説明

異方性シリカ凝集体の製造方法

本発明は、シリカの異方性凝集体を製造するにあたり、a)少なくとも1種の重合体を未凝集の及び(又は)水性媒体中で高い分散を示すシリカの粒子と0.02〜2mg/m2の比R(シリカ粒子の表面積に対する重合体の重量)で接触させ、その際にシリカ粒子の表面静電荷の値が塩を添加してない水性相で7以上のpHで測定したシリカ粒子の表面電荷の値以上であるようにし、b)工程a)で得られた凝集体を熱処理か又は無機化合物の沈澱のいずれかにより団結させる工程を含むシリカの異方性凝集体の製造方法に関する。また、本発明は、シリカの基本粒子の鎖からなるシリカの凝集体であって、その粒子の数が5〜15個であり、基本粒子の少なくとも80%が2個以下の粒子と接触しており且つ凝集体のうちの2点間の測定できる最大距離が基本粒子の平均径の5倍以内であるシリカの凝集体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカの異方性凝集体(aggregate)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の製造物品又は工業製品は、その製造中に種々の形態の、特に異方性凝集体の形のシリカ粒子と混合される。これらのシリカ粒子は、種々の分野において補強充填剤として、粘度付与若しくはテキスチャー付与剤として又は触媒支持体として有益である。
しかし、シリカの異方性凝集体の合成は、固体の核形成又は成長の間に優先的配向がないことを暗示するシリカの非晶質性のために問題があり、困難でもある。
【0003】
更に、シリカの異方性凝集体の製造は、凝集現象、即ち、シリカ粒子の間に存在する相互作用の非常に厳格な制御を伴うが、これは非常に困難であって、一般に全体が等方性である凝集体の形態をもたらす。凝集現象は、塩の存在か、又は粒子の濃縮か、又はシリカの表面と反応してその表面を変性できる実体の存在か、又はシリカの表面電荷及びシリカの表面反応性を変性させる(オキソレーション触媒作用)酸性条件のいずれかによって本質的に制御される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生産者の要求を満たすために、シリカ粒子の凝集を制御するのを可能ならしめるシリカの異方性凝集体の製造方法を提供することが必要になってきた。従って、本発明が解決しようとする課題は、異方性凝集体の製造方法であって、その実行条件がシリカ粒子の凝集を制御するのを可能にさせる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的により、本発明は、シリカの異方性凝集体を製造するにあたり、
a)少なくとも1種の重合体を未凝集の及び(又は)水性媒体中で高い分散を示すシリカ粒子と0.02〜2mg/m2の比R(シリカ粒子の表面積に対する重合体の重量)で接触させ、その際にシリカ粒子の表面静電荷の値が塩を添加してない水性相中で7以上のpHで測定したシリカ粒子の表面電荷の値以上であるようにし、
b)工程a)で得られた凝集体を熱処理か又は無機化合物の沈澱のいずれかにより固化させる
工程を含むシリカの異方性凝集体の製造方法を提供する。
【0006】
本発明の他の主題は、シリカの基本粒子の連鎖からなるシリカの凝集体であって、その粒子の数が5〜15個であり、基本粒子の少なくとも80%が2個以下の粒子と接触しており且つ凝集体の2点間の測定できる最大距離が基本粒子の平均径の5倍以内であるシリカ凝集体である。
【0007】
本発明に従う方法の利点は、該方法を実施するのに非常に単純な条件下で、少なくとも1種の重合体を反応媒体に単純に添加することによってシリカ粒子の凝集の制御を可能ならしめることである。
【0008】
更に、固化(consolidation)工程b)は、塩分を含んだ条件下で、即ち、粒子の接合部で沈澱する無機陽イオンの塩の単純な添加により実施することができる。
【0009】
有利には、本法は、異方性凝集体のゾルを又はこのゾルの単純な乾燥によって粉末を得るのを可能にさせる。
【0010】
本発明に従う方法の更なる利点は、基本粒子の最終的な径、凝集体の形態及び凝集体の径の非常に細かい制御である。従って、これは、硬くて不可逆的であり、もはや破壊せず且つ製造するのが容易である異方性シリカ凝集体を製造するのを可能にさせる。これらの異方性凝集体は、その新規な形態のために、補強性、粘度付与若しくはテキスチャー付与剤としての特性又は触媒支持体としての特性を有する。
