説明

異物検出装置

【課題】ターゲットに照射して戻ってくる散乱光の偏波成分によらず異物の3次元形状を高精度に検出できる異物検出装置を得る。
【解決手段】連続波信号で変調されたレーザ光を出力する光源6と、レーザ光を用いてターゲットの捜索範囲を走査するスキャナ10と、ターゲット表面で散乱される散乱光を偏波成分ごとに分離する偏波ビームスプリッタ12と、散乱光の各偏波成分をそれぞれ受光する受信レンズ13a、13b、及び光受信機14a、14bで構成される受光手段と、レーザ光と散乱光の各偏波成分との位相差及び散乱光の各偏波成分の受信強度を検出する位相検波器15a、15bと、これらの検出結果に基づいて散乱光の偏波解消度を算出すると共に、偏波解消度の算出結果に応じて異物との離間距離を算出し異物の3次元形状を出力するパソコン3と、を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターゲットに光を照射したときの散乱光を用いて異物を検出する異物検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
異物を検出する装置として、従来、ターゲットに対してレーザ光を送信する送信機と、ターゲットからの戻り光を偏波するビームスプリッタと、偏波された戻り光を受信する受信機とを備え、レーザ光の偏波解消度およびターゲットとの距離を計測してターゲット上にある異物の3次元形状を検出するレーダシステムがある(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】J.T.Murray他、Proc. of SPIE,Vol.5086,pp.84−95,2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなレーダシステムにおいては、ターゲットからの戻り光を偏波成分ごとに分離して偏波解消度と距離を同時に計測するため、戻り光が直線偏波の場合には分離された一方の偏波強度が非常に弱くなる。このため、受信SN比が低下して距離の計測制度が低下し、異物の3次元形状の検出精度が劣化するという問題があった。
【0005】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、戻り光の偏波成分によらず異物の3次元形状を高精度に検出できる異物検出装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る異物検出装置は、レーザ光を出力する光出力手段と、レーザ光を用いて捜索対象の捜索範囲を走査する走査手段と、捜索対象にレーザ光を照射したときの捜索対象からの散乱光を偏波成分ごとに分離する偏波分離手段と、散乱光の各偏波成分を受光する第1及び第2の受光手段と、レーザ光と散乱光の各偏波成分との位相差及び散乱光の各偏波成分の受信強度を検出する第1及び第2の位相差検出手段と、検出結果に基づいて散乱光の偏波解消度を算出すると共に、偏波解消度の算出結果に応じて異物との離間距離を算出し、異物の形状を出力する信号処理手段と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、レーザ光を出力する光出力手段と、レーザ光を用いて捜索対象の捜索範囲を走査する走査手段と、捜索対象にレーザ光を照射したときの捜索対象からの散乱光を偏波成分ごとに分離する偏波分離手段と、散乱光の各偏波成分を受光する第1及び第2の受光手段と、レーザ光と散乱光の各偏波成分との位相差及び散乱光の各偏波成分の受信強度を検出する第1及び第2の位相差検出手段と、検出結果に基づいて散乱光の偏波解消度を算出すると共に、偏波解消度の算出結果に応じて異物との離間距離を算出し、異物の形状を出力する信号処理手段と、を備えたことにより、戻り光の偏波成分によらず異物の3次元形状を高精度に検出できる異物検出装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1に係る異物検出装置の構成を示す図である。
【図2】図1の異物検出装置が検出する検出画像の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係る異物検出装置の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態3に係る異物検出装置の構成を示す図である。
【図5】図4の異物検出装置が粗検出するときの検出画像の一例を示す図である。
【図6】図4の異物検出装置が精検出するときの検出画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
本発明を実施する実施の形態1における異物検出装置を図1および図2を用いて説明する。図1において、異物検出装置1は捜索対象のターゲットに照射するレーザ光を発生する光源6やターゲット表面で散乱された戻り光を受光する光学素子等を内部に備えた筐体2と、光学素子の制御や異物検出の信号処理を行うパソコン3すなわち信号処理手段とで構成されている。
なお、ここではターゲットとはレーザ光が照射される対象物全てを表し、異物とはターゲット内の一部に存在する金属片等の人工物を表すものとする。例えば、空港の滑走路に空き缶が転がっている状況で異物検出をする場合、滑走路の路面および空き缶がターゲットであり、空き缶が異物となる。
【0010】
筐体2の内部には、レーザ光を変調するための連続波電気信号を単一周波数で発振する発振器4と、連続波電気信号を3つに分配する分配器5と、分配器5の一端に接続され連続波電気信号に基づいて変調したレーザ光を出力する光源6と、光源6の先端に設けられ所望の位置までレーザ光を導く光ファイバ7すなわち光導波手段と、光ファイバ7から出力されるレーザ光の集光スポットサイズ変換及びビーム形状の調整をする送信レンズ8と、送信レンズ8で調整されたレーザ光の光経路を変更する折り返しミラー9と、折り返しミラー9からのレーザ光を反射して筐体2の外部にあるターゲットに照射し、このターゲット表面で散乱された散乱光をスキャンするスキャナ10すなわち走査手段と、が設けられている。
