異物とキズ痕との判別検査装置及び検査方法
【課題】検査作業に手間取ることなく微小な異物とキズ痕とを判別可能な異物とキズ痕との判別検査装置及び検査方法を提供する。
【解決手段】デバイス素子表面の撮像データに基づいて異物とキズ痕とを判別する検査装置であって、デバイス素子に対して斜光を二方向から同時に照射する斜光照明手段10と、デバイス素子からの反射光を検出して撮像する撮像手段20と、各手段を制御すると共に撮像した画像をデジタル処理して異物かキズ痕かを判別する判別処理手段30とを備えたことを特徴とする異物とキズ痕との判別検査装置及び検査方法である。
【解決手段】デバイス素子表面の撮像データに基づいて異物とキズ痕とを判別する検査装置であって、デバイス素子に対して斜光を二方向から同時に照射する斜光照明手段10と、デバイス素子からの反射光を検出して撮像する撮像手段20と、各手段を制御すると共に撮像した画像をデジタル処理して異物かキズ痕かを判別する判別処理手段30とを備えたことを特徴とする異物とキズ痕との判別検査装置及び検査方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば圧力センサ等の半導体デバイス製造過程において抵抗値等を検出する検査に好適に使用される異物とキズ痕との判別検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧力センサ等の半導体デバイス製造過程においては、抵抗値等のデータを取得する検査が一般に行なわれている。この検査工程は、プローブをセンサ素子に直接当てて行われるが、プローブ先端部が0.1μm以下程度の針状をなすため、製品品質に影響はないものの、半導体デバイスの検査位置にプローブ痕が残る。
【0003】
一方、半導体デバイスの製造は所定のクリーン度を保ったクリーンルーム内等の環境下で行われているものの、半導体デバイスの製造過程で発生する異物や埃等を完全に遮断することは難しく、静電気等により微小な異物がデバイス表面に付着することがある。
【0004】
デバイス表面に付着した異物はこのような半導体デバイスの出力特性に悪影響を与えるため、最終検査において半導体デバイス表面の外観検査を行い、異物が付着した製品については洗浄を行う必要がある。
【0005】
しかし、この異物はプローブ痕よりはサイズが大きいものの、20μm程度と微小なため、異物なのかプローブ痕なのかを確実に判定することが難しく、疑わしい製品は全て洗浄作業を行わなければならないという問題がある。
【0006】
なお、被検査対象物の表面凹凸を観察(検査)する装置として、例えば特許文献1や特許文献2に記載の装置が知られている。
【特許文献1】特開2005−274256号公報
【特許文献2】特開2000−266686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1において開示された検査装置は、フィルム状基板材料を被検査対象物とする表面検査装置である。この装置は、斜光照明手段を備え、被検査対象物に斜光を一方向から照射し、被検査対象領域上の凹凸による影の発生箇所の相違に基づいて凹か凸かを判定する工程を備えている。しかしながら、被検査対象物に一方向からしか斜光を照射していないので撮像結果が暗くなり、被検査対象物が微小な異物とプローブ痕の場合に安定した影の検出が難しい。また、照射方向を順次変えながら影の有無を判断する必要があり、作業に手間取るという問題がある。
【0008】
一方、特許文献2において開示された検査装置は、金属表面にできたキズ欠陥とシミ欠陥とを判別する検査装置である。この装置は、キズ欠陥とシミ欠陥とがそれぞれ検出できる照明条件(光量)を調整する必要があり、被検査対象物として互いに形状が異なる微小な異物とプローブ痕に斜光を一方向から照射する場合、照射方向を順次変えながら光量を調整する必要がある。そのため、作業に手間取るという問題がある。また、被検査対象物に一方向からしか斜光を照射していないので、上述の特許文献1の場合と同様に撮像結果が暗くなり、安定した影の検出が難しいという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、検査作業に手間取ることなく微小な異物とキズ痕とを判別可能な異物とキズ痕との判別検査装置及び検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明の請求項1に係る異物とキズ痕との判別検査装置は、
デバイス素子表面の撮像データに基づいて異物とキズ痕とを判別する検査装置であって、
前記デバイス素子に対して斜光を二方向から同時に照射する斜光照明手段と、
前記デバイス素子からの反射光を検出して撮像する撮像手段と、
前記各手段を制御すると共に撮像した画像をデジタル処理して異物かキズ痕かを判別する判別処理手段とを備えたことを特徴としている。
【0011】
また、本発明の請求項6に係る異物とキズ痕との判別検査方法は、
デバイス素子表面の撮像データに基づいて異物とキズ痕とを判別する検査方法であって、
前記デバイス素子に対して斜光を二方向から同時に照射する第1のステップと、
前記デバイス素子からの反射光を検出して撮像する第2のステップと、
前記第2のステップで撮像した画像をデジタル処理して異物かキズ痕かを判別する第3のステップとを少なくとも有することを特徴としている。
【0012】
従来のように被検査対象物に一方向から斜光を照射して、その被検査対象物上の凹凸の影の有無でその凹凸の存在を検査する方式では光量が不十分となりがちで、異物とキズ痕の正確な判定ができなかったが、本発明のように斜光を被検査対象物であるデバイス素子に二方向から同時に照射することで、十分な光量を確保でき、安定した撮像データを得て異物かプローブ痕かを正確に判断することができる。また、光量の調整をすることなく二方向を一組として、この組の照射方向のみを変えるのみで手間をかけることなく異物かプローブ痕かを判別することができる。
【0013】
また、本発明の請求項2に係る異物とキズ痕との判別検査装置は、請求項1に記載の異物とキズ痕との判別検査装置において、
前記判別処理手段は、前記デバイス素子に対して二方向から同時に斜光を照射して得られる撮像データのうち、斜光方向を変えて行った少なくとも2つの撮像データから、前記少なくとも2つの撮像データの両方で所定の輝度を有するものを異物として判別すると共に、前記少なくとも2つの撮像データのうち一方にのみ所定の輝度を有するものをキズ痕として判別することを特徴としている。
【0014】
また、本発明の請求項7に係る異物とキズ痕との判別検査方法は、請求項6に記載の異物とキズ痕との判別検査方法において、
前記第2のステップにおいて、前記デバイス素子に対して斜光を二方向から同時に照射して得られる撮像データのうち、斜光方向を変えて行った少なくとも2つの撮像データを得た後、前記第3のステップにおいて、前記少なくとも2つの撮像データの両方で所定の輝度を有するものを異物として判別すると共に、前記少なくとも2つの撮像データのうち一方にのみ所定の輝度を有するものをキズ痕として判別することを特徴としている。
【0015】
本発明のような判別処理手段や判別処理方法を有することで、異物とキズ痕とを確実に判別できるようになる。
【0016】
また、本発明の請求項3に係る異物とキズ痕との判別検査装置は、請求項1又は請求項2に記載の異物とキズ痕との判別検査装置において、
前記斜光照明手段は対向する二方向から同時に斜光を照射することを特徴としている。
【0017】
対向する二方向から被検査対象物に斜光を同時に照射することで、異物とキズ痕の反射光の違いをより際立たせることができ、異物とキズ痕との判別をより行い易くする。
【0018】
また、本発明の請求項4に係る異物とキズ痕との判別検査装置は、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の異物とキズ痕との判別検査装置において、
前記キズ痕は、幅が1μm以下の線状をなすプローブ痕であることを特徴としている。
【0019】
例えば、キズ痕が半導体デバイス上のパッドにプローブを当てる際に生じる幅1μm以下のプローブ痕のような微細なキズであっても、本発明によると異なる方向から斜光を同時に照射することで、パッド上の異物と容易に区別することができる。
【0020】
また、本発明の請求項5に係る異物とキズ痕との判別検査装置は、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の異物とキズ痕との判別検査装置において、
前記異物は、外径が20μm以下であることを特徴としている。
【0021】
