説明

畜糞尿のリサイクルプラント、畜糞尿のリサイクルシステム、畜糞尿のリサイクル方法

【課題】養鶏場や養豚場などの畜産場から回収される有機廃棄物を、効率的な燃焼装置を用いて完全に燃焼させて無機廃棄物を生成し、この無機廃棄物を肥料や水質改質剤として畜産場へ提供する、完全循環を可能とする畜糞尿のリサイクルプラントを提供する。
【解決手段】畜糞尿を含む有機廃棄物を回収する第1回収手段3と、有機廃棄物を、燃焼剤として、所定の燃焼装置6によって燃焼させる燃焼手段5と、燃焼工程の結果で得られる無機廃棄物を、肥料および水質改質剤の少なくとも一つとして、回収する第2回収手段7と、を備え、燃焼装置6は、同軸で回転可能な外筒と内筒との二重構造を有する本体筒と、筒体の先端に接続して、燃焼剤を燃焼させる燃焼筒と、外筒と内筒との隙間を利用して、内筒および燃焼筒の内部空間に、空気を供給する通風路と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養鶏場や養豚場などの畜産場から回収される有機廃棄物を、効率的な燃焼装置を用いて完全に燃焼させて無機廃棄物を生成し、この無機廃棄物を肥料や水質改質剤として畜産場,農場、家庭菜園へ提供する、完全循環を可能とする糞尿のリサイクルプラント、畜糞尿のリサイクルシステム、畜糞尿のリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱量を得るために、種々の燃焼剤を燃焼させる燃焼装置が提案されている。近年の化石燃料の減少や化石燃料の燃焼によって発生する有害ガスの未然防止のため、バイオマスなどの有機廃棄物を燃焼剤とすることが求められている。
【0003】
燃焼剤として注目されているこのような有機廃棄物は、例えば、畜産場から出る家畜の糞尿などを主成分とするものも多い。これら畜糞尿は、悪臭公害をもたらすため、適切な処理を行うことが求められている。
【0004】
一方で、廃棄物をごみや不要物として廃棄するのではなく、種々の用途に役立てながら循環させるリサイクルシステムを、社会の様々な場所に構築することが求められている。
【0005】
このようなリサイクル社会の構築を目的として、畜産場から生じる畜糞尿のような有機廃棄物は、熱量を得るための燃焼剤として活用されることが期待されている。但し、燃焼剤として利用されると有機廃棄物は無機廃棄物となってしまう。この無機廃棄物がそのまま埋め立て地などで処理されると、ごみ減量につながらず、完全なリサイクルシステムの実現ができない。
【0006】
他方では、種々提案されている廃棄物のリサイクルシステムは、コストや社会的認知を得えることが未だ難しく、適切なビジネスとして成立できない問題もある。このようにビジネスとしての成立性が見込めなければ、折角のリサイクルシステムが社会に定着できない問題がある。このような状況を鑑みると、廃棄物の出発点と帰結点とが一致するリサイクルシステムは、コストや社会的理解の問題を解決できる可能性が高い。出発点にとっても帰結点にとっても、有用性が高く、経済的利益を確保できる可能性が高まるからである。
【0007】
このような状況の中で、廃棄物を焼却しつつリサイクルする技術が提案されている(例えば、特許文献1〜5参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−175382号公報
【特許文献2】特開2005−98585号公報
【特許文献3】特開2006−8424号公報
【特許文献4】特開2002−272293号公報
【特許文献5】特開2004−168589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1は、ダムの漂着物を、「大きな物」と「小さな物」とに分別し、分別されたそれぞれの漂着物を家畜用、肥料、ごみ処理、に分別してリサイクルする技術を開示する。
【0010】
しかしながら、特許文献1は、廃棄物の出発点と帰結点が異なり、完全な循環を実現することができない。また、漂着物をそのまま分別するだけであるので、有機廃棄物のままで、再利用が困難である問題もある。
【0011】
特許文献2は、畜糞尿を900℃以上の温度で燃焼させて燃焼灰を得、この燃焼灰を肥料として再利用する技術を開示する。
【0012】
しかしながら、どのような燃焼によって、肥料として再利用できる燃焼灰を得るのかの具体的な開示がない。加えて、廃棄物を燃焼させる際に所謂灰の状態にしてしまうので、燃焼灰が大気中に拡散されてしまい、余計な公害を生じさせる問題を有する。また、燃焼灰の再利用の具体的態様への言及が不十分である問題もある。
【0013】
特許文献3は、牛糞などの畜産廃棄物を効率的に燃焼させるため、スクリューによって牛糞を細分化しながら、燃焼させる技術を開示する。
【0014】
しかしながら、燃焼させて得られる灰の再利用についての十分な開示がなく、完全循環型のリサイクルシステムが実現できない問題がある。加えて、細分化された牛糞の燃焼によって、燃焼灰が大気に散乱する問題も生じる。加えて、再利用するためには、牛糞の完全な燃焼が必要であるが、これを実現する技術についての開示はない。
【0015】
特許文献4は、鶏糞を運搬し、破砕して乾燥させ、乾燥した鶏糞を燃焼させ、燃焼により得られる処理物を肥料として再利用する、リサイクルシステムを開示する。
【0016】
しかしながら、肥料として再利用できるために必要な十分な燃焼についての開示はない。このため、燃焼された鶏糞が、肥料として再利用できるものになっていない問題があり、再利用側にとっての有用性がなく、社会的認知を得るリサイクルシステムが実現できない。
【0017】
特許文献5は、ごみを焼却して焼却灰を肥料として再利用する技術を開示する。
【0018】
しかしながら、廃棄物の出発点と帰結点が異なり、焼却灰を再利用のために購入する第3者を確保することが難しい問題がある。廃棄物を購入し、燃焼処理するコストが、肥料としての焼却灰に上乗せされることで、再利用がビジネスとして成立できない問題もある。
【0019】
加えて、特許文献5は、肥料として再利用できるだけの十分な燃焼を実現する技術を開示していない。
【0020】
以上のように、従来技術は、次のような問題を有している。
【0021】
(1)廃棄物の出発点と帰結点が一致しておらず、再利用の対象となる灰などが、有用性・経済性を確保して再利用できない。所謂、循環型のリサイクルが実現できない。
【0022】
(2)有用性のある肥料となる燃焼が実現できない。
【0023】
(3)燃焼の際に、大気への飛散物や有害ガスなどの、二次的問題を引き起こす。
【0024】
(4)燃焼剤としての使い勝手および再利用する肥料としての使い勝手が悪い。
