説明

画質欠陥検出装置、画質欠陥検出方法およびプログラム

【課題】画質欠陥を検出する際の時間を短縮化する。
【解決手段】検出対象となる画像上の各画素について、画素の濃度値と画像全体の濃度の平均値または画素周辺の所定の領域内での濃度の平均値との差分の絶対値を算出し、算出された各画素の差分の絶対値に基づき、画像上にて絶対値が所定値以上である画素が所定の面積以上の大きさを有する領域を形成する画素群を抽出し、抽出された画素群の中から所定の基準を満たす画素群を画質欠陥部として検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画質欠陥検出装置、画質欠陥検出方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ等の画像形成装置やディスプレイ等の表示装置等では、例えば製造工程で発生する何らかの不具合から、印刷された画像や表示される画像に装置固有の画質欠陥が生じる場合がある。このような画質欠陥を自動的に検出する方法としては、例えば印刷画像や表示画像をデジタル的に読み取り、読み取ったデジタル画像に対して画像処理を行って検出する方法が一般的である。
例えば特許文献1には、トップハットフィルタを用いて白点(低濃度部)を強調し、ウェルフィルタを用いて黒点(高濃度部)を強調して、設定された閾値処理で点形状や不定形状の画質欠陥を検出することが記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−294202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで一般に、画質欠陥には濃度の高い領域が欠陥となる場合と、濃度の低い領域が欠陥となる場合との双方があり、これらを検出するにはそれぞれを分離して抽出する2種類のフィルタを切り替えて使用する必要がある。そのため、画質欠陥を検出する際の時間が長くなっていた。
本発明は、画質欠陥を検出する際の時間を短縮化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、検出対象となる画像上の各画素について、当該画素の濃度値と当該画像全体の濃度の平均値または当該画素周辺の所定の領域内での濃度の平均値との差分の絶対値を算出する算出部と、前記算出部にて算出された前記各画素の前記差分の絶対値に基づき、前記画像上にて当該絶対値が所定値以上である前記画素が所定の面積以上の大きさを有する領域を形成する画素群を抽出する画素群抽出部と、前記画素群抽出部にて抽出された前記画素群の中から所定の基準を満たす画素群を画質欠陥部として検出する検出部とを備えたことを特徴とする画質欠陥検出装置である。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る画質欠陥検出装置にて、前記検出部は、前記画素群抽出部にて抽出された前記画素群に含まれる前記画素の濃度値の最大値が所定の閾値以上である当該画素群を前記画質欠陥部として検出することを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1に係る画質欠陥検出装置にて、前記検出部は、前記画素群抽出部にて抽出された前記画素群に含まれる前記画素の濃度値の最大値に0よりも大きく1よりも小さな所定値を乗算した閾値を設定し、設定された当該閾値以上である当該画素群を前記画質欠陥部として検出することを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項3に係る画質欠陥検出装置にて、前記検出部は、前記画素群抽出部にて抽出されたすべての前記画素群の濃度値の平均値と当該画素群に含まれる前記画素の濃度値の最大値との間に前記閾値を設定することを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項3に係る画質欠陥検出装置にて、前記検出部は、前記画素群抽出部にて抽出された前記画素群に含まれる前記画素周辺の領域内の画素の濃度値の平均値と、当該画素群に含まれる当該画素の濃度値の最大値との間に前記閾値を設定することを特徴とする。
【0007】
請求項6に係る発明は、請求項1に係る画質欠陥検出装置にて、前記画素群抽出部は、点形状または不定形状の前記画素群を抽出するフィルタを用いて当該画素群を抽出することを特徴とする。
