説明

異形断面ポリアミドマルチフィラメント

【課題】織編物などの布帛にした際に、やわらかさ、しなやかさに加え、吸水・即乾性、マイルドな光沢性を与え、更には単糸繊度が細く、単糸内の凹度ばらつきが少なく、シワの発生や織編目の粗密感が少なく、且つ染色時の染めスジが発生しにくい異形断面ポリアミドマルチフィラメント、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、上記の目的を達成するため、以下の構成を採用する。すなわち、
(1)単糸繊度が0.1〜2.0dtex
(2)単糸内にある各凹部の凹度(ローバル度LB)がそれぞれ5〜50%
(3)単糸内にある各凹部の凹度バラツキ(変動係数CV%)が10%以下

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、やわらかさ・しなやかさを持ち且つ吸水・速乾性・マイルドな光沢性に優れた高品位の布帛を得るのに好適な異形断面ポリアミドマルチフィラメントに関する。更には、単糸繊度が細く且つ異形断面マルチフィラメントの断面のひずみや単糸間での断面バラツキが少なく、織編物などの布帛にした際に織編目の粗密感が少なく染色後のスジ発生が少ない高品位な布帛を得るのに好適な異形断面ポリアミドマルチフィラメントに関する。
【背景技術】
【0002】
合成繊維の一つであるポリアミドマルチフィラメントは高強度、耐摩耗性、ソフト性、染色鮮明性などの優れた特徴を持っているため、パンティストッキング、タイツなどのレッグウェア、ランジェリー、ファンデーションなどのインナーウェア、スポーツウェア、カジュアルウェアなどの衣料用途に好まれて用いられてきている。
【0003】
しかるに、近年の消費者ニーズは、更なるソフト感やヌメリ感、マイルドな光沢といった風合い、および吸水・速乾性などの高い機能性を求めてきており、それに対応して単糸細繊度化、多フィラメント化、および横断面に複数の凹部を設ける等したいわゆるマルチローバルによる異形化が求められてきている。
【0004】
従来のポリアミドマルチフィラメントの溶融紡糸方法では、一般に異形断面糸を安定して品質良く製糸することは困難である。特に単糸繊度を細くし多フィラメント化すると、フィラメント長手方向の繊度ムラや各単糸が均一に冷却されないことにより、溶融紡糸糸条が冷却固化されるまでに例えば断面形状が単糸内でひずんだり、単糸間でばらついたりして、それが異形断面糸の異形度バラツキとして現れる等の問題があり、工業生産的に非常に困難であった。
【0005】
従来の異形断面ポリアミドマルチフィラメントの溶融紡糸方法として、例えば、溶融紡糸糸条群の外周側から該溶融紡糸糸条群の中心側に向けて冷却風を吹き出す円筒型冷却装置を用い急冷する製造装置を用いた製造方法が知られている(特許文献1、特許文献2)。しかしながら、紡糸時の冷却風が環状に配列された溶融紡糸糸条群の中心部に向かうため、溶融紡糸糸条群の外側雰囲気温度が低くなる一方、内側の雰囲気温度が高くなり、環状に配列された溶融紡糸糸条群の外側と内側とで冷却速度差が生まれる。この結果、溶融紡糸糸条単糸間で凹度(ローバル度LB)や繊度がばらついたり、また溶融紡糸糸条単糸内についても単糸内にある各凹部の凹度(ローバル度LB)がばらつき、安定した異形断面形状を得ることが出来ず、織編物などの布帛にした際に織編目の粗密感が発生したり、さらには光沢感が不均一となり染色後のスジなどが発生するといった課題があった。
【0006】
一方で複合紡糸により2種類以上のポリマーをいわゆる海島型に複合紡糸し、特定のポリマーを溶出したりすることによって単糸細繊度化、多フィラメント化および繊維横断面の高異形糸などが知られている(特許文献3)。しかしながら複合繊維は、製法が複雑であるために製糸工程での生産安定性が劣るだけでなく、製造コストがかかる。さらに繊維の太さ、フィラメント数などを変更するのも容易ではなく汎用性に欠ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−247118号公報
【特許文献2】特開2009−133025号公報
【特許文献3】特開2007−169829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記した従来技術の問題を解決し、織編物などの布帛にした際、やわらかさ、しなやかさ、マイルドな光沢感を持ち、且つ卓越した吸水・速乾性を有する高品位の布帛を与え得る異形断面ポリアミドマルチフィラメント、及びその製造方を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を達成するため、本発明は以下の構成を採用する。
【0010】
(1)2つ以上の凹部を有する異形単糸を少なくとも一部に含むポリアミドマルチフィラメントであって、且つ2つ以上の凹部を有する異形単糸が下記の範囲にあることを特徴とするポリアミドマルチフィラメント。
A.単糸繊度の平均値が0.10〜2.00dtex
B.単糸内にある各凹部の凹度(ローバル度LB)がそれぞれ5〜50%
C.単糸内にある各凹部の凹度バラツキ(変動係数CV%)が10%以下
【0011】
(2)ポリアミドマルチフィラメントを構成するポリマーがポリカプロアミド、ポリヘキサメチレンアジパミドから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする前記(1)に記載のポリアミドマルチフィラメント。
【0012】
(3)2つ以上の凹部を有する異形単糸について、3〜8つの凹部と同数の凸部がそれぞれ等角度間隔の放射状に突起していることを特徴とする前記(1)または(2)に記載のポリアミドマルチフィラメント。
【0013】
(4)凹部を有しない単糸を少なくとも一部に含むことを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリアミドマルチフィラメント。
【0014】
