説明

留め具

【課題】貫通孔が穿設された板状部を有する複数の被締結部材の締結に供される留め具において大きな抜去力を実現する。
【解決手段】留め具1は、貫通孔Hの位置が一致して複数の被締結部材が積層された状態で貫通孔に挿通され、少なくとも2つの拡開片11を有する雌部材2と、雌部材に対して相対移動自在に設けられるとともに、雌部材に係合する楔部32を有する雄部材3とを備え、拡開片が、貫通孔内で拡開した際に、積層された被締結部材の両端面に係合する係合凹部24を有し、楔部が、雌部材に対して雄部材が一方側に移動した際に、拡開片の間に挿入されて拡開片を拡開させる構成とすることで、雌部材に設けられる係止部の剛性を確保しつつ被締結部材の板状部に穿設された貫通孔に対する適切な係り代を確保可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫通孔が穿設された板状部を有する複数の被締結部材の締結に供される留め具に関する。
【背景技術】
【0002】
貫通孔が穿設された板状部を有する自動車の内装部品等を互いに締結するための留め具として、重ねられた板状部の貫通孔に挿入される雌部材と、この雌部材の頭部からその軸方向に延びる挿入孔に挿入される雄部材とを備え、雄部材の挿入により、雌部材等に設けられた係止部が拡幅して貫通孔の周縁部を係止することで、雌部材の頭部と係止部とでそれら板状部を厚み方向に挟持固定するものが普及している。
【0003】
この種の留め具として、例えば、雌部材が、軸部とその一端に接続された頭部とを有し、雌部材の軸方向に延びる挿入孔が、軸部の周面に軸方向に沿って開口する対をなす中央裂孔(スリット)と連通し、雄部材が、中央裂孔から外方に突出するように形成された三角形状部を有するクランプばねからなり、当該クランプばねの三角形状部(段付肩部)と雌部材の頭部とによって、重ねられた金属板を挟持固定するものが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
また、例えば、雌部材の軸部に弾性変形可能な一対の係止部が設けられ、係止部は、雄部材の挿入の際に、その基端部を固定点として自由端側が外方に拡がるように弾性変形し、係止部と雌部材の頭部とで固定対象物を挟持するものが知られている(特許文献2参照)。
【0005】
また、例えば、頭部と軸部とを有する合成樹脂製のピン(雄部材)と、フランジ部と胴部とを有する合成樹脂製のグロメット(雌部材)と、内向支持腕と外向挟持片とを有する金属製の挟持体とを備え、ピンの軸部には、上記挟持体の内向支持腕を軸方向に摺動可能に支持する支持部位と、挟持体の外向挟持片側を軸部の中心方向に向けて収納する収納室と、挟持体の外向挟持片を外方へ押圧する加圧面とを形成し、グロメットの胴部には、挟持体の外向挟持片が出没する開口窓を形成して、合成樹脂製グロメットのフランジ部と上記開口窓から外方へ突出する金属製挟持体の外向挟持片とで固定対象物を挟持するものが知られている(特許文献3参照)。
【特許文献1】実公昭53−42669号公報
【特許文献2】特開2006−161890号公報
【特許文献3】特許3967738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような留め具は、比較的簡易に構成できるとともに、大きな抜去力(貫通孔から外れることを防止するため保持力)を確保できることが望まれる。上記特許文献1に記載された従来技術では、抜去力を高めるために、三角形状部を有するクランプばねの剛性を高めたり、外方への突出量を増大させたりすることが考えられる。しかしながら、そのように抜去力を高めた場合、挿入力も増大して雄部材を雌部材へ挿入することが難しくなるという問題があった。仮に雄部材を雌部材へ挿入することができたとしても、留め具を取り外す必要が生じた場合に、今度は雄部材を雌部材から引き抜くことが難しくなるという問題があった。
【0007】
また、上記特許文献2に記載された従来技術では、抜去力を高めるために、係止部と貫通孔の周縁部との係り代を増大させることが考えられる。しかしながら、係止部は、その基端部を固定点として自由端側が外方に拡がるように弾性変形する構成であるため、係止部の破損の防止や剛性の確保(係止力の確保)を考慮すると、係り代(即ち、弾性変形量)を大幅に増大させることは難しいという問題があった。
【0008】
また、上記特許文献3に記載された従来技術では、固定対象物を挟持するのに金属製の挟持体を用いるため、比較的大きな抜去力が得られるものの、留め具の部品点数が増大し、構造も複雑になるという問題があった。
【0009】