【0011】
本発明のその他の利点及び特徴は、純粋に例示としてのみ示す以下の説明及び実施例を読めば一層明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の主題は、先ず、シリカの異方性凝集体を製造するにあたり、
a)少なくとも1種の重合体を未凝縮の及び(又は)水性媒体中で高い分散を示すシリカ粒子と0.02〜2mg/m2の比R(シリカ粒子の表面積に対する重合体の重量)で接触させ、その際にシリカ粒子の表面静電荷の値が塩を添加してない水性相中で7以上のpHで測定したシリカ粒子の表面電荷の値以上であるようにし、
b)工程a)で得られた凝集体を熱処理か又は無機化合物の沈澱のいずれかにより固化させる
工程を含むシリカの異方性凝集体の製造方法である。
【0013】
用語“異方性凝集体”とは、本発明の意味においては、最少限5個の基本粒子を含み、該基本粒子の少なくとも50%(数による%)が2個の隣接を有する凝集体を意味するものと理解されたい。
【0014】
用語“基本粒子”とは、本発明の意味においては、凝集体の基本成分(一次粒子としても知られる。)を意味するものと理解されたい。
【0015】
好ましくは、本発明に従う方法の工程a)で使用されるシリカ粒子は、高分散性であり且つ凝集していない。このような粒子を得るために最も好ましい条件は脱塩された媒体及び高いpHである。
好ましくは、本法が水性媒体中で実施される場合には、7以上、更に好ましくは8以上のpH条件が選択される。
【0016】
有利には、使用されるシリカ粒子は、シリカゾルをもたらすことができる任意の方法によって得ることができる。中でも、特に、樹脂を用いる方法、限外ろ過又は電気透析が挙げられるが、有機溶媒中での珪素アルコキシドの重合による方法(ステーベル型のシリカ)も挙げられる。
【0017】
好ましくは、シリカゾルであって、シリカ粒子の径が3〜50nm、更に好ましくは5〜20nmであるものが使用される。この径は、透過型電子顕微鏡によって測定される。透過型電子顕微鏡による観察は、Jeol 1200装置において実施した。コロジオン膜と親水性化炭素でカバーした直径3mmの円形銅格子上に観察すべき試料の1滴を付着させる。格子上に液体の薄い膜だけを残すように残余をろ紙に吸収させる。続いて、格子を周囲温度で乾燥させる。
【0018】
好ましくは、シリカゾルであって、シリカ粒子が、乾燥ゾルについて測定して、50〜880m2/g、好ましくは130〜530m2/gのBET比表面積を示すものが使用される。BET比表面積は、J.of American Chemical Society、vol.60、p.309(1938年2月)に記載され且つ国際標準ISO 5794/1(別冊D)に相当するブルナウエル−エメット−テラーの方法に従って決定される。
例えば、Ludox 12nm及び220m2/g型のシリカゾル(特に、HS30)を使用することができる。
【0019】
本発明に従う方法の工程a)においては、シリカ粒子が重合体と接触される。この役割は、該粒子を異方性に凝集させることである。
【0020】
比R(シリカ粒子によって生じた表面積に対する重合体の重量)は、好ましくは0.05〜1.8mg/m2である。
【0021】
本発明に従う方法で使用される重合体は、有利には、シリカの表面に対して特異的な親和性を示す。この重合体は、一般的には、親水性型の有機分子であるが、1個以上の疎水性部分を有することができる。重合体は、ホモ重合体、共重合体、線状重合体、グラフト重合体又はデンドリマーから選ぶことができる。それらの組成は、単一の単量体単位又はいくつかの単位(ランダム又はブロックの連鎖)に基づいている。重合体は、静電荷を有することができ(好ましくは、50%未満の陰イオン単位を含む陰イオン性重合体又は陽イオン性重合体がある。)又は電荷を有しなくてもよい。重合体の分子量は、高分子量でも低分子量でも異方性凝集体を生成させることができるので、制限はない。
【0022】
本発明に従う方法で使用される重合体は、シリカが強い表面静電荷を有する条件下(高いpH、弱いイオン強度)で凝集を実施するのを有利に可能にさせる。この表面電荷の存在は、シリカ粒子を有利に異方性に凝集させる。
【0023】
