説明

異なる密度の繊維領域を包含する不織織物及びその製法

単一の繊維含有複合体は(a)複数の第1バインダー繊維(114)及び複数のバスト繊維(118)を包含する第1領域(102)、(b)第1領域上に配置された第2領域(106)、複数の第2バインダー繊維(116)及び複数のバスト繊維を包含する第2領域、及び(c)第1領域及び第2領域の間に配置された遷移領域(104)を包含する。遷移領域は第1バインダー繊維(114)の集中、第2バインダー繊維(116)及びバスト繊維(118)を包含する。第1遷移領域における第1バインダー繊維の濃度は第1領域に近接して最大で第2領域に近接して最少であり、かつ第2バインダー繊維及びバスト繊維の濃度は第2領域に近接して最大であり、第1領域に近接して最少である。単一の繊維含有複合体の製造方法も記載されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は繊維含有複合体(例えば、天然繊維含有複合体)、それから形成された材料、及びそれを製造する方法に関する。
【0002】
発明の簡単な概要
単一の繊維含有複合体をここに記載する。第一の態様では、単一の繊維含有複合体(composite)は、第1領域(region)、第1領域上に配置された第2領域、及び第1領域と第2領域との間に配置された第1遷移領域を包含する。第1領域は、複数の第1熱可塑性バインダー繊維及び複数のバスト(bast)繊維を包含し、かつ第2領域は複数の第2バインダー繊維及び複数のバスト繊維を包含する。第1遷移領域は、第1バインダー繊維の集中、第2バインダー繊維及びバスト繊維を包含する。第1遷移領域における第1バインダー繊維の濃度は第1領域に近接して最大でかつ第2領域に近接して最少であり、及び第1遷移領域における第2バインダー繊維の濃度は第2領域に近接して最大でかつ第1領域に近接して最少である。
【0003】
他の態様では、複合体は、第2領域の上に配置された第3領域を包含し、この第3領域はバインダー材料を包含する。一定の態様では、第3領域のバインダー材料は第3バインダー繊維を包含し、かつ複合体は第2領域及び第3領域の間に配置された第2遷移領域を包含する。この態様では、第2遷移領域は、第2バインダー繊維の集中、バスト繊維及び第3バインダー繊維を包含する。第2遷移領域における第2バインダー繊維の濃度は第2領域に近接して最大でかつ第3領域に近接して最少であり、かつ第2遷移領域における第3バインダー繊維の濃度は第3領域に近接して最大でかつ第2領域に近接して最少である。
【0004】
ここに説明する単一の繊維含有複合体の更なる態様においては、複合体は、第3領域の上に配置された第4領域、第3領域と第4領域との間に配置された第3遷移領域、第4領域の上に配置された第5領域、及び第4領域と第5領域との間に配置された第4遷移領域を包含する。第4領域は、複数の第2バインダー繊維及び複数のバスト繊維、及び第5領域は第1バインダー材料及び複数のバスト繊維を包含する。第3遷移領域は第2バインダー繊維、バスト繊維、及び第3バインダー繊維を包含する。第3遷移領域における第3バインダー繊維の濃度は第3領域に近接して最大でかつ第4領域に近接して最少で、かつ第3遷移領域における第2バインダー繊維の濃度は第4領域に近接して最大で、かつ第3領域に近接して最少である。第4遷移領域は、第2バインダー繊維の集中、バスト繊維、及び第1バインダー繊維を包含する。第4遷移領域の第2バインダー繊維の濃度は第4領域に近接して最大でかつ第5領域に近接して最少であり、かつ第4遷移領域における第1バインダー繊維の濃度は第5領域に近接して最大でかつ第4領域に近接して最少である。
【0005】
単一の繊維含有複合体の製造法もここに記載する。一の態様では、この方法は、第1線状密度(linear density)を有する複数の第1バインダー繊維、第2線状密度を有する複数の第2バインダー繊維及び複数のバスト繊維を提供する工程を包含する。複数の第1バインダー繊維、第2バインダー繊維及びバスト繊維を次いでブレンドして繊維ブレンドを形成し、かつ繊維ブレンドを移動ベルト上に投じて、単一の繊維含有複合体を形成する。この方法において、繊維の異なる相対的濃度を包含する領域又は層で移動ベルト上に繊維が沈積するように、第2線状密度は第1線状密度より大きいことができる。
【0006】
ここに記載する方法の更なる態様において、第1工程は第3線状密度を有する複数の第3バインダー繊維を準備し、かつ第2工程は複数の第1、第2、及び第3バインダー繊維及びバスト繊維をブレンドして繊維ブレンドを製造する。生成する繊維ブレンドは、第1の方法の態様に用いたような同一又は類似の方法で移動ベルト上に放出する。この態様で、第3線状密度は第1及び第2線状密度より大きくすることができる。
【0007】
ここに記載する他の態様では、この方法は、更に少なくとも部分的に融解した第1、第2、第3バインダー繊維に上記の態様によって製造された単一の繊維含有複合体を通して加熱空気を通過させる工程を包含する。
【0008】
ここに記載する他の態様では、この方法は、更に上記の態様で製造された単一の繊維含有複合体を加熱して第1、第2、第3バインダー繊維を更に融解し、かつ複合体を圧縮してそこに含まれている繊維を圧縮状態に保持する工程を包含する。
【0009】
ここに記載する更なる態様では、この方法は、単一の繊維含有複合体を複合体のZ-方向に平行な平面に沿って切断して少なくとも第1部分と第2部分を製造する工程を包含する。第1部分は次いで第2部分の頂部に置き、かつ積重ね部分を同時に圧縮し、かつ加熱する。切断工程で製造された第1及び第2部分はそれぞれ切断された単一の繊維含有複合体の第1領域、第1遷移領域、第2領域、第2遷移領域、及び第3領域を包含し、及び第1部分を第2部分の上において第1部分の第3領域が第2部分の第3領域に隣接するようにする。或いは、第1部分を第2部分の頂部に置いて第1部分の第1領域が第2部分の第1領域に隣接するようにする。加熱工程において、該部分に含まれる第1、第2、及び第3バインダー繊維は更に融解され、かつ第1及び第2部分の反対領域が共に融解される。複合体は、圧縮状態で第1及び第2部分の繊維を保持するために、次いで圧縮される。
【0010】
発明の詳細な説明