請求項7に係る発明は、請求項1に係る画質欠陥検出装置にて、前記画素群抽出部は、2つのガウス関数の差で構成されるDOGフィルタを用いて前記画素群を抽出することを特徴とする。
請求項8に係る発明は、請求項1に係る画質欠陥検出装置にて、前記検出部にて検出された前記画質欠陥部について解析し、当該画質欠陥部の位置、当該画質欠陥部の大きさ、当該画質欠陥部の深さ、当該画質欠陥部の形状、および当該画質欠陥部の発生規則の中のいずれか1つまたは複数を求める解析部をさらに備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項9に係る発明は、検出対象となる画像上の各画素について、当該画素の濃度値と当該画像全体の濃度の平均値または当該画素周辺の所定の領域内での濃度の平均値との差分の絶対値を算出し、算出された前記各画素の前記差分の絶対値に基づき、前記画像上にて当該絶対値が所定値以上である前記画素が所定の面積以上の大きさを有する領域を形成する画素群を抽出し、抽出された前記画素群の中から所定の基準を満たす画素群を画質欠陥部として検出することを特徴とする画質欠陥検出方法である。
【0009】
請求項10に係る発明は、請求項9に係る画質欠陥検出方法にて、抽出された前記画素群に含まれる前記画素の濃度値の最大値が所定の閾値以上である当該画素群を前記画質欠陥部として検出することを特徴とする。
請求項11に係る発明は、請求項9に係る画質欠陥検出方法にて、抽出された前記画素群に含まれる前記画素の濃度値の最大値に0よりも大きく1よりも小さな所定値を乗算した閾値を設定し、設定された当該閾値以上である当該画素群を前記画質欠陥部として検出することを特徴とする。
請求項12に係る発明は、請求項9に係る画質欠陥検出方法にて、2つのガウス関数の差で構成されるDOGフィルタを用いて前記画素群を抽出することを特徴とする。
【0010】
請求項13に係る発明は、コンピュータに、検出対象となる画像上の各画素の濃度値を取得する機能と、前記画素の濃度値と前記画像全体の濃度の平均値または当該画素周辺の所定の領域内での濃度の平均値との差分の絶対値を算出する機能と、算出された前記各画素の前記差分の絶対値に基づき、前記画像上にて当該絶対値が所定値以上である前記画素が所定の面積以上の大きさを有する領域を形成する画素群を抽出する機能と、抽出された前記画素群の中から所定の基準を満たす画素群を画質欠陥部として検出する機能とを実現させることを特徴とするプログラムである。
請求項14に係る発明は、請求項13に係るプログラムにて、抽出された前記画素群に含まれる前記画素の濃度値の最大値が所定の閾値以上である当該画素群を前記画質欠陥部として検出することを特徴とする。
請求項15に係る発明は、請求項13に係るプログラムにて、抽出された前記画素群に含まれる前記画素の濃度値の最大値に0よりも大きく1よりも小さな所定値を乗算した閾値を設定し、設定された当該閾値以上である当該画素群を前記画質欠陥部として検出することを特徴とする。
【0011】
なお、このプログラムは、例えば、ハードディスクやDVD−ROM等の予約領域に格納されたプログラムを、RAMにロードして実行される場合がある。また、予めROMに格納された状態にて、CPUで実行される形態がある。さらに、EEPROM等の書き換え可能なROMを備えている場合には、装置がアッセンブリされた後に、プログラムだけが提供されてROMにインストールされる場合がある。このプログラムの提供に際しては、インターネット等のネットワークを介して装置にプログラムが伝送され、装置の有するROMにインストールされる形態も考えられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1によれば、本発明を採用しない場合に比べて、画質欠陥を検出する際の時間を短縮化できる。
本発明の請求項2によれば、本発明を採用しない場合に比べて、濃度差の生じている領域を画質欠陥部として確実に検出できる。
本発明の請求項3によれば、本発明を採用しない場合に比べて、濃度に関して相反する性質を有する画質欠陥を安定した大きさを持った領域として検出できる。
【0013】
本発明の請求項4によれば、本発明を採用しない場合に比べて、画質欠陥が生じた領域全体の濃度に対応させて、濃度に関して相反する性質を有する画質欠陥を安定した大きさを持った領域として検出できる。
