異方性コーティングにおける多孔性の制御
本発明は、ミクロサイズ及びナノサイズの領域における制御された構造を有する多孔性コーティングの製造方法に関する。特に、制限するものではないが、それは異方性の孔サイズ分布を有するコーティングの製造方法及びそのようなコーティングを用いて得られるコーティング物に関する。それは、特に、制御された状態でそのようなコーティングを堆積するためのインクジェット法の使用を述べる。それはまた、ミクロサイズ及びナノサイズの領域における制御された構造を有する多孔性コーティングにも関する。コーティングは10ナノメーターと10ミリメーターの間の厚みを有し、そしてその多孔性は孔サイズ分布が異方性のであるように作製される。それは最後に、このコーティングを用いてコーティングされた物体を述べる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミクロサイズ及びナノサイズの領域において制御された構造を有する多孔性コーティングに関する。本コーティングは10ナノメーターと10ミリメーターの間の厚みを有し、そしてそれらの多孔性は孔サイズ分布が異方性であるように作成される。
【0002】
本発明は、ミクロサイズ又はナノサイズの領域において制御された構造を有する多孔性コーティングの製造方法にも関する。特に、限定するものではないが、それは異方性の孔サイズ分布を有するコーティングの製造方法に関する。
最後に、本発明は、該コーティングで覆われた物体に関する。
【背景技術】
【0003】
コーティングは非常に多岐に亘る技術分野において、特に、医療分野において使用され得る。
【0004】
全身的に投与された薬物に基づく治療の失敗には多くの発端があるが、一つの古典的原因は、有害な副作用を起こさないで、処置されるべき部位での要求された用量が達成不能なことである。これは特に、インプラントに続いて必要な処置に対して事実である。例えば、インプラントが体内に置かれるとき、中長期の実行(run)でその完全な統合に対して有害であり得る周囲の組織の反応を、ほとんど常に引き起こすであろう小さな損傷を、それは誘発する。別の例はインプラント手順中の感染のリスクである。患者自身によって持ち込まれたバクテリアが、外科手術中の重要な感染源であることはよく知られている。これらの問題に対処する方法は、局所的に反応に対抗するであろう薬物(二つの例において各々―――抗生物質が考えられ得る)を使用することである。
【0005】
インプラント後の局所的な薬物の送達も、インプラント直後の体の反応を高めるために、そして手順の成功の機会を改善するためにも使用され得る。例えば、骨インプラントは、新しい組織の成長に好ましく、従って回復期間を低減して長期間の成果を改善するであろう蛋白質でコーティングすることができる。
【0006】
従って、薬物溶出コーティングは最近に亘って、強い関心を生みだしてきた。それらは今日、血管形成術のための薬物溶出ステントに関する心臓病において非常に広範に使用され、そして股関節及び膝のインプラント用成形外科において、顎顔面手術等々において、その他の開発が行われている。それらは二つの主要なグループに分類される。第一グループにおいて、溶出されるべき薬物はコーティングに混合され、そしてコーティングの溶解と平行して、又はコーティング若しくはコーティングの一部を通った拡散によって放出されるであろう。第二グループにおいて、薬物は、一連のリザーバとして機能するコーティングの孔内に含有される。それは孔を貫通し、それを溶解する体液として放出される。
【0007】
如何なるタイプのコーティングに対しても、厚みは、その安定性に直接影響を有する重要な観点である。厚いコーティングはより弱く、そして時間がたてばより高い破壊する傾向を有することは文献からよく知られている。コーティングの厚みを減少させることによって、寿命が改善されるがその結果、貯蔵される薬物の量が少なくなる。薬物で充填することができるそしてリザーバとして機能する小さな空洞を作成することによって、厚さの低減にも拘わらず、この量を保持することができる。
【0008】
先行技術において、薬物放出の適用のために多孔性コーティングを作成する異なる方法が示されている。例えば、特許文献1では金属合金の差分攻撃が使用される。合金の一成分を除去することによって、多孔性層が作成される。特許文献2では、陽極酸化と組合わせた電解酸化によって孔孔性が生み出される。特許文献3では、電気化学的に誘起された点食を通して金属ステントの表面に孔が作成される。これらの孔は、次いで、セラミック層で被覆される。これらのすべての場合、作成された孔は、サイズが均一であるという、又は少なくとも均一なサイズ分布を有するという不利な点を有する。その結果、装填された薬物の量は少ない(小さな孔)か、又は短期間に亘って、つまり、2、3時間に亘って放出が起こるであろう(大きな孔)。
【0009】
事実、2、3日から2、3週間に亘って大量の薬物を貯蔵して放出するために、コーティングは二つの孔を組合せなければならない:一方で、リザーバとして作用し薬物が保存される大きなサイズのもの、及び他方で拡散膜として機能する、放出される分子と類似のサイズのもの。
【0010】
以前の出願(特許文献4)において、我々は異方的に配列された二つの孔を組合せたコーティングを述べた:一方は主として薬物リザーバとして使用されるもの、そして他方は主として拡散膜として使用されるもの。我々はまたそのようなコーティングを合成する方法も述べた。しかしながら、それが高密度のリザーバを有するコーティングの製造になると、このアプローチは幾つかの不利な点を供する。できるだけ薄い厚みを維持しながら、高密度のリザーバを得るために、最良のアプローチは、テンプレート粒子として球体を使用することである。最密充填された六角形配置において、それらは約60パーセントのリザーバ多孔性を生みだすであろう。機械的な観点から、この配置は最終的なセラミックコーティングに対して理想的ではない。事実、コーティングの拡散膜部分は、非常に厚いベース及びトップを有するが、非常に狭い首を有する軸を持つ一連の円柱によって、リザーバの開放空洞に亘って維持されるであろう。この形は、接触している三つの球体の間の形と空間によって画成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】Reed、Looi及びLye、CA 2 503 625号明細書
【特許文献2】Brandau及びFischer、US 6,709,379号明細書
【特許文献3】Herlein、Kovacs及びWolf、EP 1 319 416号明細書
【特許文献4】EP 1 891 998号明細書
【発明の概要】
【0012】
この出願において、我々は、貯蔵能力に悪影響を及ぼすことなしに、コーティングの機械的接着を劇的に改善することを可能にするアプローチを、述べる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
高い薬物装填及び緩慢な薬物放出を同時に得ることは、ミクロサイズ又はナノサイズの領域における孔サイズ分布を有する異方性の多孔性コーティングを用いて達成される。これらのコーティングは以下の方法によって生産される:
−表面を有する支持体を供すること;
−一時的テンプレート層を該表面上に堆積させること;
−該一時的テンプレート層を改変(modify)すること;
−該一時的粒子上に少なくともコーティングを堆積させること、ここで該コーティングが多孔性である;
−異方性の孔サイズ分布の多孔性を有する構造を得るために、孔を形成する上記一時的粒子を排除すること、ここで上記方法がコーティングを固定化する工程を更に含む。
【0014】
別の可能な実施態様において、コーティングは以下の方法によって生産される(図1):
−表面を有する支持体を供すること;
−一時的粒子の少なくとも一つの第一単層を該表面上に堆積させること;
−一時的粒子をそのサイズを低減することによって改変すること;
−該一時的粒子上に少なくともコーティングを堆積させること、ここで該コーティングが多孔性である;
−異方性の孔サイズ分布の多孔性を有する構造を得るために、孔を形成する上記一時的粒子を排除すること、ここで上記方法がコーティングを固定化する工程を更に含む。
【0015】
別の実施態様において、コーティングは以下の方法によって生産される(図2):
−表面を有する支持体を供すること;
−テンプレート層として機能するであろう少なくともコーティングを該表面上に堆積させること;
−該テンプレート層を構造化(structure)すること;
−該構造化されたテンプレート層上に少なくともコーティングを堆積させること、ここで該コーティングが多孔性である;
−異方性の孔サイズ分布の多孔性を有する構造を得るために、孔を形成する上記構造化されたテンプレート層を排除すること、ここで上記方法がコーティングを固定化する工程を更に含む。
【0016】
本発明によって得られるコーティングは、孔がサイズにおいて異なり、そして異方性の状態で配列されるという事実によって特徴付けられる。ミクロ孔は物体の表面近くに作成され、そして薬物を貯蔵するために使用され、一方、ナノ孔はコーティングの自由表面に向かって外側に配列され、そして放出膜として機能する。
【0017】
それらはまた、薬物を貯蔵するために使用される孔が、互いに非常に近接し、そして空洞の密なネットワークを形成するが、しばしば非常に薄い壁によって分離されるという事実によっても特徴付けられる。
【0018】
非限定的な例として、我々は以後、大部分は、金属基材上のセラミックコーティングについて論ずるであろう。しかし、同じ記述が如何なるタイプのコーティング材料にも適用することができ、そしてコーティングは異なるタイプの材料で作ることができる:金属、セラミック、ポリマー、ヒドロゲル、又はこれらの如何なる材料の組合せ。従って以下における用語セラミックは、ポリマー、金属、又は組合せによって置き換えることができて、そして同じことが金属にも適用されると理解される。生産工程(process step)における違いに対して、表1に、可能な組合せの殆どに対して、適用される必要がある改変が記述されている。
【0019】
多孔性コーティングは生体と接触状態にあるため、それは生体適合性材料でできていることが好ましい。アプリケーションに応じて、これは、排他的ではないが、酸化物、ホスファート、カルボナート、窒化物、又は炭窒化物であってよい。酸化物の中では以下のものが好ましい:酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化イリジウム、酸化ジルコニウム又は酸化チタン。時には、コーティングは、時間をかけて溶解し、そして生きた組織によって置き換えられ得る生分解性材料でも作ることができる。基材は、金属、セラミック、ポリマー、又はこれらの如何なる組合せなどの材料でできる。ステンレス鋼、ニチノール、チタン、チタン合金、又はアルミウムなどの金属、及びジルコニア、アルミナ又は燐酸カルシウムなどのセラミックが、特に興味がある。それは、時間をかけて溶解するであろう、そして生きた組織によって置き換えられ得る生分解性材料であってもよい。
【0020】
コーティングは10ナノメーターと10ミリメーターの間、好ましくは200ナノメーターと30ミリメーターの間の厚みを有する。より厚いコーティングはより大きなリザーバ空洞の作成を可能にし、一方、より薄いコーティングは機械的により抵抗力があるであろう。従って、厚みは、完全な安定性を維持しながら、薬物を十分装填するために最適なものとして選択される。
【0021】
多孔性は、サイズ分布が異方性であるように作り出される。好ましくは、コーティングにおける孔サイズ分布の中央値は、物体の表面からコーティングの自由表面によって異なり、ここで該自由表面は、支持体から離れたコーティングの表面である。好ましくは、コーティングの自由表面での孔サイズ分布の平均値は数μm未満である。
【0022】
別の変形例において、コーティングは、明確な(distinct)孔サイズ分布を有する明確なサブ層(sub-layer)でできている。この場合、サブ層の一つは、数μm未満の平均孔サイズ分布を有し、好ましくは、最小の平均孔サイズ分布を有するサブ層は、コーティングの自由表面の近くに位置している。好ましくは、両方の平均孔直径は5〜10倍だけ異なる。別の実施態様において、両方の平均孔直径は、100倍又はそれ以上だけ異なる。
【0023】
好ましい実施態様において、より小さな孔がナノメーター範囲において固定される。膜を通した液体の拡散は、拡散係数によって記述される。この係数は膜の厚み、孔の密度、それらのサイズ並びにそれらのねじれ(tortuosity)と共に変化する。特に、もし、孔のサイズが、拡散するであろう分子のサイズに類似しているならば、それは拡散に影響するであろう。
【0024】
一つの可能な実施態様において、マイクロメーターサイズの空洞は、インプラント上にテンプレートを堆積することによって作成される。このテンプレートは、例えば、浸漬コーティングによって又はインクジェット印刷によって基材上に堆積される、例えば、単分散ポリスチレン粒子でできている。ポリスチレン粒子は次いで、酸素プラズマを用いて部分的にエッチングされる。酸素プラズマによって、材料の層が粒子から除かれる。処理が長いほどより多くのプラズマが除去される。テンプレート層は次いで、セラミックで部分的にコーティングされ、一方、拡散膜はナノ多孔性セラミックの第二層を添加することによって生産される。最後に、テンプレート材料が熱処理によって除かれ、そして空洞が作成される。この実施態様は、図3における断面で模式的に示される。二つのサブ層でできているセラミックフィルムは、金属基材(1)上にコーティングされる。下方の層は、密なセラミック(3)中に埋め込まれたマイクロポア(2)(ミクロン範囲にある直径を有する孔)でできている。上方の層は、ナノ多孔性セラミック(4)(ナノメーター範囲にある孔を有するセラミック)でできている。
