説明

留置針組立体

【課題】血液の逆流が見易いと共に使用後の安全を確保することができる留置針組立体を提供する。
【解決手段】外筒3と、この外筒3に一体的に設けられている内筒5と、カテーテル7に挿通する内針9を先端部に備え外筒3および内筒5の内側に設けられている針基11とを有する留置針組立体1において、外筒3と内筒5との間には内筒5の長手方向に延びている隙間13が形成されており、使用中においては内針9を通って隙間13に血液が逆流する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内針やカテーテルを備えた留置針組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
図10(b)、(c)は、従来の留置針組立体200の概略構成を示す断面図である。図10(b)は、留置針組立体200の使用前や使用中の状態を示し、図10(c)は、留置針組立体200の使用後の状態を示す。
【0003】
従来の留置針組立体200は、外筒202と内針204を具備した円筒状の針基206と圧縮コイルバネ208とスイッチ片210とを備えて構成されている。
【0004】
そして、使用中に内針204を通って針基206内に血液が流れ込み、血液の逆流を確認することができるようになっている。また、使用後にスイッチ片210が操作されることにより、圧縮コイルバネ208が延びて、内針204と針基206とが図10の右方向に移動し、内針204が外筒202の内部に入り込み、安全を確保することができるようになっている。
【0005】
なお、前記従来の留置針組立体に関する特許文献としてたとえば特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平10−52499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記従来の留置針組立体200では、外筒202と針基206とを通して血液の逆流を見ることになるので、血液の逆流が見えにくい場合があるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、血液の逆流が見易いと共に使用後の安全を確保することができる留置針組立体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、外筒と、この外筒に一体的に設けられている内筒と、カテーテルに挿通する内針を先端部に備え前記外筒および前記内筒の内側に設けられている針基とを有する留置針組立体において、前記外筒と前記内筒との間には前記内筒の長手方向に延びている隙間が形成されており、使用中においては前記内針を通って前記隙間に血液が逆流するように構成されている留置針組立体である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、外筒と、この外筒に一体的に設けられている内筒と、カテーテルに挿通する内針を先端部に備え前記外筒および前記内筒の内側に設けられている針基とを有する留置針組立体において、前記外筒と前記内筒との間には前記内筒の長手方向に延びている隙間が形成されており、使用中においては前記外筒の先端部から突出している内針と前記針基の内部とを通って前記隙間に血液が逆流し、使用後においては前記内針が前記外筒の内部に納まるように構成されている留置針組立体である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の留置針組立体において、前記隙間は、血液の逆流に必要な容積を備えた大きさである留置針組立体である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、円筒状の外筒と、前記外筒の基端部の近くから前記外筒の先端部の近くにわたって前記外筒の内側に円筒状の隙間が形成されるように、また、基端部が前記外筒の基端部から突出し、先端部が前記外筒の内側であって前記隙間よりも前記外筒の先端部側に位置するように、前記外筒の内側で前記外筒に一体的に設けられている円筒状の内筒と、カテーテルに挿通する内針を先端部に備え、前記内筒の先端部側であって前記内筒の内側で前記内筒に係合し、前記内筒に対して前記内筒の長手方向に移動自在になっていると共に、前記隙間よりも短く形成されている円筒状の針基と、前記針基が前記内筒の基端部側に移動するように前記針基を付勢する付勢手段と、前記針基を前記内筒の先端部側に係止するためのスイッチ片とを有し、使用前においては、前記針基が前記外筒の先端部側に位置しており、前記内針が前記外筒の先端から延出しており、使用中においては、前記延出している内針の内部および前記針基の内部の空間を通って、前記隙間に血液が流れ込むように構成されており、使用後に前記スイッチ片が操作されると、前記付勢手段により前記針基が前記内筒の基端部の近くまで移動し、前記内針が前記外筒の内部に納まるように構成されている留置針組立体である。