(5)凹部を有しない単糸が真円形断面であることを特徴とする前記(4)に記載のポリアミドマルチフィラメント。
【0015】
(6)2つ以上の凹部を有する異形単糸について、その単糸繊度のバラツキ(変動係数CV%)が5%以下であることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリアミドマルチフィラメント。
【0016】
(7)2つ以上の凹部を有する異形単糸について、単糸内にある各凹部の凹度平均値を算出し、その平均値の単糸間バラツキ(変動係数CV%)が10%以下であることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載のポリアミドマルチフィラメント。
【0017】
(8)前記(1)〜(7)のいずれかに記載のポリアミドマルチフィラメントを少なくとも一部に有する布帛。
【0018】
(9)前記(1)〜(7)のいずれかに記載のポリアミドマルチフィラメントを少なくとも一部に有する繊維製品。
【0019】
(10)単糸繊度の平均値が0.10〜2.00dtexの範囲にある2つ以上の凹部を有する異形単糸を少なくとも一部に含むポリアミドマルチフィラメントの溶融紡糸方法であって、紡糸口金外周部に円周状に配された吐出孔を有する紡糸口金の中心部から真下に、円周状に配された吐出孔から吐出された溶融紡糸糸条の内側に溶融紡糸糸条を強制冷却する冷却装置を有しており、且つ冷却装置が下記を満足することを特徴とするポリアミドマルチフィラメントの溶融紡糸方法。
A.紡糸口金面から冷却装置の冷却開始位置までの距離(L) 20mm≦L≦70mm
B.冷却装置の冷却風吹き出し部の長さ(D) 100mm≦D≦600mm
【0020】
(11)溶融紡糸糸条を強制冷却する冷却装置の真下に環状型給油ガイドを有しており、紡糸口金から吐出された溶融紡糸糸条を環状型ガイドに接触させて給油させることを特徴とする前記(10)に記載のポリアミドマルチフィラメントの溶融紡糸方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明の異形断面ポリアミドマルチフィラメントは、単糸繊度が細く、異形断面形状のひずみやバラツキが小さいため、織編物などの布帛にした際、織編物の粗密感や染色後のスジが出ず、やわらかさ、しなやかさ、マイルドな光沢感を持ち、高吸水・速乾性を有する高品位の布帛とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明における異形断面繊維の一例である。
【図2】本発明における異形断面繊維の一例である。
【図3】本発明で好ましく用い得る溶融紡糸装置の一例における紡出後給油までの概略図である。
【図4】本発明で好ましく用い得る環状給油装置の一例における概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0024】
本発明の異形断面ポリアミドマルチフィラメントは、主としてポリアミドからなることが重要である。ここでいう「主として」としては、繰り返し単位のうちアミド単位が80モル%以上であるポリアミドであることをいい、好ましくは繰り返し単位のうち、アミド単位が90モル%以上あるものが好ましい。本発明に用いられるポリアミドは、いわゆる炭化水素が主鎖にアミド結合を介して連結された高分子量体からなる樹脂であり、具体的には、ポリカプロアミド、ポリウンデカンアミド、ポリドデカンアミド、ポリテトラメチレンアジパミド、ポリペンタメチレンアジパミド、ポリペンタメチレンセバカミド、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンセバカミド、ポリヘキサメチレンドデカンアミド、ポリヘキサメチレントリデカンアミド等やこれらの共重合体が挙げられるが、経済的な面、製糸が比較的容易な点や染色性、機械特性に優れている点等から、かかるポリアミドとしては、主としてポリカプラミド、ポリヘキサメチレンアジパミドからなるポリアミドであることが好ましい。ここでいう「主として」とは、ポリカプロアミドを構成するε−カプロラクタム単位として、ポリヘキサメチレンアジパミドを構成するヘキサメチレンジアンモニウムアジペート単位として80モル%以上であることをいい、さらに好ましくは90モル%以上である。
【0025】
本発明の異形断面ポリアミドマルチフィラメントの98%硫酸相対粘度は、2.2〜3.7の範囲であることが好ましく、さらには2.4〜3.3の範囲であることが好ましく、より好ましくは2.4〜2.7の範囲である。
【0026】
本発明の異形断面ポリアミドマルチフィラメントには、本発明の効果を損なわない範囲において種々の添加剤を含んでいても良い。この添加剤を例示すると、マンガン化合物等の安定剤、酸化チタン等の着色剤、難燃剤、導電性付与剤、繊維状強化剤等が挙げられる。
【0027】
本発明の異形断面ポリアミドマルチフィラメントの単糸繊度は、2つ以上の凹部を有する異形単糸について、その平均値が0.10〜2.00dtexの範囲であることが重要で、好ましくは0.30〜1.50dtexの範囲であり、さらに好ましくは0.40〜1.20dtexの範囲である。2つ以上の凹部を有する異形単糸の単糸繊度の平均値が0.10dtex未満であると製糸工程での糸切れが多発し、本発明の異形断面ポリアミドマルチフィラメントの安定生産が困難になる。また逆に、2.00dtexよりも大きい場合には織編物などの布帛にした際のソフト性や吸水性に欠けるものとなる。
【0028】
また、本発明の異形断面ポリアミドマルチフィラメントの単糸繊度は、2つ以上の凹部を有する異形単糸について、その単糸繊度バラツキ(変動係数CV%)が5%以下であることが好ましい。さらに好ましくは3%以下である。単糸繊度バラツキが5%を超えると、布帛にした際のスジや濃淡ムラが発生する可能性があり、満足できる風合いを得られにくい場合がある。
【0029】
