説明

異常検出方法、物理量制御方法、異常検出システム、物理量制御システムおよびインクジェット記録装置

【課題】物体と障害物とが衝突するような場合のように物体に関する物理量が急激に変動する場合のみならず、物体に関する物理量が緩慢に変動する場合の異常も的確に検出することが可能な異常検出システムを提供する。
【解決手段】異常検出システム1、10は、物体に関する物理量A(t)を検出する物理量検出手段2と、物理量検出手段2で検出された物体に関する物理量A(t)に基づいて、現在の物体に関する物理量A(t)と、現在から所定の時間間隔dtだけ以前の物体に関する物理量A(t−dt)との差分である時間変動分C(t,dt)を算出する時間変動分算出手段4と、時間変動分算出手段4で算出された時間変動分C(t,dt)と、予め設定された閾値D(dt)とを比較して、比較した結果が予め設定された条件を満たすと判断した場合に、前記物体に関する物理量A(t)の異常を検出する異常検出手段5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常検出方法、物理量制御方法、異常検出システム、物理量制御システムおよびインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙や布帛等の通常の記録媒体のみならず、樹脂フィルムや金属類等のインク吸収性の乏しい記録媒体に対しても画像を記録することができる画像記録装置として、記録ヘッドの一端面に設けられた複数のノズルからインクを吐出して記録媒体上に着弾させて画像を記録するインクジェット記録装置が開発されており、現在、その技術は種々の技術分野で応用されている(例えば特許文献1等参照)。
【0003】
インクジェット記録装置は、一般的に、ラインヘッド方式とシリアルヘッド方式に大別されるが、特にシリアルヘッド方式のインクジェット記録装置100では、図32に示すように、通常、キャリッジ101と呼ばれる筐体状の収容装置に複数の記録ヘッド102が搭載される。
【0004】
そして、図示しないサーボモータ等を駆動源として、記録ヘッド102をキャリッジ101ごといわゆる主走査方向Xに往復移動(すなわち主走査)させながら、支持板や搬送ベルト103上に載置された記録媒体Sに対して記録ヘッド102のノズル104からインクを吐出させることで、記録媒体S上に画像を記録するように構成される。
【0005】
その際、搬送ベルト103等から浮いた記録媒体Sの端部にキャリッジ101や記録ヘッド102が引っ掛かる等して、キャリッジ101や記録ヘッド102等と搬送ベルト103等との間で記録媒体Sが巻き込まれて詰まる、いわゆるジャムJが生じてしまう。ジャムJが生じると、記録媒体Sが下方に存在しないにもかかわらず記録ヘッド102のノズル104からインクを吐出して搬送ベルト103等を汚染してしまったり、場合によってはキャリッジ101や記録ヘッド102等が損傷してしまう。
【0006】
そこで、ジャムJが発生した場合には、いち早くそれを検出し、サーボモータ等の回転駆動を停止してキャリッジ101や記録ヘッド102の移動(主走査)を停止するとともに、記録ヘッド102のノズル104からのインクの吐出を停止する必要がある。
【0007】
一般的に、このように物体が移動することにより不具合が生じる場合に、それを検知して物体の移動を停止したり、物体を反対方向に移動させて不具合を解消させる技術としては、例えば特許文献2、3に記載された技術が知られている。
【0008】
これらの特許文献では、自動的に開閉する自動車のドアや窓に障害物や人体が挟まれた際にドアや窓の開閉を駆動するモータの電流値が急激に増加したり回転速度が急激に減少することに基づいて、モータの電流値の微分値や回転速度の微分値等を用いて挟み込み加重を算出し、挟み込み加重が所定の閾値以上になった場合にモータを反転させて、ドアや窓の障害物や人体に対する挟み付けを解除する技術が記載されている。
【特許文献1】特開2006−150652号公報
【特許文献2】特開平7−163169号公報
【特許文献3】特開平7−163170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記のインクジェット記録装置100においても、キャリッジ101等が搬送ベルト103や記録媒体S等の載置された障害物等に衝突した場合には、キャリッジ101等の主走査方向Xへの移動速度が一瞬、比較的大きく変動するため、挟み込み加重を算出しないまでも、上記の特許文献2、3に記載された技術のようにサーボモータの電流値や回転速度の微分値やキャリッジ101等の移動速度の微分値を算出して監視することで、比較的容易に衝突を検出して、キャリッジ101等の移動を停止させることができる。
【0010】
しかしながら、上記のようにインクジェット記録装置100でジャムJが発生した場合には、サーボモータの電流値や回転速度、或いはキャリッジ101等の移動速度等はさほど急激には変化せず、緩慢に上昇したり減少したりする。そのため、それらの微分値を算出しても微分値は多少増加したり減少したりするだけで、ジャムJの発生を精度良く検出することができない。
【0011】
そして、キャリッジ101等がジャムJに阻害されてほとんど移動できなくなるような段階になって初めてジャムJの発生が検出されるが、これでは、上記のようなインク吐出による搬送ベルト103等の汚染や、キャリッジ101や記録ヘッド102等の損傷等が生じてしまう。
【0012】
そこで、例えば、サーボモータの電流値や回転速度や、キャリッジ101等の移動速度等の微分値に対する閾値を下げて小さい値に設定することも考えられるが、閾値を低く設定すると、今度は、サーボモータやキャリッジ101等の通常の動作における回転速度や移動速度等の変動をジャムJの発生と誤検出するという問題が発生する。
【0013】
そして、キャリッジ101の移動を停止させる必要がないのに停止させてしまったり、そのため、記録媒体Sに正確に画像が記録されていたにもかかわらず画像記録のやり直しをせざるを得なくなり、途中まで正確に画像が記録されていた記録媒体Sを無駄に廃棄しなければならなくなる等の問題が生じてしまう。
【0014】
そこで、発明者らは、キャリッジ101等の障害物等との衝突やジャムJの発生を、ともに精度良く検出する方法を研究する中で、キャリッジ101の障害物等との衝突のように、物体に関する物理量(上記の場合はキャリッジ101等の移動速度やサーボモータの電流値や回転速度等)が急激に変動する場合と、ジャムJが発生した場合のように、物体に関する物理量が緩慢に変動するが通常の動作時よりも大きく変動する場合とを、ともに精度良く検出する異常検出方法や異常検出システムについての知見が得られた。
【0015】
また、これらの異常検出方法や異常検出システムを上記のインクジェット記録装置のようなモータ、特にサーボ機構を有するサーボモータを駆動源とする装置に適用することで、その効果が特に有効に発揮されることを見出した。特に、サーボモータを用いたインクジェット記録装置では、上記のようなキャリッジ等の障害物等との衝突はもちろん、ジャムの発生を的確に検出することが可能であるという知見が得られた。
【0016】
本発明は、上記の問題点や知見を鑑みてなされたものであり、物体と障害物とが衝突するような場合のように物体に関する物理量が急激に変動する場合のみならず、物体に関する物理量が緩慢に変動する場合の異常も的確に検出することが可能な異常検出方法および異常検出システムを提供することを目的とし、また、異常が検出されたことに基づいて当該物理量を制御する物理量制御方法および物理量制御システムや、上記の異常検出方法および異常検出システムや物理量制御方法および物理量制御システムが適用されるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記の問題を解決するために、本発明の異常検出方法は、
物体に関する物理量を検出する物理量検出ステップと、
前記物理量検出ステップで検出された前記物体に関する物理量に基づいて、現在の前記物体に関する物理量と現在から所定の時間間隔だけ以前の前記物体に関する物理量との差分である時間変動分を、現在より前の所定の時間範囲内の全時間間隔について、前記時間間隔の関数として算出する時間変動分算出ステップと、
前記時間変動分算出ステップで算出された前記時間間隔の関数としての前記時間変動分と予め設定された閾値とを比較して、比較した結果が予め設定された条件を満たす場合に、前記物体に関する物理量の異常を検出する異常検出ステップと、
を有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の異常検出方法は、
物体に関する物理量を検出する物理量検出ステップと、
前記物理量検出ステップで検出された前記物体に関する物理量に基づいて、現在の前記物体に関する物理量と現在から所定の時間間隔だけ以前の前記物体に関する物理量との差分である時間変動分を、互いに異なる複数の前記時間間隔についてそれぞれ算出する時間変動分算出ステップと、
前記時間変動分算出ステップで算出された前記各時間間隔ごとの前記時間変動分と予め設定された閾値とを比較して、比較した結果が予め設定された条件を満たす場合に、前記物体に関する物理量の異常を検出する異常検出ステップと、
を有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の物理量制御方法は、
上記の異常検出方法を用いた物理量制御方法であって、
前記異常検出方法における前記異常検出ステップで前記物体に関する物理量の異常を検出した場合に、前記物体を駆動し、前記物体に関する物理量を制御する駆動制御手段に対して予め設定された異常時の制御を行う異常時制御ステップを有することを特徴とする。
【0020】
また、本発明の異常検出システムは、
前記物体に関する物理量を検出する物理量検出手段と、
前記物理量検出手段で検出された前記物体に関する物理量に基づいて、現在の前記物体に関する物理量と現在から所定の時間間隔だけ以前の前記物体に関する物理量との差分である時間変動分を、現在より前の所定の時間範囲内の全時間間隔について、前記時間間隔の関数として算出する時間変動分算出手段と、
前記時間変動分算出手段で算出された前記時間間隔の関数としての前記時間変動分と予め設定された閾値とを比較して、比較した結果が予め設定された条件を満たすと判断した場合に、前記物体に関する物理量の異常を検出する異常検出手段と、
を備えることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の異常検出システムは、
前記物体に関する物理量を検出する物理量検出手段と、
前記物理量検出手段で検出された前記物体に関する物理量に基づいて、現在の前記物体に関する物理量と現在から所定の時間間隔だけ以前の前記物体に関する物理量との差分である時間変動分を、互いに異なる複数の前記時間間隔についてそれぞれ算出する時間変動分算出手段と、
前記時間変動分算出手段で算出された前記各時間間隔ごとの前記時間変動分と予め設定された閾値とを比較して、比較した結果が予め設定された条件を満たすと判断した場合に、前記物体に関する物理量の異常を検出する異常検出手段と、
