説明

疼痛の処置のためのスフェンタニル含有小容量経口腔粘膜用剤形

小容量スフェンタニル含有薬物剤形を対象の口腔粘膜に投与するための組成物、方法、およびシステムが開示される。本開示のスフェンタニル剤形は、疼痛を処置するために有効である。一つの実施形態において、本開示のスフェンタニル剤形の、対象への単回舌下投与は、次の1つまたはそれ以上の結果をもたらす:50%より大きいバイオアベイラビリティ;40%より小さい変動係数を有するAUCinf;40%より小さい変動係数を有するTmax;Cmaxと剤形中のスフェンタニル量との間の線形関係;AUCinfと剤形中のスフェンタニル量との間の線形関係。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2007年11月14日に出願された米国特許出願第11/985,162号;および2007年1月5日に出願された米国特許出願第11/650,174号の一部継続出願であり、これの米国特許出願の双方は、それらの全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、スフェンタニル含有小容量薬物剤形、並びに対象に経口腔粘膜投与するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
経口剤形は、市場におけるすべての薬物剤形の約80パーセントを占める。それらは、非侵襲で、投与が容易であり患者コンプライアンスが高い。経口投与された治療薬は、しかしながら、胃腸(GI)粘膜を通して血液中に吸収されるためには、胃および小腸に輸送されなくてはならない。経口投与に続く薬物の吸収効率は、GI管内の代謝および肝臓内の初回通過代謝の故に低いことがあり、その結果として、作用発現時間が相対的に長いか、または吸収特性が不規則であり、急性障害を制御するのにはあまり適しない。市場における経口剤形は、大多数がGI送達用に設計されている。口腔粘膜を通して送達するための経口剤形は、比較的わずかしか設計されていない。
【0004】
経口腔粘膜送達は、特に親油性薬物に対して、最高血漿中濃度(Cmax)に到達する作用発現時間が、経口送達より短くできることで多くの利益を提供する。これは、薬物が、血管が高度に発達した粘膜組織の上皮を直接かつ効率的に通過して迅速に血漿に至るからであり、かくして迅速に血液循環に到達することになり、同時により緩やかで往々にして非効率的で変動しやすいGI吸収が回避される。それ故に、迅速な作用発現、並びに一貫性のあるCmaxおよびTmaxが有益なときには、口腔粘膜を通して(例えば、舌下経路により)薬物を送達するのが有利である。
【0005】
経口腔粘膜の薬物送達過程において、薬物は、口腔の上皮膜を通して吸収される。しかしながら、往々にして、経口腔粘膜送達に関わる重要リスクは、唾液の絶え間ない生成、逆流、および嚥下によって、医薬が嚥下される可能性が高まることである。これは、用いられる剤形が、顕著な唾液反応を引き起こすほど十分大きいときに著しいリスクとなり、次には薬物が嚥下されること、および/または剤形の口腔粘膜への付着性が喪失することにつながる。
【0006】
口腔粘膜組織を経由して薬物を送達するために、舌下錠剤、トローチ、ロゼンジ、串付きロゼンジ、チューインガム、および頬パッチのような、様々な固体剤形が用いられてきた。ニトログリセリン舌下錠剤のような薬物の経口腔粘膜送達のためには、ロゼンジおよび錠剤のような固体剤形が用いられてきた。
【0007】
特に、スフェンタニルなどのオピオイドのような規制物質に応用される、再現性があって効果的な薬物の送達技術が、活発な研究分野になっている。
【0008】
これと関連する技術は、スフェンタニルを口腔粘膜、例えば、舌下の空間内に送達するための固体剤形については記述していない。
【0009】
アクセス制御された経口腔粘膜投薬システムは、経口および静脈経由のような従来の薬物投与手段に比べて多く利益を提供するが、そのうちで最も重要なのは安全性の向上であり、付加的な利益として、迅速でかつ一貫性のある作用発現、現在利用できる剤形に比べて一貫性があり予測可能な血漿中濃度、および高くて一貫性のあるバイオアベイラビリティが挙げられる。
【0010】
これは、特に疼痛、より具体的には急性痛(すなわち手術後の疼痛)、間欠痛、および突出痛の治療にとって意義がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
それ故に、薬物剤形が、薬物乱用および/または転用の可能性を最小限に抑えると同時に、安全でかつ制御された口腔粘膜経由の薬物送達を提供するデバイスを用いて投与される治療のために、(例えば、患者管理の投与によって)スフェンタニルのようなオピオイドを投与するための薬物剤形、方法およびシステムが必要とされる。
【0012】
本発明は、これらのニーズに取り組む。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の簡単な要旨)
本開示のスフェンタニル剤形の、対象への単回舌下投与は、次の1つまたはそれ以上の結果をもたらす:50%より大きいバイオアベイラビリティ;40%より小さい変動係数を有するAUCinf;40%より小さい変動係数を有するTmax;Cmaxと剤形中のスフェンタニル量との間の線形関係;AUCinfと剤形中のスフェンタニル量との間の線形関係。
【0014】
本開示のスフェンタニル剤形の対象への繰り返し舌下投与は、次の1つまたはそれ以上の結果をもたらす:対象への単回舌下投与後のバイオアベイラビリティより大きいバイオアベイラビリティ;繰り返し舌下投与後のTmaxと前回の舌下投与時間との差が、対象への単回舌下投与後のTmaxより短い、;および40%より小さい変動係数を有するTmax
【0015】
本開示のスフェンタニル剤形は、疼痛を処置するための方法に有用性を見出す。
【0016】
疼痛を処置するための方法においてスフェンタニル剤形を舌下の空間内に配置するための投与デバイスであって、配置/投与を患者が管理できる投与デバイスを使用することが開示される。
【0017】
本開示のハンドヘルド投与デバイスは、次の特徴の1つまたはそれ以上を備える:唾液の進入を防ぐか、または遅らせるための手段を有する投与端を有するハウジング;ロックアウト機能;ユーザー識別機能;および1つまたはそれ以上の薬物剤形を保持するように構成されたディスポーザブルなカートリッジ。
【0018】
ロックアウト機能は、スフェンタニルの繰り返し舌下投与を20分の最小間隔で提供することができる。
【0019】
カートリッジは、カートリッジ上の物理的鍵機能、光学的に検出される特徴またはパターン、カートリッジ上のバーコード、カートリッジ上の磁気タグ、カートリッジ上のRFIDタグ、カートリッジ上の電子マイクロチップ、またはそれらの組み合わせ、を備えるスマート・カートリッジ認識システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】健康なヒトボランティアに2.5、5、10および20mcg(10分毎に5mcg×4用量)の(浸食が遅い)スフェンタニル剤形を舌下投与した後の血漿中スフェンタニル濃度の平均+/−標準偏差(SD)対時間のグラフを示す。
【図2】健康なヒトボランティアに2.5、5、10または4×5mcgの(浸食が遅い)スフェンタニル剤形を舌下投与した後のCmax(平均+/−SD)vs.スフェンタニル用量(mcg)の線形性のグラフを示す。
【図3】健康なヒトボランティアに2.5、5、10または4×5mcgの(浸食が遅い)スフェンタニル剤形を舌下投与した後のAUCinf(平均+/−SD)vs.スフェンタニル用量(mcg)の線形性のグラフを示す。
【図4】健康なヒトボランティアに5mcgの(浸食が遅い)スフェンタニル剤形を10分間隔で4回繰り返し舌下投与した後の血漿中スフェンタニル濃度(平均+/−SD)vs.時間を、5mcgのスフェンタニルの10分にわたるIV点滴と比較したグラフを示す。
【図5】図5Aは、健康なヒトボランティアに10分間隔で4×5mcgの(浸食が遅い)スフェンタニル剤形を繰り返し舌下投与した後の、観察および予測された血漿中スフェンタニル濃度(平均+/−SD)vs.時間の12時間にわたるグラフを示す。図5Bは、健康なヒトボランティアに10分間隔で4×5mcgの(浸食が遅い)スフェンタニル剤形を繰り返し舌下投与した後の、観察および予測された血漿中スフェンタニル濃度(平均+/−SD)vs.時間の2.5時間にわたるグラフに示す。
【図6】健康なヒトボランティアに10、40(20分毎に10mcg×4用量)および80mcgの(浸食がより速い)スフェンタニル剤形を舌下投与した後の、血漿中スフェンタニル濃度(平均+/−SD)vs.時間のグラフを示す。
【図7】図7Aは、健康なヒトボランティアに20分間隔で4×10mcgの(浸食がより速い)スフェンタニル剤形を繰り返し舌下投与した後の、観察および予測された血漿中スフェンタニル濃度(平均+/−SD)vs.時間の12時間にわたるグラフを示す。図7Bは、健康なヒトボランティアに20分間隔で4×10mcgの(浸食がより速い)スフェンタニル剤形を繰り返し舌下投与した後の、観察および予測された血漿中スフェンタニル濃度(平均+/−SD)vs.時間の2.5時間にわたるグラフを示す。
【図8】健康なヒトボランティアに10、4×10または80mcgの(浸食がより速い)スフェンタニル剤形を舌下投与した後の、Cmax(平均+/−SD)vs.スフェンタニル用量(mcg)の線形性のグラフを示す。
【図9】健康なヒトボランティアに10、4×10または80mcgの(浸食がより速い)スフェンタニル剤形を舌下投与した後の、AUCinf(平均+/−SD)vs.スフェンタニル用量(mcg)の線形性のグラフを示す。
【図10】図10Aは、10mcg用量のスフェンタニルを20分間隔で繰り返し舌下投与した後の、重ね合わせにより予測された定常状態の血漿中スフェンタニル濃度vs.時間のグラフを示す。図10Bは、15mcg用量のスフェンタニルを20分間隔で繰り返し舌下投与した後の、重ね合わせにより予測された定常状態の血漿中スフェンタニル濃度vs.時間のグラフを示す。
【図11A】治療下にある患者の口腔粘膜に薬物剤形を送達するように設計された、例となる投与デバイスの概略図を示す。図11Aはもとの完全な投薬デバイスであり、図11B〜Dはその展開を示す。
【図11B】治療下にある患者の口腔粘膜に薬物剤形を送達するように設計された、例となる投与デバイスの概略図を示す。投薬デバイスの再利用可能なヘッド13およびディスポーザブルなボディー15;
【図11C】治療下にある患者の口腔粘膜に薬物剤形を送達するように設計された、例となる投与デバイスの概略図を示す。投薬デバイスの再利用可能なヘッド13、ディスポーザブルなボディー15およびカートリッジ17、投与ボタン23、並びに口吻部31。
【図11D】治療下にある患者の口腔粘膜に薬物剤形を送達するように設計された、例となる投与デバイスの概略図を示す。再利用可能なヘッド13、ディスポーザブルなボディー15およびカートリッジ17、口吻部31、およびデバイスをロック解除するための掛け金19、ハブロック21、遠位封止33、35、並びにパワートレーン・カップリング25を含む投薬デバイス11の様々な様態。
【図11E】治療下にある患者の口腔粘膜に薬物剤形を送達するように設計された、例となる投与デバイスの概略図を段階的に示す。再組み立てされた完全な投薬デバイス11。
【図12】唾液および水分の進入を阻止するか、または遅延させるように設計された特徴を示す、例となる投与デバイスの概略図を示す。好ましい実施形態は、シュラウド29を有する投与チップを含み、拭き取り封止/バルブ33、35、吸収剤パッド39、プッシュロッド51、乾燥チャンバー/水分伝達チャンネル43、チャンネル中の乾燥剤45、剤形67を含むカートリッジ17およびカートリッジ中の乾燥剤47の1つまたはそれ以上を有する。
【図13】図13Aおよび図13Bは、投与チップの例となる幾何学的配置の概略図を示す。
【図14A】口吻部31がS字形53であり、シュラウド29およびバルブを備える、投与デバイス11の例となる口吻部31の概略図を示す。シュラウドは、舌および他の粘膜からの水分および唾液の進入からバルブを遮蔽し、剤形が、濡れた遠位バルブまたはシュラウド領域に「固着すること」なしにデバイスから送出されるための領域を提供する。シュラウドは、デバイスが口腔空間から取り出されるときに剤形が引きずられるのを緩和するために、切り欠き/起伏55も備える。バルブは、剤形の送達を助けるのみならず、唾液および水分の進入を抑制するためにシュラウドとともに機能する。
【図14B】口吻部31がS字形53であり、シュラウド29およびバルブを備える、投与デバイス11の例となる口吻部31の概略図を示す。シュラウドは、舌および他の粘膜からの水分および唾液の進入からバルブを遮蔽し、剤形が、濡れた遠位バルブまたはシュラウド領域に「固着すること」なしにデバイスから送出されるための領域を提供する。シュラウドは、デバイスが口腔空間から取り出されるときに剤形が引きずられるのを緩和するために、切り欠き/起伏55も備える。バルブは、剤形の送達を助けるのみならず、唾液および水分の進入を抑制するためにシュラウドとともに機能する。
【図14C】口吻部31がS字形53であり、シュラウド29およびバルブを備える、投与デバイス11の例となる口吻部31の概略図を示す。シュラウドは、舌および他の粘膜からの水分および唾液の進入からバルブを遮蔽し、剤形が、濡れた遠位バルブまたはシュラウド領域に「固着すること」なしにデバイスから送出されるための領域を提供する。シュラウドは、デバイスが口腔空間から取り出されるときに剤形が引きずられるのを緩和するために、切り欠き/起伏55も備える。バルブは、剤形の送達を助けるのみならず、唾液および水分の進入を抑制するためにシュラウドとともに機能する。
【図14D】口吻部31がS字形53であり、シュラウド29およびバルブを備える、投与デバイス11の例となる口吻部31の概略図を示す。シュラウドは、舌および他の粘膜からの水分および唾液の進入からバルブを遮蔽し、剤形が、濡れた遠位バルブまたはシュラウド領域に「固着すること」なしにデバイスから送出されるための領域を提供する。シュラウドは、デバイスが口腔空間から取り出されるときに剤形が引きずられるのを緩和するために、切り欠き/起伏55も備える。バルブは、剤形の送達を助けるのみならず、唾液および水分の進入を抑制するためにシュラウドとともに機能する。
【図15−1】図15Aは、デバイス使用の間のプッシュロッド/錠剤相互作用の段階を示す、例となるデバイスを使用するための一連のフローダイアグラムであり、搭載機能を示す。図15Bは、デバイス使用の間のプッシュロッド/錠剤相互作用の段階を示す、例となるデバイスを使用するための一連のフローダイアグラムであり、キャリブレーション機能を示す。
【図15−2】図15Cは、デバイス使用の間のプッシュロッド/錠剤相互作用の段階を示す、例となるデバイスを使用するための一連のフローダイアグラムであり、投与機能を示す;そして、図15Dは、デバイス使用の間のプッシュロッド/錠剤相互作用の段階を示す、例となるデバイスを使用するための一連のフローダイアグラムであり、分解機能を示す。
【図16】デバイス使用の間のプッシュロッド/錠剤相互作用の段階を示す、例となるデバイスの概略図を示す。図16にはプッシュロッド51、剤形67、配送ブレット69、スプリング73および位置センサ71が示される。使用の間に、プッシュロッド51は、図16にも示されるように位置57、59、61、63、65および67の間で移動する。
【図17】投薬デバイスまたはシステムに含むことができる様々な構成要素を説明する図式的な構造接続図であり、分離した投薬デバイスヘッド13、投薬デバイスボディー15、薬物カートリッジ17、ポータブル・ドッキングFOB113、患者RFIDタグ115、および基地局117を有するデバイスを含む。
【図18】図18Aは、RFIDタグ、投薬デバイス、基地局/ドックおよび医療提供者のパーソナル・コンピュータを含んだ、投薬システムにおける通信の一様態を示すブロック図である。図18Bは、RFIDタグ、投薬デバイス、ポータブル・ドッキングFOB、基地局および医療提供者のパーソナル・コンピュータを含んだ、投薬システムにおける通信のまた別の様態を示すブロック図である。
【図19】図19Aおよび図19Bは、例となる単回用量アプリケータの概略図を示す。
【図20】図20A〜Cは、単回用量アプリケータの一タイプ、および対象への剤形送達におけるその使用に関する説明図を示す。
【図21】図21A〜Fは、付加的な単回用量アプリケータの説明図を示す。
【図22】使用に先立って複数の単回用量アプリケータが蓄積される、複数回用量アプリケータの説明図を示す。
【図23】図23A〜Cは、付加的な単回用量アプリケータおよび複数回用量アプリケータの実施形態の説明図を示す。
【図24】図20A〜Bは、単回用量アプリケータの一実施形態を使用する二つの段階の説明図を示す。
【図25】図25A〜Dは、単回用量アプリケータ(SDA)の付加的な例の概略図を示す。
【図26】図26A〜Dは、使用に先立って複数のSDAの蓄積を提供する複数回用量アプリケータまたは容器、および薬物剤形を舌下投与するためのSDAの使用に関する概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(発明の詳細な説明)
I.はじめに
スフェンタニル含有小容量剤形を、経口腔粘膜的に、例えば、舌下に投与するための組成物、方法、システム、キットおよび投薬デバイスが提供される。剤形の経口腔粘膜投与においては、唾液反応が最小限に抑えられ、従って薬物の大部分が口腔粘膜を通して送達されるほど、GI管への薬物送達は最小限に抑えられる。本小容量剤形は、口腔粘膜への付着を容易にする生体接着特性を有し、かくして嚥下による経口摂取および非効率的な送達のリスクを最小限に抑える。
【0022】
本請求項の小容量スフェンタニル含有剤形は、そのいくつかの実施形態が「Sublingual Sufentanil NanoTab(登録商標)」と呼ばれ、安全性と効能の両観点から、現在入手可能な疼痛の処置法と比較して多くの利益を提供する。
【0023】
以下の開示は、本発明を構成する剤形、投薬デバイス、方法、システムおよびキットについて記載される。ここに記載される特定の剤形、デバイス、方法論、システム、キットまたは医学的状態は、もちろん変化し得るので、本発明は、これらには限定されない。当然のことながら、ここに用いられる用語法は、特定の実施形態を記載することのみを目的としており、本発明の範囲を限定する意図はもたない。
【0024】
本明細書および添付の請求項に用いられるように、単数形「1つの(a)」、「および(and)」並びに「該(前記の)(the)」は、文脈が明確に逆を指示しない限り、複数の参照を含むことに留意すべきである。従って、例えば、「1つの薬物製剤」は、複数のかかる製剤を含み、「1つの薬物送達デバイス」への言及は、薬物剤形、および、かかる剤形の格納、貯蔵、および送達のための薬物送達デバイスを備えるシステムを含む。
【0025】
別に定義されない限り、ここに用いられるすべての技術的および具体的用語は、本発明が属する分野の当業者に共通に理解されるのと一般的に同じ意味を有する。本発明の実行またはテストにおいて、ここに記載されるのと同様または等価な任意の方法、デバイスおよび物質を用いることができるが、好ましい方法、薬物送達デバイスおよび物質は、以下に記載される。
【0026】
ここで議論される出版物は、ひとえにそれらの公開が本出願の出願日に先立つ故に示される。本記載のいずれも、先行発明の故に本発明がかかる公開に先行する権利なしと認めるものであると解釈されるべきではない。
【0027】
II.定義
用語「活性薬剤」または「活性な」は、本明細書では用語「薬物」と交互に用いることができ、任意の治療用活性薬剤を指す意図を有する。
【0028】