【0025】
図4は、本発明の別の可能な実施態様の断面の模式図を示す。その実施態様において、ミクロ孔(2)は、ナノ多孔性セラミック(4)内に埋め込まれる。この第二の実施態様の平面図の写真が図5において示される。1マイクロメーターの直径を有するミクロ孔(5)は、トップのナノ多孔性層(6)を通して見ることができる。コントラストの違い(ミクロ孔の黒い形)は、導電性が悪いセラミックのローディング効果(loading effect)のせいである。断面の写真と同じコーティングが図6にいて示される。(コーティングを切開するために使用される)白金棒7の下に、コーティングの異なる層を区別することができる。基材(1)上に、排除された一時的粒子によって作成された空の孔(2)があり、ここで該孔は、ナノ粒子(5)及びナノ孔(6)でできている多孔性構造(4)によって囲まれている。基材の隣に位置しているより大きな孔、及びコーティングの自由表面に向かってより小さな孔を有するように制御されて多孔性が作り出される。この制御された分布によってコーティング中に異方性で多孔性の構造が作り出される。
【0026】
別の実施態様において、空洞は、最初に基板上にテンプレート層を堆積することによって作成される。この層は次いで、例えば、フォトリソグラフィー又は電子ビームなどの方法によって構造化される。この構造化は、テンプレート層の溶解挙動を局所的に修正するであろう。テンプレート層で被覆された基材はついで、該テンプレート層の幾らかの部分を除去するであろう溶媒内に浸漬される。その溶解度が修正された領域は、マスク構造化と似たように、その場に留まるであろう。
【0027】
更なる変形例において、孔、又は少なくともそれらの表面は、水系媒体中でゆっくりと放出することができるか、又は孔若しくは少なくともその表面が親水性にできている親油性溶液によって充填されるために疎水性にできているか、又は孔、若しくは少なくともそれらの表面は、親水性溶液によって充填されるために、親水性にできている。
【0028】
一般的なコーティング方法
以下に、そのような異方性コーティングを得るために使用される方法の幾つかの可能な変形例を述べる。これらの変形例に対する工程は、図1及び図2において示される。
【0029】
コーティング方法の第一実施態様は以下の工程を含む:
1)支持体又は表面を有する基材が供されること(図1、像の第一列);
2)一時的粒子構造又はテンプレートを形成するために、一時的粒子の一つの単層が、支持体又は基材上に堆積されること(図1、像の第二列);
3)一時的粒子のサイズが低減されること(図1、像の第三列);
4)コーティングが支持体又は基材上に堆積されること、ここでコーティングはナノ多孔性であり、異方性の孔サイズ分布の多孔性を有する構造を得るために、一時的粒子が排除されて孔を形成し、そしてコーティングは固定化工程を通して強化される(consolidated)(図1、像の第四列)。
【0030】
本方法の第二の可能な実施態様において、コーティングは二つの異なるコーティングで作られ、ここで第一の密なコーティングは前記一時的粒子を完全には被覆していない、及び第二のナノ多孔性コーティングによって、該第一コーティングは、該第二の多孔性コーティングの堆積(deposition)前に乾燥される。最後に、粒子は排除されて、異方性の孔サイズ分布を有する孔を形成し、そしてコーティングは固定化工程を通して強化される。この実施態様において、第一コーティングは、一時的粒子の回りに密な構造を形成する。
【0031】
第三の可能な実施態様において、コーティング方法は以下の工程を含む:
1)支持体又は表面を有する基材が供される(図2a);
2)一時的テンプレート層が支持体上に配列され、そして構造化される(図2b);
3)マスク層が構造化される。可能な実施態様において、この構造化は、例えば、電子ビーム又はレーザービームを用いて直接、層を照射することによってなされる(図2c)。この照射によって、マスク層の選択された領域の溶解性が変わるであろう。別の可能な実施態様において、ポリマー層(図2d)の幾つかの部分を保護するために、照射中に追加のマスクが使用される(図2e)。非修正テンプレート層は次いで除去され、その構造化が完了しそしてテンプレートが現れる(図2f)及び(図7);
4)コーティングは支持体又は基材上に堆積され、ここでコーティングはナノ多孔性であり(図2g)、一時的粒子は排除され、その結果、異方性の孔サイズ分布を持つ多孔性を有する構造を得るために孔が形成され、そしてコーティングが固定化工程を通して強化される(図2h)。
【0032】
本方法の第四の実施態様において、コーティングは二つの異なるコーティングで作られ、ここで第一の密なコーティングは前記一時的粒子を完全には被覆していない、及び第二のナノ多孔性コーティングによって、該第一コーティングは、該第二の多孔性コーティングの堆積前に乾燥される。最後に、構造化された粒子は排除されて、異方性の孔サイズ分布を有する孔を形成し、そしてコーティングは固定化工程を通して強化される。この実施態様において、第一コーティングは、一時的粒子の回りに密な構造を形成する。
【0033】
本記述における用語「排除する」は広い意味で使用される。それは、例えば、崩壊、溶解又は除去などの、粒子形態における重要な変化に関連する如何なる一般的に使用される用語も包含する。例えば、排他的ではないが、一時的粒子の排除は熱工程、化学工程、機械的工程、電気機械的工程又は照射工程を含み得る。熱工程、化学工程又は照射工程の場合、一時的粒子は完全に又は部分的にのみ破壊されて、例えば、粒子を中空にすることができる。機械的工程の場合、一時的な粒子を機械的に除去することができる。電気機械的工程(例えば、音波又は超音波での振動)の場合、(例えば、PLGAなどのポリマー粒子の使用によって)粒子を膨張又は崩壊することができる。さらに、排除工程及び強化工程は一つの単一工程であり得る。
【0034】
用語「一時的」は「方法中の限定された時間にのみ存在すること」として理解されなければならない。一時的粒子は、コーティングの三次元構造及び多孔性を作成するテンプレートとして見なさすことができる。
【0035】
用語「粒子の単層」は、粒子が、支持体の表面に対して相対的に同じレベルにあることを意味する。各単層に対して、どの粒子も他の粒子のトップに座することはない。
【0036】
一時的粒子の堆積又はテンプレート
本発明において、この工程は、好ましくは浸漬コーティング又はインクジェット印刷によって実行される。しかしながら、例えば、スピンコーティング又は溶媒蒸発などの如何なる他の方法も使用することができる。
【0037】
浸漬コーティングの場合、一時的粒子は溶液(例えば水)中にあり、そして基材は該溶液中に浸漬される。従来技術において知られている通り、基材上に存在する粒子の密度は、溶液中の粒子濃度、基材の引き上げ速度及び基材の表面処理にも依存するであろう。これらのパラメーターは全て、基材上の粒子の望ましい密度を達成するために当業者によって調節され得る。
【0038】
インクジェット印刷の場合、一時的粒子は、基材上に印刷される溶液中にある。一例として、溶液の溶媒は、当業技術において公知であるコーヒーリング効果を阻止するために他の溶媒と混合された水であってよい。他の溶媒の例はエチレングリコール又はホルムアミドである。基材上の粒子の濃度は、望ましい値を得るために当業者によって調節され得る印刷パラメーターと同様、溶液からのパラメーターに依存するであろう。
【0039】
粒子
一時的粒子の直径及び形状は任意に選択することができる。しかし、形及びサイズにおいて均一な粒子の方が好ましい。粒子の化学組成も自由であるが、ポリマー、澱粉、シリカ、金属又は細胞などの生体材料のグループにおいて好ましくは選択される。球形及び均一な直径を有するポリマー材料が好ましい:単分散ポリマービーズ。例えば、ポリスチレンビーズが有利に使用され得る。それらは多くのサイズにおいて容易に入手でき、そしてサイズが一定している。あるいは、生体適合性ポリマー(例えば、PLGA、つまりポリラクチドグリコリド酸タイプ)も使用することができる。
【0040】
支持体上に堆積されるとき、一時的粒子は互いに接触状態にあり得るか又は幾つかの空のスペースによって分離することができる。接触状態にあるとき、接触表面サイズは粒子の表面化学及び表面親和性を変えることによって修正することができる。それは湿潤性粒子を使用することによって増やすことができ、又はテフロンなどの湿潤性性粒子を使用するとき、点接触に減少することができる。
【0041】
親水性及び/又は疎水性の一時的粒子を使用すると、コーティングにおいて種々の構造を作成することが可能になる。一時的粒子の堆積の前に、基材は各々親水性又は疎水性の層で局所的に被覆される。このようにして、特定の領域が、一方で、他の領域上での付着を防ぎながら、類似の表面親和性を有する一時的粒子を固定するように適合される。ステントの場合、より変形されにくい領域のみをコーティングすることは有利であり得る;あるいは、増殖又は感染を防ぐために、薬物の放出を目標とする血管の内膜と接触状態にある領域のみをコーティングすることは有利であり得る。骨又は歯のインプラントの場合、骨の内部成長が好まれるべき、そしてそれが阻止されるべき領域を選択することは有利であり得る。
【0042】
粒子のエッチング
基材上に堆積後、粒子はエッチングされる。可能な実施態様において、使用される粒子は球形を有し、そしてポリスチレンでできている。例として、それらは酸素−アルゴンプラズマを用いてエッチングすることができる。エッチングの程度はプラズマに使われた時間に依存するであろう。
【0043】
テンプレート層の構造化
テンプレート層の構造化アプローチによって、ミクロサイズの多孔性の設計における多くの柔軟性が供される。事実、基材に平行な面における形は自由に選択することができる。可能な実施態様において、マイクロメーターサイズの孔は六角形を有し得て、そして孔の間の壁の厚みは、生じた多孔性を修正するように適合することができる(図8)。
【0044】
別の可能な実施態様において、マイクロメーターサイズの孔の形は、潜在的変形に抗するように適合することができる。例えば、壁は、変形方向を有する非常に特定の角度で配列することができ、その結果そのような変形の影響を最小化することができる(図9)。コーティング堆積
【0045】
コーティング堆積に対して異なる手順を考えることができる。それらは、使用されるコーティング前駆体並びにコーティングの望まれる性質に従って選択される。2、3の例を以下に示す:
【0046】
基材上へのコーティングの堆積の第一の手順は、コーティング前駆体として、例えば水などの溶媒中のナノ粒子又はナノ粉末の混合物を使用する。基材は前駆体混合物内に浸漬され、そして制御された速度で引き出される。コーティングの厚みは、混合物の粘度及び引っ張り速度と共に変わる。
【0047】
別の手順では、コーティング前駆体として金属アルコキシドのヒドロキシル化及び部分的縮合を通して得られたゾルが使用される。再び、前駆体は、浸漬又はスピンコーティングを用いて基材の上にコーティングすることができる。
【0048】
別の手順では、適合された溶媒内に前駆体を溶解することによって得られた溶液が使用される。再び、混合物は、浸漬又はスピンコーティングを用いて基材上にコーティングすることができる。
【0049】
或る実施態様において、使用される前駆体は親水性材料であってよく、従って親水性孔表面を生みだす。
【0050】
別の実施態様において、使用される前駆体は疎水性材料であってよく、従って疎水性孔表面を生みだす。
【0051】
全ての場合、コーティングを幾つかの工程又はサブ層において堆積することができる。各サブ層の堆積の間で、コーティング前駆体の溶媒を、部分的に又は完全に、例えば、熱処理によって除去することができる。このアプローチによってより厚い、亀裂のないコーティングの形成が可能になる。コーティング前駆体の組成も、各工程の間で改変することができる。これによって可変化学組成を有するコーティングの作製が可能になる。例えば、コーティングの化学組成は、コーティング/基材の界面での基材のそれと非常に類似したものであり得て、そしてその界面で体と非常に適合性があり得る。
【0052】
コーティングを生みだすためにナノ粉末又はゾル−ゲル・アプローチを使用すると、結晶性コーティングを得るために必要な温度が下がるという利点が供される。
【0053】
これは、熱処理されたとき、相転移を起こし得て、その結果として、その機械的性質又は形状記憶性の部分を損失し得る、金属基材に対して特に好ましい。
【0054】
本方法の第一の実施態様によると、一時的粒子を完全に被覆している1つの単一の第一コーティングの堆積のみがあり、ここで該単一コーティングはナノ多孔性構造を有する。従って、そのような多孔性構造によって、以下に示す通り、粒子の排除が可能になる。
【0055】
本方法の第二の実施態様によると、コーティングは事実上二つのコーティングを含む:堆積後に処理される(例えば、乾燥される)第一コーティング、ここで該第一コーティングは堆積された粒子を完全にコーティングしてはいない、そして次に、本法の第一の実施態様のように、多孔性構造を有する第二コーティング。
【0056】
別の可能な実施態様において、堆積後に処理され、そしてテンプレート粒子を完全にコーティングしてはいない第一コーティングは、密である。