本発明の請求項5によれば、本発明を採用しない場合に比べて、画像の領域に応じて濃度の平均値が変化する原画像である場合にも、濃度に関して相反する性質を有する画質欠陥を安定した大きさを持った領域として検出できる。
本発明の請求項6によれば、画質欠陥が形成する一般的な形状を画質欠陥と見なして抽出することができる。
【0014】
本発明の請求項7によれば、人間の視覚が画質欠陥と感じる感覚に近似した特性を有する画質欠陥を抽出することができる。
本発明の請求項8によれば、発生した画質欠陥が有する特性や傾向等を把握することができる。
【0015】
本発明の請求項9によれば、本発明を採用しない場合に比べて、画質欠陥を検出する際の時間を短縮化できる。
本発明の請求項10によれば、本発明を採用しない場合に比べて、濃度差の生じている領域を画質欠陥部として確実に検出できる。
本発明の請求項11によれば、本発明を採用しない場合に比べて、濃度に関して相反する性質を有する画質欠陥を安定した大きさを持った領域として検出できる。
本発明の請求項12によれば、人間の視覚が画質欠陥と感じる感覚に近似した特性を有する画質欠陥を抽出することができる。
【0016】
本発明の請求項13によれば、本発明を採用しない場合に比べて、画質欠陥を検出する際の時間を短縮化できる。
本発明の請求項14によれば、本発明を採用しない場合に比べて、濃度差の生じている領域を画質欠陥部として確実に検出できる。
本発明の請求項15によれば、本発明を採用しない場合に比べて、濃度に関して相反する性質を有する画質欠陥を安定した大きさを持った領域として検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[実施の形態1]
図1は、本実施の形態が適用される画質欠陥検出装置1の全体構成を示すブロック図である。図1に示す画質欠陥検出装置1は、濃度データ入力部10、濃度正規化部20、フィルタリング部30、欠陥検出部40を備えている。
例えばプリンタや複写機等の画像形成装置等において印刷された例えば一様な濃度の画像(原画像)は、光電変換素子であるCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ等を備えた濃度計測装置等により画素単位で濃度が計測される。濃度データ入力部10は、かかる濃度計測装置等から原画像の画素毎の濃度を、濃度データとして取得する。そして、取得した原画像の画素毎の濃度データを濃度正規化部20に送る。
ここでの濃度データは、例えば8ビット(256ステップ)のデータ値として生成され、それぞれの原画像上での画素位置を示す位置情報と関連図付けて構成されている。
なお、画質欠陥検出装置1では、図示しないCPUが濃度データ入力部10、濃度正規化部20、フィルタリング部30、欠陥検出部40の各機能を実現するプログラムを主記憶部(不図示)から画質欠陥検出装置1内のRAM等に読み込んで各種処理を行う。
【0018】
濃度正規化部20は、濃度データ入力部10から送られた原画像の画素毎の濃度データを正規化する。
図2は、原画像に生じた画質欠陥の一例を説明する図である。図2(a)は、一様な画像濃度に印刷された原画像を示し、図2(b)は、原画像の部分領域Aを拡大した図である。図2(a)の原画像には、図2(b)に示したように、濃度が原画像全体の平均濃度よりも淡くなった画質欠陥(以下、「白点欠陥」と称す)が生じている。これは、例えば画像形成装置を例とすれば、画像形成装置内に配置された感光体の欠陥であったり、潜像を現像する現像器等が原因であったりと、画像形成装置を製造する工程において生じた何らかの不具合に起因して生じるものである。また、例えば液晶ディスプレイ等においても同様の画質欠陥が生じる場合がある。
図2では、濃度が淡くなった白点欠陥を一例として示したが、濃度が原画像全体の平均濃度よりも濃くなる画質欠陥(以下、「黒点欠陥」と称す)が発生する場合もある。これらの白点欠陥および黒点欠陥は、濃度に関して相反する性質を有するが同じ画質欠陥であり、同一画像上に白点欠陥および黒点欠陥となって発生する場合がある。そのため、従来は、濃度に関して相反する白点欠陥および黒点欠陥を検出するために、それぞれ白点用のフィルタと黒点用のフィルタとを別途用意して2回のフィルタリングを行い、白点欠陥および黒点欠陥をそれぞれ別工程で抽出していた。それにより、画質欠陥の抽出処理を行うに際しては、処理時間が長くなるという不都合があった。
