説明

界磁回路の絶縁低下監視装置、絶縁低下監視方法及び絶縁低下監視プログラム

【課題】界磁回路の絶縁抵抗を測定し、絶縁抵抗が既定値未満であった場合に絶縁抵抗の回復を図る。
【解決手段】界磁回路の絶縁低下監視装置1は、発電機が停止中か否かを検知する運転状態検知手段6と、界磁回路の絶縁抵抗を測定するタイミングを設定する測定間隔設定手段8と、運転状態検知手段により発電機が停止中と検知され、且つ測定間隔設定手段により絶縁抵抗を測定するタイミングが来たと判断された場合に、所定の時間中、界磁回路の接地端子を開放する接地線断接手段10と、接地線断接手段により接地端子が開放されているときに界磁回路の絶縁抵抗を測定する絶縁抵抗測定手段2と、絶縁抵抗測定手段により測定された抵抗値が規定値以上であるか否かを判断する絶縁抵抗判定手段14と、絶縁抵抗判定手段により絶縁抵抗が規定値未満であると判断された場合に、発電機を起動して界磁回路を乾燥させる運転制御手段16と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機の電機子巻線に励磁を与える界磁回路の絶縁抵抗の低下を監視する方法に関し、特に、界磁回路の絶縁抵抗測定を自動的に行うとともに、絶縁抵抗が既定値未満であると判断された場合に、自動的に発電機を起動させて絶縁抵抗を既定値以上にまで回復させる、界磁回路の絶縁低下監視装置、絶縁低下監視方法及び絶縁低下監視プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
同期発電機には、発電機の界磁巻線に直流電流を供給して発電機の電機子巻線に励磁を与える界磁回路が設けられている。界磁回路の絶縁抵抗が所定値よりも低下すると、界磁を喪失して界磁電流がゼロとなり、最悪の場合には電動機を焼損する虞がある。このような事故を防止するために、発電機の稼働前に界磁回路の絶縁抵抗を測定して、既定値以上であることを確認する必要がある。
界磁回路の絶縁抵抗の低下原因のひとつとして吸湿が挙げられる。特に、水力発電所の場合、周囲に存在するダム湖や河川等の影響で霧やモヤ等が発生し、その水分がダクト等から発電所内に侵入して界磁回路を吸湿させることがある。特に、発電機が老朽化している場合には、絶縁が経年劣化して吸湿しやすくなっており、絶縁抵抗が著しく低下することがある。そこで、界磁回路の絶縁抵抗が既定値未満である場合には、発電機を起動して所定の時間、無負荷による空運転を行い、転動により発生する熱により界磁回路を乾燥させ、絶縁抵抗の回復を図る措置が採られる。
界磁回路の絶縁抵抗の測定は、発電機が停止中であることを確認した上で、作業員が界磁回路を覆うカバーを取り外して界磁回路の接地線を開放し、界磁回路(被測定回路)に絶縁抵抗計を当てて測定するという手順で行われる。もちろん、測定終了後には接地線及びカバーを元の状態に戻す必要がある。このように、手動にて絶縁抵抗を測定することは、非常に煩雑、且つ時間を要する作業である。
そこで、特許文献1には、アスファルトプラント等の工場設備における電気機器が運転を停止しているときに自動的に絶縁抵抗を計測し、この計測を日々実行して絶縁抵抗の変化を監視して、電気機器の故障を予知する自動絶縁監視装置が記載されている。この発明によれば、絶縁抵抗を自動で測定することができるので、測定時間の短縮を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−12883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の発明は、被測定回路と対アース間の絶縁抵抗を測定する装置ではないため、接地点を切り離さないと発電機の界磁回路の絶縁抵抗測定が出来ないという問題がある。