【0025】
(5)肥料以外の使い道が想定されていない。
【0026】
本発明は、上記(1)〜(5)の問題を解決しつつ、養鶏場や養豚場などの畜産場から回収される有機廃棄物を、効率的な燃焼装置を用いて完全に燃焼させて無機廃棄物を生成し、この無機廃棄物を肥料や水質改質剤として畜産場へ提供する、完全循環を可能とする畜糞尿のリサイクルプラント、畜糞尿のリサイクルシステム、畜糞尿のリサイクル方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記課題に鑑み、本発明の畜糞尿のリサイクルプラントは、畜糞尿を含む有機廃棄物を回収する第1回収手段と、有機廃棄物を、燃焼剤として、所定の燃焼装置によって燃焼させる燃焼手段と、燃焼工程の結果で得られる無機廃棄物を、肥料および水質改質剤の少なくとも一つとして、回収する第2回収手段と、を備え、燃焼装置は、同軸で回転可能な外筒と内筒との二重構造を有する本体筒と、筒体の先端に接続して、燃焼剤を燃焼させる燃焼筒と、外筒と内筒との隙間を利用して、内筒および燃焼筒の内部空間に、空気を供給する通風路と、を有し、本体筒および燃焼筒は、水平面に対して上向きの傾斜を有し、通風路は、供給可能な全空気量の30%〜50%を、内筒の内部空間に供給し、供給可能な全空気量の50%〜70%を、燃焼筒の内部空間に供給する。
【発明の効果】
【0028】
本発明の畜糞尿のリサイクルプラント、畜糞尿のリサイクルシステム、畜糞尿のリサイクル方法は、畜産場において処理に困っている畜糞尿を燃焼剤として回収し、農場や畜産場で必要となる肥料や水質改質剤を提供できるので、畜産場にとって有用性が高いリサイクルを実現できる。結果として、経済性も確保できるので、ビジネス成立の面からも、社会的認知を得やすい。
【0029】
また、畜糞尿のリサイクルプラント、畜糞尿のリサイクルシステム、畜糞尿のリサイクル方法は、燃焼剤がペレット形状を有し、飛散物や有毒ガスを出さずに燃焼させることができるので、二次的問題を引き起こさない。特に、燃焼剤を確実に燃焼させることができるので、得られる無機廃棄物が、十分な品質を有する肥料や水質改質剤として用いられる。
【0030】
また、得られる無機廃棄物の有用性・品質が高いことで、社会的認知の高まるリサイクルシステムとなりやすい。
【0031】
また、ペレット形状で燃焼し、ペレット形状で無機廃棄物となることで、新たなごみを生じさせることもなく、容易かつ確実に、無機廃棄物を流通させやすい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態1におけるリサイクルプラントの模式図である。
【図2】本発明の実施の形態1における燃焼装置の透視図である。
【図3】本発明の実施の形態1における燃焼装置の透視図である。
【図4】本発明の実施の形態1における無機廃棄物の成分を示す表である。
【図5】本発明の実施の形態2における燃焼装置の透視図である。
【図6】本発明の実施の形態3におけるリサイクル方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の第1の発明に係る畜糞尿のリサイクルプラントは、畜糞尿を含む有機廃棄物を回収する第1回収手段と、有機廃棄物を、燃焼剤として、所定の燃焼装置によって燃焼させる燃焼手段と、燃焼工程の結果で得られる無機廃棄物を、肥料および水質改質剤の少なくとも一つとして、回収する第2回収手段と、を備え、燃焼装置は、同軸で回転可能な外筒と内筒との二重構造を有する本体筒と、筒体の先端に接続して、燃焼剤を燃焼させる燃焼筒と、外筒と内筒との隙間を利用して、内筒および燃焼筒の内部空間に、空気を供給する通風路と、を有し、本体筒および燃焼筒は、水平面に対して上向きの傾斜を有し、通風路は、供給可能な全空気量の30%〜50%を、内筒の内部空間に供給し、供給可能な全空気量の50%〜70%を、燃焼筒の内部空間に供給する。
【0034】
この構成により、リサイクルプラントは、畜産場から排出される有機廃棄物から熱量と無機廃棄物を得ることができ、熱量や向き廃棄物は、畜産場に提供できる。すなわち、不要な有機廃棄物を、有用化でき、出発点と帰結点とを一致させた完全循環型のリサイクルを実現できる。加えて、所定の燃焼装置によって、飛散物や有毒ガスのほとんど無い燃焼を実現でき、灰化の十分に進んだ無機廃棄物を得ることができる。
【0035】
本発明の第2の発明に係る畜糞尿のリサイクルプラントでは、第1の発明に加えて、燃焼剤はペレット形状を有し、燃焼装置は、ペレット形状を燃焼の前後で維持したまま、無機廃棄物を生成する。
【0036】
この構成により、リサイクルプラントは、余分な飛散物を出すことがほとんど無い。また肥料や水質改質剤としての利用ができる無機廃棄物が、ペレット形状を有しているので、回収や利用が容易となる。
【0037】
本発明の第3の発明に係る畜糞尿のリサイクルプラントでは、第2の発明に加えて、有機廃棄物を、ペレット形状の燃焼剤に整形する整形手段を更に有する。
【0038】
この構成により、燃焼装置が燃焼させやすい燃焼剤が得られる。
【0039】
本発明の第4の発明に係る畜糞尿のリサイクルプラントでは、第1から第3のいずれかの発明に加えて、有機廃棄物は、畜産場から回収され、無機廃棄物は、畜産場へ提供される。
【0040】
この構成により、出発点と帰結点とが一致したリサイクルが実現できる。
【0041】
本発明の第5の発明に係る畜糞尿のリサイクルプラントでは、第1から第4のいずれかの発明に加えて、燃焼装置は、900℃以上の燃焼温度を維持して、燃焼剤を燃焼させる。
【0042】
この構成により、有機廃棄物は確実に灰化される上、有毒ガスなどの発生も抑えられる。
【0043】
本発明の第6の発明に係る畜糞尿のリサイクルプラントでは、第3から第5のいずれかの発明に加えて、内筒の内部空間に燃焼剤を破砕する破砕部材が収納されている。
【0044】
本発明の第7の発明に係る畜糞尿のリサイクルプラントでは、第6の発明に加えて、破砕部材は、酸化アルミナを主成分とし、2〜30mmの粒径を有する略球体のセラミックボールを含む。
【0045】
これらの構成により、燃焼装置は、燃焼効率を向上させることができる。
【0046】
本発明の第8の発明に係る畜糞尿のリサイクルプラントでは、第1から第7のいずれかの発明に加えて、無機廃棄物は、2重量%以上のリンおよび1重量%以上のカリウムを含む。
【0047】
この構成により、無機廃棄物は、肥料や水質改質剤として、有益に利用できる。
【0048】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0049】
(実施の形態1)
【0050】
