疾患を治療するための剤
CD4に結合可能であり、且つCD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な分子を同定するためのスクリーニング方法を提供する。更に、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な抗体及び抗体断片、並びに前記抗体及び抗体断片を含む方法及び使用を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疾患を治療するための剤、特に、T細胞の表面受容体CD4を通したCD4+CD25+制御性T細胞の活性化を介する治療に関する。本発明は、かかる剤を同定するためのスクリーニング方法、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な剤、疾患、特に自己免疫疾患の治療における前記剤の使用、及びインビトロにおいて実施される方法における前記剤の使用を含む。
【背景技術】
【0002】
T細胞は、リンパ球に属し、免疫系における多数の重要な機能に関与している。哺乳類では、T細胞(胸腺細胞)は、骨髄において形成される造血前駆細胞から、胸腺において分化する。特徴的な表面受容体、主に糖タンパク質CD4及びCD8が発現することが、分化プロセスの一部である。CD4を発現するT細胞、所謂CD4+T細胞は、MHCクラスII複合体に結合するが(非特許文献1及び2)、一方、CD8+T細胞は、MHCクラスI複合体に結合する(非特許文献3)。T細胞は、血液及びリンパ液中に放出される。
【0003】
CD4陽性細胞は、ヘルパーT亜集団(Th1及びTh2)だけではなく、制御性T細胞にも分化することができる。制御性T細胞は、サブクラスに更に分類することができ、胸腺に由来する制御性T細胞(nTreg)、誘導性制御性T細胞(iTreg)が最もよく研究されている。
【0004】
例えば、Tr1又はTh3等の他のTreg亜集団も存在するが、本発明は、CD4陽性胸腺に由来するTreg(nTreg)及び誘導性Tregについて言及する。これらは、両方共転写因子Foxp3を発現する。大きな違いとしては、Foxp3は、nTregにおいて安定的且つ永続的に発現し、これによりTregの不可逆的な表現型が裏付けられるが、誘導性Tregは、誘導性又は一過性のFoxp3発現を示すので、表現型は可逆的である。
【0005】
Tregは、IL−10、TGFβ、又はIL−35等の免疫調節性サイトカインを分泌し、例えば、炎症促進性サイトカインの産生抑制、直接的な細胞接触、及び抗原提示細胞(APC)における活性化状態又は機能の調節等の幾つかの機序を介して、エフェクターT細胞に対する抑制活性を発揮する(非特許文献4)。CD4陽性CD25Treg細胞の主な特徴は、アネルギー性の表現型、即ち、TCRが刺激されても増殖しないことであるが、これは、外因性IL−2の添加により回復させることができる。
【0006】
Tregの重要な役割は、免疫反応及び自己寛容に関連するホメオスタシスの維持を含む。Tregの機能不全は、自己免疫疾患と相関がある。
【0007】
一般的に、制御性T細胞は、表面受容体糖タンパク質であるCD4、CD25を介して単離することができ、FOXP3の細胞内染色を特徴とする。更なる表面タンパク質は、Treg細胞においてダウンレギュレートされるCD127(IL−7R)であり、これは、Tregの更なる精製に用いることができる。更に、CD39(エンドヌクレオチダーゼ)(非特許文献5)又はGARP(glycoprotein A repetitions predominant(GARP又はLRRC32)(非特許文献6)の発現。
【0008】
ヒトCD4は、12番染色体にコードされており、免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーに属する。そのT細胞表面受容体としての自然界における機能は、MHCクラスII複合体の結合によるT細胞の活性化に関する。更に、CD4は、HIV−1gp120タンパク質、P4HB/CDIタンパク質、及びヒトヘルペスウイルスHHV−7カプシドタンパク質に結合することができる。また、HIV−1gp120及びVpuタンパク質との相互作用についても報告されている。CD4は、458アミノ酸を有する。ペプチド配列を図1に示す。
【0009】
UniProt entry P01730は、以下の表1及び図6に示されるCD4のドメイン構造を提供する。最初の25アミノ酸は、シグナルペプチドであり、生物学的に活性のある形態においては切断されている。26位〜396位は、細胞外ドメインを構成し、続く397位〜418位は膜貫通ドメインである。Asn296及びAsn325は、公知のグリコシル化部位である(非特許文献7及び8)。
【0010】
最後の部分である419位〜458位は、細胞質ドメインである。これは、CD4に結合するリガンドにより活性化されるシグナル伝達経路の一部であるチロシンタンパク質キナーゼLCK(p56lck)の結合部位である(非特許文献9及び10)。
【表1】
【0011】
細胞外部分は、4つの免疫グロブリン様ドメインを含む。最初のドメインであるN−末端ドメインは、26位〜125位を含み、Ig様V型ドメインである。抗体に対する相同性に基づいて、前記ドメインは、抗原相補性決定領域であるCD1、CDR2、及びCDR3の3つのホモログを有する(非特許文献11)(図6を参照されたい)。CDR1からCDR2に及ぶ範囲は、クラスII MHC分子(非特許文献12)、gp120HIV−1エンベロープタンパク質(非特許文献13)、及び抗CD4抗体(非特許文献14)の結合に関与している。CDR2のPhe68は、クラスII MHC分子及びgp120HIV−1エンベロープタンパク質の認識及び結合において重要な役割を果たしている(非特許文献15)。CD4の公知のリガンドは全て、N末端のIg様V型ドメインに結合する。
【0012】
制御性T細胞の作用機序は、完全に明らかになっている訳ではない。CD4+CD25+Tregは、ポリクローナル及び抗原特異的なT細胞の活性化を阻害する。この抑制は、例えば、TCRを介したCD4+CD25+Tregの活性化を必要とする細胞接触依存性機序により媒介され得るが、Tregは、TCRの活性化又はマイトジェン抗体による刺激を受けても増殖反応を示さない(アネルギー性)(非特許文献16)。一旦刺激を受けると、Tregは、抗原非依存的にCD4+T細胞及びCD8+T細胞に応答し、更に、B細胞の活性化及びクローン増殖を阻害することができるようになる。
【0013】
CD4+CD25+制御性T細胞は、免疫系の活性に対する制御作用を有するという能力により、免疫系に対する制御を発揮することが望ましい自己免疫疾患等の疾患を治療するための標的候補として認識されている。
【0014】
自己免疫は、自身を構成する部分を(分子以下のレベルまで)「自己」として認識することができない生物の欠陥であり、その結果、自身の細胞及び組織に対しても免疫反応が生じてしまう。かかる異常な免疫反応に起因する任意の疾患を自己免疫疾患と呼ぶ。自己免疫疾患としては、多発性硬化症(MS)、関節リウマチ(RA)、乾癬、乾癬性関節炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、I型真性糖尿病(T1D)、重症筋無力症(MG)、自己免疫多腺性症候群II型(APS−II)、橋本甲状腺炎(HT)、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群、及び自己免疫リンパ増殖症候群(ALS)が挙げられる。
【0015】
自己免疫疾患は、「自己」分子、即ち、ホストの細胞によって産生される分子をT細胞が認識し、反応するときに生じる。抗原提示細胞(APC)により処理される自己抗原の提示により「自己反応性」T細胞が活性化されると、前記T細胞のクローン性増殖及び特定組織への遊走が導かれ、前記特定組織において前記T細胞は、炎症及び組織破壊を誘導する。
【0016】
自己免疫疾患の治療に成功している主な治療戦略は、免疫抑制薬の使用によるこれらエフェクターT細胞機能の抑制である。しかし、これら免疫抑制薬は、選択性が低いので全身において免疫抑制を誘導し、免疫系の有害な機能だけではなく有用な機能までも阻害してしまう。結果として、感染症、癌、及び薬物毒性等の幾つかのリスクが生じる場合がある。
【0017】
一般的に、CD4+T細胞は、自己免疫の開始及び維持において重要な役割を果たしていると認められている。したがって、免疫抑制剤としてCD4+T細胞表面分子に対するmAb、特に抗CD4mAbを使用することが提案されている。多数の臨床試験によって、このアプローチの潜在的重要性が確認されたが、同時に、慣用的な臨床診療における使用により適した抗CD4mAbを作製するために取り組むべき幾つかの課題も浮かび上がった。
【0018】
提案されているCD4mAbの幾つかの異なる作用機序としては、以下が挙げられる:(1)CD4−MHC II相互作用と拮抗してT細胞の活性化を阻害する、(2)CD4の細胞表面発現の減少により測定されるCD4受容体の調節、(3)T細胞受容体の架橋が存在しないとCD4受容体を介したシグナル伝達が部分的にしか生じないので、後のT細胞活性化を抑制し、CD4によるT細胞のアポトーシスを誘発することができる、(4)Fc媒介補体依存性細胞傷害作用(CDC)又は抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)によりCD4 T細胞を枯渇させる、及び(5)制御性T細胞を刺激する。
【0019】
T細胞を標的とする幾つかの抗CD4抗体が、臨床的に開発されており(非特許文献17〜24)、これらは、ほんの僅かなCD4抗体を用いてCD4細胞を枯渇させることを主な目的とする。この作用は、TRX−1、TNX−355、IDEC−151、OKTcdr4A等の他の機序に起因すると考えられる。
【0020】
自己免疫疾患を治療するために制御性T細胞を活性化させることを目的とする剤を使用するアプローチは、極めて困難であることが立証されている。作動性抗CD3抗体OKT−3(非特許文献25)を用いるTCRを介したTregの活性化、又は超作動性抗CD28抗体TGN1412を用いる共刺激分子CD28を介したTregの活性化は、制御性T細胞集団及び他の従来のT細胞を完全に枯渇させると共に、IFN−γ、TNF−α、IL−1、及びIL−2を含む炎症促進性サイトカインを全身誘導し、過剰量を放出させて、ヒトにおいて臨床的に明らかなサイトカイン放出症候群(CRS)を生じさせる(非特許文献26)。
【0021】
しかし、近年、CD4+CD25制御性T細胞を活性化させることができるヒト化抗CD4抗体が報告されている(特許文献1)。特許文献1に記載されている抗体は、非特許文献27に記載されているマウスIgG1抗ヒトCD4抗体であるマウス抗体mB−F5のヒト化バージョンである。mB−F5のエピトープは、ヒトCD4のIg様C2型1及び2型ドメイン、即ち、図6に示されるアミノ酸162からアミノ酸232に及ぶと非特許文献27に報告されている。
【0022】
これら抗体のうちの1つであるBT061と呼ばれる抗体(ヒト化モノクローナルIgG1)を用いたその後の臨床試験において、乾癬及び関節リウマチに罹患している患者の治療に成功したことが報告されており(特許文献2〜5)、これら抗体が、安全に且つ良好な有効性で自己免疫疾患を治療できるという証拠が示された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】国際公開第2004/083247号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2009/112502号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2009/121690号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2009/124815号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2010/034590号パンフレット
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】Reinerz and Schlossman,Cell 19,821−827(1980)
【非特許文献2】Reinerz et al.,PNAS USA 77,1588−1592(1980)
【非特許文献3】Fitch,Microbiol.Rev.50,50−69(1986)
【非特許文献4】Shevach et al.,Immunity(2009)30;636−645
【非特許文献5】Borselino et al.,Blood(2007)110,1225−1232
【非特許文献6】Wang et al.,PNAS(2009)106,32.13439−13444
【非特許文献7】Koenig et al.,J.Biol.Chem.263,9502−9507(1988)
【非特許文献8】Carr et al.,J.Biol.Chem.264,21286−21295(1989)
【非特許文献9】Rudd et al.,PNAS USA 85,5190−5194(1988)
【非特許文献10】Veillette et al.,Cell 55,301(1988)
【非特許文献11】Ashkenazi et al.,PNAS USA 87,7150−7154(1990)
【非特許文献12】Moebius et al.,PNAS USA 89,12008−120012(1992)
【非特許文献13】Moebius et al.,J.Exp.Med.176,507−517(1992)
【非特許文献14】Lanza et al.,PNAS USA 90,11683−11687(1993)
【非特許文献15】Sharma et al.,Biochemistry 44,16192−16202(2005)
【非特許文献16】Shevach,Nature Rev.Immunol 2 :389(2002)
【非特許文献17】Schulze−Koops et al.,J Rheumatol.25(11):2065−76(1998)
【非特許文献18】Mason et al.,J Rheumatol.29(2):220−9(2002)
【非特許文献19】Choy et al.,Rheumatology 39(10):1139−46(2000)
【非特許文献20】Herzyk et al.,Infect Immun.69(2):1032−43(2001)
【非特許文献21】Kon et al.,Eur Respir J.18(1):45−52(2001)
【非特許文献22】Mourad et al.,Transplantation 65(5):632−41(1998)
【非特許文献23】Skov et al.,Arch Dermatol.139(11):1433−9(2003)
【非特許文献24】Jabado et al.,J Immunol.158(1):94−103(1997)
【非特許文献25】Abramowicz et al,N Engl.J Med.1992 Sep 3;327(10):736
【非特許文献26】Suntharalingam et al,N Engl.J Med.2006 Sep 7;355(10):1018−28
【非特許文献27】Racadot et al. Clin.Exp.Rheum.,10,365−374(1992)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
有望な臨床結果が得られたことにより、同様の性質を有する更なる治療剤の開発に対する注目が高まっている。したがって、本発明の目的は、かかる剤を同定するためのスクリーニング方法、及び更なる治療剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
したがって、本発明は、CD4に結合可能な分子をスクリーニングする方法であって、
(a)1以上の候補分子を提供する工程と;
(b)前記1以上の候補分子が、ヒトCD4の以下の領域:アミノ酸148〜154、アミノ酸164〜168、及びアミノ酸185〜192のうちの1以上に結合可能であるかどうかを判定する工程と;
(c)工程(b)においてCD4に結合可能であると判定された分子を選択する工程と
を含む方法を提供する。
【0027】
本発明者らは、予想外にも、ヒト化抗体BT061が、これまでリガンド結合部位として認識されていなかったCD4ドメインに結合することを見出した。この知見は、前記ドメインが、BT061が由来するマウス抗体mB−F5のエピトープとして当技術分野において公知であったことを考慮しても非常に驚くべきことである。また、本発明者らは、CD4分子の結合に関与しているBT061の残基を確定し、驚くべきことに、BT061のCDRの全てがCD4の結合に関与している訳ではないことを見出した。
【0028】
結合領域の同定及び結合機序の詳細により、更なるスクリーニング方法、並びにCD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な抗体及び抗体断片の開発が可能となった。
【0029】
したがって、本発明は、また、CD4に結合可能な抗体又は抗体断片をスクリーニングする方法であって、
(a)BT061軽鎖のCDR1及びCDR2と、BT061重鎖のCDR1及びCDR3とを含む抗体又は抗体断片であって、前記CDRはそれぞれ、その配列中に以下に記載するアミノ酸置換を任意で含んでいてもよいCDRである抗体又はその断片を提供する工程と:
(i)Ser32;Gly33;及びTyr34を含む軽鎖CDR1、
(ii)Leu54;及びIle57を含む軽鎖CDR2、
(iii)Asp31、Glu31、Thr31、Cys31、Pro31、Met31、又はTyr31を含む重鎖CDR1、
(iv)Tyr103、Phe103、又はHis103;Arg104;Tyr105;Asp106;及びTrp110、Phe110、His110、又はTyr110を含む重鎖CDR3、
(b)前記抗体又は抗体断片がCD4に結合可能であるかどうかを判定する工程と、
(c)工程(b)においてCD4に結合可能であると判定された抗体又は抗体断片を選択する工程と
を含み、
前記抗体又は抗体断片が、BT061重鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3、並びにBT061軽鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3を含まない方法を提供する。
【0030】
更に、本発明は、BT061軽鎖のCDR1及びCDR2と、BT061重鎖のCDR1及びCDR3とを含むCD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な抗体又は抗体断片であって、前記CDRはそれぞれ、その配列中に以下に記載するアミノ酸置換を任意で含んでいてもよいCDRであり、
(i)Ser32;Gly33;及びTyr34を含む軽鎖CDR1、
(ii)Leu54;及びIle57を含む軽鎖CDR2、
(iii)Asp31、Glu31、Thr31、Cys31、Pro31、Met31、又はTyr31を含む重鎖CDR1、
(iv)Tyr103、Phe103、又はHis103;Arg104;Tyr105;Asp106;及びTrp110、Phe110、His110、又はTyr110を含む重鎖CDR3、
前記抗体又は抗体断片が、BT061重鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3、並びにBT061軽鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3を含まない抗体又は抗体断片を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
一例として以下の図面を参照して本発明を例証する。
【図1】図1は、ヒトCD4のペプチド配列(配列番号1)及びジスルフィド架橋を示す(UniProt ID P01730)。
【図2A】図2Aは、ヒト化抗体BT061の軽鎖のペプチド配列(配列番号2)を示す。CDRの残基をボックス内に示す(CDR1:配列番号4、CDR2:配列番号5、CDR3:配列番号6)。点線枠で囲まれている残基は、結晶構造によって表されない。
【図2B】図2Bは、ヒト化抗体BT061の重鎖のペプチド配列(配列番号3)を示す。CDRの残基をボックス内に示す(CDR1:配列番号7、CDR2:配列番号8、CDR3:配列番号9)。点線枠で囲まれている残基は、結晶構造によって表されない。
【図3】図3は、CD4−BT061の結晶構造の非対称単位の図を提供する。
【図4】図4は、CD4複合体及びクラスII MHC分子の結晶構造を重ねたCD4−BT061結晶構造の図を提供する(PDBコード 1JL4)。
【図5】図5は、CD4複合体及びgp120HIV−1タンパク質の結晶構造を重ねたCD4−BT061結晶構造の図を提供する(PDBコード 2NY1)。更に、gp120HIV−1タンパク質は、抗体17bに結合している。
【図6】図6は、ヒトCD4のペプチド配列(配列番号1)及びドメイン構造を示す(UniProt ID P01730)。
【図7】図7は、CD4の表面上におけるBT061結合部位の図を提供する。ここに示す全てのアミノ酸は、N−末端のIg様V型ドメインの次に存在するIg様C2型1ドメインの一部である。
【図8】図8は、BT061のアミノ酸軽鎖配列(配列番号2)を提供する。CD4に対する結合に関与しているアミノ酸を、丸みを帯びた枠で囲む。
【図9】図9は、BT061のアミノ酸重鎖配列(配列番号3)を提供する。CD4に対する結合に関与しているアミノ酸を、丸みを帯びた枠で囲む。
【図10】図10は、CD4の表面上におけるBT061結合部位の図を提供する。BT061重鎖のTyr105の結合ポケットを形成するアミノ酸を丸で囲む。
【図11】図11は、CD4の表面上におけるBT061結合部位の図を提供する。BT061重鎖のArg104〜Asp106の結合ポケットを形成するアミノ酸を丸で囲む。
【図12】図12は、CD4の表面上におけるBT061結合部位の図を提供する。BT061軽鎖のTyr34の結合ポケットを形成するアミノ酸を丸で囲む。
【発明を実施するための形態】
【0032】
スクリーニング方法
本発明は、CD4、好ましくはヒトCD4に結合可能な1以上の分子をスクリーニングする方法を提供する。上記の通り、本明細書に提供する情報は、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能である、CD4と抗体BT061との相互作用について説明する。特に、BT−061は、ヘルパーT細胞及び制御性T細胞の両方に結合し、ヘルパーT細胞を活性化することなしに制御性T細胞を選択的に活性化させる。BT061の構造及びBT061がCD4の細胞外ドメインとどのように相互作用しているかを知ることにより、CD4の結合及び制御性T細胞の選択的活性化の観点でBT061と同様の性質を有する剤を設計及び製造する手段を提供できる。
【0033】
第1の態様では、本発明は、CD4に結合可能な分子をスクリーニングする方法であって、(a)1以上の候補分子を提供する工程と、(b)前記1以上の候補分子が、以下のヒトCD4の領域又はアミノ酸:アミノ酸148〜154、アミノ酸164〜168、並びにアミノ酸185、187、189、190、及び192のうちの1以上に結合可能であるかどうかを判定する工程と;(c)工程(b)においてCD4に結合可能であると判定された分子を選択する工程とを含む方法を提供する。より具体的には、前記ヒトCD4の領域は、アミノ酸148〜154、アミノ酸164〜168、及びアミノ酸185〜192である。
【0034】
1つの実施形態では、工程(a)〜(c)をコンピュータシステムで完了することができ、CD4と1以上の候補分子との相互作用は、BT061とヒトCD4との間の相互作用に関して本明細書に提供される情報に基づいてモデル化される。即ち、スクリーニングは、コンピュータ支援分子設計を介して実施される。特に、CD4、特にその細胞外領域の三次元構造モデルは、CD4の少なくとも一部についてのアミノ酸配列の相互作用、及び当業者に公知のソフトウェア、例えば、Discovery Studio(Accelrys(登録商標))又はBenchware 3D Explorer(Tripos)を用いてコンピュータシステムで作成される。更に、これらプログラムによって、1以上の候補分子の配列及び/又は構造情報の入力又はデノボ合成が可能になる。次いで、BT061結合にとって重要であると同定されたCD4の領域に結合する候補分子の能力(これについては以下で更に論じる)について調べることができる。
【0035】
具体的には、CD4に結合可能な分子をスクリーニングする方法は、工程(a)及び(b)を含んでいてもよい:(i)少なくともアミノ酸148〜154、アミノ酸164〜168、並びにアミノ酸185、187、189、190、及び192を含むCD4由来のアミノ酸をコンピュータシステム又はプログラムに入力する工程と;(ii)前記アミノ酸配列によりコードされているポリペプチド又はペプチドの三次元モデルを作成する工程と;(iii)1以上の候補分子の三次元構造を作成又は入力する工程と;(iv)CD4のアミノ酸配列と候補分子のアミノ酸配列との間の相互作用をシミュレーションして、前記候補分子が、アミノ酸148〜154、アミノ酸164〜168、並びにアミノ酸185、187、189、190、及び192を介してCD4に結合可能であるかどうかを判定する工程。
【0036】
候補分子の選択は、下記実施例1に記載するCD4−BT061相互作用の特徴を考慮することにより更に限定することができる。具体的には、候補分子は、塩橋なしにCD4の領域に結合する分子及び/又は以下を含むCD4表面の結合ポケットのうちの1以上に収容される1以上の成分を含む分子に限定することができる:
(i)CD4のアミノ酸残基S152、V153、Q154、Q164、G165、T185、V186、L187、及びK192(図10に示す);
(ii)CD4のアミノ酸残基S150、S152、G165、及びG166(図11に示す);及び/又は
(iii)アミノ酸残基S150、P151、S152、及びK167(図12に示す)。
【0037】
このコンピュータで実行される実施形態の方法は、更に、工程(c)において選択された分子を生成する工程(d)を更に含んでいてもよい。例えば、選択された分子がペプチドである場合、コンピュータを用いて前記ペプチドのアミノ酸配列を入手し、前記ペプチドをインビトロで製造する。その後、前記選択された分子とCD4の関連する領域/アミノ酸を含むペプチド又はポリペプチドとを接触させることにより、又は前記選択された分子とCD4を発現する細胞とを接触させることにより、前記選択された分子の活性をインビトロで評価することができる。これらインビトロにおける工程については、工程(a)〜(c)をインビトロで実施する第1の態様の実施形態に関連して以下で更に説明する。
【0038】
具体的には、上記コンピュータ支援実施形態に代えて、前記スクリーニング方法の工程(a)〜(c)をインビトロで実施してもよく、工程(b)は、1以上の候補分子とCD4の関連する領域/アミノ酸とを接触させ、前記候補分子がこれら領域のうちの1以上に結合可能であるかどうかを判定することを含んでいてもよい。この実施形態の例は、CD4に結合可能な1以上の分子をスクリーニングする方法であって、(a)ヒトCD4の以下の領域:アミノ酸148〜154、アミノ酸164〜168、及びアミノ酸185〜192のうちの1以上を含むペプチドと前記1以上の分子とを接触させる工程と;(b)前記1以上の分子が前記ペプチドの前記1以上の領域に結合するかどうかを判定する工程とを含み、前記分子が、BT061重鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3、並びにBT061軽鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3を含まない方法を含む。
【0039】
本発明の方法は、好ましくは、分子のライブラリをスクリーニングすることを含む。具体的には、前記ライブラリは、当技術分野において公知の方法に従って調製したファージディスプレイライブラリであってよい。前記ライブラリは、多数の異なるアミノ酸/ペプチドの系統的な組み合わせを反映したペプチドライブラリであってもよい。通常、ペプチドライブラリは、平面又はビーズとして作製することができる固相上、多くの場合樹脂上で合成される(固相ペプチド合成)。このライブラリは、タンパク質−タンパク質相互作用、創薬、タンパク質の精製、及び異なる親和性を有する抗体変異体を作製するための抗体認識配列における変異について用いることができる。
【0040】
ファージディスプレイライブラリに加えて、更なるライブラリとしては、酵母ディスプレイ、細菌ディスプレイ、mRNAディスプレイ、リボソーマルディスプレイ、及びポリソーマルディスプレイが挙げられる。リボソーマルディスプレイは、選択工程において固定化リガンドに結合させるために複合体として用いられる、mRNA前駆体に会合している翻訳されたタンパク質を得るプロセスを含む。mRNAディスプレイでは、ピューロマイシンの連結を介して、mRNA前駆体に会合している翻訳されたペプチド又はタンパク質を得る。
【0041】
細菌ディスプレイは、フローサイトメトリー又は反復選択手順(バイオパニング)を用いてスクリーニングすることができる、細菌の表面上にディスプレイされたポリペプチドのライブラリ技術を表す。
【0042】
酵母ディスプレイ(Abbott)技術では、対象タンパク質は、酵母の表面上にAga2pタンパク質との融合物としてディスプレイされる。Aga2pタンパク質は、酵母の細胞接合中に細胞接触を媒介するために、酵母が自然界で用いているタンパク質である。したがって、Aga2pを介するタンパク質のディスプレイでは、細胞表面からタンパク質を突出させて、酵母の細胞壁における他の分子との相互作用の可能性を最小化する。酵母ディスプレイライブラリと、磁気分離及びフローサイトメトリーとの併用は、定向進化を通じて、略全ての受容体に対して高親和性を有するタンパク質リガンドを単離するための非常に有効な方法である。
【0043】
ポリソーマルディスプレイは、細菌のポリソームにディスプレイされる非常に大きなペプチドライブラリを含む(Mattheakis et al.,1994)。MULTIPIN(登録商標)ペプチド技術を用いてライブラリを作製してもよい(Tribbick et al.,J Immunl.Methods(2002)267:27−35)。