単一の繊維含有複合体をここに説明する。繊維含有複合体に関して用いられるように、用語「単一(unitary)」の語は、複合体の列挙する領域が隣接領域から分離する明確な境界を有する層を形成しないことを示す。むしろ、列挙した領域は、異なる繊維が異なる濃度で含まれている複合体の部分を示すために用いられる。より詳しくは、列挙した領域は、異なる繊維が優勢である又は繊維の濃度勾配(例えば、特定の繊維濃度が複合体の厚みと共にどのように変化するか)が複合体の隣接部(即ち、上部及び/又は下部)とは異なる複合体の厚みの部分を示すために用いられる。更に、複合体は特定の領域に特定の繊維を含むと記載されるが、複合体の各領域は複合体に存在する任意の繊維を含み得ることは当業者は理解できるであろう。然しながら、特定の繊維又は繊維の組合せが複合体の厚みの特定の部分において優越するし、及びここに記載した列挙した領域が複合体のこれらの部分に関することを意図するものである。
【0011】
図面に関して、同一の引用番号は数図を通して同一番号で示され、図1に示すように、単一の繊維含有複合体100は、第1領域102、第1領域102上に配置された第2領域106、第1領域102と第2領域106の間に配置された第1遷移領域104、及び第2領域106の上に配置された第3領域110を包含する。第1領域102はバインダー材料114、及び複数のバスト繊維118を包含し、第2領域106は複数の第2バインダー繊維116及び複数のバスト繊維118を包含し、第3領域110は複数の第3バインダー繊維120及び複数のバスト繊維118を包含する。第1遷移領域104は、第1バインダー繊維114の集中、第2バインダー繊維116、及びバスト繊維118を包含する。第1遷移領域104における第1バインダー繊維114の濃度は第1領域102に近接して最大で第2領域106に近接して最少で、かつ第1遷移領域104における第2バインダー繊維116の濃度は第2領域106に近接して最大でかつ第1領域102に近接して最少である。
【0012】
ここで用いられるように、「バスト(bast)繊維」の語は植物のフロエム(phloem)から主に得られる強力な木質繊維をいう。適当なバスト繊維は、限定されるものではないが、ジュート、ケナフ(kenaf)、麻、亜麻、ラミー、ローゼリソウ(roselle)及びその組合せが含まれる。他の適当なバスト繊維に含まれるのは、限定するものではないが、葉の繊維(例えば、シサル(sisal)、バナナ葉、草(例えば竹)、又はパイナップル葉)、ワラ繊維(例えば、麦わら、米わら、大麦わら、又はサトウキビの茎)及び殻(例えば、コーンから、バガス(砂糖茎)又はココナツ殻)である。一定の態様では、バスト繊維はジュートである。繊維含有複合体はバスト繊維の適当な量を含み得る。例えば、繊維含有複合体の約30〜約70重量%、約30〜約60重量%又は約60重量%を包含し得る。開示した繊維含有複合体及び方法に用いるに適したバスト繊維は適当な線状 (linear)密度(即ち、デニール)を有することができる。例えば、バスト繊維は約8.8dtex(8デニール)〜約20dtex(18デニール)の線状密度を有し得る。
【0013】
繊維含有複合体に含まれるバインダーは、任意の適当なバインダー材料であり得る。例えば、バインダー材料は、加熱されたときに少なくとも部分的に融解して複合体内に含まれる繊維が互いに結合することができる熱可塑性材料であり得る。適当な熱可塑性バインダー材料は、限定するものではないが、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はグリコール変性PET(PETG))、ポリアミド(例えば、ナイロン6又はナイロン6,6)、ポリエチレン(例えば高密度ポリエチレン(HDPE)又は線状低密度ポリエチレン(LLDPE))、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリ(1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)、及びその組合せが含まれる。
【0014】
上述したように、単一の繊維含有複合体に含まれるバインダー材料は、バインダー繊維の形態で提供できる。繊維含有複合体に含まれるバインダー繊維は任意のバインダー繊維であり得る。例えば、バインダー繊維は、加熱したときに少なくとも部分的に融解できる熱可塑性材料を包含することができ、それによってバインダー繊維及びバスト繊維が繊維含有複合体内で相互結合する手段を提供できるようになり得る。適当な熱可塑性バインダー繊維は、ポリエステル繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維又はグリコール変性PET(PETG)繊維)、ポリアミド繊維(例えば、ナイロン6又はナイロン6,6)、ポリエチレン繊維(例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)又は線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含有する繊維)、ポリプロピレン繊維、ポリ乳酸繊維、ポリ(1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)(PCT)、セルロース繊維(例えば、レーヨン繊維)、1,3-プロパンジオール テレフタレート含有繊維、及びそれらの組合せが含まれる。適当なバインダー繊維も、限定されるわけではないが、二元バインダー繊維(例えば、熱可塑性鞘を包含する二元バインダー繊維)及び相対的に低メルトフロー速度を有する熱可塑性バインダー繊維を含む。適当な二元繊維は、鞘が繊維のコアより低融点の二元、鞘−コア繊維を含む。例えば、二元、鞘−コア繊維はポリエチレン鞘(例えば、高密度ポリエチレン鞘)及びポリプロピレン又はポリエステルコアを有し得る。他の適当な二元繊維にはPET共重合体鞘とPETコアを有する繊維、PCT鞘とポリプロピレンコア、PCT鞘とPETコア、PETG鞘とPETコア、HDPE鞘とPETコア、HDPE鞘とポリプロピレンコア、LLDPE鞘とPETコア、ポリプロピレン鞘とPETコア、ナイロン6鞘とナイロン6,6コアが含まれる。このような繊維が開示された複合体に用いられると、複合体は加熱することができ、二元繊維の鞘が融解して複合体内で隣接繊維の間に結合を提供するが、二元繊維のコアはその繊維構造を保持する。上述したように、バインダー繊維は相対的に低メルトフローインデックス(rate)速度を有する熱可塑性材料である熱可塑性バインダー繊維であり得る。例えば、熱可塑性繊維のメルトフローインデックスは、例えば、「押出しプラストメーターによるサーモプラスチックのメルトフローレート用の標準試験法」と題するASTM標準D1238によると約18g/10分又は未満(例えば、約8g/10分又は未満)であり得る。このような繊維が開示された複合体に用いられると、複合体は加熱され、熱可塑性バインダー繊維は少なくとも部分的に融解して隣接繊維の間に結合を提供するが、熱可塑性材料の相対的に低メルトフローインデックスはバインダー繊維がその繊維状構造を保持するのを許容する。