まず、リサイクルプラントの全体概要について説明する。
(全体概要)
【0051】
図1は、本発明の実施の形態1におけるリサイクルプラントの模式図である。なお、リサイクルプラントは、図1に示される全ての要素を含んでいる概念で捉えてもよいし、図1に示される一部の要素のみを含んでいる概念で捉えても良い。また、リサイクルプラントとの「プラント」の用語で定義しているが、同一敷地内に図1に示される全ての要素が設置されている必要はなく、異なる敷地に図1に示される要素のそれぞれが設置されていてもよい。
【0052】
また、リサイクルプラントとの概念ではなく、図1に示される要素を備えるリサイクルシステムとの概念で捉えても良い。
【0053】
リサイクルプラント1は、畜産場2から出される畜糞尿を含む有機廃棄物を回収する第1回収手段3と、有機廃棄物を燃焼剤として、所定の燃焼装置6によって燃焼させる燃焼手段5と、燃焼手段5で得られる無機廃棄物(燃焼剤が燃焼することで得られる廃棄物)を、肥料および水質改質剤の少なくとも一つとして回収する第2回収手段7とを、備える。
【0054】
また、必要に応じて、リサイクルプラント1は、第1回収手段3が回収した有機廃棄物をペレット形状に整形する整形手段4を備えても良い。
【0055】
畜産場2は、養鶏場、養豚場、食肉牧場などの家畜を飼っている施設であり、家畜が排泄する畜糞尿を含む有機廃棄物を排出する。畜糞尿を含む有機廃棄物は、畜産場にとって処理に困る廃棄物であり、埋め立てや浄水などによっても処理しきれない問題を有する。
【0056】
第1回収手段3は、この畜糞尿を含む有機廃棄物を回収する。
【0057】
第1回収手段3は、畜産場から人力、機械力を用いて集められた有機廃棄物を、人力や機械力を用いて燃焼手段5に引き渡せるように回収作業を行う。例えば、第1回収手段3は、トラックやダンプカーなどで複数の畜産場2から集められた有機廃棄物を、所定の蓄積場に蓄積する。更に、第1回収手段3は、蓄積場に蓄積された有機廃棄物を、燃焼剤として使用可能な状態にするために、乾燥などを行う。この結果、畜糞尿を含む有機廃棄物が燃焼手段5での燃焼剤として使用可能になる。
【0058】
また、必要に応じて第1回収手段3は、燃焼手段5で使用しやすい形状や大きさに、有機廃棄物を整形してもよい。なお、この整形は整形手段4によって行われてもよく、第1回収手段3と整形手段4とは、分離した装置や工程でなくてもよい。
【0059】
また、第1回収手段3は、畜産場2から出る畜糞尿を含む有機廃棄物をそのまま回収してから、燃焼剤へと加工しても良いが、畜産場2や専用の工場などで、燃焼剤としての加工の済んだ有機廃棄物を回収することでも良い。
【0060】
いずれにしても、第1回収手段3は、燃焼手段5が使用する燃焼剤となる有機廃棄物を回収すればよい。回収の時点での有機廃棄物が、燃焼剤として即座に使える状態であっても、燃焼剤とするために更なる工程を必要とする状態であってもかまわない。
【0061】
燃焼手段5は、第1回収手段3が回収した有機廃棄物を燃焼剤として燃焼させる。
【0062】
このとき、燃焼手段5は、所定の燃焼装置6を用いる。燃焼手段5は、有機廃棄物である燃焼剤を、有毒ガスや飛散物を出すことなく完全に燃焼させて、ほとんどの有機成分が除去された無機廃棄物を得る必要がある。燃焼装置6は、このような無機廃棄物を得る燃焼を実現できる。
【0063】
燃焼手段5は、燃焼装置6を用いて、第1回収手段3で回収された有機廃棄物を、燃焼剤として燃焼させると、燃え残りとしての無機廃棄物を生成する。この無機廃棄物は、畜糞尿を成分としていた有機廃棄物の燃焼によって得られるので、リン成分やカリウム成分などの肥料や水質改質剤にとっての有用成分を含んでいる。このため、燃焼によって得られた無機廃棄物は、肥料や水質改質剤として、畜産場2をはじめとした第1次産業の施設において好適に利用できる。第2回収手段7は、この無機廃棄物を、肥料や水質改質剤として、回収する。更に、第2回収手段7は、畜産場2へ、肥料や水質改質剤として、無機廃棄物を提供しても良い。
【0064】
なお、燃焼手段5は、有機廃棄物を肥料・水質改質剤となる無機廃棄物に変えるためだけに燃焼を行うのではなく、焼却処理、発電、発熱などに用いる熱量を生成するために、燃焼を行う。例えば、畜産場2では、家畜のための冷暖房が必要となる。冷暖房は、熱量によって運転されるので、燃焼手段5は、畜産場2が使用する冷暖房に必要な熱量をまかなうことができる。一方で、熱量を生成するために有機廃棄物を燃焼させた燃焼手段5は、燃焼によって無機廃棄物を生成する。この無機性生物は、畜産場2において使用される肥料や水質改質剤となる。
【0065】
畜産場2は、家畜に食べさせる植物を育成する牧草地や畑を所有していることが多く、多くの肥料を必要とする。また、家畜の飲料水および牧草地や畑への散布水は、その水質が安全・安定していることが好ましい。このため、畜産場2は、水質改質剤をも必要とすることが多い。このため、燃焼手段5で得られる無機廃棄物は、畜産場2に提供されることで、畜産場2は、無機廃棄物を種々の目的のために活用できる。
【0066】
以上のように、実施の形態1のリサイクルプラント1は、畜産場2で処理に困る有機廃棄物を、畜産場2で必要となる熱量を得るために燃焼させ、燃焼の結果得られる無機廃棄物を、畜産場2で有益な肥料や水質改質剤として提供できる。すなわち、リサイクルプラント1は、畜産場2を出発点と帰結点とする、完全循環型のリサイクルを実現する。
【0067】
なお、有機廃棄物を排出する畜産場2と、無機廃棄物を肥料や水質改質剤として提供される畜産場2とは、同じ畜産場であってもよいし、異なる畜産場であってもよい。勿論、畜産場は、家畜を養殖する施設に限定されるものではなく、有機廃棄物を排出しつつ肥料や水質改質剤を必要とする施設であれば何でもよい。例えば、農業や水産業にかかわる施設であっても良い。
【0068】
リサイクルプラント1は、畜産場2で排出される有機廃棄物を燃焼させて畜産場2が必要とする熱量を生成し、畜産場2で必要とされる肥料や水質改質剤を提供できるので、畜産場2と一緒に設置されることも好適である。あるいは、複数の畜産場2を取りまとめる場所に、リサイクルプラント1が設置されることも好適である。畜産場2の近隣にリサイクルプラント1が設置されることで、畜産場2を出発点および帰結点とする循環型リサイクルが容易に実現される。
【0069】
また、リサイクルプラント1は、畜産場2の近隣でなくとも、複数の畜産場2からの有機廃棄物を回収し、複数の畜産場2へ肥料・水質改質剤を提供できれば、畜産場2と遠隔の場所に設置されても良い。特にこの場合には、リサイクルプラント1の運転、保守、管理が一括で行われながら、複数の畜産場2からの回収と複数の畜産場への提供とを集中・分散にて行えるので、リサイクルにかかわるコストを低減できる。コストは、スケールメリットに依存するからである。この場合には、燃焼によって得られる熱量は、畜産場2ではなく、一般家庭や工場などで活用されても良い。