【0044】
インビトロにおける接触工程では、ヒトCD4の以下の領域又はアミノ酸(「CD4の関連する領域/アミノ酸」)のうちの1以上を含むペプチド又はポリペプチドと選択された分子又は候補分子とを接触させてもよい:アミノ酸148〜154、アミノ酸164〜168、並びにアミノ酸185、187、189、190、及び192。これらアミノ酸は、図6に示す通り番号付けされている。好ましくは、前記ヒトCD4の領域は、アミノ酸148〜154、アミノ酸164〜168、及びアミノ酸185〜192である。より好ましくは、前記ペプチド又はポリペプチドは、これら領域の全てを含む。更により好ましくは、前記ペプチド又はポリペプチドは、ヒトCD4の以下のアミノ酸のうちの少なくとも1つを更に含む:Lys26、Arg156、Arg159、Lys161、及びLys192。最も好ましくは、前記ペプチド又はポリペプチドは、ヒトCD4のIg様C2−1型ドメイン(即ち、アミノ酸126〜205)を含み、任意でIg様V型ドメインも含む。特に、CD4のD1を利用して、エピトープを安定化させる。したがって、前記ペプチド又はポリペプチドを競合結合アッセイにおいて用いる場合、D1の使用が好ましい。しかし、これら領域から1アミノ酸又は2アミノ酸を除去してもよいことに留意すべきである。ペプチドの長さは、50アミノ酸未満が好ましく、20アミノ酸未満がより好ましい。
【0045】
ペプチドは、例えば、CD4を酵素で切断することにより作製されるペプチド、又はホスト細胞の発現により直接作製されるペプチド等の天然ペプチドであってもよく、合成ペプチドであってもよい。また、ペプチドは、ペグ化、リン酸化、アミド化、アセチル化、ビオチン若しくはFITC等の蛍光色素による標識、又はアイソトープによる標識等を介して修飾されてもよい。「複数の抗原ペプチド適用(Multiple antigen peptide application)」等の技術を用いて更に修飾してもよい。かかる技術を用いて、高力価の抗ペプチド抗体及び合成ペプチドワクチンを生成することができる。このシステムは、リシンのα−アミノ基及びε−アミノ基を利用して、複数のペプチド鎖が結合できる骨格を形成する。リシン力価数に依存して、様々な数のペプチド分岐鎖を合成することができる。これにより、タンパク質担体に抗原をコンジュゲートさせる必要がなくなる(Briand et al.,J Immunol Methods(1992).156;2:pp255−265)。
【0046】
上記の通り、本発明の方法は、ヒトCD4に由来するペプチド配列を用いて実施されることが好ましい。しかし、他の哺乳類のCD4タンパク質の相同領域、又はIg様C2−1型ドメインを含有する他の分子を用いても同様に実施することができる。
【0047】
前記1以上の分子、選択された分子、又は候補分子と、ペプチドとを接触させる工程、及び前記1以上の分子が前記ペプチドの1以上の領域に結合するかどうかを検出する工程は、当技術分野において公知の方法に従って実施することができる。具体的には、本発明の1つの実施形態では、前記ペプチドは、膜にスポット又は固定されている直鎖ペプチドである。接触工程中、CD4ペプチド配列に結合可能な分子が捕捉される。
【0048】
別の実施形態では、野生型ヒトCD4エピトープの立体構造を模倣可能なペプチドを作製する。これは、当技術分野において公知である、構造に基づく分子設計方法によって行うことができる。
【0049】
スクリーニングに用いることができるディスプレイ方法について以下に言及する。
【0050】
直鎖エピトープをスクリーニングするために、エピトープマッピング技術を用いてもよい。標的エピトープの一部を表すアミノ酸配列(例えば、10アミノ酸〜15アミノ酸)であって1アミノ酸が重複しているアミノ酸配列を膜(例えば、セルロース)にスポットする。次いで、スポットされているアミノ酸配列を認識するタンパク質又はペプチドについてスクリーニングすることが可能である。高親和性結合剤を選択するために様々なストリンジェンシーの条件を用いて数ラウンドの選択を行ってもよい。
【0051】
不連続なエピトープについてスクリーニングするために、ファージディスプレイ等の技術が開発されている。現在標準的な直鎖又は環状のペプチドのライブラリは、約109個の独立したクローンという多様性を有する。即ち、理論的には、7つ以下のランダム化された位置を有するライブラリについて、可能な配列レパートリを包括的に網羅することができる。ペプチドとそのmRNAとのカップリングは、RNA/ペプチド/リボソームの小粒子又はmRNA/ペプチド複合体のみを含む無細胞系で達成されるので、インビトロ翻訳系により更に多様性の高いペプチドライブラリが得られる。更なるライブラリとしては、ポリソーマル又はリボソーマルディスプレイ(Mattheakis et al.,PNAS 1994;91(19):9022−6)又はPROフュージョン技術(Roberts and Szostak,PNAS(1997)94(23):12297−302)が挙げられる。後者の技術は、mRNAと、前記mRNAがコードしているペプチド又はタンパク質との間の共有結合による融合を含み、前記ペプチド又はタンパク質は、3’末端にペプチジルアクセプタ抗生物質であるピューロマイシンを有する合成mRNAのインビトロ翻訳により生成することができる。
【0052】
オリゴヌクレオチドライブラリを含有する外面上で発現するスクリーニング用ペプチドを調製することを含むミニ細胞ディスプレイ(米国特許第7,125,679号明細書)も可能である。同様に、細菌の鞭毛タンパク質であるFliC及びチオレドキシンを用いるFlitrix(Invitrogen Corp.)ランダムペプチドライブラリを用いてもよい。
【0053】
更に、上述のディスプレイ方法に加えて、質量分析又は固相エピトープ回収(SPHERE)(Genzyme)を利用してもよい(Lawendowski et al.,J Immunol.,(2002)169:2414−2421)。
【0054】
1つの実施形態では、結合の検出は、X線結晶解析又はNMRを実施することを含む。具体的には、当技術分野において公知であるX線結晶解析法を用いて、塩橋なしにペプチドに結合する分子を選択することができる。
【0055】
これに代えて又はこれに加えて、第1の態様の方法は、選択された分子又は候補分子と、CD4を発現する細胞、特にCD4+CD25+制御性T細胞とを接触させることを含んでいてもよい。特にCD4+CD25+制御性T細胞の活性を調節する、特に活性化させる(好ましくは、ヘルパーT細胞を活性化させることなしにTreg細胞を選択的に活性化させる)選択された分子又は候補分子の能力を判定するか、又は特にPBMC(末梢血単核細胞)のインビトロ培養物における特定のリンパ球集団において、CD4受容体の発現を減少させるか若しくはダウンモジュレートする前記選択された分子又は候補分子の能力を判定するためにこれを行ってもよい。これら実施形態では、選択された分子又は候補分子は、抗体又は抗体断片、特に、以下に更に論じるIgG1型の抗体又は抗体断片であることが好ましい。
【0056】
調節アッセイの場合、Tregは、一般的に、CD25、CD27、CD62L、及び/又はCD127を選別し、更にFoxP3で細胞内を染色するための市販の単離キットを用いて単離することができる(磁気ビーズ単離)。Tregは、CD127陰性であり、CD25及びFoxp3陽性である。細胞表面に結合しているエクトヌクレオチダーゼであるCD39を用いて、強いサプレッサ機能を有するTregを精製することもできる(Mandapathil et al.,J Immunol.Methods(2009).346(1−2),55−63)。市販のキットでは、CD4+のネガティブセレクションと、その後のCD25+のポジティブ単離との組み合わせを用いて、CD4CD25陽性細胞集団を得ることができる。これら細胞を更に処理してもよい。CD25及び転写因子Foxp3は、Tregの抑制機能に関連する発現マーカーである。Foxp3による細胞内染色によって制御性の表現型が確認されるが、細胞内が染色されたことによりその細胞は生存することができなくなり、更に治療に使用することもできない。Foxp3は、活性化Treg/機能的に活性であるTregの細胞内マーカーとして一般的に使用される。
【0057】
更に、BT061及びスクリーニングされる分子は他の市販抗体に結合するエピトープとは異なるエピトープに結合するという事実から、市販の単離キット(磁気ビーズ単離)、及びCD4におけるBT061結合部位と競合しない更に別のCD4抗体(例えば、SK−3 OKT4)を用いてTregを精製し、次いで、候補分子又は選択された分子によるTregの活性化についてアッセイすることができる。
【0058】
Tregを活性化する候補分子の能力は、CD4陽性CD25陰性エフェクターT細胞とTregとを共培養することにより、候補分子と接触させた後、Tregの抑制活性を調べることによりアッセイすることができる。活性化されたTregは、CFSEで標識可能なCD4+CD25−エフェクターT細胞の増殖を阻害することができる(CFSE希釈アッセイを介した細胞増殖の評価)。或いは、エフェクター細胞の増殖は、[3H]チミジンを組み込むことにより判定することもできる。
【0059】
より具体的には、抑制能は、例えば、混合リンパ球反応(MLR)によりアッセイすることができる。エフェクターT細胞の細胞分裂は、Tregの抑制作用により阻害され得る。このために、放射線照射された同種の刺激因子PBMCでナイーブな自己CD4+CD25−レスポンダーT細胞を刺激する。Treg又は従来のT細胞で培養物の量を調節し、チミジンの組み込みにより増殖をアッセイすることができる。
【0060】
また、Tregの活性化は、(国際公開第2008/092905号パンフレットに記載の通り)サイクリックAMP産生の測定を介してアッセイしてもよい。
【0061】
また、共培養物中の活性化Tregにより影響を受けるサイトカインを測定して、エフェクター細胞に対するこれら細胞の活性を判定することもできる。例えば、Tregは、また、IL−2の消費を介してその抑制活性を発揮して、エフェクターT細胞の増殖を阻害する。また、IL−4又はIFNガンマは、共培養アッセイにおいても測定することができ、活性化Tregの場合は減少する。更に、CD25等のエフェクターT細胞における表面活性化マーカーは、Treg細胞が活性化され、抑制活性を発揮したときに減少する。
【0062】
更に、共培養物中の活性化Tregにより誘導されるエフェクター細胞(これもCD4陽性であってよい)における(Bim等の因子を介した)細胞死の判定は、Tregが活性化されるかどうかを調べる更なる方法である(Pandiyan et al.,Nature Immunol.(2007)8 1353−1362)。
【0063】
Tregは血中に少量(2%〜10%)しか存在しないので、幾つかの増殖ストラテジが知られている。例えば、抗CD3でTCRを刺激した後、抗CD28及びラパマイシンで共刺激して、T細胞の数を増加させることができる。ラパマイシンは、Tregの選択的生存を促進するが、エフェクターT細胞の生存は促進しない。
【0064】
幾つかのポリクローナル増殖プロトコールが利用可能である。例えば、CD4/CD25についてポジティブセレクションを行った後、抑制能を保持しながらTreg数を増加させることができるIL−2及び/又はIL−15と組み合わせて(刺激のために)抗CD3及び抗CD28抗体を用いることにより、インビトロでTreg細胞をポリクローナルに増殖させることができる(Earle et al.,Clin.Immunol.(2005)115:3−9)。
【0065】
CD4発現の調節に関して、抗CD4抗体を添加することにより、細胞表面におけるCD4受容体の発現を減少させることができることに留意すべきである。この特徴は、CD4の結合の程度を求めるための有効なアッセイの基礎として用いることができる。具体的には、このアッセイでは、接触工程は、(i)候補分子又は選択された分子とヒトドナーの血液に由来する末梢血単核細胞(PBMC)とを37℃でインキュベートすることと、(ii)CD4の結合についてBT061と競合しない抗CD4標識抗体で前記インキュベートされた細胞を染色することと、(iii)染色の量を検出して、CD4受容体の占有率を求め、それによって細胞表面上に存在するCD4分子の量を求めることとを含む。
【0066】
より具体的には、このアッセイは、ヒトドナーの血液からPBMC(即ち、リンパ球及び単球)を単離し、次いで、これを様々な濃度の候補分子又は選択された分子(好ましくは、抗体又は抗体断片)と共に37℃でインキュベートすることを含む。3時間インキュベートした後、BT061が結合するエピトープとは異なるCD4上のエピトープに結合する蛍光色素で標識された抗体、例えば、フィコエリトリン抗CD4等を添加することにより細胞を染色する。これら染色抗体は、特定のリンパ球集団におけるCD4受容体を標識する。用いられるBT061エピトープ及び蛍光色素で標識されたCD4抗体は、CD4分子上の異なるエピトープを認識するので競合しないため、この技術を用いれば、候補分子又は選択された分子によるCD4の結合とは独立に、細胞表面上のCD4受容体の量を測定することが可能になる。抗体で標識された細胞がレーザービームを通過し刺激される、フローサイトメトリーにおいて測定を実施する。レーザービームにより刺激されると、染色されている細胞は、結合している抗体に比例して蛍光を発し、発せられた光はフローサイトメーターにより捕捉され、次いで、当技術分野において公知であるソフトウェア、例えば、FlowJoソフトウェア(Tree Star,Inc)を用いて評価される。ソフトウェア(Parallel Line Assay software,Stegmann Systems等)を用いて、次いで、並行して測定される標準物質に対するサンプルの相対活性(効力)を計算することができる。
【0067】
本発明のこの態様の更なる実施形態では、接触工程は、CD4ペプチド又はポリペプチド(好ましくは、CD4のD1及びD2を含む)又はCD4を発現する細胞、及び候補分子/選択された分子と、BT061の重鎖及び軽鎖の可変ドメインを有する競合抗体又は抗体断片とを接触させて、候補/選択された分子が前記競合抗体又は抗体断片のCD4に対する結合をブロック可能であるかどうかを判定することを含んでいてもよい。
【0068】
第1の態様における1以上の候補分子は、ペプチドであっても非ペプチドであってもよい。具体的には、前記1以上の分子は、ミモトープ、ペプチド模倣物質、小分子、天然のリポカリン又は改変されたリポカリンに基づく認識タンパク質、オリゴヌクレオチド、siRNA、DARPin、フィブロネクチン、アフィボディ、Kunitz型阻害剤、ペプチドアプタマー、リボザイム、毒素、camelid、抗体、抗体断片、又は抗体由来分子であってもよい。
【0069】
ミモトープは、タンパク質、炭水化物、又は脂質のエピトープを模倣するペプチドであり、ファージディスプレイライブラリによって作製することができる。抗体により選択された場合、ミモトープは、B細胞のエピトープのみを表し、抗原/アレルゲン特異的なT細胞のエピトープを欠いている。担体にカップリングしているか又は複数の抗原ペプチドにおいて提示されている形態のミモトープは、免疫原性を獲得し、ワクチン接種したときにエピトープ特異的な抗体反応を誘導する。
【0070】
ペプチド模倣物質は、ペプチドを模倣するよう設計された小さなペプチド様鎖である。典型的に、分子の性質を変化させるために、既存のペプチドを修飾することにより作製される。例えば、分子の安定性又は生物活性を変化させるための修飾を行うことにより作製することができる。これら修飾は、天然には生じないペプチドの変化を含む(例えば、骨格の変更及び非天然アミノ酸の組み込み)。
【0071】
ペプチド模倣物質の例は、アポトーシスと呼ばれるプログラム細胞死の形態に癌細胞を誘導するために、標的タンパク質に結合させる目的で設計及び合成されたものであった。本質的に、これらは、細胞内のアポトーシス経路を活性化する重要な相互作用を模倣することにより機能する。
【0072】
フォルダマーは、非共有相互作用により安定化されている二次構造に適応する別個の鎖分子又はオリゴマーである(Gellman,Acc.Chem.Res(1998)31(4):173−180;Hill et al.,Chem.Rev.(2001)101(12):3893−4012)。フォルダマーは、へリックス及びβ−シート等の正確に規定されている立体構造に折り畳むタンパク質、核酸、及び多糖類の能力を模倣する人工分子である。フォルダマーは、分子の自己構築、分子の認識、及びホスト−ゲスト化学的性質を含む多数の興味深い超分子的性質を示すことが立証されている。フォルダマーは、生体分子のモデルとして研究され、抗菌活性を示すことが示されている。また、新規機能物質を開発するための重要な用途を有する可能性もある。
【0073】
小分子は、ポリマーの定義には当てはまらない低分子量有機化合物である。小分子の分子量の上限は、約800ダルトンであり、これは、細胞内の作用部位に達することができるように細胞膜を通過して速やかに拡散することが可能な分子量である。小分子は、タンパク質、核酸、又は多糖類等の生体ポリマーに対して高い親和性を示し、更に、生体ポリマーの活性又は機能を変化させる。
【0074】
DARPin(設計アンキリン反復タンパク質)は、抗原又は抗原構造を認識することもできる人工タンパク質である。DARPinは、構造的にアンキリンタンパク質に由来し、約14kDa(166アミノ酸)であり、且つ3つの反復モチーフからなる。DARPinは、抗原に対して抗体と同程度の親和性を示す(Stumpp et al.,Drug Discov.Today(2008)13,Nr.15−16,S.695−701)。
【0075】
アフィボディ(登録商標)分子は、多数の標的タンパク質に対して特異的に結合するよう改変することができる小さく且つロバストな高親和性タンパク質分子である。
【0076】
「camelid」という用語は、ラクダ類により産生され、且つ重鎖ホモダイマーを含む抗体、及びこれら抗体の誘導体を指す(Muyldermans et al.,Veterinary Immunology and Immunopathology,128;1−3;pp.178−183(2009))。
【0077】
候補分子は、抗体又は抗体断片であることが好ましい。語句「抗体、抗体断片、又は抗体由来分子」は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異的抗体、及び抗体断片を網羅する。用語「抗体断片」は、特に、Fab、Fab’、F(ab)’2、Fv、及びscFv断片を含む断片、並びにダイアボディ又はトリボディを含む。これらは、ヒト化抗体又はヒト抗体に基づくことが好ましい。前記抗体は、定常領域/ドメイン、即ち、Fc部分を含むことがより好ましい。抗体がヒト定常領域を含む場合、この定常領域は、IgM、IgG、IgD、IgA、及びIgEを含む任意のクラスの免疫グロブリン、並びにIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含む任意のアイソタイプに由来する定常ドメインの中から選択することができる。好ましい定常領域は、IgG、特にIgG1の定常ドメインの中から選択される。
【0078】
異なるIgサブクラスのFc部分には、個々のサブクラスに対して特異的である細胞内FcRが結合している。異なる親和性でIgGアイソタイプに結合する3つの異なるFcRクラス、CD16、CD32、及びCD64が知られている。単球、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、及び他の細胞等の様々な異なる免疫細胞で多様なパターンのFcγRが発現する。本発明者らは、インビトロにおいて、Fc受容体(FcR)に結合する抗体BT061の定常領域の能力が、T細胞においてCD4をダウンモジュレートする抗体の能力にとって重要であることを見出した。具体的には、インビトロにおける研究は、単球で主に発現しているFcγ受容体であるFcγ1受容体の能力が主に関与しており、PBMCの培養物における単球の存在が、BT061で処理されたT細胞においてCD4をダウンモジュレートするのに必要且つ十分であることを示す。
【0079】
したがって、本発明の実施形態では、候補分子は、Fc受容体、好ましくはFcγRI(即ち、CD64)に結合可能であり、最も好ましくはIgG1抗体のFc部分を含む。これに加えて又はこれに代えて、候補分子は、Fc受容体を介して単球に結合可能である。
【0080】
本発明のこの態様では、スクリーニングされる分子は、BT061重鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3、並びにBT061軽鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む抗体又は抗体断片ではない。これらCDR配列を図2A及び2Bに示す。好ましい実施形態では、スクリーニングされる分子は、Racadot et al.(Clin.Exp.Rheum.,10,365−374(1992))に記載されているマウスB−F5分子ではない。
【0081】
1以上の候補分子が抗体又は抗体断片である本発明の第1の態様の好ましい実施形態では、前記抗体又は抗体断片は、BT061軽鎖のCDR1及びCDR2と、BT061重鎖のCDR1及びCDR3とを含み、前記CDRはそれぞれ、その配列中に以下に記載するアミノ酸置換を任意で含んでいてもよいCDRである:
(i)Ser32;Gly33;及びTyr34を含む軽鎖CDR1、
(ii)Leu54;及びIle57を含む軽鎖CDR2、
(iii)Asp31、Glu31、Thr31、Cys31、Pro31、Met31、又はTyr31を含む重鎖CDR1、
(iv)Tyr103、Phe103、又はHis103;Arg104;Tyr105;Asp106;及びTrp110、Phe110、His110、又はTyr110を含む重鎖CDR3。
【0082】
或いは、候補分子は、BT061のVドメイン(即ち、配列番号2及び配列番号3)の配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するVドメインを含み、且つ軽鎖VドメインのCDR1における配列モチーフSGYSY(配列番号10)、軽鎖VドメインのCDR2における配列モチーフLASILE(配列番号11)、及び重鎖VドメインのCDR3における配列モチーフSYY/F/HRYD(配列番号13)を含む抗体又は抗体断片である。
【0083】
この方法では、スクリーニングされる1以上の分子は、抗体BT061、及び本発明者らがBT061抗体とCD4との相互作用において重要であると同定したBT061内の残基に対する類似性によって規定される候補分子のセットである。具体的には、この方法は、BT061に比べて略同程度又はより優れた結合親和性/特異性、及びTreg活性化活性を有する分子を同定する方法であることが好ましい。
【0084】
ヒト化抗体BT061の軽鎖及び重鎖のペプチド配列を、それぞれ図2A及び2Bに示す。これら図中では、軽鎖及び重鎖のCDRをマークしている。本明細書では、これらCDR内のアミノ酸残基は、残基の種類及び数によって同定されており、前記数は、図2A及び2Bに表されている軽鎖又は重鎖BT061抗体の可変領域内のアミノ酸の位置を表す。残基の種類及び数は、言及されるBT061 CDRのアミノ酸残基を明確に同定するために使用される。しかし、残基の数は、前記方法においてスクリーニングされる候補抗体又は断片におけるその位置に前記残基が存在すると限定することを意図するものではないことを理解されたい。例えば、この実施形態の抗体において、非必須アミノ酸残基が軽鎖のセクション1〜30から欠失している場合、Ser32は、軽鎖CDR1内の31位に存在してもよい。
【0085】
好ましい実施形態では、BT061軽鎖のCDR1及びCDR2の配列、並びにBT061重鎖のCDR1及びCDR3の配列中のアミノ酸置換は、以下の表4及び5に記載されるアミノ酸置換から選択される。より好ましくは、抗体又は抗体断片は、Tyr53又はPhe53を含む軽鎖と、Ser28を含む重鎖とを含む(実施例1の表7に示す通り)。これに代えて又はこれに加えて、抗体若しくは抗体断片は、Asp64を含有する軽鎖を含む、及び/又は抗体若しくは抗体断片は、Asp31及びGlu56のうちの少なくとも1つを有する重鎖を含む(実施例1の表8に示す通り)。抗体又は抗体断片は、BT061軽鎖のCDR3及び/又はBT061重鎖のCDR2を更に含んでいてもよく、これらCDRの配列中にアミノ酸置換が任意で存在し、前記アミノ酸置換は、表4及び5に記載されるアミノ酸置換から選択される。
【0086】
スクリーニング方法で用いるための候補抗体又は抗体断片は、BT061の既知の配列を突然変異させることにより作製することができる。具体的には、突然変異がCDR内に存在する場合、前記突然変異は、上記アミノ酸が確実に保持されるか、又は確実に望ましい置換が行われる標的突然変異であってもよい。
【0087】
スクリーニング方法の工程(a)がインビトロで実施される場合、標的突然変異誘発を用いて、CDR内の規定の位置でアミノ酸交換を生じさせることができる。アミノ酸に対応するDNA配列を知ることにより、様々な望ましいアミノ酸置換を含有する特定の突然変異体のライブラリを作製することができる。スクリーニング方法の工程(a)〜(c)がコンピュータシステムで実施される場合、CD4に関連して上に記載した方法と同様の方法でアミノ酸配列を入力することにより、候補抗体又は抗体断片の三次元構造を作成することができる。
【表2】
【表3】
【0088】
等配電子変異(Isosteric variation)は、立体効果を引き起こさない、即ち、如何なる方法においても抗体の立体構造を変化させない変異である。
【0089】
本発明の第2の態様では、CD4と結合可能な抗体又は抗体断片である候補分子をスクリーニングする方法であって、(a)BT061軽鎖のCDR1及びCDR2と、BT061重鎖のCDR1及びCDR3とを含み、前記CDRはそれぞれ、その配列中に以下に記載するアミノ酸置換を任意で含んでいてもよいCDRである抗体又はその断片を提供する工程と:
(i)Ser32;Gly33;及びTyr34を含む軽鎖CDR1、
(ii)Leu54;及びIle57を含む軽鎖CDR2、
(iii)Asp31、Glu31、Thr31、Cys31、Pro31、Met31、又はTyr31を含む重鎖CDR1、
(iv)Tyr103、Phe103、又はHis103;Arg104;Tyr105;Asp106;及びTrp110、Phe110、His110、又はTyr110を含む重鎖CDR3、
(b)前記抗体又は抗体断片がCD4に結合可能であるかどうかを判定する工程と、(c)工程(b)においてCD4に結合可能であると判定された抗体又は抗体断片を選択する工程と
を含み、
前記抗体又は抗体断片が、BT061重鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3、並びにBT061軽鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3を含まない方法を提供する。
【0090】
1つの実施形態では、本発明の第2の態様に係るスクリーニング方法の工程(a)〜(c)は、本発明の第1の態様に関連して上に記載した方法と同様の方法でコンピュータシステムにおいて実施してもよい。具体的には、BT061とそのCD4エピトープとの相互作用にとって重要な残基において、本明細書に提供される情報に基づいてインシリコで多数のBT061変異体を作製し、これら変異体とCD4との相互作用をシミュレーションすることができる。
【0091】
この実施形態では、前記方法は、更に、候補抗体又は抗体断片とCD4を発現している細胞とを接触させる工程を更に含んでいてもよい。
【0092】
コンピュータシステムで実施する実施形態に代わる実施形態では、本発明の第2の態様に係るスクリーニング方法の工程(a)〜(c)は、インビトロで実施してもよく、工程(b)は、候補抗体又は抗体断片とCD4を発現している細胞とを接触させることを含んでいてもよい。CD4に結合する能力は、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化させる候補の能力に基づいて判定されることが好ましい。
【0093】
具体的には、本発明のこの態様は、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な抗体又は抗体断片をスクリーニングする方法であって、
(a)1以上の抗体又は抗体断片と、CD4+CD25+制御性T細胞とを接触させる工程と、
(b)前記CD4+CD25+制御性T細胞を活性化する前記抗体又は抗体断片の能力を評価する工程と、
(c)前記CD4+CD25+制御性T細胞を活性化する抗体又は抗体断片を同定する工程と
を含み、
前記抗体又は抗体断片が、BT061軽鎖のCDR1及びCDR2と、BT061重鎖のCDR1及びCDR3とを含み、前記CDRはそれぞれ、その配列中に以下に記載するアミノ酸置換を任意で含んでいてもよいCDRであり:
(i)Ser32;Gly33;及びTyr34を含む軽鎖CDR1、
(ii)Leu54;及びIle57を含む軽鎖CDR2、
(iii)Asp31、Glu31、Thr31、Cys31、Pro31、Met31、又はTyr31を含む重鎖CDR1、
(iv)Tyr103、Phe103、又はHis103;Arg104;Tyr105;Asp106;及びTrp110、Phe110、His110、又はTyr110を含む重鎖CDR3、
前記抗体又は抗体断片が、BT061重鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3、並びにBT061軽鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3を含まない方法を提供する。
【0094】
本発明の第1の態様に係るスクリーニング方法に関連して上に提供した実施形態及び好ましい特徴の記載は、本発明の第2の態様に係るスクリーニング方法にも当てはまることに留意すべきである。
【0095】
本発明のこれら両態様は、更に使用したり下流で分析したりするために、選択された分子、特に選択された抗体又は抗体断片の産生を更に含んでいてもよい。
【0096】
したがって、本発明は、更に、前記方法により得ることができる治療組成物を製造する方法を提供する。具体的には、前記方法は、