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、発電機の界磁回路の絶縁抵抗を自動的に測定し、絶縁抵抗が既定値未満であった場合に絶縁抵抗の回復を図ることのできる界磁回路の絶縁低下監視装置、絶縁低下監視方法及び絶縁低下監視プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、発電機の界磁巻線に直流電流を供給して前記発電機に励磁を与える界磁回路の絶縁低下監視装置であって、前記発電機が停止中か否かを検知する運転状態検知手段と、前記界磁回路の絶縁抵抗を測定するタイミングを設定する測定間隔設定手段と、前記運転状態検知手段により前記発電機が停止中と検知され、且つ前記測定間隔設定手段により絶縁抵抗を測定するタイミングが来たと判断された場合に、絶縁抵抗測定に必要な時間として予め設定された時間中、前記界磁回路の接地端子を開放する接地線断接手段と、前記接地線断接手段により前記接地端子が開放されているときに前記界磁回路の絶縁抵抗を測定する絶縁抵抗測定手段と、前記絶縁抵抗測定手段により測定された抵抗値が規定値以上であるか否かを判断する絶縁抵抗判定手段と、前記絶縁抵抗判定手段により絶縁抵抗が規定値未満であると判断された場合に、前記発電機を起動して前記界磁回路を乾燥させる運転制御手段と、を備えた界磁回路の絶縁低下監視装置を特徴とする。
請求項1の発明では、発電機が停止中であるときに、所定のタイミングにて繰り返し界磁回路の絶縁抵抗を測定するので、発電機停止中の絶縁抵抗を容易に監視することができる。また、界磁回路の接地端子を自動的に開放して測定するので、測定時間を短縮することができる。
請求項2に記載の発明は、前記界磁回路への界磁電力を遮断する界磁遮断器を備え、前記運転状態検知手段は、前記界磁遮断器の断接信号を検知して前記発電機が停止中か否かを判断する請求項1記載の界磁回路の絶縁低下監視装置を特徴とする。
請求項2の発明では、界磁回路に予め設置されている界磁遮断器の断接信号を利用して発電機が運転中であるか否かを判断するので、新たな回路を設置する必要がなく、非常に安価かつ確実な絶縁抵抗監視装置を実現することができる。
【0006】
請求項3に記載の発明は、発電機の界磁巻線に直流電流を供給して前記発電機に励磁を与える界磁回路の絶縁低下監視方法であって、運転状態検知手段が、前記発電機が停止中か否かを検知するステップと、測定間隔設定手段が、前記界磁回路の絶縁抵抗を測定するタイミングを設定するステップと、接地線断接手段が、前記運転状態検知手段により前記発電機が停止中と検知され、且つ前記測定間隔設定手段により絶縁抵抗を測定するタイミングが来たと判断された場合に、絶縁抵抗測定に必要な時間として予め設定された時間中、前記界磁回路の接地端子を開放するステップと、絶縁抵抗測定手段が、前記接地線断接手段により前記接地端子が開放されているときに前記界磁回路の絶縁抵抗を測定するステップと、絶縁抵抗判定手段が、前記絶縁抵抗測定手段により測定された抵抗値が規定値以上であるか否かを判断するステップと、運転制御手段が、前記絶縁抵抗判定手段により絶縁抵抗が規定値未満であると判断された場合に、前記発電機を起動して前記界磁回路を乾燥させるステップと、を備えた界磁回路の絶縁低下監視方法を特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項3記載の絶縁低下監視方法をコンピュータに実行させる界磁回路の絶縁低下監視プログラムを特徴とする。
請求項3、4の発明は、請求項1記載の発明と同様の作用を有する。
【発明の効果】
【0007】
絶縁抵抗を測定する際の接地端子の開放、閉止、及び絶縁抵抗の測定を自動にて行うことができる。従って、絶縁抵抗測定に必要な時間が短縮できるとともに、作業員が煩雑な作業から解放される。また、絶縁抵抗が規定値未満であった場合には、発電機を起動して界磁回路を乾燥させる運転を行うので、界磁の喪失により発生する事故を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】発電機の電機子巻線、界磁回路、及び本発明に係る絶縁低下監視装置との関係を示した模式図である。
【図2】本発明に係る絶縁低下監視装置の機能ブロック図である。