【0070】
また、有機廃棄物が回収されるのは畜産場であって、肥料・水質改質剤が提供されるのは農家や農業工場であるように、リサイクルの出発点と帰結点とが物理的に異なっても良い。あくまでも、(1)有機廃棄物の排出と回収、(2)有機廃棄物の燃焼による熱量の生成、(3)燃焼で得られた無機廃棄物の活用、が、必要な場所において活用されて循環すればよい。
【0071】
燃焼手段5は、燃焼剤の燃焼に所定の燃焼装置6を用いる。
【0072】
燃焼装置6は、有機廃棄物である燃焼剤を、飛散物や有毒ガスなどの発生をさせずに、燃焼させることができる。このため、生成される無機廃棄物は、有機成分をほとんど有さず、高い品質の肥料や水質改質剤として用いられる。
【0073】
燃焼装置6は、筒体を主たる構成とする装置である。
【0074】
図2は、本発明の実施の形態1における燃焼装置の透視図である。燃焼装置6の概略を示す。
燃焼装置2は、本体筒12と燃焼筒13とを大きな構成要素として備える。本体筒12は、一次燃焼を行い、燃焼筒13は、二次燃焼を行う。一次燃焼と二次燃焼とを一体の燃焼装置6で行えることで、燃焼剤20を確実に燃焼させることができる。特に、一次燃焼と二次燃焼とを一体の燃焼装置6が行えることで、常に高温を保つことができる。
【0075】
本体筒12は、外筒10と内筒11とを備え、外筒10と内筒11とは同軸で回動可能な二重構造を有する。すなわち、内筒11の周囲を外筒10が覆う二重構造であって、外筒10と内筒11とは、同軸で一緒に回動する(勿論個別に回動しても良い)。この二重構造によって、外筒10と内筒11との間には隙間が生じる。この隙間は内筒11と燃焼筒13の内部空間に空気を供給する通風路14となる。
【0076】
図2中の破線矢印は、空気の供給経路を示す。なお、通風路14を通る空気は、外筒10の根元における開口部から取り込まれる。
【0077】
外筒10と内筒11とは、開放されている開放端部と閉塞している閉塞端部とを有する。開放端部には、燃焼筒13が接続され、内筒11の内部で一次燃焼していた燃焼剤が、更に高温になって燃焼筒13の内部空間で二次燃焼を行う。
【0078】
内筒11の外周の一部は、切れ欠きを有しており、この切れ欠きを通じて、通風路14は、空気を内筒11の内部に送り込む。また、燃焼筒13は、外筒10に接続されているので、内筒11と外筒10との二重構造によって生じる隙間である通風路14の先端が、燃焼筒13の根元に接続する。すなわち、通風路14の先端の開放部から、そのまま空気が燃焼筒13の内部空間に送り込まれる。
【0079】
このようにして、通風路14は、内筒11の内部空間と燃焼筒13の内部空間のそれぞれに空気を送り込む。
【0080】
また、このとき、通風路14は、取り込んだ空気であって供給可能な全空気量の30%〜50%を内筒11の内部空間に供給し、全空気量の50%〜70%を燃焼筒13の内部空間に供給する。このように、一次燃焼を行う内筒11に供給される空気量よりも、二次燃焼を行う燃焼筒13に供給される空気量が多いことで、一次燃焼に引き続く二次燃焼の燃焼力が高まり、燃焼装置6は、常に高い温度(900℃以上)を維持しながら、燃焼剤20を燃焼させることができる。すなわち、一次燃焼を行う内筒11の内部空間は、全供給量の半分以下の空気の供給によって、一定温度までの燃焼を行う。温度が上昇して、燃焼剤20の灰化が進むにつれてその質量が軽くなっていくと、燃焼剤20および炎は物理的に上方に位置する燃焼筒13に上昇する。この燃焼筒11の内部空間は、内筒11よりも多い量の空気を供給されるので、内筒11における燃焼温度よりも高い温度で、燃焼剤を燃焼させる。結果として、燃焼剤20を確実に灰化して無機廃棄物にする。
【0081】
ここで、本体筒12と燃焼筒13とは、水平面に対して上向きの傾斜を有するので、内筒11での一次燃焼から燃焼筒13での二次燃焼に、物理的につながりやすくなる。温度上昇に合わせて燃焼物体が上方に上昇するが、上方においては、燃焼筒13が存在するので、燃焼剤20は、この燃焼筒13で更に高温に燃焼される。
【0082】
なお、燃焼剤20は、供給路15を通じて、内筒11の内部空間に供給される。
【0083】
燃焼手段5は、このような構造を有する燃焼装置6を用いることで、燃焼剤20を確実に燃焼させて灰化させ、有機廃棄物を無機廃棄物に変換できる。また、燃焼において、900℃以上の高温を維持して燃焼剤20(第1回収手段3によって回収された有機廃棄物である)が燃焼されるので、有毒ガスや飛散物もほとんど出ない。
【0084】
以上のように、燃焼手段5は、所定の燃焼装置6を用いることで、有機廃棄物を十分に灰化させて、無機廃棄物を得ることができる。
【0085】
なお、この無機廃棄物は、畜糞尿を主成分とする有機廃棄物から得られるので、リンやカリウムなどの耕作肥料や家畜の飲料水の水質を改質する水質改質剤に有効な成分を含む。
【0086】
このため、燃焼手段5で得られた無機廃棄物は、第2回収手段7が回収して、畜産場2に、肥料や水質改質剤として提供できる。この結果、畜産場2から排出される畜糞尿を含む有機廃棄物は、畜産場2にとって有用な肥料や水質改質剤として循環する。実施の形態1のリサイクルプラント1は、
【0087】
次に、各部の詳細について説明する。
【0088】
(第1回収手段)
【0089】
第1回収手段3は、畜産場2から排出される畜糞尿を含む有機廃棄物を回収する。
【0090】
第1回収手段3は、人為的および機械的に有機廃棄物を回収すればよい。
【0091】
前者であれば、例えばトラックを運転する運転者が、畜産場2を訪問して排出される有機廃棄物を回収する。運転者が回収する段階では、有機廃棄物は畜糞尿の状態であって何らの加工もされていない状態でもよいし、畜産場2において、余分な成分が除去されていたり、乾燥処理がされていたり、整形処理がされていたりする状態であってもよい。運転者は、排出の態様にかかわらず、畜産場2から排出される有機廃棄物を回収する。
【0092】
また、後者であれば、例えば畜産場2に設けられたベルとコンベアが、畜糞尿を含む有機廃棄物を回収する。ベルトコンベアは、畜産場2と隣接する燃焼手段5に、直接的に有機廃棄物を運搬してもよいし、倉庫に運搬しても良い。例えば倉庫においては、畜糞尿が乾燥されたりして、燃焼剤として使用可能な状態にする。倉庫に運び込まれた有機廃棄物は、人為的に燃焼手段5に運搬される。
【0093】
