説明

畦立て作業装置

【課題】 コンクリート畦畔際の残耕土をきれいに除去可能な畦立て作業装置を提供する。
【解決手段】 畦立て作業装置1は、機体10の前側から一対の車輪11、耕耘ロータ20、畦立て機40を備える。右側の車輪11にはこの車軸11aに取り付けられて車輪11と共に回転してコクリート畦畔に当接して機体10のコンクリート畦畔側への接近動を規制する移動規制板14が設けられる。耕耘ロータ20の右側端部にはコンクリート畦畔際の残耕土を耕耘する縦耕耘爪24及び横耕耘爪25が設けられ、これらの耕耘爪は基部に対して先端側が外側に偏心している。移動規制板14の外側端面、縦耕耘爪24及び横耕耘爪25の各外側面及び畦立て機40の右側面44は略同一平面上に配置されている。回転軸21の右側最端部には、縦耕耘爪24及び横耕耘爪25の各偏心部24c、25cがコンクリート畦畔に当接するのを防止する板状部材60が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、進行方向前側から耕耘ロータ及び畦立て機を配設した機体の走行に伴って畦立て作業を行う畦立て作業装置に関し、特にコンクリート畦によって区切られた水田圃場の畦際に溝と所定高さの土盛りを行う畦立て作業装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水田のコンクリート畦際の残耕土をトラクタ等に装着された耕耘機によって耕耘する場合、耕耘機の端部がコンクリート畦畔に当接して耕耘機が損傷する虞があるため、土畦と異なり、コンクリート畦際の残耕土を耕耘することは難しい。このため、10〜15cm程度の残耕土がコンクリート畦に沿って残り、そこに雑草等が生えて、これを手作業(鍬等)で除去する必要があるが、この作業は大きな負担となっていた。
【0003】
この問題を解決するのが特許文献1に記載の畦立て作業装置(文献ではコンクリート畦畔際残耕処理装置)である。この畦立て作業装置は、トラクタ等の走行機体の後部に装着された耕耘機に取り付けられて走行機体の前進走行に伴ってコンクリート畦畔の際の残耕土を除去するものである。
【0004】
この畦立て作業装置は、耕耘機の耕耘ロータ(文献ではロータリ耕耘部)の一方側端部に配設されたサイドフレームに取り付けられた排土板を有して構成される。排土板は、先端部がコンクリート畦畔の近傍位置に設置されて後部側が後方斜め内側に延びるように配置されるとともに、耕耘ロータによる耕土の耕耘範囲内に配置される。従って、走行機体が前進走行すると、耕耘ロータによって耕耘された直後のコンクリート畦畔際の残耕土は、排土板によって掘り起こされて耕耘ロータの耕耘爪の回転によって耕耘範囲内に案内されて、内側に配設された耕耘爪によって細かな土に砕かれる。
【0005】
【特許文献1】実開平6−7401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した特許文献1に記載の畦立て作業装置は、搭乗型のトラクタの後部に装着される耕耘機に取り付けられるものである。このため、トラクタに搭乗した作業者は斜め後方に位置する排土板を目視で確認しながら、排土板がコンクリート畦畔際に位置するように、トラクタを運転する必要がある。しかしながら、圃場表面に凹凸があってトラクタが揺れて作業者が誤った運転操作をすると、トラクタの進行方向がコンクリート畦畔の延びる方向とずれて、排土板の位置や向きが変化してコンクリート畦畔際の残耕土をきれいに除去することができなくなる。
【0007】
また、搭乗型のトラクタは一般的に前後方向長さが長いため、トラクタの進行方向が僅かにずれても、排土板の位置や向きは大きくずれる。このため、排土板をコンクリート畦畔際に沿って移動させるのは困難である。その結果、特許文献1に記載の畦立て作業装置では、コンクリート畦畔際の残耕土をきれいに除去することが困難であるという問題を有する。