説明

畦塗り機

【課題】畦塗り機における作業部について、土作業を行う作業位置と土作業を行わない非作業位置との間で移動させる際に、走行機体に対する作業部の上下動作を行うことなく、畦塗り機における揺動機構に設けられた伸縮部材の伸縮動作のみにより移動作業を行うことができる畦塗り機の提供。
【解決手段】右移動途中位置から右作業位置に移動させたときには、第1ガススプリング20及び第2ガススプリング30が共に縮むこととなる。このため、右作業位置から右移動途中位置に向けてオフセットフレーム11を移動させる際には、主に第2ガススプリング30の反発力を補助力とするとともに、追加的に第1ガススプリング20の反発力も働きながら、既設の揺動シリンダにかかる負担を補助する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の進行方向後方側に装着される畦塗り機について、その走行機体に対して畦塗り機を揺動させるため、畦塗り機における揺動機構に設けられるとともに伸縮動作する伸縮部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、畦塗り機を走行機体に対して揺動させるため、畦塗り機に設けられた揺動機構の揺動により、畦塗り機を走行機体に対して揺動させることとしている。そして、その揺動は、揺動機構に設けられた伸縮部材の伸縮動作により行われることとなっており、具体的には、揺動機構の先端側に設けられた作業部について、土作業を行う作業位置と土作業を行わない非作業位置との間で移動させることとしている(特許文献1及び特許文献2)。
【0003】
そして、このような揺動機構では、一本の伸縮部材を配設するとともに当該伸縮部材の伸縮により、作業部を作業位置と非作業位置との間で移動させることとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−20505号公報
【特許文献2】特許第4059791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、作業部が非作業位置にあるときには、当該作業部が地面に接触してしまうことを避けるため、走行機体に対して多少上昇させて保持することとしており、作業部を非作業位置から作業位置まで移動させる際には、水平方向そのままの状態で移動することはなく、僅かながら斜め下方に向けて落ちながら移動し、作業位置に収まることとなっている。
【0006】
また、作業部を作業位置から非作業位置まで移動させるときには、僅かながら斜め上方に向けて持ち上げながら移動させる必要がある。
つまり、作業部を作業位置へ移動させる場合、及び、作業部を作業位置から移動させる場合には、作業部の上下方向への動きも含まれるため、伸縮部材によるサポートをより一層必要とすることとなる。
【0007】
この点について、先に示した先行例(特許文献1及び特許文献2)においては、各々の移動を一本の伸縮部材を用いてサポートしているものの、この伸縮部材は作業部の重量を考慮した作用力を備える必要性から大型の伸縮部材となっており、コスト面や重量面において問題があった。
【0008】
また、伸縮部材のサポートをあまり必要としない非作業位置においては、大型の伸縮部材としたため過剰な反発力が働いてしまい、非作業位置における作業部の揺動の安定性に対して問題があった。
【0009】
そこで本発明は、畦塗り機における作業部を移動させる伸縮部材に関し、作業部を作業位置へ移動させるとき、及び、作業部を作業位置から移動させるときにより一層のサポートを受けることができ、非作業位置における作業部の揺動の安定性を維持することも可能とし、更に、コスト面や重量面における問題についても解消することのできる伸縮部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、走行機体に装着される畦塗り機であって、前記走行機体の走行により作業を行う作業位置と、前記走行機体の後方に配置され作業を行わない非作業位置とに移動が可能な作業部と、前記作業部の前記作業位置から前記非作業位置への斜め上への移動を補助するとともに、前記非作業位置から前記作業位置への斜め下方への移動の速度を減少させる第1ガススプリング及び第2ガススプリングと、を備え、前記第1ガススプリング及び前記第2ガススプリングは、前記走行機体の走行方向における左右方向に対して互いに異なる角度で装着されており、前記第1ガススプリング及び前記第2ガススプリングは、前記作業部が前記非作業位置から前記作業位置へ向けて移動されて、前記作業位置において