第1回収手段3は、このように、畜産場2で排出される畜糞尿を含む有機廃棄物を、燃焼手段5における燃焼剤として使用するために、回収する。
【0094】
なお、第1回収手段3は、燃焼手段5と隣接して設けられてもよいし、燃焼手段5と離隔して設けられても良い。また、第1回収手段3は、畜産場2のみならず、工場や食肉加工工場のような畜糞尿を含む有機廃棄物を排出する施設からも、有機廃棄物を回収しても良い。
【0095】
また、後述の整形手段4と一緒に/別々に、第1回収手段3は、有機廃棄物を燃焼剤として用いやすくするための加工や整形を行っても良い。
【0096】
(整形手段)
【0097】
整形手段4は、必要に応じて設けられ、有機廃棄物をペレット形状に整形する。ここで、整形手段4は、第1回収手段3の後の工程として設けられてもよいし、第1回収手段3の前の工程として設けられても良い。また、第1回収手段3と同じ工程に整形手段4が含まれても良く、ペレット形状に整形された燃焼剤が、燃焼手段5に提供される仕組みとなっておればよい。
【0098】
すなわち、第1回収手段3の前の工程(畜産場2において)において、有機廃棄物は、ペレット形状やその他の所定形状に整形されておいてもよい。この場合には、第1回収手段3が、ペレット形状などの形状に整形された有機廃棄物を回収して、そのまま燃焼剤として燃焼手段5に渡す。
【0099】
あるいは、第1回収手段3において、有機廃棄物はペレット形状やその他の所定形状に整形されても良い。この場合には、整形されていない形状の有機廃棄物を、第1回収手段3が集めると共に、第1回収手段3が有機廃棄物をペレット形状などの所定形状に整形して、燃焼剤として燃焼手段5に渡す。
【0100】
あるいは、第1回収手段3の後の工程(すなわち、整形手段4)において、有機廃棄物はペレット形状やその他の所定形状に整形されても良い。この場合には、第1回収手段3が回収した有機廃棄物は整形手段4に渡される。整形手段4は、有機廃棄物をペレット形状などの所定形状に整形し、燃焼剤として燃焼手段5に渡す。
【0101】
ここで、整形手段4は、有機廃棄物をペレット形状に整形するのが好適である。ペレット形状は小さな円筒形状を有しており、円筒形状を有することで、燃焼が容易となる上、燃焼後にこのペレット形状を有したまま無機廃棄物となりうる。
【0102】
なお、整形手段4は、ペレット形状以外の形状に、有機廃棄物を整形しても良い。
【0103】
整形手段4は、プレス装置、金型装置などを用いて、有機廃棄物を所定形状に整形する。
【0104】
(燃焼手段)
【0105】
燃焼手段5は、所定の燃焼装置6を用いて、燃焼剤20を燃焼する。燃焼剤20は、上述の通り、有機廃棄物であり、この有機廃棄物は好ましくはペレット形状などに整形されている。
【0106】
図3は、本発明の実施の形態1における燃焼装置の透視図である。内部の状況が見えるように透視図として示したものである。
【0107】
燃焼装置6は、本体筒29と燃焼筒35とを主たる要素として備える。本体筒29および燃焼筒35のそれぞれは、一次燃焼および二次燃焼を行う。燃焼装置6は、本体筒29における一次燃焼で燃焼剤を燃焼させ、ついで燃焼筒35における二次燃焼で燃焼剤を燃焼させる。
【0108】
燃焼装置6は、前方が開口しており、後方が閉塞している。開口している前方において燃焼した熱量が放散され、閉塞している後方において、燃焼剤や空気が取り込まれる。
【0109】
本体筒29は、同軸で回動可能な外筒32と内筒33とを備え、内筒33の周囲を一定の隙間を保って外筒32が覆う二重構造となっている。本体筒29は、回動可能であるので、内筒33は、回動する。この回動によって、内筒33の内部空間も回動できる。回動によって、内筒33の内部空間に収納される燃焼剤が、燃えながら回転できるので、燃焼剤に満遍なく空気や炎が接触でき、内筒33での一次燃焼が促進される。
【0110】
本体筒29の開口部には、同じ筒体である燃焼筒35が接続する。燃焼筒35は、外筒32と接続する状態で接続するので、内筒33と外筒32との間に生じる隙間の一端が、そのまま燃焼筒35の内部空間に接続する。燃焼筒35は、一次燃焼の終わった燃焼剤が、質量低下と温度上昇によって物理的に上昇するのを捕捉して、燃焼剤を更なる高温で燃焼させる。
【0111】
ここで、本体筒29と燃焼筒35とは水平面に対して上向きの傾斜を有する。ここで、上向きとは、燃焼筒35の開口部が上向きとなる状態を言う。
【0112】
このような傾斜を有することで、内筒33の内部空間で所定の温度で燃焼した燃焼剤は、その質量が減じるので、上方に移動しやすくなる。上方においては、燃焼筒35が位置するので、燃焼筒35は、この移動してきた燃焼剤を燃焼させる。すなわち、二次燃焼させる。
【0113】
ここで、外筒32と内筒33との間の隙間は、通風路37となる。通風路37は、空気の供給口45から取り込まれた空気を、内筒33の内部空間と燃焼筒35の内部空間に供給する。ここで、供給口45は、外界とつながっており、外界から空気を取り込んで、通風口38を介して空気を通風路37に送る。通風路37は、この供給された空気を移動させて、その一部を内筒33の内部空間に供給し、残りを燃焼筒35の内部空間に供給する。
【0114】
内筒33は、その外周に吹き出し口40を備える。吹き出し口40は通風路37と連通するので、通風路37を通る空気は、吹き出し口40から漏れて、内筒33の内部空間に送り込まれる。すなわち、通風路37は、吹き出し口40を介して、内筒33の内部空間に空気を供給する。
【0115】
一方、通風路37の先端は、燃焼筒35に直接的に接続している。このため、通風路37は、先端から燃焼筒35の内部空間に空気を供給する。
【0116】
通風路37は、外界から取り込める(すなわち燃焼装置6に供給できる)全空気量の30%〜50%を内筒33の内部空間に供給する。一方通風路37は、全空気量の50〜70%を燃焼筒35の内部空間に供給する。すなわち、燃焼筒35に供給される空気量が、内筒33に供給される空気量よりも多い。結果として、より高温で燃焼する必要のある二次燃焼を行う燃焼筒35に供給される空気量が多くなり、二次燃焼が最適に行われる。
【0117】
なお、吹き出し口40の位置、数、開口面積、形状、角度などを調整することで、通風路37による内筒33への供給量と燃焼筒35への供給量との割合を、適宜調節できる。
【0118】
たとえば、吹き出し口40の総開口面積と通風路37と燃焼筒35との接続する総開口面積との比較において、前者よりも後者を大きくすれば、内筒33の内部空間に供給される空気量よりも、燃焼筒35の内部空間に供給される空気量が多くなるように調整できる。
【0119】