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の留置針組立体において、前記針基には、この針基の内側と外側とを互いにつなぐ貫通孔が設けられており、前記内筒には、この内筒の内側と外側とを互いにつなぐ貫通孔が設けられており、使用中に前記針基の貫通孔と前記内筒の貫通孔とが互いに重なって連通していることにより、血液が前記針基の内部の空間から前記隙間に流れるようになっている留置針組立体である。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の留置針組立体において、前記外筒の内壁面、前記内筒の外壁面の少なくともいずれかに、前記隙間を前記貫通孔側に位置する部位と前記貫通孔とは反対側に位置する部位とに分けるリブが設けられている留置針組立体である。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載の留置針組立体において、使用中に、前記針基と前記内筒との係合部から、前記針基よりも基端部側に存在する前記内筒内に血液が漏れることを防止するために、前記内筒の先端部の内側に設けられたテーパ面と前記針基の基端部の外側に設けられたテーパ面とが所定の圧力をもって互いに面接触している構成であると共に、前記スイッチ片は、操作されることにより前記外筒に対して相対的に移動するように前記外筒に設けられており、前記スイッチ片の移動によって前記針基に力が加わり、前記針基が基端部側に僅かに移動し、前記各テーパ面が互いに離反するように構成されている留置針組立体である。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の留置針組立体において、前記針基の貫通孔と前記内筒の貫通孔とが、前記各テーパ面が設けられている部位に設けられている留置針組立体である。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の留置針組立体において、前記スイッチ片が設けられている部位と前記内筒の先端部との間における前記外筒の部位には、前記針基が貫通している蓋部が設けられており、使用中における前記内筒の先端部と前記外筒の蓋部との係合部からの血液の漏れを防止するために、前記内筒の先端部と前記外筒の蓋部との間にシール部が設けられている留置針組立体である。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項7〜請求項9のいずれか1項に記載の留置針組立体において、針基の軸方向に対して斜めに傾いて前記針基に設けられている切り欠きと、前記スイッチ片に設けられ前記切り欠きに係合している係合部とにより、前記スイッチ片が移動すると前記各テーパ面が互いに離反する構成である留置針組立体である。
【0018】
請求項11に記載の発明は、請求項7〜請求項9のいずれか1項に記載の留置針組立体において、前記外筒に設けられているピニオンと、このピニオンに係合するように前記スイッチ片に設けられているラックと、前記ピニオンに係合するように前記針基に設けられているラックとにより、前記スイッチ片が移動すると前記各テーパ面が互いに離反する構成である留置針組立体である。
【0019】
請求項12に記載の発明は、請求項4から請求項11のいずれか1項に記載の留置針組立体において、前記付勢手段は、前記外筒の先端部側の内側であって前記針基の中間部の外側で、前記外筒と前記針基との間に設けられている圧縮コイルバネで構成されており、使用前および使用中においては、前記圧縮コイルバネは縮んでおり、使用後においては、前記圧縮コイルバネが伸びるように構成されている留置針組立体である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、血液の逆流が見易いと共に使用後の安全を確保することができる留置針組立体を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る留置針組立体1の概略構成を示す断面図であり、図2は、留置針組立体1の内筒5の概略構成を示す斜視図であり、図3は、図2におけるIII−III断面を示す図である。
