説明

異方導電性膜および導電性コネクタ

【課題】 十分な耐久性を確保することができ、薄膜化ひいては高周波特性の向上を図ることが可能な異方導電性膜、およびそれを用いた導電性コネクタを提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明にかかる異方導電性膜の代表的な構成は、弾性高分子材料110中に導電性粒子120が分散され、厚み方向に異方導電性を示すシート状の異方導電性膜100において、導電性粒子の粒度累積分布の累積10%の粒径であるd10(小粒径導電性粒子124の粒径)は、累積90%の粒径であるd90(大粒径導電性粒子122の粒径)の半分以下であって、導電性粒子のd90は弾性高分子材料の平均厚さの70%〜90%であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性高分子材料中に導電性粒子が分散され、厚み方向に異方導電性を示すシート状の異方導電性膜、およびそれを用いた導電性コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路(Integrated Circuit;以下、ICと称する)の製造工程では、シリコンウエハ(以下、単にウエハと称する)上に回路を形成した後に、回路が正常に動作するかを確認するウエハテストが行われる。ウエハテストは半導体試験装置を用いて行われる。詳細には、半導体試験装置では、テスタヘッドに設けられたプローブをウエハに接触させ、テスタヘッドが接続されているテスタとウエハとにおいて電気信号の送受信を行うことにより電気的特性を検査している。
【0003】
通常ウエハ上には数百個分のICの回路が形成され、ウエハテストではこれらを分離する前の状態で一括あるいは分割してテストを行う。ICがRAMやROMなどのメモリであれば電極の数は1つのICにつき数十〜数百であるが、CPU、GPU、MPUなどの場合には1つにつき電極の数が数百〜数千にもなるため、ウエハ単位で試験するときは、数万もの電極に一度にプローブを接続する必要がある。
【0004】
上記のプローブとしては、カンチレバーに代表される水平型プローブや、MEMS(Micro Electro-Mechanical System)プローブやスプリングプローブ等の垂直型プローブが従来用いられていた。これらのプローブは金属製であるが、近年では異方導電性膜(いわゆる導電ゴム)が用いられるようになってきている。異方導電成膜とは、金属粒子(主にNiの導電性粒子)をエラストマー(弾性高分子材料)に分散させて磁場中で硬化させることにより、厚み方向に導電性を持たせ、面方向の導電性は持たせていない異方性材料である。
【0005】
異方導電性膜によれば、金属製プローブに比較して検査電極の変形による損傷が少なく、また電極間隔の微細化に有利である。またプローブの薄型化が図れるため、電気抵抗を低下させて高周波特性を向上させることができる。さらに、プローブと電極が金属同士である場合には微視的にも1点のみで接触するのに対し、異方導電成膜からなるプローブでは試験装置の電極とウエハの回路の電極との間に異方導電性膜に分散された金属が複数の導電路を形成するため(多点接触)、接触安定性の向上を図ることが可能であり、且つ抵抗値が低いことから高周波特性も良好である。
【0006】
しかしながら、異方導電成膜のような薄膜であると、テスタヘッド側に固定的に設けられている突起電極(バンプ)に当接した際に、かかる電極からの圧力によって異方導電性膜の変形が生じる。すると、試験を繰り返すうちに異方導電性膜が疲労によって破れてしまうことがあった。そこで、特許文献1では、被検査回路装置の電気的検査に用いられる異方導電性コネクタ(プローブ)として、2つの異方導電性エラストマーシート(異方導電性膜)の間に、複合導電性シートを配置した構成が開示されている。この複合導電性シートは、複数の貫通孔を有する絶縁性シートと、かかる貫通孔各々に柱状の剛性導体(以下、可動電極と称する)を移動可能に配置して構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−101931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の構成によれば、可動電極による圧力はその上下に配置された異方導電性膜に分散されるため、各々の異方導電性膜の変形が抑制され、その耐久性を向上させることができる。