共に縮むとともに縮む長さが互いに異なる状態となり、前記作業部が前記作業位置から前記非作業位置へ向けて移動される際に、共に伸びるとともに伸びる長さが互いに異なることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の畦塗り機であって、前記第1ガススプリング及び前記第2ガススプリングは、同一平面上に配置されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1乃至請求項2のいずれかに記載の畦塗り機であって、前記第1ガススプリング及び前記第2ガススプリングは、前記作業部が前記非作業位置に移動されたときに、略伸びきった状態となることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、作業部の作業位置と非作業位置との間の移動について、大型の伸縮部材を用いることなく、軽い力で行うことができ、非作業位置における作業部の揺動の安定性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る畦塗り機の部分平面図を示す。
【図2】本発明に係る畦塗り機の側面図を示す。
【図3】本発明に係る畦塗り機の斜視図を示し、同図(a)は畦塗り機の左斜め後方から見た畦塗り機の斜視図であり、同図(b)は畦塗り機の左斜め後方から見た畦塗り機の斜視図である。
【図4】本発明に係る畦塗り機に設けられたオフセットフレームの先端側の部分拡大模式側面図を示す。
【図5】本発明に係る畦塗り機に搭載されたガススプリングの配置図を示す。
【図6】本発明に係る畦塗り機に搭載されたガススプリングの動作図を示す。
【図7】本発明に係る畦塗り機に搭載されたガススプリングの動作図を示す。
【図8】本発明に係る畦塗り機に搭載されたガススプリングの動作図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る畦塗り機の好ましい実施の形態について、先ず、図1(部分平面図)及び図2(側面図)を参照しながら、走行機体に牽引される畦塗り機の全体的な概要を説明する。なお、説明の参考として、本発明に係る畦塗り機の斜視図(図3)も参照する。
【0016】
畦塗り機1は、図1(部分平面図)、図2(側面図)に示すように、走行機体90の後部に設けられた三点リンク連結機構91に連結されて、走行機体90の前進及び後進に応じて畦塗り作業を行うものである。この畦塗り機1は、走行機体90に装着されて走行機体90からの動力が入力される入力軸8aを備えた装着部5と、装着部5に設けられ進行方向に対して左右方向に回動可能に支持されたオフセット機構部10と、オフセット機構部10の先端側に旋回自在に配設されて入力軸8aから伝達される動力によって作業を行なう作業部60を有して構成される。
【0017】
装着部5は、機体幅方向に延びるヒッチフレーム6と、ヒッチフレーム6の前方に設けられて走行機体90の後部に設けられた三点リンク連結機構91に連結される連結フレーム7を有して構成される。ヒッチフレーム6の幅方向の中央下部にはギアボックス8が設けられ、このギアボックス8には前述した入力軸8aが設けられている。
【0018】
オフセット機構部10は、その基端側をヒッチフレーム6に回動自在に連結されて後方側へ延びるオフセットフレーム11と、オフセットフレーム11の幅方向一方側に沿って並設されて基端側がヒッチフレーム6の一方側端に回動自在に連結されたリンク部材13と、オフセットフレーム11の先端側とリンク部材13の先端側との間に回動自在に連結された回動支持アーム15とを有して構成される。
【0019】
オフセットフレーム11は、内部が中空状に形成された箱状部材であり、オフセットフレーム11の先端側とヒッチフレーム6の一方側端部との間に接続された揺動シリンダ17の伸縮により、オフセットフレーム11は進行方向に対して左右方向に揺動可能である。オフセットフレーム11内には図示しない動力伝達機構が設けられ、この動力伝達機構によって、走行機体90から入力軸8aに伝達された動力がオフセットフレーム11の先端側に回転自在に配設された従動軸12に伝達可能に構成されている。
【0020】
リンク部材13の先端部は、オフセットフレーム11の先端部に回動自在に設けられた回動支持アーム15の一方側端に回動自在に取り付けられている。回動支持アーム15は、進行方向に対して左右方向に延びる平行リンクフレーム部15aと、平行リンクフレーム部15aの基端側端部分から装着部5側へ延びるリンクアーム部15b(図3(a)参照)とを有してなり、リンクアーム部15bの基端側がオフセットフレーム11の先端側下部に回動自在に取り付けられている。このように構成されたオフセット機構部10は、オフセットフレーム11、リンク部材13、ヒッチフレーム6及び回動支持アーム15によって四節リンク機構を形成している。