【0022】
留置針組立体(留置針ハブ)1は、外筒(カバー)3と、この外筒3に一体的に設けられている内筒(インナー)5と、カテーテル7に挿通する内針9を先端部に備えた針基11とを備えて構成されている。針基11は、外筒3および内筒5の内側に設けられている。
【0023】
外筒3と内筒5との間には内筒5の長手方向に長く延びている筒状の隙間13が形成されている。そして、使用前においては内針9が外筒3の先端部から突出しており、使用中(内針9の先端とカテーテル7の先端とを血管に刺したとき)においては外筒3の先端部から突出している内針9と針基11の内部とを通って隙間13に血液が逆流し、使用後においては内針9が外筒3の内部に納まるように構成されている(図7参照)。
【0024】
隙間13は、血液の逆流に必要な容積(内針9の先端が血管内に存在していることを容易に確認するために必要かつ十分な容積)を備えた大きさになっている。
【0025】
なお、詳しくは後述するが、針基11は、従来のように血液の逆流に必要な容積を備える必要がなく、単に血液が通過すればよいので、従来よりも小さく形成されている。
【0026】
ここで、血液の逆流に必要な容積についてより詳しく説明する。隙間13の容積が小さい場合であっても血液の逆流、すなわち、血管内から内針9や隙間13への血液の流出は生じる。しかし、内針9を血管に正しく刺したつもりでも内針9の先端が血管を通過して血管の外側に突き出てしまう場合がごく稀にある。この場合、血液は一時的に逆流するが、その後の血液の逆流はすぐに停止する。隙間13の容積が小さすぎると、容積が小さいがゆえに血液の逆流が止まったのか、内針9の先端が血管の外の突き出たがゆえに血液の逆流が止まったのかを判別することが難しい。
【0027】
したがって、内針9を血管に刺した後に内針9の先端が血管内に留まっているか否かを判断するには、隙間13がある程度の容積、すなわち、血液の逆流に必要な適宜の容積を備えている必要がある。一方、隙間13の容積が大きすぎると、留置針組立体1が大型化し、取り扱いや保管が不便であると共に、製作時に材料の無駄が発生する。
【0028】
ここで、留置針組立体1についてより詳しく説明する。
【0029】
留置針組立体1の外筒3や内筒5は円筒状に形成されている。内筒5は、外筒3の長手方向の基端部の近くから外筒3の長手方向の先端部に近くにわたって外筒3の内側に円筒状の隙間13が形成されるように、外筒3の内側でかつ外筒3と同軸で外筒3に嵌合され外筒3に一体的に設けられている。なお、内筒5の長手方向の基端部が外筒3の長手方向の基端部から突出し、内筒5の長手方向の先端部が外筒3の内側であって隙間13よりも外筒3の長手方向の先端部側に位置している。
【0030】
針基11は、円筒状で隙間13よりも短く形成され、カテーテル7に挿通する内針(細い金属製の筒状の内針)9を先端部に備えていると共に、内部に空間(内針9の内部と連通している空間)15を備えている。また、針基11は、内筒5の内側における内筒5の先端部側で内筒5に係合し、すなわち、内筒5の長手方向の先端部からこの先端部の近傍の部位にわたり内筒5の内側で内筒5に係合し、このように係合しつつ内筒5に対して内筒5の長手方向に移動自在になっている。
【0031】
なお、針基11は、外筒3の内側における先端部側でも外筒3に係合している。すなわち、針基11は、外筒3の長手方向の先端部からこの先端部の近傍の部位にわたり外筒3に係合していることになる。また、針基11の基端部側が内筒5に係合し、針基11の先端部側が外筒3に係合していることになる。
【0032】
また、留置針組立体1には、針基11が内筒5の基端部側に移動するように針基11を付勢する付勢手段17と、針基11を内筒5の先端部側に係止するためのスイッチ片19とが設けられている。
【0033】
そして、前述したように、使用前においては、針基11が外筒3の先端部側に位置しており、内針9が外筒3の先端から延出しており、使用中においては、延出している内針9の内部および針基11の内部の空間15を通って、隙間13に血液が流れ込むように(逆流するように)構成されており、使用後にスイッチ片19が操作されると、付勢手段17により針基11が内筒5の基端部の近くまで移動し、内針9が外筒3の内部に納まるように構成されている。
【0034】