しかしながら、ICは今後さらに小型化し、かつ接点数が増加する傾向にある。このため、異方導電性膜にもさらなる低抵抗化による高周波特性の向上および高分解能化が求められていて、それを達成するための1つの手段として異方導電性膜の更なる薄膜化が要求される。ところが、異方導電性膜を更に薄膜化すると当然にして一層破断が生じやすくなる。そこで、異方導電性膜において薄膜化に際して低下する耐久性を確保する必要があった。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑み、十分な耐久性を確保することができ、薄膜化電気特性の改善ひいては高周波特性の向上を図ることが可能な異方導電性膜、およびそれを用いた導電性コネクタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明にかかる異方導電性膜の代表的な構成は、弾性高分子材料中に導電性粒子が分散され、厚み方向に異方導電性を示すシート状の異方導電性膜において、導電性粒子の粒度累積分布の累積10%の粒径であるd10は、累積90%の粒径であるd90の半分以下であって、導電性粒子のd90は弾性高分子材料の平均厚さの70%〜90%であることを特徴とする。
【0011】
粒度累積分布においてd90が膜厚に対して概ね80%であるということは、換言すれば当該異方導電性膜を構成する弾性高分子材料に、その膜厚の80%程度の粒径を有する導電性粒子(以下、大粒径導電性粒子と称する)が含まれていることである。これにより、検査装置(厳密にはテスタヘッド)の電極基盤を検査対象の回路に圧接する際、異方導電性膜が20%程度圧縮された状態で、大粒径導電性粒子が電極基盤および回路に接触し、スペーサとして機能する。したがって、異方導電性膜に過剰な圧力がかからなくなるため、その過度な変形を抑制することができる。故に、異方導電性膜の耐久性を極めて好適に向上させ、ひいては高周波特性の向上を図ることが可能となる。
【0012】
また上記構成では、粒度累積分布のd10(以下、小粒径導電性粒子と称する)は、d90(累積90%の粒径)の半分以下である。すなわち小粒径導電性粒子は弾性高分子材料の膜厚の40%程度の粒径であるため、磁場をかけることによって硬化させると、弾性高分子材料の厚み方向に鎖状に配列する。これにより、検査装置の電極基盤を検査対象の回路に圧接すると、異方導電性膜が20%程度に圧縮される際に電極間が小粒径導電性粒子によって複数の経路(パス)で電気的に接続される。したがって、異方導電性膜の接続安定性が十分に確保され、高電気特性(低電気抵抗)ひいては高い高周波特性が得られる。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明にかかる導電性コネクタの代表的な構成は、検査装置において検査対象である回路の端子に接触させて通電するための導電性コネクタにおいて、回路から検査装置の電極基板に向かって、第1異方導電性膜と、複合導電性シートと、第2異方導電性膜とを備え、第1異方導電性膜および第2異方導電性膜は上述した異方導電性膜であって、複合導電性シートは、複数の貫通孔が形成された絶縁性シートと、貫通孔に組み合わされ厚み方向に移動自在な複数の可動電極とを有することを特徴とする。
【0014】
上述したように本発明にかかる異方導電性膜は、大粒径導電性粒子がスペーサとして機能するため20%程度の圧縮が可能である。換言すれば、上述した異方導電性膜からなる第1異方導電性膜および第2異方導電性膜は各々20%程度のストロークを持つ。したがって、検査装置の電極基板のランド(電極)および回路の端子(電極)の寸法公差を十分に吸収することができる。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明にかかる導電性コネクタの他の構成は、請求項2に記載の導電性コネクタにおいて、第2異方導電性膜に代えて第3異方導電性膜を備え、第3異方導電性膜は、弾性高分子材料中に混入した導電性粒子の最大粒径が弾性高分子材料の平均厚さの半分以下であって、導電性粒子を可動電極と対応する位置に集合させて偏在させ、厚み方向に導電路を形成したものであることを特徴とする。かかる構成によれば、導電性粒子が可動電極と対応する位置に集合して偏在しているため、それらの導電経路を増強させることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、十分な耐久性を確保することができ、薄膜化ひいては高周波特性の向上を図ることが可能な異方導電性膜、およびそれを用いた導電性コネクタを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態にかかる導電性コネクタを説明する図である。