【0021】
なお、揺動シリンダ17は、電動式油圧シリンダであり、図示しない制御装置からの制御信号に応じて伸縮するようになっている。
【0022】
また、図4(部分拡大模式側面図)に示すように、オフセットフレーム11の先端部に設けられた従動軸12の下部には、動力伝達軸14が従動軸12と同軸上に配置されて下方へ連結されて、動力伝達軸14は従動軸12の回転に伴って回転する。またオフセットフレーム11の先端下部には、動力伝達軸14と同軸上に配置された円筒状の連結部18がオフセットフレーム11に対して回動自在に取り付けられている。この連結部18は動力伝達軸14と非結合状態にあり、動力伝達軸14を回動中心として回動自在である。この連結部18の下部に作業部60の一部である伝動支持ケース61の基端部が接続され、連結部18の上部に作業部60の一部である伝動支持フレーム65が接続されている。このため、作業部60はオフセット機構部10に設けられた動力伝達軸14の中心軸線を回動支点Oとして回動可能である。
【0023】
伝動支持ケース61には、図1、図3(a)、図3(b)に示すように、その先端側には、圃場の周辺に沿って形成された旧畦の上部を切り崩す天場処理部62と、切り崩した土の土盛りを行なう前処理部64が配設され、伝動支持ケース61の基端側には盛られた土を切り崩された旧畦上に塗り付ける整畦部66が配設されている。伝動支持ケース61内には図示しない動力伝達機構が内蔵され、この動力伝達機構は、従動軸12からの動力を受けて天場処理部62、前処理部64、整畦部66に動力伝達可能に構成されている。
【0024】
なお、本実施形態においては、畦塗り機の構成のうち、回動支点Oを回動の中心軸として回動することが可能な部位であって、伝動支持ケース61及び伝動支持フレーム65を含み、その先端部側に配設される天場処理部62、前処理部64、整畦部66の構成を、作業部60として定義し、説明する。
【0025】
天場処理部62は、回転自在な天場処理ロータ62a(図3(b)参照)を備える。天場処理ロータ62aは天場動力伝達ケース63を介して上下方向に回動可能に伝動支持ケース61に連結された前処理部64の先端部に連結されるとともに、伝動支持フレーム65を介して支持されている。天場動力伝達ケース63内には図示しない動力伝達機構が内蔵され、この動力伝達機構を介して伝動支持ケース61の動力伝達機構に伝達された動力が天場処理ロータ62aに伝達されるようになっている。
【0026】
前処理部64は、回転自在な耕耘爪99(図2参照)を備える。耕耘爪99は伝動支持ケース61内の動力伝達機構を介して動力が伝達され、前処理部64は伝動支持ケース61に連結され伝動支持フレーム65を介して支持されている。
【0027】
整畦部66は、伝動支持ケース61に回転自在に支持された多面体ドラム66aと、多面体ドラム66aの右側端部に取り付けられて横方向に延びる円筒部66bとを有してなる。整畦部66は伝動支持ケース61内の動力伝達機構を介して動力が伝達されるように構成され、伝動支持ケース61に支持されている。このため、作業部60は連結部18を介してオフセット機構部10の先端側に設けられた動力伝達軸14(図4参照)の中心軸線を回動支点Oとして旋回可能である。
【0028】
次に、図5を参照しながら、オフセットフレーム11、リンク部材13、ヒッチフレーム6及び回動支持アーム15によって構成される平行リンク機構80に、本発明の特徴である第1ガススプリング20及び第2ガススプリング30を装着した構成を説明する。
なお、実際の畦塗り機の揺動機構においては、この平行リンク機構に先述の揺動シリンダ17(図5においては図示省略)を備えており、図5に示す通り、第1ガススプリング20及び第2ガススプリング30を備えることで、揺動シリンダ17にかかる負担を補助することとなる。
【0029】
また、図に示す通り、リンク部材13にはサポート部材40を備えており、互いに同程度の大きさの小型の第1ガススプリング20及び第2ガススプリング30は、一端をサポート部材40に回動自在に装着され、他端をオフセットフレーム11に回動自在に装着されている。
さらに、小型の第1ガススプリング20及び第2ガススプリング30は、省スペース化を目的として、共に同一平面上に配置される構成となっており、この点については後述する。