燃焼装置6は、全空気量の30〜50%が供給されると共に物理的に下方に位置する内筒33における一次燃焼と、この一次燃焼に続き、全空気量の50%〜70%が供給されると共に内筒33よりも物理的に上方に位置する燃焼筒35の二次燃焼との連続性によって、燃焼剤を確実に燃焼させる。この確実な燃焼によって、有機廃棄物は純水に灰化して、無機廃棄物へと変化する。
【0120】
内筒33の閉塞端には、燃焼剤を供給する供給路46が接続されている。供給路46は、ペレット形状などの所定形状を有する燃焼剤が投入され、スクリューコンベア47によって、燃焼剤を内筒33の内部空間に運搬する。スクリューコンベア47は、羽根を有して回転することで、羽根に引っかかる燃焼剤を、上方に運搬して、内筒33の内部空間に運び入れる。スクリューコンベア47の周囲は、管路34によって覆われている。この管路34は、本体筒29と接続されており、管路34と本体筒29とが、燃焼装置6の全体骨格を形作る。
【0121】
管路34の途中で、供給路46が接続し、供給路46から投入された燃焼剤が管路34に到達して、スクリューコンベア47によって、内筒33まで運搬される。
【0122】
スクリューコンベア47は、回動する必要があるので、モータ48が回転軸をスクリューコンベア47に接続させて回動させる。また、本体筒29も、燃焼効率を上げるために回動することが好ましいので、モータ48は、本体筒29(すなわち、外筒32と内筒33とを)回動させる。なお、このとき燃焼筒35も一緒に回動させられても良い。このとき、軸受け42が、本体筒29の回動動作を受ける。
【0123】
また、燃焼装置6は、フレーム部材で設置されつつ固定されることが好ましい。フレーム部材39や支持体41によって燃焼装置6は支えられる。
【0124】
(燃焼装置の動作)
【0125】
次に、燃焼装置の動作について説明する。
【0126】
燃焼剤が、供給路46に投入される。燃焼剤の投入は、人力で行われてもよいし、機械で行われても良い。燃焼剤は、畜糞尿を含む有機廃棄物であり、ペレット形状などの所定形状に整形されている。
【0127】
供給路46に投入された燃焼剤は、回動するスクリューコンベア47の羽根に乗って運搬される。運搬された燃焼剤は、内筒33の内部空間に運び込まれる。内筒33の内部空間には、着火装置などによって火が着火されている。
【0128】
供給口45は、外界とつながっており、供給口45は、外界から空気を取り込む。取り込まれた空気は、通風口38を通じて通風路37に送り込まれる。通風路37は、吹き出し口40を通じて、内筒33の内部空間に空気を供給する。このとき、吹き出し口40の総開口面積と通風路37と燃焼筒35との接続する開口面積との比率によって、通風路37は、内筒33に全空気量の30%〜50%を供給する。
【0129】
内筒33は、供給される燃焼剤と空気によって、燃焼剤を燃焼させる。内筒33が回動することにより、燃焼剤が満遍なく空気と接触でき、燃焼剤が確実に燃焼させられる。また、空気量の半分以下での空気によっての燃焼であるので、一定温度までで燃焼する。
【0130】
内筒33の内部空間で燃焼した燃焼剤は、温度が上昇すると共に質量が軽くなる。このため、次第に上方に移動しうる。
【0131】
上方においては、燃焼筒35が設けられており、燃焼筒35へは、全空気量の半分以上が供給される。このより多い空気量によって、燃焼筒35は、燃焼剤を更なる高温で燃焼させる。これが二次燃焼である。燃焼剤が、更なる高温で燃焼されることで、燃焼剤は確実に灰化し、有機成分が無くなって無機廃棄物が得られる。ここで、燃焼装置6は、900℃以上の温度を維持しながら、燃焼剤を燃焼させることができる。
【0132】
なお、この燃焼装置で得られる熱量は、畜産場2での冷暖房に用いられたり、リサイクルプラントを運営する発電に用いられたりする。この熱量も、無駄にされることなく活用されるものである。
【0133】
また、燃焼装置6は、純粋に燃焼させるので、ペレット形状を有していた有機廃棄物はペレット形状を有したまま無機廃棄物に変化する。無機廃棄物がペレット形状を残すことで、無機廃棄物の回収が容易となり、肥料や水質改質剤としての利用が容易となる。
【0134】
なお必ずしも、燃焼装置6は、燃焼剤の形状を残したまま燃焼剤を燃焼させて、無機廃棄物に品ければならないわけではない。燃焼の過程において、燃焼剤の形状が変形したり崩壊したりしてもかまわない。
【0135】
(第2回収手段)
【0136】
次に、第2回収手段7について説明する。
【0137】
第2回収手段7は、燃焼手段5で燃焼されて得られる無機廃棄物を、肥料もしくは水質改質剤として回収する。第2回収手段7は、人力あるいは機械によって無機廃棄物を回収すればよく、例えば、燃焼装置6の内部空間で得られる無機廃棄物を人力によって回収する。あるいは、燃焼装置6の内部空間で得られる無機廃棄物を吸引機などで回収し、回収された無機廃棄物が、畜産場2へ運搬される。
【0138】
もちろん、有機廃棄物を排出した畜産場2に無機廃棄物が提供されてもよいし、そのほかの畜産場や農場に無機廃棄物が提供されても良い。
【0139】
このとき、回収された無機廃棄物は、成分や用途によって、肥料あるいは水質改質剤として分類される。特に、成分によっては、どのような作物に優位な肥料となるのか、あるいはどのような土地に優位な肥料となるのかが決定される。燃焼手段5に投入される有機廃棄物の種類を組み合わせたり組み替えたりすることによって、得られる無機廃棄物の成分が決定される。このため、畜産場2から排出される有機廃棄物の種類(鶏糞、牛糞などの種類やその他の混合物の種類など)を組み合わせることで、野菜に適した肥料、果樹に適した肥料、などのように用途に分かれた無機廃棄物が得られる。あるいは、成分によって、肥料よりも水質改質剤に分類されても良い。
【0140】
図4は、燃焼手段5による燃焼で得られた無機廃棄物の成分の一例を示す。図4は、本発明の実施の形態1における無機廃棄物の成分を示す表である。
【0141】
図4に示される成分は、発明者が実際に有機廃棄物を所定の燃焼装置6で燃焼させて得られた無機廃棄物を、所定の機関において分析した結果を示す。図4から明らかな通り、無機廃棄物は、リンやカリウムを豊富に含み、好ましくないと考えられるその他の成分はほとんど含んでいない。リンやカリウムは、一般的に野菜や果樹などの植物の肥料として好適であることが知られており、人工的に製造されたものよりも、天然由来であることが好ましい。実施の形態1のリサイクルプラント1で得られる無機廃棄物は、天然由来であって、リンやカリウムを豊富に含み、肥料として優位であることが分かる。勿論、リンやカリウムなどの成分は、水質を改質する能力を有し、実施の形態1のリサイクルプラント1で得られる無機廃棄物は、水質改質剤として優位である。
