説明

疎水性のインク噴射面を有する印刷ヘッドを製造する方法

【課題】疎水性のインク噴射面を有する印刷ヘッドを製造する優れた方法を提供する。
【解決手段】上記の方法は、(a)複数のノズルチャンバと、インク噴射面を少なくとも部分的に画定する相対的に親水性のノズル表面とを備えた、部分的に製造された印刷ヘッドを用意するステップと、(b)ノズル表面に、アッシングによる除去に対して抵抗性を有する相対的に疎水性のポリマー材料の層を付着させるステップと、(c)ノズル表面内に複数のノズル開口を画定するステップとを含み、これによって、相対的に疎水性のインク噴射面を有する印刷ヘッドを製造する。ステップ(b)と(c)は任意の順序で実行することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタの分野に関し、具体的にはインクジェット印刷ヘッド(inkjet printhead)の分野に関する。本発明は主に、高解像度印刷ヘッドの印刷品質及び信頼性を向上させるために開発された。
【背景技術】
【0002】
多くの異なるタイプの印刷が発明され、そのうちの多数が現在も使用されている。知られている印刷形態は、適切なマーキング媒体で印刷媒体にマークを付けるさまざまな方法を有する。一般的に使用される印刷形態には、オフセット印刷、レーザ印刷/複写装置、ドットマトリクス型インパクトプリンタ、感熱紙プリンタ、フィルムレコーダ、サーマルワックスプリンタ、染料昇華型プリンタ、ドロップオンデマンド型及び連続フロー型のインクジェットプリンタなどがある。費用、速度、品質、信頼性、構造及び動作の単純さなどを考えたとき、これらのタイプのプリンタはそれぞれ、それ自体の利点及び問題を有する。
【0003】
近年、個々のそれぞれのインク画素を1つ又は複数のインクノズルから得るインクジェット印刷の分野が、主にその安価で汎用性のある性質のためにますます人気を集めている。
【0004】
インクジェット印刷に関する多くの異なる技法が発明された。この分野を概観するためには、J Mooreによる記事、「Non−Impact Printing:Introduction and Historical Perspective」、Output Hard Copy Devices、R Dubeck及びS Sheri編、207〜220ページ(1988年)を参照されたい。
【0005】
インクジェットプリンタ自体には、多くの異なるタイプがある。インクジェット印刷における連続インク流の利用は、少なくとも1929年まで遡るようであり、特許文献1は、単純な形態の連続流静電式インクジェット印刷を開示している。
【0006】
特許文献2も、高周波静電界によってインクジェット流が、インク滴の分離を引き起こすように調節されるステップを含む、連続インクジェット印刷の方法を開示している。この技法は現在でも、Elmjet社及びScitex社を含むいくつかのメーカによって利用されている(特許文献3も参照されたい)。
【0007】
圧電インクジェットプリンタも一般的に利用されているインクジェット印刷装置の一形態である。圧電システムは、ダイアフラム(diaphragm)動作モードを利用する特許文献4、圧電結晶のスクイーズ(squeeze)動作モードを開示した特許文献5、圧電動作のベンド(bend)モードを開示した特許文献6、インクジェット流の圧電プッシュ(push)モード作動を開示した特許文献7、及び剪断(shear)モード型の圧電トランスデューサ要素を開示した特許文献8に開示されている。
【0008】
最近、サーマル(thermal)インクジェット印刷が、極めて人気の高いインクジェット印刷形態となっている。サーマルインクジェット印刷技法は、特許文献9及び特許文献10に開示された技法を含む。上記の参照文献はともに、ノズルなどの狭められた空間内で気泡を発生させ、それによりこの狭い空間に接続された開口から適切な印刷媒体上にインクを噴射させる電熱アクチュエータの活動化に依存したインクジェット印刷技法を開示したものである。電熱アクチュエータを利用する印刷装置は、Canon社、Hewlett Packard社などのメーカによって製造されている。
【0009】
以上のことから分かるとおり、多くの異なるタイプの印刷技術が使用可能である。理想的には、1つの印刷技術がいくつかの望ましい属性を有するべきである。これには、安価な構造及び動作、高速動作、安全な長期連続動作などが含まれる。それぞれの技術は、費用、速度、品質、信頼性、電力使用量、動作の構造の単純さ、耐久性及び消耗部品の領域においてそれ自体の利点及び欠点を有する。
【0010】
インクジェット印刷システムの構築において、特に大規模印刷ヘッド、特にページ幅タイプの印刷ヘッドが構築されるときには、互いにトレードオフされなければならないかなりの数の重要な因子がある。次に、これらの因子のいくつかを概説する。
【0011】
第1に、インクジェット印刷ヘッドは通常、マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)技法を利用して構築される。そのため、インクジェット印刷ヘッドは、シリコンウェーハ上に平らな層を付着させ、その平らな層のある部分をエッチングする標準集積回路構築/製造技法に依存する傾向がある。シリコン回路製造技術の範囲では、ある種の技法が他の技法よりもよく知られている。例えば、CMOS回路の製作に関連した技法は、強誘電体、ヒ化ガリウムなどを含むエキゾチック(exotic)回路の製作に関連した技法よりも容易に使用される可能性が高い。したがって、MEMSの構築では、「エキゾチック」プロセス又は材料を一切必要としない十分に証明された半導体製造技法を利用することが望ましい。もちろん、ある程度のトレードオフも行われ、エキゾチック材料を使用する利点がエキゾチック材料を使用する欠点よりもはるかに大きい場合には、なんとかしてエキゾチック材料を利用した方が望ましいこともある。しかしながら、より一般的な材料を使用して同じ又は同様の特性を達成することが可能な場合には、エキゾチック材料の問題を回避することができる。
【0012】