異物がパッド上に付着する微細なものであっても、本発明によると異なる方向から斜光を同時に照射することで、パッド上のキズ痕と容易に区別することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、検査作業に手間取ることなく微小な異物とキズ痕とを判別可能な異物とキズ痕との判別検査装置及び検査方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る異物とキズ痕との判別検査装置及び検査方法について図面に基づいて説明する。なお、本実施形態の説明において、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向は、直交座標系の3軸、即ちX軸及びY軸が水平面上の互いに直交する軸線とし、Z軸がX軸とY軸の交点を通り、上記水平面と垂直な軸線とする。
【0024】
本実施形態に係る異物とキズ痕との判別検査装置は、図1に示すように被検査対象物である半導体センサチップ50に斜光を照射する斜光照明部10と、被検査対象物からの反射光を観察するIC顕微鏡及びこのIC顕微鏡で観察した画像を撮像するCCDカメラからなる撮像部20と、これらを制御すると共に撮像した画像をデジタル処理して異物かキズ痕かを判別する判別処理部30とを備えている。
【0025】
斜光照明部10は90度間隔に配列した4つの斜光照射部を備え、対向する2つの斜光部を1組(1セット)にして同時に二方向から検査対象に照査するようになっている。
【0026】
より具体的には、例えば被検査対象物の上方から見て、被検査対象物の被検査領域に対応する位置を原点とすると、1組の第1の対向する斜光照明部11がX軸の上方に備わると共に、この第1の斜光部と被検査対象物を中心として90度周方向に移動した位置、即ちY軸の上方に他の1組の第2の対向する斜光照明部12が備わっている。
【0027】
なお、図1における斜光照明部10(11,12)は、指向性斜光照明として示され、撮像部20は、IC顕微鏡21及びCCDカメラ又はC‐MOSカメラ等のカメラ22で示されている。また、判別処理部30は図1において撮像/画像処理用パソコン31内に構成され、キャプチャーボード32を介して撮像部20と電気的に接続されている。そして、照明用電源13が斜光照明部10に電力を供給すると共に、判別処理部30のI/Oポート33を介して照明用電源13の斜光の照射方向を制御するようになっている。
【0028】
なお、このような構成とは異なり、対向する位置に1組の斜光照明部を備え、この1組の斜光照明部自体又は被検査対象物を載せた検査台の何れかを90度回転させて実質的に異なる方向、即ちX軸方向及びY軸方向から斜光を照射できるようにしても良い。
【0029】
続いて、本実施形態に係る異物とキズ痕との判別検査装置の検査原理について説明する。なお、以下の説明においては、線状のキズ痕はプローブによって被検査対象物に付けられたプローブ痕とする。
【0030】
本実施形態に係る異物とキズ痕との判別検査装置においては、被検査対象物に全方向(X軸方向とY軸方向の両方向)照射を行い、所定の光度を閾値として2値化した撮像データを取得して異物やプローブ痕からなる検査候補の位置を決定する。次に、X軸方向の上方に配置された対向する2つの斜光照明部から斜光を同時に照射し、上述の全方向照射によって決定した検査候補毎に所定の光度を閾値として2値化した撮像データを取得する。次に、Y軸方向の上方に配置された対向する2つの斜光照明部から同時照射を行い、同様の撮像データを取得する。
【0031】
最後に、各検査候補についてX軸方向とY軸方向の撮像データから異物かプローブ痕かを判別する。異物の場合、所定の凸部を有するため、X軸方向とY軸方向からの斜光の照射の双方において所定の輝度を検出することができる。一方、プローブ痕はプローブの形状に起因して線状(キズ状)の微小な凹部の形態をなすため、線状をなすプローブ痕の長手方向から斜光を照射すると、照射光が凹み部底面でそれぞれの照射方向に反射してしまうため、所定の輝度を検出することができない。このような相違に基づき、X軸方向とY軸方向の両方共、所定の輝度を検出できた検査候補は異物と判断でき、X軸又はY軸の一方のみで所定の輝度を検出できたものはプローブ痕として判断できるので、各検査候補が異物かプローブ痕かを判別することができる。
【0032】
続いて、上述した本発明に係る異物とキズ痕(プローブ痕)との判別原理に基づく本実施形態の検査装置を用いた検査方法についてフローチャートに基づいて説明する。なお、以下の図2〜図5のフローチャートに示す検査方法においては、上述した2組の対向する斜光照明装置を用いる代わりに被検査対象物の周囲に周方向異なる位置で配置されたn組の斜光照射装置を用いる場合について説明する。これは、本発明における斜光照明部が上述したX軸の上方とY軸の上方のみの異なる2方向のみに配置されていることに限定されないことを明らかにするためである。
【0033】
本検査方法は、図2のフローチャートに示すように、異物とキズ痕との判別検査方法開始と終了との間に第1の処理工程として撮像/抽出工程(撮像と抽出工程)を有し(ステップS100)、続く第2の処理工程として判定工程(ステップS200)を有している。
【0034】
なお、第1の処理工程としての撮像/抽出工程は、欠陥候補の抽出を行うと共に斜光の指向性を活かした撮像を行う処理工程である。また、続く第2の処理工程としての判定工程は、欠陥候補の抽出結果と撮像結果を論理演算して欠陥候補が異物かキズ痕かを自動判定する処理工程である。
【0035】
続いて、撮像/抽出工程を図3のフローチャートに基づいて説明する。撮像/抽出工程の開始により撮像の準備に入る(ステップS110)。そして、被検査対象物の周囲にn組配置された全ての斜光照明を点灯し(ステップS120)、カメラで被検査対象物を撮像する(ステップS130)。そして、後述する自動検査Aを行う(ステップS140)。そして、全ての斜光照明を消灯する(ステップS150)。続いて、第1番目の斜光照明部(斜光照明No.1)を点灯し(ステップS160)、カメラでこれを撮像する(ステップS170)。そして、後述する自動検査Bを行う(ステップS180)。そして、第1番目の斜光照明部(斜光照明No.1)を消灯する(ステップS190)。
【0036】
このようにして、互いに対向する斜光照明のn組の組合せ(nセット)を順々に変えてステップS160〜ステップS190までのルーチンを繰り返す。具体的には、第n番目の斜光照明部(斜光照明No.n)を点灯し(ステップSn60)、カメラで被検査対象物を撮像する(ステップSn70)。続いて、後述する自動検査Bを行う(ステップSn80)。続いて、第n番目の斜光照明部(斜光照明No.n)を消灯する(ステップSn90)。これによって、撮像/抽出工程を終了する。
【0037】
続いて、上述した自動検査A及び自動検査Bの処理ルーチンを図4のフローチャートに基づいて説明する。最初に自動検査Aの処理ルーチンについて説明する。自動検査A(ステップS140)を開始することで最初にカメラで撮像した画像の内、光っている部分を抽出する(ステップS141)。この際、所定の明暗を区別する所定の閾値を設定して、これに基づいて反射して光っている領域を欠陥候補画像として表示する。これによって、欠陥候補画像1〜欠陥候補画像k(k:欠陥候補数)が表示される(ステップS142)。そして、自動検査Aを終了する。
【0038】
この所定の明暗を区別する所定の閾値を設定する際に、僅かな面積の明るい領域はノイズ成分としてキャンセルし、欠陥候補画像と見做さないようにするのが好ましい。
【0039】
続いて、自動検査B(ステップS180)の処理ルーチンについて説明する。自動検査Bを開始することで対向する2方向から同時に斜光を照射する1組目のカメラで被検査対象物を撮像し、この撮像した画像の内、光っている部分を抽出する(ステップS181)。この際、所定の明暗を区別する所定の閾値を設定して、これに基づいて反射して光っている領域のみを表示する。この光っている領域のみを表示する際にも、僅かな面積の明るい領域はノイズ成分としてキャンセルするのが良い。これによって、1組目の選別結果画像として表示する(ステップS182)。これを上述したように1組目のカメラからn組のカメラまでそれぞれ繰り返す。このようにして、n組のカメラのそれぞれについて行われる自動検査Bを終了する。
【0040】
続いて、判定ルーチンを図5のフローチャートに基づいて説明する。判定ルーチンを開始するにあたって、判定準備を行ない(ステップS211)、具体的な判定を開始する(ステップS212)。この具体的な判定にあたっては、ステップS212に示したように、欠陥候補画像1と選別結果画像1との論理積(AND)をとりIns-Image1とする。そして、欠陥候補画像1と選別結果画像2との論理積をとりIns-Image2とする。以下、n組目の選別結果画像までこの処理を順々に行い、欠陥候補画像1と選別結果画像nとの論理積をとりIns-Imagenとする。
【0041】