【0011】
さらに、筐体2内部には、スキャナ10で反射された散乱光を所定の径を有する平行光に変換する受信望遠鏡11と、受信望遠鏡11を透過した平行光を直交する2つの直線偏波成分に分離する偏波ビームスプリッタ12すなわち偏波分離手段と、偏波ビームスプリッタ12で分離された光を集光する受信レンズ13a、13b、及び集光された散乱光を直接検波して電気信号に変換する光受信機14a、14bで構成される第1及び第2の受光手段と、分配器5および光受信機14a、14bのいずれか一方に接続され、送信前のレーザ光の位相と受信した散乱光の位相の差を検出する位相検波器15a、15bすなわち第1及び第2の位相差検出手段と、が設けられている。
なお、送信レンズ8及び受信レンズ13a、13bは凹面鏡等の光学素子で代替しても良い。
【0012】
光源6から光ファイバ7を介して送信レンズ8までの経路、送信レンズ8と折り返しミラー9間の経路、折り返しミラー9とスキャナ10間の経路、スキャナ10から受信望遠鏡11、偏波ビームスプリッタ12を介して受信レンズ13a、13bまでの経路、および受信レンズ13aと光受信機14a、受信レンズ13bと光受信機14bそれぞれの間の経路は、全て光信号を伝送する光回路で構成されている。なお、これらの光学素子はレーザ光の透過および反射の過程において偏波を保持する。
【0013】
一方、発振器4と分配器5間の経路、分配器5と光源6間の経路、分配器5と位相検波器15a、15b間の経路、光受信機14aと位相検波器15a間の経路、光受信機14bと位相検波器15b間の経路、および位相検波器15a、15b、スキャナ10、偏波ビームスプリッタ移動機構17それぞれとパソコン3との間の経路は、全て電線や電気信号ケーブル等により接続された電気回路で構成されている。
【0014】
ここで、動作について説明する。
パソコン3に異物の捜索範囲を設定すると、パソコン3はスキャナ10にレーザ光の照射方向がスキャン初期位置となるようなスキャナ制御信号を送信する。
発振器4は予め定めた一定の周波数を有する連続波電気信号を発振し、この連続波電気信号は分配器5で3つに分配されて1つは光源6に、他の2つは位相検波器16a、16bにそれぞれ伝達される。光源6に伝達された連続波電気信号は光源6内部で発振するCW(continuous wave)光を変調するのに用いられ、光源6は周波数変調された単一の直線偏波成分を有するレーザ光信号を出力する。
【0015】
このレーザ光信号は光ファイバ7内部を通って空間に出力された後、送信レンズ8によりターゲット上で所望の集光スポットサイズ及びビーム形状となるように形状調整される。送信レンズ8を透過したレーザ光信号は折り返しミラー9で光経路変更され、スキャナ10により方向転換されてターゲット上の任意の地点を走査するのに用いられる。
なお、スキャナ10はパソコン3からの制御信号に基づいて適切な位置および速度で走査するものであって、スキャナ10の走査範囲すなわちターゲットの捜索範囲は任意に変更できる。捜索範囲にデッドゾーンを発生させたくない場合は集光スポットサイズを大きくして低分解能で検出を行い、ある程度のデッドゾーン発生は許容できるが高分解能にしたい場合は集光スポットサイズを小さくして検出を行う。
【0016】
ターゲットに照射されたレーザ光信号はターゲットの表面で散乱され、その一部はスキャナ10へ戻る。この戻ってきた散乱光はスキャナ10で反射された後に受信望遠鏡11で平行光に変換され、偏波ビームスプリッタ12にて直交する2つの直線偏波成分に分離される。偏波ビームスプリッタ12は、光源6から出力されるレーザ光と同じ直線偏波成分の光を透過させ、この偏波成分に直交する偏波成分の光を反射する。これにより、偏波ビームスプリッタ12では透過光である偏波保持成分と反射光である偏波解消成分とを分離できる。
【0017】
偏波ビームスプリッタ12を透過した光は受信レンズ13aにより集光され、偏波ビームスプリッタ12で反射された光は受信レンズ13bにより集光される。受信レンズ13a、13bは適切な位置に配置されており、分離された各偏波成分の光はそれぞれ光受信機14a、14bの受光面に一致するよう集光される。
【0018】
スキャナ10はまた、散乱光を反射する際の走査位置情報を電気信号にしてパソコン3に伝達する。なお、ここでの走査位置情報とは、捜索範囲におけるX座標、Y座標の位置情報、および2次元画像の各画素に対応するスキャン角の情報等を総称している。
【0019】
光受信機14a、14bは散乱光を受光すると、直接検波により受信電気信号に変換して位相検波器15a、15bに出力する。受信電気信号は発振器4の連続波電気信号で変調されたレーザ光の散乱光を変換したものであるから、これらの周波数は連続波電気信号と同じになる。一方、受信電気信号の位相はレーザ光が筐体2とターゲット間を往復する時間分だけ連続波電気信号よりも遅れる。
【0020】
光受信機14a、14bからの受信電気信号に加えて分配器5から分配された単一周波数の連続波電気信号が入力されると、位相検波器15a、15bは受信電気信号と連続波電気信号の位相差および受信信号強度を検出する。なお、受信信号強度は受信電気信号と連続波電気信号の差を複素ベクトルで表示したときの絶対値、すなわち振幅の2乗に比例する値である。
【0021】
パソコン3はスキャナ10を走査させながら位相検波器15a、15bが検出した位相差および受信信号強度の情報を電気信号として取り込み、これらの情報を用いて散乱光の偏波解消度を算出する。例えば位相検波器15aからの受信信号強度をA1、位相検波器15bからの受信信号強度をA2とすると、偏波解消度は次式により求められる。