本発明は、このような従来技術の課題を鑑みて案出されたものであり、雌部材に設けられる係止部の剛性を確保しつつ、被締結部材の板状部に穿設された貫通孔に対する適切な係り代を確保可能とすることで、大きな抜去力を実現する留め具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた第1の発明は、貫通孔(H)が穿設された板状部(P1,P2)を有する複数の被締結部材の締結に供される留め具(1)であって、前記貫通孔の位置が一致して前記複数の被締結部材が積層された状態で当該貫通孔に挿通され、少なくとも2つの拡開片(11)を有する雌部材(2)と、当該雌部材に対して相対移動自在に設けられるとともに、当該雌部材に係合する楔部(32)を有する雄部材(3)とを備え、前記拡開片は、前記貫通孔内で拡開した際に、積層された前記被締結部材の両端面に係合する係合凹部(24)を有し、前記楔部は、前記雌部材に対して前記雄部材が一方側に移動した際に、前記拡開片の間に挿入されて当該拡開片を拡開させる構成とする。
【0011】
上記課題を解決するためになされた第2の発明として、前記雌部材は、前記拡開片を閉止状態で互いに連結するとともに、当該拡開片が拡開する際に弾性変形する弾性連結片(12)を更に有する構成とすることができる。
【0012】
上記課題を解決するためになされた第3の発明は、前記弾性連結片は、前記雄部材の移動方向と略直交する方向に膨出する湾曲部を有し、前記雄部材は、前記移動の際に前記湾曲部の膨出側に摺接して当該湾曲部を反膨出側に変位させる規制部(33a)を有する構成とする。
【0013】
上記課題を解決するためになされた第4の発明として、前記雄部材は、前記楔部を挟み込む一対の脚部(33)を有し、前記各脚部における前記楔部と対向する壁からそれぞれ突出して前記弾性連結片を挟み込む一対の凸片(33a)からなる構成とすることができる。
【0014】
上記課題を解決するためになされた第5の発明として、前記拡開片は、前記貫通孔への挿通方向側における前記雄部材の少なくとも一部を覆う覆い部(22a)を有する構成とすることができる。
【0015】
上記課題を解決するためになされた第6の発明として、前記雄部材は、閉止状態にある前記拡開片を前記楔部とともに挟持する仮留め部(41)を有する構成とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
上記第1の発明によれば、雌部材の拡開片(被締結部材との係止部)がそれ自体の弾性変形を必要とすることなく容易に変位可能な構成としたため、雌部材に設けられる係止部の剛性を確保しつつ、被締結部材の板状部に穿設された貫通孔に対する適切な係り代を確保することが可能となり、簡易な構成により大きな抜去力を実現することができる。
【0017】
上記第2の発明によれば、拡開片の拡開および閉止(非拡開)動作を簡易な構成で実現できる。また、拡開片と弾性連結片とを一体形成可能となるため、部品点数の増大を回避することができる。
【0018】
上記第3の発明によれば、雄部材を雌部材に対して相対移動させる際に、規制部の摺接位置が湾曲部の所定位置を超えると、変位した湾曲部の弾性力を雄部材の移動方向の補助力として作用させることが可能となる。
【0019】
上記第4の発明によれば、意図しない弾性連結片(湾曲部)の変位が防止されてその弾性力を安定的に生じさせることが可能となる。また、弾性連結片は、その変位にかかわらず脚部の内側に収められるため、被締結部材等と接触して破損することが防止される。
【0020】
上記第5の発明によれば、雄部材の先端側(貫通孔への挿通方向側)が覆い部で保護されるため、雄部材が貫通孔への挿通方向と反対側(締結解除側)に押されて、被締結部材の締結(即ち、拡開片の拡開状態)が解除されることを防止することができる。
【0021】
上記第6の発明によれば、雄部材と雌部材とを仮留め状態で保持することが可能となり、使用者は、仮留め状態の留め具を被締結部材の貫通孔に挿入するだけで、被締結部材の締結を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。以下では、特に断り書きのない限り、方向を示す用語「前」,「後」,「上」,「下」,「左」,「右」は、図1に示した矢印の方向に従うものとする。
【0023】
図1A,Bはそれぞれ本発明に係る留め具の非締結状態および締結状態を示す斜視図であり、図2A〜Cはそれぞれ留め具を構成する雌部材の正面図、側面図および平面図であり、図3A〜Cはそれぞれ留め具を構成する雄部材の側面図、縦断面図および底面図である。
【0024】