インクジェット印刷ヘッドの望ましい特徴は、疎水性のインク噴射面(ink ejection face)(「前面(front face)」又は「ノズル面」)、好ましくは疎水性のインク噴射面と親水性のノズルチャンバ(nozzle chamber)及びインク供給チャネル(ink supply channel)の組合せであるであろう。親水性のノズルチャンバ及びインク供給チャネルは毛管作用を提供し、したがって、親水性のノズルチャンバ及びインク供給チャネルは、ノズルチャンバへのインクの注入及び各インク滴噴射後のノズルチャンバへのインクの再供給のために最適である。疎水性の前面は、印刷ヘッドの前面を横切ってインクが溢れる傾向を最小化する。前面が疎水性であれば、水性のインクジェットインクはノズル開口から横に溢出しにくいと考えられる。さらに、ノズル開口から溢れ出たインクは前面を横切って広がったり、前面上で混ざり合ったりしにくいと考えられ、その代わりに、ノズル開口から溢れ出たインクは、適当な保守操作によってより容易に処理することができる分離した球形の微小インク滴を形成する。
【0013】
しかしながら、疎水性の前面及び親水性のインクチャンバが望ましいとはいえ、MEMS技法によってこのような印刷ヘッドを製造することには大きな問題がある。MEMS印刷ヘッド製造の最終段階は一般に、酸素プラズマを使用したフォトレジストのアッシング(ashing)である。しかしながら、前面に付着させた有機疎水性材料は一般にこのアッシングプロセスによって除去されて、親水性の表面を残す。また、アッシング後に疎水性材料を蒸着させることの問題は、疎水性材料が、印刷ヘッドの前面だけでなくノズルチャンバの内側にも付着することである。ノズルチャンバ壁は疎水化され、このことは、ノズルチャンバに向かってバイアスされた正のインク圧力を発生させる観点から非常に望ましくない。これは難問であり、印刷ヘッド製造に対するかなりの要求を生み出す。
【0014】
したがって、その結果得られる印刷ヘッドがノズルチャンバの表面特性を含まない改良された表面特性を有する、印刷ヘッド製造プロセスを提供することが望ましいであろう。その結果得られる印刷ヘッドが疎水性の前面及び親水性のノズルチャンバを併せ持つ、印刷ヘッド製造プロセスを提供することも望ましいであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第1941001号
【特許文献2】米国特許第3596275号
【特許文献3】米国特許第3373437号
【特許文献4】米国特許第3946398号
【特許文献5】米国特許第3683212号
【特許文献6】米国特許第3747120号
【特許文献7】米国特許第4459601号
【特許文献8】米国特許第4584590号
【特許文献9】英国特許公開公報2007162号
【特許文献10】米国特許第4490728号
【発明の概要】
【0016】
第1の態様では、本発明が、疎水性のインク噴射面を有する印刷ヘッドを製造する方法であって、
(a)複数のノズルチャンバと、インク噴射面を少なくとも部分的に画定する相対的に親水性のノズル表面とを備えた、部分的に製造された印刷ヘッドを用意するステップと、
(b)ノズル表面に、アッシングによる除去に対して抵抗性を有する相対的に疎水性のポリマー材料の層を付着させるステップと、
(c)前記ノズル表面内に複数のノズル開口を画定するステップと
を含み、
これによって、相対的に疎水性のインク噴射面を有する印刷ヘッドを提供し、
ステップ(b)と(c)が任意の順序で実行される
方法を提供する。
【0017】
任意選択で、ステップ(c)がステップ(b)の前に実行され、前記方法が、付着させた前記ポリマー材料内に、整列した対応する複数のノズル開口を画定する追加のステップを含む。
【0018】
任意選択で、前記整列した対応する複数のノズル開口が、前記ポリマー材料をフォトパターニングすることによって画定される。
【0019】
任意選択で、ステップ(c)がステップ(b)の後に実行され、前記ポリマー材料が、前記ノズル表面をエッチングするためのマスクとして使用される。
【0020】
任意選択で、前記ノズル表面をエッチングする前に、前記ポリマー材料をフォトパターニングして、複数のノズル開口領域を画定する。
【0021】
任意選択で、ステップ(c)がステップ(b)の後に実行され、ステップ(c)が、
前記ポリマー材料上にマスクを付着させるステップと、
前記マスクをパターニングして、複数のノズル開口領域内の前記ポリマー材料を露出させるステップと、
露出させた前記ポリマー材料及びその下の前記ノズル表面をエッチングして、前記複数のノズル開口を画定するステップと、
前記マスクを除去するステップと
を含む。
【0022】
任意選択で、前記マスクがフォトレジストであり、前記フォトレジストがアッシングによって除去される。
【0023】
任意選択で、前記ポリマー材料及び前記ノズル表面をエッチングするのに同じガスケミストリが使用される。
【0024】
任意選択で、前記ガスケミストリがOとフッ素含有化合物とを含む。
【0025】
任意選択で、前記部分的に製造された印刷ヘッド内において、それぞれのノズルチャンバのルーフが犠牲フォトレジストスカフォルドによって支持され、前記方法がさらに、前記フォトレジストスカフォルドをアッシングによって除去するステップを含む。
【0026】
任意選択で、それぞれのノズルチャンバのルーフが前記ノズル表面によって少なくとも部分的に画定される。
【0027】
任意選択で、前記ノズル表面と基板との間にそれぞれのノズルチャンバの側壁が延びるように、前記ノズル表面が前記基板から間隔を置いて配置される。
【0028】
任意選択で、それぞれのノズルチャンバのルーフ及び側壁が、CVDによって付着させることができるセラミック材料からなる。
【0029】
任意選択で、前記ルーフ及び側壁が、酸化シリコン、窒化シリコン及び酸窒化シリコンを含むグループから選択された材料からなる。
【0030】
任意選択で、前記疎水性ポリマー材料が、Oプラズマ中で不活性化表面酸化物を形成する。
【0031】
任意選択で、前記疎水性ポリマー材料が、Oプラズマにさらされた後にその疎水性を回復する。
【0032】
任意選択で、前記ポリマー材料が、重合シロキサン類及びフッ化ポリオレフィン類を含むグループから選択される。
【0033】
任意選択で、前記ポリマー材料が、ポリジメチルシロキサン(PDMS)及び過フッ化ポリエチレン(PFPE)を含むグループから選択される。
【0034】
任意選択で、付着後に、前記ポリマー材料の少なくとも一部分をUV硬化させる。
【0035】
他の態様では、本発明が、本発明の方法によって得られた、又は得ることができる印刷ヘッドを提供する。
【0036】
第2の態様では、本発明が、インク噴射面を有し、前記インク噴射面の少なくとも一部分が、重合シロキサン類及びフッ化ポリオレフィン類を含むグループから選択された疎水性ポリマー材料でコーティングされた印刷ヘッドを提供する。
【0037】
任意選択で、前記ポリマー材料がアッシングによる除去に対して抵抗性を有する。
【0038】