【0022】
【数1】

【0023】
パソコン3により、位相検波器15aからの受信信号強度はスキャナ10の走査位置情報に対応して、図2(a)に示すようなN×N画素(Nは整数)の2次元画像として作成され、位相検波器15bからの受信信号強度は図2(b)に示すようなN×N画素の2次元画像として作成され、これらの図及び上記式に基づいて図2(c)に示すような偏波解消度画像が作成される。
【0024】
ターゲットの捜索範囲は2次元画像上では捜索領域20として示され、自然物が存在する領域は異物検出領域21a、金属片等の異物が存在する領域は21bとして画像上にコントラストとなって表れる。自然物は表面に凹凸を有するため、レーザ光が照射されると四方八方の偏波成分を有する散乱光となる。これに対し、人工的に作られた異物は表面が滑らかであるため、特定方向の偏波成分のみを有する散乱光となる。したがって、自然物の偏波解消度は背景のターゲットと同じになり、図2(c)には異物検出領域21aは表れない。一方、異物の偏波解消度は背景とは異なるため、図2(c)上で白いコントラストとなって浮かび上がる。なお、これらの画像上で背景等は異物未検出領域22として表される。
【0025】
次に、パソコン3は取り込んだ情報に基づいて、筐体2とターゲット上のレーザ光が照射する地点との離間距離を算出する。パソコン3には、異物検出を開始する前に予め計測しておいたノイズレベルが登録されており、パソコン3は位相検波器15a、15bから取り込んだ受信信号強度とそれぞれのノイズレベルとを比較して受信SN比を算出し、この値が高い方を離間距離の算出に用いる。このように、受信SN比が大きい方の偏波成分について距離を算出することにより、より高精度に離間距離を算出できる。
【0026】
パソコン3が取り込んだ位相差のうち受信SN比が大きい方の位相差をΔΦ、発振器4の連続波電気信号の周波数をfm、光速をcとすると、離間距離Lは次式で表すことができる。ただしnは1以上の整数であり、予めパソコン3に設定された筐体2とターゲットの距離範囲情報に基づいて決まる値である。筐体2とターゲット間の距離範囲情報が予めパソコン3に設定されていない場合、筐体2とターゲット間の距離に対して連続波電気信号の1周期が極めて大きくなるように発振器4の発振周波数を小さくしておくことでnを一意に決めることもできる。
【0027】
【数2】

【0028】
パソコン3は上記式を用いて算出される距離の情報をスキャナ10の2次元方向の走査位置情報に対応させて図2(d)に示すようなN×N画素の2次元画像を作成し、上記偏波解消度の図とあわせて図2(e)に示すような3次元画像を作成する。その後、偏波解消度の2次元画像及び異物の形状を示す3次元画像の双方で検出した異物検出領域21bのみを人工的な異物として検出する。
【0029】
このとき、予めパソコン3に異物の3次元形状の先見情報を登録しておき、作成した3次元画像の異物形状と整合する場合のみ異物として検出し、整合しない場合は異物では無いと判断して検出しないようにしても良い。このように整合の確認工程を加えることにより、所望の異物のみを検出でき、異物検出の確度を向上できる。
【0030】
なお、ここではスキャナ10を2次元方向に走査させているが、ライン照射することにより走査方向を1次元にしても良い。この場合は光受信機14a、14bをリニアアレイとする。また、照射するレーザ光を2次元の矩形ビームとして面照射し、光受信機14a、14b等の受信系スキャン作業を省略しても良い。
【0031】
上記、受信SN比が大きな偏波成分のみを用いて距離を算出する場合について示したが、2つの偏波成分から距離を算出して平均をとっても良い。例えば光受信機14a、14bで受信する2つの偏波成分の受信SN比が同じ場合、2つの受信信号それぞれについて離間距離を算出して合算すると、信号の振幅が2倍になるのに対し雑音は√2倍に抑えられるため、精度誤差を1/√2倍に改善できる。
【0032】
また、この方法は受信SN比の閾値を予め決めておき、この閾値を超える偏波成分により離間距離の算出をしても良い。つまり、受信SN比の閾値を予めパソコン3に登録しておき、各偏波成分の受信SN比がこの閾値を超える場合には2つの偏波成分を用いて離間距離を算出し、一方のみがこの閾値を超える場合にはその偏波成分を用いて離間距離を算出する。このように受信SN比が閾値を超えるか否かによって離間距離の算出方法を変えることで、計測精度を向上できる。
【0033】
この実施の形態によれば、異物検出装置1はスキャナ10に戻ってきた散乱光を、偏波ビームスプリッタ12を用いて2つの直交する偏波成分に分離し、それぞれの受信信号強度から偏波解消度を算出して2次元画像を作成すると共に異物形状の3次元画像を作成して、これらの画像の双方で異物検出領域とした場合に異物として3次元形状を出力することにより、正確に異物を検出できる。
【0034】
また、離間距離の算出に受信SN比が最も大きな偏波成分のみを用いることにより、より精度の高い異物検出ができる。
また、受信SN比の閾値を予め決めておき、この閾値を超える偏波成分を用いて離間距離を算出することにより、離間距離の計測精度すなわち異物の3次元形状の検出精度を向上できる。
【0035】
また、検出したい異物の3次元形状の先見情報を予めパソコン3に登録しておき、作成した3次元画像の異物形状と整合する場合のみ異物として検出することにより、所望の異物の検出確度を向上できる。
【0036】
また、このような異物検出装置1を空港の滑走路や高速道路等で用いることにより、危険物などの人工的な異物を精度良く検出することができる。
【0037】
実施の形態2.