(a)上記スクリーニング方法に係る方法を用いてCD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能であると判定された分子を選択する工程と、
(b)前記分子を含む治療組成物を製造する工程と
を含む。
【0097】
具体的には、前記治療組成物は、前記分子と、1以上の薬学的に許容し得る担体又は希釈剤とを合わせることにより製造することができる。
【0098】
抗体及び抗体断片
本発明者らの研究により、CD4+CD25+制御性T細胞との相互作用及びCD4+CD25+制御性T細胞の活性化にとって重要であるBT061の特徴を同定することができた。これにより、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能なBT061抗体の特定の突然変異体/変異体が同定された。
【0099】
したがって、第3の態様では、本発明は、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な抗体又は抗体断片であって、BT061軽鎖のCDR1及びCDR2と、BT061重鎖のCDR1及びCDR3とを含み、前記CDRはそれぞれ、その配列中に以下に記載するアミノ酸置換を任意で含んでいてもよいCDRであり:
(i)Ser32;Gly33;及びTyr34を含む軽鎖CDR1、
(ii)Leu54;及びIle57を含む軽鎖CDR2、
(iii)Asp31、Glu31、Thr31、Cys31、Pro31、Met31、又はTyr31を含む重鎖CDR1、
(iv)Tyr103、Phe103、又はHis103;Arg104;Tyr105;Asp106;及びTrp110、Phe110、His110、又はTyr110を含む重鎖CDR3、
BT061重鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3、並びにBT061軽鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3を含まない抗体又は抗体断片を提供する。
【0100】
或いは、第3の態様は、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な抗体又は抗体断片であって、BT061軽鎖のCDR1及びCDR2と、BT061重鎖のCDR1及びCDR3とを含み、前記CDRはそれぞれ、その配列中に以下に記載するアミノ酸置換を任意で含んでいてもよいCDRであり:
(i)Ser32又はPro32;Gly33又はAla33;及びTyr34を含む軽鎖CDR1、
(ii)Leu54、Ile54又はThr54;及びIle57、Leu57;Val57又はThr57を含む軽鎖CDR2、
(iii)Asp31、Glu31、Thr31、Cys31、Pro31、Met31又はTyr31を含む重鎖CDR1、
(iv)Tyr103、Phe103又はHis103;Arg104;Tyr105;Asp106;及びTrp110、Phe110、His110又はTyr110を含む重鎖CDR3、
BT061重鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3、並びにBT061軽鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3を含まない抗体又は抗体断片を提供する。
【0101】
上述の通り、ヒト化抗体BT061の軽鎖及び重鎖のペプチド配列を、それぞれ、図2A及び2Bに示す。これら図中では、軽鎖及び重鎖のCDRをマークしている。上述の通り、これらCDR内のアミノ酸残基は、残基の種類及び数によって同定されており、前記数は、図2A及び2Bに表されている軽鎖又は重鎖BT061抗体の可変領域内のアミノ酸の位置を表す。残基の種類及び数は、言及されるBT061 CDRのアミノ酸残基を明確に同定するために使用される。しかし、残基の数は、本発明の候補抗体又は断片におけるその位置に前記残基が存在すると限定することを意図するものではないことを理解されたい。例えば、この実施形態の抗体において、非必須アミノ酸残基が軽鎖のセクション1〜30から欠失している場合、Ser32は、軽鎖CDR1内の31位に存在してもよい。
【0102】
好ましい実施形態では、BT061軽鎖のCDR1及びCDR2の配列、並びにBT061重鎖のCDR1及びCDR3の配列中のアミノ酸置換は、上記表4及び5に記載されるアミノ酸置換から選択される。より好ましくは、抗体又は抗体断片は、Tyr53又はPhe53を含む軽鎖と、Ser28を含む重鎖とを含む。これに代えて又はこれに加えて、抗体若しくは抗体断片は、Asp64を含有する軽鎖を含む、及び/又は抗体若しくは抗体断片は、相互作用にとって重要であることが実施例1の表8に示されているアミノ酸のうちの少なくとも1つを有する重鎖を含む。具体的には、重鎖は、Asp31及び/又はGlu56を含む。抗体又は抗体断片は、BT061軽鎖のCDR3及び/又はBT061重鎖のCDR2を更に含んでいてもよく、これらCDRの配列中にアミノ酸置換が任意で存在し、前記置換は、表4及び5に記載される置換から選択される。
【0103】
具体的には、BT061抗体によるCD4エピトープの認識及び結合は、3つの相補性決定領域、CDR1、CDR2、及びCDR3の特定の構成及び立体構造に基づいている。CDR4に直接接触するのは軽鎖のCDR1及びCDR2、並びに重鎖のCDR1及びCDR3のみであるにもかかわらず、6つのCDR全てが非常に密に配置されており、互いの立体構造を相互に支持している。結果として、CDRにおける多くの位置では、如何なるアミノ酸置換もBT061の親和性及び効力を著しく低下させてしまう。しかし、幾つかの位置では、置換されても構造が不安定化しない。
【0104】
かかる保存的置換の例を表4及び5に提供する。これら表では、全体の相互作用ネットワークが保存されるように配列変異が選択されている。引力及び反発相互作用のシンタックスが維持される。定向極性相互作用は、反転する場合がある。例えば、水素架橋のドナー−アクセプター対、塩橋のイオン性パートナー、又は双極子−四極子相互作用のパートナーの位置が入れ替わる場合がある。
【0105】
更なる実施形態では、抗体又は抗体断片は、以下の配列(配列番号14)を含み:
【表4】
(「X」と記載されている24〜29位、31位、37位、60位、96〜98位、及び101位のアミノ酸は、表4における対応する位置に示されているアミノ酸から選択される)
更に、以下の配列(配列番号15)を含む。
【表5】
(「X」と記載されている31〜34位、51〜67位、103位、107〜110位、111位、及び112位のアミノ酸は、表5における対応する位置に示されているアミノ酸から選択される)
【0106】
具体的には、BT061の軽鎖のCDR1及びCDR2及び重鎖のCDR3内の特定のアミノ酸モチーフが、CD4の結合にとって重要である。したがって、抗体又は抗体断片は、BT061軽鎖のCDR1に由来するSGYSY(配列番号10)、及び/又はBT061軽鎖のCDR2に由来する配列LASILE(配列番号11)、及び/又はBT061重鎖のCDR3に由来する配列YYRYD(配列番号12)を含んでいてもよい。
【0107】
更に、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な抗体又は抗体断片は、抗体BT061のVドメインと少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%同一であるVドメインを有していてもよく、前記Vドメインは、
(i)軽鎖VドメインのCDR1における配列モチーフSGYSY(配列番号10)、
(ii)軽鎖VドメインのCDR2における配列モチーフLASILE(配列番号11)、及び
(iii)重鎖VドメインのCDR3における配列モチーフSYXRYD(式中、Xは、Y、F、又はHである)(配列番号13)を含むが、
但し、前記抗体又は抗体断片は、抗体BT061のVドメインと100%同一であるVドメインを含まない。
【0108】
本発明の第3の態様の特定の実施形態では、抗体又は抗体断片は、以下の単一アミノ酸置換を含むBT061軽鎖のCDR配列及びBT061重鎖のCDR配列を含むか、
(i)重鎖におけるA63G;
(ii)重鎖におけるR33K;又は
(iii)軽鎖におけるL98I
或いは、前記抗体又は抗体断片は、以下の二重アミノ酸置換を含むBT061軽鎖のCDR配列及びBT061重鎖のCDR配列を含む
(i)重鎖におけるR33K及びA63G;又は
(ii)軽鎖におけるL98I及び重鎖におけるR33K。
【0109】
本発明のこれら特定の実施形態では、抗体又は抗体断片は、BT061の重鎖及び軽鎖の残りの可変ドメイン配列を更に含んでいてもよい。
【0110】
本発明の抗体又はその断片は、具体的には、(国際公開第2004/083247号パンフレットに記載の通り)マウスB−F5抗体及びBT061抗体の可変ドメインをコードすることが知られているポリヌクレオチド配列の突然変異誘発により製造することができる。
【0111】
本発明の第1及び第2の態様に関連して上に記載した抗体及び抗体断片の定義及び好ましい実施形態は、本発明の第3の態様にも当てはまることに留意すべきである。具体的には、前記抗体及び断片は、IgG1抗体が好ましい、及び/又は前記抗体又は抗体断片が、Fc受容体、好ましくはFcγRI(即ち、CD64)に結合可能であるようなFc部分を含むことが好ましい。最も好ましくは、前記抗体又は抗体断片は、IgG1抗体のFc部分を含む。これに加えて又はこれに代えて、前記抗体又は抗体断片は、Fc受容体を介して単球に結合可能である。
【0112】
更に、本発明は、ヒトCD4タンパク質のうちの50未満のアミノ酸を含み、且つヒトCD4の以下の領域:アミノ酸148〜154、アミノ酸164〜168、及びアミノ酸185〜192のうちの1以上を含む単離ペプチドを提供する。前記単離ペプチドは、これら領域のうちの2つを含むことが好ましく、3つを含むことがより好ましい。これに加えて又はこれに代えて、前記単離ペプチドは、30未満のアミノ酸を含み、最も好ましくは、前記単離ペプチドは、20未満のアミノ酸を含む。
【0113】
更に、本発明は、上記単離ペプチドのミモトープペプチドを提供する。
【0114】
また、本発明は、本明細書に記載する抗体又は抗体断片をコードする核酸を含む。前記核酸は、RNAであってもDNAであってもよいが、DNAが好ましく、抗体又は断片のH鎖又はL鎖のVドメインをコードするDNAが最も好ましい。ポリヌクレオチドは、完全なH鎖及びL鎖を発現させるために、ヒトのH鎖又はL鎖の定常領域をコードするポリヌクレオチドと融合させてもよい。
【0115】
また、本発明は、発現カセットを使用し、ここで、上記ポリヌクレオチドは、選択されたホスト細胞における前記ポリヌクレオチドの転写及び翻訳の制御を可能にするために適切な制御配列に連結されている。更なる実施形態は、上記ポリヌクレオチド又は発現カセットを含む組換えベクターである。
【0116】
上記の通り、ポリヌクレオチドは、選択されたホスト細胞における前記ポリヌクレオチドの転写及び翻訳の制御を可能にする適切な制御配列に発現ベクター内で連結していてもよい。これら組換えDNAコンストラクトは、組換えDNA及び遺伝子工学の周知の技術により得ることができ、また、ホスト細胞に導入することができる。
【0117】
有用なホスト細胞は、原核細胞であっても、真核細胞であってもよい。中でも、好適な真核細胞は、植物細胞、サッカロミセス属等の酵母細胞、ショウジョウバエ属又はスポドプテラ属等の昆虫細胞、及びHeLa、CHO、3T3、C127、BHK、COS等の哺乳類細胞である。本明細書に記載する抗体又は断片は、発現に好適な条件下で前記抗体をコードする核酸配列を含む発現ベクターを含有するホスト細胞を培養し、前記ホスト細胞の培養物から前記抗体を回収することにより得ることができる。
【0118】
本発明によれば、ホスト細胞は、本発明の抗体を産生する細胞と骨髄腫細胞とを融合させることにより得られるハイブリドーマであってもよい。
【0119】
前記抗体又は抗体断片は、以下に更に記載する通り医療用途及び非医療用途を有する。
【0120】
医療用途の場合、本明細書に記載する抗体又は抗体断片を医薬組成物に製剤化してもよい。具体的には、本発明の医薬組成物は、抗体又は抗体断片と、薬学的に許容し得る担体又は希釈剤とを含む。
【0121】
更に、前記抗体又は抗体断片は、標識を更に含んでいてもよい。抗体の標識技術は、当技術分野において周知である。したがって、一例としては、GFP又は蛍光色素(例えば、FITC、高性能dyLight)等の蛍光標識、放射性アイソトープ、ビオチン、HRP等で抗体を標識してもよい。
【0122】
抗体及びエピトープの使用
本発明は、更に、本発明の抗体又は抗体断片を用いる治療方法を提供する。前記抗体又は抗体断片は、CD4+CD25+制御性T細胞を選択的に活性化可能であるので、治療法において特定の用途を有する。本発明は、自己免疫疾患若しくは移植拒絶に罹患している被験体を治療する方法、又は被験体が自己免疫疾患若しくは移植拒絶に罹患するのを予防する方法であって、本発明に係る抗体又は抗体断片を前記被験体に投与することを含む方法を提供する。同様に、本発明は、医療、特に、自己免疫疾患又は移植拒絶の治療において使用するための本明細書に記載する抗体又は抗体断片を提供する。したがって、本発明は、自己免疫疾患又は移植拒絶の治療において使用される医薬を製造するための、本明細書に記載する抗体又は抗体断片の使用を提供する。好適な医療用途及び治療方法は、国際公開第2009/112502号パンフレット、国際公開第2009/121690号パンフレット、国際公開第2009/124815号パンフレット、及び国際公開第2010/034590号パンフレットにおいてBT061について記載されているものであり、これらの開示は参照することにより本明細書に援用される。
【0123】
好ましい実施形態では、自己免疫疾患は、乾癬、関節リウマチ、多発性硬化症、I型糖尿病、炎症性腸疾患、クローン病、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎、心筋炎、移植片対宿主反応又は宿主対移植片反応等の移植関連疾患、又は全身性臓器許容に関する問題から選択される。乾癬及び関節リウマチの治療が特に好ましい。
【0124】
本発明は、更に、自己免疫疾患若しくは移植拒絶に罹患している被験体を治療する方法、又は被験体が自己免疫疾患若しくは移植拒絶に罹患するのを予防する方法であって、前記被験体からCD4+CD25+制御性T細胞を含むサンプルを採取し、前記サンプルと本明細書に記載する抗体又は抗体断片とを接触させてCD4+CD25+制御性T細胞を活性化させ、活性化された細胞を前記被験体に投与することを含む方法を提供する。かかる方法は、インビトロにおいてTreg細胞の数を増加させる工程を更に含んでいてもよい。これは、本明細書に記載する増殖ストラテジを用いて行うことができる(Peters et al.,2008)。
【0125】
同様に、本発明は、本発明の抗体又は抗体断片を用いてインビトロで活性化されている活性化型CD4+CD25+制御性T細胞を提供する。これら活性化型制御性T細胞は、医療、特に自己免疫疾患又は移植拒絶の治療において使用することができる。同様に、本発明は、自己免疫疾患又は移植拒絶の治療において使用される医薬を製造するための、本発明の抗体又は抗体断片を用いて活性化されたCD4+CD25+制御性T細胞の使用を提供する。
【0126】
関節リウマチ等の自己免疫疾患の患者のTregは抑制能が低いが、これは、TNFα等の炎症促進性サイトカインに起因している可能性がある。本発明は、自己免疫疾患に罹患しており、且つ(必須ではないが)正常に機能しないTreg集団を有する場合がある患者のTregをスクリーニング、単離、及び/又は活性化する方法を含む。本発明の抗体及びその断片の特異的結合様式により、CD4に結合可能になるだけではなく、より重要なことにTregを活性化することが可能になる。Tregの単離は、本発明のBT061又は抗体若しくは抗体断片を用いて行うことができる。後で活性化工程を行う場合、CD4に対する結合についてBT061と競合しないCD4抗体によってCD4の選択を行わなければならない。或いは、活性化工程前に、増殖ストラテジを含んでいてもよい。
【0127】
本発明では、BT061及び/又は本発明の抗体若しくは抗体断片を用いてTregを単離し、「Treg細胞に基づく免疫療法」において患者に戻してもよい。或いは、患者に筋肉内投与又は皮下投与することにより直接Tregを刺激してもよい。
【0128】
Tregに基づく免疫療法は、自己免疫疾患又は移植における耐容性を誘導するための大きな注目を集めている治療法である。Foxp3の発現を誘導するレチノイン酸の使用、又は抗CD3抗体及び抗CD28抗体による刺激に加えて骨髄由来のDCと共培養する等、インビトロで誘導性Treg(Treg)を生成する幾つかのアプローチが存在する。例えば、国際特許出願第PCT/US2009/054631号は、LAP及びCD121bを用いて自己免疫疾患を治療する(「Tregに基づく免疫療法」)ためのFoxp3 Tregの精製方法について言及している。
【0129】
治療用途には大量のTregが必要であり、また、これら細胞はその制御性表現型を保持していなければならない。現在、これを達成するには、天然のTregを選択するしかない。インビトロ方法によって生成される誘導性Tregは、表現型がエフェクター細胞に戻ってしまう場合があるという問題点を有するので、患者にとって予測不可能なリスクが生じる。
【0130】
しかし、BT061は、混合リンパ球反応においてTregを活性化することが立証されている(国際公開第2009/112502A1号パンフレット)。これは、本明細書に記載するCD4に対する予想外の特異的結合様式によるものである。
【0131】
インビトロにおける用途
本発明の抗体、抗体断片、及び単離ペプチドは、多数のインビトロにおける用途も有する。具体的には、本明細書に記載する抗体又は抗体断片は、インビトロにおいてCD4+CD25+制御性T細胞を活性化するため、又はインビトロにおいてCD4+CD25+制御性T細胞を同定するために用いることができる。
【0132】
より具体的には、本発明の抗体又は抗体断片は、サンプル中のCD4+CD25+制御性T細胞の存在をスクリーニングする方法において用いることができる。かかる方法は、標識抗体又は抗体断片と前記サンプルとを接触させる工程と、前記サンプルを洗浄して、結合していない抗体を除去する工程と、前記サンプル中における前記標識の存在を検出する工程とを含んでいてもよい。
【0133】
具体的には、かかるスクリーニング方法では、CD4+CD25+制御性T細胞は、活性化型CD4+CD25+制御性T細胞である。サンプルは、自己免疫疾患に罹患している被験体から採取した血液サンプルが好ましい。
【0134】
また、本発明は、本明細書に記載する抗体又は抗体断片でコーティングされた磁気ビーズを含むCD4+CD25+制御性T細胞の単離キットについても記載する。前記キットは、更に、第2の抗CD25抗体及び/又は抗CD4+抗体を含んでいてもよい。更なる選択工程、例えば、CD39のポジティブセレクション、CD127のネガティブセレクション、CD19陽性細胞の枯渇等を実施するための更なる抗体を含んでいてもよい。Treg表現型について更に特性評価するために、LAP(潜在関連ペプチド)、GARP、又はCD121b(IL−1 2型受容体)を用いてもよい。
【0135】
Tregの単離後、本発明の抗体又は抗体断片を用いて単離した細胞を凍結保存してもよい(Peters et al.,PLoS One(2008)3;9:e 3161)。
【0136】
更に、本発明は、インビトロにおいてCD4+CD25+制御性T細胞を活性化させる方法であって、前記細胞と本明細書に記載する抗体又は抗体断片とを接触させる工程を含む方法を提供する。活性化型Tregの抑制能を評価する方法は、(上記MLRに加えて)サイトカイン放出を介してエフェクターT細胞の活性化状態を判定するか、又はエフェクターT細胞において活性化マーカーを発現させるMLRアッセイを含む(参照することにより本明細書に援用される国際公開第2009/112592A1号パンフレットに記載されている増殖及びサイトカインアッセイ等)。かかる方法は、CD4+CD25+制御性T細胞を単離する第1の工程を含んでいてもよい。抗体を用いてかかる工程を行う場合、この抗体は、非競合CD4抗体(例えば、OKT4又はSK3)でなければならない。これによって、CD4における異なるエピトープに結合する本発明の抗体又は抗体断片を用いる主な工程において細胞を活性化させることが可能になる。別のシナリオでは、CD25若しくはCD39等の、CD4とは異なるTregの他の表面発現マーカーを用いて、又はCD127を介したネガティブセレクションによって細胞を単離してもよい。
【0137】
本発明の抗体は、Tregを刺激可能であることが既に知られており、これは、エフェクターT細胞との共培養により確認することができる。Tregは、アロ反応性CD8陽性T細胞によるIL−2及びIFNγの産生を阻害することにより、CD8陽性T細胞の増殖を抑制することができる。更に、予め活性化されているCD4+CD25+Tregは、抑制されているCD8+細胞を、再刺激してもCD25を発現できないようにすることが示されている(国際公開第2009/112592号パンフレット)。
【実施例】
【0138】
次に、以下の特定の実施形態に関連して本発明を更に説明する。
【0139】
実施例1 BT061と複合体化しているCD4の結晶構造
X線回折により、BT061 Fab断片と複合体しているヒトCD4の結晶構造を得た。
【0140】
BT061(Fab):CD4の結晶化手順
以下の従来の方法を用いて組換えヒトCD4を生成した:昆虫細胞で異種発現させるために、標準的な手順によりCD4の様々なコンストラクトをベクターにクローニングし、次いで、NiNTAを用いて精製した。プロテアーゼパパインを用いてインタクトな抗体からBT061のFab断片を切り出し、プロテインAにより精製した。次いで、サイズ排除クロマトグラフィーによりFab断片を更に精製した。
【0141】
精製タンパク質とモル過剰のCD4とを混合することによりCD4−Fab複合体を形成し、サイズ排除クロマトグラフィーにより更に精製した。
【0142】
共結晶化方法により、CD4:BT061複合体の結晶を調製した。即ち、約1200の異なる条件を用いた標準的なスクリーニング、及び文献データを用いて同定した結晶化条件の両方を使用する結晶化試験において、前記精製複合体を用いた。標準的なストラテジ、結晶化に重大な影響を与える系統的に変動するパラメータ、例えば、温度、タンパク質濃度、液滴比等を用いて、最初に得られた条件を最適化した。また、pH又は沈殿剤濃度を系統的に変動させることによりこれら条件を精密化した。
【0143】
結晶を急速冷凍し、100Kの温度で測定した。
【0144】
低温条件を用いてSWISS LIGHT SOURCE(SLS,Villigen,Switzerland)でCD4:BT061複合体のX線回折データを収集した。構造を解析し、最終分解能を2.9Aまで精密化した。
【0145】
結晶は、非対称単位において2つの複合体と共に空間群P21に属する。プログラムXDS及びXSCALEを用いてデータを加工した。データ収集統計値を以下の表6に要約する。
【表6】
【0146】
分子置換により、構造を決定及び解析するために必要な位相情報を得た。CD4及びFab断片の公開モデルをサーチモデルとして用いた。
【0147】
次いで、ソフトウェアパッケージCCP4及びCOOTを用い、標準的なプロトコールに従って、モデルの構築及び精密化を行った。(図3に示す通り)非対称単位は、2つのかかる複合体からなり、全体RMS分解能は2.9Åである。
【0148】
結晶構造では、CD4分子にシグナルペプチドは存在せず、ペプチド鎖は、Ig様V型ドメイン、Ig様C2型1ドメイン、及びIg様C2型2ドメインの一部のみを含む。結晶構造中の正確な鎖は、図1に示されている通り、アミノ酸残基26〜258に及ぶ。図1では、結晶構造によって表されないアミノ酸を点線枠で囲む。したがって、CD4分子は、最初の2つのジスルフィド架橋のみを有し、一方は、Cys41とCys109との間、他方は、Cys155とCys184との間に存在する。
【0149】
結晶構造における2つのBT061単位の軽鎖は、図2Aに示されている通り、一方の単位の1位〜215位、及び他方の単位の1位〜182位に及ぶ。BT061の軽鎖には、Cys23−Cys92及びCys138−Cys198の2つのジスルフィド架橋が存在する。
【0150】
結晶構造における2つのBT061単位の重鎖は、図2Bに示されている通り、一方の単位の2位〜219位、及び他方の単位の2位〜220位に及ぶ。BT061の重鎖には2つのジスルフィド架橋が存在し、一方は、Cys22とCys98との間、他方は、Cys151とCys207との間である。
【0151】
結晶構造の解析により、CD4の他の公知のリガンドとは対照的に、BT061の結合にはIg様C2型1ドメインのみが関与していることが示された。これは、付録に示す結晶構造によって表される完全に新規な結合様式を構成している。
【0152】
図3に示す通り、BT061は、CD4のN−末端ドメインには結合しないが、(図4及び5に示す通り)BT061と、クラスII MHC分子又はgp120HIV−1エンベロープタンパク質とが同時に結合する可能性はある。
【0153】
結晶構造を詳細に解析することにより、CD4及びBT061の両方のアミノ酸が相互作用していることが明らかになった。距離の基準に基づいて選択を行った。結晶構造の分解能を考慮して、BT061のアミノ酸の任意の非水素原子の周囲、球半径d=4.5Å以内に非水素原子を有する全てのCD4アミノ酸を相互作用パートナーとして選択した。半径dは、非結合相互作用の典型的な距離3Åに結晶構造分解能2.9Åの半分を加えたものとして選択した(d=3Å+1/2×2.9Å=4.45Å)。
【0154】
したがって、結晶構造は、図7に示す通り、CD4の表面上の結合部位が、7つの保存アミノ酸(Gly148〜Gln154)のクラスタ、6つの保存アミノ酸(Gln64〜Thr168)のクラスタに加えて、Thr185、Leu187、Asn189、Gln190、及びLys192からなることを示す。
【0155】
表7は、CD4とBT061との相互作用パートナーのマトリクスを示す。純粋な1:1の相互作用は僅かしか存在せず、列記したCD4及びBT061のアミノ酸のうちの大部分は、1超のパートナーと相互作用する。この相互作用は、主に水素結合であり、ファンデルワールス力及び極性相互作用により補われる。
【0156】
表7の上段に、BT061のアミノ酸と相互作用するCD4のアミノ酸を示す。左端に、CD4と相互作用するBT061のアミノ酸を示す。各「X」は、少なくとも1つの相互作用に対応する。1:1で相互作用する対は僅かしか存在しないので、複数の列又は行に広がるパターンがみられる。CD4のSer150及びPro151は、BT061の軽鎖及び重鎖の両方と相互作用する。Val186は、BT061重鎖のTyr105の結合ポケットの重要な部分であるが、ここには記載していない。その理由は、BT061のアミノ酸と直接相互作用している訳ではないためである。同定されている相互作用は、全て、水素結合、極性相互作用、ファンデルワールス接触、又はこれらの種類の相互作用の組み合わせのいずれかである。相互作用するアミノ酸の同定は、付録に示す結晶構造に基づいている。他の分子パートナーの非水素原子に対してd=4.5Åよりも近い距離に少なくとも1つの非水素結合を有する全てのアミノ酸を考慮して、距離の基準を適用した。概略を述べると、dは、非共有相互作用の典型的な距離である3Åに結晶構造の全体の分解能(2.9Å)の半分を加えたものに対応する。
【表7】
【0157】
図7は、相対配向の概略図としてBT061の結合部位のCD4アミノ酸を示す。上述の距離の基準を直接満たすアミノ酸に加えて、多数のアミノ酸が、BT061及びCD4の両方の立体構造を少し変化させることによりBT061との更なる相互作用に利用可能になる。これらアミノ酸、Arg156、Gln188、Asn189、Gln190、及びLys192は、CD4のシグナル伝達機序に関与している可能性がある。
【0158】
BT061は、CD4に対して軽鎖及び重鎖の両方で結合する。軽鎖の各アミノ酸を図8に示す。CD4に対する結合に関与している重鎖のアミノ酸を図9に示す。
【0159】
BT061重鎖のTry105は、CD4との相互作用にとって非常に重要な役割を果たす。その側鎖は、CD4の表面上のポケットに完全に適合する(図10)。
【0160】
塩橋は、抗体間の相互作用の典型的な要素であるにも関わらず、結晶構造中にはCD4とBT061との間の塩橋が存在しない。興味深いことに、BT061は、多数の分子内塩橋を示す。これらのうちの1つは、Arg104とAsp106との間に形成され、CD4の表面上のポケットと極性相互作用する(図11)。分子内塩橋の形成は、バッファ活性を有する基質に影響を受ける場合があり、これは、次いで、BT061の立体構造の変化及びCD4との複合体化を誘導することができるので、CD4のシグナル伝達に寄与する。
【0161】
CD4との相互作用にとって非常に重要な他の残基は、BT061軽鎖のTry34である。重鎖のTyr105と同様に、Tyr34はCD4の表面上のポケット内に収容される(図12)。
【0162】
CD4とBT061との複合体の結晶構造を、CD4とクラスII MHC分子との複合体、及びCD4とgp120HIV−1エンベロープタンパク質との複合体の立体構造と比較すると、BT061が、CD4表面の完全に異なる部分に結合していることが直ちに分かる。CD4の他のリガンドに対して、BT061はCD4の細胞外部分の反対側に結合し(図4及び5)、他のリガンドの結合部位には干渉しない。
【0163】
以下の表8に示す通り、BT061の電荷補償アミノ酸との更なる相互作用に、CD4のアミノ酸Lys26、Arg156、Lys161、及びLys192が利用可能である。
【表8】
【0164】
表8の上段に、BT061のアミノ酸と塩橋を形成することができるCD4のアミノ酸を示す。左端に、BT061の塩橋パートナーである可能性のあるアミノ酸を示す。各「X」は、塩橋可能であることを示す。示されている対は、上記d=4.5Åという距離の基準を満たしてはいない。しかし、CD4及びBT061の立体構造を少し変化させることにより、示されている塩橋が形成される場合がある。BT061では、配列のシフトは、軽鎖のSer56〜Gly68、並びに重鎖のSer25〜Cys32、及びSer52〜Gly59に及び、これらはCD4のAsp31及びGlu56と塩橋を形成することができる。