単糸繊度バラツキ(変動係数CV%)とは、2つ以上の凹部を有する異形単糸10本をランダムに選定し、その10本についてそれぞれ単糸繊度を測定し、その標準偏差σに対する平均値dの比の百分率により求められるものをいう。また、同一フィラメント内において2つ以上の凹部を有する異形単糸が9本以下の場合は、全ての異形単糸の単糸繊度を測定するものとする。またここでの標準偏差σは各単糸繊度の不偏分散により算出されるものとする。すなわち、
単糸繊度の変動係数CV%=100×σ/dで算出される。
【0030】
また、本発明の異形断面ポリアミドマルチフィラメントの総繊度は、100dtex以下であることが好ましい。さらに好ましくは70dtex以下である。また、総繊度の下限としては、布帛の強力低下を考慮した際、15dtex以上であることが好ましい。総繊度が上記範囲にある場合、製糸性、高次通過性の点で好ましい。
【0031】
本発明の異形断面ポリアミドマルチフィラメントの異形断面形状は、2つ以上の凹部を有するいわゆるマルチローバルであることが重要である。凹部がない場合や凹部が1つの場合は、マルチフィラメントの単糸間に十分な空隙を得ることができないため、布帛にした際の吸水性等の機能面で劣ることとなる。より好ましい異形断面形状としては3〜8つの凹部と同数の凸部を有し、凸部がそれぞれ等角度間隔の放射線状に突起した異形断面形状であり、織編物などの布帛にした際に吸水性に併せてマイルドな光沢感が得られる。さらに好ましくは3〜6つの凹部と同数の凸部を有し、凸部それぞれ等角度間隔の放射状に突起した異形断面であることが望ましい。
【0032】
また、本発明の異形断面ポリアミドマルチフィラメントの異形断面形状は、2つ以上の凹部を有する異形単糸10本(単糸数が10以下の場合は全ての異形単糸)を選定し、各単糸内にあるすべての凹部の凹度(ローバル度LB)がそれぞれ5〜50%の範囲であることが重要である。好ましくは10〜40%の範囲であり、さらに好ましくは20〜30%の範囲である。ローバル度LBが50%を越えると、製糸工程での糸切れや織編物の布帛にした際にスジや濃淡ムラが発生し、また逆に5%未満の場合には布帛にした際の吸水、速乾性などの機能性が劣る。
【0033】
また、本発明の異形断面ポリアミドマルチフィラメントの異形断面形状は、2つ以上の凹部を有する異形単糸について、その単糸内にある各凹部の凹度(ローバル度LB)バラツキが変動係数CV%で10%以下となることが重要である。好ましくは7%以下であり、さらに好ましくは5%以下である。ローバル度LBバラツキが変動係数CV%で10%を越えると、織編物の布帛にした際に粗密感が発生するばかりか、単糸内にある各凹部のローバル度LBがばらつくことで反射強度や光沢感が不均一となり、染色後のスジや濃淡ムラが発生し満足できる風合いとはならない。
単糸内のローバル度バラツキ(変動係数CV%)は以下の方法で算出する。
(1)2つ以上の凹部を有する異形単糸10本をランダムに選定する(単糸数が10以下の場合は全ての異形単糸を測定する)。
(2)各単糸について、その単糸内にある全ての凹部のローバル度LBを測定し、単糸毎に標準偏差(不偏分散により算出)σと平均値xを算出する。
(3)各単糸について、標準偏差(不偏分散により算出)σに対する平均値xの比の百分率(変動係数CV%)を算出する。変動係数CV%=100×σ/x
【0034】
また、本発明の異形断面ポリアミドマルチフィラメントの異形断面形状は、2つ以上の凹部を有する異形単糸について、その単糸内にある各凹部のローバル度LBの平均値を算出し、その平均値の単糸間バラツキが変動係数CV%で10%以下となることが好ましい。さらに好ましくは7%以下、より好ましくは5%以下である。単糸間のローバル度LBバラツキが変動係数CV%で10%を越えると、織編物の布帛にした際に粗密感が発生する可能性がある。また、染色後のスジや濃淡ムラも発生することがあり、満足できる風合いを得られにくい場合がある。
【0035】
単糸間のローバル度バラツキ(変動係数CV%)は以下の方法で算出する。
(1)2つ以上の凹部を有する異形単糸10本をランダムに選定する(単糸数が10以下の場合は全ての異形単糸を測定する)。
(2)各単糸について、その単糸内にある全ての凹部のローバル度LBを測定し、単糸毎に平均値xを算出する。
(3)単糸毎に算出した平均値xについて、その標準偏差(不偏分散により算出)Σと総平均値Xを算出する。
(4)標準偏差(不偏分散により算出)Σに対する総平均値Xの比の百分率(変動係数CV%)を算出する。変動係数CV%=100×Σ/X
【0036】
ローバル度LBについて説明すると、図1に示す通り、ローバル度LBとは異形断面及び混繊ポリアミドマルチフィラメントの異形断面単糸横断面において、隣り合う2つの凸部における接点SとSとの接線の長さaに対する、それら2つの凸部の間に形成される凹部の低点から該接線におろした垂線の長さbの比の百分率(%)をいう。すなわち、LB(%)=100×b/aで算出される。
【0037】
本発明の異形断面ポリアミドマルチフィラメントは、凹部を有しない単糸との混繊とすることで染色後のスジの発生を極限まで抑えることができたり、単糸間の空隙率が小さくなることで毛細管現象が働き、布帛とした際により高い吸水性を付与することができたりする。ここでいう「凹部を有しない単糸」とは、真円、楕円、レンズ、正方・直方形等の文字通り凹部を有しない形状の単糸をいうが、より好ましい形状としては真円型である。ここで、真円型とは厳密に真円である必要はなく、例えば通常の丸孔の吐出孔から紡出して得られるような繊維断面に代表されるような形状等のいわゆる丸断面であればよい。
【0038】