実施の形態1では、偏波ビームスプリッタ12で分離された散乱光の偏波成分のうち、受信SN比の大きい偏波成分について筐体2とターゲット上のレーザ光が照射する地点との離間距離を算出しているが、実施の形態2では偏波ビームスプリッタ12を移動させる移動機構を設け、偏波解消度を計測した後に偏波ビームスプリッタ12を光経路から外して離間距離を算出する。また、光ファイバ7の先端にファイバ位置を調整する焦点調整機構を設ける。本実施の形態に係る異物検出装置1aを、図3を用いて説明する。
【0038】
図3において、異物検出装置1aは筐体2a及びパソコン3すなわち信号処理手段で構成され、筐体2aの内部には、実施の形態1に記載の筐体2内部の構成に加え、光ファイバ7を所望の位置に移動させる焦点調整機構16すなわち位置調整手段と、偏波ビームスプリッタ12の位置を移動させる偏波ビームスプリッタ移動機構17すなわち移動手段が設けられている。
なお、焦点調整機構16及び偏波ビームスプリッタ移動機構17は共にパソコン3に電気ケーブルで接続され、パソコン3からの制御信号に応じて光ファイバ7の位置調整あるいは偏波ビームスプリッタ12の移動をする。
【0039】
次に、動作について説明する。
パソコン3に異物の捜索範囲を設定すると、パソコン3はスキャナ10にレーザ光の照射方向がスキャン初期位置となるようなスキャナ制御信号を送信すると共に、焦点調整機構16に位置制御信号を送信し、筐体2aから出力されるレーザ光がコリメート光となるように光ファイバ7を移動させてファイバ端と送信レンズ8の離間距離を調整する。レーザ光をコリメート光とすることでターゲット上に照射する光量むらを低減し、スキャンする際の不感知領域を無くすことができる。
【0040】
発振器4は予め定めた一定の周波数を有する連続波電気信号を発振する。この連続波電気信号は分配器5で3つに分配され、そのうちの1つは光源6に、他の2つは位相検波器15a、15bにそれぞれ伝達される。光源6に伝達された連続波電気信号は光源6内部で発振するCW光を変調するのに用いられ、光源6からは周波数変調された単一の直線偏波成分を有するレーザ光信号が出力される。
【0041】
このレーザ光信号は焦点調整機構16によりターゲット表面で適切なスポットサイズとなるよう位置調整された光ファイバ7内部を通って空間に出力された後、送信レンズ8によりターゲット上で所望の集光スポットサイズ及びビーム形状となるように形状調整される。送信レンズ8を透過したレーザ光信号は折り返しミラー9で光経路変更され、スキャナ10により方向転換されてターゲット上の任意の地点を走査するのに用いられる。
なお、スキャナ10はパソコン3からの制御信号に基づいて適切な位置および速度で走査するものであって、スキャナ10の走査範囲すなわちターゲットの捜索範囲は任意に変更できる。
【0042】
ターゲットに照射されたレーザ光信号はターゲット表面で散乱され、その一部はスキャナ10へ戻る。この戻ってきた散乱光はスキャナ10で反射された後に受信望遠鏡11で平行光に変換され、偏波ビームスプリッタ12にて直交する2つの偏波成分に分離される。偏波ビームスプリッタ12は、光源6から出力されるレーザ光と同じ直線偏波成分の光を透過させ、この偏波成分に直交する偏波成分の光を反射する。
【0043】
偏波ビームスプリッタ12を透過した光は受信レンズ13aにより集光され、偏波ビームスプリッタ12で反射された光は受信レンズ13bにより集光される。受信レンズ13a、13bは適切な位置に配置されており、分離された各偏波成分の光はそれぞれ光受信機14a、14bの受光面に一致するよう集光される。
【0044】
スキャナ10はまた、散乱光を反射する際の走査位置情報を電気信号にしてパソコン3に伝達する。なお、ここでの走査位置情報とは、捜索範囲におけるX座標、Y座標の位置情報、およびスキャン角の情報等を総称している。
【0045】
光受信機14a、14bは散乱光を受光すると、直接検波により受信電気信号に変換して位相検波器15a、15bに出力する。この受信電気信号は発振器4の連続波電気信号で変調されたレーザ光の散乱光を変換したものであるから、これらの周波数は連続波電気信号と同じになる。一方、受信電気信号の位相はレーザ光が筐体2aとターゲット間を往復する時間分だけ連続波電気信号よりも遅れる。