次いで、Ins-Image1〜Ins-Imagenの全画像中に光る部分があるか否か判断する(ステップS213)。この際、例えば欠陥候補1について、Ins-Image1〜Ins-Imagenの全画像中において光っていた場合は、欠陥候補1の図中楕円で囲ったように異物(凸)であると判断する(ステップS214)。また、欠陥候補1において光らない画像がある場合は傷(凹)であると判断する(ステップS215)。他の欠陥候補画像についてもこのような同様の判定を行う。
【0042】
ここで欠陥候補画像kについて説明する。この欠陥候補画像kにおける具体的な判定にあたっては、ステップS2k2に示したように、欠陥候補画像kと選別結果画像1との論理積をとりIns-Image1とする。続いて、欠陥候補画像kと選別結果画像2との論理積をとりIns-Image2とする。以下順々にこれを行い、欠陥候補画像kと選別結果画像nとの論理積をとりIns-Imagenとする。
【0043】
次いで、Ins-Image1〜Ins-Imagenの全画像中に光る部分があるか否か判断する(ステップS2k3)。この際、例えば欠陥候補kについて、Ins-Image1〜Ins-Imagenの全画像中において光っていた場合、欠陥候補kは異物(凸)であると判断する(ステップS2k4)。また、欠陥候補kにおいて光らない画像がある場合は、図中楕円で囲ったように傷(凹)であると判断する(ステップS2k5)。
【0044】
続いて、上述した異物とキズ痕との判別検査方法をより分かり易く理解できるようにするために、互いに対向する2つの斜光照明部を2組用意し、各組の斜光照明部を、被検査対象物を中心として周方向90度ずらすように配置した場合の異物とキズ痕との判別検査方法を本実施例として説明する。
【0045】
この際、検査対象物は半導体チップ上のワイヤボンディング等に用いるパッドとする。なお、この場合のパッドは、例えば半導体チップに形成された微小な圧力センサやフローセンサ上の表面から電気信号を取り出すためのパッドである。そして、このパッドを介したセンサの抵抗値等の測定試験を行った際に生じるプローブ痕(キズ痕)とクリーンルーム内のわずかなチリやゴミであってこの検査工程に至るまでにパッドに付着した異物との判別を行うものとする。
【0046】
本実施例の場合、プローブ痕(図中のキズ痕)をなす凹み部の幅は1μm以下で、異物は直径20μm程度である。この場合の異物は、クリーンルーム内のちりやほこりで直径が約20μm程度の非常に微細な異物であるが、パッド自体も非常に小さいものであるため、このような異物がパッド上に付着していると、ワイヤボンディング時に悪影響を及ぼすので必ず除去する必要がある。
【0047】
なお、プローブ痕がキズ痕として細長く形成されている理由は、プローブ痕をパッドに接触させたり離間させたりする機構の機械的なガタに起因するもので、例えばプローブ痕をパッドから引き離すときにプローブ痕先端が上述した機械的なガタによりパッド上面を特定の方向にすりながら離れることで生じるものであり、パッド自体の機能に悪影響を及ぼすものではない。
【0048】
しかしながら、プローブ痕は、パッド上の非常に小さな傷であるため、慣れない作業者が検査すると本来プローブ痕しかパッドに付いていない検査適合品の半導体チップをパッドに異物が付着した検査不適合品の半導体チップのパッドと誤判断することがあるが、本発明ではそのようなことを無くすことができる。
【0049】
図6は、パッド上に異物が付着した場合(図6(a))と、図中縦方向(Y軸方向)にプローブ痕が生じた場合(図6(b))と、図中横方向(X軸方向)にプローブ痕が生じた場合(図6(c))において、図6の各上段の対応図に示すように、図中横方向から対向する斜光照明装置の斜光をこれらの異物やプローブ痕に当てた場合の光の反射の仕方(図6の各中段の対応図)及び撮像装置で撮像された撮像結果(図6の各下段の対応図)を示している。
【0050】
この自動検査工程においては、取得した画像を二値化して異物やプローブ痕などの検査対象物を画像上白色領域で示すと共に、それ以外の領域を黒色とする。この際、所定の面積に達しない小さい白色領域は、ノイズ成分としてキャンセルし黒色領域とするようになっている。
【0051】
図7は、パッド上に異物が付着した場合(図7(a))と、図中縦方向にプローブ痕が生じた場合(図7(b))と、図中横方向にプローブ痕が生じた場合(図7(c))において(図7の各上段の対応図参照)、図中縦方向から対向する斜光照明装置の斜光をこれらの異物やプローブ痕に当てた場合の光の反射の仕方(図7の各中段の対応図)及び撮像装置で撮像された撮像結果(図6の各下段の対応図)を示している。
【0052】
これらの図から明らかなように、異物に関しては図中横方向(X軸方向)から斜光を照射しても縦方向(Y軸方向)から斜光を照射しても異物の形状がそのまま撮像されることが分かる。一方、プローブ痕については、プローブ痕の長手方向と直交する方向から入光する斜光の場合にのみこのプローブ痕の形状がそのまま撮像され、プローブ痕の長手方向と平行な方向から入光する斜光の場合はプローブ痕の形状が全く撮像されないことが分かる。
【0053】
以上のことから、これらの異物とプローブ痕に横方向と縦方向から同時に斜光を当てた場合は、異物に加えてプローブ痕の双方についてもそれらの形状がそれぞれ撮像されることが分かる(図8参照)。
【0054】
図8は、細長の矩形状をなすパッド上に上述した異物が付着すると共に、図中縦方向を長手方向とするプローブ痕と、図中横方向を長手方向とするプローブ痕が生じている場合を説明の都合上同時に示している(図8(a)参照)この場合は、図8(a)に示すような図中横方向(X軸方向)及び縦方向(Y軸方向)の2方向に関して同時に斜光を照射することにより、それに基づく光の反射が図8(b)に示すように生じ、図8(c)に示すように異物に加えてプローブ痕の双方についてもそれらの形状がそれぞれ撮像される。これは、上述したフローチャートのステップS120乃至S140に相当する。
【0055】
図9は、図8に対応する図であり、図6に示すように図9中横方向(X軸方向)に斜光を照射した場合のランド上の撮像結果を示している。この撮像結果から分かるように、異物と、長手方向が斜光方向と垂直をなす縦長のプローブ痕のみが撮像されている(図9(c)参照)。これは、上述したフローチャートにおいてn=2とした場合のステップS160及びS170に相当する。
【0056】
図10も、図8に対応する図であり、図7に示すように図10中縦方向に斜光を照射した場合のランド上の撮像結果を示している。この撮像結果から分かるように、異物と、長手方向が斜光方向と垂直をなす横長のプローブ痕のみが撮像されている(図10(c)参照)。これも、上述したフローチャートにおいてn=2とした場合のステップS160及びS170に相当する。
【0057】
図11は、図8の説明で得られた撮像結果(図8(c)及び図11(a))と、図9の説明で得られた撮像結果(図9(c)及び図11(b))と、これら双方の撮像結果の論理積(AND)をとった画像処理結果(図11(c))を示している。
【0058】
図12は、図8の説明で得られた撮像結果(図8(c)及び図12(a))と、図10の説明で得られた撮像結果(図10(c)及び図12(b))と、これら双方の撮像結果の論理積(AND)をとった画像処理結果(図12(c))を示している。これは、上述したフローチャートにおいて、n=2、k=3とした場合のステップS212及びステップS2k2に相当する。
【0059】
図13は、図11(c)に示した画像処理結果(図13(a))と、図12(c)に示した画像処理結果(図13(b))とを比較し、この双方に表示されている白色領域を異物として判断し、何れか片側にしか示されていない白色領域をプローブ痕としてキャンセルする過程を示している。この判断にあたっては、図13(a)に示した画像処理結果と図13(b)に示した画像処理結果の論理積をとり、(図13(c))に示すような更なる画像処理結果を得て、この白色領域を異物と判断している。これは、上述したフローチャートにおいて、n=2、k=3とした場合のステップS213及びステップS2k3に相当する。
【0060】
このように最終的に異物のみが白色領域として表示されることで、パッド上の異物とプローブ痕の存在を発見すると共に、これら両者を区別することができ、その結果、パッド上にプローブ痕のみが残ったセンサを検査適合品と判断し、プローブ痕以外に異物がパッド上に付着しているセンサを検査不適合品と判断することができる。
【0061】
以上説明したように、異なる片側方向からの斜光を照射しその影を検出する従来の検査装置における光量が不足するという欠点を、異なる2方向から対向する斜光を照射する本発明によって解決することができる。即ち、本発明は片側からのみ斜光を照射して影を測定して異物を検出する従来技術と根本的に異なる原理に基づいて異物とプローブ痕との判別を行うことに特徴を有していると言える。これによって被検査対象物に付着した異物や被検査対象物に生じたプローブ痕とノイズを原因とするものとをそれぞれ区別をすることができる。