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、畦立て作業装置を常にコンクリート畦畔に沿って移動させて、コンクリート畦畔際の残耕土をきれいに除去可能な畦立て作業装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の畦立て作業装置は、車輪を有して走行可能な機体に車輪より進行方向後側に配置された耕耘ロータを設け、該耕耘ロータの後側に配置されて耕耘ロータによって耕耘された耕土を除去する畦立て機を設けた畦立て作業装置において、耕耘ロータより前側の機体の片側の側方に配設されて外側端面がコンクリート畦畔に面して当接して機体のコンクリート畦畔側への接近動を規制する移動規制板を有し、該移動規制板の外側端面、耕耘ロータの最外側端部に配設された耕耘爪の外側面及び畦立て機の外側面が略同一平面上に配置されていることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、移動規制板の外側端面、耕耘ロータの最外側端部に配設された耕耘爪の外側面及び畦立て機の外側面を略同一平面上に配置することにより、移動規制板をコンクリート畦畔の内側面に近接させた状態で機体をコンクリート畦畔に沿って移動させた場合、機体の移動方向がコンクリート畦畔側にずれると、移動規制板がコンクリート畦畔に当接して機体のコンクリート畦畔側への移動が規制される。このため、移動規制板の進行方向後方側に配設された耕耘ロータ及び畦立て機のコンクリート畦畔側への移動も規制され、機体はコンクリート畦畔に沿って安定して移動することができる。その結果、畦立て機はコンクリート畦畔際に沿って移動して、コンクリート畦畔際の残耕を確実に除去することができる。また走行機体を操作する作業者が移動規制板をコンクリート畦畔の内側面に当接させるように操作しても、走行機体の走行方向はコンクリート畦畔に沿うように修正されるので、作業者は走行機体の走行方向がコンクリート畦畔に沿うように常に操作する必要はなく、走行機体をコンクリート畦畔に沿わせるための熟練操作は不要である。このため、畦立て作業の作業性を向上させることができる。
【0011】
また本発明は、移動規制板が、車輪の車軸に取り付けられて該車輪と共に回転動可能であることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、移動規制板を車輪の車軸に取り付けて車輪と共に回転動可能にすることにより、移動規制板はコンクリート畦畔の内側面に回転しながら接触する。このため、移動規制板とコンクリート畦畔との間の摩擦による接触抵抗を抑制することができ、機体の走行安定性を向上させることができる。
【0013】
また本発明は、耕耘ロータが、その回転軸に軸方向に所定間隔を有して配設された複数の耕耘爪を有し、これら複数の耕耘爪は、該耕耘爪の先端部の回転軌跡を、耕耘ロータの片側最端部に配設されたものが最も大きく、片側最端部から内側に進むに従って次第に小さくなるように形成されていることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、耕耘ロータの回転軸に設けられた複数の耕耘爪は、耕耘爪の先端部の回転軌跡を、耕耘ロータの片側最端部に配設されたものが最も大きく、片側最端部から内側に進むに従って次第に小さくなるように形成されることにより、耕深の大きさを畦幅方向の内側に進むに従って次第に浅くすることができ、所望の深さの溝を形成するとともに、所定の傾斜面及び高さを有した畦を溝に隣接して形成することができる。
【0015】
さらに本発明は、耕耘ロータの片側最端部に、回転軸の回転中心線に対して直交する方向に連続的に延びる縦刃部を有した縦耕耘爪と耕耘ロータの軸方向内側に湾曲する横刃部を有した横耕耘爪とが設けられることを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、耕耘ロータの片側最端部に、縦刃部を有した縦耕耘爪と横刃部を有した横耕耘爪とを設けることにより、縦耕耘爪がコンクリート畦畔の内面近傍の残耕土に直交するように打ち込まれて、コンクリート畦畔内面近傍の残耕土をコンクリート畦畔内面から切り離し、横耕耘爪によってコンクリート畦畔内面から切り離された残耕土を耕耘するとともに、コンクリート畦畔から離反する方向に移動させる。このため、コンクリート畦畔際の残耕土を確実に排除することができる。
【0017】