【図2】本実施形態にかかる異方導電性膜を説明する図である。
【図3】異方導電性膜における導電性粒子の粒度分布を例示する図である。
【図4】第2実施形態にかかる導電性コネクタを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
(第1実施形態)
以下、理解を容易にするために、まず第1実施形態の導電性コネクタについて説明した後に、それに用いられる異方導電性膜について説明する。図1は、第1実施形態にかかる導電性コネクタを説明する図であり、図1(a)は第1実施形態の導電性コネクタの概略図であり、図1(b)は図1(a)の可動電極近傍の拡大図である。図1(a)に示す第1実施形態の導電性コネクタ200は、ICの製造工程でのウエハテストにおいて、検査対象であるシリコンウエハ(以下、ウエハ300と称する)上に形成された回路302の動作を確認する検査装置すなわち半導体試験装置(不図示)のテストヘッド400に設けられるプローブに用いられる。ウエハテストでは、ウエハ300の回路302の端子304と、テストヘッド400の電極基板402の電極404とを、導電性コネクタ200を介して接触させて通電させることにより電気信号の送受信を行い、ウエハ300の電気的特性を検査する。
【0020】
導電性コネクタ200は、ウエハ300の回路302から半導体試験装置(不図示)の電極基板402に向かって、第1異方導電性膜100a、複合導電性シート202、および第2異方導電性膜100bを順に備える。複合導電性シート202は、絶縁性シート210と、複数の可動電極220とを有する。
【0021】
絶縁性シート210には、液晶ポリマー、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアラミド樹脂、ポリアミド樹脂等の樹脂材料や、ガラス繊維補強型エポキシ樹脂、ガラス繊維補強型ポリエステル樹脂、ガラス繊維補強型ポリイミド樹脂等の繊維補強型樹脂材料、アルミナやポロンナイトライド等の無機材料からなるフィラーをエポキシ樹脂等の樹脂材料に含有させた複合樹脂材料などを好適に用いることができる。
【0022】
上記の絶縁性シート210には、ウエハ300の回路302の端子304およびテストヘッド400の電極基板402の電極404のパターンに対応する位置に、厚み方向に延びる複数の貫通孔212が形成されている。そして、貫通孔212には、絶縁性シート210の厚み方向に移動自在な複数の可動電極220が組み合わされている。
【0023】
可動電極220には、剛性を有する金属材料を好適に用いることができ、例えばニッケル、コバルト、金、アルミニウムなどの単体金属やそれらの合金などを例示することができる。
【0024】
図1(b)に示すように、可動電極220は、貫通孔212内に配置される円柱状の胴部222と、胴部222の両端各々にそれと一体に形成されて貫通孔212外、換言すれば絶縁性シート210の表面に配置される頭部224aおよび224bとから構成される。可動電極220の胴部222の長さLは、絶縁性シート210の厚みtよりも大きい。また可動電極220において、胴部222の径R2は貫通孔212の径R1よりも小さく、頭部224aおよび224bの径R3は貫通孔212の径R1よりも大きい。かかる構成により、可動電極220を絶縁性シート210の厚み方向に移動自在としつつ、可動電極220の頭部224aおよび224bを確実に貫通孔212外に配置できる。
【0025】
より詳細には、可動電極220の胴部222の長さLと絶縁性シート210の厚みtとの差(L−t)、すなわち絶縁性シート210の厚み方向における可動電極220の移動可能距離は、3〜150μmであることが好ましく、より好ましくは5〜100μm、更に好ましくは10〜50μmであるとよい。可動電極220の移動可能距離が過小であると、当該導電性コネクタ200において十分な凹凸吸収能を得ることが困難となることがある。一方、可動電極220の移動可能距離が過大であると、絶縁性シート210の貫通孔212から露出する可動電極220の胴部222の長さが大きくなり、検査に使用したときに、可動電極220の胴部222が座屈または損傷するおそれがある。また、可動電極220の頭部224aおよび224bの厚みは、5〜50μmであることが好ましく、より好ましくは8〜40μmであるとよい。