【0057】
典型的には、上述の実施態様に記載のこれらのコーティングは、ナノ粉末を用いて、又は当業技術においてそれ自体公知なゾル−ゲル法によって実現される。勿論、多孔性構造を作成するための如何なる他の方法も、本発明において予想され得る。
【0058】
粒子の除去
一時的粒子の除去は、例えば、限定的ではないが、熱工程、化学工程、機械的工程、電気機械工程、光化学工程、又は照射工程などの異なる方法によって達成することができる。それは、コーティングの要求事項に依存して、方法の異なる段階、固定化工程の前及び/又は最中及び/又は後でも起こることができる。
【0059】
固定化
固定化工程に対して如何なる適切な方法も使うことができる。有利には、乾燥工程が使用される。
【0060】
コーティングの固定化工程は、粒子排除工程前に行うことができる、又は粒子排除工程と同時に、又は粒子排除工程の後でさえ行うことができる。
【0061】
セラミックに対しては、これは結晶相が形成される焼結であり得る。ポリマーに対しては、これは(可視光又はUV光によって)光化学的に、熱的に又は化学的に誘起される重合であり得る。金属又は或るセラミックに対して、これは、制御された(中性又は還元性)雰囲気下での熱処理であり得る。
【0062】
孔の充填
ある実施態様において、孔構造は、医療目的の活性物質の貯蔵及び拡散のために使用することができる。
【0063】
可能な実施態様において、コーティングは薬物、抗凝集物質、抗増殖物質、抗生物質、静菌性物質、又は成長因子で充填することができる。
【0064】
別の実施態様において、コーティングは細胞で充填することができる。
【0065】
基材は、例えば、浸漬コーティング又はインクジェットによってコーティング中に導入することができる。孔を充填するための如何なる他の方法も企図することができる。
【0066】
実施例
以下の例は、図1、5及び6に示されたものに類似した構造を有するコーティングの具現化を述べる。
【0067】
一つの実施態様において、316Lステンレス鋼などの好ましい基材が使用され、そしてコーティングされるであろう。基材の調製は、Vermaら(Biomed Mater Eng.2006,16,381-395)によって述べられた通り、電気化学的に研磨され得る。
【0068】
TiO2ナノ粒子(Techpowder社、Lausanne、スイス)の懸濁液は、コロイドの安定化に役立つように、PVA(ポリビニルアルコール)、接着剤及びアンモニアの追加によって調製される。ナノ粒子の仕様は、D10=38nm、D50=62nm、D90=82nm(CPS Disc Centrifuge(登録商標))である。
【0069】
浸漬コーター(PL 3201、Speedline TechnologiesTM社製)が準備され、そして90[mm/秒)]の引上げ速度に設定される。基材は最初に、直径が1マイクロメーターのポリスチレンマイクロビーズ(Duke Scientific社、Berkeley、米国)の水系懸濁液内に浸漬される。表面積当たりの堆積されるビーズの数は、懸濁液中のそれらの濃度及び引上げ速度と共に変わる。図1、5及び6において示されたコーティングを製造するために、我々は10質量パーセントのマイクロビーズを含有する溶液を使用し、そして0.3mm/秒の速度で試料を引き上げた。ビーズは次いで、酸素アルゴンプラズマを用いて7分間エッチングされる。エッチングは25パーセントのO2及び75パーセントのArのガス混合物でプラズマクリーナーFischone 1020を用いて行われる。
【0070】
エッチングされたマイクロビーズで被覆された基材は次いで、ビーズをTiO2層で被覆するために、セラミックのナノ粉末懸濁液中で浸漬コーティングされる。セラミック層は、プロセスパラメーター及び使用目的に応じて厚みを変えることができる。この例において、ビーズは完全に被覆されるであろう。TiO2懸濁液はビーズを被覆しているコンパクトな層を形成するであろう。最終層の厚みは、略1.5マイクロメーターである。
【0071】
最後に、10パーセントRH及び37℃に制御された雰囲気のチャンバー中で10分間の乾燥期間の後、コーティングされた基材は、オーブン中で二段階方法において焼結される。第一の焼却工程は、空気中で500℃、1時間、実行される。この工程ではポリマービーズが焼き尽き、そしてTiO2層中にレンズ状の形をした空洞が残るのが見られるであろう。焼結の第二段階は800℃、1.5時間、制御されたアルゴン雰囲気で、第一段階に直ぐ続く。この第二工程はセラミック層の強化に役立つであろう。
【0072】
コーティングの作製及び装填(load)のためのインクジェット法の使用
今日、利用可能な種々のタイプのインクジェット印刷技術がある。例として、我々は以後ドロップオンデマンド技術を述べる(しかし、この記述は連続インクジェット印刷に容易に拡大することができる)。ドロップオンデマンド技術において、物質のミクロの滴が、オペレーターの要求でノズルを通して表面に投射される(projected)。ノズル及び/又は表面は、全ての空間方向(例えば、x、y、z、又はステントなどの円筒システムに、より多く適合されるr、θ、z)に動かすことができる。この動きによって、表面上の滴の最終的局在化についての正確な制御が可能になる。
【0073】
インクジェット・アプローチの利点
インクジェット法は、上述の通りコーティング堆積のあらゆる工程に、並びにコーティングを活性物質で充填することに対して、適用することができる:
・テンプレートの堆積に対して
・セラミックコーティングの堆積に対して
・孔を活性物質で充填することに対して
【0074】
各工程に対して、それは方法の完全な空間制御を可能にする。インクジェット法の空間的解像度は数十分の一マイクロメーターのオーダーである。
【0075】
インクジェット法を使用したテンプレートの堆積
テンプレート粒子を有する領域とテンプレート粒子を有しない領域を画成することによって、リザーバを有するゾーンとそのようなリザーバを有しないゾーンの作成が可能になる(図10)。リザーバを有するゾーンは次いで、活性物質で装填され、一方、リザーバを有しないゾーンはそのような活性物質が存在し得ない。コーティングされたステントの場合、そして特別な実施態様において、空洞は、血管壁に接触している表面に、ステントの外側に向かってのみ作成されるであろう。この幾何形状によって、血流内への直接的な薬物の拡散が最小化されるであろう。
【0076】
このアプローチの別の利点は、セラミックコーティングの厚みを変え得る可能性である。セラミックコーティングの重要な側面は、変形に対するその比較的低い抵抗である。基材の形が修正されるとき、コーティングは新しい形に適合しなければならず、そしてこれによって層中に亀裂が作成され得る。これらの亀裂によって、幾つかの剥離が、そしてその結果、粒子の放出が生じ得る。変形に対する抵抗は、薄いコーティングの使用によって強く改善することができる。リザーバを有しない領域は、より薄いであろうし、その結果、変形に対してより抵抗性がある。特別な実施態様において、テンプレートビーズは、変形が低い領域においてのみ堆積することができる。高い変形を有する領域は、図11において示された通り、セラミックのみでコーティングすることができる。
【0077】
インクジェット法を使用したセラミックコーティングの堆積
ここで再び、インクジェット法は高い柔軟性を提供する。種々の組成及び多孔性を有するセラミックを、基板の異なる部分上にコーティングすることができる。例えば、コーティングの外側の多孔性(孔の直径及び長さ、ねじれ)が、装填された活性物質の溶出プロファイルを動かすであろう重要な要素である。コーティングの異なる領域において種々の多孔性を有することによって、異なる放出プロファイルの作成が可能になる。従って、インクジェットによって、ステント上の異なる場所における異なるナノ粒子の懸濁液の堆積が可能になり、それが異なる外側の多孔性及び物質の放出プロファイルに繋がる。
インクジェット法を使用したコーティングの充填
【0078】
一つの実施態様において、コーティングは以下の手順に従って活性物質で充填される:
・コーティングされたデバイスが、閉じられたチャンバー中に置かれそして真空に引かれる。
・活性物質を含有する溶液が、表面上に堆積される。
・次いで、真空が破られる。孔における外部圧力プラス真空の組合せによって溶液が孔内に駆動されるであろう。
・溶媒が蒸発される。
【0079】
孔を充填するためにインクジェット法を使用することによって、与えられた物質で或る領域を具体的に装填することが可能になる。異なる分子組成が、単一コーティング上に装填することができ(図12)、そしてそれらの空間的局在化が整えられる(例えば、或る種の物質が、コーティングされたデバイスの先端で大部分局在化することができ、一方、別の物質が主として中央に位置決めされる)。
【0080】
物体
先に論じた方法によって、コーティング及び特定のかつ独創的な特長を有するそのようなコーティングを持っている物体の生産が可能になる。
【0081】
適用
上述の異なる実施態様及び変形例から容易に理解することができるように、これらの物体の主な適用は、医療デバイスの分野にあり、そしてより具体的には、限定するものではないが、医療インプラントの分野である。特に興味があるのは、ステント、整形外科及び歯のインプラントである。多孔性は、その内容物を制御された方法で時間をかけて放出するであろう薬物リザーバとして使用することができる、又は組織の内部成長ひいてはインプラントと生きた組織の間の機械的インターロックの増大を助けるように使用することができる。
【0082】
ステントに対して、コーティングは一つ又は数個の薬物で装填することができる。それは、非限定的例として与えられる以下の薬物の組合せであり得る:抗増殖物質、抗凝集物質、抗感染物質、静菌性物質。
【0083】
物体は、上で論じられたステントに対するものと同じように孔が適合され得る、整形外科又は歯のインプラントでもあり得る。そのような場合、得られる多孔性は、骨成長因子などの成長因子を貯蔵するおに、又は生体適合性を増すのに、又は骨若しくは軟骨性組織が成長することができそして確実にインプラントに付着することができる領域を作成するのに、興味深い。これは燐酸カルシウムなどの吸収性の生理活性セラミックで空洞を充填することによっても達成することができる。
【0084】
従って、支持体は、金属、セラミック、又はポリマーで作ることができる。それは生分解性材料でも作ることができる。
【0085】
本出願において、コーティングは非多孔性領域を含み得る。そのような領域は、10マイクロメーターより大きな最低寸法、及び10ミリメーターより小さな最大寸法を有し得る。変形例において、これらの領域は100マイクロメーターより大きな最低寸法を有する。別の変形例において、これらの領域は1ミリメーターより小さな最大寸法を有する。
【0086】
孔のサイズも、ゆっくりと放出することができる活性物質を含有するビーズ、粒子又はポリマーを拡散するように適合され得る。
【0087】
あるいは、ビーズ又は粒子は放射線を発することができる。有利には、そのような場合、ビーズ又は粒子は空洞内に留まるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】二つの可能な実施態様に対する異なる方法工程を示す。
【図2】構造化されたテンプレート層を有する異方性コーティングを作成するための二つの可能なアプローチを示す。
【図3】コーティングの可能な実施態様である。
【図4】コーティングの別の可能な実施態様である。
【図5】本発明に記載の方法を受けた物体の第一の写真である。
【図6】本発明に記載の方法を受けた物体の第二の写真を示す。
【図7】マスク層を構造化することによって得られたテンプレートを示す。
【図8】マスク層を構造化することによって得られたテンプレートの可能な設計を示す。
【図9】マスク層を構造化することによって得られたテンプレートの可能な設計を示す。
【図10】リザーバを有する領域、及び有しない領域の模式図を示す。
【図11】ステント支柱上の薄いコーティング及び厚いコーティングの可能な分布を示す。
【図12】充填手順の模式図を示す。
【0089】
表1は、本発明に記載の多孔性表面を製造するための異なる可能性を要約する。
【0090】
図及び表
本発明は以下の図及び表からより完全に理解されるであろう。
【0091】
【表1】
【0092】
図1において、コーティング方法の異なる工程が示される。第一列は、本法の前の基材を示す(左側に断面、中央に平面図)。第一工程(第二列)は、一時的粒子又はテンプレートの堆積である(左側に堆積後の試料の断面、中央に平面図、及び右側に同じ試料の像)。本記述及び表1において示された通り、粒子は幾つかの材料で作ることができ、そして分散層中に又は密な層中に堆積することができる。ここで我々は単分散球状の一時的粒子の最密充填された層を有する。第三列は粒子の部分的エッチング後の同じ試料を示す。ビーズは、六角形パターンに続いて同じ方法で配列されるが、もはや互いに接触しない。第四列は一時的粒子の排除後の、そして固定化工程後の最終コーティングを示す。
【0093】
図2は、コーティングの異方性の多孔性を生みだすべく、テンプレート層を堆積するための、それを構造化するための、そしてそれを使用するための二つの可能なプロセスフローを示す。基材a)上に、テンプレート層が堆積されるb)。第一の可能なアプローチにおいて、層の幾つかの領域が、例えば、イオンビーム又はレーザービームによって照射されて、その溶解度を変えられるc)。別の可能なアプローチにおいて、マスクが層上に堆積されd)、照射中に幾つかの領域を保護するe)。ここで再び、テンプレート層の溶解度が局所的に修正される。テンプレート層は次いで、部分的に溶解され、その構造化を完成させ、このようにしてテンプレートを出現させるf)。セラミックコーティングは次いで、最終的には排除されるテンプレートに亘って堆積される。