任意選択で、前記ポリマー材料が、酸素プラズマ中で不活性化表面酸化物を形成する。
【0039】
任意選択で、前記ポリマー材料が、酸素プラズマにさらされた後にその疎水性を回復する。
【0040】
任意選択で、前記ポリマー材料が、ポリジメチルシロキサン(PDMS)及び過フッ化ポリエチレン(PFPE)を含むグループから選択される。
【0041】
他の態様では、本発明が、基板上に形成された複数のノズルアセンブリを備えた印刷ヘッドであって、ノズルアセンブリがそれぞれ、ノズルチャンバと、ノズルチャンバのルーフに画定されたノズル開口と、ノズル開口を通してインクを噴射するアクチュエータとを備えた印刷ヘッドを提供する。
【0042】
任意選択で、疎水性ポリマーを上にコーティングされているノズル表面が、インク噴射面を少なくとも部分的に画定する。
【0043】
任意選択で、それぞれのルーフが、印刷ヘッドのノズル表面の少なくとも一部分を画定し、前記疎水性コーティングのおかげで、それぞれのルーフの外面が、それぞれのノズルチャンバの内面よりも疎水性である。
【0044】
任意選択で、インク噴射面の少なくとも一部分が90°超の接触角を有し、ノズルチャンバの内面が90°未満の接触角を有する。
【0045】
任意選択で、それぞれのノズルチャンバが、セラミック材料からなるルーフ及び側壁を備える。
【0046】
任意選択で、セラミック材料が、窒化シリコン、酸化シリコン及び酸窒化シリコンを含むグループから選択される。
【0047】
任意選択で、前記ノズル表面と基板との間にそれぞれのノズルチャンバの側壁が延びるように、前記ルーフが前記基板から間隔を置いて配置される。
【0048】
任意選択で、インク噴射面が、印刷ヘッドのインク供給チャネルよりも疎水性である。
【0049】
任意選択で、前記アクチュエータが、気泡を形成するように前記チャンバ内のインクを加熱し、それにより前記ノズル開口を通してインク小滴を押し出すように構成されたヒータ要素である。
【0050】
任意選択で、前記ヒータ要素が前記ノズルチャンバ内に懸架される。
【0051】
任意選択で、前記アクチュエータが、
駆動回路に接続する第1の能動要素と、
第2の受動要素と
を備え、
第1の要素に電流が流されたときに第1の要素が第2の要素に対して膨張するように第2の受動要素が第1の要素と機械的に協力し、その結果、アクチュエータが曲がる
サーマルベンドアクチュエータである。
【0052】
任意選択で、前記サーマルベンドアクチュエータが、それぞれのノズルチャンバのルーフの少なくとも一部分を画定し、それにより、前記アクチュエータの作動が、前記ノズルチャンバのフロアに向かって前記アクチュエータを移動させる。
【0053】
任意選択で、前記ノズル開口が、前記アクチュエータ又は前記ルーフの静止部分に画定される。
【0054】
任意選択で、前記疎水性ポリマー材料が、前記アクチュエータと前記ルーフの静止部分との間に機械シールを画定し、それにより作動中のインクの漏れを最小化する。
【0055】
任意選択で、前記疎水性ポリマー材料が1000MPa未満のヤング率を有する。
【0056】
第3の態様では、本発明が、インクジェット印刷ヘッド用のノズルアセンブリであって、
ルーフを有するノズルチャンバであり、前記ルーフが、静止部分に対して移動可能な移動部分と、前記ルーフに画定されたノズル開口とを、前記静止部分に対する前記移動部分の移動がノズル開口を通したインクの噴射を引き起こすように有するノズルチャンバと、
前記静止部分に対して前記移動部分を移動させるアクチュエータと、
前記移動部分と前記静止部分とを相互接続する機械シールであり、重合シロキサン類及びフッ化ポリオレフィン類を含むグループから選択されたポリマー材料を含む機械シールと
を備えたノズルアセンブリを提供する。
【0057】
任意選択で、前記ノズル開口が前記移動部分に画定される。
【0058】
任意選択で、前記ノズル開口が前記静止部分に画定される。
【0059】
任意選択で、前記アクチュエータが、
駆動回路に接続する第1の能動要素と、
第2の受動要素と
を備え、
第1の要素に電流が流されたときに第1の要素が第2の要素に対して膨張するように第2の受動要素が第1の要素と機械的に協力し、その結果、アクチュエータが曲がる
サーマルベンドアクチュエータである。
【0060】
任意選択で、前記第1及び第2の要素が片持ち梁である。
【0061】
任意選択で、前記サーマルベンドアクチュエータが前記ルーフの移動部分の少なくとも一部分を画定し、それにより、前記アクチュエータの作動が、前記ノズルチャンバのフロアに向かって前記アクチュエータを移動させる。
【0062】
任意選択で、前記ポリマー材料が1000MPa未満のヤング率を有する。
【0063】
任意選択で、ポリマー材料が、ポリジメチルシロキサン(PDMS)及び過フッ化ポリエチレン(PFPE)を含むグループから選択される。
【0064】
任意選択で、前記ポリマー材料が疎水性であり、アッシングによる除去に対して抵抗性を有する。
【0065】
任意選択で、前記ポリマー材料が、Oプラズマにさらされた後にその疎水性を回復する。
【0066】
任意選択で、前記印刷ヘッドのインク噴射面が疎水性となるように、前記ルーフ全体にポリマー材料がコーティングされる。
【0067】
任意選択で、それぞれのルーフが、印刷ヘッドのノズル表面の少なくとも一部分を形成し、前記ポリマーコーティングのおかげで、それぞれのルーフの外面が、それぞれのノズルチャンバの内面よりも疎水性である。
【0068】
任意選択で、前記ポリマーコーティングが90°超の接触角を有し、ノズルチャンバの内面が90°未満の接触角を有する。
【0069】
任意選択で、前記ポリマーコーティングが110°超の接触角を有する。
【0070】
任意選択で、前記ノズルチャンバの内面が70°未満の接触角を有する。
【0071】
任意選択で、前記ルーフが基板から間隔を置いて配置されるように前記ルーフと前記基板との間に延びる側壁を、前記ノズルチャンバが備える。
【0072】
任意選択で、前記ルーフ及び前記側壁が、CVDによって付着させることができるセラミック材料からなる。
【0073】
任意選択で、セラミック材料が、窒化シリコン、酸化シリコン及び酸窒化シリコンを含むグループから選択される。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】サーマルインクジェット印刷ヘッドのノズルアセンブリのアレイの部分透視図である。
【図2】図1に示されたノズルアセンブリ単位セルの側面図である。
【図3】図2に示されたノズルアセンブリの透視図である。