好ましくは、本発明に従う方法で使用される重合体は、次の重合体、共重合体又はグラフト重合体:ポリオキシエチレン(POE)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリメタクリルアミド、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)及び他のN−置換誘導体、多糖類、例えばアミロース又はデキストラン、グアー及び誘導体又は変性セルロース、ポリビニルピロリドン−ポリ(アクリル酸)(PVP−PAA)、ポリオキシエチレン−ポリ(アクリル酸)(POE−PAA)、ポリアクリルアミド−ポリビニルピロリドン(PAM−PVP)、ポリビニルアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウム(PDADMAC)、ポリアクリルアミド−ポリジアリルジメチルアンモニウム(PAM−PDADMAC)、第4級化した又はしてないアミンをベースとした重合体及びそれらと非イオン性又は陰イオン性単量体との共重合体、例えばポリエチレンイミン、ポリビニルイミダゾール、種々のポリ(アクリル酸アミノアルキル)及びポリ(メタクリル酸アミノアルキル)、陰イオン性単量体(中でも、アクリル酸又はメタクリル酸)と陽イオン性又は非イオン性単量体とのランダム又はグラフト重合体並びにカルボキシメチル化多糖類から選ばれる重合体である。
【0024】
これらの重合体は、シリカの表面との好ましい相互作用を示し、例えば、水素結合により、静電的相互作用により又はイオン−共有結合若しくは共有結合の態様での結合によりシリカの表面との相互作用に入ることができる。
【0025】
本発明に従う方法の工程a)は、好ましくは、7以上の塩基性pH、更に好ましくは8以上のpHで実施される。これらのpH値は、反応媒体の種類に従って変動でき、特に水性/アルコール性媒体においてそうである。
【0026】
第二工程において、工程a)で得られた異方性凝集体が本法の工程b)の間に固化される。
重合体による凝集(工程a))は、一般的に、無機化合物がシリカの凝集体を固化しなかった限りでは、分割性であり得る物質を生じさせる。従って、この固化(consolidation)は、無機化合物をシリカの異方性凝集体上に付着させることができる必須の工程である。これは、凝集体がその後の化学的又は機械的操作により破壊されるのを防止させる結合部を形成させることになる。
【0027】
この固化は、熱処理又は無機化合物の沈澱のいずれかにより実施される。
工程b)が熱処理からなるときは、熱処理温度は、少なくとも80℃、特に少なくとも100℃、好ましくは少なくとも120℃である。
熱処理時間は、シリカの異方性凝集体に意図され得る用途に従って決定される。この熱処理時間が、凝集体の分割性を制御するのを可能にさせる。
この熱処理はオートクレーブ処理によって実施することができる。
熱処理の結果として、分散体が熱処理されると、コロイドシリカ分散体(シリカゾル)を得ることができる。
【0028】
本発明に従う方法の工程b)は、無機化合物の沈澱によって実施することができる。
後者の場合には、無機化合物は、珪酸塩、燐酸塩、珪燐酸塩、アルミン酸塩、珪アルミン酸塩、セリウム、亜鉛、鉄、チタン、ジルコニウム、炭酸塩、希土類元素、2価陽イオン又はこれらの2種以上の混合物から選ばれる。
【0029】
好ましくは、無機化合物は、珪酸塩又は任意の普通の形の珪酸塩、例えばメタ珪酸塩、ジ珪酸塩であり、有利には珪酸アルカリ金属、特に珪酸ナトリウム又はカリウムである。
好ましくは、無機化合物は、0.5〜4のSiO2/Na2O重量比Rwを示す珪酸ナトリウムである。
珪酸塩は、10〜330g/L、好ましくは15〜300g/L、特に60〜260g/Lの濃度(シリカの重量として表わして)を示すことができる。
【0030】
有利には、無機化合物の沈澱は、この化合物の沈澱について一般的に知られている条件に従って実施される。
珪酸塩の場合には、沈澱は、沈澱させようとする珪酸塩及び酸性化剤をpHを少なくとも6の値に保持するように同時に添加することによって実施される。
【0031】
一般的に、硫酸、硝酸若しくは塩酸のような無機酸、又は酢酸、ぎ酸若しくは炭酸のような有機酸が酸性化剤として使用される。
酸性化剤は希薄でも又は濃厚でもよい。その規定度は0.4〜36N、好ましくは0.6〜3Nであってよい。
特に、酸性化剤が硫酸である場合には、その濃度は20〜180g/L、好ましくは40〜130g/Lであってよい。