【0165】
実施例2 BT061の突然変異体の作製及び試験
DNA操作及び抗体産生の標準的な技術を用いて、BT061の可変ドメインをコードしているヌクレオチド配列に特定の突然変異を導入し、突然変異型アミノ酸配列、延いては、抗体又は抗体断片を発現させることにより、BT061可変ドメイン突然変異体を製造した。
【0166】
以下のBT061変異体を作製した:
(1)6つのCDR全てにそれぞれ1つずつ突然変異を有する6つの変異体:軽鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3における突然変異は、それぞれG33A、A55G、及びL98Iであり;重鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3における突然変異は、それぞれR33K、A63G、及びS101Tである;
(2)1つの可変ドメインに2つの突然変異を有する1つの変異体:重鎖可変ドメインにおけるR33K及びA63G;
(3)重鎖及び軽鎖の両方の平行突然変異を有する3つの変異体(例えば、(1)に記載の重鎖及び軽鎖の変異体の組み合わせ):軽鎖L98Iと重鎖R33K;軽鎖A55Gと重鎖R33K;及び軽鎖G33Aと重鎖R33K。
【0167】
CD4+CD25+制御性T細胞を活性化させるBT061変異体の能力をインビトロアッセイによって判定した。CD4に結合しない抗体をネガティブコントロールとして用いた。また、このアミノ酸がBT061の結合に重要であると予測された実施例1で得られた結果に基づいて、重鎖CDR3に突然変異(Y105W)を有するBT061変異体もネガティブコントロールとして作製した。ポジティブコントロールとして、軽鎖及び重鎖のマスター配列から産生した抗体、及び臨床試験用に産生されたBT061のサンプルを用いた。
【0168】
インビトロアッセイ:
抗体BT061の変異体による、健常ドナー由来のCD4+CD25+制御性T細胞(Treg)の抑制能の誘導を、アロ反応性混合リンパ球反応(間接的共培養)において評価した。
【0169】
CD4+CD25+制御性T細胞を第1のドナー(ドナーA)から新たに単離した。密度勾配遠心分離により、EDTA−血液からPBMCを得た。既に記載されている通り(Haas et al.,J Immunol.2007 Jul 15;179(2):1322−30)、Treg、レスポンダーT細胞(Tresp)、及びAPCをPBMCから免疫学的に分離した。プレートに結合している抗体と共にTregを2日間プレインキュベートした、又はプレートに結合している抗体無しでTregを2日間プレインキュベートした。既に記載されている通り(Haas et al.,2007)、6色フローサイトメトリーによりTregの数及び表現型を決定した。T細胞が枯渇し且つ照射を受けたPBMC(第1のドナーA)の存在下で、プレインキュベートしたTregをレスポンダーT細胞(第2のドナーB)に移した。刺激後、[3H]チミジンを添加し、5日間後にレスポンダーT細胞の増殖を測定した。
【0170】
結果:
インビトロアッセイの結果を以下の表9に示す。レスポンダーT細胞による阻害率を各変異体につき3回ずつ測定し、平均した。
【表9】
【0171】
予測通り、LCマスターHC Y105Wのノックアウト突然変異体は、CD4には結合せず、制御性T細胞を活性化させることはできなかった。更に、この結果は、重鎖内の単一位置が、少なくとも表5に記載される置換(活性が保持されている単一変異体HC R33K、A63G;及び二重変異体HC R33K及びA63G)に従って突然変異し得ることを示す。更に、結晶構造に関する研究から予測された通り、ループを形成する軽鎖におけるTry34の周囲の残基が、結合にとって重要であると考えられる。
【0172】
付録
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
【表24】
【表25】
【表26】
【表27】
【表28】
【表29】
【表30】
【表31】
【表32】
【表33】
【表34】
【表35】
【表36】
【表37】
【表38】
【表39】
【表40】
【表41】
【表42】
【表43】
【表44】
【表45】
【表46】
【表47】
【表48】
【表49】
【表50】
【表51】
【表52】
【表53】
【表54】
【表55】
【表56】
【表57】
【表58】
【表59】
【表60】
【表61】
【表62】
【表63】
【表64】
【表65】
【表66】
【表67】
【表68】
【表69】
【表70】
【表71】
【表72】
【表73】
【表74】
【表75】
【表76】
【表77】
【表78】
【表79】
【表80】
【表81】
【表82】
【表83】
【表84】
【表85】
【表86】
【表87】
【表88】
【表89】
【表90】
【表91】
【表92】
【表93】
【表94】
【表95】
【表96】
【表97】
【表98】
【表99】
【表100】
【表101】
【表102】
【表103】
【表104】
【表105】
【表106】
【表107】
【表108】
【表109】
【表110】
【表111】
【表112】
【表113】
【表114】
【表115】
【表116】
【表117】
【表118】
【表119】
【表120】
【表121】
【表122】
【表123】
【表124】
【表125】
【表126】
【表127】
【表128】
【表129】
【表130】
【表131】
【表132】
【表133】
【表134】
【表135】
【表136】
【表137】
【表138】
【表139】
【表140】
【表141】
【表142】
【表143】
【表144】
【表145】
【表146】
【表147】
【表148】
【表149】
【表150】
【表151】
【表152】
【表153】
【表154】
【表155】
【表156】
【表157】
【表158】
【表159】
【表160】
【表161】
【表162】
【表163】
【表164】
【表165】
【表166】
【表167】
【表168】
【表169】
【表170】
【表171】
【表172】
【表173】
【表174】
【表175】
【表176】
【表177】
【表178】
【表179】
【表180】
【表181】
【表182】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疾患を治療するための剤、特に、T細胞の表面受容体CD4を通したCD4+CD25+制御性T細胞の活性化を介する治療に関する。本発明は、かかる剤を同定するためのスクリーニング方法、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な剤、疾患、特に自己免疫疾患の治療における前記剤の使用、及びインビトロにおいて実施される方法における前記剤の使用を含む。
【背景技術】
【0002】
T細胞は、リンパ球に属し、免疫系における多数の重要な機能に関与している。哺乳類では、T細胞(胸腺細胞)は、骨髄において形成される造血前駆細胞から、胸腺において分化する。特徴的な表面受容体、主に糖タンパク質CD4及びCD8が発現することが、分化プロセスの一部である。CD4を発現するT細胞、所謂CD4+T細胞は、MHCクラスII複合体に結合するが(非特許文献1及び2)、一方、CD8+T細胞は、MHCクラスI複合体に結合する(非特許文献3)。T細胞は、血液及びリンパ液中に放出される。
【0003】
CD4陽性細胞は、ヘルパーT亜集団(Th1及びTh2)だけではなく、制御性T細胞にも分化することができる。制御性T細胞は、サブクラスに更に分類することができ、胸腺に由来する制御性T細胞(nTreg)、誘導性制御性T細胞(iTreg)が最もよく研究されている。
【0004】
例えば、Tr1又はTh3等の他のTreg亜集団も存在するが、本発明は、CD4陽性胸腺に由来するTreg(nTreg)及び誘導性Tregについて言及する。これらは、両方共転写因子Foxp3を発現する。大きな違いとしては、Foxp3は、nTregにおいて安定的且つ永続的に発現し、これによりTregの不可逆的な表現型が裏付けられるが、誘導性Tregは、誘導性又は一過性のFoxp3発現を示すので、表現型は可逆的である。
【0005】
Tregは、IL−10、TGFβ、又はIL−35等の免疫調節性サイトカインを分泌し、例えば、炎症促進性サイトカインの産生抑制、直接的な細胞接触、及び抗原提示細胞(APC)における活性化状態又は機能の調節等の幾つかの機序を介して、エフェクターT細胞に対する抑制活性を発揮する(非特許文献4)。CD4陽性CD25Treg細胞の主な特徴は、アネルギー性の表現型、即ち、TCRが刺激されても増殖しないことであるが、これは、外因性IL−2の添加により回復させることができる。
【0006】
Tregの重要な役割は、免疫反応及び自己寛容に関連するホメオスタシスの維持を含む。Tregの機能不全は、自己免疫疾患と相関がある。
【0007】
一般的に、制御性T細胞は、表面受容体糖タンパク質であるCD4、CD25を介して単離することができ、FOXP3の細胞内染色を特徴とする。更なる表面タンパク質は、Treg細胞においてダウンレギュレートされるCD127(IL−7R)であり、これは、Tregの更なる精製に用いることができる。更に、CD39(エンドヌクレオチダーゼ)(非特許文献5)又はGARP(glycoprotein A repetitions predominant(GARP又はLRRC32)(非特許文献6)の発現。
【0008】
ヒトCD4は、12番染色体にコードされており、免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーに属する。そのT細胞表面受容体としての自然界における機能は、MHCクラスII複合体の結合によるT細胞の活性化に関する。更に、CD4は、HIV−1gp120タンパク質、P4HB/CDIタンパク質、及びヒトヘルペスウイルスHHV−7カプシドタンパク質に結合することができる。また、HIV−1gp120及びVpuタンパク質との相互作用についても報告されている。CD4は、458アミノ酸を有する。ペプチド配列を図1に示す。
【0009】
UniProt entry P01730は、以下の表1及び図6に示されるCD4のドメイン構造を提供する。最初の25アミノ酸は、シグナルペプチドであり、生物学的に活性のある形態においては切断されている。26位〜396位は、細胞外ドメインを構成し、続く397位〜418位は膜貫通ドメインである。Asn296及びAsn325は、公知のグリコシル化部位である(非特許文献7及び8)。
【0010】
最後の部分である419位〜458位は、細胞質ドメインである。これは、CD4に結合するリガンドにより活性化されるシグナル伝達経路の一部であるチロシンタンパク質キナーゼLCK(p56lck)の結合部位である(非特許文献9及び10)。
【表1】
【0011】
細胞外部分は、4つの免疫グロブリン様ドメインを含む。最初のドメインであるN−末端ドメインは、26位〜125位を含み、Ig様V型ドメインである。抗体に対する相同性に基づいて、前記ドメインは、抗原相補性決定領域であるCD1、CDR2、及びCDR3の3つのホモログを有する(非特許文献11)(図6を参照されたい)。CDR1からCDR2に及ぶ範囲は、クラスII MHC分子(非特許文献12)、gp120HIV−1エンベロープタンパク質(非特許文献13)、及び抗CD4抗体(非特許文献14)の結合に関与している。CDR2のPhe68は、クラスII MHC分子及びgp120HIV−1エンベロープタンパク質の認識及び結合において重要な役割を果たしている(非特許文献15)。CD4の公知のリガンドは全て、N末端のIg様V型ドメインに結合する。
【0012】
制御性T細胞の作用機序は、完全に明らかになっている訳ではない。CD4+CD25+Tregは、ポリクローナル及び抗原特異的なT細胞の活性化を阻害する。この抑制は、例えば、TCRを介したCD4+CD25+Tregの活性化を必要とする細胞接触依存性機序により媒介され得るが、Tregは、TCRの活性化又はマイトジェン抗体による刺激を受けても増殖反応を示さない(アネルギー性)(非特許文献16)。一旦刺激を受けると、Tregは、抗原非依存的にCD4+T細胞及びCD8+T細胞に応答し、更に、B細胞の活性化及びクローン増殖を阻害することができるようになる。
【0013】
CD4+CD25+制御性T細胞は、免疫系の活性に対する制御作用を有するという能力により、免疫系に対する制御を発揮することが望ましい自己免疫疾患等の疾患を治療するための標的候補として認識されている。
【0014】
自己免疫は、自身を構成する部分を(分子以下のレベルまで)「自己」として認識することができない生物の欠陥であり、その結果、自身の細胞及び組織に対しても免疫反応が生じてしまう。かかる異常な免疫反応に起因する任意の疾患を自己免疫疾患と呼ぶ。自己免疫疾患としては、多発性硬化症(MS)、関節リウマチ(RA)、乾癬、乾癬性関節炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、I型真性糖尿病(T1D)、重症筋無力症(MG)、自己免疫多腺性症候群II型(APS−II)、橋本甲状腺炎(HT)、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群、及び自己免疫リンパ増殖症候群(ALS)が挙げられる。
【0015】
自己免疫疾患は、「自己」分子、即ち、ホストの細胞によって産生される分子をT細胞が認識し、反応するときに生じる。抗原提示細胞(APC)により処理される自己抗原の提示により「自己反応性」T細胞が活性化されると、前記T細胞のクローン性増殖及び特定組織への遊走が導かれ、前記特定組織において前記T細胞は、炎症及び組織破壊を誘導する。
【0016】
自己免疫疾患の治療に成功している主な治療戦略は、免疫抑制薬の使用によるこれらエフェクターT細胞機能の抑制である。しかし、これら免疫抑制薬は、選択性が低いので全身において免疫抑制を誘導し、免疫系の有害な機能だけではなく有用な機能までも阻害してしまう。結果として、感染症、癌、及び薬物毒性等の幾つかのリスクが生じる場合がある。
【0017】
一般的に、CD4+T細胞は、自己免疫の開始及び維持において重要な役割を果たしていると認められている。したがって、免疫抑制剤としてCD4+T細胞表面分子に対するmAb、特に抗CD4mAbを使用することが提案されている。多数の臨床試験によって、このアプローチの潜在的重要性が確認されたが、同時に、慣用的な臨床診療における使用により適した抗CD4mAbを作製するために取り組むべき幾つかの課題も浮かび上がった。
【0018】
提案されているCD4mAbの幾つかの異なる作用機序としては、以下が挙げられる:(1)CD4−MHC II相互作用と拮抗してT細胞の活性化を阻害する、(2)CD4の細胞表面発現の減少により測定されるCD4受容体の調節、(3)T細胞受容体の架橋が存在しないとCD4受容体を介したシグナル伝達が部分的にしか生じないので、後のT細胞活性化を抑制し、CD4によるT細胞のアポトーシスを誘発することができる、(4)Fc媒介補体依存性細胞傷害作用(CDC)又は抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)によりCD4 T細胞を枯渇させる、及び(5)制御性T細胞を刺激する。
【0019】
T細胞を標的とする幾つかの抗CD4抗体が、臨床的に開発されており(非特許文献17〜24)、これらは、ほんの僅かなCD4抗体を用いてCD4細胞を枯渇させることを主な目的とする。この作用は、TRX−1、TNX−355、IDEC−151、OKTcdr4A等の他の機序に起因すると考えられる。
【0020】
自己免疫疾患を治療するために制御性T細胞を活性化させることを目的とする剤を使用するアプローチは、極めて困難であることが立証されている。作動性抗CD3抗体OKT−3(非特許文献25)を用いるTCRを介したTregの活性化、又は超作動性抗CD28抗体TGN1412を用いる共刺激分子CD28を介したTregの活性化は、制御性T細胞集団及び他の従来のT細胞を完全に枯渇させると共に、IFN−γ、TNF−α、IL−1、及びIL−2を含む炎症促進性サイトカインを全身誘導し、過剰量を放出させて、ヒトにおいて臨床的に明らかなサイトカイン放出症候群(CRS)を生じさせる(非特許文献26)。
【0021】
しかし、近年、CD4+CD25制御性T細胞を活性化させることができるヒト化抗CD4抗体が報告されている(特許文献1)。特許文献1に記載されている抗体は、非特許文献27に記載されているマウスIgG1抗ヒトCD4抗体であるマウス抗体mB−F5のヒト化バージョンである。mB−F5のエピトープは、ヒトCD4のIg様C2型1及び2型ドメイン、即ち、図6に示されるアミノ酸162からアミノ酸232に及ぶと非特許文献27に報告されている。
【0022】
これら抗体のうちの1つであるBT061と呼ばれる抗体(ヒト化モノクローナルIgG1)を用いたその後の臨床試験において、乾癬及び関節リウマチに罹患している患者の治療に成功したことが報告されており(特許文献2〜5)、これら抗体が、安全に且つ良好な有効性で自己免疫疾患を治療できるという証拠が示された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】国際公開第2004/083247号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2009/112502号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2009/121690号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2009/124815号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2010/034590号パンフレット
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】Reinerz and Schlossman,Cell 19,821−827(1980)
【非特許文献2】Reinerz et al.,PNAS USA 77,1588−1592(1980)
【非特許文献3】Fitch,Microbiol.Rev.50,50−69(1986)
【非特許文献4】Shevach et al.,Immunity(2009)30;636−645
【非特許文献5】Borselino et al.,Blood(2007)110,1225−1232
【非特許文献6】Wang et al.,PNAS(2009)106,32.13439−13444
【非特許文献7】Koenig et al.,J.Biol.Chem.263,9502−9507(1988)
【非特許文献8】Carr et al.,J.Biol.Chem.264,21286−21295(1989)
【非特許文献9】Rudd et al.,PNAS USA 85,5190−5194(1988)
【非特許文献10】Veillette et al.,Cell 55,301(1988)
【非特許文献11】Ashkenazi et al.,PNAS USA 87,7150−7154(1990)
【非特許文献12】Moebius et al.,PNAS USA 89,12008−120012(1992)
【非特許文献13】Moebius et al.,J.Exp.Med.176,507−517(1992)
【非特許文献14】Lanza et al.,PNAS USA 90,11683−11687(1993)
【非特許文献15】Sharma et al.,Biochemistry 44,16192−16202(2005)
【非特許文献16】Shevach,Nature Rev.Immunol 2 :389(2002)
【非特許文献17】Schulze−Koops et al.,J Rheumatol.25(11):2065−76(1998)
【非特許文献18】Mason et al.,J Rheumatol.29(2):220−9(2002)
【非特許文献19】Choy et al.,Rheumatology 39(10):1139−46(2000)
【非特許文献20】Herzyk et al.,Infect Immun.69(2):1032−43(2001)
【非特許文献21】Kon et al.,Eur Respir J.18(1):45−52(2001)
【非特許文献22】Mourad et al.,Transplantation 65(5):632−41(1998)
【非特許文献23】Skov et al.,Arch Dermatol.139(11):1433−9(2003)
【非特許文献24】Jabado et al.,J Immunol.158(1):94−103(1997)
【非特許文献25】Abramowicz et al,N Engl.J Med.1992 Sep 3;327(10):736
【非特許文献26】Suntharalingam et al,N Engl.J Med.2006 Sep 7;355(10):1018−28
【非特許文献27】Racadot et al. Clin.Exp.Rheum.,10,365−374(1992)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
有望な臨床結果が得られたことにより、同様の性質を有する更なる治療剤の開発に対する注目が高まっている。したがって、本発明の目的は、かかる剤を同定するためのスクリーニング方法、及び更なる治療剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
したがって、本発明は、CD4に結合可能な分子をスクリーニングする方法であって、
(a)1以上の候補分子を提供する工程と;
(b)前記1以上の候補分子が、ヒトCD4の以下の領域:アミノ酸148〜154、アミノ酸164〜168、及びアミノ酸185〜192のうちの1以上に結合可能であるかどうかを判定する工程と;
(c)工程(b)においてCD4に結合可能であると判定された分子を選択する工程と
を含む方法を提供する。
【0027】
本発明者らは、予想外にも、ヒト化抗体BT061が、これまでリガンド結合部位として認識されていなかったCD4ドメインに結合することを見出した。この知見は、前記ドメインが、BT061が由来するマウス抗体mB−F5のエピトープとして当技術分野において公知であったことを考慮しても非常に驚くべきことである。また、本発明者らは、CD4分子の結合に関与しているBT061の残基を確定し、驚くべきことに、BT061のCDRの全てがCD4の結合に関与している訳ではないことを見出した。
【0028】
結合領域の同定及び結合機序の詳細により、更なるスクリーニング方法、並びにCD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な抗体及び抗体断片の開発が可能となった。
【0029】
したがって、本発明は、また、CD4に結合可能な抗体又は抗体断片をスクリーニングする方法であって、
(a)BT061軽鎖のCDR1及びCDR2と、BT061重鎖のCDR1及びCDR3とを含む抗体又は抗体断片であって、前記CDRはそれぞれ、その配列中に以下に記載するアミノ酸置換を任意で含んでいてもよいCDRである抗体又はその断片を提供する工程と:
(i)Ser32;Gly33;及びTyr34を含む軽鎖CDR1、
(ii)Leu54;及びIle57を含む軽鎖CDR2、
(iii)Asp31、Glu31、Thr31、Cys31、Pro31、Met31、又はTyr31を含む重鎖CDR1、
(iv)Tyr103、Phe103、又はHis103;Arg104;Tyr105;Asp106;及びTrp110、Phe110、His110、又はTyr110を含む重鎖CDR3、
(b)前記抗体又は抗体断片がCD4に結合可能であるかどうかを判定する工程と、
(c)工程(b)においてCD4に結合可能であると判定された抗体又は抗体断片を選択する工程と
を含み、
前記抗体又は抗体断片が、BT061重鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3、並びにBT061軽鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3を含まない方法を提供する。
【0030】
更に、本発明は、BT061軽鎖のCDR1及びCDR2と、BT061重鎖のCDR1及びCDR3とを含むCD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な抗体又は抗体断片であって、前記CDRはそれぞれ、その配列中に以下に記載するアミノ酸置換を任意で含んでいてもよいCDRであり、
(i)Ser32;Gly33;及びTyr34を含む軽鎖CDR1、
(ii)Leu54;及びIle57を含む軽鎖CDR2、
(iii)Asp31、Glu31、Thr31、Cys31、Pro31、Met31、又はTyr31を含む重鎖CDR1、
(iv)Tyr103、Phe103、又はHis103;Arg104;Tyr105;Asp106;及びTrp110、Phe110、His110、又はTyr110を含む重鎖CDR3、
前記抗体又は抗体断片が、BT061重鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3、並びにBT061軽鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3を含まない抗体又は抗体断片を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
一例として以下の図面を参照して本発明を例証する。
【図1】図1は、ヒトCD4のペプチド配列(配列番号1)及びジスルフィド架橋を示す(UniProt ID P01730)。
【図2A】図2Aは、ヒト化抗体BT061の軽鎖のペプチド配列(配列番号2)を示す。CDRの残基をボックス内に示す(CDR1:配列番号4、CDR2:配列番号5、CDR3:配列番号6)。点線枠で囲まれている残基は、結晶構造によって表されない。
【図2B】図2Bは、ヒト化抗体BT061の重鎖のペプチド配列(配列番号3)を示す。CDRの残基をボックス内に示す(CDR1:配列番号7、CDR2:配列番号8、CDR3:配列番号9)。点線枠で囲まれている残基は、結晶構造によって表されない。
【図3】図3は、CD4−BT061の結晶構造の非対称単位の図を提供する。
【図4】図4は、CD4複合体及びクラスII MHC分子の結晶構造を重ねたCD4−BT061結晶構造の図を提供する(PDBコード 1JL4)。
【図5】図5は、CD4複合体及びgp120HIV−1タンパク質の結晶構造を重ねたCD4−BT061結晶構造の図を提供する(PDBコード 2NY1)。更に、gp120HIV−1タンパク質は、抗体17bに結合している。
【図6】図6は、ヒトCD4のペプチド配列(配列番号1)及びドメイン構造を示す(UniProt ID P01730)。
【図7】図7は、CD4の表面上におけるBT061結合部位の図を提供する。ここに示す全てのアミノ酸は、N−末端のIg様V型ドメインの次に存在するIg様C2型1ドメインの一部である。
【図8】図8は、BT061のアミノ酸軽鎖配列(配列番号2)を提供する。CD4に対する結合に関与しているアミノ酸を、丸みを帯びた枠で囲む。
【図9】図9は、BT061のアミノ酸重鎖配列(配列番号3)を提供する。CD4に対する結合に関与しているアミノ酸を、丸みを帯びた枠で囲む。
【図10】図10は、CD4の表面上におけるBT061結合部位の図を提供する。BT061重鎖のTyr105の結合ポケットを形成するアミノ酸を丸で囲む。
【図11】図11は、CD4の表面上におけるBT061結合部位の図を提供する。BT061重鎖のArg104〜Asp106の結合ポケットを形成するアミノ酸を丸で囲む。
【図12】図12は、CD4の表面上におけるBT061結合部位の図を提供する。BT061軽鎖のTyr34の結合ポケットを形成するアミノ酸を丸で囲む。
【発明を実施するための形態】
【0032】
スクリーニング方法
本発明は、CD4、好ましくはヒトCD4に結合可能な1以上の分子をスクリーニングする方法を提供する。上記の通り、本明細書に提供する情報は、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能である、CD4と抗体BT061との相互作用について説明する。特に、BT−061は、ヘルパーT細胞及び制御性T細胞の両方に結合し、ヘルパーT細胞を活性化することなしに制御性T細胞を選択的に活性化させる。BT061の構造及びBT061がCD4の細胞外ドメインとどのように相互作用しているかを知ることにより、CD4の結合及び制御性T細胞の選択的活性化の観点でBT061と同様の性質を有する剤を設計及び製造する手段を提供できる。
【0033】
第1の態様では、本発明は、CD4に結合可能な分子をスクリーニングする方法であって、(a)1以上の候補分子を提供する工程と、(b)前記1以上の候補分子が、以下のヒトCD4の領域又はアミノ酸:アミノ酸148〜154、アミノ酸164〜168、並びにアミノ酸185、187、189、190、及び192のうちの1以上に結合可能であるかどうかを判定する工程と;(c)工程(b)においてCD4に結合可能であると判定された分子を選択する工程とを含む方法を提供する。より具体的には、前記ヒトCD4の領域は、アミノ酸148〜154、アミノ酸164〜168、及びアミノ酸185〜192である。
【0034】
1つの実施形態では、工程(a)〜(c)をコンピュータシステムで完了することができ、CD4と1以上の候補分子との相互作用は、BT061とヒトCD4との間の相互作用に関して本明細書に提供される情報に基づいてモデル化される。即ち、スクリーニングは、コンピュータ支援分子設計を介して実施される。特に、CD4、特にその細胞外領域の三次元構造モデルは、CD4の少なくとも一部についてのアミノ酸配列の相互作用、及び当業者に公知のソフトウェア、例えば、Discovery Studio(Accelrys(登録商標))又はBenchware 3D Explorer(Tripos)を用いてコンピュータシステムで作成される。更に、これらプログラムによって、1以上の候補分子の配列及び/又は構造情報の入力又はデノボ合成が可能になる。次いで、BT061結合にとって重要であると同定されたCD4の領域に結合する候補分子の能力(これについては以下で更に論じる)について調べることができる。