【図4】犠牲フォトレジスト層上に側壁及びルーフ材料を付着させた後の部分的に形成されたノズルアセンブリを示す図である。
【図5】図4に示されたノズルアセンブリの透視図である。
【図6】図7に示されたノズルリムエッチングに関連したマスクである。
【図7】ノズル開口リムを形成するためのルーフ層のエッチングを示す図である。
【図8】図7に示されたノズルアセンブリの透視図である。
【図9】図10に示されたノズル開口エッチングに関連したマスクである。
【図10】楕円形のノズル開口を形成するためのルーフ材料のエッチングを示す図である。
【図11】図10に示されたノズルアセンブリの透視図である。
【図12】第1及び第2の犠牲層の酸素プラズマアッシングを示す図である。
【図13】図12に示されたノズルアセンブリの透視図である。
【図14】アッシング後のノズルアセンブリ及びウェーハの反対側を示す図である。
【図15】図14に示されたノズルアセンブリの透視図である。
【図16】図17に示された裏面エッチングに関連したマスクである。
【図17】ウェーハ内にインク供給チャネルをエッチングする裏面エッチングを示す図である。
【図18】図17に示されたノズルアセンブリの透視図である。
【図19】疎水性ポリマーコーティングを付着させた後の図10のノズルアセンブリを示す図である。
【図20】図19に示されたノズルアセンブリの透視図である。
【図21】ポリマーコーティングをフォトパターニングした後の図19のノズルアセンブリを示す図である。
【図22】図21に示されたノズルアセンブリの透視図である。
【図23】疎水性ポリマーコーティングの付着させた後の図7のノズルアセンブリを示す図である。
【図24】図23に示されたノズルアセンブリの透視図である。
【図25】ポリマーコーティングをフォトパターニングした後の図23のノズルアセンブリを示す図である。
【図26】図25に示されたノズルアセンブリの透視図である。
【図27】サーマルベンドアクチュエータによって画定された移動部分を有するルーフを備えたインクジェットノズルアセンブリの側断面図である。
【図28】図27に示されたノズルアセンブリの破断透視図である。
【図29】図27に示されたノズルアセンブリの透視図である。
【図30】図27に示されたノズルアセンブリのアレイの破断透視図である。
【図31】サーマルベンドアクチュエータによって画定された移動部分を有するルーフを備えた代替インクジェットノズルアセンブリの側断面図である。
【図32】図31に示されたノズルアセンブリの破断透視図である。
【図33】図31に示されたノズルアセンブリの透視図である。
【図34】移動ルーフ部分と静止ルーフ部分との間に機械シールを形成するポリマーコーティングをルーフ上に有する図27のノズルアセンブリを示す図である。
【図35】移動ルーフ部分と静止ルーフ部分との間に機械シールを形成するポリマーコーティングをルーフ上に有する図31のノズルアセンブリを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0075】
次に、添付図面を参照して、本発明の任意選択の実施形態を単に例として説明する。
【0076】
本発明は、任意のタイプの印刷ヘッドとともに使用することができる。本発明の出願人はこれまでに、非常に多数のインクジェット印刷ヘッドを記載した。本発明の理解のために、このような印刷ヘッドの全てをここで説明する必要はない。とは言うものの、次に、サーマル気泡形成型インクジェット印刷ヘッド(thermal bubble−forming inkjet printhead)及びメカニカルサーマルベンド作動型インクジェット印刷ヘッド(mechanical thermal bend actuated inkjet printhead)に関して本発明を説明する。本発明の利点は以下の議論から容易に明らかになるであろう。
【0077】
サーマル気泡形成型インクジェット印刷ヘッド
図1を参照すると、複数のノズルアセンブリを備えた印刷ヘッドの一部分が示されている。図2及び3は、これらのノズルアセンブリのうちの1つのノズルアセンブリの断面図及び破断透視図を示す。
【0078】
それぞれのノズルアセンブリは、MEMS製造技法によってシリコンウェーハ基板2上に形成されたノズルチャンバ24を備える。ノズルチャンバ24は、ルーフ(roof)21と、ルーフ21からシリコン基板2まで延びる側壁22とによって画定される。図1に示されているように、それぞれのルーフは、印刷ヘッドの噴射面を横切って広がるノズル表面56の部分によって画定される。ノズル表面56と側壁22は同じ材料から形成され、この材料は、MEMS製造中に犠牲フォトレジストスカフォルド(scaffold)の上にPECVDによって付着させる。ノズル表面56と側壁22は一般に、二酸化シリコン、窒化シリコンなどのセラミック材料から形成される。これらの硬質材料は、印刷ヘッドの頑丈さ対する優れた特性を有し、本来的に備わっているそれらの親水性は、毛管作用によってノズルチャンバ24にインクを供給するのに有利である。しかしながら、ノズル表面56の外面(インク噴射面)も親水性であり、このことがノズル表面に溢れ出たインクを広げさせる。
【0079】
ノズルチャンバ24の細部に戻ると、それぞれのノズルチャンバ24のルーフにノズル開口26が画定されることが分かる。ノズル開口26はそれぞれ一般に楕円形であり、関連するノズルリム(rim)25を有する。ノズルリム25は、印刷中のインク滴の指向性を助け、またノズル開口26から溢れ出るインクを少なくともある程度は低減させる。ノズルチャンバ24からインクを噴射するアクチュエータは、ノズル開口26の下に配置され、ピット(pit)8を横切って懸架されたヒータ要素29である。ヒータ要素29には、その下にある基板2のCMOS層5の駆動回路に接続された電極9を通して電流が供給される。ヒータ要素29に電流が流されると、ヒータ要素29は周囲のインクを急速に過熱して気泡を形成し、気泡はノズル開口からインクを押し出す。ヒータ要素29を懸架することによって、ノズルチャンバ24にインクが注入されたときに、ヒータ要素29はインク中に完全に浸される。より少ない熱がその下の基板2中へ放散し、より多くの入力エネルギーが気泡を生成するのに使用されるため、このことは印刷ヘッドの効率を向上させる。
【0080】
図1に最も明らかに示されているように、ノズルは複数の列として配置され、列に沿って縦に延びるインク供給チャネル27はその列のそれぞれのノズルにインクを供給する。インク供給チャネル27は、それぞれのノズルのインク入口通路15にインクを送達し、インク入口通路15は、ノズル開口26の側方からインク導管23を通してノズルチャンバ24内にインクを供給する。