【0094】
図3は、本発明の可能な実施態様の断面の模式図である。二つのサブ層で作られたセラミックフィルムは金属基材(1)上にコーティングされる。下方の層は、密なセラミック(3)中に埋め込まれたミクロ孔(2)(ミクロン範囲の直径を有する孔)でできている。上方の層は、ナノ多孔性セラミック(4)(ナノメーターの範囲の孔を有するセラミック)でできている。
【0095】
図4は、図2の実施態様において示された密なセラミック層(3)を有しない、ナノ多孔性セラミック(4)内にミクロ孔(2)が埋め込まれた、本発明の別の実施態様である。
【0096】
図5は、本発明の方法の第一実施態様(図1)に従って作られた構造の平面図の写真である。ナノ多孔性層(6)によってコーティングされた、1マイクロメーターの直径を有する数個のミクロ孔(5)(黒い円形)が見られる。
【0097】
図6はコーティングの断面を示し、コーティングの異なる層を示す。基材(1)の上に、排除された、低減されたサイズの一時的粒子によって残された空のミクロ孔(2)が見られ、ここで該孔は、ナノ粒子及びナノ孔でできているナノ多孔性構造(4)によって囲まれる。
【0098】
図7は、構造化されたテンプレート層の平面図の写真を示し、ここでテンプレートは、2、3ナノメーターと、数マイクロメーターの間の直径を有する円筒でできている。
【0099】
図8は、テンプレート層中に作成されるであろう、可能な構造の模式図である:二つの六角形構造が示される。第一の構造(左)は60パーセントの多孔性を生じるであろうし、一方、第二の構造(右)の多孔性は約90パーセントである。
【0100】
図9は、テンプレート層において作成されるであろう、可能な構造の模式図である。機械的変形が強いステントの領域において、これらの変形をより効率的に吸収するようにテンプレートを設計することができる。
【0101】
図10はコーティングの断面を示す模式図である。左手側上ではコーティングは如何なるリザーバも含有せず、一方、右手側上ではそれがマイクロメーターサイズのリザーバを含有する。
【0102】
図11はステント支柱の模式図である。この支柱上に、強い変形を受けるであろう部分が薄い層でコーティングされ、一方、より厚いコーティングが他の場所で堆積される。
【0103】
図12は充填手順の模式図である。インクジェット法を使用して第一分子がコーティングの第一領域中に装填され、一方、他の領域が第二分子で装填され得る。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミクロサイズ及びナノサイズの領域において制御された構造を有する多孔性コーティングに関する。本コーティングは10ナノメーターと10ミリメーターの間の厚みを有し、そしてそれらの多孔性は孔サイズ分布が異方性であるように作成される。
【0002】
本発明は、ミクロサイズ又はナノサイズの領域において制御された構造を有する多孔性コーティングの製造方法にも関する。特に、限定するものではないが、それは異方性の孔サイズ分布を有するコーティングの製造方法に関する。
最後に、本発明は、該コーティングで覆われた物体に関する。
【背景技術】
【0003】
コーティングは非常に多岐に亘る技術分野において、特に、医療分野において使用され得る。
【0004】
全身的に投与された薬物に基づく治療の失敗には多くの発端があるが、一つの古典的原因は、有害な副作用を起こさないで、処置されるべき部位での要求された用量が達成不能なことである。これは特に、インプラントに続いて必要な処置に対して事実である。例えば、インプラントが体内に置かれるとき、中長期の実行(run)でその完全な統合に対して有害であり得る周囲の組織の反応を、ほとんど常に引き起こすであろう小さな損傷を、それは誘発する。別の例はインプラント手順中の感染のリスクである。患者自身によって持ち込まれたバクテリアが、外科手術中の重要な感染源であることはよく知られている。これらの問題に対処する方法は、局所的に反応に対抗するであろう薬物(二つの例において各々―――抗生物質が考えられ得る)を使用することである。
【0005】
インプラント後の局所的な薬物の送達も、インプラント直後の体の反応を高めるために、そして手順の成功の機会を改善するためにも使用され得る。例えば、骨インプラントは、新しい組織の成長に好ましく、従って回復期間を低減して長期間の成果を改善するであろう蛋白質でコーティングすることができる。
【0006】
従って、薬物溶出コーティングは最近に亘って、強い関心を生みだしてきた。それらは今日、血管形成術のための薬物溶出ステントに関する心臓病において非常に広範に使用され、そして股関節及び膝のインプラント用成形外科において、顎顔面手術等々において、その他の開発が行われている。それらは二つの主要なグループに分類される。第一グループにおいて、溶出されるべき薬物はコーティングに混合され、そしてコーティングの溶解と平行して、又はコーティング若しくはコーティングの一部を通った拡散によって放出されるであろう。第二グループにおいて、薬物は、一連のリザーバとして機能するコーティングの孔内に含有される。それは孔を貫通し、それを溶解する体液として放出される。
【0007】
如何なるタイプのコーティングに対しても、厚みは、その安定性に直接影響を有する重要な観点である。厚いコーティングはより弱く、そして時間がたてばより高い破壊する傾向を有することは文献からよく知られている。コーティングの厚みを減少させることによって、寿命が改善されるがその結果、貯蔵される薬物の量が少なくなる。薬物で充填することができるそしてリザーバとして機能する小さな空洞を作成することによって、厚さの低減にも拘わらず、この量を保持することができる。
【0008】
先行技術において、薬物放出の適用のために多孔性コーティングを作成する異なる方法が示されている。例えば、特許文献1では金属合金の差分攻撃が使用される。合金の一成分を除去することによって、多孔性層が作成される。特許文献2では、陽極酸化と組合わせた電解酸化によって孔孔性が生み出される。特許文献3では、電気化学的に誘起された点食を通して金属ステントの表面に孔が作成される。これらの孔は、次いで、セラミック層で被覆される。これらのすべての場合、作成された孔は、サイズが均一であるという、又は少なくとも均一なサイズ分布を有するという不利な点を有する。その結果、装填された薬物の量は少ない(小さな孔)か、又は短期間に亘って、つまり、2、3時間に亘って放出が起こるであろう(大きな孔)。
【0009】
事実、2、3日から2、3週間に亘って大量の薬物を貯蔵して放出するために、コーティングは二つの孔を組合せなければならない:一方で、リザーバとして作用し薬物が保存される大きなサイズのもの、及び他方で拡散膜として機能する、放出される分子と類似のサイズのもの。
【0010】
以前の出願(特許文献4)において、我々は異方的に配列された二つの孔を組合せたコーティングを述べた:一方は主として薬物リザーバとして使用されるもの、そして他方は主として拡散膜として使用されるもの。我々はまたそのようなコーティングを合成する方法も述べた。しかしながら、それが高密度のリザーバを有するコーティングの製造になると、このアプローチは幾つかの不利な点を供する。できるだけ薄い厚みを維持しながら、高密度のリザーバを得るために、最良のアプローチは、テンプレート粒子として球体を使用することである。最密充填された六角形配置において、それらは約60パーセントのリザーバ多孔性を生みだすであろう。機械的な観点から、この配置は最終的なセラミックコーティングに対して理想的ではない。事実、コーティングの拡散膜部分は、非常に厚いベース及びトップを有するが、非常に狭い首を有する軸を持つ一連の円柱によって、リザーバの開放空洞に亘って維持されるであろう。この形は、接触している三つの球体の間の形と空間によって画成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】Reed、Looi及びLye、CA 2 503 625号明細書
【特許文献2】Brandau及びFischer、US 6,709,379号明細書
【特許文献3】Herlein、Kovacs及びWolf、EP 1 319 416号明細書
【特許文献4】EP 1 891 998号明細書
【発明の概要】
【0012】
この出願において、我々は、貯蔵能力に悪影響を及ぼすことなしに、コーティングの機械的接着を劇的に改善することを可能にするアプローチを、述べる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
高い薬物装填及び緩慢な薬物放出を同時に得ることは、ミクロサイズ又はナノサイズの領域における孔サイズ分布を有する異方性の多孔性コーティングを用いて達成される。これらのコーティングは以下の方法によって生産される:
−表面を有する支持体を供すること;
−一時的テンプレート層を該表面上に堆積させること;
−該一時的テンプレート層を改変(modify)すること;
−該一時的粒子上に少なくともコーティングを堆積させること、ここで該コーティングが多孔性である;
−異方性の孔サイズ分布の多孔性を有する構造を得るために、孔を形成する上記一時的粒子を排除すること、ここで上記方法がコーティングを固定化する工程を更に含む。
【0014】
別の可能な実施態様において、コーティングは以下の方法によって生産される(図1):
−表面を有する支持体を供すること;
−一時的粒子の少なくとも一つの第一単層を該表面上に堆積させること;
−一時的粒子をそのサイズを低減することによって改変すること;
−該一時的粒子上に少なくともコーティングを堆積させること、ここで該コーティングが多孔性である;
−異方性の孔サイズ分布の多孔性を有する構造を得るために、孔を形成する上記一時的粒子を排除すること、ここで上記方法がコーティングを固定化する工程を更に含む。
【0015】
別の実施態様において、コーティングは以下の方法によって生産される(図2):
−表面を有する支持体を供すること;
−テンプレート層として機能するであろう少なくともコーティングを該表面上に堆積させること;
−該テンプレート層を構造化(structure)すること;
−該構造化されたテンプレート層上に少なくともコーティングを堆積させること、ここで該コーティングが多孔性である;
−異方性の孔サイズ分布の多孔性を有する構造を得るために、孔を形成する上記構造化されたテンプレート層を排除すること、ここで上記方法がコーティングを固定化する工程を更に含む。
【0016】
本発明によって得られるコーティングは、孔がサイズにおいて異なり、そして異方性の状態で配列されるという事実によって特徴付けられる。ミクロ孔は物体の表面近くに作成され、そして薬物を貯蔵するために使用され、一方、ナノ孔はコーティングの自由表面に向かって外側に配列され、そして放出膜として機能する。
【0017】
それらはまた、薬物を貯蔵するために使用される孔が、互いに非常に近接し、そして空洞の密なネットワークを形成するが、しばしば非常に薄い壁によって分離されるという事実によっても特徴付けられる。
【0018】
非限定的な例として、我々は以後、大部分は、金属基材上のセラミックコーティングについて論ずるであろう。しかし、同じ記述が如何なるタイプのコーティング材料にも適用することができ、そしてコーティングは異なるタイプの材料で作ることができる:金属、セラミック、ポリマー、ヒドロゲル、又はこれらの如何なる材料の組合せ。従って以下における用語セラミックは、ポリマー、金属、又は組合せによって置き換えることができて、そして同じことが金属にも適用されると理解される。生産工程(process step)における違いに対して、表1に、可能な組合せの殆どに対して、適用される必要がある改変が記述されている。
【0019】
多孔性コーティングは生体と接触状態にあるため、それは生体適合性材料でできていることが好ましい。アプリケーションに応じて、これは、排他的ではないが、酸化物、ホスファート、カルボナート、窒化物、又は炭窒化物であってよい。酸化物の中では以下のものが好ましい:酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化イリジウム、酸化ジルコニウム又は酸化チタン。時には、コーティングは、時間をかけて溶解し、そして生きた組織によって置き換えられ得る生分解性材料でも作ることができる。基材は、金属、セラミック、ポリマー、又はこれらの如何なる組合せなどの材料でできる。ステンレス鋼、ニチノール、チタン、チタン合金、又はアルミウムなどの金属、及びジルコニア、アルミナ又は燐酸カルシウムなどのセラミックが、特に興味がある。それは、時間をかけて溶解するであろう、そして生きた組織によって置き換えられ得る生分解性材料であってもよい。
【0020】
コーティングは10ナノメーターと10ミリメーターの間、好ましくは200ナノメーターと30ミリメーターの間の厚みを有する。より厚いコーティングはより大きなリザーバ空洞の作成を可能にし、一方、より薄いコーティングは機械的により抵抗力があるであろう。従って、厚みは、完全な安定性を維持しながら、薬物を十分装填するために最適なものとして選択される。
【0021】