【0015】
ポリオレフィンのような熱可塑性材料から作られた適当なバインダー材料は、カップリング、適合化(compatabilizing)及び/又は混合剤をも含み得る。特定の理論に拘束されることを望まないが、これ等の剤はバスト繊維とバインダー材料との間の相互作用及び/又は結合を改良することができ、それによってより良好な機械的特性を有する複合体を生じる。適当なカップリング、適合化及び混合剤は、これらに限られるものではないが、チタンアルコラート、燐酸、亜燐酸、ホスホン酸及び珪酸のエステル;脂肪族、芳香族及びシクロ脂肪族酸の金属塩及びエステル;エチレン/アクリル又はメタクリル酸;エチレン/アクリル又はメタクリル酸のエステル;エチレン/酢酸ビニル樹脂;スチレン/無水マレイン酸樹脂又はそのエステル;アクリロニトリルブタジエン スチレン樹脂;メタクリレート/ブタジエンスチレン樹脂(MBS)、スチレンアクリロニトリル樹脂(SAN);ブタジエンアクリロニトリル共重合体;及びポリエチレン又はポリプロピレン変性重合体が含まれる。このような重合体は、無水マレイン酸又はそのエステル、アクリル又はメタクリル酸又はエステル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、及びスチレンのような反応性基含有極性単量体で変性される。場合によって好ましい態様では、バインダー繊維、又は複合体に含まれるバインダー繊維の一部は、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン)又はその上にグラフトされた無水マレイン酸(MAH)を有するその共重合体である。
【0016】
カップリング、適合化、及び/又は混合剤は任意の適した量でバインダー繊維に存在できる。例えば、剤はバインダー繊維中にバインダー繊維の全重量基準にして約0.01重量%又はそれ以上、約0.1重量%又はそれ以上、又は約0.2重量%又はそれ以上の量で存在し得る。剤はバインダー繊維中にバインダー繊維の全重量基準にして約20重量%未満、約10重量%未満、又は5重量%未満の量で存在し得る。場合によって好ましい態様では、バインダー繊維は、バインダー繊維の全重量を基準にして約0.01〜約20重量%又は約0.1〜約10重量%のカップリング、適合化、及び/又は混合剤を含む。バインダー繊維に含まれるカップリング、適合化、及び/又は混合剤の量は、繊維が作られる重合体のモル当りに存在するカップリング、適合化、及び/又は混合剤のモル数によっても表すこともできる。バインダー繊維がポリプロピレン及び無水マレイン酸カップリング剤を包含する場合のような、場合によって好ましい態様では、バインダー繊維はポリプロピレン重合体のモル当り約5〜約50モルの無水マレイン酸を含み得る。
【0017】
本発明の繊維含有複合体は、上記のバインダー繊維の任意の適した組合せを含み得る。例えば、組成体又は組成体の特定の領域内に含まれるバインダー繊維は、全て実質的に同一の組成又はメイクアップを有することができ、又は繊維は異なる組成を有する繊維の組合せであり得る。場合によって好ましい態様では、複合体又は複合体の特定の領域内に含まれるバインダー繊維は、その上にグラフトしたMAHを有する(上記した)ポリプロピレンバインダー繊維と下記する線状密度を有する領域内のそれぞれの繊維を伴うことができる。一定の他の態様では、複合体又は複合体の特定の領域に含まれるバインダー繊維は、その上にグラフトしたMAHを有するポリプロピレンバインダー繊維と、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維のような熱可塑性バインダー繊維との組合せ又は(上述したような)二元バインダー繊維であり得る。複合体において繊維の適当なブレンドを確認するために容易な視覚的助けを提供するために、複合体を製造するのに用いる異なるタイプの繊維(例えば、異なるデニール及び/又は異なる組成を有するバインダー繊維)がそれぞれ異なる色で提供され得る。従って、複合体の適当な領域における各繊維の存在が、製造中又は製造後に複合体を視覚検査で迅速に確認できる。
【0018】
繊維含有複合体に含まれるバインダー繊維は、適当な線状密度又は線状密度の組合せを有する。一定の態様において、複合体に含まれる異なるバインダー繊維タイプのそれぞれは異なる線状密度を有し得る。例えば、図1に示されるように、第1バインダー繊維114は第2バインダー繊維116の線状密度より低い線状密度を有し得る。このような態様では、第1バインダー繊維114は、約6.6dtex(6デニール)又は以下(例えば、約0.5dtex(0.5デニール)から約6.6dtex(6デニール)の線状密度を有することができ、及び第2バインダー繊維116は、約6.6dtex(6デニール)から約22.2dtex(22デニール)の線状密度を有することができる。ある態様では、第1バインダー繊維は約1.6dtex(1.5デニール)の線状密度を有することができ、かつ第2バインダー繊維は約11.1dtex(10デニール)の線状密度を有することができる。ここに記載した繊維含有複合体は適当な量のバインダー繊維を包含できる。例えば、バインダー繊維は、複合体の全重量の約30〜約70重量%、約30〜約60重量%、又は約40重量%を包含できる。
【0019】
第3領域に含まれるバインダー材料は任意の適当なバインダー材料であり得る。例えば、バインダー材料は第2領域の上部表面に積層された熱可塑性材料の層を含むことができる。このような層は、例えば、第2領域の上面に熱可塑性粒子を沈着し、かつ少なくとも部分的に粒子を融解させて第2領域に含まれる繊維に結合させることによって形成できる。図1に示すように、領域110のバインダー材料は第3バインダー繊維120を含むことができ、かつ複合体100は第2領域106及び第3領域110の間に配置された第2遷移領域108を包含し得る。この態様では、第2遷移領域108は第2バインダー繊維116の集中、バスト繊維118、及び第3バインダー繊維120を包含する。第2遷移領域108における第2バインダー繊維116の濃度は第2領域106に近接して最大で第3領域110に近接して最少であり、かつ第2遷移領域108における第3バインダー繊維120の濃度は第3領域110に近接して最大でかつ第2領域106に近接して最少である。
