説明

界面活性剤組成物

【課題】低粘度で流動性に優れた界面活性剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)リン酸エステル又はその塩と、(B)グリセロールのアルキレンオキシド付加物とを含有する界面活性剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄剤、乳化剤、香粧品、化粧品等の分野で好適に使用しうる、界面活性剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
リン酸エステル系界面活性剤は、石鹸、アルキルエーテルサルフェート、アルキルサルフェート等に比べて皮膚や毛髪に対する刺激が低く、洗浄剤の成分として広く利用されている。またその特徴ゆえに、広範囲の他の陰イオン性界面活性剤や非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤との混合系などの応用されている。
【0003】
一般に、リン酸エステル塩の水溶液の粘度は、リン酸エステル塩濃度、つまり界面活性剤濃度を上げていくに従って増加する。界面活性剤濃度が約30重量%を超えると、粘度が急激に増加し、取扱いが非常に困難となることから作業性、ハンドリング性に支障をきたす。
【0004】
特許文献1には、リン酸モノエステルとリン酸ジエステルとの混合物からなるリン酸エステル系界面活性剤と、グリセリルエーテル又はプロピレングリコールやジプロピレングリコールといった多価アルコールとを含む洗浄剤組成物が粘度の上昇を生じない洗浄剤組成物として提案されている。
【0005】
特許文献2には、リン酸エステルを含むアニオン界面活性剤と両性界面活性剤及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレン多価アルコールエーテルを含有する使用感の優れた洗浄剤組成物が提案されている。
【0006】
特許文献3には、モノエステル体/ジ及びトリエステル体/グリセリンのアルキレンオキシド付加物の混合物である部分グリセロールエステルのアルキレンオキシド付加物と、モノアルキルリン酸を含有する低刺激性、高起泡性で洗浄力に優れ、かつ良好な感触を有する低刺激性洗浄剤組成物が提案されている。
【特許文献1】特開昭2005−314614号公報
【特許文献2】特開平5−179286号公報
【特許文献3】特開平8−85800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、減粘剤としてグリセリルエーテル及び/又はジプロピレングリコール等の多価アルコールを配合しているが、その減粘効果は必ずしも満足の得られるものではなかった。また、特許文献2では、リン酸エステル等の界面活性剤の含有量が30質量%以下の組成物に効果のある技術しか開示していない。また、特許文献3では、モノエステル体/ジ及びトリエステル体/グリセリンのアルキレンオキシド付加物の混合物である部分グリセロールエステルのアルキレンオキシド付加物を配合しているが、エステル体は必須成分として記載されており且つ減粘効果については記載されていない。
【0008】
本発明の目的は、洗浄剤、乳化剤、香粧品、化粧品等の分野に好適に使用しうる、低粘度で流動性に優れた界面活性剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、(A)リン酸エステル又はその塩〔以下、(A)成分という〕と(B)グリセロールのアルキレンオキシド付加物〔以下、(B)成分という〕とを含有する界面活性剤組成物を提供するものである。
【0010】
更に、本発明は、(C)グリセロールのアルキレンオキシド付加物のエステル体〔以下、(C)成分という〕0〜1質量%を含有する、上記本発明の界面活性剤組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低粘度で流動性に優れ、作業性、ハンドリング性等が良好となる界面活性剤組成物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に用いられる(A)成分であるリン酸エステル又はその塩としては、特に限定されないが、従来より洗浄剤、乳化剤、香粧品、化粧品等の分野一般的に用いられているものであればいずれでも良い。
【0013】
(A)成分としては、下記一般式(I)で表わされるリン酸モノエステル又はその塩(I)と下記一般式(II)で表わされるリン酸ジエステル又はその塩(II)とを、(I)/(II)=100/0〜50/50の質量比で含有する混合物が好ましい。さらに好ましい質量比は、(I)/(II)=100/0〜60/40である。
【0014】
【化2】