また本発明は、縦耕耘爪及び横耕耘爪は、これらの各取付け基部に対して先端側が外側に偏心していることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、縦耕耘爪及び横耕耘爪は、これらの各取付け基部に対して先端側が外側に偏心していることにより、縦耕耘爪及び横耕耘爪を取り付ける回転軸の端部より外側位置に縦耕耘爪及び横耕耘爪の先端側を配置することができる。このため、縦耕耘爪及び横耕耘爪の先端側の外側面がコンクリート畦畔の内面に接触しても、回転軸の端部や縦耕耘爪及び横耕耘爪を保持するための回転軸に設けられた取付部がコンクリート畦畔に当接する虞はない。その結果、回転軸や取付部が損傷する事態を未然に防止することができる。
【0019】
また本発明は、回転軸の片側最端部に配設され、縦耕耘爪及び横耕耘爪の回転方向の少なくとも前側であって縦耕耘爪及び横耕耘爪の各偏心部より外側に配置されて、側面視において偏心部の移動軌跡より広い移動軌跡を描く板状部材を有することを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、回転軸の片側最端部に板状部材を配設し、この板状部材を、縦耕耘爪及び横耕耘爪の回転方向の少なくとも前側であって縦耕耘爪及び横耕耘爪の各偏心部より外側に配置して、側面視において偏心部の移動軌跡より広い移動軌跡を描くように構成することで、偏心部の回転方向前側及び外側に、常に板状部材を配置することができるので、耕耘ロータが回転しているときに、偏心部がコンクリート畦畔に接触してコンクリートを破損させたり、取付部やこれに取り付けられた耕耘爪が損傷するのを未然に防止することができる。
【0021】
さらに本発明は、板状部材が、回転軸に対して放射状に延びる突出部を複数有し、該突出部の回転方向前側の端面が回転方向後側へ湾曲することを特徴とする。
【0022】
この発明によれば、板状部材は回転軸に対して放射状に延びる突出部を有し、この突出部の回転方向前側の端面が回転方向後側へ湾曲することにより、板状部材が回転した場合、その回転方向前側の端面は回転方向に対して常に斜め後方側に延びるので、回転方向前側の端面に残耕土が当接しても、この土を上方へ跳ね飛ばす力は小さくなる。その結果、板状部材の回転による残耕土の飛散を抑制することができる。
【0023】
また本発明は、突出部は、縦耕耘爪及び横耕耘爪のそれぞれの回転方向前側に配設されていることを特徴とする。
【0024】
この発明によれば、突出部を縦耕耘爪及び横耕耘爪のそれぞれの回転方向前側に配設することにより、縦耕耘爪及び横耕耘爪を取り付ける取付部やこれから延びる耕耘爪の基部によって残耕土が上方へ飛散しようとしても、これらの回転方向前側に配設された突出部によって耕土の飛散が抑制される。このため、縦耕耘爪及び横耕耘爪の回転による残耕土の飛散量を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係わる畦立て作業装置によれば、移動規制板の外側端面、耕耘ロータの最外側端部に配設された耕耘爪の外側面及び畦立て機の外側面を略同一平面上に配置することにより、畦立て作業装置を常にコンクリート畦畔に沿って移動させて、コンクリート畦畔際の残耕土をきれいに除去可能な畦立て作業装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の畦立て作業装置の好ましい実施の形態を図1から図6に基づいて説明する。本実施の形態は、歩行型の畦立て作業装置について説明する。なお、説明の都合上、図1(斜視図)に示す矢印の方向を前後方向及び左右方向として以下説明する。
【0027】
畦立て作業装置1は、図1に示すように、歩行型の耕耘機(例えば、5〜6馬力の耕耘機)をベースに構成されており、左右両側に一対の車輪11を有して走行可能な機体10の上部にエンジン12を搭載し、車輪11より進行方向後側に耕耘ロータ20を設け、この耕耘ロータ20の後方側に耕耘ロータ20によって耕耘された耕土を排除して畦立てる畦立て機40を設け、機体10から後方斜め上方へ延びる操作ハンドル50を有して構成されている。
【0028】