この混繊異形断面ポリアミドマルチフィラメントの「2つ以上の凹部を有する異形単糸/凹部を有しない単糸」で示される単糸数の比は、0.70〜1.30の範囲であることが吸水性付与の観点から好ましく、さらに好ましくは0.85〜1.15の範囲であり、より好ましくは1.00つまりは同数である。また「2つ以上の凹部を有する異形単糸/凹部を有しない単糸」で示される単糸繊度の比は、染色スジの抑制や吸水性付与の観点から0.70〜1.30の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.80〜1.20の範囲であり、より好ましくは0.90〜1.10の範囲である。
【0039】
さらに、混繊異形断面ポリアミドマルチフィラメントにおける凹部を有しない単糸の繊度バラツキ(変動係数CV%)は10%以下であることが染色スジ抑制の観点から好ましく、さらに好ましくは7%以下、より好ましくは5%以下である。
【0040】
本発明の異形断面ポリアミドマルチフィラメントは、上記のとおり単糸繊度が0.1〜2.0dtexの極細マルチフィラメントであって、且つ異形単糸の断面形状についてひずみやバラツキが小さいものであるが、このような異形断面ポリアミドマルチフィラメントを得るには、以下の製造方法で製造することが重要である。
【0041】
すなわち、異形断面用の紡糸口金から溶融したポリアミドを紡出し、冷却するにあたり、口金真下に設けられた円柱冷却筒から外周方向に冷却風を吹き出して強制冷却する紡糸方法をとることにより、口金から吐出された各単糸を口金から一定の距離にて一斉に冷却することができ、且つ糸条冷却により熱量をもった冷却風が糸条の外周側に拡散するため糸条の走行領域にて熱量の集中が起こらず、このため各単糸内において冷却筒内周方向と外周方向でのローバル度LBのひずみや、単糸間での形状バラツキが抑制されるのである。
【0042】
なお、溶融紡糸温度は、本発明のポリアミドマルチフィラメントが得られる限り制限はなく、通常用いられる温度、例えばポリカプロアミドの場合は240〜260℃、ポリヘキサメチレンアジパミドの場合は275〜295℃が好ましく用いられるが、同じ口金を用いた場合、溶融紡糸時の粘度が高い(例えば溶融紡糸温度が低めの場合や、ポリアミドの粘度が高い場合等)とローバル度が上昇し、粘度が低い(例えば溶融紡糸温度が高めの場合や、ポリアミドの粘度が低い場合等)と、減少する傾向にある。
【0043】
図3は、上記好ましく用い得る溶融紡糸装置の一例における紡出後給油までの部分の概略を示す概念図である。図3に示したように、紡糸パック1内に設けられ、紡糸孔が環状かつ外周部にのみ配置された紡糸口金2と紡糸口金2から吐出されたフィラメント3は、紡糸口金2の真下で、環状に配置された紡糸孔から紡糸される樹脂よりも内側に位置した冷却装置4から、同冷却装置4の横断面中心部から外向きに向けて、放射状に冷却風5を送出し強制冷却した後、給油装置6により給油し、引き取る方法である。
【0044】
上記において、冷却装置4の位置は冷却開始位置が、口金下面から冷却開始位置までの距離Lとして、20〜70mmの範囲で配置することが重要となる。好ましくは20〜50mmとなるよう配置する。ここでいう冷却開始位置とは、紡糸口金面から冷却装置における冷却風吹き出し口上端部までの長さをいう。冷却開始位置が20mm未満になると、紡糸時に不活性ガスによる口金面のシール効果が小さくなり、口金面汚れが増加することや、冷却風によって口金面の温度が下がり、各単糸の強伸度劣化が発生し糸切れが多発する。逆に冷却開始位置が70mmを越えると、溶融紡糸糸条の口金孔吐出初期の断面形状からのひずみが大きくなり、目標とするローバル度が得られないのみならず、長手方向の繊度ムラが発生したり、溶融紡糸糸条の走行安定性も低下し糸切れも多発する。
【0045】
また冷却装置4は、複数個の冷却孔を有する垂直方向に伸びた冷却装置であり、好ましい形状としては円柱状である。冷却装置の冷却風吹き出し部の長さDは100〜600mmの範囲であることが重要である。さらに好ましくは200〜400mmの範囲である。冷却風吹き出し部の長さが100mm未満になると、溶融紡糸糸条の冷却が不十分となり、強伸度の低下や糸切れが多発したり、フィラメントの長手方向での繊維構造バラツキが発生することで織編物にした際に長手で染めムラが発生する。逆に冷却風吹き出し部の長さが600mmを越えると紡糸糸掛け等の作業性が低下する。
【0046】
また給油装置6は図4に示すような環状型ガイドを用い、溶融紡糸糸条の各単糸がガイドに接地すると共に、環状型ガイド上で油剤を供給することが好ましい。図4は、本発明で好ましく用い得る環状給油装置の一例における概略図であり、油剤供給用スリット8から油剤が供給され、環状型ガイド9(材質としてはセラミックが好ましい)上で給油を行うことができる。これにより単糸間に均一に油剤を付与することができ、紡糸における糸切れや毛羽を抑制することができる。給油装置6の水平方向断面の中心位置は紡糸口金及び冷却筒の水平方向断面の中心を結ぶ線の延長上にあることが好ましく、上下方向の位置、すなわち口金下面から給油位置までの距離Hは糸条収束位置7から200〜1000mm上部にあることが好ましく、さらに好ましくは200〜800mm、より好ましくは200〜600mm上部である。糸条収束位置7からの距離が200mm未満になると、溶融紡糸糸条の屈曲角度が大きくなりすぎるため糸切れの原因となり、また逆に、糸条収束位置7からの距離が1000mmを越えると、溶融紡糸糸条の随伴気流が大きくなり、紡糸張力が大きくなりやはり糸切れの原因となる。
【0047】
また糸条収束位置7は、紡糸口金面から500〜1700mm下方にあることが好ましく、さらに好ましくは600〜1000mm下方に配置する。紡糸口金面から糸条収束位置までの距離が500mm未満になると紡糸糸掛け等の作業性が悪化し、また逆に、紡糸口金面から糸条収束位置までの距離が1700mmを超えると、溶融紡糸糸条の随伴気流が大きくなり、紡糸張力が大きくなるため糸切れする可能性がある。
【0048】
なお、ポリアミドを溶融する際、溶融温度を融点プラス50℃以内とすることで溶融紡糸糸条の強伸度劣化を抑制することが出来るため好ましい。
【0049】