【0081】
このような印刷ヘッドを製造するMEMS製造プロセスが、2005年10月11日に出願された本発明の出願人の以前の米国特許出願第11/246,684号明細書に詳細に記載されている。この明細書の内容は参照によって本明細書に組み込まれる。分かりやすくするため、この製造プロセスの終わりの方のいくつかの段階をここで再び簡単に説明する。
【0082】
図4及び5は、犠牲フォトレジスト10(「SAC1」)及び16(「SAC2」)を内包したノズルチャンバ24を備えた部分的に製造された印刷ヘッドを示す。SAC1フォトレジスト10は、懸架されたヒータ要素29を形成するためのヒータ材料を付着させるためのスカフォルドとして使用された。SAC2フォトレジスト16は、側壁22及び(ノズル表面56の部分を画定する)ルーフ21を付着させるためのスカフォルドとして使用された。
【0083】
図6から8を参照すると、この従来技術のプロセスでは、MEMS製造の次の段階で、ルーフ材料20を2ミクロンエッチングすることによって、ルーフ21内に楕円形のノズルリム25を画定する。このエッチングは、図6に示されたダークトーンリムマスクによって露出させたフォトレジスト層(図示せず)を使用して画定される。楕円形のリム25は、それらのそれぞれのサーマルアクチュエータ29の上に配置された2つの同軸のリムリップ(lip)25a及び25bを含む。
【0084】
図9から11を参照すると、次の段階で、リム25によって境界された残りのルーフ材料を貫通するまで完全にエッチングすることによって、ルーフ21内に楕円形のノズル開口26を画定する。このエッチングは、図9に示されたダークトーンルーフマスクによって露出させたフォトレジスト層(図示せず)を使用して画定される。図11に示されているように、楕円形のノズル開口26はサーマルアクチュエータ29の上に配置される。
【0085】
このようにして全てのMEMSノズルフィーチャ(feature)が完全に形成された後、次の段階で、SAC1及びSAC2フォトレジスト層10及び16をOプラズマアッシングによって除去する(図12及び13)。図14及び15は、SAC1及びSAC2フォトレジスト層10及び16をアッシングした後のシリコンウェーハ2の全厚(150ミクロン)を示す。
【0086】
図16から18を参照すると、ウェーハの前面MEMS処理が完了した後、インク入口15と交わるように、標準異方性DRIEを使用してウェーハの裏面からインク供給チャネル27がエッチングされる。この裏面エッチングは、図16に示されたダークトーンマスクによって露出させたフォトレジスト層(図示せず)を使用して画定される。インク供給チャネル27は、ウェーハの裏面とインク入口15との間を流体接続する。
【0087】
最後に、図2及び3を参照すると、裏面エッチングによってウェーハが約135ミクロンまで薄くされる。図1は、完成した印刷ヘッド集積回路の隣接する3つのノズル列の破断透視図を示す。ノズル列はそれぞれ、その長さに沿って延び、それぞれの列の複数のインク入口15にインクを供給するそれぞれのインク供給チャネル27を有する。インク入口は、それぞれの列のインク導管23にインクを供給し、それぞれのノズルチャンバは、その列の共通のインク導管からインクを受け取る。
【0088】
既に上で論じたとおり、この従来技術のMEMS製造プロセスは、ノズル表面56が二酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、窒化アルミニウムなどのセラミック材料から形成されることにより、不可避的に親水性のインク噴射面を残す。
【0089】
ノズルエッチング及びそれに続く疎水性ポリマーコーティング
上述のプロセスの代替プロセスとして、ノズル表面56は、ノズル開口のエッチング(すなわち図10及び11に示された段階)の直後にその上に付着させた疎水性ポリマーを有する。後にフォトレジストスカフォルド層を除去しなければならないため、このポリマー材料はアッシングプロセスに対して抵抗性を有するべきである。好ましくは、このポリマー材料が、O又はHアッシングプラズマによる除去に対して抵抗性を有するべきである。本発明の出願人は、疎水性であり、同時にO又はHアッシングに対して抵抗性を有するという上記の要件を満たすポリマー材料群を識別した。これらの材料は一般に重合シロキサン類(polymrized siloxanes)又はフッ化ポリオレフィン類(fluorinated polyolefins)である。より具体的には、ポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane:PDMS)及び過フッ化ポリエチレン(perfluorinated polyethylene:PFPE)はともに特に有利であることが示されている。このような材料はOプラズマ中で不活性化(passivating)表面酸化物を形成し、続いて、比較的に速くそれらの疎水性を回復する。これらの材料の他の利点は、二酸化シリコン、窒化シリコンなどのセラミックに対して優れた付着性を有することである。これらの材料の他の利点は、フォトパターニングが可能(photopatternable)なことであり、このことはこれらの材料を、MEMSプロセスにおいて使用するのに特に適したものにする。例えば、PDMSはUV光で硬化可能であり、このことにより、PDMSの未露光領域を比較的に容易に除去することができる。
【0090】
図10を参照すると、前述のリムエッチング及びノズルエッチング後の部分的に製造された印刷ヘッドのノズルアセンブリが示されている。しかしながら、この段階で、(図12及び13に示されているように)SAC1及びSAC2のアッシングに進む代わりに、図19及び20に示されているように、ノズル表面56に、薄い疎水性ポリマー材料層100(約1ミクロン)がスピンコートされる。
【0091】
付着後、このポリマー材料層は、ノズル開口26内に付着した材料を除去するようにフォトパターニングされる。フォトパターニングは、ノズル開口26内のポリマー層100の領域以外のポリマー層100をUV光で露光することを含むことができる。したがって、図21及び22に示されているように、この時点で印刷ヘッドは疎水性のノズル表面を有し、後続のMEMS処理ステップは、図12から18に関して説明したステップと類似の態様で進行することができる。重要なことに、疎水性ポリマー100は、フォトレジストスカフォルド10及び16を除去するために使用されるOアッシングステップによって除去されない。
【0092】