右側の車輪11には、この車軸11aに同軸上に連結されて右側に延びる軸部13が取り付けられ、この軸部13の先端部には略垂直方向に延びる円板状の移動規制板14が取り付けられている。このため、車輪11が回転すると、移動規制板14も一緒に回転する。移動規制板14は、この外側端面がコンクリート畦畔に面して当接して機体10のコンクリート畦畔側への接近動を規制する。なお、移動規制板14は車輪11から所定距離を有した位置に配置されている。
【0029】
機体10の左右方向中央部には後方側へ延びる伝動ケース55が設けられ、この伝動ケース55の先端部には左右方向に延びる伝動軸が突出して設けられている。この伝動軸に耕耘ロータ20が装着されている。耕耘ロータ20は伝動軸に連結されて左右方向に延びる回転軸21に複数の耕耘爪23,27,29,30を放射状に取り付けて構成されている。耕耘ロータ20は、エンジン12からの動力が伝動軸を介して耕耘ロータ20の回転軸21に伝達されて矢印Aに示す方向(アップカット方向)に回転動するように構成されている。
【0030】
耕耘ロータ20には、図2(背面図)に示すように、回転軸21の右側端部に配設されてコンクリート畦畔際の残耕土を耕耘する耕耘爪23,27と、耕耘爪27より左側に配置されて圃場内の耕土を耕耘する耕耘爪29,30が設けられている。
【0031】
コンクリート畦畔際の残耕土を耕耘する耕耘爪23は、耕耘ロータ20の右側最端部に配設されており、回転軸21の回転中心線に対して直交する方向に連続的に延びる縦刃部24aを有した縦耕耘爪24と耕耘ロータ20の軸方向内側に湾曲する横刃部25aを有した横耕耘爪25とを有して構成されている。縦耕耘爪24及び横耕耘爪25は、回転軸21の周面に固着されて回転軸21の回転中心軸に対して直交する方向に延びる取付部22に着脱可能に取り付けられている。取付部22は回転軸21の外周に等間隔を有して4個設けられており、これらの取付部22に縦耕耘爪24及び横耕耘爪25が交互に挿着されている。
【0032】
縦耕耘爪24は、取付部22に挿着されて直線状に延びる取付け基部24bと、取付け基部24bの先端部に繋がって外側に屈曲して再び径方向外側に屈曲する偏心部24cと、偏心部24cの先端部に繋がって取付け基部24bと略平行に径方向外側へ延びる直爪部24dとを有して構成される。一方、横耕耘爪25は、取付部22に挿着されて直線状に延びる取付け基部25bと、取付け基部25bの先端部に繋がって外側に屈曲して再び径方向外側に屈曲する偏心部25cと、偏心部25cの先端部に繋がって径方向外側へ延びるとともに回転軸21の内側方向へ湾曲する横爪部25dとを有してなる。つまり、縦耕耘爪24は、偏心部24cによって取付け基部24bに対して直爪部24dを外側に偏心した位置に配置してなり、横耕耘爪25は、偏心部25cによって取付け基部25bに対して横爪部25dを外側に偏心した位置に配置してなる。
【0033】
縦耕耘爪24に設けられた偏心部24cは、取付け基部24bを取付部22に挿着すると、直爪部24dが取付部22より外側に位置するように形成されている。また横耕耘爪25に設けられた偏心部25cは、取付け基部25bを取付部22に挿着すると、横爪部25dの少なくとも基部が取付部22より外側に位置するように形成されている。この偏心部24c,25cの機能については後述する。
【0034】
回転軸21の右側最端部に取り付けられた縦耕耘爪24及び横耕耘爪25より左側に配設された耕耘爪27は、回転軸21を中央にして対向して配置された一対の横耕耘爪28を有して構成されている。さらに、この横耕耘爪28より左側の回転軸21には、軸方向に所定間隔を有して取り付けられた複数の耕耘爪29が取り付けられている。また伝動ケース55の左右両側の回転軸21には伝動ケース55の先端部が通過する部分の耕土を耕耘する耕耘爪30が取り付けられている。
【0035】
縦耕耘爪24、横耕耘爪25、一対の横耕耘爪28及び耕耘爪29は、これらの耕耘爪の先端部の回転軌跡を、耕耘ロータ20の右側最端部に配設されたものが最も大きく、右側最端部から内側に進むに従って次第に小さくなるように形成されている。即ち、縦耕耘爪24、横耕耘爪25、一対の横耕耘爪28は、同一の回転軌跡を有し、耕耘爪29は耕耘爪24,25,28の回転軌跡より小径であり、耕耘爪30は耕耘爪29の回転軌跡より小径である。
【0036】