【図3】本発明に係る絶縁低下監視装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図1乃至3に基づいて説明する。図1は、発電機の電機子巻線、界磁回路、及び本発明に係る絶縁低下監視装置との関係を示した模式図である。図2は、本発明に係る絶縁低下監視装置の機能ブロック図である。図3は、本発明に係る絶縁低下監視装置の動作を示すフローチャート図である。本発明に係る絶縁低下監視装置は、界磁回路の接地端子を自動的に開放して絶縁抵抗を測定し、その値が既定値未満である場合に界磁回路の絶縁抵抗の回復を図るために発電機を起動する点に特徴がある。
なお、以下に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0010】
本発明に係る絶縁低下監視装置1が設置された発電機20は、ブラシレス励磁方式の同期発電機であり、発電を開始する際に初励磁を与える固定子側の交流励磁器界磁巻線22と、回転子30側に配置されて、交流励磁器界磁巻線22からの初励磁により交流出力を発生させる交流励磁器電機子巻線32、交流励磁器電機子巻線32からの交流出力を遮断する界磁遮断器34、界磁遮断器34を介して供給された交流電力を直流に変換する回転整流器36、及び回転整流器36から供給された直流電流により励磁される界磁巻線38と、励磁された界磁巻線38により電圧を発生する固定子側の電機子巻線24と、を備えている。
界磁回路40には地絡検出装置が接続されている。地絡検出装置は、交流励磁器電機子巻線32用の図示しないスロット内に併設されて交流電圧を発生させる補助巻線42と、補助巻線42が発生した交流電圧を整流する補助電源用整流器44と、補助巻線42と補助電源用整流器44とからなる直流回路の一端部を、接地端子46を経由して回転子30の接地点Eに接地する回転子接地線48と、を備えている。また、直流回路の他端部側は回転側検出巻線50を経由して界磁回路40に接続されている。回転側検出巻線50と対向する固定子側には、地絡検出巻線60が設けられており、地絡検出巻線60に界磁地絡検出器62が接続されている。界磁回路40に地絡故障が発生すると、界磁回路40内の地絡点から接地点Eに地絡電流が流れ、界磁地絡検出器62によって電圧として検出される。界磁地絡検出器62により検出された電圧があるレベル以上になると、外部シーケンスにより警報、或いは発電機20を停止させる信号が発せられる構成である。
【0011】
絶縁低下監視装置1は、界磁回路40の絶縁抵抗を測定する絶縁抵抗測定手段2と、発電機20の各部及び絶縁抵抗測定手段2を制御する制御手段4と、から構成されている。制御手段4は、周知のCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えたコンピュータから構成することができる。また、制御手段4を、発電機20の運転状態を遠隔地から制御する制御所内に配置することができる。
絶縁低下監視装置1は、発電機20が停止中か否かを検知する運転状態検知手段6と、界磁回路40の絶縁抵抗を測定するタイミングを設定する測定間隔設定手段8と、運転状態検知手段6により発電機20が停止中と検知され、且つ測定間隔設定手段8により絶縁抵抗を測定するタイミングが来たと判断された場合に、界磁回路40の接地端子46を開放する接地線断接手段10と、絶縁抵抗測定に必要な時間として予め設定された時間を計時する抵抗測定時間計時手段12と、接地線断接手段10により接地端子46が開放されているときに界磁回路40の絶縁抵抗を測定する絶縁抵抗測定手段2(絶縁抵抗測定器)と、絶縁抵抗測定手段2により測定された抵抗値が規定値以上であるか否かを判断する絶縁抵抗判定手段14と、絶縁抵抗判定手段14により絶縁抵抗が規定値未満であると判断された場合に、発電機20を起動して界磁回路40を乾燥させる運転制御手段16と、を備えている。
【0012】
運転状態検知手段6は、界磁遮断器34から発電停止信号Sa(断接信号)を受信したことをもって、発電機20が停止していると判断する。発電停止信号Saは、具体的には、界磁遮断器34が交流励磁器電機子巻線32からの交流電力を遮断したときにon信号を発生させるb接点(不図示)の信号である。b接点は、界磁遮断器34に予め設置されており、このon信号を利用して発電機20が動作を停止していることを検知するので、発電機20が停止していることを検知するための新たな回路を設置する必要がなく、非常に安価かつ確実な絶縁低下監視装置1を実現することができる。もちろん別の方法により発電機20が停止していると判断する構成としてもよい。