疎水性ポリマーコーティング及びそれに続くポリマーをエッチングマスクとして使用したノズルエッチング
代替プロセスとして、図7及び8によって示された段階の直後に疎水性ポリマー層100を付着させる。したがって、リムエッチングによってリム25が画定された後に、ただしノズルエッチングによってノズル開口26が画定される前に、ノズル表面に疎水性ポリマーがスピンコートされる。
【0093】
図23及び24を参照すると、疎水性ポリマー100を付着させた後のノズルアセンブリが示されている。次いで、図25及び26に示されているように、ノズル開口領域内のリム25によって境界された材料を除去するように、ポリマー100がフォトパターニングされる。したがって、この時点で疎水性ポリマー材料100は、ノズル開口26をエッチングするためのエッチングマスクの働きをすることができる。
【0094】
ノズル開口26は、ルーフ構造21を貫通するエッチングによって画定され、このエッチングは一般に、Oとフッ素化炭化水素(例えばCF又はC)とを含むガスケミストリ(gas chemistry)を使用して実行される。PDMS、PFPEなどの疎水性ポリマーは通常、同じ条件でエッチングされる。しかしながら、窒化シリコンなどの材料は、はるかに速くエッチングされるため、PDMS又はPFPEをエッチングマスクとして使用して、ルーフ21を選択的にエッチングすることができる。比較すると、ガス比3:1(CF:O)で、窒化シリコンは1時間に約240ミクロンエッチングされ、PDMSは1時間に約20ミクロンエッチングされる。したがって、ノズル開口26を画定するときには、PDMSマスクを使用したエッチング選択性が達成可能であるということが理解できるであろう。
【0095】
ノズル開口を画定するためにルーフ21がエッチングされた後のノズルアセンブリ24は、図21及び22に示されているのと同じである。したがって、後続のMEMS処理ステップは、図12から18に関して説明したステップと類似の態様で進行することができる。重要なことに、疎水性ポリマー100は、フォトレジストスカフォルド10及び16を除去するために使用されるOアッシングステップによって除去されない。
【0096】
疎水性ポリマーコーティング及びそれに続く追加のフォトレジストマスクを使用したノズルエッチング
図25及び26は、疎水性ポリマー100をノズル開口エッチングのエッチングマスクとしてどのように使用することができるかを示す。一般に、ポリマー100とルーフ21との間の異なるエッチング速度は、上で論じたとおり、十分なエッチング選択性を提供する。
【0097】
しかしながら、他の代替として、特にエッチング選択性が不十分である状況に対応するため、図24に示された疎水性ポリマー100の上に、従来の下流MEMS処理を可能にするフォトレジスト層(図示せず)を付着させることができる。この最上位のレジスト層をフォトパターニングした後、最上位のフォトレジスト層を標準エッチングマスクとして使用し、同じガスケミストリを使用して、疎水性ポリマー100とルーフ21を1つのステップでエッチングすることができる。例えばCF/Oのガスケミストリは最初に疎水性ポリマー100を貫通エッチングし、次いでルーフ21を貫通エッチングする。
【0098】
後続のOアッシングを使用して、最上位フォトレジスト層だけを除去することができ(図10及び11に示されたノズルアセンブリを得るため)、又は延長されたOアッシングを使用して、最上位フォトレジスト層と犠牲フォトレジスト層10及び16の両方を除去することができる(図12及び13に示されたノズルアセンブリを得るため)。
【0099】
当業者は、本明細書で論じた3つの代替シーケンスの外に、MEMS処理ステップの他の代替シーケンスを思い描くことができるであろう。しかしながら、O及びHアッシングに耐える能力を有する疎水性ポリマーの識別において、本発明の発明者らは、インクジェット印刷ヘッド製造プロセスにおいて疎水性ノズル表面を提供する実行可能な手段を提供したということが理解できるであろう。
【0100】
サーマルベンドアクチュエータ印刷ヘッド
印刷ヘッドのノズル表面を疎水化することができる方法について論じたが、類似の態様でいかなるタイプの印刷ヘッドを疎水化することもできるということが理解できるであろう。とは言うものの、本発明は、サーマルベンドアクチュエータノズルアセンブリを備える本発明の出願人の以前に記載された印刷ヘッドに関する特定の利点を実現する。したがって、次に、このような印刷ヘッドにおいて本発明をどのように使用することができるかについて論じる。
【0101】
サーマルベンド作動型印刷ヘッドでは、ノズルアセンブリが、チャンバのフロア(floor)部分に対して移動するルーフ部分を有するノズルチャンバを備えることができる。この移動可能なルーフ部分は一般に、2層サーマルベンドアクチュエータによって、フロア部分に向かって移動するように作動する。このようなアクチュエータはノズルチャンバの外に配置することができ、又はルーフ構造の移動部分を画定することができる。
【0102】
移動ルーフは、粘性のインクに対して作用する移動構造の面が1つだけであることによってインク滴の噴射エネルギーを低下させるため、有利である。しかしながら、このような移動ルーフ構造の問題は、作動中、ノズルチャンバ内のインクを密封する必要があることである。ノズルチャンバは一般に、インクの表面張力を使用してシールを形成する流体シールに依存する。しかしながら、このようなシールは不完全であり、インクを封じ込める手段として表面張力に依存することを回避する機械シールを形成することが望ましいであろう。このような機械シールは、ルーフの屈曲運動に対応するために十分に柔軟である必要があるであろう。
【0103】
移動ルーフ構造を有する一般的なノズルアセンブリ400が、2006年12月4日に出願された本発明の出願人の以前の米国特許出願第11/607,976号明細書(この明細書の内容は参照によって本明細書に組み込まれる)に記載された。本明細書ではこれが図27から30に示されている。ノズルアセンブリ400は、シリコン基板403の保護された(passivated)CMOS層402上に形成されたノズルチャンバ401を備える。ノズルチャンバは、ルーフ404と、ルーフから保護されたCMOS層402まで延びる側壁405とによって画定される。インクは、シリコン基板の裏面からインクを受け取るインク供給チャネル407と流体連通したインク入口406によってノズルチャンバ401に供給される。インクは、ルーフ404に画定されたノズル開口408によってノズルチャンバ401から噴射される。ノズル開口408はインク入口406からずらして配置される。