【0142】
なお、図4に示される成分は一例であって、有機廃棄物の組み合わせによって、異なる成分の無機廃棄物も得られる。
【0143】
第2回収手段7は、無機廃棄物を回収するだけでなく、肥料や水質改質剤として、畜産場2や農場などに運搬・配布する。例えば、第1回収手段3で回収するのと同じ手順において、燃焼装置6から排出される無機廃棄物を、畜産場2に運搬すればよい。より効率的には、トラックやダンプカーなどの運搬手段が、燃焼装置6から畜産場2に行く際に、排出された無機廃棄物を積んで運搬して無機廃棄物を畜産場2で下ろした後、運搬手段は、畜産場2から排出される有機廃棄物を積んで燃焼装置6へ運べばよい。
【0144】
このようにして、第2回収手段7によって、熱量を得た後で生成される無機廃棄物が、有機廃棄物を排出した畜産場2や農場へ、有用物として循環される。結果として、畜産場2が自ら排出した不要な有機廃棄物は、必要な熱量を発生させると共に畜産場2で有用な無機廃棄物として循環する。
【0145】
以上のように、実施の形態1におけるリサイクルプラント1は、畜産場2から排出される不要な有機廃棄物を、熱量に変えると共に畜産場2で有用な肥料・水質改質剤として循環させることができる。結果として、廃棄物の出発点と帰結点とが一致する完全循環型のリサイクルを実現できる。加えて、燃焼手段5で使用される特定の燃焼装置6によって、幸廃棄物が完全に灰化されるように燃焼されるので、効率的に熱量が得られると共に、実用に耐えうる肥料や水質改質剤となる無機廃棄物が得られる。
【0146】
なお、リサイクルプラント1は、設備や装置としてのプラントとして把握されてもよいし、必要な設備を含んで実現されるリサイクルシステムとして把握されても良い。
【0147】
実施の形態1におけるリサイクルプラントやリサイクルシステムは、受益者(畜産場)にとって不要な有機廃棄物から熱量や肥料などを得ることができる点でメリットがある。勿論、有機廃棄物を有料で廃棄することよりも、コスト面でのメリットが高い。また、提供者(リサイクルプラントやリサイクルシステムの運営者)にとっては、有機廃棄物を有料で引き取ったとしても、熱量や肥料などの販売で収益を上げることができるメリットを有する。あるいは、有機廃棄物を無料あるいは手数料を取って引き受けた場合には、熱量や肥料によって、受益者に利益を還元できるので、受益者と自分との間のメリットのバランスを取ることができる。
【0148】
この結果、実施の形態1におけるリサイクルプラントおよびリサイクルシステムは、受益者および提供者の双方に、コスト面・収益面でのメリットを与えることができるので、リサイクルの一態様として、世間の認知も得やすくなり、定着が図りやすい。
【0149】
(実施の形態2)
【0150】
次に、実施の形態2について説明する。
【0151】
実施の形態2における燃焼手段5は、所定の燃焼装置60を用いる。燃焼装置60は、実施の形態1で説明した燃焼装置6と異なり、内筒33の内部空間に燃焼剤を破砕する破砕部材を収納している。
【0152】
図5は、本発明の実施の形態2における燃焼装置の透視図である。図5は、燃焼装置60をその内部が見えるように表しており、図2に示される燃焼装置6と異なり、内筒33の内部空間に破砕部材Bを収納している。なお、図2と同じ符号については説明を省略する。
【0153】
燃焼剤Aは、供給路46から投入される。燃焼剤Aは有機廃棄物が所定形状に成型されたものである。図5では、所定形状はペレット形状である。燃焼装置60は、ペレット形状を有した燃焼剤を、ペレット形状のまま燃焼させて無機廃棄物を得るのが通常である。しかしながら、細かく破砕された無機廃棄物を得ることが必要であったり、燃焼効率を上げる必要があったりすることがある。あるいは、投入される燃焼剤の形状が大きすぎる場合もある。
【0154】
このような場合には、投入されたペレット形状のままで燃焼装置60が燃焼させるよりも、燃焼剤Aを破砕した上で燃焼させた方が良い場合もある。破砕部材Bは、このような場合に、燃焼剤Aを破砕する。
【0155】
破砕部材Bは、球状、楕円球状、方形状など種々の形状を有することが好ましく、熱に強い素材であることが好ましい。例えば、破砕部材Bは、酸化アルミナを主成分として、2〜30mmの粒径を有する略球体のセラミックボールである。このような破砕部材Bは、内筒33の内部空間で、燃焼剤Aとぶつかり合うことによって、燃焼剤Aを破砕させる。燃焼剤Aは、破砕部材Bによって、破砕されて細かく砕かれる。特に、内筒33は、外筒32と共に回動可能であるから、この回動に合わせて、破砕部材Bは、燃焼剤Aに衝突を繰り返す。この衝突の繰り返しによって、破砕部材Bは、燃焼剤Aを細かく砕く。燃焼剤Aは細かく砕かれることによって、表面積が大きくなり、燃焼されやすくなる。この結果、燃焼剤Aはより容易に燃焼し、多くの熱量が得られる。更には、燃焼によって灰化が進み、有機成分がほとんど消滅した無機廃棄物が得られる。
【0156】
このように、必要に応じて、燃焼装置60は、破砕部材Bを収納することも好適である。
【0157】
(実施の形態3)
【0158】
次に、実施の形態3について説明する。
【0159】
実施の形態3は、実施の形態1で説明したリサイクルプラントをリサイクル方法として実施する場合を説明する。すなわち、リサイクル方法は、リサイクルプラントやリサイクルシステムにおける手順を含んで構成される。燃焼工程は、実施の形態1、2で説明した所定の燃焼装置を含んでいる。
【0160】
図6は、本発明の実施の形態3におけるリサイクル方法を説明するフローチャートである。
【0161】
まず、ステップST1にて、第1回収工程は、畜産場から排出される有機廃棄物を回収する。第1回収工程は、人力、機械力などを組み合わせて、有機廃棄物を回収する。例えば、トラックやダンプカーなどの運搬手段が、畜産場を訪問して、畜産場から排出される有機廃棄物を回収する。あるいは、畜産場と燃焼装置とを結ぶベルトコンベアによって、第1回収工程は、有機廃棄物を回収する。
【0162】
ついで、ステップST2にて、成型工程は、回収された有機廃棄物を所定形状に成型する。所定形状とはペレット形状などである。ここで、成型工程は、必須の要素ではなく、必要に応じて用いられればよい。また、成型工程は、第1回収工程の前工程において実施されてもよいし、後工程において実施されても良い。あるいは、成型工程は、第1回収工程に含まれても良い。
【0163】
ついで、ステップST3にて、燃焼工程は所定の燃焼装置を用いて、有機廃棄物を燃焼剤として燃焼させる。この燃焼において、燃焼工程は、熱量を得る。この熱量は、種々のプラントや設備、あるいは畜産場での冷暖房などに利用される。すなわち、燃焼工程は、不要である有機廃棄物を用いて、畜産場などで利用される熱量を得ることができる。