【0030】
そして、走行機体の走行方向における左右方向(図中S)に対して、第1ガススプリング20は時計回り方向に所定の角度(図中の角度α)ずらして装着され、第2ガススプリング30は反時計回り方向に所定の角度(図中の角度β)ずらして装着されており、この点については後述する。
なお、図5に示す状態は、畦塗り機の作業部が土作業を行わない非作業位置にある状態を示しており、揺動機構である平行リンク機構が揺動していない状態を示すものである。
【0031】
次に、ヒッチフレーム6に対してオフセットフレーム11が揺動することにより、第1ガススプリング20及び第2ガススプリング30が伸縮する動作について、図6(a)及び(b)を参照しながら説明する。
なお、図6(a)は、オフセットフレーム11を走行機体の進行方向に対して最も右側に移動させた状態(以下、「右作業位置」という)を示しており、図6(b)は、図5において示した非作業位置と図6(a)に示した作業位置との間(以下、「右移動途中位置」という)に移動させた状態を示している。
【0032】
ここで、本実施形態においては、図6(a)に示す通り、オフセットフレーム11を右作業位置に移動させたときに、第1ガススプリング20及び第2ガススプリング30が共に縮む(図中点線部分参照)こととなり、より詳細には、第1ガススプリング20の縮小幅(図中20a)よりも、第2ガススプリング30の縮小幅(図中30a)の方が大きくなる。
【0033】
このため、右作業位置から右移動途中位置に向けてオフセットフレーム11を移動させる際には、主に第2ガススプリング30の反発力を補助力とするとともに、追加的に第1ガススプリング20の反発力も働きながら、既設の揺動シリンダ17にかかる負担を補助することとなる。
【0034】
つまり、オフセットフレーム11を右作業位置から右移動途中位置に向けて移動させる際には、第1ガススプリング20及び第2ガススプリング30の協働作用により、既設の揺動シリンダ17の負担を大幅に軽減することができる。
よって、作業部の斜め上方に向けた移動であっても、軽い力で移動させることができることとなる。
【0035】
さらに、反対の動作として、オフセットフレーム11を右移動途中位置から右作業位置に向けて移動させる際には、図に示す通り、第1ガススプリング20の縮小幅の変化は僅かであるものの、第2ガススプリング30の縮小幅が大きく変化するため、移動が進むにつれて、第2ガススプリング30の反発力が順に大きくなっていく。
【0036】
このため、作業部が斜め下方に移動してしまうことに対して、第1ガススプリング20及び第2ガススプリング30の協働作用により、その移動の速度を軽減する働きを奏することができ、既設の揺動シリンダ17の負担を大幅に軽減するとともに、より安全に移動させることができる。
【0037】
次に、ヒッチフレーム6に対してオフセットフレーム11が、走行機体の進行方向左側の作業位置から非作業位置に向けて移動することにより、第1ガススプリング20及び第2ガススプリング30が伸縮する動作について、図7(a)及び(b)を参照しながら説明する。
なお、図7(b)は、オフセットフレーム11を走行機体の進行方向に対して最も左側に移動させた状態(以下、「左作業位置」という)を示しており、図7(a)は、図5において示した非作業位置と図7(b)に示した作業位置との間(以下、「左移動途中位置」という)に移動させた状態を示している。
【0038】
ここで、本実施形態においては、図7(b)に示す通り、オフセットフレーム11を左作業位置に移動させたときには、第1ガススプリング20及び第2ガススプリング30が共に縮む(図中点線部分参照)こととなり、より詳細には、第2ガススプリング30の縮小幅(図中31a)よりも、第1ガススプリング20縮小幅(図中21a)の方が大きくなる。
【0039】
このため、左作業位置から左移動途中位置に向けてオフセットフレーム11を移動させる際には、主に第1ガススプリング20の反発力を補助力とするとともに、追加的に第2ガススプリング30の反発力も働きながら、既設の揺動シリンダ17にかかる負担を補助することとなる。
【0040】
つまり、左作業位置から左移動途中位置に向けてオフセットフレーム11を移動させる際についても、第1ガススプリング20及び第2ガススプリング30の協働作用により、既設の揺動シリンダ17の負担を大幅に軽減することができる。
よって、作業部の斜め上方に向けた移動であっても、軽い力で移動させることができることとなる。
【0041】