【0104】
図28により明らかに示されているように、ルーフ404は、ルーフの全面積のうちのかなりの部分を画定する移動部分409を有する。移動部分409は一般に、ルーフ404の全面積の少なくとも50%を画定する。図27から30に示された実施形態では、移動部分409に、ノズル開口408及びノズルリム415が、ノズル開口及びノズルリムが移動部分と一緒に移動するように画定される。
【0105】
ノズルアセンブリ400は、移動部分409が、平らな上能動ビーム(active beam)411と平らな下受動ビーム(passive beam)412とを有するサーマルベンドアクチュエータ410によって画定されることを特徴とする。したがって、アクチュエータ410は一般にルーフ404の全面積の少なくとも50%を画定する。それ対応して、上能動ビーム411は一般にルーフ404の全面積の少なくとも50%を画定する。
【0106】
図27及び28に示されているように、2つのビームの断熱を最大化するため、上能動ビーム411の少なくとも一部分は下受動ビーム412から間隔を置いて配置される。より具体的には、TiNからなる上能動ビーム411とSiOからなる下受動ビーム412の間のブリッジング層413としてTi層が使用される。ブリッジング層413は、アクチュエータ410の能動ビームと受動ビームの間に隙間414が画定されることを可能にする。この隙間414は、能動ビーム411から受動ビーム412への熱伝達を最小化することによってアクチュエータ410の全体効率を向上させる。
【0107】
しかしながら、代替として、構造の剛性を高めるために能動ビーム411を受動ビーム412に直接に融着又は接着することもできるということがもちろん理解できるであろう。このような設計変更は、当業者の領域内に十分に含まれるであろう。
【0108】
能動ビーム411は、Tiブリッジング層を介して一対のコンタクト416(正及び大地)に接続される。コンタクト416はCMOS層の駆動回路に接続する。
【0109】
ノズルチャンバ401からインク小滴を噴射する必要があるとき、2つのコンタクト416間の能動ビーム411に電流が流れる。能動ビーム411はこの電流によって急速に加熱され、受動ビーム412に対して膨張し、それにより(ルーフ404の移動部分409を画定する)アクチュエータ410が基板403に向かって下方へ曲がる。移動部分409と静止部分461との間の隙間460が非常に小さいため、一般に、移動部分が基板403に向かって移動するように作動するときにこの隙間を密封するのに、表面張力に依存することができる。
【0110】
アクチュエータ410のこの移動は、ノズルチャンバ401の内側の圧力の急速な増大によって、ノズル開口408からのインクの噴射を引き起こす。電流が止まると、ルーフ404の移動部分409はその静止位置に戻ることが可能となり、これにより、次の噴射に備えて入口406からノズルチャンバ401内へインクが吸い込まれる。
【0111】
図30を参照すると、印刷ヘッド又は印刷ヘッド集積回路を画定するために、このノズルアセンブリを複製してノズルアセンブリのアレイとすることができるということが容易に理解できるであろう。印刷ヘッド集積回路は、シリコン基板と、基板上に形成されたノズルアセンブリのアレイ(一般に複数の列として配置される)と、ノズルアセンブリ用の駆動回路とを備える。例えば2004年5月27日に出願された本発明の出願人の以前の米国特許出願第10/854,491号明細書及び2004年12月20日に出願された本発明の出願人の以前の米国特許出願第11/014,732号明細書に記載されたページ幅インクジェット印刷ヘッドを形成するために、複数の印刷ヘッド集積回路を隣接させ又は連結することができる。これらの明細書の内容は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0112】
図31から33に示された代替ノズルアセンブリ500は、サーマルベンドアクチュエータ510が、ノズルチャンバ501のルーフ504の移動部分を画定する上能動ビーム511及び下受動ビーム512を有する限りにおいて、ノズルアセンブリ400と似ている。
【0113】
しかしながら、ノズルアセンブリ400とは対照的に、ノズル開口508及びリム515がルーフ504の移動部分によって画定されない。反対に、ノズル開口508及びリム515は、インク小滴の噴射時、アクチュエータ510がノズル開口及びリムとは無関係に移動するように、ルーフ504の固定部分ないし静止部分561に画定される。この配置の利点は、インク滴の飛行方向の制御がより容易なことである。この場合もやはり、作動中にインクの表面張力を使用することによって流体シールを形成するのに、移動部分509と静止部分561との間の隙間560の小さな寸法に依存する。
【0114】
ノズルアセンブリ400及び500、並びにこれらに対応する印刷ヘッドは、上で説明したプロセスと類似の態様の適当なMEMSプロセスを使用して構築することができる。全てのケースで、ノズルチャンバの(移動又は静止)ルーフは、適当な犠牲フォトレジストスカフォルド上にルーフ材料を付着させることによって形成される。
【0115】
次に図34を参照すると、前に図27に示したノズルアセンブリ400がここでは、ルーフの移動部分409と静止部分461の両方を含むルーフ上に(上で詳細に説明した)追加の疎水性ポリマー層101をコーティングされていることが分かるであろう。重要なことに、図27に示された隙間460を疎水性ポリマー101が密封する。極めて低いこわさ(stiffness)を有することは、PDMS及びPFPEなどのポリマーの利点である。一般に、これらの材料は、1000MPa未満、一般に約500MPa程度のヤング率を有する。この特徴は、これらの材料が、本明細書に記載されたタイプのサーマルベンドアクチュエータノズル内に機械シールを形成すること可能にするため、有利である。作動中、このポリマーは弾力的に伸び、アクチュエータの移動をあまり妨げない。実際、弾性シールは、ベンドアクチュエータがその静止位置に戻るのを助ける。このときがインク滴の噴射が起こるときである。さらに、移動ルーフ部分409と静止ルーフ部分461の間に隙間がないことにより、インクはノズルチャンバ401の内側に完全に密封され、作動中、ノズル開口408以外から漏れ出ることができない。
【0116】
図35は、疎水性ポリマーコーティング101を有するノズルアセンブリ500を示す。ノズルアセンブリ400と同様に、隙間560をポリマー101で密封することによって、ノズルチャンバ501内のインクの優れた機械的密封を提供する機械シール562が形成されるということが理解できるであろう。