【0062】
なお、上述した説明において斜光照明装置は、横方向(X軸の上方)と縦方向(Y軸の上方)の二方向に2組配置したが、これには限定されず、例えば対向している1組の斜光照明装置を用意し、この斜光照明装置を被検査対象物廻りに90度回転可能にしてX軸方向とY軸方向からそれぞれ斜光を照射して被検査対象物を撮像するようにしても良い。
【0063】
また、斜光照明装置を90度回転させる代わりに、1組の斜光照明装置を固定して被検査対象物を載せた検査台を90度回転させることで、結果的にX軸方向から斜光を照射して被検査対象物の撮像を得ると共に、これとは90度周方向に異なる角度をなすY軸方向から斜光を照射した被検査対象物の撮像を得るようにしても良い。
【0064】
また、上述した図3乃至図5の検査ルーチンのフローチャートに示すように、1組の斜光照明装置を被検査対象物周りに所定角度ずつn回停止できるようにし、n方向からそれぞれ斜光を照射して撮像するようにしても良い。
【0065】
また、斜光照明装置を1組だけ被検査対象物の周囲に配置し、被検査対象物を載せた検査台が所定角度ずつn回停止できるようにし、n方向からそれぞれ斜光を照射して撮像するようにしても良い。
【0066】
また、本発明においては、検査工程の最初の段階で複数の組の斜光照明装置を全て作動させて全ての方向から斜光を照射する工程は必ずしも必要としない。具体的には、検査工程の最初に上述したX軸方向とY軸方向の両方向から同時に斜光する必要はなく、X軸方向のみから斜光を照射した被検査対象物の画像とY軸方向のみから斜光を照射した被検査対象物の画像との論理積をとり、この論理積によって得られた処理画像においても残っている白色領域を異物と判断しても良い。
【0067】
しかしながら、検査工程の最初の工程で、例えばX軸方向とY軸方向の両方向から同時に斜光を照射することで、パッドの縁部等、異物やプローブ痕との関係のない領域を撮像することができ、後の検査工程においてこの白色領域をキャンセルすることが可能となる。
【0068】
また、検査工程の最初に全方向から被検査対象物を斜光することで、例えばプローブ痕の長手方向を特定することが可能となる。これによって、対向して配置され異なる二方向から斜光を照射する斜光照明装置の位置をプローブ痕の長手方向に対して直交する方向又は平行な方向に位置決めすることができる。その結果、そのプローブ痕を画像処理段階における論理積で消すことができ、異物として判断される白色領域として残さないようにすることができる。
【0069】
具体的には、上述した2組の斜光照明装置をそれぞれX軸方向の上方とY軸方向の上方に配置した場合、この斜光照明装置又は被検査対象物を載せる検査台を回転可能とし、検査工程の最初の段階で2組の斜光照明装置によりX軸方向とY軸方向から同時に斜光を照射させ、この段階で撮像されたプローブ痕の長手方向を画像処理により求める。そして、この長手方向に斜光照明装置のX軸方向又はY軸方向の一方が合致するように斜光照明装置又は被検査対象物を載せる検査台を回転させてX軸方向とY軸方向のそれぞれから別々に斜光を照射する。これによって、そのプローブ痕を上述した図5のフローチャートのステップS213及びS2k3(n=2)で規定される画像処理段階で論理積により消すことができ、白色領域として残ることがなくなる。
【0070】
なお、上述の実施形態において対向する二方向から斜光を照射していたが、必ずしも厳密に対向する二方向から斜光を照射することに限定されず、異なる二方向から斜光を照射しても本発明特有の効果を得ることは可能である。
【0071】
また、本発明の適用範囲は、上述した例えば圧力センサやフローセンサ等の半導体デバイス製造過程において抵抗値等のデータを取得する検査の使用に限定されず、被検査対象物のハンドリングのミスによって生じた表面の傷(凹状欠損部)と異物や付着物(凸状突出部)を区別する自動外観検査に対しても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一実施形態に係る異物とキズ痕との判別検査装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る異物とキズ痕との判別検査方法を説明する全体処理ルーチンである。
【図3】図2における撮像と抽出工程を説明する処理ルーチンである。
【図4】図3における自動検査A及び自動検査Bを説明する処理ルーチンである。
【図5】図2における判定処理を説明する処理ルーチンである。
【図6】本発明の一実施形態に係る異物とキズ痕との判別検査方法を分かり易く説明する説明図である。
【図7】図6に対応する図であり、斜光の照射方向を変えた説明図である。
【図8】細長の矩形状を有するパッド上に異物が付着すると共に、縦長のプローブ痕と横長のプローブ痕が生じている状態で図中縦方向と横方向から斜光を同時に照射した場合の撮像結果を示す図である。
【図9】図8に対応する図であり、図9のパッド上に図中横方向からの斜光のみを照射した場合の撮像結果を示す図である。
【図10】図8に対応する図であり、図10のパッド上に図中縦方向からの斜光のみを照射した場合の撮像結果を示す図である。
【図11】図8に示す工程で得られた撮像結果(図11(a))と、図9に示す工程で得られた撮像結果(図11(b))と、これら双方の撮像結果の論理積(AND)をとった画像処理結果(図11(c))を示す図である。
【図12】図8に示す工程で得られた撮像結果(図12(a))と、図10に示す工程で得られた撮像結果(図12(b))と、これら双方の撮像結果の論理積(AND)をとった画像処理結果(図12(c))を示す図である。
【図13】図11(c)に示した画像処理結果(図13(a))と、図12(c)に示した画像処理結果(図13(b))と、これら双方の画像処理結果の論理積(AND)をとった更なる画像処理結果(図13(c))を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
10(11,12) 斜光照明部
13 照明用電源
20 撮像部
21 IC顕微鏡
22 CCDカメラ又はC‐MOSカメラ等のカメラ
30 判別処理部
31 撮像/画像処理用パソコン
32 キャプチャーボード
33 I/Oポート
50 半導体センサチップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば圧力センサ等の半導体デバイス製造過程において抵抗値等を検出する検査に好適に使用される異物とキズ痕との判別検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧力センサ等の半導体デバイス製造過程においては、抵抗値等のデータを取得する検査が一般に行なわれている。この検査工程は、プローブをセンサ素子に直接当てて行われるが、プローブ先端部が0.1μm以下程度の針状をなすため、製品品質に影響はないものの、半導体デバイスの検査位置にプローブ痕が残る。
【0003】
一方、半導体デバイスの製造は所定のクリーン度を保ったクリーンルーム内等の環境下で行われているものの、半導体デバイスの製造過程で発生する異物や埃等を完全に遮断することは難しく、静電気等により微小な異物がデバイス表面に付着することがある。
【0004】
デバイス表面に付着した異物はこのような半導体デバイスの出力特性に悪影響を与えるため、最終検査において半導体デバイス表面の外観検査を行い、異物が付着した製品については洗浄を行う必要がある。
【0005】
しかし、この異物はプローブ痕よりはサイズが大きいものの、20μm程度と微小なため、異物なのかプローブ痕なのかを確実に判定することが難しく、疑わしい製品は全て洗浄作業を行わなければならないという問題がある。
【0006】
なお、被検査対象物の表面凹凸を観察(検査)する装置として、例えば特許文献1や特許文献2に記載の装置が知られている。
【特許文献1】特開2005−274256号公報
【特許文献2】特開2000−266686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1において開示された検査装置は、フィルム状基板材料を被検査対象物とする表面検査装置である。この装置は、斜光照明手段を備え、被検査対象物に斜光を一方向から照射し、被検査対象領域上の凹凸による影の発生箇所の相違に基づいて凹か凸かを判定する工程を備えている。しかしながら、被検査対象物に一方向からしか斜光を照射していないので撮像結果が暗くなり、被検査対象物が微小な異物とプローブ痕の場合に安定した影の検出が難しい。また、照射方向を順次変えながら影の有無を判断する必要があり、作業に手間取るという問題がある。
【0008】