用語「付着する」は、本明細書では、粘膜表面のような表面に接触していて外力の適用なしに該表面に保持される、薬物剤形または製剤に関して用いられる。用語「付着する」は、特定の固着または結合度合を示唆する、永続性の度合を示唆する意図ももたない。
【0029】
本明細書に用いられる用語「鎮痛薬」は、スフェンタニル、またはアルフェンタニル、フェンタニル、ロフェンタニル、カルフェンタニル、レミフェンタニル、トレフェンタニル、またはミルフェンタニルのようなスフェンタニル同族体、並びに1つまたはそれ以上の治療用化合物を含む製剤を含む。語句「スフェンタニルまたは同族体」を用いることは、これらの選択されたオピオイド化合物のうちのただ1つだけの使用、またはただ1つだけを含む製剤、に限定する意図をもたない。さらに、スフェンタニルのみ、または選択されたスフェンタニル同族体のみへの言及、例えば、「アルフェンタニル」への言及は、本発明の方法による送達に適した薬物を単に例示すると理解されるべきであり、いかなる意味においても限定的となる意図はもたない。
【0030】
本明細書に用いられる用語「AUC」は、「曲線下面積」を意味し、薬物の血漿中濃度対時間プロットにおいて「AUCinf」とも呼ばれる。AUCは、典型的にはゼロから無限大までの時間間隔に対して与えられるが、しかし明らかに一患者に対して血漿中薬物濃度を「永久に」測定することはできず、数式を用いて、限られた数の濃度測定からAUCが見積もられる。AUCinf=AUC+Clast/λ、ここでClastは最終血漿中濃度である。
【0031】
実質的な意味合いにおいて、AUCinfは、吸収速度に依らず、からだによって吸収された総薬物量を表わす。これは、用量が同じ2つの製剤が、同じ投与量の薬物用量をからだに放出したかどうか決定しようと試みるときに役立つ。経粘膜剤形のAUCinfと静脈内投与された同じ投与量のAUCinfとの比較は、バイオアベイラビリティを測定する根拠を与える役割を果たす。
【0032】
本明細書に用いられる用語「生体接着」は、粘膜を含めて生体表面への付着を指す。
【0033】
本明細書に用いられる用語「バイオアベイラビリティ」または「F」は、「パーセント・バイオアベイラビリティ」を意味し、静脈内投与されたときの同じ薬物に対する、被験物から吸収された同じ薬物の割合を表わす。これは、被検物に関する意図された経路による送達後のAUCinfvs.静脈内投与後の同じ薬物に対するAUCinfから計算される。舌下投与に関する絶対バイオアベイラビリティは、次式で決定される:
【0034】
【数1】

本明細書に用いられる用語「突出痛」は、別のやり方で制御された疼痛のバックグラウンドの上に生じる、中程度から激しい強さの一時的に激発する疼痛である。「突出痛」は短い期間激しく、1ないし2分と短いこともあり、或いは30分またはそれ以上と長いこともある。
【0035】
用語「カートリッジ」は、本明細書では、1つまたはそれ以上の薬物剤形、典型的に200薬物剤形までを保持するように構成されたディスポーザブルなカートリッジに関して用いられる。カートリッジは、カートリッジ上の物理的鍵機能、カートリッジ上のバーコード、カートリッジ上の磁気タグ、カートリッジ上のRFIDタグ、カートリッジ上の電子マイクロチップ、またはそれらの組み合わせを有するスマート・カートリッジ認識システムを備えることができる。カートリッジは、1つまたはそれ以上の配送錠剤をさらに備えることができ、少なくても1つの配送錠剤が、剤形の投与に先立って投与される。
【0036】
本明細書に用いられる用語「Cmax」は、薬物投与後に観測される最高血漿中濃度を意味する。
【0037】
本明細書に用いられる用語「同族体」は、共通の化学構造の多くの変異形または配置のうちの1つを指す。
【0038】
用語「崩壊」は、本明細書において「浸食」と交互に用いられ、剤形が壊れる物理的過程を意味し、剤形の物理的完全性のみに関わる。これは、小片に壊れて究極的に大小微粒子になること、或いは代わりに、外側から中に剤形が浸食されて消失することを含む、多くの異なった仕方で生じることができる。
【0039】
本明細書に用いられる用語「溶解」は、活性成分が、インビトロの溶媒、またはインビボの生理的流体、例えば、唾液が存在するところで、放出、拡散、浸食、または浸食と拡散との組み合わせのメカニズムは関わらず、錠剤から溶解する過程を意味する。
【0040】
用語「投与デバイス」、「投薬デバイス」、「ディスペンサー」、「薬物ディスペンサー」、「薬物剤形ディスペンサー」、「デバイス」および「薬物送達デバイス」は、本明細書において交互に用いられ、薬物剤形を投与するデバイスを指す。投与デバイスは、剤形に製剤された医薬活性物質(例えば、スフェンタニルのようなオピオイド)の制御された安全な送達を提供する。デバイスは、ロゼンジ、丸薬、錠剤、カプセル、膜、細片、液体、パッチ、フィルム、ゲル、スプレーまたは他の形態のような、剤形の貯蔵および/または送達に適合させることができる。
【0041】
デバイスに関連して本明細書に用いられる用語「投与端」は、対象の口腔粘膜に薬物剤形を送達する機能を果たす口吻部およびシュラウドを備える、デバイスの部分を意味する。
【0042】
用語「薬物」、「医薬」、「薬理作用のある活性薬剤」、「治療薬」などは、本明細書で交互に用いられ、動物の生理機能を変化させ、かつ経口腔粘膜経路によって効果的に投与することができる、任意の物質を一般に指す。
【0043】
用語「浸食時間」は、固体の剤形が壊れて消失するまでに要する時間を意味する。
【0044】
用語「FOB」は、小さくポータブル・ハンドヘルドで電力供給されるドッキング式電子デバイスを指し、このデバイスは、データのアップロード、データのダウンロード、投薬デバイスへの制御されたアクセス、薬物剤形への制御されたアクセスを行うため、または投薬デバイスのユーザー・インタフェースを強化、或いは変更するために、投薬デバイスと連繋して用いることができる。FOBは、投薬デバイスと有線または無線いずれかの方法で通信およびドッキングすることができる。FOBは、特に病院環境において、医者または介護人のような医療専門家が首から掛けられるように、ひもに取り付ける改造を行ってもよい。投薬デバイスは、FOB経由で医者または介護人と通信することができる。
【0045】
本明細書で用いられる用語「製剤」および「薬物製剤」は、対象に送達するための多くの剤形いずれかの中に提供され得る、少なくとも1つの医薬活性物質を含む物理的組成物を指す。剤形は、ロゼンジ、丸薬、カプセル、膜、細片、液体、パッチ、フィルム、ガム、ゲル、スプレーまたは他の形態として患者に提供されることができる。
【0046】
用語「ヒドロゲルを形成する調合剤」は、水溶液、例えば体液、特に口腔粘膜のものと接触すると、その場で水和ゲルを形成するように水を吸収する、概ね水を欠いた固体製剤を意味する。ゲルが形成されるとユニークな崩壊(または浸食)反応を辿り、その間に治療薬がゆっくりと放出されることが可能になる。加えて、用語「ヒドロゲルを形成する調合剤」は、体液、特に口腔における体液と接触すると、薬物を放出するフィルムにかたちを変える、概ね水を欠いた固体製剤を指す。かかる膜は、薬物の放出および吸収に利用できる表面積を増加させ、かくして薬物のより速い吸収を可能にする。
【0047】
用語「ロックアウト機能」は、本明細書では、「ロックアウト時間」を提供するデバイス機能に関して用いられる。
【0048】
用語「ロックアウト時間」は、本明細書では、デバイスが、薬物へのアクセスを許可しない、すなわち、「ロックアウト時間」中は剤形が投与されることができない、期間に関して用いられる。「ロックアウト時間」は、プログラム可能であってもよく、一定の時間間隔、所定の間隔、所定の可変間隔、アルゴリズムによって決定される間隔、或いは遠隔コンピュータまたはドッキング・ステーションからデバイスに通信される可変間隔であってもよい。
【0049】
本明細書で用いられる用語「Log P」は、オクタノールと水との間の、イオン化していない化合物の平衡濃度比の対数を意味する。Pは、「オクタノール・水分配係数」とも呼ばれて、与えられた薬物の疎水性または親油性、化学的特性を数量化する手段として役立つ。
【0050】
用語「粘膜付着」は、本明細書では、口腔におけるような、粘液によって覆われた粘膜への付着を指すために用いられ、ここでは任意の生体表面への付着を指す用語「生体接着」と交互に用いることができる。
【0051】
用語「粘膜」は、粘液で覆われた体内の生体膜のいずれかを一般に指す。口腔の粘膜を通しての吸収は、特に興味深い。従って、口腔粘膜吸収、すなわち、頬側、舌下、歯肉および口蓋の吸収が特に熟考される。
【0052】
用語「粘膜デポー」は、本明細書では、広い意味で粘膜の中または直下における医薬活性物質の蓄積または堆積を指すために用いられる。
【0053】
用語「秩序化していない微粒子混合物」または「秩序化していない混合物」は、本明細書では、混合物が、医薬活性物質および生体接着物質または生体接着促進剤、或いは他の製剤成分に関して秩序化していない製剤について用いられる。加えて、この用語は、本明細書では、薬物の粒子が、より大きいキャリア粒子の表面を覆って一様には分布しない乾式混合を伴う工程によって調合される、任意の製剤に言及して用いられる。かかる「秩序化していない」混合は、特定の添加剤を薬物、生体接着物質または生体接着促進剤および/または崩壊剤に添加/混合する順序に関する必要条件のない、秩序化していない方法で粒子を乾式混合することを含んでもよい。さらに、秩序化していない混合工程では薬物粒子のサイズには制限がない。薬物粒子は、25μmより大きくてもよい。加えて、「秩序化していない混合物」は、一次キャリア粒子が崩壊剤を中に組み込まない任意の混合工程を含む。最後に、「秩序化していない混合物」は、任意の「湿式混合」工程、すなわち溶媒または非溶媒が混合工程の間に加えられる工程、または薬物が溶液または懸濁液のかたちで加えられる任意の混合工程、によって調合されることができる。
【0054】
本明細書で用いられる用語「動作可能なように接続された」は、構成部分が、目標を達成するために意図通り機能するように、デバイス中に提供されることを意味する。例えば、放出メカニズムに動作可能なように接続されたCPUに、動作可能なようにさらに接続されたメモリデバイスは、作動すると、CPUがメモリデバイスと通信して薬物送達の状況または履歴をチェックし、次にさらに、放出メカニズムと(例えば、ソレノイドおよびスイッチを経由して)通信して薬物を放出および投与することを示す意図をもってもよい。
【0055】
用語「オピオイド・ナイーブな患者」は、本明細書では、数週から数ヶ月の期間にわたってオピオイド物質の繰り返し投与を受けなかった患者に関して用いられる。
【0056】
本明細書で用いられる用語「オピオイド耐性患者」は、長期投与に伴うオピオイド物質の効果(例えば、鎮痛、吐き気または鎮静)の減少によって特徴付けられる生理学的状態を意味する。オピオイド物質は、アヘンまたはその誘導体を含むものと同様に鎮痛性、無痛覚性、および/または麻薬性の効果を有する薬物、ホルモン、または他の化学物質である。鎮痛耐性が進んだ場合、同水準の鎮痛をもたらすためのオピオイド物質の用量は増加する。この耐性は副作用に及んではならず、副作用は用量が増加するにつれて十分に耐え難くなる。
【0057】
用語「経口腔粘膜剤形」および「薬物剤形」は、本明細書において交互に用いることができ、医薬活性物質、例えば、スフェンタニルのような薬物を含む剤形を指す。経口剤形は、医薬活性物質を口腔粘膜経由で血液循環に送達するために用いられ、典型的に「舌下剤形」であるが、しかしある場合には他の経口腔粘膜経路を用いてもよい。本剤形は、医薬活性物質の口腔粘膜経由の送達を提供し、製剤を制御することによって医薬活性物質を放出するためのタイミングを設定することができる。本剤形は、医薬として許容される添加剤を備え、米国特許出願第11/650,174号に詳述されるようにNanoTab(登録商標)と呼んでもよい。本剤形は、発泡性でもなく、キャリア粒子表面に付着した薬物微粒子の実質的に水のない秩序化した混合物も備えない製剤を備え、キャリア粒子は薬物微粒子より実質的に大きい。
【0058】
本明細書で用いられる用語「経口腔粘膜薬物送達」および「経口腔粘膜投与」は、嚥下とそれに続くGI吸収によるのではなく、経口腔粘膜経路によって実質的に生じる薬物送達を指す。これは、頬側、舌下および歯茎の経粘膜領域を経由する送達を含む。
【0059】
用語「口吻部」は、「投与チップ」「送達チップ」と交互に用いられ、剤形を口腔粘膜(例えば、舌下の空間内)に送達する薬物剤形ディスペンサーの投与および/または位置決めチップを指す。
【0060】
用語「無線自動識別装置」または「RFID」は、RFIDタグと呼ばれるデバイスを用いたデータの蓄積および遠隔読み出しに依存した自動識別方法に関して用いられ、RFIDタグは、電波を用いた識別目的のために製品、または個人に取り付けられるか、または組み込まれる。いくつかのタグは、数メートル離れて、リーダーの視野を越えて読み込まれることができる。
【0061】
用語「交換可能なカートリッジ」または「ディスポーザブルなカートリッジ」は、典型的に200薬物剤形までを保持するように構成された、薬物剤形を収納するためのカートリッジに関して用いられ、該カートリッジは使い捨て用に設計される。
【0062】
用語「配送錠剤」は、本明細書では、薬物含有剤形と同じサイズおよび形状であるが医薬活性物質は含まない、「初期化」または「配送」錠剤に関して用いられる。「配送錠剤」は、医薬活性物質を含まないプラシーボ剤形を備えてもよく、或いはプラスチックまたは他の物質でできていてもよい。これは、投与デバイスに挿入された後に、そこから投与される最初のものである。デバイスは配送錠剤と、医薬活性物質を含む剤形とを区別するための手段を有する。
【0063】
用語「シュラウド」は、デバイスの投与端における部分的または完全な覆いを記述するために用いられる。該覆いは、口腔の唾液または他の水分との接触から送達ポートを保護して、デバイスと口腔粘膜および舌との間に障壁を成し、剤形を送達するための起伏、および唾液の進入または水分の進入を最小限に抑えるか、またはなくす機能を果たす疎水性または親水性の内部を有する。「シュラウド」は、口腔粘膜がバルブ領域および剤形に接触するのを防ぐ障壁となって剤形が投与されるのを助け、かつ剤形がシュラウドに付着するのを防ぐ。シュラウドは、剤形がシュラウド付着するのを阻止するために丸い内部表面または他の幾何形状をもつとよい。シュラウドは、舌または口腔粘膜が剤形の投与領域に接触する能力を制限し、それによって唾液の接触と進入を抑制する。
【0064】
用語「対象」は、任意の対象、一般に疾患の治療が望まれる哺乳類(例えば、ヒト、イヌ、ネコ、馬、牛、有蹄動物など)、成人または子供を含む。用語「対象」および「患者」は、本明細書において交互に用いることができる。
【0065】
本明細書で用いられる、用語「薬物剤形および投薬デバイスを含むシステム」は、薬物投与における送達および/またはモニタリングのための投薬システムを指す。本システムは、医薬活性物質、例えば、スフェンタニルのようなオピオイドをモニターおよび送達するために用いることができ、送達される薬物量、それに対応した効能および安全性を、現在入手可能なシステムより向上させるシステムである。本システムは、貯蔵薬物への無認可のアクセスを防ぐ安全機能、投薬ロックアウト機能、薬物へのアクセス制御のための個人ユーザー識別手段、用量カウント機能、用量の送達に関する情報を保存するための記憶手段、およびユーザー、薬物カートリッジまたコンピュータのような別のデバイスとの双方向情報交換のためのインターフェースを含み、現在入手可能なシステムを超える安全性の向上および使い易さを提供する1つまたはそれ以上の機能を有することができる。
【0066】
用語「小容量薬物剤形」または「小容量剤形」は、本明細書では、100μlより小さい容量および100mgより小さい質量を有する小容量剤形に関して用いられる。より具体的には、本剤形は、100mg、90mg、80mg、70mg、60mg、50mg、40mg、30mg、29mg、28mg、27mg、26mg、25mg、24mg、23mg、22mg、21mg、20mg、19mg、18mg、17mg、16mg、15mg、14mg、13mg、12mg、11mg、10mg、9mg、8mg、7mg、6mgまたは5mgより小さい質量、または100μl、90μl、80μl、70μl、60μl、50μl、40μl、30μl、29μl、28μl、27μl、26μl、25μl、24μl、23μl、22μl、21μl、20μl、19μl、18μl、17μl、16μl、15μl、14μl、13μl、12μl、11μl、10μl、9μl、8μl、7μl、6μl、または5μlより小さい容量を有する。本「剤形」は、生体接着特性を持っても持たなくてもよく、水溶液と接触するとヒドロゲルを形成することができる。
【0067】
本「剤形」は、本剤形の小さいサイズによる投与が適する量、すなわち0.25μgから99.9mgまで、1μgから50mgまで、または1μgから10mgまでの量で投与することができる任意の薬物を、経口腔粘膜経路により送達するために用いることができる。
【0068】
用語「小容量スフェンタニル含有薬物剤形」は、本明細書では、約2マイクログラム(mcg)から約200mcgまでのスフェンタニル、例えば、5mcg、10mcg、15mcg、20mcg、30mcg、40mcg、50mcg、60mcg、70mcg、80mcg、または100mcgのスフェンタニルから選択されるスフェンタニルの用量を含む小容量剤形に関して用いられる。
【0069】
用語「固体剤形」または「固体薬物剤形」は、本明細書では、固体、例えば、ロゼンジ、丸薬、錠剤、膜または細片の小容量剤形に関して用いられる。
【0070】
用語「舌下」は、文字通り「舌の下」を意味し、消化管経由よりむしろ舌下血管を経由して医薬活性物質が迅速に吸収されるやり方で、剤形が、口を経由して投与されることを指す。医薬活性物質は、血管が高度に発達した舌下粘膜を経由して吸収されるため、より直接的に血液循環にアクセスすることができ、GI管の影響を受けない直接的な全身投与が提供される。
【0071】
本明細書で定義される用語「終末半減期」または「t1/2[h]」は、ln(2)/λ(時間vs.log濃度曲線の線形回帰から見積もった一次終末速度定数として定義)から計算され、繰り返し用量実験の最終投薬後にも測定することができる。
【0072】
本明細書で用いられる用語「Tmax」は、最高血漿中濃度が観測された時点を意味する。
【0073】
本明細書に用いられる用語「Tonset」は、観察された「作用発現時間」を意味し、血漿中薬物濃度が、観測された最高血漿中濃度Cmaxの50%に達するのに要した時間を表わす。
【0074】
用語「治療に有効な量」は、疼痛の緩和のような所望の治療効果を促進するのに有効な治療薬の量、または治療薬の送達速度(例えば、時間で割った量)を意味する。所望される正確な治療効果(例えば、疼痛の緩和の度合、および緩和された疼痛の原因など)は、治療される状態、対象の耐薬性、薬物および/または投与される薬物製剤(例えば、治療剤(薬物)の効能、製剤における薬物の濃度など)、および当業者によって認識される様々な他の要因によって変化するであろう。
【0075】
薬物などの「経粘膜」送達の用語は、粘膜を横断または通過する送達のすべての形態を包含する意図を有する。
【0076】
III.薬物剤形
本請求項の小容量経口腔粘膜薬物剤形は、口腔における薬物送達を意図した従来のより大きい剤形と比較して、唾液応答の低減をもたらす。
【0077】
経口腔粘膜薬物送達のための好ましい部位は、ある実施形態においては剤形が頬内に配置されること、或いは口蓋または歯茎に付着させることが有利なこともあるとはいえ、舌下領域である。
【0078】
本剤形は、従来の経口剤形および他の経口腔粘膜剤形より大きい百分率(および量)の口腔粘膜経由の薬物送達を提供し、それに伴って胃腸(GI)管経由の送達は減少する。