なお、外筒3、内筒5、針基11は透明体(たとえば透明な合成樹脂)で構成されている。また、すでに理解されるように、内針9、内筒5、外筒3、針基11の長手方向における先端部側、基端部側、および長手方向の軸心は互いに一致している。
【0035】
また、針基11の長手方向の基端部側には、この針基11の内側と外側とを互いにつなぐ貫通孔21が設けられており、内筒5の長手方向の先端部側には、この内筒の内側と外側とを互いにつなぐ貫通孔23が設けられている。そして、使用中に針基11の貫通孔21と内筒5の貫通孔23とが互いに重なって連通していることにより、針基11の内部の空間15から隙間13に血液が流れ込むようになっている。
【0036】
なお、針基11の基端部には、キャップ25が設けられており、このキャップ25が設けられていることによって、針基11内の空間15を通過する血液や各貫通孔21、23を通過する血液が、内筒5内の空間27に漏れ出ないようになっている。
【0037】
また、針基11の外周であって内筒5の先端部には、円環状のパッキン29が設置されており、このパッキン29が設置されていることにより、隙間13内に存在する血液や各貫通孔21、23を通過する血液が、スイッチ片19が設けられている部位で針基11の外側に漏れ出ないようになっている。
【0038】
また、内筒5の基端部側は、前述したように外筒3の基端から突出しており、内筒5の外周であって外筒3の基端部には、円環状のフィルター31が設けられている。このフィルター31は、空気を通すが血液は通さない部材を構成されている。したがって、このフィルター31が設けられていることにより、隙間13内のエアー抜きがされ、隙間13内に血液が流れ込みやすくなっている。内筒5の基端部は、キャップ33でふさがれている。
【0039】
また、図2や図3に示すように、内筒5の円柱側面形状の外壁面(外筒3の内壁面と対向し隙間13を形成している面)には、隙間13を各貫通孔21、23側に位置する半円筒状の部位(円筒をこの軸を含む平面で2つに分割したときに形成される半円筒状の部位)13Aと各貫通孔21、23とは反対側に位置する半円筒状の部位13Bとに分けるリブ35A、35Bが設けられている。
【0040】
より詳しく説明すると、リブ35Aは、内筒5の外周で貫通孔21からほぼ90°ずれた位置で内筒5の長手方向の先端部から内筒5の長手方向の中間部にわたって延びて内筒5に一体的に形成されている。また、リブ35Bは、内筒5の軸と各貫通孔21の中心とを通る平面に対して、リブ35Aとは対称に設けられている。なお、内筒5が外筒3に設けられた状態では、各リブ35A、35Bの先端は外筒3の内壁に接触している。
【0041】
このように構成されていることにより、隙間13は、内筒5の先端部側では、半筒状の2つの部位13A、13Bに仕切られており、内筒5の基端部側では、円筒状に形成されている。
【0042】
したがって、各貫通孔21、23を逆流してきた血液は、まず、各貫通孔21、23側の隙間13Aを流れ、続いて、内筒5の基端部側の円筒状の部位を流れるようになっている。なお、各リブ35A、35Bを、外筒3に設けた構成であってもよい。
【0043】
付勢手段17は、外筒3の先端部側の内側であって針基11の長手方向の中間部の外側で、外筒3と針基11との間に設けられている圧縮コイルバネ37で構成されており、留置針組立体1の使用前および使用中においては、圧縮コイルバネ37は縮んでおり、使用後においては、圧縮コイルバネ37が伸びるように構成されている。
【0044】
次に、スイッチ片19等について詳しく説明する。
【0045】
図4は、図1におけるIV−IV断面を示す図であり、図5は、スイッチ片19を押し込んだ状態を示す図であり、図6は、図5におけるVI−VI断面を示す図である。
【0046】
さらには、図4(a)は、スイッチ片19が押し込まれていない状態におけるスイッチ片19と針基11との関係を示してあり、図4(b)は、スイッチ片19の断面図であり、図4(c)は、内筒5の断面図である。図1に示す使用前(使用中)の状態では、スイッチ片19は押し込まれていない。
【0047】
針基11の長手方向の中間部(スイッチ片19と係合している部位;圧縮コイルバネ37が設けられている部位よりも基端部側の中間部)の外周には、図4(c)に示すように、2面幅を形成する各切り欠き39A、39Bが設けられている。また、スイッチ片19における針基11との係合部には、図4(b)に示すように、各切り欠き39A、39Bの2面幅よりも僅かに大きな幅の部位41を備えた貫通孔43が形成されている。貫通孔43は、前記部位41を除いては、円形状に形成されている。