【0026】
なお、高温環境下では絶縁性シート210の熱膨張によって、貫通孔212に配置された可動電極220の位置ずれが生じることが想定される。故に、当該導電性コネクタ200を高温環境下において使用することが想定される場合には、絶縁性シート210の熱膨張係数が3×10−5/K以下であることが好ましく、より好ましくは1×10−6〜2×10−5/K、更に好ましくは1×10−5/K〜6×10−6/Kであるとよい。
【0027】
また絶縁性シート210の厚みtは、10〜200μmであることが好ましく、より好ましくは15〜100μmであるとよく、絶縁性シート210が有する貫通孔212の径R1は、20〜300μmであるとよく、より好ましくは30〜150μmであるとよい。可動電極220の十分な強度を得るために、胴部222の径R2は、18μm以上であることが好ましく、より好ましくは25μm以上であるとよい。
【0028】
更に、絶縁性シート210の厚み方向に対する可動電極220の移動を円滑にするために、絶縁性シート210の貫通孔212の径と可動電極220の胴部222の径との差(R1−R2)は、1μm以上であることが好ましく、より好ましくは2μm以上であるとよい。また絶縁性シート210の貫通孔212からの可動電極220の脱落を防ぐために、可動電極220の頭部224aおよび224bの径と絶縁性シート210の貫通孔212の径との差(R3−R1)は、5μm以上であることが好ましく、より好ましくは10μm以上であるとよい。
【0029】
次に、上述した複合導電性シート202の上下に配置される第1異方導電性膜100aおよび第2異方導電性膜100bについて説明する。なお、本実施形態において第1異方導電性膜100aおよび第2異方導電性膜100bは同一の組成であるため、以下、それらを異方導電性膜100と総称して説明する。
【0030】
図2は、本実施形態にかかる異方導電性膜を説明する図であり、図2(a)は本実施形態の異方導電性膜の構成を例示する断面図であり、図2(b)は図2(a)の異方導電膜を圧縮した状態を例示する図である。本実施形態にかかる異方導電性膜100は、シート状であり、厚み方向に異方導電性を有する。図2(a)に示すように、かかる異方導電性膜100は、弾性高分子材料110中に導電性粒子120を分散させた構成である。弾性高分子材料110は、絶縁性と、耐久性の観点から架橋構造とを有する高分子材料を用いることが好ましく、具体的にはシリコーンゴムを好適に用いることができる。
【0031】
上述したように本実施形態の異方導電性膜100を構成する弾性高分子材料110には導電性粒子120が分散されている。これにより、絶縁性の弾性高分子材料110に導電性が付与される。導電性粒子120としては、鉄、コバルト、ニッケル等、磁性を有する金属粒子や、それらの合金粒子(それらの金属を含有する粒子)を好適に用いることができる。また、それらの金属粒子や合金粒子を芯粒子(コア)として、かかる芯粒子の表面に、金、銀、パラジウム、ロジウム等、高導電性を有する金属のめっきを施したものを用いてもよい。更に、ガラスビーズ等の無機物質粒子やポリマー粒子、非磁性金属粒子を芯粒子として、その表面にコバルト、ニッケル等の導電性磁性金属をめっきしたものを用いることも可能である。なお、めっき方法としては、化学めっき、電界めっき法、スパッタリング法、蒸着法等を例示することができるが、他の方法を用いてもよい。
【0032】
図3は、異方導電性膜100における導電性粒子の粒度分布を例示する図であり、図3(a)は導電性粒子の粒度累積分布を例示する図であり、図3(b)は導電性粒子の粒度頻度分布を例示する図である。本実施形態では、導電性粒子120は大粒径導電性粒子122および小粒径導電性粒子124を含み、特に弾性高分子材料110に大粒径導電性粒子122を分散させている点において特徴を有する。
【0033】
詳細には、弾性高分子材料110に分散されている導電性粒子120を累積すると、導電性粒子120の粒度累積分布は図3(a)に示すような曲線を描く。図3(a)の粒度累積分布において、導電性粒子120を10%まで累積したときの粒径すなわちd10の粒子が小粒径導電性粒子124であり、導電性粒子120を90%まで累積したときの粒径すなわちd90の粒子が大粒径導電性粒子122である。また弾性高分子材料110に分散されている導電性粒子120の粒度頻度分布は図3(b)に示すような曲線を描く。
