0084】
本実施形態では、光源21が有する照明モジュール数が2つである場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、光源21の照明モジュール数は単数であってもよく、また3つ以上であってもよい。
【0085】
なお、最前方読取位置と最後方読取位置とで読取レンズ26による光量分布は異なる。このため、光源21の設計は、光学ユニット20の可動域の全領域において主走査方向のCCD27の出力比率変化を可能な限り抑制できるように行われることが好ましい。
【0086】
なお、本実施形態が適用可能な画像読取装置は、上記第1実施形態の画像読取装置1のように光学ユニット20に光源21および撮像部22が搭載されているものには限定されない。その他のオーバーヘッド型スキャナに対しても本実施形態の光源21および撮像部22の組合せを適用することが可能である。
【0087】
例えば、光源21あるいは撮像部22のいずれか一方が、光学ユニット20とは独立してアーム部12、支持部13あるいはカバー部14等に配置されてもよい。光源21が独立して配置される場合、光源21は、読取対象ラインLに対して光を照射することができるように光学ユニット20の回転と連動して駆動されてもよい。また、光源21は、本体10等に固定された状態で読取媒体Sの全体に光を照射するものであってもよい。
【0088】
撮像部22が光学ユニット20とは独立して配置される場合、例えば、光源21が搭載された光学ユニット20と撮像部22とが連動して回転動作するように、光学ユニット20および撮像部22が制御される。また、撮像部22は、固定されていてもよい。例えば、ミラー等の反射部材が読取対象ラインLからの反射光を撮像部22に導くようにして、反射部材を回転させること等によって読取媒体Sを走査するようにしてもよい。
【0089】
つまり、本実施形態では、以下の画像読取装置が開示されている。
【0090】
鉛直方向下方の載置面2に載置された読取媒体Sからの反射光を受光面27aに結像させる読取レンズ26を備え、読取媒体Sを撮像する撮像部22と、
読取媒体Sに光を照射する光源21と、
を備え、
光源21による読取媒体S上での照度分布は、読取レンズ26の特性による受光面27aでの光量分布の偏りを低減させるものである、画像読取装置。
【0091】
上記の各実施形態および変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0092】
1 画像読取装置
2 載置面
10 本体
20 光学ユニット
21 光源
22 撮像部
A1 光源の光軸
A2 撮像部の光軸
B 鏡面反射光
L 読取対象ライン
S 読取媒体
T 接線
V 鉛直軸
W 仮想線
X 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体に対して回転軸周りに回転自在に支持されている回転ユニットと、
前記回転ユニットにおける前記回転軸の半径方向外側に搭載され、前記回転ユニットの鉛直方向下方の載置面に載置された読取媒体を撮像する撮像部と、
前記読取媒体に光を照射する光源と、
を備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記光源および前記撮像部は、前記光源から照射されて前記読取媒体で反射された鏡面反射光が前記撮像部に入射することを抑制可能な相対位置関係で配置されている
請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記光源が、前記回転ユニットに搭載されている
請求項1または2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記回転ユニットにおいて、前記回転軸と前記光源との前記回転軸の半径方向の距離は、前記回転軸と前記撮像部との前記回転軸の半径方向の距離以上である
請求項3に記載の画像読取装置。
【請求項5】
前記光源および前記撮像部の光軸は、いずれも前記回転軸と交差しておらず、
前記回転ユニットが前記読取媒体の読み取りを開始する位置にあるときの前記光源および前記撮像部は、それぞれの光軸方向において前記載置面と対向する
請求項3または4に記載の画像読取装置。
【請求項6】
前記撮像部および前記光源は、前記回転軸と平行な同一の仮想線上に配置されている
請求項3から5のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記回転軸の軸方向視において、前記撮像部および前記光源は、前記回転軸から前記回転軸の半径方向外側に延在する同一の仮想線上に配置されている
請求項3から6のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項8】
前記本体は、前記載置面に載置される台座部と、前記台座部から鉛直方向上方に延在するアーム部とを有し、
前記回転軸は、前記アーム部の鉛直方向上方端部から前記台座部に対して前記読取媒体が載置される載置側に突出している
請求項1から7のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項9】
更に、前記回転ユニットの回転軸にカバーを備え、
前記回転ユニットの可動域は、前記台座部と前記カバーとの前記読取媒体が載置される載置側の接線よりも前記載置側と反対側にある
請求項1から8のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項10】
前記撮像部は、前記読取媒体からの反射光を受光面に結像させるレンズを備え、
前記光源による前記読取媒体上での照度分布は、前記レンズの特性による前記受光面での光量分布の偏りを低減させるものである
請求項1から9のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項11】
前記照度分布は、前記受光面での光量分布を均一とするものである
請求項10に記載の画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−5034(P2013−5034A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131359(P2011−131359)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000136136)株式会社PFU (354)
【Fターム(参考)】