【0019】
そこで、本実施の形態の画質欠陥検出装置1では、その後の工程において1回のフィルタリングにより白点欠陥および黒点欠陥の双方を抽出するために、濃度正規化部20により原画像の濃度データを正規化している。
具体的には、濃度正規化部20は、算出部の一例であって、濃度データ入力部10から送られた原画像の画素毎の濃度データ値(濃度値)から原画像全体の濃度の平均値を算出し(図3参照)、画素毎に濃度と平均値との差分を求める(図4参照)。そして、画素毎の濃度と平均値との差分を絶対値に変換する(図5参照)。ここで、図3は、画素毎の濃度と原画像全体の濃度の平均値との関係を示した図である。図4は、画素毎の濃度と平均値との差分を示した図である。図5は、画素毎の濃度と平均値との差分の絶対値を示した図である。
なお、図3、図4、図5を含め本明細書での説明に用いる図では、原画像の濃度等に関する理解を容易とするため、図2(a)に示したように、原画像の例えばXX断面でのデータ値を示す。さらに、上記したように、濃度データはデジタル値であるが、便宜上アナログ的に連続したものとして表現する。
【0020】
また、図3〜図4に示した例では、原画像全体の濃度の平均値を用いたが、画質欠陥を検出するに際して、画像上の領域に応じて濃度の平均値が変化する原画像を用いる場合もある(図6参照)。このような原画像を用いる場合には、画素の周囲に所定の面積を持った周辺領域を定め、この周辺領域内に含まれる画素の濃度の平均値を算出し(図7参照)、画素毎に濃度と周辺領域での濃度の平均値との差分を求めてもよい。ここで、図6は、画素毎の濃度と画像上の領域に応じて変化する濃度の平均値とを示した図である。図7は、画素毎の濃度と周辺領域での濃度の平均値とを示した図である。
このような周辺領域での濃度の平均値との差分を用いることで、画像の領域に応じて濃度の平均値が変化する原画像を用いる場合にも、周辺領域での濃度の平均値との差分を絶対値に変換することで、図5と同等のデータが得られる。
なお、上記の場合に、周辺領域の濃度の平均値は、逐次算出してもよいが、原画像を1度縮小することで各画素毎の濃度データを失わせ、その後縮小画像を再度拡大することで、画素の周辺領域での濃度データ値を平均化したことと等価になる画像を形成し、その画像の濃度データを用いる方法を採用してもよい。
【0021】
フィルタリング部30は、濃度正規化部20により正規化された原画像の濃度データ、すなわち画素毎の濃度と濃度の平均値との差分の絶対値で構成された濃度データに対して、フィルタリング処理を行う。ここでのフィルタリング処理により、例えば図5に示した絶対値からなる濃度データから、絶対値が所定値以上である画素が所定の面積以上の大きさを有する領域を形成する画素群(濃度領域)を抽出する。すなわち、フィルタリング部30は、画素群抽出部として機能する。
例えばプリンタや複写機等の画像形成装置にて印刷された原画像に生じた濃度の濃淡部が、白点欠陥および黒点欠陥という画質欠陥に該当するか否かの境界は、人間の視覚による感じ方の程度に負うところが大きい。そのため、原画像から濃度の濃淡部を抽出するに際しては、人間の視覚が感じる「ぼかしすぎない」、かつ「抽出しすぎない」という感覚に近似した特性を有するフィルタを用いるのが好ましい。
そこで、本実施の形態のフィルタリング部30では、人間の脳の情報処理の中で、視覚初期過程における受容野のモデルとして知られているDOGフィルタを用いている。ここで図8は、DOGフィルタを説明する図であり、(a)はDOGフィルタを生成するDOG関数を三次元で示した図であり、(b)はDOGフィルタの閾値分布を2次元で表した図である。
DOGフィルタを生成するための2次元の広がりをもつDOG関数は、2つのガウス関数の差として、以下の(1)式で表される。なお、式(1)は、[数1]に対応するものとする。
【0022】
【数1】

【0023】
(1)式でのσは興奮性の分散(抽出の強さを制御)を、σは抑制性の分散(抑制の強さを制御)を表し、Aは興奮性と抑制性の相対的な強さを制御するパラメータである。分散σ、分散σ、パラメータAは、どの程度の原画像上の濃度の濃淡部を画質欠陥と設定するかに応じて、適宜定められる。
なお、本実施の形態のフィルタリング部30で使用されるフィルタとしては、DOGフィルタに限らず、絶対値からなる濃度データから所定の濃度領域を抽出するフィルタであれば、どのようなものを用いてもよい。