一般的には、酸性化剤として硫酸が、珪酸塩として珪酸ナトリウムが使用される。
【0032】
無機化合物の沈澱は、金属塩、金属酸化物又は金属水酸化物の沈澱を得るのを可能ならしめる。このような塩は、有利には、珪酸塩、珪アルミン酸塩、珪燐酸塩、アルミン酸塩、燐酸塩又は炭酸塩から選ばれる。該金属は、有利には、珪素、カルシウム、マグネシウム、セリウム、亜鉛、鉄、チタン、ジルコニウム又はアルミニウムから選ばれる。
【0033】
有利には、前記したように無機化合物の沈澱によって実施される工程b)の結果として、シリカスラリーが得られ、これは続いて分離される(液体−固体分離)。
本発明に従う製造方法において実施されるこの分離は、通常はろ過を含み、要すれば続いて洗浄が実施される。ろ過は、任意の好適な方法に従って、例えば、フィルタープレス、ベルトフィルター又は真空フィルターを使用して実施される。
【0034】
このようにして回収されたシリカ懸濁液又はろ過ケーキは、続いて乾燥される。ろ過ケーキは、特にその高い粘度のために、これを微粉砕せしめるような条件下に常にあるわけではないことに留意されたい。このケーキは、それ自体知られた方法で、砕解操作に付される。この操作は、ケーキをコロイド又はビーズミルに通すことによって機械的に実施される。この砕解は、一般的に、アルミニウム化合物、特にアルミン酸ナトリウムの存在下に、及び随意であるが例えば上記したような酸性化剤の存在下に実施される(後者の場合に、アルミニウム化合物及び酸性化剤は一般に同時に添加される。)。砕解操作は、特に、続いて乾燥されるべき懸濁液の粘度を低下させることができる。
このようにして回収されたシリカ懸濁液は続いて乾燥される。
【0035】
熱処理により実施される工程b)の結果として、コロイド分散体を得るのが可能であり、これは続いて乾燥することもできる。
これらの二つの場合のどれも、乾燥は、それ自体知られた任意の手段に従って実施することができる。
好ましくは、乾燥は、微粉化によって実施される。このためには、任意の好適なアトマイザー、特に、ロータリー型、ノズル型、液圧型又は二流体型アトマイザーを使用することができる。一般的に、ろ過がフィルタープレスを使用して実施されるときは、ノズル型アトマイザーが使用され、またろ過が真空フィルターを使用して実施されるときは、ロータリー型アトマイザーが使用される。
乾燥がノズル型アトマイザーを使用して実施されるときは、得られるべきシリカは、通常は、実質的に球形のビーズの形で存在する。
【0036】
乾燥の結果として、回収された生成物について微粉砕工程を実施することができる。ここに、得られるべきシリカは、一般的に、粉末の形態で存在する。
乾燥がロータリー型アトマイザーを使用して実施されるときは、得られるべきシリカは、粉末の形態で存在することができる。
【0037】
最後に、上記のようにして乾燥された(特に、ロータリー型アトマイザーにより)又はミルで粉砕された生成物は、例えば、直接的なタブレット成形、湿式造粒(即ち、水、シリカ懸濁液などのような結合材を使用して)、押出又は好ましくは乾式圧縮からなる凝集工程に付すことができる。後者の技術が採用されたときは、その圧縮を実施する前に、中に包含された空気を除去し且つ一層均一な圧縮を与えるように粉末状生成物を脱気すること(予備緻密化又は脱気とも称される操作)が推奨される。
この凝集工程によって得られるべきシリカは、一般的に、顆粒の形態で存在する。
【0038】
このようにして本発明に従う方法によって得られたシリカ粉末並びにシリカビーズは、就中、簡単で効果的で且つ経済的な方法によって、特に慣用の賦形操作、例えば造粒又は圧縮によって、顆粒を入手させるという利点を与え、これらの粉末又はビーズに付随する良好な固有の特性を覆い隠したり、事実排除しがちである損傷をもたらす(慣用の粉末を使用する従来技術においてはそうである。)こともない。
【0039】
本発明に従う方法の特別の場合には、工程a)において重合体としてポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)を使用することができる。
また、工程a)において重合体としてポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)を使用する本発明に従う方法により得ることができるシリカも、本発明の主題の一つを構成する。
【0040】