多孔性は、サイズ分布が異方性であるように作り出される。好ましくは、コーティングにおける孔サイズ分布の中央値は、物体の表面からコーティングの自由表面によって異なり、ここで該自由表面は、支持体から離れたコーティングの表面である。好ましくは、コーティングの自由表面での孔サイズ分布の平均値は数μm未満である。
【0022】
別の変形例において、コーティングは、明確な(distinct)孔サイズ分布を有する明確なサブ層(sub-layer)でできている。この場合、サブ層の一つは、数μm未満の平均孔サイズ分布を有し、好ましくは、最小の平均孔サイズ分布を有するサブ層は、コーティングの自由表面の近くに位置している。好ましくは、両方の平均孔直径は5〜10倍だけ異なる。別の実施態様において、両方の平均孔直径は、100倍又はそれ以上だけ異なる。
【0023】
好ましい実施態様において、より小さな孔がナノメーター範囲において固定される。膜を通した液体の拡散は、拡散係数によって記述される。この係数は膜の厚み、孔の密度、それらのサイズ並びにそれらのねじれ(tortuosity)と共に変化する。特に、もし、孔のサイズが、拡散するであろう分子のサイズに類似しているならば、それは拡散に影響するであろう。
【0024】
一つの可能な実施態様において、マイクロメーターサイズの空洞は、インプラント上にテンプレートを堆積することによって作成される。このテンプレートは、例えば、浸漬コーティングによって又はインクジェット印刷によって基材上に堆積される、例えば、単分散ポリスチレン粒子でできている。ポリスチレン粒子は次いで、酸素プラズマを用いて部分的にエッチングされる。酸素プラズマによって、材料の層が粒子から除かれる。処理が長いほどより多くのプラズマが除去される。テンプレート層は次いで、セラミックで部分的にコーティングされ、一方、拡散膜はナノ多孔性セラミックの第二層を添加することによって生産される。最後に、テンプレート材料が熱処理によって除かれ、そして空洞が作成される。この実施態様は、図3における断面で模式的に示される。二つのサブ層でできているセラミックフィルムは、金属基材(1)上にコーティングされる。下方の層は、密なセラミック(3)中に埋め込まれたマイクロポア(2)(ミクロン範囲にある直径を有する孔)でできている。上方の層は、ナノ多孔性セラミック(4)(ナノメーター範囲にある孔を有するセラミック)でできている。
【0025】
図4は、本発明の別の可能な実施態様の断面の模式図を示す。その実施態様において、ミクロ孔(2)は、ナノ多孔性セラミック(4)内に埋め込まれる。この第二の実施態様の平面図の写真が図5において示される。1マイクロメーターの直径を有するミクロ孔(5)は、トップのナノ多孔性層(6)を通して見ることができる。コントラストの違い(ミクロ孔の黒い形)は、導電性が悪いセラミックのローディング効果(loading effect)のせいである。断面の写真と同じコーティングが図6にいて示される。(コーティングを切開するために使用される)白金棒7の下に、コーティングの異なる層を区別することができる。基材(1)上に、排除された一時的粒子によって作成された空の孔(2)があり、ここで該孔は、ナノ粒子(5)及びナノ孔(6)でできている多孔性構造(4)によって囲まれている。基材の隣に位置しているより大きな孔、及びコーティングの自由表面に向かってより小さな孔を有するように制御されて多孔性が作り出される。この制御された分布によってコーティング中に異方性で多孔性の構造が作り出される。
【0026】
別の実施態様において、空洞は、最初に基板上にテンプレート層を堆積することによって作成される。この層は次いで、例えば、フォトリソグラフィー又は電子ビームなどの方法によって構造化される。この構造化は、テンプレート層の溶解挙動を局所的に修正するであろう。テンプレート層で被覆された基材はついで、該テンプレート層の幾らかの部分を除去するであろう溶媒内に浸漬される。その溶解度が修正された領域は、マスク構造化と似たように、その場に留まるであろう。
【0027】
更なる変形例において、孔、又は少なくともそれらの表面は、水系媒体中でゆっくりと放出することができるか、又は孔若しくは少なくともその表面が親水性にできている親油性溶液によって充填されるために疎水性にできているか、又は孔、若しくは少なくともそれらの表面は、親水性溶液によって充填されるために、親水性にできている。
【0028】
一般的なコーティング方法
以下に、そのような異方性コーティングを得るために使用される方法の幾つかの可能な変形例を述べる。これらの変形例に対する工程は、図1及び図2において示される。
【0029】
コーティング方法の第一実施態様は以下の工程を含む:
1)支持体又は表面を有する基材が供されること(図1、像の第一列);
2)一時的粒子構造又はテンプレートを形成するために、一時的粒子の一つの単層が、支持体又は基材上に堆積されること(図1、像の第二列);
3)一時的粒子のサイズが低減されること(図1、像の第三列);
4)コーティングが支持体又は基材上に堆積されること、ここでコーティングはナノ多孔性であり、異方性の孔サイズ分布の多孔性を有する構造を得るために、一時的粒子が排除されて孔を形成し、そしてコーティングは固定化工程を通して強化される(consolidated)(図1、像の第四列)。
【0030】
本方法の第二の可能な実施態様において、コーティングは二つの異なるコーティングで作られ、ここで第一の密なコーティングは前記一時的粒子を完全には被覆していない、及び第二のナノ多孔性コーティングによって、該第一コーティングは、該第二の多孔性コーティングの堆積(deposition)前に乾燥される。最後に、粒子は排除されて、異方性の孔サイズ分布を有する孔を形成し、そしてコーティングは固定化工程を通して強化される。この実施態様において、第一コーティングは、一時的粒子の回りに密な構造を形成する。
【0031】
第三の可能な実施態様において、コーティング方法は以下の工程を含む:
1)支持体又は表面を有する基材が供される(図2a);
2)一時的テンプレート層が支持体上に配列され、そして構造化される(図2b);
3)マスク層が構造化される。可能な実施態様において、この構造化は、例えば、電子ビーム又はレーザービームを用いて直接、層を照射することによってなされる(図2c)。この照射によって、マスク層の選択された領域の溶解性が変わるであろう。別の可能な実施態様において、ポリマー層(図2d)の幾つかの部分を保護するために、照射中に追加のマスクが使用される(図2e)。非修正テンプレート層は次いで除去され、その構造化が完了しそしてテンプレートが現れる(図2f)及び(図7);
4)コーティングは支持体又は基材上に堆積され、ここでコーティングはナノ多孔性であり(図2g)、一時的粒子は排除され、その結果、異方性の孔サイズ分布を持つ多孔性を有する構造を得るために孔が形成され、そしてコーティングが固定化工程を通して強化される(図2h)。
【0032】
本方法の第四の実施態様において、コーティングは二つの異なるコーティングで作られ、ここで第一の密なコーティングは前記一時的粒子を完全には被覆していない、及び第二のナノ多孔性コーティングによって、該第一コーティングは、該第二の多孔性コーティングの堆積前に乾燥される。最後に、構造化された粒子は排除されて、異方性の孔サイズ分布を有する孔を形成し、そしてコーティングは固定化工程を通して強化される。この実施態様において、第一コーティングは、一時的粒子の回りに密な構造を形成する。
【0033】
本記述における用語「排除する」は広い意味で使用される。それは、例えば、崩壊、溶解又は除去などの、粒子形態における重要な変化に関連する如何なる一般的に使用される用語も包含する。例えば、排他的ではないが、一時的粒子の排除は熱工程、化学工程、機械的工程、電気機械的工程又は照射工程を含み得る。熱工程、化学工程又は照射工程の場合、一時的粒子は完全に又は部分的にのみ破壊されて、例えば、粒子を中空にすることができる。機械的工程の場合、一時的な粒子を機械的に除去することができる。電気機械的工程(例えば、音波又は超音波での振動)の場合、(例えば、PLGAなどのポリマー粒子の使用によって)粒子を膨張又は崩壊することができる。さらに、排除工程及び強化工程は一つの単一工程であり得る。
【0034】
用語「一時的」は「方法中の限定された時間にのみ存在すること」として理解されなければならない。一時的粒子は、コーティングの三次元構造及び多孔性を作成するテンプレートとして見なさすことができる。
【0035】
用語「粒子の単層」は、粒子が、支持体の表面に対して相対的に同じレベルにあることを意味する。各単層に対して、どの粒子も他の粒子のトップに座することはない。
【0036】
一時的粒子の堆積又はテンプレート
本発明において、この工程は、好ましくは浸漬コーティング又はインクジェット印刷によって実行される。しかしながら、例えば、スピンコーティング又は溶媒蒸発などの如何なる他の方法も使用することができる。
【0037】
浸漬コーティングの場合、一時的粒子は溶液(例えば水)中にあり、そして基材は該溶液中に浸漬される。従来技術において知られている通り、基材上に存在する粒子の密度は、溶液中の粒子濃度、基材の引き上げ速度及び基材の表面処理にも依存するであろう。これらのパラメーターは全て、基材上の粒子の望ましい密度を達成するために当業者によって調節され得る。
【0038】
インクジェット印刷の場合、一時的粒子は、基材上に印刷される溶液中にある。一例として、溶液の溶媒は、当業技術において公知であるコーヒーリング効果を阻止するために他の溶媒と混合された水であってよい。他の溶媒の例はエチレングリコール又はホルムアミドである。基材上の粒子の濃度は、望ましい値を得るために当業者によって調節され得る印刷パラメーターと同様、溶液からのパラメーターに依存するであろう。
【0039】
粒子
一時的粒子の直径及び形状は任意に選択することができる。しかし、形及びサイズにおいて均一な粒子の方が好ましい。粒子の化学組成も自由であるが、ポリマー、澱粉、シリカ、金属又は細胞などの生体材料のグループにおいて好ましくは選択される。球形及び均一な直径を有するポリマー材料が好ましい:単分散ポリマービーズ。例えば、ポリスチレンビーズが有利に使用され得る。それらは多くのサイズにおいて容易に入手でき、そしてサイズが一定している。あるいは、生体適合性ポリマー(例えば、PLGA、つまりポリラクチドグリコリド酸タイプ)も使用することができる。
【0040】
支持体上に堆積されるとき、一時的粒子は互いに接触状態にあり得るか又は幾つかの空のスペースによって分離することができる。接触状態にあるとき、接触表面サイズは粒子の表面化学及び表面親和性を変えることによって修正することができる。それは湿潤性粒子を使用することによって増やすことができ、又はテフロンなどの湿潤性性粒子を使用するとき、点接触に減少することができる。
【0041】
親水性及び/又は疎水性の一時的粒子を使用すると、コーティングにおいて種々の構造を作成することが可能になる。一時的粒子の堆積の前に、基材は各々親水性又は疎水性の層で局所的に被覆される。このようにして、特定の領域が、一方で、他の領域上での付着を防ぎながら、類似の表面親和性を有する一時的粒子を固定するように適合される。ステントの場合、より変形されにくい領域のみをコーティングすることは有利であり得る;あるいは、増殖又は感染を防ぐために、薬物の放出を目標とする血管の内膜と接触状態にある領域のみをコーティングすることは有利であり得る。骨又は歯のインプラントの場合、骨の内部成長が好まれるべき、そしてそれが阻止されるべき領域を選択することは有利であり得る。
【0042】
粒子のエッチング
基材上に堆積後、粒子はエッチングされる。可能な実施態様において、使用される粒子は球形を有し、そしてポリスチレンでできている。例として、それらは酸素−アルゴンプラズマを用いてエッチングすることができる。エッチングの程度はプラズマに使われた時間に依存するであろう。
【0043】
テンプレート層の構造化
テンプレート層の構造化アプローチによって、ミクロサイズの多孔性の設計における多くの柔軟性が供される。事実、基材に平行な面における形は自由に選択することができる。可能な実施態様において、マイクロメーターサイズの孔は六角形を有し得て、そして孔の間の壁の厚みは、生じた多孔性を修正するように適合することができる(図8)。
【0044】
別の可能な実施態様において、マイクロメーターサイズの孔の形は、潜在的変形に抗するように適合することができる。例えば、壁は、変形方向を有する非常に特定の角度で配列することができ、その結果そのような変形の影響を最小化することができる(図9)。コーティング堆積
【0045】
コーティング堆積に対して異なる手順を考えることができる。それらは、使用されるコーティング前駆体並びにコーティングの望まれる性質に従って選択される。2、3の例を以下に示す:
【0046】
基材上へのコーティングの堆積の第一の手順は、コーティング前駆体として、例えば水などの溶媒中のナノ粒子又はナノ粉末の混合物を使用する。基材は前駆体混合物内に浸漬され、そして制御された速度で引き出される。コーティングの厚みは、混合物の粘度及び引っ張り速度と共に変わる。
【0047】
別の手順では、コーティング前駆体として金属アルコキシドのヒドロキシル化及び部分的縮合を通して得られたゾルが使用される。再び、前駆体は、浸漬又はスピンコーティングを用いて基材の上にコーティングすることができる。
【0048】
別の手順では、適合された溶媒内に前駆体を溶解することによって得られた溶液が使用される。再び、混合物は、浸漬又はスピンコーティングを用いて基材上にコーティングすることができる。
【0049】
或る実施態様において、使用される前駆体は親水性材料であってよく、従って親水性孔表面を生みだす。