【0079】
典型的に、本剤形は、薬物送達の間および薬物のほとんどまたはすべてが剤形から口腔粘膜に送達されてしまうまで、口腔粘膜に付着する(すなわち、生体接着性である)ように適合させる。
【0080】
より具体的に、本剤形は100mg、90mg、80mg、l70mg、60mg、50mg、40mg、30mg、29mg、28mg、27mg、26mg、25mg、24mg、23mg、22mg、21mg、20mg、19mg、18mg、17mg、16mg、15mg、14mg、13mg、12mg、11mg、10mg、9mg、8mg、7mg、6mgまたは5mgより小さい質量、または100μl、90μl、80μl、70μl、60μl、50μl、40μl、30μl、29μl、28μl、27μl、26μl、25μl、24μl、23μl、22μl、21μl、20μl、19μl、18μl、17μl、16μl、15μl、14μl、13μl、12μl、10μl、9μl、8μl、7μl、6μl、または5μlより小さい容量を有する。
【0081】
好ましい実施形態において、本請求項の剤形は、30mgより小さい質量、および30mlより小さい容量を有する。
【0082】
本剤形は、典型的に生体接着特性を有し、水溶液と接触するとヒドロゲルを形成することができる。
【0083】
本剤形は、典型的に約6分からまたは25分までの浸食時間を有するが、しかし浸食時間は変化してもよい。より具体的には、本剤形は、典型的に約5分、6分、7分、8分、9分、10分、11分、12分、13分、14分、15分、16分、17分、18分、19分、20分、21分、22分、23分、24分または25分の浸食時間を有する。
【0084】
一般に、対象の口腔粘膜に投与された剤形における医薬活性物質の総量のうち、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%は、経口腔粘膜経路によって吸収される。
【0085】
本剤形は、本質的に任意の形状を有することができ、例として平、凸または凹面を有する円形ディスク、楕円形状、球形状、3つまたはそれ以上の稜と平、凸または凹面とを有する多角形を含む。本剤形は、対称でも非対称でもよく、制御性があって便利でかつ容易な、貯蔵、取り扱い、包装または投薬を可能にする特徴または幾何学的形状を有することができる。
【0086】
経口腔粘膜薬物送達は、簡単かつ非侵襲であり、介護人または患者が最小限の不快感で行うことができる。経口腔粘膜送達のための剤形は、固体でも非固体でもよい。好ましい一実施形態において、からの投与量は、唾液と接触した後にヒドロゲルに変わる固体である。好ましいまた別の実施形態において、からの投与量は、唾液との接触後にヒドロゲルを形成することなく浸食される固体である。
【0087】
一般に、医薬活性物質の経口腔粘膜送達は、ロゼンジまたは錠剤のような固体剤形を用いて達成されるが、しかし液体、スプレー、ゲル、ガム、粉末およびフィルムなども用いることもできる。
【0088】
GI管経由ではバイオアベイラビリティに乏しいある種の薬物、例えば、スフェンタニルのような親油性オピオイドに対して、経口腔粘膜送達はGI送達よりも有効な送達経路である。経口腔粘膜送達は、かかる親油性薬物の作用発現時間(すなわち、投与から治療効果までの時間)が口腔GI送達より短く、より良好なバイオアベイラビリティおよびより一貫性のある薬物動態を提供する。
【0089】
本請求項の薬物剤形は、唾液応答を低減するように小さいサイズに設計されており、かくして嚥下される薬物量は減少し、その結果として薬物の相当量が口腔粘膜経由で対象に送達される。本請求項の薬物剤形は、口腔粘膜経由によるスフェンタニルの有効な送達、および一貫性のある治療域内の血漿中レベルを提供する。
【0090】
本請求項の剤形を調合するための製剤およびそれらを作製する方法は、米国特許出願第11/825,251号および第11/650,227号に記載されている。例となる製剤は、生体接着性であって、約0.0004%から約0.04%までのスフェンタニル、例えば、0.0005%、0.001%、0.002%、0.003%、0.004%、0.006%、0.008%、0.01%、0.012%、0.014%または0.016%のスフェンタニルを含む。一般に、本製剤は、(a)医薬活性量の薬物の秩序化していない混合物;(b)対象の口腔粘膜への付着性を与える生体接着性物質;および(c)ステアリン酸を備え、製剤を含む剤形の溶解は、例えば、約4から8までのpH範囲にわたってpHに依存しない。
【0091】
本発明の製剤に用いるための医薬活性薬剤は、オクタノール・水分配係数の対数(Log P)が0.006と3.382との間にあることによって特徴づけられる。
【0092】
経口腔粘膜送達のための本発明の医薬剤形は、固体でも非固体でもよい。好ましい一実施形態において、からの投与量は、唾液と接触した後にヒドロゲルにかたちを変える固体である。また別の好ましい実施形態において、本剤形は、唾液と接触すると生体接着性フィルムにかたちを変える固体である。
【0093】
好ましい実施形態において、かかる製剤は、錠剤の崩壊後に目に見えるフィルムを形成するように設計される。口腔粘膜上に置かれたとき、本剤形は、十分に水和するとすぐに粘膜表面に広がり、かくして活性薬剤を含む生体接着性フィルムにかたちを変えるほど水分を吸収する。この変形は、薬物放出に利用できる表面積を著しく増加させ、かくして薬物の剤形からの拡散および放出を加速する。より大きい接触表面積の故に薬物の吸収が迅速に生じ、速い作用発現がもたらされる。
【0094】
無毒で医薬として許容される多数の適切な口腔剤形用キャリアは、「Remington’s Pharmaceutical Science(レミントンの薬学)」第17版、1985に見い出すことができる。
【0095】
当然のことながら、本製剤は、直接圧縮、湿式造粒法などのような当業者によって日常的に採用される手順を用いて、対象に送達するための剤形に変換される。本剤形を調合するための工程は、投薬内容物の高い均一性を達成するために各々の製剤に対して最適化される。
【0096】
理論に縛られることは望ましくないが、例となる一実施形態において、薬物剤形を舌下腔に、好ましくは舌小帯のいずれか側の舌下に置くと、接触したときに付着する。本剤形は、舌下の空間内の水分に曝されるにつれて水を吸収し、その結果として本剤形が浸食されて薬物が対象の血液循環に放出される。
【0097】
IV.スフェンタニル
オピオイド類は、疼痛の処置のために広く用いられており、一般に静脈内、経口、硬膜外、経皮、直腸内および筋肉内に送達される。モルヒネおよびその類似体は、一般に静脈内に送達され、激痛、慢性痛、および急性痛に対して有効である。しかし、これらは、適切に用いられないと激しい呼吸抑制作用をもつこともあり、さらに乱用される可能性が高い難点がある。純粋にオピオイド類の過剰摂取からくる罹患率および死亡率の主な原因は、呼吸器合併症によるものである。
【0098】
スフェンタニル(N‐[(4‐(メトキシメチル‐l‐(2‐(2- チエニル)エチル )-4-ピペリジニル)]‐N‐フェニルプロパンアミド)は、心臓外科手術においてバランス全身麻酔をもたらすため、陣痛および出産の間の硬膜外投与のための主な麻酔薬として用いられており、実験的には鼻腔内および液体経口製剤が投与されてきた。IV送達のために用いられるスフェンタニルの市販形態は、SUFENTA FORTE(登録商標)製剤である。この液体製剤は、0.075mg/mlのクエン酸スフェンタニル(スフェンタニル塩基0.05mgに相当)および9.0mg/mlの塩化ナトリウムを水に含む。これは、148分の血漿中消失半減期を有し、投与用量の80%が24時間のうちに排出される。
【0099】
臨床上のスフェンタニルの使用は、手術室または集中治療室におけるIV投与に主として限られてきた。低用量の鼻腔内投与のための液体スフェンタニル調合剤の使用に関する2,3の研究(Helmers et al.,1989;Jackson K,et al.,J Pain Symptom Management 2002:23(6)450‐452)、および液体スフェンタニル調合剤の舌下送達の症例報告(Gardner‐Nix J.,J Pain Symptom Management.2001 Aug:22(2)627‐30;Kunz KM,Theisen JA,Schroeder ME,J of Pain and Symptom Management,8:189‐190,1993)がなされている。これらの研究の大部分において、オピオイド・ナイーブな患者では、成人におけるスフェンタニルの最少投薬量は5mcgであった。口腔または鼻粘膜に投与された液剤は、本明細書に記載される動物実験(舌下液体)、および文献(鼻の液滴‐Helmers et al.,1989)によって実証されたように、バイオアベイラビリティがより低く、たぶん作用持続時間がより短い難点がある。Gardner‐Nixは、液剤舌下スフェンタニルから生成された鎮痛データ(薬物動態データではない)データを提示し、6分以内に起こる液剤舌下スフェンタニルの鎮痛作用発現について記載しているが、疼痛が緩和される時間はおよそ30分しか持続しなかった。
【0100】
多くがフェンタニルを含む多数のオピオイド剤形が、疼痛を処置するために現在入手可能である。
【0101】
ロゼンジ(例えば、Actiq(登録商標))を用いたフェンタニルの頬側投与後に、Actiq(登録商標)200mcgの投与量に対するTmaxは20〜120分の範囲にはあるとはいえ、フェンタニルのうち75%は嚥下されるという事実(Actiq(登録商標)の添付資料)による不安定なGI摂取の結果として、バイオアベイラビリティは50%である。ActiqのTmaxに関するより最近の出版物は、これらのもとの時間が作用開始を速める方に歪曲されていたことを示唆する(Fentoraの添付書類は、ActiqのTmaxの範囲が240分にまで及ぶことを示唆する)。Fentora(フェンタニル・バッカル錠)は、薬物の50%が嚥下され、バイオアベイラビリティは65%を示すことが報告されている。本請求項の剤形とは対照的に、Actiq(登録商標)およびFentoraの両方とも、ロゼンジによって投与されたフェンタニルは、相当量が患者によって嚥下されるという不利益を抱える。
【0102】
スフェンタニルおよびフェンタニルは、強力なμオピオイド受容体アゴニストとして多くの類似性をもつが、しかし多くの鍵となる点で異なることが示されている。複数の研究は、スフェンタニルがフェンタニルより7〜24倍の範囲でより強力なことを実証した(SUFENTA(登録商標)添付書類;Paix A,et al.Pain,63:263‐69,1995;Raynolds L, et al.,Pain,110:182‐188,2004)。それ故に、スフェンタニルは、より小さい剤形を用いて投与することで、より大きい剤形における唾液応答の増加を回避することができ、その結果として嚥下される薬物量は、最小限に抑えられる。これは最小限のGI摂取につながる。
【0103】
加えて、フェンタニルおよび他のオピエート・アゴニストには、呼吸抑制、吐き気、嘔吐および便秘を含む有害な副作用の可能性がある。
【0104】
スフェンタニルは、臨床用量のフェンタニルおよび他のオピオイド類に比べて、呼吸抑制をより少なくできることを示唆する証拠である(Ved et al.,1989;Bailey et al.,1990;Conti et al.,2004)。
【0105】
フェンタニルは、GI経路から30%のバイオアベイラビリティを有するので、嚥下された薬物は有意な程度にCmaxの血漿中レベルに影響することがあり、その結果としてこれらの製品では不規則なCmaxおよびTmaxが観測されることになる。対照的に、スフェンタニルのGI経路からのバイオアベイラビリティは10〜12%であり、それ故に嚥下された薬物は有意な程度にはCmaxの血漿中レベルに寄付しない。
【0106】
さらに、スフェンタニルは、脂溶性(オクタノール・水分配係数)(1778:1)がフェンタニルより大きい(816:1)(van den Hoogan and Colpaert,Anesthes.66:186‐194,1987)。スフェンタニルは、タンパク質結合(91〜93%)が、フェンタニル(80〜85%)と比較して増加する(それぞれ、SUFENTA(登録商標)およびActiq(登録商標)の添付書類)。スフェンタニルは8.01のpKaをもち、一方でフェンタニルのpKaは8.43である(Paradis et al.,Therapeutic Drug Monitoring,24:768-74、2002)。これらの相違は、様々な薬物動態パラメータに影響を与えることにつながり、例えば、スフェンタニルは、フェンタニルより速い作用発現および早い回復時間を有することが示されている(Sanford et al.,Anesthesia and Analgesia,65:259-66,1986)。フェンタニルと比較して、スフェンタニルを用いると、疼痛がより迅速に緩和されるとともに、効果に応じて用量を調整して過剰投薬を回避することができる。
【0107】
重要なこととして、スフェンタニルは、フェンタニルより80,000倍もより強力にμオピオイド受容体のエンドサイトーシスをもたらすことが示されている(Koch et al.,Molecular Pharmacology,67:280-87,2005)。この受容体の内在化の結果として、ニューロンは、フェンタニルよりもスフェンタニルと長期間にわたって着実に反応し続けることになり、スフェンタニルにおける繰り返し投薬に伴う耐性の進行が、フェンタニルと比較して臨床的に少ないことを示唆する。
【0108】
本発明の研究に先立って、舌下スフェンタニルに関するいかなる形態の薬物動態データも公開されていなかった。スフェンタニルの眼内および鼻腔内経粘膜送達に関する薬物動態データは、イヌおよびヒトの研究に基づいて公開されている。Farnsworthら(Anesth Analg,1998,86:138‐140)は、イヌにおけるスフェンタニルの眼内経粘膜吸収および毒性について記載しており、5匹の麻酔されたイヌの結膜に2.5分にわたって50mcgのスフェンタニルが投与されている。Tmaxは5分に生じ、Cmaxは0.81ng/mL、t1/2はおよそ18分であった。ヒト16人にスフェンタニル15mcgを鼻腔内および静脈内投与した研究報告は、薬物動態プロフィルの比較を可能にする。なお、鼻腔内スフェンタニルは、1滴につき2.5mcgで各鼻孔に3滴が送達された。静脈内送達と比較して、0〜120分のAUCに基づく鼻腔内スフェンタニルのバイオアベイラビリティは78%であった。鼻腔内送達の結果、Cmaxが0.08ng/mLでTmaxが10分となった。t1/2はおよそ80分であった。Helmers et al.,Can J Anaesth.6:494-497,1989を参照。小児患者における第3の研究は、点鼻薬による2mcg/kgのスフェンタニルを用い、15人の子供の手術前鼻腔内投薬について記載しているが、スフェンタニルの血漿中レベルを15分に測定し始めたため、Tmaxを捉えるには遅すぎた。外挿データに基づいて、Cmaxはおよそ0.3ng/mLであり、t1/2はおよそ75分であった(Haynes et al.,Can J Anaesth.40(3):286,1993)。
【0109】
スフェンタニル剤形
本請求項の剤形における活性薬剤は、単独の、またはアルフェンタニル、フェンタニル、ロフェンタニル、カルフェンタニル、レミフェンタニル、トレフェンタニル、またはミルフェンタニルのようなスフェンタニル同族体と組み合わせたスフェンタニルである。好ましい実施形態においては、スフェンタニル単独の活性薬剤である。スフェンタニルは、本請求項の剤形において多くの製剤のいずれかで提供することができる。スフェンタニルは、クエン酸スフェンタニル、スフェンタニル塩基、またはそれらの組み合わせとして提供されるとよい。
【0110】
スフェンタニル薬物剤形は、舌下送達のために剤形当たり約0.25から約200mcgのスフェンタニルを含むことができる。例となる一実施形態において、各々の剤形は、約0.25から約200mcgのスフェンタニルを単独で、或いは1つまたはそれ以上の他の治療薬または薬物と組み合わせて含む。
【0111】
子供(小児患者)に投与するための例となる薬物剤形は、剤形当たり約0.25から約120mcgのスフェンタニルを含む。例えば、子供に投与するための薬物剤形は、経口腔粘膜送達のために約0.25、0.5、1、2.5、4、5、6、8、10、15、20、40、60または120mcgのスフェンタニルを含むことができる。小児患者に対して、例となる用量の範囲は、好ましい範囲を約0.05から約0.3mcg/kgまでとして、少なくとも約0.02mcg/kgから約0.5mcg/kgまでと言うことになる。
【0112】
成人に投与するための例となる薬物剤形は、剤形当たり約2.5から約200mcgまでのスフェンタニルを含む。例えば、成人に投与するための薬物剤形は、経口腔粘膜送達のために約2.5、3、5、7.5、10、15、20、40、60、80、100、120、140、180または200mcg、或いはそれ以上のスフェンタニルを含むことができる。
【0113】
好ましくは、スフェンタニル含有剤形は、約5から約100マイクログラム(mcg)までのスフェンタニル、例えば、5mcg、10mcg、15mcg、20mcg、30mcg、40mcg、50mcg、60mcg、70mcg、80mcgまたは100mcgのスフェンタニルを含む。
【0114】
当業者によって理解されるであろうように、用量は、子供では範囲の下限、成人では体重によって、特にオピオイド耐性の成人に長期間投与するときには、範囲の上限となるであろう。本発明者の研究に先立って、経口腔粘膜薬物送達のための小容量スフェンタニル含有剤形は、記述されていなかった。
【0115】
様々な実施形態において、本請求項の剤形は、子供、オピオイドに耐性があるか、またはナイーブなすべての年齢の成人、および非ヒト哺乳動物を含むすべてのタイプの患者に有効な疼痛の緩和を提供する。本発明は、入院患者および外来患者の両環境、並びに戦場において有用性が見いだされる。
【0116】
スフェンタニル同族体
スフェンタニルの同族体は、ここに記載される組成物、方法およびシステムに用途が見い出され、その例は、アルフェンタニル、ロフェンタニル、カルフェンタニル、レミフェンタニル、トレフェンタニルまたはミルフェンタニルを含む。
【0117】
ある実施形態において、剤形は、少なくとも重量で0.005%から多ければ99.9%までのアルフェンタニル、ロフェンタニル、カルフェンタニル、レミフェンタニル、トレフェンタニルまたはミルフェンタルを含む。活性成分(単数または複数)の百分率は、口腔粘膜経路による送達を最大限にするために最適化される剤形のサイズと活性成分(単数または複数)の特質とによって変わることになる。本発明のいくつかの様態において、単一の剤形に1つより多い活性成分を含むことができる。
【0118】
V.疼痛の処置
最新の治療法により、患者が管理する患者管理鎮痛法(PCA)、硬膜外持続点滴(CEI)、他のタイプの急性痛制御、緩和ケアと疼痛の制御、および在宅患者の疼痛制御を一般に含む多くの治療介入を用いて、疼痛の制御が試みられている。これらの方法が収める成功の度合は、制御の持続期間、治療の容易さ、および安全性対副作用の観点から様々である。
【0119】
急性痛の迅速な治療の必要性は、手術後回復、関節リウマチ、フェイルドバック(failed back)、末期がん(すなわち、突出痛)などを含む、多くの異なった臨床状況において生じる。例えば手術後に、患者は初めの数日は激痛に苦しみ、その後は軽度から中程度の疼痛の日々が続く。
【0120】