【0034】
上記の大粒径導電性粒子122の粒径d90は、弾性高分子材料110の平均厚さtの70%〜90%、すなわち平均膜厚に対して概ね80%である。テストヘッド400の電極基板402をウエハ300の回路302に向かって圧接すると(図1(a)参照)、図2(a)に示す異方導電性膜100が図2(b)に示すように圧縮される。これにより、第1異方導電性膜100aでは、大粒径導電性粒子122が、ウエハ300の回路302の端子304と可動電極220とに接触し、第2異方導電性膜100bでは、大粒径導電性粒子122が、テストヘッド400の電極基板402の電極404と可動電極220とに接触する(図1(a)参照)。
【0035】
このとき、弾性高分子材料110の膜厚の80%程度の粒径を有する大粒径導電性粒子122が電極基板402および回路302の間でスペーサとして機能するため、異方導電性膜100の圧縮は20%程度であり、換言すれば異方導電性膜100の厚みは0.8t程度までしか圧縮されない。したがって、異方導電性膜100への過剰な圧力を防ぐことができ、その過度な変形が抑制される。故に、異方導電性膜100の耐久性、ひいては高周波特性の向上を図ることが可能となる。
【0036】
また上述したように大粒径導電性粒子122がスペーサとして機能し、異方導電性膜100が20%程度の圧縮が可能であるということは、すなわち異方導電性膜100は20%程度のストロークを持つということである。したがって、電極基板402の電極404(ランド)および回路302の端子304の寸法公差を十分に吸収可能である。
【0037】
一方、小粒径導電性粒子124の粒径d10は、d90の半分以下であり、換言すれば弾性高分子材料の膜厚の40%以下の粒径である。この小粒径導電性粒子124は、弾性高分子材料110に磁場をかけながら硬化すると、図2(a)に示すように弾性高分子材料110の厚み方向に鎖状に配列する。これにより、テストヘッド400の電極基板402をウエハ300の回路302(図1参照)に向かって圧接すると、図2(b)に示すように小粒径導電性粒子124によって電極基板402の電極404と回路302の端子304とが複数の経路(パス)で電気的に接続される。したがって、異方導電性膜100の接続安定性が十分に確保され、高電気特性(低電気抵抗)ひいては高い高周波特性が得られる。
【0038】
なお、弾性高分子材料110に含有される導電性粒子120が大粒径導電性粒子122のみであると、端子304および電極404と導電性粒子120との接点数ひいてはそれらの導電経路が極端に減少するため電気的特性が低下してしまう。故に、本実施形態のように、導電性粒子120を大粒径導電性粒子122および小粒径導電性粒子124から構成することにより、大粒径導電性粒子122のスペーサ効果によって異方導電性膜100の耐久性の向上を図りつつ、小粒径導電性粒子124による高電気特性の確保が可能となる。
【0039】
上記説明したように、本実施形態の異方導電性膜100によれば、大粒径導電性粒子122および小粒径導電性粒子124により、高電気特性を確保しつつ耐久性の向上を図ることが出来る。これにより、異方導電性膜の更なる薄膜化が可能になり、ひいては高周波特性の向上および高分解能化を達成することができる。そして、このような異方導電性膜100を導電性コネクタ200に用いることにより、可動電極220の圧力による異方導電性膜100の過度な変形が抑制されるため導電性コネクタ200の長寿命化も可能になり、且つ適度な変形は許容されるため検査装置の電極基板402の電極404(ランド)および回路302の端子304(電極)の寸法公差を十分に吸収することができる。
【0040】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態にかかる導電性コネクタを説明する図であり、特に図4(a)は第3異方導電性膜の構成を例示する断面図であり、図4(b)は第2実施形態の導電性コネクタの概略構成を図示している。なお、以下、第1実施形態の導電性コネクタと同一の機能や構成を有する要素については、同一の符号を付すことにより重複説明を避ける。また、理解を容易にするために、図4では、図1に示した可動電極220および電極基板402の電極404を破線にて図示している。