【0035】
具体的には、CD4に結合可能な分子をスクリーニングする方法は、工程(a)及び(b)を含んでいてもよい:(i)少なくともアミノ酸148〜154、アミノ酸164〜168、並びにアミノ酸185、187、189、190、及び192を含むCD4由来のアミノ酸をコンピュータシステム又はプログラムに入力する工程と;(ii)前記アミノ酸配列によりコードされているポリペプチド又はペプチドの三次元モデルを作成する工程と;(iii)1以上の候補分子の三次元構造を作成又は入力する工程と;(iv)CD4のアミノ酸配列と候補分子のアミノ酸配列との間の相互作用をシミュレーションして、前記候補分子が、アミノ酸148〜154、アミノ酸164〜168、並びにアミノ酸185、187、189、190、及び192を介してCD4に結合可能であるかどうかを判定する工程。
【0036】
候補分子の選択は、下記実施例1に記載するCD4−BT061相互作用の特徴を考慮することにより更に限定することができる。具体的には、候補分子は、塩橋なしにCD4の領域に結合する分子及び/又は以下を含むCD4表面の結合ポケットのうちの1以上に収容される1以上の成分を含む分子に限定することができる:
(i)CD4のアミノ酸残基S152、V153、Q154、Q164、G165、T185、V186、L187、及びK192(図10に示す);
(ii)CD4のアミノ酸残基S150、S152、G165、及びG166(図11に示す);及び/又は
(iii)アミノ酸残基S150、P151、S152、及びK167(図12に示す)。
【0037】
このコンピュータで実行される実施形態の方法は、更に、工程(c)において選択された分子を生成する工程(d)を更に含んでいてもよい。例えば、選択された分子がペプチドである場合、コンピュータを用いて前記ペプチドのアミノ酸配列を入手し、前記ペプチドをインビトロで製造する。その後、前記選択された分子とCD4の関連する領域/アミノ酸を含むペプチド又はポリペプチドとを接触させることにより、又は前記選択された分子とCD4を発現する細胞とを接触させることにより、前記選択された分子の活性をインビトロで評価することができる。これらインビトロにおける工程については、工程(a)〜(c)をインビトロで実施する第1の態様の実施形態に関連して以下で更に説明する。
【0038】
具体的には、上記コンピュータ支援実施形態に代えて、前記スクリーニング方法の工程(a)〜(c)をインビトロで実施してもよく、工程(b)は、1以上の候補分子とCD4の関連する領域/アミノ酸とを接触させ、前記候補分子がこれら領域のうちの1以上に結合可能であるかどうかを判定することを含んでいてもよい。この実施形態の例は、CD4に結合可能な1以上の分子をスクリーニングする方法であって、(a)ヒトCD4の以下の領域:アミノ酸148〜154、アミノ酸164〜168、及びアミノ酸185〜192のうちの1以上を含むペプチドと前記1以上の分子とを接触させる工程と;(b)前記1以上の分子が前記ペプチドの前記1以上の領域に結合するかどうかを判定する工程とを含み、前記分子が、BT061重鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3、並びにBT061軽鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3を含まない方法を含む。
【0039】
本発明の方法は、好ましくは、分子のライブラリをスクリーニングすることを含む。具体的には、前記ライブラリは、当技術分野において公知の方法に従って調製したファージディスプレイライブラリであってよい。前記ライブラリは、多数の異なるアミノ酸/ペプチドの系統的な組み合わせを反映したペプチドライブラリであってもよい。通常、ペプチドライブラリは、平面又はビーズとして作製することができる固相上、多くの場合樹脂上で合成される(固相ペプチド合成)。このライブラリは、タンパク質−タンパク質相互作用、創薬、タンパク質の精製、及び異なる親和性を有する抗体変異体を作製するための抗体認識配列における変異について用いることができる。
【0040】
ファージディスプレイライブラリに加えて、更なるライブラリとしては、酵母ディスプレイ、細菌ディスプレイ、mRNAディスプレイ、リボソーマルディスプレイ、及びポリソーマルディスプレイが挙げられる。リボソーマルディスプレイは、選択工程において固定化リガンドに結合させるために複合体として用いられる、mRNA前駆体に会合している翻訳されたタンパク質を得るプロセスを含む。mRNAディスプレイでは、ピューロマイシンの連結を介して、mRNA前駆体に会合している翻訳されたペプチド又はタンパク質を得る。
【0041】
細菌ディスプレイは、フローサイトメトリー又は反復選択手順(バイオパニング)を用いてスクリーニングすることができる、細菌の表面上にディスプレイされたポリペプチドのライブラリ技術を表す。
【0042】
酵母ディスプレイ(Abbott)技術では、対象タンパク質は、酵母の表面上にAga2pタンパク質との融合物としてディスプレイされる。Aga2pタンパク質は、酵母の細胞接合中に細胞接触を媒介するために、酵母が自然界で用いているタンパク質である。したがって、Aga2pを介するタンパク質のディスプレイでは、細胞表面からタンパク質を突出させて、酵母の細胞壁における他の分子との相互作用の可能性を最小化する。酵母ディスプレイライブラリと、磁気分離及びフローサイトメトリーとの併用は、定向進化を通じて、略全ての受容体に対して高親和性を有するタンパク質リガンドを単離するための非常に有効な方法である。
【0043】
ポリソーマルディスプレイは、細菌のポリソームにディスプレイされる非常に大きなペプチドライブラリを含む(Mattheakis et al.,1994)。MULTIPIN(登録商標)ペプチド技術を用いてライブラリを作製してもよい(Tribbick et al.,J Immunl.Methods(2002)267:27−35)。
【0044】
インビトロにおける接触工程では、ヒトCD4の以下の領域又はアミノ酸(「CD4の関連する領域/アミノ酸」)のうちの1以上を含むペプチド又はポリペプチドと選択された分子又は候補分子とを接触させてもよい:アミノ酸148〜154、アミノ酸164〜168、並びにアミノ酸185、187、189、190、及び192。これらアミノ酸は、図6に示す通り番号付けされている。好ましくは、前記ヒトCD4の領域は、アミノ酸148〜154、アミノ酸164〜168、及びアミノ酸185〜192である。より好ましくは、前記ペプチド又はポリペプチドは、これら領域の全てを含む。更により好ましくは、前記ペプチド又はポリペプチドは、ヒトCD4の以下のアミノ酸のうちの少なくとも1つを更に含む:Lys26、Arg156、Arg159、Lys161、及びLys192。最も好ましくは、前記ペプチド又はポリペプチドは、ヒトCD4のIg様C2−1型ドメイン(即ち、アミノ酸126〜205)を含み、任意でIg様V型ドメインも含む。特に、CD4のD1を利用して、エピトープを安定化させる。したがって、前記ペプチド又はポリペプチドを競合結合アッセイにおいて用いる場合、D1の使用が好ましい。しかし、これら領域から1アミノ酸又は2アミノ酸を除去してもよいことに留意すべきである。ペプチドの長さは、50アミノ酸未満が好ましく、20アミノ酸未満がより好ましい。
【0045】
ペプチドは、例えば、CD4を酵素で切断することにより作製されるペプチド、又はホスト細胞の発現により直接作製されるペプチド等の天然ペプチドであってもよく、合成ペプチドであってもよい。また、ペプチドは、ペグ化、リン酸化、アミド化、アセチル化、ビオチン若しくはFITC等の蛍光色素による標識、又はアイソトープによる標識等を介して修飾されてもよい。「複数の抗原ペプチド適用(Multiple antigen peptide application)」等の技術を用いて更に修飾してもよい。かかる技術を用いて、高力価の抗ペプチド抗体及び合成ペプチドワクチンを生成することができる。このシステムは、リシンのα−アミノ基及びε−アミノ基を利用して、複数のペプチド鎖が結合できる骨格を形成する。リシン力価数に依存して、様々な数のペプチド分岐鎖を合成することができる。これにより、タンパク質担体に抗原をコンジュゲートさせる必要がなくなる(Briand et al.,J Immunol Methods(1992).156;2:pp255−265)。
【0046】
上記の通り、本発明の方法は、ヒトCD4に由来するペプチド配列を用いて実施されることが好ましい。しかし、他の哺乳類のCD4タンパク質の相同領域、又はIg様C2−1型ドメインを含有する他の分子を用いても同様に実施することができる。
【0047】
前記1以上の分子、選択された分子、又は候補分子と、ペプチドとを接触させる工程、及び前記1以上の分子が前記ペプチドの1以上の領域に結合するかどうかを検出する工程は、当技術分野において公知の方法に従って実施することができる。具体的には、本発明の1つの実施形態では、前記ペプチドは、膜にスポット又は固定されている直鎖ペプチドである。接触工程中、CD4ペプチド配列に結合可能な分子が捕捉される。
【0048】
別の実施形態では、野生型ヒトCD4エピトープの立体構造を模倣可能なペプチドを作製する。これは、当技術分野において公知である、構造に基づく分子設計方法によって行うことができる。
【0049】
スクリーニングに用いることができるディスプレイ方法について以下に言及する。
【0050】
直鎖エピトープをスクリーニングするために、エピトープマッピング技術を用いてもよい。標的エピトープの一部を表すアミノ酸配列(例えば、10アミノ酸〜15アミノ酸)であって1アミノ酸が重複しているアミノ酸配列を膜(例えば、セルロース)にスポットする。次いで、スポットされているアミノ酸配列を認識するタンパク質又はペプチドについてスクリーニングすることが可能である。高親和性結合剤を選択するために様々なストリンジェンシーの条件を用いて数ラウンドの選択を行ってもよい。
【0051】
不連続なエピトープについてスクリーニングするために、ファージディスプレイ等の技術が開発されている。現在標準的な直鎖又は環状のペプチドのライブラリは、約109個の独立したクローンという多様性を有する。即ち、理論的には、7つ以下のランダム化された位置を有するライブラリについて、可能な配列レパートリを包括的に網羅することができる。ペプチドとそのmRNAとのカップリングは、RNA/ペプチド/リボソームの小粒子又はmRNA/ペプチド複合体のみを含む無細胞系で達成されるので、インビトロ翻訳系により更に多様性の高いペプチドライブラリが得られる。更なるライブラリとしては、ポリソーマル又はリボソーマルディスプレイ(Mattheakis et al.,PNAS 1994;91(19):9022−6)又はPROフュージョン技術(Roberts and Szostak,PNAS(1997)94(23):12297−302)が挙げられる。後者の技術は、mRNAと、前記mRNAがコードしているペプチド又はタンパク質との間の共有結合による融合を含み、前記ペプチド又はタンパク質は、3’末端にペプチジルアクセプタ抗生物質であるピューロマイシンを有する合成mRNAのインビトロ翻訳により生成することができる。
【0052】
オリゴヌクレオチドライブラリを含有する外面上で発現するスクリーニング用ペプチドを調製することを含むミニ細胞ディスプレイ(米国特許第7,125,679号明細書)も可能である。同様に、細菌の鞭毛タンパク質であるFliC及びチオレドキシンを用いるFlitrix(Invitrogen Corp.)ランダムペプチドライブラリを用いてもよい。
【0053】
更に、上述のディスプレイ方法に加えて、質量分析又は固相エピトープ回収(SPHERE)(Genzyme)を利用してもよい(Lawendowski et al.,J Immunol.,(2002)169:2414−2421)。
【0054】
1つの実施形態では、結合の検出は、X線結晶解析又はNMRを実施することを含む。具体的には、当技術分野において公知であるX線結晶解析法を用いて、塩橋なしにペプチドに結合する分子を選択することができる。
【0055】
これに代えて又はこれに加えて、第1の態様の方法は、選択された分子又は候補分子と、CD4を発現する細胞、特にCD4+CD25+制御性T細胞とを接触させることを含んでいてもよい。特にCD4+CD25+制御性T細胞の活性を調節する、特に活性化させる(好ましくは、ヘルパーT細胞を活性化させることなしにTreg細胞を選択的に活性化させる)選択された分子又は候補分子の能力を判定するか、又は特にPBMC(末梢血単核細胞)のインビトロ培養物における特定のリンパ球集団において、CD4受容体の発現を減少させるか若しくはダウンモジュレートする前記選択された分子又は候補分子の能力を判定するためにこれを行ってもよい。これら実施形態では、選択された分子又は候補分子は、抗体又は抗体断片、特に、以下に更に論じるIgG1型の抗体又は抗体断片であることが好ましい。
【0056】
調節アッセイの場合、Tregは、一般的に、CD25、CD27、CD62L、及び/又はCD127を選別し、更にFoxP3で細胞内を染色するための市販の単離キットを用いて単離することができる(磁気ビーズ単離)。Tregは、CD127陰性であり、CD25及びFoxp3陽性である。細胞表面に結合しているエクトヌクレオチダーゼであるCD39を用いて、強いサプレッサ機能を有するTregを精製することもできる(Mandapathil et al.,J Immunol.Methods(2009).346(1−2),55−63)。市販のキットでは、CD4+のネガティブセレクションと、その後のCD25+のポジティブ単離との組み合わせを用いて、CD4CD25陽性細胞集団を得ることができる。これら細胞を更に処理してもよい。CD25及び転写因子Foxp3は、Tregの抑制機能に関連する発現マーカーである。Foxp3による細胞内染色によって制御性の表現型が確認されるが、細胞内が染色されたことによりその細胞は生存することができなくなり、更に治療に使用することもできない。Foxp3は、活性化Treg/機能的に活性であるTregの細胞内マーカーとして一般的に使用される。
【0057】
更に、BT061及びスクリーニングされる分子は他の市販抗体に結合するエピトープとは異なるエピトープに結合するという事実から、市販の単離キット(磁気ビーズ単離)、及びCD4におけるBT061結合部位と競合しない更に別のCD4抗体(例えば、SK−3 OKT4)を用いてTregを精製し、次いで、候補分子又は選択された分子によるTregの活性化についてアッセイすることができる。
【0058】
Tregを活性化する候補分子の能力は、CD4陽性CD25陰性エフェクターT細胞とTregとを共培養することにより、候補分子と接触させた後、Tregの抑制活性を調べることによりアッセイすることができる。活性化されたTregは、CFSEで標識可能なCD4+CD25−エフェクターT細胞の増殖を阻害することができる(CFSE希釈アッセイを介した細胞増殖の評価)。或いは、エフェクター細胞の増殖は、[3H]チミジンを組み込むことにより判定することもできる。
【0059】
より具体的には、抑制能は、例えば、混合リンパ球反応(MLR)によりアッセイすることができる。エフェクターT細胞の細胞分裂は、Tregの抑制作用により阻害され得る。このために、放射線照射された同種の刺激因子PBMCでナイーブな自己CD4+CD25−レスポンダーT細胞を刺激する。Treg又は従来のT細胞で培養物の量を調節し、チミジンの組み込みにより増殖をアッセイすることができる。
【0060】
また、Tregの活性化は、(国際公開第2008/092905号パンフレットに記載の通り)サイクリックAMP産生の測定を介してアッセイしてもよい。
【0061】
また、共培養物中の活性化Tregにより影響を受けるサイトカインを測定して、エフェクター細胞に対するこれら細胞の活性を判定することもできる。例えば、Tregは、また、IL−2の消費を介してその抑制活性を発揮して、エフェクターT細胞の増殖を阻害する。また、IL−4又はIFNガンマは、共培養アッセイにおいても測定することができ、活性化Tregの場合は減少する。更に、CD25等のエフェクターT細胞における表面活性化マーカーは、Treg細胞が活性化され、抑制活性を発揮したときに減少する。
【0062】
更に、共培養物中の活性化Tregにより誘導されるエフェクター細胞(これもCD4陽性であってよい)における(Bim等の因子を介した)細胞死の判定は、Tregが活性化されるかどうかを調べる更なる方法である(Pandiyan et al.,Nature Immunol.(2007)8 1353−1362)。
【0063】
Tregは血中に少量(2%〜10%)しか存在しないので、幾つかの増殖ストラテジが知られている。例えば、抗CD3でTCRを刺激した後、抗CD28及びラパマイシンで共刺激して、T細胞の数を増加させることができる。ラパマイシンは、Tregの選択的生存を促進するが、エフェクターT細胞の生存は促進しない。
【0064】
幾つかのポリクローナル増殖プロトコールが利用可能である。例えば、CD4/CD25についてポジティブセレクションを行った後、抑制能を保持しながらTreg数を増加させることができるIL−2及び/又はIL−15と組み合わせて(刺激のために)抗CD3及び抗CD28抗体を用いることにより、インビトロでTreg細胞をポリクローナルに増殖させることができる(Earle et al.,Clin.Immunol.(2005)115:3−9)。
【0065】
CD4発現の調節に関して、抗CD4抗体を添加することにより、細胞表面におけるCD4受容体の発現を減少させることができることに留意すべきである。この特徴は、CD4の結合の程度を求めるための有効なアッセイの基礎として用いることができる。具体的には、このアッセイでは、接触工程は、(i)候補分子又は選択された分子とヒトドナーの血液に由来する末梢血単核細胞(PBMC)とを37℃でインキュベートすることと、(ii)CD4の結合についてBT061と競合しない抗CD4標識抗体で前記インキュベートされた細胞を染色することと、(iii)染色の量を検出して、CD4受容体の占有率を求め、それによって細胞表面上に存在するCD4分子の量を求めることとを含む。
【0066】
より具体的には、このアッセイは、ヒトドナーの血液からPBMC(即ち、リンパ球及び単球)を単離し、次いで、これを様々な濃度の候補分子又は選択された分子(好ましくは、抗体又は抗体断片)と共に37℃でインキュベートすることを含む。3時間インキュベートした後、BT061が結合するエピトープとは異なるCD4上のエピトープに結合する蛍光色素で標識された抗体、例えば、フィコエリトリン抗CD4等を添加することにより細胞を染色する。これら染色抗体は、特定のリンパ球集団におけるCD4受容体を標識する。用いられるBT061エピトープ及び蛍光色素で標識されたCD4抗体は、CD4分子上の異なるエピトープを認識するので競合しないため、この技術を用いれば、候補分子又は選択された分子によるCD4の結合とは独立に、細胞表面上のCD4受容体の量を測定することが可能になる。抗体で標識された細胞がレーザービームを通過し刺激される、フローサイトメトリーにおいて測定を実施する。レーザービームにより刺激されると、染色されている細胞は、結合している抗体に比例して蛍光を発し、発せられた光はフローサイトメーターにより捕捉され、次いで、当技術分野において公知であるソフトウェア、例えば、FlowJoソフトウェア(Tree Star,Inc)を用いて評価される。ソフトウェア(Parallel Line Assay software,Stegmann Systems等)を用いて、次いで、並行して測定される標準物質に対するサンプルの相対活性(効力)を計算することができる。
【0067】
本発明のこの態様の更なる実施形態では、接触工程は、CD4ペプチド又はポリペプチド(好ましくは、CD4のD1及びD2を含む)又はCD4を発現する細胞、及び候補分子/選択された分子と、BT061の重鎖及び軽鎖の可変ドメインを有する競合抗体又は抗体断片とを接触させて、候補/選択された分子が前記競合抗体又は抗体断片のCD4に対する結合をブロック可能であるかどうかを判定することを含んでいてもよい。
【0068】
第1の態様における1以上の候補分子は、ペプチドであっても非ペプチドであってもよい。具体的には、前記1以上の分子は、ミモトープ、ペプチド模倣物質、小分子、天然のリポカリン又は改変されたリポカリンに基づく認識タンパク質、オリゴヌクレオチド、siRNA、DARPin、フィブロネクチン、アフィボディ、Kunitz型阻害剤、ペプチドアプタマー、リボザイム、毒素、camelid、抗体、抗体断片、又は抗体由来分子であってもよい。
【0069】
ミモトープは、タンパク質、炭水化物、又は脂質のエピトープを模倣するペプチドであり、ファージディスプレイライブラリによって作製することができる。抗体により選択された場合、ミモトープは、B細胞のエピトープのみを表し、抗原/アレルゲン特異的なT細胞のエピトープを欠いている。担体にカップリングしているか又は複数の抗原ペプチドにおいて提示されている形態のミモトープは、免疫原性を獲得し、ワクチン接種したときにエピトープ特異的な抗体反応を誘導する。
【0070】
ペプチド模倣物質は、ペプチドを模倣するよう設計された小さなペプチド様鎖である。典型的に、分子の性質を変化させるために、既存のペプチドを修飾することにより作製される。例えば、分子の安定性又は生物活性を変化させるための修飾を行うことにより作製することができる。これら修飾は、天然には生じないペプチドの変化を含む(例えば、骨格の変更及び非天然アミノ酸の組み込み)。
【0071】
ペプチド模倣物質の例は、アポトーシスと呼ばれるプログラム細胞死の形態に癌細胞を誘導するために、標的タンパク質に結合させる目的で設計及び合成されたものであった。本質的に、これらは、細胞内のアポトーシス経路を活性化する重要な相互作用を模倣することにより機能する。
【0072】
フォルダマーは、非共有相互作用により安定化されている二次構造に適応する別個の鎖分子又はオリゴマーである(Gellman,Acc.Chem.Res(1998)31(4):173−180;Hill et al.,Chem.Rev.(2001)101(12):3893−4012)。フォルダマーは、へリックス及びβ−シート等の正確に規定されている立体構造に折り畳むタンパク質、核酸、及び多糖類の能力を模倣する人工分子である。フォルダマーは、分子の自己構築、分子の認識、及びホスト−ゲスト化学的性質を含む多数の興味深い超分子的性質を示すことが立証されている。フォルダマーは、生体分子のモデルとして研究され、抗菌活性を示すことが示されている。また、新規機能物質を開発するための重要な用途を有する可能性もある。
【0073】
小分子は、ポリマーの定義には当てはまらない低分子量有機化合物である。小分子の分子量の上限は、約800ダルトンであり、これは、細胞内の作用部位に達することができるように細胞膜を通過して速やかに拡散することが可能な分子量である。小分子は、タンパク質、核酸、又は多糖類等の生体ポリマーに対して高い親和性を示し、更に、生体ポリマーの活性又は機能を変化させる。
【0074】
DARPin(設計アンキリン反復タンパク質)は、抗原又は抗原構造を認識することもできる人工タンパク質である。DARPinは、構造的にアンキリンタンパク質に由来し、約14kDa(166アミノ酸)であり、且つ3つの反復モチーフからなる。DARPinは、抗原に対して抗体と同程度の親和性を示す(Stumpp et al.,Drug Discov.Today(2008)13,Nr.15−16,S.695−701)。
【0075】
アフィボディ(登録商標)分子は、多数の標的タンパク質に対して特異的に結合するよう改変することができる小さく且つロバストな高親和性タンパク質分子である。
【0076】
「camelid」という用語は、ラクダ類により産生され、且つ重鎖ホモダイマーを含む抗体、及びこれら抗体の誘導体を指す(Muyldermans et al.,Veterinary Immunology and Immunopathology,128;1−3;pp.178−183(2009))。
【0077】
候補分子は、抗体又は抗体断片であることが好ましい。語句「抗体、抗体断片、又は抗体由来分子」は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異的抗体、及び抗体断片を網羅する。用語「抗体断片」は、特に、Fab、Fab’、F(ab)’2、Fv、及びscFv断片を含む断片、並びにダイアボディ又はトリボディを含む。これらは、ヒト化抗体又はヒト抗体に基づくことが好ましい。前記抗体は、定常領域/ドメイン、即ち、Fc部分を含むことがより好ましい。抗体がヒト定常領域を含む場合、この定常領域は、IgM、IgG、IgD、IgA、及びIgEを含む任意のクラスの免疫グロブリン、並びにIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含む任意のアイソタイプに由来する定常ドメインの中から選択することができる。好ましい定常領域は、IgG、特にIgG1の定常ドメインの中から選択される。
【0078】
異なるIgサブクラスのFc部分には、個々のサブクラスに対して特異的である細胞内FcRが結合している。異なる親和性でIgGアイソタイプに結合する3つの異なるFcRクラス、CD16、CD32、及びCD64が知られている。単球、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、及び他の細胞等の様々な異なる免疫細胞で多様なパターンのFcγRが発現する。本発明者らは、インビトロにおいて、Fc受容体(FcR)に結合する抗体BT061の定常領域の能力が、T細胞においてCD4をダウンモジュレートする抗体の能力にとって重要であることを見出した。具体的には、インビトロにおける研究は、単球で主に発現しているFcγ受容体であるFcγ1受容体の能力が主に関与しており、PBMCの培養物における単球の存在が、BT061で処理されたT細胞においてCD4をダウンモジュレートするのに必要且つ十分であることを示す。
【0079】
したがって、本発明の実施形態では、候補分子は、Fc受容体、好ましくはFcγRI(即ち、CD64)に結合可能であり、最も好ましくはIgG1抗体のFc部分を含む。これに加えて又はこれに代えて、候補分子は、Fc受容体を介して単球に結合可能である。
【0080】
本発明のこの態様では、スクリーニングされる分子は、BT061重鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3、並びにBT061軽鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む抗体又は抗体断片ではない。これらCDR配列を図2A及び2Bに示す。好ましい実施形態では、スクリーニングされる分子は、Racadot et al.(Clin.Exp.Rheum.,10,365−374(1992))に記載されているマウスB−F5分子ではない。
【0081】
1以上の候補分子が抗体又は抗体断片である本発明の第1の態様の好ましい実施形態では、前記抗体又は抗体断片は、BT061軽鎖のCDR1及びCDR2と、BT061重鎖のCDR1及びCDR3とを含み、前記CDRはそれぞれ、その配列中に以下に記載するアミノ酸置換を任意で含んでいてもよいCDRである:
(i)Ser32;Gly33;及びTyr34を含む軽鎖CDR1、
(ii)Leu54;及びIle57を含む軽鎖CDR2、
(iii)Asp31、Glu31、Thr31、Cys31、Pro31、Met31、又はTyr31を含む重鎖CDR1、
(iv)Tyr103、Phe103、又はHis103;Arg104;Tyr105;Asp106;及びTrp110、Phe110、His110、又はTyr110を含む重鎖CDR3。
【0082】
或いは、候補分子は、BT061のVドメイン(即ち、配列番号2及び配列番号3)の配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%の配列同一性を有するVドメインを含み、且つ軽鎖VドメインのCDR1における配列モチーフSGYSY(配列番号10)、軽鎖VドメインのCDR2における配列モチーフLASILE(配列番号11)、及び重鎖VドメインのCDR3における配列モチーフSYY/F/HRYD(配列番号13)を含む抗体又は抗体断片である。
【0083】
この方法では、スクリーニングされる1以上の分子は、抗体BT061、及び本発明者らがBT061抗体とCD4との相互作用において重要であると同定したBT061内の残基に対する類似性によって規定される候補分子のセットである。具体的には、この方法は、BT061に比べて略同程度又はより優れた結合親和性/特異性、及びTreg活性化活性を有する分子を同定する方法であることが好ましい。
【0084】
ヒト化抗体BT061の軽鎖及び重鎖のペプチド配列を、それぞれ図2A及び2Bに示す。これら図中では、軽鎖及び重鎖のCDRをマークしている。本明細書では、これらCDR内のアミノ酸残基は、残基の種類及び数によって同定されており、前記数は、図2A及び2Bに表されている軽鎖又は重鎖BT061抗体の可変領域内のアミノ酸の位置を表す。残基の種類及び数は、言及されるBT061 CDRのアミノ酸残基を明確に同定するために使用される。しかし、残基の数は、前記方法においてスクリーニングされる候補抗体又は断片におけるその位置に前記残基が存在すると限定することを意図するものではないことを理解されたい。例えば、この実施形態の抗体において、非必須アミノ酸残基が軽鎖のセクション1〜30から欠失している場合、Ser32は、軽鎖CDR1内の31位に存在してもよい。
【0085】
好ましい実施形態では、BT061軽鎖のCDR1及びCDR2の配列、並びにBT061重鎖のCDR1及びCDR3の配列中のアミノ酸置換は、以下の表4及び5に記載されるアミノ酸置換から選択される。より好ましくは、抗体又は抗体断片は、Tyr53又はPhe53を含む軽鎖と、Ser28を含む重鎖とを含む(実施例1の表7に示す通り)。これに代えて又はこれに加えて、抗体若しくは抗体断片は、Asp64を含有する軽鎖を含む、及び/又は抗体若しくは抗体断片は、Asp31及びGlu56のうちの少なくとも1つを有する重鎖を含む(実施例1の表8に示す通り)。抗体又は抗体断片は、BT061軽鎖のCDR3及び/又はBT061重鎖のCDR2を更に含んでいてもよく、これらCDRの配列中にアミノ酸置換が任意で存在し、前記アミノ酸置換は、表4及び5に記載されるアミノ酸置換から選択される。