【0024】
フィルタリング部30によるフィルタリング処理を行うことで、例えば図5に示した絶対値からなる濃度データは、白点欠陥および黒点欠陥に対応する画素領域(画素群)が大きな濃度データ値を有する濃度データに変換される。ここで図9は、フィルタリング処理が行われた画像(フィルタリング画像)の濃度を示した図である。図9に示したように、フィルタリング部30でのフィルタリング処理により、白点欠陥および黒点欠陥に対応する画素領域に大きな濃度データ値が存在する濃度データが生成される。
そして、フィルタリング部30によってフィルタリング処理された画素毎の濃度データは、欠陥検出部40に送られる。
【0025】
欠陥検出部40は、検出部の一例であって、フィルタリング部30によってフィルタリング処理された画素毎の濃度データから、所定の閾値により画質欠陥が発生した領域を検出する。ここで図10は、フィルタリング処理された画像の画素毎の濃度と閾値との関係を示した図である。図10に示したように、欠陥検出部40は、閾値よりも大きな濃度データ値を有する画素領域を画質欠陥が発生した領域と見なし、これを検出する。そして、画質欠陥が発生した領域の画素位置と個数等を、例えば不図示の液晶ディスプレイ等に出力し、画質欠陥を表す画像として表示等をさせる。
すなわち、画質欠陥を表す画像は、画質欠陥が発生した領域周辺をやや広めに設定しておき、閾値以上ならばデータ値“1”、閾値よりも小さければデータ値“0”とし、画質欠陥が発生した領域周辺以外の領域はデータ値“0”とする2値化を行って形成される。それにより、画質欠陥を表す画像は、例えば図11に示したように表示される。
【0026】
以上説明したように、本実施の形態の画質欠陥検出装置1では、1回のフィルタリング処理により、濃度に関して相反する白点欠陥および黒点欠陥を検出する。そのため、画質欠陥の検出処理時間を短縮化することができる。
【0027】
[実施の形態2]
実施の形態1の画質欠陥検出装置1では、1回のフィルタリング処理により、濃度に関して相反する性質を有する白点欠陥および黒点欠陥の双方を検出する構成を示した。本実施の形態では、画質欠陥を安定した大きさを持った領域として検出するための構成をさらに備えた画質欠陥検出装置2について説明する。なお、実施の形態1と同様な構成については同様な符号を用い、ここではその詳細な説明を省略する。
【0028】
図12は、本実施の形態が適用される画質欠陥検出装置2の全体構成を示すブロック図である。図12に示す画質欠陥検出装置2は、濃度データ入力部10、濃度正規化部20、フィルタリング部30、欠陥検出部40、適応的欠陥検出部50、欠陥領域解析部60をさらに備えている。
なお、画質欠陥検出装置2では、図示しないCPUが濃度データ入力部10、濃度正規化部20、フィルタリング部30、欠陥検出部40、適応的欠陥検出部50、欠陥領域解析部60の各機能を実現するプログラムを主記憶部(不図示)から画質欠陥検出装置2内のRAM等に読み込んで各種処理を行う。
濃度データ入力部10および濃度正規化部20は、実施の形態1の場合と同様にして、原画像の画素毎の濃度データを正規化する。
【0029】
フィルタリング部30は、画素群抽出部の一例であって、濃度正規化部20により正規化された原画像の濃度データ、すなわち画素毎の濃度と濃度の平均値との差分の絶対値で構成された濃度データに対して、例えば実施の形態1と同様のDOGフィルタ(図8参照)を用いてフィルタリング処理を行う。
フィルタリング部30でのフィルタリング処理では、図13(フィルタリング処理が行われた画像の濃度を示した図)に示したように、原画像の画素毎の濃度データは、欠陥(白点欠陥または黒点欠陥)に対応する画素領域(画素群)に大きな濃度データ値が存在する濃度データに変換される。
そして、フィルタリング部30によってフィルタリング処理された画素毎の濃度データは、欠陥検出部40に送られる。さらに、フィルタリング処理された画素毎の濃度データは、適応的欠陥検出部50にも送られる。
【0030】
欠陥検出部40は、検出部の一例であって、フィルタリング部30によってフィルタリング処理された画素毎の濃度データから、所定の閾値により画質欠陥が発生した領域を検出する(図12参照)。そして、本実施の形態の欠陥検出部40は、閾値よりも大きな濃度値を有する画素領域(画素群)を画質欠陥が発生した領域と見なし、この領域の位置を検出する。