【0046】
光受信機14a、14bからの受信電気信号に加えて分配器5から分配された単一周波数の連続波電気信号が入力されると、位相検波器15a、15bは受信電気信号と連続波電気信号の位相差および受信信号強度を検出する。なお、受信信号強度は受信電気信号と連続波電気信号の差を複素ベクトルで表示したときの絶対値、すなわち振幅の2乗に比例する値である。
【0047】
パソコン3は位相検波器15a、15bが検出した位相差および受信信号強度の情報、およびスキャナ10の走査位置情報を電気信号として取り込み、これらの情報を用いて散乱光の偏波解消度を算出して2次元の偏波解消度画像を作成する。
【0048】
続けてパソコン3は偏波ビームスプリッタ移動機構17にビームスプリッタ位置制御信号を送信し、受信望遠鏡11を透過した平行光の光経路に重ならないように偏波ビームスプリッタ12を移動させる。その後、パソコン3はスキャナ10にスキャン初期位置となるようなスキャナ制御信号を送信し、再びターゲットの捜索範囲をスキャンする。
【0049】
偏波ビームスプリッタ12を光経路から外したため、受信望遠鏡11を透過した散乱光はすべて受信レンズ13aに入力され、光受信器14aの受光面に集光される。光受信器14aは直接検波により受光した散乱光を受信電気信号に変換し、位相検波器15aはこの受信電気信号と分配器5からの連続波電気信号との位相差および受信信号強度をパソコン3に出力する。パソコン3はこれらの情報を用いて筐体2aとターゲット上のレーザ光が照射する地点との離間距離を算出し、3次元画像を作成する。その後、偏波解消度の2次元画像と3次元画像の双方で異物検出領域と判断したもののみを異物として検出する。
このように、離間距離を算出する際に偏波ビームスプリッタ12を移動させることにより、偏波ビームスプリッタ12を光経路に挿入した状態よりも受信SN比が向上し、離間距離の計測精度すなわち異物の3次元形状の検出精度が向上する。
【0050】
なお、新たな捜索範囲をスキャンする際には、パソコン3より偏波ビームスプリッタ移動機構17に再度ビームスプリッタ位置制御信号を送信することで、受信望遠鏡11と受信レンズ13a、13bの間に偏波ビームスプリッタ12を挿入できる。
【0051】
また、異物検出装置1aは、パソコン3に予め異物の3次元形状の先見情報を登録しておき、作成した3次元画像の異物形状と整合する場合のみ異物として検出し、整合しない場合は異物では無いと判断して検出しないようにしても良い。このように整合の確認工程を加えることにより、所望の異物のみを検出でき、異物検出の確度を向上できる。
【0052】
また、ここではスキャナ10を2次元方向に走査させているが、ライン照射することにより走査方向を1次元にしても良い。この場合は光受信機14a、14bをリニアアレイとする。また、照射するレーザ光を2次元の矩形ビームとして面照射し、光受信機14a、14b等の受信系スキャン作業を省略しても良い。
【0053】
この実施の形態によれば、異物検出装置1aはスキャナ10に戻ってきた散乱光を偏波ビームスプリッタ12を用いて2つの直交する偏波成分に分離し、それぞれの受信信号強度から偏波解消度を算出して2次元画像を作成した後、偏波ビームスプリッタ12を光経路から外して筐体2とターゲットとの離間距離を計測するため、偏波ビームスプリッタ12を光経路に挿入した状態よりも受信SN比が向上し、異物の3次元形状の検出精度が向上する。
【0054】
また、光ファイバ7の位置を調整する焦点調整機構16を設けたことにより、筐体2aから出力されるレーザ光をコリメート光とすることができ、ターゲットに照射するレーザ費階の光量むらを低減し、スキャンする際の不感知領域を無くすことができる。
【0055】
また、検出したい異物の3次元形状の先見情報を予めパソコン3に登録しておき、作成した3次元画像の異物形状と整合する場合のみ異物として検出することにより、所望の異物の検出確度を向上できる。
【0056】
また、このような異物検出装置1aを空港の滑走路や高速道路等で用いることにより、危険物などの人工的な異物を精度良く検出することができる。
【0057】
実施の形態3.