一方、特許文献2において開示された検査装置は、金属表面にできたキズ欠陥とシミ欠陥とを判別する検査装置である。この装置は、キズ欠陥とシミ欠陥とがそれぞれ検出できる照明条件(光量)を調整する必要があり、被検査対象物として互いに形状が異なる微小な異物とプローブ痕に斜光を一方向から照射する場合、照射方向を順次変えながら光量を調整する必要がある。そのため、作業に手間取るという問題がある。また、被検査対象物に一方向からしか斜光を照射していないので、上述の特許文献1の場合と同様に撮像結果が暗くなり、安定した影の検出が難しいという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、検査作業に手間取ることなく微小な異物とキズ痕とを判別可能な異物とキズ痕との判別検査装置及び検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するために、本発明の請求項1に係る異物とキズ痕との判別検査装置は、
デバイス素子表面の撮像データに基づいて異物とキズ痕とを判別する検査装置であって、
前記デバイス素子に対して斜光を二方向から同時に照射する斜光照明手段と、
前記デバイス素子からの反射光を検出して撮像する撮像手段と、
前記各手段を制御すると共に撮像した画像をデジタル処理して異物かキズ痕かを判別する判別処理手段とを備えたことを特徴としている。
【0011】
また、本発明の請求項6に係る異物とキズ痕との判別検査方法は、
デバイス素子表面の撮像データに基づいて異物とキズ痕とを判別する検査方法であって、
前記デバイス素子に対して斜光を二方向から同時に照射する第1のステップと、
前記デバイス素子からの反射光を検出して撮像する第2のステップと、
前記第2のステップで撮像した画像をデジタル処理して異物かキズ痕かを判別する第3のステップとを少なくとも有することを特徴としている。
【0012】
従来のように被検査対象物に一方向から斜光を照射して、その被検査対象物上の凹凸の影の有無でその凹凸の存在を検査する方式では光量が不十分となりがちで、異物とキズ痕の正確な判定ができなかったが、本発明のように斜光を被検査対象物であるデバイス素子に二方向から同時に照射することで、十分な光量を確保でき、安定した撮像データを得て異物かプローブ痕かを正確に判断することができる。また、光量の調整をすることなく二方向を一組として、この組の照射方向のみを変えるのみで手間をかけることなく異物かプローブ痕かを判別することができる。
【0013】
また、本発明の請求項2に係る異物とキズ痕との判別検査装置は、請求項1に記載の異物とキズ痕との判別検査装置において、
前記判別処理手段は、前記デバイス素子に対して二方向から同時に斜光を照射して得られる撮像データのうち、斜光方向を変えて行った少なくとも2つの撮像データから、前記少なくとも2つの撮像データの両方で所定の輝度を有するものを異物として判別すると共に、前記少なくとも2つの撮像データのうち一方にのみ所定の輝度を有するものをキズ痕として判別することを特徴としている。
【0014】
また、本発明の請求項7に係る異物とキズ痕との判別検査方法は、請求項6に記載の異物とキズ痕との判別検査方法において、
前記第2のステップにおいて、前記デバイス素子に対して斜光を二方向から同時に照射して得られる撮像データのうち、斜光方向を変えて行った少なくとも2つの撮像データを得た後、前記第3のステップにおいて、前記少なくとも2つの撮像データの両方で所定の輝度を有するものを異物として判別すると共に、前記少なくとも2つの撮像データのうち一方にのみ所定の輝度を有するものをキズ痕として判別することを特徴としている。
【0015】
本発明のような判別処理手段や判別処理方法を有することで、異物とキズ痕とを確実に判別できるようになる。
【0016】
また、本発明の請求項3に係る異物とキズ痕との判別検査装置は、請求項1又は請求項2に記載の異物とキズ痕との判別検査装置において、
前記斜光照明手段は対向する二方向から同時に斜光を照射することを特徴としている。
【0017】
対向する二方向から被検査対象物に斜光を同時に照射することで、異物とキズ痕の反射光の違いをより際立たせることができ、異物とキズ痕との判別をより行い易くする。
【0018】
また、本発明の請求項4に係る異物とキズ痕との判別検査装置は、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の異物とキズ痕との判別検査装置において、
前記キズ痕は、幅が1μm以下の線状をなすプローブ痕であることを特徴としている。
【0019】
例えば、キズ痕が半導体デバイス上のパッドにプローブを当てる際に生じる幅1μm以下のプローブ痕のような微細なキズであっても、本発明によると異なる方向から斜光を同時に照射することで、パッド上の異物と容易に区別することができる。
【0020】
また、本発明の請求項5に係る異物とキズ痕との判別検査装置は、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の異物とキズ痕との判別検査装置において、
前記異物は、外径が20μm以下であることを特徴としている。
【0021】
異物がパッド上に付着する微細なものであっても、本発明によると異なる方向から斜光を同時に照射することで、パッド上のキズ痕と容易に区別することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、検査作業に手間取ることなく微小な異物とキズ痕とを判別可能な異物とキズ痕との判別検査装置及び検査方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る異物とキズ痕との判別検査装置及び検査方法について図面に基づいて説明する。なお、本実施形態の説明において、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向は、直交座標系の3軸、即ちX軸及びY軸が水平面上の互いに直交する軸線とし、Z軸がX軸とY軸の交点を通り、上記水平面と垂直な軸線とする。
【0024】
本実施形態に係る異物とキズ痕との判別検査装置は、図1に示すように被検査対象物である半導体センサチップ50に斜光を照射する斜光照明部10と、被検査対象物からの反射光を観察するIC顕微鏡及びこのIC顕微鏡で観察した画像を撮像するCCDカメラからなる撮像部20と、これらを制御すると共に撮像した画像をデジタル処理して異物かキズ痕かを判別する判別処理部30とを備えている。
【0025】
斜光照明部10は90度間隔に配列した4つの斜光照射部を備え、対向する2つの斜光部を1組(1セット)にして同時に二方向から検査対象に照査するようになっている。
【0026】
より具体的には、例えば被検査対象物の上方から見て、被検査対象物の被検査領域に対応する位置を原点とすると、1組の第1の対向する斜光照明部11がX軸の上方に備わると共に、この第1の斜光部と被検査対象物を中心として90度周方向に移動した位置、即ちY軸の上方に他の1組の第2の対向する斜光照明部12が備わっている。
【0027】
なお、図1における斜光照明部10(11,12)は、指向性斜光照明として示され、撮像部20は、IC顕微鏡21及びCCDカメラ又はC‐MOSカメラ等のカメラ22で示されている。また、判別処理部30は図1において撮像/画像処理用パソコン31内に構成され、キャプチャーボード32を介して撮像部20と電気的に接続されている。そして、照明用電源13が斜光照明部10に電力を供給すると共に、判別処理部30のI/Oポート33を介して照明用電源13の斜光の照射方向を制御するようになっている。
【0028】
なお、このような構成とは異なり、対向する位置に1組の斜光照明部を備え、この1組の斜光照明部自体又は被検査対象物を載せた検査台の何れかを90度回転させて実質的に異なる方向、即ちX軸方向及びY軸方向から斜光を照射できるようにしても良い。
【0029】
続いて、本実施形態に係る異物とキズ痕との判別検査装置の検査原理について説明する。なお、以下の説明においては、線状のキズ痕はプローブによって被検査対象物に付けられたプローブ痕とする。
【0030】
本実施形態に係る異物とキズ痕との判別検査装置においては、被検査対象物に全方向(X軸方向とY軸方向の両方向)照射を行い、所定の光度を閾値として2値化した撮像データを取得して異物やプローブ痕からなる検査候補の位置を決定する。次に、X軸方向の上方に配置された対向する2つの斜光照明部から斜光を同時に照射し、上述の全方向照射によって決定した検査候補毎に所定の光度を閾値として2値化した撮像データを取得する。次に、Y軸方向の上方に配置された対向する2つの斜光照明部から同時照射を行い、同様の撮像データを取得する。
【0031】