【0015】
(式中、R1、R2及びR3は、それぞれ炭素数8〜18の炭化水素基をし、X1、X2及びY1は、それぞれ水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、塩基性アミノ酸残基、アルカノールアミンまたはアンモニウムを示し、平均付加モル数k、m及びnは、それぞれ0〜10の数を示す。)
【0016】
前記一般式(I)又は(II)で表わされるリン酸エステルにおいて、R1、R2及びR3は、それぞれ炭素数8〜18の炭化水素基を示すが、炭素数10〜16の炭化水素基が好ましい。炭化水素基は、アルキル基が好ましく、直鎖、分岐鎖の何れでもよい。X1、X2及びY1としては、アルカリ金属原子として、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム等が、アルカリ土類金属原子として、例えばマグネシウム等が、塩基性アミノ酸残基として、例えばアルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン等が、アルカノールアミンとして、例えばトリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等が挙げられ、カリウムやナトリウムなどのアルカリ金属原子またはアルカノールアミン(特にトリエタノールアミン)が特に好ましい。平均付加モル数k、mおよびnは、それぞれ0〜4が好ましい。(A)成分であるリン酸エステル又はその塩の製造法としては、例えば、特開昭61−17594号公報の従来の技術に記載の方法等が挙げられる。
【0017】
本発明の界面活性剤組成物は、(A)成分を30質量%以上、更に30〜70質量%含有することが好ましい。
【0018】
本発明に用いられる(B)成分であるグリセロールのアルキレンオキシド付加物は、減粘剤として作用し、その製造法としては特に限定されないが、グリセロールに、アルキレン(炭素数2〜4)オキシド(以下、アルキレンオキシドをAOと表記する)、好ましくはエチレンオキシド(以下、EOと表記する)を付加することで調製できる。平均付加モル数は1〜100が好ましく、より好ましくは1〜30である。また、プロピレンオキシド(以下PO)を付加した場合、その平均付加モル数は、2〜8が望ましい。平均付加モル数は、水酸基価より求める数平均分子量から求めることができる。
【0019】
本発明の界面活性剤組成物は、(B)成分を1〜20質量%、更に1〜10質量%含有することが好ましい。
【0020】
本発明において、(A)成分と(B)成分の質量比は、界面活性剤としての機能を保持するとしての観点から(B)/(A)=1/99〜70/30、更に1/99〜20/80であることが好ましい。
【0021】
更に、本発明の界面活性剤組成物は、(C)グリセロールのアルキレンオキシド付加物のエステル体〔以下、(C)成分という〕0〜1質量%を含有することができる。本発明に用いられる(C)成分であるグリセロールのAO付加物のエステルの製造法としては特に限定されないが、グリセロールに、AO(炭素数2〜4)、好ましくはEOを付加した後、脂肪酸又は脂肪酸エステルとエステル化又はエステル交換を行うことで調製できる。
【0022】
本発明において、(C)成分の含有量は、グリセロールのアルキレンオキシド付加物の減粘効果を阻害しないためには、組成物中、0〜1質量%が好ましく、更に0質量%が好ましい。
【0023】
本発明の界面活性剤組成物中には、通常使用される、エタノール等の粘度調整剤、水を必要に応じて配合することができる。
【0024】
本発明の界面活性剤組成物は、常法に従って製造できる。また、その剤型も特に制限されず、液体状、ペースト状、クリーム状など任意に剤型できる。
【0025】
本発明の界面活性剤組成物は、25℃の粘度が140mPa・s以下、更に110mPa・s以下であることが好ましい。この粘度は、BL型粘度計(株式会社 東京計器製造所)を用い、ローターNo.2、60rpmで、攪拌開始5分後に測定したものである。
【実施例】
【0026】
実施例1〜7、比較例1〜3
表1に示す界面活性剤組成物を常法により調製し、25℃で24時間保存した後、粘度をBL型粘度計(株式会社 東京計器製造所)を用い、ローターNo.2、60rpmで、攪拌開始5分後に測定した。結果を表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
表中、EOpはEO平均付加モル数、POpはプロピレンオキシド平均付加モル数である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)リン酸エステル又はその塩と(B)グリセロールのアルキレンオキシド付加物とを含有する界面活性剤組成物。
【請求項2】
(A)と(B)の質量比が、(B)/(A)=1/99〜70/30である請求項1記載の界面活性剤組成物。
【請求項3】
(A)が、下記が一般式(I)で表わされるリン酸モノエステル又はその塩(I)と下記一般式(II)で表わされるリン酸ジエステル又はその塩(II)とを、(I)/(II)=100/0〜50/50の質量比で含有する混合物である請求項1又は2記載の界面活性剤組成物。
【化1】


(式中、R1、R2及びR3は、それぞれ炭素数8〜18の炭化水素基をし、X1、X2及びY1は、それぞれ水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、塩基性アミノ酸残基、アルカノールアミンまたはアンモニウムを示し、平均付加モル数k、m及びnは、それぞれ0〜10の数を示す。)
【請求項4】
(B)が、炭素数2〜4のアルキレンオキシドの少なくとも1種が平均で1〜100モル付加したグリセロールアルキレンオキシド付加物である請求項1〜3のいずれか記載の界面活性剤組成物。
【請求項5】
(B)が、グリセロールのエチレンオキシド付加物である請求項4記載の界面活性剤組成物。
【請求項6】
(B)が、グリセロールのプロピレンオキシド付加物であり、その平均付加モル数が2〜8である請求項4記載の界面活性剤組成物。
【請求項7】
更に、(C)グリセロールのアルキレンオキシド付加物のエステル体0〜1質量%を含有する請求項1〜6のいずれか記載の界面活性剤組成物。

【公開番号】特開2008−138075(P2008−138075A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−325491(P2006−325491)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】