【0020】
複合体100の上記第3領域110に用いるに適したバインダー繊維は、第1及び第2バインダー繊維として使用するに適したと上述したものを含み、任意の適当なバインダー繊維であり得る。第1及び第2バインダー繊維のように、第3バインダー繊維は任意の適当な線状密度を有し得る。一定の態様では、第3バインダー繊維120は第1及び第2バインダー繊維114、116の線状密度より大きい線状密度を有する。例えば、第3バインダー繊維120は約22.2dtex(22デニール)又はそれ以上(例えば、約22.2dtex(22デニール)から72.2dtex(65デニール))の線状密度を有し得る。ある態様では、第3バインダー繊維は約35.5dtex(32デニール)の線状密度を有し得る。
【0021】
ここに記載する単一の繊維含有複合体は任意の適当な重量及び密度を有し得る。例えば、複合体は約500から約2000g/m、約500から約1500g/m又は約1200g/mの重量を有し得る。ある態様では、単一の繊維含有複合体は、約0.08から約2g/cm、約0.08から約1.5g/cm、約0.2から約0.7g/cm、又は約0.25から約0.6g/cmの密度を有し得る。
【0022】
ここに記載する単一の繊維含有複合体の更なる態様では、複合体は、第4及び第5領域及び複合体の第3領域の上に配置された第3及び第4遷移領域を包含する。このような態様では、複合体の追加層(即ち、第4及び第5領域及び第3及び第4遷移領域)は、上記の複合体の第1及び第2領域及び第1及び第2遷移領域の鏡像に類似する。例えば、図2に示すように、このような複合体200は、第1図に示した態様のものに類似する第1領域202、第1遷移領域204、第2領域206、第2遷移領域208、及び第3領域210を包含する。特に、第1領域202は複数の第1バインダー繊維220及び複数のバスト繊維224を包含し、第2領域206は複数の第2バインダー繊維222及び複数のバスト繊維224を包含し、かつ第3領域210は複数の第3バインダー繊維226及び複数のバスト繊維224を包含する。第1遷移領域204は第1バインダー繊維220の集中、第2バインダー繊維222及びバスト繊維224を包含する。第1遷移領域204における第1バインダー繊維220の濃度は第1領域に近接して最大で、かつ第2領域206に近接して最少であり、かつ第1遷移領域204における第2バインダー繊維222の濃度は第2領域206に近接して最大でかつ第1領域202に近接して最少である。
【0023】
これらの領域に加えて、複合体200は更に第3領域210の上に配置された第4領域214、第3領域210及び第4領域214の間に配置された第3遷移領域212、第4領域214の上に配置された第5領域218及び第4領域214及び第5領域218の間に配置された第4遷移領域216を包含する。図2に示すように、第4領域214は複数の第2バインダー繊維222及び複数のバスト繊維224、及び第5領域218は複数の第1バインダー繊維220及び複数のバスト繊維224を包含する。第3遷移領域212は第2バインダー繊維222の集中、バスト繊維224、及び第3バインダー繊維226を包含する。第3遷移領域222における第3バインダー繊維226の濃度は第3領域210に近接して最大であり、第4領域214に近接して最少であり、かつ第3遷移領域212における第2バインダー繊維222の濃度は第4領域214に近接して最大であり、かつ第3領域210に近接して最少である。第4遷移領域216は第2バインダー繊維222の集中、バスト繊維224、及び第1バインダー繊維220を包含する。第4遷移領域216における第2バインダー繊維222の濃度は第4領域214に近接して最大でかつ第5領域218に近接して最少であり、かつ第4遷移領域216における第1バインダー繊維220の濃度は第5領域218に近接して最大でかつ第4領域214に近接して最少である。
【0024】
単一の遷移含有複合体は上に列挙したものに加えて他の繊維を含み得る。例えば、生成する複合体の耐燃性を向上するために、複合体は更に難燃性繊維を包含し得る。ここで用いられているように、「難燃性繊維(flame retardant fibers)」の語はISO4589−1によって定められるLimiting Oxygen Index(LOI)値が約20.95以上を有する繊維をいう。或いは複合体に含まれる繊維(例えば、バスト繊維及び/又はバインダー繊維)を複合体の耐燃性を増強するために難燃化剤で処理することができる。また、他の態様においては、複合体は、バスト繊維に加えて又はその代わりに、ウール、絹、又はフェザー(例えば、羽軸から分離した鳥のフェザー)のような動物源から誘導される繊維を包含できる。
【0025】
場合によっては好ましい態様では、繊維含有複合体は、複合体の1以上の面に配置された荒目地クロス(scrim)を包含できる。図5に示すように、繊維含有複合体500は第1領域102に隣接した複合体の表面に配置された荒目地クロス530を包含する。荒目地にクロス530は、適当な接着剤(示さない)を用いて複合体500の第1領域に隣接する表面に付着でき、又は荒目地クロス530は複合体500の第1領域102における部分的に融解したバインダー繊維114を介して複合体500の第1領域102に隣接する表面に付着できる。複合体は図5において第1領域102に隣接した表面に配置された荒目地クロス530を伴って示されているが、荒目地クロスは、他の態様においては、複合体の第3領域に隣接する複合体の表面に配置できる。一定の他の態様では、第1荒目地クロスは複合体の第1領域に隣接する複合体の表面に配置でき、かつ第2荒目地クロスは複合体の第3領域に隣接する複合体の表面に配置できる。
【0026】