また、溶融紡糸時の糸切れ抑制のためには、紡糸口金と冷却装置との間に、蒸気噴出ゾーン等を設け、スチームなどの不活性ガスで紡糸口金面をシールすることが効果的である。噴出させる蒸気の温度は、250〜300℃であることが好ましい。また、蒸気の噴出圧力は0.10〜0.40kPaであることが好ましく、噴出方向は、簡単に装置が設置できる点で、口金外周方向から中心方向に向けて噴出させるのが好ましい。
【0050】
また、引取速度を3500〜5500m/分とすることで紡糸時の糸切れや巻取り後の遅延収縮を抑制することが出来、工業生産に適している。
【0051】
これらの製造条件を採用することによって、本発明の異形断面ポリアミドマルチフィラメントを安定して得ることができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中の測定、評価項目は以下に述べる方法で測定した。
【0053】
(1)酸化チタン含有量
サンプル5gを磁性ルツボに入れ、電気炉を用いて1000℃で灰化し、灼熱残分を酸化チタンとして重量%で表した。
【0054】
(2)単糸繊度
SEARCH SEIGYO E.M.CO.LTD社製の繊度変動率測定装置を用い、オートバイブロスコープ法により同一フィラメント内における異形断面を有する単糸10本について、6cmの測定試料に自励的な発振を行わせ、試料の振動から検出された微小な電気的信号を増幅して、これを機械的エネルギーに変換し、再び測定試料に振動を与え異形断面単糸の繊度を求めたものを平均したものを単糸繊度の平均値とする。ただし、同一フィラメント内に異形断面を有する単糸が10本未満である場合は同一フィラメント内の全ての異形断面を有する単糸についての平均とする。
【0055】
(3)98%硫酸相対粘度
(a)試料を秤量し、98重量%濃硫酸に試料濃度が1g/100mlとなるように溶解する。
(b)(a)項の溶液をオストワルド粘度計にて25℃での落下秒数(T1)を測定する。
(c)試料を溶解していない98重量%濃硫酸の25℃での落下秒数(T2)を(b)項と同様に測定する。
(d)試料の98%硫酸相対粘度(ηr)を下式により算出する。測定温度は25℃とする。
(ηr)=(T1/T2)。
【0056】
(4)凹部のローバル度LBとローバル度LBのバラツキ(変動係数CV%)
パラフィン、ステアリン酸、エチルセルロースからなる包理剤を溶解し、原糸を導入後室温放置により固化させ、包理剤中の原糸を横断面方向に切断したものを東京電子(株)製のCCDカメラ(CS5270)にて繊維横断面を撮影し、ランダムにフィラメントを選択し、そのフィラメント中でランダムに選定した10本の(単糸数が10以下の場合は全ての)2つ以上の凹部を有する異形単糸についてMicro−MEASURE社製のモニタリング装置(EMM−3100)にて画像処理を行い、三菱電機製のカラービデオプロセッサー(SCT−CP710)にて3000倍でプリントアウトした断面写真を用いた。ローバル度LBの測定や、その平均値、標準偏差、変動係数CV%の算出は前記に記載の通り行った。
【0057】
(5)風合い評価(ソフト感)
20℃×60%RHの室内環境下で、検査者(10人)の評価によって、布帛のドレープ性、ソフト感を次の基準で相対評価した。
◎:ドレープ性・ソフト感が非常にある、
○:ドレープ性には劣るがソフト感がある、
△:ドレープ性・ソフト感が劣る、
×:ドレープ性・ソフト感がない。
【0058】
(6)吸水性(バイレック法)
JIS L1096(1999)「バイレック法」により測定した。この測定で得られる吸水高さについて、次の基準で評価した。
◎:90mm以上
○:65mm以上90mm未満
△:55mm以上65mm未満
×:55mm未満
【0059】
(7)スジ評価
ポリアミドマルチフィラメント原糸をタテ・ヨコ両方に用い、かつヨコ打ち込み長180cmの平織物を作成し、布帛を酸性染料(Mitsui Nylon Black GL)を用いて染色した。ポリエチレンテレフタレート原糸をタテ・ヨコ方向に用いたヨコ打ち込み長の平織物に関しては、分散染料(Dianix Navy S-2G200%)を用いて染色した。染色後の平織物を透視検反機によって検査者(10人)の評価により、長手方向で100m検反し、次の基準で相対評価した。
◎:スジ、濃淡ムラが全くない、
○:弱いスジ、濃淡ムラが多少見られるが実用可能レベル、
△:弱いスジ、濃淡ムラが多く見られ実用可能レベルではない、
×:強いスジ、濃淡ムラが多く見られ実用可能レベルではない。
【0060】
(8)製糸性
1t当たりの製糸糸切れについて、次の基準をもって示した。
◎:糸切れ1.0回未満、
○:糸切れ1.0以上4.0回未満、
△:糸切れ4.0以上7.0回未満、
×:糸切れ7.0回以上または製糸不能。
【0061】
(9)糸かけ性
紡糸作業における糸かけ作業性について、作業者(50人)が1人ずつ糸かけ作業を行った際にかかる時間について、次の基準をもって評価した。
◎:作業者の90%(45人)以上が5分以内に糸かけを完了できる、
○:作業者の70%(35人)以上90%(45人)未満が5分以内に糸かけを完了できる、
△:作業者の50%(25人)以上70%(35人)未満が5分以内に糸かけを完了できる、
×:作業者の50%(25%)超が5分以内に糸かけを完了できない。
【0062】
総合評価として、次の基準をもって評価した。
◎:風合い評価、吸水性、スジ評価、製糸性、糸かけ性の全項目において○もしくは◎であり、且つ◎の項目が4項目以上あるもの、
○:風合い評価、吸水性、スジ評価、製糸性、糸かけ性の全項目において○もしくは◎であり、且つ◎の数が3項目以下であるもの、
△:風合い評価、吸水性、スジ評価、製糸性、糸かけ性に全項目のうち△もしくは×の項目が1つ以上あり、且つ×の数が1つ以下であるもの、
×:風合い評価、吸水性、スジ評価、製糸性、糸かけ性に全項目のうち△もしくは×の項目が1つ以上あり、且つ×の数が2つ以下であるもの。
【0063】
実施例1