回転軸21の右側最端部には、図1及び図3(側面部)に示すように、縦耕耘爪24及び横耕耘爪25の回転方向の前側であって縦耕耘爪24及び横耕耘爪25の各偏心部24c,25cより外側に配置されて、側面視において偏心部24c,25cの移動軌跡より広い移動軌跡を描く板状部材60が取り付けられている。
【0037】
板状部材60は、円板状の本体部61の周縁部に等間隔を有して配置されて径方向外側へ延びる4つの突出部62を有してなる。突出部62の回転方向前側の端面62aは回転方向後側へ湾曲して延びる。また突出部62の回転方向後側の端面62bも回転方向後側へ湾曲して延びて隣接する他の突出部62の前側の端面62aに繋がっている。後側の端面62bは、隣接する縦耕耘爪24又は横耕耘爪25の回転方向前側に配置されている。つまり、突出部62はこれに隣接する縦耕耘爪24又は横耕耘爪25の回転方向前側に配置されている。板状部材60の回転半径は、これに隣接して配設された縦耕耘爪24及び横耕耘爪25のそれらより小さい。
【0038】
耕耘ロータ20の後方側にはこれによって耕耘された耕土を除去する畦立て機40が配設されている。畦立て機40は、機体10の後部に取り付けられて左右方向に延びる支持杆15に取り付けられており、耕耘ロータ20に設けられた縦耕耘爪24、横耕耘爪25、これらに隣接配置された横耕耘爪28に対向して配置されている。畦立て機40は、前側に配設されて耕土を排除する排除板41と、排除板41の下部後方側に配設された底板42と、底板42の左側に配設されて排除板41によって排除された耕土を畦上に押し付けてならす均し板43と、底板42の右側に配設されて略垂直方向に延びる右側板44とを有してなる。
【0039】
さて、図4(正面図)に示すように、前述した移動規制板14の外側端面14a、耕耘ロータ20の右側最端部に配設された縦耕耘爪24の外側面、横耕耘爪25の外側面及び畦立て機40の右側板44の外側面は略同一平面上に配置されている。なお、図4においては、移動規制板14、耕耘ロータ20及び畦立て機40の位置関係を明瞭にするため、板状部材は省略した。
【0040】
次に、コンクリート畦畔Kの際に溝Mと所定高さの土盛りを行う場合の畦立て作業装置1の動作について説明する。図2、図3及び図5(平面図)に示すように、先ず、畦立て作業装置1をコンクリート畦畔Kに沿って近接して設置する。そして、畦立て作業装置1のエンジン12を駆動して車輪11を回転動させ、且つ耕耘ロータ20を回転動させると、畦立て作業装置1は前進走行(矢印B方向に走行)して、コンクリート畦畔際の残耕土Zが縦耕耘爪24,横耕耘爪25及びこれらに隣接する横耕耘爪28,耕耘爪29によって耕耘される。そして、耕耘された残耕土は、排除板41によって内側方向に排除される。そして、排除された残耕土は、縦耕耘爪24,横耕耘爪25及びこれらに隣接する横耕耘爪28の作用により内側に寄せられ、畦立て作業装置1の進行にともなって均し板43に沿って畦U上に押し付けられる。その結果、図6(断面図)に示すコンクリート畦畔K際に溝Mを形成するとともに、所望の高さの畦Uを形成することができる。
【0041】
ここで、移動規制板14をコンクリート畦畔Kの内側面に近接させた状態で機体10をコンクリート畦畔Kに沿って前側に移動させているときに、機体10の移動方向がコンクリート畦畔K側にずれると、移動規制板14がコンクリート畦畔Kに当接して機体10のコンクリート畦畔側への移動が規制される。そして、移動規制板14の後方側に配設された耕耘ロータ20及び畦立て機40のコンクリート畦畔側への移動も規制される。このため、機体10はコンクリート畦畔に沿って安定して移動することができる。その結果、畦立て機40はコンクリート畦畔際に沿って移動して、コンクリート畦畔際の残耕土Zを確実に除去することができる。
【0042】