を備えることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の物理量制御システムは、
上記の異常検出システムを用いた物理量制御システムであって、
さらに、前記物体を駆動し、前記物体に関する物理量を制御する駆動制御手段を備え、
前記駆動制御手段は、前記異常検出手段が前記物体に関する物理量の異常を検出した場合に、予め設定された異常時の制御を行うことを特徴とする。
【0023】
また、本発明のインクジェット記録装置は、
上記の物理量制御システムを用いたインクジェット記録装置であって、
さらに、
記録媒体に対してインクを吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドが搭載され、前記記録媒体の上方を主走査方向に移動するキャリッジと、
を備え、
前記駆動制御手段である前記サーボモータのサーボ機構を含むモータ駆動制御部は、前記異常検出手段が前記物体に関する物理量の異常を検出した場合に、前記異常時の制御として前記サーボモータの回転を停止することにより、前記キャリッジの主走査方向の移動を停止することを特徴とする。
【0024】
また、本発明のインクジェット記録装置は、
上記の異常検出システムを用いたインクジェット記録装置であって、
さらに、
記録媒体に対してインクを吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドが搭載され、前記記録媒体の上方を主走査方向に移動するキャリッジと、
を備え、
前記異常検出システムを前記記録媒体の端部・皺検出システムとして用い、
前記異常検出システムにおける前記物体に関する物理量は、前記キャリッジと前記記録媒体との距離であり、
前記異常検出システムの物理量検出手段は、前記キャリッジと前記記録媒体との距離を検出し、
前記異常検出システムの前記異常検出手段で、前記物体に関する物理量の異常として前記記録媒体の端部および皺を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明の異常検出方法、物理量制御方法、異常検出システム、物理量制御システムおよびインクジェット記録装置によれば、例えばインクジェット記録装置のキャリッジに硬い障害物が衝突したような場合には、小さい時間間隔の時間変動分が閾値を越え、例えばキャリッジに重量が軽い障害物が衝突したような場合には、中程度の時間間隔の時間変動分が閾値を越え、また、キャリッジ等と搬送ベルト等との間に記録媒体が巻き込まれてジャムが生じたような場合や衝突した障害物が軟らかな物であるような場合には、比較的大きな時間間隔の時間変動分が閾値を越えるようにすることが可能となる。
【0026】
そのため、物体(例えばキャリッジ)と障害物とが衝突するような場合のように、物体に関する物理量が急激に変動する場合だけでなく、インクジェット記録装置におけるジャム発生時等のように物体に関する物理量が緩慢に変動するような場合にも物体に関する物理量の異常も的確に検出することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明に係る異常検出方法、物理量制御方法、異常検出システム、物理量制御システムおよびインクジェット記録装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0028】
以下、まず、本実施形態に係る異常検出システムについて説明しつつ、本実施形態に係る異常検出方法をあわせて説明する。図1は、本実施形態に係る異常検出方法の処理手順を示すフローチャートである。
【0029】
[異常検出システムおよび異常検出方法]
[第1の実施の形態]
第1の実施形態に係る異常検出システム1は、図2に示すように、主に、物理量検出手段2と、時間変動分算出手段4と、異常検出手段5とで構成されている。また、本実施形態では、記憶手段3とフィルタ手段6とが設けられている。なお、フィルタ手段6(フィルタリングステップS2)と記憶手段3は必ずしも設けられなくてもよい。
【0030】
物理量検出手段2は、物体に関する物理量A(t)を検出するようになっている(物理量検出ステップS1)。
【0031】
なお、以下では、物体がインクジェット記録装置におけるキャリッジであり、物理量A(t)がキャリッジの主走査方向の移動速度である場合を例に挙げて説明するが、この場合に限定されない。
【0032】
すなわち、物体に関する物理量A(t)とは、キャリッジの主走査方向の移動速度だけでなく、キャリッジを主走査方向に移動させるためのサーボモータの電流値や回転速度も含まれる。また、この他にも、インクジェット記録装置で言えば、例えば、記録媒体の搬送速度や、記録ヘッドに供給されるインクの流速等でもよい。
【0033】
さらに、物体に関する物理量A(t)は、インクジェット記録装置に関するものに限定されず、例えば、前述した特許文献2、3に記載された自動的に開閉する自動車のドアや窓の移動速度やモータの電流値の回転速度等も含まれる広い概念である。
【0034】
また、以下では、キャリッジを主走査方向に移動させるための駆動源がサーボモータである場合を例に挙げて説明するが、この場合に限定されず、通常のモータである場合も含まれる。また、駆動源は、モータのような回転駆動によるものにも限定されず、例えば、工業用ロボット等に用いられる油圧シリンダや空気圧シリンダにおけるピストンの直線的な移動動作のように直線的な動作を駆動源とするものであってもよい。
【0035】
上記のように、物体に関する物理量A(t)がインクジェット記録装置におけるキャリッジの主走査方向の移動速度である場合、物理量検出手段2は、例えば、主走査方向に延在するリニアスケールのマークをセンサで検出するリニアエンコーダと、リニアエンコーダのセンサでリニアスケールのマークを検出して出力されるパルス信号の周波数をキャリッジの移動速度に変換するFV(Frequency to Voltage)変換器等で構成される。なお、物体に関する物理量A(t)のA/D変換等の処理は適宜行われる。
【0036】
本実施形態では、物理量検出手段2を構成するFV変換器から出力されるキャリッジの移動速度の実測値に細かなノイズがのるため、物理量検出手段2から出力される物体に関する物理量A(t)であるキャリッジの移動速度の実測値を平滑化するためのフィルタ手段6が設けられている(フィルタリングステップS2)。
【0037】
なお、物理量検出手段2から出力される物体に関する物理量A(t)の実測値からノイズを除去するために、フィルタ手段6(フィルタリングステップS2)が設けられることが多いが、ノイズがほとんどのらない物理量の実測値が得られるような場合には、必ずしもフィルタ手段6(フィルタリングステップS2)を設ける必要はない。
【0038】
また、物理量検出手段2(物理量検出ステップS1)において、サンプリングタイミングごとに物体に関する物理量A(t)(またはフィルタ手段6(フィルタリングステップS2)で平坦化された物体に関する物理量B(t))として複数の値が検出される場合には、当該複数の値に基づいてそれらの平均値や中央値等を算出してそのサンプリングタイミングにおける物体に関する物理量A(t)、B(t)とする図示しない物理量算出手段(物理量算出ステップ)を設けるように構成することも可能である。
【0039】
例えば、インクジェット記録装置のキャリッジの移動速度を上記のようなリニアエンコーダ等で検出し、リニアエンコーダが例えば3相の信号値を出力するような場合や、サーボモータの回転数を例えば2相や3相の信号値を出力するような場合などには、上記の物理量算出手段(物理量算出ステップ)を設けるように構成することが好ましい。
【0040】
本実施形態では、フィルタ手段6(フィルタリングステップS2)で物体に関する物理量であるキャリッジの移動速度の実測値が平滑化されると、平坦化された物体に関する物理量B(t)(以下、単に物体に関する物理量B(t)という。)であるキャリッジの移動速度は、シフトレジスタやRAM(Random Access Memory)等で構成された記憶手段3に時系列的に記憶されるとともに、時間変動分算出手段4に送信されるようになっている。
【0041】
時間変動分算出手段4は、記憶手段3に記憶されている物体に関する物理量B(t)の履歴に基づいて、送信されてきた現在の物体に関する物理量B(t)と、現在から所定の時間間隔dtだけ以前の物体に関する物理量B(t−dt)との差分である時間変動分C(t,dt)を、現在より前の、予め設定された所定の時間範囲Rt内の全時間間隔dtについて、時間間隔dtの関数C(t,dt)として算出するようになっている(時間変動分算出ステップS3)。以下、具体的に説明する。
【0042】
例えば、上記のインクジェット記録装置の例において、キャリッジが障害物に衝突したような場合、物理量検出手段2(物理量検出ステップS1)で、例えば図3に示すようなキャリッジの移動速度としての物体に関する物理量A(t)が検出される。そして、それがフィルタ手段6(フィルタリングステップS2)で平滑化されると、図4に示すような物体に関する物理量B(t)が得られる。記憶手段3には、図4に示した物体に関する物理量B(t)が時系列的に、すなわち例えばサンプリングタイミングごとに記憶される。
【0043】
時間変動分算出手段4(時間変動分算出ステップS3)では、フィルタ手段6から現在の物体に関する物理量B(t)が送信されてくると、まず、記憶手段3から、現在から所定の時間間隔dtだけ以前の物体に関する物理量B(t−dt)のデータを所定の時間範囲Rt分まで読み出す。すなわち、所定の時間範囲Rtは所定の時間間隔dtが取り得る最大値である。
【0044】
図5は、見やすくするために図4のグラフの横軸を3倍に拡大して、現在の物体に関する物理量B(t)と、現在から時間間隔dt以前の物体に関する物理量B(t−dt)との関係を説明するグラフである。なお、図5では、それらB(t)とB(t−dt)との差分である時間変動分C(t,dt)、すなわち、
C(t,dt)=B(t)−B(t−dt) …(1)
もあわせて示されている。
【0045】
時間変動分算出手段4(時間変動分算出ステップS3)では、このように、所定の時間範囲Rtまで全ての時間間隔dtについて、現在の時刻tにおける時間変動分C(t,dt)を時間間隔dtの関数として算出するようになっている。なお、時間変動分C(t,dt)を上記の(1)式の変わりに、
C(t,dt)=B(t−dt)−B(t) …(2)
として算出するように構成することも可能である。
【0046】
このようにして、時間範囲Rtの各時間間隔dtについて、現在の物体に関する物理量B(t)と、現在から時間間隔dt以前の物体に関する物理量B(t−dt)との差分としての時間変動分C(t,dt)を算出し続けた場合には、各時間間隔dtの時間変動分C(t,dt)は時刻tについて例えば図6および図7に示したグラフのように推移する。
【0047】
なお、図6(A)には時間間隔dt=0.02秒、(B)にはdt=0.05秒、(C)にはdt=0.10秒、図7(A)にはdt=0.20秒、(B)にはdt=0.38秒、(C)にはdt=0.70秒の場合がそれぞれ示されている。