留め具1は、図示しない複数の被締結部材(例えば、自動車のエンジン室の後部上壁およびカウルトップカバー)の締結に供されるものであり、各被締結部材が有する板状部が積層された状態でこれら板状部を貫く貫通孔に挿通される雌部材2と、この雌部材2に対して相対移動自在に設けられた雄部材3とから構成される。雌部材2と雄部材3とは留め具1の使用前に互いに仮留め状態とされ、図1Aに示すように、留め具1が非締結状態にある場合でも、雌部材2と雄部材3とは互いに係合した状態にある。また、留め具1が締結状態となる場合には、図1Bに示すように、雄部材3は図1Aの初期位置から雌部材2に向けて下方に移動する。
【0025】
雌部材2は、図2A〜Cにも示すように、左右方向に拡開可能に設けられた略対称形状の一対の拡開片11と、この拡開片11を閉止状態で互いに連結するとともに、拡開片11の拡開動作の際に弾性変形する弾性連結片12とを有する。
【0026】
拡開片11は、頭部21と、脚部22とを有しており、頭部21と脚部22との間に縮幅された括れ部23が設けられることで、略コ字状をなす係合凹部24が形成される。係合凹部24は、拡開片11が被締結部材の貫通孔内において拡開した際に、被締結部材(積層された板状部)の両端面に係合する。
【0027】
各拡開片11の頭部21は、図2Cに示すように、それぞれ左右方向に延出する。閉止状態の拡開片11における2つの頭部21の左右幅(左右端の長さ)は、頭部21が被締結部材の貫通孔周縁に当接可能なように、貫通孔の直径よりも大きく設定される。
【0028】
脚部22は、それぞれ係合凹部24とは逆向きの略コ字状をなし、これら脚部22の内側に弾性連結片12を収容するスペースが画成される。脚部22の底壁22aは、平面視において略半円状をなすように形成されており、図2A,Bに示すように、雌部材2の貫通孔への挿入を容易とすべくその外周面がテーパ状をなす。閉止状態の拡開片11における2つの脚部22の左右幅は、脚部22を被締結部材の貫通孔に挿入可能なように、貫通孔の直径と同等またはそれ以下に設定される。
【0029】
弾性連結片12は、略J字状をなす左右対称の一対の縦部12aと、これら縦部12aの下端を連結する連結部12bとを有する。縦部12aは、それぞれの上端が拡開片11の脚部22の上壁下面22bに接続され、下方に垂下する。また、縦部12aは、互いに前後方向位置が異なるように配置されており、左側の縦部12a(図2B参照)は脚部22の後方側に位置する一方、右側の縦部12aは脚部22の前方側に位置する。従って、縦部12aを連結する連結部12bは、図2Cに示すように、概ね前後方向に延在する。弾性連結片12は、図2Aに示すように、正面視では全体として上端をやや内側に接近させた略U字状をなし、これにより、2つの縦部12aの下方側がそれぞれ左右に膨出する。また、弾性連結片12は、拡開片11の拡開の際には、縦部12aの曲げおよび連結部12bの捻れにより、U字の両上端が左右に拡がるように弾性変形する。
【0030】
雄部材3は、図3A〜Cにも示すように、略円盤状をなす頭部31と、頭部の略中央から垂下する楔部32と、この楔部32を前後方向に挟み込むように配置された対称形状の一対の脚部33とを有する。
【0031】
頭部31の底面には、左右方向に延在する溝部35が設けられている。溝部35は、図3Bに示すように、その中央に楔部32の上端が接続されるとともに、この楔部32の左右には、留め具1が締結状態にある場合に拡開片11の頭部21が収容される。頭部31の直径は、閉止状態の拡開片11における2つの頭部21の左右幅に略一致するように設定される。
【0032】
楔部32は、雌部材2側に突出する先端壁32aと、先端壁32aの上方に連なる直線部32bと、直線壁32bの上方に連なり、上方に向けて次第に拡幅されるテーパ壁32cとを有する。図3Bに示すように、先端壁32aの角度αは、拡開片11の頭部21に設けられた溝部21a(図2A,C参照)に対応するように設けられており、また、テーパ壁32cの傾斜角度部βは、先端壁32aの角度と同一である。
【0033】
脚部33は、図3Cに示すように、底面視で略円弧状をなすように設けられており、それぞれの一端側には、内側に延出する凸片33aが形成されている。2つの脚部33に挟まれた楔部32の下方のスペースには、留め具1が締結状態にある場合に雌部材2の弾性連結片12が収容される(図1A,B参照)。これにより、弾性連結片12は、拡開片11の脚部22に左右方向を覆われるのみならず、雄部材3の脚部33によって前後方向を覆われて保護される。留め具1が締結状態にある場合、弾性連結片12の下方は、雌部材2の脚部22の底壁22aによって保護される。
【0034】
次に、上記構成の留め具による被締結部材の締結動作の詳細を説明する。図4A,Bは留め具の非締結状態および締結状態を示す断面斜視図である。