【0031】
欠陥検出部40では、固定された所定の閾値を用いて画質欠陥が発生した領域を検出する。そのため、例えば図13の左側に生じている画質欠陥のように、設定された閾値よりも大きいものではあるが、しかし閾値との差はあまり大きくはない画質欠陥も存在する。このような画質欠陥は、検出された領域の大きさが例え1画素や2画素程度の広がりであっても、人間が実際の原画像を見た際には、広がりの大きい画質欠陥である場合がある。すなわち、抽出の強度と抑制の強度とを併せ持ったDOGフィルタ(または、他の点検出フィルタ)に反応するということは、点形状の欠陥には反応しているということになる。したがって、人間の目には、一定の視覚的刺激として存在する画質欠陥である。
【0032】
しかしながら、欠陥検出部40での濃度データ値の大きさという観点だけでの検出、すなわち、固定された閾値よりも大きな濃度データ値を持った山の部分を画質欠陥が発生した領域として検出する方法では、人間の視覚が捉える画質欠陥の広がりとの乖離が生じて、人間の視覚が感じる広がりとは異なる広がりを持った領域を画質欠陥と見なす判定を行う場合も生じる。そのため、人間が実際に原画像を見たときに画質欠陥と判断する画質欠陥の広がりに近づけた検出を行うには、固定された閾値だけでは限界がある場合も発生する。
【0033】
そこで、本実施の形態の画質欠陥検出装置2においては、検出部の一例としての適応的欠陥検出部50を設けている。適応的欠陥検出部50は、欠陥検出部40により検出された画質欠陥の領域の位置における濃度データ値に応じて、フィルタリング部30にてフィルタリング処理された画素毎の濃度データに関する閾値を再設定する。そして、再設定された閾値を用いて、画質欠陥を安定した大きさを持った領域として検出する。
ここで、図14は、再設定された閾値(以下、これを「適応的閾値」を称する)を説明する図である。図14に示したように、適応的欠陥検出部50は、欠陥検出部40にて検出された画質欠陥それぞれの位置において、濃度データ値“0”と、フィルタリング部30にてフィルタリング処理された濃度データ値との間で適応的閾値を設定する。例えば図14に示した例では、フィルタリング処理された濃度データの頂点(各欠陥の最大値)に対して、7割程度の濃度データ値を適応的閾値とした場合である。
このように、例えば、適応的閾値を設定する場合に、欠陥検出部40により検出された画質欠陥の領域の位置における濃度データ値の最大値のα%(α:0よりも大きく100よりも小さい整数)を適応的閾値として予め定めておく。それにより、本実施の形態の画質欠陥検出装置2では、固定された閾値ではなく、画質欠陥の領域の位置における濃度データ値に適応的に可変される閾値(適応的閾値)を用いて画質欠陥を検出する。そして、検出される画質欠陥の広がりを、人間が原画像を見て画質欠陥を判断するときの感覚に近づけている。
【0034】
αの値を設定する場合に、例えば、フィルタリング部30によってフィルタリング処理された画素毎の濃度データ値の平均値を算出しておく。そして、適応的閾値がフィルタリング処理された画素毎の濃度データ値の平均値と欠陥検出部40により検出された画質欠陥の領域の位置における濃度データ値の最大値との間に設定されるように、適応的閾値を設定するαを定めてもよい。ここで図15は、画素毎の濃度とフィルタリング処理された画素毎の濃度データ値の平均値とから適応的閾値を設定した場合を示した図である。
また、例えば、フィルタリング部30によってフィルタリング処理された画素毎の濃度データ値から、画素の周囲に所定の面積を持った周辺領域を定め、この周辺領域内に含まれる画素の濃度データ値についての平均値を算出しておく。そして、適応的閾値が周辺領域での濃度データ値の平均値と欠陥検出部40により検出された画質欠陥の領域の位置における濃度データ値の最大値との間に設定されるように、適応的閾値を設定するαを定めてもよい。ここで図16は、画素毎の濃度と周辺領域でのフィルタリング処理された画素毎の濃度データ値の平均値とから適応的閾値を設定した場合を示した図である。
【0035】