【0048】
異常検出手段5(異常検出ステップS4)では、上記のようにして時間変動分算出手段4(時間変動分算出ステップS3)で各時間間隔dtの関数として算出された各時間変動分C(t,dt)について、それらと予め設定された閾値Dとを比較するようになっている。そして、比較した結果が予め設定された条件を満たすと判断した場合に、物体に関する物理量A(t)(或いはB(t))の異常を検出するようになっている。
【0049】
本実施形態では、物体に関する物理量A(t)(或いはB(t))の異常を検出すると、図2に示したように、異常検出信号E(t)を出力するようになっている。
【0050】
上記の図6や図7では、各時間間隔dtを固定した場合に、各時間間隔dtごとの時間変動分C(t,dt)の時刻tについての推移を示したが、逆に、時刻tを固定し、ある時刻tにおける時間変動分C(t,dt)を時間間隔dtについて図示すると、例えば図8のグラフのように表すことができる。
【0051】
そして、この時間間隔dtごとの時間変動分C(t,dt)が、時刻tごとにグラフ上を上下に変動する。なお、図8では、時間変動分C(t,dt)がすべての時間間隔dtについて正の値をとる場合が示されているが、負の値をとる場合もある。
【0052】
本実施形態では、このような所定の時間範囲Rt内の全時間間隔dtについて、閾値として、図8に示すような各時間間隔dtを変数とする閾値関数D(dt)として予め設定されている。閾値関数D(dt)は記憶手段3に保存されており、異常検出手段5は、本実施形態に係る異常検出処理が開始されると、閾値関数D(dt)を記憶手段3から読み出すようになっている。
【0053】
そして、本実施形態では、異常検出手段5(異常検出ステップS4)では、現在(時刻t)より前の所定の時間範囲Rt内の全時間間隔dtについて、時間変動分C(t,dt)と閾値関数D(dt)とを比較して、時間変動分C(t,dt)が閾値関数D(dt)を越える時間間隔dtが存在するという条件を満たすと判断された場合に、物体に関する物理量A(t)の異常を検出するようになっている。
【0054】
なお、上記のように、時間変動分C(t,dt)は負の値をとる場合もあるため、例えば図9に示すように、時間変動分算出手段4(時間変動分算出ステップ)で各時間変動分C(t,dt)の絶対値|C(t,dt)|を算出し、異常検出手段5(異常検出ステップS4)で、各時間変動分C(t,dt)の絶対値|C(t,dt)|と、正の値をとる閾値関数D(dt)と比較するように構成することが可能である。
【0055】
また、例えば図10に示すように、閾値関数として、正の値をとる閾値関数D(dt)と、負の値をとる閾値関数D(dt)とを設けておき、異常検出手段5(異常検出ステップS4)で、時間変動分C(t,dt)が閾値関数D(dt)と閾値関数D(dt)とで区画される数値範囲(図10のグラフにおける各時間間隔dtごとの上下方向の数値範囲)を越えるような時間間隔dt、すなわち、時間変動分C(t,dt)が閾値関数D(dt)より大きいか或いは閾値関数D(dt)より小さいような時間間隔dtが存在すると判断された場合に、物体に関する物理量A(t)の異常を検出するように構成することも可能である。
【0056】
なお、図10の場合、必ずしも閾値関数D(dt)の絶対値が閾値関数D(dt)と等しくなるように設定される必要はなく、閾値関数D(dt)と閾値関数D(dt)とを独立に設定するように構成してもよい。また、異常検出手段5(異常検出ステップS4)における判断条件を、図8〜図10に示したいずれの方法で定めるか、或いは図8〜図10に示したいずれの方法とも異なる方法で定めるかは、物体に関する物理量A(t)の異常が的確に検出されるように適宜決定される。
【0057】
次に、本実施形態に係る異常検出方法および異常検出システムの作用について説明する。
【0058】
例えば、物体に関する物理量A(t)として、上記の例のようにインクジェット記録装置(例えば図32に示したインクジェット記録装置100参照。)においてサーボモータの回転駆動により主走査方向に移動するキャリッジの移動速度を検出するような場合に、キャリッジが記録媒体上や搬送ベルト上等に載置された重量が軽い障害物に衝突すると、図3に示したように、衝突の瞬間に、物体に関する物理量A(t)であるキャリッジの移動速度A(t)が低下する。
【0059】
サーボモータは、例えばサーボモータの出力軸に取り付けられたロータリーエンコーダにより検出される回転数の変動を比例分(P)、積分値(I)、微分値(D)をとって目標値になるように制御するPID制御によってサーボ機構により制御されており、移動速度A(t)が低下してロータリーエンコーダにより検出される出力軸の回転数の低下がサーボ機構にフィードバックされると、サーボモータの回転数が上昇して、キャリッジの移動速度A(t)が大きくなる。
【0060】
このようにして、キャリッジは、移動速度A(t)をしばらく周期的に上下させながら、衝突した軽い障害物を主走査方向に押しながら移動を続ける。そして、その移動速度A(t)は、次第に元の移動速度、すなわち目標の移動速度に収束していく。図3のグラフでは、この状態が示されている。
【0061】
物理量検出手段2(物理量検出ステップS1)では、例えばリニアエンコーダやFV変換器等を用いて、このように変動するキャリッジの移動速度(物体に関する物理量)A(t)が検出される。なお、キャリッジが障害物等に衝突せず、通常の移動を行っている際には、図3において衝突により移動速度A(t)が大きく変動する前のなだらかに推移する移動速度が検出される。
【0062】
そして、フィルタ手段6(フィルタリングステップS2)で、キャリッジの移動速度A(t)の実測値からノイズが除去される等して、平滑化されたキャリッジの移動速度B(t)が生成される。そして、時々刻々出力される物体に関する物理量B(t)は、記憶手段3に時系列的に、すなわち例えばサンプリングタイミングごとに記憶される。
【0063】
また、時間変動分算出手段4(時間変動分算出ステップS3)では、フィルタ手段6から現在の物体に関する物理量B(t)が送信されてくると、記憶手段3から、現在から所定の時間間隔dtだけ以前の物体に関する物理量B(t−dt)のデータを所定の時間範囲Rt分まで読み出して、各時間間隔dtについて、現在の物体に関する物理量B(t)と、現在から時間間隔dt以前の物体に関する物理量B(t−dt)との差分である時間変動分C(t,dt)を上記(1)式(または上記(2)式)に従って算出する。
【0064】
従って、本実施形態の場合には、時間変動分C(t,dt)は、例えば図8〜図10に示したように時間間隔dtの関数として算出される。そして、時刻tが推移して、上記の物理量検出ステップS1や時間変動分算出ステップS3が繰り返されると、図8〜図10に示した各時間間隔dtごとの時間変動分C(t,dt)が、時刻tの推移に従ってグラフ上を上下方向に変動する。
【0065】
この各時間間隔dtごとの時間変動分C(t,dt)のグラフ上での上下方向の変動は、例えば、図7(B)と同じグラフである図11に示す時間間隔dt=0.38秒におけるグラフにおいて、時刻tをグラフの右方向に推移させた場合の時間変動分C(t,dt)の値の変動に等しい。
【0066】
異常検出手段5(異常検出ステップS4)では、例えば図12に示すように、このように各時間間隔dtごとに変動する時間変動分C(t,dt)が予め設定された閾値関数D(dt)を越える時間間隔dtが存在するか否かを監視し、そのような時間間隔dtが存在すると判断した場合に、物体に関する物理量A(t)の異常を検出する。
【0067】
なお、各時間変動分C(t,dt)の絶対値|C(t,dt)|と正の値をとる閾値関数D(dt)とを比較したり、閾値関数として正の値をとる閾値関数D(dt)と負の値をとる閾値関数D(dt)とを設けておき、時間変動分C(t,dt)が閾値関数D(dt)と閾値関数D(dt)とで区画される数値範囲を越えるか否かを監視するように構成することが可能であることは前述したとおりである。以下では、それらを代表して、閾値関数として正の値をとる閾値関数D(dt)と負の値をとる閾値関数D(dt)とを設ける場合について述べる。
【0068】
図10や図12(或いは図8、図9)に示したように、各時間間隔dtごとに閾値関数D(dt)、D(dt)(或いは1つの閾値関数D(dt))を設けるということは、図6(A)〜(C)、図7(A)〜(C)に示した各時間間隔dtごとの時間変動分C(t,dt)に対しては、図6(A)〜(C)、図7(A)〜(C)と同じグラフである図13(A)〜(C)、図14(A)〜(C)に示すように、それぞれ時刻tに依存しない定数D(dt)、D(dt)を設定されたことを意味する。
【0069】
すなわち、図6(A)〜(C)、図7(A)〜(C)と同じグラフである図13(A)〜(C)、図14(A)〜(C)に示すように、各時間間隔dtごとに見た場合、時刻tについて変動する時間変動分C(t,dt)に対して、それぞれ時間間隔dtごとに正の定数D(dt)と負の定数D(dt)がそれぞれ設定されたことを意味する。
【0070】
そして、この場合には、図14(B)に示すように、時間変動分C(t,dt)が負の定数D(dt)を下回る時間間隔dt(dt=0.38秒)が存在するため、異常検出手段5(異常検出ステップS4)では、時間間隔dt=0.38秒において時間変動分C(t,dt)が負の定数D(dt)を下回った時刻tに物体に関する物理量A(t)の異常を検出して、時刻tに異常検出信号E(t)を出力する(図2参照)。
【0071】
なお、上記では、図13や図14に基づいて説明したため、その中で時間変動分C(t,dt)が閾値関数D(dt)と閾値関数D(dt)とで区画される数値範囲を越えた図14(B)の時間間隔dt=0.38秒の場合の時刻tに物体に関する物理量A(t)の異常を検出し、時刻tに異常検出信号E(t)を出力する場合について述べた。
【0072】
しかし、本実施形態では、前述したように、現在より前の、予め設定された所定の時間範囲Rt内の全時間間隔dtについて時間変動分C(t,dt)が算出され、全時間間隔dtについて時間変動分C(t,dt)が閾値関数D(dt)と閾値関数D(dt)とで区画される数値範囲を越えるか否かが判断される。
【0073】
そのため、図14(B)に示した時間間隔dt=0.38秒の場合の時刻tよりも早い時刻で時間変動分C(t,dt)が閾値関数D(dt)と閾値関数D(dt)とで区画される数値範囲を越える時間間隔dtが存在する場合には、当該早い時刻に物体に関する物理量A(t)の異常が検出され、当該時刻に異常検出信号E(t)が出力される。
【0074】
ところで、上記のような物理系、すなわちインクジェット記録装置では、キャリッジが上記のような重量が軽い障害物に衝突した場合には、図13や図14に示したような各時間間隔dtごとの時間変動分C(t,dt)が検出される。
【0075】