最後に、各検査候補についてX軸方向とY軸方向の撮像データから異物かプローブ痕かを判別する。異物の場合、所定の凸部を有するため、X軸方向とY軸方向からの斜光の照射の双方において所定の輝度を検出することができる。一方、プローブ痕はプローブの形状に起因して線状(キズ状)の微小な凹部の形態をなすため、線状をなすプローブ痕の長手方向から斜光を照射すると、照射光が凹み部底面でそれぞれの照射方向に反射してしまうため、所定の輝度を検出することができない。このような相違に基づき、X軸方向とY軸方向の両方共、所定の輝度を検出できた検査候補は異物と判断でき、X軸又はY軸の一方のみで所定の輝度を検出できたものはプローブ痕として判断できるので、各検査候補が異物かプローブ痕かを判別することができる。
【0032】
続いて、上述した本発明に係る異物とキズ痕(プローブ痕)との判別原理に基づく本実施形態の検査装置を用いた検査方法についてフローチャートに基づいて説明する。なお、以下の図2〜図5のフローチャートに示す検査方法においては、上述した2組の対向する斜光照明装置を用いる代わりに被検査対象物の周囲に周方向異なる位置で配置されたn組の斜光照射装置を用いる場合について説明する。これは、本発明における斜光照明部が上述したX軸の上方とY軸の上方のみの異なる2方向のみに配置されていることに限定されないことを明らかにするためである。
【0033】
本検査方法は、図2のフローチャートに示すように、異物とキズ痕との判別検査方法開始と終了との間に第1の処理工程として撮像/抽出工程(撮像と抽出工程)を有し(ステップS100)、続く第2の処理工程として判定工程(ステップS200)を有している。
【0034】
なお、第1の処理工程としての撮像/抽出工程は、欠陥候補の抽出を行うと共に斜光の指向性を活かした撮像を行う処理工程である。また、続く第2の処理工程としての判定工程は、欠陥候補の抽出結果と撮像結果を論理演算して欠陥候補が異物かキズ痕かを自動判定する処理工程である。
【0035】
続いて、撮像/抽出工程を図3のフローチャートに基づいて説明する。撮像/抽出工程の開始により撮像の準備に入る(ステップS110)。そして、被検査対象物の周囲にn組配置された全ての斜光照明を点灯し(ステップS120)、カメラで被検査対象物を撮像する(ステップS130)。そして、後述する自動検査Aを行う(ステップS140)。そして、全ての斜光照明を消灯する(ステップS150)。続いて、第1番目の斜光照明部(斜光照明No.1)を点灯し(ステップS160)、カメラでこれを撮像する(ステップS170)。そして、後述する自動検査Bを行う(ステップS180)。そして、第1番目の斜光照明部(斜光照明No.1)を消灯する(ステップS190)。
【0036】
このようにして、互いに対向する斜光照明のn組の組合せ(nセット)を順々に変えてステップS160〜ステップS190までのルーチンを繰り返す。具体的には、第n番目の斜光照明部(斜光照明No.n)を点灯し(ステップSn60)、カメラで被検査対象物を撮像する(ステップSn70)。続いて、後述する自動検査Bを行う(ステップSn80)。続いて、第n番目の斜光照明部(斜光照明No.n)を消灯する(ステップSn90)。これによって、撮像/抽出工程を終了する。
【0037】
続いて、上述した自動検査A及び自動検査Bの処理ルーチンを図4のフローチャートに基づいて説明する。最初に自動検査Aの処理ルーチンについて説明する。自動検査A(ステップS140)を開始することで最初にカメラで撮像した画像の内、光っている部分を抽出する(ステップS141)。この際、所定の明暗を区別する所定の閾値を設定して、これに基づいて反射して光っている領域を欠陥候補画像として表示する。これによって、欠陥候補画像1〜欠陥候補画像k(k:欠陥候補数)が表示される(ステップS142)。そして、自動検査Aを終了する。
【0038】
この所定の明暗を区別する所定の閾値を設定する際に、僅かな面積の明るい領域はノイズ成分としてキャンセルし、欠陥候補画像と見做さないようにするのが好ましい。
【0039】
続いて、自動検査B(ステップS180)の処理ルーチンについて説明する。自動検査Bを開始することで対向する2方向から同時に斜光を照射する1組目のカメラで被検査対象物を撮像し、この撮像した画像の内、光っている部分を抽出する(ステップS181)。この際、所定の明暗を区別する所定の閾値を設定して、これに基づいて反射して光っている領域のみを表示する。この光っている領域のみを表示する際にも、僅かな面積の明るい領域はノイズ成分としてキャンセルするのが良い。これによって、1組目の選別結果画像として表示する(ステップS182)。これを上述したように1組目のカメラからn組のカメラまでそれぞれ繰り返す。このようにして、n組のカメラのそれぞれについて行われる自動検査Bを終了する。
【0040】
続いて、判定ルーチンを図5のフローチャートに基づいて説明する。判定ルーチンを開始するにあたって、判定準備を行ない(ステップS211)、具体的な判定を開始する(ステップS212)。この具体的な判定にあたっては、ステップS212に示したように、欠陥候補画像1と選別結果画像1との論理積(AND)をとりIns-Image1とする。そして、欠陥候補画像1と選別結果画像2との論理積をとりIns-Image2とする。以下、n組目の選別結果画像までこの処理を順々に行い、欠陥候補画像1と選別結果画像nとの論理積をとりIns-Imagenとする。
【0041】
次いで、Ins-Image1〜Ins-Imagenの全画像中に光る部分があるか否か判断する(ステップS213)。この際、例えば欠陥候補1について、Ins-Image1〜Ins-Imagenの全画像中において光っていた場合は、欠陥候補1の図中楕円で囲ったように異物(凸)であると判断する(ステップS214)。また、欠陥候補1において光らない画像がある場合は傷(凹)であると判断する(ステップS215)。他の欠陥候補画像についてもこのような同様の判定を行う。
【0042】
ここで欠陥候補画像kについて説明する。この欠陥候補画像kにおける具体的な判定にあたっては、ステップS2k2に示したように、欠陥候補画像kと選別結果画像1との論理積をとりIns-Image1とする。続いて、欠陥候補画像kと選別結果画像2との論理積をとりIns-Image2とする。以下順々にこれを行い、欠陥候補画像kと選別結果画像nとの論理積をとりIns-Imagenとする。
【0043】
次いで、Ins-Image1〜Ins-Imagenの全画像中に光る部分があるか否か判断する(ステップS2k3)。この際、例えば欠陥候補kについて、Ins-Image1〜Ins-Imagenの全画像中において光っていた場合、欠陥候補kは異物(凸)であると判断する(ステップS2k4)。また、欠陥候補kにおいて光らない画像がある場合は、図中楕円で囲ったように傷(凹)であると判断する(ステップS2k5)。
【0044】
続いて、上述した異物とキズ痕との判別検査方法をより分かり易く理解できるようにするために、互いに対向する2つの斜光照明部を2組用意し、各組の斜光照明部を、被検査対象物を中心として周方向90度ずらすように配置した場合の異物とキズ痕との判別検査方法を本実施例として説明する。
【0045】
この際、検査対象物は半導体チップ上のワイヤボンディング等に用いるパッドとする。なお、この場合のパッドは、例えば半導体チップに形成された微小な圧力センサやフローセンサ上の表面から電気信号を取り出すためのパッドである。そして、このパッドを介したセンサの抵抗値等の測定試験を行った際に生じるプローブ痕(キズ痕)とクリーンルーム内のわずかなチリやゴミであってこの検査工程に至るまでにパッドに付着した異物との判別を行うものとする。
【0046】
本実施例の場合、プローブ痕(図中のキズ痕)をなす凹み部の幅は1μm以下で、異物は直径20μm程度である。この場合の異物は、クリーンルーム内のちりやほこりで直径が約20μm程度の非常に微細な異物であるが、パッド自体も非常に小さいものであるため、このような異物がパッド上に付着していると、ワイヤボンディング時に悪影響を及ぼすので必ず除去する必要がある。
【0047】
なお、プローブ痕がキズ痕として細長く形成されている理由は、プローブ痕をパッドに接触させたり離間させたりする機構の機械的なガタに起因するもので、例えばプローブ痕をパッドから引き離すときにプローブ痕先端が上述した機械的なガタによりパッド上面を特定の方向にすりながら離れることで生じるものであり、パッド自体の機能に悪影響を及ぼすものではない。
【0048】
しかしながら、プローブ痕は、パッド上の非常に小さな傷であるため、慣れない作業者が検査すると本来プローブ痕しかパッドに付いていない検査適合品の半導体チップをパッドに異物が付着した検査不適合品の半導体チップのパッドと誤判断することがあるが、本発明ではそのようなことを無くすことができる。
【0049】