上記のような画質欠陥の位置での濃度データ値に応じて可変される適応的閾値により、フィルタリング処理された画像を2値化することで、画質欠陥が発生した領域を表す適応的欠陥画像が生成される(図11参照)。すなわち、適応的欠陥画像は、画質欠陥が発生した領域周辺をやや広めに設定しておき、適応的閾値以上ならばデータ値“1”、適応的閾値よりも小さければデータ値“0”とし、画質欠陥が発生した領域周辺以外の領域はデータ値“0”とする2値化を行って生成される。
そして、生成された適応的欠陥画像は、解析部の一例としての欠陥領域解析部60に送られる。
【0036】
欠陥領域解析部60は、2値化された適応的欠陥検出画像を元に、画質欠陥の位置、大きさ、深さ、形状、発生規則等を算出する。画質欠陥の位置は、各画質欠陥の中心位置の位置情報により求められる。画質欠陥の大きさは、各画質欠陥毎に1となる画素の総画素数や縦横の大きさにより求められる。画質欠陥の深さは、原画像と照合し、画質欠陥領域の輝度平均や最大輝度により求められる。また、画質欠陥の発生規則は、各画質欠陥の中心位置がどのくらいの画素間隔で発生しているか等により求められる。
そして、欠陥領域解析部60は、求めた画質欠陥の位置、大きさ、深さ、形状、発生規則等を例えば不図示の液晶ディスプレイ等に出力し、表示させる。
【0037】
上記したように、本実施の形態の画質欠陥検出装置2においては、1回のフィルタリング処理により、濃度に関して相反する白点欠陥および黒点欠陥を検出する。そのため、画質欠陥の検出処理時間を短縮化する。さらには、画質欠陥を安定した大きさを持った領域として検出し、人間が原画像を見て画質欠陥と判断するときの感覚に近づけている。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施の形態1における画質欠陥検出装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】原画像に生じた画質欠陥の一例を説明する図である。
【図3】画素毎の濃度と原画像全体の濃度の平均値との関係を示した図である。
【図4】画素毎の濃度と平均値との差分を示した図である。
【図5】画素毎の濃度と平均値との差分の絶対値を示した図である。
【図6】画素毎の濃度と画像上の領域に応じて変化する濃度の平均値とを示した図である。
【図7】画素毎の濃度と周辺領域での濃度の平均値とを示した図である。
【図8】DOGフィルタを説明する図である。
【図9】フィルタリング処理が行われた画像の濃度を示した図である。
【図10】フィルタリング処理された画像の画素毎の濃度と閾値との関係を示した図である。
【図11】画質欠陥を表す画像の一例を示す図である。
【図12】実施の形態2における画質欠陥検出装置の全体構成を示すブロック図である。
【図13】フィルタリング処理が行われた画像の濃度を示した図である。
【図14】再設定された閾値(適応的閾値)を説明する図である。
【図15】画素毎の濃度とフィルタリング処理された画素毎の濃度データ値の平均値とから適応的閾値を設定した場合を示した図である。
【図16】画素毎の濃度と周辺領域でのフィルタリング処理された画素毎の濃度データ値の平均値とから適応的閾値を設定した場合を示した図である。
【符号の説明】
【0039】
1,2…画質欠陥検出装置、10…濃度データ入力部、20…濃度正規化部、30…フィルタリング部、40…欠陥検出部、50…適応的欠陥検出部、60…欠陥領域解析部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象となる画像上の各画素について、当該画素の濃度値と当該画像全体の濃度の平均値または当該画素周辺の所定の領域内での濃度の平均値との差分の絶対値を算出する算出部と、
前記算出部にて算出された前記各画素の前記差分の絶対値に基づき、前記画像上にて当該絶対値が所定値以上である前記画素が所定の面積以上の大きさを有する領域を形成する画素群を抽出する画素群抽出部と、
前記画素群抽出部にて抽出された前記画素群の中から所定の基準を満たす画素群を画質欠陥部として検出する検出部と