ここで、発電機20による発電中は、界磁回路40に界磁電力が供給されているので、そこに絶縁抵抗測定器を接続すると、絶縁抵抗測定器が破損する虞があるため、絶縁抵抗を測定することができない。そこで、本発明においては、運転状態検知手段6により、界磁回路40に界磁電力が供給されていないことを検知してから絶縁抵抗測定器を接続して絶縁抵抗を測定する。
【0013】
測定間隔設定手段8は、絶縁抵抗の測定を所定の間隔ごとに行うための時間間隔を設定する手段であり、設定された時間が経過したときにon信号を出力するカウントダウンタイマから構成することができる。例えば、絶縁抵抗の測定を1時間ごとに行う場合は、1時間経過後にon信号を出力するように設定する。この設定は、例えば1時間〜24時間というように任意に設定可能であり、不図示の設定手段から設定する。
接地線断接手段10は、絶縁抵抗の測定を行う時間がきたときであって、且つ発電機20が停止中である場合に、接地端子46を開放する接地線開放命令Sbを出力して、接地端子46を開放する。すなわち、界磁遮断器34のb接点と測定間隔設定手段8の双方がon信号を発生したときに、界磁回路40をグランドから浮かせた状態とする。なお、接地端子46を開放しないまま絶縁抵抗測定を行うと、絶縁抵抗値がゼロΩと測定されてしまうという問題がある。また、後述する抵抗測定時間計時手段12により絶縁抵抗測定に必要な時間が経過したと判断された場合、接地線断接手段10は接地端子46を閉止するように動作する。なお、接地線断接手段10は、少なくとも絶縁抵抗の測定を行っている間のみ接地端子46を開放していればよい。
【0014】
抵抗測定時間計時手段12は、接地線断接手段10が接地端子46を開放した時から計時を開始し、絶縁抵抗測定に必要な時間として予め設定された時間を計時する。設定時間が経過すると、接地線断接手段10に対して接地端子46を閉止するように信号を出力し、この信号を受けて接地線断接手段10は接地端子46を閉止する。抵抗測定時間計時手段12により設定可能な時間は任意であり、不図示の設定手段から例えば1分〜10分のように設定することができる。また、測定間隔設定手段8と同様に抵抗測定時間計時手段12をカウントダウンタイマから構成することができる。抵抗測定時間計時手段12を備えることにより、回路構成を非常に簡便なものとすることができ、絶縁低下監視装置1を安価に構成することができる。もちろん、絶縁抵抗測定が終了した旨の信号を絶縁抵抗測定手段2から受信して、接地線断接手段10が接地端子46を閉止するように構成してもよい。
【0015】
絶縁抵抗測定手段2は、いわゆるメガーと呼ばれる絶縁抵抗測定器であり、接地線断接手段10が接地端子46を開放した旨の信号を受けて、図1中A点に測定器を接続する。絶縁抵抗測定手段2は、絶縁抵抗を測定するために高圧の測定電圧を発生させる。なお、測定電圧は機器(被測定回路)の耐圧により決定される。本発明において測定電圧は、A点から界磁回路40に印加される。もし、吸湿等の影響により一時的に絶縁抵抗値が低下している場合には、絶縁抵抗測定手段2は低い絶縁抵抗値を示す。さらに、界磁回路40が地絡点38Eにて絶縁破壊を起こしている場合は、測定電圧が地絡点38Eからグランドに漏洩するので、絶縁抵抗測定手段2は低い絶縁抵抗値を示す。このようにして測定された絶縁抵抗値は、絶縁抵抗判定手段14に入力される。なお、絶縁抵抗測定が終了した後、絶縁抵抗測定手段2は界磁回路40から測定器を切り離す。