実施の形態1及び実施の形態2では、偏波解消度と離間距離をそれぞれ1回ずつ検出しているが、本実施の形態では捜索範囲全体を粗検出した後に異物検出領域の周辺を精検出する。また、偏波ビームスプリッタ12で分離された散乱光の各偏波成分を受信信号強度に基づいて重み付けして離間距離を算出する。本実施の形態に係る異物検出装置1bを図4ないし図6を用いて説明する。
【0058】
図4において、異物検出装置1bは筐体2b及びパソコン3すなわち信号処理手段で構成され、筐体2bの内部には、実施の形態1及び実施の形態2に記載の発振器4、分配器5、光源6の代わりに、予め定めた周期でレーザパルス光を出力する光源6aが設けられ、この光源6aに2つの位相検波器15a、15bが電気回路で接続されている。また、筐体2bには光ファイバ7を所望の位置に移動させる焦点調整機構16にも設けられ、パソコン3に電気ケーブルで接続されている。
その他の構成は実施の形態1と同じであるため、説明を省略する。
【0059】
次に、動作について説明する。異物検出装置1bは最初に粗検出を行い、この粗検出の結果に基づいて精検出を行う。
まず、粗検出の動作について説明する。
パソコン3に異物の捜索範囲を設定すると、パソコン3はスキャナ10にレーザ光の照射方向がスキャン初期位置となるようなスキャナ制御信号を送信すると共に、焦点調整機構16に位置制御信号を送信し、筐体2bから出力されるレーザ光がコリメート光となるように光ファイバ7を移動させてファイバ端と送信レンズ8の離間距離を調整する。レーザ光をコリメート光とすることでターゲット上に照射する光量むらを低減し、スキャンする際の不感知領域を無くすことができる。
【0060】
スキャナ10及び光ファイバ7を初期位置に設定すると、光源6aは予め定めた一定周期でレーザパルス光信号を出力する。このレーザパルス光信号は光ファイバ7内部を通って空間に出力された後、送信レンズ8によりターゲット上で所望の集光スポットサイズ及びビーム形状となるように調整される。送信レンズ8を透過したレーザパルス光信号は折り返しミラー9で光路変更され、スキャナ10にてターゲット上の任意の地点を走査される。
【0061】
なお、スキャナ10はパソコン3からの制御信号に基づいて適切な位置および速度で走査するものであって、スキャナ10の走査範囲すなわちターゲットの捜索範囲は任意に変更できる。捜索範囲にデッドゾーンを発生させたくない場合は集光スポットサイズを大きくして低分解能で検出を行い、ある程度のデッドゾーン発生は許容できるが高分解能にしたい場合は集光スポットサイズを小さくして粗検出を行う。
【0062】
ターゲットに照射されたレーザパルス光信号はターゲット表面で散乱され、その一部はスキャナ10へ戻る。この戻ってきた散乱光はスキャナ10で反射された後に受信望遠鏡11で平行光に変換され、偏波ビームスプリッタ12にて直交する2つの偏波成分に分離される。偏波ビームスプリッタ12は、光源6aから出力されるレーザパルス光と同じ直線偏波成分の光を透過させ、この偏波成分に直交する偏波成分の光を反射する。
【0063】
偏波ビームスプリッタ12を透過した光は受信レンズ13aにより集光され、偏波ビームスプリッタ12で反射された光は受信レンズ13bにより集光される。受信レンズ13a、13bは適切な位置に配置されており、分離された各偏波成分の光はそれぞれ光受信機14a、14bの受光面に一致するよう集光される。
【0064】
スキャナ10はまた、散乱光を反射する際の走査位置情報を電気信号にしてパソコン3に伝達する。なお、ここでの走査位置情報とは、捜索範囲におけるX座標、Y座標の位置情報、および2次元画像の各画素に対応するスキャン角の情報等を総称している。
【0065】
光受信機14a、14bは散乱光を受光すると、直接検波により受信電気パルス信号に変換して位相検波器15a、15bに出力する。この受信電気パルス信号はレーザパルス光の散乱光を変換したものであるから、これらの受信電気パルス信号の発生周期は光源6aのレーザパルス発生周期と同じになる。一方、受信電気パルス信号の位相はレーザパルス光が筐体2bとターゲット間を往復する時間分だけ光源6aから出力されるレーザパルス光信号よりも遅れる。
【0066】
位相検波器15a、15bは、光源6aからのレーザパルス信号と受信電気パルス信号の最大振幅となる時刻から位相差および受信信号強度を検出する。なお、受信信号強度は受信電気パルス信号の最大振幅値に比例する。
【0067】
パソコン3は位相検波器15a、15bが検出した位相差および受信信号強度の情報、およびスキャナ10の走査位置情報を電気信号として取り込み、図5(a)に示すような透過光の受信信号強度2次元画像と、図5(b)に示すような反射光の受信信号強度2次元画像から図5(c)に示すような2次元の偏波解消度画像を作成する。
【0068】
自然物が存在する領域は異物検出領域21a、金属片等の異物が存在する領域は21bとして画像上にコントラストとなって表れる。自然物は表面に凹凸を有するためレーザ光が照射されると四方八方の偏波成分を有する散乱光となり、人工的に作られた異物は表面が滑らかであるため特定方向の偏波成分のみを有する散乱光となる。つまり、自然物の偏波解消度は背景のターゲットと同じになるのに対し、人工的な異物は図5(c)に示すように白いコントラストとなって浮かび上がる。
【0069】
次に、パソコン3は取り込んだ位相差および受信信号強度の情報に基づいて、筐体2bとターゲット上のレーザパルス光が照射する地点との離間距離を算出する。パソコン3には、異物検出を開始する前に予め計測しておいたノイズレベルが登録されており、パソコン3は位相検波器15a、15bから取り込んだ受信信号強度とそれぞれのノイズレベルとを比較して受信SN比を算出し、この値に応じて次式のように各偏波成分から算出した離間距離に重み付けをして画像作成用の離間距離を算出する。ただし、L1は位相検波器15aを用いて算出した離間距離、L2は位相検波器15bを用いて算出した離間距離、R1は受信SN比に依存した位相検波器15a側の重み関数である。