【0035】
図4Aに示すように、留め具1は、貫通孔Hの位置が一致して2つの板状部(被締結部材)P1,P2が積層された状態で貫通孔Hに挿通される。このとき、拡開片11は閉止状態にあり、その頭部21が上側の板状部P1の上面に当接する。前述のように、雌部材2と雄部材3とは互いに仮留めされた状態にある。この仮留め状態は、雄部材3の楔部32が雌部材2の溝部21aに嵌入されるとともに、雄部材3の脚部33の内面にそれぞれ設けられたL字片41が雌部材2の脚部22に係合することで実現される。L字片41は、その垂直部41aが2つの拡開片11の括れ部23の間に挟入されるとともに、その水平部41bが拡開片11の脚部22の上壁下面22bを係止する。
【0036】
雌部材2と雄部材3とが仮留め状態にあるため、使用者は、締結を実行する場合に、雄部材3の頭部31を雌部材2側に押し込むのみでよい。使用者が頭部31を押し込むと、図4Bに示すように、雄部材3が雌部材2に向けて下方に移動する。これにより、雄部材3の楔部32が、拡開片11の間に更に進入し、拡開片11を略水平に左右に略平行に移動させて拡開状態とする。このとき、係合凹部24の上下面24a,24bが板状部P1の上面および板状部P2の下面に当接するとともに、側面24cが貫通孔Hの内周面に当接し、積層された板状部P1,P2が安定的に固定される。この場合、係合凹部24の上下面24a,24bの左右方向の長さをより大きく確保することで、貫通孔Hの周縁部との係り代を増大させることが可能である。また、このとき、楔部32の直線壁32bが括れ部23の内側に密接するとともに、テーパ壁32cが雌部材2の溝部21aに嵌入されることで、留め具1の締結状態が安定的に保持される。この場合、括れ部23の周面の曲率を貫通孔の曲率と同様に設定するとよい。
【0037】
また、上記留め具の締結動作の際には、図5A,Bおよび図2Bに示すように、雄部材3の脚部33における凸片33aが、弾性連結片12の縦部12aにおける湾曲部の膨出側に摺接する。これにより、雄部材3が雌部材2に対して相対移動する際には、凸片33aに押圧された弾性連結片12の湾曲部が一旦内側(反膨出側)に変位する。
【0038】
より詳細には、雄部材3が図5Aの初期位置から図5Bの固定位置に移動する際には、凸片33aの摺接位置が湾曲部の中間C(最も膨出した位置)を超えると、変位した湾曲部の弾性力が雄部材3を固定位置側に移動させる補助力として作用する。一方、留め具1の締結が解除されて、雄部材3が図5Bの固定位置から図5Aの初期位置に戻る際には、凸片33aの摺接位置が湾曲部の中間Cを超えると、変位した湾曲部の弾性力が雄部材3を初期位置側に移動させる補助力として作用する。これにより、ユーザは、締結作業および締結解除作業を容易かつ確実に行うことが可能となる。なお、留め具1の締結の解除は、例えば、雌部材2の頭部21が収まる雄部材3の溝部35に所定の工具を挿入して行うことができる。
【0039】
また、凸片33aは、弾性連結片12の外方への拡がりを防止するとともに、締結解除時には弾性連結片12を内方(雄部材3の脚部33と雌部材2の脚部22とで画成されるスペース)に引き込むようにして確実に収容する役割を果たす。これにより、弾性連結片12が被締結部材等と接触して破損することが防止される。
【0040】
このように、雌部材2の拡開片11がそれ自体の弾性変形を必要とすることなく容易に変位可能な構成としたため、被締結部材との係止部の剛性を確保しつつ被締結部材の板状部P1,P2の貫通孔Hに対する適切な係り代を確保することが可能となり、簡易な構成により大きな抜去力を実現することができる。特に、拡開片11が互いに離反するように平行に移動する構成としたため、係り代の調整が容易であり、係合凹部24を被締結部材の両端面に安定的に係合させることができる。
【0041】
また、楔部32の直線壁32bと括れ部23の内面との間に隙間が生じない構成としたため、係合凹部24のクリープ変形を防止して締結状態を安定的に保持可能となるとともに、留め具1の再利用も容易となる。また、従来技術のように脚部を弾性変形させて外方に拡げる構成ではないため、雌部材2の脚部22および雄部材3の脚部33の長さを大きく確保する必要はなくなり、留め具1をコンパクトに構成することができるという利点もある。更に、従来技術に見られる係止部とは異なり、拡開片11は撓ませる必要がないため、材料を適切に選択して容易に係合凹部24の強度を高めることができる。
【0042】
また、拡開片11は、閉止状態で互いに弾性連結片12によって互いに連結されるため、拡開片11の拡開および閉止動作を簡易な構成で実現できるとともに、拡開片11と弾性連結片12とを一体形成することにより、留め具1の部品点数の増大を回避することができる。