絶縁抵抗判定手段14は、絶縁抵抗測定手段2からの測定値に基づいて、絶縁抵抗が規定値以上であるか否かを判断する。この規定値は、機器の耐圧に基づいて機器ごとに設定する。例えば、界磁地絡検出器62の整定値が15kΩである場合、30kΩを規定値と設定することができる。この規定値は、測定された絶縁抵抗が界磁地絡検出器62を動作させない抵抗値となるように設定する。絶縁抵抗が規定値を下回った場合には、制御所へ警報を発するとともに、界磁回路40の絶縁抵抗の回復を図る措置をとるように、運転制御手段16に対して信号を出力する。また、絶縁抵抗が規定値以上である場合には、測定間隔設定手段8により設定されたタイミングにて繰り返し絶縁抵抗の測定を行う。
【0016】
運転制御手段16は、発電機20の起動、停止、出力等、発電機20の運転状態全般を制御する手段である。絶縁抵抗判定手段14により絶縁抵抗が規定値を下回ったと判断された場合、その旨の信号を受けて、運転制御手段16は、接地線断接手段10により接地端子46が閉止されたことを確認した上で、発電機20に対して乾燥運転命令Scを送信し、発電機20を起動して界磁回路40を乾燥させる乾燥運転を行う。乾燥運転は、電機子巻線24に負荷が接続されておらず、発電した電力が出力されないという点以外は通常の運転と同様である。この状態で、所定時間、例えば1時間程度、発電機20を運転する。乾燥運転では、界磁回路40に流れる電流により界磁巻線38が発熱するので回転子30が乾燥し、界磁回路40の絶縁抵抗を回復させることができる。乾燥運転を行う時間として設定された所定の時間が経過した後、運転制御手段16は、発電機20を停止して界磁遮断器34を開放し、営業運転に備える。なお、営業運転開始まで測定間隔設定手段8により設定されたタイミングにて繰り返し絶縁抵抗の測定を行う。
【0017】
以上の絶縁低下監視装置1の動作について図3のフローチャートに基づいて説明する。
まず、測定間隔設定手段8が、界磁回路40の絶縁抵抗を測定するタイミングが来たか否かを判断する(ステップS1)。絶縁抵抗を測定するタイミングではない場合には(ステップS1にてNo)、フローを抜ける。絶縁抵抗を測定するタイミングである場合には(ステップS1にてYes)、運転状態検知手段6が、発電機20が運転停止中であるか否かを判断する(ステップS2)。発電機20が運転停止中でない場合には(ステップS2にてNo)フローを抜ける。発電機20が運転停止中である場合には(ステップS2にてYes)、接地線断接手段10が接地端子46を開放する(ステップS3)。続いて、絶縁抵抗測定手段2が、界磁回路40の絶縁抵抗を測定する(ステップS4)。絶縁抵抗判定手段14が、絶縁抵抗測定手段2により測定された絶縁抵抗が規定値以上であるか否かを判断する(ステップS5)。絶縁抵抗が規定値以上である場合には(ステップS5にてYes)フローを抜ける。絶縁抵抗が規定値未満である場合には(ステップS5にてNo)、界磁回路40の乾燥運転を行うために、次のステップに進む。運転制御手段16は、接地端子46が閉止されているか否かを確認する(ステップS6)。接地端子46が閉止されていない場合には(ステップS6にてNo)、抵抗測定時間計時手段12及び接地線断接手段10により、接地端子46が閉止されるまでのS6のステップを繰り返す。接地端子46が閉止されている場合(ステップS6にてYes)、運転制御手段16は、界磁遮断器34を投入するとともに発電機を起動して、所定の時間、界磁回路乾燥させるための乾燥運転を行う(ステップS7)。乾燥運転を行う時間として設定された所定の時間が経過した後、運転制御手段16は、発電機20の運転を停止するとともに、界磁遮断器34を開放して(ステップS8)、フローを抜ける。
【0018】
以上、絶縁低下監視装置1により実施する絶縁低下監視方法について説明したが、上記絶縁低下監視方法を、コンピュータ実行可能な形式のプログラムとして実施することも可能である。
以上のように、本実施形態によれば、絶縁抵抗を測定する際の接地端子の開放及び閉止を自動にて行うことができるので、絶縁抵抗測定に必要な時間が短縮できるとともに、作業員が煩雑な作業から解放される。また、絶縁抵抗測定に際し作業員が発電所に赴く必要がない。また、発電機が運転を停止しているときに、絶縁抵抗測定を所定のタイミングにて繰り返し測定するので、発電機停止中の絶縁抵抗を容易に監視することができる。また、絶縁抵抗が規定値未満であった場合には、発電機を起動して界磁回路を乾燥させる運転を行うので、界磁の喪失により発生する事故を未然に防止することができる。また、絶縁抵抗値を回復するための乾燥運転を遠隔地に配置された制御所から行うことができる。また、昼夜を問わず、絶縁抵抗値の測定と絶縁抵抗回復のための乾燥運転を行うことができるので、早朝に営業運転をする場合の作業員の負担を軽減することができる。