さらに、反対の動作として、オフセットフレーム11を左移動途中位置から左作業位置に向けて移動させる際には、図に示す通り、第2ガススプリング30の縮小幅の変化は僅かであるものの、第1ガススプリング20の縮小幅が大きく変化するため、移動が進むにつれて、第1ガススプリング20の反発力が順に大きくなっていく。
【0042】
このため、作業部が斜め下方に移動してしまうことに対して、第1ガススプリング20及び第2ガススプリング30の協働作用により、その移動の速度を軽減する働きを奏することができ、既設の揺動シリンダ17の負担を大幅に軽減するとともに、より安全に移動することができる。
【0043】
次に、非作業位置(図5参照)と右移動途中位置(図6(b)参照)との間における移動、及び、非作業位置(図5参照)と左移動途中位置(図7(a)参照)との間における移動について、図8(a)〜(c)を参照しながら、第1ガススプリング20及び第2ガススプリング30が伸縮する動作を説明する。
なお、図8(a)は右移動途中位置を、図8(b)は非作業位置を、図8(c)は左移動途中位置を、それぞれ示すものである。
【0044】
ここで、本実施形態においては、図8(a)に示す通り、オフセットフレーム11が右移動途中位置において移動しているときに、第1ガススプリング20及び第2ガススプリング30は共に縮んでいる状態(図中点線部分参照)であるものの、より詳細には、第1ガススプリング20の縮小幅(図中20a)は僅かであり、第2ガススプリング30の縮小幅(図中30a)の方が大きくなっている。
【0045】
このため、右移動途中位置においては、非作業位置から右作業位置に向けた移動(図中矢印Mの方向)の途中であるか、右作業位置から非作業位置に向けた移動(図中矢印Nの方向)の途中であるかを問わず、第1ガススプリング20の反発力による働きは僅かであるものの、主に第2ガススプリング30の反発力を補助力として、既設の揺動シリンダ17にかかる負担を補助することとなる。
【0046】
そして、オフセットフレーム11が右移動途中位置から非作業位置に向けて移動すると、図に示す通り、第1ガススプリング20及び第2ガススプリング30の縮小幅は殆どなくなることとなる。
つまり、非作業位置においては、第1ガススプリング20及び第2ガススプリング30による働きは殆どなくなり、非作業位置における作業部の揺動の安定性を確保することができる。
【0047】
一方、オフセットフレーム11が左移動途中位置において移動しているとき(図8(c)参照)には、第1ガススプリング20及び第2ガススプリング30は共に縮んでいる状態(図中点線部分参照)であるものの、より詳細には、第2ガススプリング30の縮小幅(図中31a)は僅かであり、第1ガススプリング20の縮小幅(図中21a)の方が大きくなっている。
【0048】
このため、左移動途中位置においては、左作業位置から非作業位置に向けた移動(図中矢印Mの方向)の途中であるか、非作業位置から左作業位置に向けた移動(図中矢印Nの方向)の途中であるかを問わず、第2ガススプリング30の反発力による働きは僅かであるものの、主に第1ガススプリング20の反発力を補助力として、既設の揺動シリンダ17にかかる負担を補助することとなる。
【0049】
そして、オフセットフレーム11が左移動途中位置から非作業位置に向けて移動すると、図8(b)に示す通り、第1ガススプリング20及び第2ガススプリング30の縮小幅は殆どなくなることとなる。
つまり、非作業位置においては、第1ガススプリング20及び第2ガススプリング30による働きは殆どなくなり、非作業位置における作業部の揺動の安定性を確保することができる。
【0050】
なお、実際上、非作業位置においては、第1ガススプリング20及び第2ガススプリング30の縮小幅は殆どなくなる、又は、互いに別方向に向けて伸縮する僅かな伸縮であるため互いに反発力を打ち消し合う(釣り合う)ことになるため、非作業位置における2本のガススプリングの反作用の影響が殆どなくなり、非作業位置におけるオフセットフレーム11の動作上の安定性が保たれる。
【0051】
以上から、本発明によれば、二本の小型の伸縮部材による協働作用により、互いの伸縮部材の反発力を同時に活かすことが可能となり、作業部の作業位置と非作業位置との間の移動を軽い力で行うことができるとともに、非作業位置における作業部の揺動の安定性を確保することができる。
【0052】
具体的には、作業位置から非作業位置に向けて移動させるときに、共に縮んでいる2本のガススプリングの協働作用によって、既設の揺動シリンダの負担を大幅に軽減するとともに、軽い力で非作業位置に向けて移動させることが可能になる。