酸化チタンを1.9重量%含む98%硫酸相対粘度2.6のポリカプロアミドを環状に配列した紡糸口金より紡糸温度253℃で溶融ポリマーを吐出させ、該ポリマーを、紡糸口金面に向けて0.25kPaの圧力で285℃の蒸気が噴出されている蒸気噴出ゾーンと、該蒸気噴出ゾーン下流側に設けられ、且つ冷却開始位置30mmで鉛直方向の長さが300mmの単体の円筒型冷却装置で外吹きに放射状に吹く20℃の冷却風にて冷却する冷却ゾーンを通過させて冷却固化を行わせ、該冷却装置下流側にて紡糸口金下面から600mmの位置に環状型給油ガイドを設置し給油を行い、紡速4500m/minにて紡糸し、延伸倍率1.2倍にて延伸させ44dtex/44フィラメントの図1に示すような実質120°の等角度間隔の放射線状に突起している3葉断面ポリカプロアミドマルチフィラメントを得た。得られた原糸をタテ・ヨコ両方に用い、かつヨコ打ち込み長180cmの平織物を作成した。
【0064】
該ポリカプロアミドマルチフィラメントの単糸繊度、横断面形状、ローバル度LB(平均値、最大値、最小値)、各単糸における単糸内のローバル度LBバラツキのうち最大値、単糸繊度バラツキ、単糸間のローバル度LBバラツキ、製糸性及び布帛評価を行った。結果を表1に示す。
【0065】
実施例2
フィラメントの断面形状を同数の6葉/丸断面からなる混繊糸とする以外は実施例1と同様の方法にて紡糸を行い、6葉/丸断面混繊ポリカプロアミドマルチフィラメントを得、得られた原糸を用いて実施例1と同様の方法で平織物を作製した。
【0066】
該ポリカプロアミドマルチフィラメントの異形単糸について、単糸繊度、横断面形状、ローバル度LB(平均値、最大値、最小値)、各単糸における単糸内のローバル度LBバラツキのうち最大値、単糸繊度バラツキ、単糸間のローバル度LBバラツキ、製糸性及び布帛評価を行った。結果を表1に示す。
【0067】
実施例3
44dtex/440フィラメントの繊維とする以外は実施例1と同様の方法にて紡糸を行い、図1に示すような実質120°の等角度間隔の放射線状に突起している3葉断面ポリカプロアミドマルチフィラメントを得、得られた原糸を用い実施例1と同様の方法で平織物を作成した。
【0068】
該ポリカプロアミドマルチフィラメントの単糸繊度、横断面形状、ローバル度LB(平均値、最大値、最小値)、各単糸における単糸内のローバル度LBバラツキのうち最大値、単糸繊度バラツキ、単糸間のローバル度LBバラツキ、製糸性及び布帛評価を行った。結果を表1に示す。
【0069】
実施例4
44dtex/22フィラメントの繊維とする以外は実施例1と同様の方法にて紡糸を行い、図1に示すような実質120°の等角度間隔の放射線状に突起している3葉断面ポリカプロアミド繊維を得、得られた原糸を用い実施例1と同様の方法で平織物を作成した。
【0070】
該ポリカプロアミドマルチフィラメントの単糸繊度、横断面形状、ローバル度LB(平均値、最大値、最小値)、各単糸における単糸内のローバル度LBバラツキのうち最大値、単糸繊度バラツキ、単糸間のローバル度LBバラツキ、製糸性及び布帛評価を行った。結果を表1に示す。
【0071】
実施例5
実施例1と同様の方法にて紡糸を行った際に、紡糸温度を270℃とする以外は実施例1と同様の方法にて紡糸を行い、図1に示すような実質120°の等角度間隔の放射線状に突起している3葉断面ポリカプロアミド繊維を得、得られた原糸を用い実施例1と同様の方法で平織物を作成した。
【0072】
該ポリカプロアミドマルチフィラメントの単糸繊度、横断面形状、ローバル度LB(平均値、最大値、最小値)、各単糸における単糸内のローバル度LBバラツキのうち最大値、単糸繊度バラツキ、単糸間のローバル度LBバラツキ、製糸性及び布帛評価を行った。結果を表1に示す。
【0073】
実施例6
実施例1と同様の方法にて紡糸を行った際に、紡糸温度を235℃とする以外は実施例1と同様の方法にて紡糸を行い、図1に示すような実質120°の等角度間隔の放射線状に突起している3葉断面ポリカプロアミド繊維を得、得られた原糸を用い実施例1と同様の方法で平織物を作成した。
【0074】
該ポリカプロアミドマルチフィラメントの単糸繊度、横断面形状、ローバル度LB(平均値、最大値、最小値)、各単糸における単糸内のローバル度LBバラツキのうち最大値、単糸繊度バラツキ、単糸間のローバル度LBバラツキ、製糸性及び布帛評価を行った。結果を表1に示す。
【0075】
実施例7
単糸横断面形状が実質72°の等角度間隔の放射線状に突起している5葉断面とする以外は実施例1と同様の方法にて紡糸を行い、5葉断面ポリカプロアミドマルチフィラメントを得、得られた原糸を用い実施例1と同様の方法で平織物を作成した。
【0076】
該ポリカプロアミドマルチフィラメントの単糸繊度、横断面形状、ローバル度LB(平均値、最大値、最小値)、各単糸における単糸内のローバル度LBバラツキのうち最大値、単糸繊度バラツキ、単糸間のローバル度LBバラツキ、製糸性及び布帛評価を行った。結果を表1に示す。
【0077】
実施例8
単糸横断面形状が実質45°の等角度間隔の放射線状に突起している8葉断面とする以外は実施例1と同様の方法にて紡糸を行い、8葉断面ポリカプロアミドマルチフィラメントを得、得られた原糸を用い実施例1と同様の方法で平織物を作成した。
【0078】
該ポリカプロアミドマルチフィラメントの単糸繊度、横断面形状、ローバル度LB(平均値、最大値、最小値)、各単糸における単糸内のローバル度LBバラツキのうち最大値、単糸繊度バラツキ、単糸間のローバル度LBバラツキ、製糸性及び布帛評価を行った。結果を表1に示す。
【0079】
実施例9
円筒型冷却装置において、冷却開始位置を20mmとする以外は実施例1と同様の方法にて紡糸を行い、実質120°の等角度間隔の放射線状に突起している3葉断面ポリカプロアミドマルチフィラメントを得、得られた原糸を用い実施例1と同様の方法で平織物を作成した。
【0080】