図6は、パッド上に異物が付着した場合(図6(a))と、図中縦方向(Y軸方向)にプローブ痕が生じた場合(図6(b))と、図中横方向(X軸方向)にプローブ痕が生じた場合(図6(c))において、図6の各上段の対応図に示すように、図中横方向から対向する斜光照明装置の斜光をこれらの異物やプローブ痕に当てた場合の光の反射の仕方(図6の各中段の対応図)及び撮像装置で撮像された撮像結果(図6の各下段の対応図)を示している。
【0050】
この自動検査工程においては、取得した画像を二値化して異物やプローブ痕などの検査対象物を画像上白色領域で示すと共に、それ以外の領域を黒色とする。この際、所定の面積に達しない小さい白色領域は、ノイズ成分としてキャンセルし黒色領域とするようになっている。
【0051】
図7は、パッド上に異物が付着した場合(図7(a))と、図中縦方向にプローブ痕が生じた場合(図7(b))と、図中横方向にプローブ痕が生じた場合(図7(c))において(図7の各上段の対応図参照)、図中縦方向から対向する斜光照明装置の斜光をこれらの異物やプローブ痕に当てた場合の光の反射の仕方(図7の各中段の対応図)及び撮像装置で撮像された撮像結果(図6の各下段の対応図)を示している。
【0052】
これらの図から明らかなように、異物に関しては図中横方向(X軸方向)から斜光を照射しても縦方向(Y軸方向)から斜光を照射しても異物の形状がそのまま撮像されることが分かる。一方、プローブ痕については、プローブ痕の長手方向と直交する方向から入光する斜光の場合にのみこのプローブ痕の形状がそのまま撮像され、プローブ痕の長手方向と平行な方向から入光する斜光の場合はプローブ痕の形状が全く撮像されないことが分かる。
【0053】
以上のことから、これらの異物とプローブ痕に横方向と縦方向から同時に斜光を当てた場合は、異物に加えてプローブ痕の双方についてもそれらの形状がそれぞれ撮像されることが分かる(図8参照)。
【0054】
図8は、細長の矩形状をなすパッド上に上述した異物が付着すると共に、図中縦方向を長手方向とするプローブ痕と、図中横方向を長手方向とするプローブ痕が生じている場合を説明の都合上同時に示している(図8(a)参照)この場合は、図8(a)に示すような図中横方向(X軸方向)及び縦方向(Y軸方向)の2方向に関して同時に斜光を照射することにより、それに基づく光の反射が図8(b)に示すように生じ、図8(c)に示すように異物に加えてプローブ痕の双方についてもそれらの形状がそれぞれ撮像される。これは、上述したフローチャートのステップS120乃至S140に相当する。
【0055】
図9は、図8に対応する図であり、図6に示すように図9中横方向(X軸方向)に斜光を照射した場合のランド上の撮像結果を示している。この撮像結果から分かるように、異物と、長手方向が斜光方向と垂直をなす縦長のプローブ痕のみが撮像されている(図9(c)参照)。これは、上述したフローチャートにおいてn=2とした場合のステップS160及びS170に相当する。
【0056】
図10も、図8に対応する図であり、図7に示すように図10中縦方向に斜光を照射した場合のランド上の撮像結果を示している。この撮像結果から分かるように、異物と、長手方向が斜光方向と垂直をなす横長のプローブ痕のみが撮像されている(図10(c)参照)。これも、上述したフローチャートにおいてn=2とした場合のステップS160及びS170に相当する。
【0057】
図11は、図8の説明で得られた撮像結果(図8(c)及び図11(a))と、図9の説明で得られた撮像結果(図9(c)及び図11(b))と、これら双方の撮像結果の論理積(AND)をとった画像処理結果(図11(c))を示している。
【0058】
図12は、図8の説明で得られた撮像結果(図8(c)及び図12(a))と、図10の説明で得られた撮像結果(図10(c)及び図12(b))と、これら双方の撮像結果の論理積(AND)をとった画像処理結果(図12(c))を示している。これは、上述したフローチャートにおいて、n=2、k=3とした場合のステップS212及びステップS2k2に相当する。
【0059】
図13は、図11(c)に示した画像処理結果(図13(a))と、図12(c)に示した画像処理結果(図13(b))とを比較し、この双方に表示されている白色領域を異物として判断し、何れか片側にしか示されていない白色領域をプローブ痕としてキャンセルする過程を示している。この判断にあたっては、図13(a)に示した画像処理結果と図13(b)に示した画像処理結果の論理積をとり、(図13(c))に示すような更なる画像処理結果を得て、この白色領域を異物と判断している。これは、上述したフローチャートにおいて、n=2、k=3とした場合のステップS213及びステップS2k3に相当する。
【0060】
このように最終的に異物のみが白色領域として表示されることで、パッド上の異物とプローブ痕の存在を発見すると共に、これら両者を区別することができ、その結果、パッド上にプローブ痕のみが残ったセンサを検査適合品と判断し、プローブ痕以外に異物がパッド上に付着しているセンサを検査不適合品と判断することができる。
【0061】
以上説明したように、異なる片側方向からの斜光を照射しその影を検出する従来の検査装置における光量が不足するという欠点を、異なる2方向から対向する斜光を照射する本発明によって解決することができる。即ち、本発明は片側からのみ斜光を照射して影を測定して異物を検出する従来技術と根本的に異なる原理に基づいて異物とプローブ痕との判別を行うことに特徴を有していると言える。これによって被検査対象物に付着した異物や被検査対象物に生じたプローブ痕とノイズを原因とするものとをそれぞれ区別をすることができる。
【0062】
なお、上述した説明において斜光照明装置は、横方向(X軸の上方)と縦方向(Y軸の上方)の二方向に2組配置したが、これには限定されず、例えば対向している1組の斜光照明装置を用意し、この斜光照明装置を被検査対象物廻りに90度回転可能にしてX軸方向とY軸方向からそれぞれ斜光を照射して被検査対象物を撮像するようにしても良い。
【0063】
また、斜光照明装置を90度回転させる代わりに、1組の斜光照明装置を固定して被検査対象物を載せた検査台を90度回転させることで、結果的にX軸方向から斜光を照射して被検査対象物の撮像を得ると共に、これとは90度周方向に異なる角度をなすY軸方向から斜光を照射した被検査対象物の撮像を得るようにしても良い。
【0064】
また、上述した図3乃至図5の検査ルーチンのフローチャートに示すように、1組の斜光照明装置を被検査対象物周りに所定角度ずつn回停止できるようにし、n方向からそれぞれ斜光を照射して撮像するようにしても良い。
【0065】
また、斜光照明装置を1組だけ被検査対象物の周囲に配置し、被検査対象物を載せた検査台が所定角度ずつn回停止できるようにし、n方向からそれぞれ斜光を照射して撮像するようにしても良い。
【0066】
また、本発明においては、検査工程の最初の段階で複数の組の斜光照明装置を全て作動させて全ての方向から斜光を照射する工程は必ずしも必要としない。具体的には、検査工程の最初に上述したX軸方向とY軸方向の両方向から同時に斜光する必要はなく、X軸方向のみから斜光を照射した被検査対象物の画像とY軸方向のみから斜光を照射した被検査対象物の画像との論理積をとり、この論理積によって得られた処理画像においても残っている白色領域を異物と判断しても良い。
【0067】
しかしながら、検査工程の最初の工程で、例えばX軸方向とY軸方向の両方向から同時に斜光を照射することで、パッドの縁部等、異物やプローブ痕との関係のない領域を撮像することができ、後の検査工程においてこの白色領域をキャンセルすることが可能となる。
【0068】
また、検査工程の最初に全方向から被検査対象物を斜光することで、例えばプローブ痕の長手方向を特定することが可能となる。これによって、対向して配置され異なる二方向から斜光を照射する斜光照明装置の位置をプローブ痕の長手方向に対して直交する方向又は平行な方向に位置決めすることができる。その結果、そのプローブ痕を画像処理段階における論理積で消すことができ、異物として判断される白色領域として残さないようにすることができる。
【0069】
具体的には、上述した2組の斜光照明装置をそれぞれX軸方向の上方とY軸方向の上方に配置した場合、この斜光照明装置又は被検査対象物を載せる検査台を回転可能とし、検査工程の最初の段階で2組の斜光照明装置によりX軸方向とY軸方向から同時に斜光を照射させ、この段階で撮像されたプローブ痕の長手方向を画像処理により求める。そして、この長手方向に斜光照明装置のX軸方向又はY軸方向の一方が合致するように斜光照明装置又は被検査対象物を載せる検査台を回転させてX軸方向とY軸方向のそれぞれから別々に斜光を照射する。これによって、そのプローブ痕を上述した図5のフローチャートのステップS213及びS2k3(n=2)で規定される画像処理段階で論理積により消すことができ、白色領域として残ることがなくなる。