【0086】
スクリーニング方法で用いるための候補抗体又は抗体断片は、BT061の既知の配列を突然変異させることにより作製することができる。具体的には、突然変異がCDR内に存在する場合、前記突然変異は、上記アミノ酸が確実に保持されるか、又は確実に望ましい置換が行われる標的突然変異であってもよい。
【0087】
スクリーニング方法の工程(a)がインビトロで実施される場合、標的突然変異誘発を用いて、CDR内の規定の位置でアミノ酸交換を生じさせることができる。アミノ酸に対応するDNA配列を知ることにより、様々な望ましいアミノ酸置換を含有する特定の突然変異体のライブラリを作製することができる。スクリーニング方法の工程(a)〜(c)がコンピュータシステムで実施される場合、CD4に関連して上に記載した方法と同様の方法でアミノ酸配列を入力することにより、候補抗体又は抗体断片の三次元構造を作成することができる。
【表2】
【表3】
【0088】
等配電子変異(Isosteric variation)は、立体効果を引き起こさない、即ち、如何なる方法においても抗体の立体構造を変化させない変異である。
【0089】
本発明の第2の態様では、CD4と結合可能な抗体又は抗体断片である候補分子をスクリーニングする方法であって、(a)BT061軽鎖のCDR1及びCDR2と、BT061重鎖のCDR1及びCDR3とを含み、前記CDRはそれぞれ、その配列中に以下に記載するアミノ酸置換を任意で含んでいてもよいCDRである抗体又はその断片を提供する工程と:
(i)Ser32;Gly33;及びTyr34を含む軽鎖CDR1、
(ii)Leu54;及びIle57を含む軽鎖CDR2、
(iii)Asp31、Glu31、Thr31、Cys31、Pro31、Met31、又はTyr31を含む重鎖CDR1、
(iv)Tyr103、Phe103、又はHis103;Arg104;Tyr105;Asp106;及びTrp110、Phe110、His110、又はTyr110を含む重鎖CDR3、
(b)前記抗体又は抗体断片がCD4に結合可能であるかどうかを判定する工程と、(c)工程(b)においてCD4に結合可能であると判定された抗体又は抗体断片を選択する工程と
を含み、
前記抗体又は抗体断片が、BT061重鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3、並びにBT061軽鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3を含まない方法を提供する。
【0090】
1つの実施形態では、本発明の第2の態様に係るスクリーニング方法の工程(a)〜(c)は、本発明の第1の態様に関連して上に記載した方法と同様の方法でコンピュータシステムにおいて実施してもよい。具体的には、BT061とそのCD4エピトープとの相互作用にとって重要な残基において、本明細書に提供される情報に基づいてインシリコで多数のBT061変異体を作製し、これら変異体とCD4との相互作用をシミュレーションすることができる。
【0091】
この実施形態では、前記方法は、更に、候補抗体又は抗体断片とCD4を発現している細胞とを接触させる工程を更に含んでいてもよい。
【0092】
コンピュータシステムで実施する実施形態に代わる実施形態では、本発明の第2の態様に係るスクリーニング方法の工程(a)〜(c)は、インビトロで実施してもよく、工程(b)は、候補抗体又は抗体断片とCD4を発現している細胞とを接触させることを含んでいてもよい。CD4に結合する能力は、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化させる候補の能力に基づいて判定されることが好ましい。
【0093】
具体的には、本発明のこの態様は、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な抗体又は抗体断片をスクリーニングする方法であって、
(a)1以上の抗体又は抗体断片と、CD4+CD25+制御性T細胞とを接触させる工程と、
(b)前記CD4+CD25+制御性T細胞を活性化する前記抗体又は抗体断片の能力を評価する工程と、
(c)前記CD4+CD25+制御性T細胞を活性化する抗体又は抗体断片を同定する工程と
を含み、
前記抗体又は抗体断片が、BT061軽鎖のCDR1及びCDR2と、BT061重鎖のCDR1及びCDR3とを含み、前記CDRはそれぞれ、その配列中に以下に記載するアミノ酸置換を任意で含んでいてもよいCDRであり:
(i)Ser32;Gly33;及びTyr34を含む軽鎖CDR1、
(ii)Leu54;及びIle57を含む軽鎖CDR2、
(iii)Asp31、Glu31、Thr31、Cys31、Pro31、Met31、又はTyr31を含む重鎖CDR1、
(iv)Tyr103、Phe103、又はHis103;Arg104;Tyr105;Asp106;及びTrp110、Phe110、His110、又はTyr110を含む重鎖CDR3、
前記抗体又は抗体断片が、BT061重鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3、並びにBT061軽鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3を含まない方法を提供する。
【0094】
本発明の第1の態様に係るスクリーニング方法に関連して上に提供した実施形態及び好ましい特徴の記載は、本発明の第2の態様に係るスクリーニング方法にも当てはまることに留意すべきである。
【0095】
本発明のこれら両態様は、更に使用したり下流で分析したりするために、選択された分子、特に選択された抗体又は抗体断片の産生を更に含んでいてもよい。
【0096】
したがって、本発明は、更に、前記方法により得ることができる治療組成物を製造する方法を提供する。具体的には、前記方法は、
(a)上記スクリーニング方法に係る方法を用いてCD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能であると判定された分子を選択する工程と、
(b)前記分子を含む治療組成物を製造する工程と
を含む。
【0097】
具体的には、前記治療組成物は、前記分子と、1以上の薬学的に許容し得る担体又は希釈剤とを合わせることにより製造することができる。
【0098】
抗体及び抗体断片
本発明者らの研究により、CD4+CD25+制御性T細胞との相互作用及びCD4+CD25+制御性T細胞の活性化にとって重要であるBT061の特徴を同定することができた。これにより、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能なBT061抗体の特定の突然変異体/変異体が同定された。
【0099】
したがって、第3の態様では、本発明は、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な抗体又は抗体断片であって、BT061軽鎖のCDR1及びCDR2と、BT061重鎖のCDR1及びCDR3とを含み、前記CDRはそれぞれ、その配列中に以下に記載するアミノ酸置換を任意で含んでいてもよいCDRであり:
(i)Ser32;Gly33;及びTyr34を含む軽鎖CDR1、
(ii)Leu54;及びIle57を含む軽鎖CDR2、
(iii)Asp31、Glu31、Thr31、Cys31、Pro31、Met31、又はTyr31を含む重鎖CDR1、
(iv)Tyr103、Phe103、又はHis103;Arg104;Tyr105;Asp106;及びTrp110、Phe110、His110、又はTyr110を含む重鎖CDR3、
BT061重鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3、並びにBT061軽鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3を含まない抗体又は抗体断片を提供する。
【0100】
或いは、第3の態様は、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な抗体又は抗体断片であって、BT061軽鎖のCDR1及びCDR2と、BT061重鎖のCDR1及びCDR3とを含み、前記CDRはそれぞれ、その配列中に以下に記載するアミノ酸置換を任意で含んでいてもよいCDRであり:
(i)Ser32又はPro32;Gly33又はAla33;及びTyr34を含む軽鎖CDR1、
(ii)Leu54、Ile54又はThr54;及びIle57、Leu57;Val57又はThr57を含む軽鎖CDR2、
(iii)Asp31、Glu31、Thr31、Cys31、Pro31、Met31又はTyr31を含む重鎖CDR1、
(iv)Tyr103、Phe103又はHis103;Arg104;Tyr105;Asp106;及びTrp110、Phe110、His110又はTyr110を含む重鎖CDR3、
BT061重鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3、並びにBT061軽鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3を含まない抗体又は抗体断片を提供する。
【0101】
上述の通り、ヒト化抗体BT061の軽鎖及び重鎖のペプチド配列を、それぞれ、図2A及び2Bに示す。これら図中では、軽鎖及び重鎖のCDRをマークしている。上述の通り、これらCDR内のアミノ酸残基は、残基の種類及び数によって同定されており、前記数は、図2A及び2Bに表されている軽鎖又は重鎖BT061抗体の可変領域内のアミノ酸の位置を表す。残基の種類及び数は、言及されるBT061 CDRのアミノ酸残基を明確に同定するために使用される。しかし、残基の数は、本発明の候補抗体又は断片におけるその位置に前記残基が存在すると限定することを意図するものではないことを理解されたい。例えば、この実施形態の抗体において、非必須アミノ酸残基が軽鎖のセクション1〜30から欠失している場合、Ser32は、軽鎖CDR1内の31位に存在してもよい。
【0102】
好ましい実施形態では、BT061軽鎖のCDR1及びCDR2の配列、並びにBT061重鎖のCDR1及びCDR3の配列中のアミノ酸置換は、上記表4及び5に記載されるアミノ酸置換から選択される。より好ましくは、抗体又は抗体断片は、Tyr53又はPhe53を含む軽鎖と、Ser28を含む重鎖とを含む。これに代えて又はこれに加えて、抗体若しくは抗体断片は、Asp64を含有する軽鎖を含む、及び/又は抗体若しくは抗体断片は、相互作用にとって重要であることが実施例1の表8に示されているアミノ酸のうちの少なくとも1つを有する重鎖を含む。具体的には、重鎖は、Asp31及び/又はGlu56を含む。抗体又は抗体断片は、BT061軽鎖のCDR3及び/又はBT061重鎖のCDR2を更に含んでいてもよく、これらCDRの配列中にアミノ酸置換が任意で存在し、前記置換は、表4及び5に記載される置換から選択される。
【0103】
具体的には、BT061抗体によるCD4エピトープの認識及び結合は、3つの相補性決定領域、CDR1、CDR2、及びCDR3の特定の構成及び立体構造に基づいている。CDR4に直接接触するのは軽鎖のCDR1及びCDR2、並びに重鎖のCDR1及びCDR3のみであるにもかかわらず、6つのCDR全てが非常に密に配置されており、互いの立体構造を相互に支持している。結果として、CDRにおける多くの位置では、如何なるアミノ酸置換もBT061の親和性及び効力を著しく低下させてしまう。しかし、幾つかの位置では、置換されても構造が不安定化しない。
【0104】
かかる保存的置換の例を表4及び5に提供する。これら表では、全体の相互作用ネットワークが保存されるように配列変異が選択されている。引力及び反発相互作用のシンタックスが維持される。定向極性相互作用は、反転する場合がある。例えば、水素架橋のドナー−アクセプター対、塩橋のイオン性パートナー、又は双極子−四極子相互作用のパートナーの位置が入れ替わる場合がある。
【0105】
更なる実施形態では、抗体又は抗体断片は、以下の配列(配列番号14)を含み:
【表4】
(「X」と記載されている24〜29位、31位、37位、60位、96〜98位、及び101位のアミノ酸は、表4における対応する位置に示されているアミノ酸から選択される)
更に、以下の配列(配列番号15)を含む。
【表5】
(「X」と記載されている31〜34位、51〜67位、103位、107〜110位、111位、及び112位のアミノ酸は、表5における対応する位置に示されているアミノ酸から選択される)
【0106】
具体的には、BT061の軽鎖のCDR1及びCDR2及び重鎖のCDR3内の特定のアミノ酸モチーフが、CD4の結合にとって重要である。したがって、抗体又は抗体断片は、BT061軽鎖のCDR1に由来するSGYSY(配列番号10)、及び/又はBT061軽鎖のCDR2に由来する配列LASILE(配列番号11)、及び/又はBT061重鎖のCDR3に由来する配列YYRYD(配列番号12)を含んでいてもよい。
【0107】
更に、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な抗体又は抗体断片は、抗体BT061のVドメインと少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%同一であるVドメインを有していてもよく、前記Vドメインは、
(i)軽鎖VドメインのCDR1における配列モチーフSGYSY(配列番号10)、
(ii)軽鎖VドメインのCDR2における配列モチーフLASILE(配列番号11)、及び
(iii)重鎖VドメインのCDR3における配列モチーフSYXRYD(式中、Xは、Y、F、又はHである)(配列番号13)を含むが、
但し、前記抗体又は抗体断片は、抗体BT061のVドメインと100%同一であるVドメインを含まない。
【0108】
本発明の第3の態様の特定の実施形態では、抗体又は抗体断片は、以下の単一アミノ酸置換を含むBT061軽鎖のCDR配列及びBT061重鎖のCDR配列を含むか、
(i)重鎖におけるA63G;
(ii)重鎖におけるR33K;又は
(iii)軽鎖におけるL98I
或いは、前記抗体又は抗体断片は、以下の二重アミノ酸置換を含むBT061軽鎖のCDR配列及びBT061重鎖のCDR配列を含む
(i)重鎖におけるR33K及びA63G;又は
(ii)軽鎖におけるL98I及び重鎖におけるR33K。
【0109】
本発明のこれら特定の実施形態では、抗体又は抗体断片は、BT061の重鎖及び軽鎖の残りの可変ドメイン配列を更に含んでいてもよい。
【0110】
本発明の抗体又はその断片は、具体的には、(国際公開第2004/083247号パンフレットに記載の通り)マウスB−F5抗体及びBT061抗体の可変ドメインをコードすることが知られているポリヌクレオチド配列の突然変異誘発により製造することができる。
【0111】
本発明の第1及び第2の態様に関連して上に記載した抗体及び抗体断片の定義及び好ましい実施形態は、本発明の第3の態様にも当てはまることに留意すべきである。具体的には、前記抗体及び断片は、IgG1抗体が好ましい、及び/又は前記抗体又は抗体断片が、Fc受容体、好ましくはFcγRI(即ち、CD64)に結合可能であるようなFc部分を含むことが好ましい。最も好ましくは、前記抗体又は抗体断片は、IgG1抗体のFc部分を含む。これに加えて又はこれに代えて、前記抗体又は抗体断片は、Fc受容体を介して単球に結合可能である。
【0112】
更に、本発明は、ヒトCD4タンパク質のうちの50未満のアミノ酸を含み、且つヒトCD4の以下の領域:アミノ酸148〜154、アミノ酸164〜168、及びアミノ酸185〜192のうちの1以上を含む単離ペプチドを提供する。前記単離ペプチドは、これら領域のうちの2つを含むことが好ましく、3つを含むことがより好ましい。これに加えて又はこれに代えて、前記単離ペプチドは、30未満のアミノ酸を含み、最も好ましくは、前記単離ペプチドは、20未満のアミノ酸を含む。
【0113】
更に、本発明は、上記単離ペプチドのミモトープペプチドを提供する。
【0114】
また、本発明は、本明細書に記載する抗体又は抗体断片をコードする核酸を含む。前記核酸は、RNAであってもDNAであってもよいが、DNAが好ましく、抗体又は断片のH鎖又はL鎖のVドメインをコードするDNAが最も好ましい。ポリヌクレオチドは、完全なH鎖及びL鎖を発現させるために、ヒトのH鎖又はL鎖の定常領域をコードするポリヌクレオチドと融合させてもよい。
【0115】
また、本発明は、発現カセットを使用し、ここで、上記ポリヌクレオチドは、選択されたホスト細胞における前記ポリヌクレオチドの転写及び翻訳の制御を可能にするために適切な制御配列に連結されている。更なる実施形態は、上記ポリヌクレオチド又は発現カセットを含む組換えベクターである。
【0116】
上記の通り、ポリヌクレオチドは、選択されたホスト細胞における前記ポリヌクレオチドの転写及び翻訳の制御を可能にする適切な制御配列に発現ベクター内で連結していてもよい。これら組換えDNAコンストラクトは、組換えDNA及び遺伝子工学の周知の技術により得ることができ、また、ホスト細胞に導入することができる。
【0117】
有用なホスト細胞は、原核細胞であっても、真核細胞であってもよい。中でも、好適な真核細胞は、植物細胞、サッカロミセス属等の酵母細胞、ショウジョウバエ属又はスポドプテラ属等の昆虫細胞、及びHeLa、CHO、3T3、C127、BHK、COS等の哺乳類細胞である。本明細書に記載する抗体又は断片は、発現に好適な条件下で前記抗体をコードする核酸配列を含む発現ベクターを含有するホスト細胞を培養し、前記ホスト細胞の培養物から前記抗体を回収することにより得ることができる。
【0118】
本発明によれば、ホスト細胞は、本発明の抗体を産生する細胞と骨髄腫細胞とを融合させることにより得られるハイブリドーマであってもよい。
【0119】
前記抗体又は抗体断片は、以下に更に記載する通り医療用途及び非医療用途を有する。
【0120】
医療用途の場合、本明細書に記載する抗体又は抗体断片を医薬組成物に製剤化してもよい。具体的には、本発明の医薬組成物は、抗体又は抗体断片と、薬学的に許容し得る担体又は希釈剤とを含む。
【0121】
更に、前記抗体又は抗体断片は、標識を更に含んでいてもよい。抗体の標識技術は、当技術分野において周知である。したがって、一例としては、GFP又は蛍光色素(例えば、FITC、高性能dyLight)等の蛍光標識、放射性アイソトープ、ビオチン、HRP等で抗体を標識してもよい。
【0122】
抗体及びエピトープの使用
本発明は、更に、本発明の抗体又は抗体断片を用いる治療方法を提供する。前記抗体又は抗体断片は、CD4+CD25+制御性T細胞を選択的に活性化可能であるので、治療法において特定の用途を有する。本発明は、自己免疫疾患若しくは移植拒絶に罹患している被験体を治療する方法、又は被験体が自己免疫疾患若しくは移植拒絶に罹患するのを予防する方法であって、本発明に係る抗体又は抗体断片を前記被験体に投与することを含む方法を提供する。同様に、本発明は、医療、特に、自己免疫疾患又は移植拒絶の治療において使用するための本明細書に記載する抗体又は抗体断片を提供する。したがって、本発明は、自己免疫疾患又は移植拒絶の治療において使用される医薬を製造するための、本明細書に記載する抗体又は抗体断片の使用を提供する。好適な医療用途及び治療方法は、国際公開第2009/112502号パンフレット、国際公開第2009/121690号パンフレット、国際公開第2009/124815号パンフレット、及び国際公開第2010/034590号パンフレットにおいてBT061について記載されているものであり、これらの開示は参照することにより本明細書に援用される。
【0123】
好ましい実施形態では、自己免疫疾患は、乾癬、関節リウマチ、多発性硬化症、I型糖尿病、炎症性腸疾患、クローン病、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎、心筋炎、移植片対宿主反応又は宿主対移植片反応等の移植関連疾患、又は全身性臓器許容に関する問題から選択される。乾癬及び関節リウマチの治療が特に好ましい。
【0124】
本発明は、更に、自己免疫疾患若しくは移植拒絶に罹患している被験体を治療する方法、又は被験体が自己免疫疾患若しくは移植拒絶に罹患するのを予防する方法であって、前記被験体からCD4+CD25+制御性T細胞を含むサンプルを採取し、前記サンプルと本明細書に記載する抗体又は抗体断片とを接触させてCD4+CD25+制御性T細胞を活性化させ、活性化された細胞を前記被験体に投与することを含む方法を提供する。かかる方法は、インビトロにおいてTreg細胞の数を増加させる工程を更に含んでいてもよい。これは、本明細書に記載する増殖ストラテジを用いて行うことができる(Peters et al.,2008)。
【0125】
同様に、本発明は、本発明の抗体又は抗体断片を用いてインビトロで活性化されている活性化型CD4+CD25+制御性T細胞を提供する。これら活性化型制御性T細胞は、医療、特に自己免疫疾患又は移植拒絶の治療において使用することができる。同様に、本発明は、自己免疫疾患又は移植拒絶の治療において使用される医薬を製造するための、本発明の抗体又は抗体断片を用いて活性化されたCD4+CD25+制御性T細胞の使用を提供する。
【0126】
関節リウマチ等の自己免疫疾患の患者のTregは抑制能が低いが、これは、TNFα等の炎症促進性サイトカインに起因している可能性がある。本発明は、自己免疫疾患に罹患しており、且つ(必須ではないが)正常に機能しないTreg集団を有する場合がある患者のTregをスクリーニング、単離、及び/又は活性化する方法を含む。本発明の抗体及びその断片の特異的結合様式により、CD4に結合可能になるだけではなく、より重要なことにTregを活性化することが可能になる。Tregの単離は、本発明のBT061又は抗体若しくは抗体断片を用いて行うことができる。後で活性化工程を行う場合、CD4に対する結合についてBT061と競合しないCD4抗体によってCD4の選択を行わなければならない。或いは、活性化工程前に、増殖ストラテジを含んでいてもよい。
【0127】
本発明では、BT061及び/又は本発明の抗体若しくは抗体断片を用いてTregを単離し、「Treg細胞に基づく免疫療法」において患者に戻してもよい。或いは、患者に筋肉内投与又は皮下投与することにより直接Tregを刺激してもよい。
【0128】
Tregに基づく免疫療法は、自己免疫疾患又は移植における耐容性を誘導するための大きな注目を集めている治療法である。Foxp3の発現を誘導するレチノイン酸の使用、又は抗CD3抗体及び抗CD28抗体による刺激に加えて骨髄由来のDCと共培養する等、インビトロで誘導性Treg(Treg)を生成する幾つかのアプローチが存在する。例えば、国際特許出願第PCT/US2009/054631号は、LAP及びCD121bを用いて自己免疫疾患を治療する(「Tregに基づく免疫療法」)ためのFoxp3 Tregの精製方法について言及している。
【0129】
治療用途には大量のTregが必要であり、また、これら細胞はその制御性表現型を保持していなければならない。現在、これを達成するには、天然のTregを選択するしかない。インビトロ方法によって生成される誘導性Tregは、表現型がエフェクター細胞に戻ってしまう場合があるという問題点を有するので、患者にとって予測不可能なリスクが生じる。
【0130】
しかし、BT061は、混合リンパ球反応においてTregを活性化することが立証されている(国際公開第2009/112502A1号パンフレット)。これは、本明細書に記載するCD4に対する予想外の特異的結合様式によるものである。
【0131】
インビトロにおける用途
本発明の抗体、抗体断片、及び単離ペプチドは、多数のインビトロにおける用途も有する。具体的には、本明細書に記載する抗体又は抗体断片は、インビトロにおいてCD4+CD25+制御性T細胞を活性化するため、又はインビトロにおいてCD4+CD25+制御性T細胞を同定するために用いることができる。
【0132】
より具体的には、本発明の抗体又は抗体断片は、サンプル中のCD4+CD25+制御性T細胞の存在をスクリーニングする方法において用いることができる。かかる方法は、標識抗体又は抗体断片と前記サンプルとを接触させる工程と、前記サンプルを洗浄して、結合していない抗体を除去する工程と、前記サンプル中における前記標識の存在を検出する工程とを含んでいてもよい。
【0133】
具体的には、かかるスクリーニング方法では、CD4+CD25+制御性T細胞は、活性化型CD4+CD25+制御性T細胞である。サンプルは、自己免疫疾患に罹患している被験体から採取した血液サンプルが好ましい。
【0134】
また、本発明は、本明細書に記載する抗体又は抗体断片でコーティングされた磁気ビーズを含むCD4+CD25+制御性T細胞の単離キットについても記載する。前記キットは、更に、第2の抗CD25抗体及び/又は抗CD4+抗体を含んでいてもよい。更なる選択工程、例えば、CD39のポジティブセレクション、CD127のネガティブセレクション、CD19陽性細胞の枯渇等を実施するための更なる抗体を含んでいてもよい。Treg表現型について更に特性評価するために、LAP(潜在関連ペプチド)、GARP、又はCD121b(IL−1 2型受容体)を用いてもよい。
【0135】
Tregの単離後、本発明の抗体又は抗体断片を用いて単離した細胞を凍結保存してもよい(Peters et al.,PLoS One(2008)3;9:e 3161)。
【0136】
更に、本発明は、インビトロにおいてCD4+CD25+制御性T細胞を活性化させる方法であって、前記細胞と本明細書に記載する抗体又は抗体断片とを接触させる工程を含む方法を提供する。活性化型Tregの抑制能を評価する方法は、(上記MLRに加えて)サイトカイン放出を介してエフェクターT細胞の活性化状態を判定するか、又はエフェクターT細胞において活性化マーカーを発現させるMLRアッセイを含む(参照することにより本明細書に援用される国際公開第2009/112592A1号パンフレットに記載されている増殖及びサイトカインアッセイ等)。かかる方法は、CD4+CD25+制御性T細胞を単離する第1の工程を含んでいてもよい。抗体を用いてかかる工程を行う場合、この抗体は、非競合CD4抗体(例えば、OKT4又はSK3)でなければならない。これによって、CD4における異なるエピトープに結合する本発明の抗体又は抗体断片を用いる主な工程において細胞を活性化させることが可能になる。別のシナリオでは、CD25若しくはCD39等の、CD4とは異なるTregの他の表面発現マーカーを用いて、又はCD127を介したネガティブセレクションによって細胞を単離してもよい。
【0137】
本発明の抗体は、Tregを刺激可能であることが既に知られており、これは、エフェクターT細胞との共培養により確認することができる。Tregは、アロ反応性CD8陽性T細胞によるIL−2及びIFNγの産生を阻害することにより、CD8陽性T細胞の増殖を抑制することができる。更に、予め活性化されているCD4+CD25+Tregは、抑制されているCD8+細胞を、再刺激してもCD25を発現できないようにすることが示されている(国際公開第2009/112592号パンフレット)。
【実施例】
【0138】
次に、以下の特定の実施形態に関連して本発明を更に説明する。
【0139】
実施例1 BT061と複合体化しているCD4の結晶構造
X線回折により、BT061 Fab断片と複合体しているヒトCD4の結晶構造を得た。
【0140】
BT061(Fab):CD4の結晶化手順
以下の従来の方法を用いて組換えヒトCD4を生成した:昆虫細胞で異種発現させるために、標準的な手順によりCD4の様々なコンストラクトをベクターにクローニングし、次いで、NiNTAを用いて精製した。プロテアーゼパパインを用いてインタクトな抗体からBT061のFab断片を切り出し、プロテインAにより精製した。次いで、サイズ排除クロマトグラフィーによりFab断片を更に精製した。
【0141】
精製タンパク質とモル過剰のCD4とを混合することによりCD4−Fab複合体を形成し、サイズ排除クロマトグラフィーにより更に精製した。
【0142】
共結晶化方法により、CD4:BT061複合体の結晶を調製した。即ち、約1200の異なる条件を用いた標準的なスクリーニング、及び文献データを用いて同定した結晶化条件の両方を使用する結晶化試験において、前記精製複合体を用いた。標準的なストラテジ、結晶化に重大な影響を与える系統的に変動するパラメータ、例えば、温度、タンパク質濃度、液滴比等を用いて、最初に得られた条件を最適化した。また、pH又は沈殿剤濃度を系統的に変動させることによりこれら条件を精密化した。
【0143】
結晶を急速冷凍し、100Kの温度で測定した。
【0144】
低温条件を用いてSWISS LIGHT SOURCE(SLS,Villigen,Switzerland)でCD4:BT061複合体のX線回折データを収集した。構造を解析し、最終分解能を2.9Aまで精密化した。
【0145】
結晶は、非対称単位において2つの複合体と共に空間群P21に属する。プログラムXDS及びXSCALEを用いてデータを加工した。データ収集統計値を以下の表6に要約する。
【表6】
【0146】
分子置換により、構造を決定及び解析するために必要な位相情報を得た。CD4及びFab断片の公開モデルをサーチモデルとして用いた。
【0147】
次いで、ソフトウェアパッケージCCP4及びCOOTを用い、標準的なプロトコールに従って、モデルの構築及び精密化を行った。(図3に示す通り)非対称単位は、2つのかかる複合体からなり、全体RMS分解能は2.9Åである。
【0148】
結晶構造では、CD4分子にシグナルペプチドは存在せず、ペプチド鎖は、Ig様V型ドメイン、Ig様C2型1ドメイン、及びIg様C2型2ドメインの一部のみを含む。結晶構造中の正確な鎖は、図1に示されている通り、アミノ酸残基26〜258に及ぶ。図1では、結晶構造によって表されないアミノ酸を点線枠で囲む。したがって、CD4分子は、最初の2つのジスルフィド架橋のみを有し、一方は、Cys41とCys109との間、他方は、Cys155とCys184との間に存在する。
【0149】
結晶構造における2つのBT061単位の軽鎖は、図2Aに示されている通り、一方の単位の1位〜215位、及び他方の単位の1位〜182位に及ぶ。BT061の軽鎖には、Cys23−Cys92及びCys138−Cys198の2つのジスルフィド架橋が存在する。