そして、図13(A)〜(C)、図14(A)〜(C)の各グラフを比較して分かるように、図14(B)に示した時間間隔dt=0.38秒の場合が時間変動分C(t,dt)の上下方向の振幅が最も大きい。なお、上記の例では図13や図14に示した各時間間隔dt以外の時間間隔dtを含めた全時間間隔dtの中で、時間間隔dt=0.38秒の場合が時間変動分C(t,dt)の上下方向の振幅が最も大きくなる。
【0076】
これは、図4と同じグラフである図15に示すように、キャリッジが軽い障害物とした後に、キャリッジの移動速度(物体に関する物理量)B(t)が最大値B(t)maxとなる時刻と、最小値B(t)minとなる時刻との時間間隔dtが0.38秒であったことを意味する。
【0077】
しかし、図32に示したように、キャリッジや記録ヘッド等と搬送ベルト等との間に記録媒体Sが巻き込まれてジャムJが生じたような場合や、衝突した障害物が軟らかな物であるような場合には、キャリッジはジャムや障害物から緩やかな抵抗を受けるため、キャリッジの移動速度(物体に関する物理量)A(t)、B(t)は、図16に示すように緩慢に変動する。
【0078】
そして、時間変動分算出手段4(時間変動分算出ステップS3)で、上記(1)式に従って現在の物体に関する物理量B(t)と、現在から時間間隔dt以前の物体に関する物理量B(t−dt)との差分として時間変動分C(t,dt)を算出すると、時間変動分C(t,dt)は図17(A)〜(C)や図18に示すように時刻tに従って推移する。なお、図17(A)には時間間隔dt=0.05秒、(B)にはdt=0.20秒、(C)にはdt=0.38秒、図18にはdt=0.70秒の場合がそれぞれ示されている。
【0079】
そして、図17(C)に示した時間間隔dt=0.38秒の場合にも、時間変動分C(t,dt)が正の定数D(dt)を上回り、閾値関数D(dt)と閾値関数D(dt)とで区画される数値範囲を越えるが、それより以前に、図18に示した時間間隔dt=0.70秒の場合に、時間変動分C(t,dt)が負の定数D(dt)を下回り、閾値関数D(dt)と閾値関数D(dt)とで区画される数値範囲を越える。
【0080】
そのため、図18に示した時間間隔dt=0.70秒の場合において、時間変動分C(t,dt)が負の定数D(dt)を下回った時刻tに物体に関する物理量A(t)の異常が検出され、時刻tに異常検出信号E(t)が出力される。
【0081】
一方、キャリッジが例えば硬い物に衝突するような場合には、上記の場合と様相が変わってくる。このような場合、キャリッジの移動速度(物体に関する物理量)A(t)、B(t)は、図19に示すように瞬時に立ち上がる。
【0082】
そして、時間変動分算出手段4(時間変動分算出ステップS3)で、上記(1)式に従って現在の物体に関する物理量B(t)と、現在から時間間隔dt以前の物体に関する物理量B(t−dt)との差分として時間変動分C(t,dt)を算出すると、時間変動分C(t,dt)は図20(A)、(B)や図21(A)、(B)に示すように時刻tに従って推移する。
【0083】
そして、この場合、図20や図21に示したいずれの時間間隔dtにおいても、時間変動分C(t,dt)が閾値関数D(dt)と閾値関数D(dt)とで区画される数値範囲を越える。
【0084】
このように、キャリッジが例えば硬い物に衝突するような場合には、物体に関する物理量A(t)、B(t)が瞬時に変動するため、最も早急に時間変動分C(t,dt)が閾値関数D(dt)と閾値関数D(dt)とで区画される数値範囲を越えた時間間隔dtが出現した時刻tに、物体に関する物理量A(t)の異常が検出され、時刻tに異常検出信号E(t)が出力される。
【0085】
以上のように、本実施形態に係る異常検出方法および異常検出システム1によれば、現在より前の、予め設定された所定の時間範囲Rt内の全時間間隔dtについて時間変動分C(t,dt)を算出し、全時間間隔dtについて予め閾値関数D(dt)(閾値関数D(dt)および閾値関数D(dt))を設定しておき、算出した時間変動分C(t,dt)と閾値関数D(dt)とを比較して、例えば時間変動分C(t,dt)が閾値関数D(dt)を越える時間間隔dtが出現した時点tで物体に関する物理量A(t)の異常を検出するように構成した。
【0086】
そして、このように構成することで、例えばキャリッジに硬い障害物が衝突したような場合には小さい時間間隔dtの時間変動分C(t,dt)が閾値関数D(dt)を越え、例えばキャリッジに重量が軽い障害物が衝突したような場合には中程度の時間間隔dtの時間変動分C(t,dt)が閾値関数D(dt)を越え、また、キャリッジ等と搬送ベルト等との間に記録媒体Sが巻き込まれてジャムが生じたような場合や衝突した障害物が軟らかな物であるような場合には、比較的大きな時間間隔dtの時間変動分C(t,dt)が閾値関数D(dt)を越えるようにすることが可能となる。
【0087】
そのため、本実施形態に係る異常検出方法および異常検出システムによれば、物体(例えばキャリッジ)と障害物とが衝突するような場合のように物体に関する物理量A(t)が急激に変動する場合だけでなく、インクジェット記録装置におけるジャム発生時等のように物体に関する物理量A(t)が緩慢に変動するような場合にも物体に関する物理量A(t)の異常も的確に検出することが可能となる。
【0088】
[第2の実施の形態]
上記の第1の実施形態に係る異常検出システム1および異常検出方法では、現在より前の、予め設定された所定の時間範囲Rt内の全時間間隔dtについて時間変動分C(t,dt)を算出し、全時間間隔dtについて時間変動分C(t,dt)が閾値関数D(dt)(閾値関数D(dt)および閾値関数D(dt))を越えたか否かが判断されたが、全時間間隔dtについてこのような演算を行うと、演算処理が重くなり、処理速度が低下する等の現象が生じる場合がある。
【0089】
そこで、第2の実施形態に係る異常検出システム10および異常検出方法では、図22に示すように、時間変動分算出手段4(時間変動分算出ステップS3)では、予め設定された互いに異なる複数(n個)の時間間隔dt1、dt2、…、dtnについてそれぞれ時間変動分C(t,dt1)、C(t,dt2)、…、C(t,dtn)を算出する。
【0090】
そして、異常検出手段5(異常検出ステップS4)では、各時間間隔dt1、dt2、…、dtnについて、各時間変動分C(t,dt1)、C(t,dt2)、…、C(t,dtn)と閾値D(dt1)〜D(dtn)とをそれぞれ比較して、例えば各時間変動分C(t,dt1)、C(t,dt2)、…、C(t,dtn)のいずれかが閾値D(dt1)〜D(dtn)を越える時間間隔が存在すると判断された場合に、その時刻tに物体に関する物理量A(t)の異常を検出し、時刻tに異常検出信号E(t)を出力するように構成されている。
【0091】
その際、互いに異なる複数(n個)の時間間隔dt1、dt2、…、dtnは、異常検出システム10や異常検出方法が適用される物理系の実情等に基づいて、適宜設定される。
【0092】
例えば、物体に関する物理量A(t)として、上記のようなインクジェット記録装置におけるキャリッジの移動速度が設定される場合には、上記のように、重量が軽い障害物との衝突を検出するのに適した時間間隔dt=0.38秒(図14(B)参照。)や、硬い障害物との衝突を検出するのに適したdt=0.05秒等の短い時間間隔dt(図20(A)参照)、或いは、ジャムの発生や軟らかな障害物との衝突を検出するのに適したdt=0.70秒等の長い時間間隔dt(図18参照)が含まれるように、互いに異なる複数(n個)の時間間隔dt1、dt2、…、dtnが適宜設定される。
【0093】
以上のように、第2の実施形態に係る異常検出方法および異常検出システム10によれば、互いに異なる複数(n個)の時間間隔dt1、dt2、…、dtnを適切に設定することで、前述した第1の実施形態に係る異常検出方法および異常検出システム1と同様の効果を得ることが可能となる。
【0094】
また、時間変動分算出手段4(時間変動分算出ステップS3)における各時間変動分C(t,dt1)、C(t,dt2)、…、C(t,dtn)の算出処理や、異常検出手段5(異常検出ステップS4)における判断処理を迅速に行うことが可能となり、処理速度の低下が回避され、異常検出をリアルタイムに行うことが可能となる。
【0095】
なお、上記の第1および第2の実施形態において、閾値関数D(dt)や閾値D(dt1)〜D(dtn)は、全時間間隔dtや複数の時間間隔dt1、dt2、…、dtnで一定値に設定されてもよく、或いは、全時間間隔dtや複数の時間間隔dt1、dt2、…、dtnに依存して変化する値に設定することも可能である。
【0096】
その際、例えば図23に示すように、閾値関数D(dt)や閾値D(dt1)〜D(dtn)を、所定の時間間隔dtの近傍で他の時間間隔dtにおける値よりも低くなるように(閾値関数や閾値として上記のようなD(dt)とD(dt)を設定する場合には、D(dt)とD(dt)が他の時間間隔dtにおける値より0に近い値になるように)設定すれば、その所定の時間間隔dtの近傍で時間変動分C(t,dt)が閾値関数や閾値を越え易くなり、物体に関する物理量A(t)の異常が検出され易くなる。
【0097】
このように、注目したい時間間隔dtが存在するような場合には、その時間間隔dt近傍で閾値関数や閾値が他の時間間隔dtにおける値より0に近い値になるように設定することで、異常検出システム1、10を注目する時間間隔dtで敏感に異常を検出するように構成することができる。
【0098】
例えば、上記のインクジェット記録装置において、特にジャムの発生を重点的に検出したい場合には、時間間隔dt=0.38秒の近傍で閾値関数や閾値を他の時間間隔dtにおける値より0に近い値になるように設定することで、少なくともジャムの発生については敏感に検出することが可能となる。
【0099】
また、第1の実施形態における所定の時間範囲Rt内の全時間間隔dtや、第2の実施形態における複数の時間間隔dt1、dt2、…、dtnについて、それぞれ閾値関数や閾値を全体的に低く設定すれば、異常を検出し易くなる。しかし、前述したように、閾値関数や閾値を低く設定しすぎると、物体に関する物理量A(t)が定常時の異常ではない数値範囲内にあるにもかかわらず、異常と誤検出し易くなるという問題がある。
【0100】
そこで、物体に関する物理量B(t)が、障害物との衝突等がない定常時に各時間間隔dtごとに取り得る最大値や最小値を算出しておき、それらに定常時の値と異常時の値とを区別するための所定の基準値を付加するようにして閾値関数や閾値を設定するように構成することが可能である。
【0101】
以下、第1の実施形態に係る異常検出システム1の場合について説明するが、第2の実施形態に係る異常検出システム10の場合も、各時間間隔dt1〜dtnについて同様に処理することで同様の効果を得ることができる。
【0102】
具体的には、図24に示すように、異常検出システム1の時間変動分算出手段4で、定常時に算出した各時間間隔dtごとの時間変動分C(t,dt)について、各時間間隔dtごとにその推移を監視し、それまでに算出した各時間間隔dtごとの時間変動分C(t,dt)の最大値より大きな時間変動分C(t,dt)を算出した場合にはその最大値を更新して記憶手段3に記憶させる。