繊維含有複合体に用いる荒目地クロスは任意の適当な材料であり得る。例えば、荒目地クロスは天然繊維、合成繊維、又はその組合せを包含する織物、ニット、又は不織織物材料であり得る。多分好ましい態様では、荒目地クロス530における繊維532は複合体に含まれるバインダー繊維より高い融点を有する熱可塑性繊維である。例えば、荒目地クロス用に適したバインダー繊維は、上昇温度において高い熱安定性及び低熱歪みと同様に約200℃又はそれ以上の融点を有することができる。場合によっては好ましい態様では、荒目地クロスはポリエステル繊維のような複数の熱可塑性繊維を包含する不織織物材料である。特に、荒目地クロスは複数のスパンボンド熱可塑性(例えば、ポリエステル)繊維を包含する不織織物材料である。複合体に適する荒目地クロスは任意の適当な重量を有し得る。例えば、荒目地クロスは約15から約35g/m又は約17から約34g/mの重量を有し得る。
【0027】
上述した単一の繊維含有複合体は、各種の用途に用い得る。例えば、この複合体は自動車のヘッドライナー、自動車ドアパネル、事務所用具に用いられるパネル等として用い得る。一の態様では、複合体は自動車ヘッドライナー用の構造指示を包含する。このような態様では、複合体は付加的接着剤の使用を伴い又は伴わずに一表面に接着した織物層を有し得る。例えば、複合体の一表面に配置されたバインダー材料は複合体の表面に接着する織物のための十分な粘性を提供できる。このような自動車ヘッドライナーは複合体と織物層の間に配置されたフォームの層又は他の適当な材料(例えば、バッチング)をも包含できる。
【0028】
単一の繊維含有複合体を製造する方法をもここに記載する。一の態様では、方法は、第1線状密度を有する複数の第1バインダー繊維、第2線状密度を有する複数の第2バインダー繊維、及び複数のバスト繊維を用意する工程を包含する。複数の第1バインダー繊維、第2バインダー繊維、及びバスト繊維を次いでブレンドして繊維ブレンドを製造し、及び繊維ブレンドを次いで移動ベルト上に投射して繊維含有複合体を形成する。この方法で、第2線状密度は第3線状密度と実質的に等しくかつ第1線状密度より大きく、繊維は相対的濃度が異なる繊維を包含する領域又は層において移動ベルト上に沈積する。
【0029】
上述した方法を実施するために適した装置は図4に示す。
【0030】
上記方法を実施するに適することが見出された装置の市場で入手可能なものはFehrerAG(Linz,オーストリア)の「K-12 HIGH-LOFT RANDOM CARD」である。図4に示した装置400において、バインダー繊維及びバスト繊維を適当な割合でブレンドし、供給シュート410内に導入する。供給シュート410はブレンドした繊維を横断ベルト440に配り、均一厚さの又はバット(batt)の繊維をシリンダー420を有する空気置き(lay)機に送る。シリンダー420は回転し、ブレンドした繊維を回収ベルト430に飛ばす。回収ベルト430は典型的には表面(図示しない)に複数の穴を有し、ベルトを通って真空が引かれ、繊維が回収ベルト430上に適当に置かれるのを助ける。シリンダー420の回転は、回収ベルトに沿って低線状密度を有する繊維が飛ぶより更に遠くまで高線状密度を有する繊維を飛ばす。その結果として、回収ベルト430に回収される単一の繊維含有複合体100は回収ベルト430の近くで低線状密度の繊維の濃度が高くなり、かつ回収ベルト430から遠く離れるとより高い線状密度を有する繊維の濃度がより高くなる。一般に、繊維の間の線状密度の差が大きくなればなるほど、繊維の分配において傾斜が大きくなる。
【0031】
ここに記載する方法の更なる態様では、第1工程は第3線状密度を有する第3バインダー繊維の複数を提供することを包含し、かつ第2工程は複数の第1、第2、及び第3バインダー繊維及びバスト繊維をブレンドして繊維ブレンドを製造することを包含する。生成する繊維ブレンドは次いで第1の方法の態様に用いられたのと同一又は類似の方法で移動ベルト上に投じられる。この態様では、第3線状密度は第1及び第2線状密度より大きくできる。
【0032】
上記の方法に用いるに適した繊維は任意の適当なバインダー繊維及びバスト繊維であり得る。例えば、上記方法に用いるのに適した第1、第2、第3、及びバスト繊維は、単一の繊維含有複合体の各種態様に関して上述したものと同一であり得る。
【0033】
少なくとも1のバインダー繊維が熱可塑性バインダー繊維である場合のような、上述した方法の態様において、上記工程によって製造された単一の繊維含有複合体は少なくとも部分的に熱可塑性バインダーを融解し、かつ複合体に含まれる繊維の部分が共に結合するように加熱される。例えば、この方法は、上記態様で製造された単一の繊維含有複合体を通して加熱空気を通過させてバインダー繊維の一部又は全体を部分的に融解する工程を更に包含できる。当業者に理解できるように、単一の繊維含有複合体は赤外線照射のような他の手段で加熱することもできる。この工程は、当初の厚みが、例えば約5から50mm又は約10から約50mmの複合体にするために役立つ。
【0034】
上述した方法の他の態様として、単一の繊維含有複合体は、例えば自動車ヘッドライナー用の構造支持体として働く複合体に十分高い密度及び/又は剛性を有する複合体を製造するために圧縮することができる。このような態様では、上述の態様で製造された単一の繊維含有複合体を、例えば、複合体の表面に熱を集中するホットベルト ラミネータを用いて加熱する工程を更に包含することができる。このような加熱は更に第1、第2、及び第3バインダー繊維を融解し、及びラミネータによって複合体に働く圧縮力が繊維を圧縮状態に保持するのに役立つ。
【0035】
単一の繊維含有複合体は、複合体が先ず加熱されかつ次いで未加熱型を用いて適当な形及び厚みに圧縮される、通常の「冷成形(cold mold)」熱成形(thermoforming)装置を用いて更に処理できる。方法のこのような態様において、複合体は、例えば赤外照射を用いて約30から約120秒の加熱サイクルの間に約170から約215℃の温度に加熱することができる。加熱した複合体は次いで典型的には約10から約30℃に保持される型内に置いて、適当な形及び厚みに圧縮される。圧縮工程は、典型的には長さが約1分間で、その時間の間に熱可塑性バインダー繊維は、複合体が型から離れたときに圧縮された形状を実質的に維持する程度にまで冷却する。当業者には理解されるように、少なくとも部分的にはバスト繊維の剛性によって、複合体は加熱によって(例えばZ-方向に)及び型内におかれる前に膨張できる。