【0150】
結晶構造における2つのBT061単位の重鎖は、図2Bに示されている通り、一方の単位の2位〜219位、及び他方の単位の2位〜220位に及ぶ。BT061の重鎖には2つのジスルフィド架橋が存在し、一方は、Cys22とCys98との間、他方は、Cys151とCys207との間である。
【0151】
結晶構造の解析により、CD4の他の公知のリガンドとは対照的に、BT061の結合にはIg様C2型1ドメインのみが関与していることが示された。これは、付録に示す結晶構造によって表される完全に新規な結合様式を構成している。
【0152】
図3に示す通り、BT061は、CD4のN−末端ドメインには結合しないが、(図4及び5に示す通り)BT061と、クラスII MHC分子又はgp120HIV−1エンベロープタンパク質とが同時に結合する可能性はある。
【0153】
結晶構造を詳細に解析することにより、CD4及びBT061の両方のアミノ酸が相互作用していることが明らかになった。距離の基準に基づいて選択を行った。結晶構造の分解能を考慮して、BT061のアミノ酸の任意の非水素原子の周囲、球半径d=4.5Å以内に非水素原子を有する全てのCD4アミノ酸を相互作用パートナーとして選択した。半径dは、非結合相互作用の典型的な距離3Åに結晶構造分解能2.9Åの半分を加えたものとして選択した(d=3Å+1/2×2.9Å=4.45Å)。
【0154】
したがって、結晶構造は、図7に示す通り、CD4の表面上の結合部位が、7つの保存アミノ酸(Gly148〜Gln154)のクラスタ、6つの保存アミノ酸(Gln64〜Thr168)のクラスタに加えて、Thr185、Leu187、Asn189、Gln190、及びLys192からなることを示す。
【0155】
表7は、CD4とBT061との相互作用パートナーのマトリクスを示す。純粋な1:1の相互作用は僅かしか存在せず、列記したCD4及びBT061のアミノ酸のうちの大部分は、1超のパートナーと相互作用する。この相互作用は、主に水素結合であり、ファンデルワールス力及び極性相互作用により補われる。
【0156】
表7の上段に、BT061のアミノ酸と相互作用するCD4のアミノ酸を示す。左端に、CD4と相互作用するBT061のアミノ酸を示す。各「X」は、少なくとも1つの相互作用に対応する。1:1で相互作用する対は僅かしか存在しないので、複数の列又は行に広がるパターンがみられる。CD4のSer150及びPro151は、BT061の軽鎖及び重鎖の両方と相互作用する。Val186は、BT061重鎖のTyr105の結合ポケットの重要な部分であるが、ここには記載していない。その理由は、BT061のアミノ酸と直接相互作用している訳ではないためである。同定されている相互作用は、全て、水素結合、極性相互作用、ファンデルワールス接触、又はこれらの種類の相互作用の組み合わせのいずれかである。相互作用するアミノ酸の同定は、付録に示す結晶構造に基づいている。他の分子パートナーの非水素原子に対してd=4.5Åよりも近い距離に少なくとも1つの非水素結合を有する全てのアミノ酸を考慮して、距離の基準を適用した。概略を述べると、dは、非共有相互作用の典型的な距離である3Åに結晶構造の全体の分解能(2.9Å)の半分を加えたものに対応する。
【表7】
【0157】
図7は、相対配向の概略図としてBT061の結合部位のCD4アミノ酸を示す。上述の距離の基準を直接満たすアミノ酸に加えて、多数のアミノ酸が、BT061及びCD4の両方の立体構造を少し変化させることによりBT061との更なる相互作用に利用可能になる。これらアミノ酸、Arg156、Gln188、Asn189、Gln190、及びLys192は、CD4のシグナル伝達機序に関与している可能性がある。
【0158】
BT061は、CD4に対して軽鎖及び重鎖の両方で結合する。軽鎖の各アミノ酸を図8に示す。CD4に対する結合に関与している重鎖のアミノ酸を図9に示す。
【0159】
BT061重鎖のTry105は、CD4との相互作用にとって非常に重要な役割を果たす。その側鎖は、CD4の表面上のポケットに完全に適合する(図10)。
【0160】
塩橋は、抗体間の相互作用の典型的な要素であるにも関わらず、結晶構造中にはCD4とBT061との間の塩橋が存在しない。興味深いことに、BT061は、多数の分子内塩橋を示す。これらのうちの1つは、Arg104とAsp106との間に形成され、CD4の表面上のポケットと極性相互作用する(図11)。分子内塩橋の形成は、バッファ活性を有する基質に影響を受ける場合があり、これは、次いで、BT061の立体構造の変化及びCD4との複合体化を誘導することができるので、CD4のシグナル伝達に寄与する。
【0161】
CD4との相互作用にとって非常に重要な他の残基は、BT061軽鎖のTry34である。重鎖のTyr105と同様に、Tyr34はCD4の表面上のポケット内に収容される(図12)。
【0162】
CD4とBT061との複合体の結晶構造を、CD4とクラスII MHC分子との複合体、及びCD4とgp120HIV−1エンベロープタンパク質との複合体の立体構造と比較すると、BT061が、CD4表面の完全に異なる部分に結合していることが直ちに分かる。CD4の他のリガンドに対して、BT061はCD4の細胞外部分の反対側に結合し(図4及び5)、他のリガンドの結合部位には干渉しない。
【0163】
以下の表8に示す通り、BT061の電荷補償アミノ酸との更なる相互作用に、CD4のアミノ酸Lys26、Arg156、Lys161、及びLys192が利用可能である。
【表8】
【0164】
表8の上段に、BT061のアミノ酸と塩橋を形成することができるCD4のアミノ酸を示す。左端に、BT061の塩橋パートナーである可能性のあるアミノ酸を示す。各「X」は、塩橋可能であることを示す。示されている対は、上記d=4.5Åという距離の基準を満たしてはいない。しかし、CD4及びBT061の立体構造を少し変化させることにより、示されている塩橋が形成される場合がある。BT061では、配列のシフトは、軽鎖のSer56〜Gly68、並びに重鎖のSer25〜Cys32、及びSer52〜Gly59に及び、これらはCD4のAsp31及びGlu56と塩橋を形成することができる。
【0165】
実施例2 BT061の突然変異体の作製及び試験
DNA操作及び抗体産生の標準的な技術を用いて、BT061の可変ドメインをコードしているヌクレオチド配列に特定の突然変異を導入し、突然変異型アミノ酸配列、延いては、抗体又は抗体断片を発現させることにより、BT061可変ドメイン突然変異体を製造した。
【0166】
以下のBT061変異体を作製した:
(1)6つのCDR全てにそれぞれ1つずつ突然変異を有する6つの変異体:軽鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3における突然変異は、それぞれG33A、A55G、及びL98Iであり;重鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3における突然変異は、それぞれR33K、A63G、及びS101Tである;
(2)1つの可変ドメインに2つの突然変異を有する1つの変異体:重鎖可変ドメインにおけるR33K及びA63G;
(3)重鎖及び軽鎖の両方の平行突然変異を有する3つの変異体(例えば、(1)に記載の重鎖及び軽鎖の変異体の組み合わせ):軽鎖L98Iと重鎖R33K;軽鎖A55Gと重鎖R33K;及び軽鎖G33Aと重鎖R33K。
【0167】
CD4+CD25+制御性T細胞を活性化させるBT061変異体の能力をインビトロアッセイによって判定した。CD4に結合しない抗体をネガティブコントロールとして用いた。また、このアミノ酸がBT061の結合に重要であると予測された実施例1で得られた結果に基づいて、重鎖CDR3に突然変異(Y105W)を有するBT061変異体もネガティブコントロールとして作製した。ポジティブコントロールとして、軽鎖及び重鎖のマスター配列から産生した抗体、及び臨床試験用に産生されたBT061のサンプルを用いた。
【0168】
インビトロアッセイ:
抗体BT061の変異体による、健常ドナー由来のCD4+CD25+制御性T細胞(Treg)の抑制能の誘導を、アロ反応性混合リンパ球反応(間接的共培養)において評価した。
【0169】
CD4+CD25+制御性T細胞を第1のドナー(ドナーA)から新たに単離した。密度勾配遠心分離により、EDTA−血液からPBMCを得た。既に記載されている通り(Haas et al.,J Immunol.2007 Jul 15;179(2):1322−30)、Treg、レスポンダーT細胞(Tresp)、及びAPCをPBMCから免疫学的に分離した。プレートに結合している抗体と共にTregを2日間プレインキュベートした、又はプレートに結合している抗体無しでTregを2日間プレインキュベートした。既に記載されている通り(Haas et al.,2007)、6色フローサイトメトリーによりTregの数及び表現型を決定した。T細胞が枯渇し且つ照射を受けたPBMC(第1のドナーA)の存在下で、プレインキュベートしたTregをレスポンダーT細胞(第2のドナーB)に移した。刺激後、[3H]チミジンを添加し、5日間後にレスポンダーT細胞の増殖を測定した。
【0170】
結果:
インビトロアッセイの結果を以下の表9に示す。レスポンダーT細胞による阻害率を各変異体につき3回ずつ測定し、平均した。
【表9】
【0171】
予測通り、LCマスターHC Y105Wのノックアウト突然変異体は、CD4には結合せず、制御性T細胞を活性化させることはできなかった。更に、この結果は、重鎖内の単一位置が、少なくとも表5に記載される置換(活性が保持されている単一変異体HC R33K、A63G;及び二重変異体HC R33K及びA63G)に従って突然変異し得ることを示す。更に、結晶構造に関する研究から予測された通り、ループを形成する軽鎖におけるTry34の周囲の残基が、結合にとって重要であると考えられる。
【0172】
付録
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
【表24】
【表25】
【表26】
【表27】
【表28】
【表29】
【表30】
【表31】
【表32】
【表33】
【表34】
【表35】
【表36】
【表37】
【表38】
【表39】
【表40】
【表41】
【表42】
【表43】
【表44】
【表45】
【表46】
【表47】
【表48】
【表49】
【表50】
【表51】
【表52】
【表53】
【表54】
【表55】
【表56】
【表57】
【表58】
【表59】
【表60】
【表61】
【表62】
【表63】
【表64】
【表65】
【表66】
【表67】
【表68】
【表69】
【表70】
【表71】
【表72】
【表73】
【表74】
【表75】
【表76】
【表77】
【表78】
【表79】
【表80】
【表81】
【表82】
【表83】
【表84】
【表85】
【表86】
【表87】
【表88】
【表89】
【表90】
【表91】
【表92】
【表93】
【表94】
【表95】
【表96】
【表97】
【表98】
【表99】
【表100】
【表101】
【表102】
【表103】
【表104】
【表105】
【表106】
【表107】
【表108】
【表109】
【表110】
【表111】
【表112】
【表113】
【表114】
【表115】
【表116】
【表117】
【表118】
【表119】
【表120】
【表121】
【表122】
【表123】
【表124】
【表125】
【表126】
【表127】
【表128】
【表129】
【表130】
【表131】
【表132】
【表133】
【表134】
【表135】
【表136】
【表137】
【表138】
【表139】
【表140】
【表141】
【表142】
【表143】
【表144】
【表145】
【表146】
【表147】
【表148】
【表149】
【表150】
【表151】
【表152】
【表153】
【表154】
【表155】
【表156】
【表157】
【表158】
【表159】
【表160】
【表161】
【表162】
【表163】
【表164】
【表165】
【表166】
【表167】
【表168】
【表169】
【表170】
【表171】
【表172】
【表173】
【表174】
【表175】
【表176】
【表177】
【表178】
【表179】
【表180】
【表181】
【表182】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD4に結合可能な分子をスクリーニングする方法であって、
(a)1以上の候補分子を提供する工程と;
(b)前記1以上の候補分子が、ヒトCD4の以下の領域:アミノ酸148〜154、アミノ酸164〜168、及びアミノ酸185〜192のうちの1以上に結合可能であるかどうかを判定する工程と;
(c)工程(b)においてCD4に結合可能であると判定された分子を選択する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
工程(b)が、1以上の候補分子がヒトCD4の以下のアミノ酸:26、156、159、及び161のうちの少なくとも1つに結合するかどうかを判定することを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(b)が、1以上の候補分子が塩橋なしにCD4に結合可能であるかどうかを判定することを含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
1以上の候補分子が、抗体、抗体由来分子、ペプチド、オリゴヌクレオチド、siRNA、ミモトープ、ペプチド模倣物質、フォルダマー、小分子、天然のリポカリン又は改変されたリポカリンに基づく認識タンパク質、DARPin、フィブロネクチン、アフィボディ、Kunitz型阻害剤、ペプチドアプタマー、リボザイム、又は毒素である請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
抗体が、ヒト化抗体又はラクダ抗体である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
1以上の候補分子が、BT061軽鎖のCDR1及びCDR2と、BT061重鎖のCDR1及びCDR3とを含む抗体又は抗体断片であって、前記CDRはそれぞれ、その配列中に以下に記載するアミノ酸置換を任意で含んでいてもよいCDRである請求項1から5のいずれかに記載の方法:
(i)Ser32;Gly33;及びTyr34を含む軽鎖CDR1、
(ii)Leu54;及びIle57を含む軽鎖CDR2、
(iii)Asp31、Glu31、Thr31、Cys31、Pro31、Met31、又はTyr31を含む重鎖CDR1、
(iv)Tyr103、Phe103、又はHis103;Arg104;Tyr105;Asp106;及びTrp110、Phe110、His110、又はTyr110を含む重鎖CDR3。
【請求項7】
BT061軽鎖のCDR1及びCDR2の配列、並びにBT061重鎖のCDR1及びCDR3の配列中のアミノ酸置換が、表4及び5に記載されるアミノ酸置換から選択される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
抗体又は抗体断片が、Tyr53又はPhe53を含む軽鎖と、Ser28を含む重鎖とを含む請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
抗体又は抗体断片が、Asp64を含む軽鎖を含む、
抗体又は抗体断片が、Glu56を含む重鎖を含む、又は
抗体又は抗体断片が、Asp64を含む軽鎖を含み且つGlu56を含む重鎖を含む請求項6から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
抗体又は抗体断片が、BT061軽鎖のCDR3及びBT061重鎖のCDR2の少なくともいずれかを更に含み、これらCDRの配列中にアミノ酸置換が任意で存在し、前記アミノ酸置換が、表4及び5に記載されるアミノ酸置換から選択される請求項6から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
工程(a)〜(c)が、コンピュータシステムで実施される請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
工程(c)で選択された分子を産生する工程(d)を更に含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程(d)で産生された分子とCD4+細胞とをインビトロで接触させるか、又は工程(d)で産生された分子とヒトCD4の以下の領域:アミノ酸148〜154、アミノ酸164〜168、及びアミノ酸185〜192のうちの1以上を含むペプチド又はポリペプチドとをインビトロで接触させる工程(e)を更に含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程(e)が、
(i)工程(d)で産生された分子が、ヒトCD4の以下の領域:アミノ酸148〜154、アミノ酸164〜168、及びアミノ酸185〜192のうちの1以上を含むペプチドと結合するかどうか、
(ii)工程(d)で産生された分子が、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化させるかどうか、及び
(iii)工程(d)で産生された分子が、CD4発現細胞におけるCD4受容体の発現を低下させるかどうか
の少なくともいずれかを判定することを含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程(a)〜(c)が、インビトロで実施され、工程(b)が、1以上の候補分子と、ヒトCD4の以下の領域:アミノ酸148〜154、アミノ酸164〜168、及びアミノ酸185〜192のうちの1以上を含むペプチド又はポリペプチドとを接触させることを含む請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
1以上の候補分子が、分子のライブラリである請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ライブラリが、ファージディスプレイライブラリである請求項16に記載の方法。
【請求項18】
判定工程が、X線結晶解析又はNMRを実施すること、及び塩橋なしにペプチド又はポリペプチドに結合する分子を選択することを含む請求項14から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
CD4+CD25+制御性T細胞を活性化する能力について、工程(c)で選択された分子をスクリーニングする工程(d)、及び
CD4発現細胞におけるCD4受容体の発現を低下させる能力について、工程(c)で選択された分子をスクリーニングする工程(e)
の少なくともいずれかを更に含む請求項15から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
ペプチド又はポリペプチドが、膜若しくはこれと等価な好適な表面に固定されるか、又は磁気ビーズにカップリングされる請求項13から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
ペプチド又はポリペプチドが、ヒトCD4のIg様C2型1ドメインを含むか、又はヒトCD4のIg様V型ドメイン及びIg様C2型1ドメインを含む請求項13から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
ペプチド又はポリペプチドが、野生型ヒトCD4エピトープの立体構造を模倣する請求項13から21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
接触工程が、ペプチド及び分子と、BT061の重鎖及び軽鎖の可変ドメインを有する競合抗体又は抗体断片とを接触させて、候補分子又は選択された分子が、前記ペプチド又はポリペプチドの領域に対する前記競合抗体又は抗体断片の結合をブロック可能であるかどうかを判定することを含む請求項14から22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
(a)請求項14又は19に記載の方法を用いてCD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能であると判定された分子を選択する工程と、
(b)前記選択された分子を含む治療組成物を製造する工程と
を含むことを特徴とする治療組成物を製造する方法。
【請求項25】
分子が、BT061重鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3、並びにBT061軽鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3を含まないことを特徴とする請求項24に記載の方法によって得ることができる治療組成物。
【請求項26】
CD4に結合可能な抗体又は抗体断片をスクリーニングする方法であって、
(a)BT061軽鎖のCDR1及びCDR2と、BT061重鎖のCDR1及びCDR3とを含む抗体又は抗体断片であって、前記CDRはそれぞれ、その配列中に以下に記載するアミノ酸置換を任意で含んでいてもよいCDRである抗体又は抗体断片を提供する工程と:
(i)Ser32;Gly33;及びTyr34を含む軽鎖CDR1、
(ii)Leu54;及びIle57を含む軽鎖CDR2、
(iii)Asp31、Glu31、Thr31、Cys31、Pro31、Met31、又はTyr31を含む重鎖CDR1、
(iv)Tyr103、Phe103、又はHis103;Arg104;Tyr105;Asp106;及びTrp110、Phe110、His110、又はTyr110を含む重鎖CDR3、
(b)前記抗体又は抗体断片がCD4に結合可能であるかどうかを判定する工程と、
(c)工程(b)においてCD4に結合可能であると判定された抗体又は抗体断片を選択する工程と
を含み、
前記抗体又は抗体断片が、BT061重鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3、並びにBT061軽鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3を含まないことを特徴とする方法。
【請求項27】
BT061軽鎖のCDR1及びCDR2の配列、並びにBT061重鎖のCDR1及びCDR3の配列中のアミノ酸置換が、表4及び5に記載されるアミノ酸置換から選択される請求項26に記載の方法。
【請求項28】
抗体又は抗体断片が、Tyr53又はPhe53を含む軽鎖と、Ser28を含む重鎖とを含む請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
抗体又は抗体断片が、Asp64を含む軽鎖を含む、
抗体又は抗体断片が、Glu56を含む重鎖を含む、又は
抗体又は抗体断片が、Asp64を含む軽鎖を含み且つGlu56を含む重鎖を含む請求項26から28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
抗体又は抗体断片が、BT061軽鎖のCDR3及びBT061重鎖のCDR2の少なくともいずれかを更に含み、これらCDRの配列中にアミノ酸置換が任意で存在し、前記アミノ酸置換が、表4及び5に記載されるアミノ酸置換から選択される請求項26から29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
工程(a)〜(c)が、コンピュータシステムで実施される請求項26から30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
工程(c)で選択された抗体又は抗体断片を産生する工程(d)を更に含む請求項31に記載の方法。
【請求項33】
(i)工程(d)で産生された抗体又は抗体断片が、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化させるかどうか、
(ii)工程(d)で産生された抗体又は抗体断片が、ヒトCD4の以下の領域:アミノ酸148〜154、アミノ酸164〜168、及びアミノ酸185〜192のうちの1以上と結合するかどうか、並びに
(iii)工程(d)で産生された抗体又は抗体断片が、CD4発現細胞におけるCD4の発現をダウンレギュレートするかどうか
の少なくともいずれかを判定することを更に含む請求項32に記載の方法。
【請求項34】
工程(a)〜(c)が、インビトロで実施される請求項26から31のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
工程(b)が、
(i)抗体又は抗体断片が、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化させるかどうか、
(ii)抗体又は抗体断片が、ヒトCD4の以下の領域:アミノ酸148〜154、アミノ酸164〜168、及びアミノ酸185〜192のうちの1以上と結合するかどうか、並びに
(iii)抗体又は抗体断片が、CD4発現細胞におけるCD4の発現をダウンレギュレートするかどうか
の少なくともいずれかを判定することを含む請求項34に記載の方法。
【請求項36】
CD4発現細胞が、PBMCである請求項14、19、33、及び35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
(a)請求項33又は35に従って、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能であると同定された抗体又は抗体断片を選択する工程と、
(b)選択された分子を含む治療組成物を製造する工程と
を含むことを特徴とする治療組成物を製造する方法。
【請求項38】
請求項37に記載の方法によって得ることができることを特徴とする治療組成物。
【請求項39】
CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な抗体又は抗体断片であって、BT061軽鎖のCDR1及びCDR2とBT061重鎖のCDR1及びCDR3とを含み、前記CDRはそれぞれ、その配列中に以下に記載するアミノ酸置換を任意で含んでいてもよいCDRであり、
(i)Ser32;Gly33;及びTyr34を含む軽鎖CDR1、
(ii)Leu54;及びIle57を含む軽鎖CDR2、
(iii)Asp31、Glu31、Thr31、Cys31、Pro31、Met31、又はTyr31を含む重鎖CDR1、
(iv)Tyr103、Phe103、又はHis103;Arg104;Tyr105;Asp106;及びTrp110、Phe110、His110、又はTyr110を含む重鎖CDR3、
前記抗体又は抗体断片が、BT061重鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3、並びにBT061軽鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3を含まないことを特徴とする抗体又は抗体断片。
【請求項40】
以下の配列を含み:
【表1】
(24〜29位、31位、37位、60位、96〜98位、及び101位のアミノ酸は、表4における対応する位置に示されているアミノ酸から選択される)
更に、以下の配列を含む請求項39に記載の抗体又は抗体断片
【表2】
(31〜34位、51〜67位、103位、107〜110位、111位、及び112位のアミノ酸は、表5における対応する位置に示されているアミノ酸から選択される)。
【請求項41】
BT061軽鎖のCDR1に由来する配列SGYSY、BT061軽鎖のCDR2に由来する配列LASILE、及びBT061重鎖のCDR3に由来する配列YYRYDの少なくともいずれかを含む請求項39に記載の抗体又は抗体断片。
【請求項42】
CDRの配列中のアミノ酸置換が、等配電子変異である請求項39に記載の抗体又は抗体断片。
【請求項43】
CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な抗体又は抗体断片であって、抗体BT061のVドメインと少なくとも80%同一であるVドメインを含み、前記Vドメインが、
(i)軽鎖VドメインのCDR1における配列モチーフSGYSY、
(ii)軽鎖VドメインのCDR2における配列モチーフLASILE、及び
(iii)重鎖VドメインのCDR3における配列モチーフSYXRYD(式中、Xは、Y、F、又はHである)を含むが、
但し、前記抗体又は抗体断片は、抗体BT061のVドメインと100%同一であるVドメインを含まないことを特徴とする抗体又は抗体断片。
【請求項44】
BT061軽鎖のCDR1及びCDR2、並びにBT061重鎖のCDR1及びCDR3の少なくともいずれかの配列中のアミノ酸置換が、表4及び5に記載されるアミノ酸置換から選択される請求項39に記載の抗体又は抗体断片。
【請求項45】
抗体又は抗体断片が、Tyr53又はPhe53を含む軽鎖、及びSer28を含む重鎖の少なくともいずれかを含む請求項39又は44に記載の抗体又は抗体断片。
【請求項46】
抗体又は抗体断片が、Asp64を含有する軽鎖を含む請求項39、44、及び45のいずれかに記載の抗体又は抗体断片。
【請求項47】
抗体又は抗体断片が、Glu56を含有する重鎖を含む請求項39及び44から46のいずれかに記載の抗体又は抗体断片。
【請求項48】
抗体又は抗体断片が、BT061軽鎖のCDR3及びBT061重鎖のCDR2の少なくともいずれかを更に含み、これらCDRの配列中にアミノ酸置換が任意で存在し、前記アミノ酸置換が、表4及び5に記載されるアミノ酸置換から選択される請求項39及び44から47のいずれかに記載の抗体又は抗体断片。
【請求項49】
以下の単一アミノ酸置換を含むBT061軽鎖のCDR配列及びBT061重鎖のCDR配列を含む請求項39及び44から48のいずれかに記載の抗体又は抗体断片:
(i)重鎖におけるA63G;
(ii)重鎖におけるR33K;又は
(iii)軽鎖におけるL98I。
【請求項50】
以下の二重アミノ酸置換を含むBT061軽鎖のCDR配列及びBT061重鎖のCDR配列を含む請求項39及び44から48のいずれかに記載の抗体又は抗体断片:
(iv)重鎖におけるR33K及びA63G;又は
(v)軽鎖におけるL98I及び重鎖におけるR33K。