【0103】
また、最小値についても同様に、それまでに算出した各時間間隔dtごとの時間変動分C(t,dt)の最小値より小さな時間変動分C(t,dt)を算出した場合にはその最小値を更新して記憶手段3に記憶させる(定常時最大変動分更新ステップ)。
【0104】
すると、記憶手段3には、例えば図25に示すような各時間間隔dtごとの時間変動分C(t,dt)の最大値の分布Cmax(dt)や最小値の分布Cmin(dt)が記憶される。
【0105】
そこで、例えば、図24に示すように、基準値付加手段7を設け、時間変動分算出手段4が各時間間隔dtごとの時間変動分C(t,dt)の最大値を更新した場合には、基準値付加手段7で各時間間隔dtごとの時間変動分C(t,dt)の最大値の分布Cmax(dt)に基準値αを付加し、また、時間変動分算出手段4が各時間間隔dtごとの時間変動分C(t,dt)の最小値を更新した場合には、基準値付加手段7で各時間間隔dtごとの時間変動分C(t,dt)の最小値の分布Cmin(dt)に基準値−αを付加するようにして、閾値関数D(dt)や閾値関数D(dt)を設定する。
【0106】
そして、各時間間隔dtごとの時間変動分C(t,dt)の最大値Cmax(dt)や最小値Cmin(dt)が更新されない場合には、異常検出手段5は、それまでの閾値関数D(dt)や閾値関数D(dt)に基づいて処理を行う。
【0107】
しかし、いずれかの時間間隔dtの時間変動分C(t,dt)の最大値Cmax(dt)や最小値Cmin(dt)が更新された場合には、基準値付加手段7で当該時間間隔dtについては新たな時間変動分C(t,dt)の最大値Cmax(dt)や最小値Cmin(dt)に上記基準値を付加して当該時間間隔dtについての閾値関数D(dt)や閾値関数D(dt)を更新し(閾値更新ステップ)、異常検出手段5は、更新された新たな閾値関数D(dt)や閾値関数D(dt)に基づいて処理を行う。
【0108】
このように構成すれば、第1の実施形態における所定の時間範囲Rt内の全時間間隔dtや、第2の実施形態における複数の時間間隔dt1、dt2、…、dtnについて、それぞれ閾値関数D(dt)(或いはD(dt)、D(dt))や、閾値D(dt1)〜D(dtn)が、各時間間隔dtについて全体的に適切な値となり、各時間間隔dtについて物体に関する物理量A(t)の異常を的確に検出することが可能となる。
【0109】
また、それとともに、閾値関数や閾値を低く設定しすぎて、物体に関する物理量A(t)が定常時の異常ではない数値範囲内にあるのに異常と誤検出してしまう事態が発生することを的確に防止することが可能となる。
【0110】
なお、上記の基準値α、−αは、時間間隔dt(dtn)に依存しない一定数であってもよく、また、各時間間隔dt(dtn)に依存する時間間隔dt(dtn)の関数として設定されていてもよい。
【0111】
[第3の実施の形態]
上記の第1、第2の実施形態に係る異常検出システム1、10および異常検出方法において、例えば図9に示したように、異常検出手段5(異常検出ステップS4)で、各時間変動分C(t,dt)の絶対値|C(t,dt)|を算出して、正の値をとる閾値関数D(dt)と比較するように構成すれば、閾値関数D(dt)や閾値D(dt1)〜D(dtn)を、上記のD、Dのように2種類(正の場合と負の場合)設ける必要がなくなり、演算処理が軽くなるとともに、処理の単純化を図ることが可能となる。
【0112】
そして、さらに、時間変動分算出手段4(時間変動分算出ステップ)で各時間変動分C(t,dt)を算出した際に各時間変動分C(t,dt)の各絶対値|C(t,dt)|も算出し、異常検出手段5(異常検出ステップS4)で、各時間変動分C(t,dt)の各絶対値|C(t,dt)|の中から最大値|C(t,dt)|maxを選択し、この最大値|C(t,dt)|maxと、予め設定された閾値Dとを比較するように構成すれば、さらに処理の単純化を図ることが可能となる。
【0113】
その際、上記の場合と同様に、時間変動分算出手段4(時間変動分算出ステップ)で、定常時に各時間間隔dtごとに算出した各時間変動分C(t,dt)の各絶対値|C(t,dt)|の中の最大値が、記憶手段3に記憶されている時間変動分C(t,dt)の絶対値|C(t,dt)|の最大値より大きい場合には、新たな絶対値|C(t,dt)|の最大値を更新するようにして記憶していく(定常時最大変動分更新ステップ)。
【0114】
そして、時間変動分算出手段4が時間変動分C(t,dt)の絶対値|C(t,dt)|の最大値を更新した場合には、基準値付加手段7で新たな絶対値|C(t,dt)|の最大値に基準値を付加して閾値Dを更新し、異常検出手段5で、更新された新たな閾値Dに基づいて処理を行うように構成することが可能である。
【0115】
このように構成すれば、上記と同様に、閾値Dを低く設定しすぎて、物体に関する物理量A(t)が定常時の異常ではない数値範囲内にあるのに異常と誤検出してしまう事態が発生することを的確に防止することが可能となる。
【0116】
なお、上記の第1〜第3の実施形態において、例えば、インクジェット記録装置のキャリッジの移動開始時や移動停止時には、障害物と衝突したりジャムが発生していないにもかかわらず、キャリッジの移動速度(物体に関する物理量A(t))に比較的大きな変動が生じる。そして、それを異常として検出すると、誤検出が頻発することになる。
【0117】
そこで、上記の各手段、特に異常検出手段5(異常検出ステップS4)における処理が、物理量検出手段2(物理量検出ステップS1)で検出される物体に関する物理量A(t)が予め設定された条件を満たす場合、すなわち、例えばキャリッジの移動開始から所定時間後からキャリッジの移動停止の所定時間前までの時間範囲等の条件を満たす場合にのみ行われるように構成されることが好ましい。
【0118】
また、上記の第1〜第3の実施形態では、サーボモータの回転駆動に基づいてキャリッジを移動させる場合を想定して説明したが、この他にも、例えば直流モータや他のアクチュエータを用いた場合にも、同様に本発明に係る異常検出方法や異常検出システム1、10を適用することができる。
【0119】
その場合、物体に関する物理量A(t)は、異常があった場合、図3等に示したように周期的に値が上下するようにならない場合も多く、例えば、物体に関する物理量A(t)として直流モータに供給する電流の電流値を検出するように構成した場合、異常があった場合には物体に関する物理量A(t)が単調増加する。また、物体に関する物理量A(t)として直流モータの出力軸の回転数を検出するように構成した場合には、異常があった場合には物体に関する物理量A(t)が単調増加する。
【0120】
このように異常があった場合に物体に関する物理量A(t)が単調増加し或いは単調減少する場合には、単調増加し或いは単調減少する物体に関する物理量A(t)が閾値関数D(dt)を越えるように時間間隔dtや閾値関数D(dt)を設定すれば、いずれかの時間間隔dtにおいて時間変動分C(t,dt)が必ず閾値D、Dを越えるようにすることができる。
【0121】
そのため、駆動源がサーボモータではないアクチュエータである場合においても、本発明に係る異常検出方法や異常検出システム1、10により、物体に関する物理量A(t)に異常が発生したことを的確に検出することが可能となる。
【0122】
[物理量制御システムおよび物理量制御方法]
上記の各実施形態に係る異常検出システム1、10や異常検出方法により、物体に関する物理量A(t)の異常が検出され、時刻tに異常検出信号E(t)が出力されると、その異常検出信号E(t)を、当該物体を駆動し、物体に関する物理量A(t)を制御する駆動制御手段にフィードバックし、駆動制御手段で所定の異常時の制御を行わせることが可能となる。
【0123】
この場合、物理量制御システム20は、図26に示すように、少なくとも、上記の各実施形態に係る異常検出システム1または異常検出システム10と、物体Oの駆動制御手段21とを備えるように構成される。
【0124】
そして、駆動制御手段21は、定常時には物体Oを駆動して物体に関する物理量A(t)を制御するとともに、異常検出システム1、10で異常が検出され、異常検出信号E(t)が出力されると(図27の物理量制御方法のフローチャートの異常検出ステップS4参照)、異常検出信号E(t)に基づいて予め設定された異常時の制御を行うように構成される(異常時制御ステップS5)。
【0125】
駆動制御手段21は、物体Oの移動や回転等を駆動するアクチュエータの駆動制御部であり、具体的には、例えば、モータのモータ駆動制御部や、サーボモータのサーボ機構を含むモータ駆動制御部、或いは油圧シリンダや空気圧シリンダにおける圧力制御部等が挙げられる。
【0126】
その際、物体Oとしては、上記のインクジェット記録装置におけるキャリッジのように、モータやサーボモータ等の回転駆動により直線状或いは曲線状に移動する物体が挙げられ、物体に関する物理量A(t)としては、物体Oの直線状或いは曲線状に移動する際の移動速度等が挙げられる。
【0127】
また、物体Oは、上記のようにモータやサーボモータ等の回転駆動により移動される客体である場合に限定されず、モータ自体やサーボモータ自体であってもよい。その際、モータやサーボモータの出力軸の回転数や、出力軸のトルク、出力軸のトルクといわば同値の関係にあるモータやサーボモータに供給する電流の電流値等を、物体に関する物理量A(t)とすることができる。
【0128】
なお、物体に関する物理量A(t)がモータやサーボモータの出力軸の回転数である場合には、物理量検出手段2として例えばそれらの出力軸の回転数を検出するロータリーエンコーダが採用され、物体に関する物理量A(t)がモータやサーボモータの出力軸のトルクである場合には、物理量検出手段2として例えばトルクセンサが採用され、物体に関する物理量A(t)がモータやサーボモータに供給する電流の電流値である場合には、物理量検出手段2として例えば電流計が採用される。
【0129】
そして、ロータリーエンコーダ等の物理量検出手段2で検出されるモータやサーボモータの出力軸の回転数等の物体に関する物理量A(t)について異常検出手段5で異常が検出されて異常検出信号E(t)が出力されると、異常検出信号E(t)は、モータのモータ駆動制御部やサーボモータのサーボ機構を含むモータ駆動制御部等である駆動制御手段21に入力され、駆動制御手段21によって異常時の所定の制御を行わせる。
【0130】
異常時の所定の制御とは、例えば、モータやサーボモータの回転駆動を停止したり、モータやサーボモータの出力軸の回転を反転させること等の制御をいい、通常、物体に関する物理量A(t)に異常が生じたことによる不具合を解消する方向に異常時の制御が行われるように構成される。
【0131】