ここに記載する更なる態様では、この方法は、単一の繊維含有複合体を複合体のZ-方向に平行な平面(即ち、複合体の厚み)に沿って切断して少なくとも第1部分及び第2部分を製造する工程を包含する。第1部分は次いで第2部分の頂部に置き、積重ね部分を加熱して圧縮する。切断工程で製造された第1及び第2部分はそれぞれ単一の繊維含有複合体の第1領域、第1遷移領域、第2領域、第2遷移領域、及び第3領域を包含し、それらが切断され、及び第1部分は第2部分の頂部に置かれて、第1部分の第3領域は第2部分の第3領域に隣接する。或いは、第1部分は第2部分の頂部に置かれて第1部分の第1領域は第2部分の第1領域に隣接する。加熱及び圧縮工程において、該部分に含まれる第1、第2、第3バインダー繊維は更に融解して、かつ第1及び第2部分の対向領域は共に融合する。複合体を加熱し及び次いで圧縮する工程は第1及び第2部分における繊維を圧縮状態に保持するにも役立つ。
【実施例】
【0036】
次の例は本発明を更に説明するが、勿論、いかなる意味においてもその範囲を制限すると考えるべきではない。
【0037】
例1
この例は、上述した単一の繊維含有複合体を製造する方法及び上述した単一の繊維含有複合体の特性を説明する。3個の類似した単一の繊維含有複合体(試料1A−1C)をFehlerAG(リンツ、オーストリア)によるK-12 HIGH-LOFT RANDOM CARDを用いて空気置き(laying)によって製造した。特に、複合体は約40重量%(繊維ブレンドの全重量を基準にして)の二元バインダー繊維及び約60重量%の約8.8-2dtex(8-18デニール)の線状密度を有するジュート繊維を含む繊維ブレンドから製造した。バインダー繊維は高密度ポリエチレン鞘(約128℃の融点)及びポリプロピレンコア(約149℃の融点)を有した。バインダー繊維含量は3種の異なる線状密度を有する3二元バインダー繊維からなるものであった。第1ブレンダー繊維は繊維ブレンドの全重量の約10重量%を包含し、約1.6dtex(1.5デニール)を有した。第2バインダー繊維は繊維ブレンドの全重量の約20重量%を包含し、約11.1dtex(10デニール)の線状密度を有した。第3バインダー繊維は、繊維ブレンドの約10重量%を包含し、約35.5dtex(32デニール)の線状密度を有した。
【0038】
上述したように、上述した繊維ブレンドを移動ベルト上に突出することによってK-12 HIGH-LOFT RANDOM CARDを用いて空気置きした。繊維ブレンドに含まれる繊維の間のデニールの差のため、空気置き工程によって製造された複合体は回収ベルトに最も近い第1領域では1.6dtex(1.5デニール)の大きな濃度のバインダー繊維、中間領域では11.1dtex(1.5デニール)の大きな濃度のバインダー繊維、及び上部領域では大きな濃度の35.5dtex(32デニール)のバインダー繊維を含んでいた。空気置き工程に続いて、生成する複合体は約175℃(347°F)の温度に加熱された空気が複合体を通ってバインダー繊維が部分的に融解する通過空気炉を通過した。
【0039】
試料1Aは、次いでベルトが約204℃(400°F)の温度に加熱された圧縮炉を通って約1100g/mの重量を有するように置かれた複合体を通過させて製造した。圧縮炉を通過した後、試料1Aは約3.3mmの厚みを有した。
【0040】
試料1Aは、次いで約1100g/mの重量を有するように置かれた複合体を、ベルトが約204℃(400°F)の温度に加熱された圧縮炉を通って複合体を通過させて製造した。加圧炉を通過した後、試料1Aは約3.3mmの厚みを有した。
【0041】
試料1B及び1Cは、2の複合体を切断して製造し、それぞれ約537g/m及び約412g/mの重量を有する複合体をZ−方向(即ち、複合体の厚みに平行な面に沿って)に置いて35.5dtex(32デニール)バインダー繊維の最大濃度を含む部分が互いに隣接し互いに頂部に生成部分を積重ねた。積重ね部分は圧縮炉を通して炉内でベルトは約204℃(400°F)の温度に加熱した。圧縮炉を通過した後、試料1Bは約3.3mm、及び試料1Cは約2.3mmの厚みを有した。部分の積重ねによって試料1Bの重さは1075g/m、及び試料1Cの重さは約825g/mであった。
【0042】
試料1A-1Cをテストして剛性、強度、靭性、可燃性、及び各種の周波における音吸収を測定した。これらの測定の結果は、特性を定めるのに用いた試験方法を含んで、次の表1に示す。
【0043】
試料1A−1Cの物理的特性
【表1】

上記の表1から判るように、試料1A−1Cは、複合体を例えば、自動車ヘッドライナー用の基体、自動車ドアパネル、オフィス家具に用いるパネルとして用いるに適した複合体の物理的特性を示す。特に、複合体の剛性、強度、及び靭性は、重要な又は観察できるたるみなく典型的な自動車乗客室の幅及び/又は長さを広げるべきかどうかを示す。特に、複合体は多くの自動車製造業者の気候上のたるみ要件をパスできるべきである。更に、音響吸収測定は複合体が自動車ヘッドライナーのような一定の用途に望ましい音吸収の量を提供することができる。
【0044】
例2
この例は、上記した単一の繊維含有複合体の製造方法及び上記した単一の繊維含有複合体の特性を示す。2個の類似した、単一の繊維含有複合体(試料2A及び2B)を試料1Aを製造するに用い、かつ上記と実質的の同一の手順を用いて製造した。
【0045】
試料2Aは約40重量%(繊維ブレンドの全重量を基準にして)の二元バインダー繊維及び約60重量%のジュート繊維を含む繊維ブレンドから製造した。これは8.8-20dtex(8-18デニール)を有した。バインダー繊維は高密度ポリエチレン鞘(約128℃の融点)及びポリプロピレンコア(約149℃の融点)を有した。バインダー繊維含量は、3種の異なる線状密度を有する3個の二元バインダー繊維からなるものであった。第1バインダー繊維は、繊維ブレンドの全重量の約15重量%を包含し、約1.6dtex(1.5デニール)の線状密度を有した。第2バインダー繊維は、繊維ブレンドの全重量の約10重量%を包含し、約11.1dtex(10デニール)の線状密度を有した。第3バインダー繊維は、繊維ブレンドの約15重量%を包含し、約35.5detex(32デニール)の線状密度を有した。
【0046】
試料2Bをバインダー繊維の約40重量%(繊維ブレンドの全重量を基準にして)及び約60重量%のジュート繊維を含む繊維ブレンドから製造した。これは8.8−2dtex(8−18デニール)の線状密度を有した。バインダー繊維は、約10重量%の無水マレイン酸(MAH)がグラフトしたポリプロピレンを含むポリプロピレンバインダー繊維であった。バインダー繊維の内容は、3種の異なる線状密度を有する3個のバインダー繊維からなった。第1バインダー繊維は、繊維ブレンドの全重量の約15重量%を包含し、約1.6dtex(1.5デニール)の線状密度を有した。第2バインダー繊維は、繊維ブレンドの全重量の約10重量%を包含し、約11.1dtex(10デニール)の線状密度を有した。第3バインダー繊維は、繊維ブレンドの全重量の約15重量%を包含し、約35.5dtex(32デニール)の線状密度を有した。