【0050】
別の実施態様において、使用される前駆体は疎水性材料であってよく、従って疎水性孔表面を生みだす。
【0051】
全ての場合、コーティングを幾つかの工程又はサブ層において堆積することができる。各サブ層の堆積の間で、コーティング前駆体の溶媒を、部分的に又は完全に、例えば、熱処理によって除去することができる。このアプローチによってより厚い、亀裂のないコーティングの形成が可能になる。コーティング前駆体の組成も、各工程の間で改変することができる。これによって可変化学組成を有するコーティングの作製が可能になる。例えば、コーティングの化学組成は、コーティング/基材の界面での基材のそれと非常に類似したものであり得て、そしてその界面で体と非常に適合性があり得る。
【0052】
コーティングを生みだすためにナノ粉末又はゾル−ゲル・アプローチを使用すると、結晶性コーティングを得るために必要な温度が下がるという利点が供される。
【0053】
これは、熱処理されたとき、相転移を起こし得て、その結果として、その機械的性質又は形状記憶性の部分を損失し得る、金属基材に対して特に好ましい。
【0054】
本方法の第一の実施態様によると、一時的粒子を完全に被覆している1つの単一の第一コーティングの堆積のみがあり、ここで該単一コーティングはナノ多孔性構造を有する。従って、そのような多孔性構造によって、以下に示す通り、粒子の排除が可能になる。
【0055】
本方法の第二の実施態様によると、コーティングは事実上二つのコーティングを含む:堆積後に処理される(例えば、乾燥される)第一コーティング、ここで該第一コーティングは堆積された粒子を完全にコーティングしてはいない、そして次に、本法の第一の実施態様のように、多孔性構造を有する第二コーティング。
【0056】
別の可能な実施態様において、堆積後に処理され、そしてテンプレート粒子を完全にコーティングしてはいない第一コーティングは、密である。
【0057】
典型的には、上述の実施態様に記載のこれらのコーティングは、ナノ粉末を用いて、又は当業技術においてそれ自体公知なゾル−ゲル法によって実現される。勿論、多孔性構造を作成するための如何なる他の方法も、本発明において予想され得る。
【0058】
粒子の除去
一時的粒子の除去は、例えば、限定的ではないが、熱工程、化学工程、機械的工程、電気機械工程、光化学工程、又は照射工程などの異なる方法によって達成することができる。それは、コーティングの要求事項に依存して、方法の異なる段階、固定化工程の前及び/又は最中及び/又は後でも起こることができる。
【0059】
固定化
固定化工程に対して如何なる適切な方法も使うことができる。有利には、乾燥工程が使用される。
【0060】
コーティングの固定化工程は、粒子排除工程前に行うことができる、又は粒子排除工程と同時に、又は粒子排除工程の後でさえ行うことができる。
【0061】
セラミックに対しては、これは結晶相が形成される焼結であり得る。ポリマーに対しては、これは(可視光又はUV光によって)光化学的に、熱的に又は化学的に誘起される重合であり得る。金属又は或るセラミックに対して、これは、制御された(中性又は還元性)雰囲気下での熱処理であり得る。
【0062】
孔の充填
ある実施態様において、孔構造は、医療目的の活性物質の貯蔵及び拡散のために使用することができる。
【0063】
可能な実施態様において、コーティングは薬物、抗凝集物質、抗増殖物質、抗生物質、静菌性物質、又は成長因子で充填することができる。
【0064】
別の実施態様において、コーティングは細胞で充填することができる。
【0065】
基材は、例えば、浸漬コーティング又はインクジェットによってコーティング中に導入することができる。孔を充填するための如何なる他の方法も企図することができる。
【0066】
実施例
以下の例は、図1、5及び6に示されたものに類似した構造を有するコーティングの具現化を述べる。
【0067】
一つの実施態様において、316Lステンレス鋼などの好ましい基材が使用され、そしてコーティングされるであろう。基材の調製は、Vermaら(Biomed Mater Eng.2006,16,381-395)によって述べられた通り、電気化学的に研磨され得る。
【0068】
TiO2ナノ粒子(Techpowder社、Lausanne、スイス)の懸濁液は、コロイドの安定化に役立つように、PVA(ポリビニルアルコール)、接着剤及びアンモニアの追加によって調製される。ナノ粒子の仕様は、D10=38nm、D50=62nm、D90=82nm(CPS Disc Centrifuge(登録商標))である。
【0069】
浸漬コーター(PL 3201、Speedline TechnologiesTM社製)が準備され、そして90[mm/秒)]の引上げ速度に設定される。基材は最初に、直径が1マイクロメーターのポリスチレンマイクロビーズ(Duke Scientific社、Berkeley、米国)の水系懸濁液内に浸漬される。表面積当たりの堆積されるビーズの数は、懸濁液中のそれらの濃度及び引上げ速度と共に変わる。図1、5及び6において示されたコーティングを製造するために、我々は10質量パーセントのマイクロビーズを含有する溶液を使用し、そして0.3mm/秒の速度で試料を引き上げた。ビーズは次いで、酸素アルゴンプラズマを用いて7分間エッチングされる。エッチングは25パーセントのO2及び75パーセントのArのガス混合物でプラズマクリーナーFischone 1020を用いて行われる。
【0070】
エッチングされたマイクロビーズで被覆された基材は次いで、ビーズをTiO2層で被覆するために、セラミックのナノ粉末懸濁液中で浸漬コーティングされる。セラミック層は、プロセスパラメーター及び使用目的に応じて厚みを変えることができる。この例において、ビーズは完全に被覆されるであろう。TiO2懸濁液はビーズを被覆しているコンパクトな層を形成するであろう。最終層の厚みは、略1.5マイクロメーターである。
【0071】
最後に、10パーセントRH及び37℃に制御された雰囲気のチャンバー中で10分間の乾燥期間の後、コーティングされた基材は、オーブン中で二段階方法において焼結される。第一の焼却工程は、空気中で500℃、1時間、実行される。この工程ではポリマービーズが焼き尽き、そしてTiO2層中にレンズ状の形をした空洞が残るのが見られるであろう。焼結の第二段階は800℃、1.5時間、制御されたアルゴン雰囲気で、第一段階に直ぐ続く。この第二工程はセラミック層の強化に役立つであろう。
【0072】
コーティングの作製及び装填(load)のためのインクジェット法の使用
今日、利用可能な種々のタイプのインクジェット印刷技術がある。例として、我々は以後ドロップオンデマンド技術を述べる(しかし、この記述は連続インクジェット印刷に容易に拡大することができる)。ドロップオンデマンド技術において、物質のミクロの滴が、オペレーターの要求でノズルを通して表面に投射される(projected)。ノズル及び/又は表面は、全ての空間方向(例えば、x、y、z、又はステントなどの円筒システムに、より多く適合されるr、θ、z)に動かすことができる。この動きによって、表面上の滴の最終的局在化についての正確な制御が可能になる。
【0073】
インクジェット・アプローチの利点
インクジェット法は、上述の通りコーティング堆積のあらゆる工程に、並びにコーティングを活性物質で充填することに対して、適用することができる:
・テンプレートの堆積に対して
・セラミックコーティングの堆積に対して
・孔を活性物質で充填することに対して
【0074】
各工程に対して、それは方法の完全な空間制御を可能にする。インクジェット法の空間的解像度は数十分の一マイクロメーターのオーダーである。
【0075】
インクジェット法を使用したテンプレートの堆積
テンプレート粒子を有する領域とテンプレート粒子を有しない領域を画成することによって、リザーバを有するゾーンとそのようなリザーバを有しないゾーンの作成が可能になる(図10)。リザーバを有するゾーンは次いで、活性物質で装填され、一方、リザーバを有しないゾーンはそのような活性物質が存在し得ない。コーティングされたステントの場合、そして特別な実施態様において、空洞は、血管壁に接触している表面に、ステントの外側に向かってのみ作成されるであろう。この幾何形状によって、血流内への直接的な薬物の拡散が最小化されるであろう。
【0076】
このアプローチの別の利点は、セラミックコーティングの厚みを変え得る可能性である。セラミックコーティングの重要な側面は、変形に対するその比較的低い抵抗である。基材の形が修正されるとき、コーティングは新しい形に適合しなければならず、そしてこれによって層中に亀裂が作成され得る。これらの亀裂によって、幾つかの剥離が、そしてその結果、粒子の放出が生じ得る。変形に対する抵抗は、薄いコーティングの使用によって強く改善することができる。リザーバを有しない領域は、より薄いであろうし、その結果、変形に対してより抵抗性がある。特別な実施態様において、テンプレートビーズは、変形が低い領域においてのみ堆積することができる。高い変形を有する領域は、図11において示された通り、セラミックのみでコーティングすることができる。
【0077】
インクジェット法を使用したセラミックコーティングの堆積
ここで再び、インクジェット法は高い柔軟性を提供する。種々の組成及び多孔性を有するセラミックを、基板の異なる部分上にコーティングすることができる。例えば、コーティングの外側の多孔性(孔の直径及び長さ、ねじれ)が、装填された活性物質の溶出プロファイルを動かすであろう重要な要素である。コーティングの異なる領域において種々の多孔性を有することによって、異なる放出プロファイルの作成が可能になる。従って、インクジェットによって、ステント上の異なる場所における異なるナノ粒子の懸濁液の堆積が可能になり、それが異なる外側の多孔性及び物質の放出プロファイルに繋がる。
インクジェット法を使用したコーティングの充填
【0078】
一つの実施態様において、コーティングは以下の手順に従って活性物質で充填される:
・コーティングされたデバイスが、閉じられたチャンバー中に置かれそして真空に引かれる。
・活性物質を含有する溶液が、表面上に堆積される。
・次いで、真空が破られる。孔における外部圧力プラス真空の組合せによって溶液が孔内に駆動されるであろう。
・溶媒が蒸発される。
【0079】
孔を充填するためにインクジェット法を使用することによって、与えられた物質で或る領域を具体的に装填することが可能になる。異なる分子組成が、単一コーティング上に装填することができ(図12)、そしてそれらの空間的局在化が整えられる(例えば、或る種の物質が、コーティングされたデバイスの先端で大部分局在化することができ、一方、別の物質が主として中央に位置決めされる)。
【0080】
物体
先に論じた方法によって、コーティング及び特定のかつ独創的な特長を有するそのようなコーティングを持っている物体の生産が可能になる。
【0081】
適用
上述の異なる実施態様及び変形例から容易に理解することができるように、これらの物体の主な適用は、医療デバイスの分野にあり、そしてより具体的には、限定するものではないが、医療インプラントの分野である。特に興味があるのは、ステント、整形外科及び歯のインプラントである。多孔性は、その内容物を制御された方法で時間をかけて放出するであろう薬物リザーバとして使用することができる、又は組織の内部成長ひいてはインプラントと生きた組織の間の機械的インターロックの増大を助けるように使用することができる。
【0082】
ステントに対して、コーティングは一つ又は数個の薬物で装填することができる。それは、非限定的例として与えられる以下の薬物の組合せであり得る:抗増殖物質、抗凝集物質、抗感染物質、静菌性物質。
【0083】
物体は、上で論じられたステントに対するものと同じように孔が適合され得る、整形外科又は歯のインプラントでもあり得る。そのような場合、得られる多孔性は、骨成長因子などの成長因子を貯蔵するおに、又は生体適合性を増すのに、又は骨若しくは軟骨性組織が成長することができそして確実にインプラントに付着することができる領域を作成するのに、興味深い。これは燐酸カルシウムなどの吸収性の生理活性セラミックで空洞を充填することによっても達成することができる。
【0084】
従って、支持体は、金属、セラミック、又はポリマーで作ることができる。それは生分解性材料でも作ることができる。
【0085】
本出願において、コーティングは非多孔性領域を含み得る。そのような領域は、10マイクロメーターより大きな最低寸法、及び10ミリメーターより小さな最大寸法を有し得る。変形例において、これらの領域は100マイクロメーターより大きな最低寸法を有する。別の変形例において、これらの領域は1ミリメーターより小さな最大寸法を有する。
【0086】
孔のサイズも、ゆっくりと放出することができる活性物質を含有するビーズ、粒子又はポリマーを拡散するように適合され得る。
【0087】
あるいは、ビーズ又は粒子は放射線を発することができる。有利には、そのような場合、ビーズ又は粒子は空洞内に留まるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】二つの可能な実施態様に対する異なる方法工程を示す。
【図2】構造化されたテンプレート層を有する異方性コーティングを作成するための二つの可能なアプローチを示す。
【図3】コーティングの可能な実施態様である。
【図4】コーティングの別の可能な実施態様である。
【図5】本発明に記載の方法を受けた物体の第一の写真である。
【図6】本発明に記載の方法を受けた物体の第二の写真を示す。