本発明の他の主題は、シリカの基本粒子の連鎖からなるシリカの凝集体であって、その粒子の数が5〜15個であり、基本粒子の少なくとも80%が2個以下の粒子と接触しており且つ凝集体の2点間の測定できる最大距離が基本粒子の平均径の5倍以内であるシリカ凝集体である。
好ましくは、凝集体の2点間の測定できる最大距離は基本粒子の平均径の4倍以内である。
【0041】
本発明の他の主題は、前記した重合体としてポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)から製造されたシリカ又は凝集体を、重合体、特にプラスチック及びゴムから形成される組成物用の補強充填剤、粘度付与剤、テキスチャー付与剤又はケーキング防止剤、特に石油の分野における分解防止剤、特に練り歯磨き及び紙用の研磨剤、特に繊維分野における被覆材、活性物質吸収剤、触媒支持体又は電池隔離板用部材として使用することである。
【実施例】
【0042】
下記の実施例は本発明を例示するものであるが、その範囲を何ら制限するものではない。
【0043】
例1
1Lの分子量106g/モルのポリオキシエチレン(POE)の溶液を純水で希釈することにより0.8g/Lの濃度で調製し、次いでpH9とする(水酸化ナトリウムにより)。
1Lのシリカゾル(Ludox HS30、ジュポン社製)を純水で希釈することにより20g/Lの濃度で調製し、次いでこのゾルをpH9にもたらす。粒子は、12nm程度の直径を有する(220m2/gの比表面積)。
POE溶液をシリカゾルに迅速に導入する。また、この混合物はゾルをPOE溶液に導入し又は同時添加することによって調製することもできる。この混合物を1時間熟成させる。これらの条件下では、pHは9程度であり、また比R(POE/シリカ)は0.2mgのPOE/m2のシリカの値を有する。
【0044】
凝集体の固化
撹拌した4Lの反応器においてPOE/シリカ混合物を85℃に加熱し、pHを9に調節する。57g/LのSiO2濃度で3.55の重量比Rw(Rw=SiO2/Na2O)を持つ珪酸ナトリウム溶液と20g/Lの硫酸溶液を反応器に同時に添加する。珪酸塩溶液の添加のための流量は12g/分に設定し、また硫酸溶液の添加のための流量はpHを9に一定に保持するように調節する。同時添加の期間は、得ようと望む固化のレベル(=添加したシリカの重量/反応器の底部に最初から存在するシリカの重量)に従って変わる。一般的には、12nmの径の粒子については、50%の固化レベルが、凝集体を有効に強化させるのを可能にさせる。添加の終了時に、珪酸塩の添加を停止し、pHを4に低下させる。懸濁液をろ過し、洗浄し、次いで乾燥する(オーブン、微粉化)。ろ過を容易にさせるために同時添加の終了時に凝固剤を添加することができる。例えば、懸濁液600mL当たり50mLの溶液の割合での0.4モル/LのMgSO4溶液の添加は、ろ過と次の洗浄操作を容易にさせる。
【0045】
最終生成物は、147m2/gの比表面積並びに0.3μ未満の直径を有する粒子のレベルが96%という分散性(セジグラフを使用する分粒法により測定される。)を有する。粒度分析は、本発明に従う凝集体の沈降を分析するために、粒度測定装置、例えばセジグラフ5100(249 ET 041)による沈降原理に基づいている。使用される技術は、粉末を水性媒体に分散させる第一段階及びほぼ600ワット±20%の電力のプローベを使用して7分間超音波により解凝集する段階を含む。また、本発明に従う分散体又はコロイド分散体について、予備的段階なしで、直接測定を実施することができる。
【0046】
また、凝集体の固化は、POE/シリカ混合物をオートクレーブ処理することによって実施することができる。この場合に、凝集体の強化は、粒子の接合部での再溶解/沈澱の機構に帰する。シリカの濃度が10g/Lで有り、POE(106g/モル)濃度が0.4g/Lである700mLのシリカゾル/POE混合物を1Lのオートクレーブに導入する。混合物を撹拌すると同時に3℃/分の昇温速度で130℃まで加熱する。それを130℃に6時間保持し、次いで自然に周囲温度まで冷却させる。
【0047】
透過型電子顕微鏡(TEM)は異方性凝集体を示し、それらの大部分は少なくともほぼ10個の粒子を含む。乾燥中に起こり得る凝結を避けるように試料を低温にすることにより写真撮影する。観察しようとする試料が粉末である場合には、これを水に1mg/L程度の含有量で分散させる。超音波の浴に通すと、生成物を解凝集させることができる。これらの写真で、凝集体における隣接粒子の数を決定することができる(表1)。