【0041】
第1実施形態の導電性コネクタは、第1異方導電性膜100aおよび第2異方導電性膜100bが同一の構成であったのに対し、第2実施形態の導電性コネクタは、第2異方導電膜に代えて、図4に示す第3異方導電性膜100cを備える。
【0042】
図4(a)に示すように、第3異方導電性膜は、弾性高分子材料110中に含まれる(混入した)導電性粒子126の最大粒径が弾性高分子材料の平均厚さtの半分以下である。すなわち第3異方導電性膜100cには、第1実施形態における小粒径導電性粒子124に近い粒径の導電性粒子126が含まれていて、スペーサとして機能する第1実施形態の大粒径導電性粒子122のような導電性粒子は含まれていない。
【0043】
本実施形態の特徴として、上記の第3異方導電性膜100cの導電性粒子126は、可動電極220(破線にて図示)と対応する位置に集合するように偏在し、弾性高分子材料110の厚み方向に導電路(導電経路)を形成している。これは、第3異方導電性膜100cを成膜する際に、電極の位置に磁場をかけた状態で硬化させることにより、電極の位置に導電性粒子126が集中し、偏在させることができる。このように導電性粒子126が可動電極220と対応する位置に集合して偏在していることにより、それらの導電経路を増強させ、また他の電極との絶縁性を高めることが可能となる。また、小径の導電性粒子126が連なっていることからクッション性が高く、導電性コネクタ200全体としてのストロークを大きくすることが可能となる。
【0044】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、弾性高分子材料中に導電性粒子が分散され、厚み方向に異方導電性を示すシート状の異方導電性膜、およびそれを用いた導電性コネクタに利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
100…異方導電性膜、100a…第1異方導電性膜、100b…第2異方導電性膜、100c…第3異方導電性膜、110…弾性高分子材料、120…導電性粒子、122…大粒径導電性粒子、124…小粒径導電性粒子、126…導電性粒子、200…導電性コネクタ、202…複合導電性シート、210…絶縁性シート、212…貫通孔、220…可動電極、222…胴部、224a…頭部、224b…頭部、300…ウエハ、302…回路、304…端子、400…テストヘッド、402…電極基板、404…電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性高分子材料中に導電性粒子が分散され、厚み方向に異方導電性を示すシート状の異方導電性膜において、
前記導電性粒子の粒度累積分布の累積10%の粒径であるd10は、累積90%の粒径であるd90の半分以下であって、
前記導電性粒子のd90は前記弾性高分子材料の平均厚さの70%〜90%であることを特徴とする異方導電性膜。
【請求項2】
検査装置において検査対象である回路の端子に接触させて通電するための導電性コネクタにおいて、
前記回路から前記検査装置の電極基板に向かって、第1異方導電性膜と、複合導電性シートと、第2異方導電性膜とを備え、
前記第1異方導電性膜および第2異方導電性膜は請求項1に記載の異方導電性膜であって、
前記複合導電性シートは、複数の貫通孔が形成された絶縁性シートと、前記貫通孔に組み合わされ厚み方向に移動自在な複数の可動電極とを有することを特徴とする導電性コネクタ。
【請求項3】
請求項2に記載の導電性コネクタにおいて、
前記第2異方導電性膜に代えて第3異方導電性膜を備え、
前記第3異方導電性膜は、弾性高分子材料中に混入した導電性粒子の最大粒径が該弾性高分子材料の平均厚さの半分以下であって、該導電性粒子を前記可動電極と対応する位置に集合させて偏在させ、厚み方向に導電路を形成したものであることを特徴とする導電性コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−37944(P2013−37944A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174072(P2011−174072)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(511194577)
【Fターム(参考)】