【0070】
【数3】

【0071】
パソコン3は算出した離間距離に基づいて図5(d)に示すような2次元画像を作成し、この図の各画素に対応するスキャン角の情報とあわせて図5(e)に示すような3次元画像を作成する。このように、異なる偏波成分の信号を受信SN比に応じて重み付けすることにより、離間距離をより高精度に算出できる。
【0072】
さらにパソコン3は偏波解消度の2次元画像及び離間距離の3次元画像に基づいて、双方で異物検出領域21bと判断した領域周辺を、精検出の対象すなわち着目領域23(図5(e)内破線で囲まれた領域)として抽出する。このとき、着目領域23の範囲は2次元画像の情報だけでなく、スキャナ10が精検出する際の分解能と捜索時間も加味して決定される。
【0073】
着目領域23を抽出する際に、予めパソコン3に登録された異物の3次元形状の先見情報を用いて、粗検出で作成した3次元画像における異物の形状と整合を取り、整合した場合のみ着目領域を抽出して精検出の段階に移行し、整合しない場合は異物では無いと判断して検出を中止しても良い。このように整合の確認工程を加えることにより、所望の異物のみを検出できると共に、所望でない異物に対しては検出を途中で中止するため、装置にかかる負荷を軽減できる。
【0074】
なお、ここではスキャナ10を2次元方向に走査させているが、ライン照射することにより走査方向を1次元にしても良い。この場合は光受信機14a、14bをリニアアレイとする。また、照射するレーザ光を2次元の矩形ビームとして面照射し、光受信機14a、14b等の受信系スキャン作業を省略しても良い。
【0075】
ここまでが粗検出の動作である。続けて精検出の動作について説明する。精検出の動作も基本的には粗検出と同じで捜索範囲が着目領域になる点のみ異なる。
パソコン3は粗検出で抽出した着目領域23を捜索範囲として、スキャナ10にレーザパルス光の照射方向がスキャン初期位置となるようなスキャナ制御信号を送信する。また、パソコン3は着目領域23における筐体2bとターゲット上のレーザパルス光が照射する地点間の平均距離を算出し、この位置に照射されるビームの集光スポットサイズが最小となるように、焦点調整機構16に位置制御信号を送信して光ファイバ7端を移動させる。
【0076】
精検出の捜索範囲と光ファイバ7及びスキャナ10の精検出初期値が設定されると、異物検出装置1bは粗検出と同様にスキャナ10を再走査させて精検出を行う。パソコン3は図6(a)に示すような透過光の受信信号強度2次元画像と、図6(b)に示すような反射光の受信信号強度2次元画像とから図6(c)に示すような偏波解消度画像を作成する。また、パソコン3は上記重み付けした式を用いて算出したターゲットとの離間距離とスキャナ10の2次元方向の走査位置情報とから得られる図6(d)に示すような2次元画像を作成し、スキャン角情報を加味して図6(e)に示すような3次元画像を作成する。このようにして、異物検出装置1bは着目領域23について精検出を行うことにより、異物の3次元形状をより精密に検出できる。
【0077】
なお、精検出時の捜索範囲は粗検出の捜索範囲よりも狭くなるため、集光スポットサイズを小さくすると共にスキャナ10の走査線間隔も狭くして高分解能で検出することもできる。ここでは集光スポットサイズが最小の場合について説明しているが、所望の分解能が得られ、なおかつスキャナ10が所望の時間内に捜索範囲を走査できる大きさであれば、必ずしも最小サイズでなくて良い。ただし、デッドゾーンを生じないよう、スキャナ10が走査する走査線の間隔以上であることが望ましい。
粗検出の段階で集光スポットサイズが十分に小さい場合、精検出で集光スポットサイズを変更せずにスキャナ10が走査する走査線の間隔のみを狭くして検出精度をあげても良い。
また、粗検出の段階で自然物を検出対象から除外していることから、精検出では離間距離のみ再度算出して検出時間を短縮しても良い。
【0078】
さらに、精検出の1画素あたりの走査時間を粗検出のそれよりも長くして1画素の検出に用いるサンプリング数を増やし、受信SN比を大きくすることもできる。検出当初から計測時間を長くすると捜索に過剰な時間を要するが、粗検出をして捜索範囲を絞り込んだ後に1画素あたりの計測時間を長くすれば、効率的に精度良く異物の3次元形状を検出できる。
また、精検出で光源6aが出力するレーザパルス光信号の出力周期を粗検出の出力周期よりも短くすることにより、位相検波の精度をあげることもできる。
なお、実施の形態1及び実施の形態2の構成で粗検出と精検出の2段階検出するようにしても同様の効果を得ることができる。
【0079】
本実施の形態3ではレーザパルス光を出力する光源6aを用いているが、実施の形態1及び実施の形態2と同様に発振器4、分配器5、光源6を用いる構成としても良い。
このとき、精検出における発振器4の発振周波数を粗検出よりも高くすることで、位相検波器15a、15bにおける所定時間内のサンプリング数が増加して受信SN比が良くなり、位相検波の精度も向上する。
【0080】
この実施の形態によれば、異物検出装置1bはスキャナ10に戻ってきた散乱光を偏波ビームスプリッタ12を用いて2つの直交する偏波成分に分離し、各受信信号強度から偏波解消度を算出して2次元画像を作成すると共に、筐体2bとターゲットとの離間距離を各偏波成分の受信SN比に応じて重み付けして算出することにより、散乱光の偏波方向によらず異物の3次元形状を精度よく検出できる。
【0081】
また、光ファイバ7の位置を調整する焦点調整機構16を設けたことにより、筐体2bから出力されるレーザ光をコリメート光とすることができ、ターゲットに照射するレーザ費階の光量むらを低減し、スキャンする際の不感知領域を無くすことができる。
【0082】
また、検出したい異物の3次元形状の先見情報を予めパソコン3に登録しておき、作成した3次元画像の異物形状と整合する場合のみ異物として検出することにより、所望の異物の検出確度を向上できる。
【0083】
また、粗検出で捜索範囲を絞った後にスキャンする走査線の間隔を狭くして精検出することにより、異物の3次元形状の検出精度を向上できる。