【0164】
また、燃焼工程によって有機廃棄物は燃焼されて無機廃棄物に変わる。無機廃棄物は、所定の燃焼装置によって十分に灰化されているので、リンやカリウムなどの肥料や水質改質剤としての有用な成分を含む。更には、燃焼工程において不要な有害ガスや飛散物もほとんど生じない。これは、実施の形態1、2で説明した所定の構成を有する燃焼装置によるものである。
【0165】
最後に、ステップST4にて、第2回収工程が、無機廃棄物を回収し、肥料や水質改質剤として畜産場2に運搬する。この肥料や水質改質剤は、畜産場において有益に活用されるので、畜産場から排出された不要な有機廃棄物が、畜産場にとって有益な無機廃棄物として循環される。
【0166】
このような廃棄物の循環が行われることで、リサイクルに対する認知度も高まる上、リサイクルを行う業者にとってもコストと収益のバランスが図られるので、リサイクルに参入するメリットが生じる。このように、受益者にとっても提供者にとってもメリットのあるリサイクル方法によって、リサイクルが定着しやすくなるメリットがある。
【0167】
以上、実施の形態1〜3で説明されたリサイクルプラント、リサイクルシステム、リサイクル方法は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0168】
1 リサイクルプラント
2 畜産場
3 第1回収手段
4 成型手段
5 燃焼手段
6、60 燃焼装置
7 第2回収手段
12 本体筒
13 燃焼筒
14 通風路
29 本体筒
32 外筒
33 内筒
34 管路
35 燃焼筒
37 通風路
38 通風口
39 フレーム部材
40 吹き出し口
41 支持体
42 軸受け
45 供給口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
畜糞尿を含む有機廃棄物を回収する第1回収手段と、
前記有機廃棄物を、燃焼剤として、所定の燃焼装置によって燃焼させる燃焼手段と、
前記燃焼工程の結果で得られる無機廃棄物を、肥料および水質改質剤の少なくとも一つとして、回収する第2回収手段と、を備え、
前記燃焼装置は、
同軸で回転可能な外筒と内筒との二重構造を有する本体筒と、
前記筒体の先端に接続して、前記燃焼剤を燃焼させる燃焼筒と、
前記外筒と内筒との隙間を利用して、前記内筒および前記燃焼筒の内部空間に、空気を供給する通風路と、を有し、
前記本体筒および前記燃焼筒は、水平面に対して上向きの傾斜を有し、
前記通風路は、供給可能な全空気量の30%〜50%を、前記内筒の内部空間に供給し、供給可能な全空気量の50%〜70%を、前記燃焼筒の内部空間に供給する、畜糞尿のリサイクルプラント。
【請求項2】
前記燃焼剤はペレット形状を有し、前記燃焼装置は、前記ペレット形状を燃焼の前後で維持したまま、前記無機廃棄物を生成する請求項1記載の畜糞尿のリサイクルプラント。
【請求項3】
前記有機廃棄物を、前記ペレット形状の前記燃焼剤に整形する整形手段を更に有する、請求項2記載の畜糞尿のリサイクルプラント。
【請求項4】
前記有機廃棄物は、畜産場から回収され、前記無機廃棄物は、前記畜産場へ提供される請求項1から3のいずれか記載の畜糞尿のリサイクルプラント。
【請求項5】
前記燃焼装置は、900℃以上の燃焼温度を維持して、前記燃焼剤を燃焼させる請求項1から4のいずれか記載の畜糞尿のリサイクルプラント。
【請求項6】
前記内筒の内部空間に前記燃焼剤を破砕する破砕部材が収納されている請求項3から5のいずれか記載の畜糞尿のリサイクルプラント。
【請求項7】
前記破砕部材は、酸化アルミナを主成分とし、2〜30mmの粒径を有する略球体のセラミックボールを含む請求項6記載の畜糞尿のリサイクルプラント。
【請求項8】
前記無機廃棄物は、2重量%以上のリンおよび1重量%以上のカリウムを含む、請求項1から7のいずれか記載のリサイクルプラント。
【請求項9】
畜糞尿を含む有機廃棄物を回収する第1回収手段と、
前記有機廃棄物を、燃焼剤として、所定の燃焼装置によって燃焼させる燃焼手段と、
前記燃焼工程の結果で得られる無機廃棄物を、肥料および水質改質剤の少なくとも一つとして、回収する第2回収手段と、を備え、
前記燃焼装置は、
同軸で回転可能な外筒と内筒との二重構造を有する本体筒と、
前記筒体の先端に接続して、前記燃焼剤を燃焼させる燃焼筒と、
前記外筒と内筒との隙間を利用して、前記内筒および前記燃焼筒の内部空間に、空気を供給する通風路と、を有し、
前記本体筒および前記燃焼筒は、水平面に対して上向きの傾斜を有し、
前記通風路は、供給可能な全空気量の30%〜50%を、前記内筒の内部空間に供給し、供給可能な全空気量の50%〜70%を、前記燃焼筒の内部空間に供給する、畜糞尿のリサイクルシステム。
【請求項10】
前記有機廃棄物は、畜産場から回収され、前記無機廃棄物は、前記畜産場,又は農場へ肥料として、あるいは家庭菜園の肥料として、雨水りの畜産飲料水へのミネラル添加剤として、提供される請求項9記載の畜糞尿のリサイクルシステム。
【請求項11】
畜糞尿を含む有機廃棄物を回収する第1回収工程と、
前記有機廃棄物を、燃焼剤として、所定の燃焼装置によって燃焼させる燃焼工程と、
前記燃焼工程の結果で得られる無機廃棄物を、肥料および水質改質剤の少なくとも一つとして、回収する第2回収工程と、を備え、
前記燃焼装置は、
同軸で回転可能な外筒と内筒との二重構造を有する本体筒と、
前記筒体の先端に接続して、前記燃焼剤を燃焼させる燃焼筒と、
前記外筒と内筒との隙間を利用して、前記内筒および前記燃焼筒の内部空間に、空気を供給する通風路と、を有し、
前記本体筒および前記燃焼筒は、水平面に対して上向きの傾斜を有し、
前記通風路は、供給可能な全空気量の30%〜50%を、前記内筒の内部空間に供給し、供給可能な全空気量の50%〜70%を、前記燃焼筒の内部空間に供給する、畜糞尿のリサイクル方法。
【請求項12】
前記有機廃棄物は、畜産場から回収され、前記無機廃棄物は、前記畜産場へ提供される請求項11記載の畜糞尿のリサイクル方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−251226(P2011−251226A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125457(P2010−125457)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(308030570)株式会社エム・アイ・エス (3)
【Fターム(参考)】