また、非作業位置付近においては、2本のガススプリングの伸縮が殆どなくなっているため、2本のガススプリングの反発力の影響を受けることなく、非作業位置における作業部の移動上の安定性を保つことができる。
さらに、非作業位置から作業位置に向けて移動させるときに、2本のガススプリングが共に縮むことによる協働作用によって、既設の揺動シリンダの負担を大幅に軽減するとともに、その移動の速度を軽減する働きを奏しながら、より安全に移動することができる。
【0053】
また、本発明によれば、大型の伸縮部材を用いることなく、二本の小型の伸縮部材により、作業部の作業位置と非作業位置との間の移動のサポートが可能となるため、コスト面や重量面における問題を解消することができ、大型の伸縮部材の装着に伴う大掛かりな取り付け機構を必要としないことから、省スペースとしての効果も奏することができる。
【0054】
そして、小型の第1ガススプリング20及び第2ガススプリング30は、省スペース化を目的として共に同一平面上に配置される構成となっており、このため、これら二本のガススプリングの上方向及び下方向の空間を確保することが可能となり、作業部を作業位置と非作業位置との間で移動させる際に、他の構成部品等(図1参照)との干渉を生じない構成となっている。
【0055】
また、小型の第1ガススプリング20及び第2ガススプリング30は、図5に示した通り、既設のヒッチフレーム11とサポート部材40(設計上、リンク部材13でも良い)との間に架け渡して配置されていることから、取り回しが良く、設計上の制約も少ないものである。
【0056】
なお、本発明における第1ガススプリング20及び第2ガススプリング30は、作業部が作業位置にあるときに共に縮んだ状態となり、非作業位置において共に略伸びきった状態となるかぎり、その装着される角度、装着される位置や構成、ガススプリング自身の大きさを問わず、適用が可能なものである。
【0057】
このガススプリング自身の大きさに関しては、図5に示した通り、オフセットフレーム11とリンク部材13との距離間隔よりも長い二本のガススプリングを採用したことから、サポート部材40を設け、そのサポート部材40に二本のガススプリングを装着した構成としているものの、より小さい二本のガススプリングを採用する場合には、直接リンク部材13に装着する構成としてもよく、第1ガススプリング20及び第2ガススプリング30の大きさに合わせて、装着する構成を設計変更してもよいものである。
【0058】
また、二本のガススプリングの装着される位置に関しては、第1ガススプリング20及び第2ガススプリング30を互いに近接した位置に装着した構成を示したものの、例えば、第1ガススプリング20をヒッチフレーム11に近接した位置に装着させるとともに、第2ガススプリング30を回動支持アーム15に近接した位置に装着させる構成としてもよく、二本のガススプリングの距離間隔を問わないものである。
【0059】
ここにおいて、二本のガススプリングの装着される角度について、先述した通り本実施形態においては、第1ガススプリング20は時計回り方向に所定の角度(図中の角度α)ずらして装着され、第2ガススプリング30は反時計回り方向に所定の角度(図中の角度β)ずらして装着されており、この角度α及び角度βは、時計方向に対してずらした方向は異なるものの、ほぼ同じ角度分として設定されたものである。
【0060】
この点、本発明においては、この角度α及び角度βについて、図5に示す構成に限定するものではなく、二本のガススプリングが作業位置にあるときに共に縮んだ状態となり、非作業位置において共に略伸びきった状態となるかぎり、これらの角度を異なる角度分として適宜、設定変更しても適用が可能なものである。
【0061】
より詳細に説明すると、本実施形態においては、左右方向(図中S)を基準として同程度の大きさの二本のガススプリングを同じ角度分(角度α及び角度β)ずらして平行リンク機構80に装着し、かつ、図5に示す非作業位置において、先述した通り、二本のガススプリングの伸縮が殆どなくなるように設計しているため、作業部がこの非作業位置にあるときに、揺動の安定性が確保される構成としている。
【0062】
そして、これらの点について、左右方向(図中S)を基準として同程度の大きさの二本のガススプリングを異なる角度分ずらして平行リンク機構80に装着しても良く、仮に、そのような構成にした場合には、二本のガススプリングの伸縮が殆どなくなる位置に変更を生じることとなる。
【0063】