また畦立て作業装置1を操作する作業者(図示せず)が移動規制板14をコンクリート畦畔Kの内側面に当接させるように操作しても、移動規制板14がコンクリート畦畔Kに当接して機体10の走行方向がコンクリート畦畔Kに沿うように修正されるので、作業者は機体10の走行方向がコンクリート畦畔Kに沿うように常に緊張して操作する必要はない。つまり、機体10の走行方向をコンクリート畦畔Kに沿わせるための熟練操作は不要である。このため、畦立て作業の作業性を向上させることができる。また畦立て作業装置1の機体10は歩行型の耕耘機をベースに構成されているので、畦立て作業装置1の前後長さは一般的に短い。このため、機体10の進行方向がずれても、畦立て機40の位置や向きのずれ量は小さい。このため、移動規制板14がコンクリート畦畔Kに当接したり離反したりしても、畦立て機40の位置変動は小さく、その結果、畦立て機40は常にコンクリート畦畔際に沿って移動して、コンクリート畦畔際の残耕土をきれいに除去することができる。
【0043】
また移動規制板14は車輪11の車軸11aに取り付けて車輪11と共に回転動可能であるので、移動規制板14はコンクリート畦畔Kの内側面に回転しながら接触する。このため、移動規制板14とコンクリート畦畔Kとの間の摩擦による接触抵抗を抑制することができ、機体10の走行安定性を向上させることができる。
【0044】
また耕耘ロータ20の回転軸21に設けられた複数の耕耘爪24,25,28,29,30は、これらの先端部の回転軌跡を、耕耘ロータ20の右側最端部に配設されたものが最も大きく、右側最端部から内側に進むに従って次第に小さくなるように形成されているので、耕深の大きさを畦幅方向の内側に進むに従って次第に浅くすることができる。このため、必要な耕深のみを得ることができ、無駄な作業馬力をとることもなく、所望の深さの溝Mを形成するとともに、所定の傾斜面及び高さを有した畦Uを溝Mに隣接して形成することができる。
【0045】
さらに、耕耘ロータ20の右側最端部に、縦耕耘爪24と横耕耘爪25とを設けることにより、縦耕耘爪24がコンクリート畦畔Kの内面近傍の残耕土に直交するように打ち込まれて、この残耕土をコンクリート畦畔内面から切り離し、横耕耘爪25によってこの切り離された残耕土を耕耘するとともに、耕耘ロータ20の軸方向左側へ移動させる。このため、コンクリート畦畔際の残耕土を確実に排除することができる。
【0046】
また縦耕耘爪24及び横耕耘爪25は、これらの各取付け基部24b,25bに対して先端側が外側に偏心しているので、回転軸21の右側端部より外側位置に縦耕耘爪24及び横耕耘爪25の先端側を配置することができる。このため、縦耕耘爪24及び横耕耘爪25の先端側の外側面がコンクリート畦畔Kの内面に接触しても、回転軸21の端部や縦耕耘爪24及び横耕耘爪25を保持するための取付部22がコンクリート畦畔Kに当接する虞はない。その結果、回転軸21や取付部22が損傷する事態を未然に防止することができる。
【0047】
また回転軸21の右側最端部に配設された板状部材60は、縦耕耘爪24及び横耕耘爪25の回転方向の前側であって縦耕耘爪24及び横耕耘爪25の各偏心部24c,25cより外側に配置されて、側面視において偏心部24c,25cの移動軌跡より広い移動軌跡を描くように構成されているので、偏心部24c,25cの回転方向前側及び外側には、常に板状部材60が配置されている。このため、耕耘ロータ20が回転しているときに、偏心部24c,25cがコンクリート畦畔Kに接触してコンクリートを破損させたり、取付部22やこれに取り付けられた耕耘爪23が損傷したりするのを未然に防止することができる。
【0048】
さらに、板状部材60は回転軸21に対して放射状に延びる突出部62を有し、この突出部62の回転方向前側の端面62aは回転方向後側へ湾曲しているので、板状部材60が回転すると、その回転方向前側の端面62aは回転方向に対して常に斜め後方側に傾斜するので、回転方向前側の端面62aに残耕土が当接しても、この土を上方へ跳ね飛ばす力は小さくなる。その結果、板状部材60の回転による残耕土の飛散を抑制することができる。
【0049】
また突出部62は、縦耕耘爪24及び横耕耘爪25のそれぞれの回転方向前側に配設されているので、縦耕耘爪24及び横耕耘爪25を取り付ける取付部22やこれから延びる耕耘爪23の基部によって残耕土が上方へ飛散しようとしても、これらの回転方向前側に配設された突出部62によって残耕土の飛散が抑制される。このため、縦耕耘爪24及び横耕耘爪25の回転による残耕土の飛散量を少なくすることができる。
【0050】