中程度から激しい術後痛を治療するために用いられる最も一般的な鎮痛薬は、IVモルヒネである。これは、「必要に応じて」看護師がIV注入で患者に送達するか、或いは一般的にはPCAポンプ中にモルヒネ注射器が置かれて、患者は、ロックアウト機能を有するボタンを押すことによってオピオイドを自己投与する。ヒドロモルフォンおよびフェンタニルのような他のオピオイドも、このやり方で投与することができる。
【0121】
急性痛の治療は、外来患者環境においても同様に必要である。例えば、多くの患者が慢性痛に苦しみ、これらの疼痛を処置するために、週または日に一度の頻度でオピオイドを使用する必要がある。彼らは、慢性的な根底レベルの疼痛を処置するために、長時間作用性の経口または経皮のオピオイド調合剤を有することができる一方で、厳しいレベルの突出痛を治療するために、しばしば短時間作用性のオピオイド類を必要とする。
【0122】
急性痛の治療は、多分に次善の条件下にある「戦場において」も同様に必要である。医療補助員または軍医は、しばしば、IVまたはIM投与に用いられる注射針が不慮の針刺し、感染リスクなどを招きかねない無消毒状態で激しい急性痛を治療することが求められる。経口オピオイド・錠剤は、緩和をもたらすのにしばしば60分かかり、これは激痛にあるヒトにとってあまりにも長い。
【0123】
多くの臨床環境において、用量を調整できて、安全で使いやすく、かつ非侵襲なやり方で有効に疼痛を緩和し、然るべき時間にわたって急性痛、激痛、突出痛または間欠痛の緩和をもたらす薬物を投与するための改善された手段が明らかに必要である。
【0124】
本請求項の組成物、方法、およびシステムは、急性痛(すなわち、手術後の疼痛)、間欠痛または突出痛の治療に有効なスフェンタニルのような医薬活性物質を含む剤形を、ロックアウト、薬物投与に先立つユーザー識別手段、および中に貯蔵された剤形の保護手段のような機能を含む投与デバイスを用いて投与することに依存する。その結果、本請求項の方法およびシステムは、安全性および有効性の両方の観点から、現在利用可能な治療様式に比べて大きな利益を提供する。
【0125】
VI.ヒトのインビボ研究
本明細書は、本請求項の小容量剤形を用いて、スフェンタニルを舌下経路により投与する研究に基づいて、ヒトで得られた薬物動態データを提供する。
【0126】
健康なヒトボランティアを用いて、ヒトに関する2つの臨床研究を行った。実施例1に詳述される第1の研究は、12人の対象(6人の男性および6人の女性)について、3.7mcg、7.5mcgまたは15mcgのクエン酸スフェンタニルにそれぞれ対応して2.5mcg、5mcgまたは10mcgのいずれかのスフェンタニル塩基を含む、浸食が遅い舌下スフェンタニル剤形を用いて行い、5mcgのスフェンタニルの10分間のIV点滴、または5mcgのスフェンタニルを含む浸食が遅い舌下スフェンタニル剤形の10分間隔で4回の繰り返し投薬と比較した(表1)。実施例2に詳述される第2の研究は、11人の対象について、15mcgまたは120mcgのクエン酸スフェンタニルにそれぞれ対応して10mcgまたは80mcgのいずれかのスフェンタニル塩基を含む浸食が速い舌下スフェンタニル剤形を用いて行い、10mcgのスフェンタニルの10分のIV点滴、または50mcgのスフェンタニルの20分のIV点滴、スフェンタニル溶液の5mcgの舌下投薬、或いは10mcgのスフェンタニルを含む浸食が速い舌下スフェンタニル剤形の20分間隔で4回の繰り返し投与と比較した(表2)。すべての添加剤は、「医薬として許容可能」(不活性)で、GRASすなわち「一般的に安全と認められる」状態を有した。
【0127】
舌下使用のために設計されたスフェンタニル剤形を、持続注入としてIVカテーテルを通して投与したIVスフェンタニルと比較した。血漿サンプルは、離れた部位で異なったIVカテーテルから抽出した。試験は、高、中および低品質管理サンプル濃度において良好な日間精度を示した。
【0128】
第1の研究のための剤形は、すべての対象において15〜25分の間に浸食され、本明細書において「浸食が遅い」と呼ばれる。第2の研究のための剤形は、すべての対象において6〜12分の間に浸食され、「浸食がより速い」と呼ばれる。各々のスフェンタニル剤形を健康なボランティアの舌下腔に置いた後に、非常に一貫性のある薬物動態プロフィルが得られた。小容量舌下剤形を用いて投与されたスフェンタニルのバイオアベイラビリティは、単回および複数回投与に対して、IV投与に比べて高く、60.9%(10mcg用量;浸食がより速い)から97.2%(4×5mcg用量、浸食が遅い)に及んだ。小容量舌下剤形を用いて投与されたスフェンタニルのバイオアベイラビリティは、フェンタニル製品、ActiqおよびFentora(それぞれ47%および65%‐Fentora添付文書)より大きい。重要なことに、バイオアベイラビリティは、患者に送達された全薬物の一貫性に関連づけられる。例えば、スフェンタニル剤形10mcgに対する血漿中薬物の全曲線下面積(AUC 0‐無限大)は、0.0705±0.0194hr*ng/ml(平均±標準偏差(SD))であった。このSDは、全AUCの27.5%でしかない。変動係数(CV)は、平均値のパーセントSDを記述する用語である。フェンタニル製品の変動係数、Fendora(AUCは45%)およびActiq(AUCは41%;Fentora添付資料)、一方で小容量舌下剤形を用いて投与されたスフェンタニルのバイオアベイラビリティの変動係数は、40%より小さい。それ故に、スフェンタニル剤形は、対象に送達された全用量のバイオアベイラビリティがより高いだけでなく、より一貫性がある。
【0129】
この高いバイオアベイラビリティには、浸食時間を含むがそれには限らない多くの要因がありうるとはいえ、小さいサイズの剤形が唾液の生成を抑えて薬物の嚥下を制限し、GI経路による薬物吸込に特有の低いバイオアベイラビリティを回避するものと思われる。FentoraおよびActiqの両方の添付文書は、それぞれ投薬量の少なくとも50%および75%が唾液によって嚥下されると主張しており、両方とも本請求項の剤形より低いバイオアベイラビリティを示す。
【0130】
本臨床研究に用いた剤形は、ActiqまたはFentoraロゼンジのごく一部、およそ5マイクロリットル(5.5〜5.85mgの質量)の容量を有する。それ故に、嚥下される薬物は25%より少なく、これはFentoraまたはActiqにおける嚥下よりずっと低い割合である。
【0131】
本スフェンタニル舌下剤形は、投与後早期における一貫性のあるプラズマ中薬物レベルの観点からも、より優れている。10mcgのスフェンタニル剤形で得られたCmaxは、27.5±7.7pg/mlであった。Cmaxの変動係数は、それ故に28%でしかなかった。FentoraおよびActiqのCmaxは、薬物のGI摂取に伴う変動性の影響を受ける。Fentoraは、1.02±0.42ng/mlのCmaxを報告しており、それ故にCmaxの変動係数は41%である。Fendoraの様々な用量に対する変動係数の範囲は、41%から56%である(添付文書)。ActiqのCmaxの変動係数は、33%と報告されている(Fendora添付文書)。
【0132】
優れたバイオアベイラビリティ、および血漿中濃度の一貫性に加えて、10mcgのスフェンタニル剤形に対するTmaxは40.8±13.2分(範囲19.8〜60分)であった。Fentoraに対して報告された平均のTmaxは46.8分で範囲は20〜240分である。ActiqのTmaxは90.8分、範囲は35〜240分(Fentora添付文書)である。それ故に、スフェンタニル剤形における鎮痛作用発現の一貫性は、FentoraおよびActiqより著しく良好である。
【0133】
加えて、本請求項のスフェンタニル剤形の繰り返し舌下投与後に得られたTmax値は、単回の舌下スフェンタニル剤形投与後に観測されたものより著しく短かった。最も顕著なことに、10μg(4×10μg)の(浸食が速い)スフェンタニル剤形の繰り返し投薬で得られたTmaxは、前回(4回目)の投薬の24.6分後に生じた。Tmaxの変動係数は18%でしかなく、本請求項のスフェンタニル剤形の繰り返し舌下投与に関する、非常に一貫性があり予測可能なTmaxを示した。
【0134】
本請求項のスフェンタニル剤形の用量を舌下投与した後の血漿中スフェンタニルレベルの直線性は、2.5mcg用量から80mcg用量までずっと一貫性があった。
【0135】
まだ開発中であるとはいえ、本明細書に提供されるスフェンタニルの薬物動態データと、速溶性のフェンタニル舌下ロゼンジであるRapinylとを公開データから比較することが可能である。ここに例示されるスフェンタニルの3つの用量(2、5、およそ10mcg)すべてに対するAUCの変動係数は、平均して28.6%であり、観察された小さい変動係数が用量に依存しないことを示す。対照的に、舌下フェンタニル製品Rapinylについて公開されたバイオアベイラビリティは、およそ70%である(Bredenberg,New Conceps in Administration of Drugs in Tablet Form(錠剤形態の薬物投与における新しいコンセプト),Acta Universitatis Upsaliensis,Uppsala,2003)。RapinylのAUC(0-無限大)の変動係数は、25〜42%の範囲にあり、用量に依存する。
【0136】
加えて、Rapinylの Cmaxの変動係数は、用量に依存して34〜58%と変化する。ここに提示されたデータが示すように、10mcgのスフェンタニル剤形を投与した結果として得られるCmaxは、変動係数が28%でしかなく、2、5、および10mcgの用量に対するCmaxの平均変動係数は、29.4%であり、用量による変化がごく少ないことを示した。同様に、RapinylにおけるTmaxの変動係数は、用量に依存して43〜54%の範囲にあり、一方で本発明者のスフェンタニル剤形は、Tmaxに対するこの変動係数が3つすべての投与力価にわたり平均して29%でしかない。舌下スフェンタニル剤形の作用発現は、このように一貫性があり、血漿中レベルが上昇する時間の幅が限られるので、3つの対照薬のいずれと比較しても、より安全な再投薬の範囲が可能である。
【0137】
加えて、Rapinylは、FentoraおよびActiqと同様に、本請求項のスフェンタニル剤形より長い血漿中消失半減期(用量に依存して、5.4〜6.3時間)を示す。スフェンタニル剤形の血漿中消失半減期は、ヒトへの単回経口腔粘膜投与後に1.5〜2時間の範囲にあり(表2)、このことから用量の調整、および過量投薬の回避が可能になる。当業者に理解されるであろうように、例示された剤形についてここに記載される半減期は、所与の剤形をつくるのに用いる製剤の成分および添加剤の相対量を変えることにより調整することができる。このヒトに関する研究では、舌下スフェンタニル剤形の繰り返し投薬によって血漿中レベルを高める用量調整能力についてもテストした。
【0138】
本明細書に記載される方法およびシステムは、口腔固有の環境で有効に機能するように設計され、現在入手可能なシステムよりも高いレベルの薬物吸収および疼痛の緩和を提供する。本請求項の方法およびシステムは、舌下粘膜を経由して血液循環に導入することにより、静脈内投与に伴う高いピーク血漿中レベルを回避するように設計される。
【0139】
本請求項の方法およびシステムは、生体接着、剤形の崩壊(浸食)および薬物の徐放を独立して制御すること、並びに安全な送達プロフィルを得るためにデバイスを用いて投与することをさらに提供する。デバイスが舌下剤形を投与することで、規定量の活性薬剤(例えば、スフェンタニル)を含む用量が個別に繰り返して提供され、患者または介護人は、薬物の送達量を正確に増減させて、安全かつ有効なやり方で然るべき量に調整することができる。投与デバイスのロックアウト機能は、薬物送達プロフィルの安全性を向上させる。
【0140】
さらに、本請求項の組成物、方法およびシステムを用いた治療は、現在入手可能な疼痛の処置のための医薬またはシステムにありがちな、血漿中の薬物動態におけるピークおよびトラフに起因する潜在的に有害な副作用を最小限に抑えることにより、安全性の改善を提供する。
【0141】
本請求項の舌下剤形が、舌下または鼻腔内いずれかに投与される様々な液剤形態に対して有利な点は、薬物が、鼻または口腔/GI経路いずれかによる嚥下を最小限に抑えて、剤形から局所的に徐放されることを含む。
【0142】
経口腔粘膜剤形はサイズが小さいので、長期間にわたって繰り返して舌下腔に置くことができる。サイズが小さいために、唾液の生成が最小限に抑えられ、物理的不快感も最小限になるので、数日、数週から数ヶ月にわたって繰り返して投薬することができる。舌下腔の脂質プロフィルを前提として、舌下経路は、スフェンタニルのようなある種の薬物を血漿中によりゆっくりと放出させることもできるが、これは頬側送達と比較して血漿中レベルをさらに安定させることになる「デポー」効果の利用によるものであろう。
【0143】
経口腔粘膜剤形は、米国特許第6,759,059号(Rapinyl)に記載される先行技術の製剤に見られるような、血漿中レベルにおける即座のピークおよびそれに続く顕著な低下を回避することを目的として、薬物形態が十分ゆっくりと浸食されるように舌下に楽にフィットする設計がなされる。上述の特許では、400mcgのフェンタニルを含む錠剤によってフェンタニルが投与され、血漿中濃度は、2.5ng/mlのピークに続いて即座に低下する結果となった。Fentora(フェンタニル・バッカル錠)も同様にプラトー相を欠く難点があるが、むしろ血漿中レベルは、Cmaxまで急勾配で上昇し、続いて顕著に低下する(Fentora添付文書)。
【0144】
VII.小容量経口腔粘膜剤形の有用性
本請求項の剤形、方法、およびシステムは、疼痛の処置のための経口腔粘膜、例えば、舌下経路によるスフェンタニルの送達に有用性を見い出す。小容量経口腔粘膜剤形は、高いバイオアベイラビリティ、Tmaxの低い変動性、Cmaxの低い変動性、およびAUCの低い変動性を提供する。本剤形は、治療域内の持続的血漿中レベルも提供する。
【0145】
より具体的には、本請求項の剤形、方法、およびシステムは、以下の利益を提供する:
(a)本請求項のスフェンタニル剤形を投与した後の対象における血漿中スフェンタニルレベルと、剤形中のスフェンタニル量との間に線形関係がある;
(b)本請求項のスフェンタニル剤形の対象への単回舌下投与は、変動係数が40%より小さいAUCinfをもたらす;
(c)本請求項のスフェンタニル剤形の対象への単回または繰り返し舌下投与は、変動係数が40%より小さいTmaxをもたらす;
(d)本請求項のスフェンタニル剤形の対象への繰り返し舌下投与は、該対象への単回舌下投与後より大きいバイオアベイラビリティをもたらす;
(e)本請求項のスフェンタニル剤形の繰り返し舌下投与後のTmaxと前回の舌下投与の時間との差は、該対象への単回舌下投与後のTmaxより短い;
(f)Cmaxと剤形中のスフェンタニル量との間に線形関係がある;
(g)AUCinfと剤形中のスフェンタニル量との間に線形関係がある;および
(h)10または15mcgの舌下スフェンタニル剤形の複数回投与後の定常状態における最高予測スフェンタニル濃度は、予測可能であり、安全なロックアウト時間の正確な決定、従って安全で有効な疼痛の処置を可能にする。
【0146】
本明細書に詳述される例となる一実施形態において、本剤形は、特定できるか、またはできない様々な病因のいずれかに関係し得る、疼痛に苦しむ対象の治療に有用性を見出す。この実施形態において、本剤形は、疼痛の抑制または軽減に有用性を見出す。疼痛の「治療」または「管理」の用語は、例えば疼痛スコアによって測定されるように、対象をより快適にするための疼痛の後退、抑制または軽減を一般的に記述するためにここで用いられる。
【0147】
本発明は、オピオイド・ナイーブ患者およびオピオイド耐性患者の両方の治療に有用性を見出す。
【0148】
本剤形は、手術後の疼痛のような急性痛、並びに「戦場における」ような、すなわち多分に次善の条件下にある他の疼痛の処置に特に有用性を見出す。
【0149】
医療補助員または軍医は、しばしば、IVまたはIM投与に用いる注射針が不慮な針刺し、感染リスクなどを招きかねない無消毒状態で激しい急性痛或いは他の負傷または症状を治療することを求められる。口腔オピオイド・錠剤は、緩和をもたらすのにしばしば60分かかり、これは激しい疼痛にあるヒトには長過ぎる。本請求項の剤形は、このニーズへの対処に有用性を見出す。
【0150】
本剤形が疼痛の処置に用いられるとき、本請求項の方法およびシステムは、小児および成人集団への薬物の投与、ヒトおよび非ヒト哺乳動物、並びにオピオイド耐性およびオピオイド・ナイーブ患者集団の治療に有用性を見出す。
【0151】
本請求項の方法およびシステムの応用は、いかなる特定の治療指標にも限定されない。かくして、本請求項の剤形は、小児および成人の対象へのスフェンタニルの投与、およびヒトおよび非ヒト哺乳動物の治療に有用性を見出す。
【0152】
本剤形は、その快適で安全な特質から子供がこの治療方式を容易に受け入れることを可能にし、薬物を信頼性よく経粘膜的に送達することになるため、小児への応用に有用性を見出す。具体的な例は、限定されることなしに、IV経路が利用できないか、または不都合なときの小児の急性痛の治療、子供が投与の吸入経路を有効に使えないときの小児喘息の治療、子供が丸薬を飲めないか飲もうとしないときの吐き気の治療、子供がNPO(口腔摂取不可)であるか、またはより迅速な作用発現が必要とされるときの手術前鎮痛を含む。
【0153】
本剤形は、獣医学的な応用にさらなる有用性を見出す。具体的な例は、限定されることなしに、疼痛の緩和、心配/ストレス緩和、手術前の鎮痛などのような、IV投与が容易に利用できないか、または不便な急性症状の任意の治療を含む。
【0154】
VIII.投与デバイス
小容量薬物剤形を経口腔粘膜投与するための投与デバイスおよびシステムが提供される。本投与デバイスは、典型的にハンドヘルドかつポータブルで、投与端を有するハウジングを備えており、一般に該投薬端は、唾液の進入阻止または遅延および/または水分制御手段を提供するシュラウドのついた口吻部を有する。本投与デバイスは、ロックアウト手段およびユーザー識別手段のような安全機能をさらに提供する。
【0155】
本請求項の投与デバイス、方法およびシステムは、小容量剤形を口腔粘膜に送達することを備える。ここに詳述される特定のデバイス、システム、方法論および剤形は、もちろん変化しうるので、本発明はそれらには限定されない。当然のことながら、ここに用いられる用語は、特定の実施形態のみを記載することを目的としており、本発明の範囲を限定する意図はもたない。
【0156】
唾液および水分の進入阻止/遅延
いくつかの実施形態において、本請求項の投与デバイスは、該投与デバイス中への唾液の進入および水分の進入を最小限に抑えるか、またはなくすための手段を備える:(1)中にある剤形を濡らすのを回避すること;(2)中にある剤形が乾燥を保つように、投与デバイスに入るいかなる唾液も分離すること;(3)剤形が乾燥を保つように、投与デバイスに入るいかなる唾液も吸収または吸着すること;(4)剤形を気相および液相の水分から保護するために、唾液および水分がデバイスに入るのを阻止すること、または(5)それらの任意の組み合わせ。
【0157】
本投与デバイスは、デバイスの外側の周囲条件に起因する湿度の進入を防ぐおよび/または制御する手段を有することができる。
【0158】
唾液の進入を最小限に抑えるか、またはなくす、或いは他の水分が投与デバイスに入るのを防ぐための手段は、限定されることなしに、1つまたはそれ以上のフレキシブルまたは硬い封止、1つまたはそれ以上のフレキシブルまたは硬いワイパー、乾燥剤またはパッドのような1つまたはそれ以上の吸収物質成分の使用、手動または自動で開閉されるドアまたはラッチ、多段階送達システム、正の空気圧および気流、または剤形送達オリフィスと唾液を輸送できる口内粘膜組織との間に維持されたエアギャップまたは所定間隔ないしバリア/シュラウドを含む。シュラウドは、舌または口腔粘膜が剤形の投薬領域に接触する能力を制限し、それによって唾液の接触および進入を制御する。シュラウド内部およびバルブ/封止表面の「湿気」を抑制するか、またはなくすことによって、剤形とシュラウドまたはバルブ/封止との間に付着を生じることなしに、剤形が投与される。