つまり、二本のガススプリングが共に略伸びきった状態となる位置については、先述した非作業位置ではなく、作業部の非作業位置と作業位置との間の移動の軌跡上における別の位置に変更することとなり、その位置を新たな非作業位置として設定するとともに、当該作業部を安定的に保持したい位置として設定してもよいものである。
【0064】
この点について、例えば、二本のガススプリングのうち、一方のガススプリングをヒッチフレーム6と平行な方向に装着し、他方のガススプリングについては左右方向(図中S)を基準として所定の角度分ずらして装着する構成としても可能なものである。
【0065】
さらに、本実施形態においては、二本のガススプリングを同程度の反発力の伸縮部材として構成しているものの、本発明においては、二本のガススプリングが同程度の反発力であることに限定するものではなく、二本のガススプリングが作業位置にあるときに共に縮んだ状態となり、非作業位置において共に略伸びきった状態となるかぎり、異なる反発力の二本のガススプリングを装着し、適宜、設定変更しても良いものである。
【0066】
より詳細に説明すると、反発力の大きさが異なる二本の小型のガススプリングについて、左右方向(図中S)を基準として同じ角度分ずらして装着し、作業部の非作業位置と作業位置との間の移動の軌跡上であるとともにその二本のガススプリングの伸縮が共に殆どなくなる位置であって、作業部を安定的に保持したい位置を新たな非作業位置として設定してもよいものである。
【0067】
以上述べた通り、本発明においては、第1ガススプリング20及び第2ガススプリング30について、作業部が作業位置にあるときに共に縮んだ状態となり、非作業位置において共に略伸びきった状態となるかぎり、そのガススプリングの装着される角度、装着される位置や構成、ガススプリング自身の大きさを適宜設定変更することで、二本のガススプリングの伸縮が共に殆どなくなる位置であって、作業部を安定的に保持したい位置を新たな非作業位置として設定することも可能なものである。
【0068】
具体的には、例えば、非作業位置(図8(b)参照)と右移動途中位置(図8(a)参照)との間の位置を新たな非作業位置として設定してもよく、若しくは、非作業位置(図8(b)参照)と左移動途中位置(図8(c)参照)との間の位置を新たな非作業位置として設定してもよいものである。
【符号の説明】
【0069】
1 畦塗り機
6 ヒッチフレーム
10 オフセット機構部
11 オフセットフレーム
13 リンク部材
15 回動支持アーム
20 第1ガススプリング
30 第2ガススプリング
40 サポート部材
80 平行リンク機構
90 走行機体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に装着される畦塗り機であって、
前記走行機体の走行により作業を行う作業位置と、前記走行機体の後方に配置され作業を行わない非作業位置とに移動が可能な作業部と、
前記作業部の前記作業位置から前記非作業位置への斜め上への移動を補助するとともに、前記非作業位置から前記作業位置への斜め下方への移動の速度を減少させる第1ガススプリング及び第2ガススプリングと、を備え、
前記第1ガススプリング及び前記第2ガススプリングは、前記走行機体の走行方向における左右方向に対して互いに異なる角度で装着されており、
前記第1ガススプリング及び前記第2ガススプリングは、前記作業部が前記非作業位置から前記作業位置へ向けて移動されて、前記作業位置において共に縮むとともに縮む長さが互いに異なる状態となり、
前記作業部が前記作業位置から前記非作業位置へ向けて移動される際に、共に伸びるとともに伸びる長さが互いに異なることを特徴とする畦塗り機。
【請求項2】
前記第1ガススプリング及び前記第2ガススプリングは、同一平面上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の畦塗り機。
【請求項3】
前記第1ガススプリング及び前記第2ガススプリングは、前記作業部が前記非作業位置に移動されたときに、略伸びきった状態となることを特徴とする請求項1乃至請求項2のいずれかに記載の畦塗り機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−191867(P2012−191867A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56589(P2011−56589)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(390010836)小橋工業株式会社 (198)
【Fターム(参考)】