【図7】マスク層を構造化することによって得られたテンプレートを示す。
【図8】マスク層を構造化することによって得られたテンプレートの可能な設計を示す。
【図9】マスク層を構造化することによって得られたテンプレートの可能な設計を示す。
【図10】リザーバを有する領域、及び有しない領域の模式図を示す。
【図11】ステント支柱上の薄いコーティング及び厚いコーティングの可能な分布を示す。
【図12】充填手順の模式図を示す。
【0089】
表1は、本発明に記載の多孔性表面を製造するための異なる可能性を要約する。
【0090】
図及び表
本発明は以下の図及び表からより完全に理解されるであろう。
【0091】
【表1】
【0092】
図1において、コーティング方法の異なる工程が示される。第一列は、本法の前の基材を示す(左側に断面、中央に平面図)。第一工程(第二列)は、一時的粒子又はテンプレートの堆積である(左側に堆積後の試料の断面、中央に平面図、及び右側に同じ試料の像)。本記述及び表1において示された通り、粒子は幾つかの材料で作ることができ、そして分散層中に又は密な層中に堆積することができる。ここで我々は単分散球状の一時的粒子の最密充填された層を有する。第三列は粒子の部分的エッチング後の同じ試料を示す。ビーズは、六角形パターンに続いて同じ方法で配列されるが、もはや互いに接触しない。第四列は一時的粒子の排除後の、そして固定化工程後の最終コーティングを示す。
【0093】
図2は、コーティングの異方性の多孔性を生みだすべく、テンプレート層を堆積するための、それを構造化するための、そしてそれを使用するための二つの可能なプロセスフローを示す。基材a)上に、テンプレート層が堆積されるb)。第一の可能なアプローチにおいて、層の幾つかの領域が、例えば、イオンビーム又はレーザービームによって照射されて、その溶解度を変えられるc)。別の可能なアプローチにおいて、マスクが層上に堆積されd)、照射中に幾つかの領域を保護するe)。ここで再び、テンプレート層の溶解度が局所的に修正される。テンプレート層は次いで、部分的に溶解され、その構造化を完成させ、このようにしてテンプレートを出現させるf)。セラミックコーティングは次いで、最終的には排除されるテンプレートに亘って堆積される。
【0094】
図3は、本発明の可能な実施態様の断面の模式図である。二つのサブ層で作られたセラミックフィルムは金属基材(1)上にコーティングされる。下方の層は、密なセラミック(3)中に埋め込まれたミクロ孔(2)(ミクロン範囲の直径を有する孔)でできている。上方の層は、ナノ多孔性セラミック(4)(ナノメーターの範囲の孔を有するセラミック)でできている。
【0095】
図4は、図2の実施態様において示された密なセラミック層(3)を有しない、ナノ多孔性セラミック(4)内にミクロ孔(2)が埋め込まれた、本発明の別の実施態様である。
【0096】
図5は、本発明の方法の第一実施態様(図1)に従って作られた構造の平面図の写真である。ナノ多孔性層(6)によってコーティングされた、1マイクロメーターの直径を有する数個のミクロ孔(5)(黒い円形)が見られる。
【0097】
図6はコーティングの断面を示し、コーティングの異なる層を示す。基材(1)の上に、排除された、低減されたサイズの一時的粒子によって残された空のミクロ孔(2)が見られ、ここで該孔は、ナノ粒子及びナノ孔でできているナノ多孔性構造(4)によって囲まれる。
【0098】
図7は、構造化されたテンプレート層の平面図の写真を示し、ここでテンプレートは、2、3ナノメーターと、数マイクロメーターの間の直径を有する円筒でできている。
【0099】
図8は、テンプレート層中に作成されるであろう、可能な構造の模式図である:二つの六角形構造が示される。第一の構造(左)は60パーセントの多孔性を生じるであろうし、一方、第二の構造(右)の多孔性は約90パーセントである。
【0100】
図9は、テンプレート層において作成されるであろう、可能な構造の模式図である。機械的変形が強いステントの領域において、これらの変形をより効率的に吸収するようにテンプレートを設計することができる。
【0101】
図10はコーティングの断面を示す模式図である。左手側上ではコーティングは如何なるリザーバも含有せず、一方、右手側上ではそれがマイクロメーターサイズのリザーバを含有する。
【0102】
図11はステント支柱の模式図である。この支柱上に、強い変形を受けるであろう部分が薄い層でコーティングされ、一方、より厚いコーティングが他の場所で堆積される。
【0103】
図12は充填手順の模式図である。インクジェット法を使用して第一分子がコーティングの第一領域中に装填され、一方、他の領域が第二分子で装填され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミクロサイズ又はナノサイズの領域における異方性の孔サイズ分布を有し、そして10ナノメーターと10ミリメーターの間の厚みを持つ表面を有する多孔性コーティングであって、該コーティングが以下の工程を含んでなる方法:
−表面を有する支持体を供すること;
−一時的テンプレート層を該表面上に堆積させること;
−該一時的テンプレート層を改変すること;
−該一時的粒子上に少なくともコーティングを堆積させること、ここで該コーティングは多孔性である;
−異方性の孔サイズ分布の多孔性を有する構造を得るために、孔を形成する上記一時的粒子を排除すること、ここで上記方法がコーティング固定化工程を更に含む;
によって得られる、多孔性コーティング。
【請求項2】
請求項1に記載のコーティングであって、その方法が以下の工程:
−表面を有する支持体を供すること;
−一時的粒子の少なくとも一つの第一単層を該表面上に堆積させること;
−一時的粒子をそのサイズを低減することによって改変すること;
−該一時的粒子上に少なくともコーティングを堆積させること、ここで該コーティングは多孔性である;
−異方性の孔サイズ分布の多孔性を有する構造を得るために、孔を形成する上記一時的粒子を排除すること、ここで上記方法がコーティングを固定化する工程を更に含む;
を含む、コーティング。
【請求項3】
単層として堆積される一時的粒子が互いに接触状態にある、請求項2に記載のコーティング。
【請求項4】
単層として堆積される一時的粒子が密閉パック状態にある、請求項2または3に記載のコーティング。
【請求項5】
請求項1に記載のコーティングであって、方法が以下の工程:
−表面を有する支持体を供すること;
−テンプレート層として機能するであろう少なくともコーティングを該表面上に堆積させること;
−該テンプレート層を構造化すること;
−上記の構造化されたテンプレート層上に少なくともコーティングを堆積させること、ここで該コーティングは多孔性である;
−異方性の孔サイズ分布の多孔性を有する構造を得るために、孔を形成する上記の構造化されたテンプレート層を排除すること、ここで上記方法がコーティングを固定化する工程を更に含む;
を含む、コーティング。
【請求項6】
コーティング中の孔サイズ分布の中央値が、支持体の表面からコーティングの自由表面によって異なる、請求項1〜5の何れか1項に記載のコーティング。
【請求項7】
コーティング中の孔サイズ分布の中央値が、物体の表面からコーティングの自由表面へと減少する、請求項6に記載のコーティング。
【請求項8】
コーティングの自由表面での孔サイズ分布の平均値が1μmより小さい、請求項1〜7の何れか1項に記載のコーティング。
【請求項9】
コーティングが、明確な多孔性サイズ分布を有する明確なサブ層でできている、請求項1〜8の何れか1項に記載のコーティング。
【請求項10】
サブ層の一つが1μmより小さい平均孔サイズ分布を有する、請求項9に記載のコーティング。
【請求項11】
最小の平均孔サイズ分布を有するサブ層がコーティングの自由表面近くに位置している、請求項10に記載のコーティング。
【請求項12】
孔サイズが、例えば、薬物、抗凝集物質、抗増殖物質、抗生物質、静菌性物質、又は成長因子などの医療目的のための活性物質を貯蔵及び拡散するように適合される、請求項1〜11の何れか1項に記載のコーティング。
【請求項13】
孔が細胞を受け取るように適合される、請求項1〜12の何れか1項に記載のコーティング。
【請求項14】
コーティングが、酸化物(例えば、酸化チタン、酸化タンタル、酸化シリコン、酸化イリジウム又は酸化ジルコニウム)などのセラミック、ホスファート、カルボナート、窒化物、炭窒化物、又は金属又はポリマー又はヒドロゲルでできている、請求項1〜13の何れか1項に記載のコーティング。
【請求項15】
請求項1〜14の何れか1項に記載の、コーティングを有する物体。
【請求項16】
請求項15に記載の物体であって、この物体が医療デバイス、又はステント又は整形外科用のインプラント又は脊柱インプラントなどの医療用インプラントである、物体。
【請求項17】
支持体が金属、セラミック、ポリマー又はそれらの如何なる組合せでもできている、物体請求項15に記載の物体。
【請求項18】
コーティングが非多孔性領域を含む、請求項14〜17の何れか1項に記載の物体。
【請求項19】
これらの領域が、10μmより大きな最小寸法、及び10ミリメーターより小さな最大寸法を有する、請求項18に記載の物体。
【請求項20】
物体の支持体上に、ミクロサイズ又はナノサイズの領域における孔サイズ分布を有する異方性の多孔性コーティングの製造方法であって、以下の工程:
−表面を有する支持体を供すること;
−一時的粒子の少なくとも一つの第一単層を該表面上に堆積させること;
−一時的粒子をそのサイズを低減することによって改変すること;
−該一時的粒子上に少なくともコーティングを堆積させること、ここで該コーティングが多孔性である;
−異方性の孔サイズ分布の多孔性を有する構造を得るために、孔を形成する上記一時的粒子を排除すること、ここで上記方法がコーティングを固定化する工程を更に含む;
によって特徴付けられる、製造方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、前記コーティングが、前記一時的粒子を完全にはコーティングしていない第一層によって、及び第二多孔性層によって作られ、ここで該第一層が、該第二多孔性層の堆積前に乾燥される、方法。
【請求項22】
前記堆積された一時的粒子が少なくとも二つの異なる直径を有する、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記一時的粒子が互いに接触状態にあるように、支持体上に堆積される、請求項20〜22の何れか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記一時的粒子の材料が、ポリマー(例えば、ポリスチレンビーズ)、澱粉、セラミック、シリカ、金属又は生物学的材料のグループにおいて選択される、請求項20〜23の何れか1項に記載の方法。
【請求項25】
請求項20〜24の何れか1項に記載の方法であって、基材上に各々疎水性又は親水性の領域を生みだす、各々疎水性又は親水性の層によって、最初に基材が部分的に又は完全にコーティングされ、ここで、専ら基材の各々疎水性又は親水性の領域上に一時的粒子の単層を構造化するように、各々疎水性又は親水性の粒子が使用される、方法。
【請求項26】
堆積された一時的粒子が、そのサイズを低減するために、プラズマ処理又は化学的処理又は放射、又は部分的熱分解、又は機械的腐食を用いてエッチングされる、請求項20〜25の何れか1項に記載の方法。
【請求項27】
物体の支持体上にミクロサイズ又はナノサイズの領域における孔サイズ分布を有する異方性の多孔性コーティングの製造方法であって、以下の工程:
−表面を有する支持体を供すること;
−テンプレート層として機能するであろう少なくともコーティングを該表面上に堆積させること;
−該テンプレート層を構造化すること;
−該構造化されたテンプレート層上に少なくともコーティングを堆積させること、ここで該コーティングが多孔性である;
−異方性の孔サイズ分布の多孔性を有する構造を得るために、孔を形成する上記構造化されたテンプレート層を排除すること、ここで上記方法がコーティングを固定化する工程を更に含む;
によって特徴付けられる、製造方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、前記コーティングが、前記構造化されたテンプレート層を完全にはコーティングしていない第一層によって、及び第二多孔性層によって作られ、ここで該第一層が、該第二多孔性層の堆積前に乾燥される、方法。
【請求項29】
前記構造化されたテンプレート層が、少なくとも二つの異なるサイズ又は少なくとも二つの異なる形を有する構造でできている、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
前記テンプレート層が、例えば、電子ビーム又はレーザービームなどのビームを用いて、特定の領域を照射することによって構造化される、請求項27〜29の何れか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記テンプレート層が、或る領域をマスクで保護した後、それを照射することによって構造化される、請求項27〜30の何れか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記構造化されたテンプレート層が、ポリマー(例えば、ポリスチレンビーズ)、澱粉、セラミック、シリカ、金属又は生物学的材料のグループにおいて選択される、請求項27〜31の何れか1項に記載の方法。
【請求項33】