【0048】
そして、スイッチ片19が押し込まれていない状態においては、図4(a)に示すように、部位41に内筒5が係合し、各部位45A、45Bで針基11がスイッチ片19に当接し、スイッチ片19がストッパーになり、付勢手段17で付勢されているにもかかわらず、針基11が図1に示す状態から移動することができないようになっている。
【0049】
留置針組立体1の使用後に、図5や図6に示すようにスイッチ片19を押し込むと、スイッチ片19の貫通孔43の円形状部位と針基11とが、図6に示すように互いに重なり、ストッパーが非存在の状態になり、付勢手段17の付勢力によって、内針9が外筒3内に隠れるまで(図7参照)針基11が図1の右方向に移動するようになっている。
【0050】
なお、使用前の安全確保や衛生状態確保のため、外筒3の先端部には、内針9やカテーテル7を覆うカテーテル内針用カバー47が着脱自在に設けられている。
【0051】
次に、留置針組立体1を使用する際の動作について説明する。
【0052】
使用前においては、図1に示すように、内針9が外筒3の先端部から延出しており、カテーテル内針用カバー47が装着されているものとする。
【0053】
この状態で、カテーテル内針用カバー47を取り外し、内針9を皮膚に刺し(穿刺し)内針9の先端とカテーテル7の先端とが血管内に位置するようにする。このようにすると、血液は内針9の内部、針基11の空間15、各貫通孔21、23を通り、隙間13内に逆流する。
【0054】
血液の逆流が確認できたら、たとえば、カテーテル7を必要な深さまで進める。続いて、スイッチ片19を押しカテーテル7を残したまま、図7(内針9を外筒3の内部に収納した状態を示す図)に示すように、内針9を外筒3の内部に収納する。この収納により、内針9が皮膚から抜き取られる。
【0055】
留置針組立体1によれば、使用中において隙間13に血液が逆流するようになっているので、外筒3のみを通して血液の逆流を見ることができ、血液の逆流が見易くなっている。
【0056】
また、留置針組立体1によれば、使用後においては内針9が外筒3の内部に納まるようになっているので、使用後の安全を確保することができる。
【0057】
また、留置針組立体1によれば、隙間13が、血液の逆流に必要な容積を備えた大きさなので、使用中に内針9の先端とカテーテル7の先端とが血管内に存在していることを確認することができるようになっている。
【0058】
さらに、針基11ではなく、隙間13が血液の逆流に必要な容積を備えているので、留置針組立体1の全長を従来よりも短くすることができる。
【0059】
より詳しく説明すると、図10(b)に示すように、従来の留置針組立体200では、針基206が血液の逆流に必要な容積を内部に備える必要があるので、針基206を長くしなければならない。また、内針204と針基206とが一体的に構成されており外筒202に対して相対的に移動するようになっているので、使用後に内針204を外筒202内に収容するためには、外筒202の長さを内針204と針基206との長さよりも長くしなければならない。
【0060】
一方、留置針組立体1によれば、図1や図10(a)に示すように、隙間が血液の逆流に必要な容積を備えており針基は前記容積を備える必要がないので、針基を短くすることができ、したがって、使用後に内針を外筒内に収容するように構成しても、針基を短くしたぶんだけ、外筒の長さを短くすることができる。図10の寸法Lだけ、従来のものよりも短くすることができ、小型で取り扱いやすくなっている。
【0061】
さらに、留置針組立体1によれば、隙間13を各貫通孔21、23側に位置する部位13Aと各貫通孔21、23とは反対側に位置する部位13Bとに分けるリブ35A、35Bが設けられているので、逆流してきた血液が外筒3の裏側(内針を刺された人の体側)にまわることがなく、逆流してきた血液を見やすくなっている。
【0062】
[第2の実施形態]
図8は、本発明の第2の実施形態に係る留置針組立体1aの概略構成を示す図であり、図9は、本発明の第2の実施形態に係る留置針組立体1aの内筒65やスイッチ片63の概略構成を示す図である。
【0063】
第2の実施形態に係る留置針組立体1aは、針基61と内筒65との間のシールやスイッチ片63の方式が、第1の実施形態の係る留置針組立体1とは異なり、その他の点は、第1の実施形態の係る留置針組立体1とほぼ同様に構成されほぼ同様の効果を奏する。
【0064】