該ポリカプロアミドマルチフィラメントの単糸繊度、横断面形状、ローバル度LB(平均値、最大値、最小値)、各単糸における単糸内のローバル度LBバラツキのうち最大値、単糸繊度バラツキ、単糸間のローバル度LBバラツキ、製糸性及び布帛評価を行った。結果を表1に示す。
【0081】
実施例10
円筒型冷却装置において、冷却開始位置を70mmとする以外は実施例1と同様の方法にて紡糸を行い、実質120°の等角度間隔の放射線状に突起している3葉断面ポリカプロアミドマルチフィラメントを得、得られた原糸を用い実施例1と同様の方法で平織物を作成した。
【0082】
該ポリカプロアミドマルチフィラメントの単糸繊度、横断面形状、ローバル度LB(平均値、最大値、最小値)、各単糸における単糸内のローバル度LBバラツキのうち最大値、単糸繊度バラツキ、単糸間のローバル度LBバラツキ、製糸性及び布帛評価を行った。結果を表1に示す。
【0083】
実施例11
円筒型冷却装置の冷却筒の鉛直方向の長さを100mmとする以外は実施例1と同様の方法にて紡糸を行い、実質120°の等角度間隔の放射線状に突起している3葉断面ポリカプロアミドマルチフィラメントを得、得られた原糸を用い実施例1と同様の方法で平織物を作成した。
【0084】
該ポリカプロアミドマルチフィラメントの単糸繊度、横断面形状、ローバル度LB(平均値、最大値、最小値)、各単糸における単糸内のローバル度LBバラツキのうち最大値、単糸繊度バラツキ、単糸間のローバル度LBバラツキ、製糸性及び布帛評価を行った。結果を表1に示す。
【0085】
実施例12
円筒型冷却装置の冷却筒の鉛直方向の長さを600mmとする以外は実施例1と同様の方法にて紡糸を行い、実質120°の等角度間隔の放射線状に突起している3葉断面ポリカプロアミドマルチフィラメントを得、得られた原糸を用い実施例1と同様の方法で平織物を作成した。
【0086】
該ポリカプロアミドマルチフィラメントの単糸繊度、横断面形状、ローバル度LB(平均値、最大値、最小値)、各単糸における単糸内のローバル度LBバラツキのうち最大値、単糸繊度バラツキ、単糸間のローバル度バラツキ、製糸性及び布帛評価を行った。結果を表1に示す。
【0087】
実施例13
環状型給油ガイドにて油剤を付与することなく糸条を環状型ガイドに接地させ、糸条収束位置にて糸条収束型の給油ガイドより給油を行う以外は実施例1と同様の方法にて紡糸を行い、実質120°の等角度間隔の放射線状に突起している3葉断面ポリカプロアミドマルチフィラメントを得、得られた原糸を用い実施例1と同様の方法で平織物を作成した。
【0088】
該ポリカプロアミドマルチフィラメントの単糸繊度、横断面形状、ローバル度LB(平均値、最大値、最小値)、各単糸における単糸内のローバル度LBバラツキのうち最大値、単糸繊度バラツキ、単糸間のローバル度バラツキ、製糸性及び布帛評価を行った。結果を表1に示す。
【0089】
実施例14
ポリアミドマルチフィラメントを構成するポリマーを酸化チタンを0.3重量%含む98%硫酸相対粘度2.6のポリヘキサメチレンアジパミドとする以外は実施例1と同様の方法にて紡糸を行い、実質120°の等角度間隔の放射線状に突起している3葉断面ポリヘキサメチレンアジパミドマルチフィラメントを得、得られた原糸を用い実施例1と同様の方法で平織物を作成した。
【0090】
該ポリヘキサメチレンアジパミドマルチフィラメントの単糸繊度、横断面形状、ローバル度LB(平均値、最大値、最小値)、各単糸における単糸内のローバル度LBバラツキのうち最大値、単糸繊度バラツキ、単糸間のローバル度LBバラツキ、製糸性及び布帛評価を行った。結果を表1に示す。
【0091】
比較例1
44dtex/880フィラメントで単糸繊度0.05dtexとする以外は実施例1と同様の方法にて紡糸を行った。
【0092】
該ポリカプロアミドマルチフィラメントの単糸繊度、横断面形状、ローバル度LB(平均値、最大値、最小値)、各単糸における単糸内のローバル度LBバラツキのうち最大値、単糸繊度バラツキ、単糸間のローバル度LBバラツキ、製糸性及び布帛評価を行った。結果を表2に示す。
【0093】
比較例2
45dtex/15フィラメントの単糸繊度3.03dtexの繊維とする以外は実施例1と同様の方法にて紡糸を行い、実質120°の等角度間隔の放射線状に突起している3葉断面ポリカプロアミドマルチフィラメントを得、得られた原糸を用い実施例1と同様の方法で平織物を作成した。
【0094】
該ポリカプロアミドマルチフィラメントの単糸繊度、横断面形状、ローバル度LB(平均値、最大値、最小値)、各単糸における単糸内のローバル度LBバラツキのうち最大値、単糸繊度バラツキ、単糸間のローバル度LBバラツキ、製糸性及び布帛評価を行った。結果を表2に示す。
【0095】
比較例3
円筒型冷却装置において、吐出ポリマーが冷却装置の内側を通り、該ポリマーに向けて冷却風が放射線状内向きに吹くことで糸条を冷却する以外は実施例1と同様の方法にて紡糸を行い、3葉断面ポリカプロアミドマルチフィラメントを得、得られた原糸を用い実施例1と同様の方法で平織物を作製した。
【0096】
該ポリカプロアミドマルチフィラメントの単糸繊度、横断面形状、ローバル度LB(平均値、最大値、最小値)、各単糸における単糸内のローバル度LBバラツキのうち最大値、単糸繊度バラツキ、単糸間のローバル度LBバラツキ、製糸性及び布帛評価を行った。結果を図2に示す。
【0097】
比較例4
円筒型冷却装置において、冷却開始位置を15mmとする以外は実施例1と同様の方法にて紡糸を行い、3葉断面ポリカプロアミドマルチフィラメントを得、得られた原糸を用い実施例1と同様の方法で平織物を作成した。
【0098】
該ポリカプロアミドマルチフィラメントの単糸繊度、横断面形状、ローバル度LB(平均値、最大値、最小値)、各単糸における単糸内のローバル度LBバラツキのうち最大値、単糸繊度バラツキ、単糸間のローバル度LBバラツキ、製糸性及び布帛評価を行った。結果を表2に示す。
【0099】
比較例5