上記の各実施形態に係る異常検出システム1、10や異常検出方法を用いて、本実施形態に係る物理量制御システム20および物理量制御方法を上記のように構成することで、上記の各実施形態に係る異常検出システム1、10や異常検出方法の効果が的確に発揮されて、物体Oと障害物とが衝突するような場合のように物体に関する物理量A(t)が急激に変動する場合だけでなく、インクジェット記録装置におけるジャム発生時等のように物体に関する物理量A(t)が緩慢に変動するような場合にも物体に関する物理量A(t)の異常も的確に検出することが可能となり、物体Oを駆動し、物体に関する物理量A(t)を制御する駆動制御手段21に所定の異常時の制御を的確に行わせることが可能となる。
【0132】
[インクジェット記録装置]
前述したように、上記の実施形態に係る物理量制御システム20および物理量制御方法は、インクジェット記録装置に有効に適用することができる。以下、上記の実施形態に係る物理量制御システム20および物理量制御方法を適用したインクジェット記録装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0133】
本実施形態に係るインクジェット記録装置30は、図28に示すように、主に、搬送ユニット31と、スキャンユニット32と、インクラック33と、コンピュータ34とで構成されている。
【0134】
搬送ユニット31の上部には、図示しない記録媒体を裏面側(図中では下面側)から支持しながら図中矢印Yで示される副走査方向Yに搬送するための無端状の搬送ベルト311が配設されている。搬送ベルト311の代わりに、平板状のプラテンを用いることも可能である。なお、本実施形態では、搬送ユニット31とスキャンユニット32とは別体として形成されているが、一体的に形成することも可能である。
【0135】
記録媒体としては、前述したように、紙や布帛のほか、樹脂フィルムや金属類等を用いることが可能であり、特に限定されない。
【0136】
搬送ユニット31の搬送ベルト311上方には、スキャンユニット32が配設されているが、スキャンユニット32の背後には、キャリッジ36(図29参照)に搭載された図示しない複数の記録ヘッド(図32の記録ヘッド102参照。)にそれぞれ供給する各色のインク(液体)を貯蔵するインクタンク331を備えるインクラック33が配置されている。各インクタンク331からは、図示しない配管を介して各記録ヘッドにインクがそれぞれ供給されるようになっている。
【0137】
また、スキャンユニット32の下方には、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM、入出力インターフェース等がバスに接続されて構成されたコンピュータ34が配設されており、図示しない配線を介してコンピュータ34から記録ヘッドに画像データや電気信号等が送信されるようになっている。
【0138】
図29は、スキャンユニット内部の主要部を表す図である。なお、実際にはスキャンユニット32の図中左側の台座部上には、インクジェット記録装置30の稼働停止中に記録ヘッドのノズル面をキャップして保湿するヘッド保湿ユニットが配置され、図中右側の台座部上には、記録ヘッドのメンテナンスを行うヘッドクリーニング機構等が配置されたメンテナンスユニットが配置されているが、図29中では図示が省略されている。
【0139】
スキャンユニット32の内部には、棒状のキャリッジレール35が副走査方向Yに直交し図中矢印Xで示される主走査方向Xに延在するように配設されており、キャリッジレール35には、略筐体状のキャリッジ36がキャリッジレール35に沿って主走査方向Xに往復移動自在に支持されている。なお、キャリッジ36の上端部分には、前述した配線や配管を収容し、キャリッジ36の主走査方向Xの移動に変形しながら追従して配線や配管を保護するケーブルベア37が連結されている。
【0140】
キャリッジレール35の一端側には、サーボモータ38が取り付けられており、サーボモータ38の図示しない出力軸には図示しないプーリが直結されてキャリッジレール35内に収容されている。他端側のキャリッジレール35内部にも図示しないプーリが取り付けられており、両端の各プーリには図示しないベルトが掛け渡されている。
【0141】
そして、このベルトにキャリッジ36が固定されており、サーボモータ38の出力軸の回転駆動によるベルトの各プーリ間での周回動作により、キャリッジ36がキャリッジレール35に沿って主走査方向Xに往復移動するようになっている。
【0142】
また、キャリッジレール35の下端部分には、キャリッジ36の位置を特定し、移動速度を検出するためのリニアエンコーダのリニアスケール39がキャリッジレール35に沿うように設けられている。また、キャリッジ36の側面背部には、リニアスケール39に設けられているマークを読み取るリニアエンコーダのセンサ40が取り付けられており、センサ40がリニアスケール39のマークを読み取ってパルス信号を発信するようになっている。
【0143】
サーボモータ38が取り付けられたキャリッジレール35の一端側には、上記の物理量制御システム20の各手段における処理を行うマイクロコンピュータ41が収容されている。そして、マイクロコンピュータ41には、上記のリニアエンコーダのセンサ40から出力されるパルス信号の周波数をキャリッジの移動速度に変換する図示しないFV変換器からの出力値が入力されるようになっている。
【0144】
図30は、上記の物理量制御システム20や物理量制御方法が適用される本実施形態に係るインクジェット記録装置の構成を示すブロック図である。サーボモータ38は、駆動部42aやサーボ機構42b等を備えるモータ駆動制御部42や、サーボモータ38の出力軸38aの回転数を検出するロータリーエンコーダ43等を備えて構成されている。
【0145】
そして、サーボモータ38の出力軸38aは、モータ駆動制御部42の駆動部42aから出力される電流の電流値に従って回転するが、駆動部42aから出力された電流の電流値や、ロータリーエンコーダ43から出力される出力軸38aの実際の回転数等がモータ駆動制御部42のサーボ機構42bにフィードバックされ、出力軸38aの回転数が常時一定となるように制御されるようになっている。
【0146】
また、前述したように、サーボモータ38の出力軸38aの回転により主走査方向Xに移動するキャリッジ36の移動速度が、物理量制御システム20の物理量検出手段2に相当するリニアエンコーダのセンサ40やそれから出力されるパルス信号の周波数をキャリッジの移動速度に変換するFV変換器44により検出される。
【0147】
そして、物体に関する物理量A(t)に相当するキャリッジ36の移動速度が、マイクロコンピュータ41に送信され、前述した異常検出システム1、10の各手段(図2等参照)における各処理(図1のフローチャート参照)が行われ、異常検出手段5がキャリッジ36の移動速度に異常を検出すると、異常検出信号E(t)を出力する。
【0148】
異常検出手段5から出力された異常検出信号E(t)がサーボモータ38のモータ駆動制御部42に入力されると、モータ駆動制御部42は、異常時の制御として、駆動部42aからサーボモータ38への電流の供給を停止して、サーボモータ38の出力軸38aの回転を停止させる。このようにして、異常が発生すると、キャリッジ36の主走査方向Xの移動が停止される。
【0149】
以上のように、本実施形態に係るインクジェット記録装置30によれば、上記の物理量制御システム20や物理量制御方法や、上記の異常検出システム1、10や異常検出方法の効果が的確に発揮されて、キャリッジ36が障害物に衝突する等の異常が発生した場合に、キャリッジ36の主走査方向Xの移動を的確に停止させることが可能となる。
【0150】
また、前述したように、上記の物理量制御システム20や物理量制御方法や、上記の異常検出システム1、10や異常検出方法を用いれば、キャリッジ36が障害物に衝突したような場合のように物体に関する物理量A(t)が急激に変動する場合だけでなく、キャリッジ36等の下方で記録媒体Sが詰まりジャムが発生した場合のように物体に関する物理量A(t)が緩慢に変動するような場合にも物体に関する物理量A(t)の異常も的確に検出することが可能となる。
【0151】
そのため、それらを適用した本実施形態に係るインクジェット記録装置30によれば、ジャムの発生を的確に検出することが可能となり、ジャムが発生した場合に、異常時の制御としてサーボモータ38の回転を停止することにより、キャリッジ36の主走査方向Xの移動を確実に停止することが可能となる。
【0152】
また、そのため、ジャムが発生しているにもかかわらずキャリッジ36の主走査方向Xの移動が停止しないことによりキャリッジ36やそれに搭載された記録ヘッド等が損傷したり、インクの吐出が継続されて搬送ベルト311が汚染したりする事態の発生を未然に防止することが可能となる。
【0153】
[異常検出システムのインクジェット記録装置への適用]
なお、上記の異常検出システム1、10や異常検出方法によれば、物体に関する物理量A(t)の急激な変動や緩慢な変動を的確に検出することができる。そこで、キャリッジ36と記録媒体Sとの距離を物体に関する物理量A(t)としてこの異常検出システム1、10や異常検出方法をインクジェット記録装置に適用することで、記録媒体Sの端部や皺を検出することができる。以下、その適用例について説明する。
【0154】
本実施形態に係るインクジェット記録装置50では、図31に示すように、複数の記録ヘッド51が搭載されたキャリッジ36の主走査方向Xの上流側および下流側の両方或いは一方に、物理量検出手段2として、例えば発光素子52aと受光素子52bとを備える反射型フォトセンサ52が設けられている。
【0155】
そして、反射型フォトセンサ52は、発光素子52aから記録媒体Sや搬送ベルト311(或いはプラテン)に光を照射し、その反射光を受光素子52bで受光して、反射光の光量(或いは強度)に基づいてキャリッジ36と記録媒体Sとの距離、或いは正確に言えば、反射型フォトセンサ52と記録媒体Sまたは搬送ベルト311との距離を検出するようになっている。
【0156】
例えば、キャリッジ36が主走査方向Xの一方向Xaに移動する場合、まず、反射型フォトセンサ52の発光素子52aから照射された光は、搬送ベルト311で反射されて受光素子52bに受光される。その際、反射型フォトセンサ52と搬送ベルト311との距離は、反射型フォトセンサ52と記録媒体Sとの距離より記録媒体Sの厚さ分だけ遠いため、反射型フォトセンサ52の受光素子52bには比較的弱い反射光が受光される。
【0157】
そして、キャリッジ36が主走査方向Xの一方向Xaにさらに移動して、反射型フォトセンサ52が記録媒体Sの端部Eの上方に差し掛かると、反射型フォトセンサ52と記録媒体Sとの距離が反射型フォトセンサ52と搬送ベルト311との距離より短くなり、反射型フォトセンサ52の受光素子52bに受光される反射光の光量(強度)が比較的急激に増加する。
【0158】
そのため、反射型フォトセンサ52の図示しない増幅器から出力される距離の出力値(物体に関する物理量A(t))が、それまで出力されていた距離の出力値から短くなる方向に急激に変動する。
【0159】
そのため、物理量検出手段2である反射型フォトセンサ52からの出力値が、図2や図22、図24等に示された異常検出システム1、10で解析され、出力値が短い時間間隔dtで閾値関数や閾値を越えたと判断されて距離(物体に関する物理量A(t))の「異常」が検出され、異常検出システム1、10の異常検出手段5から異常検出信号E(t)が出力される。