すなわち、留置針組立体1aは、使用中に、針基61と内筒65との係合部から、針基11よりも基端部側に存在する内筒65内に血液が漏れることを防止するために、内筒65の先端部の内側に設けられたテーパ面67と針基61の基端部の外側に設けられたテーパ面69とが所定の圧力をもって互いに面接触している構成になっている。
【0065】
また、スイッチ片63は、操作されることにより(たとえば押し込まれることにより)外筒3に対して相対的に移動するように外筒3に設けられており、スイッチ片63の移動によって針基61に力が加わり、針基61が基端部側に僅かに移動し、各テーパ面67、69が互いに離反するように構成されている。
【0066】
より詳しくは、針基61の外周には、針基61の軸方向に対して斜めに傾いている切り欠き71が形成されており、スイッチ片63には、切り欠き71に係合する係合部73が斜めに設けられている。そして、スイッチ片63を矢印AR1の方向に押し込むと、斜めの切り欠き71や斜めの係合部73により、針基61を矢印AR3の方向に強制的に移動する力が働き、各テーパ面67、69同士が離反し、この離反後、付勢手段17により針基61が、第1の実施形態の場合と同様に移動する。
【0067】
各テーパ面67、69同士が互いに離反するように、強制的に力を加えているので、各テーパ面67、69が強固に面接触していても、針基61を移動させることができる。
【0068】
[第3の実施形態]
図11は、本発明の第3の実施形態に係る留置針組立体1bの概略構成を示す図である。
【0069】
第3の実施形態に係る留置針組立体1bは、テーパ部を用いて、針基11の貫通孔21と内筒5の貫通孔23との重なっている部位からの、逆流してきた血液の漏れを防止している等の点が、第1の実施形態の係る留置針組立体1や第2の実施形態の係る留置針組立体1aとは異なり、その他の点は、前記各留置針組立体1、1aとほぼ同様に構成されほぼ同様の効果を奏する。
【0070】
すなわち、第3の実施形態に係る留置針組立体1bでは、針基11の貫通孔21と内筒5の貫通孔23とが、各テーパ面67b、69bが設けられている部位に設けられている。
【0071】
また、スイッチ片19が設けられている部位と内筒5の先端部との間における外筒3の部位には、針基11が貫通している蓋部81が設けられており、使用中における内筒5の先端部と外筒3の蓋部81との係合部からの血液の漏れることを防止するために(内筒5の先端部における隙間13からの血液の漏れを防止するために)、内筒5の先端部と外筒3の蓋部81との間にシール部83が設けられている。
【0072】
シール部83は、蓋部81に設けられているテーパ面85と、このテーパ面85に面接触するように内筒5に設けられているテーパ面87とにより構成されている。なお、各テーパ面85、87は、たとえば超音波溶接により互いが固定されている。
【0073】
留置針組立体1bによれば、針基11の貫通孔21と内筒5の貫通孔23とが各テーパ面67b、69bが設けられている部位に設けられているので、針基11の貫通孔21と内筒5の貫通孔23とが互いに重なっている部位からの血液の漏れを確実に防止することができる。すなわち、針基11よりも基端部側に存在する内筒5内に血液が漏れることを防止できるだけでなく、内筒5の先端部側への血液の漏れも防止することができる。
【0074】
また、留置針組立体1bによれば、内筒5の先端部と外筒3の蓋部81との間にシール部83が設けられているので、図1に示すパッキン29を使用しなくても、血液の漏れを防ぐことができ、留置針組立体の構成を簡素化することができる。
【0075】
[第4の実施形態]
図12は、本発明の第4の実施形態に係る留置針組立体1cの概略構成を示す図である。
【0076】
第4の実施形態に係る留置針組立体1cは、ラックとピニオンとを用いて、針基11のテーパ面と内筒5のテーパ面とを互いに離反するように構成されている点が、第2の実施形態の係る留置針組立体1aや第3の実施形態の係る留置針組立体1bとは異なり、その他の点は、前記各留置針組立体1a、1bとほぼ同様に構成されほぼ同様の効果を奏する。
【0077】
すなわち、第4の実施形態に係る留置針組立体1cでは、外筒3に回転自在に設けられているピニオン91と、このピニオン91に係合するようにスイッチ片19に設けられているラック93と、ピニオン91に係合するように針基11に設けられているラック95とにより、スイッチ片19が移動すると各テーパ面67、69(67b、69b)が互いに離反するように構成されている。