【請求項51】
BT061の残りの可変ドメイン配列を更に含む請求項49及び50のいずれかに記載の抗体又は抗体断片。
【請求項52】
CD64に結合可能なFc受容体を更に含む請求項39から51のいずれかに記載の抗体又は抗体断片。
【請求項53】
抗体が、IgG抗体である請求項39から52のいずれかに記載の抗体。
【請求項54】
ヒトCD4タンパク質のうちの50未満のアミノ酸を含み、且つヒトCD4の以下の領域:アミノ酸148〜154、アミノ酸164〜168、及びアミノ酸185〜192のうちの2つ又は3つを含むことを特徴とする単離ペプチド。
【請求項55】
ヒトCD4タンパク質のうちの20未満のアミノ酸を含み、且つヒトCD4の以下の領域:アミノ酸148〜154、アミノ酸164〜168、及びアミノ酸185〜192のうちの1以上を含むことを特徴とする単離ペプチド。
【請求項56】
ヒトCD4タンパク質のうちの50未満のアミノ酸を含み、且つヒトCD4の以下の領域:アミノ酸148〜154、アミノ酸164〜168、及びアミノ酸185〜192のうちの1以上を含むことを特徴とする単離ペプチドのミモトープ。
【請求項57】
請求項39から53のいずれかに記載の抗体又は抗体断片をコードしていることを特徴とする核酸。
【請求項58】
請求項57に記載の核酸を含むことを特徴とするベクター。
【請求項59】
請求項57に記載の核酸又は請求項58に記載のベクターを含むことを特徴とするホスト細胞又はハイブリドーマ。
【請求項60】
請求項39から53のいずれかに記載の抗体又は抗体断片を産生する方法であって、前記抗体又は抗体断片を発現させる条件下で培養培地中にて請求項60に記載のホスト細胞を培養し、前記培養培地から前記抗体又は抗体断片を分離する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項61】
請求項39から53のいずれかに記載の抗体又は抗体断片を含み、薬学的に許容し得る担体を更に含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項62】
標識を更に含む請求項39から53のいずれかに記載の抗体又は抗体断片。
【請求項63】
CD4+CD25+制御性T細胞を活性化させるためのインビトロにおける方法であって、前記CD4+CD25+制御性T細胞と請求項39から53のいずれかに記載の抗体又は抗体断片とを接触させることを含むことを特徴とする方法。
【請求項64】
自己免疫疾患若しくは移植拒絶に罹患している被験体を治療する方法、又は被験体が自己免疫疾患若しくは移植拒絶に罹患するのを予防する方法であって、請求項39から53のいずれかに記載の抗体又は抗体断片を前記被験体に投与することを含むことを特徴とする方法。
【請求項65】
医療において使用するための請求項39から53のいずれかに記載の抗体又は抗体断片。
【請求項66】
使用が、自己免疫疾患又は移植拒絶の治療である請求項65に記載の医療において使用するための抗体又は抗体断片。
【請求項67】
自己免疫疾患又は移植拒絶を治療する医薬を製造するための請求項65に記載の抗体又は抗体断片の使用。
【請求項68】
インビトロにおいてCD4+CD25+制御性T細胞を活性化させるための請求項39から53のいずれかに記載の抗体又は抗体断片の使用。
【請求項69】
インビトロにおいてCD4+CD25+制御性T細胞を同定するための請求項39から53のいずれかに記載の抗体又は抗体断片の使用。
【請求項70】
CD4に結合可能な分子のスクリーニング及びCD4+CD25+制御性T細胞の活性化の少なくともいずれかを行うための請求項54若しくは55に記載の単離ペプチド又は請求項56に記載のミモトープの使用。
【請求項71】
サンプル中のCD4+CD25+制御性T細胞の存在をスクリーニングする方法であって、請求項62に記載の標識抗体又は標識抗体断片と前記サンプルとを接触させ、前記サンプルを洗浄して結合していない抗体を除去し、前記サンプル中の前記標識の存在を検出する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項72】
CD4+CD25+制御性T細胞が活性化されている請求項71に記載のスクリーニング方法。
【請求項73】
サンプルが、自己免疫疾患又は移植拒絶に罹患している被験体から採取された生体サンプルである請求項71又は72に記載のスクリーニング方法。
【請求項74】
自己免疫疾患若しくは移植拒絶に罹患している被験体を治療する方法、又は被験体が自己免疫疾患若しくは移植拒絶に罹患するのを予防する方法であって、前記被験体からCD4+CD25+制御性T細胞を含むサンプルを採取する工程と、請求項39から53のいずれかに記載の抗体又は抗体断片と前記サンプルとを接触させてCD4+CD25+制御性T細胞を活性化させる工程と、活性化させた前記CD4+CD25+制御性T細胞を前記被験体に投与する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項75】
医療において使用するための、請求項39から53のいずれかに記載の抗体又は抗体断片で活性化されたことを特徴とするCD4+CD25+制御性T細胞。
【請求項76】
使用が、自己免疫疾患の治療である請求項75に記載のCD4+CD25+制御性T細胞。
【請求項77】
自己免疫疾患又は移植拒絶を治療する医薬を製造するための、請求項39から53のいずれかに記載の抗体又は抗体断片で活性化されたCD4+CD25+制御性T細胞の使用。
【請求項78】
請求項39から53のいずれかに記載の抗体又は抗体断片でコーティングされた磁気ビーズと、第2の抗CD4抗体又は抗CD25抗体とを含むことを特徴とするCD4+CD25+制御性T細胞を単離するためのキット。
【請求項1】
CD4に結合可能な分子をスクリーニングする方法であって、
(a)1以上の候補分子を提供する工程と;
(b)前記1以上の候補分子が、ヒトCD4の以下の領域:アミノ酸148〜154、アミノ酸164〜168、及びアミノ酸185〜192のうちの1以上に結合可能であるかどうかを判定する工程と;
(c)工程(b)においてCD4に結合可能であると判定された分子を選択する工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
工程(b)が、1以上の候補分子がヒトCD4の以下のアミノ酸:26、156、159、及び161のうちの少なくとも1つに結合するかどうかを判定することを更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(b)が、1以上の候補分子が塩橋なしにCD4に結合可能であるかどうかを判定することを含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
1以上の候補分子が、抗体、抗体由来分子、ペプチド、オリゴヌクレオチド、siRNA、ミモトープ、ペプチド模倣物質、フォルダマー、小分子、天然のリポカリン又は改変されたリポカリンに基づく認識タンパク質、DARPin、フィブロネクチン、アフィボディ、Kunitz型阻害剤、ペプチドアプタマー、リボザイム、又は毒素である請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
抗体が、ヒト化抗体又はラクダ抗体である請求項4に記載の方法。
【請求項6】
1以上の候補分子が、BT061軽鎖のCDR1及びCDR2と、BT061重鎖のCDR1及びCDR3とを含む抗体又は抗体断片であって、前記CDRはそれぞれ、その配列中に以下に記載するアミノ酸置換を任意で含んでいてもよいCDRである請求項1から5のいずれかに記載の方法:
(i)Ser32;Gly33;及びTyr34を含む軽鎖CDR1、
(ii)Leu54;及びIle57を含む軽鎖CDR2、
(iii)Asp31、Glu31、Thr31、Cys31、Pro31、Met31、又はTyr31を含む重鎖CDR1、
(iv)Tyr103、Phe103、又はHis103;Arg104;Tyr105;Asp106;及びTrp110、Phe110、His110、又はTyr110を含む重鎖CDR3。
【請求項7】
BT061軽鎖のCDR1及びCDR2の配列、並びにBT061重鎖のCDR1及びCDR3の配列中のアミノ酸置換が、表4及び5に記載されるアミノ酸置換から選択される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
抗体又は抗体断片が、Tyr53又はPhe53を含む軽鎖と、Ser28を含む重鎖とを含む請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
抗体又は抗体断片が、Asp64を含む軽鎖を含む、
抗体又は抗体断片が、Glu56を含む重鎖を含む、又は
抗体又は抗体断片が、Asp64を含む軽鎖を含み且つGlu56を含む重鎖を含む請求項6から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
抗体又は抗体断片が、BT061軽鎖のCDR3及びBT061重鎖のCDR2の少なくともいずれかを更に含み、これらCDRの配列中にアミノ酸置換が任意で存在し、前記アミノ酸置換が、表4及び5に記載されるアミノ酸置換から選択される請求項6から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
工程(a)〜(c)が、コンピュータシステムで実施される請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
工程(c)で選択された分子を産生する工程(d)を更に含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程(d)で産生された分子とCD4+細胞とをインビトロで接触させるか、又は工程(d)で産生された分子とヒトCD4の以下の領域:アミノ酸148〜154、アミノ酸164〜168、及びアミノ酸185〜192のうちの1以上を含むペプチド又はポリペプチドとをインビトロで接触させる工程(e)を更に含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程(e)が、
(i)工程(d)で産生された分子が、ヒトCD4の以下の領域:アミノ酸148〜154、アミノ酸164〜168、及びアミノ酸185〜192のうちの1以上を含むペプチドと結合するかどうか、
(ii)工程(d)で産生された分子が、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化させるかどうか、及び
(iii)工程(d)で産生された分子が、CD4発現細胞におけるCD4受容体の発現を低下させるかどうか
の少なくともいずれかを判定することを含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程(a)〜(c)が、インビトロで実施され、工程(b)が、1以上の候補分子と、ヒトCD4の以下の領域:アミノ酸148〜154、アミノ酸164〜168、及びアミノ酸185〜192のうちの1以上を含むペプチド又はポリペプチドとを接触させることを含む請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
1以上の候補分子が、分子のライブラリである請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ライブラリが、ファージディスプレイライブラリである請求項16に記載の方法。
【請求項18】
判定工程が、X線結晶解析又はNMRを実施すること、及び塩橋なしにペプチド又はポリペプチドに結合する分子を選択することを含む請求項14から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
CD4+CD25+制御性T細胞を活性化する能力について、工程(c)で選択された分子をスクリーニングする工程(d)、及び
CD4発現細胞におけるCD4受容体の発現を低下させる能力について、工程(c)で選択された分子をスクリーニングする工程(e)
の少なくともいずれかを更に含む請求項15から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
ペプチド又はポリペプチドが、膜若しくはこれと等価な好適な表面に固定されるか、又は磁気ビーズにカップリングされる請求項13から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
ペプチド又はポリペプチドが、ヒトCD4のIg様C2型1ドメインを含むか、又はヒトCD4のIg様V型ドメイン及びIg様C2型1ドメインを含む請求項13から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
ペプチド又はポリペプチドが、野生型ヒトCD4エピトープの立体構造を模倣する請求項13から21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
接触工程が、ペプチド及び分子と、BT061の重鎖及び軽鎖の可変ドメインを有する競合抗体又は抗体断片とを接触させて、候補分子又は選択された分子が、前記ペプチド又はポリペプチドの領域に対する前記競合抗体又は抗体断片の結合をブロック可能であるかどうかを判定することを含む請求項14から22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
(a)請求項14又は19に記載の方法を用いてCD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能であると判定された分子を選択する工程と、
(b)前記選択された分子を含む治療組成物を製造する工程と
を含むことを特徴とする治療組成物を製造する方法。
【請求項25】
分子が、BT061重鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3、並びにBT061軽鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3を含まないことを特徴とする請求項24に記載の方法によって得ることができる治療組成物。
【請求項26】
CD4に結合可能な抗体又は抗体断片をスクリーニングする方法であって、
(a)BT061軽鎖のCDR1及びCDR2と、BT061重鎖のCDR1及びCDR3とを含む抗体又は抗体断片であって、前記CDRはそれぞれ、その配列中に以下に記載するアミノ酸置換を任意で含んでいてもよいCDRである抗体又は抗体断片を提供する工程と:
(i)Ser32;Gly33;及びTyr34を含む軽鎖CDR1、
(ii)Leu54;及びIle57を含む軽鎖CDR2、
(iii)Asp31、Glu31、Thr31、Cys31、Pro31、Met31、又はTyr31を含む重鎖CDR1、
(iv)Tyr103、Phe103、又はHis103;Arg104;Tyr105;Asp106;及びTrp110、Phe110、His110、又はTyr110を含む重鎖CDR3、
(b)前記抗体又は抗体断片がCD4に結合可能であるかどうかを判定する工程と、
(c)工程(b)においてCD4に結合可能であると判定された抗体又は抗体断片を選択する工程と
を含み、
前記抗体又は抗体断片が、BT061重鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3、並びにBT061軽鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3を含まないことを特徴とする方法。
【請求項27】
BT061軽鎖のCDR1及びCDR2の配列、並びにBT061重鎖のCDR1及びCDR3の配列中のアミノ酸置換が、表4及び5に記載されるアミノ酸置換から選択される請求項26に記載の方法。
【請求項28】
抗体又は抗体断片が、Tyr53又はPhe53を含む軽鎖と、Ser28を含む重鎖とを含む請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
抗体又は抗体断片が、Asp64を含む軽鎖を含む、
抗体又は抗体断片が、Glu56を含む重鎖を含む、又は
抗体又は抗体断片が、Asp64を含む軽鎖を含み且つGlu56を含む重鎖を含む請求項26から28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
抗体又は抗体断片が、BT061軽鎖のCDR3及びBT061重鎖のCDR2の少なくともいずれかを更に含み、これらCDRの配列中にアミノ酸置換が任意で存在し、前記アミノ酸置換が、表4及び5に記載されるアミノ酸置換から選択される請求項26から29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
工程(a)〜(c)が、コンピュータシステムで実施される請求項26から30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
工程(c)で選択された抗体又は抗体断片を産生する工程(d)を更に含む請求項31に記載の方法。
【請求項33】
(i)工程(d)で産生された抗体又は抗体断片が、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化させるかどうか、
(ii)工程(d)で産生された抗体又は抗体断片が、ヒトCD4の以下の領域:アミノ酸148〜154、アミノ酸164〜168、及びアミノ酸185〜192のうちの1以上と結合するかどうか、並びに
(iii)工程(d)で産生された抗体又は抗体断片が、CD4発現細胞におけるCD4の発現をダウンレギュレートするかどうか
の少なくともいずれかを判定することを更に含む請求項32に記載の方法。
【請求項34】
工程(a)〜(c)が、インビトロで実施される請求項26から31のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
工程(b)が、
(i)抗体又は抗体断片が、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化させるかどうか、
(ii)抗体又は抗体断片が、ヒトCD4の以下の領域:アミノ酸148〜154、アミノ酸164〜168、及びアミノ酸185〜192のうちの1以上と結合するかどうか、並びに
(iii)抗体又は抗体断片が、CD4発現細胞におけるCD4の発現をダウンレギュレートするかどうか
の少なくともいずれかを判定することを含む請求項34に記載の方法。
【請求項36】
CD4発現細胞が、PBMCである請求項14、19、33、及び35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
(a)請求項33又は35に従って、CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能であると同定された抗体又は抗体断片を選択する工程と、
(b)選択された分子を含む治療組成物を製造する工程と
を含むことを特徴とする治療組成物を製造する方法。
【請求項38】
請求項37に記載の方法によって得ることができることを特徴とする治療組成物。
【請求項39】
CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な抗体又は抗体断片であって、BT061軽鎖のCDR1及びCDR2とBT061重鎖のCDR1及びCDR3とを含み、前記CDRはそれぞれ、その配列中に以下に記載するアミノ酸置換を任意で含んでいてもよいCDRであり、
(i)Ser32;Gly33;及びTyr34を含む軽鎖CDR1、
(ii)Leu54;及びIle57を含む軽鎖CDR2、
(iii)Asp31、Glu31、Thr31、Cys31、Pro31、Met31、又はTyr31を含む重鎖CDR1、
(iv)Tyr103、Phe103、又はHis103;Arg104;Tyr105;Asp106;及びTrp110、Phe110、His110、又はTyr110を含む重鎖CDR3、
前記抗体又は抗体断片が、BT061重鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3、並びにBT061軽鎖のCDR1、CDR2、及びCDR3を含まないことを特徴とする抗体又は抗体断片。
【請求項40】
以下の配列を含み:
【表1】
(24〜29位、31位、37位、60位、96〜98位、及び101位のアミノ酸は、表4における対応する位置に示されているアミノ酸から選択される)
更に、以下の配列を含む請求項39に記載の抗体又は抗体断片
【表2】
(31〜34位、51〜67位、103位、107〜110位、111位、及び112位のアミノ酸は、表5における対応する位置に示されているアミノ酸から選択される)。
【請求項41】
BT061軽鎖のCDR1に由来する配列SGYSY、BT061軽鎖のCDR2に由来する配列LASILE、及びBT061重鎖のCDR3に由来する配列YYRYDの少なくともいずれかを含む請求項39に記載の抗体又は抗体断片。
【請求項42】
CDRの配列中のアミノ酸置換が、等配電子変異である請求項39に記載の抗体又は抗体断片。
【請求項43】
CD4+CD25+制御性T細胞を活性化可能な抗体又は抗体断片であって、抗体BT061のVドメインと少なくとも80%同一であるVドメインを含み、前記Vドメインが、
(i)軽鎖VドメインのCDR1における配列モチーフSGYSY、
(ii)軽鎖VドメインのCDR2における配列モチーフLASILE、及び
(iii)重鎖VドメインのCDR3における配列モチーフSYXRYD(式中、Xは、Y、F、又はHである)を含むが、
但し、前記抗体又は抗体断片は、抗体BT061のVドメインと100%同一であるVドメインを含まないことを特徴とする抗体又は抗体断片。
【請求項44】
BT061軽鎖のCDR1及びCDR2、並びにBT061重鎖のCDR1及びCDR3の少なくともいずれかの配列中のアミノ酸置換が、表4及び5に記載されるアミノ酸置換から選択される請求項39に記載の抗体又は抗体断片。
【請求項45】
抗体又は抗体断片が、Tyr53又はPhe53を含む軽鎖、及びSer28を含む重鎖の少なくともいずれかを含む請求項39又は44に記載の抗体又は抗体断片。
【請求項46】
抗体又は抗体断片が、Asp64を含有する軽鎖を含む請求項39、44、及び45のいずれかに記載の抗体又は抗体断片。
【請求項47】
抗体又は抗体断片が、Glu56を含有する重鎖を含む請求項39及び44から46のいずれかに記載の抗体又は抗体断片。
【請求項48】
抗体又は抗体断片が、BT061軽鎖のCDR3及びBT061重鎖のCDR2の少なくともいずれかを更に含み、これらCDRの配列中にアミノ酸置換が任意で存在し、前記アミノ酸置換が、表4及び5に記載されるアミノ酸置換から選択される請求項39及び44から47のいずれかに記載の抗体又は抗体断片。
【請求項49】
以下の単一アミノ酸置換を含むBT061軽鎖のCDR配列及びBT061重鎖のCDR配列を含む請求項39及び44から48のいずれかに記載の抗体又は抗体断片:
(i)重鎖におけるA63G;
(ii)重鎖におけるR33K;又は
(iii)軽鎖におけるL98I。
【請求項50】
以下の二重アミノ酸置換を含むBT061軽鎖のCDR配列及びBT061重鎖のCDR配列を含む請求項39及び44から48のいずれかに記載の抗体又は抗体断片:
(iv)重鎖におけるR33K及びA63G;又は
(v)軽鎖におけるL98I及び重鎖におけるR33K。
【請求項51】
BT061の残りの可変ドメイン配列を更に含む請求項49及び50のいずれかに記載の抗体又は抗体断片。
【請求項52】
CD64に結合可能なFc受容体を更に含む請求項39から51のいずれかに記載の抗体又は抗体断片。
【請求項53】
抗体が、IgG抗体である請求項39から52のいずれかに記載の抗体。
【請求項54】
ヒトCD4タンパク質のうちの50未満のアミノ酸を含み、且つヒトCD4の以下の領域:アミノ酸148〜154、アミノ酸164〜168、及びアミノ酸185〜192のうちの2つ又は3つを含むことを特徴とする単離ペプチド。
【請求項55】
ヒトCD4タンパク質のうちの20未満のアミノ酸を含み、且つヒトCD4の以下の領域:アミノ酸148〜154、アミノ酸164〜168、及びアミノ酸185〜192のうちの1以上を含むことを特徴とする単離ペプチド。
【請求項56】
ヒトCD4タンパク質のうちの50未満のアミノ酸を含み、且つヒトCD4の以下の領域:アミノ酸148〜154、アミノ酸164〜168、及びアミノ酸185〜192のうちの1以上を含むことを特徴とする単離ペプチドのミモトープ。
【請求項57】
請求項39から53のいずれかに記載の抗体又は抗体断片をコードしていることを特徴とする核酸。
【請求項58】
請求項57に記載の核酸を含むことを特徴とするベクター。
【請求項59】
請求項57に記載の核酸又は請求項58に記載のベクターを含むことを特徴とするホスト細胞又はハイブリドーマ。
【請求項60】
請求項39から53のいずれかに記載の抗体又は抗体断片を産生する方法であって、前記抗体又は抗体断片を発現させる条件下で培養培地中にて請求項60に記載のホスト細胞を培養し、前記培養培地から前記抗体又は抗体断片を分離する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項61】
請求項39から53のいずれかに記載の抗体又は抗体断片を含み、薬学的に許容し得る担体を更に含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項62】
標識を更に含む請求項39から53のいずれかに記載の抗体又は抗体断片。
【請求項63】
CD4+CD25+制御性T細胞を活性化させるためのインビトロにおける方法であって、前記CD4+CD25+制御性T細胞と請求項39から53のいずれかに記載の抗体又は抗体断片とを接触させることを含むことを特徴とする方法。
【請求項64】
自己免疫疾患若しくは移植拒絶に罹患している被験体を治療する方法、又は被験体が自己免疫疾患若しくは移植拒絶に罹患するのを予防する方法であって、請求項39から53のいずれかに記載の抗体又は抗体断片を前記被験体に投与することを含むことを特徴とする方法。
【請求項65】
医療において使用するための請求項39から53のいずれかに記載の抗体又は抗体断片。
【請求項66】
使用が、自己免疫疾患又は移植拒絶の治療である請求項65に記載の医療において使用するための抗体又は抗体断片。
【請求項67】
自己免疫疾患又は移植拒絶を治療する医薬を製造するための請求項65に記載の抗体又は抗体断片の使用。
【請求項68】
インビトロにおいてCD4+CD25+制御性T細胞を活性化させるための請求項39から53のいずれかに記載の抗体又は抗体断片の使用。
【請求項69】
インビトロにおいてCD4+CD25+制御性T細胞を同定するための請求項39から53のいずれかに記載の抗体又は抗体断片の使用。
【請求項70】
CD4に結合可能な分子のスクリーニング及びCD4+CD25+制御性T細胞の活性化の少なくともいずれかを行うための請求項54若しくは55に記載の単離ペプチド又は請求項56に記載のミモトープの使用。
【請求項71】
サンプル中のCD4+CD25+制御性T細胞の存在をスクリーニングする方法であって、請求項62に記載の標識抗体又は標識抗体断片と前記サンプルとを接触させ、前記サンプルを洗浄して結合していない抗体を除去し、前記サンプル中の前記標識の存在を検出する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項72】
CD4+CD25+制御性T細胞が活性化されている請求項71に記載のスクリーニング方法。
【請求項73】
サンプルが、自己免疫疾患又は移植拒絶に罹患している被験体から採取された生体サンプルである請求項71又は72に記載のスクリーニング方法。
【請求項74】
自己免疫疾患若しくは移植拒絶に罹患している被験体を治療する方法、又は被験体が自己免疫疾患若しくは移植拒絶に罹患するのを予防する方法であって、前記被験体からCD4+CD25+制御性T細胞を含むサンプルを採取する工程と、請求項39から53のいずれかに記載の抗体又は抗体断片と前記サンプルとを接触させてCD4+CD25+制御性T細胞を活性化させる工程と、活性化させた前記CD4+CD25+制御性T細胞を前記被験体に投与する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項75】
医療において使用するための、請求項39から53のいずれかに記載の抗体又は抗体断片で活性化されたことを特徴とするCD4+CD25+制御性T細胞。
【請求項76】
使用が、自己免疫疾患の治療である請求項75に記載のCD4+CD25+制御性T細胞。
【請求項77】
自己免疫疾患又は移植拒絶を治療する医薬を製造するための、請求項39から53のいずれかに記載の抗体又は抗体断片で活性化されたCD4+CD25+制御性T細胞の使用。
【請求項78】
請求項39から53のいずれかに記載の抗体又は抗体断片でコーティングされた磁気ビーズと、第2の抗CD4抗体又は抗CD25抗体とを含むことを特徴とするCD4+CD25+制御性T細胞を単離するためのキット。
【図7】
【図9】
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図9】
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2013−511996(P2013−511996A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−541473(P2012−541473)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068579
【国際公開番号】WO2011/064407
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(390035378)バイオテスト・アクチエンゲゼルシヤフト (13)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068579
【国際公開番号】WO2011/064407
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(390035378)バイオテスト・アクチエンゲゼルシヤフト (13)
【Fターム(参考)】
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