【0159】
湿度、唾液の進入、または他の水性液体への不慮の暴露のいずれかによる水分への暴露から、薬物剤形を保護するために、本投与デバイス、および剤形をデバイス内に収納する容器またはカートリッジは、乾燥剤を含む。
【0160】
もし唾液または水分がデバイスに入った場合に、それらを捕捉或いは分離するための手段は、限定されることなしに、水分を集める別のトラックまたはチャンネル、水分を吸収剤または吸着剤に伝える別のチャンネル、またはそれらの物質または構成部分の任意の組み合わせを含む。
【0161】
乾燥剤は、水に親和性を有する固体、液体、またはゲルの形態の吸着剤であり、周囲から水分を吸収または吸着し、かくして身近な環境における水分を制御する。任意の市販の乾燥剤を用いることができる。市販の乾燥剤は、典型的にペレット、キャニスター、パケット、カプセル、粉末、固体物質、ペーパー、ボード、錠剤、粘着パッチ、およびフィルムの形態をとり、射出成形プラスチックを含めて、特定用途のために形成することができる。シリカゲル(けい酸ナトリウム、固体でゲルではない)、アルミノけい酸塩、活性アルミナ、ゼオライト、モレキュラーシーブ、モンモリロナイト粘土、酸化カルシウムおよび硫酸カルシウムなどを含む、多くの種類の固体乾燥剤があり、それらのいずれも本請求項の投与デバイスに用いることができる。異なった乾燥剤は、水分または他の物質に対して異なった親和性、並びに吸収または吸着に関する異なった能力、および速度を有する。同様に、異なった種類の乾燥剤は、異なった相対湿度で身近な周囲と平衡状態に達することになる。剤形および投与デバイス内部を水分から保護するための手段として、1つまたはそれ以上の乾燥剤を、口吻部;剤形内または近傍;送達ルート内または近傍;剤形、錠剤・マガジンないしカートリッジ内または近傍;投与デバイスの他の構成部分内または近傍に用いることができる。該乾燥剤は、投与デバイスの射出成形による構成部分として形成することができ、位置に圧入された圧縮乾燥剤、またはデバイス内外の任意の他の位置に存在する乾燥剤とすることができる。
【0162】
好ましい一実施形態において、乾燥剤は、カートリッジ側面の空洞にはめ込まれる。乾燥剤の空洞には剤形スタックにつながる孔があり、剤形を乾燥剤に曝して乾燥状態に保つ。
【0163】
本請求項の投与デバイスは、剤形投与中における投与デバイス中への唾液の進入または水分を最小減に抑えるか、またはなくすために、バルブ、パッド、封止、プッシュロッド休止ポジション、口吻部デザインおよびシュラウドを利用する。
【0164】
本請求項のデバイスに用いるためのバルブは、唾液および/または水分がデバイスに入るのを避けるのに十分な封止力を提供する、典型的にドーム/外套針タイプのバルブであり、投与中および剤形が投与された後に、遠位オリフィスを閉じることによって、唾液の進入または水分を最小限に抑えるか、或いはなくす機能を果たす。
【0165】
本請求項のデバイスに用いるためのパッドは、プッシュロッド表面から液体を除去するために、プッシュロッドと接触するか、または繋がるのに役立つ様々な幾何学的形状を有する。かかるパッドは、通常は親水特性を含み、液体をトラックおよびプッシュロッドから運び去ることによって、唾液の進入または水分の進入を最小限に抑えるか、またはなくす機能を果たす。
【0166】
本請求項のデバイスに用いるための封止およびワイパーは、送達の間に薬物剤形およびプッシュロッドの周りに均一な封止を維持するように設計されており、これらは、投与の前、中および後にオリフィスおよびプッシュロッドの封止および拭き取りを行うことにより、剤形およびプッシュロッドの周りを封止して、唾液の進入または水分を最小限に抑えるか、またはなくす機能を果たすフレキシブルな物質により特徴づけられる。
【0167】
本請求項のデバイスにおけるプッシュロッドの休止ポジションは、プッシュロッドを、カートリッジ出口から遠位にあり、かつ遠位の投与オリフィスから近位にある中間位置に置くことによって特徴づけられ、該休止ポジションは、投薬合間の休止時にプッシュロッドを乾燥剤、吸収剤を含む位置、すなわち、プッシュロッドを乾燥させるチャンネル内に存在させることによって、唾液の進入または水分を最小限に抑えるか、またはなくす機能を果たす。
【0168】
本請求項のデバイスに用いるための口吻部のデザインは、デバイスの使用および/または対象の口腔粘膜上へのチップの配置を助ける遠位のデバイス形状、典型的にS字型、によって特性づけられる。本形状は、典型的にデバイスの適切な使用、および剤形を対象の口腔粘膜上、例えば舌下腔に置くことを可能にするような曲線、角度、および幾何学的形状を有する。
【0169】
本請求項のデバイスにおけるシュラウドは、デバイスと口腔粘膜および舌との間にバリアを形成する幾何学的形状、剤形送達のための起伏、および疎水性または親水性の内部をもち、口腔粘膜をバルブ領域および剤形に接触させないバリアをつくり出すことによって、唾液の進入または水分の進入を最小限に抑えるか、またはなくす機能を果たし、剤形の投薬を助け、かつ剤形のシュラウドへの付着を妨げる。本シュラウドは、剤形がシュラウドに付着のを抑えるために、丸い内部表面または他の幾何学的形状を有することができる。本シュラウドは、舌または口腔粘膜が剤形の投与領域に接触する能力を制限し、それによって唾液の接触および進入を抑制する。
【0170】
図11A〜Eは、経口腔粘膜送達のために複数の剤形を保持するように構築された、投薬デバイスの一実施形態の様々な様態の概略図に示す。図11Aは、完全に組み立てられた、または一体化した本発明の投与デバイス11の概略図である。図11Bにおいて、投与デバイス11は、再利用可能なヘッド13およびディスポーザブルなボディー15を含む;図11Cにおいて、投与デバイス11は、カートリッジ17をさらに含む;図11Dにおいて、投与デバイス11は、バルブ33、口吻部31、掛け金ボタン19、パワートレイン・カップリング25、ハブロック21および投薬ボタン23を含む;図11Dは、再組み立てされた完全な投与デバイス11の概略図である。
【0171】
図12は、投与チップが、拭き取り/封止バルブ37、吸収剤パッド39、薬物乾燥チャンバー/水分伝達チャンネル43、チャンネル中の乾燥剤45、剤形67を含むカートリッジ17およびカートリッジ中の乾燥剤47、の1つまたはそれ以上を有するシュラウド29を含む、例となる投与デバイスの概略図を示す。
【0172】
図13Aおよび13Bは、1つまたはそれ以上の封止33、35が、シュラウド29を通して口腔粘膜の湿った、または濡れた表面と接触するのを防ぐ、投与チップのための例となる幾何学的配置の概略図を示す。
【0173】
図14A〜14Dは、投与デバイス11の例となる口吻部31の概略図であり、該口吻部31は、シュラウド29、剤形67を投与するためのバルブ33、並びに剤形67を口腔粘膜に対して置き、投与後にデバイス11を取り出すときにこれを動かさないための切り欠き/起伏55を備える。
【0174】
本請求項のデバイス中への唾液の進入および水分を最小限に抑えるための手段は、貯蔵の間に、例えば、経口腔粘膜投与の前または間に、剤形の完全性を維持するために重要である。
【0175】
本請求項の投与デバイスは、水分および/または湿度に敏感な薬物剤形を投与するために用いることができる。かかる場合に、薬物剤形のカートリッジは、湿度、液体水分、唾液、粘液などを含む気相および液相水分から薬物剤形を保護する機能を果たす。本カートリッジは、円筒状、ディスク状、らせん状、直線状であっても、秩序化していなくてもよく、または投薬デバイスが制御されたやり方で投与することを可能にする、薬物剤形の任意の集合形態であってもよい。未使用の薬物剤形が水分を吸収したり、或いは使用前に別なやり方で水分に曝されるのを防ぐためには、カートリッジが水分への暴露から薬物剤形を封止する手段を提供するとよい。これは、1つの薬物剤形がカートリッジから投与されたときに、残りの剤形を保護している封止が壊されずに残るように、薄い不透水性の箔または不透水性物質によって個々の剤形が分離された、個別包装の薬物剤形を含むカートリッジを用いることによって達成することができる。代わりに、各々が分離した封止区分に2つまたはそれ以上の剤形が一緒に包装されるようなやり方で、剤形がカートリッジ内に包装されてもよい。いくつかの実施形態においては、カートリッジ内のすべての剤形が、箔封止された一区分に一緒に包装されてもよい。
【0176】
投与デバイス内に小容量薬物剤形をハウジングする薬物カートリッジは、隔膜、エラストマー封止またはバルブ、スライド式、移動式、ヒンジ付きドアまたはバルブによって、或いは投薬デバイスに搭載されるときに別の構成部分から封止される手段によって、水分に対する封止を可能にすることができる。このように、単一の再封止可能な封止は、単独で、または剤形がカートリッジ外へと通過することによって開くことができる。剤形がカートリッジから送出された時点で、カートリッジ上の再封止可能な封止は、水分または他の汚染物質がカートリッジ内に残された薬物剤形に損傷を与えるのを防ぐために、再封止されることができる。カートリッジは、投薬デバイスに搭載されたとき、またはカートリッジから最初の剤形が送出された時点で壊れる、再封止可能でない封止をさらに有してもよい。
【0177】
他の実施形態において、カートリッジは、使用前または通常使用中のいずれかにカートリッジに浸入する水分を吸収または吸着するための乾燥剤または他の吸収剤ないし吸着材を含む。請求項の投与デバイスに用いるためのカートリッジは、個別に封止された剤形、多重に封止された剤形、再封止可能な封止、再封止可能でない封止、乾燥剤、吸収剤、または吸着剤の任意の組み合わせを含むことができる。一実施形態において、投与デバイス中に用いるためのカートリッジは、1〜5日間の治療に十分な薬物剤形、例えば、40剤形または48から72時間の治療に供するのに十分な薬物剤形を保持する。
【0178】
プッシュロッドのデザイン
図15A〜Dは、例となる投与デバイスに用いるための一連のフローダイアグラムでありプッシャー・ロジックが示されているが、図15は、搭載機能を示す;図15Bは、デバイスキャリブレーション・ロジックフローを示す。図16に関して、プッシュロッド51は、ポジション65から進んで、ポジション63で配送錠剤69を拾い上げ、さらにポジション61に進む。ポジション61において、デバイスは、配送錠剤69および/またはプッシュロッド51の存在を検出する。そうすることで、デバイスは、キャリブレーションされて、組み立て誤差、プッシュロッド長およびプッシュロッド端状態の変動に関わらず、配送錠剤69および/またはプッシュロッド51端の位置を知る。このキャリブレーションに続いて、プッシュロッド51は、配送錠剤69をポジション61から、配送錠剤69がデバイスから投与されるポジション57に進める。この動作の間に、デバイスは、配送錠剤69、プッシュロッド51、および薬物剤形67を識別することが可能である。配送錠剤は、デバイス・セットアップの間に新しいカートリッジから投与される最初のものなので、デバイスは、この識別によって、カートリッジが未使用なことを確認することができる。配送錠剤、プッシュロッド、および薬物剤形67を識別する手段を提供する機能は、光学的、物理的、RF、電子的(抵抗性、容量性など)または磁気的であってもよい。先述のポジション65およびポジション57からのプッシュロッド51の前進は、連続的または断続的であってもよく、ポジション61で物理的に停止する必要はない。プッシュロッド51は、次にポジション57からポジション59まで退いて、デバイス11を準備完了ポジションに置くとともに、プッシュロッド51は残りの剤形の下側に留まる。この位置で、プッシュロッド51は、剤形67がデバイス11から不用意に落下することを防ぐ。
【0179】
図15Cは、デバイスの投与ロジックフローを示す。図16を参照して、投薬コマンドに続いて、プッシュロッド51は、ポジション59からポジション65まで退いて、剤形67がプッシュロッド・トラック中に進むことを可能にする、プッシュロッド51は、次にポジション65から進んで、ポジション63で剤形を拾い上げ、その後ポジション57でデバイスから剤形67を投与する。ポジション63と57との間で、剤形67の存在が位置センサによってポジション61で検出/確認される。プッシュロッドは、次にポジション57からポジション59まで退いて、それを準備完了のポジションに置くとともに、プッシュロッド51は、残された剤形67の下側に留まる。この位置で、プッシュロッド51は、次の剤形67を投与する前に乾燥することができ、同時に剤形67がデバイス11から不用意に落下することを防ぐ。
【0180】
図15Dは、デバイスの分解ロジックフローを示す。「分解」コマンドの後に、プッシュロッド51はポジション65に移動する。これは、任意の残された剤形67をプッシュロッドの干渉なしに取り出すことを可能にする。
【0181】
図16は、デバイス使用の間のプッシュロッド/剤形相互作用の段階を示す例となる投与デバイスの概略図である。剤形67、配送錠剤69、スプリング73および位置センサ71が示される。使用の間に、プッシュロッド51は、図16にも示され、図15A〜Dにさらに詳細に示されるように、ポジション57、59、61、63および65の間を移動する。
【0182】
投薬履歴/フィードバック
本デバイスのさらなる実施形態は、使用履歴情報を蓄積する能力、およびかかる情報を伝達する能力を含む。デバイスは、一方向(ダウンロード)または双方向に情報伝達ができてもよい。例えば、USBまたは任意の他の通信接続のように、物理的に接続されたインターフェースを通じて蓄積情報をコンピュータにダウンロードすることによって、情報交換を達成することができる。代わりに、ワイヤレスシステムによって情報通信してもよい。
【0183】
また別の実施形態において、投与デバイスは、薬物使用の履歴をモニターして蓄積する用量カウント機能を有する。かかる情報は、使用履歴情報、例えば、貯蔵かつ投与された剤形数および投与時間を含むことができる。
【0184】
キャリブレーション
投与デバイスは自己キャリブレーションが可能であってもよく、または該デバイスは、手動でキャリブレーションできてもよい。このプロセスは、薬物剤形またはプッシュロッドと物理的に区別される、1つまたは複数の特徴を有する配送錠剤を用いることができる。これらの特徴は、デバイスキャリブレーション精度が、剤形またはプッシュロッドを用いて達成できるのと比べて向上するように設計することができる。区別される特徴は、物理的、光学的、無線周波数(RF)電子的または磁気的であってもよい。
【0185】
ユーザー識別機能
一様態において、投与デバイスは、指紋リーダー、光学的網膜リーダー、音声認識システム、顔認識システム、歯インプリント認識システム、視覚認識システム、またはDNAリーダーのような、ユーザー識別のための検出手段を備える。投与デバイスは、投与リクエストが認可または無認可いずれのやり方でなされたかシステムが決定することを可能にする、1つまたはそれ以上のユーザー識別手段を用いることができる。可能性を有する多くの薬物および薬物剤形を有効に送達するためには、投与デバイスが、無認可の個人によって偶発的または意図的に用いられないことを確実にして、薬物の偶発的または意図的な転用を防ぐことが重要である。かかるユーザー識別システムは、一人またはそれ以上のユーザーを認識することができ、例えば、入院患者の病院環境において、投与デバイスは、それが処方された患者、並びに看護師および医師のような認可された医療提供者を認識するようにプログラムされることができる。外来患者の家庭環境においては、例えば、投与デバイスは、それが処方された患者に対してのみ応答することができる。
【0186】
本投与デバイスは、指紋識別、能動的または受動的RFIDタグであって、ブレスレット、ネックレス、クリップ、ベルト、ストラップ、粘着パッチ、インプラント、またはタグの位置決めおよび取り付け手段につけられたRFIDタグ、を用いたRFID検出、網膜識別、DNA鑑定、音声認識、パスワードまたはコード入力、物理的キー、電子または磁気キー、データまたは信号管路として人体または衣類を利用するパーソナル・エリア・ネットワーク識別、光学スキャナまたは顔認識、音波、亜音波または超音波識別、或いは個人を識別して身元を照合する任意の他の手段、を含む任意のユーザー識別手段を用いることができる。
【0187】
ユーザー識別の一方法は、ブレスレット、ネックレス、粘着パッチ、衣類タグ、口腔取付具、例えば歯科矯正固定具、ベルト、ストラップ、これらいくつかの組み合わせ、または別の位置に取り付けられた近距離(「近距離場」)の受動的RFIDを用いることである。RFIDタグは、受信信号波長の約16%と概ね定義づけられる「近距離場」で用いられるとき、リーダーとタグアンテナとの間を磁気的に結合する誘導動作モードで振舞う。近距離場は、少なくとも2つの機能によって特徴づけられる:第一は距離に伴う電界強度の急速な減少であり、第二は信号の強い指向性である。近距離場における信号強度は、10倍の距離当たり信号強度損失がおよそ60dBと、非常に急速に落ち込む。送信機アンテナとRFIDタグアンテナとを良好に誘導結合させるために、2つのアンテナは、各々のアンテナ中心を通る軸を近接近させるとともに、平行面内に向けられる。デバイスがRFIDタグに極めて近いときに、強い信号強度(ロバストなユーザー識別)が与えられる。同時に、デバイスがタグから遠く離れていると、与えられる信号は非常に弱いために、デバイスの使用を企てる患者以外の誰かが無認可でデバイスを使用するのを防ぐのに役立つ。この近距離場域においてアンテナを良好に位置合せして動作させることが好ましい。さらに、もしデバイスがRFIDタグに対して適正な向きで近接していなければ信号を受信することは非常に難しいことから、確実な識別のためには、信号が十分に強いごく短距離で動作させることが好ましい。アンテナ間の距離を近付けて適正に位置合わせするために、投与デバイスは、該デバイスに取り付けたRFIDリーダーアンテナが、例えば、リストバンドまたはブレスレット、ないし衿上の衣類タグ、或いは手、腕、頬、または他のところの粘着パッチに取り付けたRFIDタグアンテナに近接して適正に配置されるように、設計することができる。さらに、リストバンドまたはブレスレット上のRFIDタグアンテナは、ブレスレットが手首の上で移動または回転するのを防ぐ小さい粘着パッチを用いて、適正に位置合わせして保持することができる。
【0188】
また別の実施形態において、投与デバイスは、入院患者(病院、クリニックなど)環境で用いるための13.56MHz振動数帯上またはその付近で動作する高周波のRFIDリーダーを用い、患者は、ディスポーザブルなブレスレットまたはリストバンドであって、もし該ブレスレットまたはリストバンドが外されるとRFIDタグ、アンテナ、或いは関連回路の別の構成部分が損傷または破壊されて機能しなくなるように設計された、ブレスレットまたはリストバンドの上にマッチングIDタグおよびアンテナを装着する。一例において、RFID通信の範囲は短く、好ましくは0インチと10インチとの間、より好ましくは0インチと5インチとの間、最も好ましくは0インチと3インチとの間であり、付加的に方向性があってもよく、意図された患者による適正な使用は、容易で信頼性が高く、一方で同時に、別の個人による無認可の使用は、困難、非常に困難、または不可能にすることができる。
【0189】
ロックアウト
本投与デバイスは、ロックアウトを提供し、患者は、次の一定期間デバイスをロック解除するために、医師または他の認可された介護人と通信することを要求される。このように、デバイスおよびドックは、より十分な医師の監督およびケアマネジメントによって、安全な薬物投与を提供する。