【0117】
幅広く記載された本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、特定の実施形態に示された本発明に多数の変形及び/又は変更を加えることができるということを当業者なら理解するであろう。したがって本発明の実施形態は、あらゆる点で例示的なものであり、限定的なものではないとみなすべきである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性のインク噴射面を有する印刷ヘッドを製造する方法であって、
(a)複数のノズルチャンバと、前記インク噴射面を少なくとも部分的に画定する相対的に親水性のノズル表面とを備えた、部分的に製造された印刷ヘッドを提供するステップと、
(b)アッシングによる除去に対して抵抗性を有する相対的に疎水性のポリマー材料の層を、前記ノズル表面に付着させるステップと、
(c)前記ノズル表面内に複数のノズル開口を画定するステップと
を含み、これにより、相対的に疎水性のインク噴射面を有する印刷ヘッドを提供し、
前記ステップ(b)と前記ステップ(c)とは任意の順序で実行される、
方法。
【請求項2】
ステップ(c)がステップ(b)の前に実行され、
前記方法は、付着させた前記ポリマー材料内に、整列した対応する複数のノズル開口を画定するステップを、さらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記整列した対応する複数のノズル開口が、前記ポリマー材料をフォトパターニングすることによって画定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(c)がステップ(b)の後に実行され、
前記ポリマー材料が、前記ノズル表面をエッチングするためのマスクとして使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ノズル表面をエッチングする前に、前記ポリマー材料をフォトパターニングして、複数のノズル開口領域を画定する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(c)がステップ(b)の後に実行され、
前記ステップ(c)が、
前記ポリマー材料上にマスクを付着させるステップと、
前記マスクをパターニングして、複数のノズル開口領域内の前記ポリマー材料を露出させるステップと、
露出させた前記ポリマー材料及びその下の前記ノズル表面をエッチングして、前記複数のノズル開口を画定するステップと、
前記マスクを除去するステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記マスクがフォトレジストであり、前記フォトレジストがアッシングによって除去される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマー材料及び前記ノズル表面をエッチングするのに同じガスケミストリが使用される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記ガスケミストリが、Oとフッ素含有化合物とを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記部分的に製造された印刷ヘッド内において、それぞれのノズルチャンバのルーフが犠牲のフォトレジストスカフォルドによって支持され、
前記方法は、前記フォトレジストスカフォルドをアッシングによって除去するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
それぞれのノズルチャンバのルーフが、前記ノズル表面によって少なくとも部分的に画定される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ノズル表面と基板との間にそれぞれのノズルチャンバの側壁が延びるように、前記ノズル表面が前記基板から間隔を置いて配置される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
それぞれのノズルチャンバのルーフ及び側壁が、CVDによって付着させることができるセラミック材料からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ルーフ及び側壁が、
酸化シリコン、窒化シリコン及び酸窒化シリコンを含むグループ、から選択された材料からなる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記疎水性ポリマー材料が、Oプラズマ中で不活性化表面酸化物を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記疎水性ポリマー材料が、Oプラズマにさらされた後にその疎水性を回復する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリマー材料が、重合シロキサン類及びフッ化ポリオレフィン類を含むグループから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリマー材料が、ポリジメチルシロキサン(PDMS)及び過フッ化ポリエチレン(PFPE)を含むグループから選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
付着後に、前記ポリマー材料の少なくとも一部分をUV硬化させる、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法によって得られた、又は得ることができる印刷ヘッド。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公表番号】特表2010−520080(P2010−520080A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−551078(P2009−551078)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【国際出願番号】PCT/AU2007/000303
【国際公開番号】WO2008/109910
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(303024600)シルバーブルック リサーチ ピーティワイ リミテッド (150)
【Fターム(参考)】