【0078】
より詳しく説明すると、図12(a)で示す状態(スイッチ片19を押す前の状態)では、ピニオン91とラック93とは互いに噛み合っており、ピニオン91とラック95とは互いに噛み合っている。この状態で、スイッチ片19を図12(b)の矢印AR5の方向に押し込むと、ピニオン91は矢印AR7の方向に回転し、針基11は図12(c)に矢印AR9で示す方向に移動し、各テーパ面67、69(67b、69b)が互いに離反するようになっている。
【0079】
なお、図12(c)は、スイッチ片19を押し込み終えた状態を示しており、この状態では、ピニオン91と針基11のラック95とは互いが噛み合っていない。
【0080】
留置針組立体1cでは、スイッチ片19を押し込むことにより、各テーパ面67、69(67b、69b)が互いに離反するようにしているが、図13(留置針組立体1cの変形例を示す図)に示すように、スイッチ片19を、内筒や外筒の軸方向に移動することにより各テーパ面67、69(67b、69b)が互いに離反するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る留置針組立体の概略構成を示す断面図である。
【図2】留置針組立体の内筒の概略構成を示す斜視図である。
【図3】図2におけるIII−III断面を示す図である。
【図4】図1におけるIV−IV断面を示す図である。
【図5】スイッチ片を押し込んだ状態を示す図である。
【図6】図5におけるVI−VI断面を示す図である。
【図7】内針を外筒の内部に収納した状態を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る留置針組立体の概略構成を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る留置針組立体の内筒やスイッチ片の概略構成を示す図である。
【図10】従来の留置針組立体の概略構成を示す断面図、本発明の実施形態に係る留置針組立体の概略構成を示す断面図である。
【図11】本発明の第3の実施形態に係る留置針組立体の概略構成を示す図である。
【図12】本発明の第4の実施形態に係る留置針組立体の概略構成を示す図である。
【図13】第4の実施形態に係る留置針組立体の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0082】
1、 1a、1b、1c 留置針組立体
3 外筒
5 内筒
7 カテーテル
9 内針
11 針基
13 隙間
17 付勢手段
19 スイッチ片
21、23 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒と、この外筒に一体的に設けられている内筒と、カテーテルに挿通する内針を先端部に備え前記外筒および前記内筒の内側に設けられている針基とを有する留置針組立体において、
前記外筒と前記内筒との間には前記内筒の長手方向に延びている隙間が形成されており、使用中においては前記内針を通って前記隙間に血液が逆流するように構成されていることを特徴とする留置針組立体。
【請求項2】
外筒と、この外筒に一体的に設けられている内筒と、カテーテルに挿通する内針を先端部に備え前記外筒および前記内筒の内側に設けられている針基とを有する留置針組立体において、
前記外筒と前記内筒との間には前記内筒の長手方向に延びている隙間が形成されており、使用中においては前記外筒の先端部から突出している内針と前記針基の内部とを通って前記隙間に血液が逆流し、使用後においては前記内針が前記外筒の内部に納まるように構成されていることを特徴とする留置針組立体。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の留置針組立体において、
前記隙間は、血液の逆流に必要な容積を備えた大きさであることを特徴とする留置針組立体。
【請求項4】
円筒状の外筒と;
前記外筒の基端部の近くから前記外筒の先端部の近くにわたって前記外筒の内側に円筒状の隙間が形成されるように、また、基端部が前記外筒の基端部から突出し、先端部が前記外筒の内側であって前記隙間よりも前記外筒の先端部側に位置するように、前記外筒の内側で前記外筒に一体的に設けられている円筒状の内筒と;
カテーテルに挿通する内針を先端部に備え、前記内筒の先端部側であって前記内筒の内側で前記内筒に係合し、前記内筒に対して前記内筒の長手方向に移動自在になっていると共に、前記隙間よりも短く形成されている円筒状の針基と;