【0160】
この異常検出信号E(t)が出力された時点で、記録媒体Sの端部Eが検出されたとみなすことができる。そして、その時点でのキャリッジ36の位置がリニアエンコーダにより読み取られて、記録媒体Sの端部Eの位置が特定される。
【0161】
また、キャリッジ36が主走査方向Xの一方向Xaにさらに移動し、反射型フォトセンサ52が記録媒体Sの皺R(記録媒体Sの浮き等を含む。)の上方に差し掛かると、反射型フォトセンサ52から出力される距離の出力値が、それまで反射型フォトセンサ52で検出されていた反射型フォトセンサ52と記録媒体Sとの距離よりもさらに短くなり、反射型フォトセンサ52の受光素子52bに受光される反射光の光量(強度)が緩やかに増加する。なお、皺Rが鋭角状に突き出しているような場合には、反射光の光量(強度)が急激に増加するように検出される場合もある。
【0162】
このような場合には、物理量検出手段2である反射型フォトセンサ52からの出力値が図2や図22、図24等に示された異常検出システム1、10で解析され、出力値が比較的長い時間間隔dtで閾値関数や閾値を越えたと判断されて距離(物体に関する物理量A(t))の「異常」が検出され、異常検出システム1、10の異常検出手段5から異常検出信号E(t)が出力される。
【0163】
この異常検出信号E(t)が出力された時点で、記録媒体Sの皺Rが検出されたとみなすことができる。そして、その時点でのキャリッジ36の位置がリニアエンコーダにより読み取られて、記録媒体Sの皺Rの位置が特定される。記録媒体Sに皺Rが検出された際に、キャリッジ36の主走査方向Xの移動を停止するか否かは別途決定される。
【0164】
以上のように、本実施形態に係るインクジェット記録装置50によれば、上記の異常検出システム1、10や異常検出方法の効果が的確に発揮されて、記録媒体Sの端部Eや皺R等を的確に検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】本発明に係る異常検出方法の処理手順を示すフローチャートである。
【図2】第1の実施形態に係る異常検出システムの構成を示すブロック図である。
【図3】物理量検出手段で検出される物体に関する物理量の例を示すグラフである。
【図4】フィルタ手段で平滑化された物体に関する物理量の例を示すグラフである。
【図5】現在の物体に関する物理量と現在から時間間隔dt以前の物体に関する物理量との関係を説明するグラフである。
【図6】図4の例において時間間隔dtを変化させた場合の時間変動分の時間的推移を示すグラフであり、(A)はdt=0.02秒、(B)はdt=0.05秒、(C)はdt=0.10秒の場合を表す。
【図7】図4の例において時間間隔dtを変化させた場合の時間変動分の時間的推移を示すグラフであり、(A)はdt=0.20秒、(B)はdt=0.38秒、(C)はdt=0.70秒の場合を表す。
【図8】時間変動分と時間間隔との関係の例および閾値関数の例を表すグラフである。
【図9】時間変動分の絶対値と時間間隔との関係の例および閾値関数の例を表すグラフである。
【図10】正の値をとる閾値関数と負の値をとる閾値関数を説明するグラフである。
【図11】図4の例において時間間隔dt=0.38秒の場合の時間変動分の時間的推移を示すグラフである。
【図12】時間変動分が閾値関数を越える時間間隔が存在する場合の例を示すグラフである。
【図13】図4の例において時間変動分の時間的推移と閾値関数との関係を示すグラフであり、(A)はdt=0.02秒、(B)はdt=0.05秒、(C)はdt=0.10秒の場合を表す。
【図14】図4の例において時間変動分の時間的推移と閾値関数との関係を示すグラフであり、(A)はdt=0.20秒、(B)はdt=0.38秒、(C)はdt=0.70秒の場合を表す。
【図15】物体に関する物理量の最大値、最小値およびそれらの時刻等を説明するグラフである。
【図16】フィルタ手段で平滑化された物体に関する物理量の別の例を示すグラフである。
【図17】図16の例において時間変動分の時間的推移と閾値関数との関係を示すグラフであり、(A)はdt=0.05秒、(B)はdt=0.20秒、(C)はdt=0.38秒の場合を表す。
【図18】図16の例においてdt=0.70秒の場合の時間変動分の時間的推移と閾値関数との関係を示すグラフである。
【図19】フィルタ手段で平滑化された物体に関する物理量のさらに別の例を示すグラフである。
【図20】図19の例において時間変動分の時間的推移と閾値関数との関係を示すグラフであり、(A)はdt=0.05秒、(B)はdt=0.20秒の場合を表す。
【図21】図19の例において時間変動分の時間的推移と閾値関数との関係を示すグラフであり、(A)はdt=0.38秒、(B)はdt=0.70秒の場合を表す。
【図22】第2の実施形態に係る異常検出システムの構成を示すブロック図である。
【図23】閾値関数の設定のしかたの一例を示すグラフである。
【図24】第1および第2の実施形態に係る異常検出システムの変形例の構成を示すブロック図である。
【図25】図24の異常検出システムの変形例に基づく閾値関数の設定のしかたの一例を示すグラフである。
【図26】本実施形態に係る物理量制御システムの構成を示すブロック図である。
【図27】本実施形態に係る物理量制御方法の処理手順を示すフローチャートである。
【図28】本実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成を表す図である。
【図29】図28のインクジェット記録装置のスキャンユニット内部の主要部を表す図である。
【図30】本実施形態に係るインクジェット記録装置の構成を示すブロック図である。
【図31】キャリッジに取り付けられた反射型フォトセンサを表す図である。
【図32】インクジェット記録装置で生じる記録媒体のジャムを説明する図である。
【符号の説明】
【0166】
1、10 異常検出システム
2 物理量検出手段
4 時間変動分算出手段
5 異常検出手段
6 フィルタ手段
7 基準値付加手段
20 物理量制御システム
21 駆動制御手段
30、50 インクジェット記録装置
36 キャリッジ
38 サーボモータ
42 モータ駆動制御部
42b サーボ機構
51 記録ヘッド
A(t) 物体に関する物理量
B(t) 平滑化された物体に関する物理量
C(t,dt)、C(t,dtn) 時間変動分
Cmax(dt) 定常時の時間変動分の最大値
Cmin(dt) 定常時の時間変動分の最小値
|C(t,dt)| 時間変動分の絶対値
|C(t,dt)|max 時間変動分の絶対値の最大値
D(dtn) 閾値
D(dt)、D(dt)、D(dt) 閾値関数
dt 時間間隔
dt 時間変動分が閾値(閾値関数)を越える時間間隔
E 記録媒体の端部
J ジャム
O 物体
R 記録媒体の皺
Rt 時間範囲
S 記録媒体
X 主走査方向
α、−α 基準値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体に関する物理量を検出する物理量検出ステップと、
前記物理量検出ステップで検出された前記物体に関する物理量に基づいて、現在の前記物体に関する物理量と現在から所定の時間間隔だけ以前の前記物体に関する物理量との差分である時間変動分を、現在より前の所定の時間範囲内の全時間間隔について、前記時間間隔の関数として算出する時間変動分算出ステップと、
前記時間変動分算出ステップで算出された前記時間間隔の関数としての前記時間変動分と予め設定された閾値とを比較して、比較した結果が予め設定された条件を満たす場合に、前記物体に関する物理量の異常を検出する異常検出ステップと、
を有することを特徴とする異常検出方法。
【請求項2】
前記閾値は、前記所定の時間範囲内の全時間間隔について、前記各時間間隔を変数とする閾値関数として予め設定されていることを特徴とする請求項1に記載の異常検出方法。
【請求項3】
前記異常検出ステップでは、現在より前の所定の時間範囲内の全時間間隔について、前記時間変動分と前記閾値関数とを比較して、前記時間変動分が前記閾値関数を越える前記時間間隔が存在するという条件を満たす場合に、前記物体に関する物理量の異常を検出することを特徴とする請求項2に記載の異常検出方法。
【請求項4】
物体に関する物理量を検出する物理量検出ステップと、
前記物理量検出ステップで検出された前記物体に関する物理量に基づいて、現在の前記物体に関する物理量と現在から所定の時間間隔だけ以前の前記物体に関する物理量との差分である時間変動分を、互いに異なる複数の前記時間間隔についてそれぞれ算出する時間変動分算出ステップと、
前記時間変動分算出ステップで算出された前記各時間間隔ごとの前記時間変動分と予め設定された閾値とを比較して、比較した結果が予め設定された条件を満たす場合に、前記物体に関する物理量の異常を検出する異常検出ステップと、
を有することを特徴とする異常検出方法。
【請求項5】
前記異常検出ステップでは、前記時間変動分算出ステップで算出された前記各時間間隔ごとの前記時間変動分と、前記各時間間隔についてそれぞれ予め設定された閾値とをそれぞれ比較して、前記時間変動分が前記閾値を越える前記時間間隔が存在するという条件を満たす場合に、前記物体に関する物理量の異常を検出することを特徴とする請求項4に記載の異常検出方法。
【請求項6】
さらに、定常時に前記時間変動分算出ステップで算出された前記各時間間隔ごとの前記時間変動分の最大値または最小値を更新する定常時最大変動分更新ステップと、
前記定常時最大変動分更新ステップで、前記各時間間隔ごとの前記時間変動分の最大値または最小値が更新された場合に、前記時間変動分の最大値または最小値に前記各時間間隔ごとに所定の基準値を付加して前記閾値を更新する閾値更新ステップと、
を有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の異常検出方法。
【請求項7】
前記時間変動分算出ステップでは、算出した前記各時間間隔ごとの前記時間変動分の絶対値をそれぞれ算出し、
前記異常検出ステップでは、前記時間変動分算出ステップで算出された前記各時間変動分の各絶対値の中から最大値を選択し、前記最大値と、予め設定された閾値とを比較することを特徴とする請求項5に異常検出方法。
【請求項8】
前記異常検出ステップでは、前記最大値と前記閾値とを比較して、前記最大値が前記閾値を越えるという条件を満たす場合に、前記物体に関する物理量の異常を検出することを特徴とする請求項7に記載の異常検出方法。
【請求項9】
さらに、定常時に前記時間変動分算出ステップで算出された前記各時間間隔ごとの前記時間変動分の絶対値の最大値を更新する定常時最大変動分更新ステップと、
前記定常時最大変動分更新ステップで、前記各時間間隔ごとの前記時間変動分の絶対値の最大値が更新された場合に、前記時間変動分の最大値に所定の基準値を付加して前記閾値を更新する閾値更新ステップと、
を有することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の異常検出方法。