を備えたことを特徴とする画質欠陥検出装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記画素群抽出部にて抽出された前記画素群に含まれる前記画素の濃度値の最大値が所定の閾値以上である当該画素群を前記画質欠陥部として検出することを特徴とする請求項1記載の画質欠陥検出装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記画素群抽出部にて抽出された前記画素群に含まれる前記画素の濃度値の最大値に0よりも大きく1よりも小さな所定値を乗算した閾値を設定し、設定された当該閾値以上である当該画素群を前記画質欠陥部として検出することを特徴とする請求項1記載の画質欠陥検出装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記画素群抽出部にて抽出されたすべての前記画素群の濃度値の平均値と当該画素群に含まれる前記画素の濃度値の最大値との間に前記閾値を設定することを特徴とする請求項3記載の画質欠陥検出装置。
【請求項5】
前記検出部は、前記画素群抽出部にて抽出された前記画素群に含まれる前記画素周辺の領域内の画素の濃度値の平均値と、当該画素群に含まれる当該画素の濃度値の最大値との間に前記閾値を設定することを特徴とする請求項3記載の画質欠陥検出装置。
【請求項6】
前記画素群抽出部は、点形状または不定形状の前記画素群を抽出するフィルタを用いて当該画素群を抽出することを特徴とする請求項1記載の画質欠陥検出装置。
【請求項7】
前記画素群抽出部は、2つのガウス関数の差で構成されるDOGフィルタを用いて前記画素群を抽出することを特徴とする請求項1記載の画質欠陥検出装置。
【請求項8】
前記検出部にて検出された前記画質欠陥部について解析し、当該画質欠陥部の位置、当該画質欠陥部の大きさ、当該画質欠陥部の深さ、当該画質欠陥部の形状、および当該画質欠陥部の発生規則の中のいずれか1つまたは複数を求める解析部をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の画質欠陥検出装置。
【請求項9】
検出対象となる画像上の各画素について、当該画素の濃度値と当該画像全体の濃度の平均値または当該画素周辺の所定の領域内での濃度の平均値との差分の絶対値を算出し、
算出された前記各画素の前記差分の絶対値に基づき、前記画像上にて当該絶対値が所定値以上である前記画素が所定の面積以上の大きさを有する領域を形成する画素群を抽出し、
抽出された前記画素群の中から所定の基準を満たす画素群を画質欠陥部として検出することを特徴とする画質欠陥検出方法。
【請求項10】
抽出された前記画素群に含まれる前記画素の濃度値の最大値が所定の閾値以上である当該画素群を前記画質欠陥部として検出することを特徴とする請求項9記載の画質欠陥検出方法。
【請求項11】
抽出された前記画素群に含まれる前記画素の濃度値の最大値に0よりも大きく1よりも小さな所定値を乗算した閾値を設定し、設定された当該閾値以上である当該画素群を前記画質欠陥部として検出することを特徴とする請求項9記載の画質欠陥検出方法。
【請求項12】
2つのガウス関数の差で構成されるDOGフィルタを用いて前記画素群を抽出することを特徴とする請求項9記載の画質欠陥検出方法。
【請求項13】
コンピュータに、
検出対象となる画像上の各画素の濃度値を取得する機能と、
前記画素の濃度値と前記画像全体の濃度の平均値または当該画素周辺の所定の領域内での濃度の平均値との差分の絶対値を算出する機能と、
算出された前記各画素の前記差分の絶対値に基づき、前記画像上にて当該絶対値が所定値以上である前記画素が所定の面積以上の大きさを有する領域を形成する画素群を抽出する機能と、
抽出された前記画素群の中から所定の基準を満たす画素群を画質欠陥部として検出する機能と
を実現させることを特徴とするプログラム。
【請求項14】
抽出された前記画素群に含まれる前記画素の濃度値の最大値が所定の閾値以上である当該画素群を前記画質欠陥部として検出することを特徴とする請求項13記載のプログラム。
【請求項15】
抽出された前記画素群に含まれる前記画素の濃度値の最大値に0よりも大きく1よりも小さな所定値を乗算した閾値を設定し、設定された当該閾値以上である当該画素群を前記画質欠陥部として検出することを特徴とする請求項13記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−292256(P2008−292256A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−137108(P2007−137108)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】