また、精検出の段階で集光スポットサイズを絞ってスキャンする走査線の間隔をさらに狭くすることにより、より高分解での検出が可能となり、異物の3次元形状の検出精度が向上する。
【0084】
また、精検出では離間距離のみ再検出すれば、限られた検出時間でも高精度に異物の3次元形状を検出できる。
また、精検出の1画素あたりの走査時間を粗検出の1画素あたりの走査時間よりも長くすることにより、受信SN比が大きくなり異物の3次元形状を高精度に検出できる。
また、精検出におけるレーザパルス光信号の出力周期を粗検出の出力周期よりも短くすることにより、位相検波の精度をあげて高精度な異物の3次元形状を検出できる。
【0085】
また、このような異物検出装置1bを空港の滑走路や高速道路等で用いることにより、危険物などの人工的な異物を精度良く検出することができる。
【符号の説明】
【0086】
1、1a、1b 異物検出装置
2、2a、2b 筐体
3 パソコン
4 発振器
5 分配器
6、6a 光源
7 光ファイバ
8 送信レンズ
9 折り返しミラー
10 スキャナ
11 受信望遠鏡
12 偏波ビームスプリッタ
13a、13b 受信レンズ
14a、14b 光受信機
15a、15b 位相検波器
16 焦点調整機構
17 偏波ビームスプリッタ移動機構
20 捜索領域
21 異物検出領域
22 異物未検出領域
23 着目領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出力する光出力手段と、前記レーザ光を用いて前記捜索対象の捜索範囲を走査する走査手段と、前記捜索対象にレーザ光を照射したときの前記捜索対象からの散乱光を偏波成分ごとに分離する偏波分離手段と、前記散乱光の各偏波成分を受光する第1及び第2の受光手段と、前記レーザ光と前記散乱光の各偏波成分との位相差及び前記散乱光の各偏波成分の受信強度を検出する第1及び第2の位相差検出手段と、前記検出結果に基づいて前記散乱光の偏波解消度を算出すると共に、前記偏波解消度の算出結果に応じて異物との離間距離を算出し、該異物の形状を出力する信号処理手段と、を備えたことを特徴とする異物検出装置。
【請求項2】
前記光出力手段は、連続波信号を生成する発振器と、前記連続波信号に基づいて前記連続波信号と同一周波数のレーザ光を出力する光源と、前記光源の出力端に一端が接続された光導波手段と、前記光導波手段から出力されるレーザ光のスポットサイズを変換する光学素子と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の異物検出装置。
【請求項3】
前記光出力手段は、所定周期でレーザパルス光を出力する光源と、前記光源の出力端に一端が接続された光導波手段と、前記光導波手段から出力されるレーザ光のスポットサイズを変換する光学素子と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の異物検出装置。
【請求項4】
前記光出力手段は、前記光導波手段の他端側に設けられ該光導波手段の位置を調整する位置調整手段を備えたことを特徴とする請求項2または請求項3のいずれか一項に記載の異物検出装置。
【請求項5】
前記偏波分離手段を移動させる移動手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の異物検出装置。
【請求項6】
前記信号処理手段は、前記各偏波成分のうち受信SN比が最も大きな偏波成分あるいは予め定めた所定値よりも大きな偏波成分を用いて前記異物との離間距離を算出することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の異物検出装置。
【請求項7】
前記信号処理手段は、前記各偏波成分の受信SN比に応じて前記異物との離間距離を算出することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の異物検出装置。
【請求項8】
前記信号処理手段は、検出する異物の3次元形状の情報を有し、前記捜索対象の検出結果と前記異物の3次元形状の情報とを整合し、整合する場合に異物として形状を出力することを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の異物検出装置。
【請求項9】
前記信号処理手段は、前記検出結果に基づいて前記捜索範囲を絞り込んだ着目領域を抽出し、前記走査手段に走査線間隔を狭くして該着目領域を再走査させることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の異物検出装置。
【請求項10】
前記光出力手段は、前記着目領域の捜索時に前記捜索対象に照射するスポットサイズが前記捜索範囲の捜索時に前記捜索対象に照射するスポットサイズよりも小さなレーザ光を出力することを特徴とする請求項9に記載の異物検出装置。
【請求項11】
前記走査手段は、前記着目領域の捜索時における単位領域あたりの走査時間が前記捜索範囲の捜索時よりも長いことを特徴とする請求項9または請求項10のいずれか一項に記載の異物検出装置。
【請求項12】
前記発振器は、前記着目領域の捜索時に前記捜索範囲の捜索時よりも高周波で発振することを特徴とする請求項9ないし請求項11のいずれか一項に記載の異物検出装置。
【請求項13】
前記レーザパルス光を出力する光源は、前記着目領域の捜索時に前記捜索範囲の捜索時よりも短い周期でレーザパルス光を出力することを特徴とする請求項9ないし請求項11のいずれか一項に記載の異物検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−185837(P2011−185837A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53170(P2010−53170)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】