【0048】
【表1】

【0049】
上記の表は、その第1行について次のように読める。凝集体において、粒子の15%が単一粒子のみと接触しており、粒子の72%が2個の粒子と接触しており、粒子の12%が3個の粒子と接触しており、粒子の1%が4個の粒子と接触している。
これらの数値は、凝集体が全く線状であり、それほど分岐していないことを示している。
【0050】
例2
Ludox HS30ゾルを脱イオン水で希釈することにより22g/Lの濃度のシリカゾルを調製する。媒体を水酸化ナトリウムを添加してpH9にもたらす。
分子量が820,000g/モルのポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)の溶液を7.3g/Lの濃度で調製する。
10mLのシリカゾルを10mLの重合体溶液に導入することによって異方性凝集体の溶液を調製する。重合体/シリカの比Rは1.5mg/m2である。
激しく撹拌しながら数分間混合し、次いで穏やかな速度で32時間撹拌し続ける。
この混合物を98℃で48時間加熱する。
【0051】
例3
Ludox HS30ゾルを脱イオン水で希釈することにより22g/Lの濃度のシリカゾルを調製する。媒体を水酸化ナトリウムを添加してpH9にもたらす。
分子量が820,000g/モルのポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)の溶液を5.5g/Lの濃度で調製する。
10mLのシリカゾルを12mLの重合体溶液に導入することによって異方性凝集体の溶液を調製する。重合体/シリカの比Rは1.36mg/m2である。
激しく撹拌しながら数分間混合し、次いで穏やかな速度で32時間撹拌し続ける。
この混合物を98℃で48時間加熱する。
【0052】
例4
Ludox HS30ゾルを脱イオン水で希釈することにより22g/Lの濃度のシリカゾルを調製する。媒体を水酸化ナトリウムを添加してpH9にもたらす。
分子量が820,000g/モルのポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)の溶液を3.2g/Lの濃度で調製する。
10mLのシリカゾルを12mLの重合体溶液に導入することによって異方性凝集体の溶液を調製する。重合体/シリカの比Rは0.8mg/m2である。
激しく撹拌しながら数分間混合し、次いで穏やかな速度で32時間撹拌し続ける。
この混合物を98℃で48時間加熱する。
【0053】
例2〜4の結果
顕微鏡により、凝集体は6〜10個の粒子の連鎖からなっていて、その連鎖の2点間で測定できる最大距離が50nm未満であることが観察された。基本粒子の少なくとも85%は2個以下の粒子と接触している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカの異方性凝集体を製造するにあたり、
a)少なくとも1種の重合体を未凝集の及び(又は)水性媒体中で高い分散を示すシリカの粒子と0.02〜2mg/m2の比R(シリカ粒子の表面積に対する重合体の重量)で接触させ、その際にシリカ粒子の表面静電荷の値が塩を添加してない水性相で7以上のpHで測定したシリカ粒子の表面電荷の値以上であるようにし、
b)工程a)で得られた凝集体を熱処理か又は無機化合物の沈澱のいずれかにより団結させる
工程を含むシリカの異方性凝集体の製造方法。
【請求項2】
工程a)を0.05〜1.8mg/m2の比R(シリカ粒子の表面積に対する重合体の重量)で実施することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
シリカ粒子の径が3〜50nm、好ましくは5〜20nmであるシリカゾルを使用することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ホモ重合体、共重合体、線状重合体、デンドリマー又はグラフト重合体から選ばれる重合体を使用することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