【0043】
また、締結状態の留め具1においては、雄部材3の先端側(貫通孔への挿通方向側)は雌部材2の脚部22の底壁22aによって覆われるため、雄部材3が貫通孔への挿通方向と反対側に押されて、被締結部材の締結(即ち、拡開片11の拡開状態)が解除されることを防止することができる。
【0044】
本発明を特定の実施形態に基づいて詳細に説明したが、これらの実施形態はあくまでも例示であって本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。例えば、雌部材が有する拡開片の数や形状は種々の変更が可能であり、弾性連結片による拡開片の連結態様についても変更が可能である。雌部材に形成される係合凹部の形状は、板状部の貫通孔の形状に応じて種々の変更が可能であり、また、被締結部材における板状部の貫通孔は円形に限らず任意の形状に設けることができる。本発明の留め具が適用可能な被締結部材には、少なくとも貫通孔が穿設された板状部を有するものである限りにおいて、任意の装置や器具が該当する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1A】本発明に係る留め具の非締結状態を示す斜視図
【図1B】本発明に係る留め具の締結状態を示す斜視図
【図2A】雌部材の正面図
【図2B】雌部材の側面図
【図2C】雌部材の平面図
【図3A】雄部材の側面図
【図3B】雄部材の縦断面図
【図3C】雄部材底面図
【図4A】留め具の非締結状態を示す断面斜視図
【図4B】留め具の締結状態を示す断面斜視図
【図5A】留め具の非締結状態を示す断面図
【図5B】留め具の締結状態を示す断面図
【符号の説明】
【0046】
1 留め具
2 雌部材
3 雄部材
11 拡開片
12 弾性連結部
12a 縦部
12b 連結部
21 頭部
21a 溝部
22 脚部
22a 底壁(覆い部)
23 括れ部
24 係合凹部
31 頭部
32 楔部
32a 先端壁
32b 直線壁
32c テーパ壁
33 脚部
33a 凸片(規制部)
35 溝部
41 L字片(仮留め部)
H 貫通孔
P1,P2 板状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔が穿設された板状部を有する複数の被締結部材の締結に供される留め具であって、
前記貫通孔の位置が一致して前記複数の被締結部材が積層された状態で当該貫通孔に挿通され、
少なくとも2つの拡開片を有する雌部材と、当該雌部材に対して相対移動自在に設けられるとともに、当該雌部材に係合する楔部を有する雄部材とを備え、
前記拡開片は、前記貫通孔内で拡開した際に、積層された前記被締結部材の両端面に係合する係合凹部を有し、
前記楔部は、前記雌部材に対して前記雄部材が一方側に移動した際に、前記拡開片の間に挿入されて当該拡開片を拡開させることを特徴とする留め具。
【請求項2】
前記雌部材は、前記拡開片を閉止状態で互いに連結するとともに、当該拡開片が拡開する際に弾性変形する弾性連結片を更に有することを特徴とする、請求項1に記載の留め具。
【請求項3】
前記弾性連結片は、前記雄部材の移動方向と略直交する方向に膨出する湾曲部を有し、
前記雄部材は、前記移動の際に前記湾曲部の膨出側に摺接して当該湾曲部を反膨出側に変位させる規制部を有することを特徴とする、請求項2に記載の留め具。
【請求項4】
前記雄部材は、前記楔部を挟み込む一対の脚部を有し、
前記規制部は、前記各脚部における前記楔部と対向する壁からそれぞれ突出して前記弾性連結片を挟み込む一対の凸片からなることを特徴とする、請求項3に記載の留め具。
【請求項5】
前記拡開片は、前記貫通孔への挿通方向側における前記雄部材の少なくとも一部を覆う覆い部を有することを特徴とする、請求項2〜請求項4のいずれかに記載の留め具。
【請求項6】
前記雄部材は、閉止状態にある前記拡開片を前記楔部とともに挟持する仮留め部を有することを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の留め具。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【公開番号】特開2010−19388(P2010−19388A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−182346(P2008−182346)
【出願日】平成20年7月14日(2008.7.14)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】