請求項27〜32の何れか1項に記載の方法であって、基材上に各々疎水性又は親水性の領域を生みだす、各々疎水性又は親水性の層によって、最初に基材が部分的に又は完全にコーティングされ、そしてここで、専ら基材の各々疎水性又は親水性の領域上に一時的テンプレート材料の層を構造化するために、各々疎水性又は親水性の材料が使用される、方法。
【請求項34】
該構造化されたテンプレート層が、熱工程、化学工程、電気化学工程、光化学工程、機械工程又は照射工程によってコーティングから排除される、請求項27〜33の何れか1項に記載の方法。
【請求項35】
該固定化工程が乾燥工程を含む、請求項20〜34の何れか1項に記載の方法。
【請求項36】
固定化工程が、加熱工程、UV工程、化学工程、光学工程、又は重縮合工程である、請求項20〜35の何れか1項に記載の方法。
【請求項37】
固定化工程の後に陽極酸化工程が続く、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
請求項20〜37の何れか1項に記載の方法であって、以下の工程のいずれか:
―一時的粒子の堆積;
―コーティングの堆積;
―孔の充填;
が、インクジェット法を用いて行われる、方法。
【請求項39】
請求項20〜38の何れか1項に記載の方法であって、一時的粒子が基材の特定の領域上に堆積され、ここでこれらの領域が事前に自由に選択される、方法。
【請求項40】
請求項20〜39の何れか1項に記載の方法であって、コーティングが基材の特定の領域上に堆積され、ここでこれらの領域が事前に自由に選択される、方法。
【請求項41】
請求項20〜40の何れか1項に記載の方法であって、活性物質での孔の充填が基材の特定の領域においてなされ、ここでこれらの領域が事前に自由に選択される、方法。
【請求項1】
ミクロサイズ又はナノサイズの領域における異方性の孔サイズ分布を有し、そして10ナノメーターと10ミリメーターの間の厚みを持つ表面を有する多孔性コーティングであって、該コーティングが以下の工程を含んでなる方法:
−表面を有する支持体を供すること;
−一時的テンプレート層を該表面上に堆積させること;
−該一時的テンプレート層を改変すること;
−該一時的粒子上に少なくともコーティングを堆積させること、ここで該コーティングは多孔性である;
−異方性の孔サイズ分布の多孔性を有する構造を得るために、孔を形成する上記一時的粒子を排除すること、ここで上記方法がコーティング固定化工程を更に含む;
によって得られる、多孔性コーティング。
【請求項2】
請求項1に記載のコーティングであって、その方法が以下の工程:
−表面を有する支持体を供すること;
−一時的粒子の少なくとも一つの第一単層を該表面上に堆積させること;
−一時的粒子をそのサイズを低減することによって改変すること;
−該一時的粒子上に少なくともコーティングを堆積させること、ここで該コーティングは多孔性である;
−異方性の孔サイズ分布の多孔性を有する構造を得るために、孔を形成する上記一時的粒子を排除すること、ここで上記方法がコーティングを固定化する工程を更に含む;
を含む、コーティング。
【請求項3】
単層として堆積される一時的粒子が互いに接触状態にある、請求項2に記載のコーティング。
【請求項4】
単層として堆積される一時的粒子が密閉パック状態にある、請求項2または3に記載のコーティング。
【請求項5】
請求項1に記載のコーティングであって、方法が以下の工程:
−表面を有する支持体を供すること;
−テンプレート層として機能するであろう少なくともコーティングを該表面上に堆積させること;
−該テンプレート層を構造化すること;
−上記の構造化されたテンプレート層上に少なくともコーティングを堆積させること、ここで該コーティングは多孔性である;
−異方性の孔サイズ分布の多孔性を有する構造を得るために、孔を形成する上記の構造化されたテンプレート層を排除すること、ここで上記方法がコーティングを固定化する工程を更に含む;
を含む、コーティング。
【請求項6】
コーティング中の孔サイズ分布の中央値が、支持体の表面からコーティングの自由表面によって異なる、請求項1〜5の何れか1項に記載のコーティング。
【請求項7】
コーティング中の孔サイズ分布の中央値が、物体の表面からコーティングの自由表面へと減少する、請求項6に記載のコーティング。
【請求項8】
コーティングの自由表面での孔サイズ分布の平均値が1μmより小さい、請求項1〜7の何れか1項に記載のコーティング。
【請求項9】
コーティングが、明確な多孔性サイズ分布を有する明確なサブ層でできている、請求項1〜8の何れか1項に記載のコーティング。
【請求項10】
サブ層の一つが1μmより小さい平均孔サイズ分布を有する、請求項9に記載のコーティング。
【請求項11】
最小の平均孔サイズ分布を有するサブ層がコーティングの自由表面近くに位置している、請求項10に記載のコーティング。
【請求項12】
孔サイズが、例えば、薬物、抗凝集物質、抗増殖物質、抗生物質、静菌性物質、又は成長因子などの医療目的のための活性物質を貯蔵及び拡散するように適合される、請求項1〜11の何れか1項に記載のコーティング。
【請求項13】
孔が細胞を受け取るように適合される、請求項1〜12の何れか1項に記載のコーティング。
【請求項14】
コーティングが、酸化物(例えば、酸化チタン、酸化タンタル、酸化シリコン、酸化イリジウム又は酸化ジルコニウム)などのセラミック、ホスファート、カルボナート、窒化物、炭窒化物、又は金属又はポリマー又はヒドロゲルでできている、請求項1〜13の何れか1項に記載のコーティング。
【請求項15】
請求項1〜14の何れか1項に記載の、コーティングを有する物体。
【請求項16】
請求項15に記載の物体であって、この物体が医療デバイス、又はステント又は整形外科用のインプラント又は脊柱インプラントなどの医療用インプラントである、物体。
【請求項17】
支持体が金属、セラミック、ポリマー又はそれらの如何なる組合せでもできている、物体請求項15に記載の物体。
【請求項18】
コーティングが非多孔性領域を含む、請求項14〜17の何れか1項に記載の物体。
【請求項19】
これらの領域が、10μmより大きな最小寸法、及び10ミリメーターより小さな最大寸法を有する、請求項18に記載の物体。
【請求項20】
物体の支持体上に、ミクロサイズ又はナノサイズの領域における孔サイズ分布を有する異方性の多孔性コーティングの製造方法であって、以下の工程:
−表面を有する支持体を供すること;
−一時的粒子の少なくとも一つの第一単層を該表面上に堆積させること;
−一時的粒子をそのサイズを低減することによって改変すること;
−該一時的粒子上に少なくともコーティングを堆積させること、ここで該コーティングが多孔性である;
−異方性の孔サイズ分布の多孔性を有する構造を得るために、孔を形成する上記一時的粒子を排除すること、ここで上記方法がコーティングを固定化する工程を更に含む;
によって特徴付けられる、製造方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、前記コーティングが、前記一時的粒子を完全にはコーティングしていない第一層によって、及び第二多孔性層によって作られ、ここで該第一層が、該第二多孔性層の堆積前に乾燥される、方法。
【請求項22】
前記堆積された一時的粒子が少なくとも二つの異なる直径を有する、請求項20または21に記載の方法。
【請求項23】
前記一時的粒子が互いに接触状態にあるように、支持体上に堆積される、請求項20〜22の何れか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記一時的粒子の材料が、ポリマー(例えば、ポリスチレンビーズ)、澱粉、セラミック、シリカ、金属又は生物学的材料のグループにおいて選択される、請求項20〜23の何れか1項に記載の方法。
【請求項25】
請求項20〜24の何れか1項に記載の方法であって、基材上に各々疎水性又は親水性の領域を生みだす、各々疎水性又は親水性の層によって、最初に基材が部分的に又は完全にコーティングされ、ここで、専ら基材の各々疎水性又は親水性の領域上に一時的粒子の単層を構造化するように、各々疎水性又は親水性の粒子が使用される、方法。
【請求項26】
堆積された一時的粒子が、そのサイズを低減するために、プラズマ処理又は化学的処理又は放射、又は部分的熱分解、又は機械的腐食を用いてエッチングされる、請求項20〜25の何れか1項に記載の方法。
【請求項27】
物体の支持体上にミクロサイズ又はナノサイズの領域における孔サイズ分布を有する異方性の多孔性コーティングの製造方法であって、以下の工程:
−表面を有する支持体を供すること;
−テンプレート層として機能するであろう少なくともコーティングを該表面上に堆積させること;
−該テンプレート層を構造化すること;
−該構造化されたテンプレート層上に少なくともコーティングを堆積させること、ここで該コーティングが多孔性である;
−異方性の孔サイズ分布の多孔性を有する構造を得るために、孔を形成する上記構造化されたテンプレート層を排除すること、ここで上記方法がコーティングを固定化する工程を更に含む;
によって特徴付けられる、製造方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法であって、前記コーティングが、前記構造化されたテンプレート層を完全にはコーティングしていない第一層によって、及び第二多孔性層によって作られ、ここで該第一層が、該第二多孔性層の堆積前に乾燥される、方法。
【請求項29】
前記構造化されたテンプレート層が、少なくとも二つの異なるサイズ又は少なくとも二つの異なる形を有する構造でできている、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
前記テンプレート層が、例えば、電子ビーム又はレーザービームなどのビームを用いて、特定の領域を照射することによって構造化される、請求項27〜29の何れか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記テンプレート層が、或る領域をマスクで保護した後、それを照射することによって構造化される、請求項27〜30の何れか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記構造化されたテンプレート層が、ポリマー(例えば、ポリスチレンビーズ)、澱粉、セラミック、シリカ、金属又は生物学的材料のグループにおいて選択される、請求項27〜31の何れか1項に記載の方法。
【請求項33】
請求項27〜32の何れか1項に記載の方法であって、基材上に各々疎水性又は親水性の領域を生みだす、各々疎水性又は親水性の層によって、最初に基材が部分的に又は完全にコーティングされ、そしてここで、専ら基材の各々疎水性又は親水性の領域上に一時的テンプレート材料の層を構造化するために、各々疎水性又は親水性の材料が使用される、方法。
【請求項34】
該構造化されたテンプレート層が、熱工程、化学工程、電気化学工程、光化学工程、機械工程又は照射工程によってコーティングから排除される、請求項27〜33の何れか1項に記載の方法。
【請求項35】
該固定化工程が乾燥工程を含む、請求項20〜34の何れか1項に記載の方法。
【請求項36】
固定化工程が、加熱工程、UV工程、化学工程、光学工程、又は重縮合工程である、請求項20〜35の何れか1項に記載の方法。
【請求項37】
固定化工程の後に陽極酸化工程が続く、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
請求項20〜37の何れか1項に記載の方法であって、以下の工程のいずれか:
―一時的粒子の堆積;
―コーティングの堆積;
―孔の充填;
が、インクジェット法を用いて行われる、方法。
【請求項39】
請求項20〜38の何れか1項に記載の方法であって、一時的粒子が基材の特定の領域上に堆積され、ここでこれらの領域が事前に自由に選択される、方法。
【請求項40】
請求項20〜39の何れか1項に記載の方法であって、コーティングが基材の特定の領域上に堆積され、ここでこれらの領域が事前に自由に選択される、方法。
【請求項41】
請求項20〜40の何れか1項に記載の方法であって、活性物質での孔の充填が基材の特定の領域においてなされ、ここでこれらの領域が事前に自由に選択される、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2012−527931(P2012−527931A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512462(P2012−512462)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【国際出願番号】PCT/IB2009/052206
【国際公開番号】WO2010/136848
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(511280951)デバイオテック・ソシエテ・アノニム (7)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【国際出願番号】PCT/IB2009/052206
【国際公開番号】WO2010/136848
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(511280951)デバイオテック・ソシエテ・アノニム (7)
【Fターム(参考)】
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