【0070】
なお、上述の実施形態において対向する二方向から斜光を照射していたが、必ずしも厳密に対向する二方向から斜光を照射することに限定されず、異なる二方向から斜光を照射しても本発明特有の効果を得ることは可能である。
【0071】
また、本発明の適用範囲は、上述した例えば圧力センサやフローセンサ等の半導体デバイス製造過程において抵抗値等のデータを取得する検査の使用に限定されず、被検査対象物のハンドリングのミスによって生じた表面の傷(凹状欠損部)と異物や付着物(凸状突出部)を区別する自動外観検査に対しても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の一実施形態に係る異物とキズ痕との判別検査装置の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る異物とキズ痕との判別検査方法を説明する全体処理ルーチンである。
【図3】図2における撮像と抽出工程を説明する処理ルーチンである。
【図4】図3における自動検査A及び自動検査Bを説明する処理ルーチンである。
【図5】図2における判定処理を説明する処理ルーチンである。
【図6】本発明の一実施形態に係る異物とキズ痕との判別検査方法を分かり易く説明する説明図である。
【図7】図6に対応する図であり、斜光の照射方向を変えた説明図である。
【図8】細長の矩形状を有するパッド上に異物が付着すると共に、縦長のプローブ痕と横長のプローブ痕が生じている状態で図中縦方向と横方向から斜光を同時に照射した場合の撮像結果を示す図である。
【図9】図8に対応する図であり、図9のパッド上に図中横方向からの斜光のみを照射した場合の撮像結果を示す図である。
【図10】図8に対応する図であり、図10のパッド上に図中縦方向からの斜光のみを照射した場合の撮像結果を示す図である。
【図11】図8に示す工程で得られた撮像結果(図11(a))と、図9に示す工程で得られた撮像結果(図11(b))と、これら双方の撮像結果の論理積(AND)をとった画像処理結果(図11(c))を示す図である。
【図12】図8に示す工程で得られた撮像結果(図12(a))と、図10に示す工程で得られた撮像結果(図12(b))と、これら双方の撮像結果の論理積(AND)をとった画像処理結果(図12(c))を示す図である。
【図13】図11(c)に示した画像処理結果(図13(a))と、図12(c)に示した画像処理結果(図13(b))と、これら双方の画像処理結果の論理積(AND)をとった更なる画像処理結果(図13(c))を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
10(11,12) 斜光照明部
13 照明用電源
20 撮像部
21 IC顕微鏡
22 CCDカメラ又はC‐MOSカメラ等のカメラ
30 判別処理部
31 撮像/画像処理用パソコン
32 キャプチャーボード
33 I/Oポート
50 半導体センサチップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイス素子表面の撮像データに基づいて異物とキズ痕とを判別する検査装置であって、
前記デバイス素子に対して斜光を二方向から同時に照射する斜光照明手段と、
前記デバイス素子からの反射光を検出して撮像する撮像手段と、
前記各手段を制御すると共に撮像した画像をデジタル処理して異物かキズ痕かを判別する判別処理手段とを備えたことを特徴とする異物とキズ痕との判別検査装置。
【請求項2】
前記判別処理手段は、前記デバイス素子に対して二方向から同時に斜光を照射して得られる撮像データのうち、斜光方向を変えて行った少なくとも2つの撮像データから、前記少なくとも2つの撮像データの両方で所定の輝度を有するものを異物として判別すると共に、前記少なくとも2つの撮像データのうち一方にのみ所定の輝度を有するものをキズ痕として判別することを特徴とする、請求項1に記載の異物とキズ痕との判別検査装置。
【請求項3】
前記斜光照明手段は対向する二方向から同時に斜光を照射することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の異物とキズ痕との判別検査装置。
【請求項4】
前記キズ痕は、幅が1μm以下の線状をなすプローブ痕であることを特徴とする、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の異物とキズ痕との判別検査装置。
【請求項5】
前記異物は、外径が20μm以下であることを特徴とする、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の異物とキズ痕との判別検査装置。
【請求項6】
デバイス素子表面の撮像データに基づいて異物とキズ痕とを判別する検査方法であって、
前記デバイス素子に対して斜光を二方向から同時に照射する第1のステップと、
前記デバイス素子からの反射光を検出して撮像する第2のステップと、
前記第2のステップで撮像した画像をデジタル処理して異物かキズ痕かを判別する第3のステップとを少なくとも有することを特徴とする異物とキズ痕との判別検査方法。
【請求項7】
前記第2のステップにおいて、前記デバイス素子に対して斜光を二方向から同時に照射して得られる撮像データのうち、斜光方向を変えて行った少なくとも2つの撮像データを得た後、前記第3のステップにおいて、前記少なくとも2つの撮像データの両方で所定の輝度を有するものを異物として判別すると共に、前記少なくとも2つの撮像データのうち一方にのみ所定の輝度を有するものをキズ痕として判別することを特徴とする、請求項6に記載の異物とキズ痕との判別検査方法。
【請求項1】
デバイス素子表面の撮像データに基づいて異物とキズ痕とを判別する検査装置であって、
前記デバイス素子に対して斜光を二方向から同時に照射する斜光照明手段と、
前記デバイス素子からの反射光を検出して撮像する撮像手段と、
前記各手段を制御すると共に撮像した画像をデジタル処理して異物かキズ痕かを判別する判別処理手段とを備えたことを特徴とする異物とキズ痕との判別検査装置。
【請求項2】
前記判別処理手段は、前記デバイス素子に対して二方向から同時に斜光を照射して得られる撮像データのうち、斜光方向を変えて行った少なくとも2つの撮像データから、前記少なくとも2つの撮像データの両方で所定の輝度を有するものを異物として判別すると共に、前記少なくとも2つの撮像データのうち一方にのみ所定の輝度を有するものをキズ痕として判別することを特徴とする、請求項1に記載の異物とキズ痕との判別検査装置。
【請求項3】
前記斜光照明手段は対向する二方向から同時に斜光を照射することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の異物とキズ痕との判別検査装置。
【請求項4】
前記キズ痕は、幅が1μm以下の線状をなすプローブ痕であることを特徴とする、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の異物とキズ痕との判別検査装置。
【請求項5】
前記異物は、外径が20μm以下であることを特徴とする、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の異物とキズ痕との判別検査装置。
【請求項6】
デバイス素子表面の撮像データに基づいて異物とキズ痕とを判別する検査方法であって、
前記デバイス素子に対して斜光を二方向から同時に照射する第1のステップと、
前記デバイス素子からの反射光を検出して撮像する第2のステップと、
前記第2のステップで撮像した画像をデジタル処理して異物かキズ痕かを判別する第3のステップとを少なくとも有することを特徴とする異物とキズ痕との判別検査方法。
【請求項7】
前記第2のステップにおいて、前記デバイス素子に対して斜光を二方向から同時に照射して得られる撮像データのうち、斜光方向を変えて行った少なくとも2つの撮像データを得た後、前記第3のステップにおいて、前記少なくとも2つの撮像データの両方で所定の輝度を有するものを異物として判別すると共に、前記少なくとも2つの撮像データのうち一方にのみ所定の輝度を有するものをキズ痕として判別することを特徴とする、請求項6に記載の異物とキズ痕との判別検査方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−139434(P2010−139434A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317233(P2008−317233)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】
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