【0190】
本投与デバイスは、ロックアウト時間のみならず、最初の用量およびその後の用量の両方を調整するための手段を提供する。最初の用量およびロックアウト時間は、患者の反応、治療の持続期間などに依存して後に調整することができる。
【0191】
請求項の投与デバイスに対する、時間を定めた最初のロックアウト期間は、典型的に約1分から約60分まで、3分から40分までまたは約5分から約30分までであり、特別な場合に1分から60分まで1分間隔、例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59または60分に設定される。
【0192】
ある場合には、投与デバイスは、投薬の合間に一定のロックアウトをもち、一定期間後にシャットダウンを示すことができる。他の場合には、ロックアウト時間は、プログラム可能なロックアウト時間である。ロックアウト時間は、一定時間のロックアウト間隔、所定のロックアウト間隔、所定の可変ロックアウト間隔、アルゴリズムによって決定されるロックアウト間隔、または遠隔コンピュータまたはドッキング・ステーションからデバイスに通信される可変ロックアウト間隔とすることができる。
【0193】
付加的な機能
本投与デバイスは、カートリッジを検出して識別する機械的、光学的(例えば、バーコード)、電子的(例えば、マイクロチップ)、磁気的、無線周波数、化学的、または他の手段によって、特定のカートリッジを認識する能力を提供することができる。例となる一実施形態において、薬物を含むカートリッジは、投与デバイスにおける1つのセンサまたはスイッチ、或いは一連のセンサまたはスイッチによって物理的に検出される、カートリッジ上の物理的キー入力細部を含む。さらに、本投与デバイスは、情報交換するためにカートリッジと一方向または双方向に通信することができる。かかる情報は、薬物名、投与力価、使用情報、ロックアウト期間、製造ロット番号、使用の適用、副作用、薬物間相互作用、製造日、有効期限、シリアルナンバー、カートリッジ内の用量数、または任意の他の関連情報を含むことができる。本投与デバイスは、使用日、医療提供者または他のユーザー識別、使用済み用量数などの情報を、読み取るのに加えてカートリッジに書き込むことができる。
【0194】
本投与デバイスは、中に含まれる剤形に機械的保護を提供して破壊、かけ、水和などを防ぐことができ、それによって中に含まれる無損傷の剤形を投与することが可能である。これは小さい、脆くて砕けやすい剤形にとって特に重要である。
【0195】
本投薬デバイスは、電池、キャパシタ、燃料電池、または他の電源によって電力を供給することもでき、または電力を必要としないが、しかし手動で作動させてもよい。
【0196】
いくつかの実施形態において、本投与デバイスは、機能上または安全上の問題が生じたとき、アラームまたは他の通知を発することができる。アラームまたは他の通知は、投与デバイス、ドックまたは他の周辺デバイス、コンピュータ上の、或いは有線または無線ネットワークによる警報を始動させるか、或いは他の遠隔デバイスに警報することができる。アラームまたは通知は、聞こえても、触れても、見えてもよく、或いは1人またはそれ以上の個人に通知する他の手段を用いてもよい。
【0197】
ドッキング・ステーション
ある実施形態において、本デバイスは、ポータブルまたは固定のドッキング・ステーションであって、本デバイスに問い合わせて、投薬の合間にそれをリセットし、適正にアクセスされていないときにはそれをロックして投薬法を制御することができる、ドッキング・ステーションを含む。本投薬デバイスは、医師または介護人と、ドックを通じて、或いは有線または無線の通信手段によって通信することができる。
【0198】
本投与デバイスは、認可された異なった種類のユーザー、例えば患者、看護師、医師、薬剤師または他の認可された医学または医療要員に対して、1つまたはそれ以上のレベルのインタフェースを用いることができる。これらの異なったインタフェースは、キーパッド、ボタン、グラフィック・アイコンおよびインストラクション、光、LED、モノクロまたはカラーグラフィックス或いはテキスト表示、タッチスクリーン、LCD、音、触覚フィードバック、音声認識インターフェース、および他の入出力デバイス並びに手段のような構成要素を含むことができる。ユーザインタフェースの活動、またはモードは、投与デバイスの動作モードによって、パスワードまたはコード入力のようなユーザーによるログインまたはアクセス活動によって、ドック、コンピュータ、またはネットワークからの投与デバイスの接続または切断によって、或いは、キーおよび/またはRFIDタグないしは同様の組み合わせのような、認可されたアクセスキーの検出によって、決定することができる。インタフェース・モードを変えると、上述の様々なインタフェース構成要素における機能性が活性化、不活性化、または変化いずれかして、デバイスの機能性を変化させることができる。付随する機能性が個々に異なる1つまたはそれ以上のインターフェース・モードを有することによって、様々な用途に対してデバイスを最適化することができる。
【0199】
基地局
いくつかの実施形態において、本投薬システムは、使用の間に投薬デバイスおよびポータブル・ドッキングFOBに再充電するための基地局を含む。この基地局は、多数の投与デバイスおよび/またはFOBの電池または燃料電池を同時に再充電することができる。投薬デバイスおよびFOBを再充電することに加えて、基地局は、次の機能性の1つまたはそれ以上を提供することができる:周辺デバイス、コンピュータまたはネットワークへの無線または有線による接続性;再充電しているデバイスの充電状態に関するフィードバック;投薬デバイスまたはFOBに関するデータを閲覧、追加、削除、または変更するためのインタフェース;多数の投薬デバイスおよび/またはFOB間のデータを同期させるための手段;並びに投薬デバイスおよび/またはFOBに関する診断テストを行なうための手段。
【0200】
単回および複数回用量アプリケータ
本発明は、薬物が所定の送達部位(例えば口、舌下の空間内など)に送達されるように、スフェンタニルを含む剤形を患者の口腔粘膜に送達するためのディスポーザブルなアプリケータを提供する。
【0201】
本発明への一取り組みにおいては、剤形が単回用量アプリケータを用いて口腔粘膜に送達される。本剤形は、チャイルド・レジスタントな投薬デバイスまたは包装の中に提供されて、例えば、舌下腔に送達される。本剤形は自己投与されてもよく、または代わりに、本剤形はデバイスの有無にかかわらず助けを得て投与されてもよい。
【0202】
一実施形態において、単回用量アプリケータ(SDA)は、固体錠剤、液体カプセル、ゲルカプセル、液体、ゲル、粉末、フィルム、細片、リボン、スプレー、ミスト、パッチ、または任意の他の適切な薬物剤形として提供される薬物剤形に対して用いられる。
【0203】
本単回用量アプリケータ(SDA)は、剤形を中に含んでもよく、付着または添付された薬物剤形を有してもよく、溶解した剤形を中に有してもよく、水分、湿度および光に対する封止を提供することができる。本単回投与アプリケータは、剤形を薬物送達のための適正な部位に置くために、患者、医療提供者、または他のユーザーが手で操作することができる。
【0204】
本発明を実践するとき、錠剤または他の剤形を手、口内、舌下に、または特定の薬物送達に必要な他の然るべき部位に送達するために、単回または複数回用量アプリケータ、或いは投薬デバイスを用いるがことができる。
【0205】
一実施形態において、単回または複数回用量アプリケータ、或いは投薬デバイスは、剤形を口腔粘膜、例えば、舌下の空間内に送達するために用いられる。
【0206】
本投与デバイス内の剤形は、投与に先立って乾燥を保ち、投与時点で単一の剤形がデバイスから口内、例えば、舌下の空間内に投与されて患者の唾液が錠剤を濡らし、錠剤の崩壊/浸食および薬物送達を可能にする。
【0207】
SDAは、鉗子、注射器、棒またはロッド、ストロー、パッド、カプセル、カップ、スプーン、細片、チューブ、アプリケータ、ドロッパ、パッチ、粘着パッド、粘着フィルム、噴霧器、アトマイザー、或いは対象の口腔粘膜、例えば、舌下の空間内における口腔粘膜に単一の薬物剤形を適用するのに適した任意の他の形態、として提供することができる。当業者によって理解されるであろうように、SDAのデザインは、投与過程において薬物剤形の完全性が維持されるやり方で、錠剤のような薬物剤形を、口腔粘膜上の所望の部位、例えば、舌下の空間内に置くのに有効でさえあれば、変化してもよい。使用後に、SDAは、投薬デバイスが唾液または他の汚染物質で汚染されるリスクをなくすために処分される。
【0208】
舌下投与のために、小容量剤形をSDAを用いて舌下、一般に舌小帯に近接して置くことにより投与する。
【0209】
本剤形は、剤形を置く窪み(「ブリスター」)を中に有し、本明細書において「ブリスターパック」と呼ばれる成型プラスチックまたは積層プラスチックからなる包装の中に提供することができる。カバー、通常は積層材または箔が、成形部分を封止するために用いられる。ブリスターパックは、プリフォームまたは成形部分を持っても持たなくてもよく、任意のタイプのSDAを包装するために用いることができる。
【0210】
かかるブリスターパックは、チャイルド・レジスタントな複数薬物ディスペンサー(MDA)中に提供することができ、該ディスペンサーは、収納した剤形を投与する機能を果たしてもよく、或いは複数のSDAを貯蔵するために用いてもよい。
【0211】
図20A〜C、図21A〜F、図23A〜Cおよび図24AおよびBは、本発明のSDAの例となる実施形態の概略図である。
【0212】
一つの取り組みにおいて、本発明は、ハウジング内部の薬物剤形67、およびハンドル131を含む、ブリスターパック151を備えるディスポーザブルな単回用量アプリケータであって、例えば、図21Bおよび21Dに図示されるように、箔封止135のような裏張りが剤形67およびハンドル131を覆うアプリケータを提供する。
【0213】
一実施形態において、ディスポーザブルな単回用量アプリケータ、ハウジングまたはチューブ129およびハンドル131の組み合わせは、スプーン形状を有する。
【0214】
剤形67のためのハウジングまたはチューブ129は、対象に投与される剤形67の単位用量を収容するブリスターパック151である。剤形67は、箔または他の種類の封止135によって、ブリスターパック151中に封止される。
【0215】
いくつかの実施形態において、箔または他の種類の封止135は、剤形67の投与に先立って除去され、ハンドル131は、剤形67が口腔粘膜に付着するように、剤形67を対象の口腔粘膜に対して然るべきに部位に置くために用いられる。例えば、図21B、21D、21Eおよび21Fを参照。他の実施形態において、箔または他の種類の封止135は、目打ちされており、アプリケータ123の投与に先立って目打ち149で折り曲げることによって、剤形67の投与前にこれが除去され、ハンドル131は、剤形67を対象の口腔粘膜に対して然るべき部位に置くために用いられる。例えば、図24AおよびBを参照。これは、一回に1つの薬物剤形67のみを取り扱うことを可能にして、他の個別に封止された薬物剤形67が唾液、湿度などに曝されることを防ぐ。
【0216】
ハンドル131を含むディスポーザブルなアプリケータ123の箔または他の種類の封止135は、積層プラスチック箔、ペーパー、プラスチックまたは他の覆いの単一片でできており、すなわち、ハウジングまたはチューブ129のみ、或いはハウジングまたはチューブ129およびハンドル131の両方の背面に跨るアプリケータタブ147が、ブリスターパック151または他の容器中の剤形67を効果的に封止する。
【0217】
ハンドル131は、剤形67に触れることなく、剤形67を適切に置くことを可能にする。
【0218】
裏当てで連結するか、或いは複数回用量アプリケータに収容された個別の単回用量アプリケータの一組として、複数の単回用量アプリケータを提供することができる。
【0219】
図14Aおよび14Bは、薬物剤形を送達するための単回用量アプリケータ123投与デバイスの一実施形態を示す。図14Aに示された投与デバイスは、薬物剤形67を投与する準備のできた単回用量アプリケータ123を図示する。この実施形態の一様態において、ユーザーが単回用量アプリケータ125を抓むと、図14Bに示されるようにアプリケータが開いて薬物剤形67が投与される。
【0220】
図15A〜Cは、チューブ129として形作られたアプリケータ、栓封止127、ハンドル131(例えば、人間工学的なハンドル)、および単一の剤形67からなる単回用量アプリケータ123の実施形態を示す。図15Aは、使用前の封止された配置における単回用量アプリケータ123を示す。図15Bは、栓封止127が除去されて開口133が生じ、使用の準備ができた単回用量アプリケータ123を示す。図15Cは、剤形67を口腔粘膜上に、例えば、舌下の空間内に投与するために、傾けられた単回用量アプリケータ123を示す。
【0221】
図21A〜Fは、単回用量アプリケータ123のいくつか代わりの実施形態を示す。これらすべての図では、アプリケータ封止127は壊されて、薬物剤形67が対象の口内、例えば、舌下の口腔粘膜近傍に落下して舌下に剤形が配置されるように、アプリケータが傾けられる。図21Aは、チューブ129下の軸方向に位置したハンドル131を有するチューブ状アプリケータ129を示す。図21Bは、剤形67を置くのに先立って、アプリケータ包装141を開けるために剥がされる箔封止135を有する、サーモフォームまたはブリスター包装151として形成されたアプリケータを示す。図21Cは、剤形67を置くのに先立って、封止を破るために壊されるチューブ129であるアプリケータを示す。図21Dは、封止135を剥ぎ取った後に薬物剤形67を口腔粘膜上に置くために、ブリスターパック151を保持して傾けることができるように、ハンドル131を有するブリスターパック・チューブ151タイプの剤形141を示す。図21Eおよび21Fは、小児向けに設計した単回用量アプリケータ123に用いるために、それぞれ花または動物のような形をしたハンドル131を有する、ブリスターパック151タイプの包装を示す。他の単回用量アプリケータの形状は、漫画のキャラクター、動物、スーパーヒーローまたは小児に適用するための他の然るべき形状を含むこともできるであろう。
【0222】
図23Aは、例えば、速溶性で摂取可能な粘着性物質で付着させた剤形67を端部にもつ平坦で硬いアプリケータであって、剤形を有するアプリケータ端部が舌下に置かれたときに、接着剤が溶けて剤形67は舌下の空間内のような口腔粘膜上に置かれ、アプリケータは取り去ることができる。図23Bは、薬物が含浸されており、物質およびからの投与量マトリックスを形成する透水性物質でできたアプリケータ123を示す。このアプリケータ123の含浸された端部が、口内の口腔粘膜上に置かれたとき、唾液の水分が薬物を溶かして経粘膜的にそれを送達する。図18Cは、フィルム溶解剤形145、および複数のフィルム溶解剤形143を内部にもつ剤形包装を示す。フィルム溶解剤形143は、包装141から取り出されて口腔粘膜上、例えば、舌下の空間内に置かれ、そこで溶解して薬物が経粘膜的に送達される。
【0223】
図24A〜Bは、単回用量アプリケータ123の一実施形態を用いる2つの段階の説明図を示す。図24Aは、2つのアプリケータタブ147、2つの目打ち149、および剤形67を含むブリスターパック151を有する、使用前の配置のアプリケータ123を示す。剤形67を投与するために、2つのアプリケータタブを目打ち149で下向きに曲げてハンドル131を形成し、さらに封止135を剥がしてブリスターパック151を顕現させて、剤形67が口腔粘膜上、例えば、舌下の空間内に落下することを可能にする。
【0224】
また別の実施形態において、本発明の投薬デバイスは、カートリッジ中に、または個別に包装された複数のSDAを含むことができ、単一の薬物剤形を含む単一のSDAを患者、医療提供者、またはユーザーが使用するために投与することができる。本投薬デバイスは、本発明に記載される単一の薬物剤形を投与するのに有益であろう同じ方法おなじ機能を用いて、単一のSDAを投与することができる。
【0225】
さらにまた別の実施形態において、複数回用量アプリケータ137は、1つまたはそれ以上の薬物剤形67または単回用量アプリケータ123、電池のようなポータブルな電力手段、プリント回路基板、データ接続性手段、およびユーザーインタフェースを備えるデバイスである。この実施形態において、本投薬デバイスは、次の機能の1つまたはそれ以上を実行する能力を含むことができる:薬用量の投薬履歴を記録する、指紋識別、RFID、音声認識などの手段によりユーザー識別チェックを行う、投薬履歴を別のデバイス、コンピュータまたはネットワークに転送することを可能にする、および/または用量投与の間のロックアウト期間を提供する。
【0226】
図22は、各々が個別に単回用量アプリケータ123中に包装された、薬物剤形67を投与送達するための例となる複数回用量アプリケータ137の概略図である。
【0227】
図25A〜Dは、単回投与アプリケータ(SDA)の付加的な例の概略図であり、以下のものを含む;掛け金19を解放したときに、SDAはもはや薬物剤形67を保持せずにユーザーが口腔粘膜上に置くことができるように、薬物剤形67がSDA123の2つの側面153間に保持されたピンセットまたは逆ハサミ型SDA(25A);ユーザーがスライダーあるいはピストン159を押した155ときに薬物剤形67がチャンネル端から押し出される、円形チャンネルを有する注射器型SDA(25B);ユーザーがスライダー159を押した155ときに薬物剤形67がチャンネル端から押し出される、長方形チャンネルを有する押し出し型SDA(25C);または、薬物剤形67がポケット161中に保持され、ユーザーがスライダー159を引いた157ときに薬物剤形67へのアクセス可能になるスライダー型SDA(25D)。
【0228】
図26A〜Dは、使用に先立って複数のSDA123を貯蔵するための複数回用量アプリケータ(MDA)137または容器の概略図を示し(26A);例示される実施形態において、MDA137の上部カバーには、個別にSDA123を取り出すためのスロットがあり(26B);各個別のSDA123は、薬物財形67を備え(26C);該SDA123は、薬物剤形67を舌下の舌下の空間内に置くことを容易にする(26D)。
IX.小容量スフェンタニル剤形をデバイスを用いて送達するための方法およびシステム
小容量スフェンタニル含有剤形を、デバイスを用いて送達するための方法およびシステムが提供される。図7は、小容量の薬物財形を投与するための投与デバイスまたはシステムに含むことができる様々な構成部分を図解する構造接続図を示し、分離したヘッド13、ボディー15およびカートリッジ17を有するデバイス、ポータブル・ドッキングFOB113、患者RFID 115および基地局117が含まれている。
【0229】
RFIDタグ、投薬デバイス、基地局/ドックおよび医療提供者のパーソナル・コンピュータ・システムを含む、投薬システムにおける通信であって、投薬デバイスは、ドック経由、或いは有線または無線の通信手段によって医師または介護人と通信することができる、通信の一様態を説明するブロック・ダイヤグラムが図18Aに示される。
【0230】
RFIDタグ、投薬デバイス、ポータブル・ドッキングFOB、基地局および医療提供者のパーソナル・コンピュータを含む、投薬システムにおける通信のまた別の様態を説明するブロック図が図18Bに示される。投薬デバイスは、一定間隔で医師に使用情報および患者の呼吸状態または血圧に関する情報を提供するために、有線または無線の通信方法によって、FOB経由で医師または介護人と通信することができる。FOBは、医師または介護人の首から懸けられるように、ひもに取り付ける改造を行うことができる。
【0231】