円筒型冷却装置において、冷却開始位置を80mmとする以外は実施例1と同様の方法にて紡糸を行い、3葉断面ポリカプロアミドマルチフィラメントを得、得られた原糸を用い実施例1と同様の方法で平織物を作成した。
【0100】
該ポリカプロアミドマルチフィラメントの単糸繊度、横断面形状、ローバル度LB(平均値、最大値、最小値)、各単糸における単糸内のローバル度LBバラツキのうち最大値、単糸繊度バラツキ、単糸間のローバル度LBバラツキ、製糸性及び布帛評価を行った。結果を表2に示す。
【0101】
比較例6
円筒型冷却装置の冷却筒の鉛直方向の長さを80mmとする以外は実施例1と同様の方法にて紡糸を行い、3葉断面ポリカプロアミドマルチフィラメントを得、得られた原糸を用い実施例1と同様の方法で平織物を作成した。
【0102】
該ポリカプロアミドマルチフィラメントの単糸繊度、横断面形状、ローバル度LB(平均値、最大値、最小値)、各単糸における単糸内のローバル度LBバラツキのうち最大値、単糸繊度バラツキ、単糸間のローバル度LBバラツキ、製糸性及び布帛評価を行った。結果を表2に示す。
【0103】
比較例7
マルチフィラメントを構成するポリマーをポリエチレンテレフタレートとし、口金より紡糸温度290℃で溶融ポリマーを吐出させる以外は実施例1と同様の方法にて紡糸を行い、実質120°の等角度間隔の放射線状に突起している3葉断面ポリエチレンテレフタレートマルチフィラメントを得、得られた原糸を用い実施例1と同様の方法で平織物を作成した。
【0104】
該ポリエチレンテレフタレートマルチフィラメントの単糸繊度、横断面形状、ローバル度LB(平均値、最大値、最小値)、各単糸における単糸内のローバル度LBバラツキうち最大値、単糸繊度バラツキ、単糸間のローバル度LBバラツキ、製糸性及び布帛評価を行った。結果を表2に示す。
【0105】
【表1】

【0106】
【表2】

【符号の説明】
【0107】
1:紡糸パック
2:紡糸口金
3:フィラメント
4:冷却装置
5:冷却風
6:給油装置
7:糸条収束位置
8:油剤供給用スリット
9:環状型ガイド
L:口金下面から冷却開始位置までの距離
D:冷却風吹き出し部の長さ
H:口金下面から糸条収束位置までの距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上の凹部を有する異形単糸を少なくとも一部に含むポリアミドマルチフィラメントであって、且つ2つ以上の凹部を有する異形単糸が下記の範囲にあることを特徴とするポリアミドマルチフィラメント。
(1)単糸繊度の平均値が0.10〜2.00dtex
(2)単糸内にある各凹部の凹度(ローバル度LB)がそれぞれ5〜50%
(3)単糸内にある各凹部の凹度バラツキ(変動係数CV%)が10%以下
【請求項2】
ポリアミドマルチフィラメントを構成するポリマーがポリカプロアミド、ポリヘキサメチレンアジパミドから選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のポリアミドマルチフィラメント。
【請求項3】
2つ以上の凹部を有する異形単糸について、3〜8つの凹部と同数の凸部がそれぞれ等角度間隔の放射状に突起していることを特徴とする請求項1または2に記載のポリアミドマルチフィラメント。
【請求項4】
凹部を有しない単糸を少なくとも一部に含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミドマルチフィラメント。
【請求項5】
凹部を有しない単糸が真円形断面であることを特徴とする請求項4に記載のポリアミドマルチフィラメント。
【請求項6】
2つ以上の凹部を有する異形単糸について、その単糸繊度のバラツキ(変動係数CV%)が5%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリアミドマルチフィラメント。
【請求項7】
2つ以上の凹部を有する異形単糸について、単糸内にある各凹部の凹度平均値を算出し、その平均値の単糸間バラツキ(変動係数CV%)が10%以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリアミドマルチフィラメント。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のポリアミドマルチフィラメントを少なくとも一部に有する布帛。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載のポリアミドマルチフィラメントを少なくとも一部に有する繊維製品。
【請求項10】
単糸繊度の平均値が0.10〜2.00dtexの範囲にある2つ以上の凹部を有する異形単糸を少なくとも一部に含むポリアミドマルチフィラメントの溶融紡糸方法であって、紡糸口金外周部に円周状に配された吐出孔を有する紡糸口金の中心部から真下に、円周状に配された吐出孔から吐出された溶融紡糸糸条の内側に溶融紡糸糸条を強制冷却する冷却装置を有しており、且つ冷却装置が下記を満足することを特徴とするポリアミドマルチフィラメントの溶融紡糸方法。
(1)紡糸口金面から冷却装置の冷却開始位置までの距離(L) 20mm≦L≦70mm
(2)冷却装置の冷却風吹き出し部の長さ(D) 100mm≦D≦600mm
【請求項11】
溶融紡糸糸条を強制冷却する冷却装置の真下に環状型給油ガイドを有しており、紡糸口金から吐出された溶融紡糸糸条を環状型ガイドに接触させて給油させることを特徴とする請求項10に記載のポリアミドマルチフィラメントの溶融紡糸方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−74539(P2011−74539A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228411(P2009−228411)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】