【請求項10】
さらに、前記物理量検出ステップで検出された前記物体に関する物理量の値を平滑化するフィルタリングステップを有することを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の異常検出方法。
【請求項11】
さらに、前記物理量検出ステップで前記物体に関する物理量についてサンプリングタイミングごとに複数の値が検出される場合に、当該複数の値に基づいて当該サンプリングタイミングにおける前記物体に関する物理量を算出する物理量算出ステップを有することを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の異常検出方法。
【請求項12】
前記異常検出ステップにおける処理は、前記物理量検出ステップで検出される前記物体に関する物理量が予め設定された条件を満たす場合にのみ行われることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の異常検出方法。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか一項に記載の異常検出方法を用いた物理量制御方法であって、
前記異常検出方法における前記異常検出ステップで前記物体に関する物理量の異常を検出した場合に、前記物体を駆動し、前記物体に関する物理量を制御する駆動制御手段に対して予め設定された異常時の制御を行う異常時制御ステップを有することを特徴とする物理量制御方法。
【請求項14】
前記物体に関する物理量を検出する物理量検出手段と、
前記物理量検出手段で検出された前記物体に関する物理量に基づいて、現在の前記物体に関する物理量と現在から所定の時間間隔だけ以前の前記物体に関する物理量との差分である時間変動分を、現在より前の所定の時間範囲内の全時間間隔について、前記時間間隔の関数として算出する時間変動分算出手段と、
前記時間変動分算出手段で算出された前記時間間隔の関数としての前記時間変動分と予め設定された閾値とを比較して、比較した結果が予め設定された条件を満たすと判断した場合に、前記物体に関する物理量の異常を検出する異常検出手段と、
を備えることを特徴とする異常検出システム。
【請求項15】
前記閾値は、前記所定の時間範囲内の全時間間隔について、前記各時間間隔を変数とする閾値関数として予め設定されていることを特徴とする請求項14に記載の異常検出システム。
【請求項16】
前記異常検出手段は、現在より前の所定の時間範囲内の全時間間隔について、前記時間変動分と前記閾値関数とを比較して、前記時間変動分が前記閾値関数を越える前記時間間隔が存在するという条件を満たすと判断した場合に、前記物体に関する物理量の異常を検出することを特徴とする請求項15に記載の異常検出システム。
【請求項17】
前記物体に関する物理量を検出する物理量検出手段と、
前記物理量検出手段で検出された前記物体に関する物理量に基づいて、現在の前記物体に関する物理量と現在から所定の時間間隔だけ以前の前記物体に関する物理量との差分である時間変動分を、互いに異なる複数の前記時間間隔についてそれぞれ算出する時間変動分算出手段と、
前記時間変動分算出手段で算出された前記各時間間隔ごとの前記時間変動分と予め設定された閾値とを比較して、比較した結果が予め設定された条件を満たすと判断した場合に、前記物体に関する物理量の異常を検出する異常検出手段と、
を備えることを特徴とする異常検出システム。
【請求項18】
前記異常検出手段は、前記時間変動分算出手段で算出された前記各時間間隔ごとの前記時間変動分と、前記各時間間隔についてそれぞれ予め設定された閾値とをそれぞれ比較して、前記時間変動分が前記閾値を越える前記時間間隔が存在するという条件を満たすと判断した場合に、前記物体に関する物理量の異常を検出することを特徴とする請求項17に記載の異常検出システム。
【請求項19】
前記時間変動分算出手段は、定常時に算出した前記各時間間隔ごとの前記時間変動分の最大値または最小値を更新し、
前記時間変動分算出手段が前記各時間間隔ごとの前記時間変動分の最大値または最小値を更新した場合に、前記時間変動分の最大値または最小値に前記各時間間隔ごとに所定の基準値を付加して前記閾値を更新する基準値付加手段を備え、
前記異常検出手段は、前記閾値が更新された場合には、更新された前記閾値に基づいて処理を行うことを特徴とする請求項14から請求項18のいずれか一項に記載の異常検出システム。
【請求項20】
前記時間変動分算出手段は、算出した前記各時間間隔ごとの前記時間変動分の絶対値をそれぞれ算出し、
前記異常検出手段は、前記時間変動分算出手段で算出された前記各時間変動分の各絶対値の中から最大値を選択し、前記最大値と、予め設定された閾値とを比較することを特徴とする請求項17に異常検出システム。
【請求項21】
前記異常検出手段は、前記最大値と前記閾値とを比較して、前記最大値が前記閾値を越えるという条件を満たすと判断した場合に、前記物体に関する物理量の異常を検出することを特徴とする請求項20に記載の異常検出システム。
【請求項22】
前記時間変動分算出手段は、定常時に算出した前記各時間間隔ごとの前記時間変動分の最大値または最小値を更新し、
前記時間変動分算出手段が前記各時間間隔ごとの前記時間変動分の最大値または最小値を更新した場合に、前記時間変動分の最大値または最小値に前記各時間間隔ごとに所定の基準値を付加して前記閾値を更新する基準値付加手段を備え、
前記異常検出手段は、前記閾値が更新された場合には、更新された前記閾値に基づいて処理を行うことを特徴とする請求項20または請求項21に記載の異常検出システム。
【請求項23】
さらに、前記物理量検出手段で検出された前記物体に関する物理量の値を平滑化するフィルタ手段を備えることを特徴とする請求項14から請求項22のいずれか一項に記載の異常検出システム。
【請求項24】
さらに、前記物理量検出手段で前記物体に関する物理量についてサンプリングタイミングごとに複数の値が検出される場合に、当該複数の値に基づいて当該サンプリングタイミングにおける前記物体に関する物理量を算出する物理量算出手段を備えることを特徴とする請求項14から請求項23のいずれか一項に記載の異常検出システム。
【請求項25】
前記異常検出手段は、前記物理量検出手段で検出される前記物体に関する物理量が予め設定された条件を満たす場合にのみ、前記比較および前記判断を行うことを特徴とする請求項14から請求項24のいずれか一項に記載の異常検出システム。
【請求項26】
請求項14から請求項25のいずれか一項に記載の異常検出システムを用いた物理量制御システムであって、
さらに、前記物体を駆動し、前記物体に関する物理量を制御する駆動制御手段を備え、
前記駆動制御手段は、前記異常検出手段が前記物体に関する物理量の異常を検出した場合に、予め設定された異常時の制御を行うことを特徴とする物理量制御システム。
【請求項27】
前記物体に関する物理量は、モータのトルクまたはモータに供給する電流の電流値であり、
前記時間変動分算出手段は、前記モータのトルクまたは前記モータに供給する電流の電流値に関する前記時間変動分を算出し、
前記駆動制御手段は、前記モータのモータ駆動制御部であり、前記異常検出手段が前記モータのトルクまたは前記モータに供給する電流の電流値の異常を検出した場合に、前記モータの回転を停止するように前記異常時の制御を行うことを特徴とする請求項26に記載の物理量制御システム。
【請求項28】
前記物体に関する物理量は、モータの回転数であり、
前記時間変動分算出手段は、前記モータの回転数に関する前記時間変動分を算出し、
前記駆動制御手段は、前記モータのモータ駆動制御部であり、前記異常検出手段が前記モータの回転数の異常を検出した場合に、前記モータの回転を停止するように前記異常時の制御を行うことを特徴とする請求項26に記載の物理量制御システム。
【請求項29】
前記物体に関する物理量は、モータの回転駆動により移動する物体の移動速度であり、
前記時間変動分算出手段は、前記物体の移動速度に関する前記時間変動分を算出し、
前記駆動制御手段は、前記モータのモータ駆動制御部であり、前記異常検出手段が前記物体の移動速度の異常を検出した場合に、前記モータの回転を停止するように前記異常時の制御を行うことを特徴とする請求項26に記載の物理量制御システム。
【請求項30】
前記モータは、サーボモータであり、
前記モータ駆動制御部は、前記サーボモータのサーボ機構を含むモータ駆動制御部であることを特徴とする請求項27から請求項29のいずれか一項に記載の物理量制御システム。
【請求項31】
請求項30に記載の物理量制御システムを用いたインクジェット記録装置であって、
さらに、
記録媒体に対してインクを吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドが搭載され、前記記録媒体の上方を主走査方向に移動するキャリッジと、
を備え、
前記駆動制御手段である前記サーボモータのサーボ機構を含むモータ駆動制御部は、前記異常検出手段が前記物体に関する物理量の異常を検出した場合に、前記異常時の制御として前記サーボモータの回転を停止することにより、前記キャリッジの主走査方向の移動を停止することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項32】
前記駆動制御手段である前記サーボモータのサーボ機構を含むモータ駆動制御部は、前記異常検出手段が前記記録媒体のジャムによる異常を検出した場合に、前記異常時の制御として前記サーボモータの回転を停止することにより、前記キャリッジの主走査方向の移動を停止することを特徴とする請求項31に記載のインクジェット記録装置。
【請求項33】
請求項14から請求項25のいずれか一項に記載の異常検出システムを用いたインクジェット記録装置であって、
さらに、
記録媒体に対してインクを吐出する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドが搭載され、前記記録媒体の上方を主走査方向に移動するキャリッジと、
を備え、
前記異常検出システムを前記記録媒体の端部・皺検出システムとして用い、
前記異常検出システムにおける前記物体に関する物理量は、前記キャリッジと前記記録媒体との距離であり、
前記異常検出システムの物理量検出手段は、前記キャリッジと前記記録媒体との距離を検出し、
前記異常検出システムの前記異常検出手段で、前記物体に関する物理量の異常として前記記録媒体の端部および皺を検出することを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2010−131798(P2010−131798A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308191(P2008−308191)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ケーブルベア
【出願人】(305002394)コニカミノルタIJ株式会社 (317)
【Fターム(参考)】