次の重合体:ポリオキシエチレン(POE)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリメタクリルアミド、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)及び他のN−置換誘導体、多糖類(特に、アミロース又はデキストラン)、グアー及び誘導体、変性セルロース、ポリビニルピロリドン−ポリ(アクリル酸)(PVP−PAA)、ポリオキシエチレン−ポリ(アクリル酸)(POE−PAA)、ポリアクリルアミド−ポリビニルピロリドン(PAM−PVP)、ポリビニルアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウム(PDADMAC)、ポリアクリルアミド−ポリジアリルジメチルアンモニウム(PAM−PDADMAC)、第4級化した又はしてないアミン(特に、ポリエチレンイミン)をベースとした重合体及びそれと非イオン性又は陰イオン性単量体との共重合体、ポリビニルイミダゾール、ポリ(アクリル酸アミノアルキル)及びポリ(メタクリル酸アミノアルキル)、陰イオン性単量体(例えば、アクリル酸又はメタクリル酸)と陽イオン性又は非イオン性単量体とのランダム又はグラフト重合体並びにカルボキシメチル化多糖類よりなるリストから選択される重合体を使用することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程b)において、熱処理を少なくとも80℃、特に少なくとも100℃、好ましくは少なくとも120℃の温度で実施することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
工程b)において、珪酸塩、燐酸塩、珪燐酸塩、アルミン酸塩、珪アルミン酸塩、セリウム、亜鉛、鉄、チタン、ジルコニウム、炭酸塩、希土類元素、2価陽イオン又はこれらの2種以上の混合物から選ばれる無機化合物の沈澱を実施することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
無機化合物が0.5〜4のSiO2/Na2O重量比Rwを示す珪酸ナトリウムであることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
珪酸塩の沈澱を、pHを少なくとも6の値に保持するように、沈澱させようとする珪酸塩と酸性化剤を同時に添加することによって実施することを特徴とする請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
硫酸、硝酸若しくは塩酸、又は有機酸(例えば、酢酸、ぎ酸又は炭酸)から選ばれる酸性化剤を添加することを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
重合体として、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)を使用することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法により得ることができる物質。
【請求項13】
シリカの基本粒子の鎖からなるシリカの凝集体であって、その粒子の数が5〜15個であり、基本粒子の少なくとも80%が2個以下の粒子と接触しており且つ凝集体のうちの2点間の測定できる最大距離が基本粒子の平均径の5倍以内であるシリカの凝集体。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の物質又は凝集体からなる、重合体、特にプラスチック及びゴムから形成される組成物用の補強充填剤、粘度付与剤、テキスチャー付与剤又はケーキング防止剤、特に石油の分野における分解防止剤、特に練り歯磨き及び紙用の研磨剤、特に繊維分野における被覆材、活性物質吸収剤、触媒支持体又は電池隔離板用部材。

【公表番号】特表2007−527351(P2007−527351A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518288(P2006−518288)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【国際出願番号】PCT/FR2004/001763
【国際公開番号】WO2005/007574
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(390023135)ロディア・シミ (146)
【出願人】(505129541)
【Fターム(参考)】