【符号の説明】
【0019】
1…絶縁低下監視装置、2…絶縁抵抗測定手段、4…制御手段、6…運転状態検知手段、8…測定間隔設定手段、10…接地線断接手段、12…抵抗測定時間計時手段、14…絶縁抵抗判定手段、16…運転制御手段、20…発電機、22…交流励磁器界磁巻線、24…電機子巻線、30…回転子、32…交流励磁器電機子巻線、34…界磁遮断器、36…回転整流器、38…界磁巻線、38E…地絡点、40…界磁回路、42…補助巻線、44…補助電源用整流器、46…接地端子、48…回転子接地線、50…回転側検出巻線、60…地絡検出巻線、62…界磁地絡検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機の界磁巻線に直流電流を供給して前記発電機の電機子巻線に励磁を与える界磁回路の絶縁低下監視装置であって、
前記発電機が停止中か否かを検知する運転状態検知手段と、
前記界磁回路の絶縁抵抗を測定するタイミングを設定する測定間隔設定手段と、
前記運転状態検知手段により前記発電機が停止中と検知され、且つ前記測定間隔設定手段により絶縁抵抗を測定するタイミングが来たと判断された場合に、絶縁抵抗測定に必要な時間として予め設定された時間中、前記界磁回路の接地端子を開放する接地線断接手段と、
該接地線断接手段により前記接地端子が開放されているときに前記界磁回路の絶縁抵抗を測定する絶縁抵抗測定手段と、
該絶縁抵抗測定手段により測定された抵抗値が規定値以上であるか否かを判断する絶縁抵抗判定手段と、
該絶縁抵抗判定手段により絶縁抵抗が規定値未満であると判断された場合に、前記発電機を起動して前記界磁回路を乾燥させる運転制御手段と、を備えたことを特徴とする界磁回路の絶縁低下監視装置。
【請求項2】
前記界磁回路への界磁電力を遮断する界磁遮断器を備え、
前記運転状態検知手段は、前記界磁遮断器の断接信号を検知して前記発電機が停止中か否かを判断することを特徴とする請求項1記載の界磁回路の絶縁低下監視装置。
【請求項3】
発電機の界磁巻線に直流電流を供給して前記発電機の電機子巻線に励磁を与える界磁回路の絶縁低下監視方法であって、
運転状態検知手段が、前記発電機が停止中か否かを検知するステップと、
測定間隔設定手段が、前記界磁回路の絶縁抵抗を測定するタイミングを設定するステップと、
接地線断接手段が、前記運転状態検知手段により前記発電機が停止中と検知され、且つ前記測定間隔設定手段により絶縁抵抗を測定するタイミングが来たと判断された場合に、絶縁抵抗測定に必要な時間として予め設定された時間中、前記界磁回路の接地端子を開放するステップと、
絶縁抵抗測定手段が、前記接地線断接手段により前記接地端子が開放されているときに前記界磁回路の絶縁抵抗を測定するステップと、
絶縁抵抗判定手段が、前記絶縁抵抗測定手段により測定された抵抗値が規定値以上であるか否かを判断するステップと、
運転制御手段が、前記絶縁抵抗判定手段により絶縁抵抗が規定値未満であると判断された場合に、前記発電機を起動して前記界磁回路を乾燥させるステップと、を備えたことを特徴とする界磁回路の絶縁低下監視方法。
【請求項4】
請求項3記載の絶縁低下監視方法をコンピュータに実行させることを特徴とする界磁回路の絶縁低下監視プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−194052(P2012−194052A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58128(P2011−58128)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】