本投薬デバイスの例となる機能は、以下を含む:一実施形態において、ヘッド、ボディー、およびカートリッジは、デバイスのハンドヘルド部分を備える。このデバイスの組み立ては、ヘッドとボディーを切り離すための掛け金、および患者が用いるための投与ボタンを有する。本デバイスは、ロックアウト状態、エラー、および電力を示す光も有する。この実施形態において、薬物剤形を含むカートリッジおよびボディーは、一回のみ使われる。
【0232】
本システムは、ハンドヘルドで患者のデバイスに依存せず、医療専門家のみが用いるためのポータブル・ドックを備えることができる。本ドックは、患者のデバイス使用に関するより詳細なクエリー、デバイスデータのアップロード能力、ヘッド/ボディーおよびテザーのロック解除、患者への投薬のためのロックアウト・オーバーライド、およびより大きい読み取り表示のような、より高いレベルの機能を可能にすることができる。ドックは、患者のデバイスのセットアップおよび停止にも用いられる。
【0233】
本システムは、ドックによって活性化されるRFIDブレスレットも備えることができ、該ブレスレットは、患者によって装着され、正しい患者しかもその患者のみに対して投与を成立させて制御する。この機能によって他者によるデバイスの使用が禁じられる。
【0234】
本システムは、ドックおよびヘッドを充電するために用いられ、かつ新しいソフトウェアが利用可能になったとき、または新しいユーザーがシステムにプログラムされるときにヘッドおよびドックをアップデートするためにも用いられる、再充電拠点をさらに備えることができる。
【0235】
薬物剤形は、一般的に投与に先立ってデバイスに搭載されるディスポーザブルなカートリッジの中に提供される。
【0236】
例となるデバイスのためのセットアップ・インストラクションは、次のステップを含む:
デバイスヘッドおよびドックを再充電拠点で充電する。
【0237】
デバイスボディーおよびリストバンドを包装から取り出す。
【0238】
デバイスヘッドおよびドックを充電ステーションから取り外す。
【0239】
カートリッジが「カチッと鳴って」確かに所定の位置に固定されるようにデバイスボディーに挿入することによって、カートリッジを搭載する。
【0240】
(カートリッジを有する)デバイスボディーをヘッドに取り付ける。
【0241】
組み立てたデバイスのパワーボタンを押してシステムに電源を入れる。
【0242】
ドックのパワーボタンを押してドックに電源を入れる。
【0243】
組み立てたデバイスをドックのプラグに差し込む。
【0244】
医療専門家が、ドックをロック解除するために彼らの指紋をスキャンするか、または固有のパスワードを入力する。
【0245】
デバイスは、カートリッジ上のラベルを読み込み、ドックは、セットアップ情報、例えば、薬物名、錠剤量、薬物濃度、プリセットされたロックアウト時間、使用持続期間(72時間)、およびヘッドの電池状態を表示する。
【0246】
カートリッジから情報が読み込まれてドックに表示された後、医療専門家は、すべての情報が正しいことの確認を要請され、かつ情報を検証するために証人を必要とする。
【0247】
ドックは、患者のリストバンドがデバイスに接近して、リストバンドとデバイスがペアを成すことを必要とする。
【0248】
デバイスはバンドを読み取って、バンド数の確認;番号の選択および確認をリクエストする
患者ID、すなわち患者の医療記録番号がドックに入力される。
【0249】
リストバンドが患者の手に置かれて、デバイス動作のために用いられる。
【0250】
次に、ドックは、プラスチックの初期化錠剤または「配送錠剤」を投与する準備ができたことを示す。
【0251】
確認されると、デバイスは、初期化錠剤または「配送錠剤」を投与する。このステップは、投与メカニズムのキャリブレーションおよび使用カートリッジの始動のためにデバイスによって用いられ、医療専門家が適正な使用について検証し、「配送」またはプラシーボ型錠剤を用いて患者をトレーニングすることを可能にする。
【0252】
プラスチックの初期化錠剤または「配送錠剤」が投与される時点で、ドックは、プラスチック・錠剤が投与されたことを確認する要求を医療専門家に行う。
【0253】
確認後に、デバイスの使用準備ができたことをディスプレイが示す。
【0254】
ある場合には、テザーをドック経由でデバイスに接続することができる。ドックは、医療専門家が必要に応じてテザーをロックおよびロック解除することを許可する。
【0255】
もし患者が本デバイスを用いて薬物剤形を自己投与する場合、患者は使用に先立ってトレーニングを受けることになる。
【0256】
本請求項のデバイスおよびシステムの使用例が実施例6〜8に示される。
【0257】
次の実施例は、本発明を説明するために示され、以上にまたは以下の請求項に記載される本発明のいかなる様態も限定する意図はもたない。
【実施例】
【0258】
次の実施例は、本発明を説明するために示され、以上にまたは以下の請求項に記載される本発明のいかなる様態も限定する意図はもたない。
【0259】
浸食がより遅い形(およそ15〜25分の浸食時間;実施例1Aおよび1B)、並びに浸食がより速い形(6〜12分のおよその浸食時間;実施例2Aおよび2B)を含む、2つの異なった舌下スフェンタニル製剤を評価した。患者は、μオピオイド受容体アンタゴニスト、ナルトレキソン(1日に2回経口で50mg)でブロックされた。
【0260】
血漿中スフェンタニル濃度を時間に対して分析して表にした。血漿中の最高スフェンタニル濃度(Cmax)、Cmaxに至る時間(Tmax)および終末t1/2を各用量群に対してまとめた。繰り返し用量実験における最後の投薬後に、スフェンタニルのt1/2を測定した。各単回投与に対する曲線下面積(AUC)を舌下スフェンタニル用量vs.IV間で比較した。各々の舌下スフェンタニル剤形vs.IVおよびスフェンタニル液剤の舌下投与に対してCmax、Tmaxおよびt1/2のデータを比較した。
【0261】
(実施例1)
小容量スフェンタニル剤形の舌下投与後のバイオアベイラビリティおよび薬物動態の評価
実施例1A:すべての対象は、スフェンタニル5mcgの10分のIV点滴を受けた。1日のウォッシュアウト期間後に、各々の対象は、スフェンタニル2.5mcgを含む(浸食が遅い製剤を含む)剤形の単回舌下投与を受けた。続く2実験日に、用量を増加させて、各々の対象は、スフェンタニル5および10mcgを含む(浸食が遅い製剤を含む)剤形の投与を受けた。
【0262】
実施例1B:すべての対象は、スフェンタニル5mcgを含む(浸食が遅い製剤を含む)剤形を10分間隔で投与する4回繰り返しの舌下投薬を受けた。
【0263】
スフェンタニル10mcgを含む、浸食が遅い舌下スフェンタニル製剤を以下に示す。
【表A】

【0264】
2.5、5、または10mcgの(浸食が遅い)スフェンタニル剤形の単回舌下投与、或いは5mcgの(浸食が遅い)スフェンタニル剤形の10分おきに4回の投与に続く、様々な時点での血漿中スフェンタニル濃度を図1に示す。
【0265】
平均のスフェンタニルt1/2は、すべてのスフェンタニル用量に対して同様であり、1.56時間(5mcg舌下剤形)から1.97時間(10mcg舌下剤形)まで変化し、用量または投与経路に基づく明らかな相違はなかった(表1)。平均のCmaxおよびAUCinfは、用量とともに増加して用量に比例した。スフェンタニルの単一舌下投与後のTmaxは、0.68から0.77時間の範囲であった。舌下投与後のバイオアベイラビリティは、5mcgのスフェンタニル剤形を投与した対象における74.5%から、10mcgのスフェンタニル剤形を投与した対象における95.5%まで変化した。
【0266】
表1は、Cmax、Tmax、AUCinf、Fおよびt1/2を含む薬物動態パラメータのまとめを示す。複数回舌下投薬後のCmaxは46.36pg/mLであった。平均のAUCinfは、スフェンタニルの複数回舌下投薬とともに増加し、単回舌下投与と比較したときに一般に用量に比例した。複数回舌下投薬後のスフェンタニルのバイオアベイラビリティ(97.2%)は、同じ用量レベルの単回投与後(74.5%)より大きかった。
【0267】
【表1】

10mcgの舌下用量に対して正規化した後に、平均のスフェンタニルCmaxおよびAUCinfのパラメータ対についてt検定による比較を行った。結果を表2Aおよび2Bに示す。結果は、CmaxおよびAUCinfが2.5から10mcgまで用量に比例したことを示す。CmaxおよびAUCinfの用量比例性を支持するデータを、それぞれ図2および3に示す。
【0268】
【表2】

健康なヒトボランティアに10分間隔で4×5mcgのスフェンタニル剤形(浸食が遅い)を繰り返し舌下投与した後における、平均血漿中スフェンタニル濃度対時間(+/−SD)を、10分にわたる5mcgのスフェンタニルの静脈内点滴と比較して図4に示す。
【0269】
10分間隔で4×5mcgの舌下スフェンタニル剤形(浸食が遅い)を投与した後の血漿中スフェンタニル濃度を見積もるためにシミュレーションを用いた。シミュレーションは、5mcgのスフェンタニル剤形(浸食が遅い)の単回投与に関する平均血漿中濃度対時間プロフィルの重ね合わせによって行った。シミュレーション予測、および観測された平均(±SE)血漿中スフェンタニル濃度対時間プロフィルを12時間(図5A)および2.5時間(図5B)にわたって比較した。シミュレーション予測されたスフェンタニル濃度は、観察された血漿中スフェンタニル濃度に接近した時間推移を示した。
【0270】
(実施例2)
小容量剤形の舌下投与後におけるスフェンタニルのバイオアベイラビリティおよび薬物動態のさらなる評価
実施例2A:対象に以下の投与を行った:舌下経路による5mcgのスフェンタニル溶液(N=2)、またはスフェンタニル5mcgの10分のIV点滴(N=10)、スフェンタニル(浸食がより速い製剤)10mcgを含む剤形の単回舌下投与、およびスフェンタニル(浸食がより速い製剤)10mcgを含む剤形の4回繰り返し舌下投薬。
【0271】
実施例2B:すべての対象にスフェンタニル50mcgの20分のIV点滴、およびスフェンタニル(浸食がより速い製剤)80mcgを含む剤形の単回舌下投与により投薬を行った。
【0272】
スフェンタニル10mcgを含む、浸食が速い舌下スフェンタニル製剤を以下に示す。
【表B】

【0273】
10mcgおよび80mcgのスフェンタニル剤形(浸食がより速い)の単回舌下投与、および10mcgのスフェンタニル剤形(浸食がより速い)の20分おきの4回投与後の様々な時点における血漿中スフェンタニル濃度(平均+/−SD)を図6に示す。
【0274】
平均のt1/2は、単回スフェンタニル投与に対して同様であり、1.72時間(5mcgIV)から1.67時間(10mcg舌下)まで変化した。単回および複数回の舌下スフェンタニル投与後に、スフェンタニルの平均のAUCinfは用量とともに増加した。バイオアベイラビリティは、単回の10mcg舌下スフェンタニル剤形(浸食が速い)で治療した対象では60.9%、複数回(4×10mcg)の舌下スフェンタニル投与後には87.8%であった。
【0275】
4×10mcgの舌下スフェンタニル剤形(浸食がより速い)を20分間隔で投与後の血漿中スフェンタニル濃度を見積もるためにシミュレーションを用いた。シミュレーションは、10mcgのスフェンタニル剤形(浸食がより速い)の単回投与後の平均血漿中濃度対時間プロフィルの重ね合わせによって行った。シミュレーション予測および観測された平均(±SE)血漿中スフェンタニル濃度対時間プロフィルを、12時間(図7A)および2.5時間(図7B)にわたって比較した。観察された血漿中スフェンタニル濃度は、(シミュレーション)予測されたスフェンタニル血漿中スフェンタニル濃度より大きい値で時間とともに推移した。
【0276】
【表3】

80mcgのスフェンタニル剤形(浸食がより速い)の舌下投与後のバイオアベイラビリティは70.1%であった。
【0277】
舌下用量を10mcgに正規化した後、スフェンタニルの平均CmaxおよびAUCinfのパラメータ対のt検定による比較を行った。表4の結果は、CmaxおよびAUCinfが、10から80mcgまで用量に比例することを示す。CmaxおよびAUCinfの用量比例性を支持するデータをそれぞれ図8および9に示す。
【0278】
【表4】

10または15mcgの舌下スフェンタニル剤形(浸食が遅い)を20分毎に複数回投与した後のスフェンタニル濃度のシミュレーションを行った。浸食が遅い製剤を含む剤形は、95%より大きいバイオアベイラビリティを与え、それ故に10または15mcgの舌下スフェンタニル剤形の複数回投与後の定常状態におけるスフェンタニルの予測最高濃度を見積もるための基礎として役立つ。20分間隔で繰り返し舌下投与した後、スフェンタニル濃度は、約12時間のうちに定常状態に達することができる。シミュレーション予測による定常状態のスフェンタニル濃度は、それぞれ図10Aおよび10Bに示すように、20分間隔で10mcgのスフェンタニル投与に対して200pg/mL、20分間隔で15mcgのスフェンタニル投与に対して300pg/mLであった。このシミュレーションは、20分の最小再投与間隔が安全なことを示唆する。
【0279】
(実施例3)
デバイスを用いたスフェンタニル含有剤形の投与による外来患者環境での急性痛管理
薬剤師は、40スフェンタニル剤形を含む薬物カートリッジを投薬デバイスに搭載する。各々のカートリッジは、最初に投与される2つの錠剤となるように配置された、色のついた2つの初期化錠剤(「配送錠剤」と呼ばれる)を有する。デバイスは、安全で、かつ無認可ユーザーにはアクセスできないポート、ハッチ、またはドアのいずれかのカートリッジ搭載手段を有する。薬剤師は、カートリッジをデバイスに搭載した時点で、デバイスのアクセス・ポート、ハッチ、またはドアをロックする。薬剤師は、次にパーソナルまたは他のコンピュータに接続されたドックに、投与デバイスをドッキング・コネクターを用いて初めてドッキングさせ、続いてデバイスをプログラムする。プログラミングは、剤形の投与力価、デバイスに搭載された剤形数、処方された剤形の使用頻度、一日に使用すべき剤形数、現在の日時、好ましい言語、患者の識別に有効な親指の指紋または他の身元証明、およびデバイスの紛失・発見に備えた医師の識別情報をアップロードすることを含む。
【0280】
投与デバイスがプログラムされた時点で、薬剤師は、単一の配送錠剤を投与することによって、適正に使用できることを実証してデバイスをテストする。薬剤師は、次に投与デバイスを患者に与えて、患者が配送錠剤を投与するのを観察し、適正な使用と機能性とを確かめる。投与デバイスとともに、薬剤師は、投与デバイスの動作を可能とするためにデバイスのおよそ5インチ以内に存在する必要のある無線自動識別(RFID)タグを患者に提供する。
【0281】
患者が薬物用量を投与したいとき、彼または彼女は、投与デバイスを保持して任意のボタンを押し、デバイスをスリープモードから復帰させる。デバイスは、ユーザーに親指の指紋読み込み、または暗証番号(PIN)のいずれかを問い合わせる。デバイスは、次に範囲内の有効なRFIDキーを検索する。これらの条件が満たされた時点で、投与デバイスは、現在の使用要求が、薬剤師によってプログラムされた投与法に違反しないことを確かめるために、内部メモリおよびクロックに問い合わせる。この時点で、デバイスは、日時、残された用量数、前回剤形使用日時、患者名などのステータス情報を表示し、薬剤師は、見えるおよび/または聴こえる信号によって、デバイスが剤形を投与する準備ができたことを患者に知らせる。
【0282】
患者は、デバイスの投与端を彼または彼女の舌下に保持して、投与レバーを押す。剤形が投薬されたとき、音が鳴って剤形が適正に送達されたことを患者に知らせる。この時点でデバイスは、さらなる投与を防ぐために、プログラムされたロックアウト時間が経過するまでロックされ、その時点で再び使用準備ができた状態になる。
【0283】
(実施例4)
デバイスを用いたスフェンタニル含有剤形の投与による入院患者環境での急性痛管理
手術後の患者は、外科手術後に急性痛の治療を必要とする。外科医は、投薬デバイスを用いて投与するために経口腔粘膜スフェンタニルを処方する。担当看護師は、処方オーダーを薬剤師または自動薬剤在庫管理システム(例えば、Pyxis)に持ち込み、舌下送達のためのスフェンタニル含有薬物カートリッジを得る。カートリッジは、ラベルが付いており、薬物ラベル情報を含むRFID電子タグを装備している。カートリッジは、ラベルが付いており、薬物ラベル情報を含むRFID電子タグを装備している。
【0284】
看護師は、次に在庫から投薬デバイスのディスポーザブルな投与部分を入手して、基地局に進み、再充電サイクルを終えて使用準備ができた、再利用可能な投薬デバイス制御部分を得る。看護師は、薬物カートリッジをディスポーザブルな投与部分に挿入し、次に、これを投薬デバイスの再利用可能なコントローラ部分に固定させて、ディスポーザブルな部分を投薬デバイスの再利用可能な部分にロックさせる。この時点で、デバイスは、薬物カートリッジ上のRFIDタグを読み込み、薬物の種類、投与力価、プログラムされた投薬間のロックアウト期間などを含む、然るべき薬物情報をアップロードする。看護師は、投薬デバイスが適正な薬物カートリッジ情報を読み込んだことを確認して、患者管理の鎮痛薬投与のために投薬デバイスを患者に与える。
【0285】
患者が鎮痛薬を必要とするとき、彼女は、投薬デバイスを彼女の手に取り、投薬チップを彼女の口内、彼女の舌下に置いて投与ボタンを押す。投薬デバイスは、次に内部チェックを行って、前回の剤形投与から適正なロックアウト期間が経過したことを確かにする。この時点で、投薬デバイスは、剤形を患者の舌下に投薬して、投薬に成功したことをフィードバックする。患者は、投薬デバイスを彼女の口から取り出して、舌下剤形が彼女の舌下で溶解することを可能にする。患者は、好きなだけ頻繁に投与を試みることができるが、しかし投薬デバイスは、然るべきロックアウト期間の経過後にのみ首尾よく投薬することを許すことになる。投薬デバイスは、投与の試みおよび成功した投与を投与履歴に電子的に記録する。
【0286】
看護師は、患者および投薬デバイスについて定期的にチェックする。かかるチェックの間に、看護師はエラーがないことを確かめるため、および投薬デバイスに残された剤形数をチェックするために投薬デバイスを点検して、それから患者に返却する。
【0287】
患者が退院するとき、看護師は、投薬デバイスを手に取り、再利用可能な部分をディスポーザブルな部分からロック解除して、投薬デバイスのカートリッジおよびディスポーザブルな部分を処分する。次に、看護師は、患者の医療記録にインプットするために、デバイスの再利用可能な部分をコンピュータに接続して、患者の使用情報を投薬デバイスからコンピュータにアップロードする。看護師は、再利用可能なコントローラ部を清浄化して、再充電のために基地局に戻す。
【0288】
(実施例5)
デバイスおよびポータブル・ドックを用いたスフェンタニル含有剤形の投与による入院患者環境での急性痛管理
手術後の患者は、外科手術後に急性痛の治療を必要とする。外科医は、投薬デバイスを用いて投与するために経口腔粘膜スフェンタニルを処方する。担当看護師は、処方オーダーを薬剤師または自動薬剤在庫管理システム(例えば、Pyxis)に持ち込み、舌下送達のためのスフェンタニル含有薬物カートリッジを得る。カートリッジは、ラベルが付いており、薬物ラベル情報を含むRFID電子タグを装備している。カートリッジは、ラベルが付いており、薬物ラベル情報を含むRFID電子タグを装備している。カートリッジは、剤形スタックのうちの最初に送達される位置に配送錠剤または初期化錠剤を含む。
【0289】