【0047】
製造後、試料2A及び2Bは次いでテストして剛性、強度、及び靭性のような物理特性を測定した。これらの測定結果は、特性を定めるために用いたテスト方法を含んで、次の表2に示す。
【0048】
表2 試料2A及び2Bの物理的特性
【表2】

【0049】
上記の結果から判るように、カップリング剤を含むバインダー繊維を用いて製造した複合体(即ち、試料2B)は、カップリング、適合化、及び/又は混合剤を含まないバインダー繊維を用いて製造した複合体(即ち、試料2A)に比較して改良された機械的特性を示した。試料2Bは、複合体をテストして殆んどの自動車製造業者の気候的たわみ要件に適合するかどうかを定めると試料2Aと比較して実質的に減少したたわみを示した。特定の理論に拘束されることは望まないが、改良された機械的特性はバスト繊維とバインダー繊維との間の相互作用及び/又は結合によるものであると信じられる。
【0050】
例3
この例は、上述したような単一の繊維含有複合体及び上述したような単一の繊維含有複合体の特性を示す。2つの類似した単一の繊維含有複合体(試料3A及び3B)を上述し、かつ試料1Aを製造するに用いた実質的に同一手順を用いて製造した。
【0051】
両試料は、約45重量%(繊維ブレンドの全重量を基準にして)のバインダー繊維及び約55重量%のジュート繊維を含む繊維ブレンドから製造した。これは約8.8−2dtex(8-18デニール)の線状密度を有した。バインダー繊維は、約10重量%の無水マレイン酸(MAH)がグラフトしたポリプロピレンを含むポリプロピレンバインダー繊維であった。バインダー繊維含量は4種の異なる線状密度を有する4種のバインダー繊維からなった。第1バインダー繊維は、繊維ブレンドの全重量の約15重量%を包含し、約1.7dtexの線状密度を有した。第2バインダー繊維は、繊維ブレンドの全重量の約10重量%を包含し、約11dtexの線状密度を有した。第3バインダー繊維は、繊維ブレンドの全重量の約10重量%を包含し、約30dtexの線状密度を有した。第4バインダー繊維は、繊維ブレンドの全重量の約10重量%を包含し、約70dtexの線状密度を有した。
【0052】
試料3Bは更に約17g/mの重量を有するスパンボンド、不織ポリエステル(即ち、ポリエチレンテレフタレート)荒目地クロスを包含した。荒目地クロスは第1バインダー繊維の最大濃度を含む領域(即ち、約1.7dtexの線状密度を有するバインダー繊維)に近接する複合体の表面に配置した。荒目地クロスは、複合体の表面上に荒目地クロスを置いて複合体に付着させ、次いで上述したように圧縮炉を通して複合体を通過させた。
【0053】
試料3A及び3Bをテストして剛性、強度、靭性及び音吸収のような物理的特性を測定した。これらの測定の結果は、特性を定めるのに用いたテスト法を含んで、下の表3に示す。
【0054】
表3 試料3A及び3Bの物理的特性
【表3】

【0055】
上記の結果から判るように、不織荒目地クロス(即ち、試料3B)を用いて製造した複合体は、荒目地クロスを用いないで製造した複合体(即ち、3A)に比べて改良された機械的性質を示す。試料3Bも、複合体が多くの製造業者の気候的たわみ要件に適合するかどうかを定めるためにテストした場合に、試料3Aと比較して実質的に減少したたわみを示した。
【0056】
ここに引用した刊行物、特許出願、及び特許を含み全ての引用は、各文献が個別に及び特別に引用で示されたのと同程度に引用によって導入され、その全体をここに示す。
【0057】
本発明を記載する文脈(特に請求の範囲における文脈)における用語「a」及び「an」及び「the」及び類似の言及は、文脈から明確に矛盾するか他が示されていない限り、単数及び複数の両者をカバーすると解すべきである。用語「包含する」、「有する」、「含む」、及び「含有する」は、とくに示さない限り、開放用語(即ち、「含有するが、限定されない」)と解すべきである。値の範囲の記載は、他に示さない限り、範囲内のそれぞれ各別個の値を個別的に引用する速記法として利用することを単に意図するのみであり、他に指摘しない限り、個別に記載するように明細書中にそれぞれ別個の価が導入される。ここに記載した方法は全て、他のことが示され及び文脈から矛盾することが記載されていない限り、任意の適当な順序で実施できる。ここに示した任意の及び全ての例又は例示的用語(例えば、「のような」)は本発明をよりよく説明するためであって、本発明の範囲に制限を課すものではない。本明細書の用語はいずれもクレームされていない要素を本発明の実施に必須であると解すべきではない。
【0058】
本発明の好ましい態様が、本発明を実施するために本発明者の知るベストモードを含んで、ここに記載されている。これらの好ましい態様の変形は、上記記載を読んだ当業者には明らかであろう。発明者はそのような変形を適当なものとして用いることを期待し、かつ発明者は特にここに記載したのとは別の方法で実施することを意図する。従って、本発明は、全ての変形及びクレームに記載された主題の適用法で許容される均等物を含む。更に、その全ての可能な変形の上述した要素の任意の組合せは、別にここに示し、又は明確に文脈によって矛盾しない限り、本発明に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本願に記載した単一の繊維含有複合体の断面を示す図。
【図2】本願に記載した単一の繊維含有複合体の断面を示す図。
【図3】単一の繊維含有複合体の製造方法の工程を示したフローダイアグラムを示す図。
【図4】本願に記載した方法を実施するに適した装置を示す立面図。
【図5】本願に記載した単一の繊維含有複合体の断面を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)複数の第1熱可塑性バインダー繊維及び複数のバスト繊維;
(b)第1領域上に配置された第2領域、第2領域は複数の第2熱可塑性バインダー繊維及び複数のバスト繊維を包含し、及び