なお、前述した実施形態では、耕耘ロータ20をアップカット方向に回転させた場合を示したが、ダウンカット方向に回転させてもよい。また、移動規制板14,縦耕耘爪24,横耕耘爪25,畦立て機40を機体10の進行方向左側に配設してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施の形態に係わる畦立て作業装置を斜め後方から見た斜視図を示す。
【図2】この畦立て作業装置の背面図を示す。
【図3】この畦立て作業装置の右側面図を示す。
【図4】この畦立て作業装置の正面図を示す。
【図5】この畦立て作業装置の動作を説明するための平面図を示す。
【図6】この畦立て作業装置よって形成される溝及び畦の断面図を示す。
【符号の説明】
【0052】
1 畦立て作業装置
10 機体
11 車輪
14 移動規制板
14a 外側端面
20 耕耘ロータ
21 回転軸
23,27,29,30 耕耘爪
24 縦耕耘爪
24a 縦刃部
24b,25b 取付け基部
24c,25c 偏心部
25,28 横耕耘爪
25a 横刃部
40 畦立て機
60 板状部材
62 突出部
62a 端面
K コンクリート畦畔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を有して走行可能な機体に前記車輪より進行方向後側に配置された耕耘ロータを設け、該耕耘ロータの後側に配置されて前記耕耘ロータによって耕耘された耕土を除去する畦立て機を設けた畦立て作業装置において、
前記耕耘ロータより前側の前記機体の片側の側方に配設されて外側端面がコンクリート畦畔に面して当接して前記機体の前記コンクリート畦畔側への接近動を規制する移動規制板を有し、
該移動規制板の外側端面、前記耕耘ロータの最外側端部に配設された耕耘爪の外側面及び前記畦立て機の外側面が略同一平面上に配置されていることを特徴とする畦立て作業装置。
【請求項2】
前記移動規制板は、前記車輪の車軸に取り付けられて該車輪と共に回転動可能であることを特徴とする請求項1に記載の畦立て作業装置。
【請求項3】
前記耕耘ロータは、その回転軸に軸方向に所定間隔を有して配設された複数の耕耘爪を有し、これら複数の耕耘爪は、該耕耘爪の先端部の回転軌跡を、前記耕耘ロータの片側最端部に配設されたものが最も大きく、片側最端部から内側に進むに従って次第に小さくなるように形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の畦立て作業装置。
【請求項4】
前記耕耘ロータの片側最端部には、前記回転軸の回転中心線に対して直交する方向に連続的に延びる縦刃部を有した縦耕耘爪と前記耕耘ロータの軸方向内側に湾曲する横刃部を有した横耕耘爪とが設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の畦立て作業装置。
【請求項5】
前記縦耕耘爪及び前記横耕耘爪は、これらの各取付け基部に対して先端側が外側に偏心していることを特徴とする請求項4に記載の畦立て作業装置。
【請求項6】
前記回転軸の片側最端部に配設され、前記縦耕耘爪及び前記横耕耘爪の回転方向の少なくとも前側であって前記縦耕耘爪及び前記横耕耘爪の各偏心部より外側に配置されて、側面視において前記偏心部の移動軌跡より広い移動軌跡を描く板状部材を有することを特徴とする請求項5に記載の畦立て作業装置。
【請求項7】
前記板状部材は、前記回転軸に対して放射状に延びる複数の突出部を有し、該突出部の回転方向前側の端面は回転方向後側へ湾曲することを特徴とする請求項6に記載の畦立て作業装置。
【請求項8】
前記突出部は、前記縦耕耘爪及び前記横耕耘爪のそれぞれの回転方向前側に配設されていることを特徴とする請求項7に記載の畦立て作業装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−230276(P2006−230276A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−48888(P2005−48888)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(591121524)株式会社宮丸アタッチメント研究所 (8)
【Fターム(参考)】