前記針基が前記内筒の基端部側に移動するように前記針基を付勢する付勢手段と;
前記針基を前記内筒の先端部側に係止するためのスイッチ片と;
を有し、使用前においては、前記針基が前記外筒の先端部側に位置しており、前記内針が前記外筒の先端から延出しており、使用中においては、前記延出している内針の内部および前記針基の内部の空間を通って、前記隙間に血液が流れ込むように構成されており、使用後に前記スイッチ片が操作されると、前記付勢手段により前記針基が前記内筒の基端部の近くまで移動し、前記内針が前記外筒の内部に納まるように構成されていることを特徴とする留置針組立体。
【請求項5】
請求項4に記載の留置針組立体において、
前記針基には、この針基の内側と外側とを互いにつなぐ貫通孔が設けられており、前記内筒には、この内筒の内側と外側とを互いにつなぐ貫通孔が設けられており、使用中に前記針基の貫通孔と前記内筒の貫通孔とが互いに重なって連通していることにより、血液が前記針基の内部の空間から前記隙間に流れるようになっていることを特徴とする留置針組立体。
【請求項6】
請求項5に記載の留置針組立体において、
前記外筒の内壁面、前記内筒の外壁面の少なくともいずれかに、前記隙間を前記貫通孔側に位置する部位と前記貫通孔とは反対側に位置する部位とに分けるリブが設けられていることを特徴とする留置針組立体。
【請求項7】
請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載の留置針組立体において、
使用中に、前記針基と前記内筒との係合部から、前記針基よりも基端部側に存在する前記内筒内に血液が漏れることを防止するために、前記内筒の先端部の内側に設けられたテーパ面と前記針基の基端部の外側に設けられたテーパ面とが所定の圧力をもって互いに面接触している構成であると共に、前記スイッチ片は、操作されることにより前記外筒に対して相対的に移動するように前記外筒に設けられており、前記スイッチ片の移動によって前記針基に力が加わり、前記針基が基端部側に僅かに移動し、前記各テーパ面が互いに離反するように構成されていることを特徴とする留置針組立体。
【請求項8】
請求項7に記載の留置針組立体において、
前記針基の貫通孔と前記内筒の貫通孔とが、前記各テーパ面が設けられている部位に設けられていることを特徴とする留置針組立体。
【請求項9】
請求項8に記載の留置針組立体において、
前記スイッチ片が設けられている部位と前記内筒の先端部との間における前記外筒の部位には、前記針基が貫通している蓋部が設けられており、使用中における前記内筒の先端部と前記外筒の蓋部との係合部からの血液の漏れを防止するために、前記内筒の先端部と前記外筒の蓋部との間にシール部が設けられていることを特徴とする留置針組立体。
【請求項10】
請求項7〜請求項9のいずれか1項に記載の留置針組立体において、
針基の軸方向に対して斜めに傾いて前記針基に設けられている切り欠きと、前記スイッチ片に設けられ前記切り欠きに係合している係合部とにより、前記スイッチ片が移動すると前記各テーパ面が互いに離反する構成であることを特徴とする留置針組立体。
【請求項11】
請求項7〜請求項9のいずれか1項に記載の留置針組立体において、
前記外筒に設けられているピニオンと、このピニオンに係合するように前記スイッチ片に設けられているラックと、前記ピニオンに係合するように前記針基に設けられているラックとにより、前記スイッチ片が移動すると前記各テーパ面が互いに離反する構成であることを特徴とする留置針組立体。
【請求項12】
請求項4から請求項11のいずれか1項に記載の留置針組立体において、
前記付勢手段は、前記外筒の先端部側の内側であって前記針基の中間部の外側で、前記外筒と前記針基との間に設けられている圧縮コイルバネで構成されており、使用前および使用中においては、前記圧縮コイルバネは縮んでおり、使用後においては、前記圧縮コイルバネが伸びるように構成されていることを特徴とする留置針組立体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2007−296022(P2007−296022A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−124886(P2006−124886)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(596183321)メディキット株式会社 (8)
【Fターム(参考)】