(c)第1領域及び第2領域の間に配置された第1遷移領域、第1遷移領域は第1バインダー繊維の集中、第2バインダー繊維、及びバスト繊維を包含し、第1遷移領域における第1バインダー繊維の濃度は第1領域に近接して最大で第2領域に近接して最少であり、かつ第1遷移領域における第2バインダー繊維の濃度は第2領域に近接して最大で第1領域に近接して最少であることをを包含する単一の繊維含有複合体。
【請求項2】
複合体が更に
(d)第2領域上に配置された第3領域、第3領域は複数の第3熱可塑性バインダー繊維及び複数のバスト繊維を包含し、及び
(e)第2領域及び第3領域の間に配置された第2遷移領域、第2遷移領域は第2バインダー繊維の集中、バスト繊維、及び第3バインダー繊維を包含し、第2遷移領域における第2バインダー繊維の濃度は第2領域に近接して最大でかつ第3領域に近接して最少であり、かつ第2遷移領域における第3バインダー繊維の濃度は第3領域に近接して最大でかつ第2領域に近接して最少である請求項1に記載の単一の繊維含有複合体。
【請求項3】
第1バインダー繊維は第1線状密度を有し、第2バインダー繊維は第2線状密度を有し、かつ第2線状密度は第1線状密度より大きい請求項1又は2に記載の単一の繊維含有複合体。
【請求項4】
第1バインダー繊維は第1線状密度を有し、第2バインダー繊維は第1線状密度より大きい第2線状密度を有し、かつ第3バインダー繊維は第1及び第2線状密度より大きい第3線状密度を有する請求項2又は3に記載の単一の繊維含有複合体。
【請求項5】
少なくとも一部の熱可塑性バインダー繊維はカップリング剤、適合化剤、混合剤、及びそれらの組合せからなる群から選ばれた添加物を包含する請求項1〜4のいずれかに記載の単一の繊維含有複合体。
【請求項6】
熱可塑性バインダー繊維はポリオレフィンを包含する請求項1〜5のいずれかに記載の単一の繊維含有複合体。
【請求項7】
添加物はバインダー繊維の重量を基準にして約0.01〜約20重量%の量で熱可塑性バインダー繊維に存在する請求項5又は6に記載の単一の繊維含有複合体。
【請求項8】
複合体は第1領域に隣接する複合体の表面に配置された荒目地クロスを更に包含する請求項1〜7に記載の単一の繊維含有複合体。
【請求項9】
荒目地クロスは複数のスパンボンド熱可塑性繊維を包含する不織荒目地クロスである請求項8に記載の単一の繊維含有複合体。
【請求項10】
単一の繊維含有複合体を製造する方法であって、
(a)第1線状密度を有する複数の第1バインダー繊維、第2線状密度を有する複数の第2バインダー繊維、及び複数のバスト繊維、第2線状密度は第1線状密度より高いものを準備し;
(b)複数の第1バインダー繊維、第2バインダー繊維、及びバスト繊維をブレンドして繊維ブレンドを製造し、及び
(c)繊維ブレンドを移動ベルトに投出して単一の繊維含有複合体を形成し、
単一の繊維含有複合体は(i)複数の第1バインダー繊維及び複数のバスト繊維、(ii)第1領域の上に配置された第2領域、第2領域は複数の第2バインダー繊維及び複数のバスト繊維を包含し、及び(iii)第1領域及び第2領域の間に配置された第1遷移領域を包含し、第1遷移領域は第1バインダー繊維の集中、第2バインダー繊維、及びバスト繊維を包含し、第1遷移領域における第1バインダー繊維の濃度は第1領域に近接して最大でかつ第2領域に近接して最少であり、かつ第1遷移領域における第2バインダー繊維の濃度は第2領域に近接して最大で第1領域に近接して最少である工程を包含する方法。
【請求項11】
工程(a)が更に第3線状密度を有する複数の第3バインダー繊維、第3線状密度は第1及び第2線状密度より大きいものである、を提供し、及び工程(b)は複数の第1、第2、及び第3バインダー繊維及びバスト繊維をブレンドして繊維ブレンドを製造する工程を包含し、工程(c)で形成した単一の繊維含有複合体は第2領域上に配置した第3領域、第3領域は複数の第3バインダー繊維及び複数のバスト繊維を包含し、かつ第2領域及び第3領域の間に配置した第2遷移領域、第2遷移領域は第2バインダー繊維の集中、バスト繊維、及び第3バインダー繊維を包含し、第2遷移領域における第2バインダー繊維の濃度は第2領域に近接して最大で第3領域に近接して最少でありかつ第2遷移領域における第3バインダー繊維の濃度は第3領域に近接して最大でかつ第2領域に近接して最少である請求項10に記載の方法。
【請求項12】
方法は更に
(d)工程(c)で製造された単一の繊維含有複合体に加熱空気を通してバインダー繊維を少なくとも部分的に融解する工程を包含する工程を更に包含する請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
方法は工程(d)で製造された繊維含有複合体を加熱してバインダー繊維を更に融解し、及び複合体を圧縮してそれに含まれる繊維を圧縮状態に保持する工程を更に包含する請求項12に記載の方法。
【請求項14】
熱可塑性バインダー繊維の一部はカップリング剤、適合化剤、混合剤及びそれらの組合せからなる群から選ばれる添加物を包含する請求項10〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
熱可塑性バインダー繊維はポリオレフィンを包含する請求項10〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
添加物はバインダー繊維の重量を基準にして約0.01〜約20重量%の量で存在する請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
方法は第1領域に隣接した複合体の表面に荒目地クロスを備える工程を更に包含する請求項10〜16にに記載の方法。
【請求項18】
荒目地クロスは複数のスパンボンド熱可塑性繊維を包含する不織荒目地クロスである請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−504936(P2009−504936A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527083(P2008−527083)
【出願日】平成18年8月16日(2006.8.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/031921
【国際公開番号】WO2007/022228
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(599060788)ミリケン・アンド・カンパニー (65)
【氏名又は名称原語表記】Milliken & Company
【Fターム(参考)】