看護師は、次に在庫から投薬デバイスのディスポーザブルな投与部分を入手して、基地局に進み、再充電サイクルを終えて使用準備ができた、再利用可能な投薬デバイス制御部分を得る。看護師は、薬物カートリッジをディスポーザブルな投与部分に挿入し、次にこれを投薬デバイスの再利用可能なコントローラ部分に固定させる。次に、看護師は、再充電していた基地局からポータブル・ドック(またはドッキングFOB)を入手して、組み立てられた投薬デバイスをポータブル・ドックにドッキングさせる。ポータブル・ドックおよび組み立てられた投薬デバイスが電子的に通信し、投薬デバイスをセットアップするためのセットアップメニューが、ポータブル・ドック上に現れる。
【0290】
この時点で、デバイスは、再利用可能な部分とディスポーザブルな部分とを一緒にロックして、薬物カートリッジのRFIDタグを読み込み、薬物の種類、投与力価、投薬間のロックアウト期間などを含む、然るべき薬物情報をアップロードする。投与デバイスは、カートリッジ上のRFIDタグにコードを書き込み、これを使用済みカートリッジとして識別する。看護師は、セキュリティを維持してアクセスするために、彼女の指紋をポータブル・ドック上の指紋リーダーに入力して、投薬デバイスを使用するためのセットアップに進む。セットアップ手順は、ユーザーID、看護師IDを入力すること、デバイス上の適正な時間を確認すること、および適正な薬物カートリッジ情報を確認することを含む。次に、看護師がディスポーザブルなRFIDブレスレットを手に取ってこれを投薬デバイスの近くに置くと、そこで投薬デバイスはタグを読み込み、看護師は、適正なブレスレット・タグが読み込まれたことを確認する。
【0291】
看護師は、次に一度投与ボタンを押すことによって、投薬デバイスの適正なセットアップを確認する。投薬デバイスが始動して看護師の手中に配送錠剤の複製を投与し、正しい動作を確認する。投薬デバイスが配送錠剤の投与を検出することで、適正動作に関する内部システムチェック、および新しく組み立てられたシステムの内部キャリブーションができる。もし内部の投与チェックがうまくいけば、ポータブル・ドックは、配送テーブルが適正に投与されたことを確認するために看護師に問い合わせを行い、看護師は、適正なセットアップを確認する。看護師は、次にポータブル・ドックから投薬デバイスを外して、セットアップの最終ステップのために患者のベッド脇に進む。
【0292】
看護師は、RFIDブレスレットを患者の手首に付け、防盗用テザーを患者のベッドに、および他端を投薬デバイスに固定する。看護師は、次に舌下投薬デバイスの正しい使用を患者に指導し、患者管理によるスフェンタニル投与のために投薬デバイスを患者に与える。
【0293】
患者が鎮痛薬を必要とするとき、彼女は投薬デバイスを彼女の手に取り、投薬チップを彼女の口内、彼女の舌下に置いて投与ボタンを押す。投薬デバイスは、次に内部チェックを行って、前回の剤形投与から適正なロックアウト期間が経過したこと、および患者のRFIDブレスレットが存在して読み込み可能なことを確かめる。この時点で、投薬デバイスは、剤形を患者の舌下に投与して、投薬に成功したことをフィードバックする。患者は、投薬デバイスを彼女の口から取り出して、舌下剤形が彼女の舌下で溶解することを可能にする。患者は好きなだけ頻繁に投与を試みることができるが、しかし投薬デバイスは、然るべきロックアウト期間の経過後にのみ、首尾よく投薬することを許すことになる。投薬デバイスは、投与の試みおよび成功した投与を投与履歴に電子的に記録する。
【0294】
看護師は、患者およびデバイスを定期的にチェックする。かかる患者のチェックの間に、看護師はポータブルなドッキングFOBを持ち込んで、デバイスをFOBにドッキングさせる。電子接続によって、看護師が投薬デバイスからFOBに情報をダウンロードすることが可能である。この情報は、使用履歴、薬物情報、残された剤形数、および最初のセットアップからの使用期間を含む。看護師は、次に情報および投薬デバイスにアクセスするために、彼女の指紋を指紋スキャナに入力する。患者は、ロックアウト期間が切れる前に追加の薬物投与を必要としているため、看護師は、ロックアウト期間を無効にして投薬デバイスを患者に返し、その時点で患者はまた別の用量を服用することができる。
【0295】
看護師はポータブルなドッキングFOBを持って病室を退き、看護師室に戻って患者記録に投与歴を記録する。終わると、看護師は、FOBを再充電するために基地局に返す。
【0296】
患者が投薬デバイスにおけるすべての剤形を使ってしまうと、看護師は、病室にポータブル・ドッキングFOBを持ち込んで、投薬デバイスをFOBにドッキングする。看護師は、次に投薬デバイスにセキュリティを維持してアクセスするために、彼女の指紋をFOB上の指紋スキャナに入力する。次に、看護師は、セキュリティ・テザーをロック解除して、投薬デバイスをベッドから切り離す。彼女は、次に投薬デバイスをロック解除して、分解するためにFOBから取り外す。看護師は、再利用可能な部分からディスポーザブルな部分を切り離して、ディスポーザブルな部分からカートリッジを取り外す。看護師は、ディスポーザブルな部分およびカートリッジは処分し、再利用可能なコントローラ部分は、基地局に返す前に消毒ティッシュで拭き取って清浄化する。看護師は、再利用可能なコントローラ部分を基地局に返す必要があり、そこでは再使用の準備ができるのに先立って、再充電および内部診断テストが行われる。
【0297】
看護師は、次に新しい投薬デバイスを上述のようにセットアップすることに移り、これを患者に提供する。
【0298】
前述の発明は、明確で理解しやすいように、説明および例を手段として幾分詳細に記載されたとはいえ、いくらかの変更および修正が行われ得ることは、当業者にとって明らかであろう。本発明の様々な様態は、一連の実験によって達成されたものであり、そのいくつかが、非限定の例に記載されている。それ故に、その記載および例は、例となる実施形態の追加的記述によって描出された本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象に経口腔粘膜投与するための剤形であって、該剤形は、
約5から約100マイクログラム(mcg)までのスフェンタニルおよび生体接着性物質を備え、該生体接着性物質は該対象の該口腔粘膜への接着を提供し、30マイクロリットルより小さい容量または30mgより小さい質量を有する、
剤形。
【請求項2】
前記剤形は、5mcg、10mcg、15mcg、20mcg、30mcg、40mcg、50mcg、60mcg、70mcg、80mcgおよび100mcgからなる群から選択されるスフェンタニルの用量を含む、請求項1に記載の薬物剤形。
【請求項3】
前記剤形は、10mgより小さい質量または10μlより小さい容量を有する、請求項1に記載の剤形。
【請求項4】
前記経口腔粘膜投与は舌下投与である、請求項1に記載の剤形。
【請求項5】
前記経口腔粘膜投与は頬側投与である、請求項1に記載の剤形。
【請求項6】
前記剤形の侵食時間は、30秒から、5分、10分、15分および30分からなる群から選択される時間までである、請求項1に記載の剤形。
【請求項7】
前記剤形の侵食は、前記対象への舌下投与の、約6分後から約25分後に完了する、請求項4に記載の薬物剤形。
【請求項8】
前記剤形は、該剤形中のスフェンタニルの総量の少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%を舌下経路によって送達するのに有効である、請求項4に記載の薬物剤形。
【請求項9】
前記剤形の対象への単回舌下投与は、50%より大きいバイオアベイラビリティをもたらす、請求項4に記載の薬物剤形。
【請求項10】
前記剤形の対象への単回舌下投与は、60%より大きいバイオアベイラビリティをもたらす、請求項4に記載の薬物剤形。
【請求項11】
前記剤形の対象への単回舌下投与は、70%より大きいバイオアベイラビリティをもたらす、請求項4に記載の薬物剤形。
【請求項12】
前記剤形の対象への単回舌下投与は、80%より大きくバイオアベイラビリティをもたらす、請求項4に記載の薬物剤形。
【請求項13】
前記剤形の対象への単回舌下投与は、変動係数が40%より小さいAUCinfをもたらす、請求項4に記載の薬物剤形。
【請求項14】
前記剤形の対象への単回舌下投与は、変動係数が40%より小さいTmaxをもたらす、請求項4に記載の薬物剤形。
【請求項15】
前記剤形の舌下投与後に、Cmaxと該剤形中のスフェンタニルの量との間に線形関係がある、請求項4に記載の薬物剤形。
【請求項16】
前記剤形の舌下投与後に、AUCinfと該剤形中のスフェンタニルの量との間に線形関係がある、請求項4に記載の薬物剤形。
【請求項17】
前記剤形の対象への繰り返し舌下投与後のバイオアベイラビリティは、前記対象への単回舌下投与後のバイオアベイラビリティより大きい、請求項4に記載の薬物剤形。
【請求項18】
繰り返し舌下投与後のTmaxと前回の舌下投与時間との差が、前記対象への単回舌下投与後のTmaxより短い、請求項4に記載の薬物剤形。
【請求項19】
前記剤形の対象への繰り返し舌下投与は、変動係数が40%より小さいTmaxをもたらす、請求項4に記載の薬物剤形。
【請求項20】
前記剤形は、ロゼンジ、丸薬、錠剤、膜および細片からなる群から選択される、請求項1に記載の製剤。
【請求項21】
前記剤形は錠剤である、請求項20に記載の剤形。
【請求項22】
請求項1に記載の剤形を含む、単回用量アプリケータ(SDA)。
【請求項23】
請求項9に記載の剤形を含む、単回用量アプリケータ(SDA)。
【請求項24】
請求項17に記載の剤形を含む、単回用量アプリケータ(SDA)。
【請求項25】
請求項18に記載の剤形を含む、単回用量アプリケータ(SDA)。
【請求項26】
請求項1に記載の剤形を含む、投薬デバイス。
【請求項27】
前記投薬デバイスは、唾液または水分の進入を防ぐか、または遅らせる手段、およびロックアウト機能を有する、請求項26に記載の投薬デバイス。
【請求項28】
請求項9に記載の剤形を含む、投薬デバイス。
【請求項29】
前記投薬デバイスは、唾液または水分の進入を防ぐか、または遅らせる手段、およびロックアウト機能を有する、請求項28に記載の投薬デバイス。
【請求項30】
請求項17に記載の剤形を含む、投薬デバイス。
【請求項31】
前記投薬デバイスは、唾液または水分の進入を防ぐか、または遅らせる手段、およびロックアウト機能を有する、請求項30に記載の投薬デバイス。
【請求項32】
請求項18に記載の剤形を含む、投薬デバイス。
【請求項33】
前記投薬デバイスは、唾液または水分の進入を防ぐか、または遅らせる手段、およびロックアウト機能を有する、請求項32に記載の投薬デバイス。
【請求項34】
請求項4に記載の薬物剤形を対象に投与することによって疼痛を処置する方法であって、該薬物剤形の舌下投与後に、Cmaxと前記薬物剤形中のスフェンタニル量との間に線形関係がある、方法。
【請求項35】
請求項4に記載の薬物剤形を対象に投与することによって疼痛を処置する方法であって、該対象へのスフェンタニルの単回舌下投与は、50%より大きいバイオアベイラビリティをもたらす、方法。
【請求項36】
請求項4に記載の薬物剤形を対象に投与することによって疼痛を処置する方法であって、該薬物剤形の該対象への単回舌下投与は、変動係数が40%より小さいTmaxをもたらす、方法。
【請求項37】
請求項4に記載の薬物剤形を対象に投与することによって疼痛を処置する方法であって、該薬物剤形の該対象への繰り返し舌下投与後のバイオアベイラビリティは、単回舌下投与後のバイオアベイラビリティより大きい、方法。
【請求項38】
請求項4に記載の薬物剤形を対象に投与することによって疼痛を処置する方法であって、繰り返し舌下投与後のTmaxと前回の舌下投与時間との差は、該対象への単回舌下投与後のTmaxより短い、方法。
【請求項39】
請求項4に記載の薬物剤形を対象に投与することによって疼痛を処置する方法であって、該薬物剤形の該対象への繰り返し舌下投与は、変動係数が40%より小さいTmaxをもたらす、方法。
【請求項40】
請求項1に記載の薬物剤形を口腔粘膜上に配置する工程を包含する、疼痛を処置する方法であって、前記薬物剤形は投薬デバイスを用いて配置される、方法。
【請求項41】
前記口腔粘膜は舌下の空間内にある、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記口腔粘膜は頬粘膜である、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記投与デバイスはハンドヘルドである、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記剤形の配置は患者によって制御される、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
前記投与デバイスは、唾液の進入を防ぐか、または遅らせる手段を有する投薬端、およびロックアウト機能を備える、請求項40に記載の方法
【請求項46】
前記投与後に前記対象における疼痛の緩和が明らかである、請求項35に記載の疼痛を処置する方法。
【請求項47】
前記疼痛は、急性痛、突出痛または術後痛である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記投与後に前記対象における疼痛の緩和が明らかである、請求項37に記載の疼痛を処置する方法。
【請求項49】
前記疼痛は、急性痛、突出痛または術後痛である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記投与後に前記対象における疼痛の緩和が明らかである、請求項38に記載の疼痛を処置する方法。
【請求項51】
前記疼痛は、急性痛、突出痛または術後痛である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記投薬デバイスは、単回用量アプリケータ(SDA)である、請求項40に記載の疼痛を処置する方法。
【請求項53】
前記投薬デバイスは、単回用量アプリケータ(SDA)である、請求項41に記載の疼痛を処置する方法。
【請求項54】
生体接着性の薬物剤形を対象の舌下膜上に配置する方法であって、該方法は、
(a)請求項1に記載の薬物剤形を得る工程;および
(b)該薬物剤形を該舌下膜上に配置する工程
を包含し、該薬物剤形は該膜に接着する、
方法。
【請求項55】
前記配置はデバイスなしに達成される、請求項48に記載の方法。
【請求項56】
前記配置はデバイスを用いて達成される、請求項48に記載の方法。
【請求項57】
前記デバイスは単回用量アプリケータである、請求項50に記載の方法。
【請求項58】
固体薬物剤形として対象に舌下投与するための生体接着性スフェンタニル含有製剤であって、該製剤は、
(a)医薬活性量の秩序化していない薬物の混合物、および
(b)生体接着性物質であって、該生体接着性物質は該対象の口腔粘膜への接着をもたらす、生体接着性物質
を含み、、該薬物剤形の溶解はpHに依存しない、
製剤。
【請求項59】
前記薬物剤形の溶解は、約4から8のpH範囲にわたってpHに依存しない、請求項52に記載の製剤。
【請求項60】
前記製剤はステアリン酸をさらに含む、請求項52に記載の製剤。
【請求項61】
前記薬物剤形は、ロゼンジ、丸薬、錠剤、膜および細片からなる群から選択される、請求項52に記載の製剤。
【請求項62】
前記薬物剤形は錠剤である、請求項55に記載の製剤。
【請求項63】
前記製剤は、約0.0004%から約0.04%までのスフェンタニル、例えば、0.0005%、0.001%、0.002%、0.003%、0.004%、0.006%、0.008%、0.01%、0.012%、0.014%または0.016%のスフェンタニルを含む、請求項52に記載の製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図11E】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【図15−1】
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【図15−2】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20A】
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【図20B】
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【図20C】
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【図21A】
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【図21B】
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【図21C】
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【図21D】
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【図21E】
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【図21F】
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【図22】
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【図23A】
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【図23B】
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【図23C】
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【図24A】
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【図24B】
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【図25A】
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【図25B】
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【図25C】
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【図25D】
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【図26A】
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【図26B】
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【図26C】
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【図26D】
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【公表番号】特表2010−532745(P2010−532745A)
【公表日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544900(P2009−544900)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/089018
【国際公開番号】WO2008/085765
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(508202267)エーセルアールエックス ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】